説明

インクジェットヘッド

【課題】導電性の部分を保護できるインクジェットヘッドを提供する。
【解決手段】一つの実施の形態に係るインクジェットヘッドは、本体と、複数の電極と、複数の導電部と、絶縁膜と、枠部材と、蓋部材と、電子部品と、保護剤とを具備する。前記本体に複数の圧力室が設けられる。前記複数の電極は、前記複数の圧力室にそれぞれ設けられる。前記複数の導電部は、前記本体に設けられ、前記複数の電極にそれぞれ接続される。前記絶縁膜は、前記電極と前記導電部の一部とを覆う。前記枠部材は、内側に前記複数の圧力室に連通したインク室が設けられ、前記絶縁膜の上から前記本体に取り付けられる。前記蓋部材は、前記枠部材に取り付けられ前記インク室を塞ぐ。前記電子部品は、前記複数の導電部に接続される。前記保護剤は、前記枠部材と前記電子部品との間に位置する前記絶縁膜の端部と、前記絶縁膜の端部と前記電子部品との間の前記導電部と、を覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドは、基板と、この基板に取り付けられる圧電部材を備える。この圧電部材は、インクが供給される複数の溝状の圧力室を有する。圧力室にそれぞれ電極が設けられ、この電極は基板に設けられた複数の配線パターンにそれぞれ接続される。この配線パターンに、インクジェットヘッドを制御する駆動ICが接続される。駆動ICが配線パターンを通じて圧力室の電極に電圧を印加すると、圧電部材がシェアモード変形し、圧力室内のインクを吐出する。
【0003】
導電性の部分の腐食や短絡を防止するため、圧力室の電極や基板の配線パターンの上に絶縁膜が形成される。絶縁膜を形成する際、駆動ICが接続される部分は、例えばグリスによってマスキングされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−202473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
絶縁膜が形成された後、グリスの上に形成された絶縁膜が除去される。マスキングによって露出された配線パターンに、駆動ICが接続される。一方で、絶縁膜の端部と駆動ICとの間において、配線パターンは露出されたままである。このため、配線パターンの露出した部分が劣化するおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、導電性の部分を保護できるインクジェットヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施の形態に係るインクジェットヘッドは、
本体と、複数の電極と、複数の導電部と、絶縁膜と、枠部材と、蓋部材と、電子部品と、保護剤とを具備する。前記本体に複数の圧力室が設けられる。前記複数の電極は、前記複数の圧力室にそれぞれ設けられる。前記複数の導電部は、前記本体に設けられ、前記複数の電極にそれぞれ接続される。前記絶縁膜は、前記電極と前記導電部の一部とを覆う。前記枠部材は、内側に前記複数の圧力室に連通したインク室が設けられ、前記絶縁膜の上から前記本体に取り付けられる。前記蓋部材は、前記枠部材に取り付けられ前記インク室を塞ぐ。前記電子部品は、前記複数の導電部に接続される。前記保護剤は、前記枠部材と前記電子部品との間に位置する前記絶縁膜の端部と、前記絶縁膜の端部と前記電子部品との間の前記導電部と、を覆う。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態に係るインクジェットヘッドを分解して示す斜視図。
【図2】第1の実施形態のインクジェットヘッドを図1のF2−F2線に沿って示す断面図。
【図3】第1の実施形態のインクジェットヘッドを図1のF3−F3線に沿って示す断面図。
【図4】第2の実施の形態に係るインクジェットヘッドを示す斜視図。
【図5】第2の実施形態のインクジェットヘッドを図4のF5−F5線に沿って示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、第1の実施の形態について、図1から図3を参照して説明する。図1は、インクジェットヘッド1を分解して示す斜視図である。図2は、図1のF2−F2線に沿ってインクジェットヘッド1の一部を示す断面図である。図3は、図1のF3−F3線に沿ってインクジェットヘッド1の一部を示す断面図である。
【0010】
図1に示すように、第1の実施形態のインクジェットヘッド1は、いわゆるエンドシュータ型のインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド1は、本体10と、枠部材11と、蓋部材12と、ノズルプレート13と、駆動IC14とを備えている。駆動IC14は、電子部品の一例である。
【0011】
本体10は、基板21と、圧電部材22とを有している。基板21は、矩形の板状に形成されている。基板21は、基板21の上面21aから前面21bに亘って設けられた切欠部24を有している。
【0012】
圧電部材22は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)製の2枚の圧電板を互いの分極方向を反対向きとするように貼り合わせて形成されている。圧電部材22は、基板21の切欠部24に取り付けられている。
【0013】
本体10に、インクが供給される複数の圧力室27が設けられている。複数の圧力室27は、それぞれ溝状に形成され、互いに平行に並んで設けられている。圧力室27は、基板21から圧電部材22に亘って設けられている。圧力室27は、基板21の上面21a、圧電部材22の上面22a、および前面22bに開口している。
【0014】
図2に示すように、複数の圧力室27の間に、柱部28がそれぞれ形成されている。複数の柱部28は、複数の圧力室27の間を仕切るとともに、各圧力室27の側面を形成する。
【0015】
複数の圧力室27に電極31がそれぞれ設けられている。電極31は、圧力室27の側面および底面を覆っている。電極31は、例えばニッケル薄膜によって形成されているが、これに限らず、例えば金や銅で形成されていても良い。電極31の厚さは、例えば2〜5μmである。柱部28の両側面に電極31が形成されることで、柱部28は駆動素子として用いられる。
【0016】
図1に示すように、基板21の上面21aに複数の配線パターン33が設けられている。配線パターン33は、導電部の一例である。複数の配線パターン33は、例えば基板21の上面21aに形成されたニッケル薄膜を、レーザーパターニングすることによって形成されている。配線パターン33の厚さは、例えば2〜5μmである。複数の配線パターン33は、基板21の上面21aの後端からそれぞれ延びている。配線パターン33の一端は、電極31にそれぞれ接続されている。
【0017】
図3に示すように、本体10に、絶縁性および耐インク性を有する絶縁膜35が設けられている。なお、図1において、絶縁膜35は省略されている。絶縁膜35は、電極31と、配線パターン33の一部と、基板21の上面21aの一部と、圧電部材22の上面22aとを覆っている。なお、絶縁膜35は、基板21の前面21bのような他の箇所を覆っていても良い。絶縁膜35の厚さは、例えば3〜10μmである。絶縁膜35によって、電極31は圧力室27に供給されたインクから保護される。
【0018】
絶縁膜35は、基板21の上面21aの後部分で途切れている。このため、配線パターン33は、絶縁膜35に覆われずに露出した露出部33aを有している。なお、露出部33aは絶縁膜35に覆われていない配線パターン33の一部分を定義したものであり、絶縁膜35以外の部材には覆われ得る。
【0019】
絶縁膜35は、例えばパラキシレン系ポリマーによって形成される。具体的に例示すると、いわゆるパリレンC(ポリクロロパラキシリレン)、パリレンN(ポリパラキシリレン)、およびパリレンD(ポリジクロロパラキシリレン)のようなパラキシリレン系ポリマーが適用される。なお、絶縁膜35はこれに限らず、例えばポリイミドのような他の物質によって形成されても良い。
【0020】
枠部材11は、接着剤38によって絶縁膜35の上から本体10に取り付けられる。接着剤38は、本体10と枠部材11との間に介在している。接着剤38の厚さは、例えば30μmである。接着剤38は、例えば耐インク性と熱硬化性とを有するエポキシ系接着剤である。なお、接着剤38はこれに限らず、例えばシリコン系接着剤や、アクリル系接着剤であっても良い。なお、耐インク性を有するとは、想定使用期間6〜12ヶ月の間、インク中に浸漬しても、接着強度が50kg/cm以上に保たれていることを言う。
【0021】
蓋部材12は、枠部材11に取り付けられている。図1に示すように、蓋部材12に、2つのインク供給口41が設けられている。組み合わされた枠部材11および蓋部材12は、基板21の上面21aの側から複数の圧力室27を塞いでいる。
【0022】
図3に示すように、枠部材11の内側に、インクが供給されるインク室42が設けられる。蓋部材12は、枠部材11に取り付けられることでインク室42を塞いでいる。インク供給口41は、インク室42に開口するとともに、インクタンクに接続されている。インク室42は、複数の圧力室27に連通している。インク供給口41からインク室42に供給されたインクは、複数の圧力室27にそれぞれ供給される。
【0023】
ノズルプレート13は、ポリイミド製の矩形のフィルムによって形成されている。なお、ノズルプレート13はポリイミドに限らず、レーザによる微細加工が可能な他の材料によって形成されても良い。ノズルプレート13は、本体10と枠部材11と蓋部材12とに取り付けられている。図1に示すように、ノズルプレート13は、圧電部材22の前面22bの側から、複数の圧力室27を塞いでいる。
【0024】
ノズルプレート13に、複数のノズル45が設けられている。複数のノズル45は、複数の圧力室27に対応し、ノズルプレート13の長手方向に並んで配置されている。複数のノズル45は、複数の圧力室27に開口している。
【0025】
図3に示すように、駆動IC14は、絶縁膜35の端部35aの近傍で、複数の配線パターン33の露出部33aに接続されている。駆動IC14は、インクジェットヘッド1を制御するためのフレキシブルプリント回路板である。なお、駆動IC14の位置は、絶縁膜35の端部35aの近傍に限らない。
【0026】
駆動IC14は、異方性導電性フィルム(ACF)48によって、配線パターン33に熱圧着接続される。なお、駆動IC14は、ACF48に限らず、例えば異方導電ペースト(ACP)、非導電性フィルム(NCF)、および非導電性ペースト(NCP)のような他の手段によって、配線パターン33に接続されても良い。駆動IC14の厚さは例えば35μmである。ACF48の厚さは、例えば駆動IC14と同じく35μmである。
【0027】
駆動IC14は、インクジェットプリンタの制御部から入力される信号に基づいて、配線パターン33を介して電極31に電圧を印加する。電極31を介して電圧を印加された柱部28は、シェアモード変形することにより、圧力室27に供給されたインクを加圧する。加圧されたインクは、対応するノズル45から吐出される。
【0028】
図3に示すように、絶縁膜35の端部35aは、枠部材11の外に位置している。言い換えると、絶縁膜35の端部35aは、枠部材11と駆動IC14との間に位置している。絶縁膜35は、本体10の前端から、枠部材11の下を通って基板21の上面21aの後部分まで形成されている。
【0029】
絶縁膜35の端部35aは、保護剤51によって覆われている。なお、図1において、保護剤51は省略されている。絶縁膜35の端部35aは、この保護剤51によって封止される。保護剤51は、絶縁膜35の端部35aと駆動IC14との間において、配線パターン33の露出部33aを覆っている。
【0030】
保護剤51は、例えば接着剤38と同じく、耐インク性と熱硬化性とを有するエポキシ系接着剤である。なお、保護剤51はこれに限らず、例えばシリコン系接着剤や、アクリル系接着剤であっても良い。なお、保護剤51は、接着剤38とは異なる種類の接着剤であっても良い。
【0031】
保護剤51は、駆動IC14に付着し、駆動IC14の一部を覆っている。このため、保護剤51は、ACF48とともに駆動IC14を本体10に固定する。
【0032】
以下に、前記構成のインクジェットヘッド1の製造方法の一例について説明する。まず、例えば熱硬化性の接着剤によって2枚の圧電板を貼り合わせ、圧電部材22を形成する。この圧電部材22を例えば熱硬化性の接着剤によって基板21の切欠部24に取り付け、本体10を形成する。
【0033】
次に、本体10に、複数の圧力室27を形成する。複数の圧力室27は、例えば、ICウェハーの切断に用いられているダイシングソーのダイヤモンドホイールによって、本体10を切削することで形成される。
【0034】
次に、各圧力室27に電極31を形成すると同時に、基板21の上面21aに配線パターン33を形成する。電極31および配線パターン33は、例えば無電解メッキ法を用いて形成される。次に、例えばレーザ照射によりパターニングを行い、電極31および配線パターン33以外の部位からニッケル薄膜を除去する。
【0035】
次に、化学気相成長法(CVD)によって、絶縁膜35を形成する。この際、基板21の上面21aの後部分やその他の絶縁膜35を設けない部分は、例えばポリイミドテープのようなマスキングテープによって保護される。絶縁膜35が形成された後、マスキングテープが除去される。これにより、絶縁膜35に覆われずに露出された配線パターン33の露出部33aが形成される。
【0036】
絶縁膜35を形成した後、接着剤38を用いて、本体10に枠部材11を取り付ける。接着剤38は、例えばスクリーン印刷によって枠部材11に塗布される。枠部材11は、絶縁膜35の上から本体10に接着される。本体10に取り付けられた枠部材11に、熱硬化性の接着剤によって蓋部材12を取り付ける。
【0037】
次に、熱硬化性の接着剤により、本体10にノズル45が形成される前のノズルプレート13を取り付ける。ノズルプレート13に、例えばバーコーターによって撥インク膜が形成されている。本体10に取り付けられたノズルプレート13にエキシマレーザのレーザ光を照射して、複数のノズル45を形成する。
【0038】
次に、ACF48によって、駆動IC14を配線パターン33の露出部33aに熱圧着接続する。ACF48を介して、駆動IC14は、配線パターン33に電気的に接続される。
【0039】
次に、枠部材11の外に位置する絶縁膜35の端部35aと駆動IC14との間に保護剤51を、例えばディスペンサによって塗布する。保護剤51は、絶縁膜35の端部35aの上から塗布され、端部35aを封止する。保護剤51によって、絶縁膜35の端部35aと駆動IC14との間の配線パターン33の露出部33aが覆われる。
【0040】
以上の工程を経て、図1に示すインクジェットヘッド1の製造工程が終了する。なお、インクジェットヘッド1の製造工程で使用される熱硬化性の接着剤は、各部材が取り付けられた都度熱硬化しても良いし、ある段階でまとめて熱硬化しても良い。
【0041】
前記構成のインクジェットヘッド1によれば、保護剤51によって、絶縁膜35の端部35aが覆われている。これにより、絶縁膜35が端部35aから剥がれたり、インクが端部35aから絶縁膜35と配線パターン33との間に浸入したりすることを防止できる。さらに、保護剤51が絶縁膜35の端部35aを封止するため、端部35aにインクが付着することが防止される。
【0042】
保護剤51は、枠部材11の外に位置する絶縁膜35の端部35aと駆動IC14との間の配線パターン33の露出部33aを覆っている。これにより、例えばインクを供給するチューブからのインク漏れや、メンテナンス時のインクの這い上がりにより、駆動IC14の付近までインクが浸入したとしても、インクが露出部33aに付着することを防止できる。したがって、インクによって配線パターン33が腐食したり、短絡が生じたりすることを防止できる。以上のように、導電性の配線パターン33を保護することができる。
【0043】
保護剤51は、耐インク性の接着剤である。このため、ディスペンサで保護剤51を塗布することで、容易に絶縁膜35の端部35aと駆動IC14との間の配線パターン33の露出部33aを覆うことができる。さらに、保護剤51は接着剤38と同種の接着剤であるため、インクジェットヘッド1の製造コストの上昇を抑えることができる。
【0044】
保護剤51は、駆動IC14に付着している。これにより、保護剤51は、ACF48とともに駆動IC14を本体10に固定し、駆動IC14が配線パターン33から剥離することを防止できる。
【0045】
次に、図4および図5を参照して、インクジェットヘッドの第2の実施の形態について説明する。なお、以下に開示する実施形態において、第1の実施形態のインクジェットヘッド1と同一の機能を有する構成部分には同一の参照符号を付す。さらに、当該構成部分については、その説明を一部または全て省略することがある。
【0046】
図4は、第2の実施の形態に係るインクジェットヘッド1Aを一部切り欠いて示す斜視図である。なお、図4において、絶縁膜35は省略されている。図5は、図4のF5−F5線に沿ってインクジェットヘッド1Aの一部を示す断面図である。
【0047】
図4に示すように、第2の実施形態のインクジェットヘッド1Aは、いわゆるサイドシュータ型のインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド1Aは、基板61と、一対の圧電部材62と、枠部材63と、ノズルプレート13と、複数の駆動IC14と、マニホールド64とを備えている。図5に示すように、枠部材63の内側に、インクが供給されるインク室66が形成されている。インク室66は、基板61と、ノズルプレート13とによって塞がれている。一対の圧電部材62は、インク室66の内部に配置されている。
【0048】
基板61は、例えばアルミナのようなセラミックスによって、矩形の板状に形成されている。基板61は、平坦な第1の面61aと、第1の面61aの反対側に位置する第2の面61bとを有している。第2の面61bは、マニホールド64に取り付けられる。図4に示すように、基板61に、複数のインク供給口73と、複数のインク排出口74とが設けられている。
【0049】
複数のインク供給口73は、基板61の中央部に設けられている。複数のインク供給口73は、基板61の長手方向に並んでいる。インク供給口73は、インク室66にそれぞれ開口している。インク供給口73は、基板61がマニホールド64に取り付けられると、マニホールド64を介してインクタンクに連結される。インクタンクのインクは、インク供給口73からインク室66に供給される。
【0050】
複数のインク排出口74は、複数のインク供給口73を挟むように2列に並んで設けられている。インク排出口74は、インク室66にそれぞれ開口している。インク排出口74は、基板61がマニホールド64に取り付けられると、マニホールド64を介してインクタンクにそれぞれ連結される。インク室66内のインクは、インク排出口74からインクタンクに回収される。
【0051】
一対の圧電部材62は、基板61の第1の面61aにそれぞれ取り付けられ、基板61の長手方向に互いに平行に延びている。圧電部材62は、インク供給口73とインク排出口74との間にそれぞれ配置されている。
【0052】
一対の圧電部材62は、例えば、PZT製の2枚の圧電板を互いの分極方向を反対向きとするように貼り合わせてそれぞれ形成されている。一対の圧電部材62は、台形状の断面を有する棒状にそれぞれ形成されている。
【0053】
一対の圧電部材62は、インク室66に連通する複数の圧力室77をそれぞれ有している。複数の圧力室77は、それぞれ圧電部材62が延びる方向と交差する溝状に形成されている。図5に示すように、複数の圧力室77に、電極31がそれぞれ設けられている。電極31は、圧力室77の側面および底面に形成されている。
【0054】
基板61の第1の面61aに、複数の配線パターン33が設けられている。配線パターン33は、基板61の側縁61cから圧電部材62に亘って設けられ、複数の電極31にそれぞれ接続されている。
【0055】
基板61および圧電部材62に、絶縁性および耐インク性を有する絶縁膜35が設けられている。絶縁膜35は、電極31と、配線パターン33の一部と、基板61の第1の面61aの一部と、基板61の第2の面61bと、圧電部材22とを覆っている。なお、絶縁膜35は他の箇所を覆っていても良い。絶縁膜35によって、電極31は圧力室77に供給されたインクから保護される。さらに、配線パターン33は、絶縁膜35によってインク室66に供給されたインクから保護される。
【0056】
絶縁膜35は、基板61の側縁61cの周辺で途切れている。このため、配線パターン33は、絶縁膜35に覆われずに露出した露出部33aを有している。
【0057】
枠部材63は、接着剤38によって絶縁膜35の上から基板61の第1の面61aに取り付けられる。枠部材63は、一対の圧電部材62、複数のインク供給口73、および複数のインク排出口74を囲んでいる。
【0058】
接着剤38は、基板61と枠部材63との間に介在している。接着剤38は、例えば耐インク性と熱硬化性とを有するエポキシ系接着剤である。なお、接着剤38はこれに限らず、例えばシリコン系接着剤や、アクリル系接着剤であっても良い。
【0059】
ノズルプレート13は、枠部材63に取り付けられている。ノズルプレート13に、複数のノズル45が設けられている。複数のノズル45は、複数の圧力室77に対応し、並んで設けられている。複数のノズル45は、複数の圧力室77に開口している。
【0060】
駆動IC14は、絶縁膜35の端部35aの近傍で、複数の配線パターン33の露出部33aに接続されている。駆動IC14は、インクジェットヘッド1Aを制御するためのフレキシブルプリント回路板である。なお、駆動IC14の位置は、絶縁膜35の端部35aの近傍に限らない。
【0061】
駆動IC14は、ACF48によって、配線パターン33に熱圧着接続される。なお、駆動IC14は、ACF48に限らず、例えばACP、NCF、およびNCPのような他の手段によって、配線パターン33に接続されても良い。
【0062】
駆動IC14は、インクジェットプリンタの制御部から入力される信号に基づいて、配線パターン33を介して電極31に電圧を印加する。電極31を介して電圧を印加された圧電部材62は、シェアモード変形することにより、圧力室77に供給されたインクを加圧する。加圧されたインクは、対応するノズル45から吐出される。
【0063】
図5に示すように、絶縁膜35の端部35aは、枠部材63の外に位置している。言い換えると、絶縁膜35の端部35aは、枠部材63と駆動IC14との間に位置している。絶縁膜35は、基板61の第1の面61aの中央部分から、枠部材63の下を通って基板61の側縁61cの周辺まで形成されている。なお、絶縁膜35は、基板61の第1の面61aの中央部分から一方の側縁61cの周辺までのみならず、他方の側縁61cの周辺まで形成されている。
【0064】
絶縁膜35の端部35aは、保護剤51によって覆われている。絶縁膜35の端部35aは、この保護剤51によって封止される。保護剤51は、絶縁膜35の端部35aと駆動IC14との間において、配線パターン33の露出部33aを覆っている。
【0065】
保護剤51は、例えば接着剤38と同じく、耐インク性と熱硬化性とを有するエポキシ系接着剤である。なお、保護剤51はこれに限らず、例えばシリコン系接着剤や、アクリル系接着剤であっても良い。なお、保護剤51は、接着剤38とは異なる種類の接着剤であっても良い。
【0066】
保護剤51は、駆動IC14に付着し、駆動IC14の一部を覆っている。このため、保護剤51は、ACF48とともに駆動IC14を基板61に固定する。
【0067】
以下に、前記構成のインクジェットヘッド1Aの製造方法の一例について説明する。まず、焼成前のセラミックスシート(セラミックスグリーンシート)で構成される基板61に、プレス成形によってインク供給口73と、インク排出口74とを形成する。続いて、基板61を焼成する。
【0068】
次に、例えば熱硬化性の接着剤によって、基板61に一対の圧電部材62を取り付ける。一対の圧電部材62は、治具によって基板61上に位置決めされ、基板61に取り付けられる。続いて、一対の圧電部材62のそれぞれの角部に、いわゆるテーパ加工を行う。これによって、一対の圧電部材62のそれぞれの断面が台形状になる。
【0069】
次に、一対の圧電部材62に、複数の圧力室77を形成する。複数の圧力室77は、例えば、ICウェハーの切断に用いられているダイシングソーのダイヤモンドホイールによって形成される。
【0070】
次に、複数の圧力室77に電極31を形成すると同時に、基板61の第1の面61aに複数の配線パターン33を形成する。電極31および配線パターン33は、無電解メッキ法を用い、例えばニッケル薄膜によって形成される。次に、レーザ照射によりパターニングを行い、電極31および配線パターン33以外の部位からニッケル薄膜を除去する。
【0071】
次に、CVDによって、絶縁膜35を形成する。この際、基板61の第1の面61aの側縁61cの周辺やその他の絶縁膜35を設けない部分は、例えばポリイミドテープのようなマスキングテープによって保護される。絶縁膜35が形成された後、マスキングテープが除去される。これにより、絶縁膜35に覆われずに露出された配線パターン33の露出部33aが形成される。
【0072】
絶縁膜35を形成した後、接着剤38を用いて、基板61に枠部材63を取り付ける。接着剤38は、例えばスクリーン印刷によって枠部材63に塗布される。枠部材63は、絶縁膜35の上から基板61に接着される。
【0073】
次に、熱硬化性の接着剤により、圧電部材62および枠部材63に、ノズル45が形成される前のノズルプレート13を貼り付ける。ノズルプレート13に、例えばバーコーターにより撥インク膜が形成されている。枠部材63に取り付けられたノズルプレート13にエキシマレーザのレーザ光を照射して、複数のノズル45を形成する。
【0074】
次に、ACF48によって、駆動IC14を配線パターン33の露出部33aに熱圧着接続する。ACF48を介して、駆動IC14は、配線パターン33に電気的に接続される。
【0075】
次に、枠部材63の外に位置する絶縁膜35の端部35aと駆動IC14との間に保護剤51を、例えばディスペンサによって塗布する。保護剤51は、絶縁膜35の端部35aの上から塗布され、端部35aを封止する。保護剤51によって、絶縁膜35の端部35aと駆動IC14との間の配線パターン33の露出部33aが覆われる。
【0076】
最後に基板61の第2の面61bをマニホールド64に取り付け、図4に示すインクジェットヘッド1Aの製造工程が終了する。なお、インクジェットヘッド1Aの製造工程で使用された熱硬化性の接着剤は、各部材が取り付けられた都度熱硬化しても良いし、ある段階でまとめて熱硬化しても良い。
【0077】
前記構成のインクジェットヘッド1Aによれば、保護剤51によって、絶縁膜35の端部35aが覆われている。これにより、絶縁膜35が端部35aから剥がれたり、インクが端部35aから絶縁膜35と配線パターン33との間に浸入したりすることを防止できる。さらに、保護剤51が絶縁膜35の端部35aを封止するため、端部35aにインクが付着することが防止される。
【0078】
保護剤51は、枠部材63の外に位置する絶縁膜35の端部35aと駆動IC14との間の配線パターン33の露出部33aを覆っている。これにより、例えばインクを供給するチューブからのインク漏れや、メンテナンス時のインクの這い上がりにより、駆動IC14の付近までインクが浸入したとしても、インクが露出部33aに付着することを防止できる。したがって、インクによって配線パターン33が腐食したり、短絡が生じたりすることを防止できる。以上のように、導電性の配線パターン33を保護することができる。
【0079】
保護剤51は、耐インク性の接着剤である。このため、ディスペンサで保護剤51を塗布することで、容易に絶縁膜35の端部35aと駆動IC14との間の配線パターン33の露出部33aを覆うことができる。さらに、保護剤51は接着剤38と同種の接着剤であるため、インクジェットヘッド1Aの製造コストの上昇を抑えることができる。
【0080】
保護剤51は、駆動IC14に付着している。これにより、保護剤51は、ACF48とともに駆動IC14を基板61に固定し、駆動IC14が配線パターン33から剥離することを防止できる。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1,1A…インクジェットヘッド、10…本体、11,63…枠部材、12…蓋部材、13…ノズルプレート、14…駆動IC、21,61…基板、22,62…圧電部材、27,77…圧力室、31…電極、33…配線パターン、35…絶縁膜、35a…端部、38…接着剤、45…ノズル、51…保護剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧力室が設けられた本体と、
前記複数の圧力室にそれぞれ設けられた複数の電極と、
前記本体に設けられ、前記複数の電極にそれぞれ接続された複数の導電部と、
前記電極と前記導電部の一部とを覆う絶縁膜と、
内側に前記複数の圧力室に連通したインク室が設けられ、前記絶縁膜の上から前記本体に取り付けられた枠部材と、
前記枠部材に取り付けられ前記インク室を塞いだ蓋部材と、
前記複数の導電部に接続された電子部品と、
前記枠部材と前記電子部品との間に位置する前記絶縁膜の端部と、前記絶縁膜の端部と前記電子部品との間の前記導電部と、を覆う保護剤と、
を具備することを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記絶縁膜の端部が前記保護剤によって封止されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記保護剤が耐インク性の接着剤であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記保護剤が前記電子部品に付着したことを特徴とする請求項3に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記枠部材が接着剤によって前記本体に取り付けられ、
前記保護剤が、前記接着剤と同種の接着剤であることを特徴とする請求項3に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
基板と、
前記基板に取り付けられ、複数の圧力室を有する圧電部材と、
前記複数の圧力室にそれぞれ設けられた複数の電極と、
前記基板に設けられ、前記複数の電極にそれぞれ接続された複数の導電部と、
前記電極と前記導電部の一部とを覆う絶縁膜と、
内側に前記圧電部材が配置されたインク室が設けられ、前記絶縁膜の上から前記基板に取り付けられた枠部材と、
前記枠部材に取り付けられ前記インク室を塞ぎ、前記複数の圧力室にそれぞれ開口する複数のノズルを有するノズルプレートと、
前記複数の導電部に接続された電子部品と、
前記枠部材と前記電子部品との間に位置する前記絶縁膜の端部と、前記絶縁膜の端部と前記電子部品との間の前記導電部と、を覆う保護剤と、
を具備することを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項7】
前記絶縁膜の端部が前記保護剤によって封止されることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッド。
【請求項8】
前記保護剤が耐インク性の接着剤であることを特徴とする請求項7に記載のインクジェットヘッド。
【請求項9】
前記保護剤が前記電子部品に付着したことを特徴とする請求項8に記載のインクジェットヘッド。
【請求項10】
前記枠部材が接着剤によって前記基板に取り付けられ、
前記保護剤が、前記接着剤と同種の接着剤であることを特徴とする請求項8に記載のインクジェットヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−187864(P2012−187864A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54385(P2011−54385)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】