説明

インクジェット用インクセット、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法

【課題】 耐擦性に優れるインクジェット用インクセット、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】 少なくとも色材と、高分子物質と、水溶性溶媒と、水と、を含有する第1の液体と、少なくとも凝集剤と、水溶性溶媒と、水と、を含有する第2の液体と、を有し、前記第1の液体及び前記第2の液体の少なくとも一方にさらに可塑剤を含有するインクジェット用インクセット並びにそれを用いたインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インクセット、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノズル、スリット、又は多孔質フィルム等のインク吐出口から、液体又は溶融固体等のインクを吐出する、いわゆるインクジェット方式は、小型で、安価である等の特徴から、多くのプリンターに用いられている。これらインクジェット方式の中でも、圧電素子の変形を利用しインクを吐出させるピエゾインクジェット方式、又は、熱エネルギーによるインクの沸騰現象を利用した熱インクジェット方式等が高解像度、高速印字性などの観点から多く利用されている。また、インクジェットプリンターは、普通紙、インクジェット専用紙等のいわゆる紙に印字されるだけでなく、OHPシート等のフィルム又は布等に対しても印字することができる。
【0003】
色材として、顔料を用いたインクジェット記録用インクが知られている(例えば、特許文献1乃至3参照。)。色材に顔料を用いたインクは、染料に比べて用紙の表面に顔料が保持されやすいため、高画質、耐水性、耐光性に有利である。しかし、耐擦性に劣り、画像の定着信頼性が低くなってしまうことがあった。
【特許文献1】特開平9−207424号公報
【特許文献2】特開平9−234943号公報
【特許文献3】特開2003−213181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであり、耐擦性に優れるインクジェット用インクセット、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は、
<1> 少なくとも色材と、高分子物質と、水溶性溶媒と、水と、を含有する第1の液体と、少なくとも凝集剤と、水溶性溶媒と、水と、を含有する第2の液体と、を有し、前記第1の液体及び前記第2の液体の少なくとも一方にさらに可塑剤を含有するインクジェット用インクセットである。
【0006】
<2> 前記可塑剤のSP値と前記高分子物質のSP値との差が2.0以下である<1>に記載のインクジェット用インクセットである。
【0007】
<3> 前記第1の液体及び前記第2の液体の質量比1:1混合液における、前記高分子物質と前記可塑剤との質量混合比は、1:0.005〜1:0.4である<1>に記載のインクジェット用インクセットである。
【0008】
<4> 前記第1の液体における前記高分子物質の含有量は、前記色材の含有量に対して20〜150質量%である<1>に記載のインクジェット用インクセットである。
【0009】
<5>pHが8以上の第3の液体をさらに有する請求項1に記載のインクジェット用インクセット。
【0010】
<6> インクジェット用インクセットにおける各液体を噴射するための記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置であって、前記インクジェット用インクセットは、少なくとも色材と、高分子物質と、水溶性溶媒と、水と、を含有する第1の液体と、少なくとも凝集剤と、水溶性溶媒と、水と、を含有する第2の液体と、を有し、前記第1の液体及び前記第2の液体の少なくとも一方にさらに可塑剤を含有する、インクジェット記録装置である。
【0011】
<7> 前記可塑剤のSP値と前記高分子物質のSP値との差が2.0以下である<6>に記載のインクジェット記録装置である。
【0012】
<8> 前記第1の液体及び前記第2の液体の質量比1:1混合液における、前記高分子物質と前記可塑剤との質量混合比は、1:0.005〜1:0.4である<6>に記載のインクジェット記録装置である。
【0013】
<9> 前記第1の液体における前記高分子物質の含有量は、前記色材の含有量に対して20〜150質量%である<6>に記載のインクジェット記録装置である。
【0014】
<10> 前記インクジェット用インクセットは、pHが8以上の第3の液体をさらに有する<6>に記載のインクジェット記録装置である。
【0015】
<11> 少なくとも色材と、高分子物質と、水溶性溶媒と、水と、を含有する第1の液体と、少なくとも凝集剤と、水溶性溶媒と、水と、を含有する第2の液体と、を有し、前記第1の液体及び前記第2の液体の少なくとも一方にさらに可塑剤を含有するインクジェット用インクセットを用い、前記第1の液体と、前記第2の液体と、が互いに接触するように記録媒体上に付与されて画像が形成されるインクジェット記録方法である。
【0016】
<12> 前記可塑剤のSP値と前記高分子物質のSP値との差が2.0以下である<11>に記載のインクジェット記録方法である。
【0017】
<13> 前記第1の液体及び前記第2の液体の質量比1:1混合液における、前記高分子物質と前記可塑剤との質量混合比は、1:0.005〜1:0.4である<11>に記載のインクジェット記録方法である。
【0018】
<14> 前記第1の液体における前記高分子物質の含有量は、前記色材の含有量に対して20〜150質量%である<11>に記載のインクジェット記録方法である。
【0019】
<15> 前記インクジェット用インクセットは、pHが8以上の第3の液体をさらに有し、前記第1の液体と、前記第2の液体と、前記第3の液体と、が互いに接触するように記録媒体上に付与されて画像が形成される<11>に記載のインクジェット記録方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、耐擦性に優れたインクジェット用インクセット、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明のインクジェット用インクセット、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法について詳細に説明する。
<インクジェット用インクセット>
本発明のインクジェット用インクセットは、少なくとも色材と、高分子物質と、水溶性溶媒と、水と、を含有する第1の液体と、少なくとも凝集剤と、水溶性溶媒と、水と、を含有する第2の液体と、を有し、前記第1の液体及び前記第2の液体の少なくとも一方にさらに可塑剤を含有するものである。
本発明のインクジェット用インクセットに係る2種類の液体を混合することにより、色材と高分子物質と可塑剤とを含む顔料凝集体が形成される。可塑剤を含有する顔料凝集体は、可塑性に優れるため、基材上での成膜性が向上する。その結果として本発明のインクジェット用インクセットは、耐擦性に優れる画像を形成することができる。
以下、本発明のインクジェット用インクセットを構成する各液体に含有される材料について順次説明する。
【0022】
―色材―
本発明のインクジェット用インクセットにおいては、色材として有機顔料、無機顔料のいずれも使用でき、黒色顔料では、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料等が挙げられる。黒色とシアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料、プラスチックピグメント等を使用しても良い。また、本発明のために、新規に合成した顔料でも構わない。
更に、本発明において、シリカ、アルミナ、又は、ポリマービード等をコアとして、その表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等を顔料として使用することも可能である。
【0023】
黒色顔料の具体例としては、Raven7000,Raven5750,Raven5250,Raven5000 ULTRAII,Raven 3500,Raven2000,Raven1500,Raven1250,Raven1200,Raven1190 ULTRAII,Raven1170,Raven1255,Raven1080,Raven1060(以上コロンビアン・カーボン社製)、Regal400R,Regal330R,Regal660R,Mogul L,Black Pearls L,Monarch 700,Monarch 800,Monarch 880,Monarch 900,Monarch 1000,Monarch 1100,Monarch 1300,Monarch 1400(以上キャボット社製)、Color Black FW1,Color Black FW2,Color Black FW2V,Color Black 18,Color Black FW200,Color Black S150,Color Black S160,Color Black S170,Printex35,Printex U,Printex V,Printex140U,Printex140V,Special Black 6,Special Black 5,Special Black 4A,Special Black4(以上デグッサ社製)、No.25,No.33,No.40,No.47,No.52,No.900,No.2300,MCF−88,MA600,MA7,MA8,MA100(以上三菱化学社製)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
シアン色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Blue−1,−2,−3,−15,−15:1,−15:2,−15:3,−15:4,−16,−22,−60等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
マゼンタ色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Red−5,−7,−12,−48,−48:1,−57,−112,−122,−123,−146,−168,−184,−202等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
黄色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Yellow−1,−2,−3,−12,−13,−14,−16,−17,−73,−74,−75,−83,−93,−95,−97,−98,−114,−128,−129,−138,−151,−154,−180等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本発明においては、色材として水に自己分散可能な顔料を用いることもできる。水に自己分散可能な顔料とは、顔料表面に水に対する可溶化基を数多く有し、高分子分散剤が存在しなくとも水中で安定に分散する顔料のことを指す。具体的には、通常のいわゆる顔料に対して酸・塩基処理、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等の表面改質処理等を施すことにより、水に自己分散可能な顔料が得られる。
【0028】
また、水に自己分散可能な顔料としては、上記顔料に対して表面改質処理を施した顔料の他、キャボット社製のCab−o−jet−200、Cab−o−jet−300、IJX−253、IJX−266、IJX−273、IJX−444、IJX−55、オリエント化学社製のMicrojet Black CW−1、CW−2等の市販の自己分散顔料等も使用できる。
【0029】
本発明に使用される自己分散顔料としては、その表面に官能基として少なくともスルホン酸、スルホン酸塩、カルボン酸、又はカルボン酸塩を有する顔料であることが好ましい。
更に、樹脂により被覆された顔料等を使用することもできる。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などの市販のマイクロカプセル顔料だけでなく、本発明のために試作されたマイクロカプセル顔料等を使用することもできる。
また、後述する高分子物質を上記顔料に化学的に結合させた樹脂分散型顔料を用いることもできる。
【0030】
本発明に係る第1の液体に含有される色材の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下、好ましくは1質量%以上10質量%以下の範囲で使用される。色材の含有量が0.1質量%未満の場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、含有量が20質量%よりも多い場合には、液体の噴射特性が不安定となる場合が存在した。
【0031】
色材の体積平均粒子径は30nm以上250nm以下であることが好ましい。より好ましくは、50nm以上200nm以下であり、更に好ましくは75nm以上175nm以下である。色材の体積平均粒子径が30nm未満である場合には、光学濃度が低くなる場合が存在し、一方、250nmを超える場合には、保存安定性が確保できない場合が存在した。
色材の体積平均粒子径とは、色材そのものの粒子径、又は色材に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒子径をいう。本発明において、体積平均粒子径の測定装置には、マイクロトラックUPA粒度分析計 9340 ( Leeds&Northrup社製 )を用いた。その測定は、第1の液体4mlを測定セルに入れ、所定の測定法に従って行った。なお、測定時に入力するパラメーターとして、粘度には第1の液体の粘度を、分散粒子の密度には色材の密度を入力した。
【0032】
―高分子物質―
本発明において、第1の液体に用いられる高分子物質は、水溶性樹脂、水分散性樹脂のいずれも使用でき、ノニオン性化合物、アニオン性化合物、カチオン性化合物、両性化合物いずれであっても構わない。前記高分子物質は、色材を分散させるための分散剤、或いは、色材の凝集を促進させるために用いられている。
前記高分子物質の具体例としては、例えば、α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの共重合体等が使用できる。この共重合体は、ランダム、ブロック、グラフト共重合体等のいずれの構造であっても構わない。
【0033】
前記α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート、ビスメタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロキシエチルフェニルアシドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等が挙げられる。
【0034】
上記α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの単独重合体又は複数を共重合して得られる共重合体が高分子物質として使用される。
具体的には、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。
【0035】
ノニオン性化合物の具体例としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールラウリン酸エステル、ソルビット等が挙げられる。
【0036】
カチオン性化合物の具体例としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノメタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノアクリルアミド、N−ビニルピロール、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール等の共重合体、更には、モノアルキルアミン、モノアルキルジメチルアミン、アルキルプロピルジアミン、アルキルジプロピルトリアミン、アルキルトリプロピルテトラミン、ポリオキシエチレンアルキルメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルアミンアセテート、テトラアルキルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
両性化合物の具体例としては、例えば、ベタイン型化合物等が挙げられる。
【0037】
本発明において使用される高分子物質は、質量平均分子量で2000以上15000以下のものが好ましい。高分子物質の分子量が2000未満の場合、顔料が安定に分散しない場合が存在し、一方、分子量が15000を超える場合には、液体の粘度が高くなり、吐出性が悪化する場合が存在した。より好ましい質量平均分子量は、3500〜10000である。
【0038】
本発明においては、第2の液体に高分子物質を含有させてもよい。第2の液体に高分子物質を用いる場合には、官能基としてスルホン酸、スルホン酸基、カルボン酸、又はカルボン酸基を有する高分子物質を用いることが好ましい。より好ましくは、スルホン酸、スルホン酸基を官能基として有する高分子物質である。これは、高分子物質にカルボン酸又はカルボン酸塩を官能基として有する分散剤を用いた場合、長期保存安定性が悪化する場合が存在したためである。
【0039】
高分子物質の含有量は、第1の液体、第2の液体共に0.1質量%以上25質量%以下の範囲で使用される。添加量が25質量%を超える場合には、液体粘度が高くなり、液体の噴射特性が不安定となる場合が存在した。一方、添加量が0.1質量%未満の場合には、良好な定着性が得られなかった。高分子物資の添加量としては、0.15質量%以上2.5質量%以下がより好ましく、更に好ましくは、0.2質量%以上2質量%以下である。
また、第1の液体における高分子物質の含有量は、色材の含有量に対して20〜150質量%が好ましく、25〜120質量%がさらに好ましく、30〜100質量%が特に好ましい。高分子物質の含有量が色材の含有量に対して20〜150質量%であれば、ノズル不吐出が無く、色材の記録媒体への良好な定着性が得られる。
【0040】
−可塑剤−
本発明においては、第1の液体及び第2の液体の少なくとも一方に可塑剤が含有される。可塑剤としては、公知の樹脂用の可塑剤を特に制限なく使用することができるが、前記可塑剤は、前記高分子物質と相溶することにより成膜し、耐擦性に優れた画像を得るという本願の効果を奏することから、前記可塑剤のSP値と前記高分子物質のSP値(溶解性パラメータ)との差は2.0以下である必要がある。前記SP値の差は、望ましくは1.0以下、さらに望ましくは0.5以下であると、可塑剤と高分子物質との相溶性がさらに増し、成膜により耐擦性に優れた画像を得ることができる。前記可塑剤としては、「化学便覧」(日本化学会編、丸善)や、「可塑剤−その理論と応用−」(村井孝一編著、幸書房)や、「可塑剤の研究上」「可塑剤の研究下」(高分子化学協会編)や、「便覧ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)等を参考にして選択することができる。
【0041】
本発明において、SP値としてFedorsの方法により求められた値を用いる。Fedorsの方法は、Fedors,R.F.,“Polymer Eng.Sci.”,14.P.147(1974)に詳しい。
具体的には、以下の式を用いて算出した。
【0042】
【数1】

【0043】
上記式において、ΔE : 凝集エネルギー密度、V : モル体積、Δei : 原子又は原子団の蒸発エネルギー、Δvi : モル体積を示す。また、上記式におけるモル体積の値は、分子量/比重として求められる。ここでの比重は、25℃における値を用いる。
【0044】
可塑剤は、高沸点有機溶剤や熱溶剤などとして記載されているものもあるが、例えば、特開昭59−83154号、同59−178451号、同59−178453号、同59−1−78454号、同59−178455号、同59−178457号、同62−174754号、同62−245253号、同61−209444号、同61−200538号、同62−8145号、同62−9348号、同62−30247号、同62−136646号、同62−174754号、同62−245253号、同61−209444号、同61−200538号、同62−8145号、同62−9348号、同62−30247号、同62−136646号、特開平2−235694号各公報等に記載されているようなエステル類(例えば、フタル酸エステル類、リン酸エステル類、脂肪酸エステル類、アビエチン酸エステル類、アジピン酸エステル類、セバシン酸エステル類、アゼライン酸エステル類、安息香酸エステル類、酪酸エステル類、エポキシ化脂肪酸エステル類、グリコール酸エステル類、プロピオン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、クエン酸エステル類、スルホン酸エステル類、カルボン酸エステル類、コハク酸エステル類、マレイン酸エステル類、フマル酸エステル類、フタル酸エステル類、ステアリン酸エステル類など)、アミド類(例えば、脂肪酸アミド類、スルホアミド類など)、エーテル類(M.W.200以上)、アルコール類(M.W.200以上)、ラクトン類、ポリエチレンオキシ類などの化合物が挙げられる。
【0045】
可塑剤としては、比較的低分子量のポリマーを用いることができる。この場合、該可塑剤の分子量としては、分子量が15000以下、好ましくは、5000以下である。更にオリゴマーも可塑剤として用いることができる。上記に挙げた化合物以外にも市販品として、例えば、旭電化工業製アデカサイザーPN−170、PN−1430;C.P.HALL社製品PARAPLEX−G−25、G−30、G−40;理化ハーキュレス製品エステルガム8L−JA、エステルR−95、ペンタリン4851、FK115、4820、830、ルイゾール28−JA、ピコラスチックA75、ピコテックスLC、クリスタレックス3085等が挙げられる。
【0046】
また、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコール等のSP値が8〜11の水性溶媒を可塑剤として用いることもできる。
【0047】
本発明に用いられる可塑剤としては脂肪族エステル類、酢酸エステル類、トリメリット酸エステル類、正燐酸エステル類からなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、脂肪族エステル類がさらに好ましく、ブチルカルビトール、ジメチルアジペート、ジエチルサクシネートが特に好ましい。
【0048】
高分子物質と可塑剤との質量混合比は、第1の液体及び第2の液体の質量比1:1混合液において1:0.005〜1:0.4が好ましく、1:0.01〜1:0.35がさらに好ましく、1:0.03〜1:0.3が特に好ましい。
高分子物質と可塑剤との質量混合比が1:0.005〜1:0.4であれば、記録媒体に対する色材の良好な定着性が得られる。
【0049】
−水溶性溶媒−
本発明に用いられる水溶性溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。
水溶性溶媒の具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。
多価アルコール類誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0050】
含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
【0051】
本発明に使用される水溶性溶媒は、少なくとも1種類以上使用することが好ましい。水溶性有機溶媒の含有量としては、1質量%以上60質量%以下、好ましくは、5質量%以上40質量%以下で使用される。液体中の水溶性溶媒量が1質量%よりも少ない場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、逆に、60質量%よりも多い場合には、液体の粘度が大きくなり、液体の噴射特性が不安定になる場合が存在した。
【0052】
−界面活性剤−
本発明においては、各液体中に必要に応じて界面活性剤を添加することができる。本発明に用いられる界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部とを合わせ持つ構造を有する化合物等が有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれも使用することができる。更には、上記高分子物質を使用することもできる。
【0053】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩およびスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、高級アルキルリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩等が使用でき、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ケリルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩等も有効に使用される。
【0054】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、脂肪族アルカノールアミド、グリセリンエステル、ソルビタンエステル等が挙げられる。
【0055】
カチオン性界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられ、例えば、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライド等が挙げられる。
その他、スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント等や、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等のカルボン酸塩型両性界面活性剤、硫酸エステル型両性界面活性剤、スルホン酸塩型両性界面活性剤、リン酸エステル塩型両性界面活性剤等も使用できる。
【0056】
本発明において液体中に添加する界面活性剤量は、10質量%未満であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上5質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以上3質量%以下の範囲で使用される。添加量が10質量%以上の場合には、光学濃度、及び、顔料インクの保存安定性が悪化する場合が存在した。
【0057】
本発明において、第2の液体に用いられる凝集剤としては、色材としてその表面にアニオン性基を有する顔料が含有される場合、酸性物質、電解質又はカチオン性化合物等を用いることが好ましい。表面にアニオン性基を有する顔料とは、自己分散型の色材であって表面にアニオン性基を有する場合のほか、アニオン性の高分子物質が顔料の表面に吸着している場合も含む。
【0058】
電解質の凝集剤としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等の一価金属イオン及び、アルミニウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、スズイオン、チタンイオン、亜鉛イオン等の多価金属イオンと、塩酸、臭酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、チオシアン酸、および、酢酸、蓚酸、乳酸、フマル酸、クエン酸、サリチル酸、安息香酸等の有機カルボン酸及び、有機スルホン酸の塩等が挙げられる。
【0059】
具体例としては、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、チオシアン酸バリウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、チオシアン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、酢酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、乳酸カルシウム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、蓚酸鉄、乳酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、塩化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸二水素マンガン、酢酸マンガン、サリチル酸マンガン、安息香酸マンガン、乳酸マンガン、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸スズ、塩化チタン、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、酢酸亜鉛等の多価金属類、および塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸ナトリウム、蓚酸カリウム、クエン酸ナトリウム、安息香酸カリウム等の一価電解質の塩等が挙げられる。
【0060】
一方、カチオン性化合物としては、1級、2級、3級および4級アミンおよびそれらの塩等が挙げられる。具体例としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩、ポリアミン等が挙げられ、例えば、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、ジプロピルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルアミン重合体、モノアリルアミン重合体等が挙げられる。
【0061】
好ましい電解質としては、多価金属塩であり、例えば、硫酸アルミニウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸スズ、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸アルミニウムであり、好ましいカチオン性化合物としては、モノアリルアミン重合体、ジアリルアミン重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体等が挙げられる。
【0062】
本発明において、凝集剤は単独で使用しても、あるいは2種類以上を混合して使用しても構わない。また、第2の液体における凝集剤の含有量としては、0.01〜15質量%が好ましく、より好ましくは、0.1〜10質量%で使用される。
【0063】
−キレート化剤−
第2の液体における自己分散顔料と凝集剤との相互作用を低減し、保存安定性を改善するために、第2の液体にキレート化剤を添加することも可能である。但し、ここで用いられるキレート化剤として、凝集剤とキレート化剤とのキレート化合物が水易溶性となる化合物を選択することが好ましい。
本発明において用いることができるキレート化剤とは、例えば、エチレンジアミン、エチレンジアミンテトラ酢酸、1,2−プロピレンジアミンテトラ酢酸、1−フェニルエチレンジアミンテトラ酢酸、3,3−ジメチルブタン−1,2−ジアミンテトラ酢酸、1,2,3−トリアミノプロパンヘキサ酢酸、トリメチレンジアミンテトラ酢酸、ニトリロ三酢酸、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエチレンジアミン四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、プロパン−1,2−ジアミン、ブタン−1,2−ジアミン、3,3−ジメチルブタン−1,2−ジアミン、1,2,3−トリアミノプロパン、トリメチレンジアミン、テトラリン−2,3−ジアミンテトラ酢酸、デカリン−2,3−テトラ酢酸、シクロヘキサン−1,2−ジアミンテトラ酢酸、シクロヘキサン−1,3−ジアミンテトラ酢酸、シクロヘキサン−1,4−ジアミンテトラ酢酸、シュウ酸、タイロン、アセチルアセトン等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0064】
特に限定されるわけではないが、凝集剤及びキレート化剤により形成されるキレート化合物の23℃における水に対する溶解度は、0.1g/L以上であることが好ましい。
【0065】
−架橋剤−
本発明のインクジェット用インクセットにおいては、架橋剤を添加することもできる。
架橋剤は、第2の液体に添加することが好ましい。この場合における第2の液体の架橋剤の含有量は、0.05質量%以上30質量%以下が好ましく、0.1質量%以上25質量%以下がさらに好ましく、0.3質量%以上15質量%以下が特に好ましい。
【0066】
第2の液体中には、記録媒体上での色材の凝集性、定着性を高めるために第1の液体中のポリマーに対する逆イオン添加物(または逆イオン性ポリマー)を添加することもできる。
逆イオン添加物の具体例としては、カチオン化セルロース、グアーガム、カゼイン、アルキルカチオン、アミド4級カチオン、エステル4級カチオン、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0067】
本発明においては、各液体中に必要に応じて吐出性改善等の特性制御を目的とし、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、多糖類及びその誘導体、その他水溶性ポリマー、アクリル系ポリマーエマルション、ポリウレタン系エマルション、親水性ラテックス等のポリマーエマルション、親水性ポリマーゲル、シクロデキストリン、大環状アミン類、デンドリマー、クラウンエーテル類、尿素及びその誘導体、アセトアミド、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を添加してもよい。
また、各液体の導電率、pHを調整するため、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の化合物、硫酸、塩酸、硝酸等の酸、硫酸アンモニウム等の強酸と弱アルカリの塩等を使用することができる。
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、等も添加することができる。
【0068】
第1の液体及び第2の液体には、必要に応じてカルボン酸塩(ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等)、硝酸エステル塩(ラウリル硝酸エステルナトリウム、セチル硝酸エステルナトリウム等)、スルホン酸塩(ベンゼンスルホン酸ナトリウム等)等のアニオン性化合物を加えてもよい。
第1の液体及び第2の液体には、必要に応じてアルキルアミン(モノメチルアミン、ジメチルアミン等)、ピリジン、モルホリン等を加えてもよい。
【0069】
−第3の液体−
本発明のインクジェット用インクセットは、pHが8以上の第3の液体をさらに有してもよい。第3の液体は、少なくともpH調整剤と水とを含有するものであればよく、さらに必要に応じて上述した色材、高分子物質、水溶性溶媒、凝集剤等を含んでいてもよい。
第3の液体に含まれるpH調整剤としては、NH3、NaOH、KOH、Na2CO3等のアルカリ性物質が挙げられる。
なお、本発明におけるpHとは、温度23±0.5℃、湿度55±5%R.H環境下において、pH/導電率計(メトラー・トレド社製MPC227)により測定した値をいう。
【0070】
色材としてカーボンブラックを含む第1の液体の表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、22.5mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上35mN/m以下である。
表面張力が20mN/m未満となるとノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、60mN/mを超えると浸透性が遅くなり、乾燥時間が遅くなる場合が存在する。
色材として有機顔料を含む第1の液体の表面張力は、20mN/m以上45mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、22.5mN以上40mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上35mN/m以下である。
表面張力が20mN/m未満となるとノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、45mN/mを超えると浸透性が遅くなり、乾燥時間が遅くなる場合が存在する。
【0071】
本発明のインクジェット用インクセットに係る各液体の粘度は、1.2mPa・s以上8.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1.5mPa・s以上6.0mPa・s未満、更に好ましくは1.8mPa・s以上5.0mPa・s未満である。各液体の粘度が8.0mPa・sより大きい場合には、吐出性が低下する場合が存在した。一方、1.2mPa・sより小さい場合には、長期信頼性が悪化する場合が存在した。
【0072】
次に、第1の液体と第2の液体とを混合する際に形成される凝集体の好ましい態様について述べる。
第1の液体と第2の液体とを混合した場合に形成される色材を含有する凝集体などの混合液中に存在する粗粒について述べれば、混合液中に存在する5μm以上の粗粒数は、500個/μL以上であることが好ましい。より好ましくは500個/μL以上10,000個/μL以下であり、更に好ましくは500個/μL以上3,000個/μL以下である。第1の液体と第2の液体との混合液中に存在する5μm以上の粗粒数が、500個/μL未満の場合には、形成される画像の光学濃度が低下する場合が存在した。
【0073】
本発明において、第1の液体と第2の液体との混合液における5μm以上の粗粒数は、二つの液体を質量比で1:1の割合で混合し、撹拌しながら2μLを採取し、Accusizer TM770 Optical Particle Sizer (商品名:Particle Sizing Systems社製)を用いて測定した。なお、測定時のパラメータとして、分散粒子の密度には顔料凝集体の密度を入力した。この顔料凝集体の密度は、第1の液体と第2の液体とを混合して得られた顔料凝集体分散液を加熱、乾燥させることによって得られた顔料紛体を比重計、または比重ビン等を用いて測定することにより求めることができる。
【0074】
本発明のインクジェット用インクセットは、通常のインクジェット記録装置は勿論、インクのドライングを制御するためのヒーター等を搭載した記録装置、又は、中間体転写機構を搭載し、中間体に記録材料を印字した後、紙等の記録媒体に転写する記録装置等においても用いることもできる。
【0075】
<インクジェット記録方法>
次に、本発明のインクジェット記録方法について説明する。本発明のインクジェット記録方法は、少なくとも色材と、高分子物質と、水溶性溶媒と、水と、を含有する第1の液体と、少なくとも凝集剤と、水溶性溶媒と、水と、を含有する第2の液体と、を有し、前記第1の液体及び前記第2の液体の少なくとも一方にさらに可塑剤を含有するインクジェット用インクセットを用い、前記第1の液体と、前記第2の液体と、が互いに接触するように記録媒体上に付与されて画像が形成されるものである。即ち、本発明のインクジェット用インクセットを用いることを特徴としている。
インクジェット用インクセットとして、pHが8以上の第3の液体をさらに有するインクセットを用いることもできる。
【0076】
記録媒体上にインクを付与する場合、第1の液体と第2の液体とが互いに接触する用に付与される。第2の液体は第1の液体の体積の0.2〜0.7の割合で付与される。第1の液体と第2の液体とが互いに接触することで、凝集剤の作用によりインクが凝集し、光学濃度、滲み、色間滲み、乾燥時間に優れる記録方法となるからである。2種の液体が接触する態様には特に制限はなく、例えば、互いに隣接するよう付与されてもよく、一方の液体の付与領域に他方が覆い被さるように付与されてもよい。
また、記録媒体への付与する場合、2種の液体を順次付与する場合の順番は任意であるが、第2の液体を付与した後、第1の液体を付与することが好ましい。第2の液体を先に付与することで、第1の液体中の構成成分を効果的に凝集させることが可能となるからである。さらに、第2の液体に含有される凝集剤が、記録媒体上に付着することにより、記録媒体への色材の浸透が抑えられるからである。
第2の液体を付与した後であれば、いかなる時期に第1の液体を付与してもかまわないが、第2の液体を付与してから0.1秒以下のタイミングで第1の液体を付与することが好ましい。
第3の液体を用いる場合、第1の液体と第2の液体とが接触した箇所に第3の液体を付与することが好ましい。これにより、記録媒体上の高分子物質を再溶解させ、膜の均一性を良くすることができる。その結果、定着性が改善される。
第3の液体を付与するタイミングは、第1の液体と第2の液体とが接触してから0.01〜1秒以内であることが望ましい。
【0077】
本発明の記録方法において、インクを記録媒体上に付与する場合、第1の液体及び第2の液体ともに、1ドロップ当たりの液体質量は25ng以下であることが好ましい。より好ましくは、第1の液体の1ドロップ当たりの液体質量は0.5ng以上20ng以下であり、更に好ましくは、2ng以上8ng以下である。一方、第2の液体の1ドロップ当たりの液体質量は0.5ng以上15ng以下であり、更に好ましくは、0.5ng以上4ng以下である。1ドロップ当たりの液体質量が25ngを超える場合には、滲みが悪化する場合が存在した。これは、第1の液体及び第2の液体の記録媒体に対する接触角がドロップ量に依存して変化するためであり、ドロップ量が増えるにつれてドロップが紙表面方向に広がりやすい傾向があるためと考えている。
本発明の記録方法において、必要に応じて用いられる第3の液体の1ドロップ当たりの液体質量は第1の液体に対して0.01〜0.5が好ましく、0.05〜0.45がさらに好ましく、0.1〜0.4が特に好ましい。
但し、一つのノズルから複数の体積のドロップを噴射することが可能であるインクジェット装置における上記ドロップ量とは、印字可能な最小ドロップのドロップ量を指すこととする。
【0078】
本発明において、1画素を形成するために要する第1の液体の付与量は第2の液体の付与量に対して、0.1以上10以下であることが好ましい。より好ましくは、0.2以上5以下である。第1の液体の付与量が第2の液体の付与量の0.1未満である場合、凝集が不充分となり、光学濃度の低下が生じる場合が存在した。10を超える場合には、滲みの悪化、色間滲みの悪化が生じる場合が存在した。
本発明においては、濃度の異なる所謂濃淡インクを第1の液体及び第2の液体に用いることも可能である。その場合、顔料濃度の低い液体に対して凝集剤を添加し、第2の液体として使用することが好ましい。これは、顔料濃度を低くすることで、顔料の凝集を抑制することができ、保存安定性を向上させることができるためであると考えている。
【0079】
また、滲み及び色間滲みの改善効果という観点から、インクの付与にあたっては、熱インクジェット記録方式、又は、ピエゾインクジェット記録方式を採用することが好ましい。この原因は明らかとはなっていないが、熱インクジェット記録方式の場合、吐出時にインクが加熱され、低粘度となっているが、記録媒体上でインクの温度が低下するため、粘度が急激に大きくなる。このため、滲み及び色間滲みに改善効果があると考えられる。一方、ピエゾインクジェット方式の場合、高粘度の液体を吐出することが可能であり、高粘度の液体は記録媒体上での紙表面方向への広がりを抑制することが可能となるため、滲み、及び、色間滲みに改善効果があるものと推測している。
【0080】
<インクジェット記録装置>
以下、本発明のインクジェット記録装置について説明する。本発明のインクジェット記録装置は、インクジェット用インクセットにおける各液体を噴射するための記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置であって、前記インクジェット用インクセットとして、少なくとも色材と、高分子物質と、水溶性溶媒と、水と、を含有する第1の液体と、少なくとも凝集剤と、水溶性溶媒と、水と、を含有する第2の液体と、を有し、前記第1の液体及び前記第2の液体の少なくとも一方にさらに可塑剤を含有するインクジェット用インクセットを用いるものである。
【0081】
以下、図面を参照しながら本発明のインクジェット記録装置の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本例では図示しないが、ヘッドが紙幅で固定されたインクジェット方式でも良い。
図1は本発明のインクジェット記録装置(画像形成装置)の好適な一実施形態の外観の構成を示す斜視図である。図2は、図1の画像形成装置における内部の基本構成を示す斜視図である。
本実施形態の画像形成装置100は、前述の本発明の画像形成方法(インクジェット記録方法)に基づいて作動し画像を形成する構成を有している。すなわち、図1及び図2に示すように、画像形成装置100は、主として、外部カバー6と、普通紙などの記録媒体1を所定量載置可能なトレイ7と、記録媒体1を画像形成装置100内部に1枚毎に搬送するための搬送ローラ(搬送手段)2と、記録媒体1の面にインク及び液体組成物を吐出して画像を形成する画像形成部8(画像形成手段)とを有している。
【0082】
搬送ローラ2は画像形成装置100内に回転可能に配設された一対のローラであり、トレイ7にセットされた記録媒体1を挟持するとともに、所定量の記録媒体1を所定のタイミングで1枚毎に画像形成装置100内部に搬送する。
画像形成部8は記録媒体1の面上にインクによる画像を形成する。画像形成部8は、主として記録ヘッド3と、インクタンク5と、給電信号ケーブル9と、キャリッジ10と、ガイドロッド11と、タイミングベルト12と、駆動プーリ13と、メンテナンスユニット14とから構成されている。
本態様では、インクタンク5は第1の液体、第2の液体及び必要に応じて用いられる第3の液体が吐出可能に格納された複数のインクタンク52,54,56,58を有している。
【0083】
さらに、図2に示すように、記録ヘッド3には給電信号ケーブル9とインクタンク5が接続されており、給電信号ケーブル9から外部の画像記録情報が記録ヘッド3に入力されると、記録ヘッド3はこの画像記録情報に基づき各インクタンクから所定量のインクを吸引して記録媒体の面上に吐出する。なお、給電信号ケーブル9は画像記録情報の他に記録ヘッド3を駆動するために必要な電力を記録ヘッド3に供給する役割も担っている。
【0084】
また、この記録ヘッド3はキャリッジ10上に配置されて保持されており、キャリッジ10はガイドロッド11、駆動プーリ13に接続されたタイミングベルト12が接続されている。このような構成により、記録ヘッド3はガイドロッド11に沿うようにして、記録媒体1の面と平行でありかつ記録媒体1の搬送方向X(副走査方向)に対して垂直な方向Y(主走査方向)にも移動可能となる。
【0085】
画像形成装置100には、画像記録情報に基づいて記録ヘッド3の駆動タイミングとキャリッジ10の駆動タイミングとを調製する制御手段(図示せず)が備えられている。これにより、搬送方向Xにそって、所定の速度で搬送される記録媒体1の面の所定領域に画像記録情報に基づく画像を連続的に形成することができる。
【0086】
メンテナンスユニット14は、チューブ15を介して減圧装置に接続されている。更にこのメンテナンスユニット14は、記録ヘッド3のノズル部分に接続されており、記録ヘッド3のノズル内を連結部に設けられた不図示のバキュームポンプ等によって減圧状態にすることにより記録ヘッド3のノズルからインクを吸引する機能を有している。
メンテナンスユニット14を設けておくことにより、必要に応じて画像形成装置100が作動中にノズルに付着した余分なインクを除去したり、作動停止状態のときにノズルからのインクの蒸発を抑制することができる。ただし、第1の液体と第2の液体とが混合されることで、凝集物が生成することから、第1の液体と第2の液体とは別々に収容される構成のメンテナンスユニット14が好ましい。
【0087】
なお、記録ヘッドとしては、熱インクジェット方式またはピエゾインクジェット方式を用いることが好ましい。
ここで用いられる記録ヘッドは、前記第1のインク及び第2のインクをそれぞれ1ドロップ当たり25ng以下の重量で記録媒体に付与しうる部材であることが好ましい。なお、本発明においては、一つのノズルから複数の体積のドロップを噴射することが可能であるインクジェット記録装置を用いることも可能であり、そのような装置においては、上記1ドロップの重量とは、印字可能な最小ドロップのドロップ量を指すものとする。
さらに、前記記録ヘッドは、1画素を形成するために付与する第1の液体の付与量が第2の液体の付与量に対して、0.1以上10以下の範囲内となるように付与しうる部材であることが好ましい態様である。より好ましくは、0.2以上5以下である。
【実施例】
【0088】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
<顔料処理方法>
スルファニル酸(5%)水溶液を加温し、撹拌しながら顔料100質量部を加えた。この混合物を撹拌しながら室温まで冷やし、14質量部の濃硝酸を滴下した。この溶液にNaNO2水溶液10質量部を添加し、反応が終了するまで撹拌した。この顔料に対し、脱塩処理を行なった。得られた表面処理顔料を顔料濃度が12質量%となるようにイオン交換水を加え、pHを7.5に調整した後、超音波ホモジナイザーを用いて分散を行なった。この分散液を遠心分離装置で、遠心分離処理(8000rpm×30分)を施し、残渣部分(全量に対して20%)を除去した
【0089】
<液体調製方法>
所定の組成となるように色材溶液、水溶性溶媒、界面活性剤、イオン交換水等を適量加え、混合液を、混合、攪拌した。得られた液体を、5μmフィルターを通過させることにより、所望の液体を得た。
【0090】
(第1の液体A)
Cabojet−300 (キャボット社製)
(自己分散顔料/カルボン酸基) 4質量%
スチレン−アクリル酸(35/65)共重合体(Mw.10200、SP値10.8)
2質量%
ジエチレングリコール 10質量%
グリセリン 5質量%
2−ピロリドン 5質量%
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 0.2質量%
イオン交換水 残部
【0091】
(第1の液体B)
顔料処理方法に従って処理した顔料を用いた。
C.I.Pigment Blue 15:3
(自己分散顔料/スルホン酸基) 3質量%
スチレン−マレイン酸ナトリウム(30/70)共重合体(Mw.9100、SP値11.1)
2.5質量%
ジエチレングリコール 15質量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 5質量%
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 0.9質量%
塩化カルシウム 0.075質量%
イオン交換水 残部
【0092】
(第1の液体C)
顔料処理方法に従って処理した顔料を用いた。
C.I.Pigment Red 122
(自己分散顔料/スルホン酸基) 4質量%
n-ブチルメタクリレート−メタクリル酸ナトリウム(43/57)共重合体
(Mw.11000、SP値10.9) 2.5質量%
ジエチレングリコール 10質量%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 5質量%
グリセリン 5質量%
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 1.2質量%
硝酸カルシウム 0.1質量%
イオン交換水 残部
この液体のζ電位は−13mV、体積平均粒子径は118nm、粘度は3.3mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
【0093】
(第1の液体D)
顔料処理方法に従って処理した顔料を用いた。
C.I.Pigment Yellow 74
(自己分散顔料/スルホン酸基) 4質量%
2-エチルヘキシルメタクリレート−メタクリル酸ナトリウム(65/35)共重合体
(Mw.12500SP値11.0) 0.3質量%
ジエチレングリコール 15質量%
N−メチル−2−ピロリドン 5質量%
尿素 6質量%
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 1質量%
硝酸カルシウム 0.1質量%
グリコールエチレンジアミン四酢酸 0.05質量%
イオン交換水 残部
【0094】
(第2の液体A)
ジエチルサクシネート (SP値9.2) 5質量%
ジエチレングリコール 30質量%
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 1質量%
硝酸マグネシウム 0.1質量%
イオン交換水 残部
この液体の、粘度は3.2mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
【0095】
(第2の液体B)
ジエチレングリコール 30質量%
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 1質量%
硝酸マグネシウム 0.1質量%
イオン交換水 残部
この液体の、粘度は3.0mPa・s、表面張力は29mN/mであった。
【0096】
(第3の液体)
ジエチレングリコール 30質量%
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 1質量%
水酸化ナトリウム10%水溶液 0.1質量%
イオン交換水 残部
この液体の、粘度は3.0mPa・s、表面張力は29mN/m、pHは9.5であった。
【0097】
<印字による評価方法>
800dpi、256ノズルの複数の試作プリントヘッド、及び、複数のインクを単独で収納するメンテナンスユニットを有する試作プリンターを用いた。FX−P紙(富士ゼロックス社製)に、表1に示す組み合わせで、第1、第2、及び必要に応じて第3の液体をこの順に印字した。第1の液体の吐出量は8 pl、第2及び第3の液体の吐出量は4 plであった。また、以下特に記載が無い場合、印字は一般環境下(温度23±0.5℃、湿度55±5%R.H)で行い、評価は印字後24時間一般環境下に放置したサンプルに対して行った。
得られた結果を表1に示す。
【0098】
(耐擦性)
印字30分後、インクジェット用コート紙、ハイグレード、C2普通紙(富士ゼロックス社製)でベタ部から印字していない白い領域へ擦り、白い部分へ移った汚れ具合を目視した。
−評価基準−
〇:白い部分への汚れがほとんど無い
△:白い部分への汚れが多少有る
×:白い部分への汚れがかなりある
【0099】
(色間滲み)
色間滲みの評価は、黒字のMS明朝9ポイントの文字と、背景として黄色のベタサンプルとを印字し、境界部分の滲み度合いを予め定めておいた限度見本に照合し、官能評価を行なった。
−評価基準−
○ … 滲みが少ないもの
△ … 滲みは発生しているが、許容レベルのもの
× … 滲みが激しく、許容範囲外のもの
【0100】
(光学濃度)
印字部分をエックスライト404(エックスライト社製)を用いて光学濃度を測定した。
−評価基準(黒インク)−
○ … 光学濃度が1.4以上
△ … 光学濃度が1.3以上1.4未満
× … 光学濃度が1.3未満
【0101】
【表1】

【0102】
表1から明らかなように、本発明のインクジェット用インクセットを用いると耐擦性に優れた画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明に係るインクジェット記録装置の好適な一実施形態の外観の構成を示す斜視図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置における内部の基本構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0104】
1 記録媒体
2 搬送ローラ
3 記録ヘッド
5 インクタンク
6 外部カバー
7 トレイ
8 画像形成部
9 給電信号ケーブル
10 キャリッジ
11 ガイドロッド
12 タイミングベルト
13 駆動プーリ
14 メンテナンスユニット
15 チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも色材と、高分子物質と、水溶性溶媒と、水と、を含有する第1の液体と、
少なくとも凝集剤と、水溶性溶媒と、水と、を含有する第2の液体と、を有し、
前記第1の液体及び前記第2の液体の少なくとも一方にさらに可塑剤を含有するインクジェット用インクセット。
【請求項2】
前記可塑剤のSP値と前記高分子物質のSP値との差が2.0以下である請求項1に記載のインクジェット用インクセット。
【請求項3】
前記第1の液体及び前記第2の液体の質量比1:1混合液における、前記高分子物質と前記可塑剤との質量混合比は、1:0.005〜1:0.4である請求項1に記載のインクジェット用インクセット。
【請求項4】
前記第1の液体における前記高分子物質の含有量は、前記色材の含有量に対して20〜150質量%である請求項1に記載のインクジェット用インクセット。
【請求項5】
pHが8以上の第3の液体をさらに有する請求項1に記載のインクジェット用インクセット。
【請求項6】
インクジェット用インクセットにおける各液体を噴射するための記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置であって、
前記インクジェット用インクセットは、少なくとも色材と、高分子物質と、水溶性溶媒と、水と、を含有する第1の液体と、少なくとも凝集剤と、水溶性溶媒と、水と、を含有する第2の液体と、を有し、前記第1の液体及び前記第2の液体の少なくとも一方にさらに可塑剤を含有する、インクジェット記録装置。
【請求項7】
前記可塑剤のSP値と前記高分子物質のSP値との差が2.0以下である請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記第1の液体及び前記第2の液体の質量比1:1混合液における、前記高分子物質と前記可塑剤との質量混合比は、1:0.005〜1:0.4である請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記第1の液体における前記高分子物質の含有量は、前記色材の含有量に対して20〜150質量%である請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記インクジェット用インクセットは、pHが8以上の第3の液体をさらに有する請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
少なくとも色材と、高分子物質と、水溶性溶媒と、水と、を含有する第1の液体と、少なくとも凝集剤と、水溶性溶媒と、水と、を含有する第2の液体と、を有し、前記第1の液体及び前記第2の液体の少なくとも一方にさらに可塑剤を含有するインクジェット用インクセットを用い、前記第1の液体と、前記第2の液体と、が互いに接触するように記録媒体上に付与されて画像が形成されるインクジェット記録方法。
【請求項12】
前記可塑剤のSP値と前記高分子物質のSP値との差が2.0以下である請求項11に記載のインクジェット記録方法。
【請求項13】
前記第1の液体及び前記第2の液体の質量比1:1混合液における、前記高分子物質と前記可塑剤との質量混合比は、1:0.005〜1:0.4である請求項11に記載のインクジェット記録方法。
【請求項14】
前記第1の液体における前記高分子物質の含有量は、前記色材の含有量に対して20〜150質量%である請求項11に記載のインクジェット記録方法。
【請求項15】
前記インクジェット用インクセットは、pHが8以上の第3の液体をさらに有し、前記第1の液体と、前記第2の液体と、前記第3の液体と、が互いに接触するように記録媒体上に付与されて画像が形成される請求項11に記載のインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−83303(P2006−83303A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270160(P2004−270160)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】