説明

インクジェットヘッド及びインクジェットヘッド用アクチュエータ

【課題】簡単な構造でノズルの高解像度化を実現できるインクジェットヘッド及びインクジェットヘッド用アクチュエータを提供する。
【解決手段】インクジェットヘッド11は、複数のノズル12を有するノズルプレート13と、複数のノズル12に対応して設けられる複数の圧力室14と、複数の圧力室14にインクを送るインク流入部16と、複数の圧力室14からインクを回収するインク流出部17と、複数の圧力室14同士を仕切るとともに、圧力室14内のインクに圧力を加えてノズル12からインクを吐出させる仕切片26と、を具備する。圧力室14は、複数の仕切片26を櫛歯状に有した2つの圧電部材31を対向配置した間の位置に形成される。一方の圧電部材31の複数の仕切片26と、他方の圧電部材31の複数の仕切片26とは、互いにオーバーラップして配置され、前記圧電部材31のインク吐出方向における端面に電極28が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク吐出用の複数のノズルを有するインクジェットヘッド及びインクジェットヘッド用アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、駆動素子として圧電アクチュエータを用いたインクジェットヘッドが開示されている。このインクジェットヘッドは、棒状のPZT板に対して複数の溝を加工してなる圧電アクチュエータを形成し、この圧電アクチュエータで圧力室を形成する。また、圧力室に対向する位置にノズルプレートが存在し、圧力室で加圧されたインクがノズルプレートのノズルから吐出される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この圧力室となる圧電アクチュエータは、例えば、円盤状のダイヤモンドブレードを利用して切削等の手段で溝を加工することで形成される。この溝は、PZT板の高さ方向の寸法に対して、例えば半分程度の寸法で形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年このようなインクジェットヘッドの高解像度化の要請が高まっており、さらに解像度を上げるため、インクジェットヘッド内により高密度に圧力室およびノズルを形成する必要がある。このため、溝を形成するのにさらに薄型のダイヤモンドブレードを用いる必要があるが、ダイヤモンドブレードの薄型化にも限界がある。また、溝の深さを所定の範囲内で厳密に管理する必要があり、製品の歩留り向上の妨げとなっていた。
【0005】
本発明の目的は、簡単な構造でノズルの高解像度化を実現できるインクジェットヘッド及びインクジェットヘッド用アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係るインクジェットヘッドは、櫛歯状に突出した複数の仕切片をそれぞれ有するとともに対向配置された2つの圧電部材を具備し、一方の前記圧電部材の複数の仕切片と、他方の前記圧電部材の複数の仕切片とは、互いにオーバーラップして配置され、前記圧電部材のインク吐出方向における端面に電極が形成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡単な構造でノズルの高解像度化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係るインクジェットヘッドを示す斜視図。
【図2】図1に示すインクジェットヘッドのF2−F2線に沿った断面図。
【図3】図1に示すインクジェットヘッドを分解して示した斜視図。
【図4】図3に示すインクジェットヘッドの圧電部材を示した斜視図。
【図5】図2に示すインクジェットヘッドのF5−F5線に沿った断面図。
【図6】図1に示すインクジェットヘッドの製造工程の一部を示す斜視図。
【図7】図1に示すインクジェットヘッドの駆動基板を水平方向に切断して示した断面図。
【図8】第2の実施形態に係るインクジェットヘッドを分解して示す斜視図。
【図9】図8に示すインクジェットヘッドの縦方向に沿った断面図。
【図10】図8に示すインクジェットヘッドの駆動基板を水平方向に切断して示した断面図。
【図11】第3の実施形態にかかるインクジェットヘッドの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
以下に、図1から図7を参照して、インクジェットヘッドの第1の実施形態について説明する。図中矢印X,Y,Zはそれぞれ互いに直交する3方向を示す。また、各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。
【0010】
本実施形態のインクジェットヘッドは、いわゆるシェアモードシェアドウォール型のインクジェットヘッドであり、内部に作りこまれた圧力室内でインクを常時循環させるインク循環型のものである。
【0011】
図1から図3に示すように、インクジェットヘッド11は、複数のノズル12を有するノズルプレート13と、複数のノズル12にそれぞれ対応するように設けられる複数の圧力室14と、複数の圧力室14にそれぞれ連通している共通液室15と、共通液室15を介して各圧力室14にインクを供給するインク流入部16と、共通液室15を介して各圧力室14からインクを回収するインク流出部17と、インク流入部16、インク流出部17および共通液室15がそれぞれ作りこまれた基板18と、基板18の中央部に挟み込まれるように設けられたプリント回路板21と、を備えている。インク流入部16およびインク流出部17は、圧力室14の直上の位置に設けられている。
【0012】
インク流入部16は、円筒状をなした流入ピン22と、基板18に形成されたスリット状の流入口23と、を有している。また、インク流出部17は、円筒状をなした流出ピン24と、基板18に形成されたスリット状の流出口25と、を有している。
【0013】
インクジェットヘッド11は、さらに、複数の圧力室14同士の間を仕切っている仕切片26と、圧力室14および仕切片26の周囲を取り囲む枠部27と、仕切片26の上下面に一対に設けられる電極28と、を有している。仕切片26は、圧力室14内のインクに圧力を加えて、ノズル12からインクを吐出させる駆動部(インクジェットヘッド用アクチュエータ)として機能する。また、インクジェットヘッド11は、圧力室14の内面を覆って圧電部材31および電極28を保護する図示しない保護膜を有している。
【0014】
プリント回路板21は、プリント配線板32と、プリント配線板32上に設けられるとともに仕切片26の動作を駆動する複数のドライバIC33と、プリント配線板32上に設けられるとともにドライバIC33と電極28とを接続する複数の配線34と、を有している。プリント回路板21上の配線34は、仕切片26に対して1対1で対応するようにプリント配線板32上に形成されている。プリント回路板21は、さらに配線34と連続して形成された図示しない電気接続部を有している。電気接続部は、プリント配線板32の例えば端部に設けられており、仕切片26の上下面の電極28と電気的に接続するために用いられる。
【0015】
図3から図5、図7に示すように、圧力室14は、2つの圧電部材31を対向配置させた間の位置に設けられている。圧電部材31は、全体として櫛型の形状をなし、櫛歯状に仕切片26が並んでいる。
【0016】
圧電部材31は、基部35と、基部35から突出する複数の仕切片26と、仕切片26同士の間に設けられる複数の溝部36と、仕切片26の先端に設けられる先端部26Aと、を有している。一方の圧電部材31の複数の仕切片26の先端部26Aと、他方の圧電部材31の基部35との間には、所定の隙間Dが設けられている。
【0017】
圧電部材31は、さらに、かぎ状部41を有しており、かぎ状部41は、複数の仕切片26よりも外側の位置で基部35の長手方向Lの両端部から突出している。圧電部材31の基部35およびかぎ状部41によって、圧力室14および仕切片26の周囲を取り囲む枠部27を構成している。
【0018】
一方の圧電部材31の複数の仕切片26と、他方の圧電部材31の複数の仕切片26とは、互い違いになっている。より具体的には、図3、図7に示すように、圧電部材31は、その長手方向Lと直交する幅方向Wにおいて、互いに一部オーバーラップして配置されている。また、図4に示すように、溝部36の幅3dは、例えば、仕切片26の幅dの約3倍に形成されている。
【0019】
本実施形態の圧電部材31は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)製の2枚の板状またはシート状の圧電板31a,31bが、厚み方向に積層されて張り合わせて形成されている。すなわち、上側の上半部42aを構成する圧電板31aと、下側の下半部42bを構成する圧電板31bとから構成されている。上半部42aと下半部42bは、矢印に示すように、分極軸はインク吐出方向と交差するとともにノズル面と平行に向いており、上側と下側とで分極軸が反対(逆)方向を向いている。
【0020】
ここで、圧電部材はPZTを用いたが、LiNbO3、LiTaO3などの圧電単結晶材料やKNbO3などの無鉛圧電材料などを用いてもよい。
【0021】
図5を参照して、本実施形態のインクジェットヘッド11の動作について説明する。圧力室14にインクが満たされた状態で、インクジェットヘッド11を搭載した印刷装置に対してユーザが印刷開始を指示すると、印刷装置の制御部は、インクジェットヘッド11に対して印字信号をドライバIC33に出力する。印刷信号を受けたドライバIC33は、駆動パルス電圧を電極28に印加する。これにより、左右一対の仕切片26は、シェアモード変形を行って湾曲するように互いに離反する。そして、これらを初期位置に復帰させ、さらに図5に2点鎖線で示すように互いに近づくように変形させることで、圧力室14内の圧力を高めることで、ノズル12から、図中Z軸に沿うインク吐出方向に向かって、インク滴が勢い良く吐出される。
【0022】
続いて、図6を参照して、本実施形態のインクジェットヘッド11の製造工程について説明する。まず、平板状の圧電部材31を厚み方向(Z軸方向)に複数枚重ねて配置させる。そして、ダイヤモンドブレードを利用して、複数枚の圧電部材31に対して同時に切削加工を行って、一括して溝部36を形成する。この溝部36の幅は、このときに同時に形成される仕切片26の幅の3倍の寸法である。
【0023】
この圧電部材31の上下面に対して例えばめっき加工を施して電極28を形成する。電極28は仕切り片26のインク吐出方向両端面である上下面に形成すればよいため、仕切り片26の側壁に形成する場合に比べて形成しやすい。
【0024】
さらに、圧力室14の内面を覆う保護膜を形成し、電極28および保護膜の形成不良の不具合の発生を低減する。
【0025】
また、製造方法として、機械加工の前に、圧電部材31の上下面に電極28を形成し、電極28が形成された後に機械加工により複数の仕切り片26を有する形状に形成してもよい。
【0026】
こうして電極28および保護膜が形成された圧電部材31を2個対向させて、仕切片26同士が互い違いになるようにする。このとき、一対の圧電部材31同士は、かぎ状部41を介して突き当てられて接着される。これによって、2つの圧電部材31が一体になった駆動基板43が形成される。この駆動基板43の一方の面に対して、ノズルプレート13が接着される。また、駆動基板43の他方の面に対してドライバIC33が実装され配線34が形成されたプリント回路板21が接着される。プリント回路板21は、電気接続部の位置が電極28の位置に合うように位置合わせして駆動基板43に接着される。この駆動基板43に対して、インク流入部16、インク流出部17、共通液室15を作りこんだ基板18が接着される。ノズルプレート13に例えばレーザ加工を施して複数のノズル12を形成し、インクジェットヘッド11が完成する。
【0027】
第1の実施形態によれば、インクジェットヘッド11は、複数のノズル12を有するノズルプレート13と、複数のノズル12に対応して設けられる複数の圧力室14と、圧力室14にインクを送るインク流入部16と、圧力室14からインクを回収するインク流出部17と、複数の圧力室14同士を仕切るとともに、圧力室14内のインクに圧力を加えてノズル12からインクを吐出させる仕切片26と、を具備し、圧力室14は、複数の仕切片26を櫛歯状に有した2つの圧電部材31を対向配置した間の位置に形成され、一方の圧電部材31の複数の仕切片26と、他方の圧電部材31の複数の仕切片26とは、互いにオーバーラップして配置され、圧電部材31のインク吐出方向における端面に電極28が形成されている。
【0028】
この構成によれば、一方の圧電部材31の仕切片26同士の間に、他方の圧電部材31の仕切片26を配置することができる。これによって、仕切片26同士の間の溝部分の幅を変更することなく、約2倍細かいピッチで圧力室14およびノズル12を配置することができる。このため、簡単な構造でインクジェットヘッド11の高解像度化を図ることができる。また、インクジェットヘッドを高解像度化するために、仕切片26の幅寸法も極端に薄くする必要がない。このため、仕切片26に十分な剛性を確保でき、剛性不足に起因してインクがうまく吐出されない不吐出や、剛性不足に起因して駆動していないノズルで誤ってインクが吐出される誤吐出を防止できる。
【0029】
また、圧電部材31は、圧力室14および仕切片26の周囲を取り囲む枠部27を兼ねている。この構成によれば、枠部27を仕切片26とは別体に形成する場合に比して、構造を簡略化して、組み立て工数を削減することができる。
【0030】
インク流入部16およびインク流出部17は、圧力室14の直上に設けられる。この構成によれば、インク流入部16およびインク流出部17をコンパクトに配置して、インクジェットヘッド11全体としても小型化を図ることができる。
【0031】
圧電部材31は、複数の仕切片26を支持する基部35と、複数の仕切片26の先端に設けられる先端部26Aと、を含み、一方の圧電部材31の複数の仕切片26の先端部26Aと、他方の圧電部材31の基部35との間には、所定の隙間Dが設けられる。一般に、1つのノズルで高速で連続的にインクの吐出を行うと、そのノズルおよび圧力室に対してインクの供給が間に合わなくなる事態を生ずることがある。上記の構成によれば、隙間Dを介して隣接する圧力室14同士が連通されるため、圧力室14同士の間でインクの循環がよくなり、例えば1つのノズル12で高速で連続的にインクの吐出を行ったとしても、そのノズルおよび圧力室でインク切れを生ずることを防止できる。
【0032】
なお、本実施形態のように隙間Dが設けられていても、圧力室14内において吐出圧力が低下することはない。それは、図7に示すように、圧力室14と、隙間Dが設けられる領域との間では、音響的インピーダンスが異なっており、圧力室14と隙間Dが設けられる領域との間の境界Bにおいて、インク中を伝わる圧力振動波は圧力室14内に向けて反射されるからである。このため、本実施形態のインクジェットヘッド11では、この境界Bに仕切板を設ける必要がなく、その分構造を簡略化することができる。
【0033】
さらに、本実施形態の構成によれば、電極28を、圧電部材31のインク吐出方向(Z方向)端面である上下面に形成したことにより、電極28が圧力室14内に露出する面積を小さくすることができる。このため圧力室14の内面を覆う保護処理を簡易にすることができるとともに、絶縁性の低いインクを適用することが可能となる。
【0034】
また、圧電部材31の主面となる上下面に電極28を形成するため、仕切片26を形成する加工の前に電極28を形成することが可能である。したがって、加工済みのものにパターニングするのではなく、母材となる板状の圧電部材31にパターニングして電極28を形成すればよいので、特殊な機械を用いることなく、容易に電極28を形成できる。
【0035】
[第2の実施形態]
続いて、図8から図10を参照して、インクジェットヘッドの第2の実施形態について説明する。第2の実施形態のインクジェットヘッド51は一方の圧電部材31の仕切片52が他方の圧電部材31の基部35に突き当たっている点で第1の実施形態のものと異なっているが、他の部分は第1の実施形態と共通している。このため、主として異なる部分について説明し、共通する部分については共通の符号を付して説明を省略する。
【0036】
第2の実施形態のインクジェットヘッド51は、図1に示すものと同様の外観を有している。すなわち、図8から図10に示すように、インクジェットヘッド51は、ノズルプレート13と、複数の圧力室14と、共通液室15と、インク流入部16と、インク流出部17と、インク流入部16、基板18と、プリント回路板21と、を備えている。
【0037】
また、インクジェットヘッド51は、さらに、圧力室14内のインクに圧力を加えてノズル12からインクを吐出させる駆動部である仕切片52と、圧力室14および仕切片52の周囲を取り囲む枠部27と、仕切片52の上下面に設けられる電極28と、圧力室14の内面を覆う図示しない保護膜と、を有している。
【0038】
圧力室14は、仕切片52が櫛歯状に並んだ2つの圧電部材31を対向配置させた間の位置に形成されている。圧電部材31は、基部35と、基部35から突出する複数の仕切片52と、仕切片52同士の間に設けられる複数の溝部36と、仕切片52の先端に設けられる先端部52Aと、基部35の長手方向L両端部から突出するかぎ状部41と、を有している。一方の圧電部材31の複数の仕切片52の先端部52Aは、他方の圧電部材31の基部35に突き当てられている。
【0039】
一方の圧電部材31の複数の仕切片52と、他方の圧電部材31の複数の仕切片52とは、互い違いになっており、幅方向Wにおいて互いにオーバーラップして配置されている。また、溝部36の幅は、例えば、仕切片52の幅の3倍の幅で形成されている。
【0040】
本実施形態の圧電部材31は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)製の2枚の板状またはシート状の圧電板31a,31bが、厚み方向に積層されて張り合わせて形成されている。すなわち、上側の上半部42aを構成する圧電板31aと、下側の下半部42bを構成する圧電板31bとから構成されている。上半部42aと下半部42bは、矢印に示すように、分極軸はインク吐出方向と交差するとともにノズル面と平行に向いており、上側と下側とで分極軸が反対(逆)方向を向いている。
【0041】
ここで、圧電部材はPZTを用いたが、LiNbO3、LiTaO3などの圧電単結晶材料やKNbO3などの無鉛圧電材料などを用いてもよい。
【0042】
図8を参照して、本実施形態のインクジェットヘッド51の動作について説明する。印刷装置の制御部から印刷信号を受けたドライバIC33は、駆動パルス電圧を電極28に印加する。これにより、図8に2点鎖線で示すように、左右一対の仕切片52は、シェアモード変形を行って湾曲するように互いに離反する。そして、これらを初期位置に復帰させて圧力室14内の圧力を高めることで、下方のノズル12からインク滴が勢い良く吐出される。
【0043】
第2の実施形態によれば、圧電部材31は、複数の仕切片52を支持する基部35と、複数の仕切片52の先端に設けられる先端部52Aと、を含み、一方の圧電部材31の複数の仕切片52の先端部52Aは、他方の圧電部材31の基部35に突き当たっている。この構成によれば、隙間Dを設けた第1の実施形態のインクジェットヘッド11と同じ大きさのインクジェットヘッド51において、圧力室14の有効幅をより広く確保することができる。このため、第1の実施形態のインクジェットヘッド11に比して幅方向Wの寸法を小さくすることができ、インクジェットヘッド51を小型化することができる。
【0044】
[第3の実施形態]
続いて、図11を参照して、インクジェットヘッドの第3の実施形態について説明する。第3の実施形態のインクジェットヘッド61は、圧電部材31は、2枚の圧電板31a,31bがその間に電極28を介して厚み方向(図中Z方向)に積層されて構成されるとともに上下の分極軸が同じ方向を向く点で第1の実施形態のものと異なっているが、他の部分は第1の実施形態と共通している。このため、主として異なる部分について説明し、共通する部分については共通の符号を付して説明を省略する。
【0045】
第3の実施形態に係るインクジェットヘッド61において、インクジェットヘッド11と同様に、圧力室14は、2つの圧電部材31を対向配置させた間の位置に設けられている。また、圧電部材31は、全体として櫛型の形状をなし、櫛歯状に仕切片26が並んでいる。一方の圧電部材31の複数の仕切片26と、他方の圧電部材31の複数の仕切片26とは、互い違いになっている。
【0046】
本実施形態の圧電部材31は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)製の2枚の板状またはシート状の圧電板31a,31bが、その間に電極28を介在させて、厚み方向に積層されて張り合わせて形成されている。すなわち、上側の上半部42aを構成する圧電板31aと、下側の下半部42bを構成する圧電板31bとの間の厚み方向中央部に、電極28が配されている。上半部42aと下半部42bは、矢印に示すように、分極軸はインク吐出方向と交差するとともにノズル面と平行に向いており、上側と下側とで分極軸が同方向を向いている。この他の構成は第1の実施形態に係るインクジェットヘッド11と同様である。ここで、圧電部材はPZTを用いたが、LiNbO3、LiTaO3などの圧電単結晶材料やKNbO3などの無鉛圧電材料などを用いてもよい。
【0047】
上記のように構成されたインクジェットヘッド61では、圧力室14にインクが満たされた状態で、インクジェットヘッド61を搭載した印刷装置に対してユーザが印刷開始を指示すると、印刷装置の制御部は、インクジェットヘッド61に対して印字信号をドライバIC33に出力する。印刷信号を受けたドライバIC33は、駆動パルス電圧を電極28に印加する。これにより、左右一対の仕切片26は、シェアモード変形を行って湾曲するように互いに離反する。そして、これらを初期位置に復帰させ、さらに図11に2点鎖線で示すように互いに近づくように変形させることで、圧力室14内の圧力を高めることで、ノズル12から図中Z軸に沿うインク吐出方向に向かって、インク滴が勢い良く吐出される。
【0048】
本実施形態にかかるインクジェットヘッド61においても、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、圧電部材31の厚み方向中央部に電極28を配するとともに上半部42aと下半部42bの分極方向を揃えたことにより、動作に必要な電圧を低く抑えることができる。すなわち、動作に必要な電圧は電極28の距離の物理的な大きさによって決まるため、電極28を上下面に形成する場合には、圧電部材31の厚み方向の寸法に応じて電圧が決まるが、本実施形態においては2枚の圧電板31a,31bの間にさらに電極28を配することにより、電極28間の距離を半分に短くして必要な電圧を半減することが可能となる。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、上記実施形態においては
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0050】
11…インクジェットヘッド、12…ノズル、13…ノズルプレート、14…圧力室、2
6…仕切片、26A…先端部、27…枠部、31…圧電部材、31a,31b…圧電板、D…隙間、51…インクジェットヘッド、52…仕切片、52A…先端部。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0051】
【特許文献1】特表2002−529289号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有するノズルプレートと、
前記複数のノズルに対応して設けられる複数の圧力室と、
前記複数の圧力室にインクを送るインク流入部と、前記複数の圧力室からインクを回収するインク流出部と、
前記複数の圧力室同士を仕切るとともに、前記圧力室内のインクに圧力を加えて前記ノズルからインクを吐出させる仕切片と、
を具備し、
前記圧力室は、複数の前記仕切片を櫛歯状に有した2つの圧電部材を対向配置した間の位置に形成され、一方の前記圧電部材の複数の仕切片と、他方の前記圧電部材の複数の仕切片とは、互いにオーバーラップして配置され、
前記圧電部材のインク吐出方向における端面に電極が形成されたことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記圧電部材は、分極軸がインク吐出方向と交差する面に沿うとともに、前記インク吐出方向の一方側と他方側とで互いに前記分極軸の方向が反転し、
前記圧電部材のインク吐出方向における両側の端面にそれぞれ電極が形成されたことを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記圧電部材は、分極軸がインク吐出方向と交差する面に沿って同方向を向く一対の圧電体を有し、
前記圧電部材のインク吐出方向における両端面、及び前記一対の圧電体の間に、それぞれ電極が形成されたことを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記圧電部材は、前記圧力室および前記仕切片の周囲を取り囲む枠部を兼ねるとともに、前記インク流入部および前記インク流出部は、前記圧力室の直上に設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記圧電部材は、前記複数の仕切片を支持する基部と、前記複数の仕切片の先端に設けられる先端部と、を含み、
一方の前記圧電部材の前記複数の仕切片の先端部と、他方の前記圧電部材の基部との間には、所定の隙間が設けられることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記圧電部材は、前記複数の仕切片を支持する基部と、前記複数の仕切片の先端に設けられる先端部と、を含み、
一方の前記圧電部材の前記複数の仕切片の先端部は、他方の前記圧電部材の基部に突き当たっていることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッド。
【請求項7】
櫛歯状に突出した複数の仕切片をそれぞれ有するとともに対向配置された2つの圧電部材を具備し、
一方の前記圧電部材の複数の仕切片と、他方の前記圧電部材の複数の仕切片とは、互いにオーバーラップして配置され、
前記圧電部材のインク吐出方向における端面に電極が形成されたことを特徴とするインクジェットヘッド用アクチュエータ。
【請求項8】
前記圧電部材は、分極軸がインク吐出方向と交差する面に沿って同方向を向く一対の圧電体を有し、
前記圧電部材のインク吐出方向における両端面、及び前記一対の圧電体の間に、それぞれ電極が形成されたことを特徴とする請求項7記載のインクジェットヘッド用アクチュエータ。
【請求項9】
前記圧電部材は、前記圧力室および前記仕切片の周囲を取り囲む枠部を兼ねるとともに、前記インク流入部および前記インク流出部は、前記圧力室の直上に設けられることを特徴とする請求項7記載のインクジェットヘッド用アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−62897(P2011−62897A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214873(P2009−214873)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】