説明

インクジェット記録用インク、カートリッジ、インクジェット記録装置、画像形成物

【課題】顔料の分散性がよくインクジェット用インクに利用した場合、平滑紙及び非平滑紙でも高画像濃度が実現できる画像形成方法、インクジェット用インク液、前処理液とインクジェット記録用インクとのセット、カートリッジ、インクジェット記録装置、画像形成物を提供すること。
【解決手段】分散媒体液中に微分散された顔料粒子を含み、インクジェット記録用インクの調製のための顔料分散体であって、前記顔料粒子が酸性カーボンブラックであり、つぎの一般式(I)で表される化合物を少なくとも一種類以上含有し、pHが9.5〜12であることを特徴とするインクジェット記録用インクのための顔料分散体。


(式中、MはHまたはLi,、Na、K等のアルカリ金属、有機塩基を表し、nは10〜16の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前処理液を用いた画像形成方法、インクジェット用インク液、インクジェット記録用インクとのセット、カートリッジ、インクジェット記録方法と装置、及びそれによって形成された画像形成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成方法として、他の記録方式に比べてプロセスが簡単であり、また、フルカラー化が容易であり、簡略な構成の装置であっても高解像度の画像が得られる利点があることから、インクジェット記録方式が普及してきた。
【0003】
インクジェット記録方式は、熱による発生する泡や、ピエゾや静電等を利用し発生した圧力で少量のインクを飛翔させ、紙など被画像形成体に付着させ、すばやく乾燥させ(あるいは被画像形成体に浸透させる)画像を形成する画像形成装置であり、パーソナルを始め産業用としてのプリンタや、印刷用途まで拡大してきている。
【0004】
近年特に産業用途としての需要が高まり、高速化印字や様々な被記録媒体(紙等のメディア)に対する対応性が望まれている。特に高速化に伴いラインヘッドを搭載したインクジェットプリンタも必要となってきている。
また近年、環境面や安全性の面より水系インク要望が高くなっている。
【0005】
しかしながら、水系インクは記録媒体の影響を受け易く、画像に各種の問題を引き起こしている。特に記録媒体に非平滑性の紙を使用する場合は顕著である。
水性インクの場合、乾燥までに時間を要し紙との相溶性も良好なため、紙への浸透性が高く、特に未コーティングの比較的非平滑な紙の場合、色材が紙中に浸透することで、形成された色材の色濃度が低くなってしまうという、溶剤インクではみられなかった問題が生じている。
【0006】
特に近年高速印字化が進むにつれ、メディアに付着したインクの乾燥速度を早めるために、インクに浸透剤を添加し溶媒である水をメディアに浸透させることで乾燥を早める手段がとられる。
しかしながら浸透剤を含有させると、水だけでなく色材のメディアへの浸透性が向上してしまい、更に画像濃度が低下してしまう問題が塗料やボールペンに使用されるインクと異なり、顕著に発生してしまう。
【0007】
従来、インクに画両性界面活性剤を使用する提案がされている。例えば、像形成時のインクのインクヘッドからの吐出性を改善させるためにカルボキシ基を有する分散剤で分散した顔料を含むインクに、添加剤としてアルキルアミンオキサイドやアルキルアミノベタイン等の両性界面活性剤を使用することが提案されている(特許文献1)。
また分散剤の一例として、アルキルジメチルグリシン使用も記載されている。
【0008】
しかしながら、上記したように、紙上でカーボンブラックが留まることがなく、紙内に浸透し画像濃度が低下してしまう問題がある。また分散剤として、アルキルジメチルグリシンを使用した場合、中性や塩基性カーボンブラックの場合は、インクジェットに適した粒径及び粘度特性までカーボンブラックの分散が可能ではあるが、酸性カーボンブラックに対する分散能力が低く、インクジェット用としては使用不可能である。中性や塩基性カーボンブラックの場合は上述したように画像濃度が低い問題点がある。
また、インクの起泡性を改善するために、添加剤としてアルキルアミノベタイン等の両性界面活性剤と消泡剤を使用する(特許文献2)こと、第一のインクにカチオン性界面活性剤を含みと第二のインクには両性界面活性剤を含有させる(特許文献3)こと、が提案されているが、上述したような、分散性あるいは画像濃度が低い問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、顔料の分散性がよくインクジェット用インクに利用した場合、平滑紙及び非平滑紙でも高画像濃度が実現できる画像形成方法、インクジェット用インク液、前処理液とインクジェット記録用インクとのセット、カートリッジ、インクジェット記録装置、画像形成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は本発明の下記(1)〜(9)によって解決される。
(1)「分散媒体液中に微分散された顔料粒子を含み、インクジェット記録用インクの調製のための顔料分散体であって、前記顔料粒子が酸性カーボンブラックであり、つぎの一般式(I)で表される化合物を少なくとも一種類以上含有し、pHが9.5〜12であることを特徴とするインクジェット記録用インクのための顔料分散体。
【0011】
【化1】

(式中、MはHまたはLi,、Na、K等のアルカリ金属、有機塩基を表し、nは10〜16の整数を表す。)」;
(2)「水、浸透剤、及び微分散された顔料を含むインクジェット記録用インクにおいて、前記第(1)項に記載の顔料分散体を用いたことを特徴とするインクジェット記録用インク。」;
(3)「pHが9.5〜11に調整されたことを特徴とする前記第(2)項に記載のインクジェット記録用インク。」;
(4)「分散媒体液中に微分散された顔料粒子を含みインクジェット記録用インクの調製のための顔料分散体の製造方法であって、前記顔料粒子が酸性カーボンブラックであり、つぎの一般式(I)で表される化合物を少なくとも一種類以上含有する前記分散媒体液中で、該顔料粒子を、pHが9.5〜12の条件下で、微分散処理する工程を少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録用インクのための顔料分散体の製造方法。
【0012】
【化2】

(式中、MはHまたはLi,、Na、K等のアルカリ金属、有機塩基を表し、nは10〜16の整数を表す。)」;
(5)「水性液媒体中に、分散された顔料粒子を含むインクジェット記録用インクの製造方法において、分散媒体液中に微分散された酸性カーボンブラック顔料粒子とつぎの一般式(I)で表される化合物を少なくとも一種類以上含有しpHが9.5〜12であるインクジェット記録用インクのための顔料分散体を、水および浸透剤を含む水系液媒体と混合してpHが9.5〜11のインク液を調製する工程を少なくとも有することを特徴とする中にインクジェット記録用インクの製造方法。
【0013】
【化3】

(式中、MはHまたはLi,、Na、K等のアルカリ金属、有機塩基を表し、nは10〜16の整数を表す。)」;
(6)「前記第(2)項または第(3)項に記載のインクジェット記録用インクを容器中に収容したことを特徴とするカートリッジ。」;
(7)「前記第(6)項に記載のカートリッジを搭載したインクジェット記録装置。」;
(8)「記録液を微細な吐出口から液滴として吐出、飛翔させることにより、記録媒体に画像を形成するインクジェット記録方法であって、該記録液として、前記第(2)項または第(3)項に記載のインクジェット記録用インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。」;
(9)「前記第(7)項に記載のインクジェット記録装置で印字された画像形成物。」。
【発明の効果】
【0014】
以下の詳細かつ具体的な説明から理解されるように、本発明によれば、平滑紙及び非平滑紙でも高画像濃度が実現でき、画像形成方法、インクジェット用インク液、カートリッジ、インクジェット記録装置、画像形成物を提供できるという極めて優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明におけるインクジェット記録装置図である。
【図2】本発明における記録ヘッドの一例である。
【図3】本発明における記録ヘッドの別の一例である。
【図4】本発明における記録装置に装填する前のカートリッジの外観斜視図である。
【図5】本発明におけるカートリッジの正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細かつ具体的に説明する。
本発明のインクジェット記録用インクのための顔料分散体は、分散媒体液中に微分散された顔料粒子を含み、前記顔料粒子が酸性カーボンブラックであり、つぎの一般式(I)で表される化合物を少なくとも一種類以上含有し、pHが9.5〜12であることを特徴とするものであり、また、本発明のインクジェット記録用インクは、水、浸透剤、及び微分散された顔料を含むインクジェット記録用インクにおいて、さらに、下記一般式(I)で表される化合物を少なくとも一種類以上含有することを特徴とするインクジェット記録用インクであり、好ましくは、pHが9.5〜11のものであることを特徴とする。
本発明で使用されるドデシビス−(アミノエチル)グリシンは一般式(I)で示され
カチオン性部位とアニオン性部位を両方有し、pHにより電荷状態が変化する特性を有している。
【0017】
【化4】

(式中、MはHまたはLi,、Na、K等のアルカリ金属、有機塩基を表し、nは10〜16の整数を表す。)」
【0018】
例えば、デシルジアミノエチルグリシン、ドデシルジアミノエチルグリシン、テトラデシルジアミノエチルグリシン、ヘキサデシルジアミノエチルグリシン等を例示することができるがこれらに限定されない。また2種類以上を組み合わせて使用することも可能である。
なかでも、炭素数12〜14のアルキル基のものを用いるのが画像濃度の面でより好ましい。
該一般式(I)の化合物は、他でよく使用される両性界面活性剤であるアルキルアミノベタインとは異なり、カチオン部位が多いのが特徴であり、pHによる電荷変動領域が異なると考えられる。
【0019】
本発明で使用される酸性カーボンブラックとは、一般的なカーボンブラックの製造において不完全燃焼や酸化処理によって表面に酸性を示す官能基がつきDIN EN ISO 787/9の測定方法でpH5以下の酸性を示すカーボンブラックである。
市販品では、下記のものが例として挙げられる。
三菱化学社製 #2650,#2350,#1000,#970,MA77,MA7,MA8,MA11,MA100,MA100R,MA100S, MA230,MA220、デグサ社製 FW200,FW2、FW2V,FW1,FW18,S170,S160、Special Black6, Special Black5, Special Black4, Special Black4A, Special Black550, Special Black350, Special Black250, Special Black100、PRINTEX150T, PRINTEX U, PRINTEX V, PRINTEX140U, PRINTEX140V,NEROX305, NEROX505, NEROX605, NEROX500, NEROX600, NIPEX150, NIPEX160IQ, NIPEX180IQ, NIPEX170IQ、キャボット社製のMONARCH 1000、MOGUL−L、REGAL 400R等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0020】
顔料分散体pH及びインクpHは、ガラス電極におけるpHメーターで測定したものであり、本発明では、メトラー社製 pHメーターMP220で測定した値である。
【0021】
pH調整剤は、該記pH領域に調整できるものであれば特に制限はなく、必要に応じて適宜選択することが可能であり、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等のアルカリ金属の炭酸塩、アンモニアやジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン等が挙げられる。
【0022】
特にカーボンブラック分散体のpH調整においては、水酸化ナトリウムが好ましく、インクpH調整としては、2−アミノ−2−エチル−1、3プロパンジオールが好ましい。
【0023】
本発明の特徴は、インクジェット用黒インクに専ら使用されるカーボンブラック分散体において、カーボンブラックとして酸性カーボンブラックを採用し、かつ、その分散剤として、一般式(I)で表される化合物を使用して分散処理することにより、一般式(I)で表される化合物をカーボンブラック表面に吸着させたところにある。pHを9.5〜12の条件下で分散することが非常に好ましい。
そして、この顔料分散体を、水および浸透剤を含む水系液媒体と混合して本発明のインクジェット記録用インクを調製するすることができる。このインクは、pHが9.5〜11に調製されていることが極めて好ましい。
【0024】
一般的にアルキルアミンオキサイドやアルキルアミノベタイン等に代表される両性界面活性剤は、インクジェットインクにおいては、インクの表面張力を調整したり、起泡性の制御剤としてインクの添加剤として用いられたりする。そして、構造的にはカチオン性部位とアニオン性部位を両方有し、pHにより電荷状態が変化する特徴を有している。
両面活性剤の水溶液自体は、pH変動しても、電荷状態が変動し表面張力の調整能力等の特性自体は変動するかも知れないが、凝集や沈降は生じない。
【0025】
しかしながら、両性活性剤をカーボンブラックの表面に吸着させ、その電荷反発をカーボンブラック分散安定性に利用した場合は、pH変動により電荷状態が変動するために分散安定性が一機にくずれ、カーボンブラックの凝集が発生すると考えられる。
原理的には、このような両性界面活性剤を利用し分散されたカーボンブラック分散体をインクジェット用のインクに利用すれば、インクがあるpH領域では分散安定しているが、プリンタから吐出され記録媒体である紙に着弾した場合に、アルカリ成分が紙に浸透し酸性側にpHが変動することでカーボンブラックが凝集し、紙表面に留まることで高画像濃度が得られると考えられる。
【0026】
上記考えを基に、分散剤として両面活性剤を検討したがほとんどの両性界面活性剤の電荷状態が変動するpHが中性付近にあり、インクに利用し紙へ着弾させても、紙のpHが中性領域にあるため、画像濃度向上効果は見られなかった。
【0027】
更に検討した結果、一般式(I)で表される化合物をカーボンブラックの分散剤として使用した場合、分散体pHが9.5〜12でのみカーボンブラックが良好に分散可能でありpHが9以下の場合は分散できない(カーボンブラックが凝集する)ことが判明した。
【0028】
しかながら、一般式(I)で表される化合物をカーボンブラックの分散剤として使用した分散体を単にインクジェットインクに使用しても、必ずしも画像濃度向上できないことがわかった。
その原因については、インクが紙へ着弾した場合のpH変動はそれほど大きくなく、インクのpH領域がカーボンブラック分散体の凝集pH領域まで達しなかったことが原因と思われる。
【0029】
更に鋭意検討した結果、カーボンブラックに酸性カーボンブラックを利用することで
上記を解決できることが判明した。
これは、インクが紙に着弾した際、アルカリ成分が紙に浸透した際、酸性カーボンブラックがインクのpH変動を酸性側に促進するためだと考えられる。
【0030】
更にインクpHを9.5〜11にすることで、その効果が更に向上する。
【0031】
要するに本発明は、酸性カーボンブラックの分散剤として、一般式(I)で表される化合物を使用し、分散体pHを9.5〜12の条件下で分散することで、pH領域が9.5以上では、カーボンブラック粒径が小さく分散安定性はあるが、pHが9以下になると分散安定性がくずれ、凝集がおこる。このような過程を経て、本発明の良好なカーボンブラック分散体を作成することが可能となった。
【0032】
また上述したカーボンブラック分散体をインクジェットインクに使用し、インクpHを9.5〜11に調整することでインク液は安定だが、インクが紙へ着弾した後のわずかなpH変動においても、酸性カーボンブラックがインクpH変動を促進させるためにカーボンブラックを凝集させることが可能となり、高画像濃度が実現できたと考えられる。
【0033】
本発明の「顔料分散体」及び「インクジェット記録用インク」において、一般式(I)で表される化合物の量は、カーボンブラックの種類により適宜選択する必要があるが、カーボンブラック1重量部に対し、0.005〜5重量部が好ましい。顔料1重量部に対し0.01〜2重量部でも実用上問題のない均一な分散が得られるが、最も好ましいのは顔料1重量部に対し0.02〜0.5重量部である。0.01〜2重量部の範囲であると、顔料の分散性が向上すると共に顔料分散体やインクの経時安定性が向上する傾向にある。特に0.02〜0.5重量部の範囲では、顔料分散体及びインクの経時安定性が最も向上する。
【0034】
また上記効果を損なわない範囲で、他の分散剤との併用も可能である。但し前述したように、他の分散剤でカーボンブラックを分散した後に、一般式(I)で表される化合物を添加しても画像濃度効果が得られないので、注意が必要である。
他分散剤として、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等の種々の界面活性剤や高分子型の分散剤を画像濃度効果を損なわない範囲で併用して使用することが可能である。
【0035】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリルスルホン塩酸、ジエチルスルホ琥珀酸塩及びジエチルヘキシルスルホ琥珀酸ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
【0036】
カチオン界面活性剤としては、例えば、2−ビニルピリジン誘導体、ポリ−4−ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン及びその他イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0037】
ノニオン界面活性剤としては、次のようなものが挙げられる。
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシアリルキルアルキルエーテル等のエーテル系;
ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート及びポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;
2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレングリコール系
【0038】
顔料分散体の分散媒としては水を含むことが望ましいが、必要に応じて各種有機溶媒を併用してもよい。例えば、水溶性有機溶媒としてメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン等のピロリドン誘導体、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンなどが挙げられる。
【0039】
本発明ではインクと凝集/増粘作用を引き起こす前処理液を併用することも可能である。
前処理液で記録媒体表面を加工した後、本発明インクで画像形成を行えば更に画像濃度への効果が見られる。
【0040】
本発明の前処理液は下記多価金属塩を含んだものも良好であるが、前処理液として酸性を示すものが好ましい。
下記多価イオンの例として、アルカリ金属イオン、Ca、Cu、Ni、Mg、Zn、Ba等の2価金属イオン、Al、Fe、Cr等の3価金属イオン等が挙げられる。
水溶性金属塩を構成する陰イオンとしては、クエン酸、酒石酸、酢酸、乳酸、シュウ酸、炭酸,フマル酸、サリチル酸、安息香酸等の有機酸イオンやOH、Cl、NO、I、Br、ClOの無機イオン等が挙げられる。また硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウム等もが挙げられる。
水溶性金属塩は、前処理剤に対する添加量として、1%〜10%であることが好ましい。
【0041】
前処理液には必要に応じて、樹脂、湿潤剤、界面活性剤、浸透剤、pH調整剤、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤等の各種添加剤を配合することができる。これらの添加剤は顔料分散体の添加剤と共通しているので、詳細については後述する。
【0042】
また、インクの凝集剤として水溶性金属塩(CaCl等)、アルキレンアミン(長鎖アルキルイソシアネート変成ポリエチレンイミン等)、酸(乳酸やマレイン酸)等を使用することも可能である。
【0043】
前処理液による記録媒体表面の処理方法は、インクジェット方式、スプレー、ロールコート、ワイヤ−バーなどの公知の方法を利用できる。
【0044】
また黒インクの他にカラーインク/無色インクを本発明インクジェット記録方式に使用することも可能である。
マゼンタ顔料としては、ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
シアン顔料としては、ピグメントブルー1、2、3、15、15:3、15:4、16、22、60、バットブルー4、60等が挙げられる。
イエロー顔料としては、ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、114、120、128、129、138、150、151、154、155、180等が挙げられる。
なお、イエロー顔料としてピグメントイエロー74、マゼンタ顔料としてピグメントレッド122、ピグメントバイオレット19、シアン顔料としてピグメントブルー15を用いることにより、色調、耐光性が優れ、バランスの取れたインクを得ることができる。
顔料分散体中、或いは顔料インク中における顔料濃度は、それぞれ0.1〜50重量%が好ましく、0.1〜30重量%が特に好ましい。
これらは前述した分散剤等で分散し使用することができる。
【0045】
顔料分散体及びインクには必要に応じて、樹脂、湿潤剤、界面活性剤、浸透剤、pH調整剤、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤等の各種添加剤を配合することができる。
湿潤剤の例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、その他の湿潤剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0046】
多価アルコール類としては、例えば、グリセリン、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、エチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール、などが挙げられる。
【0047】
多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、などが挙げられる。
【0048】
多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、などが挙げられる。
【0049】
含窒素複素環化合物としては、例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミイダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン、などが挙げられる。
アミド類としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、などが挙げられる。
アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、などが挙げられる。
含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール、などが挙げられる。
【0050】
その他の湿潤剤としては糖類が好ましい。糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類、四糖類を含む)、多糖類、などが挙げられる。具体的には、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、などが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖〔例えば、一般式:HOCH(CHOH)nCHOH(n=2〜5の整数)で表わされる糖アルコールなど〕、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。これらの中でも、糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。
上記湿潤剤の中でも、保存安定性、吐出安定性の点から、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0051】
顔料と湿潤剤との配合比は、ヘッドからのインク吐出安定性に非常に影響がある。顔料固形分が多いのに湿潤剤の配合量が少ないと、ノズルのインクメニスカス付近の水分蒸発が進み、吐出不良をもたらすことがある。
インク中の湿潤剤の含有量は20〜35重量%程度であるが、22.5〜32.5重量%がより好ましい。この範囲であれば、インクの乾燥性、保存試験、信頼性試験などの結果が非常に良好である。含有量が20重量%未満では、ノズル面上でインクが乾燥し易くなって吐出不良が生じることがあり、35重量%を超えると、紙面上での乾燥性に劣るため普通紙上の文字品位が低下することがある。
【0052】
前記界面活性剤としては、顔料の種類や湿潤剤との組み合わせに応じて、分散安定性を損なわず、表面張力が低く、レベリング性の高いものを用いる。例えばフッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が挙げられるが、フッ素系界面活性剤が好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素が置換した炭素数が2〜16のものが好ましく、4〜16のものがより好ましい。フッ素置換炭素数が2未満では、フッ素の効果が得られないことがあり、16を超えると、インク保存性などの問題が生じることがある。
フッ素系界面活性剤の例としては、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物、などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少なく、特に好ましい。
【0053】
パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、などが挙げられる。
パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、などが挙げられる。
パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルリン酸エステルの塩、などが挙げられる。
パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩、などが挙げられる。
これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)などが挙げられる。
【0054】
フッ素系界面活性剤としては、適宜合成したものを用いても、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えばDuPont社製のFS−300、ネオス社製のFT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW、オムノバ社製のPF−151Nなどが挙げられる。
【0055】
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
【0056】
シリコーン系界面活性剤としては、適宜合成したものを用いても市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー社、信越シリコーン社、東レ・ダウコーニング・シリコーン社などから容易に入手できる。
界面活性剤のインク中の含有量は、0.01〜3.0重量%が好ましく、0.5〜2重量%がより好ましい。含有量が0.01重量%未満では、界面活性剤を添加した効果が無くなることがあり、3.0重量%を超えると、記録媒体への浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
【0057】
前記浸透剤としては、20℃の水に対する溶解度が0.2〜5.0重量%のポリオール化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。このようなポリオール化合物としては、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどの脂肪族ジオールが挙げられる。
これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールが特に好ましい。
【0058】
その他の併用できる浸透剤としては、インク中に溶解し、所望の物性に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、エタノール等の低級アルコール類などが挙げられる。
【0059】
浸透剤のインク中の含有量は、0.1〜4.0重量%が好ましい。含有量が0.1重量%未満では、速乾性が得られず滲んだ画像となることがあり、4.0重量%を超えると着色剤の分散安定性が損なわれ、ノズルが目詰まりしやすくなったり、また記録媒体への浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
【0060】
前記pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼさずにpHを7〜11に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルコールアミン類、アルカリ金属水酸化物、アンモニウム水酸化物、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、などが挙げられる。pHが7未満又は11を超えると、インクジェットのヘッドやインク供給ユニットを溶かし出す量が大きくなり、インクの変質や漏洩、吐出不良などの不具合が生じることがある。
アルコールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3プロパンジオール等が挙げられる。
アルカリ金属元素の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
アンモニウムの水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物などが挙げられる。
アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0061】
前記防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、等が挙げられる。
前記キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が挙げられる。
【0062】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、りん系酸化防止剤、などが挙げられる。
フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)としては、例えば、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−2,4,8,10−テトライキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、などが挙げられる。
【0063】
アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチル−フェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ジヒドロキフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、などが挙げられる。
【0064】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−β,β’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイドなどが挙げられる。
前記リン系酸化防止剤としては、トリフェニルフォスファイト、オクタデシルフォスファイト、トリイソデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、トリノニルフェニルフォスファイトなどが挙げられる。
【0065】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤などが挙げられる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
サリチレート系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリチレート、p−tert−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレートなどが挙げられる。
前記シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート、ブチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレートなどが挙げられる。
ニッケル錯塩系紫外線吸収剤としては、例えば、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)−n−ブチルアミンニッケル(II)、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)−2−エチルヘキシルアミンニッケル(II)、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)トリエタノールアミンニッケル(II)などが挙げられる。
【0066】
本発明における顔料分散体は、公知の方法、例えば顔料、水、水溶性有機溶剤、界面活性剤等の顔料分散体原料を、サンドミル、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、ナノマイザー、ホモジナイザー、超音波分散機等を用いて充分に分散処理し、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、必要に応じて脱気することによって得られる。
本発明において、顔料分散体のカーボンブラックの固形分濃度は、顔料の種類やインクの用途やインクに含有させる顔料量によって便宜設定すれば良く、通常0.1重量%〜30重量%の範囲で設定される。
インクジェットの画像濃度に最適な顔料量をインクに含有させるために必要な顔料分散体の顔料固形分は10重量%〜25重量%、好ましくは15重量%〜20重量%である。
分散後のカーボンブラックの粒子径については、体積平均粒子径D50が50nmから500nmが好ましい。50nm以下であると画像形成時の画像の耐擦れ性がおとり500nmを越えると、インクジェットヘッドからインク吐出性が悪くなる傾向がある。
【0067】
また、本発明で用いる顔料を含むインクジェット記録用インクは、公知の方法、例えば顔料分散体、水、水溶性有機溶剤、界面活性剤等を、サンドミル、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、ナノマイザー、ホモジナイザー、超音波分散機等を用いて攪拌混合し、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、必要に応じて脱気することによって得られる。
インク中の顔料の濃度はインク全量に対して1〜20重量%が好ましい。1重量%未満では画像濃度が低いため印字の鮮明さに欠け、20重量%より多いとインクの粘度が高くなる傾向があるばかりでなく、ノズルの目詰まりが発生しやすくなる。
水溶性有機溶剤の含有量は、インク全量に対して50重量%以下、好ましくは5〜40重量%、更に好ましくは10〜35重量%である。
また、インクには顔料分散体への添加剤で説明した材料と同様の添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0068】
上記前処理液やインクジェット記録用インクは、容器に収容しカートリッジとして用いることができる。
また、本発明の前処理液とインクジェット記録用インクのセットを容器に収容してカートリッジとし、これを搭載したインクジェット記録装置を用いて記録媒体に印字し、画像形成物を得ることができる。
印字する方法としては連続噴射型やオンデマンド型があり、オンデマンド型としては、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。
【0069】
本発明の画像形成方法、及びそれを実施するインクジェット記録装置の一例について、図面を用いて説明する。
図1のインクジェット記録装置は、前処理液及びインクを収納したカートリッジ(20)が搭載され、このカートリッジから前処理液及びインクが記録ヘッドに供給される。ここで、カートリッジ(20)は前処理液用と色毎のインク用が分離された状態で取り付けられている。
記録ヘッド(1)は、キャリッジ(18)に搭載され、主走査モータ(24)で駆動されるタイミングベルト(23)によってガイドシャフト(21)(22)にガイドされて移動する。一方、被記録材はプラテンによって記録ヘッドと対面する位置に置かれる。
【0070】
図2は、記録ヘッドの一例のノズル面の拡大図である。前処理液が吐出されるノズル(31)が縦方向に設けられ、ノズル(32)(33)(34)(35)からはそれぞれイエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクが吐出される。
また、図3のように、記録ヘッドのノズルを全て横方向に並べて構成することも可能である。図中のノズル(36)(41)は前処理液の吐出ノズルであり、ノズル(37)(38)(39)(40)からは、それぞれイエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクが吐出される。このような態様の記録ヘッドでは、前処理液の吐出ノズルが左右の端に設けられているため、記録ヘッドがキャリッジ上を往復する往路、復路いずれにおいても印字が可能である。すなわち、往路、復路のいずれにおいても前処理液を先に付着させて、その上からカラーインクを付着させること、あるいは、その逆が可能であり、記録ヘッドの移動方向の違いによる画像濃度差が生じない。
上記インクジェット記録装置は、カートリッジを取り替えることにより前処理液とインクの補充が可能である。また、このカートリッジは記録ヘッドと一体化されたものであってもよい。
【0071】
図4、図5に、前処理液及びインクを収納可能なカートリッジを示す。このカートリッジは前処理液とインクのいずれも収納することができる。
インクと前処理液とは、記録ヘッドから同一箇所に重ねて吐出されることが最も好ましい。しかし、本発明では、例えば、前処理液を間引いて付与し、滲み等によって拡大した前処理液の上にインクを重ねたり、画像の輪郭部だけに前処理液を付与し、その上にインクの一部を重ねても十分効果が得られる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例及び比較例では、顔料分散体を作成し、これを用いてインクを作成した。また、それぞれ前処理液を作成した。なお、例中の「部」及び「%」は重量基準である。
【実施例1】
【0073】
<実施例1の顔料分散体の作成>
下記処方の材料をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製KDL型バッチ式)により、0.3mmジルコニアビーズを用いて周速10m/s、液温10℃で5分間分散した。次いで、遠心分離機(久保田商事社製Model−3600)により粗大粒子を分離し、平均粒子径約120nm、標準偏差51.2nmのカーボンブラック顔料分散体1を得た。
【0074】
(実施例1の顔料分散体処方)
・カーボンブラック(degussa社製:ガスブラック、NIPEX150)
20.0部
・ドデシビス−(アミノエチル)グリシンナトリウム水溶液(固形分30%) 8.3部
・NaOH水溶液(固形分20%) 1.4部
・蒸留水 70.3部
【0075】
<実施例1のインクの作成>
下記処方の材料を30分間混合攪拌し、インク1を作成した。
(実施例1のインク処方)
・実施例1の顔料分散体(顔料濃度20%) 40.0部
・グリセリン 5.5部
・1,3−ブタンジオール 16.5部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0部
・フッ素系界面活性剤(固形分40%) 2.5部
(DuPont社製:Zonyl FS−300)
・フルオロエチレン/ビニルエーテル交互共重合体(固形分50%) 6.0部
(旭硝子社製:ルミフロンFE4300、平均粒子径150nm、MFT30℃以下)
・2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール水溶液(固形分40%)1.5部
・蒸留水 26.0部
【実施例2】
【0076】
(顔料分散体)
実施例1の分散剤ドデシルジアミノエチルグリシンの代わりにテトラデシルジアミノエチルグリシンを用い、実施例1の(実施例1の顔料分散体処方)記載のNaOH水溶液の重量部を、表1記載の分散体のpHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整した以外は実施例1同様にして、実施例2の顔料分散体を作成した。
(インク液)
実施例1の(実施例1のインク処方)で実施例1の顔料分散体の代わりに実施例2の顔料分散体を使用し、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール水溶液の重量部を表1記載のインクpHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整した以外は実施例1同様にして実施例2のインク液を得た。
【実施例3】
【0077】
(顔料分散体)
実施例1の分散剤ドデシルジアミノエチルグリシンの代わりにデシルジアミノエチルグリシンを用い、実施例1の(実施例1の顔料分散体処方)記載のNaOH水溶液の重量部を、表1記載の分散体のpHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整した以外は実施例1同様にして、実施例3の顔料分散体を作成した。
(インク液)
実施例1の(実施例1のインク処方)で実施例1の顔料分散体の代わりに実施例3の顔料分散体を使用し、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール水溶液の重量部を表1記載のインクpHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整した以外は実施例1同様にして実施例3のインク液を得た。
【実施例4】
【0078】
(顔料分散体)
実施例1の分散剤ドデシルジアミノエチルグリシンの代わりにヘキサデシルジアミノエチルグリシンを用い、実施例1の(実施例1の顔料分散体処方)記載のNaOH水溶液の重量部を、表1記載の分散体のpHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整した以外は実施例1同様にして、実施例4の顔料分散体を作成した。
(インク液)
実施例1の(実施例1のインク処方)で実施例1の顔料分散体の代わりに実施例4の顔料分散体を使用し、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール水溶液の重量部を表1記載のインクpHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整した以外は実施例1同様にして実施例4のインク液を得た。
【実施例5】
【0079】
(顔料分散体)
実施例1の(実施例1の顔料分散体処方)記載のNaOH水溶液の重量部を、表1記載の分散体のpHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整した以外は実施例1同様にして、実施例5の顔料分散体を作成した。
(インク液)
実施例1の(実施例1のインク処方)で実施例1の顔料分散体の代わりに実施例5の顔料分散体を使用し、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール水溶液の重量部を表1記載のインクpHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整した以外は実施例1同様にして実施例5のインク液を得た。
【実施例6】
【0080】
(顔料分散体)
実施例1の(実施例1の顔料分散体処方)記載のNaOH水溶液の重量部を、表1記載の分散体のpHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整した以外は実施例1同様にして、実施例6の顔料分散体を作成した。
(インク液)
実施例1の(実施例1のインク処方)で実施例1の顔料分散体の代わりに実施例6の顔料分散体を使用し、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール水溶液の重量部を表1記載のインクpHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整した以外は実施例1同様にして実施例6のインク液を得た。
【実施例7】
【0081】
(顔料分散体)
実施例1の(実施例1の顔料分散体処方)記載のNaOH水溶液の重量部を、表1記載の分散体のpHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整した以外は実施例1同様にして、実施例7の顔料分散体を作成した。
(インク液)
実施例1の(実施例1のインク処方)で実施例1の顔料分散体の代わりに実施例7の顔料分散体を使用し、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール水溶液の重量部を表1記載のインクpHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整した以外は実施例1同様にして実施例7のインク液を得た。
【実施例8】
【0082】
(顔料分散体)
実施例1の(実施例1の顔料分散体処方)記載のNaOH水溶液の重量部を、表1記載の分散体のpHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整した以外は実施例1同様にして、実施例8の顔料分散体を作成した。
(インク液)
実施例1の(実施例1のインク処方)で実施例1の顔料分散体の代わりに実施例8の顔料分散体を使用し、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール水溶液の重量部を表1記載のインクpHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整した以外は実施例1同様にして実施例8のインク液を得た。
【実施例9】
【0083】
(顔料分散体)
実施例1の(実施例1の顔料分散体処方)記載のNaOH水溶液の重量部を、表1記載の分散体のpHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整した以外は実施例1同様にして、実施例9の顔料分散体を作成した。
(インク液)
実施例1の(実施例1のインク処方)で実施例1の顔料分散体の代わりに実施例9の顔料分散体を使用し、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール水溶液の重量部を表1記載のインクpHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整した以外は実施例1同様にして実施例9のインク液を得た。
【実施例10】
【0084】
(顔料分散体)
実施例1の(実施例1の顔料分散体処方)記載の カーボンブラック(degussa社製:ガスブラック、NIPEX150)を、カーボンブラック(degussa社製:ガスブラック、FW200)にし、NaOH水溶液の重量部を表1記載の分散体pHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になる様、蒸留水を調整した以外は実施例1同様にして、実施例10の顔料分散体を作成した。
(インク液)
実施例1の(実施例1のインク処方)記載の実施例1の顔料分散体の代わりに実施例10の顔料分散体を使用し、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール水溶液の重量部を、表1記載のインクpHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるのうに、蒸留水を調整した以外は実施例1同様にして、実施例10のインク液を得た。
【実施例11】
【0085】
<前処理液の作成>
・乳酸水溶液(20重量%) 40.0部
・グリセリン 5.5部
・1,3−ブタンジオール 16.5部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0部
・フッ素系界面活性剤(固形分濃度40重量%) 2.5部
(DuPont社製、 Zonyl FS−300)
・蒸留水 33.5部
【0086】
(顔料分散体)及び(インク液)
実施例11の顔料分散体及び、実施例11のインクは実施例1と同様にして作成した。
これらの結果、および印字への使用による評価結果は、表1に纏めて示される。
【0087】
【表1】

【0088】
[比較例1]
実施例1の(実施例1の顔料分散体処方)記載のNaOH水溶液の重量部を、表2記載の比較例1の分散体pHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整し、比較例1の顔料分散体を作成しようとしたが、ペースト状となり分散ができない状態であった。
【0089】
[比較例2]
実施例1の(実施例1の顔料分散体処方)記載のNaOH水溶液の重量部を、表2記載の比較例2分散体pHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整し、比較例2の顔料分散体を作成しようとしたが、ペースト状となり分散ができない状態であった。
【0090】
[比較例3]
実施例1の(実施例1の顔料分散体処方)記載のカーボンブラック(degussa社製:ガスブラック、NIPEX150)を、カーボンブラック(degussa社製:NIPEX60)にし、NaOH水溶液の重量部を表2記載の比較例3の分散体pHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整した以外は実施例1同様にして、比較例3の顔料分散体を作成した。
【0091】
[比較例4]
(顔料分散体)
実施例1の(実施例1の顔料分散体処方)記載のドデシビス−(アミノエチル)グリシンナトリウム水溶液(固形分30%)の代わりに、スチレン−アクリレート−メタクリル酸のジエチルアミン塩(25%)を10重量部使用し、NaOH水溶液の重量部を表2記載の分散体pHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整して、比較例4の顔料分散体を作成した。
(インク液)
実施例1の(実施例1のインク処方)において、実施例1の顔料分散体の代わりに比較例4の顔料分散体を使用し、ドデシビス−(アミノエチル)グリシンナトリウム水溶液(固形分30%)を3.3重量部追加添加し、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール水溶液の重量部を表2記載のインクpHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように蒸留水を調整した以外は、実施例1同様にして、比較例4のインク液を得た。
【0092】
[比較例5]
(顔料分散体)
実施例1の(実施例1の顔料分散体処方)記載のカーボンブラック(degussa社製:ガスブラック、NIPEX150)を、CIダイレクトブラック(水溶性染料)にし、NaOH水溶液の重量部を、表2記載の分散体pHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整し、実施例1同様にして、比較例5の染料液を作成した。
(インク液)
実施例1の(実施例1のインク処方)記載の実施例1の顔料分散体の代わりに比較例5の染料液を使用し、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール水溶液の重量部を、表2記載の比較例5のインクpHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整した以外は、実施例1同様にして、比較例5のインク液を得た。
【0093】
[比較例6]
(顔料分散体)
実施例1の(実施例1の顔料分散体処方)記載のドデシビス−(アミノエチル)グリシンナトリウム水溶液(固形分30%)の代わりに、表2記載の比較例6の分散剤を使用し、NaOH水溶液の重量部を表2記載の分散体pHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整して、比較例6の顔料分散体を作成した。
(インク液)
実施例1の(実施例1の顔料分散体処方)記載のドデシビス−(アミノエチル)グリシンナトリウム水溶液(固形分30%)の代わりに、表2記載の比較例6の分散剤を使用し、NaOH水溶液の重量部を表2記載の比較例6のインク液pHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整して、比較例6のインク液を作成した。
【0094】
[比較例7]
(顔料分散体)
実施例1の(実施例1の顔料分散体処方)記載のドデシビス−(アミノエチル)グリシンナトリウム水溶液(固形分30%)の代わりに、表2記載の比較例7の分散剤を使用し、NaOH水溶液の重量部を表2記載の比較例7の分散体pHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整して、比較例7の顔料分散体を作成した。
(インク液)
実施例1の(実施例1の顔料分散体処方)記載のドデシビス−(アミノエチル)グリシンナトリウム水溶液(固形分30%)の代わりに、表2記載の比較例7の分散剤を使用し、NaOH水溶液の重量部を表2記載のインク液pHになるよう調整し、それにあわせ全重量部が100重量部になるように、蒸留水を調整して、比較例7のインク液を作成した。
上記実施例及び比較例のインク及を下記方法にて保存安定性を評価し、更に上記実施例及び比較例のインク及び前処理液(実施例8の場合のみ使用)を、カートリッジに充填し、図1記載のインクジェットプリンターに装着して印字実験を行ない、下記のようにして画像濃度と保存安定性を評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0095】
(1)画像濃度
ゼロックス社製PPC用紙4024(非平滑紙)に図1のインクジェットプリンタで印字し印字画像をXrite濃度計938で測定した。
数値が大きい方が良好である。
【0096】
【表2】

【0097】
以上の結果によれば、本発明は、平滑紙及び非平滑紙でも高画像濃度が実現でき、画像形成方法、インクジェット用インク液、カートリッジ、インクジェット記録装置、画像形成物を提供できるという極めて優れた効果を奏するものであることが分かる。
【符号の説明】
【0098】
1 記録ヘッド
2 本体筐体
7 処理液、記録液共通カートリッジ
16 ギア機構
17 副走査モーター
18 キャリッジ
20 記録液カートリッジ
21 ガイドシャフト
22 ガイドシャフト
23 タイミングベルト
24 主走査モーター
25 主走査モーター
26 主走査モーター
27 主走査モーター
31 処理液が吐出されるノズル
32 記録液が吐出されるノズル
33 記録液が吐出されるノズル
34 記録液が吐出されるノズル
35 記録液が吐出されるノズル
36 処理液が吐出されるノズル
37 記録液が吐出されるノズル
38 記録液が吐出されるノズル
39 記録液が吐出されるノズル
40 記録液が吐出されるノズル
41 カートリッジ筐体
42 液吸収体
43 ケース
44 上蓋部材
45 液供給口
46 シールリング
47 大気解放口
48 溝
50 キャップ部材
51 液漏れ防止用突部
53 キャップ部材
55 シール部材
71 カートリッジ位置決め部
81 カートリッジ着脱用突状部
81a カートリッジ着脱用指掛け部
82 カートリッジ着脱用窪み部
A 空間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0099】
【特許文献1】特許第4049533号公報
【特許文献2】特開2009−41022号公報
【特許文献3】特許第3679481号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散媒体液中に微分散された顔料粒子を含み、インクジェット記録用インクの調製のための顔料分散体であって、前記顔料粒子が酸性カーボンブラックであり、つぎの一般式(I)で表される化合物を少なくとも一種類以上含有し、pHが9.5〜12であることを特徴とするインクジェット記録用インクのための顔料分散体。
【化1】

(式中、MはHまたはLi,、Na、K等のアルカリ金属、有機塩基を表し、nは10〜16の整数を表す。)
【請求項2】
水、浸透剤、及び微分散された顔料を含むインクジェット記録用インクにおいて、請求項1に記載の顔料分散体を用いたことを特徴とするインクジェット記録用インク。
【請求項3】
pHが9.5〜11に調整されたことを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項4】
分散媒体液中に微分散された顔料粒子を含みインクジェット記録用インクの調製のための顔料分散体の製造方法であって、前記顔料粒子が酸性カーボンブラックであり、つぎの一般式(I)で表される化合物を少なくとも一種類以上含有する前記分散媒体液中で、該顔料粒子を、pHが9.5〜12の条件下で、微分散処理する工程を少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録用インクのための顔料分散体の製造方法。
【化2】

(式中、MはHまたはLi,、Na、K等のアルカリ金属、有機塩基を表し、nは10〜16の整数を表す。)
【請求項5】
水性液媒体中に、分散された顔料粒子を含むインクジェット記録用インクの製造方法において、分散媒体液中に微分散された酸性カーボンブラック顔料粒子とつぎの一般式(I)で表される化合物を少なくとも一種類以上含有しpHが9.5〜12であるインクジェット記録用インクのための顔料分散体を、水および浸透剤を含む水系液媒体と混合してpHが9.5〜11のインク液を調製する工程を少なくとも有することを特徴とする中にインクジェット記録用インクの製造方法。
【化3】

(式中、MはHまたはLi,、Na、K等のアルカリ金属、有機塩基を表し、nは10〜16の整数を表す。)
【請求項6】
請求項2または3に記載のインクジェット記録用インクを容器中に収容したことを特徴とするカートリッジ。
【請求項7】
請求項6に記載のカートリッジを搭載したインクジェット記録装置。
【請求項8】
記録液を微細な吐出口から液滴として吐出、飛翔させることにより、記録媒体に画像を形成するインクジェット記録方法であって、該記録液として、請求項2または3に記載のインクジェット記録用インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項9】
請求項7に記載のインクジェット記録装置で印字された画像形成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−7101(P2012−7101A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145172(P2010−145172)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】