説明

インクジェット印刷のための布の前処理

本発明は、布へのインクジェット印刷、および布の上への高品質印刷を許容する布用の前処理溶液に関する。デジタル印刷されるインクは顔料化インクであることが好ましい。前処理溶液は水性多価カチオン性塩を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前処理された布への顔料化インクジェットインクを用いたインクジェット印刷、およびその上への高品質印刷を許容する布用の前処理溶液に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条のもと、2005年9月15日出願の米国仮特許出願第60/717,439号明細書に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
インクジェット印刷などのデジタル印刷方法は、織物の印刷にますます重要になっており、およびスクリーン印刷などの従来の印刷方法を超える多数の潜在的な有益性を提供する。デジタル印刷は、スクリーンの調製に関連するセットアップ費用を排除し、および経済的な短期間での生産を潜在的に可能とすることが可能である。しかも、インクジェット印刷は、スクリーン印刷プロセスでは実際的には実現不可能である色調グラデーションおよび無限のパターン反復サイズなどの視覚的効果を許容する。
【0004】
デジタル印刷はほとんどすべての布についての利用可能な印刷条件の幅を提供するが、布上で、より高次の色(higher color)を達成する必要が度々ある。本発明は、綿および綿ブレンドなどの布の、顔料化インクジェットインクを用いた、より高次の色の、高品質インクジェット印刷を実現することを目的とする。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5022592号明細書
【特許文献2】米国特許第5026427号明細書
【特許文献3】米国特許第5310778号明細書
【特許文献4】米国特許第5891231号明細書
【特許文献5】米国特許第5976232号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第20030089277号明細書
【特許文献7】米国特許第5085698号明細書
【特許文献8】EP−A−0556649号明細書
【特許文献9】米国特許第5231131号明細書
【特許文献10】米国特許第6117921号明細書
【特許文献11】米国特許第6262152号明細書
【特許文献12】米国特許第6306994号明細書
【特許文献13】米国特許第6433117号明細書
【特許文献14】米国特許第2439442号明細書
【特許文献15】米国特許第3023118号明細書
【特許文献16】米国特許第3279935号明細書
【特許文献17】米国特許第3347632号明細書
【特許文献18】米国特許第5554739号明細書
【特許文献19】米国特許第5571311号明細書
【特許文献20】米国特許第5609671号明細書
【特許文献21】米国特許第5672198号明細書
【特許文献22】米国特許第5698016号明細書
【特許文献23】米国特許第5707432号明細書
【特許文献24】米国特許第5718746号明細書
【特許文献25】米国特許第5747562号明細書
【特許文献26】米国特許第5749950号明細書
【特許文献27】米国特許第5803959号明細書
【特許文献28】米国特許第5837045号明細書
【特許文献29】米国特許第5846307号明細書
【特許文献30】米国特許第5851280号明細書
【特許文献31】米国特許第5861447号明細書
【特許文献32】米国特許第5885335号明細書
【特許文献33】米国特許第5895522号明細書
【特許文献34】米国特許第5922118号明細書
【特許文献35】米国特許第5928419号明細書
【特許文献36】米国特許第5976233号明細書
【特許文献37】米国特許第6057384号明細書
【特許文献38】米国特許第6099632号明細書
【特許文献39】米国特許第6123759号明細書
【特許文献40】米国特許第6153001号明細書
【特許文献41】米国特許第6221141号明細書
【特許文献42】米国特許第6221142号明細書
【特許文献43】米国特許第6221143号明細書
【特許文献44】米国特許第6281267号明細書
【特許文献45】米国特許第6329446号明細書
【特許文献46】米国特許出願公開第2001/0035110号明細書
【特許文献47】EP−A−1114851号明細書
【特許文献48】EP−A−1158030号明細書
【特許文献49】国際公開第01/10963号パンフレット
【特許文献50】国際公開第01/25340号パンフレット
【特許文献51】国際公開第01/94476号パンフレット
【特許文献52】米国特許出願第10/872,856号明細書
【特許文献53】米国仮特許出願第60/717,483号明細書
【特許文献54】米国特許出願公開第20050182154号明細書
【特許文献55】米国特許出願公開第20030160851号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様において、本発明は:
(a)織物を、水性多価カチオン性塩溶液を含む前処理溶液で前処理するステップと、
(b)前処理した織物を乾燥するステップと、
(c)乾燥し、前処理した織物を顔料化インクジェットインクでデジタル印刷するステップと
を含む織物をデジタル印刷する方法に関する。
【0007】
本発明は、他の態様において、水性多価カチオン性塩溶液で前処理された布に関し、ここで、多価カチオン性塩は、硝酸カルシウム、硝酸カルシウム水和物およびこれらの混合物からなる群から選択されるカルシウム塩である。
【0008】
本発明のこれらおよび他の機構および利点は、以下の詳細な説明の記載から当業者によってより容易に理解されるであろう。明確さのために個別の実施形態のコンテクストで上述の、および後述される本発明の一定の特徴は、単一の実施形態における組み合わせでも提供され得ることが認識されるべきである。逆に、簡潔さのために単一の実施形態コンテクストで記載される本発明の種々の特徴はまた、個別に、またはいずれかのサブコンビネーションで提供され得る。さらに、単数形での言及はまた、コンテクストがそうでないと特定的に明記していない限りは、複数をも包含し得る(例えば、「a」および「an」は、1つ、または1つまたは複数を指し得る)。さらに、範囲で明記された値への言及は、その範囲内の各値およびあらゆる値を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(前処理溶液)
本発明の方法において用いられる前処理溶液は、水性多価カチオン性塩溶液である。より好ましくは、前処理溶液は、多価カチオン性塩の水溶液を含む。場合により、他の成分を添加することが可能である。本願明細書において後述される構成成分割合は、他に示されていない限りにおいて、最終溶液の総重量に基づく重量パーセントである。
【0010】
(多価カチオン)
本発明の前処理は、1種または複数種の多価カチオンを含む。特定の状況において必要な有効量は異なることが可能であり、および本願明細書に提供されているとおり、いくらかの調整が一般的には必要であろう。
【0011】
「多価」とは、2つ以上の酸化状態を示し、および、元素「Z」については、典型的にはZ2+、Z3+、Z4+等として記載される。簡潔さのために、多価カチオンは、本願明細書においてZとして称され得る。多価カチオンは、水性前処理溶液中に実質的に可溶であり、好ましくは(溶液中に)実質的にイオン化状態で存在し、従って、これらは、遊離して、織物が前処理溶液に露出されるときに織物との作用に利用可能な形態にある。
【0012】
としては、特に制限されないが、以下:Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、V、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Cu、Au、Zn、Al、Ga、In、Sb、Bi、Ge、Sn、Pbの元素の多価カチオンが挙げられる。他の実施形態において、多価カチオンは、Ca、Ba、Ru、Co、ZnおよびGaの少なくとも1つを含む。さらに他の実施形態において、多価カチオンは、Ca、Ba、Ru、Co、ZnおよびGaの少なくとも1つを含む。多価カチオンがCaであることが好ましい。
【0013】
は、塩形態での添加により、またはアルカリ形態での添加により前処理溶液に組み込まれることが可能であり、前処理溶液pHの調整においては塩基として用いられる。
【0014】
関連するアニオン性材料は、いずれかの一般的なアニオン性材料、特にハロゲン化物、硝酸塩および硫酸塩から選択されることが可能である。アニオン性形態は、多価カチオンが水性前処理溶液中に可溶であるよう選択される。多価カチオン性塩は、それらの水和物形態で用いられることが可能である。
【0015】
Caに関して、好ましい多価カチオン塩は、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硝酸カルシウム水和物およびこれらの混合物である。硝酸カルシウム、硝酸カルシウム水和物およびこれらの混合物が特に好ましい。
【0016】
前処理溶液における他の任意選択の成分としては、これらに限定されないが、湿潤剤および殺生剤が挙げられ得、殺生剤は、微生物性の分解を阻害する(これらの選択および使用は、一般的には技術分野において周知である)。好適な湿潤剤は、以下にさらに詳細に考察されているとおり、顔料化インクジェットインクにおける使用に好適であるものと同一である。
【0017】
前処理溶液の残りは水である。基本的に多価カチオン性塩の水溶液からなる前処理溶液が特に好適である。
【0018】
溶液は、十分な多価カチオン含有量と、織物の多価カチオンとの適当なインフュージョンおよび/またはコーティングを提供する他の成分とを含むべきである。典型的には、前処理は、少なくとも約0.5重量%の多価カチオン塩を含むこととなり、量は、特に多価カチオン塩または用いられる塩の溶解限度まで用いられることが可能である。好ましくは、前処理は、約1.0重量%〜約30重量%の多価カチオン塩を含むであろう。
【0019】
(布)
前処理される布は、顔料化インクジェットインクでの印刷に好適であるいずれかの布であることが可能であり、および綿および/または綿ブレンドを含む布であることが好ましい。
【0020】
(布の前処理)
前処理の布への適用は、いずれかの簡便な方法であることが可能であり、このような方法は、一般的には技術分野において周知である。一つの実施例は、パディングと称される適用方法である。パディングにおいて、布は、前処理溶液中に浸漬され、次いで飽和した布が過剰な溶液を絞るニップローラを通される。布に保持される溶液の量は、ローラによって加圧されるニップ圧によって規制されることが可能である。他の前処理技術は、布の表面または表面および裏面に溶液が吹付けによって適用される噴霧適用を含む。吹付けは、印刷された布のデジタル印刷領域に制限されることが可能である。この制限された吹付けが特に適用可能であろう実施例は、例えばTシャツ、帽子、肌着等の衣服物品などの予め形成された織物物品へのイメージのデジタル印刷である。
【0021】
好ましくは、前処理溶液は、約0.20〜約7.5グラムの多価カチオン性(カルシウム)塩/100グラムの布、より好ましくは約0.60〜約6.0グラムの多価カチオン性(カルシウム)塩/100グラムの布、およびさらにより好ましくは約0.75〜約5.0グラムの多価カチオン性(カルシウム)塩/100グラムの布の含浸量で布に適用される。
【0022】
前処理の適用後、布は、いずれかの簡便な方法で乾燥され得る。布は、最終含水割合が(およそ)前処理された布の周囲温度での平衡含水率と同等であるよう、印刷時には実質的に乾燥していることが好ましい。布中の水分の絶対量は、当然、周囲の空気の相対湿度に依存して多少異なっていることが可能である。
【0023】
乾燥後に布中に残留する多価塩は、印刷中にインクジェットインクと相互作用するであろう相互作用的材料を提供する。十分な多価塩が、より明るい/よりカラフルなイメージを得るために存在していなければならないことが認識されるであろう。日常的な最適化が、所与のプリンタおよび顔料化インクまたはインクセットに対する適切な多価塩レベルを明らかにするであろう。
【0024】
(顔料化インクジェットインク)
本方法における使用について好適である顔料化インクジェットインクは、典型的に、ビヒクル中に分散された顔料を含む。ビヒクルは、水性または非水性であることが可能であるが、水性ビヒクルが好ましい。好ましくは、顔料化インクは、水性ビヒクル中に分散されたアニオン的に安定化された顔料を含む。
【0025】
「水性ビヒクル」とは、水または水と少なくとも1種の水溶性有機溶剤(共溶剤)または湿潤剤との混合物を含むビヒクルを指す。好適な混合物の選択は、所望の表面張力および粘度などの特定の用途の要求、選択される着色剤、およびインクが印刷されることとなる基材との親和性に依存する。
【0026】
水溶性有機溶剤および湿潤剤の実施例としては:チオジグリコール、スルホラン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンおよびカプロラクタムなどのアルコール、ケトン、ケト−アルコール、エーテルなど;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコールおよびヘキシレングリコールなどのグリコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等などのオキシエチレンまたはオキシプロピレンの付加ポリマー;グリセロールおよび1,2,6−ヘキサントリオールなどのトリオール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル;ジエチレングリコールジメチルまたはジエチルエーテルなどの多価アルコールの低級ジアルキルエーテル;尿素および置換尿素が挙げられる。
【0027】
水性ビヒクルは、典型的には約30%〜約95%の水を含有することとなり、残り(すなわち、約70%〜約5%)は水溶性溶剤である。インク組成物は、典型的には、水性ビヒクルの総重量に基づいて約60%〜約95%の水を含有する。
【0028】
織物の多価前処理と共に用いられるに好適な顔料は、一般的には、水性インクジェットインクについて技術分野において周知であるものである。伝統的に、顔料は、高分子分散剤などの分散剤または界面活性剤によって安定化されて、顔料のビヒクル中の安定な分散体を生成する。より最近においては、しかしながら、いわゆる「自己分散可能な」または「自己分散性」顔料(本願明細書中以下、「SDP」)が開発されてきている。名前が示唆するとおり、SDPは、水中に分散剤無しで分散性である。分散染料はまた、本願明細書において用いられる水性インク中に不溶性であるため顔料とみなされる。
【0029】
顔料に適用される分散剤または表面処理は、アニオン性表面電荷(「アニオン性顔料分散体」)を形成する。好ましくは、その表面電荷は、主にイオン性カルボン酸(カーボキシレート)基により付与される。
【0030】
添加される分散剤によって安定化される顔料は、技術分野において公知である方法によって調製され得る。濃縮形態で安定化された顔料を形成することが、一般的には望ましい。安定化された顔料は、先ず、選択された顔料および高分子分散剤を水性キャリア媒体(水および、場合により、水−混和性の溶剤など)中に予め混合し、次いで、顔料を分散または解凝させることにより調製される。分散ステップは、2−ロールミル、媒体ミル、水平ミニミル、ボールミル、磨砕機において、または混合物を、液体噴射相互作用チャンバ内の複数のノズルに、少なくとも5,000psiの液体圧力で通過させて、顔料粒子の水性キャリア媒体中の均一な分散体(マイクロ流動化装置)を生成することにより達成され得る。あるいは、濃縮物は、高分子分散剤および顔料を圧力下での乾燥ミルにより調製され得る。媒体ミル用の媒体は、ジルコニア、YTZおよびナイロンを含む一般に入手可能である媒体から選択される。これらの種々の分散体プロセスは、米国特許公報(特許文献1)、米国特許公報(特許文献2)、米国特許公報(特許文献3)、米国特許公報(特許文献4)、米国特許公報(特許文献5)および米国特許公報(特許文献6)により例示されるとおり、一般的な意味で技術分野において周知である。これら公報の各々の開示は、本願明細書における参照によりすべての目的のためにその内容全体を本願明細書に記載したものとして援用される。2−ロールミル、媒体ミル、および混合物を液体噴射相互作用チャンバ内の複数のノズルに、少なくとも5,000psiの液体圧力で通過させることが好ましい。
【0031】
ミルプロセスが完了した後、顔料濃縮物は、水性系中に「薄め」られ得る。「薄め」られるとは、混合または分散での濃縮物の希釈を指し、混合/分散の強度は、通常、試行および慣例の方法を用いる誤差により判定され、および度々、高分子分散剤、溶剤および顔料の組み合わせに依存する。
【0032】
顔料の安定化に用いられる分散剤は、高分子分散剤であることが好ましい。構造化ポリマーが技術分野において周知である理由で分散剤としての使用に好ましいが、構造化またはランダムポリマーのいずれかが用いられ得る。「構造化ポリマー」という用語は、ブロック、分岐またはグラフト構造を有するポリマーを意味する。構造化ポリマーの実施例は、米国特許公報(特許文献7)に開示されているものなどのABまたはBABブロックコポリマー;(特許文献8)に開示されているものなどのABCブロックコポリマー;および米国特許公報(特許文献9)に開示されているものなどのグラフトポリマーを含む。例えば米国特許公報(特許文献10)、米国特許公報(特許文献11)、米国特許公報(特許文献12)および米国特許公報(特許文献13)に、用いられることが可能である他の高分子分散剤が記載されている。これらの公報の各々開示は、本願明細書における参照によりすべての目的のためにその内容全体が本願明細書に記載したものとして援用される。
【0033】
本発明における使用に好適であるポリマー分散剤は、疎水性および親水性モノマーの両方を含む。ランダムポリマーにおいて用いられる疎水性モノマーのいくつかの実施例は、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレートおよび関連するアクリレートである。親水性モノマーの実施例は、メタクリル酸、アクリル酸、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびこれらの塩である。ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの第4級塩もまた用いられ得る。
【0034】
広く多様な有機および無機顔料が、単独でまたは組み合わせで、他のインクを形成するために選択され得る。本明細書で使用される場合、用語「顔料」は、不溶性着色剤を意味する。顔料粒子は、インクのインクジェット印刷デバイス、特に通常約10ミクロン〜約50ミクロンの範囲の直径を有する吐出ノズルでの自由な流れを許容するために、十分に小さいべきである。粒径はまた、顔料分散安定性に影響を有し、これはインクの寿命を通じて重要である。微細な粒子のブラウン運動は、粒子の凝集の防止を補助する。最大色強度および光沢についても、小さい粒子を用いることが望ましい。有用な粒径の範囲は、典型的には約0.005ミクロン〜約15ミクロンである。好ましくは、顔料粒径は、約0.005〜約5ミクロンおよび、最も好ましくは、約0.005〜約1ミクロンの範囲であるべきである。動的光散乱法により計測される平均粒径は、約500nm未満、好ましくは約300nm未満である。
【0035】
選択される顔料は、乾燥またはウェット形態で用いられ得る。例えば、顔料は、通常は、水性媒体中に生産され、および得られる顔料は、水で濡れたプレスケーキとして入手される。プレスケーキ形態において、顔料は、乾燥形態における程度にまでは凝塊していない。それ故、水に濡れたプレスケーキ形態の顔料は、インクの調製方法において、乾燥形態の顔料ほどの解凝を必要としない。(代表的な商業的に入手し得る乾燥顔料は、上述の援用された米国特許公報(特許文献7)に列記される。)
【0036】
有機顔料の場合、インクは、総インク重量に基づいて、およそ30重量%以下、好ましくは約0.1〜約25重量%、およびより好ましくは約0.25〜約10重量%の顔料を含有し得る。無機顔料が選択される場合、インクは、有機顔料を用いる同等のインクより多量の重量パーセントの顔料を含有する傾向にあることとなり、およびいくつかの場合においては、無機顔料は、一般的には、有機顔料より大きい比重を有するため、約75%もの量となり得る。
【0037】
自己分散顔料を用いられることが可能であり、これらは、度々、同一の顔料装填物でのより大きい安定性および低い粘度観点から、伝統的な分散剤で安定化された顔料を超えて有利である。これは、より大きな配合許容範囲を最終インクにおいて提供することが可能である。
【0038】
SDPおよび特定の自己分散性カーボンブラック顔料は、例えば、米国特許公報(特許文献14)、米国特許公報(特許文献15)、米国特許公報(特許文献16)および米国特許公報(特許文献17)に開示されている。SDP、SDPおよび/またはSDPと共に配合される水性インクジェットインクの形成方法の追加の開示は、例えば、米国特許公報(特許文献18)、米国特許公報(特許文献19)、米国特許公報(特許文献20)、米国特許公報(特許文献21)、米国特許公報(特許文献22)、米国特許公報(特許文献23)、米国特許公報(特許文献24)、米国特許公報(特許文献25)、米国特許公報(特許文献26)、米国特許公報(特許文献27)、米国特許公報(特許文献28)、米国特許公報(特許文献29)、米国特許公報(特許文献30)、米国特許公報(特許文献31)、米国特許公報(特許文献32)、米国特許公報(特許文献33)、米国特許公報(特許文献34)、米国特許公報(特許文献35)、米国特許公報(特許文献36)、米国特許公報(特許文献37)、米国特許公報(特許文献38)、米国特許公報(特許文献39)、米国特許公報(特許文献40)、米国特許公報(特許文献41)、米国特許公報(特許文献42)、米国特許公報(特許文献43)、米国特許公報(特許文献44)、米国特許公報(特許文献45)、米国特許公報(特許文献46)、(特許文献47)、(特許文献48)、(特許文献49)、(特許文献50)、および(特許文献51)に見出されることが可能である。
【0039】
二酸化チタンはまた、用いられることが可能である顔料の実施例であり、および色がホワイトであるため、潜在的に有利である。二酸化チタンは、インクジェットプリンタシステムに適合するインクビヒクル中に分散させることが困難である可能性がある。インクジェット的に安定な二酸化チタンを提供するこれらの分散体および/またはインクビヒクルは、多価カチオン前処理した織物で用いられることが可能である。
【0040】
好ましい実施形態において、グラフトおよびブロックコポリマーの組み合わせは、米国特許公報(特許文献52)(出願日2004年6月21日)に記載のものなどの二酸化チタン顔料についての共分散剤として用いられ、その開示は、本願明細書における参照によりすべての目的のためにその内容全体を本願明細書に記載したものとして援用される。この分散剤の組み合わせは、二酸化チタン顔料スラリーの安定化に効果的であり、しかも、高い安定性をインク配合物において提供する。他の好ましい二酸化チタンインクジェットインクが、名称が「水性インクジェットインク(Aqueous Inkjet Ink)」である、2005年9月15日出願の、共有であり本明細書と同時に出願された米国特許公報(特許文献53)(内部参照番号IJ0132USPRV)において記載されており、その開示は、本願明細書における参照によりすべての目的のためにその内容全体を本願明細書に記載したものとして援用される。
【0041】
(添加剤)
他の成分(添加剤)が、慣例の実験により容易に測定され得る最終インクの安定性および可噴射性にこのような他の成分が干渉しない程度において、インクジェットインクに配合され得る。このような他の成分は、一般的な意味で技術分野において周知である。
【0042】
普通、界面活性剤は、表面張力および湿潤性を調整するためにインクに添加される。好適な界面活性剤としては、エトキシル化アセチレンジオール(例えばエアープロダクツ(Air Products)製のサーフィノール(Surfynols)(登録商標)シリーズ)、エトキシル化第一級アルコール(例えばシェル(Shell)製のネオドール(Neodol)(登録商標)シリーズおよびトマープロダクツ(Tomah Products)製のトマドール(Tomadol)(登録商標)シリーズ)および第二級アルコール(例えばユニオンカーバイド(Union Carbide)製のテルギトール(Tergitol)(登録商標)シリーズ)、スルホコハク酸塩(例えばサイテック(Cytec)製のエアロゾル(Aerosol)(登録商標)シリーズ)、オルガノシリコーン(例えばGEシリコンズ(GE Silicons)製のシルウェット(Silwet)(登録商標)シリーズ)およびフルオロ界面活性剤(例えば本特許出願人製のゾニール(Zonyl)(登録商標)シリーズ)が挙げられる。界面活性剤は、典型的には、インクの総重量に基づいて約0.01〜約5%および好ましくは約0.2〜約2%の量で用いられる。
【0043】
ポリマーは、耐久性を向上させるためにインクに添加され得る。ポリマーは、ビヒクル中に可溶または分散(例えば「エマルジョンポリマー」または「ラテックス」)されることが可能であり、およびイオン性またはノニオン性であることが可能である。ポリマーの有用なクラスとしては、アクリル系、スチレン−アクリル系およびポリウレタンが挙げられる。特に好ましいバインダ添加剤は、米国特許公報(特許文献54)に記載のとおり架橋ポリウレタンであり、その開示は本願明細書における参照によりすべての目的のためにその内容全体を本願明細書に記載したものとして援用される。
【0044】
殺生剤が、微生物の増殖を阻害するために用いられ得る。緩衝がpHを維持するために用いられ得る。緩衝としては、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン(「トリズマ(Trizma)」または「トリス(Tris)」)が挙げられる。
【0045】
エチレンジアミン4酢酸(EDTA)、イミノ二酢酸(IDA)、エチレンジアミン−ジ(o−ヒドロキシフェニル酢酸)(EDDHA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジヒドロキシエチレングリシン(DHEG)、トランス−1,2−シクロヘキサンジアミンテトラ酢酸(CyDTA)、ジエチレントリアミン−N,N,N’,N”、N”−ペンタ酢酸(DTPA)、およびグリコールエーテルジアミン−N,N,N’,N’−テトラ酢酸(GEDTA)、およびこれらの塩などの金属イオン封鎖(またはキレート化)剤の包含が、例えば、重金属不純物の有害な影響を排除するために有利であり得る。
【0046】
上述の成分は、一般的には上述のおよび一般的に当業者により認識されている所望のインク特性を達成するために、種々の比率および組み合わせでインクを形成することが可能である。特定の最終用途のためにインクを最適化するためにいくつかの実験法が必要であり得るが、このような最適化は、一般的には技術分野における通常の技術である。
【0047】
インクにおけるビヒクルの量は、典型的には、約70%〜約99.8%、および典型的には約80%〜約99%の範囲である。着色剤は、一般的には、約10%以下の量で存在する。割合は、インクの総重量の重量パーセントである。
【0048】
他の成分(添加剤)は、存在する場合、一般的には、インクの総重量に基づいて約15重量%未満で含まれる。界面活性剤は、添加される場合、一般的には、インクの総重量に基づいて約0.2〜約3重量%の範囲である。ポリマーは、必要に応じて添加されることが可能であるが、一般的にはインクの総重量に基づいて約15重量%未満であろう。
【0049】
液滴速度、小滴の分離長さ、液滴サイズおよび流れ安定性は、インクの表面張力および粘度によって大きく影響される。インクジェットインクは、典型的には、25℃で、約20ダイン/cm〜約70ダイン/cmの範囲で表面張力を有する。粘度は、25℃で30cPもの高さであることが可能であるが、典型的にはいくらか低い。インクは、吐出条件およびプリントヘッド設計に調整される物理特性を有する。インクは、顕著な程度でインクジェット装置中で目詰まりしないよう優れた長期の保管安定性を有するべきである。さらに、インクは、接触する、インクジェット印刷デバイスの部品を腐蝕させるべきではなく、および基本的に無臭および無毒であるべきである。インクについての好ましいpHは、約6.5〜約8の範囲である。
【0050】
(インクセット)
「インクセット」という用語は、インクジェットプリンタに装着されて噴射されるすべての個別のインクまたは他の流体を指す。
【0051】
好ましい一実施形態において、インクセットは、少なくとも2つの異なって着色された顔料化インクジェットインクを含み、その少なくとも1つは上記のホワイト顔料化インクジェットインクである。
【0052】
他の好ましい実施形態において、インクセットは、少なくとも3つの異なって着色された顔料化インクジェットインクを含み、ここで、少なくとも1つはシアン顔料化インクジェットインクであり、少なくとも1つはマゼンタ顔料化インクジェットインクであり、そして少なくとも1つはイエロー顔料化インクジェットインクである。
【0053】
上記のカラーインクジェットインクに追加して、インクセット中にブラック顔料化インクジェットインクを含むこともまた好ましい。
【0054】
上述のCMYKWインクに追加して、インクセットは、CMYKWおよび他のインクの異なる濃度のものと共に、追加の異なって着色されたカラーインクを含有し得る。
【0055】
例えば、本発明のインクセットは、インクセットにおけるインクの1種または複数種のそのままの濃度のもの、ならびにそれらの「淡色」のものを含むことが可能である。
【0056】
インクジェットインクセットについての追加の色としては、例えば、オレンジ、バイオレット、グリーン、レッドおよび/またはブルーが挙げられる。
【0057】
(印刷方法)
本方法は、前処理した織物基材のデジタル印刷に関する。典型的には、これは、以下の:
(1)デジタルデータシグナルに応答性であるインクジェットプリンタを提供するステップと、
(2)プリンタに、印刷される織物基材、この場合、前処理した織物基材を装填するステップと、
(3)プリンタに、上述のインクまたはインクジェットインクセットを装填するステップと、
(4)インクジェットインク、またはインクジェットインクセットを用いて、デジタルデータシグナルに応答して基材上に印刷するステップと
を含む。
【0058】
印刷は、布を扱いおよび印刷するよう装備されたいずれかのインクジェットプリンタにより達成されることが可能である。市販されているプリンタとしては、例えば、デュポン(DuPont)(商標)アーティストリ(Artistri)(商標)3210および2020プリンタおよびプリンタのミマキ(Mimaki) TXシリーズが挙げられる。
【0059】
上記に示すとおり、多様なインクおよびインクセットが、これらのプリンタでの使用のために入手可能である。市販されているインクセットとしては、例えば、デュポン(DuPont)(商標)アーティストリ(Artistri)(商標)P700およびP5000シリーズインクが挙げられる。
【0060】
布上に置かれるインクの量はプリンタモデル、所与のプリンタにおける印刷モード(解像度)および所与の色を達成するために必要なパーセント被覆率によって異なることが可能である。すべてのこれらの考慮点の複合効果が、各色についてのグラムのインク/布の単位面積である。一つの実施形態において、インク被覆率は、カラーインク(ブラックおよびホワイトインクを含む)について、好ましくは約5〜約17グラムのインク/布1平方メートルである。
【0061】
しかしながら、ホワイトインクがデジタル印刷イメージ用のバックグラウンドとして用いられる場合には、ホワイトインクの約6倍以下(一般的には約5〜約100グラムのインク/布1平方メートル)が、増強された最終イメージを得るために用いられ得る。このような場合において、ホワイトインクは、基材上の、最終イメージによって被覆されるべき領域の少なくとも一部(下位印刷部分)上に初期に印刷され、次いで最終イメージが、少なくとも下位印刷部分上に印刷される。
【0062】
ホワイトインクはまた、最終イメージの境界の外側に印刷されて(初期バックグラウンド印刷の一部として、またはその後のイメージ印刷の一部として)、例えば、小さい、認識不可能な境界をイメージに形成して、イメージが明瞭な境界を有しているように見せることが可能である。
【0063】
イメージ用のバックグラウンドの印刷についてのホワイトインクの使用は、有色(非白色)織物上に印刷されるときに特に有用である。
【0064】
(布の後処理)
顔料化インクで印刷された布は、典型的には、織物印刷技術分野において周知である方法に従って後処理されることとなる。
【0065】
印刷された生地は、場合により、米国特許公報(特許文献55)に開示されているものなどの、熱および/または圧力で後加工され得、その開示は、本願明細書における参照によりすべての目的のためにその内容全体を本願明細書に記載したものとして援用される。上方温度は、印刷される特定の生地の許容誤差によって指定される。下方温度は、所望のレベルの耐久性を達成するために必要とされる熱量によって決定される。一般的には、融着温度は、少なくとも約80℃および好ましくは少なくとも約140℃、より好ましくは少なくとも約160℃および最も好ましくは少なくとも約180℃であろう。
【0066】
向上した耐久性を達成するために要求される融着圧力は非常に僅かであることが可能である。それ故、圧力は、約3psig、好ましくは少なくとも約5psig、より好ましくは少なくとも約8psigおよび最も好ましくは少なくとも約10psigであることが可能である。約30psi以上の融着圧力は、追加の耐久性に対してさらなる有益性はもたらさないように見受けられるが、このような圧力は除外されない。
【0067】
融着の時間(印刷された生地が、所望の温度で圧力下にある時間の長さ)は、特に重要であるとは考えられていない。融着操作における時間のほとんどは、一般的には、印刷物を所望の温度にさせるだけである。一旦印刷物が十分な温度になったら、圧力下にある時間は短時間であることが可能である(数秒)。
【実施例】
【0068】
(印刷条件)
以下に記載の実施例は、エプソン(Epson)3000インクジェットプリンタ、USスクリーンプリンティングインスティチュート(US Screen Printing Institute)(アリゾナ州テンペ(Tempe,AZ))製ファーストT−ジェット(Fast T−Jet)(商標)を用いて行い、および印刷は、種々の基材上に行った。用いた織物基材は、ヘインズビーフィ(Hanes Beefy)T100%綿Tシャツ、ヘインズヘビー(Hanes Heavy)ウェイト100%綿Tシャツ、ヘインズ(Hanes)50/50ポリコットン綿Tシャツ、およびジョアンズファブリック(Joann’s Fabric)製黒色布(100%綿ツイード織布)であった。すべてのテスト印刷物は、約170℃で約1分融着させた。
【0069】
比色計測を、スペクトラマッチ(Spectra Match)ソフトウェアを用いるミノルタスペクトロフォトメター(Minolta Spectrophotometer)CM−3600dを用いて行った。
【0070】
明示の場合には、印刷された織物を、ノースカロライナ州リサーチトライアングルパーク(Research Triangle Park, NC)の米国繊維化学者・色彩技術者協会(American Association of Textile Chemists and Colorists)(AATCC)により開発された方法に準拠して洗濯堅牢度についてテストした。AATCC試験法61−1996、「家庭および商業的洗濯に対する色堅牢度:加速(Colorfastness to Laundering, Home and Commercial: Accelerated)」を用いた。このテストにおいて、色堅牢度は、「その色特性のいずれかにおける変化、その着色剤の隣接する材料への移動、または材料の加工、テスト、保管または使用の最中に遭遇し得るいずれかの環境への材料の露出の結果もたらされる両者に対する材料の耐性」として説明される。テスト2Aおよび3Aを行い、および色洗濯堅牢度および着色格付けを記録した。これらのテストについての格付けは、1〜5で5が最良の結果であり、すなわち、それぞれ、色の損失がほとんどまたはまったくない、および他の材料への色移りがほとんどまたはまったくない。
【0071】
(前処理溶液)
試薬グレード硝酸カルシウム四水和物(アルドリッチ(Aldrich))を、脱イオン水と、硝酸カルシウムが完全に溶解するまで混合した。4つの前処理溶液を調製し、多価カチオンが存在しない比較例溶液もまた調製した。
【0072】
【表1】

【0073】
(顔料化インク)
多価前処理溶液をテストするために顔料化インクを用いた。
【0074】
インク実施例1は、表1に示す以下の配合を有している。このインクは、他の顔料化インクの印刷前または同時に印刷されることが可能であるホワイトインクである。
【0075】
【表2】

【0076】
R−746は、市販されている二酸化チタン分散体(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE)の本願特許出願人)であり、これは、分散剤として親水性アクリルコポリマーを有する76.5重量%(固形分)二酸化チタンスラリーとして記載される。このスラリーで用いた二酸化チタンは、3%含水シリカおよび1.5〜2.0%含水アルミナでコートされ、約280nmの平均粒径を有するとして記載される。
【0077】
ここで、すべての重量は、インク中の正味重量である。例えば、高分子バインダは、約33%重量パーセント水溶液中のエマルジョンとして利用可能である。それ故、約24グラムの高分子バインダエマルジョンがインク配合物に添加され、従って、8%高分子バインダが最終インク中にある。
【0078】
インク実施例2はマゼンタインクであり、顔料R122ベースである。配合物が表2にリストされている。
【0079】
【表3】

【0080】
高分子バインダは、既に援用している米国特許公報(特許文献54)における架橋ポリウレタン(PUD EX2)であった。
【0081】
(印刷性能)
インク実施例1を、前処理溶液4を用いて、および用いずに印刷した。前処理溶液は、印刷される意図したイメージとほぼ同一の領域で、Tシャツ上に噴霧した。印刷前のTシャツ上の硝酸カルシウムの推測量は、約5グラム/平方メートルであった。
【0082】
USスクリーンプリンティングインスティチュート(US Screen Printing Institute)製ファーストT−ジェット(Fast T−Jet)(商標)を用いて、暗い黒色のTシャツとして用いたハッフィービーフィー(Huffy beefy)Tシャツに印刷を行った。インク実施例1のホワイトインクを7つの使用済み印刷チャネルの3つから印刷し(ライトシアン、ライトマゼンタおよびライトブラックを置き換えて)、およびデュポン(DuPont)(商標)アーティストリ(Artistri)(商標)P5000CMYKインクを、他の4つのチャネルから印刷した。印刷したイメージは、リノレース(Reno race)でレースをしている飛行機の写真であった。イメージは、明るい赤色および白色のノーズコーンの領域を有していた。これらの2つの点での色を計測した。表3は比色計測値を示す。
【0083】
【表4】

【0084】
エントリー1は印刷していないTシャツの比色計測値である。エントリー4、5、8および9は本発明であり、前処理の効果を示す。エントリー2、3、6および7は、多価塩での前処理無しでの印刷性能を示す。前処理を用いたときには著しく増強された色が観察される。
【0085】
エントリー9のTシャツを数々の洗濯サイクルに供し、イメージは洗濯では退色しなかったことが観察された。
【0086】
同様の試験を、表4に示す白色Tシャツを用いて実施した。Tシャツは、前処理溶液4を吹付けることにより前処理し、USスクリーンプリンティングインスティチュート(US Screen Printing Institute)製ファーストT−ジェット(Fast T−Jet)(商標)を用いて印刷した。
【0087】
【表5】

【0088】
別の試験を、エプソン(Epson)3000プリンタおよび黒色100%綿ツイード織布を用いて実施した。綿は前処理溶液4で前処理した。インク実施例1を、4パスを用いて、およびデュポン(DuPont)(登録商標)アーティストリ(Artistri)(登録商標)P5000CKインクを用いてワンパスで印刷した。色のブロックを印刷して、色特性を計測し、結果は表5に示されている。
【0089】
【表6】

【0090】
比較のために、Kインクを419綿に印刷したところ、ODは1.17であると共に洗濯堅牢度は3であった。比較のために、Cインクを419白色綿に印刷したところ、ODは1.13であると共に洗濯堅牢度は3であった。前処理、ホワイトインクおよび顔料デュポン(DuPont)(商標)アーティストリ(Artistri)(商標)P5000CKの組み合わせは、優れた色および洗濯堅牢度をもたらす。
【0091】
前処理溶液1〜4および比較例溶液を、インク実施例1でテストした。結果が表6に示されている。
【0092】
【表7】

【0093】
このテストにおいて、前処理溶液1が前処理無しと比較されるとき、Lは著しく高い。Lは、前処理溶液中の多価塩の濃度が高くなるに伴って向上する。
【0094】
インク実施例2を、前処理溶液4を用いて、および用いずに印刷した。
【0095】
【表8】

【0096】
前処理は、ポリコットン綿布の両方についてのODを著しく向上させる。この顔料化インクの洗濯堅牢度は、多価カチオンでの前処理で劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)織物を、水性多価カチオン性塩溶液を含む前処理溶液で前処理するステップ、
(b)前記前処理した織物を乾燥するステップ、
(c)乾燥し、前処理した前記織物を顔料化インクジェットインクでデジタル印刷するステップ
を含むことを特徴とする織物をデジタル印刷する方法。
【請求項2】
前記多価カチオンが、元素Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、V、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Cu、Au、Zn、Al、Ga、In、Sb、Bi、Ge、SnおよびPbの多価カチオンの群の1つまたは複数から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多価カチオンがカルシウムであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記前処理溶液が多価カチオン性塩の水溶液を含み、前記多価カチオン性塩が、硝酸カルシウム、硝酸カルシウム水和物およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記織物が、布100グラムあたり多価カチオン性塩約0.20〜約7.5グラムの含浸量で、前記前処理溶液で前処理されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記顔料化インクジェットインクがホワイト顔料化インクジェットインクであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記織物が有色の織物であり、前記ホワイト顔料化インクジェットインクが、イメージのバックグラウンドとして前記有色織物上に印刷されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記織物が、織物1平方メートルあたりインク約5〜約100グラムのインク被覆率に前記ホワイト顔料化インクで印刷されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記織物が、少なくとも2つの異なって着色された顔料化インクジェットインクを含む顔料化インクジェットインクセットで印刷されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記顔料化インクジェットインクの少なくとも1つがホワイトであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記インクセットが、少なくとも3つの異なって着色された顔料化インクジェットインクを含み、少なくとも1つがシアン顔料化インクジェットインクであり、少なくとも1つがマゼンタ顔料化インクジェットインクであり、そして少なくとも1つがイエロー顔料化インクジェットインクであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記インクセットがブラック顔料化インクジェットインクをさらに含むことを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
前記織物が、前記少なくとも2つの異なって着色されたインクジェットインクで、布1平方メートルあたりインク約5〜約17グラムのインク被覆率に印刷されることを特徴とする、請求項9から12のいずれか一項又はいずれかの組み合わせに記載の方法。
【請求項14】
前記顔料化インクジェットインクが、または前記インクジェットセットにおける前記顔料化インクジェットインクの各々が個々に、水性ビヒクル中にアニオン的に安定化された顔料を含むことを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項又はいずれかの組み合わせに記載の方法。
【請求項15】
印刷された織物を、熱および/または圧力で後処理するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項又はいずれかの組み合わせに記載の方法。
【請求項16】
前記織物がTシャツであることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項又はいずれかの組み合わせに記載の方法。
【請求項17】
多価カチオン性塩の水溶液を含む前処理溶液が適用された布基材を含む前処理された布基材であって、前記多価カチオン性塩が、硝酸カルシウム、硝酸カルシウム水和物およびこれらの混合物からなる群から選択され、含浸量が布100グラムあたりカルシウム塩約0.20〜約7.5グラムであることを特徴とする前処理された布基材。
【請求項18】
前記布が、綿または綿ブレンドを含むことを特徴とする、請求項17に記載の前処理された布。
【請求項19】
前記織物の前処理溶液を適用した後で、周囲温度での平衡含水率に乾燥されることを特徴とする、請求項17または18に記載の前処理された布。
【請求項20】
Tシャツであることを特徴とする、請求項17から19のいずれか一項又はいずれかの組み合わせに記載の前処理された布。

【公表番号】特表2009−509057(P2009−509057A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531369(P2008−531369)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/036077
【国際公開番号】WO2007/035509
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】