説明

インクジェット記録方法及び記録物

【課題】金属光沢性及び耐擦性の点で優れたインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】被記録媒体の被記録面に対して、銀粒子と定着樹脂と水とを含む第1のインク組成物を吐出して下地層を形成する下地層形成工程と、前記下地層に対して、銀粒子と水とを含み、定着樹脂を含まない第2のインク組成物を吐出して上層を形成する上層形成工程と、を含み、前記定着樹脂が、前記第1のインク組成物の総質量に対し、1〜10質量%含まれる、インクジェット記録方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法及び記録物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録に用いられるインクとしては、一般に、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックのインクを用いて、いわゆるフルカラー画像を形成することが一般に行われている。そして、形成される画像の高画質化を図る目的で、インクの多色化(例えば、上記4種のインクに加えて、ライトマゼンタ及びライトシアンのインクを含む6色)が行われている。
【0003】
しかしながら、上記のような多色のインクを用いても、良好な金属光沢が得られないという問題が生じる。
【0004】
そこで、近年、金属粒子を用いたインクジェット記録用インク(金属インク)が提案されている。例えば、特許文献1には、ヘッドを半分ずつ用い、地色用とカラー画像用とに分けて印刷するプリント方法が開示されている。特許文献2には、白色の下地層を形成した後、当該下地層の上にカラー印刷を行う、カラー印刷物品の製造方法が開示されている。特許文献3には、受理層用インク(紫外線硬化型のインク)を噴出して画像用インクの受理層(プラスチックに対して接着力の優れ、且つ吸水性を有するインクの層)を形成し、この形成された受理層上に、画像形成手段による画像用インクを噴出して画像データに基づく画像を形成する、インクジェット記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−50555号公報
【特許文献2】特開2000−141708号公報
【特許文献3】特開平10−58670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3に開示の方法や装置では、被印刷面(被記録面)を擦った際に、インクの構成材料で形成された層に傷が付いたり当該層が剥離したりすることにより、形成された画像の金属光沢性がなくなって、画質が悪化するという問題が生じる。なお、このような問題は、金属インクでないカラーインク(顔料インク、染料インク)では、通常発生しない。
【0007】
そこで、本発明の目的の一つは、金属光沢性及び耐擦性の点で優れたインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、所定量の定着樹脂を含む第1の水性銀インクを先に吐出し被記録媒体上に付着させて下地層を形成し、その後、定着樹脂を含まない第2の水性銀インクを吐出し、主として下地層上に付着させて画像を形成することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は下記のとおりである。
[1]
被記録媒体の被記録面に対して、銀粒子と定着樹脂とを含む第1のインク組成物を吐出して下地層を形成する下地層形成工程と、前記下地層に対して、銀粒子を含み、定着樹脂を含まない第2のインク組成物を吐出して上層を形成する上層形成工程と、を含み、前記定着樹脂が、前記第1のインク組成物の総質量に対し、1〜10質量%含まれる、インクジェット記録方法。
[2]
前記被記録媒体は、ブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である、[1]に記載のインクジェット記録方法。
[3]
前記第1のインク組成物及び前記第2のインク組成物は、浸透剤としてグリコールエーテル及び1,2−ヘキサンジオールのうち少なくともいずれかをさらに含む、[1]又は[2]に記載のインクジェット記録方法。
[4]
前記第1のインク組成物及び前記第2のインク組成物は、保湿剤として多価アルコールをさらに含む、[1]〜[3]のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
[5]
[1]〜[4]のいずれかに記載のインクジェット記録方法を用いることにより得られる、記録物。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】インクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0012】
本明細書において、平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定する。この粒度分布測定装置として、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、日機装(Nikkiso Co., Ltd.)社製の「マイクロトラックUPA」)を用いることができる。
【0013】
本明細書において、「被記録媒体上」とは、被記録媒体の表面上、及び、当該表面の上方に位置することを意味する。「下地層上」とは、下地層の表面上、及び、当該表面の上方に位置することを意味する。また、「上層」は、下地層の上に形成された層を意味するが、上層の一部が下地層でなく被記録媒体の表面上に形成される場合も含まれる。
【0014】
本明細書において、「金属光沢性」とは、記録物の被記録面において、金属光沢を呈する性質をいう。「耐擦性」とは、記録により形成された画像の表面に、擦れなどの物理的な力が作用する場合に、色材が画像表面から剥がれ落ちないようにする、物理的な力に対する画像表面における耐性をいう。「分散安定性」とは、固体粒子を液体中に分散させて安定な縣濁液を形成する性質をいう。「定着性」とは、被記録媒体に対してインク(インクの塗膜)が密着する性質をいう。「吐出安定性」とは、ノズルの目詰まりがなく常に安定したインク滴をノズルから吐出させる性質をいう。
【0015】
本明細書において、「duty」とは、単位面積当たりのインクの吐出量(打ち込み量)を意味し、下記式で算出される値である。
duty(%)=実印字ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
(式中、「実印字ドット数」は単位面積当たりの実印字ドット数であり、「縦解像度」及び「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。)
【0016】
[インクジェット記録方法]
本発明の一実施形態は、インクジェット記録方法に係る。図1は、本実施形態のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置であるプリンター1の概略構成を示す斜視図である。当該インクジェット記録方法は、図1に示すようなインクジェット記録装置を用いて、後述の吐出段階を実行することができる。
【0017】
〔装置構成〕
図1に示すように、プリンター1は、フレーム2に、プラテン3、紙送りモーター4、及びガイド部材5を備える。プラテン3は、その上に、紙送りモーター4の駆動により被記録媒体Pが給送されるものである。
【0018】
ガイド部材5は、キャリッジ6がガイド部材5の軸線方向に往復移動可能に支持されたものである。キャリッジ6は、フレーム2内に設けられたタイミングベルト7を介して、キャリッジモーター8に連結されたものである。
【0019】
キャリッジ6は、プリントヘッド9を備える。プリントヘッド9は、液体としてのインクを供給するための、着脱可能なインクカートリッジ10を備える。なお、図示していないが、プリントヘッド9は、第1のインク組成物用のヘッドと、第2のインク組成物のヘッドと、を備える。
【0020】
キャップ11は、乾燥によるノズル目詰まりを防ぐためのものである。また、クリーナー12は、ノズルが目詰まりを起こした場合に吸引を行うためのものである。したがって、クリーナー12はポンプなどの吸引手段が搭載された部材であり、吸引装置又はクリーニングボックスとも称される。
【0021】
〔記録方法〕
紙送りモーター4の駆動により、被記録媒体Pがプラテン3上に給送される。プラテン3の上方では、キャリッジモーター8の駆動により、キャリッジ6がガイド部材5に沿って往復移動する。
【0022】
(1.下地層形成工程)
インクカートリッジ10内の、銀粒子と定着樹脂と水とを含む第1のインク組成物は、プリントヘッド9に備えられた圧電素子(図示せず)の駆動により、インクカートリッジ10から第1のインク組成物用のプリントヘッド9へと供給される。そして、このプリントヘッド9のノズル形成面に形成された複数のノズルから、プラテン3上に給送された被記録媒体P(の被記録面)に向けて、上記第1のインク組成物が吐出される。これにより、被記録媒体P上に下地層(図示せず)が形成される。
【0023】
(2.上層形成工程)
続いて、インクカートリッジ10内の、銀粒子と水とを含み定着樹脂を含まない第2のインク組成物は、プリントヘッド9に備えられた圧電素子(図示せず)の駆動により、インクカートリッジ10から第2のインク組成物用のプリントヘッド9へと供給される。そして、このプリントヘッド9のノズル形成面に形成された複数のノズルから、プラテン3上に給送された被記録媒体P上の下地層(図示せず)に向けて、上記第2のインク組成物が吐出される。これにより、主として下地層上に上層(図示せず)が形成される。
【0024】
(3.吐出段階)
上記の下地層形成工程及び上層形成工程は、吐出段階を通じて、それぞれ被記録媒体及び下地層に向けて、第1のインク組成物及び第2のインク組成物を吐出する。そして、吐出された第1のインク組成物及び第2のインク組成物は、それぞれ下地層及び上層を形成する。
【0025】
このようにして、記録物を製造することができる。ここで、第1のインク組成物の吐出量を表すdutyは、20〜80%が好ましく、30〜60%がより好ましい。このdutyが上記範囲内であると、第1のインク組成物が被記録媒体の被記録面に対して良好な接着性が得られる。一方、第2のインク組成物の吐出量を表すdutyは、20〜80%が好ましく、30〜70%がより好ましい。このdutyが上記範囲内であると、第2の銀インク組成物中の銀粒子が平滑に配列されることで、良好な金属光沢が得られると共に、第1の銀インク組成物と密着することで良好な接着性が得られる。
【0026】
(4.加熱段階)
上記の下地層形成工程及び上層形成工程は、上記の吐出段階に加えて、吐出されたインク組成物が付着した被記録媒体を加熱する加熱段階を有してもよい。
【0027】
インク組成物は、分散媒として水を含むものであって吐出後速やかに乾燥する。そのため、上記の各工程は、吐出段階の後に、別途、乾燥段階を有しなくてもよい。その一方で、上記の下地層形成工程及び上層形成工程が加熱段階を有することにより、被記録媒体が保水性に優れたものである場合や、インク組成物が揮発度の低い液体成分を比較的高い含有率で含む場合であっても、得られる記録物中に、インク組成物を構成する液体成分が残存することを効果的に防止することができる。そして、これにより、記録物の耐久性及び信頼性を優れたものとすることができる。
【0028】
また、上記の下地層形成工程及び上層形成工程が加熱段階を有することにより、定着樹脂を銀粒子間に配置させた状態で、銀粒子の部分的な融着を促進することができる。そのため、定着樹脂の存在及び銀粒子の部分的融着によって、画像の耐擦性を優れたものとすることができる。
【0029】
[インク組成物]
上記第1のインク組成物は、銀粒子と所定量の定着樹脂と水とを含む。上記第2のインク組成物は、銀粒子と水とを含むが定着樹脂を含まない。なお、以下、単に「インク組成物」というときは、第1のインク組成物及び第2のインク組成物を意味する。また、以下の内容は、特に言及しない限り、第1のインク組成物と第2のインク組成物との間で、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0030】
〔銀粒子〕
本実施形態におけるインク組成物は、銀粒子を含む。インク組成物が銀粒子を含むことにより、金属光沢性に優れた画像を形成することができる。また、銀は、各種金属の中でも、白色度の高い金属であるため、他色のインクと重ね合わせることにより、金色や銅色等の様々な金属色を記録物に付与できる。
【0031】
銀粒子の平均粒子径は、1〜100nmが好ましく、3〜80nmがより好ましい。平均粒子径が上記範囲内である場合、形成される画像の金属光沢性及び耐擦性を良好なものとすることができる。また、インクジェット方式によるインク組成物の吐出安定性、具体的には着弾位置精度及び吐出量の安定性などを優れたものとすることができ、長期間に亘って画質に優れた画像を形成することができる。
【0032】
銀粒子の含有量は、第1及び第2それぞれのインク組成物の総質量(100質量%)に対し、1〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましい。当該含有量が上記範囲内である場合、インクジェット方式によるインク組成物の吐出安定性及び保存安定性を優れたものとすることができる。また、記録物における被記録媒体上での銀粒子の密度(単位面積当たりの含有量)が低い場合から高い場合まで、広い密度の範囲に亘り、良好な画質及び耐擦性を実現することができる。そのため、例えば、得られる記録物が銀粒子の密度の異なる複数の領域を有する場合であっても、記録物全体としての画質を優れたものとすることができる。
【0033】
銀粒子は、いかなる方法で調製されたものであってもよく、例えば、銀イオンを含む溶液を用意し、この銀イオンを還元することにより、好適に形成することができる。
【0034】
特に、第1のインク組成物が銀粒子を含むことにより、画像の金属光沢性及びインクの定着性を極めて優れたものとすることができる。その理由は、第1のインク組成物に銀粒子を含むことにより、この銀粒子が第2のインク組成物の銀粒子と合わさった時に、トータルとして銀粒子が存在する膜の厚みが増し、結果として、光輝性を発現する面積や体積が増えることによるというものである。
なお、本明細書における銀粒子は、優れた金属光沢性が得られるため純銀であることが好ましいが、所望の金属光沢性が得られる範囲であれば、酸化物などの不純物を含んでいてもよい。
【0035】
〔分散剤〕
本実施形態におけるインク組成物は、銀粒子の分散性を良好にするため、銀分散液を含むことが好ましい。つまり、銀粒子及び分散剤を混合して銀分散液を調製しておき、この銀分散液をインク組成物に含有させることが好ましい。
【0036】
上記の分散剤としては、銀粒子を分散可能なものであれば特に限定されることはない。このような分散剤の具体例として、高分子分散剤及び界面活性剤が挙げられる。なお、この銀分散液に含まれる界面活性剤がインク組成物の界面活性剤としても機能するであろうことは当業者にとって明らかである。
【0037】
高分子分散剤の好ましい例としては天然高分子が挙げられ、その具体例としては、にかわ、ゼラチン、カゼイン、及びアルブミン等のタンパク質類、アラビアゴム及びトラガントゴム等の天然ゴム類、サボニン等のグルコシド類、アルギン酸、並びにアルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、及びアルギン酸アンモニウム等のアルギン酸誘導体、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びエチルヒドロキシセルロース等のセルロース誘導体などが挙げられる。
【0038】
さらに、高分子分散剤の好ましい例として合成高分子が挙げられ、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリルコポリマー、アクリル酸カリウム−アクリルニトリルコポリマー、酢酸ビニル−アクリル酸エステルコポリマー、及びアクリル酸−アクリル酸エステルコポリマーなどのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸コポリマー、スチレン−メタクリル酸コポリマー、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステルコポリマー、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸コポリマー、及びスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステルコポリマーなどのスチレン−アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸コポリマー、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、ビニルナフタレン−アクリル酸コポリマー、ビニルナフタレン−マレイン酸コポリマー、並びに酢酸ビニル−エチレンコポリマー、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレンコポリマー、酢酸ビニル−マレイン酸エステルコポリマー、酢酸ビニル−クロトン酸コポリマー、及び酢酸ビニル−アクリル酸コポリマーなどの酢酸ビニル系コポリマー、並びにそれらの塩が挙げられる。
【0039】
なお、銀分散液の含有量は、固形分換算で、上記銀粒子の含有量の好ましい範囲内であればよい。
【0040】
〔定着樹脂〕
本実施形態における第1のインク組成物は定着樹脂(定着樹脂粒子)を含む。他方、第2のインク組成物は定着樹脂を含まない。第1のインク組成物が銀粒子とともに定着樹脂を含むことにより、主に画像の耐擦性を優れたものとすることができる。他方、第2のインク組成物が定着樹脂を含まないことにより、第2のインク組成物中の銀粒子の濃度を高く維持できるため、画像の金属光沢性を損ねないようにすることができる。
【0041】
定着樹脂の含有量は、第1のインク組成物の総質量(100質量%)に対し、1〜10質量%であり、2〜7質量%であることが好ましく、3〜5質量%であることがより好ましい。当該含有量が上記範囲内である場合、形成される画像の金属光沢性及び耐擦性を優れたものとすることができる。
【0042】
定着樹脂粒子の平均粒子径は、10nm〜1μmが好ましく、10nm〜500nmがより好ましい。平均粒子径が上記範囲内である場合、インク組成物を用いて形成される画像の光沢感を特に優れたものとすることができる。また、インクジェット方式インク組成物の吐出安定性(着弾位置精度、吐出量の安定性等)を特に優れたものとすることができ、長期間に亘って所望の画質の画像を形成することができる。
【0043】
定着樹脂としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、フェノキシ樹脂、エチルセルロース樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エチル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン系樹脂、石油樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレンアルキル(メタ)アクリレート樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、NBR・SBR・MBR等の各種合成ゴム、及びそれらの変性体からなる群より選択される1種以上が挙げられる。定着樹脂がこれらの成分であると、画像の金属光沢性及び耐擦性を優れたものとすることができる。また、インクジェット方式によるインク組成物の吐出安定性、具体的には着弾位置精度及び吐出量の安定性などを優れたものとすることができ、長期間に亘って画質に優れた画像を形成することができる。
【0044】
定着樹脂としては、エマルションを形成しうるものが好ましい。定着樹脂としてエマルションを形成することができるものを選択すると、乾燥による皮膜化により、より効果的に被記録媒体の被記録面に定着することができる。
【0045】
エマルションを形成しうる樹脂としては、以下に限定されないが、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリアクリル酸エチル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル共重合樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、NBR・SBR・MBR等の各種合成ゴム、及びそれらの変性体が挙げられる。
【0046】
これらの中でも水系ウレタン樹脂エマルションが好ましい。この市販品としては、例えば、スーパーフレックス 110、130、170、210、300、420、420NS、460、470、500、610、620、650、700、740、860、870、E−2000、E−2500、E−4000、E−4800、R−5000(以上、第一工業製薬社(Dai-ichi Kogyo Seiyaku Co., Ltd.)製商品名)、NeoRez R−9660、R−972、R−9637、R−967、R−940(以上、楠本化成(KUSUMOTO CHEMICALS)社製商品名)、アデカボンタイターHUX−380、401、290K、394、680(以上、ADEKA社製商品名)等が挙げられる。
【0047】
定着樹脂は、アニオン性、ノニオン性、又はカチオン性のいずれであってもよい。これらの中でも、プリントヘッドに適した材質という観点から、ノニオン性又はアニオン性が好ましい。
【0048】
定着樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
〔水〕
本実施形態におけるインク組成物は、水を含む。インク組成物中で、水は、主に銀粒子及び定着樹脂を分散させる分散媒として機能する。これらのインク組成物が水を含むことにより、銀粒子等の分散安定性等を優れたものとすることができ、また、インクジェット記録装置のノズル付近におけるインク組成物の乾燥(分散媒の蒸発)が不十分となることを防止しつつ、インク組成物が付着する被記録媒体上での乾燥を速やかに行うことができるため、所望の画像の高速印刷を、長期間に亘って好適に行うことができる。
【0050】
水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。
【0051】
水の含有量は、特に限定されないが、第1及び第2それぞれのインク組成物の総質量(100質量%)に対し、40〜90質量%が好ましく、50〜85質量%がより好ましい。
【0052】
〔界面活性剤〕
本実施形態におけるインク組成物は、界面活性剤を含んでもよい。この界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤又はポリシロキサン系界面活性剤を用いることが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤又はポリシロキサン系界面活性剤は、被記録媒体における被記録面への親和性(濡れ性)を良好にすることで、インク組成物の浸透性を良好にすることができる。
【0053】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィン E1010、STG、Y(以上、日信化学社(Nissin Chemical Industry Co.,Ltd.)製商品名)、サーフィノール 104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製商品名)が挙げられる。
【0054】
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン社製商品名)などが挙げられる。
【0055】
さらに、インク組成物は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤など、その他の界面活性剤を含有することもできる。
【0056】
界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、第1及び第2それぞれのインク組成物の総質量(100質量%)に対し、0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。
【0057】
界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
〔保湿剤〕
本実施形態におけるインク組成物は、保湿剤を含有することが好ましい。保湿剤として、以下に限定されないが、例えば多価アルコールが挙げられる。この多価アルコールを含むインク組成物をインクジェット記録装置に適用した場合、インク組成物の乾燥を制御し、プリントヘッド部分におけるインク組成物の目詰まりを防止することができる。
【0059】
多価アルコールとしては、以下に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、及びトリメチロールプロパンが挙げられる。これらの中でも、プロピレングリコールが好ましい。本実施形態において用いられる被記録媒体はインク非吸収性又は低吸収性であるため、浸透乾燥は不十分であり、蒸発乾燥によって乾燥されなければならない。そこで、比較的低沸点の溶剤であるプロピレングリコールは蒸発乾燥に適しているといえる。また、プロピレングリコールは保湿性にも極めて優れるため、プリントヘッド部におけるインク組成物の目詰まりを防止することができる。
【0060】
保湿剤の含有量は、特に限定されないが、第1及び第2それぞれのインク組成物の総質量(100質量%)に対し、1〜50質量%が好ましく、3〜40質量%がより好ましい。
【0061】
保湿剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
〔浸透剤〕
本実施形態におけるインク組成物は、浸透剤(平滑剤)を含有することが好ましい。浸透剤を含有することにより、被記録媒体の被記録面への濡れ性を高めてインク組成物の浸透性を良好なものとすることができる。
【0063】
浸透剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル、即ち多価アルコールの低級アルキルエーテル、並びに1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、及び2−ピロリドン等の水溶性溶剤が挙げられる。この中でも、1,2−ヘキサンジオールを用いると良好な品質の記録物を得ることができる。
【0064】
インク組成物が1,2−ヘキサンジオールを含むことにより、インク組成物中の銀粒子の分散安定性、並びにインクの保存安定性及び吐出安定性を優れたものとすることができる。また、記録物において、定着樹脂を銀粒子間に効率良く配置させることができるため、記録物の耐擦性を優れたものとすることができる。
【0065】
インク組成物が1,2−ヘキサンジオールを含む場合、1,2−ヘキサンジオールの含有量は、第1及び第2それぞれのインク組成物の総質量(100質量%)に対し、0.1〜10質量%が好ましく、0.3〜7質量%がより好ましい。含有量が上記範囲内であると、インク組成物中の銀粒子の分散安定性、並びにインクの保存安定性及び吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。また、記録物において、定着樹脂を銀粒子間に一層効率良く配置させることができるため、記録物の耐擦性を優れたものとすることができる。
【0066】
浸透剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
〔その他の添加剤〕
本実施形態におけるインク組成物は、上記以外の添加剤(その他の添加剤)を含むものであってもよい。このような添加剤としては、例えば、pH調整剤、グリコールエーテル等の浸透剤、有機バインダー、アルカノールアミン(例えばトリエタノールアミン)等の乾燥抑制剤、チオ尿素などが挙げられる。
【0068】
[被記録媒体]
本実施形態のインクジェット記録方法に用いられる被記録媒体は、インク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体であることが好ましい。
【0069】
上記の「インク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体」とは、インクの受容層(受理層)を備えていないか、あるいは、受容層としての機能を十分発揮できない程度の厚みしか有しない受容層を備えた被記録媒体をいう。より定量的にいうと、この「インク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体」とは、被記録面が、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である被記録媒体のことをいう。
【0070】
上記のブリストー法は、「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に記載されている。このブリストー法とは、要するに、ミリ秒単位の短時間における液体の被記録媒体表面への濡れ、及び、これに続く、液体の被記録媒体中への浸透挙動を測定する方法であり、ヘッドボックスから液体を回転ホイール上の試験片に動的に転移させ、吸収時間及び転移量から吸収係数Ka[単位:mL/m・(msec1/2)]が求められる。
【0071】
インク非吸収性の被記録媒体として、以下に限定されないが、例えば、インクジェット記録用に表面処理されていない、即ちインク受容層を有していないプラスチックフィルムや紙などの基材上に、プラスチックがコーティングされているもの及びプラスチックフィルムが接着されているものが挙げられる。上記のプラスチックとして、以下に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、及びポリプロピレンが挙げられる。
【0072】
インク低吸収性の被記録媒体として、以下に限定されないが、例えば、塗工紙、並びに微塗工紙、アート紙、コート紙、マット紙、及びキャスト紙などの印刷用紙(記録用紙)が挙げられる。
【0073】
上記の塗工紙は、表面に塗料を塗布し、美感や平滑さを高めた紙のことをいう。前記塗料は、タルク、パイロフィライト、クレー(カオリン)、酸化チタン、炭酸マグネシウム、及び炭酸カルシウム等の顔料と、デンプン及びポリビニルアルコール等の接着剤と、を混合することにより調製することができる。上記塗料は、紙の製造工程中でコーターを用いて塗布する。コーターには、抄紙機と直結することで抄紙及び塗工を一工程とするオンマシン式と、抄紙を別工程とするオフマシン式とがある。
【0074】
上記の微塗工紙とは、塗料の塗工量が12g/m以下である記録用紙のことをいう。上記のアート紙とは、上質紙(上級記録用紙)に40g/m前後の塗料を塗工した記録用紙のことをいう。上記のコート紙とは、20g/m〜40g/m程度の塗料を塗工した記録用紙のことをいう。上記のキャスト紙とは、キャストドラムを用いて、アート紙やコート紙の表面に圧力をかけることで、金属光沢性や平滑性がより優れるように仕上げられた記録用紙のことをいう。
【0075】
このように、本実施形態は、金属光沢性及び耐擦性の点で優れたインクジェット記録方法を提供することができる。具体的にいえば、本実施形態のインクジェット記録方法は、インク受容層を有しないインク非吸収性または低吸収性の被記録媒体に対して、樹脂エマルション等の定着樹脂を含有する水性銀インクを吐出し付着させた後、樹脂を含まない水性銀インクを吐出し付着させることを特徴とする。これにより、当該インクジェット記録方法は、金属光沢感及び耐擦性の点で優れたものとなる。
【0076】
[記録物]
本発明の一実施形態は、記録物に係る。上記実施形態のインクジェット記録方法を用いて、上記被記録媒体上に上記第1及び第2のインク組成物を吐出することにより、当該記録物を製造できる。これにより、金属光沢性及び耐擦性に優れた画像が形成された記録物を提供することができる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明の実施形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0078】
[銀分散液の調製]
ポリビニルピロリドン(重量平均分子量10,000)を70℃の条件下で15時間加熱して、その後室温で冷却した。そのポリビニルピロリドン1,000gを、エチレングリコール500mLに添加してポリビニルピロリドン溶液を調製した。一方、別の容器にエチレングリコールを500mL入れ、硝酸銀128gを加えて電磁攪拌器で十分に攪拌をして硝酸銀溶液を調製した。上記ポリビニルピロリドン溶液を120℃の条件下でオーバーヘッドミキサーを用いて攪拌しつつ、ここに上記硝酸銀溶液を添加して約80分間加熱して反応を進行させ、その後室温で冷却した。遠心分離機を用いて2,200rpmの条件下で、得られた溶液を10分間遠心分離した。その後、分離された銀粒子を回収して、これに残存するポリビニルピロリドンを除去するためエタノール溶液500mLに添加した。そして、さらに遠心分離を行い、銀粒子を回収した。さらに、回収した銀粒子を真空乾燥機で35℃、1.3Paの条件下で乾燥させた。
上記で得た銀粒子を純水に3時間攪拌することにより再分散させて、固形分率20%の分散液を調製し、これを水性の銀分散液とした。
【0079】
[インク組成物aの調製]
上記のようにして得られた銀分散液と、定着樹脂としてスーパーフレックス210(平均粒子径D=50nm)(第一工業製薬社製商品名)と、界面活性剤としてオルフィンE1010(日信化学工業社(Nissin Chemical Industry CO.,Ltd.)製商品名)と、プロピレングリコールと、1,2−ヘキサンジオールと、2−ピロリドンと、イオン交換水と、を表1に従って混合することにより、インク組成物aを得た。
【0080】
[インク組成物b,c,d,e,f,g,h,i,及びjの調製]
インク組成物の調製に用いる添加剤(成分)の種類、及び使用量を調整することにより、表1に示すような構成となるようにした点以外は、インク組成物aの場合と同様にしてインク組成物b,c,d,e,f,g,h,i,及びjを調製した。なお、インク組成物f及びiの調製において用いた定着樹脂は、スーパーフレックス740(平均粒子径D=200nm)(第一工業製薬社製商品名)である。なお、表1中、数値の単位は質量%であり、空欄部は無添加を意味する。
【0081】
【表1】

【0082】
[実施例1]
被記録媒体としてインクジェット用専用紙(写真用紙)(PGPP〔商品名〕、セイコーエプソン社(Seiko Epson Corporation)製)、並びにインク組成物b及びgを用いて、以下のようにして、記録物を製造した。
【0083】
図1に示すインクジェット記録装置を用いて、被記録媒体のうちインク受容層が設けられた面側に向けて、duty40%の所定パターンで第1のインク組成物bを吐出して上層を形成することで、下地層を形成した。次に、下地層に向けて、duty40%の所定パターンで第2のインク組成物gを吐出して上層を形成することで、上層を形成した。これにより、記録物を製造した。
【0084】
[実施例2〜7、比較例1〜7]
第1のインク組成物及び第2のインク組成物として、下記の表2及び表3に記載されたものを使用した点以外は、実施例1と同様にして記録物を製造した。
【0085】
[評価項目]
〔1.光沢度〕
各実施例及び各比較例で得られた記録物の被記録面について、光沢度計(MINOLTA MULTI GLOSS 268 K−108382〔商品名〕、コニカミノルタ社(Konica Minolta Holdings, Inc.)製)を用い、煽り角度60°で光沢度を測定した。評価基準は以下のとおりである。
A:光沢度が400以上。
B:光沢度が370以上400未満。
C:光沢度が340以上370未満。
D:光沢度が300以上340未満。
E:光沢度が300未満。
【0086】
〔2.耐擦性〕
各実施例及び各比較例で得られた記録物について、記録物の製造終了時から48時間経過した時点で、サザランド型ラブテスター(SUTHERLAND TYPE RUB TESTER、安田精機製作所社(YASUDA SEIKI SEISAKUSHO LTD.)製)を用い、JIS K5701に準じて耐擦性試験を行った。そして、上記「1.光沢度」で述べたのと同様の方法により、耐擦性試験後の記録物についても光沢度(煽り角度60°)を測定し、耐擦性試験前後における光沢度の低下率を求めた。評価基準は以下のとおりである。
なお、JIS K5701(平版インク)は、S形摩擦試験機(サザランド型インクラブテスター)を用いて、平版インクの耐摩擦性、色移り性、及び紙のケバ立ちを評価する試験である。試験方法は、摺動子に摩擦用紙を取り付けて、試験片上を円弧状に水平往復運動させ、摩擦面を肉眼で観察するというものである。
A:光沢度の低下率が10%未満。
B:光沢度の低下率が10%以上15%未満。
C:光沢度の低下率が15%以上20%未満。
D:光沢度の低下率が20%以上25%未満。
E:光沢度の低下率が25%以上30%未満。
F:光沢度の低下率が30%以上35%未満。
G:光沢度の低下率が35%以上50%未満。
【0087】
これらの評価結果を下記表2及び表3に示す。なお、表2及び表3中、「第1インク」は第1のインク組成物を意味し、「第2インク」は第2のインク組成物を意味する。
【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

【0090】
実施例1〜3及び比較例1〜2より、下地層(1層目)を形成する第1の銀インク組成物において、定着樹脂の含有量は、第1のインク組成物の総質量(100質量%)に対して1質量%以上10質量%以下の範囲が好適であることが分かった。他方、比較例1〜2より、上記含有量が1質量%未満である場合には耐擦性に劣り、上記含有量が10質量%を超える場合には金属光沢性に劣ることも分かった。
【0091】
また、実施例5〜7より、上層(2層目)を形成する第2の銀インク組成物は顔料濃度が高いほど、金属光沢性が良好となる一方で、耐擦性は若干劣ることが分かった。
【0092】
また、比較例3〜4より、上層(2層目)を形成する第2の銀インク組成物に定着樹脂を含有させると、金属光沢性が劣ることが分かった。
【0093】
また、比較例7より、下地層(1層目)を形成する第1のインク組成物を、無色透明のクリアインクにした場合、金属光沢性及び耐擦性が共に若干劣ることが分かった。そして、下地層(1層目)を形成する第1のインク組成物が銀粒子を含有することにより、金属光沢性及び耐擦性を共に良好とすることができることも分かった。
【符号の説明】
【0094】
1…プリンター、2…フレーム、3…プラテン、4…紙送りモーター、5…ガイド部材、6…キャリッジ、7…タイミングベルト、8…キャリッジモーター、9…プリントヘッド、10…インクカートリッジ、11…キャップ、12…クリーナー、P…被記録媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体の被記録面に対して、銀粒子と定着樹脂とを含む第1のインク組成物を吐出して下地層を形成する下地層形成工程と、
前記下地層に対して、銀粒子を含み、定着樹脂を含まない第2のインク組成物を吐出して上層を形成する上層形成工程と、
を含み、
前記定着樹脂が、前記第1のインク組成物の総質量に対し、1〜10質量%含まれる、インクジェット記録方法。
【請求項2】
前記被記録媒体は、ブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
前記第1のインク組成物及び前記第2のインク組成物は、浸透剤としてグリコールエーテル及び1,2−ヘキサンジオールのうち少なくともいずれかをさらに含む、請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
前記第1のインク組成物及び前記第2のインク組成物は、保湿剤として多価アルコールをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法を用いることにより得られる、記録物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−101491(P2012−101491A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253165(P2010−253165)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】