説明

インクジェット記録媒体

【課題】 表面にぼこつきが発生することを抑制し、かつ表面に傷が発生しにくいインクジェット記録媒体を提供すること。
【解決手段】 支持体上にインク受容層を有するインクジェット記録媒体であって、CD方向に対するMD方向の繊維配向比であるMD/CDが1.65以上であり、浸水開始から600秒後におけるCD方向の水中伸度が1.75%以下であることを特徴とするインクジェット記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録媒体は、支持体上にインク受容層を有する記録媒体であり、インクジェット記録法によってインクを付与した際に、良好な発色性やインク吸収性を発現することができる。インクジェット記録媒体は、インクを付与すると、表面にぼこつき(波打ち)が生じることがある。かかる課題を解決する為に、特許文献1には、支持体の繊維配向比(MD/CD)を1.4以下とし、CD方向の1分後の水中伸度を1.7%以下とした記録媒体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−268470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェット記録媒体の製造過程において、支持体上にインク受容層を設けた後、工程中に設置したパスロールと呼ばれる保持装置部に、記録媒体の表面が接触する。本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載の記録媒体は、MD/CDが1.4以下であり、工程内張力(MD方向の張力)を強くかけると、パスロールと接触した際に、表面に傷がつくことがあった。
【0005】
従って、本発明は、表面にぼこつきが発生することを抑制し、かつ製造過程において表面に傷が発生しにくいインクジェット記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の本発明によって解決される。即ち本発明は、支持体上にインク受容層を有するインクジェット記録媒体であって、CD方向に対するMD方向の繊維配向比であるMD/CDが1.65以上であり、浸水開始から600秒後におけるCD方向の水中伸度が1.75%以下であることを特徴とするインクジェット記録媒体である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、表面にぼこつきが発生することを抑制し、かつ製造過程において表面に傷が発生しにくいインクジェット記録媒体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の記録媒体は、支持体上にインク受容層を有するインクジェット記録媒体である。記録媒体には、MD(Machine Direction)方向と、CD(Cross Direction)方向とが存在する。MD方向とは、抄紙の際の紙の流れる方向であり、CD方向とはMD方向に垂直な方向である。一般的には、MD方向とCD方向の繊維の配向比は揃えようとする。即ち、CD方向に対するMD方向の繊維配向比であるMD/CDを「1」に近くなるように制御する。
【0009】
インクジェット記録媒体は、その製造工程において、湿潤状態、或いは乾燥状態とすることが繰り返される。この結果、記録媒体に伸縮が発生し、記録媒体と塗工機に設けられたパスロール等とが接触することによって、記録媒体に塗工、乾燥及び断裁等の後加工をする際に、記録媒体表面に傷が発生することがある。そこで、本発明者らは、繊維をあえてMD方向に配向させ、さらにCD方向の水中伸度を制御することで、表面でのぼこつきの発生を抑制しながら、表面の傷の発生を抑制できることを見出した。具体的には、CD方向に対するMD方向の繊維配向比であるMD/CDを、1.65以上とする。MD/CDが1.65以上となるように繊維を配向させると、MD方向の記録媒体の伸縮が低減し、表面に傷がつきにくくなることが分かった。また、MD/CDは2.50以下とすることが好ましい。2.50以下とすることで、記録媒体のこわさなどの強度が、方向によって著しく異なることを抑制できる。MD/CDは1.65以上2.10以下であることが特に好ましい。尚、本発明において、MD/CDの値は、超音波法によって測定した値である。MD/CDの値を超音波法を用いて測定する装置としては、例えば配向性測定機SST−250(野村商事製)が挙げられる。
【0010】
インクジェット記録媒体は、インクジェット記録方法による記録後の用紙姿勢を平坦に保つことが重要である。用紙姿勢が変化するのは、付与されたインクが記録媒体内部へ浸透し、乾燥していく際、基材内の繊維が伸縮することが大きく影響している。特に、記録媒体がCD方向に伸縮すると、ぼこつきが発生しやすい傾向にある。そこで、本発明の記録媒体は、浸水開始から600秒後におけるCD方向の水中伸度を1.75%以下とする。CD方向の水中伸度を1.75%以下とすることで、MD/CDが1.65以上であることと相乗的に作用して、ぼこつきの発生と、表面の傷の発生とを良好に抑制することができる。水中伸度は、各種水中伸度測定装置で測定することができる。具体的な装置としては、DPM−30(emco製)等が挙げられる。この場合、CD方向の水中伸度を測定するには、配向性測定機によって判断したCD方向を初期サンプル長の長さ方向、MD方向をサンプル幅方向として測定する。
【0011】
さらに、浸水開始から30秒後におけるCD方向の水中伸度を0.75%以下とし、60秒後におけるCD方向の水中伸度を1.20%以下とすると、微小なウロコ状のぼこつきの発生をより効果的に抑制することができる。微小なウロコ状のぼこつきは、MD/CDが1.65以上であり、繊維のCD方向の絡み合いが少ないため局所的に発生した微小な凹凸であると考えられる。本発明では、浸水開始から早い段階でのCD方向の水中伸度を上記の通りに制御することで、このようなウロコ状のぼこつきの発生を抑制することができる。
以下、本発明の記録媒体の構成及びその製造方法について詳細に説明する。
【0012】
<記録媒体>
(支持体)
本発明において、記録媒体のMD/CDは、支持体のMD/CDに大きく影響を受ける。そのため、支持体のMD/CDを調整することで、記録媒体のMD/CDを本発明の範囲内とすることが好ましい。支持体のMD/CDの範囲は1.65以上2.50以下であることが好ましく、1.65以上2.10以下であることがより好ましい。支持体のMD/CDを上記好ましい範囲内とすることで、記録媒体のMD/CDを本発明の範囲内にしやすくすることができる。
【0013】
支持体は、LBKP、NBKP、NBSP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等、非木材パルプであるケナフ、バガス、コットン等を主材料とする。具体的には、これらのパルプを、60質量%以上100質量%以下含有することが好ましい。支持体を製造するには、まず、これらのパルプと、顔料、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤等の各種添加剤を混合し、紙料とする。紙料中には、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、浸透剤、着色顔料、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料定着剤等を含有させてもよい。次に、紙料を、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種装置により抄造し、支持体とする。
【0014】
支持体表面には、澱粉、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース等の高分子化合物を含有する液を、サイズプレス、ゲートロールコーター等で塗工・含浸してもよい。
【0015】
(インク受容層)
本発明の記録媒体は、支持体上にインク受容層を有する。インク受容層は、顔料及びバインダーを含有することが好ましい。
【0016】
顔料としては、例えば、無機顔料として、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化マグネシウム等が挙げられる。有機顔料として、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン粒子、マイクロカプセル粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子等が挙げられる。これらの顔料は、単独で用いても、併用してもよい。中でも、透明性、発色性の点から、シリカまたはアルミナ水和物を用いることが好ましい。
【0017】
バインダーとしては、顔料を結着し、被膜を形成する能力のある材料が好ましい。例えば、以下のものが挙げられる。酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体。カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体。カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白及びポリビニルアルコール、ならびにその誘導体。ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役重合体ラテックス。アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体等のアクリル系重合体ラテックス。エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス。上記の各種バインダーのカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス。カチオン基を用いて上記の各種バインダーをカチオン化したもの、カチオン性界面活性剤を用いて上記の各種バインダーの表面をカチオン化したもの。カチオン性ポリビニルアルコール下で上記の各種バインダーを重合し、重合体の表面にポリビニルアルコールを分布させたもの。カチオン性コロイド粒子の懸濁分散液中で上記の各種バインダーの重合を行い、重合体の表面にカチオン性コロイド粒子を分布させたもの。メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂等の水性バインダー。ポリメチルメタクリレート等のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの重合体及び共重合体樹脂。ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系バインダー等である。これらのバインダーは、単独で用いても、併用してもよい。中でも最も好ましく用いられるバインダーは、ポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルを加水分解することで合成することができる。
【0018】
インク受容層のバインダー含有量は、インク吸収性の点から、顔料に対して20.0質量%以下であることが好ましく、15.0質量%以下であることがより好ましい。良好に顔料を結着し、被膜を形成するには、1.0質量%以上であることが好ましい。
【0019】
また、インク受容層は、ホウ酸及びホウ酸塩の少なくとも一方を含有することが好ましい。インク受容層がホウ酸及びホウ酸塩を含有していることにより、インク受容層のクラック発生を抑制することができる。ホウ酸の含有量としては、インク受容層中のバインダー全質量に対し0.5質量%以上15.0質量%以下であることが好ましい。
【0020】
インク受容層は、インク受容層用塗工液を塗工して形成することが好ましい。インク受容層用塗工液には、上述の顔料やバインダー等に加えて、添加剤として、顔料分散剤、堅牢性向上剤、酸化防止剤、有機溶剤、防腐剤、pH調整剤、界面活性剤、及び消泡剤等の従来公知の添加剤を含有させてもよい。また、キャスト処理を行う場合には、インク受容層をキャストドラム鏡面から円滑に剥離させるために、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素類等を離型剤として含有させてもよい。
【0021】
(下塗り層)
本発明の記録媒体は、支持体とインク受容層との間に、下塗り層を有していてもよい。下塗り層は、例えば支持体上に下塗り層用塗工液を塗工することで形成する。下塗り層は、顔料及びバインダーを含有することが好ましい。
【0022】
顔料としては、例えば、無機顔料として、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、加水ハロサイト等が挙げられる。有機顔料として、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン粒子、マイクロカプセル粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子等が挙げられる。これらの顔料は、単独で用いても、併用してもよい。
【0023】
バインダーとしては、インク受容層が含有してもよいバインダーとして列挙したバインダーと同様のものが挙げられる。バインダーの含有量は、顔料に対して、5.0質量%以上500.0質量%以下であることが好ましい。
【0024】
下塗り層には、白色度や色味を調整する為に、白色顔料や蛍光染料を含有させてもよい。これらを下塗り層中に含有させる際には、記録媒体の記録画像の質感、視覚の最適化のため、やや青白く見えるよう調整することが好ましい。
【0025】
(その他)
写真用途に適した質感と、記録装置内での良好な搬送性を得るため、インクジェット記録媒体の厚みは、100μm以上300μm以下であることが好ましい。厚みが100μm未満では、インクジェット記録媒体としての剛性が低く、写真用途としての質感が低下する。また、厚みが300μmを超えると、インクジェット記録媒体としての剛性が高く、インクジェット記録装置内での搬送性が低下する場合がある。
【0026】
上記の剛性を適正な範囲にするために、テーバーこわさ(JIS P 8125)が0.2mN・m以上5.0mN・m以下とすることが好ましい。より好ましくは0.5mN・m以上4.0mN・m以下である。テーバーこわさを調整する方法としては、上述した記録媒体の厚みを調整する方法の他に、支持体である紙層中の填料の配合比率を調整する方法、保水性樹脂などの添加する方法等が挙げられる。テーバーこわさが0.2mN・m未満では、剛性が低いために写真用途としての質感が低下するとともに、記録後のインク吸収によって起こる支持体の伸縮への抵抗力が小さく、カールが制御しにくくなる。また、テーバーこわさが5.0mN・mを超えると、インクジェット記録装置内での記録媒体の搬送性が低下する場合がある。
【0027】
<記録媒体の製造方法>
(支持体)
本発明では、紙料を、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種装置により抄造する。支持体の繊維配向比であるMD/CDを調整する方法としては、ヘッドボックス内での紙料のフローを制御する方法、抄紙機ワイヤー部へのパルプスラリーの吐出速度とワイヤー速度との比率(J/W比)を制御する方法、ワイヤーのシェイキング条件を制御する方法等が挙げられる。フローを制御する方法としては、具体的には、ヘッドボックスからスライス出口までの経路において紙料拡散用バーや仕切り板を設置する方法や、スライス出口の開度を幅方向で変化させる方法が挙げられる。
【0028】
、パルプ繊維や内添添加剤の特性によるパルプスラリーの形状や性状、流動性もMD/CDに変化を与える因子であるため、これらを適宜調整することで、記録媒体のMD/CDを所望の値としてもよい。
【0029】
上記の項目の中で、特に支持体及び記録媒体のMD/CDに影響を与える因子としては、J/W比が挙げられるが、抄造速度や抄紙機構成等の種々の用紙製造条件や、装置設備に依存する場合が多く、一概に特定できるものではない。例えば、抄紙機として円網抄紙機を使用する場合には、円網シリンダーの回転速度の増減も得られる支持体及び記録媒体のMD/CDに大きな影響を与える。また、プレス時やドライヤー乾燥時のMD方向の張力を上げることでも、支持体及び記録媒体のMD/CDを高めることができる。
【0030】
支持体のフリーネスは、400mlC.S.F(カナダ標準型濾水度)以上700mlC.S.F以下とすることが好ましい。より好ましくは、450mlC.S.F以上である。また、650mlC.S.F以下である。400mlC.S.F未満では、ワイヤー上での脱水が遅くなり、生産性が低下することがある。また、MD/CDの値が低下する場合がある。700mlC.S.Fを超えると、支持体の平滑性が低下するため、インクジェット記録媒体としての面質低下が発生したり、引張強度の低下により、塗工液を塗工した際に断紙することがある。支持体のフリーネスを調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、リファイナー等の設備によりパルプ繊維を叩解する方法等が挙げられる。
【0031】
(下塗り層)
下塗り層を形成する場合、下塗り層用塗工液の塗工は、例えば以下の各種塗工装置を用いて行う。各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、エクストルージョン方式を用いたダイコーター、スライドホッパー方式を用いたコーター、サイズプレス等である。塗工は、オンマシンやオフマシンで行う。塗工液の乾燥は、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等で行う。
【0032】
(インク受容層)
本発明においては、支持体上にインク受容層用塗工液を塗工し、乾燥することでインク受容層を形成することが好ましい。インク受容層用塗工液は、適正な塗工量が得られるように、下記の塗工方法で塗工することが好ましい。即ち、各種カーテンコーター、エクストルージョン方式を用いたコーター、スライドホッパー方式を用いたコーター等である。塗工は、オンマシンやオフマシンで行うことが好ましい。塗工液の粘度調製等を目的として、塗工時には塗工液を加温してもよく、コーターヘッドを加温してもよい。塗工液の乾燥は、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等で行うことが好ましい。
【0033】
インク受理層用塗工液の塗工量は、乾燥固形分換算で5g/m以上40g/m以下であることが好ましい。5g/m以上であると、良好なインク吸収性を発現できる。40g/m以下であると、コスト面の負荷を抑制できる。より好ましくは、10g/m以上である。また、35g/m以下である。
【0034】
本発明の製造方法では、記録媒体(インク受容層)表面が湿潤状態にあるときに、乾燥用圧着面に圧着し、表面を拘束乾燥することが好ましい。乾燥用圧着面に圧着する方法としては、例えば、平板状のプレス機に圧着する方法や、ヤンキードライヤー、多筒シリンダードライヤー、ドラム状のプレス機で圧着する方法等が挙げられる。特に、塗工液を塗工した表面を、加熱した鏡面ドラム状の金属面に圧着した状態で乾燥するキャスト法であることが好ましい。キャスト法としては、以下(a)〜(c)の3つの代表的方法がある。
(a)支持体上にインク受容層用塗工液を塗工し、インク受容層が湿潤状態のまま、加熱されているキャストドラムに圧着して乾燥する直接法。
(b)支持体上にインク受容層用塗工液を塗工し、インク受容層を一度乾燥または半乾燥状態にした後、水を主成分とするキャスト用処理液をインク受容層に塗工する。これにより、インク受容層を、可塑性を有した状態(湿った状態)に戻す。この後、加熱されているキャストドラムに圧着して乾燥するリウェットキャスト法(間接法)。
(c)支持体上にインク受容層用塗工液を塗工し、インク受容層が湿潤状態のまま、酸等の凝固剤を含有するキャスト用処理液をインク受容層に塗工する。これにより、インク受容層を流動性のないゲル状態とした後に、加熱されているキャストドラムに圧着して乾燥する凝固法。
【0035】
これらのキャスト法は、何れも写真調画像の形成が可能な記録媒体を製造する場合に利用できるが、高い光沢性を得る点で、リウェットキャスト法が好ましい。
【0036】
凝固法では、支持体上にインク受容層用塗工液を塗工し、インク受容層が湿潤状態である間に、インク受容層中のバインダーを凝固または架橋させるための処理液を塗工する。例えば、バインダーとしてポリビニルアルコールを使用した場合、ホウ素化合物を含有した処理液であることが好ましい。より好ましくは、ホウ酸ナトリウムもしくはホウ酸、またはそれら両方を組み合わせたものである。さらに、染料定着剤としてカチオン性高分子等を添加してもよい。また、インク受容層がキャストドラム鏡面から円滑に剥離するためには、離型剤を添加することが好ましい。これらを含む処理液を塗工した後に、加熱したキャストドラム鏡面に圧着、乾燥させることで、記録面が良好な光沢を発現する。
【0037】
リウェットキャスト法では、塗工液としては水を主成分とし、凝固法と同様に染料定着剤及び離型剤を適宜添加することが好ましい。また、塗工液の表面張力やインク受容層及び支持体への浸透性を損なわない程度に、界面活性剤を添加してもよい。
【0038】
上記(a)〜(c)のキャスト法で使用するキャストドラムは、一般のキャストコート紙の製造条件と同様に、その表面粗度、表面温度、直径、線圧、速度を適宜選択することができる。好ましくは、ドラムの表面温度は80℃以上120℃以下にする。ドラムの表面温度が80℃未満の場合、光沢面の光沢性が低下する可能性がある。また、ドラムの表面温度が120℃を超える場合、キャストドラムに圧着されたインク受容層が急激に加熱されて、インク受容層表面や内部で沸騰が起こることがある。この場合、インク受容層がキャストドラムと密着しにくくなり、キャストドラム鏡面の写し取りが不十分となって光沢性が損なわれる場合がある。
【0039】
キャスト法は、湿潤状態にあるインク受容層を、加熱したキャストドラム鏡面に圧着、乾燥するといった拘束乾燥を行うため、フローティングドライヤー等の非拘束乾燥に比べて乾燥収縮が非常に少ないため、好ましい。一方で、記録媒体のカール調整や水分調整を目的にスチームやダンピング等で調湿した場合には、工程内で吸湿、放湿する際に、記録媒体の伸縮が発生しやすい。このとき発生する伸縮は、インクジェット記録方法で記録した際に、インクがインク受容層を介して支持体に浸透しつつ、インク受容層表面から蒸発する過程において、記録媒体に不均一な収縮を引き起こし、ぼこつきが発生することがある。そのため、キャスト法を用い、MD/CDを1.65以上とした記録媒体であっても、ぼこつきが生じる場合がある。MD/CDを1.65以上とした記録媒体におけるぼこつきの改善について本発明者等が検討を行った結果、記録媒体の浸水開始から600秒後におけるCD方向の水中伸度を1.75%以下とすることで、記録媒体のぼこつきが抑制できることを見い出した。浸水開始から600秒後におけるCD方向の水中伸度を1.75%以下とする方法としては、インク吸収を阻害しない程度に支持体にサイズ剤を含有させる方法や、無機顔料等の紙中填料や寸法安定化剤等の内添薬品を添加する方法が挙げられる。
【0040】
サイズ剤としては、支持体を製造する過程で得られるパルプスラリーに添加するためのサイズ剤である内添用サイズ剤と、支持体が得られた後に支持体表面に塗布するためのサイズ剤である表面サイズ剤とが挙げられる。内添用サイズ剤としては、ロジン系サイズ剤、強化ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系中性サイズ剤、アルケニル無水コハク酸系中性サイズ剤等が挙げられる。表面サイズ剤としては、デンプン、ポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂や内添用サイズ剤で述べた各種サイズ剤等が挙げられる。これらサイズ剤単独で用いても良いし、複数種を組み合わせて用いても良い。内添用サイズ剤の添加量としては、パルプ全質量に対し0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましい。また、表面サイズ剤の添加量としては、支持体表面に片面あたり0.01g/m以上10.00g/mであることが好ましく、片面あたり0.03g/m以上5.00g/mであることがより好ましい。内添用サイズ剤は浸水開始から600秒後におけるCD方向の水中伸度に特に影響を与える因子であり、内添用サイズ剤の添加量が多いほど、浸水開始から600秒後におけるCD方向の水中伸度が低下する傾向にある。一方、表面サイズ剤は、後述する浸水開始から60秒後におけるCD方向の水中伸度に特に影響を与える因子であるのみならず、600秒後におけるCD方向の水中伸度にも影響を与える因子です。表面サイズ剤の添加量が多いほど、浸水開始から60秒後及び600秒後におけるCD方向の水中伸度が低下する傾向にある。そのため、本発明においては、内添用サイズ剤と表面サイズ剤とを併用することが好ましい。紙中填料は、支持体中に1質量%以上40質量%以下含有させることが好ましい。より好ましくは、5質量%以上である。また、25質量%以下である。紙中填料の含有量が1質量%より低いと、紙中填料によるCD方向の伸縮抑制効果が得られ難いとともに、記録媒体のコシが強くなり、搬送性が低下する場合がある。40質量%を超えると、紙粉発生量が多くなり、良好な画像を形成できなかったり、記録媒体の搬送性が低下することがある。浸水開始から600秒後におけるCD方向の水中伸度は、キャストドラム上での乾燥のような拘束乾燥では小さくなるが、拘束されていない状態で用紙水分が変動すると大きくなる。よって、キャストドラムから剥離された後の記録媒体の水分変動を抑えることや、水分が変動する工程ではパスロールの抱き角を大きくとり、保持時間及びCD方向の拘束力を大きくすることが有効である。
【0041】
さらに、浸水開始から30秒後におけるCD方向の水中伸度を0.75%以下とし、60秒後におけるCD方向の水中伸度を1.20%以下とすると、小さなウロコ状のボコツキも抑制することができるため、好ましい。浸水開始から30秒後におけるCD方向の水中伸度を0.75%以下とし、浸水開始から60秒後におけるCD方向の水中伸度を1.20%以下とするには、浸水開始から600秒後における水中伸度の制御方法に加えて、以下の方法を行うことが好ましい。例えば、無機顔料等の紙中填料や寸法安定化剤等の内添薬品を添加する方法や、キャスト工程及びその後工程の条件を制御する方法等である。浸水開始から早い段階でのCD方向の伸縮は、キャストドラム上での拘束乾燥時間や、ドラムから剥離する際の用紙水分、その後の調湿、断裁工程等における吸湿、放湿挙動と、そのときの工程内張力やパスロール等に対する保持状態による影響を受け易い。浸水開始から60秒後におけるCD方向の水中伸度も、浸水開始から600秒後におけるCD方向の水中伸度と同様に、キャストドラム上での乾燥のような拘束乾燥では小さくなるが、拘束されていない状態で用紙水分が変動すると大きくなる。よって、キャストドラムから剥離された後の記録媒体の水分変動を抑えることや、水分が変動する工程ではパスロールの抱き角を大きくとり、保持時間及びCD方向の拘束力を大きくすることが有効である。
【0042】
尚、記録媒体は、ロール形態であれば巻き方向がMD方向となるのが一般的である。また、平版やA4判、L判などの定型サイズに断裁された形態であれば、記録媒体が縦目であれば長辺がMD方向、横目であれば短辺がMD方向であることが一般的である。但し、配向性測定器SST−250によって測定される配向角によって、繊維が最も配向している方向をMD方向として判断できる。先にも述べたが、CD方向は、MD方向に垂直な方向である。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0044】
(支持体1)
フリーネスを450mlC.S.Fに調整したスラリー(LBKP100.0質量部含有)に、軽質炭酸カルシウムを15.0質量部、カチオン化澱粉を2.0質量部、アルキルケテンダイマー系中性サイズ剤を0.300質量部添加した。このスラリー(紙料)を、イオン交換水にて固形分濃度0.5質量%に希釈し、長網多筒式抄紙機を用いて、J/W比を1.07としてシェイキングされたワイヤー部へ吐出し、抄紙した。
【0045】
次に、イオン交換水を100.0質量部、酸化澱粉を5.0質量部、アルキルケテンダイマー系表面サイズ剤を0.100質量部含有した混合液を、抄紙した紙の両面に対し、サイズプレスにて固形分で片面当たり4.0g/m塗工、乾燥した。このようにして、坪量150.0g/mの支持体1を得た。
【0046】
(支持体2)
長網多筒式抄紙機のワイヤー部をシェイキングせずに抄紙した以外は、支持体1と同様にして支持体2を得た。
【0047】
(支持体3)
円網多筒式抄紙機を用いて抄紙した以外は、支持体1と同様にして支持体3を得た。
【0048】
(支持体4)
アルキルケテンダイマー系中性サイズ剤の添加量を0.500質量部とした以外は、支持体3と同様にして支持体4を得た。
【0049】
(支持体5)
アルキルケテンダイマー系表面サイズ剤の添加量を0.025質量部とした以外は、支持体1と同様にして支持体5を得た。
【0050】
(支持体6)
アルキルケテンダイマー系表面サイズ剤の添加量を0.050質量部とした以外は、支持体1と同様にして支持体6を得た。
【0051】
(支持体7)
J/W比を1.00とした以外は、支持体1と同様にして支持体7を得た。
【0052】
(支持体8)
アルキルケテンダイマー系中性サイズ剤の添加量を0.500質量部とした以外は、支持体7と同様にして支持体8を得た。
【0053】
(下塗り層)
得られた支持体上に、以下のようにして下塗り層を形成した。まず、軽質炭酸カルシウムを70.0質量部、カオリンを20.0質量部、酸化チタンを10.0質量部、バインダーを20.0質量部(スチレン−ブタジエン系ラテックス15.0質量部、澱粉5.0質量部)を用意した。これらをイオン交換水中に添加し、固形分濃度が60.0質量%の組成物を得た。得られた組成物を、乾燥塗工量が10.0g/mになるように、支持体の片面にブレードコーターで塗工し、乾燥して、坪量160.0g/mの下塗り層付き支持体を得た。
【0054】
(インク受容層用塗工液Aの調製)
球状コロイダルシリカ粒子の分散液(商品名:PL−7、扶桑化学工業製)50.0質量部、合成シリカ(商品名:A300、日本アエロジル製)50.0質量部を、固形分濃度が18.0質量%となるようにイオン交換水に添加した。さらに、高圧ホモジナイザーで分散して、コロイダルゾルAを得た。
【0055】
一方、ポリビニルアルコール(商品名:PVA235、クラレ製、重合度:3500、ケン化度:88%)をイオン交換水中に溶解させて、8.0質量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。そして、得られたポリビニルアルコール水溶液を、コロイダルゾルAに、顔料に対してポリビニルアルコールが20.0質量%となるように混合して、インク受容層用塗工液Aを調製した。
【0056】
(インク受容層用塗工液Bの調製)
イオン交換水中に、アルミナ水和物(商品名:Disperal HP14、サソール製)を固形分濃度が30.0質量%となるように添加した。次に、このアルミナ水和物100.0質量部に対して、1.5質量部となるようにメタンスルホン酸を加えて、攪拌し、コロイダルゾルを得た。得られたコロイダルゾルをアルミナ水和物の固形分濃度が27.0質量%となるように適宜、イオン交換水で希釈して、コロイダルゾルBを得た。
【0057】
一方、ポリビニルアルコール(商品名:PVA235、クラレ製、重合度:3500、ケン化度:88%)をイオン交換水中に溶解させて、8.0質量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。そして、得られたポリビニルアルコール水溶液を、コロイダルゾルBに、アルミナ水和物に対してポリビニルアルコールが10.0質量%となるように混合した。次に、3.0質量%ホウ酸水溶液を、アルミナ水和物に対してホウ酸が2.0質量%となるように混合して、インク受容層用塗工液Bを調製した。
【0058】
(キャスト用処理液C)
処理液として、100質量部のイオン交換水に対して、3.0質量部のホウ酸、0.2質量部のクエン酸、0.5質量部のポリエチレンエマルション(商品名:ポリマロン618、中京油脂製)を添加して、キャスト用処理液Cを調製した。
【0059】
(キャスト用処理液D)
処理液として、100質量部のイオン交換水に対して、2.0質量部のポリエチレンエマルジョン(商品名:ポリマロン618、中京油脂製)、0.2質量部の界面活性剤(商品名:サーフィノール465、日信化学製)を添加して、キャスト用処理液Dを調製した。
【0060】
<実施例1>
支持体1上に、インク受容層用塗工液Aを、乾燥後の固形分量が20.0g/mとなるようにロールコーターを用いて塗工した。インク受容層が湿潤状態にある間に、その表面の全面に均一にキャスト用処理液Cを塗工し、加熱した鏡面を有するキャストドラムに圧着、乾燥させる凝固法キャストを行った。キャスト条件は、キャストドラム温度:95℃、圧着時のニップ圧:130kg/cmとした。キャスト後、凝固法キャストを行った面とは反対側の面から、二流体スプレーノズルを用いたダンピング装置により水を付与した。水を付与後に、シリンダードライヤー上で拘束乾燥することで、実施例1のインクジェット記録媒体を得た。
【0061】
尚、各工程におけるインクジェット記録媒体の水分量を、JIS P 8127に準じて測定したところ、以下の通りであった。
・キャストドラムでの乾燥後:6.0質量%
・ダンピング後:7.5質量%
・シリンダードライヤーでの乾燥後:5.0質量%
【0062】
<実施例2>
実施例1の支持体1を支持体2に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施例2のインクジェット記録媒体を得た。
【0063】
<実施例3>
実施例1の支持体1を支持体3に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施例3のインクジェット記録媒体を得た。
【0064】
<実施例4>
実施例1の支持体1を支持体4に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施例4のインクジェット記録媒体を得た。
【0065】
<実施例5>
支持体3上に、インク受容層用塗工液Bを乾燥後の固形分質量が20.0g/mとなるようにダイコーターを用いて塗工、乾燥した。その後、インク受容層表面の全面に均一にキャスト用処理液Dを塗工して湿潤状態とした後に、加熱した鏡面を有するキャストドラムに圧着、乾燥させ、リウェット法キャストを行った。これ以外は、実施例1と同様の方法で実施例5のインクジェット記録媒体を得た。
【0066】
<実施例6>
実施例1の支持体1を支持体5に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施例6のインクジェット記録媒体を得た。
【0067】
<実施例7>
実施例1の支持体1を支持体6に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施例7のインクジェット記録媒体を得た。
【0068】
<比較例1>
実施例1の支持体1を支持体7に変更した以外は、実施例1と同様の方法で比較例1のインクジェット記録媒体を得た。
【0069】
<比較例2>
実施例1の支持体1を支持体8に変更した以外は、実施例1と同様の方法で比較例2のインクジェット記録媒体を得た。
【0070】
<比較例3>
比較例1のシリンダードライヤーをエアーフローティング式熱風乾燥に変更した以外は、比較例1と同様の方法で比較例3のインクジェット記録媒体を得た。尚、記録媒体に対するエアーフローティング式熱風乾燥は、記録媒体を拘束せずに行った。
【0071】
<比較例4>
比較例3の支持体7を支持体3に変更した以外は、比較例3と同様の方法で比較例4のインクジェット記録媒体を得た。
【0072】
<比較例5>
比較例3の支持体7を支持体4に変更した以外は、比較例3と同様の方法で比較例5のインクジェット記録媒体を得た。
【0073】
<評価>
各実施例及び比較例にて得られたインクジェット記録媒体に対して、以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0074】
1)CD方向の水中伸度
CD方向の水中伸度は、下記の測定装置、測定条件により測定した。
測定装置:DPM−30(emco製)
測定条件:DDPMモジュール:クランプ式(スプリング張力:1g/mm)
サンプル幅(MD方向):15mm、初期サンプル長(CD方向):50mm
23℃の純水へ浸水後、所定秒数(30秒、60秒、600秒)経過した時のサンプル長の変位を測定した。
【0075】
2)繊維配向比MD/CD
繊維配向比MD/CDは、下記の測定装置、測定条件により測定した。
測定装置:SST−250(野村商事製)
測定条件:23℃、50%RH
【0076】
3)ぼこつき
各記録媒体をA4サイズに断裁した。これに、インクジェット記録装置(商品名:PIXUS MP990、キヤノン製)を用いて、光沢プロプラチナグレードモード(標準設定、フチなし)にて画像を記録した。画像は、PhotoShop7.0のRGBモードで、(R,G,B)=(0,0,0)で塗りつぶした画像を全面に記録した。
【0077】
上記画像を用いて、以下の基準に準じて、記録媒体表面のぼこつきを目視により評価した。
AA:記録終了10秒後、及び23℃、50%RH環境下で24時間放置した後のいずれでも、ぼこつきは認められなかった。
A:記録終了10秒後にはぼこつきは認められなかったが、23℃、50%RH環境下で24時間放置した後では、小さなウロコ状のぼこつきが僅かに認められた。
B:記録終了10秒後、及び23℃、50%RH環境下で24時間放置した後のいずれでも、小さなウロコ状のぼこつきが僅かに認められた。
C:記録終了10秒後では小さなウロコ状のぼこつきが僅かに認められ、23℃、50%RH環境下で24時間放置した後では、ウロコ状のぼこつきがはっきりと認められた。
D:記録終了10秒後でウロコ状のぼこつきがはっきりと認められた。
【0078】
4)インク受容層の傷
A4判サイズに断裁した記録媒体100枚に対して、記録前の白紙状態における記録面を目視により観察して、白紙状態でのインク受容層の傷の発生について評価した。インク受容層の傷が認められなかった記録媒体に対しては、インクジェット記録装置(商品名:PIXUS MP990、キヤノン製)を用いて、光沢プロプラチナグレードモード(標準設定、フチなし)にて画像を記録した。画像は、PhotoShop7.0のRGBモードで、(R,G,B)=(0,0,0)で塗りつぶした画像を全面に記録した。記録後、インク受容層の傷の発生について、再度目視により評価した。評価基準を以下に示す。
AA:白紙状態及び黒で塗りつぶした画像を記録した状態のいずれでも、インク受容層の傷は認められなかった。
A:白紙状態ではインク受容層の傷は認められなかったが、黒で塗りつぶした画像を記録した状態では認められた。
B:白紙状態及び黒で塗りつぶした画像を記録した状態のいずれでも、インク受容層の傷が認められたものの、A4判1枚あたり5個以内であった。
C:白紙状態では、インク受容層の傷が認められたのがA4判1枚あたり5個以内だったが、黒で塗りつぶした画像を記録した状態では、A4判1枚あたり6個以上認められた。
以上の結果を、表1にまとめて示す。
【0079】
【表1】

【0080】
表1に示す通り、実施例1〜7のインクジェット記録媒体は、ぼこつき、傷のいずれもがB以上であった。特に、浸水開始から30秒後におけるCD方向の水中伸度を0.75%以下、浸水開始から60秒後におけるCD方向の水中伸度を1.20%以下とした実施例1〜5の記録媒体は、ぼこつき、傷がより良好な結果となった。
【0081】
一方、MD/CDが1.65未満である比較例1〜3のインクジェット記録媒体は、傷がCとなった。浸水開始から600秒後におけるCD方向の水中伸度が1.75%を超える比較例3〜5のインクジェット記録媒体は、ぼこつきがCまたはDとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にインク受容層を有するインクジェット記録媒体であって、
CD方向に対するMD方向の繊維配向比であるMD/CDが1.65以上であり、浸水開始から600秒後におけるCD方向の水中伸度が1.75%以下であることを特徴とするインクジェット記録媒体。
【請求項2】
浸水開始から30秒後におけるCD方向の水中伸度が0.75%以下であり、浸水開始から60秒後におけるCD方向の水中伸度が1.20%以下である請求項1に記載のインクジェット記録媒体。

【公開番号】特開2012−30573(P2012−30573A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98422(P2011−98422)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】