説明

インクジェットヘッドの駆動電圧設定方法、インクジェットヘッドおよびインクジェットプリンター

【課題】搭載する機種が変更された場合でも、適切な駆動電圧によって駆動制御することができるインクジェットヘッドの駆動電圧設定方法を提案すること。
【解決手段】駆動電圧設定方法では、インクジェットヘッド1から基準重量の検査インクのインク滴3を吐出させる検査インク用駆動電圧Vh0とヘルムホルツ共振振動の周期Tcを測定する(ステップST13)。次に、インクジェットヘッド1をプリンター本体11に搭載し、プリンター本体11に予め記憶されている補正式と検査インク用駆動電圧Vh0とヘルムホルツ共振振動の周期Tcを用いて印刷インク用駆動電圧Vh1を算出し、印刷インク用駆動電圧Vh1を駆動電圧Vhとしてプリンター本体11に設定する(ステップST22)。駆動電圧がプリンター本体11に設定されるので、インクジェットヘッド1を搭載する機種が変更されてもインクジェットヘッド1に駆動電圧を設定し直す必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個体毎に異なるインク吐出特性を備えるインクジェットヘッドをそれぞれ適切な駆動電圧で駆動することができるインクジェットヘッドの駆動電圧設定方法に関する。また、このような駆動電圧設定方法によって駆動電圧が設定されるインクジェットヘッドおよび当該インクジェットヘッドを搭載するインクジェットプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドは、インクを吐出させるための圧電素子の特性のばらつきや製造誤差などに起因して、インク吐出特性が個体毎に異なることが多い。従って、インクジェットヘッドを予め設定した固定の駆動電圧によって駆動して印刷を行うと、インクジェットヘッドから吐出されるインク滴の体積や重量が個体毎に異なってしまい、この個体差が印刷結果の濃淡などとして現れてしまうことがある。
【0003】
インクジェットヘッドのインク吐出特性の個体差が印刷結果に現れることを抑制するための技術は、特許文献1に開示されている。同文献では、製造されたインクジェットヘッドに検査インクを充填して、インクジェットヘッドから予め定めた基準体積のインク滴を吐出させる駆動電圧を測定している。そして、測定された駆動電圧を予め求めた相関式に基づいて補正し、補正後の補正駆動電圧を、インクジェットヘッドを駆動するための駆動電圧としてインクジェットヘッドに個別に設定している。相関式は、実際の印刷に用いる特定の印刷インクを用いた場合のインクジェットヘッドの駆動電圧と、検査インクを用いた場合のインクジェットヘッドの駆動電圧の相関関係を表すものである。同文献において、インクジェットヘッドへの駆動電圧の設定は、補正駆動電圧をインクジェットヘッドが搭載する回路基板の駆動電圧設定部に記憶保持させることにより行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−212475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、インク吐出特性の個体差が印刷結果に現れることを抑制するための補正駆動電圧がインクジェットヘッドの個々に設定されている。従って、インクジェットヘッドが、検査インクとの間で相関式に表される相関関係のある特定の印刷インクを用いるプリンターの機種に搭載される場合には、相関式によって補正された補正駆動電圧でインクジェットヘッドを駆動することによりインク吐出特性の個体差は吸収され、印刷結果にインクジェットヘッドの個体差は現れない。
【0006】
しかし、インクジェットヘッドが、特定の印刷インクとは粘度や密度や表面張力などの物性値が異なる別の印刷インクを使用する別のプリンターの機種に搭載される場合には、補正式が検査インクと別の印刷インクの相関関係を表したものではないので、インクジェットヘッドに設定された補正駆動電圧で当該インクジェットヘッドを駆動してもインク吐出特性の個体差を吸収することはできず、印刷結果にその個体差が現れることになる。従って、製造されるインクジェットヘッドが、物性値の異なる印刷インクを用いる複数のプリンターの機種の間で共通化されている場合には、インクジェットヘッドを搭載する機種が予め想定されていた印刷インクを用いる機種とは異なる機種に変更されると、インクジェットヘッドに一旦設定された駆動電圧を、実際に搭載される機種用の駆動電圧に設定し直さなければならないという問題が生じる。すなわち、別の印刷インクを用いた場合のインクジェットヘッドの駆動電圧と、検査インクを用いた場合のインクジェットヘッドの駆動電圧の相関関係を表す相関式を用いて新たな補正駆動電圧を算出して、この新たな補正駆動電圧をインクジェットヘッドが搭載する回路基板の駆動電圧設定部に記憶保持させなくてはならなくなり、インクジェットヘッドに対する駆動電圧の設定作業が煩雑となる。
【0007】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、搭載する機種が変更された場合でも、適切な駆動電圧によって駆動制御することができるインクジェットヘッドの駆動電圧設定方法を提案することにある。また、このような駆動電圧設定方法によって駆動電圧が設定されるインクジェットヘッドおよび当該インクジェットヘッドを搭載するインクジェットプリンターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明のインクジェットヘッドの駆動電圧設定方法は、
インクジェットヘッドに検査インクを供給して、前記インクジェットヘッドから第1基準重量のインク滴を吐出させる検査インク用駆動電圧を測定により取得する測定工程と、
前記インクジェットヘッドをプリンター本体に搭載してプリンターを構成するとともに、前記検査インク用駆動電圧に基づいて印刷インクを前記インクジェットヘッドに供給したときに当該インクジェットヘッドから第2基準重量のインク滴を吐出させる印刷インク用駆動電圧を算出して、この印刷インク用駆動電圧を前記インクジェットヘッドの印刷動作時の駆動電圧として前記プリンター本体に設定する設定工程と、
を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、検査インク用駆動電圧と補正式を用いて算出した印刷インク用駆動電圧を駆動電圧としてインクジェットヘッドを駆動することにより、印刷インクを用いた印刷時にインクジェットヘッドから基準重量のインク滴を吐出させることができる。従って、インクジェットヘッドのインク吐出特性の個体差が印刷結果に現れることを防止あるいは抑制できる。また、インクジェットヘッドを駆動する駆動電圧の設定は、インクジェットヘッドが搭載されるプリンター本体に対して行なわれる。従って、異なる印刷インクを用いる複数のプリンターの機種の間でインクジェットヘッドとして共通のものを用いている場合に、インクジェットヘッドを搭載するプリンターの機種が予め想定していた印刷インクとは異なる物性値を備える別の印刷インクを使用する機種に変更されても、インクジェットヘッドに対して駆動電圧を設定し直す必要がない。よって、複数の機種の間でインクジェットヘッドを共通化することが容易となる。さらに、検査インクを用いて取得した検査インク用駆動電圧に基づいて、印刷インクを用いた場合の印刷インク用駆動電圧を算出しているので、検査インクとして、印刷用インクよりも廉価なものを用いれば、駆動電圧を設定するためのコストを抑えることができる。
【0010】
本発明において、前記設定工程では、前記プリンター本体に予め記憶保持されている補正式と前記検査インク用駆動電圧に基づいて印刷インク用駆動電圧を算出することが望ましい。このようにすれば、プリンター本体に搭載しておく補正式を各プリンターで用いられる印刷インクに対応するものとしておくだけで、プリンター本体に搭載されるインクジェットヘッドの駆動電圧をインク吐出特性の個体差を吸収するものに設定できる。
【0011】
この場合、補正式を予めプリンター本体に搭載しておくためには、前記測定工程よりも前に、複数のインクジェットヘッドについて前記印刷インク用駆動電圧および前記検査インク用駆動電圧を測定して、測定された前記印刷インク用駆動電圧および前記検査インク用駆動電圧の間に成立している相関関係を前記補正式として求め、この補正式を前記プリンター本体に記憶保持させておくことが望ましい。
【0012】
この場合には、前記補正式は、前記印刷インク用駆動電圧をVh1とし、前記検査インク用駆動電圧をVh0としたときに以下のとおり表されるものとすることができる。
Vh1=a×Vh0+b (a、bは定数)
【0013】
ここで、本発明者らは、インクジェットヘッドが備える圧力発生室のヘルムホルツ共振振動の周期がインクジェットヘッドの個体毎に固有の値を備えていることに着目して鋭意検討を重ねた結果、このヘルムホルツ共振振動の周期を利用して検査インク用駆動電圧を補正することによってインク吐出特性の個体差をより吸収できる印刷インク用駆動電圧を算出できるという新たな知見を得た。従って、前記測定工程では、前記検査インク用駆動電圧とともに、前記インクジェットヘッドが備える圧力発生室のヘルムホルツ共振振動の周期を測定して取得し、前記設定工程では、前記検査インク用駆動電圧および前記ヘルムホルツ共振振動の周期に基づいて前記印刷インク用駆動電圧を算出することが望ましい。
【0014】
この場合に、前記設定工程では、前記プリンター本体に予め記憶保持されている補正式と、前記検査インク用駆動電圧および前記ヘルムホルツ共振振動の周期に基づいて印刷インク用駆動電圧を算出することが望ましい。このようにすれば、プリンター本体に搭載しておく補正式を各プリンターで用いられる印刷インクに対応するものとしておくだけで、プリンター本体に搭載されるインクジェットヘッドの駆動電圧をインク吐出特性の個体差を吸収するものに設定できる。
【0015】
この場合に、補正式を予めプリンター本体に搭載しておくためには、前記測定工程よりも前に、複数のインクジェットヘッドについて前記印刷インク用駆動電圧、前記検査インク用駆動電圧および前記ヘルムホルツ共振振動の周期を測定して、測定された前記印刷インク用駆動電圧と、前記検査インク用駆動電圧およびヘルムホルツ共振振動の周期との間に成立している相関関係を前記補正式として求め、この補正式を前記プリンター本体に記憶保持させておくことが望ましい。
【0016】
この場合において、前記補正式は、前記印刷インク用駆動電圧をVh1、前記検査インク用駆動電圧をVh0、前記ヘルムホルツ共振振動の周期をTcとしたときに、以下のとおり表されるものとすることができる。
Vh1=a×Vh0+b+c×Tc (a、b、cは定数)
【0017】
本発明において、前記測定工程では、前記インクジェットヘッドから第3基準重量のインク滴を吐出させる検査インク用フラッシング駆動電圧を測定により取得し、前記設定工程では、前記検査インク用フラッシング駆動電圧に基づいてメンテナンスのために前記インクジェットヘッドからインク滴を吐出させるフラッシング動作を行うための印刷インク用フラッシング駆動電圧を算出して、この印刷インク用フラッシング駆動電圧を前記インクジェットヘッドのフラッシング動作時のフラッシング駆動電圧として前記プリンター本体に設定することが望ましい。このようにすれば、フラッシング動作についても、インクジェットヘッドのインク吐出特性の個体差を吸収することが可能となる。この結果、インク吐出特性の個体差に拘わらず所望のフラッシング動作を行うことができるので、インクジェットヘッドの安定したメンテナンスを行うことができる。
【0018】
この場合、前記設定工程では、前記プリンター本体に予め記憶保持されているフラッシング駆動電圧設定用補正式と、前記検査インク用フラッシング駆動電圧に基づいて前記印刷インク用フラッシング駆動電圧を算出することが望ましい。このようにすれば、プリンター本体に搭載しておく補正式を各プリンターで用いられる印刷インクに対応するものとしておくだけで、プリンター本体に搭載されるインクジェットヘッドのフラッシング駆動電圧をインク吐出特性の個体差を吸収するものに設定できる。
【0019】
次に、本発明は、上記の駆動電圧設定方法によって駆動電圧が設定されるインクジェットヘッドであって、前記測定工程において取得された前記検査インク用駆動電圧の情報を担持する情報担持部を備えていることを特徴とする。また、本発明は、上記の記載の駆動電圧設定方法によって駆動電圧が設定されるインクジェットヘッドであって、前記測定工程において取得された前記検査インク用駆動電圧の情報および前記ヘルムホルツ共振振動の周期の情報を担持する情報担持部を備えていることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、インクジェットヘッド自体に、当該インクジェットヘッドの駆動電圧を設定するのに必要な情報を担持させることができる。従って、プリンター本体にインクジェットヘッドの駆動電圧を設定する設定工程を行う際に、駆動電圧を設定するのに必要な情報をプリンター本体に受け渡すことが容易である。
【0021】
また、本発明は、上記の駆動電圧設定方法によって駆動電圧が設定されることを特徴とするインクジェットヘッドとすることができる。
【0022】
また、本発明のインクジェットプリンターは、
上記の駆動電圧設定方法によって駆動電圧が設定されるインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを搭載するプリンター本体と、を有し、
前記インクジェットヘッドは、
前記測定工程において取得された前記検査インク用駆動電圧の情報を担持する情報担持部を備えており、
前記プリンター本体は、
前記インクジェットヘッドに前記印刷インクを供給するインク供給機構と、
前記インクジェットヘッドに前記駆動電圧を印加することにより当該インクジェットヘッドから前記第2基準重量のインク滴を吐出させて印刷を行う印刷制御部と、
前記補正式を記憶保持している補正式記憶保持部と、
前記補正式および前記検査インク用駆動電圧の情報を用いて前記印刷インク用駆動電圧を算出して、この印刷インク用駆動電圧を前記印刷制御部の前記駆動電圧として設定する駆動電圧設定部と、
を有することを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、インクジェットヘッドは、測定工程によって測定された検査インク用駆動電圧の情報を担持する情報担持部を備えているので、プリンター本体の駆動電圧設定部は、検査インク用駆動電圧の情報と補正式を用いて印刷インク用駆動電圧を算出して、この印刷インク用駆動電圧を印刷時の駆動電圧として設定することができる。
【0024】
本発明において、前記プリンター本体は、前記情報担持部に担持されている前記検査インク用駆動電圧の情報の入力を受け付け可能な情報受付部を更に有し、前記駆動電圧設定部は、前記情報受付部に前記検査インク用駆動電圧の情報が入力されると、前記補正式および前記検査インク用駆動電圧の情報を用いて前記印刷インク用駆動電圧を算出して、この印刷インク用駆動電圧を前記印刷制御部の前記駆動電圧として設定することを特徴とする。このようにすれば、インクジェットヘッドをプリンター本体に搭載してプリンターを構成する際に、インクジェットヘッドからプリンター本体に検査インク用駆動電圧の情報を受け渡すことが容易であり、インクジェットヘッドの駆動電圧の設定を簡易に行うことができる。
【0025】
本発明の別の形態のインクジェットプリンターは、
上記の駆動電圧設定方法によって駆動電圧が設定されるインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを搭載するプリンター本体と、を有し、
前記インクジェットヘッドは、
前記測定工程において取得された前記検査インク用駆動電圧の情報および前記ヘルムホルツ共振振動の周期の情報を担持する情報担持部を備えており、
前記プリンター本体は、
前記インクジェットヘッドに前記印刷インクを供給するインク供給機構と、
前記インクジェットヘッドに前記駆動電圧を印加することにより当該インクジェットヘッドから前記第2基準重量のインク滴を吐出させて印刷を行う印刷制御部と、
前記補正式を記憶保持している補正式記憶保持部と、
前記補正式、前記検査インク用駆動電圧の情報および前記ヘルムホルツ共振振動の周期の情報を用いて前記印刷インク用駆動電圧を算出して、この印刷インク用駆動電圧を前記印刷制御部の前記駆動電圧として設定する駆動電圧設定部と、
を有することを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、インクジェットヘッドは、測定工程によって測定された検査インク用駆動電圧の情報およびヘルムホルツ共振振動の周期の情報を担持する情報担持部を備えているので、プリンター本体の駆動電圧設定部は、検査インク用駆動電圧の情報およびヘルムホルツ共振振動の周期の情報並びに補正式を用いて印刷インク用駆動電圧を算出して、この印刷インク用駆動電圧を印刷時の駆動電圧として設定することができる。
【0027】
本発明において、前記プリンター本体は、前記情報担持部に担持されている前記検査インク用駆動電圧の情報の入力を受け付け可能な情報受付部を更に有し、前記駆動電圧設定部は、前記情報受付部に前記検査インク用駆動電圧の情報が入力されると、前記補正式および前記検査インク用駆動電圧の情報を用いて前記印刷インク用駆動電圧を算出して、この印刷インク用駆動電圧を前記印刷制御部の前記駆動電圧として設定することが望ましい。このようにすれば、インクジェットヘッドをプリンター本体に搭載してプリンターを構成する際に、インクジェットヘッドからプリンター本体に検査インク用駆動電圧の情報およびヘルムホルツ共振振動の周期の情報を受け渡すことが容易であり、インクジェットヘッドの駆動電圧の設定を簡易に行うことができる。
【0028】
本発明において、インクジェットヘッドからプリンター本体への情報の受け渡しを容易にするためには、前記情報担持部は、メモリーであり、前記情報受付部は、前記インクジェットヘッドが前記プリンター本体に搭載されると、前記メモリーに接続されて当該メモリーの内容を読み出し可能となることが望ましい。
【0029】
本発明において、前記印刷制御部は、前記インクジェットヘッドにフラッシング駆動電圧を印加することによりメンテナンスのために当該インクジェットヘッドからインク滴を吐出させるフラッシング動作を行い、前記補正式記憶保持部には、フラッシング駆動電圧設定用補正式が記憶保持されており、前記駆動電圧設定部は、前記情報受付部に検査インク用フラッシング駆動電圧の情報が入力されると、前記フラッシング駆動電圧設定用補正式および前記検査インク用フラッシング駆動電圧の情報を用いて印刷インク用フラッシング駆動電圧を算出して、この印刷インク用フラッシングを前記印刷制御部の前記フラッシング駆動電圧として設定することが望ましい。このようにすれば、フラッシング動作についても、インクジェットヘッドのインク吐出特性の個体差を吸収することができる。この結果、インク吐出特性の個体差に拘わらず所望のフラッシング動作を行うことができるので、インクジェットヘッドの安定したメンテナンスを行うことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、検査インク用駆動電圧と補正式を用いて算出した印刷インク用駆動電圧を駆動電圧としてインクジェットヘッドを駆動することにより、印刷インクを用いた印刷時に、インクジェットヘッドから基準重量のインク滴を吐出させることができる。従って、インクジェットヘッドのインク吐出特性の個体差が印刷結果に現れることを防止あるいは抑制できる。また、インクジェットヘッドを駆動する駆動電圧の設定は、インクジェットヘッドが搭載されるプリンター本体に対して行なわれる。従って、インクジェットヘッドを搭載するプリンターの機種が予め想定していた印刷インクとは異なる物性値を備える別の印刷インクを使用する機種に変更されても、インクジェットヘッドに対して駆動電圧を設定し直す必要がなく、複数の機種の間でインクジェットヘッドを共通化することが容易となる。さらに、検査インクを用いて取得した検査インク用駆動電圧に基づいて印刷インクを用いた場合の印刷インク用駆動電圧を算出しているので、プリンター本体に搭載しておく補正式を各プリンターで用いられる印刷インクに対応するものとしておくだけで、プリンター本体に搭載されるインクジェットヘッドの駆動電圧をインク吐出特性の個体差を吸収するものに設定できる。また、本発明では、検査インクを用いて取得した検査インク用駆動電圧に基づいて、印刷インクを用いた場合の印刷インク用駆動電圧を算出しているので、検査インクとして、印刷用インクよりも廉価なものを用いれば、駆動電圧を設定するためのコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】インクジェットヘッドの要部および駆動波形の説明図である。
【図2】本発明を適用したプリンターの概略ブロック図である。
【図3】駆動電圧設定動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】算出された駆動電圧が適正な駆動電圧となっていることを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したインクジェットプリンターを説明する。
【0033】
(インクジェットヘッドおよび駆動波形)
まず、図1を参照して、インクジェットヘッドの構成および駆動波形を説明する。図1(a)はインクジェットヘッドの要部の説明図であり、図1(b)はインクジェットヘッドを駆動する駆動波形の説明図である。図1(a)に示すように、インクジェットヘッド1は、インクノズル2のノズル開口2aからインク滴3を吐出させる圧力を発生させるための圧力発生室4を備えている。圧力発生室4の底面4aの一方の端部分にはインクノズル2が連通している。圧力発生室4の底面4aの他方の端部分にはインクを一時的に貯留するリザーバー5に連通するインク供給口4bが開口している。リザーバー5は、このリザーバー5にインクを供給するためのヘッド内流路6が接続されている。圧力発生室4の天井は薄板7から構成され、薄板7の外側面には圧力発生室4に対応する部位に駆動電極8が形成されている。駆動電極8の外側面には圧電振動板(圧電素子)9が固定されている。圧力発生室4は、圧電振動板9のたわみ振動を受けて収縮、膨張してノズル開口2aからインク滴3を吐出し、インク供給口4bを介してリザーバー5からインクの補給を受ける。
【0034】
図1(b)に示す駆動波形Pは、インクノズル2から予め定めた基準重量のインク滴3を一滴吐出させるためのものである。横軸は時間であり、縦軸は電圧である。駆動波形Pの振幅の幅が駆動電圧Vhである。駆動波形Pのパルス幅t1、t2は、圧力発生室4のヘルムホルツ共振振動の周期Tcに基づいて定められている。ヘルムホルツ共振振動の周期Tcは、圧力発生室4に負圧を発生させたときに、ノズル開口2aとインク供給口4bとの間で、圧力発生室4に充填されている液体の位相が反対方向となる周期である。ヘルムホルツ共振振動の周期Tcは周知の測定方法により取得することが可能である。ヘルムホルツ共振振動の周期Tcは、インクジェットヘッド1の個体毎に固有の値となっている。
【0035】
ここで、インクジェットヘッド1は、圧電振動板9の特性のばらつきや製造誤差などに起因してインク吐出特性が個体毎に異なる場合が多いので、個々のインクジェットヘッド1を予め定めた固定の駆動電圧によって駆動した場合には、インクジェットヘッド1から吐出されるインク滴3の重量が個体毎に異なってしまい、この個体差が印刷結果の濃淡などとして現れてしまう。従って、個々のインクジェットヘッド1を駆動して印刷を行う際には、インク吐出特性の個体差が印刷結果に現れることを抑制することができる駆動電圧、すなわち、個々のインクジェットヘッド1において予め定めた基準重量のインク滴3を吐出することが可能な駆動電圧Vhでインクジェットヘッド1を駆動して印刷を行ない、印刷結果にインク吐出特性の個体差が現れないようにしている。
【0036】
(プリンター)
図2は本発明を適用したプリンターの概略ブロック図である。本発明を適用したプリンター10はインクジェットヘッド1と、インクジェットヘッド1を搭載するプリンター本体11を備えている。
【0037】
インクジェットヘッド1は、インクジェットヘッド1の製造後に検査インクを用いて行なわれるヘッド組立検査動作において測定される検査インク用駆動電圧Vh0、ヘルムホルツ共振振動の周期Tcおよび検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0の各情報を担持する情報担持部12を備えている。検査インク用駆動電圧Vh0は、ヘッド組立検査動作においてインクジェットヘッド1に検査インクを供給したときに、インクジェットヘッド1から基準重量(第1基準重量)のインク滴3を吐出させる駆動電圧である。検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0の情報は、ヘッド組立検査動作においてインクジェットヘッド1に検査インクを供給したときに、インクジェットヘッド1からフラッシング用の基準重量(第3基準重量)のインク滴3を吐出させる駆動電圧である。フラッシング用の基準重量(第3基準重量)は基準重量(第1基準重量)よりも軽いものである。なお、ヘッド組立検査動作の詳細は後述する。
【0038】
情報担持部12は、外部からアクセス可能な状態でインクジェットヘッド1に搭載されたEPROMなどのメモリーであり、ヘッド組立検査動作において取得された検査インク用駆動電圧Vh0の情報、ヘルムホルツ共振振動の周期Tcの情報および検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0の情報が書き込まれる。なお、情報担持部12は、インクジェットヘッド1の外周面部分に設けられた情報記載欄とすることができ、この場合には、情報記載欄にはQRコードなどの2次元コードや数字によって検査インク用駆動電圧Vh0の情報、ヘルムホルツ共振振動の周期Tcの情報および検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0の情報を記載される。情報記載欄に記入された情報は目視により確認可能な状態とされる。
【0039】
プリンター本体11は、インク供給機構14、記録紙搬送機構15、ヘッド移動機構16、ヘッドメンテナンス機構17を備えている。インク供給機構14はインクジェットヘッド1に印刷インクを供給する。記録紙搬送機構15はインクジェットヘッド1による印刷位置を経由する搬送路に沿って記録紙を搬送する。ヘッド移動機構16は、インクジェットヘッド1を印刷位置と、印刷位置から離れた待機位置との間で移動させる。ヘッドメンテナンス機構17は、待機位置に移動したインクジェットヘッド1のノズル面を被うことが可能なヘッドキャップを備えている。
【0040】
また、プリンター本体11は、印刷動作を司る印刷制御部20を備えている。印刷制御部20は、外部の機器から印刷指令の供給を受けると、ヘッド移動機構16を駆動してインクジェットヘッド1を待機位置から印刷位置に移動させる。そして、インクジェットヘッド1を記録紙の搬送方向と直交する方向に移動させながら、インクジェットヘッド1に駆動電圧Vhを印加することにより当該インクジェットヘッド1から基準重量(第2基準重量)のインク滴3を吐出させる印刷動作と、記録紙搬送機構15を駆動して、所定量の紙送りを行う記録紙搬送動作を繰り返し行うことにより、記録紙に印刷を施す。印刷が終了すると、印刷制御部20は、ヘッド移動機構16を駆動してインクジェットヘッド1を待機位置に移動させ、ヘッドメンテナンス機構17を駆動してヘッドキャップでインクジェットヘッド1のノズル面を被う。また、必要に応じて、ヘッドキャップでノズル面を被った状態でインクジェットヘッド1にフラッシング駆動電圧VhPFLを印加し、インクジェットヘッド1からインク滴3を吐出させるフラッシング動作を行う。フラッシング動作はインクノズル2のメンテナンスのために行われるものであり、フラッシング動作によって、インクノズル2の目詰まりが解消、或いは、防止される。
【0041】
さらに、プリンター本体11は、インクジェットヘッド1の印刷時の駆動電圧Vhとフラッシング動作時のフラッシング駆動電圧VhPFLを設定するため補正式搭載部21、情報受付部22、および、駆動電圧設定部23を備えている。
【0042】
補正式搭載部21は、ヘッド組立検査動作において検査インクを用いて測定された検査インク用駆動電圧Vh0から、実際に印刷に用いる印刷インクをインクジェットヘッド1に供給したときに当該インクジェットヘッド1から基準重量(第2基準重量)のインク滴3を吐出させる印刷インク用駆動電圧Vh1を算出するための補正式を記憶保持している。本例では、ヘッド組立検査動作においてインクジェットヘッド1から吐出させるインク滴3の基準重量(第1基準重量)と、実際に印刷に用いる印刷インクをインクジェットヘッド1から吐出させる基準重量(第2基準重量)とは異なっている。
【0043】
また、補正式搭載部21は、ヘッド組立検査動作において検査インクを用いて測定された検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0から、実際に印刷に用いる印刷インクをインクジェットヘッド1に供給したときに当該インクジェットヘッド1からフラッシング用の基準重量のインク滴3を吐出させる印刷インク用フラッシング駆動電圧Vh2を算出するためのフラッシング駆動電圧設定用補正式も記憶保持している。なお、印刷インクを用いたときのフラッシング用のインク滴3の基準重量は、印刷動作時に吐出させるインク滴3の基準重量(第2基準重量)よりも軽くなっている。
【0044】
ここで、補正式は、複数のインクジェットヘッド1について、印刷インク用駆動電圧Vh1、検査インク用駆動電圧Vh0およびヘルムホルツ共振振動の周期Tcを予め実際に測定して、測定された印刷インク用駆動電圧Vh1と、検査インク用駆動電圧Vh0およびヘルムホルツ共振振動の周期Tcとの間に成立している相関関係から得られたものである。本例では、印刷インク用駆動電圧Vh1を算出するための補正式は、以下のとおり表される。a、b、cは相関関係により導かれる定数である。
Vh1=a×Vh0+b+c×Tc
【0045】
また、フラッシング駆動電圧設定用補正式は、複数のインクジェットヘッド1について、印刷インク用フラッシング駆動電圧Vh2、検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0を予め実際に測定して、測定された印刷インク用フラッシング駆動電圧Vh2と、検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0の間に成立している相関関係から得られたものである。本例では、印刷インク用フラッシング駆動電圧Vh2を算出するためのフラッシング駆動電圧設定用補正式は以下のとおり表される。ここで、d、eは定数であり、下式により算出される印刷インク用フラッシング駆動電圧Vh2は、印刷インク用駆動電圧Vh1よりも高い電圧となる。
Vh2=d×VhPFL0+e
【0046】
情報受付部22は、インクジェットヘッド1の情報担持部12に担持されている検査インク用駆動電圧Vh0の情報、ヘルムホルツ共振振動の周期Tcの情報および検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0の情報の入力を受け付ける。より詳細には、情報受付部22は、インクジェットヘッド1がプリンター本体11に搭載されるとインクジェットヘッド1が搭載するメモリーに対して通信可能に接続され、メモリーから検査インク用駆動電圧Vh0の情報、ヘルムホルツ共振振動の周期Tcの情報および検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0の情報を読み取る。なお、インクジェットヘッド1の情報担持部12が情報記載欄の場合には、情報受付部22は、プリンター本体11に接続された外部の機器のコードリーダーによって読み取られる2次元コードの情報、或いは、情報記載欄を目視した作業者によって入力される検査インク用駆動電圧Vh0の情報、ヘルムホルツ共振振動の周期Tcの情報および検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0の情報を受け付ける。
【0047】
駆動電圧設定部23は、情報受付部22に検査インク用駆動電圧Vh0の情報、ヘルムホルツ共振振動の周期Tcの情報および検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0の情報が入力されると、補正式、検査インク用駆動電圧Vh0の情報およびヘルムホルツ共振振動の周期Tcの情報を用いて印刷インク用駆動電圧Vh1を算出して、この印刷インク用駆動電圧Vh1を、印刷制御部20がインクジェットヘッド1を印刷時に駆動する駆動電圧Vhとして設定する。また、駆動電圧設定部23は、フラッシング駆動電圧設定用補正式および検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0の情報を用いて印刷インク用フラッシング駆動電圧Vh2を算出して、この印刷インク用フラッシング駆動電圧Vh2を、印刷制御部20がインクジェットヘッド1をフラッシング時に駆動するフラッシング駆動電圧VhPFLとして設定する。
【0048】
(駆動電圧設定動作)
図3(a)はヘッド組立検査動作のフローチャートであり、図3(b)はプリンター組立検査動作のフローチャートであり、図3(c)はユーザーが購入した後のプリンターの印刷動作のフローチャートである。インクジェットヘッド1の駆動電圧Vhおよびフラッシング駆動電圧VhPFLを設定する駆動電圧設定動作はヘッド組立検査動作およびプリンター組立検査動作と並行して行なわれる。
【0049】
図3(a)に示すように、ヘッド組立検査動作では、まず、製造されたインクジェットヘッド1に検査インクを充填する(ステップST11)。検査インクとしては、印刷インクよりも廉価なものであって、廃液を処理し易い水系のインク、グリセリン系のインクが用いられている。また、色素を含んだものが用いられている。なお、本例で使用の検査インクの物性値は、印刷インクの物性値と粘度については相違するものの、密度および表面張力についてはほぼ同じ値となっている。
【0050】
次に、予め設定されている検査用駆動電圧でインクジェットヘッド1を駆動して、インクジェットヘッド1から検査用インクを吐出させて記録紙に印刷を行い、インクノズル2からインク滴3が突出されないドット抜けが発生しているか否かを判定する第1の印刷検査を行う(ステップST12)。
【0051】
ドット抜けがないことが確認されると、基準重量(第1基準重量)のインク滴3をインクジェットヘッド1から吐出させる検査インク用駆動電圧Vh0を測定により、取得する(測定工程:ステップST13)。
【0052】
検査インク用駆動電圧Vh0の取得に際して、本例では、まず、予め設定した第1検査インク用駆動電圧でインクジェットヘッド1を駆動して当該インクジェットヘッド1からインク滴3を吐出させ、吐出したインク滴3の重量を測定する。次に、第1検査用インク駆動電圧とは異なる第2検査インク用駆動電圧でインクジェットヘッド1を駆動して当該インクジェットヘッド1からインク滴3を吐出させ、吐出したインク滴3の重量を測定する。そして、第1検査インク用駆動電圧でインクジェットヘッド1を駆動したときのインク滴3の重量と、第2検査インク用駆動電圧でインクジェットヘッド1を駆動したときのインク滴3の重量に基づいて、インクジェットヘッド1から基準重量のインク滴3を吐出させる検査インク用駆動電圧Vh0を取得する。なお、予め設定した第1検査インク用駆動電圧でインクジェットヘッド1を駆動して当該インクジェットヘッド1からインク滴3を吐出させ、吐出したインク滴3の重量を測定した後に、漸次に第1検査インク用駆動電圧を増加、或いは、減少させながら吐出したインク滴3の重量を測定する動作を繰り返すことにより、基準重量のインク滴3をインクジェットヘッド1から吐出させる検査インク用駆動電圧Vh0を取得することもできる。
【0053】
また、ステップST13では、検査インク用駆動電圧Vh0の取得と並行して、インクジェットヘッド1に検査インクを充填した状態でヘルムホルツ共振振動の周期Tcを計測して取得する。ヘルムホルツ共振振動の周期Tcの測定は周知の方法により行うことができる。
【0054】
さらに、ステップST13では、フラッシング用の基準重量(第3基準重量)のインク滴3をインクジェットヘッド1から吐出させる検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0を測定により、取得する。検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0は、検査インク用駆動電圧Vh0の取得と同様に行うことができる。
【0055】
検査インク用駆動電圧Vh0、ヘルムホルツ共振振動の周期Tcおよび検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0が取得されると、これらの情報を、インクジェットヘッド1に設けられた情報担持部12に担持させる。ここで、検査インク用駆動電圧Vh0の情報、ヘルムホルツ共振振動の周期Tcの情報および検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0の情報は、それぞれの値をそのまま情報担持部12に担持させてもよいが、本例では、それぞれの値に対応するIDを設定し、このIDを情報担持部12に担持させる(ステップST14)。
【0056】
その後、取得された検査インク用駆動電圧Vh0でインクジェットヘッド1を駆動して、印刷が正常に行われるか否かを確認する第2の印刷検査を行う(ステップST15)。第2の印刷検査において、正常に印刷されていることが確認されると、インクジェットヘッド1から検査用インクを排出して(ステップST16)、ヘッド組立検査動作を終了する。
【0057】
なお、ステップST12において第1の印刷検査においてドット抜けが発生した場合、ステップST13において検査インク用駆動電圧Vh0を測定できなかった場合、ステップST15において第2の印刷検査で正常な印刷が認められなかった場合には、インクジェットヘッド1に対してそれらの原因を特定するための検査が行なわれ、原因が除去された後に、再びヘッド組立検査動作が行なわれる。
【0058】
次に、図3(b)に示すプリンター組立検査動作では、まず、プリンター本体11に、インクジェットヘッド1を組み込む(ステップST21)。これにより、インクジェットヘッド1の情報担持部12に担持されたID(検査インク用駆動電圧Vh0の情報、ヘルムホルツ共振振動の周期Tcの情報および検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0の情報)がプリンター本体11の情報受付部22に読み込まれる。
【0059】
情報受付部22にIDが入力されると、駆動電圧設定部23は、ID(検査インク用駆動電圧Vh0およびヘルムホルツ共振振動の周期Tcの情報)および補正式搭載部21に記憶保持された補正式を用いて印刷インク用駆動電圧Vh1を算出し、算出された印刷インク用駆動電圧Vh1を印刷制御部20がインクジェットヘッド1を印刷時に駆動する駆動電圧Vhとして設定する。また、駆動電圧設定部23は、ID(検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0の情報)および補正式搭載部21に記憶保持されたフラッシング駆動電圧設定用補正式を用いて印刷インク用フラッシング駆動電圧Vh2を算出し、算出された印刷インク用フラッシング駆動電圧Vh2を印刷制御部20がフラッシング動作時にインクジェットヘッド1を駆動するフラッシング駆動電圧VhPFLとして設定する(設定工程:ステップST22)。
【0060】
その後、インクジェットヘッド1に印刷インクを充填する(ステップST23)。しかる後に、印刷制御部20によってインクジェットヘッド1を駆動電圧Vhで駆動して、インクジェットヘッド1から印刷インクを吐出させて記録紙に印刷を行い、印刷が正常に行われたか否かを確認する印刷検査を行う(ステップST24)。
【0061】
印刷が正常に行われたことが確認されると、インクジェットヘッド1から印刷インクを排出して(ステップST25)、プリンター組立検査動作を終了する。プリンター組立検査動作が終了すると、プリンター10は出荷される(ステップST26)。
【0062】
次に、図3(c)に示すユーザーが購入した後のプリンター10の印刷動作では、ユーザーは、プリンター10の機種毎に指定されている特定の印刷インクが充填されたインクカートリッジを、インク供給機構14のインクカートリッジ装填部に装填する。これにより、インクジェットヘッド1には印刷インクが供給可能な状態となる(ステップST31)。
【0063】
しかる後に、ユーザーがコンピューターなどの外部機器からプリンター10に印刷指令を供給すると、プリンター10の印刷制御部20は、インクジェットヘッド1を駆動電圧Vh(補正式を用いて算出された印刷インク用駆動電圧Vh1)で駆動して、印刷を行う。また、必要に応じて、プリンター10の印刷制御部20は、インクジェットヘッド1をフラッシング駆動電圧VhPFL(フラッシング駆動電圧設定用補正式を用いて算出された印刷インク用フラッシング駆動電圧Vh2)で駆動して、フラッシング動作を行う(ステップST32)。
【0064】
(作用効果)
本例によれば、算出された印刷インク用駆動電圧Vh1を駆動電圧Vhとしてインクジェットヘッド1を駆動することにより、印刷インクを用いた印刷時にプリンター10に搭載したインクジェットヘッド1から基準重量のインク滴3を吐出させることができる。従って、インクジェットヘッド1のインク吐出特性の個体差が印刷結果に現れることを抑制することができる。
【0065】
ここで、本発明者らは、検査インク用駆動電圧Vh0およびヘルムホルツ共振振動の周期Tcを用いて検査インク用駆動電圧Vh0を補正することによってインク吐出特性の個体差をより吸収できる駆動電圧を取得できるという新たな知見を得ており、本例は、このような新たな知見に基づいて、印刷インク用駆動電圧Vh1を算出している。従って、印刷インクを供給して駆動電圧Vhによってインクジェットヘッド1を駆動したときに、インクジェットヘッド1から基準重量のインク滴3を精度よく吐出させることができる。
【0066】
図4は補正式を利用して算出された駆動電圧(印刷インク用駆動電圧Vh1)が適正な駆動電圧となっていることを示すグラフである。図4のグラフは、印刷インクを用いたときにインクジェットヘッドから基準重量のインク滴3を実際に吐出させることが可能な適正駆動電圧と、補正式を用いて算出した印刷インク用駆動電圧Vh1との差分(縦軸)と、印刷インクを用いて基準重量のインク滴3をインクジェットヘッドから吐出させたときの当該インクジェットヘッドの駆動電圧の測定値(横軸)との関係を示すものである。黒丸で示されている各点は、複数のインクジェットヘッドをサンプルとして、個々のインクジェットヘッドについて、この関係をプロットしたものである。図4によれば、算出された印刷インク用駆動電圧Vh1が適正駆動電圧に近いものとなっていることが確認できる。なお、白丸で示される各点は、適正駆動電圧と検査インク用駆動電圧との差分と、印刷インクを用いて基準重量のインク滴3をインクジェットヘッドから吐出させたときの当該インクジェットヘッドの駆動電圧の測定値との関係を示すものである。また、四角で示される各点は、適正駆動電圧と、後述する変形例の補正式を用いて算出した印刷インク用駆動電圧Vh1との差分と、印刷インクを用いて基準重量のインク滴3をインクジェットヘッドから吐出させたときの当該インクジェットヘッドの駆動電圧の測定値との関係を示している。
【0067】
また、本例によれば、インクジェットヘッド1を駆動する駆動電圧Vhの設定は、インクジェットヘッド1が搭載されるプリンター本体11に対して行なわれる。従って、異なる印刷インクを用いる複数のプリンター10の機種の間でインクジェットヘッド1として共通のものを用いている場合に、インクジェットヘッド1を搭載するプリンター10の機種が予め想定していた印刷インクとは異なる物性値を備える別の印刷インクを使用する機種に変更されても、インクジェットヘッド1に対する駆動電圧Vhを設定し直す必要がない。よって、複数の機種の間でインクジェットヘッド1を共通化することが容易となる。
【0068】
さらに、本例では、検査インクを用いて測定したインクジェットヘッド1の検査インク用駆動電圧Vh0に基づいて印刷インクを用いた場合の印刷インク用駆動電圧Vh1を算出しているので、物性値の異なる印刷インクを使用する機種が複数ある場合でも、プリンター本体11に搭載しておく補正式をこのプリンター10で用いられる印刷インクに対応するものとしておくだけで、プリンター本体11に搭載されるインクジェットヘッド1の駆動電圧Vhをインク吐出特性の個体差が印刷結果に現れることを抑制するものに設定できる。この結果、物性値の異なる印刷インクを使用する複数のプリンター10の機種において、ヘッド組立検査動作および駆動電圧設定動作を共通化することができ、組立検査動作を行うための機器、および、検査用インクを共通化することができる。
【0069】
また、本例では、プリンター組立検査動作のステップST22においてフラッシング動作時のフラッシング駆動電圧VhPFLを設定している。従って、フラッシング動作についても、インクジェットヘッド1のインク吐出特性の個体差を吸収することができる。この結果、インク吐出特性の個体差に拘わらず所望のフラッシング動作を行うことができるので、インクジェットヘッド1の安定したメンテナンスを行うことができる。
【0070】
さらに、本例では、印刷用インクよりも廉価な検査インクを用いて取得した検査インク用駆動電圧Vh0に基づいて、印刷インクを用いた場合の印刷インク用駆動電圧Vh1を算出しているので、駆動電圧Vhを設定するためのコストを抑えることができる。
【0071】
また、本例では、インクジェットヘッド1は、ヘッド組立検査動作のステップST13によって測定された検査インク用駆動電圧Vh0の情報、ヘルムホルツ共振振動の周期Tcの情報および検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0の情報を担持する情報担持部12を備えている。一方、インクジェットヘッド1が搭載されるプリンター本体11は、情報担持部12に担持されている検査インク用駆動電圧Vh0の情報、ヘルムホルツ共振振動の周期Tcの情報および検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0の情報の入力を受け付け可能な情報受付部22を備えており、この情報受付部22に検査インク用駆動電圧Vh0の情報、ヘルムホルツ共振振動の周期Tcの情報および検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0の情報が入力されると、駆動電圧設定部23が印刷インク用駆動電圧Vh1および印刷インク用フラッシング駆動電圧Vh2を算出して、印刷インク用駆動電圧Vh1を印刷時における駆動電圧Vhに設定する。また、印刷インク用フラッシング駆動電圧Vh2をフラッシング駆動電圧VhPFLに設定する。従って、インクジェットヘッド1をプリンター本体11に搭載してプリンター10を構成する際に、インクジェットヘッド1からプリンター本体11に検査インク用駆動電圧Vh0の情報、ヘルムホルツ共振振動の周期Tcの情報および検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0の情報を受け渡すことが容易であり、インクジェットヘッド1の駆動電圧Vhおよびフラッシング駆動電圧VhPFLの設定を簡易に行うことができる。
【0072】
(変形例)
上記の例では、測定工程において検査インク用駆動電圧Vh0およびヘルムホルツ共振振動の周期Tcを測定しているが、検査インク用駆動電圧Vh0のみを測定し、この検査インク用駆動電圧Vh0に基づいて補正式を用いて印刷インク用駆動電圧Vh1を算出することもできる。
【0073】
この場合、補正式は、複数のインクジェットヘッド1について印刷インク用駆動電圧Vh1および検査インク用駆動電圧Vh0を測定して、測定された印刷インク用駆動電圧Vh1および検査インク用駆動電圧Vh0の間に成立している相関関係から得られたものである。本例の補正式は以下のとおり表される。なお、本例において、補正式の定数a、bは、上記の例の補正式の定数a、bと同じ値である。
Vh1=a×Vh0+b (a、bは定数)
【0074】
変形例の補正式を用いて検査インク用駆動電圧Vh0を補正して印刷インク用駆動電圧Vh1を算出した場合でも、図4の四角で示される各点に示すように、算出された印刷インク用駆動電圧Vh1が適正駆動電圧に近いものとなる。従って、検査インクを用いて測定したインクジェットヘッド1の検査インク用駆動電圧Vh0と変形例の補正式を用いて算出した印刷インク用駆動電圧Vh1を駆動電圧Vhとしてインクジェットヘッド1を駆動することにより、インクジェットヘッド1のインク吐出特性の個体差が印刷結果に現れることを抑制することができる。
【0075】
(その他の実施の形態)
なお、インクジェットヘッド組立検査動作が行なわれる検査環境と、プリンター10が製品として出荷された後に実際に使用される使用環境とが相違する場合には、プリンター本体11に搭載しておく補正式は、複数のインクジェットヘッド1について、予め使用環境の相違を反映させた状態で印刷インク用駆動電圧Vh1、検査インク用駆動電圧Vh0およびヘルムホルツ共振振動の周期Tcを測定して、測定された印刷インク用駆動電圧Vh1、検査インク用駆動電圧Vh0およびヘルムホルツ共振振動の周期Tcの間に成立している相関関係を表したものとすることができる。検査環境と使用環境の相違としては、例えば、水頭圧の相違、インクジェットヘッド1の印刷姿勢の相違などがある。
【0076】
ここで、ヘッド組立検査動作において、インクジェットヘッド1から吐出させるインク滴3の基準重量(第1基準重量)と、プリンター10が製品として出荷された後に実際に使用される際の印刷動作においてインクジェットヘッド1から吐出させるインク滴3の基準重量(第2基準重量)が本例のように相違している場合には、補正式は、複数のインクジェットヘッド1について、予めインク滴の基準重量(第1基準重量と第2基準重量)の相違を反映させた状態で、印刷インク用駆動電圧Vh1、検査インク用駆動電圧Vh0およびヘルムホルツ共振振動の周期Tcを測定して、測定された印刷インク用駆動電圧Vh1、検査インク用駆動電圧Vh0およびヘルムホルツ共振振動の周期Tcの間に成立している相関関係を表したものとなっている。
【0077】
また、インクジェットヘッド1の検査動作と、プリンター10が製品として出荷された後に実際に使用される際の印刷動作でインクジェットヘッド1を駆動する駆動波形Pが異なるものとされている場合には、複数のインクジェットヘッド1について、予めこの駆動波形Pの相違を反映させた状態で、印刷インク用駆動電圧Vh1、検査インク用駆動電圧Vh0およびヘルムホルツ共振振動の周期Tcを測定して、測定された印刷インク用駆動電圧Vh1、検査インク用駆動電圧Vh0およびヘルムホルツ共振振動の周期Tcの間に成立している相関関係を表したものとすることができる。
【0078】
さらに、上記の例では、補正式を用いて印刷インク用駆動電圧Vh1を算出しているが、測定された印刷インク用駆動電圧Vh1と、検査インク用駆動電圧Vh0およびヘルムホルツ共振振動の周期Tcとの間に成立している相関関係をテーブルの形態でプリンター本体11に搭載しておき、プリンター組立検査動作でのステップST22では、検査インク用駆動電圧Vh0およびヘルムホルツ共振振動の周期Tcに基づいてテーブルを参照して、印刷インク用駆動電圧Vh1を算出(取得)してもよい。また、印刷インク用フラッシング駆動電圧Vh2を算出する際にも、同様に、フラッシング駆動電圧設定用補正式に替えて、印刷インク用フラッシング駆動電圧Vh2と、検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0との間に成立している相関関係をテーブルの形態でプリンター本体11に搭載しておき、検査インク用フラッシング駆動電圧VhPFL0に基づいてこのテーブルを参照して、印刷インク用フラッシング駆動電圧Vh2を算出(取得)してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1・・インクジェットヘッド、2・・インクノズル、2a・・ノズル開口、3・・インク滴、4・・圧力発生室、4a・・底面、4b・・インク供給口、5・・リザーバー、6・・ヘッド内流路、7・・薄板、8・・駆動電極、9・・圧電振動板、10・・プリンター、11・・プリンター本体、12・・情報担持部、14・・インク供給機構、15・・記録紙搬送機構、16・・ヘッド移動機構、17・・ヘッドメンテナンス機構、20・・印刷制御部、21・・補正式搭載部、22・・情報受付部、23・・駆動電圧設定部、t・・パルス幅、Tc・・ヘルムホルツ共振振動の周期、Vh・・駆動電圧、Vh0・・検査インク用駆動電圧、VhPFL0・・検査インク用フラッシング駆動電圧、Vh1・・印刷インク用駆動電圧、Vh2・・印刷インク用フラッシング駆動電圧、VhPFL・・フラッシング駆動電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドに検査インクを供給して、前記インクジェットヘッドから第1基準重量のインク滴を吐出させる検査インク用駆動電圧を測定により取得する測定工程と、
前記インクジェットヘッドをプリンター本体に搭載してプリンターを構成するとともに、前記検査インク用駆動電圧に基づいて印刷インクを前記インクジェットヘッドに供給したときに当該インクジェットヘッドから第2基準重量のインク滴を吐出させる印刷インク用駆動電圧を算出して、この印刷インク用駆動電圧を前記インクジェットヘッドの印刷動作時の駆動電圧として前記プリンター本体に設定する設定工程と、
を含むことを特徴とするインクジェットヘッドの駆動電圧設定方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記設定工程では、前記プリンター本体に予め記憶保持されている補正式と前記検査インク用駆動電圧に基づいて印刷インク用駆動電圧を算出することを特徴とするインクジェットヘッドの駆動電圧設定方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記測定工程よりも前に、複数のインクジェットヘッドについて前記印刷インク用駆動電圧および前記検査インク用駆動電圧を測定して、測定された前記印刷インク用駆動電圧および前記検査インク用駆動電圧の間に成立している相関関係を前記補正式として求め、この補正式を前記プリンター本体に記憶保持させておくことを特徴とするインクジェットヘッドの駆動電圧設定方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記補正式は、前記印刷インク用駆動電圧をVh1とし、前記検査インク用駆動電圧をVh0としたときに以下のとおり表されることを特徴とするインクジェットヘッドの駆動電圧設定方法。
Vh1=a×Vh0+b (a、bは定数)
【請求項5】
請求項1において、
前記測定工程では、前記検査インク用駆動電圧とともに、前記インクジェットヘッドが備える圧力発生室のヘルムホルツ共振振動の周期を測定して取得し、
前記設定工程では、前記検査インク用駆動電圧および前記ヘルムホルツ共振振動の周期に基づいて前記印刷インク用駆動電圧を算出することを特徴とするインクジェットヘッドの駆動電圧設定方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記設定工程では、前記プリンター本体に予め記憶保持されている補正式と、前記検査インク用駆動電圧および前記ヘルムホルツ共振振動の周期に基づいて印刷インク用駆動電圧を算出することを特徴とするインクジェットヘッドの駆動電圧設定方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記測定工程よりも前に、複数のインクジェットヘッドについて前記印刷インク用駆動電圧、前記検査インク用駆動電圧および前記ヘルムホルツ共振振動の周期を測定して、測定された前記印刷インク用駆動電圧と、前記検査インク用駆動電圧およびヘルムホルツ共振振動の周期との間に成立している相関関係を前記補正式として求め、この補正式を前記プリンター本体に記憶保持させておくことを特徴とするインクジェットヘッドの駆動電圧設定方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記補正式は、前記印刷インク用駆動電圧をVh1、前記検査インク用駆動電圧をVh0、前記ヘルムホルツ共振振動の周期をTcとしたときに、以下のとおり表されることを特徴とするインクジェットヘッドの駆動電圧設定方法。
Vh1=a×Vh0+b+c×Tc (a、b、cは定数)
【請求項9】
請求項1ないし8のうちのいずれかの項において、
前記測定工程では、前記インクジェットヘッドから第3基準重量のインク滴を吐出させる検査インク用フラッシング駆動電圧を測定により取得し、
前記設定工程では、前記検査インク用フラッシング駆動電圧に基づいてメンテナンスのために前記インクジェットヘッドからインク滴を吐出させるフラッシング動作を行うための印刷インク用フラッシング駆動電圧を算出して、この印刷インク用フラッシング駆動電圧を前記インクジェットヘッドのフラッシング動作時のフラッシング駆動電圧として前記プリンター本体に設定することを特徴とするインクジェットヘッドの駆動電圧設定方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記設定工程では、前記プリンター本体に予め記憶保持されているフラッシング駆動電圧設定用補正式と、前記検査インク用フラッシング駆動電圧に基づいて前記印刷インク用フラッシング駆動電圧を算出することを特徴とするインクジェットヘッドの駆動電圧設定方法。
【請求項11】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項に記載の駆動電圧設定方法によって駆動電圧が設定されるインクジェットヘッドであって、
前記測定工程において取得された前記検査インク用駆動電圧の情報を担持する情報担持部を備えていることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項12】
請求項5ないし8のうちのいずれかの項に記載の駆動電圧設定方法によって駆動電圧が設定されるインクジェットヘッドであって、
前記測定工程において取得された前記検査インク用駆動電圧の情報および前記ヘルムホルツ共振振動の周期の情報を担持する情報担持部を備えていることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項13】
請求項1ないし10のうちのいずれかの項に記載の駆動電圧設定方法によって駆動電圧が設定されるインクジェットヘッド。
【請求項14】
請求項2ないし4のうちのいずれかの項に記載の駆動電圧設定方法によって駆動電圧が設定されるインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを搭載するプリンター本体と、を有し、
前記インクジェットヘッドは、
前記測定工程において取得された前記検査インク用駆動電圧の情報を担持する情報担持部を備えており、
前記プリンター本体は、
前記インクジェットヘッドに前記印刷インクを供給するインク供給機構と、
前記インクジェットヘッドに前記駆動電圧を印加することにより当該インクジェットヘッドから前記第2基準重量のインク滴を吐出させて印刷を行う印刷制御部と、
前記補正式を記憶保持している補正式記憶保持部と、
前記補正式および前記検査インク用駆動電圧の情報を用いて前記印刷インク用駆動電圧を算出して、この印刷インク用駆動電圧を前記印刷制御部の前記駆動電圧として設定する駆動電圧設定部と、
を有することを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項15】
請求項14において、
前記プリンター本体は、前記情報担持部に担持されている前記検査インク用駆動電圧の情報の入力を受け付け可能な情報受付部を更に有し、
前記駆動電圧設定部は、前記情報受付部に前記検査インク用駆動電圧の情報が入力されると、前記補正式および前記検査インク用駆動電圧の情報を用いて前記印刷インク用駆動電圧を算出して、この印刷インク用駆動電圧を前記印刷制御部の前記駆動電圧として設定することを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項16】
請求項5ないし8のうちのいずれかの項に記載の駆動電圧設定方法によって駆動電圧が設定されるインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを搭載するプリンター本体と、を有し、
前記インクジェットヘッドは、
前記測定工程において取得された前記検査インク用駆動電圧の情報および前記ヘルムホルツ共振振動の周期の情報を担持する情報担持部を備えており、
前記プリンター本体は、
前記インクジェットヘッドに前記印刷インクを供給するインク供給機構と、
前記インクジェットヘッドに前記駆動電圧を印加することにより当該インクジェットヘッドから前記第2基準重量のインク滴を吐出させて印刷を行う印刷制御部と、
前記補正式を記憶保持している補正式記憶保持部と、
前記補正式、前記検査インク用駆動電圧の情報および前記ヘルムホルツ共振振動の周期の情報を用いて前記印刷インク用駆動電圧を算出して、この印刷インク用駆動電圧を前記印刷制御部の前記駆動電圧として設定する駆動電圧設定部と、
を有することを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項17】
請求項16において、
前記プリンター本体は、前記情報担持部に担持されている前記検査インク用駆動電圧の情報および前記ヘルムホルツ共振振動の周期の情報の入力を受け付け可能な情報受付部を更に有し、
前記駆動電圧設定部は、前記情報受付部に前記検査インク用駆動電圧の情報および前記ヘルムホルツ共振振動の周期の情報が入力されると、前記補正式、前記検査インク用駆動電圧の情報および前記ヘルムホルツ共振振動の周期の情報を用いて前記印刷インク用駆動電圧を算出して、この印刷インク用駆動電圧を前記印刷制御部の前記駆動電圧として設定することを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項18】
請求項15または17において、
前記情報担持部は、メモリーであり、
前記情報受付部は、前記インクジェットヘッドが前記プリンター本体に搭載されると、前記メモリーに接続されて当該メモリーの内容を読み出し可能となることを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項19】
請求項14ないし18のうちのいずれかの項において、
前記印刷制御部は、前記インクジェットヘッドにフラッシング駆動電圧を印加することによりメンテナンスのために当該インクジェットヘッドからインク滴を吐出させるフラッシング動作を行い、
前記補正式記憶保持部には、フラッシング駆動電圧設定用補正式が記憶保持されており、
前記駆動電圧設定部は、前記情報受付部に検査インク用フラッシング駆動電圧の情報が入力されると、前記フラッシング駆動電圧設定用補正式および前記検査インク用フラッシング駆動電圧の情報を用いて印刷インク用フラッシング駆動電圧を算出して、この印刷インク用フラッシングを前記印刷制御部の前記フラッシング駆動電圧として設定することを特徴とするインクジェットプリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−75435(P2013−75435A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216714(P2011−216714)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】