説明

インクジェット記録用インク、インクカートリッジ、インクジェット記録方法、インクジェット記録方法、及びインク記録物

【課題】インクの分散性を向上させ、吐出安定性、保存安定性に優れ、画像濃度が高く、ブリードが抑制され、かつ耐擦過性や耐マーカー性に優れる印刷物を得ることができるインクを提供する。
【解決手段】少なくとも水、水溶性有機溶媒、色材及び界面活性剤を含んでなるインクジェット記録用インクであって、前記色材を分散する前記界面活性剤は、下記式(1)で表されるアニオン系活性剤の群から選ばれるHLB値が12以上20以下の界面活性剤。


は炭素数2〜24のアルキル基、アルケニル基、アルキルフェニル基、またはアルキルアリル基を示し、Aは−COOM1、−SOM2、−PO(OM3)OM4のいずれかを示し、mは15〜40の整数。Aに含まれる前記M1、M2、M4はアルカリ金属、第四級アンモニウム、第四級ホスホニウム、アルカノールアミンのいずれかを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用インク、それを用いたインクカートリッジ、インクジェット記録方法、インクジェット記録方法、及びインク記録物に関し、インクの保存安定性、吐出安定性に優れ、かつ、画像濃度が高く色境界滲みがなく画像堅牢性に優れる高品質な画像が得られるインクジェット記録用インクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、他の記録方式に比べてプロセスが簡単であるためフルカラー化が容易であり、簡略な構成の装置であっても高解像度の画像が得られるという利点がある。このようなインクジェット記録方式に用いられるインクとしては、各種の水溶性染料を水、又は水と有機溶剤との混合液に溶解させた染料系インクが使用されているが、染料系インクは色調の鮮明性には優れているものの耐光性に劣るという欠点があり、耐水性、耐候性の点で染料のものより優れる顔料を用いたインクが用いられている。
【0003】
顔料を水性媒体中に分散させる方法としては、界面活性剤や水溶性樹脂のような分散剤を使用する方法や、顔料の表面にカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン基、リン酸基や4級アンモニウム及びその塩が結合するような表面処理をする方法やイオン性基の結合した樹脂で顔料を被覆する方法が知られている。
【0004】
特許文献1の特開2001−81372号公報には、ポリオキシエチレンエーテル硫酸エステル塩により顔料を分散し、長期保存安定性に優れ、色彩彩度が鮮やかであるとされるインクジェット記録用インクが開示されている。また、特許文献2の特開2003−327880号公報には、吐出安定性や保存安定性に優れるインクを得る目的で、無機顔料粒子を有機顔料又はカーボンブラックで被覆した色材粒子をアニオン系界面活性剤で分散させ、吐出安定に優れ染料インクに匹敵する色調に優れたインクが開示されている。
【0005】
しかし、分散安定性向上のため界面活性剤を大量に使用すると気泡の発生、画質の劣化等の問題が発生し、顔料を長期にわたり安定に分散させるのは困難である。近年では、インクジェットプリンタの用途も多様化しているため、長期保存安定性や色調だけでなく、印字物の堅牢性、画像濃度の向上が求められている。
【0006】
特許文献3の特開2009−149758号公報には、水不溶性ポリマー粒子を含む自己分散型顔料インクが開示されている。このインクは顔料が樹脂で被覆されているため堅牢性の高い画像を形成できるが、樹脂で被覆するため粒子径が大きくなり、吐出安定性に劣るという欠点を有するものであった。
【0007】
上記のように、界面活性剤で分散される顔料は、印字物の堅牢性が低く、また、分散状態を安定させるために界面活性剤を使用する必要があり、気泡の発生、画質の劣化等が生じる場合がある。一方、樹脂被覆型の顔料は分散剤を必要とせず、耐擦過性や耐マーカー性に優れるものであるが、画像濃度と吐出安定性との両立が困難であり、保存安定性と吐出安定性を確保しつつ、印字物の画像堅牢性の高いインクが得ることは困難である。
そこで、樹脂被覆型の顔料と界面活性剤分散型の顔料とを組み合わせることが考えられるが、分散方法が異なる顔料を混在させると、他の顔料の影響を受けて凝集しやすく分散性が低下するという問題を生じる。
【0008】
特許文献4の特開2009−149815号公報には、界面活性剤分散型の顔料と自己分散型の顔料との、分散方法が異なる顔料をナフタレンスルホン酸ナトリウム縮合物で分散することが開示されているが、画像堅牢性が十分ではなく、また、ブラックインクに限定されカラーインクに適用できるものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、界面活性剤分散型の顔料(A)及び樹脂被覆型の顔料(B)を含むインクの分散性を向上させ、吐出安定性、保存安定性に優れ、画像濃度が高く、ブリードが抑制され、かつ耐擦過性や耐マーカー性に優れる印刷物を得ることができるインクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は前記課題を解決するために鋭意検討した結果、オキシエチレン鎖を含有するHLB値が12以上20以下の特定のアニオン系活性剤であると界面活性剤分散型の顔料(A)及び樹脂被覆型の顔料(B)を含むインクを安定して分散でき、保存安定性と吐出安定性を確保しつつ、堅牢性が高いカラー画像も形成できるインクを提供できることを見出した。
また、前記アニオン系活性剤により、インク中にカウンターカチオンが存在し、紙面上でインクの水分が蒸発したときに、前記カチオン成分と樹脂被覆型顔料が相互作用を起こして速やかに凝集し、画像濃度が高く、素早い凝集により異なる色間の混ざり(ブリード)の発生も抑制され、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、上記課題は、本発明の下記(1)〜(7)によって解決される。
(1)少なくとも水、水溶性有機溶媒、色材及び界面活性剤を含んでなるインクジェット記録用インクであって、前記色材は、前記界面活性剤により分散された界面活性剤分散型の顔料(A)及び樹脂被覆型の顔料(B)を含むものであり、前記界面活性剤は、下記式(1)で表されるアニオン系活性剤の群から選ばれるHLB値が12以上20以下の界面活性剤であることを特徴とするインクジェット記録用インク。
【0011】
【化1】

ただし、前記式(1)中、Rは炭素数2〜24のアルキル基、アルケニル基、アルキルフェニル基、またはアルキルアリル基を示し、
Aは−COOM1、−SOM2、−PO(OM3)OM4のいずれかを示し、mは15〜40の整数である。
さらに、Aに含まれる前記M1、M2、M4はアルカリ金属、第四級アンモニウム、第四級ホスホニウム、アルカノールアミンのいずれかを示し、M3は水素原子又はR(CHCHO)を示す。
M3中に含まれるRは炭素数1〜4のアルキル基、アルケニル基、アルキルフェニル基、またはアルキルアリル基を示し、nは4〜20の整数である。
(2)前記界面活性剤分散型顔料(A)と前記樹脂被覆型顔料(B)のインク中の固形分質量比(A:B)が、90:10〜50:50であることを特徴とする前記(1)に記載のインクジェット記録用インク。
(3)前記界面活性剤の含有量が前記界面活性剤分散型顔料1質量部に対して0.1質量部から2質量部である前記(1)または(2)に記載のインクジェット記録用インク。
(4)前記(1)乃至(3)のいずれかに記載のインクジェット記録用インクを容器内に収容してなることを特徴とするインクカートリッジ。
(5)前記(1)乃至(3)のいずれかに記載のインクジェット記録用インクに熱エネルギーまたは力学的エネルギーを作用させ、該インクを飛翔させて画像を記録するインク飛翔手段を少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録装置。
(6)前記第(1)乃至(3)のいずれかに記載のインクジェット記録用インクに熱エネルギーまたは力学的エネルギーを作用させ、該インクを飛翔させて画像を記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
(7)記録媒体上に前記(1)乃至(3)のいずれかに記載のインクジェット記録用インクを用いて形成された画像を有してなることを特徴とするインク記録物。
【発明の効果】
【0012】
以下の詳細かつ具体的な説明から理解されるように、吐出安定性、保存安定性に優れ、画像濃度が高く、ブリードが抑制され、かつ堅牢性が高いカラー画像も形成できるインクを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用したインク組成物を収容するインクカートリッジを搭載するシリアル型インクジェット記録装置の構成例を示す概略正面図である。
【図2】記録装置に装填する前のインクカートリッジの外観斜視図である。
【図3】インクカートリッジの正断面図である。
【図4】記録ヘッドと一体化されたインクカートリッジの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のインクジェット記録用インクは、少なくとも水、水溶性有機溶媒、色材及び界面活性剤を含んでなるインクジェット記録用インクであって、前記色材は、前記界面活性剤により分散された界面活性剤分散型の顔料(A)及び樹脂被覆型の顔料(B)を含むものであり、前記界面活性剤は、下記式(1)で表されるアニオン系活性剤の群から選ばれるHLB値が12以上20以下の界面活性剤であることを特徴とするインクジェット記録用インクであり、更に必要に応じて、樹脂エマルジョン(分散安定化剤)、浸透剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤、酸化防止剤等、その他の成分を含有してなるものである。
【0015】
【化2】

ただし、前記式(1)中、Rは炭素数2〜24のアルキル基、アルケニル基、アルキルフェニル基、またはアルキルアリル基を示し、
Aは−COOM1、−SOM2、−PO(OM3)OM4のいずれかを示し、mは5〜40の整数である。
さらに、Aに含まれる前記M1、M2、M4はアルカリ金属、第四級アンモニウム、第四級ホスホニウム、アルカノールアミンのいずれかを示し、M3は水素原子又はR(CHCHO)を示す。
M3中に含まれるRは炭素数1〜4のアルキル基、アルケニル基、アルキルフェニル基、またはアルキルアリル基を示し、nは4〜20の整数である。
【0016】
<界面活性剤分散型顔料>
本発明の界面活性剤分散型顔料は、後述する界面活性剤により水性媒体中に分散できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、無機顔料、及び有機顔料のいずれであってもよく、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックなどが好ましい。なお、前記カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
【0018】
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、アゾメチン顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。
前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられ、前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料、ローダミンBレーキ顔料、などが挙げられ、前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
また、黒色用のものとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料、などが挙げられる。
前記カーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックで、一次粒径が、15nm〜40nm、BET法による比表面積が、50m/g〜300m/g、DBP吸油量が40ml/100g〜150ml/100g、揮発分が0.5%〜10%、pH値が2〜9を有するものが好ましい。
【0019】
本発明で言うカーボンブラックの揮発分とは、次の測定方法によって得られる値を意味する。
即ち、カーボンブラックの乾燥試料を、白金坩堝又はそれと同形、同容量の落とし蓋付き磁器坩堝に、蓋下2mmを超えない程度まで打振して詰め、重量(WD)を量る。
次いで、坩堝に蓋をして電気炉に入れ、950±25℃で正確に7分間加熱した後、取り出し、デジケーター中で室温になるまで放冷して加熱後の重量(WR)を量る。
これらの重量を次の式に代入して得られる値(V)が揮発分である。
【0020】
【数1】

〔V:揮発分(%)、WD:乾燥試料の重量(g)、WR:加熱後の試料の重量(g)〕
【0021】
前記カーボンブラックとしては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、No.2300、No.900、MCF−88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B(いずれも、三菱化学株式会社製);Raven700、同5750、同5250、同5000、同3500、同1255(いずれも、コロンビア社製);Regal400R、同330R、同660R、Mogul L、Monarch700、同800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、Monarch1400(いずれも、キャボット社製);カラーブラックFW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、同S150、同S160、同S170、プリンテックス35、同U、同V、同140U、同140V、スペシャルブラック6、同5、同4A、同4(いずれも、デグッサ社製)、などが挙げられる。
【0022】
前記カラー用のものとして、イエローインクに使用できる顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー2、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー75、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー180、などが挙げられる。
【0023】
マゼンタインクに使用できる顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばC.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド48(Ca)、C.I.ピグメントレッド48(Mn)、C.I.ピグメントレッド57(Ca)、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド202、ピグメントバイオレット19、などが挙げられる。
【0024】
シアンインクに使用できる顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばC.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー2、C.I.ピグメントブルー3、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:34、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー63、C.I.ピグメントブルー66;C.I.バットブルー4、C.I.バットブルー60、などが挙げられる。
【0025】
また、本発明で使用する各インクに含有される顔料は、本発明のために新たに製造されたものでも使用可能である。
なお、イエロー顔料としてピグメントイエロー74、マゼンタ顔料としてピグメントレッド122、ピグメントバイオレッド19、シアン顔料としてピグメントブルー15:3の組み合わせであると、色調、耐光性が優れ、バランスの取れたインクが得られるため、前記顔料を組合せることが好ましい。
【0026】
前記界面活性剤分散型顔料は、水性媒体中に分散され、顔料の分散体として使用される。前記分散体は、前記顔料、後述する界面活性剤、水、必要に応じて各種添加剤をビーズミル、例えば、ダイノーミルKDL型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)、アジテーターミルLMZ(アシザワ・ファインテック株式会社製)、SCミル(三井鉱山株式会社製)などの分散機で分散し、更に、ビーズミル分散の後、ビーズレスミル、例えば、高速せん断力タイプのCLEARSS5(エム・テクニック株式会社製)、キャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)、モジュールDR2000(株式会社シンマルエンタープライゼス製)、薄膜旋回タイプのT.K.フィルミックス(特殊機化工業株式会社製)、超高圧衝突タイプのアルテマイザー(株式会社スギノマシン製)、ナノマイザー(吉山機械興業株式会社製)、などにより分散することにより得られる。
前記ビーズミルで使用するビーズとしては、通常セラミックビーズが好適であり、一般的にはジルコニアボールが使用される。ビーズ径は0.05mm以下が好ましく、0.03mm以下がより好ましい、
また、前記分散の前工程において、ホモジナイザー等で粗大粒子を前処理することにより、より一層粒度分布をシャープにすることができ、画像濃度、吐出安定性の改善などに繋がる。
【0027】
<樹脂被覆型顔料>
本発明で用いられる樹脂被覆型顔料は、顔料がポリマーに含有されてなる粒子、すなわち、顔料を含有するポリマー粒子を指す。ポリマーは水不溶性ポリマーであることが好ましい。
【0028】
本発明の樹脂被覆型顔料に含まれる顔料は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記界面活性剤分散型顔料と同じ顔料を用いることができる。
【0029】
顔料を被覆する樹脂としては、ビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー等を使用できる。これらの中では、水系インクの分散安定性の観点から、ビニル単量体(ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物)の付加重合により得られるビニル系ポリマー(以下、単に「ビニルポリマー」ともいう)を用いることが好ましい。
【0030】
ビニルポリマーとしては、(a)塩生成基含有モノマー(以下「(a)成分」ともいう)と、(b)マクロマー(以下「(b)成分」ともいう)及び/又は(c)疎水性モノマー(以下「(c)成分」ともいう)とを含むモノマー混合物(以下「モノマー混合物」ともいう)を共重合させてなるポリマーが好ましい。
このポリマーは、(a)成分由来の構成単位と、(b)成分由来の構成単位及び/又は(c)成分由来の構成単位を有する。より好適なビニルポリマーは、(a)成分由来の構成単位、又は(a)成分由来の構成単位及び(c)成分由来の構成単位を主鎖に有し、(b)成分由来の構成単位を側鎖に有するグラフトポリマーである。
【0031】
<(a)塩生成基含有モノマー>
(a)塩生成基含有モノマーは、得られる水分散体の分散安定性を高める観点から用いられる。塩生成基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、アンモニウム基等が挙げられるが、特にカルボキシ基が好ましい。塩生成基含有モノマーとしては、カチオン性モノマー、アニオン性モノマー等が挙げられ、カチオン性のモノマーとして、不飽和3級アミン含有モノマー、不飽和アンモニウム塩含有モノマー等があり、具体的には、ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、2−エチル−5−ビニルピリジンの如きモノビニルピリジン類; N,N−ジメチルアミノスチレン、 N,N−ジメチルアミノメチルスチレンの如きジアルキルアミノ基を有するスチレン類; N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、 N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、 N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、 N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、 N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、 N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、 N,N−ジエチルアミノプロピルアクリレート、 N,N−ジエチルアミノプロピルメタクリレートの如きアクリル酸又はメタクリル酸のジアルキルアミノ基を有するエステル類;2−ジメチルアミノエチルビニルエーテルの如きジアルキルアミノ基を有するビニルエーテル類; N−(N',N'−ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、 N−(N',N'−ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、 N−(N',N'−ジエチルアミノエチル)アクリルアミド、 N−(N',N'−ジエチルアミノエチル)メタクリルアミド、 N−(N',N'−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、 N−(N',N'−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、 N−(N',N'−ジエチルアミノプロピル)アクリルアミド、 N−(N',N'−ジエチルアミノプロピル)メタクリルアミドの如きジアルキルアミノ基を有するアクリルアミド又はメタクリルアミド類、あるいはこれらをハロゲン化アルキル(アルキル基の炭素数1から18、ハロゲンとして塩素、臭素、ヨウ素)、ハロゲン化ベンジル、例えば塩化ベンジル又は臭化ベンジル、アルキル又はアリールスルホン酸、例えばメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸又はトルエンスルホン酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数1から18)、及び硫酸ジアルキル(アルキル基の炭素数1から4)の如き公知の4級化剤で4級化したものやビニルピロリドン等が挙げられ、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(N',N'−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びビニルピロリドンであることが好ましい。
【0032】
また、アニオン性のモノマーとしては、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等があり、具体的には、不飽和カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等、又はそれらの無水物及び塩があり、不飽和スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸エステル、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等及びそれらの塩、その他2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸の硫酸モノエステル及びそれらの塩があり、不飽和リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタアクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられ、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸であることがより好ましい。
【0033】
<(b)マクロマー>
(b)マクロマーは、特にポリマー粒子が着色剤を含有した場合に、ポリマー粒子の分散安定性を高める観点から用いられる。(b)マクロマーとしては、数平均分子量500〜100,000、好ましくは1,000〜10,000の重合可能な不飽和基を有するモノマーであるマクロマーが挙げられる。
なお、(b)マクロマーの数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲルクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
【0034】
(b)マクロマーの中では、着色剤含有ポリマー粒子の分散安定性等の観点から、片末端に重合性官能基を有する、スチレン系マクロマー及び芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマーが好ましい。
スチレン系マクロマーとしては、スチレン系モノマー単独重合体、又はスチレン系モノマーと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。スチレン系モノマーとしては、スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、クロロスチレン等が挙げられる。
芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマーとしては、芳香族基含有(メタ)アクリレートの単独重合体又はそれと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数7〜22、好ましくは炭素数7〜18、更に好ましくは炭素数7〜12のアリールアルキル基、又は、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6〜22、好ましくは炭素数6〜18、更に好ましくは炭素数6〜12のアリール基を有する(メタ)アクリレートであり、ヘテロ原子を含む置換基としては、ハロゲン原子、エステル基、エーテル基、ヒドロキシ基等が挙げられる。例えばベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート等が挙げられ、特にベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0035】
また、それらのマクロマーの片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、共重合される他のモノマーとしては、アクリロニトリル等が好ましい。
スチレン系マクロマー中におけるスチレン系モノマー、又は芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマー中における芳香族基含有(メタ)アクリレートの含有量は、顔料との親和性を高める観点から、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
【0036】
(b)マクロマーは、オルガノポリシロキサン等の他の構成単位からなる側鎖を有するものであってもよい。この側鎖は、例えば下記式(2)で表される片末端に重合性官能基を有するシリコーン系マクロマーを共重合することにより得ることができる。
【0037】
【化3】


(式(2)中、tは8〜40の数を示す。)。
(b)成分として商業的に入手しうるスチレン系マクロマーとしては、例えば、東亜合成株式会社の商品名、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)等が挙げられる。
【0038】
<(c)疎水性モノマー>
(c)疎水性モノマーは、印字濃度の向上の観点から用いられる。疎水性モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマー等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの基が存在しない場合には、ノルマルを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート又はそれらの両方を示す。
芳香族基含有モノマーとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6〜22、好ましくは炭素数6〜18、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族基を有するビニルモノマーが好ましく、例えば、前記のスチレン系モノマー(c−1成分)、前記の芳香族基含有(メタ)アクリレート(c−2成分)が挙げられる。ヘテロ原子を含む置換基としては、前記のものが挙げられ、(c−1)成分と(c−2)成分を併用することも好ましい。
【0039】
(c)成分の中では、印字濃度向上の観点から、スチレン系モノマー(c−1成分)を含むことが好ましく、スチレン系モノマー(c−1成分)としては特にスチレン及び2−メチルスチレンが好ましい。(c)成分中の(c−1)成分の含有量は、印字濃度向上の観点から、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜80重量%である。また、芳香族基含有(メタ)アクリレート(c−2)成分としては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましい。(c)成分中の(c−2)成分の含有量は、印字濃度及び光沢性の向上の観点から、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜80重量%である。
【0040】
<(d)水酸基含有モノマー>
モノマー混合物には、更に、(d)水酸基含有モノマー(以下「(d)成分」ともいう)が含有されていてもよい。(d)水酸基含有モノマーは、分散安定性を更に高めるために用いられる。
(d)成分としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ。)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール(n=1〜15)・プロピレングリコール(n=1〜15))(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレートが好ましい。
【0041】
モノマー混合物には、更に、(e)下記式(3)で表されるモノマー(以下「(e)成分」ともいう)が含有されていてもよい。
【0042】
【化4】


(式(3)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基、Rは、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基、Rは、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の1価の炭化水素基、qは、平均付加モル数を意味し、1〜60の数、好ましくは1〜30の数を示す。)
(e)成分は、吐出性を更に高めるために用いられる。
式(3)において、ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子及び硫黄原子が挙げられる。
の好適例としては、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基等が挙げられる。
O基の好適例としては、オキシエチレン基、オキシトリメチレン墓、オキシプロパン−1,2−ジイル基、オキシテトラメチレン基、オキシヘプタメチレン基、オキシヘキサメチレン基及びこれらの2種以上の組合せからなる炭素数2〜7のオキシアルカンジイル基(オキシアルキレン基)が挙げられる。
の好適例としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20の脂肪族アルキル基、芳香族環を有する炭素数7〜30のアルキル基及びヘテロ環を有する炭素数4〜30のアルキル基が挙げられる。
【0043】
(e)成分の具体例としては、メトキシポリエチレングリコール(1〜30:式(3)中のqの値を示す。以下、同じ)(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート2−エチルヘキシルエーテル、(イソ)プロポキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(1〜30、その中のエチレングリコール:1〜29)(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、オクトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート2−エチルヘキシルエーテルが好ましい。
商業的に入手しうる(d)、(e)成分の具体例としては、新中村化学工業株式会社の多官能性アクリレートモノマー(NKエステル)M−40G、同90G、同230G、日本油脂株式会社のブレンマーシリーズ、PE−90、同200、同350、PME−100、同200、同400、同1000、PP−500、同800、同1000、AP−150、同400、同550、同800、50PEP−300、50POEP−800B、43PAPE600B等が挙げられる。
上記(a)〜(e)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0044】
ビニルポリマーの製造時における、上記(a)〜(e)成分のモノマー混合物中における含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)又は該ポリマー中における(a)〜(e)成分に由来する構成単位の含有量は、次のとおりである。
(a)成分の含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは2〜40重量%、より好ましくは2〜30重量%、特に好ましくは3〜20重量%である。
(b)成分の含有量は、特に着色剤との相互作用を高め、分散安定性を向上する観点から、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%である。
(c)成分の含有量は、印字濃度向上の観点から、好ましくは5〜98重量%、より好ましくは10〜60重量%である。
(d)成分の含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは7〜20重量%である。
(e)成分の含有量は、吐出性向上の観点から、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%である。
モノマー混合物中における〔(a)成分+(d)成分〕の合計含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは6〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%である。〔(a)成分+(e)成分〕の合計含有量は、得られる分散体の分散安定性及び吐出性の観点から、好ましくは6〜75重量%、より好ましくは13〜50重量%である。また、〔(a)成分+(d)成分+(e)成分〕の合計含有量は、得られる分散体の分散安定性及び印字濃度の観点から、好ましくは6〜60重量%、より好ましくは7〜50重量%である。
また、〔(a)成分/[(b)成分+(c)成分]〕の重量比は、得られる分散体の分散安定性及び印字濃度の観点から、好ましくは0.01〜1、より好ましくは0.02〜0.67、更に好ましくは0.03〜0.50である。
【0045】
<ポリマーの製造>
本発明に用いられるポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、モノマー混合物を共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒としては、特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒が水混和性を有する場合には、水と混合して用いることもできる。極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、MEK、MIBK又はこれらの1種以上と水との混合溶媒が好ましい。
重合の際には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物1モルあたり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
重合の際には、さらに、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の重合連鎖移動剤を添加してもよい。
【0046】
モノマー混合物の重合条件は、使用するラジカル重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるので一概には決定することができない。通常、重合温度は、好ましくは30〜100℃、より好ましくは50〜80℃であり、重合時間は、好ましくは1〜20時間である。また、重合雰囲気は、窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
【0047】
本発明で用いられるポリマーの重量平均分子量は、印字濃度、光沢性及び着色剤の分散安定性の観点から、5,000〜50万が好ましく、1万〜40万がより好ましく、1万〜30万が更に好ましく、2万〜30万が特に好ましい。なお、ポリマーの重量平均分子量の測定方法は以下のとおりである。
【0048】
ポリマーの重量平均分子量の測定
溶媒として、60mmol/Lのリン酸と50mmol/Lのリチウムブロマイドを含有するN,N−ジメチルホルムアミドを用いたゲルクロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK-GEL、α-M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。
【0049】
本発明で用いられるポリマーは、(a)塩生成基含有モノマー由来の塩生成基を有している場合は中和剤により中和して用いる。中和剤としては、ポリマー中の塩生成基の種類に応じて、酸又は塩基を使用することができる。例えば、塩酸、酢酸、プロピオン酸、リン酸、硫酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グリセリン酸等の酸、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン等の塩基が挙げられる。
塩生成基の中和度は、10〜200%であることが好ましく、さらに20〜150%、特に50〜150%であることが好ましい。
ここで中和度は、塩生成基がアニオン性基である場合、下記式(4)によって求めることができる。
【0050】
【化5】

塩生成基がカチオン性基である場合は、下記式(5)によって求めることができる。
【0051】
【化6】

酸価やアミン価は、ポリマーの構成単位から、計算で算出することができる。または、適当な溶剤(例えばMEK)にポリマーを溶解して、滴定する方法でも求めることができる。ポリマーの酸価又はアミン価は、50〜200が好ましく、50〜150が更に好ましい。
【0052】
<顔料分散体の製造方法>
本発明で用いられる樹脂被覆型顔料分散体は、顔料がポリマーに含有されてなる粒子(以下、「顔料含有ポリマー粒子」ともいう)であることが好ましいが、顔料含有ポリマー粒子は、以下の工程(1)及び(2)を含む方法により、水分散体として得られることが好ましい。
工程(1):ポリマー、有機溶媒、顔料、及び水を含有する混合物を、分散処理する工程
工程(2):前記有機溶媒を除去し、顔料を含有する水分散体を得る工程
【0053】
前記工程(1)では、まず、ポリマーを有機溶媒に溶解させ、次に顔料、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を加えて混合し、水中油型の分散体を得る方法が好ましい。混合物中、顔料は、5〜50重量%が好ましく、10〜40重量%が更に好ましく、有機溶媒は、10〜70重量%が好ましく、10〜50重量%が更に好ましく、ポリマーは、2〜40重量%が好ましく、3〜20重量%が更に好ましく、水は、10〜70重量%が好ましく、20〜70重量%が更に好ましい。
【0054】
ポリマーが塩生成基を有する場合、中和剤を用いることが好ましい。中和剤を用いて中和する場合の中和度には、特に限定がない。通常、最終的に得られる水分散体の液性が中性、例えば、pHが4.5〜10であることが好ましい。前記ポリマーの望まれる中和度により、pHを決めることもできる。中和剤としては、前記のものが挙げられる。また、水不溶性グラフトポリマーを予め中和しておいてもよい。
有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、MEK、MIBK、ジエチルケトン等のケトン系溶媒及びジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒が挙げられる。有機溶媒は、水100gに対する溶解量が20℃において、5g以上のものが好ましく、10g以上のものが更に好ましく、より具体的には5〜80gのものが好ましく、10〜50gのものが更に好ましい。特に、MEK、MIBKが好ましい。
工程(1)における混合物の分散方法に特に制限はない。本分散だけでポリマー粒子の平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは予備分散させた後、更に剪断応力を加えて本分散を行い、ポリマー粒子の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。工程(1)の分散は、5〜50℃で行うのが好ましく、10〜35℃で行うのが更に好ましい。
【0055】
混合物を予備分散させる際には、アンカー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。混合撹拌装置の中では、ウルトラディスパー〔浅田鉄工株式会社、商品名〕、エバラマイルダー〔株式会社荏原製作所、商品名〕、TKホモミクサー〔プライミクス株式会社、商品名〕等の高速攪拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機、高圧ホモゲナイザー〔株式会社イズミフードマシナリ、商品名〕、ミニラボ8.3H型〔Rannie社、商品名〕に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー〔Microfluidics 社、商品名〕、ナノマイザー〔ナノマイザー株式会社、商品名〕等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等が挙げられる。
これらの装置は複数を組み合わせることもできる。これらの中では、顔料を用いる場合に、顔料の小粒子径化の観点から、高圧ホモジナイザーが好ましい。
【0056】
前記工程(2)では、得られた分散体から、公知の方法で有機溶媒を留去して水系にすることで、顔料含有ポリマー粒子の水分散体を得ることができる。得られた該ポリマー粒子を含む水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残存していてもよい。残留有機溶媒の量は0.1重量%以下が好ましく、0.01重量%以下であることがより好ましい。
得られた顔料含有ポリマー粒子の水分散体は、顔料を含有するポリマーの固体分が水を主溶媒とする中に分散しているものである。ここで、顔料含有ポリマー粒子の形態は特に制限はなく、少なくとも顔料とポリマーにより粒子が形成されていればよい。例えば、ポリマーに顔料が内包された粒子形態、ポリマー中に顔料が均一に分散された粒子形態、ポリマー粒子表面に顔料が露出された粒子形態等が含まれる。
【0057】
<色材の添加量>
色材の前記記録用インクにおける含有量は、0.1重量%以上、50.0重量%以下が好ましく、0.1重量%以上、20.0重量%以下がより好ましい。
したがって、界面活性剤分散型顔料分散体(A)の添加量はこれに応じた量を添加する必要があるが、樹脂被覆型顔料分散体(B)に含まれる顔料との比がA:B=90:10〜50:50であると、保存安定性と吐出安定性を確保しつつ、印字物の画像堅牢性の高いインクが得られやすいため好ましい。
また、前記色材の50%平均粒径(D50)は、前記範囲内の比率で混合してインクとした際に、150nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、界面活性剤分散型顔料分散体(A)と樹脂被覆型顔料分散体(B)の平均粒径はそれぞれ、10nm以上90nm以下、50nm以上200nm以下である。
ここで、前記顔料の50%平均粒径は、23℃、55%RHの環境下において、日機装株式会社製マイクロトラックUPAで動的光散乱法により測定したD50の値を示す。
【0058】
<界面活性剤>
界面活性剤は下記式(1)で表される構造を有し、かつHLBが12以上20以下であるものであり、前記HLBは12以上18以下であること好ましく、14以上18以下であることがより好ましい。この界面活性剤はオキシエチレン鎖を含有するため、水分子を引き付けやすく、分散安定効果が高く、界面活性剤分散型顔料と樹脂被覆型顔料とを混合しても凝集を起こさず、上記顔料双方を安定して分散させると共に、紙面上でインクの水分が蒸発したときに、界面活性剤由来のカチオン成分と上記樹脂被覆型顔料が相互作用を起こして速やかに凝集し、画像濃度が高く、素早い凝集により異なる色間の混ざり(ブリード)の発生も抑制できるものである。
【0059】
【化7】


ただし、前記式(1)中、Rは炭素数2〜24のアルキル基、アルケニル基、アルキルフェニル基、またはアルキルアリル基を示し、
Aは−COOM1、−SOM2、−PO(OM3)OM4のいずれかを示し、mは5〜40の整数である。
さらに、Aに含まれる前記M1、M2、M4はアルカリ金属、第四級アンモニウム、第四級ホスホニウム、アルカノールアミンのいずれかを示し、M3は水素原子又はR(CHCHO)を示す。
M3中に含まれるRは炭素数1〜4のアルキル基、アルケニル基、アルキルフェニル基、またはアルキルアリル基を示し、nは4〜20の整数である。
【0060】
前記Rの炭素数は2〜24であることが好ましく、9〜23であることがより好ましい。24よりも大きくなると水性媒体への溶解度が低下し、2より小さくなるとRの顔料への吸着が弱くなり長期間安定して分散することが困難になる。
【0061】
オキシエチレン鎖は本発明において分散安定性を確保するための必須条件であり、化合物のオキシエチレン鎖とアルキル鎖長(m)は、5〜40であり、mが40より大きくなるとインク組成物の粘度が高くなり吐出性能が悪くなる。またmが5より小さい場合は長期にわたって安定に分散することが困難になる。本発明のインクは樹脂被覆分散型顔料を含みインク組成物の粘度が高くなり易いものである。
さらに、界面活性剤のオキシエチレン鎖は5〜15の範囲にあることが好ましい。5以下であると、界面活性剤の分子量が小さすぎるために顔料粒子の表面に充分に吸着できず、分散剤としての作用が低く、インクの保存安定性が低下する。15以上であると、界面活性剤の分子量が大きく、複数の顔料粒子の表面にまたがって吸着を起こし、インクの粘度が高くなってしまい、吐出安定性が低下することがある。
保存安定性と吐出安定性とを両立させるため、8〜12であることがより好ましい。
【0062】
一般式(1)で表される化合物の具体例を遊離酸型で以下に示す。
【0063】
【化8】


などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、これらは単独で用いても、複数のものを混合して用いても良い。
【0064】
前記界面活性剤の添加量は、前記顔料1質量部に対して0.1質量部〜2質量部が好ましく、0.25質量部〜1質量部がより好ましい。これにより高い吐出安定性、保存安定性が良いインクを得ることができる。
0.1質量部未満であると、保存安定性が劣り、ノズル目詰まりが発生しやすい。2質量部を超えると粘度が高くなりすぎてインクジェット方式での記録が困難になる傾向がある。
【0065】
本発明で用いるHLBは、当業者で慣用されている通りHydrophile-Lipophile Balanceの頭文字をとった略称であり、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す値である。
一般に、HLBを算出する方法として、アトラス法、グリフィン法、デイビス法、川上法と種々の方法が知られており、その方法によって若干の差異を生じる。
本発明で示すアニオン系界面活性剤のHLBは、下記式で示されるグリフィンの式によって算出されたものである。
HLB値=20×(親水基部分の分子量)/(界面活性剤の分子量)
【0066】
<水溶性有機溶剤>
水溶性有機溶剤としては、以下のものが例示されるが,これらに限定されるものではない。
例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、エチル1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネイト、炭酸エチレン等である。これらの水溶性有機溶剤は、単独または2種類以上混合して使用することができる。
前記の中でも、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及び/またはグリセリンを含むことが水分蒸発による吐出不良を防止する上で優れた効果が得られる。
【0067】
水溶性有機溶剤の添加量は、インク総量に対して10重量%〜50重量%が好ましく、20〜40重量%がより好ましい。
添加量が前記範囲内にあるとき、インクジェット記録装置内では水分蒸発によるインク増粘が抑制され、また記録媒体に着弾時には水分蒸発によるインク増粘で画像にじみが抑制され高画質な記録物を得ることができる。
前記添加量が10重量%未満であると、インクが水分蒸発し易くなり、インクジェット記録装置内のインク供給系でインクの水分蒸発により増粘インク詰まり等が生じることがある。前記添加量が50重量%より多いと、インクを所望の粘度にするために顔料や樹脂等の固形分の減量が必要なことがあり、その場合記録物の画像濃度が低下することがある。
また、前記含有量が50重量%以上であると、インクジェット記録装置内では増粘インク詰まりは発生しにくくなるが、一方で記録媒体に着弾時にもインク増粘しにくくなりブリードが発生し易くなる。
【0068】
<樹脂エマルジョン>
本発明のインクは、顔料の分散安定性の向上のため樹脂エマルジョンを含むことができ、自己乳化型ウレタン樹脂エマルジョンであることが好ましい。
具体的には、SF460、SF460S、SF420、SF110、SF300、SF361(ウレタン系樹脂エマルジョン;いずれも日本ユニカー株式会社製)、W5025、W5661(ウレタン系樹脂エマルジョン;三井武田ケミカル株式会社製)などが挙げられる。
【0069】
樹脂エマルジョンの添加量は、固形分で0.5重量%〜5重量%であることが好ましい。0.5重量%未満の場合、顔料の分散安定性が不十分になることがある。また、5.0重量%以上の場合、インク中の固形分量が多くなりインク粘度が増加して吐出が困難になることがある。
【0070】
図1は本発明のインク組成物を収容した記録液収容部を備えたインクカートリッジを搭載するシリアル型インクジェット記録装置の機構部の概略正面図である。このインクジェット記録装置の機構部は、両側の側板(1)、(2)間に主支持ガイドロッド(3)及び従支持ガイドロッド(4)を略水平な位置関係で横架し、これらの主支持ガイドロッド(3)及び従支持ガイドロッド(4)でキャリッジユニット(5)を主走査方向に摺動自在に支持している。キャリッジユニット(5)には、それぞれイエロー(Y)インク、マゼンタ(M)インク、シアン(C)インク、ブラック(Bk)インクをそれぞれ吐出する4個のヘッド(6)を、その吐出面(ノズル面)(6a)を下方に向けて搭載し、またキャリッジユニット(5)のヘッド(6)の上側には4個のヘッド(6)に各々インクを供給するための各色のインク供給体である4個のインクカートリッジ(7Y)、(7M)、(7C)、(7Bk)を交換可能に搭載している。
【0071】
そして、キャリッジユニット(5)は主走査モータ(8)で回転される駆動プーリ(駆動タイミングプーリ)(9)と従動プーリ(アイドラプーリ)(10)との間に張装したタイミングベルト(11)に連結して、主走査モータ(8)を駆動制御することによってキャリッジ(5)、即ち4個のヘッド(6)を主走査方向に移動するようにしている。
【0072】
また、側板(1)、(2)をつなぐ底板(12)上にサブフレーム(13)、(14)を立設し、このサブフレーム(13)、(14)間に用紙(16)を主走査方向と直交する副走査方向に送るための搬送ローラ(15)を回転自在に保持している。そして、サブフレーム(14)側方に副走査モータ(17)を配設し、この副走査モータ(17)の回転を搬送ローラ(15)に伝達するために、副走査モータ(17)の回転軸に固定したギヤ(18)と搬送ローラ(15)の軸に固定したギヤ(19)とを備えている。
【0073】
さらに、側板(1)とサブフレーム(13)との間には、ヘッド(6)の信頼性維持回復機構(以下、「サブシステム」という。)(21)を配置している。サブシステム(21)は、各ヘッド(6)の吐出面をキャッピングする4個のキャップ手段(22)をホルダ(23)で保持し、このホルダ(23)をリンク部材(24)で揺動可能に保持して、キャリッジユニット(5)の主走査方向の移動でホルダ(23)に設けた係合部(25)にキャリッジユニット(5)が当接することで、キャリッジユニット(5)の移動に従ってホルダ(23)がリフトアップしてキャップ手段(22)でインクジェットヘッド(6)の吐出面(6a)をキャッピングし、キャリッジユニット(5)が印写領域側へ移動することで、キャリッジユニット(5)の移動に従ってホルダ(23)がリフトダウンしてキャップ手段(22)がインクジェットヘッド(6)の吐出面(6a)から離れるようにしている。
【0074】
なお、キャップ手段(22)は、それぞれ吸引チューブ(26)を介して吸引ポンプ(27)に接続すると共に、大気開放口を形成して、大気開放チューブ及び大気開放バルブを介して大気に連通している。また、吸引ポンプ(27)は吸引した廃液を、ドレインチューブ等を介して図示しない廃液貯留槽に排出する。
【0075】
さらに、ホルダ(23)の側方には、インクジェットヘッド(6)の吐出面(6a)をワイピングする繊維部材、発泡部材或いはゴム等の弾性部材からなるワイピング手段であるワイパブレード(28)をブレードアーム(29)に取付け、このブレードアーム(29)は揺動可能に軸支し、図示しない駆動手段で回動されるカムの回転によって揺動させるようにしている。
【0076】
次に、インクカートリッジ7について図2、図3を参照して説明する。ここで、図2は記録装置に装填する前のインクカートリッジの外観斜視図、図3はインクカートリッジの正断面図である。インクカートリッジ7は、図3に示すように、カートリッジ本体(41)内に所要の色のインクを吸収させたインク吸収体(42)を収容してなる。カートリッジ本体41は、上部に広い開口を有するケース(43)の上部開口に上蓋部材(44)を接着又は溶着して形成したものであり、例えば樹脂成型品からなる。また、インク吸収体(42)は、ウレタンフォーム体等の多孔質体からなり、カートリッジ本体(41)内に圧縮して挿入した後、インクを吸収させている。
【0077】
カートリッジ本体(41)のケース(43)底部には記録ヘッド(6)へインクを供給するためのインク供給口(45)を形成し、このインク供給口(45)内周面にはシールリング46を嵌着している。また、上蓋部材(44)には大気開放口(47)を形成している。そして、カートリッジ本体(41)には、装填前の状態で、インク供給口45を塞ぐと共に装填時や輸送時などのカートリッジ取扱い時、或いは真空包装時による幅広側壁に係る圧力でケース(43)が圧縮変形されて内部のインクが漏洩することを防止するため、キャップ部材(50)を装着している。
【0078】
また、大気開放口(47)は、図2に示すように、酸素透過率が100ml/m2以上のフィルム状シール部材(55)を上蓋部材(44)に貼着してシールしている。このシール部材(55)は大気開放口(47)と共にその周囲に形成した複数本の溝(48)をもシールする大きさにしている。このように大気開放口(47)を酸素透過率が100ml/m2以上のシール部材(55)でシールすることで、インクカートリッジ7を透気性のないアルミラミネートフィルム等の包装部材を用いて減圧状態で包装することにより、インク充填時やインク吸収体(42)とカートリッジ本体(41)との間に生じる空間A(図3参照)にある大気のためにインク中に気体が溶存したときでも、シール部材(55)を介してインク中の空気が真空度の高いカートリッジ本体(41)外の包装部材との間の空間に排出され、インクの脱気度が向上する。
【0079】
また、図4には、本発明のインク組成物を収容したインク収容部と、インク滴を吐出させるためのヘッド部を備えたインクカートリッジの構成例を示し、説明する。
【0080】
すなわち、記録ユニット(30)は、シリアルタイプのものであり、インクジェットヘッド(6)と、このインクジェットヘッド(6)に供給されるインクを収容するインクタンク(41)と、このインクタンク(41)内を密閉する蓋部材とで主要部が構成される。インクジェットヘッド(6)には、記録液を吐出するための多数のノズル(32)が形成されている。インクはインクタンク(41)から、図示しないインク供給管を介して、やはり図示しない共通液室へと導かれ、電極(31)より入力される記録装置本体からの電気信号に応じて、ノズル(32)より吐出される。このようなタイプの記録ユニットは、構成上、安価に製造できるタイプのヘッド、いわゆるサーマル方式、バブル方式と呼ばれる、熱エネルギーを駆動の動力源とするヘッドに適した構造である。また、本発明のインク組成物は、熱エネルギーを作用させてインク吐出を行なう記録方法のみならず、力学的エネルギーを作用させてインク吐出を行なう記録方法においても適している。
【0081】
ここでは、前述のようなシリアル型インクジェット記録装置を説明したが、本発明のインク組成物は、ノズルを千鳥など任意の配列で、目的とする画像の解像度と同じか数分の1程度の密度に集積し、記録媒体の幅以上に配列させた、いわゆるラインヘッドを有する記録装置に適用することも可能である。
【0082】
また、ここでいう記録装置とは、PCやデジタルカメラ用の出力プリンタのみならず、ファックスやスキャナ、電話などと組み合わせた複合的な機能を有する装置であっても構わない。
【実施例】
【0083】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0084】
<界面活性剤分散型顔料分散体の調整>
(1)ブラック分散体A
カーボンブラック(NIPEX150−IQ、degussa社製、ガスブラック)・・・200質量部
下記式(6)で表される界面活性剤A(化合物(1)-1のナトリウム塩、アニオン性、HLB=18)・・・50質量部
蒸留水・・・750質量部
【0085】
【化9】

上記の混合物をプレミックスした後、ビーズミル分散機(寿工業株式会社製、UAM−015)を用い、直径0.03mmのジルコニアビーズで周速10m/s、液温30℃で15分間分散した後、遠心分離機(久保山商事株式会社製、Model−3600)で粗大粒子を遠心分離してブラック顔料分散体Aを得た。
【0086】
(2)シアン分散体A
上記ブラック分散体Aのカーボンブラック顔料をピグメントブルー15:3に変更したほかはブラック分散体Aと同様にしてシアン顔料分散体Aを得た。
【0087】
(3)マゼンタ分散体A
上記ブラック分散体Aのカーボンブラック顔料をピグメントレッド122に変更したほかはブラック分散体Aと同様にしてマゼンタ顔料分散体Aを得た。
【0088】
(4)イエロー分散体A
上記ブラック分散体Aのカーボンブラック顔料をピグメントイエロー74に変更したほかはブラック分散体Aと同様にしてイエロー顔料分散体Aを得た。
【0089】
(5)ブラック分散体B
上記ブラック分散体Aの界面活性剤を下記式(7)で表される界面活性剤B(化合物(1)-5のアンモニウム塩、アニオン性、HLB=17)に変更したほかはブラック分散体Aと同様にしてブラック顔料分散体Bを得た。
【0090】
【化10】

【0091】
(6)シアン分散体B
上記ブラック分散体Bのカーボンブラック顔料をピグメントブルー15:3に変更したほかはシアン分散体Bと同様にしてシアン顔料分散体Bを得た。
【0092】
(7)マゼンタ分散体B
上記ブラック分散体Bのカーボンブラック顔料をピグメントレッド122に変更したほかはブラック分散体Bと同様にしてマゼンタ顔料分散体Bを得た。
【0093】
(8)イエロー分散体B
上記ブラック分散体Bのカーボンブラック顔料をピグメントイエロー74に変更したほかはブラック分散体Bと同様にしてイエロー顔料分散体Bを得た。
【0094】
(9)ブラック分散体C
上記ブラック分散体Aの分散剤を下記式(8)で表される界面活性剤C(化合物(1)-1、ノニオン性、HLB=14)に変更したほかはブラック分散体Aと同様にしてブラック顔料分散体Cを得た。
【0095】
【化11】

【0096】
(10)シアン分散体C
上記ブラック分散体Cのカーボンブラック顔料をピグメントブルー15:3に変更したほかはブラック分散体Cと同様にしてシアン顔料分散体Cを得た。
【0097】
(11)マゼンタ分散体C
上記ブラック分散体Cのカーボンブラック顔料をピグメントレッド122に変更したほかはブラック分散体Cと同様にしてマゼンタ顔料分散体Cを得た。
【0098】
(12)イエロー分散体C
上記ブラック分散体Cのカーボンブラック顔料をピグメントイエロー74に変更したほかはブラック分散体Cと同様にしてイエロー顔料分散体Cを得た。
【0099】
(13)ブラック分散体D
上記ブラック分散体Aの界面活性剤を下記式(9)で表される界面活性剤D(アニオン性、HLB=11)に変更したほかはブラック分散体Aと同様にしてブラック顔料分散体Dを得た。
【0100】
【化12】

【0101】
(14)シアン分散体D
上記ブラック分散体Dのカーボンブラック顔料をピグメントブルー15:3に変更したほかはブラック分散体Dと同様にしてシアン顔料分散体Dを得た。
【0102】
(15)マゼンタ分散体D
上記ブラック分散体Dのカーボンブラック顔料をピグメントレッド122に変更したほかはブラック分散体Dと同様にしてマゼンタ顔料分散体Dを得た。
【0103】
(16)イエロー分散体D
上記ブラック分散体Dのカーボンブラック顔料をピグメントイエロー74に変更したほかはブラック分散体Dと同様にしてイエロー顔料分散体Dを得た。
【0104】
(17)ブラック分散体E
上記ブラック分散体Aにて使用する分散剤を下記式(10)で表される界面活性剤E(式(1)とは異なる構造のアニオン性界面活性剤;HLB=13)に変更したほかはブラック分散体Aと同様にしてブラック顔料分散体Eを得た。
【0105】
【化13】

【0106】
(18)シアン分散体E
上記ブラック分散体Eのカーボンブラック顔料をピグメントブルー15:3に変更したほかはブラック分散体Eと同様にしてシアン顔料分散体Eを得た。
【0107】
(19)マゼンタ分散体E
上記ブラック分散体Eのカーボンブラック顔料をピグメントレッド122に変更したほかはブラック分散体Eと同様にしてマゼンタ顔料分散体Eを得た。
【0108】
(20)イエロー分散体E
上記ブラック分散体Eのカーボンブラック顔料をピグメントイエロー74に変更したほかはブラック分散体Eと同様にしてイエロー顔料分散体Eを得た。
【0109】
<樹脂被覆型顔料分散体の調整>
(21)ブラック分散体F
(ポリマー溶液の調整)
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下ロートを備えた1Lフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー(東亜合成(株)製、商品名:AS−6)4.0g及びメルカプトエタノール0.4gを仕込み、65℃に昇温した。
次にスチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー(東亜合成(株)製、商品名:AS−6)36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスジメチルバレロニトリル2.4g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。
反応終了後、フラスコ内に、メチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50%のポリマー溶液800gを得た。
【0110】
(カーボンブラック顔料含有樹脂被覆型顔料分散体の調整)
前記ポリマー溶液28gとカーボンブラック顔料(キャボットスペシャリティケミカルス社製 Monarch880)26g、1mol/Lの水酸化カリウム溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、イオン交換水30gを十分に攪拌した後、三本ローロミルを用いて混練した。得られたペーストをイオン交換水200gに投入し、十分に攪拌した後、エバポレーターを用いてメチルエチルケトンおよび水を留去し、5μmのフィルター(アセチルセルロース膜)で濾過して粗大粒子を除去することによって、ブラック顔料分散体Fを得た。
【0111】
(22)シアン分散体F
上記ブラック分散体Fのカーボンブラック顔料をピグメントブルー15:3に変更したほかはブラック分散体Fと同様にしてシアン顔料分散体Fを得た。
【0112】
(23)マゼンタ分散体F
上記ブラック分散体Fのカーボンブラック顔料をピグメントレッド122に変更したほかはブラック分散体Fと同様にしてマゼンタ顔料分散体Fを得た。
【0113】
(24)イエロー分散体F
上記ブラック分散体Fのカーボンブラック顔料をピグメントイエロー74に変更したほかはブラック分散体Fと同様にしてイエロー顔料分散体Fを得た。
【0114】
(25)マゼンタ分散体G
上記マゼンタ分散体Aにおいて界面活性剤Aの量を420質量部とした他はマゼンタ分散体Aと同様にしてマゼンタ分散体Gを得た。
【0115】
(26)イエロー分散体G
上記イエロー分散体Aにおいて界面活性剤Aの量を15質量部とした他はイエロー分散体Aと同様にしてイエロー分散体Gを得た。
【0116】
上記分散体の50%平均粒径を、23℃、55%RHの環境下、日機装株式会社製マイクロトラックUPAで動的光散乱法により測定した結果を以下に示す。
【0117】
【表1】

【0118】
【表2】

【0119】
<インクの製造>
下記の表に示す処方によりインクを調製し、1時間30分撹拌後、孔径0.8μmのメンブレンフィルターでろ過し、インクを得た。なお、分散体の重量%は固形分量である。
得られたインクを以下の方法により評価した。評価結果を表3〜7に示す。
【0120】
<保存安定性評価>
各インクをインクカートリッジに充填し、65℃で3週間保存する際の保存前後のインクの粘度をR型粘度計(東機産業製RE80L)にて測定を行い、インクの粘度変化率を算出して以下の基準で評価した。○までが許容範囲である。
[評価基準]
◎:5%未満
○:5%以上10%未満
△:10%以上15%未満
×:15%以上
【0121】
<吐出安定性評価>
インクジェットプリンタ(リコー製IPSiO GX5000)に作成したインクを充填し、プリンタ動作中にキャップ、クリーニング等が行われないでどれだけの時間印字休止しても復帰できるかを調べ、どれだけの時間休止すると噴射方向がずれるか、あるいは吐出液滴の重量が変化するかをもって、以下の基準で評価した。○までが許容範囲である。
[評価基準]
◎:休止時間が600秒以上
○:休止時間が120秒以上、600秒未満
△:休止時間が30秒以上、120秒未満
×:休止時間が30秒未満
【0122】
<耐擦過性>
インクジェットプリンタ(リコー製IPSiO GX5000)に作成したインクを充填し、Type6200紙(株式会社NBSリコー製)に600dpiの解像度で印字を行った。印字乾燥後、綿布で印字部を10回擦り、綿布への転写具合を目視観察し、下記基準により評価した。○までが許容範囲である。
[評価基準]
◎:綿布への顔料転写は全く見られない
○:綿布への顔料転写がわずかに見られる
△:綿布への明らかな顔料転写が見られる
×:綿布への著しい顔料転写が見られる
【0123】
<耐マーカー性>
インクジェットプリンタ(リコー製IPSiO GX5000)に作成したインクを充填し、Type6200紙(株式会社NBSリコー製)に600dpiの解像度で印字を行った。印字乾燥後、蛍光マーカー(三菱鉛筆株式会社製、PROPUS2)で印字部をなぞり、顔料が取れることによって発生する汚れ具合を目視観察し、下記基準により評価した。○までが許容範囲である。
[評価基準]
◎:色落ちによる汚れが全く見られない
○:色落ちによる汚れがわずかに見られる
△:色落ちによる汚れが明らかである
×:マーカーに沿って著しく汚れが広がっている
【0124】
<画像濃度>
インクジェットプリンタ(リコー製、IPSiO GX5000)に作成したインクを充填し、25℃、50%RH環境下、Type6200紙(株式会社NBSリコー製)にワンパスでベタ印字を行った。ベタ画像の測色をX−Rite938(X−Rite社製)にて行い、以下の基準で評価した。○までが許容範囲である。
[評価基準]
◎:画像濃度1.0以上
○:画像濃度0.8以上、1.0未満
△:画像濃度0.6以上、0.8未満
×:画像濃度0.6未満
【0125】
<色境界滲み>
インクジェットプリンタ(リコー製IPSiO GX5000)に作成したインクを充填し、Type6200紙(株式会社NBSリコー製)に600dpiの解像度で印字を行った。印字乾燥後、異なる色間の境界滲み(ブリード)を目視観察し、下記基準によって評価した。○までが許容範囲である。
[評価基準]
◎:全く滲みの発生がなく、鮮明な画像である
○:ごくわずかにひげ状の滲みが発生している
△:明らかな滲みが発生している
×:文字の輪郭がはっきりしないほど滲みが発生している
【0126】
【表3】

【0127】
【表4】

【0128】
【表5】

【0129】
【表6】

【0130】
【表7】

【0131】
実施例1〜8では、全ての項目において良好な性能を得られることが分かる。
比較例1〜4は吐出安定性に優れるが、保存安定性が劣り、樹脂被覆型顔料分散体を含まないため画像堅牢性に劣る。
比較例5〜8は保存安定性に優れるが、吐出安定性に劣る。
比較例9〜12は、ノニオン系分散剤で分散された活性剤分散型顔料分散体と樹脂被覆型顔料分散体の組み合わせたものであり、吐出、保存安定性に優れるが、アニオン性のときのような紙面上における凝集効果がないため、画像濃度や画像滲みは実施例のレベルに至らない。
比較例13〜16は、本発明の界面活性剤と同様な構造を有するがHLBが低いアニオン系界面活性剤で分散された界面活性剤分散型顔料分散体と、樹脂被覆型顔料分散体の組み合わせたものであり、界面活性剤の分散能が低いため、保存安定性も吐出安定性も低い。
比較例17〜20は、本発明の界面活性剤の構造以外のアニオン系界面活性剤で分散された界面活性剤分散型顔料分散体と、樹脂被覆型顔料分散体の組み合わせであり、比較例13〜16と同様、分散剤の分散能が充分でないため、保存安定性も吐出安定性も低い。
【符号の説明】
【0132】
1、2 側板
3 主支持ガイドロッド
4 従支持ガイドロッド
5 キャリッジユニット
6 インクジェットヘッド
6a 吐出面
7、7Y、7M、7C、7Bk インクカートリッジ
8 主走査モータ
9 駆動プーリ
10 従動プーリ
11 タイミングベルト
12 底板
13、14 サブフレーム
15 搬送ローラ
16 用紙
17 副走査モータ
18、19 ギア
21 サブシステム
22 キャップ手段
23 ホルダ
24 リンク部材
25 係合部
26 吸引チューブ
27 吸引ポンプ
28 ワイパーブレード
29 ブレードアーム
30 記録ユニット
31 電極
32 ノズル
41 カートリッジ本体(インクタンク)
42 インク吸収体
43 ケース
44 上蓋部材
45 インク供給口
46 シールリング
47 大気開放口
48 溝
50 キャップ部材
55 フィルム状シール部材
A 空間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0133】
【特許文献1】特開2001−81372号公報
【特許文献2】特開2003−327880号公報
【特許文献3】特開2009−149758号公報
【特許文献4】特開2009−149815号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水、水溶性有機溶媒、色材及び界面活性剤を含んでなるインクジェット記録用インクであって、前記色材は、前記界面活性剤により分散された界面活性剤分散型の顔料(A)及び樹脂被覆型の顔料(B)を含むものであり、前記界面活性剤は、下記式(1)で表されるアニオン系活性剤の群から選ばれるHLB値が12以上20以下の界面活性剤であることを特徴とするインクジェット記録用インク。
【化1】

ただし、前記式(1)中、Rは炭素数2〜24のアルキル基、アルケニル基、アルキルフェニル基、またはアルキルアリル基を示し、
Aは−COOM1、−SOM2、−PO(OM3)OM4のいずれかを示し、mは15〜40の整数である。
さらに、Aに含まれる前記M1、M2、M4はアルカリ金属、第四級アンモニウム、第四級ホスホニウム、アルカノールアミンのいずれかを示し、M3は水素原子又はR(CHCHO)を示す。
M3中に含まれるRは炭素数1〜4のアルキル基、アルケニル基、アルキルフェニル基、またはアルキルアリル基を示し、nは4〜20の整数である。
【請求項2】
前記界面活性剤分散型顔料(A)と前記樹脂被覆型顔料(B)のインク中の固形分質量比(A:B)が、90:10〜50:50であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項3】
前記界面活性剤の含有量が前記界面活性剤分散型顔料1質量部に対して0.1質量部から2質量部である請求項1または2に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録用インクを容器内に収容してなることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録用インクに熱エネルギーまたは力学的エネルギーを作用させ、該インクを飛翔させて画像を記録するインク飛翔手段を少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録用インクに熱エネルギーまたは力学的エネルギーを作用させ、該インクを飛翔させて画像を記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項7】
記録媒体上に請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録用インクを用いて形成された画像を有してなることを特徴とするインク記録物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−167261(P2012−167261A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−12638(P2012−12638)
【出願日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】