説明

インクジェット記録方法

【課題】インクジェットにより、厚さ5μm以上70μm未満の非吸水性記録媒体に対して、記録媒体の変形や、穴が開くなどの故障がなく、均質な厚みを維持した高品質なプリントを得ることができるインクジェット記録方法を提供することであり、かつ、画像耐久性の高いインクジェット記録方法を提供することである。
【解決手段】厚さ5μm以上70μm未満の非吸水性記録媒体に水性インクにより記録するインクジェット記録方法であり、該水性インクがグリコールエーテルあるいは、アルカンジオールを総量として5ないし30質量%含有し、表面張力が20mN/m以上30mN/m未満であり、かつ2質量%以上20質量%未満の定着性樹脂を含有することを特徴とするインクジェット記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、比較的小型、安価な装置で多品種印刷に対応できるが、フィルムなどの非吸水性記録媒体への印刷は特殊なインクに限られ、水性インクでのプリントは難しかった。
【0003】
特許文献1には、未処理のビニルシートまたはビニルで被覆された下地に、少なくとも1つの加熱装置を有するピエゾ印刷システムで印刷する印刷方法が記載されている。印刷インクは液状媒体、水不溶性着色剤、ポリマーバインダー、乾燥抑制剤並びに他の添加物より成り、かつ該液状媒体が水と水混和性乾燥抑制剤という組成からなり、液状媒体が少なくとも80質量%の水を含有し、乾燥抑制剤含有物が少なくともブチルジグリコールおよび1−メトキシプロパノール−2が組み合わせ使用され、かつインクpH値が8.5より大きいインクを用いている。
【0004】
非吸水性記録媒体にインクジェットでプリントしたものは、そのまま壁にはり広告などの用途に使用されることがあるがそれ以外の用途へ要望も非常に多い。
【0005】
例えば、ガラスなどに装飾目的でプリント物を貼る場合、記録媒体の厚みが厚いと、プリントを貼ったところがでっぱり、目立ちすぎて好ましくない。また、記録媒体が透明な場合、インクの乗ってない部分の透明性が、貼り付けたガラスと差が大きいと好ましくない。
【0006】
また、非平面状の物体にプリント物を貼る場合には物体の凹凸に追随してプリントを貼るのが非常に困難である。
【0007】
また、複数枚のプリントを重ねて貼る場合も、段差が非常に目立ち、美観を損ねて好ましくない。
【0008】
更に、耐擦性など画像堅牢性を向上させるために記録面を内側にして他の基材に貼り付けることがあるが、このときも記録媒体の厚みが厚いと、記録媒体の反射率が、貼り付けた基材の反射率と合わないため、光沢差が生じ好ましくない。
【0009】
また、プリント物を2つの基材、例えばガラスでサンドイッチする場合、基材の厚み分だけガラス間に隙間ができ見栄えが極端にわるくなったり、隙間から水分や、ごみが入りやすいなどの問題がある。
【0010】
以上のような使用方法において、特に記録媒体の厚みが大きく影響する場合が多々あり、本発明者らが検討を重ねたところ、記録媒体の厚さが70μmを超えると非常に影響が大きくなり、好ましくないことが判明した。すなわち、70μmを下回る、非常に薄い記録媒体を用いることで初めて上記記載の用途に対しても影響なく好ましく使用できることが判明した。
【0011】
しかしながら、70μm未満の非常に薄い非吸水性記録媒体をインクジェット記録で用いることは知られていない。前記の特許文献1にもそのような記載は一切かかれていない。
【0012】
近年サイン用途などで使用される溶剤インクは塩ビシートなどの特定の非吸水性記録媒体に対して印字可能であるが、インク中の溶剤が塩ビなどの樹脂を溶解もしくは、軟化させてしまうので、膜厚が薄いとインクにより記録媒体に穴が開いたり、変形するなどして高画質が得られない。通常は150μm程度の塩ビシートが用いられており、70μm未満の非常に薄い非吸水性記録媒体の使用例は見られない。
【0013】
また、重合性モノマーを主成分とし、光重合開始剤とともに用いる、光重合性インクも非吸収性記録媒体に記録可能であるが、インク主成分であるモノマーが全て硬化するため、インク層の厚みが、10〜30μm程度の厚さになり、70μm未満の非常に薄い非吸水性の記録媒体へ使用すると、凹凸感が強く好ましくない。
【0014】
このように、インクジェット記録方法で70μm未満の非吸水性記録媒体に対して、均質な厚みを維持した高品質なプリントを、記録媒体を溶解したり、膨潤するなどして、欠陥が生じたり、縮んでしまうなどの弊害なくプリントする方法は知られていない。
【特許文献1】特開2005−113147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
インクジェットにより、厚さ5μm以上70μm未満の非吸水性記録媒体に対して、記録媒体の変形や、穴が開くなどの故障がなく、均質な厚みを維持した高品質なプリントを得ることができるインクジェット記録方法を提供することであり、かつ、画像耐久性の高いインクジェット記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の課題は下記により達成することができる。
【0017】
1.厚さ5μm以上70μm未満の非吸水性記録媒体に水性インクにより記録するインクジェット記録方法であり、該水性インクがグリコールエーテルあるいは、アルカンジオールを総量として5ないし30質量%含有し、表面張力が20mN/m以上30mN/m未満であり、かつ2質量%以上20質量%未満の定着性樹脂を含有することを特徴とするインクジェット記録方法。
【0018】
2.水性インクが多価アルコールを3乃至15質量%含有することを特徴とする1に記載のインクジェット記録方法。
【0019】
3.定着性樹脂として、インク溶解性樹脂を2質量%以上10質量%未満、かつインク分散性樹脂を1質量%以上10質量%未満含有することを特徴とする1または2に記載のインクジェット記録方法。
【0020】
4.非吸水性記録媒体を加熱して、記録することを特徴とする1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0021】
5.非吸水性記録媒体が他の基材上に貼り付けられてあることを特徴とする1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0022】
厚さ5μm以上70μm未満の非吸水性記録媒体に対して、記録媒体の変形、故障なく、均質な厚みを有する高品質なプリントを得ることができ、かつ、非吸水性記録媒体上に画像耐久性の高いインクジェット記録を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0024】
先ず、本発明の構成について詳細に説明する。
【0025】
本発明者は、従来、溶剤インクを用いて作成したサイン・広告用途のように、プリント物をそのまま壁にはり使用する用途以外の、装飾目的で透明ガラスなどにプリント物を貼る場合や、また、非平面状の物体にプリント物を貼る場合、複数枚のプリントを重ねて貼る場合、記録面を内側にして他の基材に貼り付ける場合のような広告用ととは異なった使用方法において、特に、記録媒体の厚みが、基材との一体感や、光沢差などの基材との違和感、凸凹のない仕上がりの美しさなどに、大きく影響することが多々あることを見出した。また、更に、上記の様な場合、記録媒体の厚さが70μmを超えると記録媒体の厚みの影響が非常に大きくなり好ましくないことも見出した。
【0026】
また、このように70μ未満の非常に薄い記録媒体に記録するインクとして水性インクのなかでも、グリコールエーテルあるいは、アルカンジオールを総量として5乃至30質量%含有し、表面張力が20mN/m以上30mN/m未満であり、かつ2%以上20%未満の定着性樹脂を含有する水性インクを用いることが必要であることを見出し本発明に至った。
【0027】
以下本発明の構成について更に詳細に説明する。
【0028】
本発明の記録媒体は非吸水性であり厚さ5μm以上70μm未満のものを用いることができる。
【0029】
吸水性媒体では、強度面が不足し、膜がはがれたり、着色したりして耐久性上、好ましくなく、さらに、紙などの場合、水系インクによるコックリングなどが起こりしわが発生し好ましくない。
【0030】
非吸水性記録媒体は、厚さが、70μm以上であると、装飾目的で透明ガラスなどにプリント物を貼る場合や、非平面状の物体にプリント物を貼る場合、また、複数枚のプリントを重ねて貼る場合、そして記録面を内側にして他の基材に貼り付ける場合のような使用方法において、記録媒体の厚みが、基材との一体感や、光沢差などの基材との違和感、凸凹のない仕上がりの美しさなどに多大な影響を与えるので好ましくない。この観点から、より好ましくは、厚さが50μm以下である。また、5μm未満では、強度面で厳しい。即ち、搬送トラブルを頻発してしまい使えない。好ましくは10μm以上であり、より好ましくは20μm以上である。
【0031】
このような非吸水性記録媒体の材質としては、ポリエチレン(低密度品、高密度品)、EVA樹脂、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(軟質、半硬質で透明、白塩ビ、半乳塩ビ)、PET、ポリビニルアルコール(高ケン価タイプ)、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、アクリル樹脂及び合成紙などを選択することができる。特に、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、PET等が好ましい。
【0032】
次に、本発明の記録方法に用いるインクについて説明する。
【0033】
本発明の記録方法に用いるインクは、その表面張力が20mN/m以上30mN/m未満である。
【0034】
非吸収性記録媒体としては、塩ビ、ポリプロピレン、PET、合成紙などさまざまなものがある。いずれの記録媒体に対しても、インクが十分に濡れハジキを発生することなく、また高い光沢感を得るためには、該水性インクの表面張力が20mN/m以上30mN/m未満であることが好ましい。射出安定性も考慮すると、より好ましい範囲は、25mN/m以上29mN/m未満である。表面張力の調整は、グリコールエーテルあるいは、アルカンジオールを、総量として5乃至30質量%含有すること、及び、活性剤を添加することにより調整することが好ましい。特に活性剤としては、シリコーン系若しくはフッ素系を用いて調整することが好ましい。
【0035】
本発明の記録方法に用いるインクの構成としては、記録剤、2%以上20%未満の定着性樹脂及び必要に応じて、有機溶剤、活性剤等を含有する。
【0036】
(記録剤)
インクの記録剤としては、記録剤は、染料、分散性染料、顔料などの着色性記録剤のほか、金属微粒子分散物などの機能性記録剤であってもよい。
【0037】
本発明に用いる記録剤としては顔料が特に好ましい。
【0038】
本発明に用いる顔料は水系で安定に分散できるものであればよく、樹脂により分散した樹脂分散顔料、水不溶性樹脂で被覆されたカプセル顔料、顔料表面を修飾し分散樹脂を用いなくても分散可能な自己分散顔料等から選択することができる。インクの保存性が良好な水不溶性樹脂で被覆されたカプセル顔料を選択することが好ましい。
【0039】
樹脂分散顔料を用いる場合、樹脂としては水溶性のものを用いることができる、水溶性樹脂として好ましく用いられるのは、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体等のような水溶性樹脂である。
【0040】
顔料の分散方法としては、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等各種を用いることができる。
【0041】
本発明の顔料分散体の粗粒分を除去する目的で遠心分離装置を使用すること、フィルターを使用することも好ましく用いられる。
【0042】
また、水不溶性樹脂で被覆されたカプセル顔料を用いる場合、水不溶性樹脂とは、弱酸性ないし弱塩基性の範囲の水に対して不溶な樹脂であり、好ましくは、pH4ないし10の水溶液に対する溶解度が2%未満の樹脂である。
【0043】
このような水不溶性樹脂としては、アクリル系、スチレン−アクリル系、アクリロニトリル−アクリル系、酢酸ビニル系、酢酸ビニル−アクリル系、酢酸ビニル−塩化ビニル系、ポリウレタン系、シリコン−アクリル系、アクリルシリコン系、ポリエステル系、エポキシ系の各樹脂を挙げることができる。
【0044】
また、水不溶性樹脂としては、疎水性モノマーと親水性モノマーを共重合した樹脂を用いることができる。
【0045】
疎水性モノマーとしては、アクリル酸エステル(アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなど)、メタクリル酸エステル(メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジルなど)、スチレンなどが上げられる。
【0046】
親水性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミドなどが上げられ、アクリル酸のような酸性基を有するものは、重合後に塩基で中和したものを好ましく用いることができる。
【0047】
水不溶性樹脂の分子量としては、平均分子量で、3,000から500,000のものを用いることができる。好ましくは、7,000から200,000のものを用いることができる。
【0048】
水不溶性樹脂のTgは、−30℃から100℃程度のものを用いることができる。好ましくは、−10℃から80℃程度のものを用いることができる。
【0049】
重合方法としては、溶液重合、乳化重合を用いることができる。重合はあらかじめ顔料と別途合成しても良いし、顔料を分散した系ないにモノマーを供給して、重合してもよい。
【0050】
顔料を樹脂で被覆する方法としては公知の種々の方法を用いることができるが、好ましくは、展相乳化法や酸析法の他に、顔料を重合性界面活性剤を用いて分散し、そこへモノマーを供給し、重合しながら被覆する方法から選択することがよい。
【0051】
より好ましい方法としては、水不溶性樹脂をメチルエチルケトンなどの有機溶剤に溶解し、さらに塩基にて樹脂中の酸性基を部分的、もしくは完全に中和後、顔料およびイオン交換水を添加し、分散したのち、有機溶剤を除去、必要に応じて加水し調整する製造方法が好ましい。
【0052】
顔料と樹脂の質量比率は、顔料/樹脂比で100/40から100/150の範囲で選択することができる。特に画像耐久性と射出安定性やインク保存性が良好なのは100/60から100/110の範囲である。
【0053】
水不溶性樹脂で被服された顔料粒子の平均粒子径は、80乃至150nm程度がインク保存安定性、発色性の観点から好ましい。
【0054】
また、自己分散顔料としては、表面処理済みの市販品を用いることもでき、例えば、CABO−JET200、CABO−JET300(キャボット社製)、ボンジェットCW1(オリエント化学工業(株)社製)等を挙げることができる。
【0055】
顔料としては、本発明に使用できる顔料としては、従来公知の有機及び無機顔料が使用できる。例えばアゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。
【0056】
具体的な有機顔料を以下に例示する。
【0057】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0058】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0059】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0060】
次に定着性樹脂について説明する。
【0061】
(定着性樹脂)
水性インクには、2%以上20%未満の定着性樹脂を含有することが必要である。2%以上20%未満の定着性樹脂を含有することで、非常に薄い記録媒体上の画像の耐久性も向上し、さらに、樹脂を添加することでインク混じりの軽減された高画質なプリントを得ることができる。これは、定着樹脂の添加により、乾燥増粘を増大させ、隣接するインクが交じり合って、ビーディングやカラーブリードを発生し画質低下を起こさないためと考えている。
【0062】
2%未満では、画像耐久性も不十分であるし、高画質も得られず、20%以上では射出安定性が悪く実用に耐えない。
【0063】
このような定着性樹脂としては、インク溶解性樹脂でもインク分散性樹脂でも用いることができる。
【0064】
乾燥増粘特性とインク射出安定性、さらには画像定着性を一層満足ゆく特性にするためには、インク溶解性樹脂とインク分散性樹脂(インク中に分散している樹脂)を併用することが好ましい。特に、定着性樹脂として、インク溶解性樹脂を2%以上10%未満、かつインク分散性樹脂を1%以上10%未満含有することが好ましい。
【0065】
インク溶解性樹脂としては、少なくともインクベヒクルに対して10%程度の溶解性を有する樹脂が好ましい。インク溶解性樹脂としては、画像の耐久性向上のためのバインダー樹脂としての機能があるため、インク中では安定に溶解しているが、メディア上で、乾燥後は、耐水性が付与される樹脂が好ましい。
【0066】
このような樹脂としては、樹脂中に疎水性成分と親水性成分を所定のバランスで有するものを設計して用いる。この際、親水性成分としては、イオン性のもの、ノニオン性のものどちらを用いても良いが、より好ましくはイオン性のものであり、さらに好ましくはアニオン性のものである。特にアニオン性のものを揮発可能な塩基成分で中和することで水溶性を付与したものが好ましい。
【0067】
特に、インク溶解性樹脂の少なくとも1種は、酸性基としてカルボキシル基または、スルホン酸基を有しており、かつ酸価が80以上300未満である樹脂が本発明の効果発現上好ましい。
【0068】
このような樹脂としては、アクリル系、スチレン−アクリル系、アクリロニトリル−アクリル系、酢酸ビニル−アクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系の各樹脂を挙げることができる。
【0069】
本発明のインク溶解性樹脂として疎水性モノマーと親水性モノマーを共重合した樹脂を用いることができる。
【0070】
疎水性モノマーとしては、アクリル酸エステル(アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなど)、メタクリル酸エステル(メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジルなど)、スチレンなどが上げられる。
【0071】
親水性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミドなどが上げられ、アクリル酸のような酸性基を有するものは、重合後に塩基で中和したものを好ましく用いることができる。
【0072】
樹脂の分子量としては、平均分子量で、3,000から30,000のものを用いることができる。好ましくは、7,000から20,000のものを用いることができる。
【0073】
樹脂のTgは、−30℃から100℃程度のものを用いることができる。好ましくは、−10℃から80℃程度のものを用いることができる。
【0074】
樹脂の酸価としては、90ないし200程度のものを特に好ましく用いることができる。
【0075】
重合方法としては、溶液重合を用いることが好ましい。
【0076】
樹脂の酸性モノマー由来の酸性基は部分的あるいは完全に塩基成分で中和することが好ましい。この場合の中和塩基としては、アルカリ金属含有塩基、たとえば水酸化Na、K等や、アミン類(アンモニア、アルカノールアミン、アルキルアミン等を用いることができる)を用いることができる。
【0077】
特に、沸点が200℃未満のアミン類で中和することは、画像耐久性向上の観点から特に好ましい。
【0078】
インク分散性樹脂としては、水系で重合された分散物をそのまま、あるいは処理したものを用いてもよいし、溶媒系で重合されたポリマーを水系に分散したものを用いてもよく、アクリル系、ウレタン系、スチレン系、酢酸ビニル系、塩化ビニリデン系、塩化ビニル系、スチレン−ブタジエン系、スチレン−アクリロニトリル系、ポリブタジエン系、ポリエチレン系、ポリイソブチレン系、ポリエステル系等から選択することができる。
【0079】
インクの物性として、粘度に対するシェア依存性がないことが好ましく、この観点からポリマー微粒子の分散形態として活性剤などの乳化剤を極力低濃度にするか、乳化剤を用いないソープフリー型の水系分散型ポリマー微粒子が好ましい。
【0080】
好ましい水系分散型ポリマー微粒子は、カルボキシル基を有する不飽和ビニルを少なくとも単量体成分として重合した共重合体の自己分散型ディスパージョンであり、例えば、アクリル酸エチルなどのアクリル系モノマー単独もしくはアクリル系モノマーと共重合し得るエチレン性の不飽和モノマーからなる組成物にカルボン酸モノマーとしてアクリル酸やマレイン酸などを乳化重合もしくは懸濁重合して得られた分散液をアルカリで膨潤後、機械的せん断により粒子を分割して得られるアクリルヒドロゾルである。なお、アクリルヒドロゾルの中でも、樹脂の屈折率を高めて高い光沢感が得られる観点で、モノマー組成にスチレンを含有することが好ましい。
【0081】
前記アルカリはアンモニア、トリエチルアミン、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジ−n−ブチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、2−アミノー2−メチル−1−プロパノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−メチルアミノエタノールなどのアミンであることが好ましく、アンモニア、2−アミノー2−メチル−1−プロパノールおよび2−メチルアミノエタノールが水系分散型ポリマー微粒子の分散安定性において得に好ましい。
【0082】
前記のアクリルヒドロゾルとしては、ジョンソンポリマー株式会社のジョンクリル(商標)などが市販されている。
【0083】
水系分散型ポリマー微粒子のガラス転移温度(Tg)は35℃以上であることが、画像の耐擦過性を高める為に好ましく、より好ましくは49℃以上である。Tgの上限は特に制限されるものではないが、概ね100℃未満であれば柔軟なインク皮膜を得ることができ、プリント物の折り曲げ等による画像のひび割れ故障を防止できる。水系分散型ポリマー微粒子の酸価は44以上、より好ましくは60以上であることが、インク乾燥皮膜の良好な再分散・溶解性が得られる点で好ましい。酸価の上限は特に制限されるものではないが、より安定な分散物を得やすい観点で110未満が好ましい。
【0084】
水系分散型ポリマー微粒子の平均粒子径は、ヘッドのノズルにおける目詰まりがなく、良好な光沢感が得られる点で300nm以下であることが好ましく、より好ましくは130nm以下である。平均粒子径の下限は、微粒子の製造安定性の観点から30nm以上が好ましい。なお、水系分散型ポリマー微粒子の平均粒子径は、光散乱方式やレーザードップラー方式を用いた市販の測定装置を使用して簡便に計測することが可能である。また、水系分散型ポリマー微粒子の分散物を凍結乾燥し、透過型顕微鏡で観察される粒子から平均粒子径を換算することもできる。
【0085】
インク中の有機溶剤としては、水溶性もしくはインク中に混和可能な溶剤を用いることができる。特に、グリコールエーテルあるいは、アルカンジオールを総量として5乃至30質量%含有することが好ましい。
【0086】
また、加えて、多価アルコールを3ないし15質量%含有するとさらに好ましい。
【0087】
グリコールエーテルあるいは、アルカンジオールを総量として5乃至30質量%含有することで、種々の非吸水性記録媒体に対して濡れ性が向上し好ましい。また、同時にインク乾燥時の増粘が起こりやすくインク混じりが軽減された高画質プリントを得ることができる。また、溶剤によっては、非吸水性記録媒体を変形させるものもあるが、グリコールエーテルあるいは、アルカンジオールを総量として5乃至30質量%含有したインクでは、そのようなことがほとんど起こらずに好ましい。
【0088】
特に、本発明の厚さ5μm以上70μm未満の非吸水性高分子記録媒体に対して、十分に高い発色濃度を得るには、インク最大付与量として、10ml〜20ml/m2程度が必要であり、このインクにより厚さ5μm以上70μm未満の非吸水性高分子記録媒体に故障を与えないためには、グリコールエーテルあるいは、アルカンジオールを総量として5乃至30質量%含有することが必要である。
【0089】
グリコールエーテルとしては、具体的には、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0090】
また、アルカンジオールとしては、1、2−アルカンジオール、例えば、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオールなどが挙げられる。
【0091】
また、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等が挙げられる。
【0092】
多価アルコールを3乃至15質量%含有させると、画質や乾燥性に大きな影響を与えることなく、射出安定性が向上し好ましい。
【0093】
その他に用いることのできる溶剤としては、水性液媒体が好ましく用いられ、前記水性液媒体としては、水及び水溶性有機溶剤等の混合溶媒が好ましく用いられる。好ましく用いられる水溶性有機溶剤の例としては、具体的には、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)等が挙げられる。
【0094】
(界面活性剤)
水性インクは、シリコーン系もしくはフッ素系の界面活性剤を好ましく用いることができる。特に、グリコールエーテル或いはアルカンジオールと併用すると、インク混じりの軽減された高画質画像が得られ好ましい。
【0095】
シリコーン系の界面活性剤としては、好ましくはポリエーテル変性ポリシロキサン化合物がであり、例えば、信越化学工業製のKF−351A、KF−642やビッグケミー製のBYK347、BYK348などが挙げられる。
【0096】
フッ素系の界面活性剤は、通常の界面活性剤の疎水性基の炭素に結合した水素の代わりに、その一部または全部をフッ素で置換したものを意味する。この内、分子内にパーフルオロアルキル基を有するものが好ましい。
【0097】
フッ素系の界面活性剤の内、ある種のものは大日本インキ化学工業社からメガファック(Megafac)Fなる商品名で、旭硝子社からサーフロン(Surflon)なる商品名で、ミネソタ・マイニング・アンド・マニファクチュアリング・カンパニー社からフルオラッド(Fluorad)FCなる商品名で、インペリアル・ケミカル・インダストリー社からモンフロール(Monflor)なる商品名で、イー・アイ・デュポン・ネメラス・アンド・カンパニー社からゾニルス(Zonyls)なる商品名で、またファルベベルケ・ヘキスト社からリコベット(Licowet)VPFなる商品名で、それぞれ市販されている。
【0098】
また、非イオン性フッ素系界面活性剤としては、例えば、大日本インキ社製のメガファックス144D、旭硝子社製のサーフロンS−141、同145等を挙げることができ、また、両性フッ素系界面活性剤としては、例えば、旭硝子社製のサーフロンS−131、同132等を挙げることができる。
【0099】
本発明のインクジェット記録方法では記録媒体を加熱して、記録することは特に好ましい。
【0100】
記録媒体を加熱することで、インクの乾燥増粘速度が著しく向上し、高画質が得られるようになる。また、画像の耐久性も向上する。
【0101】
加熱温度としては、記録媒体の記録表面温度を40℃ないし80℃になるように加熱することが好ましい。40℃未満の加熱では、画質が不十分であること、十分な画像耐久性が得られないことに加え、乾燥に時間がかかり好ましくない。80℃を超えると、インク射出に大きな影響が出て安定にプリントすることができない。
【0102】
より好ましくは、記録媒体の記録表面温度を40℃ないし60℃とすることが好ましい。
【0103】
加熱方法としては、記録媒体搬送系もしくはプラテン部材に発熱ヒーターを組み込み、記録媒体下方より接触式で加熱する方法や、ランプ等により下方、もしくは上方から非接触で加熱する方法を選択することができる。
【0104】
また、本発明の記録方法では、シート状もしくはロール状の記録媒体に印字しても良いし、記録媒体をあらかじめ他の基材に貼り付けたあとで記録しても良い。
【実施例】
【0105】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれにより限定されるものではない。
【0106】
実施例
(インク溶解性定着樹脂の合成)
〈インク溶解性定着樹脂R1の合成〉
滴下ロート、窒素導入官、還流冷却官、温度計及び攪拌装置を備えたフラスコにメチルエチルケトン50gを加え、窒素バブリングしながら、75℃に加温した。そこへ、表3記載量のモノマーとメチルエチルケトン50g、開始剤(AIBN)500mgの混合物を滴下ロートより3時間かけ滴下した。滴下後、更に6時間、加熱還流した。放冷後、減圧下加熱し、メチルエチルケトンを留去した。イオン交換水450mlに対して、モノマーとして添加したアクリル酸の1.05倍モル相当のジメチルアミノエタノールを溶解し、そこへ上記重合物残渣を溶解した。イオン交換水で調整し、固形分濃度20%の樹脂水溶液を得た。
【0107】
インク中でインク分散性定着樹脂D1としては、組成:スチレン/α−メチルスチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/アクリル酸、Tg:75℃、酸価:82、平均粒子径:130nm、を用いた。
【0108】
(顔料分散体の調製)
〈分散樹脂の合成〉
滴下ロート、窒素導入官、還流冷却官、温度計及び攪拌装置を備えたフラスコにメチルエチルケトン50gを加え、窒素バブリングしながら、75℃に加温した。そこへ、表1記載量のモノマーとメチルエチルケトン50g、開始剤(AIBN)500mgの混合物を滴下ロートより3時間かけ滴下した。滴下後、更に6時間、加熱還流した。放冷後、揮発した分のメチルエチルケトンを加え、固形分濃度50質量%の樹脂溶液を得た。
【0109】
〈顔料分散体P1の調製〉
合成した分散樹脂のメチルエチルケトン50%質量溶液、100gに、中和剤として20%水酸化ナトリウム水溶液を所定量加えて塩生成基を100%中和し、そこへ攪拌しながらC.I.ピグメントブルー15:3、50gを少しずつ加えた後、ビーズミルで2時間混練した。得られた混練物にイオン交換水400gを加え攪拌後、減圧下、加温し、メチルエチルケトンを留去した。更にイオン交換水を加え、固形分濃度15質量%の顔料分散体P1を得た。
【0110】
(インク調製)
表1、2記載の如くインクを混合、調製後、5μmフィルターにてろ過した。表1、2において、顔料分散体、添加樹脂、溶剤、活性剤は各々表1、2の数字の質量%になるように添加し、総量が100質量%になるようにイオン交換水を添加して仕上げた(但し顔料濃度は固形分の濃度)。表1、2中、DEGBE、1,2−HDは各々ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール、PG、DEGはそれぞれプロピレングリコール、ジエチレングリコールを表す。界面活性剤のSiは信越化学工業製のKF−351Aを表す。
【0111】
比較例26の溶剤インクは、ECO−SOL MAX(ローランド ディージー製)のシアンインキを用いた。
比較例27のUVインクは、JFシリーズ(株式会社ミマキエンジニアリング製)のシアンインキを用いた。
【0112】
実施例1
厚さの異なる種々の記録媒体に記録し以下の評価を行った。
【0113】
ピエゾ型ヘッド(720dpi,液適量16pl)を4ヶを並列した4色プリント可能なプリント装置を用いて評価を行った。該装置は、メディアを下方より接触式ヒーターにて任意に加温できる。また、ヘッド格納ポジションにインク空打ちポジションとブレードワイプ式のメンテナンスユニットを備え、任意の頻度でヘッドクリーニングができる。
【0114】
評価1(単色画像評価):上記評価装置の1つのヘッドに作成したインクを各々導入し単色画像を作成して評価を行った。評価条件は以下のとおり。
【0115】
印字解像度:720dpi×720dpi
(dpi:2.54cm当たりのドット数)
ヘッド搬送速度:200mm/sec 双方向印字
メディア加熱温度:印字面表面温度 50℃
評価画像:ウエッジ画像、文字、白抜き文字
評価環境:20℃、相対湿度55%
また、比較のUVインキを用いたプリント(比較画像No.27)は、印字直後に、UV照射装置(メタルハライドランプ 出力120W)にてUV露光を行った。
【0116】
(評価項目1):プリントによる欠陥発生の有無
評価1 記録媒体に穴が開く故障や、大きな変形が見られ使用できない
評価2 穴が開く故障はないが、変形が見られ使用できない
評価3 わずかに変形見られるが、使用可能なレベル
評価4 ほとんど変形も見られない。
【0117】
なお、評価項目1で評価1となった画像資料については、後続の評価は行っていない。
【0118】
(評価項目2):画質評価
評価1 ハジキが見られ使用できない
評価2 ハジキはないが、ビーディング発生があり使用できない
評価3 画像の一部にビーディングがわずかに見られるが使用可能なレベル
評価4 ビーディングはほとんど見られない。
【0119】
(評価項目3):印字した画像を厚さ3mmの透明ガラスに、プリント面を表面に出るように貼り付けたときの仕上がりを評価
評価1 光沢差、厚み差がかなり気になり、ガラスにフィルムを張ったのがすぐわかる。
【0120】
評価2 光沢差、厚みの均一性などがきになる
評価3 光沢差、厚みの均一性など気にならず、画像とガラス基材で一体感があり、あたかも直接印字したように美しい仕上がり。
【0121】
(評価項目4):印字した画像を凹凸を掘り込んである化粧ビンにプリント面を表面に出るように貼り付けたときの仕上がりを評価
評価1 凹部分に未接着部分があり、空気が入り、その部分の画像が目立ち好ましくなく、さらに光沢差、厚み差がかなり気になる
評価2 凹部分に未接着部分があり、空気が入り、その部分の画像が目立ち好ましくない
評価3 凹凸に追随してフィルムを貼ることができるが、光沢差、厚みの均一性など気になる
評価4 凹凸に追随してフィルムを貼ることができ、光沢差、厚みの均一性など気にならず、画像とで化粧ビンに一体感があり、あたかも直接印字したように美しい仕上がりとなる。
【0122】
(評価項目5):別々に印字した3枚の画像を厚さ10mmの半透明ガラスに貼り付けたときの仕上がりを評価
評価1 画像の厚みが気になり、斜めから見るとぎらつく
評価2 画像の厚みはやや気になる、斜めから見るとややぎらつく
評価3 画像の厚みをほとんど感じることなく美しい仕上がり
(評価項目6):作成した画像を厚さ3mmの透明ガラスに貼り付けた。この際、スクレーパー(ゴム製)で10回こすって画像のとれを評価した。
【0123】
評価1 画像がところどころ取れてしまう
評価2 わずかに取れる
評価3 ゴムに着色あるが、画像の見た目はほぼ変わらない
評価4 変化なし。
【0124】
実施例2
下記条件でインク射出性の評価も行った。
【0125】
画像(A4サイズ)を連続30枚作成後、40分間隔を置いて再度画像作成を行い画像を評価した。
【0126】
評価1:画像欠陥(インク射出不良)が多数見られる
評価2:画像欠陥が見られる
評価3:画像欠陥はほとんど無いが、小文字描写が劣化している。拡大観察すると、ドットにサテライトが見られた。
【0127】
評価4:画像欠陥は無いが、画像の書き出し部(数mm)にごくわずかにかすれが見られる
評価5:画像の書き出し部も含め画像欠陥は見られない。
【0128】
【表1】

【0129】
【表2】

【0130】
【表3】

【0131】
実施例3
白色タイルに厚さ20μmの透明PETを貼り付け、その上に、インク1を用いて印字を行った。印字条件は実施例1と同じで、タイルを50℃に加熱して行った。
【0132】
画像部でPETの変形等見られず、光沢差、厚みの均一性など気にならず、あたかも直接印字したように美しい仕上がりであった。
【0133】
実施例4
厚さ10mmの透明ガラスに厚さ10μmのPETを貼り付け、インク1を用いて印字し、その印字面に、同じく厚さ10mmの透明ガラスを張り合わせた。ガラスを通してみるとPETの変形はほとんど見られず、均質で美しい仕上がりとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ5μm以上70μm未満の非吸水性記録媒体に水性インクにより記録するインクジェット記録方法であり、該水性インクがグリコールエーテルあるいは、アルカンジオールを総量として5ないし30質量%含有し、表面張力が20mN/m以上30mN/m未満であり、かつ2質量%以上20質量%未満の定着性樹脂を含有することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項2】
水性インクが多価アルコールを3乃至15質量%含有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
定着性樹脂として、インク溶解性樹脂を2質量%以上10質量%未満、かつインク分散性樹脂を1質量%以上10質量%未満含有することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
非吸水性記録媒体を加熱して、記録することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
非吸水性記録媒体が他の基材上に貼り付けられてあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2008−260139(P2008−260139A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102517(P2007−102517)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】