説明

インクジェット用光硬化性組成物及びプリント配線板の製造方法

【課題】インクジェット方式で容易に塗工でき、発生エネルギー線の照射により速やかに硬化し、さらに微細なパターン形状を高精度に形成することを可能とするインクジェット用光硬化性組成物を提供する。
【解決手段】インクジェット方式で塗布され、かつ光の照射により硬化するインクジェット用光硬化性組成物であって、(A)分子内に炭素−炭素二重結合を少なくとも2つ有する液状ポリエン化合物と、(B)分子内にチオール基を有する液状チオール化合物と、(C)光ラジカル重合開始剤とを含有し、前記液状ポリエン化合物由来の炭素−炭素二重結合に対する前記チオール基の割合がモル比で1未満である、インクジェット用光硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式で塗工されるインクジェット用光硬化性組成物に関し、例えば基板上にソルダーレジストパターンを形成するのに好適に用いられるインクジェット用光硬化性組成物並びに該インクジェット用光硬化性組成物を用いてソルダーレジストパターンを有するプリント配線板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板などでは、基板上に配線と共にソルダーレジストからなるパターンを形成している。電子機器の小型化及び高密度化にともない、より一層微細なソルダーレジストパターンが求められている。
【0003】
微細なソルダーレジストパターンを形成する方法として、インクジェット方式によりソルダーレジスト用組成物を塗工する方法が種々提案されている。
【0004】
もっとも、インクジェット方式によりソルダーレジスト用組成物を塗布する場合、塗布時の粘度がある程度低いことが要求される。
【0005】
そこで、下記の特許文献1には、分子内に(メタ)アクリロイル基と熱硬化性官能基とを有するモノマーと、重量平均分子量700以下の上記モノマー成分以外の光反応性希釈剤と、光重合開始剤とを含み、粘度が25℃で150mPa・s以下であるインクジェット用光硬化性・熱硬化性組成物が開示されている。
【0006】
また、下記の特許文献2には、ビスアリルナジイミド化合物と、ビスマレイミド化合物と、希釈剤とを含有し、粘度が25℃で150mPa・s以下であるインクジェット用硬化性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2004/99272A1
【特許文献2】WO2006/75654A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1や特許文献2に記載のインクジェット用硬化性組成物は、25℃における粘度が150mPa・s以下と低い。そのため、インクジェット方式で基板上に塗工することが容易とされている。しかしながら、粘度が低いため、光を照射後に硬化に比較的長い時間を要する。その結果、基板上にインクジェット方式で硬化性組成物を塗布した後、該組成物が硬化するまでの間に濡れ広がるという問題があった。従って、硬化性組成物の硬化物からなる微細なパターンを高精度に形成することができなかった。
【0009】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、速やかに硬化し、インクジェット方式で塗工した後の濡れ広がりを確実に抑制することができ、従って微細なパターンを高精度に形成することができる、インクジェット用光硬化性樹脂組成物及び該組成物を用いたプリント配線板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るインクジェット用光硬化性組成物は、インクジェット方式で塗布され、かつ光の照射により硬化する。本発明のインクジェット用硬化性組成物は、(A)分子内に炭素−炭素二重結合を少なくとも2つ有する液状ポリエン化合物と、(B)分子内にチオール基を有する液状チオール化合物と、(C)光ラジカル重合開始剤とを含有し、上記液状ポリエン化合物由来の炭素−炭素二重結合に対する前記チオール基の割合がモル比で1未満である。
【0011】
本発明に係るインクジェット用光硬化性組成物のある特定の局面では、(D)熱硬化性化合物がさらに含まれており、光の照射及び加熱により硬化する。従って、光硬化性及び熱硬化性の組成物が提供される。この場合、光の照射により一次的に硬化させ、インクジェット方式による塗布後の濡れ広がりを確実に抑制することができる。そして、加熱により二次硬化させ、微細なソルダーレジストパターンのようなパターン形状を高精度に形成することができる。
【0012】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物の他の特定の局面では、前記(D)熱硬化性化合物が、エポキシ化合物である。
【0013】
本発明に係るプリント配線板の製造方法は、レジストパターンを有するプリント配線板の製造方法であって、本発明に従って構成されたインクジェット用硬化性組成物を、インクジェット方式にて塗工し、パターン状に描画する工程と、パターン状に描画された前記インクジェット用硬化性組成物に光を照射し、硬化させて、レジストパターンを形成する工程とを備える、プリント配線板の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るインクジェット用光硬化性組成物は、上記液状ポリエン化合物(A)及び液状チオール化合物(B)を含有しており、これらの化合物の両者が液状であるため、粘度を低くすることができる。従って、インクジェット方式で容易に塗工することができる。しかも、上記液状ポリエン化合物(A)が炭素−炭素二重結合を少なくとも2つ分子内に有し液状チオール化合物(B)が分子内にチオール基を少なくとも有し、上記モル比が1未満であるため、光の照射により速やかに硬化する。しかも、硬化に際しての必要な光の照射量を少なくすることができる。さらに、硬化が均一に進行し、表面硬化性が優れているので、濡れ広がりを確実に抑制することができる。よって、微細なパターン形状を高精度に形成することが可能となる。
【0015】
従って、本発明のプリント配線板の製造方法によれば、本発明のインクジェット用光硬化性組成物を用いているため、微細なソルダーレジストパターンを高精度に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0017】
(A)液状ポリエン化合物
本発明に係るインクジェット用光硬化性組成物では、分子内に炭素−炭素二重結合を少なくとも2つ有する液状ポリエン化合物(A)が含有されている。炭素−炭素二重結合を有するので、光の照射によりラジカル重合が進行し、硬化する。従って、塗工後の形状が保持される。上記液状ポリエン化合物(A)としては、分子内に炭素−炭素二重結合を少なくとも2つ有し、常温(25℃)で液状の化合物である限り、特に限定されるものではない。
【0018】
上記液状ポリエン化合物(A)としては、例えば、1)エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールもしくはプロピレングリコールなどのグリコールのジ(メタ)アクリレート、2)多価アルコール、多価アルコールのエチレンオキサイド付加物もしくは多価アルコールのプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレート、3)フェノール、フェノールのエチレンオキサイド付加物もしくはフェノールのプロピレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、及び4)グルセリンジグリシジルエーテルもしくはトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテルの(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0019】
本発明では、1種の液状ポリエン化合物(A)が用いられてもよく、2種以上の液状ポリエン化合物(A)が用いられてもよい。
【0020】
上記液状ポリエン化合物(A)としては、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。従って、上述した各(メタ)アクリレート化合物のような、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。
【0021】
なお、上記多価アルコールとしては、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール又はトリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0022】
上記フェノールの(メタ)アクリレートとしては、フェノキシ(メタ)アクリレート又はビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
また、より好ましくは、上記液状ポリエン化合物(A)は、分子内に(メタ)アクリロイル基と、熱硬化性官能基とを有する化合物であることが望ましい。その場合には、光の照射により硬化する機能と、加熱により硬化する機能の双方の機能を液状ポリエン化合物(A)が担うこととなる。従って、光の照射により一次硬化させ、加熱により二次硬化させることができる。よって、インクジェット方式による塗布後に光を照射し、濡れ広がりを確実に抑制することができる。また、濡れ広がりが抑制された組成物からなるパターンを加熱により二次硬化させ、微細なパターン形状を高精度に形成することができる。
【0024】
上記熱硬化性官能基としては、後述する任意成分としての熱硬化性化合物の項において説明する各官能基を用いることができる。
【0025】
(B)分子内にチオール基を有する液状チオール化合物
本発明においては、分子内にチオール基を有する液状チオール化合物(B)が用いられている。チオール基が上記液状ポリエン化合物(A)の炭素−炭素二重結合と反応するため、硬化が速やかに進行する。液状チオール化合物(B)としては、チオール基を分子内に有する常温(25℃)で液状の化合物である限り、特に限定されるものではない。このような液状チオール化合物(B)としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、メチル−3−メルカプトプロピオネート、2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネート、n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート、メトキシブチル−3−メルカプトプロピオネート、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0026】
本発明では、1種の液状チオール化合物(B)が用いられてもよく、2種以上の液状チオール化合物(B)が用いられてもよい。
【0027】
本発明においては、上記液状ポリエン化合物(A)由来の炭素−炭素二重結合に対する上記液状チオール化合物(B)に由来するチオール基の割合がモル比で1未満であることが必要である。このモル比が1未満であるため、本発明のインクジェット用光硬化性組成物が光の照射により速やかに硬化する。また、硬化物中のチオール基の残存が生じ難く、従ってチオール基による基板の腐蝕等を抑制することができる。より好ましくは、上記モル比は0.9未満であり、その場合、チオール基の硬化物中への残存率をより一層低めることができる。
【0028】
また、上記モル比は、0.05以上であることが望ましく、それによって、インクジェット用光硬化性組成物の硬化速度をより一層速めることができる。
【0029】
(C)光ラジカル重合開始剤
本発明に係るインクジェット用光硬化性組成物は、光の照射によりラジカル重合反応を開始させるために、光ラジカル重合開始剤(C)を含む。本発明において用いられる光ラジカル重合開始剤(C)は、様々な波長の光、レーザー光、または電子線等に照射によりラジカルを発生し、ラジカル重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されるものではない。
【0030】
光ラジカル重合開始剤(C)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェン等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;リボフラビンテトラブチレート;2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;2,4,6−トリス−s−トリアジン、2,2,2−トリブロモエタノール、トリブロモメチルフェニルスルホン等の有機ハロゲン化合物;ベンゾフェノン、4,4´−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類又はキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0031】
上記光ラジカル重合開始剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
また、上記光ラジカル重合開始剤(C)に加えて、光ラジカル重合開始助剤を添加してもよい。このような光ラジカル重合開始助剤としては、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミンまたはトリエタノールアミン等などが挙げられる。
【0033】
さらに、光ラジカル重合反応を促進する促進剤を添加してもよい。このような促進剤としては、例えば、可視光領域に吸収を有するチタノセン化合物等などが挙げられる。このようなチタノセン化合物等としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、品番:CGI−784などを挙げることができる。上記促進剤としては、これに限定されるものではなく、例えば、紫外光もしくは可視光領域において光を吸収し、(メタ)アクリロイル基などの不飽和基をラジカル重合させる、任意の化合物を用いることができる。
【0034】
(D)熱硬化性化合物
本発明に係るインクジェット用光硬化性組成物には、必要に応じて、熱硬化性化合物をさらに含有させてもよい。その場合には、本発明により光硬化性及び熱硬化性組成物が提供される。このような熱硬化性化合物(D)としては、熱硬化性官能基を有する適宜の化合物を用いることができる。上記熱硬化性官能基としては、特に限定されず、熱硬化性官能基としては、ビニル基やアリル基などの不飽和二重結合を有する官能基、エポキシ基またはオキセタン基などを挙げることができる。
【0035】
ビニル基含有化合物の具体例としては、ジエチレングリコールジビニルエーテルなどが挙げられる。
【0036】
アリル基含有化合物の具体例としては、トリアリルイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0037】
エポキシ基含有化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、上記多価アルコールのグリシジルエーテル類、ヘキサヒドロフタル酸等のグリシジルエステル類などが挙げられる。
【0038】
オキセタン基含有化合物の具体例としては、特許3074086号に例示されるようなオキセタン化合物が挙げられる。
【0039】
上記熱硬化性化合物(D)は、エポキシ化合物であることが好ましい。
【0040】
(E)熱硬化剤
本発明のインクジェット用光硬化組成物において、上記熱硬化性官能基を有する液状ポリエン化合物(A)を用いたり、上記(D)熱硬化性化合物を含有したりしている場合、熱硬化反応を促進するために、熱硬化剤(E)を配合してもよい。このような熱硬化剤(E)としては、特に限定されず、例えば、ジシアンジアミド粒子及びその変性物、イミダゾール誘導体類、ポリアミン類並びにこれらの有機酸塩及び/もしくはエポキシアダクト、トリアジン誘導体類、三級アミン類、有機ホスフィン類、ホスホニウム塩類、4級アンモニウム塩類、または多塩基酸無水物などの公知慣用の硬化剤類あるいは硬化促進剤類が挙げられる。これらの硬化剤類あるいは硬化促進剤類は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
(F)他の成分
本発明に係るインクジェット用光硬化性組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で種々の添加剤を配合してもよい。このような添加剤としては、特に限定されず、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラックもしくはナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤;ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロールもしくはフェノチアジン等の公知慣用の重合禁止剤;シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤及び/もしくはレベリング剤;またはイミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤などが挙げられる。
【0042】
(プリント配線板の製造方法)
本発明の製造方法で得られるプリント配線板は、本発明のインクジェット用光硬化性組成物の硬化により形成されたソルダーレジストパターンを有する。このプリント配線板の製造方法は、本発明のインクジェット用光硬化性組成物をインクジェットプリンタを用いて塗工し、該インクジェット用光硬化性組成物からなるパターンを描画する工程と、インクジェット用光硬化性組成物に光を照射して硬化させ、ソルダーレジストパターンを形成する工程とを備える。インクジェット用光硬化性組成物が、上述した熱硬化官能基を有する液状ポリエン化合物(A)や熱硬化性化合物(D)を含む場合には、光の照射後、さらに加熱により二次硬化させ、ソルダーレジストパターンを形成する。
【0043】
本発明の製造方法では、上記インクジェット用光硬化性組成物が光の照射により速やかに硬化するため、インクジェット方式で塗工した後、塗工形状がくずれ難い。すなわち、濡れ広がりを抑制することができる。よって、微細なソルダーレジストパターンを高精度に形成することができる。
【0044】
なお、上記インクジェットプリンタとしては、本発明のインクジェット用光硬化性組成物をインクジェット方式で塗工し得る限り、適宜のインクジェットプリンタ装置を用いることができる。この場合、インクジェット用光硬化性組成物をインクジェットプリンタのヘッドから吐出する際の温度については、インクジェット用光硬化性組成物を吐出し得る粘度になる限り特に限定されない。また、上記粘度は、インクジェットプリンタのヘッドから吐出し得る範囲であれば特に限定されないが、25℃で1000mPa・s以下であることが好ましい。
【0045】
また、上記インクジェットプリンタのヘッドからインクジェット用光硬化性組成物を吐出する際の温度は、ヘッドから吐出し得る粘度を実現し得る限り特に限定されないが、60℃以上、100℃未満が好ましい。60℃未満では、粘度が高くなるおそれがあり、100℃を超えるとインクがゲル化するとことがある。
【0046】
上記光の照射は、インクジェットプリンタによる描画後に行ってもよいが、描画と同時に行ってもよい。例えば、インクジェットプリンタのヘッドによるインクジェット用光硬化性組成物の吐出と同時あるいは直後に光を照射してもよい。このように、描画と同時に光を照射するためには、インクジェットプリンタのヘッドによる描画位置に光照射部分が追随するように光源を配置すればよい。
【0047】
上記光の照射源としては、照射する光に応じて適宜の光源を用いることができる。このような光源としては、UV−LED、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプまたはメタルハライドランプなどを用いることができる。また、上記光線としては、このような各波長の光の他、電子線、α線、β線、γ線、X線、中性子線などを用いてもよい。
【0048】
次に、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明の効果を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
(実施例及び比較例の評価)
(1)インク濡れ広がり
銅箔が上面に貼り付けられている銅箔付きFR−4基板を用意した。基板上の銅箔上に、インクジェット用硬化性組成物を、紫外線照射装置付きピエゾ方式インクジェットプリンター(ヘッド温度:80℃)のインクジェットヘッドから、ラインの幅200μmでライン間の間隔が200μmとなるように吐出して塗工し、パターン状に描画した。描画から0.5秒後にUV−LED(波長365nm)の紫外線を20mJ/cm照射し、インクを光硬化させた。
【0050】
このライン幅を顕微鏡で観察し、以下の判定基準でインクの濡れ広がりを評価した。
【0051】
[インク濡れ広がりの判定基準]
○:ライン幅(200μm設定)が250μm以下
×:ライン幅(200μm設定)が250μm以下を越える
【0052】
(2)銅箔腐食性
銅箔が上面に貼り付けられている銅箔付きFR−4基板を用意した。基板上の銅箔上に、インクジェット用硬化性組成物を、紫外線照射装置付きピエゾ方式インクジェットプリンター(ヘッド温度:80℃)のインクジェットヘッドから、銅箔上にインクを描画した。UV−LED(波長365nm)の紫外線を1000mJ/cm照射し、インクを光硬化させた後、150℃のオーブンで1時間加熱した。加熱したサンプルを目視で確認し、銅箔腐食性を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0053】
[銅箔腐食性の判定基準]
○:150℃1時間加熱前後で、銅箔の色に変化が見られない
×:150℃1時間加熱後、銅箔が茶色に変色している。
【0054】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式で塗布され、かつ光の照射により硬化するインクジェット用光硬化性組成物であって、
(A)分子内に炭素−炭素二重結合を少なくとも2つ有する液状ポリエン化合物と、
(B)分子内にチオール基を有する液状チオール化合物と、
(C)光ラジカル重合開始剤とを含有し、
前記液状ポリエン化合物由来の炭素−炭素二重結合に対する前記チオール基の割合がモル比で1未満である、インクジェット用光硬化性組成物。
【請求項2】
(D)熱硬化性化合物をさらに含み、光の照射及び加熱により硬化する、請求項1に記載のインクジェット用光硬化性組成物。
【請求項3】
前記(D)熱硬化性化合物が、エポキシ化合物であることを特徴とする、請求項2に記載のインクジェット用光硬化性組成物。
【請求項4】
レジストパターンを有するプリント配線板の製造方法であって、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット用硬化性組成物を、インクジェット方式にて塗工し、パターン状に描画する工程と、
パターン状に描画された前記インクジェット用硬化性組成物に光を照射し、硬化させて、レジストパターンを形成する工程とを備える、プリント配線板の製造方法。

【公開番号】特開2012−166373(P2012−166373A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27177(P2011−27177)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】