説明

インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置

【課題】本発明は、フリップチップ実装時又はワイヤボンディング実装時の破損を抑制すると共に、集積度を高くしても小型化することが可能なインクジェットヘッド及び該インクジェットヘッドを有するインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【解決手段】複数のノズル111aが形成されているノズル基板111と、ノズル基板111上に配置されている振動板112aの間の空間が、隔壁112bにより隔てられている複数の液室110が形成されているインクジェットヘッド100は、振動板112aの隔壁112bにより隔てられている空間上に、共通電極121、圧電体122及び個別電極123が順次積層されている圧電素子120が形成されていると共に、個別電極123から配線140が引き出されており、配線140と駆動IC150を電気的に接続する電極パッド141が配線140上に形成されており、電極パッド141は、隔壁112b上に延在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンタは、普及が進んでいるが、コストダウン、小型化が要求されている。
【0003】
インクジェットヘッドの製造方法としては、半導体プロセスを利用した微細加工技術であるMEMS(micro electro mechanical systems)技術が取り入れられている。例えば、液室、振動板、圧電素子等の部品をエッチング、スパッタ、スピンコート等の加工方法を用いて、シリコン基板上に形成することができる。これらの部品を小型化したり、部品の配置を工夫したりすることにより、インクジェットヘッドを小型化することができる。その結果、1枚のシリコン基板から多くのインクジェットヘッドを製造することができ、コストダウンすることができる。
【0004】
特許文献1には、ノズル開口に連通する圧力発生室が複数の隔壁によって画成される流路形成基板と、流路形成基板の一方面側に振動板を介して設けられた下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子とを具備するインクジェット式記録ヘッドが開示されている。このとき、流路形成基板の圧電素子側には圧電素子を駆動するための駆動回路が設けられると共に圧電素子と駆動回路とがボンディングワイヤからなる駆動配線を介して接続され、圧電素子と駆動配線との接続部が隔壁に対向する領域に設けられている。
【0005】
しかしながら、圧電素子と駆動配線との接続部が隔壁に対向する領域に設けられているため、集積度を高くすると、インクジェットヘッドを小型化することができないという問題がある。一方、圧電素子と駆動配線との接続部を流路形成基板に形成されたインク流路に対向する領域に設けると、ボンディングワイヤを接合する際に負荷をかけることにより、流路形成基板が破損するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術が有する問題に鑑み、フリップチップ実装時又はワイヤボンディング実装時の破損を抑制すると共に、集積度を高くしても小型化することが可能なインクジェットヘッド及び該インクジェットヘッドを有するインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、複数のノズルが形成されているノズル基板と、前記ノズル基板上に配置されている振動板の間の空間が、隔壁により隔てられている複数の液室が形成されているインクジェットヘッドであって、前記振動板の前記隔壁により隔てられている空間上に、共通電極、圧電体及び個別電極が順次積層されている圧電素子が形成されていると共に、前記個別電極から配線が引き出されており、前記配線と駆動回路を電気的に接続する電極パッドが前記配線上に形成されており、前記電極パッドは、前記隔壁上に延在していることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェットヘッドにおいて、前記電極パッドは、前記液室の長手方向に対して垂直な方向の両側の前記隔壁上に延在していることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のインクジェットヘッドにおいて、前記電極パッドは、フリップチップ実装又はワイヤボンディング実装することにより前記駆動回路と接続されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、前記電極パッドは、ワイヤボンディング実装することにより前記駆動回路と接続されており、前記振動板上に、前記液室に液体を供給する流路が形成されている第二の基板及び前記流路と接続されている第二の液室が形成されている第三の基板が順次設けられており、前記第三の基板上に前記駆動回路が形成されている部材が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、前記液室は、前記電極パッドが形成されている側の端部の幅が、前記電極パッドが形成されていない領域の幅よりも小さいことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、前記共通電極と前記電極パッドの間に、前記液室の長手方向に対して略垂直な方向に前記共通電極に接触して第二の配線が形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、インクジェット記録装置において、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フリップチップ実装時又はワイヤボンディング実装時の破損を抑制すると共に、集積度を高くしても小型化することが可能なインクジェットヘッド及び該インクジェットヘッドを有するインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のインクジェットヘッドの第一の実施形態を示す部分図である。
【図2】図1の電極パッドの配置の変形例を示す上面図である。
【図3】図1の液室の形状の変形例を示す上面図である。
【図4】図1のインクジェットヘッドの変形例を示す部分断面図である。
【図5】本発明のインクジェットヘッドの第二の実施形態を示す部分断面図である。
【図6】図5のインクジェットヘッドの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0017】
図1に、本発明のインクジェットヘッドの第一の実施形態を示す。なお、図1(a)及び(b)は、それぞれ断面図及び上面図であり、図1(b)においては、簡略化のため、絶縁層130、駆動IC150、アルミパッド151、金メッキ152及びはんだバンプ160の記載を省略した。
【0018】
インクジェットヘッド100は、複数の液室110が2列千鳥に形成されている。複数の液室110は、複数のノズル111aが形成されているノズル基板111と、ノズル基板111上に配置されている振動板112a及び隔壁112bを有する液室基板112が、接着剤等を用いて接合されている。即ち、複数の液室110は、ノズル基板111と振動板112aの間の空間が隔壁112bにより隔てられている。
【0019】
ノズル基板111を構成する材料としては、特に限定されないが、ステンレス鋼、ポリイミド等が挙げられる。
【0020】
液室基板112は、SiO膜、Si膜等を含む積層構造を有する振動板112a(エッチストップ層)がスパッタ等により後述する液室110に液体を供給する供給口が形成される領域を除く領域に形成されているシリコン基板をエッチングすることにより形成することができる。
【0021】
液室基板112は、厚さが100μm以下であることが好ましい。
【0022】
振動板112aの厚さは、液室110の幅に応じて、適宜選択される。例えば、液室110の幅が60μm程度である場合、振動板112aの厚さは、1〜3μm程度である。
【0023】
また、振動板112a上に、共通電極121が形成されており、共通電極121の隔壁112bにより隔てられている空間上に、圧電体122及び個別電極123が順次積層されている。即ち、振動板112aの隔壁112bにより隔てられている空間上に、圧電素子120が形成されている。
【0024】
共通電極121を形成する方法としては、特に限定されないが、スパッタ等により、白金及びチタンを成膜する方法が挙げられる。
【0025】
圧電体122を形成する方法としては、特に限定されないが、スパッタ、ゾルゲル法等により、成膜した後、エッチング等によりパターニングする方法が挙げられる。
【0026】
個別電極123を形成する方法としては、特に限定されないが、スパッタ等により、白金を成膜した後、エッチング等によりパターニングする方法が挙げられる。
【0027】
また、圧電素子120が形成されている振動板112a上に、絶縁層130が形成されている。さらに、絶縁層130の隔壁112bにより隔てられている空間上に、コンタクトホール131を介して、個別電極123から配線140が引き出されている。また、フリップチップ実装することにより、それぞれの配線140と駆動IC150を電気的に接続する電極パッド141が、それぞれの配線140上に2列千鳥となるように形成されている。このとき、電極パッド141は、液室110の長手方向に対して垂直な方向の両側の隔壁112b上に延在している。
【0028】
このように、隔壁112bにより隔てられている空間上に電極パッド141が形成されているため、集積度を高くしてもインクジェットヘッド100を小型化することができる。また、液室110の長手方向に対して垂直な方向の両側の隔壁112b上に電極パッド141が延在しているため、フリップチップ実装時の破損を抑制することができる。
【0029】
なお、電極パッド141は、図2(a)に示すように、隔壁112bにより隔てられている空間上に形成されていると共に、液室110の長手方向に対して平行な方向の一側の隔壁112b上に延在していてもよい。このとき、電極パッド141は、図2(b)に示すように、液室110の長手方向に対して垂直な方向の両側の隔壁112b上にさらに形成されていてもよい。
【0030】
また、電極パッド141は、図2(c)に示すように、隔壁112bにより隔てられている空間上に形成されていると共に、液室110の長手方向に対して垂直な方向の一側の隔壁112b上に延在していてもよい。このとき、電極パッド141は、図2(d)に示すように、液室110の長手方向に対して平行な方向の一側の隔壁112b上にさらに形成されていてもよい。
【0031】
配線140としては、特に限定されないが、アルミ配線等が挙げられる。
【0032】
電極パッド141としては、特に限定されないが、ニッケルメッキ、金メッキ等が挙げられる。
【0033】
電極パッド141は、厚さが10μm以上であることが好ましい。電極パッド141の厚さが10μm未満であると、フリップチップ実装時(又はワイヤボンディング実装時)の負荷による撓みが大きくなって、接合信頼性が低下することがある。
【0034】
駆動IC150の実装面側には、電極パッド141に対応する位置に、アルミパッド151及び金メッキ152が順次積層されており、電極パッド141及び金メッキ152の間に、はんだバンプ160が形成されている。駆動IC150は、ダイボンダー等により、電極パッド141に対して位置決めされ、加熱して、圧接することにより接合することができる。
【0035】
なお、はんだバンプの代わりに、金バンプを用いてもよい。
【0036】
液室110は、電極パッド141が形成されている側の端部の幅が、電極パッド141が形成されていない領域の幅よりも小さいことが好ましい。これにより、フリップチップ実装時の破損をさらに抑制することができる。
【0037】
具体的には、液室110は、図3(a)に示すように、電極パッド141が形成されている側の端部を上面視すると、R形状であってもよいし、図3(b)に示すように、電極パッド141が形成されている側の端部を上面視すると、テーパ形状であってもよい。
【0038】
なお、液室110の電極パッド141が形成されている側の端部を上面視した形状としては、R形状、テーパ形状に限定されない。
【0039】
図4に、インクジェットヘッド100の変形例を示す。インクジェットヘッド100Aは、共通電極121と絶縁層130の間の電極パッド141により囲まれている領域に、コンタクトホール132を介して表面に露出している配線170が形成されている以外は、インクジェットヘッド100と同一の構成である。これにより、フリップチップ実装時の破損をさらに抑制することができる。また、共通電極121に電圧を入力する端子からの、液室110の長手方向に対して略垂直な方向の距離が大きい程、抵抗値が漸増することを抑制できる。
【0040】
図5に、本発明のインクジェットヘッドの第二の実施形態を示す。インクジェットヘッド200は、振動板112a上に接合されており、それぞれの液室110に液体を供給する流路(不図示)及びボンディングワイヤ220が貫通する開口部212が形成されている液体供給基板210上に駆動IC150が設置されていると共に、ワイヤボンディング実装されている以外は、インクジェットヘッド100と同一の構成である。インクジェットヘッド200は、電極パッド141がボンディングワイヤ220により駆動IC150と接続されている。このため、インクジェットヘッド200を駆動IC150の大きさに依存せずに、小型化することができる。また、ワイヤボンディング実装時の破損を抑制することができる。
【0041】
液体供給基板210を構成する材料としては、特に限定されないが、ガラス、シリコン等が挙げられる。
【0042】
図6に、インクジェットヘッド200の変形例を示す。インクジェットヘッド200Aは、液体供給基板210に接合されているフレーム基板230上に駆動IC150がFPC240と共に接合されている以外は、インクジェットヘッド200と同一の構成である。このため、インクジェットヘッド200Aの幅を小さくすることができる。また、液体供給基板210には、それぞれの液室110に液体を供給する流路211及びボンディングワイヤ220が貫通する開口部212が形成されている。さらに、フレーム基板230には、複数の流路211と接続されている共通液室231及びボンディングワイヤ220が貫通する開口部232が形成されている。このとき、共通液室231は、液室110の一部を含む領域上に形成されているため、インクジェットヘッド200Aをさらに小型化することができる。
【0043】
液室基板112には、流路211から液室110に液体を供給する供給口112c及び液室110に液体を供給する際に抵抗となる抵抗部112dが形成されている。抵抗部112dは、液室110よりも幅を小さくすることにより、抵抗として機能している。
【0044】
液室基板112の供給口112c及び抵抗部112dを形成する方法としては、特に限定されないが、エッチング等が挙げられる。
【0045】
液体供給基板210の流路211及び開口部212を形成する方法としては、特に限定されないが、エッチング等が挙げられる。
【0046】
フレーム基板230の共通液室231及び開口部232を形成する方法としては、特に限定されないが、エッチング等が挙げられる。
【0047】
インクジェットヘッド200Aにおいては、共通液室231から、流路211及び供給口112dを経て、液室110に液体が供給される。
【0048】
FPC240には、駆動IC150の端子に相当する位置に電極がパターニングされており、配線により信号、電力の入力が可能となっている。駆動IC150に入力された信号、電力により、アクチュエータである圧電素子120に電圧が印加されると、圧電素子120は液室110を加圧し、ノズル111aから液体が吐出される。
【0049】
フレーム基板230上には、共通液室231を塞ぐために、ダンパ膜250が接合されている。ダンパ膜250は、切り欠き251aが形成されている補強板251に樹脂フィルム252が張り合わされている。
【0050】
駆動IC150を覆うように、天板260が補強板251に接合されており、封止材270が注入されている。
【0051】
本発明のインクジェット記録装置としては、本発明のインクジェットヘッドを有していれば、特に限定されない。
【符号の説明】
【0052】
100、100A インクジェットヘッド
110、110A、110B 液室
111 ノズル基板
111a ノズル
112 液室基板
112a 振動板
112b 隔壁
112c 供給口
120 圧電素子
121 共通電極
122 圧電体
123 個別電極
130 絶縁層
131、132 コンタクトホール
140 配線
141 電極パッド
150 駆動IC
151 アルミパッド
152 金メッキ
160 はんだバンプ
170 配線
200、200A インクジェットヘッド
210 液体供給基板
211 流路
220 ボンディングワイヤ
230 フレーム基板
231 共通液室
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【特許文献1】特開2001−270125号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルが形成されているノズル基板と、前記ノズル基板上に配置されている振動板の間の空間が、隔壁により隔てられている複数の液室が形成されているインクジェットヘッドであって、
前記振動板の前記隔壁により隔てられている空間上に、共通電極、圧電体及び個別電極が順次積層されている圧電素子が形成されていると共に、前記個別電極から配線が引き出されており、
前記配線と駆動回路を電気的に接続する電極パッドが前記配線上に形成されており、
前記電極パッドは、前記隔壁上に延在していることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記電極パッドは、前記液室の長手方向に対して垂直な方向の両側の前記隔壁上に延在していることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記電極パッドは、フリップチップ実装又はワイヤボンディング実装することにより前記駆動回路と接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記電極パッドは、ワイヤボンディング実装することにより前記駆動回路と接続されており、
前記振動板上に、前記液室に液体を供給する流路が形成されている第二の基板及び前記流路と接続されている第二の液室が形成されている第三の基板が順次設けられており、
前記第三の基板上に前記駆動回路が形成されている部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記液室は、前記電極パッドが形成されている側の端部の幅が、前記電極パッドが形成されていない領域の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記共通電極と前記電極パッドの間に、前記液室の長手方向に対して略垂直な方向に前記共通電極に接触して第二の配線が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドを有することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−143998(P2012−143998A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5524(P2011−5524)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】