説明

インクジェット用インク組成物

【課題】インクジェット記録方式により、ノーカーボン複写紙の減感剤層を形成するためのインクジェット用インク組成物を提供する。
【解決手段】水溶性有機系減感剤、非水溶性樹脂、及び水を含有し、前記水溶性有機系減感剤の含有量が15〜45質量%であることを特徴とするインクジェット用インク組成物、前記水溶性有機系減感剤が、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びポリプロピレングリコールからなる群より選択される1種又は2種以上である前記記載のインクジェット用インク組成物、さらに、水溶性有機溶剤を含む前記いずれか記載のインクジェット用インク組成物、並びに、前記いずれかのインクジェット用インク組成物を用いて、インクジェット記録方式により記録された記録物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノーカーボン複写紙用減感剤を含有するインクジェット用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ノーカーボン複写紙は、発色剤を内包するマイクロカプセルの層を裏面に有する上用紙と、発色剤と接触したときに呈色する顕色剤からなる層を表面に有する下用紙とからなり、これら2種の層が向い合うように重ね合わせた紙である。筆記圧や印字圧により、マイクロカプセルが壊れ、内包されていた発色剤と顕色剤とが反応し、発色する。また、表面に顕色剤層を、裏面に発色剤を含有するマイクロカプセル層をそれぞれ設けた中用紙を用いることにより、複数枚を同時に複写することができる。
【0003】
ノーカーボン複写紙では、しばしば複写ができない領域が設けられる。例えば、発色が不要な特定の領域の顕色剤層の表面に減感剤からなる層を形成することにより、当該領域において複写を防止することができる。減感剤層は、一般的に、表面に顕色剤層が形成された紙の所定の領域に、グラビア印刷やオフセット印刷により減感剤を含むインクを印字することによって形成される。
【0004】
ノーカーボン複写紙は、帳票等に汎用されている。帳票等のフォーム印刷は、オフセット方式、凸版方式等の様々な方式でなされるが、近年、インクジェット記録方式で行われることが多くなった。そこで、減感剤層が形成されていない紙面と同様にインクジェット記録方式によってフォーム印刷等が可能な減感剤層を形成するためのインクが種々開発されている。例えば、特許文献1には、沸点100℃以上のグリコール系溶剤及びカチオン性樹脂を含むビヒクルを用い、このビヒクルに対してアクリル系光硬化性成分等を含む減感インクが報告されている。当該減感インクは、インクジェットインク吸収性に優れており、オフセット印刷等により当該減感インクを印刷して形成された減感剤層の表面にインクジェット印刷を行った場合に、当該減感剤層における印字画像の滲みが起こらず、かつ、印字したインクジェットインクの耐水性も改善されている。その他、例えば、特許文献2には、減感剤層の形成自体をインクジェット記録方式により形成する方法も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−226757号公報
【特許文献2】特開平7−223314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
活版印刷やオフセット印刷は、製版が必要であり、また、小ロット印刷の経済性に劣る。これに対してインクジェット印刷は、製版が不要なため、比較的短時間で印刷することができ、フォームの変更等の自由度が大きく、小ロット印刷にも最適である。このため、減感剤層の形成をインクジェット印刷によって行えることが望ましい。
【0007】
インクジェット用インクでは、インクジェット吐出特性(ノズルが詰まることなく、スムースに吐出されること)に優れていることが重要である。このため、特許文献2に記載されている減感剤を含むインクジェット用インクでは、減感剤は液媒体に溶解されている。しかしながら、水溶性又は水への混和性の高い減感剤を用いて形成された減感剤層は、耐水性に乏しく、充分な減感作用が発揮され難いという問題がある。
【0008】
よって、本発明における課題は、ノーカーボン複写紙に、耐水性に優れた減感剤層を形成するためのインクジェット用インク組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため、本発明は、第一に、水溶性有機系減感剤、非水溶性樹脂、及び水を含有し、前記水溶性有機系減感剤の含有量が15〜45質量%であることを特徴とするインクジェット用インク組成物を提供する。
本発明は、第二に、前記水溶性有機系減感剤が、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びポリプロピレングリコールからなる群より選択される1種又は2種以上である前記第一のインクジェット用インク組成物を提供する。
本発明は、第三に、さらに、水溶性有機溶剤を含む前記第一又は第二のインクジェット用インク組成物を提供する。
本発明は、第四に、前記水溶性有機溶剤が、アルコール類、多価アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、及びグリコ−ルエーテル類からなる群より選択される1種又は2種以上である前記第一〜第三のいずれか一つのインクジェット用インク組成物を提供する。
本発明は、第五に、前記水溶性有機系減感剤がポリエチレングリコール及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選択される1種又は2種以上であり、前記水溶性有機溶剤が、エタノール及びジエチレングリコールエチルメチルエーテルからなる群より選択される1種又は2種以上である前記第三のインクジェット用インク組成物を提供する。
本発明は、第六に、前記非水溶性樹脂が、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、スチレン−アクリル樹脂、ポリビニルピロリドン、アクリル−ウレタン共重合体、及びポリエチレンイミンからなる群より選択される1種又は2種以上である前記第一〜第五のいずれか一つのインクジェット用インク組成物を提供する。
本発明は、第七に、前記第一〜第六のいずれか一つのインクジェット用インク組成物を用いて、インクジェット記録方式により記録された記録物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のインクジェット用インク組成物を用いることにより、一般的なインクジェットプリンターを使用して簡便に、ノーカーボン複写紙の表面に耐水性に優れた減感剤層を形成することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のインクジェット用インク組成物は、水溶性有機系減感剤、非水溶性樹脂、及び水を含有し、前記水溶性有機系減感剤の含有量が15〜45質量%であることを特徴とする。本発明のインクジェット用インク組成物では、減感剤として、水溶性の有機化合物を用いているため、ノズルの目詰まり等が生じ難く、インクジェットプリンターのインク組成物として非常に好適である。
【0012】
本発明のインクジェット用インク組成物に用いられる水溶性有機系減感剤は、減感作用を有する水溶性の有機化合物であればよい。なお、本発明及び本願明細書において、「水溶性の有機化合物」には、水との混和性の高い有機化合物も含まれる。本発明のインクジェット用インク組成物は、1種類の水溶性有機系減感剤を含むものであってもよく、2種類以上の水溶性有機系減感剤を含むものであってもよい。
【0013】
本発明において用いられる水溶性有機系減感剤としては、具体的には、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びポリプロピレングリコールからなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。中でも、水溶性有機系減感剤として、少なくともポリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、及びポリプロピレングリコールを含むことが好ましく、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、及びポリプロピレングリコールからなる群より選択される1種又は2種以上であることがより好ましく、ポリエチレングリコール及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選択される1種又は2種以上であることがさらに好ましい。これらの有機化合物は、従来からインクジェット用インクに用いられているため、これらを用いることにより、インクジェット吐出特性がより良好なインクジェット用インク組成物を得ることができる。なお、水溶性有機系減感剤として用いるポリエチレングリコールの分子量は特に限定されるものではなく、例えば、数平均分子量が100〜20000、好ましくは200〜10000、より好ましくは400〜10000のポリエチレングリコールが好適に用いることができる。また、異なる分子量のポリエチレングリコールを組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明のインクジェット用インク組成物中の水溶性有機系減感剤の含有量は、当該インクジェット用インク組成物を用いてインクジェットプリンターにより記録することによって形成させた減感剤層が、充分な減感作用が発揮される濃度であればよく、水溶性有機系減感剤の種類、所望のノーカーボン複写紙の製品特性等を考慮して適宜決定することができる。
【0015】
水溶性有機系減感剤の含有量が少なすぎる場合には、減感作用が不十分となりやすい。例えば、本発明のインクジェット用インク組成物中の水溶性有機系減感剤の含有量は、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。一方で、水溶性有機系減感剤の含有量が多すぎる場合には、水や湿潤剤等のインクジェット用インク組成物としての特性を備えるためのその他の成分等を十分に配合することが困難となりやすい場合がある。このため、例えば、本発明のインクジェット用インク組成物中の水溶性有機系減感剤の含有量は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0016】
本発明のインクジェット用インク組成物は、水溶性有機系減感剤とともに非水溶性樹脂を含有する。非水溶性樹脂を含有することにより、当該インクジェット用インク組成物により形成された減感剤層の耐水性が飛躍的に改善されている。
【0017】
本発明のインクジェット用インク組成物に添加される非水溶性樹脂は、水溶性有機系減感剤による減感作用を損なわず、かつ添加されたインク組成物のインクジェット吐出特性等のインクジェット特性を損なわないものであれば、特に限定されるものではなく、公知の樹脂の中から適宜選択して用いることができる。本発明のインクジェット用インク組成物は、1種類の樹脂を含むものであってもよく、2種類以上の樹脂を含むものであってもよい。
【0018】
本発明のインクジェット用インク組成物に添加される非水溶性樹脂としては、具体的には、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、スチレン−アクリル樹脂、ポリビニルピロリドン、アクリル−ウレタン共重合体、及びポリエチレンイミン等が挙げられる。中でも、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、又はこれらの混合物であることが好ましい。
【0019】
本発明のインクジェット用インク組成物に添加される樹脂は、非水溶性であれば特に限定されるものではない。例えば、ディスパージョンやエマルジョン等の樹脂微粒子が好ましい。樹脂微粒子の場合、粒径は1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。粒径が大きいとヘッドのノズルで詰まり易く、吐出性に大きく影響する。樹脂の酸価は100以下が好ましく、より好ましくは50以下である。酸価が高いと耐水性が不十分となるおそれがある。樹脂の重量平均分子量としては7000から30万が好ましく、1万から20万であることがさらに好ましい。樹脂の重量平均分子量が大きいと吐出性が不安定になり易い。
【0020】
本発明のインクジェット用インク組成物に添加され得る市販されている非水溶性樹脂として、ウレタン樹脂としては、ハイドランAP−20、AP−30F、AP−40F、WLS−213等のハイドランシリーズ(DIC社製)、ユーコートUX−150、UX−200、UX−310、UWS−145等のユーコートシリーズ(三洋化成社製)、アクリットWBR−2018、WBR−016U、WEM−3008等のアクリットシリーズ(大成ファインケミカル社製)、PTG−RSN(DICグラフィックス社製)等が挙げられる。また、ビニル変性エポキシエステル樹脂としては、ウォターゾールEFD−5530、EFD−5570、EFD−5580等のウォターゾールシリーズ(DIC社製)等が挙げられる。アクリル樹脂としては、ボンコートCP−6450、CP−6280、WCW−327、WE−300等のボンコートシリーズ(DIC社製)、ジョンクリル450、711、7370、7600等のジョンクリルシリーズ(BASF社製)等が挙げられる。スチレン・アクリル樹脂としては、ハイロスX−436、J−140A等のハイロスシリーズ(星光PMC社製)等が挙げられる。塩ビ・アクリル系共重合体樹脂としては、ビニブラン278、700、701等ビニブランシリーズ(日信化学工業社製)等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、スーパークロンE−604、S−4719等のスーパークロンシリーズ(日本製紙ケミカル社製)等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、エリーテルKA−5071S、KT−8701、KT−9204等のエリーテルシリーズ(ユニチカ社製)、バイロナールMD−1480、ST−6820等のバイロナールシリーズ(東洋紡績社製)等が挙げられる。ポリエチレンイミンとしては、エポミンSP−003、SP−006、SP−012、SP−018等のエポミンシリーズ(日本触媒社製)等が挙げられる。
【0021】
本発明のインクジェット用インク組成物中の非水溶性樹脂(固形分)の含有量は、当該インクジェット用インク組成物を用いてインクジェットプリンターにより記録することによって形成させた減感剤層が、充分な耐水性を備える濃度であればよく、非水溶性樹脂の種類、所望のノーカーボン複写紙の製品特性等を考慮して適宜決定することができる。
【0022】
非水溶性樹脂(固形分)の含有量が少なすぎる場合には、形成された減感剤層の耐水性が不十分となりやすい。例えば、本発明のインクジェット用インク組成物中の非水溶性樹脂(固形分)の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましい。一方で、非水溶性樹脂(固形分)の含有量が多すぎる場合には、インクジェット吐出特性が低下する傾向がある。このため、例えば、本発明のインクジェット用インク組成物中の非水溶性樹脂(固形分)の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0023】
本発明のインクジェット用インク組成物では、水溶性有機系減感剤のほかに、水溶性有機溶剤が添加されてもよい。水溶性有機溶剤は、一般的にインクジェット用インクに、粘度調整やインクの乾燥防止のために添加される湿潤剤や、被記録媒体への浸透性改良や記録媒体上でのドット径調整のために添加される浸透剤として機能する。
【0024】
なお、水溶性有機系減感剤として、ポリエチレングリコールやトリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリプロピレングリコール、トリエタノールアミン等の、従来からインクジェット用インクに湿潤剤等として配合されているものを用いる場合には、その他に水溶性有機溶剤を配合せずとも、インクジェット用インク組成物として好適な物性を実現し得る場合がある。このため、本発明のインクジェット用インク組成物は、水溶性有機溶剤を含有しないものであってもよい。
【0025】
本発明及び本願明細書において、「水溶性有機溶剤」には、水溶性有機系減感剤は含まれない。すなわち、「水溶性有機溶剤」は、減感作用を有していない、水溶性の有機化合物からなる。
【0026】
本発明のインクジェット用インク組成物に用いられる水溶性有機溶剤としては、減感作用を有していない公知の水溶性有機溶剤の中から、用いる水溶性有機溶剤の種類、得られるインクジェット用インク組成物の粘性等の特性等を考慮して適宜選択して用いることができる。また、本発明のインクジェット用インク組成物は、1種類の水溶性有機溶剤を含むものであってもよく、2種類以上の水溶性有機溶剤を含むものであってもよい。
【0027】
水溶性有機溶剤としては、具体的には、例えば、
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ペンチルアルコール、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、1−メチル−1−メトキシブタノール等のアルコール類;
2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2’−オキシビスエタノール、2,2’−エチレンジオキシビス(エタノール)、チオジエタノール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;
テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、2,2’−オキシビス(2−メトキシエタン)、2,2’−オキシビス(2−エトキシエタン)、2,2’−エチレンジオキシビス(2−メトキシエタン)、2,2’−エチレンジオキシビス(2−メトキシエタン)等のエーテル類;
ラウリン酸プロピレングリコール等のグリコールエステル類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル(ジエチレングリコールエチルメチルエーテル)、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル等のグリコールエーテル類;
エチレングリコールヘキシルエーテルやエチレングリコールブチルエーテルのエチレンオキシド付加物、プロピレングリコールプロピルエーテルのロピレンオキシド付加物等のアルキルアルコールのアルキレンオキシド付加物;
ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド類;
メチルジエタノールアミン等のアルコールアミン類;
γ−ブチロラクトン等のラクトン類;
スルホラン、ジメチルスルホキシド等のスルホン類;
2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、N−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドン等のラクタム類;
1,3−ジメチルイミダゾリジノン等を挙げることができる。
【0028】
本発明のインクジェット用インク組成物に含有させる水溶性有機溶剤としては、アルコール類、多価アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、及びグリコ−ルエーテル類からなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましく、アルコール類、多価アルコール類、及びグリコ−ルエーテル類からなる群より選択される1種又は2種以上であることがより好ましく、エタノール及びジエチレングリコールエチルメチルエーテルからなる群より選択される1種又は2種以上であることが特に好ましい。
【0029】
本発明のインクジェット用インク組成物中の水溶性有機溶剤の含有量は、用いる水溶性有機系減感剤の種類や得られるインクジェット用インク組成物の特性等を考慮して適宜決定することができる。例えば、水溶性有機溶剤としてアルコール類やグリコ−ルエーテル類を用いる場合、本発明のインクジェット用インク組成物におけるアルコール類やグリコ−ルエーテル類の含有量は0〜10質量%であることが好ましい。
【0030】
本発明において用いられる水は、特に特性を指定するものではないが、不純物が少なく、インクジェット用インク組成物の品質に悪影響を及ぼさないものが好ましい。このような水としては、工業的には日本薬局方精製水、イオン交換水、蒸留水、純水など公知慣用のものが好ましい。例えば、本発明のインクジェット用インク組成物中の水の含有量は、5〜90質量とすることができる。
【0031】
本発明のインクジェット用インク組成物の粘度は、インクジェット用として要求される範囲内であれば特に限定されるものではなく、例えば、1〜100mPa・sとすることができる。
【0032】
本発明のインクジェット用インク組成物には、本発明の効果を損なわない限り、表面張力等のインク特性を調整するために、1種類又は2種類以上の界面活性剤を添加することができる。このために添加することのできる界面活性剤はとくに限定されるものではなく、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。本発明においては、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤からなる群より選択される1種以上を用いることが好ましい。
【0033】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸エステル塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられる。本発明においては、中でも、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、又はポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩が好ましい。
【0034】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー等を挙げられる。本発明においては、中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、又はオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーが好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社製)を用いることもできる。
【0035】
両性界面活性剤としては、ベタイン型界面活性剤であってもよく、アミンオキシド型界面活性剤であってもよい。アミンオキシド型界面活性剤としては、例えば、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0036】
その他の界面活性剤として、ポリシロキサンオキシエチレン付加物のようなシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルのようなフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸、ラムノリピド、リゾレシチンのようなバイオサーファクタント等も使用することができる。これらの界面活性剤は、単独で用いることもでき、また、2種類以上を混合して用いることもできる。また、界面活性剤の溶解安定性等を考慮すると、そのHLBは、7〜20の範囲であることが好ましい。
【0037】
界面活性剤を添加する場合は、その添加量はインクの全質量に対し、0.001〜2質量%の範囲が好ましく、0.001〜1.5質量%であることがより好ましく、0.01〜1.0質量%の範囲であることがさらに好ましい。界面活性剤の添加量が0.001質量%未満の場合は、界面活性剤添加の効果が得られない傾向にあり、2質量%を超えて用いると、画像が滲むなどの問題を生じやすくなる。
【0038】
本発明のインクジェット用インク組成物には、本発明の効果を損なわない限り、その他にも、インクジェット用途に適した特性を付与するための様々な添加剤を添加することができる。このような添加剤として、pH調整剤、防腐剤・防かび剤、キレート化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0039】
本発明のインクジェット用インク組成物に添加されるpH調整剤としては、塩基性のものとして有機塩基、無機アルカリ等が、酸性のものとして有機酸、無機酸等を用いることができる。前記有機塩基としては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。前記無機アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニウム等が挙げられる。また、前記有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、アルキルスルホン酸等が挙げられる。前記無機酸としては、塩酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。pH調整剤は、インクジェット用インク組成物の保存安定性を向上させる目的で、当該インクジェット用インク組成物のpHが4〜10となるように添加することが好ましく、pH5〜9となるように添加することがより好ましい。
【0040】
本発明のインクジェット用インク組成物に添加される防腐剤・防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオールー1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジンチアゾリンー3−オン等を挙げることができる。なお、これらの化合物は、例えば、プロキセルCRL、プロキセルBND、プロキセルGXL、プロキセルGXL(S)、プロキセルXL−2、プロキセルTN(いずれもアーチケミカルズジャパン社製)等として、市販されている。
【0041】
本発明のインクジェット用インク組成物は、着色剤を含むものであってもよく、着色剤を含まないものであってもよい。例えば、薄い色の染料等を着色剤として含ませた場合には、形成された減感剤層は淡く着色されるため、この減感剤層の色の濃淡を減感剤層中の水溶性有機系減感剤の濃度管理に活用したり、これにより、減感剤層の位置を明らかにすることができる。また、この減感剤層の色の濃淡を減感剤層中の水溶性有機系減感剤の濃度管理に活用することができ、さらにはユニバーサルデザインに相当する効果が得られる。なお、本発明のインクジェット用インク組成物に添加される着色剤としては、水溶性有機系減感剤による減感作用や、インクジェット吐出特性を損なわないものであれば特に限定されるものではなく、インクジェット用インクに配合されている公知の着色剤の中から適宜選択して用いることができる。
【0042】
また、本発明のインクジェット用インク組成物は、蛍光増白剤を含むものであってもよい。例えば、蛍光増白剤を含ませた場合には、形成された減感剤層にブラックライトを当てることで紫〜青色(蛍光)が発現する。この紫〜青色の発現の有無は、塗布管理に活用することが出来る。本発明のインクジェット用インク組成物に含有させる蛍光増白剤としては、水溶性のものがよく、あらかじめ水に溶解した水溶液のものでもよい。このような特性を備える市販の蛍光増白剤としては、KAYAPHOR FB CONC、AS150、ES LIQUID、HBC LIQUID、STC LIQUID等のKAYAPHORシリーズ(日本化薬社製)等が挙げられる。
【0043】
本発明のインクジェット用インク組成物は、水溶性有機系減感剤、非水溶性樹脂、及び水、並びに必要に応じて水溶性有機溶媒等のその他の成分を攪拌して十分に混合させた後、濾過等により不純物等を除去することによって得られる。なお、各成分は、加熱しながら攪拌して混合しても良い。
【0044】
本発明のインクジェット用インク組成物は、インクジェット記録用のインクとして好適に用いることができる。適用するインクジェットの方式は特に限定するものではないが、連続噴射型(荷電制御型、スプレー型等)、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式等)等の公知のものを例示することができる。
【0045】
本発明のインクジェット用インク組成物を、インクジェットプリンターを用いて紙等の被記録物に印刷することにより、ノーカーボン複写紙の減感剤層を形成することができる。このようにして形成された減感剤層を備えるノーカーボン複写紙は、通常の筆記圧や印字圧による複写を防止することができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を用いて、本発明を具体的に示すが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。なお、これらの例中、「部」は質量部、「%」は質量パーセントを意味するものとする。
【0047】
また、以下の実施例等で使用した原料のうち、PTG−RSN(DICグラフィックス社製)はポリウレタン樹脂(樹脂固形分量:35%、重量平均分子量:19000) であり、エリーテルKT−8701(ユニチカ社製)はポリエステル樹脂エマルジョン(樹脂固形分量:30%、重量平均分子量:13000)であり、ジョンクリル57J(BASF社製)は水溶性樹脂(不揮発分:37%、酸価:215、重量平均分子量:4900)であり、ジョンクリルPDX−7630A(BASF社製)はエマルジョンの樹脂微粒子(不揮発分:32%、酸価:200、重量平均分子量:>20万)であり、ジョンクリルPDX−6102B(BASF社製)は水溶性樹脂(不揮発分:24.5%、酸価:65、重量平均分子量:60000)であり、ハイドランAP−40F(DIC社製)はウレタン系樹脂(不揮発分:22.5%、酸価:25、重量平均分子量:40000)であり、ハイドランAP−30F(DIC社製)はウレタン系樹脂(不揮発分:20%、酸価:25、重量平均分子量:50000)である。
また、サーフィノール440(AirProducts&Chemicals社製、ノニオン性)、オルフィンE1010(信越化学工業社製、ノニオン性)、メガファックF−444(DIC社製、ノニオン性)、及びBYK−348(ビックケミー社製、ノニオン性)は界面活性剤である。
また、「減感剤A」は、アミン誘導体(サンノプコ社製)であり、プロキセルGXL(S)(アーチケミカルズジャパン社製)は防腐剤である。
【0048】
[実施例1〜12、比較例1〜5]
まず、表1〜3に示す組成に従い、インクジェット用インク組成物を得た。具体的には、水以外の原料を全て配合して攪拌した後、水を加え、40℃で加熱しながら攪拌して混合することにより溶解させた。溶解後、ゴミ等の不純物を除去するために、孔径0.5μmのシリンジフィルターでろ過した。
【0049】
得られたインクジェット用インク組成物の減感性、耐水性、及びインクジェット(IJ)吐出性を3段階(○:良好、△:普通、×:劣る)で評価した。それぞれの評価基準を下記に示す。
溶解性評価:溶解後の状態を目視判断した。
乾燥性評価:顕色剤からなる層を表面に有する下用紙に減感液をバーコーターで塗布した後、80℃の温度条件下で1分間乾燥させたものの乾燥状態及び紙のカールの状態を目視判断した。
減感性評価:顕色剤からなる層を表面に有する下用紙に減感液をバーコーターで塗布し、乾燥させた後、発色剤を内包するマイクロカプセルの層を裏面に有する上用紙を重ねて、筆圧にて減感性(発色の有無)を目視判断した。
耐水性評価:上記減感性評価に用いたサンプルを水に浸し、減感性(発色の有無)を目視判断した。
IJ吐出性評価:コニカミノルタIJ社製のEB−100(IJヘッド)に減感液を充填し、IJ用紙に印字したものの印字状態を目視判断した。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
各インクジェット用インク組成物の評価結果を表1〜3に示す。なお、表中、「−」は評価をしなかったことを示す。この結果、数平均分子量が600のポリエチレングリコール又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルを25〜35%含有し、かつ、ポリエステル樹脂又はポリウレタン樹脂を含有させた実施例1〜12のインクジェット用インク組成物は、減感性、耐水性、及びIJ吐出性のいずれも良好であった。
一方で、ポリエチレングリコール又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルを10%含有させた比較例1又は2のインクジェット用インク組成物は、減感性が不十分であった。これは、これらの水溶性有機系減感剤の含有量が少なすぎたためと推察される。また、グリセリン、ジエチレングリコール、又はトリエチレングリコールを30%含有させた比較例3〜5のインクジェット用インク組成物も、減感性がない、若しくは不十分であり、これらの水溶性の有機化合物は、充分な減感作用を有しておらず、水溶性有機系減感剤ではないことが分かった。さらに、比較例1〜5のインクジェット用インク組成物は、いずれも非水溶性樹脂を含有させていなかったため、耐水性に劣っていた。
【0054】
[実施例13〜58、比較例6〜22]
水溶性有機系減感剤として、数平均分子量が200、400、600、又は10000のポリエチレングリコール、若しくはトリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いて、本発明のインクジェット用インク組成物を製造した。
まず、表4〜13に示す組成に従い、インクジェット用インク組成物を得た。具体的には、水以外の原料を全て配合して攪拌した後、水を加え、40℃で加熱しながら攪拌して混合することにより溶解させた。溶解後、ゴミ等の不純物を除去するために、孔径0.5μmのシリンジフィルターでろ過した。
【0055】
得られたインクジェット用インク組成物の溶解性、減感性、耐水性、及びインクジェット(IJ)吐出性を3段階(○:良好、△:普通、×:劣る)で評価した。溶解性評価の評価基準を下記に示す。なお、溶解性評価、乾燥性評価、減感性評価、耐水性評価、及びIJ吐出性評価は、実施例1等と同様にして行った。
【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【0058】
【表6】

【0059】
【表7】

【0060】
【表8】

【0061】
【表9】

【0062】
【表10】

【0063】
【表11】

【0064】
【表12】

【0065】
【表13】

【0066】
各インクジェット用インク組成物の評価結果を表4〜13に示す。なお、表中、「−」は評価をしなかったことを示す。この結果、数平均分子量が400、600若しくは10000のポリエチレングリコール又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルを20〜40%含有し、かつ、ポリエステル樹脂又はポリウレタン樹脂を固形分で3〜3.5%含有させた実施例14〜17、20〜23、26〜29、32、35、38、40〜43、45、48、51、及び55のインクジェット用インク組成物は、エタノール又はジエチレングリコールエチルメチルエーテルの添加の有無や添加した界面活性剤の種類・併用の有無に関わらず、溶解性、減感性、耐水性、及びIJ吐出性のいずれも良好であった。また、数平均分子量が600のポリエチレングリコールとトリエチレングリコールモノブチルエーテルを併用添加した実施例50のインクジェット用インク組成物や、数平均分子量が400のポリエチレングリコールと数平均分子量が600のポリエチレングリコールを併用添加した実施例52〜54及び56〜58のインクジェット用インク組成物も、界面活性剤の添加の有無に関わらず、溶解性、減感性、耐水性、及びIJ吐出性のいずれも良好であった。
【0067】
一方で、数平均分子量が600若しくは10000のポリエチレングリコール又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルを15%含有させた実施例13、19、25、31、34、及び37のインクジェット用インク組成物は、これらの水溶性有機系減感剤を20%以上含有させたインクジェット用インク組成物に比べてやや劣るものの、充分な減感性と耐水性を備えていた。なお、これらのインクジェット用インク組成物の溶解性及びIJ吐出性は良好であった。
また、数平均分子量が200のポリエチレングリコールを30%含有させた実施例47のインクジェット用インク組成物は、数平均分子量が600若しくは10000のポリエチレングリコールを含有させたインクジェット用インク組成物に比べてやや劣るものの、充分な減感性と耐水性を備えていた。なお、このインクジェット用インク組成物の溶解性及びIJ吐出性は良好であった。
【0068】
また、数平均分子量が600若しくは10000のポリエチレングリコール又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルを45%含有させた実施例18、24、30、33、36、及び39のインクジェット用インク組成物は、溶解性、減感性、耐水性のいずれも良好であった。IJ吐出性についても、これらの水溶性有機系減感剤を40%以下含有させたインクジェット用インク組成物に比べてやや劣るものの、インクジェット用インク組成物として十分であった。
ポリエステル樹脂又はポリウレタン樹脂を10又は15%含有させた実施例44、46及び49のインクジェット用インク組成物は、これらの非水溶性樹脂を固形分で3〜3.5%含有させたインクジェット用インク組成物に比べてやや劣るものの、充分なIJ吐出性を備えていた。なお、これらのインクジェット用インク組成物の溶解性、減感性及び耐水性は良好であった。
【0069】
これに対して、非水溶性樹脂を添加しなかった比較例6〜10は、エタノールや界面活性剤の添加の有無にかかわらず、溶解性及び減感性は良好であったものの、耐水性が悪かった。
また、ポリエチレングリコール又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルを含有していない比較例11及び13のインクジェット用インク組成物や、これらの水溶性有機系減感剤に代えてグリセリン、ジエチレングリコール、又はトリエチレングリコールを含有させた比較例15〜17のインクジェット用インク組成物は、減感性がなかった。
ポリエチレングリコール又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルを50%含有させた比較例12及び14のインクジェット用インク組成物は、溶解性、減感性、耐水性のいずれも良好であったが、乾燥性が悪く、インクジェット用インク組成物としては不適当であった。
オフセット印刷用の減感インクに配合されている減感剤Aを添加した比較例18及び19のインクジェット用インク組成物では、溶解性が悪く、インクジェット用インク組成物としては不適当であった。
さらに、水溶性樹脂を用いた比較例20〜22のインクジェット用インク組成物では、溶解性、乾燥性、及び減感性は良好であるものの、耐水性が不十分であった。
【0070】
[実施例59〜74]
水溶性有機系減感剤として、数平均分子量が400又は600のポリエチレングリコールを用いて、本発明のインクジェット用インク組成物を製造した。
まず、表14〜16に示す組成に従い、実施例13等と同様にしてインクジェット用インク組成物を得た。
得られたインクジェット用インク組成物の溶解性、減感性、耐水性、及びインクジェット(IJ)吐出性を3段階(○:良好、△:普通、×:劣る)で評価した。溶解性評価の評価基準を下記に示す。なお、溶解性評価、乾燥性評価、減感性評価、耐水性評価、及びIJ吐出性評価は、実施例1等と同様にして行った。評価結果を表14〜16に示す。添加する樹脂の種類や含有量に関わらず、実施例59〜74の全てのインクジェット用インク組成物は、溶解性、乾燥性、減感性、耐水性、及びIJ吐出性のいずれも良好であった。
【0071】
【表14】

【0072】
【表15】

【0073】
【表16】

【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のインクジェット用インク組成物は、インクジェット記録方式により、ノーカーボン複写紙の減感剤層を形成することができるため、ノーカーボン複写紙の製造に広く展開できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性有機系減感剤、非水溶性樹脂、及び水を含有し、
前記水溶性有機系減感剤の含有量が15〜45質量%であることを特徴とするインクジェット用インク組成物。
【請求項2】
前記水溶性有機系減感剤が、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びポリプロピレングリコールからなる群より選択される1種又は2種以上である請求項1に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項3】
さらに、水溶性有機溶剤を含む請求項1又は2に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項4】
前記水溶性有機溶剤が、アルコール類、多価アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、及びグリコ−ルエーテル類からなる群より選択される1種又は2種以上である請求項3に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項5】
前記水溶性有機系減感剤がポリエチレングリコール及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選択される1種又は2種以上であり、前記水溶性有機溶剤が、エタノール及びジエチレングリコールエチルメチルエーテルからなる群より選択される1種又は2種以上である請求項3に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項6】
前記非水溶性樹脂が、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、スチレン−アクリル樹脂、ポリビニルピロリドン、アクリル−ウレタン共重合体、及びポリエチレンイミンからなる群より選択される1種又は2種以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクジェット用インク組成物を用いて、インクジェット記録方式により記録された記録物。

【公開番号】特開2012−149235(P2012−149235A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−279766(P2011−279766)
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【出願人】(310000244)DICグラフィックス株式会社 (27)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】