説明

インクジェットヘッド用基板、インクジェットヘッドおよび該インクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置

【課題】インクジェットヘッドの基板温度の測定精度を向上させること。
【解決手段】インクジェットヘッド用基板は、それぞれが異なる出力電圧特性を持つ複数種の基板温度検出素子として、ダイオードセンサ1,2とアルミニウムセンサ3,4を有している。ダイオードセンサ1,2は、当該センサに定電流を印加したときに、温度上昇に伴い出力電圧が降下する特性を有している。アルミニウムセンサ3,4は、当該センサに定電流を印加したときに、温度上昇に伴い出力電圧が上昇する特性を有している。ダイオードセンサ1,2とアルミニウムセンサ3,4は、入出力パッド56,57からの距離においてダイオードセンサ1,2の方が入出力パッド56,57に近い位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出口よりインク液滴を吐出させることにより記録を行うインクジェットヘッドに用いられるインクジェットヘッド用基板に関する。さらに、このようなインクジェットヘッド用基板を有するインクジェットヘッドと、このようなインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッド用基板には、ヒータ(発熱体)と、ドライバと、ロジック回路と、基板温度検出素子と、パッド(外部電極端子)などが構成されている。
【0003】
ヒータはインクを吐出するための熱エネルギーを発生するためのものであり、ドライバはヒータを駆動するためのものであり、ロジック回路はドライバの制御を行うためのものである。基板温度検出素子は基板温度を検出するためのものであり、パッドはインクジェットヘッドやインクジェット記録装置と電気的に接続するためのものである。
【0004】
ヒータは、吐出口の個数に見合うだけ形成されており、したがって、ドライバも吐出口の数に見合って形成されている。こうしたインクジェットヘッド用基板は、半導体装置製造技術に基づき、シリコン半導体基板によってモノリシックに形成される。
【0005】
さらに、このようなインクジェットヘッドは、温度とインクのドロップ径および吐出速度などとの間に密接な関係があり、これらが画像濃度に影響を与え、印刷品位を左右するという特徴を有している。よって、基板温度の検出は重要な役割を占めている。
【0006】
そこで、インクジェットヘッド用基板に設けられる基板温度検出素子としては、半導体製造技術によってシリコン基板上に形成できるものとして、ダイオードセンサやアルミニウムセンサが利用されている。
【0007】
ダイオードセンサにおいては、半導体ダイオードの順方向電圧の温度特性に基づいて温度を検出し、またアルミニウムセンサにおいては、温度変化による抵抗値の変化を基に温度を検出している。
【0008】
ここで、ダイオードセンサとアルミニウムセンサを比較すると、ダイオードセンサの特性は製造プロセス上のばらつきなどを考慮しても安定している。それに対し、アルミニウムセンサは製造プロセス上のアルミニウム膜厚や線幅により抵抗値のばらつきが発生し、温度検出精度の観点ではダイオードセンサのほうが優れている。また、アルミニウムセンサの場合は電気的抵抗を高くする必要があり、プロセスのばらつきを小さくするために線幅を太くし、アルミニウムの引き回しの距離を長く取り対応している。
【特許文献1】特開平2−258266号公報
【特許文献2】特開2004−50637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
印刷品位の高精度化のために基板温度の検出は重要であると同時に、印刷速度の高速化に伴いインクジェットヘッドの長尺化が求められてきている。そのためには、インクジェットヘッド用基板としてヒータを基板の長尺方向に配列すると同時に、従来のようなヒータ列端部付近の温度測定だけではなくヒータ列中央部付近を含んだ複数ヵ所の温度測定が出来ることが重要になってくる。
【0010】
しかしながら、ヒータ列端部付近の温度測定に用いていたダイオードセンサをヒータ列端部だけでなくヒータ列中央部にも配置して温度を測定しようとすると、そのヒータ列中央部に配置されたダイオードセンサの温度測定感度が下がるという課題が懸念された。
【0011】
この原因としては以下のような事がある。
【0012】
図8はダイオードセンサの断面模式図である。この図では模式的にダイオード206として表されるPN接合構造の温度検出用ダイオードが形成されている。つまり、温度検出用ダイオード形成のために、p型半導体基板201上に、p型領域202およびn型領域203が形成され、n型領域203内部にn+領域204とp+領域205とが形成されている。
【0013】
この構造を温度センサとして用いるときには、アノードとなるp+領域205からカソードとなるn+領域204に向けて定電流を供給する。そのときの順方向電圧(Vf)をモニタすれば、Vfは約−2〜−2.5mV/℃の温度特性を持っているため、これにより温度の変化を検出できる。
【0014】
このダイオードセンサに定電流を印加した時の温度変化と出力電圧の関係は図9のような特性で表わされる。つまり、ダイオードセンサの場合、温度が上昇することにより出力電圧は降下する関係がある。
【0015】
それに対して、ダイオードセンサを電気的に接続するためのアルミニウムの配線やアルミニウムセンサに対して定電流が印加されているときの、温度変化と出力電圧との関係は、図10のような特性で表わされる。つまり、アルミニウム配線やアルミニウムセンサの場合は、温度が上昇することにより出力電圧も上昇する関係がある。
【0016】
ここで、ヒータ列中央部付近にダイオードセンサを配置するためには、ヒータ中央部付近にダイオードセンサを配置するだけでなく、電気的な接続のために入出力パッドからアルミニウムの配線をダイオードセンサまで長い距離を這い回す必要がある。
【0017】
このような構成にすると、温度検出のための定電流印加時の出力電圧の値は、温度が上昇したときにはダイオードセンサ部単体での出力電圧値は下がるのに対し、アルミニウム配線部単体の出力電圧値は上がることになる。つまり、お互い打ち消し合う方向へ出力電圧値は変化することになる。そのため実際の温度変化量よりも小さな変化量として検出してしまい、感度が低下する現象が発生する。
【0018】
その結果、インクジェットヘッドが高温になったときの温度検出精度が下がるため、最適な駆動制御が出来なくなり画像濃度にムラが発生し印刷品位が低下する場合があった。
【0019】
そこで本発明は、上記背景技術の課題を解決することができるインクジェットヘッド用基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット記録装置において使用されるインクジェットヘッド用基板に係るものである。
【0021】
当該基板は、インクを吐出するための複数のヒータと、前記複数のヒータを駆動するためのロジック回路と、基板温度を検出するための基板温度検出素子と、記録装置本体と前記ロジック回路および前記基板温度検出素子との間での信号の受け渡しを行う入出力パッドとが同一基板上に形成されたものである。
【0022】
このような構成の基板に以下のような構成要素が備わることで、上記背景技術の課題が解決される。
【0023】
すなわち、本発明のインクジェットヘッド用基板はそれぞれが異なる出力電圧特性を持つ複数種の前記基板温度検出素子を有している。そして、一種の前記基板温度検出素子は、当該基板温度検出素子に定電流を印加したときに、温度上昇に伴い出力電圧が降下する特性を有しており、かつ、少なくとも一つ以上設けられている。さらに、他の種の前記基板温度検出素子は、当該基板温度検出素子に定電流を印加したときに、温度上昇に伴い出力電圧が上昇する特性を有しており、かつ、少なくとも一つ以上設けられている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、インクジェットヘッドの基板温度の測定精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態のインクジェットヘッド用基板を示す平面図である。
【0027】
この図に示されるインクジェットヘッド用基板51は、シリコン半導体基板などに半導体装製造技術を用いて回路が形成される(作り込まれている)ものである。この基板51は略矩形状を有し、中央部に、基板長手方向に延びる略矩形の貫通孔としてインク供給口52が形成されている。
【0028】
インク供給口52の両縁に沿って、複数のヒータ53が設けられている。ヒータ53は、インクジェットヘッド用基板51の一方の面(以下、表面という)に形成されており、該基板51のもう一方の面(以下、裏面という)の側からインク供給口52を通って供給されてきた液体(インク)を加熱して発泡させる。この事により、ヒータ53に対面して設けられている吐出口(図1には不図示)からインク液滴が吐出される。
【0029】
ヒータ53を挟んでインク供給口51の反対側には、ドライバ部54が設けられている。ドライバ部54は、それぞれのヒータ53を駆動するためのドライバなどを含んでいる。ドライバは、典型的には、ヒータ53ごとに設けられ、スイッチ用のトランジスタなどからなっている。
【0030】
さらに、インクジェットヘッド用基板51には、ロジック回路部55と、記録装置本体部側から電源と信号とをこのインクジェットヘッド用基板に供給するためのパッド部とが設けられている。ロジック回路部55や前記パッド部は、
インクジェットヘッド用基板51の長手方向端部に形成されている。
【0031】
パッド部は、複数のパッド56、57を含んでおり、ワイヤーボンディングなど電気的接続手段を用いることにより基板上の回路をインクジェット記録装置本体と電気的に接続させるためのものである。
【0032】
ロジック回路部55は、パッド57を介して記録装置本体側から信号が与えられた際に、その信号に基づいて、ドライバ部54内の各トランジスタのオン/オフを制御するロジック回路を含んでいる。
【0033】
そして、基板51には、それぞれ出力電圧特性が異なる複数種の温度検出素子として、ダイオードセンサ1、2とアルミニウムセンサ3、4とが設けられている。このような2種のセンサを使って、インクを吐出する際の基板温度を記録装置本体側からモニタすることができる。
【0034】
ここで、一種の温度検出素子の例であるダイオードセンサについて述べる。
【0035】
ダイオードセンサ1、2はそれぞれ図8に示された構成で作られており、図9のように定電流印加時の温度上昇に伴い出力電圧が降下する特性をもっている。
【0036】
また、他の種の温度検出素子の例であるアルミニウムセンサについて述べる。
【0037】
アルミニウムセンサ3、4は、図2に示されるように、センサとしてのアルミニウム配線211を蛇行形状に配置して抵抗値を上げたものである。
【0038】
ここで、図2中のMの範囲にアルミニウムを蛇行形状に配置している領域をアルミニウムセンサ部とし、それ以外の領域をアルミニウム配線部と定義する。
【0039】
アルミニウムセンサ3、4は、図10に示されるように、定電流が印加されたときに温度上昇に伴い出力電圧が上昇する特性をもっている。
【0040】
上記ではセンサ材料としてアルミニウムを用いて説明したが。しかし、それに限られず、銅、銀、金、タンタル、チタン、ニッケル、ポリシリコンなどのいずれかを配線材として使用できる抵抗体や、ドーピングなどにより作製する拡散抵抗体などがセンサ材料として使用できる。つまり、定電流が印加されたときに、図10のように温度上昇に伴い出力電圧が上昇する特性を有する材料であるならばセンサ材料に用い得る。
【0041】
各センサを比較すると、ダイオードセンサの特性は製造プロセス上の影響をほとんど受けず、温度検出精度が良く、インクジェットヘッドの温度検出には最も適している。
【0042】
このダイオードセンサも、外部と電気的に接続するため、各入出力パッドにアルミニウムを用いた配線により接続されている(図1には不図示)。
【0043】
図1中のA側の入出力パッド56にはダイオードセンサ1とアルミニウムセンサ3の配線がそれぞれ接続されている。また、図1中のB側の入出力パッド57にはダイオードセンサ2とアルミニウムセンサ4の配線がそれぞれ接続されている。
【0044】
ここで、図中のA側の入出力パッド56に接続されている各温度検出素子の配置について述べる。
【0045】
入出力パッド56に、アルミニウムを用いた配線により接続されている温度検出素子はダイオードセンサ1とアルミニウムセンサ3である。入出力パッド56からの距離が近い側にダイオードセンサ1が配置され、入出力パッド56からの距離が遠い側にアルミニウムセンサ3が配置されている。
【0046】
このように各温度検出素子を配置することにより、アルミニウムを用いた配線の距離を、ダイオードセンサ1の場合には短く、アルミニウムセンサ3の場合には長くすることが出来る。
【0047】
よって、ダイオードセンサにより温度を検出する際、定電流印加時のアルミニウム配線の温度の変化に対する出力電圧値変化の影響を小さく出来る。また、アルミニウムセンサにおいてはアルミニウムセンサ部の抵抗とアルミニウム配線部の抵抗とを合わせた全体の抵抗値を高く出来るため、出力電圧値を測定しやすくなる。
【0048】
このように、入出力パッド56と当該パッドに一番近いヒータ53とに挟まれた図1中のCの領域において入出力パッド56に近い側にセンサを配置するときにはダイオードセンサが適している。他方、入出力パッド56から図1中のCの領域を経てさらに遠い領域にセンサを配置するときにはアルミニウムセンサが適している。
【0049】
上記と同様の理由で、図1中のB側の入出力パッド57に接続されている温度検出素子についても、入出力パッド57と当該パッドに一番近いヒータ53とに挟まれた図中のDの領域において入出力パッド57に近い側にダイオードセンサ2が配置されている。他方、入出力パッド57から図1中のDの領域を経てさらに遠い領域にアルミニウムセンサ4が配置されている。
【0050】
以上のように温度検出素子を配置することにより、インクジェットヘッド用基板内のそれぞれの位置に対する温度を精度良く検出することが出来る。
【0051】
図3は、本発明の他の実施形態のインクジェットヘッド用基板を示す平面図である。
【0052】
図3に示されるインクジェット用基板の各構成要素は、図1に示した基板とほとんど同じである。図1の基板と異なる主なところは、基板にインク供給口が複数列配置されている点である。
【0053】
図3の形態では、インクジェットヘッド用基板61に、基板長手方向に延びる矩形の貫通孔としてインク供給口62が3つ形成されている。そして基板61上に、各インク供給口62の両縁に沿って複数のヒータ63が配置され、同一基板上にドライバ部64、ロジック回路部65、複数のパッド66、67が設けられている。
【0054】
基板61上には、入出力パッド66と当該パッドに一番近いヒータ63とに挟まれたGの領域と、入出力パッド67と当該パッドに一番近いヒータ63とに挟まれたHの領域とがある。
【0055】
そのGとHの領域内にダイオードセンサ11、12が配置される。また、入出力パッド66からGの領域を経てさらに遠い領域、および、入出力パッド67からHの領域を経てさらに遠い領域にアルミニウムセンサ13、14、15、16が配置されている。
【0056】
図3には3つのインク供給口62の例を示したが、この実施形態の場合インク供給口はいくつあってもよい。
【0057】
図4は、本発明のさらに他の実施形態のインクジェットヘッド用基板を示す平面図である。
【0058】
この図に示す形態では、上述した形態とは異なり、ヒータの配列方向と平行に複数の入出力パッドが配列している。
【0059】
図4を参照すると、インクジェットヘッド用基板71に、基板長手方向に延びる矩形の貫通孔としてインク供給口72が3つ形成されている。そして基板71上に、各インク供給口72の両縁に沿って複数のヒータ73が配置され、同一基板上にドライバ部74、ロジック回路部75、複数のパッド76、77が設けられている。
【0060】
基板71上には、図4中I側の入出力パッド76の列と当該パッドの列に一番近いヒータ73の列とに挟まれたKの領域と、図4中J側の入出力パッド77の列と当該パッドの列に一番近いヒータ73の列とに挟まれたLの領域とがある。
【0061】
そのKとLの領域内にダイオードセンサ21、22が配置される。また、入出力パッド76からKの領域を経てさらに遠い領域、および、入出力パッド77からLの領域を経てさらに遠い領域にアルミニウムセンサ23、24、25、26が配置されている。
【0062】
図4には3つのインク供給口62の例を示したが、この実施形態の場合インク供給口はいくつあってもよい。
【0063】
「適用例」
上述した各実施形態のインクジェットヘッド用基板をインクジェットヘッドおよびインクジェット記録装置に適用した場合について説明する。
【0064】
図5は、本発明のインクジェットヘッドのインク吐出部を切り欠いて見た部分断面図である。
【0065】
上述したように、図1に示される形態では、インク供給口52の両縁に沿って複数のヒータ53が配設されていたが、図5では、説明の簡単のため、インク供給口102の片側のヒータ103およびそれに対応する吐出口104のみが図示されている。
【0066】
インクジェットヘッド用基板51上には、上述したように、電気信号を受けることで熱を発生し、その熱によって発生する気泡によって吐出口104からインクを吐出するためのヒータ103が複数個、列状に配されている。ヒータ103に対向する位置に設けられた吐出口104へインクを供給するための流路105がそれぞれの吐出口104に対応して設けられている。
【0067】
これらの吐出口104および流路105はオリフィスプレート105に形成されている。オリフィスプレート101を前述のインクジェットヘッド用基板51に接合することで、インク供給口102に連通し各流路105にインクを供給する共通液室106が設けられる。
【0068】
また、図6は図5に一部が示されたインクジェットヘッドの一例の外観を示している。TABテープ111上に、インクジェットヘッド用基板51との電気接続部112が設けられ、TABテープ111の一端側に記録装置との接続に用いられるコンタクトパッド部113が形成されている。本発明に係るインクジェットヘッド用基板51は、オリフィスプレート101の裏側にあり、インクジェットヘッド用基板51にドライフィルムなどで流路105が形成された後、オリフィスプレート101が張り付けられる。このように作られた組立体が、TABテープ111が貼り付けてあるインクタンク114に組み付けられる。その後、TABテープ111の電気接続部112とインクジェットヘッド用基板51の入出力パッドとをボンディング接続し、電気接続部112が封止材によって封止することでインクジェットヘッドが完成する。
【0069】
図7は、本発明のインクジェットヘッドが適用されるインクジェット記録装置IJRAの構成の概略図である。
【0070】
図7において、駆動モータ5013の正逆回転に連動して駆動力伝達ギア5009〜5011を介して回転するリードスクリュー5005の螺旋溝5004に対して係合するキャリッジHCはピン(不図示)を有している。また、キャリッジHCはガイドレール5003に支持されて矢印a、b方向を往復移動する。キャリッジHCには、記録ヘッドIJHとインクタンクITとを内蔵した一体型インクジェットカートリッジIJCが搭載されている。キャリッジHCの移動方向に亙って記録用紙Pをプラテン5000に対して押圧する紙押え板5002が設けられている。キャリッジのレバー5006のこの域での存在を確認して、モータ5013の回転方向切り換え等を行うためのホームポジション検知器であるフォトカプラ5007,5008が設けられている。
【0071】
記録ヘッドIJHの前面をキャップするキャップ部材5022を支持する部材5016が設けられている。このキャップ内を吸引する吸引器5015が設けられていて、キャップ内開口5023を介して記録ヘッドの吸引回復を行う。クリーニングブレード5017や、このブレードを前後方向に移動可能にする部材5019が設けられ、本体支持板5018にこれらが支持されている。ブレードは、この形態でなく周知のクリーニングブレードが本例に適用できることは言うまでもない。
【0072】
また、吸引回復の吸引を開始するためのレバー5021が設けられていて、キャリッジと係合するカム5020の移動に伴って移動し、駆動モータからの駆動力がクラッチ切り換え等の公知の伝達機構で移動制御される。
【0073】
これらのキャッピング、クリーニング、吸引回復は、キャリッジがホームポジション側の領域に来た時にリードスクリュー5005の作用によってそれらの対応位置で所望の処理が行えるように構成されている。そして周知のタイミングで所望の動作を行うようにすれば、本例にはいずれも適用できる。
【0074】
なお、本装置はインクジェットヘッド(インクジェットヘッド用基板)に対して発熱体を駆動するための駆動信号や温度検出などの信号をやり取りするための信号供給手段を備えている。
【0075】
また、インクジェット記録装置は、電源を投入時などインクジェットヘッドの温度が均一なときに、インクジェットヘッド用基板に配置された各温度検出素子の温度を検出している。そしてダイオードセンサの検出温度を基準に各センサの温度を合わすことを行っている。
【0076】
さらに、インクジェットヘッドを駆動するときは、インクジェットヘッド用基板に配置された複数の温度検出素子からの温度情報により、対応したヒータの駆動パルスを調整して駆動することが行われる。この事により、インクジェットヘッド用基板内で温度差が生じてもヒータ駆動パルスを調整することにより、画像濃度にムラの無い印刷が可能となっている。
【0077】
このような本発明のインクジェット記録装置と、ダイオードセンサが入出力パッドから遠い位置に配置されていた従来のインクジェットヘッド用基板を用いたインクジェット記録装置を用いて、実際に印刷を実施し印字品位を比較した。
【0078】
長時間連続的に印刷を行いヘッド温度が高くなった状態で印刷を続けた場合、従来のインクジェット記録装置では濃度ムラが発生することがあったが、本発明のインクジェット記録装置においては、ムラの発生は無かった。
【0079】
以上説明した本発明によれば、インクジェットヘッドの複数箇所の温度測定が精度良く行うことが出来るようになり、長尺インクジェットヘッドにおいても綿密な液滴制御が可能となり印刷品位が向上する。
【0080】
また、インクジェットヘッドの温度が均一なときに各センサの温度を検出し、温度測定の精度の良いダイオードセンサの検出温度を基準に各センサの温度を合わすことにより、インクジェットヘッド内の温度を精度良く測定できるようになる。
【0081】
さらに、出力電圧特性の異なる複数のセンサを配置しているため、思いがけない原因によりセンサの1つが測定不能に陥っても、他の出力電圧特性のセンサにより温度測定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明のインクジェットヘッド用基板の平面図。
【図2】本発明に使用されるアルミニウムセンサの例の平面図。
【図3】本発明の他の実施形態のインクジェットヘッド用基板の平面図。
【図4】本発明の他の実施形態のインクジェットヘッド用基板の平面図。
【図5】本発明のインクジェットヘッド用基板を適用したインクジェットヘッドの部分断面図。
【図6】本発明のインクジェットヘッドの一例の外観図。
【図7】本発明のインクジェット記録装置の一例の概観図。
【図8】ダイオードセンサの断面模式図。
【図9】ダイオードセンサに定電流を印加したときの、温度変化と出力電圧の関係を示すグラフ。
【図10】アルミニウムセンサに定電流を印加したときの、温度変化と出力電圧の関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0083】
1、2、11、12、21、22 ダイオードセンサ
3、4、13、14、15、16、23、24、25、26 アルミニウムセンサ
51、61、71 インクジェットヘッド用基板
52、62、72 インク供給口
53、63、73 ヒータ
56、57、66、67、76、77 入出力パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット記録装置において使用されるインクジェットヘッド用基板であって、インクを吐出するための複数のヒータと、前記複数のヒータを駆動するためのロジック回路と、基板温度を検出するための基板温度検出素子と、記録装置本体と前記ロジック回路および前記基板温度検出素子との間での信号の受け渡しを行う入出力パッドとが同一基板上に形成されたインクジェットヘッド用基板において、
それぞれが異なる出力電圧特性を持つ複数種の前記基板温度検出素子を有しており、
一種の前記基板温度検出素子は、当該基板温度検出素子に定電流を印加したときに、温度上昇に伴い出力電圧が降下する特性を有しており、かつ、少なくとも一つ以上設けられており、
他の種の前記基板温度検出素子は、当該基板温度検出素子に定電流を印加したときに、温度上昇に伴い出力電圧が上昇する特性を有しており、かつ、少なくとも一つ以上設けられていることを特徴とするインクジェットヘッド用基板。
【請求項2】
前記温度上昇に伴い出力電圧が降下する特性を有している基板温度検出素子は、
前記入出力パッドからの距離において、前記温度上昇に伴い出力電圧が上昇する特性を有している基板温度検出素子よりも近い位置に配置していることを特徴とする、請求項1に記載のインクジェットヘッド用基板。
【請求項3】
前記温度上昇に伴い出力電圧が降下する特性を有している基板温度検出素子は、
前記入出力パッドと、当該入出力パッドから一番近い前記ヒータの列の端部とに挟まれた領域に配置していることを特徴とする、請求項1に記載のインクジェットヘッド用基板。
【請求項4】
前記温度上昇に伴い出力電圧が降下する特性を有している基板温度検出素子の一つは、
ダイオードの温度特性を利用して温度を検出することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド用基板。
【請求項5】
前記温度上昇に伴い出力電圧が降下する特性を有している基板温度検出素子の一つは、
ダイオードセンサであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド用基板。
【請求項6】
前記温度上昇に伴い出力電圧が上昇する特性を有している基板温度検出素子の一つは、
電気的抵抗の温度特性を利用して温度を検出することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド用基板。
【請求項7】
前記温度上昇に伴い出力電圧が上昇する特性を有している基板温度検出素子の一つは、
アルミニウムセンサであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド用基板。
【請求項8】
前記温度上昇に伴い出力電圧が上昇する特性を有している基板温度検出素子の一つは、
拡散抵抗を利用したセンサであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド用基板。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド用基板を用いたことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項10】
請求項9に記載のインクジェットヘッドを用いたことを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−262510(P2009−262510A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118411(P2008−118411)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】