説明

インクジェット印刷及びその印刷方法

【課題】層別機能を有する多孔の可融性層を有するインクジェット記録要素を用いたインクジェット印刷方法を提供する。
【解決手段】支持体及び当該支持体上に、順に、a)可融性のポリマー材料とバインダーとからなる多孔の上層可融性層、b)顔料系インクが、印刷要素を溶融した後に、インクジェットインク組成物中の50%を超える印刷顔料着色剤粒子が上層の多孔性可融性層の下方半分に保持されるように層別される多孔のインク受容層を有する、インクジェット記録要素上への印刷方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録要素及び該要素を用いる印刷方法に関する。より詳細には、本発明は、上層に可融性粒子を含む記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的なインクジェット記録方式又は印刷方式では、インクの液滴が高速でノズルから記録要素又は記録媒体に向けて噴射されて、該媒体上に画像が形成される。当該インクの液滴、即ち記録液には、一般に、色素又は顔料のような記録剤、及び大量の溶剤が含まれている。該溶剤、即ちキャリア液は、典型的に、水、一価アルコール、多価アルコール又はそれらの混合物のような有機物質からなっている。
【0003】
インクジェット記録要素には、典型的に、支持体の少なくとも片面に少なくとも一層のインク受容層を有する支持体が含まれている。当該インク受容層は、典型的に、毛管作用を介してインクを吸収する多孔層であるか、あるいは膨潤してインクを吸収するポリマー層であるかのいずれかである。透明で膨潤性の親水性ポリマー層では、光を散乱しないので高い画像濃度と画像範囲を与えるが、乾燥に時間がかかるという傾向を有する。他方、通常、無機又は有機の粒子とバインダーを含む多孔性のインク受容層では、インクジェット印刷工程時に、毛管作用によって被覆層中にインクの液滴を速やかに吸収させることが可能であるため、画像がプリンターから取り出された直後でも、その画像は手で触れることができる迄に乾燥している。したがって、多孔層では、インクの速やかな「乾燥」が可能であり、耐汚染性の画像が得られる。しかしながら、かかる多孔層は、多数の空気−粒子界面があるために、光を散乱させ易く、その結果としてプリント画像が低濃度となってしまう。
【0004】
最上層の多孔層とその下にある膨潤性ポリマー層とを有する二つの別個の層を含む要素が、今まで構成されてきた。しかしながら、かかる構成は、毛管作用による上層の多孔層におけるインクの吸収速度がインクの拡散による当該膨潤層への吸収よりも何倍も速いため、画質が劣るという欠点をもつ。この吸収速度が異なることにより、インク液が両層間の界面に達する際に、最上層において望ましくない横方向へのインクの拡散が起こってしまう。この望ましくない横方向へのインクの拡散は、当該分野においてブリードとして知られている現象である。
【0005】
インクジェット記録要素上に印刷することによって作成されたインクジェットプリントは、物理的損傷と環境的崩壊に曝されている。膨潤性媒体上に色素で画像形成されたインクジェットプリントは、特に、水との接触に起因する損傷を受け易い。画像形成後の水との接触により生ずる損傷によって、トップコートの艶消しに起因して水斑が生成し、望ましくない色素の拡散により色素汚染が発生し、そして画像記録層の著しい溶解さえ起こす可能性がある。他方、多孔性媒体上に色素で画像形成されたインクジェットプリントは、オゾンのような大気ガスとの接触に起因する損傷を特に受け易い。オゾンによってインクジェット色素が漂白されて、画像濃度が消失する結果となる。多孔性媒体上に顔料で画像形成されたインクジェットプリントは、大気ガスに対して比較的強いが、顔料で画像形成されている静止した湿った表面を擦ると染みができ易い。また、顔料で画像形成されたインクジェットプリントは、その顔料形成画像が一般に媒体表面上にあるため、表面の引掻き及び摩耗損傷を受け易い。これらの欠陥を克服するために、インクジェットプリントは、積層化されてもよい。しかしながら、積層化には、別個の材料資金が必要となるため、高価となる。
【0006】
多くの努力が、積層を避け、しかも、インクにおける着色剤、典型的には輸送性色素に関して、最上層の可融性インク輸送層とその下にあるインク保持層とを有するインクジェット受容体を与えることによって保護されたインクジェットプリントを得るために、なされてきた。印刷後に当該上層を溶融させると、画像には、耐水、耐汚染性で、かつ改善された画質となすため光の散乱を減少させる保護被膜が得られるという利点を有する。
【0007】
例えば、米国特許第4,785,313号及び同第4,832,984号明細書には、支持体上に多孔可融性のインク輸送層と非多孔性で膨潤性のポリマーインク保持層とを有する支持体を含むインクジェット記録要素に関して説明されている。しかしながら、この要素には、上述したように、ブリードにより画質が劣るという点で問題がある。
【0008】
欧州特許第858,905号明細書には、熱焼結性熱可塑性粒子で形成された多孔性で可融性のインク輸送最外層と、その最外層に与えるインクを吸収保持して画像を形成する下層の多孔層とを有するインクジェット記録要素に関して説明されている。当該下層の多孔性インク保持層は、主として耐火性の顔料から構成されている。画像形成後に、当該最外層は非多孔性となる。この要素には、そのインク保持層が依然として光散乱性を有しているため、溶融プリントの画像濃度が低いという欠点を有する点で問題がある。また、その焼結した最外層は耐摩耗性が劣っている。
【0009】
欧州特許第1,188,573号明細書には、シート様紙支持体、その上に塗布された少なくとも一層の多孔性顔料層、及びその上に塗付された少なくとも一層のシーリング層をこの順で含む記録材料に関して説明されている。また、当該多孔性顔料層とシーリング層との間には、選択的に、色素トラップ層が存在していてもよいことも開示されている。この要素には、当該シーリング層のバインダーが水溶性で、そのためシールされたプリントの耐水性を低下させるという点でいくつかの問題がある。当該シーリング層が多孔性であるのに、色素トラップ層が存在しないと、ブリードが発生して画質を低下させることとなる。
【0010】
Wexlerの米国特許第6,695,447号明細書には、少なくとも一層の多孔性インク受容層、可融性で多孔性の色素トラップ層(可融性ポリマー粒子、バインダー、及び色素媒染剤を含む)、及び可融性のポリマー粒子とフィルム形成性の疎水性バインダーを含む可融性で多孔性のインク輸送層を順に上方に有する支持体を含むインクジェット媒体が開示されている。各層の粒子寸法は、階層的に、インク輸送層から多孔性色素トラップ層を経て多孔性のインク受容層に至る流体輸送を容易にするような孔の寸法となるように選定されている。印刷及び溶融後に、この要素では、摩耗から保護された内層面画像をもつプリントが得られる。数層を有する要素は、製造上の観点から好ましいものである。ポリマー媒染剤のラテックス分散により、印刷時の膨潤による多孔度が下がる傾向を有する。
【0011】
欧州特許第743,193号明細書には、プリント表面と目視表面が支持体の反対側に位置し、かつその記録表面に、透明支持体からの順で、インク保持層及び液体透過性表面層を含む透明な画像記録媒体が開示されている。この媒体は、該インク透過性層を通して顔料着色インクが通過するように設計されているが、プリント側から目視するように意図されていない。更に、インク透過性層は、可融性ではない。
【0012】
米国特許第6,550,909号明細書には、多孔可融性層の孔の孔径の度数分布がインク着色剤粒子の度数分布と重複し、その重複部分が0.1%〜10%であり、しかも、該多孔性層の全体の孔の孔径が10〜300nmの範囲にあるインクジェット記録要素が開示されている。したがって、着色剤粒子のほとんどは、孔径の大部分より大きい。よって、顔料着色インクをもつこの要素を用いる印刷方法では、5μの記録媒体表面内にインク顔料粒子をトラップする。しかしながら、表面にトラップされた粒子によって形成される画像は、プリント表面の摩耗による損傷に曝されている。比較例では、孔径の度数分布とインク粒子サイズの度数分布との重複は58%であり、劣った光学濃度しか得られなかった。この例では、この低い光学濃度は、インク顔料が深く浸透し、そのため光の散乱が光学濃度を低下させたものと想定されると説明されている。
【0013】
米国特許第6,811,253号明細書には、上面保護層を形成できる上層を含む媒体にプリントする方法が開示されている。プリント後に、該媒体が加熱されると、上層が溶融して保護層が形成される。プリント画像は、実質的に、その上面保護層に保持される。米国特許第6,811,253号明細書の図1には、該上層全体にわたって均一に分散した顔料着色画像が観察される。その表面又は近傍の顔料粒子により形成された画像部分は、摩耗による損傷に曝されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明では、顔料系インクが可融性の記録媒体上にプリントされ、しかも該インク顔料が、当該媒体の表面下でかつ上層の可融性層とその直下の下層との界面の比較的近傍に、かなり多く濃縮するような層別効果あるいは濾過効果が達成されるような印刷方法を提供することを目的とする。また、本発明では、当該可融性の記録媒体が、保護層と少なくとも一層の下層にあるインク液受容層とを形成する可融性最上層を有するような印刷方法を提供することを目的とする。また、本発明では、印刷時に、前記顔料インクが該可融性最上層の底部半分に送別されて濃縮されるような印刷方法を提供することを目的とする。更にまた、本発明では、最上層の可融性層とその直下にあるインク液受容層とを有し、しかも、顔料系インクが塗付された後には、当該上層の可融性層のメジアン孔径が、この上層の可融性層内でのインク(着色剤)顔料粒子の比較的自由な流れを許容するに十分な程度に大きく、かつ該直下にあるインク液受容層の孔径が、当該下層へのインク顔料粒子の侵入を実質的に拒否するに十分な程度に小さいようなインクジェット記録媒体を提供することを目的とする。また、本発明では、可融性のインクジェット記録要素が顔料系インクでプリントされ、しかも該可融性の最上層の底部半分にプリントされた顔料の半分以上を保持させることによって良好な耐汚染性を与えるインクジェット印刷方法を提供することを目的とする。更に、本発明では、良好な濃度と優れた耐摩耗性を示す高濃度画像を与えるために、当該可融性最上層を溶融させることを目的とする。最後に、本発明では、本発明で使用可能なインクジェット記録要素を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、これらの及び他の目的は、
a)デジタルデータ信号に応答するインクジェットプリンターを設置すること;
b)支持体及びその表面上に多孔のインク液受容層と多孔の上層可融性層とを有し、当該多孔のインク液受容層は当該多孔の上層可融性層に対して隣接してその下層に存在し、そして各層はメジアン孔径に特徴を有し、当該多孔の上層可融性層のメジアン孔径が当該下層にある層のメジアン孔径よりも大きいことを特徴とする可融性インクジェット記録要素をプリンターに装填すること;
c)顔料系のインク中に平均顔料粒度の顔料着色剤粒子(その色には黒が含まれる)を含むことに特徴を有する少なくとも一種のインクジェット顔料系インクをプリンターに装填すること;
d)デジタルデータ信号に応答して、当該インク組成物を用いて可融性のインクジェット記録要素上に印刷すること;
e)当該印刷された要素を溶融して溶融上層を得ること、
ここで、当該多孔の上層可融性層及びその下層のメジアン孔径と顔料着色剤粒子の平均顔料粒度とが相俟って、当該インク組成物が記録要素に塗付された後には、当該多孔の上層可融性層のメジアン孔径が十分に大きく、そして当該下層の平均粒度が十分小さいため、その印刷画像では、当該顔料着色剤粒子が溶融上層の厚さの上方半分に比して下方半分に濃縮されて、実質的に当該下層への侵入が拒否されていることは、当該記録要素上の均一な試験領域を前記顔料系インクで塗付して光学濃度1.0〜2.5とした後にその印刷要素を溶融することによって測定でき、その結果として、顔料系インクの50%を越える顔料着色剤粒子が、溶融した上層の下方半分に保持されていることは、印刷溶融された記録要素の試験領域の断面に係る光学微小濃度計により測定されている、
を含んでなるカラー画像のインクジェット印刷方法によって達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明を用いることによって、印刷直後に、良好な耐汚染防止性を有し、かつそれに続く溶融時に、良好な耐摩耗性、耐水性及び高印刷濃度を呈する、インクジェット記録要素が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
顔料系インクは、プリンターに使われるいずれか一種のインク組成物、好ましくは、典型的にイエロー、シアン、及びマゼンタを含むあらゆる黒色インク又はカラーインクであってよい。
【0018】
好ましい実施態様では、最大画像濃度の領域に印刷される顔料粒子の容積は、多孔の上層可融性層の空隙容積よりも小さくなければならず、また、最大画像濃度の領域に印刷されるインク液の容積は、多孔のインク液受容層の空隙容積を超えてはならない。
【0019】
本発明方法では、インク液受容層の容積と各層の孔径階層では、インク液のほとんどが下方の多孔層に引き込まれるものと予想されるが、最上層の孔を通過した後の顔料粒子はその下層との界面又は近傍に止まるので、上層の可融性層の底部半分に着色画像を層別配列することが可能となる。インク顔料の容積は最上層の可融性層の空隙要素よりも小さいので、当該顔料は、その上層可融性層の底部あるいはその近傍に層別配列されて、プリント表面には殆どあるいは全く存在しない。このため、溶融前の当該媒体表面における印刷顔料との何らかの偶発的な接触に起因する非溶融画像の汚染、即ち染みを低下させるという直接の利点をもたらす。引き続く最上層の溶融によって、保護された内層面の顔料着色画像が形成される。内層面の顔料着色画像を有する本発明の溶融インクジェット記録要素の利点の内には、耐摩耗性、均一な光沢、色光沢/ブロンジングの欠如、及び耐水・耐汚染性などがある。
【0020】
本発明のその他の態様には、上記方法によって得られるプリントがあり、当該プリントには、支持体及び該支持体上に順に、下層多孔層及び前記顔料系インクで形成される画像を含む連続ポリマーフィルムを含む溶融上層が含まれる。
【0021】
本発明の一の態様では、本発明方法に使われる記録媒体には、多孔性支持体と多孔性の上層可融性層が含まれる。この態様では、当該支持体は、隣接する下層の多孔インク液受容層としても機能する。更なる他の態様では、多孔性支持体に加えて、多孔のインク液受容層が存在してもよく、あるいは多孔又は非多孔の支持体と組合せて複数のインク液受容層が存在してもよい。
【0022】
ここで、用語「多孔層」とは、液拡散というよりもむしろ毛管作用によって塗布インクを吸収する層と定義される。(同様に、用語「多孔要素」とは、少なくとも一層の多孔層、少なくとも画像受容層を有する要素のことをいう。)多孔度は、粒子の形状寸法、及び粒子対バインダー比に左右される。混合物の多孔度は、限界顔料体積濃度(CPVC)に基づいて推論される。
【0023】
粒度及び孔径寸法に関する用語「寸法」は、実施例又はその相当例に記載される測定法によって定義される。
【0024】
特定の試験に関して、用語「測定可能」とは、その特定試験を用いて、インクジェット記録要素とクレームした印刷方法との組み合わせが当該特許請求の範囲内にあるか否かを測定又は確証することを意味するが、当該特定試験は、クレームした画像の印刷方法の一部ではない。換言すれば、当該方法をその特定の組み合わせで実施することは、当該特定方法を実行するか否かに拘わらず、当該クレーム方法を侵害するものとするに十分である。
【0025】
インクジェット媒体における各層に関して、本明細書で使用される「over(覆う)」、「above(上に)」、「upper(上方の)」、「under(表面下に)」、「below(下に)」、「lower(下方の)」等の用語は、支持体を覆う各層の順を言うが、必ずしも当該各層は直接接していることを示していない。
【0026】
本願方法に関して、用語「画像受容層」とは、顔料トラッピング層、色素トラッピング層、又は色素及び顔料トラッピング層として用いられる層を定義することを意図している。
【0027】
本発明方法に関して、用語「インク液受容層」(時には、「インク溜め層」、「インクキャリア液受容層」などとも言う)は、本願明細書ではインクキャリア液の実質的な量を吸収する一層以上の画像受容層の下方にある層を定義するのに用いている。使われているインクキャリア液の最も好ましい実質的な量は、単一層又は複数層のインクキャリア液層に収容されているが、当該層は画像含有層の上にはなく、それ自体、画像含有層(顔料トラッピング層又は色素トラッピング層)ではない。好ましくは、単一のインク液受容層が存在する。
【0028】
用語「熱可塑性ポリマー」は、本願明細書では、典型的に、広範囲の架橋前に、加熱時、又は加熱加圧時に流動するポリマーを定義するのに使用している。
【0029】
本発明で用いる要素の多孔層は、インク液の輸送とインク顔料の濾過の両者に関して、相対的な機能を有する。前者に関しては、多孔の上層可融性の、好ましくは最上層又は上層は、インク液受容層、つまり隣接する下層又は下方層よりも大きいメジアン孔径を有する。この孔径の階層は、当該インク液を上層から下層へと押しやる印刷領域内での毛細管圧を確立する。インク顔料の濾過に関しては、上層のメジアン孔径はインク顔料の平均粒度よりも大きくすべきであり、それによってインク顔料粒子を、上層の可融性層の多孔構造内にあるインク液とともに移動させることを可能としている。これと付随して、下層のメジアン孔径は、顔料粒子が実質的に下層の孔構造に入ることができないように、インク顔料の平均粒度よりも小さくすべきである。毛細管圧によってインク液が下層に追いやられるので、当該インク顔料は、事実上、その上層と下層との間の界面又は近傍で濾過される。
【0030】
本発明方法の好ましい実施態様では、インクジェット記録要素上にカラー画像をインクジェット印刷することを指向しているが、その方法には、
a)デジタルデータ信号に応答するインクジェットプリンターを設置すること;
b)支持体及びその表面上に、支持体からの順で、多孔のインク液受容層と当該インク液受容層に隣接してこれを覆う多孔の上層可融性層とを有する可融性インクジェット記録要素を、プリンターに装填すること;そして
c)少なくともシアン、イエロー、及びマゼンタインク組成物を含み、当該少なくとも一種、好ましくは全ての三種のインク組成物には、平均顔料粒度が上層可融性層のメジアン孔径の80%、好ましくは70%より小さいが、隣接する下層のインク液受容層のメジアン孔径の80%よりも大きい顔料着色剤粒子顔料が含まれ、当該多孔の可融性層の厚さが1〜50μm、好ましくは10〜30μmである、複数のインクジェットインク組成物を当該プリンターに装填すること;
d)デジタルデータ信号に応答して、当該インクジェットインク組成物を用いて可融性のインクジェット記録要素上に印刷すること;そして
e)当該印刷された要素を溶融させて溶融した上層を得ること;
ここで、当該記録要素の均一な試験領域を、前記顔料系インク組成物の少なくとも一種、好ましくは全部の三種で印刷して光学濃度1.0〜2.5とした後に、その印刷要素を溶融することによって測定することができ、以下の実施例に記載される測定法に従ってその溶融した印刷要素の当該試験領域の断面に関し光学微小濃度計により測定すると、その結果として、当該顔料系インクにおける50%を超える、好ましくは60%を超える顔料着色剤が、溶融した上層の底部半分に保持されていることが確認される、
が含まれる。
【0031】
上述したインク組成物は、カラープリンターに使用され、少なくともシアン、イエロー、及びマゼンタ色のインク組成物が含まれている。黒色インク組成物及び他のカラーインク組成物を含む他のインク組成物では、選択的に、本発明のインク顔料の層別が達成される。慣用のインクジェットプリンターでは、今や普通に、特に写真画質のインクジェットプリンター用には、ブラックを加えた4〜8種の異なるカラーインクを有している。
【0032】
好ましくは、顔料系インクの顔料の平均粒度は、上層の可融性層のメジアン孔径の多くて70%で、好ましくは70〜1%である。好ましくは、当該顔料の平均粒度は、下層のメジアン孔径より大きい(少なくとも100%)。
【0033】
当該インク顔料の平均粒度は、実施例に記載するように、実験的に測定することができる。その平均粒度は、実験に使われる装置の指導書に明確に説明されているように、均一な混合物に基づいて測定される。当該インク顔料の粒度分布は変わるので、通常、この分布は、そのインク組成物における下層へのマイグレートが可能な比較的小さい粒子の量が過剰に存在しないように、比較的狭いことが望ましい。同様に、当該混合物に比較的大きい粒子の量が過剰に存在することは、仮に、上層の可融性層におけるインク粒子のフリーフローが、上層の可融性層の下方部分への必要な量のインク顔料のマイグレーションを妨げるようなことになるならば、望ましくないといえる。
【0034】
本発明では、上層の可融性層の下方半分に、インクジェットインク組成物の50%を超える印刷顔料の着色剤が保持されるという見地から規定されているが、このことは、上層と下層とが隣接する多孔層の界面が当該顔料粒子に対して濾過機能を果たしているという事実を反映している。特に、上層の溶融層の上方部分がその着色剤の限界濃度、即ち最大濃度を有していることが望ましい。したがって、該上層の上方半分にはその印刷顔料の着色剤の50%未満しか存在しないという見地から本発明を規定することには、上層溶融層の上面から中間点に至る当該上層溶融層のより狭い部分に、より少ない量の印刷顔料しか存在しないという可能性(特定の実施態様に左右される)が含まれている。例えば、本発明には、5μmの上層溶融層の上方20%以内(1μm以内)には20%未満のインク顔料しか保持されていないという可能性が含まれている。
【0035】
好ましい実施態様では、当該溶融層の上方N%中に保持される顔料割合は、全印刷顔料のN%より少なく、そのN%は、100%〜10%にわたる。したがって、Nが50に等しいときは、当該溶融層の上方50%内に、50%未満の印刷顔料しか存在せず、Nが10に等しいときは、当該上方10%内に、その10%未満しか存在していない、などである。インク着色剤の断面におけるかかる縦断面は、図1に示されている。
【0036】
インクジェット記録要素の一の特別な実施態様では、それが、支持体、及び当該支持体からの順で、支持体上に塗付された多孔のインク液受容層とこのインク液受容層に隣接してこれを覆う多孔の上層可融性層を含んでなり、当該上層のメジアン孔径は、隣接する下層のインク液受容層のメジアン孔径よりも少なくとも4倍大きく、その上層可融性層のメジアン孔径は、80〜2000nmの範囲にあり、当該多孔可融性層の厚さは、1〜50μm、好ましくは10〜30μmであり、そして前記上層可融性層のメジアン孔径は200〜400nmで、前記下層のインク液受容層のメジアン孔径は50nmより小さいことが好ましい。
【0037】
本発明のインクジェット記録要素の上層可融性層に使用される可融性のポリマー粒子は、それらが、上層のメジアン孔径の方が下層のメジアン孔径よりも大きくて、かつその平均顔料粒度よりも少なくとも30%、好ましくは30〜300%大きい多孔層を形成するという条件を満足する限り、いかなる粒子を有していてもよい。本発明の好ましい実施態様では、当該可融性ポリマー粒子の平均粒度は、0.10〜10μm、好ましくは200nm〜5.0μm、より好ましくは300nm〜3μmであってよく、また、当該上層可融性層のメジアン孔径は、80〜2000nm、より好ましくは90〜400nm、最も好ましくは100〜350nmの範囲で変えてもよい。
【0038】
本発明の好ましい実施態様では、当該可融性ポリマー粒子は、実質的には球形で、単分散している。単分散の粒子は、液の吸収をコントロールするのに好都合であり、これを用いて乾燥時間を改善することが可能である。他方、この単分散粒子は、これを調製することがより難しくなる。
【0039】
粒度分布の幅の測度であるUPA分散度(「Dp」)は、MICROTRAC超微粉体アナライザーモデル150(Leeds and Northrup 社製)により測定して、50%平均値で2.0未満であることが好ましい。換言すれば、当該粒度分布は比較的狭い。可融性のポリマー粒子の溶融時に、当該上層可融性層の当初の多孔構造に存在していた空気−粒子界面は排除されて、非散乱性の実質的な連続相が形成される。前述した相対的なメジアン孔と顔料粒度が与えられ、印刷顔料の容量が該層の空隙容量を超えないことが許容されるならば、印刷顔料の半分以上が、該溶融層の下方半分に配置されることとなる。その後、当該溶融層の上方半分は、非散乱性の保護オーバーコートとして作用して、それが摩耗から画像本体を保護し、また高い光学濃度を与える。
【0040】
当該上層可融性層を含む可融性のポリマー粒子は、縮合ポリマー、アクリルポリマー、スチレンポリマー、ビニルポリマー、エチレン−塩化ビニルコポリマー、ポリアクリレート、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、酢酸ビニル−塩化ビニルコポリマーから作られてよい。本発明の好ましい実施態様では、この可融性のポリマー粒子には、アクリルポリマー、酢酸セルロースエステル、又はポリウレタンポリマーが含まれる。本発明の一つの特に好ましい実施態様では、この可融性のポリマー粒子には、86重量部のエチルメタクリレートと14重量部のメチルメタクリレートで、Tg=85℃であるコポリマーが含まれる。
【0041】
可融性のポリマー粒子からなる上層の可融性層には、選択付加的に、バインダー、特に疎水性バインダーが含まれてもよい。本発明に有用な疎水性バインダーは、水に分散可能な疎水性ポリマーであれば、いかなるものでもよい。本発明に好ましい実施態様では、その疎水性バインダーは、アクリルポリマー又はポリウレタンポリマーの水性分散液である。
【0042】
当該上層の可融性層に使用される粒子とバインダーの粒子対バインダー比は、98:2〜60:40、好ましくは95:5〜80:20の範囲とすることができる。一般に、上記の範囲を超える粒子対バインダー比を有する層では、十分な凝集強度を有せず、また、上記範囲を下回る粒子対バインダー比を有する層では、多孔性が不十分で良好な画質を与えないこととなる。バインダーが欠如する場合には、焼結等を用いて凝集強度を高めてもよい。
【0043】
当該上層の可融性層は、通常、1g/m2〜50g/m2の量で存在する。好ましい実施態様では、この上層可融性層は、8g/m2〜30g/m2の量で存在する。
【0044】
多孔のインク受容層は、有機もしくは無機粒子を含む連続で、同一の広がりをもつ多孔層である。用いられる有機粒子の具体例には、Kapusniak 等の米国特許第6,492,006号明細書に開示されているようなコア/シェル型粒子、及びKapusniak 等の米国特許第6,475,602号明細書に開示されているような均質な粒子が含まれる。用いられる有機粒子の具体例には、アクリル樹脂、スチレン樹脂、セルロース誘導体、ポリビニル樹脂、エチレン−アリールコポリマー及びポリエステルのような重縮合ポリマーが含まれる。
【0045】
本発明で使用されるインク受容層に用いられる無機粒子の具体例には、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、粘度、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、又は酸化亜鉛が含まれる。
【0046】
本発明の好ましい実施態様では、当該多孔のインク受容層には、20%〜100%の粒子と0%〜80%のポリマーバインダー、好ましくは80%〜95%の粒子と20%〜5%のポリマーバインダーが含まれる。当該ポリマーバインダーは、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ゼラチン、セルロースエーテル、ポリ(オキサゾリン)、ポリ(ビニルアセトアミド)、部分加水分解されたポリ(ビニルアセテート/ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アルキレンオキシド)、スルホン化もしくはリン酸化されたポリエステル、デキストラン、コラーゲン誘導体のような親水性ポリマーであってよい。好ましくは、当該親水性ポリマーは、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリジノン)、ポリ(酢酸ビニル)あるいはそれらのコポリマー又はゼラチンであってよい。
【0047】
インクジェット記録要素に対して機械的耐候性を付与するために、上記議論したインク受容層におけるバインダーに作用する架橋剤が、少量で添加されてもよい。かかる添加剤は、当該層の凝集強度を改善する。カルボジイミド、多官能性アジリジン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、多価金属カチオン、ビニルスルホン、ピリジニウム、ピリジリウムジカチオンエーテル、メトキシアルキルメラミン、トリアジン、ジオキサン誘導体、クロム明礬、ジルコニウムスルフェート、硼酸誘導体などのような架橋剤が使用されてよい。好ましくは、当該架橋剤は、アルデヒド、アセタール又は2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンのようなケタールである。
【0048】
当該インク受容層は、10g/m2〜60g/m2、好ましくは20g/m2〜50g/m2の量で存在してよい。
【0049】
また、この多孔インク液受容層には、開孔ポリオレフィン、開孔ポリエステル、又は開孔膜が含まれてもよい。開孔膜は、公知の相変換技術にしたがって作ることができる。開孔膜を含む多孔インク受容層の具体例は、Landry-Coltrain 等の米国特許第6,497,941号及び同第6,503,607号明細書に開示されている。
【0050】
また、前記した可融性インクジェット記録要素は、これを色素インクの記録用に選択的に使用することも、望ましいことがある。そのときには、選択的に、色素媒染剤が上層の可融性層に使われてもよい。当該色素媒染剤は、インクジェット色素に実際的であるいかなる材料であってもよい。この色素媒染剤は、多孔の上層可融性層内に色素を固定することを可能にする。かかる媒染剤の具体例には、米国特許第6,297,296号明細書及びそこに引用される参考文献に開示されるようなカチオン格子、米国特許第5,342,688号明細書に開示されるようなカチオンポリマー、及び米国特許第5,916,673号明細書に開示されるような多価イオンが含まれる。これら媒染剤の具体例には、高分子量の第4アンモニウム化合物、又はポリ(ジメチルアミノエチル)−メタクリレート、ポリアルキレンポリアミンのような塩基性ポリマー、及びそれらとジシアノジアミドとの縮合生成物、アミン−エピクロロヒドリン重縮合物が含まれる。また、レシチン及びリン脂質化合物も、使用可能である。かかる媒染剤の特定の具体例には、以下の、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド/エチレングリコールジメタクリレート;ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド);ポリ(2−N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリレートメトスルフェート;ポリ(3−N,N,N−トリメチル−アンモニウム)プロピルメタクリレートクロリド;ビニルピロリドンとビニル(N−メチルイミダゾリウム)クロリドとのコポリマー;及び(3−N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルクロリドで誘導されたヒドロキシエチルセルロースが含まれる。好ましい実施態様では、当該カチオン媒染剤は、第4アンモニウム化合物である。
【0051】
媒染剤と相溶性であるために、可融性のポリマー粒子を含むバインダー及びポリマーの両者は非荷電であるか、あるいは当該媒染剤と同じ荷電であることが必要である。しかしながら、仮に、当該ポリマー粒子やバインダーが媒染剤の荷電と反対荷電を有しているときは、塗布時でのコロイドの不安定性や望ましくない凝集は避けねばならない。
【0052】
下層のインク液受容層の厚さは、付加的なインク液受容層、及び/又は多孔で吸収性能のある、あるいは液体キャリアの吸収に貢献する下層支持体の存在によって左右される。(i)インク受容層単独又は(ii)多孔性であるならば、支持体単独、又は(iii)当該インク受容層と多孔性であるときの当該支持体との組み合わせに係る全吸収能力は、それぞれの場合に、好ましくは少なくとも10cc/m2である。その所望の吸収能力は、付与される液量と関係するが、その量は使用するプリンターとインク組成物に依存して変わる。全吸収能力が少なくとも10.0cc/m2であるということは、その能力が、1m2当たり、少なくとも10.0ccのインクを吸収することが可能であるということを意味する。これは、単独の層又は複数の層の厚さに基づいて計算された数である。空隙層の場合には、その所望の厚さは、式t=10.0/v(ここで、vは、空隙の厚さ−非空隙の厚さ/空隙の厚さの比として定義される空隙の体積分率である)を用いて決定することができる。押出される単層の実際の厚さは、容易に測定可能である。共押出される層の場合は、断面の顕微鏡写真を用いて実際の厚さを測定することができる。その非空隙の厚さは、空隙化が全く起こらないと予測される厚さ、例えば、キャスト厚を縦方向の延伸比と横方向の延伸比で割ったものとして定義される。
【0053】
本発明のインクジェット記録要素に用いられる支持体は、不透明、半透明又は透明であってよい。典型的には、支持体は、構造的な剛性を与える自己支持性材料である。好ましい実施態様では、インク受容層とインク輸送層を含む、インクジェット記録要素の他の層が、支持体上に塗付される。当該支持体は、それ自体、多孔性であっても、非多孔性であってもよい。例えば、平面紙、開孔ポリオレフィン、開孔ポリエステル又は開孔膜のような多孔支持体が使用されてよい。
【0054】
本発明の一の実施態様では、Laney 等の米国特許第6,379,780号明細書及び米国特許第6,489,008号明細書に開示されるような多孔のポリエステル支持体が使われてもよい。このポリエステル支持体には、基材のポリエステル層とインク液キャリア透過性の上層ポリエステル層が含まれ、この上層ポリエステル層には、少なくとも14cc/m2の全吸収能力を有する連続ポリエステル相が含まれている。当該全吸収能力は、本発明での使用に所望される前記能力に調整可能である。
【0055】
更に、その他の実施態様では、例えば、出願中の関連米国特許出願第10/722,886号に開示されるような。ポリ(乳酸)が含まれていてもよい。この実施態様では、微孔のポリ乳酸含有層は、所望の吸収性又は他の特性が与えられるように調整された、同等の空隙率、厚さ、及び平滑性を有していてよい。また、このポリ乳酸含有層は、好都合なことに、媒体に対して硬さを、そして他の層に対しては物理的一体性を付与している。当該微孔のポリ乳酸層の厚さは、記録要素の所望の硬さにもよるが、30〜400μmであってよい。典型的には、仮に、キャリア液保持層としての使用が所望の場合には、10cc/m2全吸収性を達成するためには、少なくとも28.0μmの厚さが必要である。
【0056】
仮に、多孔支持体が使われる場合には、インク液受容層のメジアン孔径よりも小さいメジアン孔径を有することが、好都合である。例えば、構造上連通し、開孔セル状である孔を保有する透過性の微孔支持体又は他の多孔性支持体では、毛管作用を起こせることによって、その液体キャリアの吸収速度を高めることが可能である。この正しい孔径階層を維持すると、支持体の孔容積に達することができ、その能力と関連するブリードを排除することが可能である。
【0057】
非多孔性支持体は、例えば、樹脂コート紙、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)及びポリ(エステルジアセテート)のようなポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ(テトラ−フルオロエチレン)のようなフッ素樹脂を含む種々なプラスチック、金属箔、種々なガラス材料などであってよい。本発明で使用する支持体の厚さは、12〜500μm、好ましくは75〜300μmとすることができる。
【0058】
所望の場合には、第1の塗布層、これはインク液受容層であってもあるいは中間層(これは、インク液受容層がない場合には、ベース層ともいう。)であってもよいが、その支持体に対する接着性を改善するために、当該支持体の表面は、この支持体にベース層又はインク液受容層が塗付される前に、選択的に、コロナ放電処理が行われてもよい。
【0059】
本発明の好ましい実施態様では、当該受容層に塗付される少なくとも75重量%のインクキャリア液が、乾燥前に、一層以上のインク液受容層又は多孔支持体、あるいはその両者に保持される。
【0060】
上述したように、本発明のその他の態様では、上記方法で作製したプリントに関し、当該プリントには、支持体上に、順に、下層多孔層と、前記顔料系インクで形成される画像を含む連続ポリマーフィルムを含んでなる溶融した上層とが含まれている。
【0061】
一の好ましい実施態様では、当該プリントは、可融性のインクジェット記録要素を用いて作られるが、当該記録要素には、支持体と、当該支持体からの順で、その上に被覆された多孔のインク液受容層と当該インク液受容層に隣接してこれを覆う多孔の上層可融性層とが含まれ、この上層可融性層のメジアン孔径は、隣接する下層のインク液受容層のメジアン孔径よりも少なくとも50%、好ましくは少なくとも100%、そしてより好ましくは少なくとも300%を超えていて、その下層のメジアン孔径は、50nm未満、好ましくは40nm以下であり、しかも当該多孔の可融性層厚さは、1〜50μm、好ましくは10〜30μmである。一の好ましい実施態様では、当該上層可融性層のメジアン孔径は、200〜400nmである。
【0062】
本発明に使用するインクジェット記録要素は、他の画像記録製品、又は画像記録装置の駆動機構や輸送機構と接触するので、界面活性剤、滑剤、艶消し粒子などのような添加剤が、製品特性を劣化させない程度まで当該要素に加えられてもよい。
【0063】
インク液受容層、及びその上層の可融性層を含む上記した各層は、慣用の塗工手段によって、通常本願技術分野で使用される支持体材料上に塗布されてよい。塗工手段には、巻き線ロッド塗工、スロット塗工、スライドホッパー塗工、グラビア塗工、カーテン塗工などが含まれてよいが、これらに限定されない。これら方法のいくつかでは、製造経済的見地から好ましい多層の同時塗工が採られてもよい。
【0064】
本発明によるインクジェット記録要素上に塗付された後、その上層の可融性層は、加熱溶融及び/又は加圧溶融されて、その表面上に実質的な連続相が形成される。その溶融時に、該層は非光散乱性となり、それによってプリント画像に最大濃度が与えられることとなるが、この点は重要である。この溶融は、意図する目的に有効ないかなる方法で行われてもよい。溶融ベルトを用いる溶融法の記述は、米国特許第5,258,256号明細書に見られ、また、溶融ローラを用いる溶融法の記述は、米国特許第4,913,991号明細書に見られる。
【0065】
好ましい実施態様では、溶融は、当該要素表面を溶融ローラや溶融ベルトのような加熱溶融部材と接触させることによって行われる。よって、例えば、この溶融は、当該要素を0.005m/秒〜0.5m/秒の輸送速度下、0.05〜2.0MPaの圧力を用いて、60℃〜160℃の温度に加熱された、ベルト溶融装置に通過させることによって行われる。
【0066】
本発明のインクジェット印刷方法では、デジタルデータ信号に応答してインクジェット記録要素にピクセルバイピクセル方式でインク液を析出させることによってプリント画像を得る非衝撃法が示されている。本発明方法を用いてインクジェット記録要素上でのインク液の析出をコントロールして、所望のプリント画像を得る方法には種々なものがある。一つの実施態様では、ドロップオンデマンドインクジェットとして知られる方式において、個々のインク液が必要に応じて画像記録要素上に噴射されて所望のプリント画像が形成される。ドロップオンデマンド印刷法における共通のインク液の噴射コントロール方法には、圧電変換器及び熱バブル形成が含まれる。その他の実施態様では、連続インクジェットとして知られる方式において、インク液の連続流が荷電されて、インクジェット記録要素の表面に向けて像様に偏向され、その間に画像化されなかった液は確保されて、インク溜めに戻される。かかる印刷方法は、デスクトップドキュメント及び写真画質の画像形成から簡易印刷及び工業表示に亘る市場を通して広く適用されている。
【0067】
インクジェット印刷の分野で知られるインク組成物は本発明方法に有用であり、水性系であっても溶剤系であってもよいが、室温及びその圧力下で液体、固体又はゲル状態である。水性系のインク組成物は、環境により優しいため好ましく、加えて、多くのプリントヘッドが、水性系インクに使用する目的で設計されている。
【0068】
本発明方法では、少なくとも一種の、実質的に顔料着色剤粒子を含む顔料系インク組成物が使用される。しかしながら、顔料系インク組成物には、他の着色剤が少量(好ましくは、総着色剤の固体当たり20重量%未満の量で)含まれていてもよい。また、本発明のインクジェットプリント印刷では、顔料系インク組成物のうち一色は、顔料系インク組成物でない、例えば色素、ポリマー色素、増量色素/ラテックス粒子など、又はその組合せで着色される色素系インク組成物からなる一種以上のインク組成物と組合せて用いられてもよい。しかしながら、本発明に用いられるインク組成物では、せめてその一種だけでも顔料系インク組成物であることが好ましく、本発明方法で使われるインク組成物の全てが顔料系インク組成物であることが、より好ましい。
【0069】
顔料系のインク組成物は、かかるインクが、他のタイプの着色剤から作られたプリント画像に比して、そのプリント画像により高い光学濃度及びより良好な耐光性と耐オゾン性を付与することとなるので、本発明では好都合に用いられる。当該インク組成物は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、グレー、レッド、バイオレット、ブルー、グリーン、オレンジ、ブラウン等であってよい。
【0070】
広範な種類の有機及び無機顔料が、単独で、あるいは付加的な顔料又は色素と組み合わされて、本発明に有用なインク組成物に使われてよい。使用されてよい顔料には、例えば、米国特許第5,026,427号明細書、同第5,086,698号明細書、同第5,141,556号明細書、同第5,160,370号明細書、及び同第5,169,436号明細書に開示されるものが含まれる。顔料の正確な選定は、特定の利用と、カラー再現性及び画像安定性のような性能要件に依存している。
【0071】
本発明での使用に好適な顔料には、アゾ顔料、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アゾ顔料レーク、β−ナフトール顔料、ナフトールAS顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジスアゾ縮合顔料、金属複合体顔料、イソインドリノン及びイソインドリン顔料、多環式顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラピリミドン顔料、フラバントロン顔料、アンタントロン顔料、ジオキサジン顔料、トリアリールカルボニウム顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、酸化チタン、酸化鉄、及びカーボンブラックが含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
使用してよい顔料の典型的な具体例には、カラーインデックス(C.I.)顔料イエロー1,2,3,5,6,10,12,13,14,16,17,62,65,73,74,75,81,83,87,90,93,94,95,97,98,99,100,101,104,106,108,109,110,111,113,114,116,117,120,121,123,124,126,127,128,129,130,133,136,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,165,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,183,184,185,187,188,190,191,192,193,194;C.I.顔料レッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,21,22,23,31,32,38,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,49:3,50:1,51,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,68,81,95,112,114,119,122,136,144,146,147,148,149,150,151,164,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,181,184,185,187,188,190,192,194,200,202,204,206,207,210,211,212,213,214,216,220,222,237,238,239,240,242,243,245,247,248,251,252,253,254,255,256,258,261,264;C.I.顔料ブルー1,2,9,10,14,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,15,16,18,19,24:1,25,56,60,61,62,63,64,66,架橋アルミニウムフタロシアニン顔料;C.I.顔料ブラック1,7,20,31,32;C.I.顔料オレンジ1,2,5,6,13,15,16,17,17:1,19,22,24,31,34,36,38,40,43,44,46,48,49,51,60,61,62,64,65,66,67,68,69;C.I.顔料グリーン1,2,4,7,8,10,36,45;C.I.顔料バイオレット1,2,3,5:1,13,19,23,25,27,29,31,32,37,39,42,44,50;又はC.I.顔料ブラウン1,5,22,23,25,38,41,42が含まれる。
【0073】
本発明に有用な顔料系インク組成物は、インクジェット印刷の技術分野で知られるいかなる方法によって調製されてもよい。有用な方法には、通常、二つの工程:(a)顔料を、粉体系において識別可能な最小区分として定義される一次粒子まで砕く分散又は粉砕工程、及び(b)工程(a)からの顔料分散液を、インク保持成分で希釈して、使用濃度のインクとする希釈工程が含まれる。粉砕工程(a)は、媒体ミル、ボールミル、二本ロールミル、三本ロールミル、ビードミル、及びエアジェットミルのようないずれかのタイプの粉砕ミル、磨砕機、又は液体交流チェンバーを用いて行うことができる。粉砕工程(a)では、顔料が、当該顔料分散液を工程(b)で希釈するために使用する媒体と典型的に同じ、あるいは類似する媒体中に任意に懸濁される。不活性な粉砕媒体が、顔料を一次粒子まで砕きやすくするために、粉砕工程(a)中に任意に存在する。不活性な粉砕媒体には、ポリマービーズ、ガラス、セラミックス、金属、及び例えば米国特許第5,891,231号明細書、及び同第5,679,138号明細書に記載されるようなプラスチックスが含まれる。粉砕媒体は、工程(a)で得られる顔料分散液あるいは工程(b)で得られるインク組成物のいずれかから取り除かれる。
【0074】
分散剤は、顔料を一次粒子に砕き易くするために、粉砕工程(b)に任意に存在してよい。工程(a)で得られる顔料分散液又は工程(b)で得られるインク組成物の場合は、分散剤が、粒子の安定性を維持して沈降を防止するために、任意に存在してよい。本発明の使用に好適な分散剤には、インクジェット印刷の分野で通常用いられているものが含まれるが、これに限定されない。水性顔料系インク組成物の場合は、有用な分散剤には、例えば、米国特許第5,679,138号明細書、同第5,651,813号明細書、同第5,985,017号明細書、又は米国特許出願第2004/0097615号明細書に記載されているような、ドデシル硫酸ナトリウム、又はオレイルメチルタウリンカリウムもしくはナトリウムのようなアニオン性、カチオン性又はノニオン性界面活性剤が含まれる。
【0075】
また、ポリマー分散剤も知られており、水性顔料系インク組成物において有用である。ポリマー分散剤は、粉砕工程(a)前に、又はその工程時に顔料に添加されてよく、ホモポリマー及びコポリマー;アニオン性、カチオン性又はノニオン性ポリマー;あるいはランダム、ブロック、分枝状又はグラフトポリマーのようなポリマーが含まれる。粉砕操作に有効なポリマー分散剤には、例えば、米国特許第4,597,794号明細書、同第5,085,698号明細書、同第5,519,085号明細書、同第5,272,201号明細書、同第5,172,133号明細書、又は同第6,043,297号明細書に見られる、親水性と疎水性の部分を有するランダム及びブロックコポリマーが含まれ、また、例えば、米国特許第5,231,131号明細書、同第6,087,416号明細書、同第5,719,204号明細書又は同第5,714,538号明細書に見られる、グラフトコポリマーが含まれる。
【0076】
また、着色剤相とポリマー相を有する複合着色剤粒子も、水性顔料系インクに使用されてよい。複合着色剤粒子は、例えば、米国特許出願第10/446,013号明細書、同第10/446,059号明細書又は同第10/665,960号明細書に見られるように、顔料の存在下でモノマーを重合させることによって調製される。また、マイクロカプセル型顔料粒子も有用であり、例えば、米国特許第6,074,467号明細書に見られるように、顔料粒子を樹脂フィルムで被覆することから成っている。
【0077】
また、本発明の方法に有用な水性顔料系インク組成物には、例えば、米国特許第6,494,943号明細書及び同第5,837,045号明細書に見られるような、別個の分散剤が必要でないように顔料粒子の表面が化学的に機能化されている自己分散着色剤が含まれていてもよい。
【0078】
また、ポリマー色素又は増量色素/ラテックス顔料も、本発明の印刷方法に有用である。ポリマー色素の具体例は、米国特許第6,457,822号明細書及びその参考文献に記載されている。増量色素/ラテックス粒子の具体例は、米国特許第6,431,700号明細書、及び米国出願第10/393,235号明細書、同第10/393,061号明細書、同第10/264,740号明細書、同第10/020,694号明細書及び同第10/017,729号明細書に記載されている。
【0079】
本発明方法で使用されるインク組成物において使われる着色剤は、いかなる効果的な量、一般には0.1〜10重量%、そして好ましくは0.5〜6重量%の量で、存在していてもよい。また、インクジェットのインク組成物には、無機粒子やポリマー粒子のような非着色粒子が含まれていてもよい。かかる粒子添加剤の使用は、過去数年に亘って増加してきており、特に写真画質の画像形成に向けられたインクジェとインク組成物において増加している。例えば、米国特許第5,925,178号明細書には、画像記録要素上での光学濃度及び顔料粒子の耐引掻き性を改善するために、顔料系インクに無機粒子を用いることが記載されている。その他の具体例では、米国特許第6,508,548号明細書には、印刷画像の耐光性及び耐オゾン性を改善するために、色素系インクに水分散性のポリマーラテックスを使用することが記載されている。
【0080】
本発明方法に有用なインク組成物には、例えば、米国特許第6,598,967号明細書又は同第6,508,548号明細書に見られるように、印刷画像の光沢差、耐光性及び/又は耐オゾン性、水耐久性、耐摩耗性及び他の種々な特性を向上させるために、無機又はポリマー粒子のような非着色粒子が含まれていてもよい。
【0081】
水性系インクの場合には、本発明に有用なポリマー粒子には、ポリマー化学の技術分野の当業者にとって周知な、付加ポリマーあるいは縮合ポリマーのいずれかとして一般に分類される水分散性のポリマーが含まれる。ポリマー種の具体例には、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエーテル、ポリカーボネート、多酸無水物、及びそれらの組み合わせからなるコポリマーが含まれる。かかるポリマー粒子は、アイオノマー性、フィルム形成性、非フィルム形成性、可融性、又は高架橋性であってよく、広範囲の分子量及びガラス転移温度を有していてもよい。
【0082】
有用なポリマー粒子の具体例には、商標名、JONCRYL(S.C. Johnson 社)、UCAR(Dow Chemical 社)、JONREZ(Mead Westvaco 社)、及びVANCRYL(Air Products and Chemical 社)の下に市販されているスチレン−アクリルコポリマー;商標名、EASTMAN AQ(Eastman Chemical 社)の下に市販されているスルホン化ポリエステル;ポリエチレン又はポリプロピレン樹脂乳化液及びポリウレタン(例えば、Witco 製のWITCOBONDS)がある。これらのポリマー粒子は、それらが典型的な水性系インク組成物に相溶性であり、かつ、それらが物理的な摩耗、光及びオゾンに対して顕著に耐候性のプリント画像となるので、好ましい。
【0083】
当該インク組成物で使われる非着色粒子は、いかなる効果的な量、一般に0.01〜20重量%、そして好ましくは0.01〜6重量%の量で存在していてもよい。この非着色粒子の的確な選定は、該プリント画像の特定の利用及び性能要件に依存している。
【0084】
また、インク組成物には、インクジェットのインク組成物の分野で、屡、樹脂又はバインダーといわれる水溶性ポリマーが含まれていてもよい。当該インク組成物に有用な水溶性ポリマーは、それらが当該インクの水相又は混合した水/水溶性溶剤相に溶融性であるという点で、ポリマー粒子とは相違している。この種のポリマーには、ノニオン性、アニオン性、両イオン性及びカチオン性ポリマーが含まれる。水溶性ポリマーの代表的な具体例には、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリエチルオキサゾリン、ポリエチレンイミン、ポリアミド及びアルカリ可溶性樹脂、ポリウレタン(例えば、米国特許第6,268,101号明細書に見られるもの)、ポリアクリル酸、スチレン−アクリルメタクリル酸コポリマー(例えば、S.C. Johnson 社製のJONCRYL 70、Mead Westvaco 社製のTRUDOT IJ−4655、及びAir Products and Chemicals 社製のVANCRYL 68Sなど)が含まれる。
【0085】
本発明に有用なインク組成物には、インク組成物がプリントヘッドのノズル内で乾燥し、固まることを防止するための保湿剤及び/又は共溶剤、インク組成物中の成分の溶解助剤、印刷後の画像記録要素中へのインク組成物の浸透助剤が含まれる。水性系インク組成物に使われる保湿剤及び共溶剤の代表的な具体例には、(1)メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソ−ブチルアルコール、フルフリルアルコール、及びテトラヒドロフルフリルアルコールのようなアルコール;(2)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,7−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、グリセロール、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−プロパンジオール、糖類及びシュガーアルコール及びチオグリコールのような多価アルコール;(3)エチレングリコールモノメチルエ−テル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートのような多価アルコールから誘導される低級モノ−及びジ−アルキルエーテル;(4)尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンのような窒素含有化合物;及び(5)2,2´−チオジエタノール、ジメチルスルホキシド及びテトラメチレンスルホンのような硫黄含有化合物が含まれる。本発明に有用な典型的な水性系インク組成物には、例えば、インクの総重量当たり以下の成分:水20〜95%、保湿剤5〜70%、および共溶剤2〜20%が含まれてよい。
【0086】
界面活性剤が、インクの表面張力を適当なレベルに調整するために添加されてよい。当該界面か製剤は、アニオン性、カチオン性、両性又はノニオン性であってよく、インク組成物の0.01〜5重量%の量で使用される。好適なノニオン性界面活性剤の具体例には、線状又は第2アルコールのエトキシレート(例えば、Union Carbide 製のTERGITOL 15−S及びTERGITOL TMN系 及び Uniquema 製のBRIJ系 )、エトキシレート化アルキルフェノール(例えば、Union Carbide 製のTRITON系)、フッ素界面活性剤(例えば、DuPonc 製のZONYLS、3M製のFLUORADS)、脂肪酸エトキシレート、脂肪酸アミドエトキシレート、エトキシル化及びプロポキシル化ブロックコポリマー(例えば、BASF 製のPLURONIC及びTETRONIC系)、エトキシル化及びプロポキシル化シリコーン系界面活性剤(例えば、CK Witco 製のSILWET系)、アルキルポリグリコシド(例えば、Cognis 製のGLUCOPONS)及びアセチレン系のポリエチレンオキシド界面活性剤(例えば、Air Products 製のSURFYNOLS)が含まれる。
【0087】
アニオン性界面活性剤の具体例には、カルボキシレート(例えば、エーテルカルボキシレート及びスルホスクシネート)、スルフェート(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)、スルホネート(例えば、ドデシルベンゼンスルホネート、αオレフィンスルホネート、アルキルジフェニルオキシドジスルホネート、脂肪酸タウレート及びアルキルナフタレンスルホネート)、ホスフェート(例えば、Dexter Chemical 製のSTRODEXを含むアルキル及びアリールアルコールのホスフェートエステル)、ホスホネート及びアミンオキシド界面活性剤及びアニオン性フッ素化界面活性剤が含まれる。両性界面活性剤の具体例には、ベタイン、スルテイン、及びアミノプロピオネートが含まれる。カチオン性界面活性剤の具体例には、第4アンモニウム化合物、カチオンアミンオキシド、エトキシル化脂肪酸アミン及びイミダゾリン界面活性剤が含まれる。上記界面活性剤の付加的な具体例は、「McCutchen's Emulsifiers and Detergents: 1995年、North American Editor」に記載されている。
【0088】
水性インク中でのカビ、菌類のような微生物の成長を抑制するため、殺生剤がインクジェットインク組成物に加えられてもよい。インク組成物用の好ましい殺生剤は、0.0001〜0.5重量%の最終濃度でのPROXEL GXL(Zenaca Specialities 社)である。インクジェットのインク組成物に任意に存在してもよい付加的な添加剤には、増粘剤、導電率向上剤、コゲーション防止剤、乾燥剤、水褪せ防止剤、色素溶解剤、キレート化剤、バインダー、光安定剤、粘調剤、緩衝材、防カビ剤、カール防止剤、安定剤及び消泡剤が含まれる。
【0089】
水性インク組成物のpHは、有機又は無機の酸又は塩基を添加して調整されてもよい。有用なインクは、使われる色素や顔料のタイプによるが、好ましくは、pH2〜10を有している。典型的な無機酸には、塩酸、リン酸及び硫酸が含まれる。典型的な有機酸には、メタンスルホン酸、酢酸及び乳酸が含まれる。典型的な無機塩基には、アルカリ金属の水酸化物及びカーボネートが含まれる。典型的な有機塩基には、アンモニア、トリエタノールアミン及びテトラメチルエチレンジアミンが含まれる。
【0090】
インク組成物の正確な選定は、噴射されるプリントヘッドの特定の利用や性能要求に左右される。感熱及び感圧ドロップオンデマンド型のプリントヘッド及び連続プリントヘッドには、それぞれ、インクジェット印刷の分野で周知な、信頼性があって正確なインクの噴射を達成するために、異なる一連の物性をもつインク組成物が必要となる。受容可能な粘度は、典型的には、20cP以下であり、好ましくは1.0〜6.0cPの範囲である。受容可能な表面張力は、典型的に60ダイン/cm以下であり、好ましくは28ダイン/cm〜45ダイン/cmの範囲である。
【実施例】
【0091】
以下の実施例によって、本発明を更に説明する。
【0092】
多孔インク液受容溜め層、L−1の調製
30%固体濃度の塗布溶液を、778gの、140nm分散平均粒度を有する CONDEA Vista 社のカチオン性コロイド状ベーマイトアルミナ、CATAPAL 200の34.2%分散液、162gの、日本合成、日本合成化学工業社のポリ(ビニルアルコール)GH−17の16.7%溶液、6.0gのジヒドロキシジオキサン架橋剤、9.0gのOLIN 10G界面活性剤及び必要量の脱イオン水を混合することによって調製した。当該塗布溶液を、下塗りしたポリエステル支持体上に、32.0g/m2の固体付着量でホッパー塗工し、強制空気で乾燥して、多孔インク液受容溜め層、L−1を有する支持体を得た。水銀挿入ポロシメータ(米国、ジョージア州、Norcross のMicrometrics Instruments 社製AUTOPORE IV モデル 9500)により測定して、当該塗工層の場合に30nmのメジアン孔径を得た。
【0093】
多孔インク液受容溜め層、L−2の調製
30%固体濃度の塗布溶液を、266gの、400nm分散平均粒度を有する CONDEA Vista 社のコロイド状ベーマイトアルミナ、162gの、日本合成、日本合成化学工業社のポリ(ビニルアルコール)GH−17の16.7%溶液、6.0gのジヒドロキシジオキサン架橋剤、9.0gのOLIN 10G界面活性剤及び必要量の脱イオン水から調製した。当該塗布溶液を、下塗りしたポリエステル支持体上に、32.0g/m2の固体付着量でホッパー塗工し、強制空気により乾燥して、多孔インク液受容溜め層、L−2を有する支持体を得た。水銀挿入ポロシメータ(米国、ジョージア州、Norcross のMicrometrics Instruments 社製AUTOPORE IV モデル 9500)により測定して、174nmのメジアン孔径を得た。
【0094】
上層の可融性層用の、可融性ポリマー粒子、P−1及びP−2の合成
12Lの、MORTON反応フラスコに、4Kgの脱イオン水を充填した。フラスコ内容物を、窒素雰囲気下、150rpmで撹拌しながら、80℃まで加熱した。開始剤溶液の添加フラスコに、1974gの脱イオン水と26.4gの2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリドを装填した。モノマー相の添加フラスコに、2182gのエチルメタクリレートと364gのメチルメタクリレートを添加して、準備した。その後、各添加フラスコから反応フラスコへの装填を、5g/分の速度で開始した。添加フラスコには、必要に応じて再装填した。サンプルを種々な時間に採取し、所望のメヂアンラテックス粒度に達したときにモノマー相の供給を停止した。それぞれの粒子、P−1及びP−2を、別の反応操作で作製した。レドックス開始剤溶液の添加を、残留モノマーと反応させるために、モノマー相の添加の終期を越えて30分間延長した。反応フラスコ内容物を、80℃で1時間撹拌し、続いて20℃まで冷却して、200μmのポリクロス材を通して濾過した。そのラテックスを限外濾過により濃縮して、カチオン性に荷電した界面活性剤−遊離ポリ(エチルメタクリレート−co−メチルメタクリレート)粒子:Tg=85℃を有し、HORIBA LA−920 粒度分析器を用いて測定した粒子P−1(445nm)、及びP−2(1200nm)の50.7%固体分散液を得た。
【0095】
可融性のポリマー粒子を含む塗布溶液、S−1及びS−2の調製
40%固体濃度の塗布溶液を、上記で作製した275gの、ポリ(エチルメタクリレート−co−メチルメタクリレート)可融性ポリマー粒子の50.7%濃度の固体分散液のそれぞれと、55gの疎水性バインダーWITCOBOND W320(Uniroyal Chemistry 社)、35重量%の1.9μmポリウレタン粒子(Tg=−12℃)の水性分散液、及び16gの、10%OLIN 10G界面活性剤溶液と必要量の水とを混合して調製した。塗布溶液S−1は、可融性ポリマー粒子P−1を使用し、S−2は、粒子P−2を使用した。
各塗布溶液を、下塗りしたポリエステル支持体上に、32.0g/m2の固体付着量でホッパー塗工し、強制空気で乾燥して、可融性ポリマー粒子の単一の多孔層をもつ支持体を得た。水銀挿入ポロシメータ(米国、ジョージア州、Norcross のMicrometrics Instruments 社製AUTOPORE IV モデル 9500)により測定すると、次のメジアン孔径:S−1(P−1)110nm、及びS−2(P−2)320nm、を得た。
次いで、当該塗布溶液S−1及びS−2を、塗付した液溜め層、L−1及びL−2上に12.9g/m2の固体付着量でホッパー塗工して、可融性のオーバーコート層、L−3及びL−4となし、強制空気で乾燥して、ポリエステル支持体、該支持体上の多孔インク液受容層及び多孔可融性の上層を有する、以下の表1に記載のインクジェット受容体、R−1〜R−4を得た。
二層の塗膜に関して水銀挿入ポロシメータにより測定すると、前記単一層で測定した孔径に相当する孔径を得た。
【0096】
シアン顔料インク分散液
325gの平均径50μmを有するポリマービーズ、30.0gの顔料ブルー15:3(Sun Chemical 社)、10.5gのカリウムオレイルメチルタウレート(KOMT)及び209.5gの脱イオン水の混合物を調製した。これらの成分を、Morehouse−Cowles Hochmeyer 製の高エネルギー媒体ミルを用いて、室温下、二重壁容器中で粉砕した。粉砕時間を変えて、Leeds & Northrup 製のMICROTRAC II 超微粉粒子分析器(UPA)を用いて測定して、47nm及び128nmの平均顔料粒度の分散液を得た。この混合物を、4〜8μmのブフナー漏斗を通して濾過して、ポリマービーズを取り除き、次いで得られる濾液を希釈して、10.0重量%の最終濃度の顔料を有するシアン顔料分散液を得た。
【0097】
シアン顔料インク
シアン顔料インク#1を、上記した47nmのシアン顔料分散液を用いて、該インク総量に対して2.48重量%の顔料を得るように調整した。他の成分には、2.7重量%のグリセロール、2.5重量%のDOWANOL DB,6.8重量%のジエチレングリコール、1.73重量%のJONREZ 4655、及び0.20重量%のSURFYNOL 465が含まれていた。シアン顔料インク#2を、128nmのシアン顔料分散液を用いて同様に調製した。
【0098】
印刷
Corel Draw 9に造られた100%の均一シアンが盛られた2.5cm×10cmの矩形を含む印刷試験対象物を、周知の平均粒度のシアン顔料インク、即ちシアン顔料インク#1(2nmの標準偏差をもつ47nmの平均粒度)、及びシアン顔料インク#2(3nmの標準偏差をもつ128nmの平均粒度)を装填したCANON i550プリンターを用いて、受容体R1〜R4上に印刷して、以下の表1に概説されるプリント例PR−1〜PR−8を作製した。
【0099】
溶融
当該プリント例PR−1〜PR−8を、ベルト溶融装置の加熱ニップ内で、63.5cm/分の速度でゾルゲル塗工されたポリイミドに対して、150℃及び0.34MPa下で溶融させた。
【0100】
顔料の層別
印刷、溶融した要素に係る顔料の層別指標の(1)S.I.−1は、上層の可融性層の上方半分における積算光学濃度を全積算光学濃度で割ったものと定義し、そして、(2)S.I.−2は、上層の可融性層の下方半分における積算光学濃度を全積算光学濃度で割ったものと定義する。
【0101】
層別指標(S.I.)の測定
溶融したプリント例のPR−1〜PR−8の横断面(5μm厚)を、Stephens Scientific のRESOLVE顕微鏡浸漬オイル(低粘度)中で、ガラススライドとカバースリップとの間に固定した。画像は、40倍(0.75NA)の対物レンズと転写レンズを用いて、各画素が0.113μm(グリーンの場合は、〜1.5×Nyquist 度数)であるようなSPOT RTカメラ上に、1600×1200画素の画像を記録形成した。画像サンプルを、その部分がカメラのCCDセンサーの主軸と合致するように回転させた。当該CCDセンサーは、光の強度に一次的に応答するので、固定する媒体の隣接領域において100%の透過率となるように検量線を作成した。各CCDカラムにおける平均濃度のプロットを、画像ディスプレイ上にオーバーレイさせて、オペレータが層の境界位置を選定できるようにした。図1には、得られた相対ODトレース(R,G,B)及び境界位置(+)が示されている。シアン画像の積算光学濃度は、それぞれのCCDカラムでのレッド濃度−ブルー濃度からコンピュータで計算され、オペレータによって選定される空間領域内で積算される。
シアンの場合は、レッドカラー平面を信号とし、ブルーカラー平面を背景として捉え、レッドからブルーを引き去り、負(限界)の数値を(ノイズとして)ゼロとし、その後に、100%に対して評価する。
【0102】
【表1】

【0103】
汚れ試験
上記プリントサンプルPR−1〜PR−8について、未溶融のプリントパッチを印刷直後、溶融前にFinger Cot(登録商標)の指ラテックス手袋で拭うことによって試験した。Finger Cot上に移行したインクは、次の尺度:(1)移行インク無し、(2)僅か移行及び(3)大量に移行を用いて評価したが、「インク移行無し」であることが最も好ましい。
【0104】
引掻き試験
溶融させたプリントサンプルPR−1〜PR−8を、試験前に、21℃、50%RH下で24時間調湿した。サンプルは、各サンプル表面を50回の往復動作で、TRIZACT A5摩耗試験機フィルム(3M製)の新鮮なディスクをスライドさせて研磨した。それぞれの場合に、300gの法線力を用いた。次いで、以下の尺度:(1)濃度の除去無し、(2)僅かな濃度の除去有り、(3)著しい濃度の除去有りにしたがって、視覚的に評価した。
【0105】
反射濃度
上記プリントサンプルPR−1〜PR−8の反射光学濃度は、背景としてX−RITE白色反射標準を用いて読み取った。その試験結果は、以下の表2に概説されている。
【0106】
【表2】

【0107】
本発明の実施例では、良好な濃度、優れた溶融前の耐汚れ性、及び優れた溶融後の耐引掻き性を示した。本発明の実施例は、印刷された顔料濃度の少なくとも半分が溶融層の下方半分に見られるものに相当している。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】図1は、本発明によって作製された印刷溶融インク記録媒体の断面の顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)デジタルデータ信号に応答するインクジェットプリンターを設置すること;
b)支持体及びその表面上に多孔のインク液受容層と多孔の上層可融性層とを有し、当該多孔のインク液受容層は当該多孔の上層可融性層に対して隣接してその下層に存在し、そして各層はメジアン孔径に特徴を有し、当該多孔の上層可融性層のメジアン孔径が当該下層にある層のメジアン孔径よりも大きいことを特徴とする可融性インクジェット記録要素をプリンターに装填すること;
c)顔料系インク中に平均顔料粒度の顔料着色剤粒子を含むことに特徴を有する少なくとも一種のインクジェット顔料系インク組成物をプリンターに装填すること;
d)デジタルデータ信号に応答して、当該インク組成物を用いて可融性のインクジェット記録要素上に印刷すること;
e)当該印刷された要素を溶融させて、溶融した上層を得ること、
ここで、当該多孔の上層可融性層及びその下層のメジアン孔径と顔料着色剤粒子の平均顔料粒度とが相俟って、当該インク組成物が記録要素に塗付された後には、当該多孔の上層可融性層のメジアン孔径が十分に大きく、そして当該下層の平均粒度が十分小さいため、その印刷画像では、当該顔料着色剤粒子が溶融上層の厚さの上方半分に比して下方半分に濃縮されて、実質的に当該下層への侵入が拒否されていることは、当該記録要素上の均一な試験領域を前記顔料系インクで塗付して光学濃度1.0〜2.5とした後にその印刷要素を溶融することによって測定でき、その結果として、顔料系インクの50%を越える顔料着色剤粒子が、溶融した上層の下方半分に保持されていることは、印刷溶融された記録要素の試験領域の断面に係る光学微小濃度計により測定されている、
を含んでなる、インクジェット記録要素上へのカラー画像のインクジェット印刷方法。
【請求項2】
前記多孔の上層可融性層のメジアン孔径が、下層に比して、当該多孔の上層可融性層内で顔料着色剤粒子の自由流動が可能となるように十分に大きく、かつ下層のメジアン孔径が、均一な試験領域に印刷することによって測定して、20%未満の顔料着色剤粒子が当該試験領域における前記下層に存在するように十分小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記平均顔料粒度が上層可融性層のメジアン孔径の80%より小さいが、隣接する下層のインク液受容層のメジアン孔径の80%より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記多孔の可融性層の厚さが1〜50μmである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記平均顔料粒度が上層可融性層のメジアン孔径の1〜70%である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記平均顔料粒度が上層可融性層のメジアン孔径の15〜50%であり、かつ当該平均顔料粒度が隣接する下層のインク液受容層のメジアン孔径の100%よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
均一な領域を印刷することによって測定して、前記顔料着色剤粒子の15%未満が当該均一領域中の下層に保持される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記多孔の上層可融性層が0.10〜10μmの範囲の平均粒度を有する可融性の、ポリマー粒子を含み、かつ当該上層可融性層におけるメジアン孔径が80〜500nmで変わる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記可融性のポリマー粒子の平均粒度が200nm〜5μmであり、かつ上層可融性層におけるメジアン孔径が100〜350nmである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記上層可融性層が、セルロースアセテートエステル、スチレンポリマー、ビニルポリマー、エチレン−ビニルクロリドコポリマー、アクリルポリマー、ポリウレタン、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニリデンクロリド)、ビニルアセテート−ビニルクロリドコポリマー、及びそれらのコポリマーからなる群より選ばれる熱可塑性ポリマーの可融性のポリマー粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記熱可塑性ポリマーがアルキルアクリレート又はメタクリレートモノマー単位を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記可融性の多孔層と支持体との間に、少なくとも一層の多孔性のインク液受容層が存在し、当該多孔性のインク液受容層が50重量%〜95重量%の粒子と50重量%〜5重量%のポリマーバインダーとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
カラー画像が印刷され、そしてプリンターが、少なくともシアン、イエロー、及びマゼンタ顔料系インク組成物を含む複数のインクジェット顔料系インク組成物で装填され、当該インクジェット顔料系インク組成物の少なくとも一種が、その平均顔料粒度が上層の可融性層のメジアン孔径の80%よりも小さいが、隣接する下層のインク液受容層のメジアン孔径の80%よりも大きい顔料着色剤粒子を含み、当該多孔性可融性層の厚さが1〜50μmである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
シアン、イエロー、及びマゼンタ顔料系インク組成物の全てが、その平均顔料粒度が上層の可融性層のメジアン孔径の80%よりも小さいが、隣接する下層のインク液受容層のメジアン孔径の80%よりも大きい顔料着色剤粒子を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
カラー画像が印刷され、そしてプリンターが、少なくともシアン、イエロー、及びマゼンタ顔料系インク組成物を含む複数のインクジェット顔料系インク組成物で装填され、当該インクジェット顔料系インク組成物の少なくとも一種の顔料着色剤粒子が、そのインク組成物における当該顔料着色剤粒子に関して前記したように測定されて、溶融した上層の下方半分に濃縮されている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
カラー画像が印刷され、そしてプリンターが、少なくともシアン、イエロー、及びマゼンタ顔料系インク組成物を含む複数のインクジェット顔料系インク組成物で装填され、当該インクジェット顔料系インク組成物の三種全ての顔料着色剤粒子が、そのインク組成物における当該顔料着色剤粒子に関して前記したように測定されて、溶融した上層の下方半分に濃縮されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
a)デジタルデータ信号に応答するインクジェットプリンターを設置すること;
b)支持体及びその表面上に多孔のインク液受容層と多孔の上層可融性層とを有し、当該多孔のインク液受容層は当該多孔の上層可融性層に対して隣接してその下層にある層として存在し、そして各層はメジアン孔径に特徴を有し、当該多孔の上層可融性層のメジアン孔径が当該下層にある層のメジアン孔径よりも大きいことを特徴とする可融性インクジェット記録要素をプリンターに装填すること;
c)顔料系インク中に平均顔料粒度の顔料着色剤粒子を含むことに特徴を有する少なくとも一種のインクジェット顔料系インク組成物をプリンターに装填すること;
d)デジタルデータ信号に応答して、当該インク組成物を用いて可融性のインクジェット記録要素上に印刷すること;
e)当該印刷された要素を溶融させて、溶融した上層を得ること、
ここで、当該平均顔料粒度は、上層可融性層のメジアン孔径の80%よりも小さいが、隣接する下層のインク液受容層のメジアン孔径の80%よりも大きく、かつ当該多孔の可融性層の厚さが、プリント画像において、顔料着色剤粒子が溶融した上層の上方半分に比して下方の半分に濃縮可能で、実質的にその下層への侵入が拒否されるように、1〜50μmであること、
を含んでなる、インクジェット記録要素上へのカラー画像のインクジェット印刷方法。
【請求項18】
前記プリントが、支持体、及び支持体上に順に、下層多孔層と前記顔料系インクで形成された画像を含む連続ポリマーフィルムを含む溶融した上層とを含む、請求項1の方法で作製したプリント。
【請求項19】
前記プリントが、支持体、及び支持体上に順に、下層多孔層と前記顔料系インクで形成された画像を含む連続ポリマーフィルムを含む溶融した上層とを含む、請求項17の方法で作製したプリント。
【請求項20】
a)デジタルデータ信号に応答するインクジェットプリンターを設置すること;
b)支持体及びその表面上に多孔のインク液受容層と多孔の上層可融性層とを有し、当該多孔のインク液受容層は当該多孔の上層可融性層に対して隣接してその下層にある層として存在し、そして各層はメジアン孔径に特徴を有し、当該多孔の上層可融性層のメジアン孔径が当該下層にある層のメジアン孔径よりも大きいことを特徴とする可融性インクジェット記録要素をプリンターに装填すること;
c)顔料系インク中に平均顔料粒度の顔料着色剤粒子を含むことに特徴を有する少なくとも一種のインクジェット顔料系インク組成物をプリンターに装填すること;
d)デジタルデータ信号に応答して、当該インク組成物を用いて可融性のインクジェット記録要素上に印刷すること;
e)当該印刷された要素を溶融させて、溶融した上層を得ること、
ここで、当該平均顔料粒度は、上層可融性層のメジアン孔径の80%よりも小さいが、隣接する下層のインク液受容層のメジアン孔径の80%よりも大きく、かつ当該多孔の可融性層の厚さが、プリント画像において、顔料着色剤粒子が溶融した上層の上方半分に比して下方の半分に濃縮可能で、実質的にその下層への侵入が拒否されるように、1〜50μmであること、
を含んでなる、インクジェット記録要素上へのカラー画像のインクジェット印刷方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−500193(P2009−500193A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519350(P2008−519350)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/023393
【国際公開番号】WO2007/005232
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】