説明

インクジェット記録ヘッドの製造方法

【課題】 本発明の目的は、高さの異なる押圧面を有する電気配線基板H1300と記録素子ユニットH3000との接着固定において、リードL1の下部の接着剤が安定的に圧搾されて、高い電気接合信頼性を持ったインクジェット記録ヘッドの製造方法を提供する事にある。
【解決手段】 記録液を吐出する記録素子基板と、前記記録素子基板を接着固定する支持基板と、前記記録素子基板に吐出信号を伝達する電気配線基板とを備え、前記電気配線基板と、前記支持基板とを接着剤を用いて接着固定して得られるインクジェット記録ヘッドの製造方法において、前記電気配線基板には、前記電気配線基板の接着の際に圧力を付与する為の、高さの異なる押圧面を複数有し、前記支持基板には接着の際に前記電気配線基板からの圧力を受圧する受圧面を有し、前記押圧面のうち、少なくとも2つの面を低弾性部材によって押圧する事を特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録液室内に気泡を発生させて記録液を吐出口から押し出す事により、記録媒体に対して記録を行うインクジェット記録装置に搭載される、インクジェット記録ヘッドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェット記録ヘッドは、記録液を吐出する記録素子基板と、該基板を支持固定する支持基板、更に吐出信号を記録素子基板に伝達する電気配線基板等で構成される。
【0003】
製造方法としては、紫外線と熱の併用硬化型接着剤を用いて、記録素子基板が支持基板に接着固定される事で中間体である記録素子ユニットが完成する。次に該記録素子ユニットを構成する支持基板面に熱硬化型接着剤を塗布した後、電気配線基板を該記録素子ユニットに対して位置合わせし、電気配線基板と記録素子ユニットを接着固定する。次に記録素子基板のパッド部と電気配線基板のリード部がワイヤーボンディングで電気接続され、その後に続く工程を経てインクジェット記録ヘッドが完成する。
【0004】
特許文献1では、インクジェット記録ヘッドの製造方法における記録素子ユニットと電気配線基板の接着手法が開示されている。該公報では、ヒーターを内蔵する圧着ツールにより電気配線基板を押圧し、電気配線基板と支持基板の間に介在する熱硬化型接着剤を硬化させる事で、記録素子ユニットと電気配線基板を接着する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−212913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
更に特許文献1では、圧着ツールを電気配線基板の表面へ接触させる事で、電気配線基板の下面に存在する接着剤の硬化を促進する為の熱伝達を行って接着を行う。熱伝導性を有する材料としては、アルミ、銅、SUS等の金属材料や、窒化アルミやアルミナ等のセラミックが挙げられる。この様な構成で先述の接着固定を行った場合、図6(a)(b)の様に、電気配線基板H1300の押圧面に段差Δzが存在する場合には、高い剛性を持つ圧着ツールR’で補強板Spの下層に位置する面を充分に押圧する事が困難である。その結果、電気配線基板H1300の下面に位置する接着剤G2を充分に圧搾する事が出来ず、リードL1面が浮き上がる等の問題を引き起こしてしまう。
【0007】
支持基板H1200に対して電気配線基板H1300の接着固定が完了した後、次工程のワイヤーボンディング工程において、記録素子基板H1101のパッドErと電気配線基板H1300のリードL1の電気接続が行われる。図6(b)の様にリードL1面が浮き上がると、ワイヤーボンディング工程において電気接合品質の低下を引き起こす。この問題を解決すべく、剛性の高い圧着ツールR’に凸部を設け、積極的にリードL1面を押圧する場合は、圧着ツールR’からリードL1面へ応力が集中しリードL1の変形や破損を招いてしまう。
【0008】
本発明の目的は、高さの異なる押圧面を有する電気配線基板H1300と記録素子ユニットH3000との接着固定において、リードL1の下部の接着剤が安定的に圧搾されて、高い電気接合信頼性を持ったインクジェット記録ヘッドの製造方法を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
記録液を吐出する記録素子基板と、前記記録素子基板を接着固定する支持基板と、
前記記録素子基板に吐出信号を伝達する電気配線基板とを備え、
前記電気配線基板と、前記支持基板とを接着剤を用いて接着固定して得られるインクジェット記録ヘッドの製造方法において、
前記電気配線基板には、前記電気配線基板の接着の際に圧力を付与する為の、高さの異なる押圧面を複数有し、
前記支持基板には接着の際に前記電気配線基板からの圧力を受圧する受圧面を有し、
前記押圧面のうち、少なくとも2つの面を低弾性部材によって押圧する事を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明を適用する事によって、高さの異なる押圧面を有する電気配線基板H1300を接着固定する場合においても、リードL1の下部に存在する接着剤を安定的に圧搾出来、高い電気接合信頼性を持ったインクジェット記録ヘッドを得る事が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による実施例1の適用が可能な製造方法及び製品構成を示す模式図である。
【図2】本発明による実施例2の適用が可能な製造方法及び製品構成を示す模式図である。
【図3】本発明の適用が可能な構成を示す模式図である。
【図4】記録素子ユニットと電気配線基板の構成を示す模式図である。
【図5】電気接合が完了した記録素子ユニットと電気配線基板の構成を示す模式図である。
【図6】従来の製造方法及び製品構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の適用が可能な実施形態について、図3を用いて説明する。
【0013】
図4の様に、インクジェット記録ヘッドは記録素子ユニットH3000を構成する支持基板H1200に対して、電気配線基板H1300が接着固定された中間体を経て製造する事が出来る。
【0014】
本発明が適用出来る電気配線基板H1300は、補強板Sp、被覆層C、リードL1、基材Bから構成される積層体であり、補強板Sp表面と被覆層C表面との間に段差を備えている。この様な電気配線基板H1300で構成されるインクジェット記録ヘッドにおいて、補強板Sp表面は、インク回復を行う際の本体によるキャッピング領域となる。ここで補強板Spは、本体のキャッピング機構やインククリーニングを行うブレード機構から受ける外力による変形を防ぐ為に、キャッピング面の剛性を高める機能も担っている。更に、被覆層CはリードL1面の汚れや傷の発生を防止する保護層を成すと共に、第1の低弾性体R1の押圧面とする事も出来る。
【0015】
本発明による製造方法に基づいた製造装置では、図3(a)(b)の様に、電気配線基板H1300を支持基板H1200へ接着固定する際に、電気配線基板H1300の押圧面に対して圧力を付与する表面は第1の低弾性体R1によって構成される。また、第1の低弾性体R1によって、電気配線基板H1300を成す補強板Spの表面及びその下層を成す被覆層Cの表面の両面を押圧する事が出来る。第1の低弾性体R1に適用可能な材料としては、弾性率が3MPa以下の材料である事が望ましく、この様な低弾性特性を備える事が可能なシリコン系やウレタン系のラバー材を用いるのが望ましい。第1の低弾性体R1は圧着ツールを構成する剛体Rgに対して接合テープや接着剤を用いて装着される。
【0016】
電気配線基板H1300の接着固定に熱硬化型の接着剤を用いる場合は、支持基板H1200の下面を受ける装置ステージに加熱手段を設けて、圧着時に接着部の加熱を行う。この際、電気配線基板H1300に対して押圧を行う第1の低弾性体R1に高い耐熱性能が要求される場合には、シリコン系のラバー材を採用するのが最も望ましい。また補強板Spの表面及びその下層を成す被覆層Cの表面の両面に対して、より均一な圧力で押圧する為には、第1の低弾性体R1に突出部Ptを設けて、それぞれの押圧面における変形量を制御して押圧を行うのがより望ましい。更に、第1の低弾性体R1は補強板Spの表面に対して押圧を施す第1の低弾性体R1と、その下層を成す被覆層Cの表面に対して押圧を施す第2の低弾性体R2で構成する事も出来る。この場合は、第2の低弾性体R2に弾性率高い材料を適用するのが望ましい。即ち、第1の低弾性体R1と第2の低弾性体R2の弾性率をE1、E2とした場合、E1<E2となる様に設定し、低弾性率のラバー材の適用を最小限に抑える事で、圧着ツールの耐久性が向上する。同時に、第1の低弾性体R1の部分により低弾性の材料を適用する事で、補強板Spの形状に追従し、補強板Spを隙間無く抑え込んだ状態で接着を行う事が可能になる。また、被覆層Cは、圧着時に第1の弾性体R1及び第2の弾性体R2がリードL1表面に接触するのを防ぐ保護層としての機能も有する。
【0017】
上記の様に圧着ツールを構成すると、電気配線基板H1300が多層化し、数多くの押圧面が存在する場合においても、押圧部の形状に追従した状態での圧着が可能になる。また図3(a)に示す様に、補強板Spの端部を押圧する第1の低弾性体R1に傾斜形状Ti等を取る事で補強板Spの端部形状への形状追従性を更に高める事も出来る。更に、第1の低弾性体R1ないし第2の低弾性体の表面には、電気配線基板H1300の押圧面への貼り付きを防止する為に、撥水処理が施されているのが望ましい。
【0018】
次に、本発明による電気配線基板H1300の接着プロセスについて、以下に説明する。
【0019】
図4の様に、まず、記録素子ユニットH3000を構成する支持基板H1200の表面に、ディスペンサー塗布または転写によって接着剤G2を配置する。その後、電気配線基板H1300に設けられたデバイスホールDHと、それらの位置に対応する記録素子基板H1101とを位置合わせして、記録素子ユニットH3000に対して電気配線基板H1300の接着固定を行う。この際、押圧面に設けられた第1の低弾性体R1により、電気配線基板H1300の補強板Spの表面及びその下層を成す被覆層Cの表面の両面に対して、圧力が付与される事で、図3(a)(b)の様に、接着剤G2が充分に圧搾された状態で接着固定する事が可能になる。以上の様にして得られたインクジェット記録ヘッドの中間体が、図5の様に、次工程のワイヤーボンディング工程で電気接合された後、以降の工程を経てインクジェット記録ヘッドが完成する。
【0020】
[実施例1]
本発明が適用出来る第1の実施例について、以下に説明する。
【0021】
本発明が適用出来るインクジェット記録ヘッドは、図4に示す様に、記録素子ユニットH3000を構成する支持基板H1200に対して、電気配線基板H1300が接着固定された中間体を経て製造する事が出来る。
【0022】
電気配線基板H1300は、補強板Sp、被覆層C、リードL1、基材Bから構成される積層体であり、補強板Sp表面と被覆層C表面との間に段差を備えている。
【0023】
また補強板Spの厚みは100〜500μm、被覆層Cの厚みは10〜50μm、リードL1の厚みは15〜20μm、基材Bの厚みは100〜500μm程度である。
【0024】
図2の様に、本実施例では異なる押圧面を備える電気配線基板H1300に圧力を付与する第1の低弾性体R1を剛体Rgに装着する構成とした。
【0025】
この構成によって、第1の低弾性体R1で電気配線基板H1300を成す補強板Spの表面と、補強板Spの下層に配置される被覆層Cの表面の両面を押圧する事が出来る。
【0026】
また本実施例では、第1の低弾性体R1の表面は平面で形成し、補強板Spの表面と、補強板Spの下層に配置される被覆層Cの表面を押圧する面を同一面とした。
【0027】
第1の低弾性体R1には硬度10°(弾性率が0.2MPa程度)のシリコン系のラバー材を適用した。この様に、第1の低弾性体R1の部分に、より低弾性の材料を適用する事で、補強板Spの形状に追従し、補強板Spを隙間無く抑え込んだ状態で接着を行う事が可能になる。更に、第1の低弾性体R1の表面には、電気配線基板H1300の押圧面への貼り付きを防止する為に、フッ素処理を施した。
【0028】
本実施例では、電気配線基板H1300を支持基板H1200へ固定する接着剤として、紫外線と熱の併用硬化型のエポキシ接着剤を用いた。該接着剤の硬化を促進する為に、支持基板H1200の下面を受ける装置ステージには加熱手段を設け、圧着時の接着剤の温度が40〜100℃となる様に、加熱を施せる装置構成とした。
【0029】
次に、本実施例による電気配線基板H1300の接着プロセスについて、以下に説明する。
【0030】
図4の様に、まず、記録素子ユニットH3000を構成する支持基板H1200の表面に、ディスペンサー塗布または転写によって接着剤G2を配置した後、接着剤G2に紫外線を照射し接着剤の硬化を開始させる。次に電気配線基板H1300に設けられたデバイスホールDHと、それらの位置に対応する記録素子基板H1101とを位置合わせして、記録素子ユニットH3000に対して電気配線基板H1300の接着固定を行う。この際、第1の低弾性体R1で電気配線基板H1300を成す補強板Spの表面と補強板Spの下層に配置される被覆層Cの表面の両面を押圧し、圧力が付与される。その結果、図2(a)(b)の様に、接着剤G2が充分に圧搾された状態で接着固定する事が可能になる。
【0031】
[実施例2]
本発明が適用出来る第2の実施例について、以下に説明する。
【0032】
実施例1と同様に、本発明が適用出来るインクジェット記録ヘッドは、図3に示す様に、記録素子ユニットH3000を構成する支持基板H1200に対して、電気配線基板H1300が接着固定された中間体を経て製造する事が出来る。
【0033】
電気配線基板H1300は、補強板Sp、被覆層C、リードL1、基材Bから構成される積層体であり、補強板Sp表面と被覆層C表面との間に段差を備えている。
【0034】
また補強板Spの厚みは100〜500μm、被覆層Cの厚みは10〜50μm、リードL1の厚みは15〜20μm、基材Bの厚みは100〜500μm程度である。
【0035】
図3の様に、本実施例では異なる押圧面を備える電気配線基板H1300に圧力を付与する第1の低弾性体R1を剛体Rgに装着する構成とした。
【0036】
この構成によって、第1の低弾性体R1で電気配線基板H1300を成す補強板Spの表面と、補強板Spの下層に配置される被覆層Cの表面の両面を押圧する事が出来る。
【0037】
更に本実施例では補強板Spの表面及びその下層を成す被覆層Cの表面の両面に対して、より均一な圧力で押圧する為に、第1の低弾性体R1に突出部Ptを設けた。また突出部Ptの段差は補強板Spの厚みと同等に設定した。
【0038】
第1の低弾性体R1には硬度10°(弾性率が0.2MPa程度)のシリコン系のラバー材を適用した。この様に、第1の低弾性体R1の部分に、より低弾性の材料を適用する事で、補強板Spの形状に追従し、補強板Spを隙間無く抑え込んだ状態で接着を行う事が可能になる。更に、第1の低弾性体R1の表面には、電気配線基板H1300の押圧面への貼り付きを防止する為に、フッ素処理を施した。
【0039】
実施例1と同様に、本実施例では、電気配線基板H1300を支持基板H1200へ固定する接着剤として、紫外線と熱の併用硬化型のエポキシ接着剤を用いた。該接着剤の硬化を促進する為に、支持基板H1200の下面を受ける装置ステージには加熱手段を設け、圧着時の接着剤の温度が40〜100℃となる様に、加熱を施せる装置構成とした。
【0040】
次に、本実施例による電気配線基板H1300の接着プロセスについて、以下に説明する。
【0041】
図4の様に、まず、記録素子ユニットH3000を構成する支持基板H1200の表面に、ディスペンサー塗布または転写によって接着剤G2を配置した後、接着剤G2に紫外線を照射し接着剤の硬化を開始させる。次に電気配線基板H1300に設けられたデバイスホールDHと、それらの位置に対応する記録素子基板H1101とを位置合わせして、記録素子ユニットH3000に対して電気配線基板H1300の接着固定を行う。この際、第1の低弾性体R1で電気配線基板H1300を成す補強板Spの表面と補強板Spの下層に配置される被覆層Cの表面の両面を押圧し、圧力が付与される。その結果、図3(a)(b)の様に、接着剤G2が充分に圧搾された状態で接着固定する事が可能になる。
【0042】
[実施例3]
本発明が適用出来る第3の実施例について、以下に説明する。
【0043】
図4の様に、本発明が適用出来るインクジェット記録ヘッドは、記録素子ユニットH3000を構成する支持基板H1200に対して、電気配線基板H1300が接着固定された中間体を経て製造する事が出来る。
【0044】
電気配線基板H1300は、補強板Sp、被覆層C、リードL1、基材Bから構成される積層体であり、図1(a)の様に、補強板Sp表面と被覆層C表面との間に段差を備えている。
【0045】
また補強板Spの厚みは100〜500μm、被覆層Cの厚みは10〜50μm、リードL1の厚みは15〜20μm、基材Bの厚みは100〜500μm程度である。
【0046】
本実施例では、図1(a)、(b)の様に電気配線基板H1300の押圧面に対して圧力を付与する第1の低弾性体R1、第2の低弾性体R2を用意し、剛体Rgに装着する構成とした。この構成によって、第2の低弾性体R2で電気配線基板H1300を成す補強板Spの表面を押圧し、第1の低弾性体R1で補強板Cの下層に配置される被覆層Cの表面を押圧する事が出来る。
【0047】
第1の低弾性体R1には硬度10°のシリコン系のラバー材を適用した。この様に、第1の低弾性体R1の部分により低弾性な材料を適用する事で、補強板Spの端部形状に追従し、補強板Spの端部を隙間無く抑え込んだ状態で接着を行う事が可能になる。また、低弾性体R1に設けた突出部Ptの突出量は500〜900μmとした。更に、第2の弾性体R2には硬度30°のシリコン系のラバー材を適用した。この場合、硬度10°、硬度30°について、それぞれの弾性率は0.2MPa、1.1MPa程度である。更に、第1の低弾性体R1ないし第2の低弾性体の表面には、電気配線基板H1300の押圧面への貼り付きを防止する為に、フッ素処理を施した。
【0048】
本実施例では、電気配線基板H1300を支持基板H1200へ固定する接着剤として、紫外線と熱の併用硬化型のエポキシ接着剤を用いた。該接着剤は紫外線の照射を受ける事によりエポキシ樹脂の重合連鎖反応を開始し、常温滞留で30〜60分で固化する様に材料配合されている。また硬化が開始した該接着剤は加熱する事によって固化時間を短縮する事も可能である。この様な特性の該接着剤の硬化を促進する為に、支持基板H1200の下面を受ける装置ステージには加熱手段を設け、圧着時の接着剤の温度が40〜100℃となる様に、加熱を施せる装置構成とした。
【0049】
次に、本実施例による電気配線基板H1300の接着プロセスについて、以下に説明する。
【0050】
図4の様に、まず、記録素子ユニットH3000を構成する支持基板H1200の表面に、ディスペンサー塗布または転写によって接着剤G2を配置した後、接着剤G2に紫外線を照射し接着剤の硬化を開始させる。次に電気配線基板H1300に設けられたデバイスホールDHと、それらの位置に対応する記録素子基板H1101とを位置合わせして、記録素子ユニットH3000に対して電気配線基板H1300の接着固定を行う。この際、第2の低弾性体R2で電気配線基板H1300を成す補強板Spの表面を押圧し、第1の低弾性体R1で補強板Cの下層に配置される被覆層Cの表面を押圧する。その結果、図1(a)(b)の様に、接着剤G2が充分に圧搾された状態で、電気配線基板H1300を支持基板H1200へ接着固定する事が可能になる。
【符号の説明】
【0051】
H1101 記録素子基板
H1200 支持基板
H1300 電気配線基板
H3000 記録素子ユニット
C 被覆層
Δz 段差
L1 リード
Er パッド
G1 接着剤(記録素子基板と支持基板の接着用)
G2 接着剤(電気配線基板と支持基板の接着用)
DH デバイスホール
R1 第1の低弾性体
R2 第2の低弾性体
Rg 剛性体
R’ 圧着ツール
Sp 補強板
B 基材
Pa 受圧面
Pt 突出部
NL 吐出ノズル
Tr20 圧着ツールユニット
Ti 傾斜形状
Ct 外部電極端子
W ワイヤー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録液を吐出する記録素子基板と、前記記録素子基板を接着固定する支持基板と、
前記記録素子基板に吐出信号を伝達する電気配線基板とを備え、
前記電気配線基板と、前記支持基板とを接着剤を用いて接着固定して得られるインクジェット記録ヘッドの製造方法において、
前記電気配線基板には、前記電気配線基板を接着する際に圧力を付与する為の、高さの異なる押圧面を複数有し、
前記支持基板には接着の際に前記電気配線基板からの圧力を受圧する受圧面を有し、
前記押圧面のうち、少なくとも2つの面を低弾性体によって押圧する
事を特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記低弾性体は弾性率の異なる第1の低弾性体と第2の低弾性体で構成され、
前記第1の低弾性体には突出部を有し、
前記第1の低弾性体によって、前記押圧面のうち、低い面に位置する押圧面を押圧し、
前記第2の低弾性体によって、前記押圧面のうち、高い面に位置する押圧面を押圧する
事を特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記第1の低弾性体の弾性率をE1、前記第2の低弾性体の弾性率をE2とした場合に、
E1<E2となる事を特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記低弾性部材は第1の低弾性体で構成され、
且つ、前記受圧面のうち、低い面に位置する押圧面と、高い面に位置する押圧面とを、前記第1の低弾性体によって押圧する事を特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記第1の低弾性体には、低い面に位置する押圧面を押圧する為の突出部を備える事を特徴とする請求項3又は請求項4に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項6】
前記第1の低弾性体はシリコン、ウレタンを含む材料で構成される事を特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項7】
前記第2の低弾性体はシリコン、ウレタンを含む材料で構成される事を特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記押圧面は電気配線リードを被覆する被覆層の表面を含む事を特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記第1の弾性体の表面には撥水処理が施されている事を特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【請求項10】
記録液を吐出する記録素子基板と、前記記録素子基板を接着固定する支持基板と、
前記記録素子基板に吐出信号を伝達する電気配線基板とを備え、
前記電気配線基板と、前記支持基板とを接着剤を用いて接着固定して得られるインクジェット記録ヘッドの製造装置において、
前記電気配線基板には、前記電気配線基板を接着する際に圧力を付与する為の、高さの異なる押圧面を複数有し、
且つ、前記押圧面のうち、少なくとも2つの面を押圧する低弾性体を備える事を特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造装置。
【請求項11】
前記低弾性体は、
前記押圧面のうち、低い面に位置する押圧面を押圧する第1の低弾体と、
前記押圧面のうち、高い面に位置する押圧面を押圧する第2の低弾性体で
構成される事を特徴とする請求項10に記載のインクジェット記録ヘッドの製造装置。
【請求項12】
前記第1の低弾性体の弾性率をE1、前記第2の低弾性体の弾性率をE2とした場合に、
E1<E2となる事を特徴とする請求項11に記載のインクジェット記録ヘッドの製造装置。
【請求項13】
前記低弾性体は、前記押圧面のうち、低い面に位置する押圧面と、高い面に位置する押
圧面を押圧する第1の低弾性体で構成される事を特徴とする請求項10に記載のインクジェット記録ヘッドの製造装置。
【請求項14】
前記第1の低弾性体には、低い面に位置する押圧面を押圧する為の突出部を備える事を特徴とする請求項12又は請求項13に記載のインクジェット記録ヘッドの製造装置。
【請求項15】
前記第1の低弾性体はシリコン、ウレタンを含む材料で構成される事を特徴とする請求項14に記載のインクジェット記録ヘッドの製造装置。
【請求項16】
前記第2の低弾性体はシリコン、ウレタンを含む材料で構成される事を特徴とする請求項15に記載のインクジェット記録ヘッドの製造装置。
【請求項17】
前記第1の弾性体の表面には撥水処理が施されている事を特徴とする請求項16に記載のインクジェット記録ヘッドの製造装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−240212(P2012−240212A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108976(P2011−108976)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】