説明

インクジェット記録用インク、顔料分散体、画像形成方法、カートリッジ、インクジェット記録装置、画像形成物

【課題】インクの保存安定性が良好で、平滑紙と非平滑紙のいずれでも高画像濃度が実現できるインクジェット記録用インク、該インクに用いる顔料分散体、前処理液と前記インクを用いた画像形成方法、前記インク及び前処理液を容器に収容したカートリッジ、該カートリッジを搭載したインクジェット記録装置、前記インクを使用して作成された画像形成物の提供。
【解決手段】水、顔料、高分子化合物、及びヒドラジン化合物を含むインクジェット記録用インクにおいて、該高分子化合物が、アニオン構成単位を含まず、ヒドラジノ基と反応可能なカルボニル基を有する単位及びアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基の少なくとも一つを有する単位を含み、前記カルボニル基を有する単位が前記高分子化合物全体の40〜90質量%であり、pHが9以上であるインクジェット記録用インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用インク、該インクに用いる顔料分散体、前処理液と前記インクを用いた画像形成方法、前記インク及び前処理液を容器に収容したカートリッジ、該カートリッジを搭載したインクジェット記録装置、前記インクを使用して作成された画像形成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成方法として、他の記録方式に比べてプロセスが簡単でフルカラー化が容易であり、簡略な構成の装置であっても高解像度の画像が得られる利点があることから、インクジェット記録方式が普及してきた。
インクジェット記録方式は、熱による発生する泡や、ピエゾや静電等を利用して発生させた圧力により少量のインクを飛翔させ、紙などの記録媒体に付着させた後、素早く乾燥させて(あるいは記録媒体に浸透させて)画像を形成する方式であり、パーソナルを始め産業用としてのプリンターや印刷用途まで拡大してきている。
また産業用途としての需要が高まり、高速化印字や様々な記録媒体(紙等のメディア)に対する対応性が望まれている。特に高速化に伴いラインヘッドを搭載したインクジェットプリンターも必要となってきている。また、環境面や安全性の点から水系インクに対する要望が高くなっている。
しかしながら、水系インクは媒体の影響を受け易く、画像に各種の問題を引き起こしている。特に記録媒体として非平滑性の紙を使用する場合は顕著である。水系インクの場合、乾燥までに時間を要し紙との相溶性も良好なため、紙への浸透性が高く、特に未コーティングの比較的非平滑な紙の場合、色材が紙中に浸透することで、形成された色材の色濃度が低くなってしまうという溶剤インクでは見られなかった問題が生じている。
特に、高速印字化が進むにつれ、記録媒体に付着したインクの乾燥速度を早める為に、インクに浸透剤を添加し溶媒である水を記録媒体に浸透させることにより乾燥を早める手段がとられる。しかし、浸透剤を含有させると、水だけでなく色材の記録媒体への浸透性が向上してしまい、更に画像濃度が低下してしまうという問題が顕著に発生してしまう。
【0003】
画像濃度向上に関しては、着色剤とカルボニル基を有するウレタンアクリル樹脂とジヒドラジド化合物の架橋成分を含むインクが提案されている(特許文献1)。しかしながら、水分が記録媒体(紙)に浸み込まないと樹脂粒子同士が接触しない為、カルボニル基とジヒドラジド化合物の架橋反応が起こらない。故に、インクが紙に着弾した時点では架橋反応によるインク増粘はあまり起こらず、顔料の大半が紙内部に浸透し、非平滑紙への画像濃度を向上させる効果は不十分であった。
また、カチオン性基を有する高分子分散剤を使用した黒インクとアニオン性のカラーインクを組み合わせることが提案されている(特許文献2)。カチオン性高分子分散剤は、カチオン性モノマーと疎水性モノマーと任意のモノマーで構成され、カチオン性モノマーの一例としてジメチルアクリルアミド、疎水モノマーとしてスチレンやアクリルエステル、任意のモノマーとしてダイアセトンアクリルアミドが記載されている。これはカチオン性の黒インクとアニオン性のカラーインクを接触させることにより凝集させ、滲みや浸透を抑えるものであるが、黒インク単独での画像濃度効果は不十分である。
【0004】
また、N−置換アクリルアミド単位とカルボニル基を有する高分子化合物により被覆された着色剤とヒドラジン化合物を含むインクが提案されている(特許文献3)。またN−置換アクリルアミド単位を有するモノマーの一例として、ジメチルアクリルアミド、カルボニル基を有するモノマーの一例として、ダイアセトンアクリルアミドが記載され、N−置換アクリルアミド単位を有するモノマーの最適比率が50%以上、カルボニル基を有するモノマーの最適比率が30%以下と記載されている。
しかし、上記インクの場合、ヒドラジン化合物との架橋反応は水が十分乾燥してからでないと進まず、形成画像の耐こすれ性は向上しても着弾時のインク増粘はほとんど起こらず、画像濃度への効果は少ない。また、親水性が乏しい為、着色剤の分散効果を出す為にはアクリル酸等のアニオン性単位を導入する必要があり、その結果インク粘度が高くなるという問題があり、さらに熱によりN−置換アクリルアミド単位の不溶化が発生する為、インク保存安定性に欠けるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、インクの保存安定性が良好で、平滑紙と非平滑紙のいずれでも高画像濃度が実現できるインクジェット記録用インク、該インクに用いる顔料分散体、前処理液と前記インクを用いた画像形成方法、前記インク及び前処理液を容器に収容したカートリッジ、該カートリッジを搭載したインクジェット記録装置、前記インクを使用して作成された画像形成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、次の1)〜9)の発明によって解決される。
1) 水、顔料、高分子化合物、及びヒドラジン化合物を含むインクジェット記録用インクにおいて、該高分子化合物が、アニオン構成単位を含まず、ヒドラジノ基と反応可能なカルボニル基を有する単位及びアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基の少なくとも一つを有する単位を含み、前記カルボニル基を有する単位が前記高分子化合物全体の40〜90質量%であり、pHが9以上であることを特徴とするインクジェット記録用インク。
2) 前記高分子化合物と顔料を、該高分子化合物と顔料からなるpH9〜11の顔料分散体として含有することを特徴とする1)記載のインクジェット記録用インク。
3) 前記ヒドラジノ基と反応可能なカルボニル基が、ダイアセトンアクリルアミド基又はアセトアセチル基であることを特徴とする1)又は2)記載のインクジェット記録用インク。
4) アニオン構成単位を含まず、ヒドラジノ基と反応可能なカルボニル基を有する単位及びアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基の少なくとも一つを有する単位を含み、前記カルボニル基を有する単位が全体の40〜90質量%である高分子化合物と、顔料と水からなる、pH9〜11の顔料分散体。
5) 前記ヒドラジノ基と反応可能なカルボニル基が、ダイアセトンアクリルアミド基又はアセトアセチル基であることを特徴とする4)記載の顔料分散体。
6) 酸性化合物を含有する前処理液を用いて記録媒体表面を前処理した後、1)〜3)のいずれかに記載のインクジェット記録用インクを用いて該記録媒体表面上に画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
7) 1)〜3)のいずれかに記載のインクジェット記録用インク及び前処理液を容器に収容したことを特徴とするカートリッジ。
8) インクジェット記録用インクを吐出させるヘッドを備え、7)に記載のカートリッジを搭載したことを特徴とするインクジェット記録装置。
9) 1)〜3)のいずれかに記載のインクジェット記録用インクを用いて作成されたことを特徴とする画像形成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、インクの保存安定性が良好で、平滑紙と非平滑紙のいずれでも高画像濃度が実現できるインクジェット記録用インク、該インクに用いる顔料分散体、前処理液と前記インクを用いた画像形成方法、前記インク及び前処理液を容器に収容したカートリッジ、該カートリッジを搭載したインクジェット記録装置、前記インクを使用して作成された画像形成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】インクジェット記録装置の一例を示す図である。
【図2】記録ヘッドの一例を示す図である。
【図3】記録ヘッドの別の例を示すである。
【図4】記録装置に装填する前のカートリッジの外観斜視図である。
【図5】カートリッジの正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明のインクジェット記録用インク(以下、単にインクということもある)は、水、顔料、高分子化合物、及びヒドラジン化合物を含むインクジェット記録用インクにおいて、該高分子化合物が、アニオン構成単位を含まず、ヒドラジノ基と反応可能なカルボニル基を有する単位及びアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基の少なくとも一つを有する単位を含み、前記カルボニル基を有する単位が前記高分子化合物全体の40〜90質量%であり、pHが9以上であることを特徴とする。
インクに前記高分子化合物とヒドラジン化合物を含有させ、インクのpHを制御することにより、インクの状態では安定であるが、インクが紙に着弾した際にはインクが増粘して顔料が紙表面に留まり易くなるので、インクの保存安定性と高画像濃度を両立させることが出来る。
【0010】
本発明者らが本発明に至った経緯は以下のとおりである。
前記高分子化合物に含まれるカルボニル基がヒドラジド化合物と架橋反応を起こすことは知られており、架橋反応を利用したカルボニル基を含む樹脂の耐水化に利用されることが多い。しかしながら、水中での架橋反応は緩やかであり、インクに使用しても紙着弾後の液体状態では架橋による増粘は起こらず、乾燥した状態で架橋反応が進むので、非平滑紙上では、インクが紙に染み込み画像濃度が向上しなかった。
水中で架橋反応を進める為には架橋点であるカルボニル基を増加させる必要があるが、カルボニル基を増加させると水への親和性が小さくなるため、水系インクに適用する為には、アクリル酸等による親水基を導入する必要がある。しかし、親水基を導入すると樹脂の水溶液時の粘度が大きくなってしまい、インクジェット用インクとして使用した場合、粘度が高すぎる為、インクジェットで吐出できず画像形成が不可能であった。
【0011】
そこで、鋭意検討した結果、ヒドラジノ基と反応可能なカルボニル基を有するモノマー(以下、モノマーAという)に、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基の少なくとも一つを有するモノマー(以下、モノマーBという)を加えると粘度は低減するが、水中で架橋反応を起こさせるためには、モノマーAが30質量%以上必要であり、モノマーBの割合を多くできないことから、インクジェット記録用インクとしては粘度が不十分であり、保存安定性も悪いことが分かった。
そこで、更に検討を重ねた結果、インクのpHを9以上にすれば、粘度と保存安定性が劇的に改善され、画像濃度も向上することを見出した。
そして、モノマーAとモノマーBを組み合わせ、モノマーAの割合を40〜90質量%とし、かつインクのpHを9以上とすることにより、保存安定性がよく画像濃度の優れたインクを得ることができた。
なお、インクpHの上限はpH11である。pH12以上ではインクジェットプリンターのヘッド及び送液部位の腐食を引き起こすため、インクジェット用インクとしてふさわしくない。
【0012】
前記高分子化合物は、モノマーAとモノマーBを共重合させるか、又はモノマーA又はモノマーBに代えて、反応性カルボニル基に変化しうる構造を有するエチレン性不飽和モノマー、又はジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基に変化しうる構造を有するエチレン性不飽和モノマーを用いて共重合させた後、反応性カルボニル基又はジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基に変換させることにより得ることが出来る。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、アニオン性基を含まない他の疎水性モノマーを共重合させることも可能である。
即ち、前記高分子化合物は、下記(A)(B)のモノマーを必須成分として含み、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で下記(C)のモノマーを加えて、窒素雰囲気下、重合開始剤・重合抑止剤を用いる等の公知の方法で合成可能である。
(A)モノマーA、又は共重合後に反応性カルボニル基に変化しうる構造を有するエチレン性不飽和モノマー
(B)モノマーB、又は共重合後にジメチルアミノ基もしくはジエチルアミノ基に変化しうる構造を有するエチレン性不飽和モノマー
(C)カルボン酸やスルホン酸等のアニオン性基を含まない疎水性基を有するビニルモノマー
【0013】
前記高分子化合物における「ヒドラジノ基と反応可能なカルボニル基」の好ましい例として、下記式(1)のアセトアセチル基又は下記式(2)で示される基が挙げられる。
【化1】

【0014】
ヒドラジノ基と反応可能なカルボニル基を有するか、又は該カルボニル基に変化しうる構造を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、ジアセトンアクリレート、アセトアセトキシアクリルアミド、アセトアセトキシメタクリルアミド、アセトアセトキシアクリレート、アセトアセトキシメタクリルレート、アリリデンジアセテート、2−メタリリデンジアセテート、2−フェニルアリリデンジアセテート、クロチリデンジアセテート、シンナミリデンジアセテート、アリリデンジベンゾエート、アリリデンベンゾエートアセテート等のジアセトン系化合物、
アセト酢酸アリル、2−アセトアセトキシエチルアクリレート、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、2−アセトアセトキシプロピルアクリレート、2−アセトアセトキシプロピルメタクリレート、2−シアノアセトアセトキシエチルメタクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸アセト酢酸エステル、
2−アセトアセトキシエチルクロトネート、2−アセトアセトキシプロピルクロトネート等のアルキレングリコールのクロトン酸アセト酢酸エステル、N−(アセトアセトキシメチル)アクリルアミド、N−(アセトアセトキシメチル)メタクリルアミド、N−(アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−(アセトアセトキシエチル)メタクリルアミド等のN−アルキロール(メタ)アクリルアミドのアセト酢酸エステル及び2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルメタクリレート、1,4−ブチレングリコールモノアクリレート、1,4−ブチレングリコールモノメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ヒドロキシスチレン等の水酸基を有するエチレン性不飽和単量体のアセトアセチル化物等が挙げられる。
中でも他の共重合単量体との共重合性や工業生産を行う上での品質の安定性の面から、ジアセトンアクリルアミド及びアセト酢酸アリルが好ましい。
【0015】
ヒドラジノ基と反応可能なカルボニル基を有するエチレン性不飽和モノマーの高分子化合物に占める割合は40〜90質量%であり、好ましくは50〜90質量%、更に好ましくは60〜90質量%である。40質量%未満では画像濃度効果が少なく、90質量%を超えると保存安定性が低下する傾向にある。
ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基を有するエチレン性不飽和単量体の例としては、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドが挙げられる。中でもN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートが安定化や画像濃度の効果の面で最も好ましい。N−置換の炭化水素鎖がエチルよりも長くなると、温度により不水溶化が発生するので不適である。
カルボン酸やスルホン酸等のアニオン性基を含まない疎水性基を有するビニルモノマーとしては、スチレン、ビニルナフタレン等のビニルスチレンやビニルナフタレン及びその誘導体、又は(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0016】
前記高分子化合物は水溶性であり、質量平均分子量は100〜20万が好ましい。また分散剤として使用する為には質量平均分子量は300〜5万が好ましい。
ヒドラジン化合物としては、多官能ヒドラジド化合物が好ましく、例えばカルボヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、ヘキサデカンジオヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4′−ビスベンゼンジヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、N,N′−ヘキサメチレンビスセミカルバジド、イタコン酸ジヒドラジド、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、ブタントリカルボヒドラジド、1,2,3−ベンゼントリヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド、及びポリアクリル酸ヒドラジド(即ち、N−アミノポリアクリルアミド)などが挙げられる他、これらの多官能ヒドラジド化合物にアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類を反応させた多官能ヒドラジド誘導体なども含まれ、中でも安全性やカルボニル基との反応性の点で、アジピン酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジドが好ましい。
インクに対するヒドラジン化合物の添加量は、高分子化合物の種類及び添加量によって変化するが、画像濃度向上効果の点から、質量比で高分子化合物100に対し1〜100、好ましくは5〜50、更に好ましくは8〜20が好ましい。
【0017】
更に、前記高分子化合物は、通常の条件では顔料の分散剤にはならないが、顔料分散時のpHを9以上にすると、顔料への吸着が可能になり、顔料を分散させることができる。分散に際しては、分散前の状態でpHが9以上である必要があり、pHが9未満では分散が不十分であるし、分散後にpHを9以上にしても効果は小さい。
このように、前記高分子化合物を顔料の分散剤として使用し、分散前の顔料分散体のpHを9以上とすることにより、水系での分散が可能となり、該高分子化合物を顔料に付着させて顔料の周囲を覆うことができる為、一層画像濃度を向上させることが出来る。好ましい顔料分散体のpHは9〜11である。
インク中の前記高分子化合物の添加量は、モノマー構成によって適宜調整する必要があるが、顔料に対し0.01〜3質量%の範囲が好ましい。
【0018】
本発明で用いる前処理液は、酸性で水溶性のものであれば特に限定されない。例えば、塩酸、硝酸、硫酸、硫酸アンモニウムなどの無機の酸性物質、酢酸、乳酸やその塩などの酸性物質が挙げられるが、中でも乳酸ナトリウムが画像濃度の点で最も好ましい。
前処理液には必要に応じて、樹脂、湿潤剤、界面活性剤、浸透剤、pH調整剤、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤等の各種添加剤を配合することができる。これらの添加剤は顔料分散体の添加剤と共通しているので、詳細については後述する。
前処理液による記録媒体表面の処理方法は、インクジェット方式、スプレー、ロールコート、ワイヤ−バーなどの公知の方法を利用できる。
【0019】
本発明のインクには、光による退色の面から色材として顔料を用いる。
黒色顔料としてはカーボンブラックが好ましい。その例としてはケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ガスブラック等が挙げられる。また、カーボンブラック表面を酸化処理やアルカリ処理したものも好ましい。樹脂で被覆したり、グラフト処理やカプセル化処理したカーボンブラックも使用可能である。
マゼンタ顔料としては、ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
シアン顔料としては、ピグメントブルー1、2、3、15、15:3、15:4、16、22、60、バットブルー4、60等が挙げられる。
イエロー顔料としては、ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、114、120、128、129、138、150、151、154、155、180等が挙げられる。
なお、イエロー顔料としてピグメントイエロー74、マゼンタ顔料としてピグメントレッド122、ピグメントバイオレット19、シアン顔料としてピグメントブルー15を用いることにより、色調、耐光性が優れ、バランスの取れたインクを得ることができる。
顔料分散体中、或いは顔料インク中における顔料濃度は、0.1〜50質量%が好ましく、0.1〜30質量%が特に好ましい。
【0020】
顔料を分散させるための分散剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等の種々の界面活性剤や高分子分散剤を使用することが可能である。
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリルスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、例えば、2−ビニルピリジン誘導体、ポリ−4−ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、その他のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0021】
ノニオン界面活性剤としては、次のようなものが挙げられる。
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシアリルキルアルキルエーテル等のエーテル系;
ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;
2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレングリコール系
【0022】
顔料がカーボンブラックの場合には、分散能力を考えるとアニオン界面活性剤のナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物が最も好ましい。特に顔料固形分が20質量%以上の場合には、他の分散剤と比較してその効果は顕著である。
しかしながら、画像濃度向上効果を考えた場合は、前述したように、本願発明に係る前記高分子化合物で分散した方が好ましい。
またカーボンブラックとしては、BET表面積100〜400m/gで、一次粒子径10〜30nmのものが、印字画像の濃度が高く安定しており特に好ましい。
分散剤の添加量は顔料の種類により適宜選択する必要があるが、顔料1質量部に対し、0.005〜5質量部が好ましい。顔料がカーボンブラックの場合には、顔料1質量部に対し0.01〜2質量部でも実用上問題のない均一な分散が得られるが、最も好ましいのは顔料1質量部に対し0.02〜0.5質量部である。0.01〜2質量部の範囲であると、顔料の分散性が向上すると共に顔料分散体やインクの経時安定性が向上する傾向にある。特に0.02〜0.5質量部の範囲では、顔料分散体及びインクの経時安定性が最も向上する。
【0023】
顔料分散体の分散媒としては水を含むことが望ましいが、必要に応じて各種有機溶媒を併用してもよい。例えば、水溶性有機溶媒としてメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン等のピロリドン誘導体、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンなどが挙げられる。
【0024】
顔料分散体には、湿潤剤、界面活性剤、浸透剤、pH調整剤、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤等の各種添加剤を配合することができる。
前記湿潤剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、その他の湿潤剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0025】
多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペトリオール、などが挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、などが挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、などが挙げられる。
【0026】
含窒素複素環化合物としては、例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミイダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン、などが挙げられる。
アミド類としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、などが挙げられる。
アミン類としては、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、などが挙げられる。
含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール、などが挙げられる。
【0027】
その他の湿潤剤としては糖類が好ましい。糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類、四糖類を含む)、多糖類、などが挙げられる。具体的には、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、などが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖〔例えば、一般式:HOCH(CHOH)nCHOH(n=2〜5の整数)で表わされる糖アルコールなど〕、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。これらの中でも、糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。
【0028】
上記湿潤剤の中でも、保存安定性、吐出安定性の点から、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
顔料と湿潤剤との配合比は、ヘッドからのインク吐出安定性に非常に影響がある。顔料固形分が多いのに湿潤剤の配合量が少ないと、ノズルのインクメニスカス付近の水分蒸発が進み、吐出不良をもたらすことがある。
インク中の湿潤剤の含有量は20〜35質量%程度であるが、22.5〜32.5質量%がより好ましい。この範囲であれば、インクの乾燥性、保存試験、信頼性試験などの結果が非常に良好である。含有量が20質量%未満では、ノズル面上でインクが乾燥し易くなって吐出不良が生じることがあり、35質量%を超えると、紙面上での乾燥性に劣るため普通紙上の文字品位が低下することがある。
【0029】
前記界面活性剤としては、顔料の種類や湿潤剤との組み合わせに応じて、分散安定性を損なわず、表面張力が低く、レベリング性の高いものを用いる。例えばフッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が挙げられるが、フッ素系界面活性剤が好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素が置換した炭素数が2〜16のものが好ましく、4〜16のものがより好ましい。フッ素置換炭素数が2未満では、フッ素の効果が得られないことがあり、16を超えると、インク保存性などの問題が生じることがある。
フッ素系界面活性剤の例としては、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物、などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少なく、特に好ましい。
【0030】
パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、などが挙げられる。
パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、などが挙げられる。
パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルリン酸エステルの塩、などが挙げられる。
パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩、などが挙げられる。
これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)などが挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、適宜合成したものを用いても、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えばDuPont社製のFS−300、ネオス社製のFT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW、オムノバ社製のPF−151Nなどが挙げられる。
【0031】
シリコーン系界面活性剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
シリコーン系界面活性剤としては適宜合成したものを用いても市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー社、信越シリコーン社、東レ・ダウコーニング・シリコーン社などから容易に入手できる。
界面活性剤のインク中の含有量は、0.01〜3.0質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。含有量が0.01質量%未満では、界面活性剤を添加した効果が無くなることがあり、3.0質量%を超えると、記録媒体への浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
【0032】
前記浸透剤としては、20℃の水に対する溶解度が0.2〜5.0質量%のポリオール化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。このようなポリオール化合物としては、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、などの脂肪族ジオールが挙げられる。
これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールが特に好ましい。
その他の併用できる浸透剤としては、インク中に溶解し、所望の物性に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、エタノール等の低級アルコール類などが挙げられる。
浸透剤のインク中の含有量は、0.1〜4.0質量%が好ましい。含有量が0.1質量%未満では、速乾性が得られず滲んだ画像となることがあり、4.0質量%を超えると着色剤の分散安定性が損なわれ、ノズルが目詰まりしやすくなったり、また記録媒体への浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
【0033】
前記pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼさずにpHを9〜11に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルコールアミン類、アルカリ金属水酸化物、アンモニウム水酸化物、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、などが挙げられる。pHが9未満又は11を超えると、インクジェットのヘッドやインク供給ユニットを溶かし出す量が大きくなり、インクの変質や漏洩、吐出不良などの不具合が生じることがある。
アルコールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
アンモニウム水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物などが挙げられる。
ホスホニウム水酸化物としては、例えば、第4級ホスホニウム水酸化物などが挙げられる。
アルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0034】
前記防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、等が挙げられる。
前記キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が挙げられる。
【0035】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、などが挙げられる。
フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)としては、例えば、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトライキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、などが挙げられる。
【0036】
アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N′−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、などが挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−β,β′−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイドなどが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、トリフェニルフォスファイト、オクタデシルフォスファイト、トリイソデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、トリノニルフェニルフォスファイトなどが挙げられる。
【0037】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤などが挙げられる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2′−ヒドロキシ−5′−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4′−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
サリチレート系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリチレート、p−tert−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレートなどが挙げられる。
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、エチル−2−シアノ−3,3′−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート、ブチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレートなどが挙げられる。
ニッケル錯塩系紫外線吸収剤としては、例えば、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、2,2′−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)−n−ブチルアミンニッケル(II)、2,2′−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)−2−エチルヘキシルアミンニッケル(II)、2,2′−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)トリエタノールアミンニッケル(II)などが挙げられる。
【0038】
本発明のインクは、公知の方法、例えば顔料分散体、水、水溶性有機溶剤、界面活性剤等を、サンドミル、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、ナノマイザー、ホモジナイザー、超音波分散機等を用いて攪拌混合し、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、必要に応じて脱気することによって得られる。
インク中の顔料の濃度はインク全量に対して1〜20質量%が好ましい。1質量%未満では画像濃度が低いため印字の鮮明さに欠け、20質量%より多いとインクの粘度が高くなる傾向があるばかりでなく、ノズルの目詰まりが発生しやすくなる。
水溶性有機溶剤の含有量は、インク全量に対して50質量%以下、好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは10〜35質量%である。
またインクには、必要に応じて、顔料分散体への添加剤で説明した材料と同様の樹脂、湿潤剤、界面活性剤、浸透剤、pH調整剤、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤等の各種添加剤を配合することが出来る。
【0039】
上記前処理液やインクを用いて印字する方法としては、連続噴射型やオンデマンド型があり、オンデマンド型としては、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。
上記前処理液やインクは、容器に収容しカートリッジとして用いることが出来る。
また、本発明インクジェット記録用インクと前処理液のセットを容器に収容してカートリッジとし、これを搭載したインクジェット記録装置を用いて記録媒体に印字し、画像形成物を得ることができる。
図4、図5に、前処理液及びインクを収納可能なカートリッジを示す。このカートリッジは前処理液とインクのいずれも収納することができる。図4は、記録装置に装填する前のカートリッジの外観斜視図、図5はカートリッジの正断面図である。
【0040】
カートリッジ7は、図5に示すように、カートリッジ本体41内に所要の色の記録液を吸収させた記録液吸収体42を収容してなる。カートリッジ本体41は、上部に広い開口を有するケース43の上部開口に上蓋部材44を接着又は溶着して形成したものであり、例えば樹脂成型品からなる。また、記録液吸収体42は、ウレタンフォーム体等の多孔質体からなり、カートリッジ本体41内に圧縮して挿入した後、記録液を吸収させている。
カートリッジ本体41のケース43底部には、記録ヘッド6へ記録液を供給するための記録液供給口45を形成し、この記録液供給口45内周面には、シールリング46を嵌着している。また、上蓋部材44には大気開放口47を形成している。そして、カートリッジ本体41には、装填前の状態で、記録液供給口45を塞ぐと共に、装填時や輸送時等のカートリッジ取扱い時、又は真空包装時に、幅広側壁に係る圧力でケース43が圧縮変形されて内部の記録液が漏洩することを防止するため、キャップ部材50を装着している。
【0041】
また、大気開放口47は、図4に示すように、酸素透過率が100mL/m以上のフィルム状シール部材55を上蓋部材44に貼着してシールしている。このシール部材55は大気開放口47と共にその周囲に形成した複数本の溝48をもシールする大きさにしている。このように大気開放口47を酸素透過率が100mL/m以上のシール部材55でシールし、記録液カートリッジ7を透気性のないアルミラミネートフィルム等の包装部材を用いて減圧状態で包装することにより、記録液充填時や、記録液吸収体42とカートリッジ本体41との間に生じる空間A(図5参照)に存在する大気により記録液中に気体が溶存した時でも、シール部材55を介して記録液中の空気が真空度の高いカートリッジ本体41外の包装部材との間の空間に排出され、記録液の脱気度が向上する。
【0042】
本発明の画像形成方法、及びそれを実施するインクジェット記録装置の一例について、図面を用いて説明する。
図1のインクジェット記録装置は、前処理液及びインクを収納したカートリッジ(20)が搭載され、このカートリッジから前処理液及びインクが記録ヘッドに供給される。ここで、カートリッジ(20)は前処理液用と色毎のインク用が分離された状態で取り付けられている。
記録ヘッド(1)は、キャリッジ(18)に搭載され、主走査モータ(24)で駆動されるタイミングベルト(23)によってガイドシャフト(21)(22)にガイドされて移動する。一方、被記録材はプラテンによって記録ヘッドと対面する位置に置かれる。
【0043】
図2は、記録ヘッドの一例のノズル面の拡大図である。前処理液が吐出されるノズル(30)が縦方向に設けられ、ノズル(31)(32)(33)(34)からはそれぞれイエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクが吐出される。
また、図3のように、記録ヘッドのノズルを全て横方向に並べて構成することも可能である。図中のノズル(35)(40)は前処理液の吐出ノズルであり、ノズル(36)(37)(38)(39)からは、ぞれぞれイエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクが吐出される。このような態様の記録ヘッドでは、前処理液の吐出ノズルが左右の端に設けられているため、記録ヘッドがキャリッジ上を往復する往路、復路いずれにおいても印字が可能である。すなわち、往路、復路のいずれにおいても前処理液を先に付着させて、その上からカラーインクを付着させること、あるいは、その逆が可能であり、記録ヘッドの移動方向の違いによる画像濃度差が生じない。
上記インクジェット記録装置は、カートリッジを取り替えることにより前処理液とインクの補充が可能である。また、このカートリッジは記録ヘッドと一体化されたものであってもよい。
インクと前処理液とは、記録ヘッドから同一箇所に重ねて吐出されることが最も好ましい。しかし、本発明では、例えば、前処理液を間引いて付与し、滲み等によって拡大した前処理液の上にインクを重ねたり、画像の輪郭部だけに前処理液を付与し、その上にインクの一部を重ねても十分効果が得られる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例及び比較例では、顔料分散体を作成し、これを用いてインクを作成した。また、それぞれ前処理液を作成した。なお、例中の「部」及び「%」は質量基準である。
【0045】
実施例1
<高分子化合物1の合成>
攪拌機、温度計、滴下ロート及び還流冷却器を付けたフラスコ中にダイアセトンアクリルアミド40部、ジメチルアクリルアミド60部、エタノール50部を入れ、系内を窒素置換した後、系内の温度を80℃まで昇温した。この系に、2,2′−アゾイソブチリロニトリル0.5部を滴下ロートで加えて重合を開始し、6時間重合させた。
重合終了後、エタノール蒸気を吹き込み、ダイアセトンアクリルアミド−ジメチルアクリルアミド共重合体の50%エタノール溶液を得た。エタノールでよく洗浄した後、乾燥させて、ダイアセトンアクリルアミド−ジメチルアクリルアミド共重合体(質量比40:60、高分子化合物1)を得た。更に蒸留水を加えて20%水溶液とした。
【0046】
<顔料分散体1の作成>
(顔料分散体処方)
・カーボンブラック(degussa社製:ガスブラック、NIPEX150)
20部
・ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物Na塩(10%水溶液) 30部
・蒸留水 50部

上記処方の材料をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製KDL型バッチ式)により、0.3mmジルコニアビーズを用いて周速10m/s、液温10℃で5分間分散した。次いで、遠心分離機(久保田商事社製Model−3600)で粗大粒子を分離し、体積平均粒子径約120nm、標準偏差51.2nmのカーボンブラック顔料分散体1を得た。
【0047】
<実施例1のインクの作成>
(インク処方)
・顔料分散体1(顔料濃度20%) 40.0部
・高分子化合物1の20%水溶液 10.0部
・グリセリン 5.5部
・1,3−ブタンジオール 16.5部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0部
・フッ素系界面活性剤(固形分40%) 2.5部
(DuPont社製:Zonyl FS−300)
・フルオロエチレン/ビニルエーテル交互共重合体(固形分50%) 6.0部
(旭硝子社製:ルミフロンFE4300、体積平均粒子径150nm、
MFT30℃以下)
・蒸留水 17.5部

上記インク処方の材料をプレミックスした後、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール(40%水溶液)を添加してpHを10に調整し、次いでアジピン酸ジヒドラジドを0.4部添加して30分間混合攪拌し、実施例1のインクを作成した。
【0048】
実施例2〜4
<高分子化合物2〜4の合成>
表1の比率となるようにダイアセトンアクリルアミドとジメチルアクリルアミドの添加量を調整した点以外は、実施例1と同様にして実施例2〜4の高分子化合物2〜4の20%水溶液を得た。
<実施例2〜4のインクの作成>
実施例1における高分子化合物1の20%水溶液に代えて、高分子化合物2〜4の20%水溶液を使用した点以外は、実施例1と同様にして実施例2〜4のインクを作成した。
【0049】
実施例5
<実施例5のインクの作成>
実施例1における高分子化合物1の20%水溶液に代えて、高分子化合物3の20%水溶液を使用し、インクのpHを9に調整した点以外は、実施例1と同様にして実施例5のインクを作成した。
【0050】
実施例6
<高分子化合物6の合成>
実施例1のダイアセトンアクリルアミド40部をアセト酢酸アリル60部に変え、ジメチルアクリルアミド60部を40部にすると共に、合成条件を調整した点以外は実施例1と同様にして、実施例6の高分子化合物6の20%水溶液を得た。
<実施例6のインクの作成>
実施例1における高分子化合物1の20%水溶液に代えて、高分子化合物6の20%水溶液を使用した点以外は、実施例1と同様にして実施例6のインクを作成した。
【0051】
実施例7
<高分子化合物7の合成>
実施例1のダイアセトンアクリルアミド40部をアセト酢酸アリル60部に変え、ジメチルアクリルアミド60部をジエチルアクリルアミド40部に変えると共に、合成条件を調整した点以外は、実施例1と同様にして実施例7の高分子化合物7の20%水溶液を得た。
<実施例7のインクの作成>
実施例1における高分子化合物1の20%水溶液に代えて高分子化合物7の20%水溶液を使用した点以外は、実施例1と同様にして実施例7のインクを作成した。
【0052】
実施例8
<顔料分散体8の作成>
(顔料分散体処方)
・カーボンブラック(degussa社製:ガスブラック、NIPEX150)
20部
・高分子化合物1の20%水溶液 19部
・蒸留水 55部

上記処方の材料をプレミックスした後、NaOHの10%水溶液を加えてpHを10に調整し、次いで、分散体が全量で100部になるよう蒸留水を加えて調整した。
その後、ディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製KDL型バッチ式)により、0.3mmジルコニアビーズを用いて周速10m/s、液温10℃で5分間分散した。次いで、遠心分離機(久保田商事社製Model−3600)により粗大粒子を分離し、体積平均粒子径約110nm、標準偏差53.0nmのカーボンブラック顔料分散体8を得た。
【0053】
<実施例8のインクの作成>
(インク処方)
・顔料分散体8(顔料濃度20%) 40.0部
・グリセリン 5.5部
・1,3−ブタンジオール 16.5部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0部
・フッ素系界面活性剤(固形分40%) 2.5部
(DuPont社製:Zonyl FS−300)
・フルオロエチレン/ビニルエーテル交互共重合体(固形分50%) 6.0部
(旭硝子社製:ルミフロンFE4300、体積平均粒子径150nm、
MFT30℃以下)
・蒸留水 27.5部

上記インク処方の材料をプレミックスした後、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール(40%水溶液)を添加してpHを10に調整し、次いでアジピン酸ジヒドラジドを1.6部添加して30分間混合攪拌し、実施例8のインクを作成した。
【0054】
実施例9〜11
<顔料分散体9〜11の作成>
実施例8における高分子化合物1の20%水溶液に代えて高分子化合物2〜4の20%水溶液を使用し、高分子化合物の添加量を分散体粘度が最小になるように調整した点以外は、実施例8と同様にして実施例9〜11の顔料分散体9〜11を得た。
<実施例9のインクの作成>
実施例8における顔料分散体8(顔料濃度20%)に代えて顔料分散体9〜11(顔料濃度20%)を使用した点以外は、実施例8と同様にして実施例9〜11のインクを作成した。
【0055】
実施例12〜15
<顔料分散体12〜15の作成>
実施例8における高分子化合物1の20%水溶液に代えて、実施例3の高分子化合物3の20%水溶液を使用し、高分子化合物の添加量を分散体粘度が最小になるよう調整すると共に、表1記載の各pHに調整した点以外は、実施例8と同様にして実施例12〜15の顔料分散体12〜15を得た。
<実施例12〜15のインクの作成>
実施例8における顔料分散体8(顔料濃度20%)に代えて、顔料分散体12〜15(顔料濃度20%)を使用した点以外は、実施例8と同様にして実施例12〜15のインクを作成した。
【0056】
実施例16
<顔料分散体16の作成>
実施例8における高分子化合物1の20%水溶液に代えて、実施例6の高分子化合物6の20%水溶液を使用し、高分子化合物の添加量を分散体粘度が最小になるように調整すると共に、pH10に調整した点以外は、実施例8と同様にして顔料分散体16を得た。
<実施例16のインクの作成>
実施例8における顔料分散体8(顔料濃度20%)に代えて顔料分散体16(顔料濃度20%)を使用した点以外は、実施例8と同様にして実施例16のインクを作成した。
【0057】
実施例17
<顔料分散体17の作成>
実施例8における高分子化合物1の20%水溶液に代えて、実施例7の高分子化合物7の20%水溶液を使用し、高分子化合物の添加量を分散体粘度が最小になるよう調整すると共に、pH10に調整した点以外は、実施例8と同様にして顔料分散体17を得た。
<実施例17のインクの作成>
実施例8における顔料分散体8(顔料濃度20%)に代えて、顔料分散体17(顔料濃度20%)を使用した点以外は、実施例8と同様にして実施例17のインクを作成した。
【0058】
実施例18
実施例8のインクを使用し、前処理液として下記のものを使用した。
<前処理液の作成>
下記処方の材料を混合攪拌し、前処理液を作成した。
(前処理液処方)
・乳酸Na 8.0部
・グリセリン 5.5部
・1,3−ブタンジオール 16.5部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0部
・フッ素系界面活性剤(固形分40%) 2.5部
(DuPont社製、Zonyl FS−300)
・蒸留水 65.5部

【0059】
実施例19
実施例1のインクを使用し、実施例18の前処理液を使用した。
【0060】
実施例20
<顔料分散体20の作成>
実施例8で用いたカーボンブラックに代えて、カーボンブラック(三菱カーボン社製:ファーネスブラック、#960)を使用し、高分子化合物1の添加量を分散体粘度が最小になるよう調整した点以外は、実施例8と同様にして顔料分散体20を得た。
<実施例20のインクの作成>
実施例8における顔料分散体8(顔料濃度20%)に代えて、顔料分散体20(顔料濃度20%)を使用した点以外は、実施例8と同様にして実施例20のインクを作成した。
【0061】
実施例21
<高分子化合物21の合成>
攪拌機、温度計、滴下ロート及び還流冷却器を付けたフラスコ中にダイアセトンアクリルアミド40部、アクリルアミド60部、エタノール50部を入れ、系内を窒素置換した後、系内の温度を80℃まで昇温した。この系に、2,2′−アゾイソブチリロニトリル0.5部を滴下ロートで加えて重合を開始し、6時間重合させた。
重合終了後、エタノール蒸気を吹き込み、ダイアセトンアクリルアミド−アクリルアミド共重合体の50%メタノール溶液を得た。エタノールでよく洗浄した後、乾燥させて、ダイアセトンアクリルアミド−アクリルアミド共重合体(質量比40:60、高分子化合物21)を得た。更に蒸留水を加えて20%水溶液とした。
<実施例21のインクの作成>
実施例1における高分子化合物1の20%水溶液に代えて、高分子化合物21の20%水溶液を使用した点以外は、実施例1と同様にして実施例21のインクを作成した。
【0062】
比較例1
<比較例1の高分子化合物の合成>
実施例1におけるダイアセトンアクリルアミド40部を30部とし、ジメチルアクリルアミド60部を70部とし、合成条件を調整した点以外は実施例1と同様にして比較例1の高分子化合物の20%水溶液を得た。
<比較例1のインクの作成>
実施例1における高分子化合物1に代えて、比較例1の高分子化合物を使用した点以外は、実施例1と同様にして比較例1のインクを作成した。
【0063】
比較例2
<比較例2の高分子化合物の合成>
実施例1におけるダイアセトンアクリルアミド40部を100部とし、ジメチルアクリルアミド60部を0部とし、合成条件を調整した点以外は実施例1と同様にして比較例2の高分子化合物の20%水溶液を得た。
<比較例2のインクの作成>
実施例1における高分子化合物1に代えて、比較例2の高分子化合物を使用した点以外は、実施例1と同様にして比較例2のインクを作成した。
【0064】
比較例3〜4
<比較例3〜4のインクの作成>
実施例1における高分子化合物1に代えて実施例3の高分子化合物3を使用し、表2に示すpHに調整した点以外は、実施例1と同様にして比較例3〜4のインクを作成した。
【0065】
比較例5
<比較例5のインクの作成>
実施例1における高分子化合物1に代えてニッポランWL−530(日本ポリウレタン工業社製)の20%希釈液(蒸留水で希釈)を使用し、表2に示すpHに調整した点以外は、実施例1と同様にして比較例5のインクを作成した。
【0066】
比較例6
<比較例6の高分子化合物の合成>
実施例1におけるダイアセトンアクリルアミド40部を60部とし、
ジメチルアクリルアミド60部を30部とし、更にアクリル酸を10部添加すると共に、合成条件を調整した点以外は、実施例1と同様にして比較例6の高分子化合物の20%水溶液を得た。
<比較例6のインクの作成>
実施例1における高分子化合物1に代えて、比較例6の高分子化合物を使用した点以外は、実施例1と同様にして比較例6のインクを作成した。
【0067】
上記実施例及び比較例のインクについて、下記方法により保存安定性を評価した。結果を表1、表2に示す。
<保存安定性の評価>
各インクを、密封状態にして70℃で2週間保管し、保管前後の粘度を測定して下記式により粘度変化率を計算した。粘度変化率の数値が小さい方が良好である。
粘度変化率(%)=(保管後粘度−保管前粘度)×100/保管前粘度
【0068】
上記実施例及び比較例のインク及び前処理液を用いて、下記方法により画像濃度を評価した。結果を表1、表2に示す。
<画像濃度の評価>
図1に示すインクジェットプリンターの黒色インク用カートリッジに、実施例及び比較例のインクを充填し、前処理液用カートリッジに前処理液を充填して印字を行った。
前処理液を用いる場合は、まず、150mm×150mmの面積のベタ部を前処理液で印字し(印字画像部は透明)、次いで、インクを用いて、50mm×50mmの面積のベタ部を、前記前処理液で印字したベタ部に重なるように印字した。
前処理液を用いない場合は、実施例、比較例のインクを用いて50mm×50mm幅の面積のベタ部を印字した。
上記の方法でゼロックス社製PPC用紙4024(非平滑紙)に1枚印字し、印字画像をXrite濃度計で測定した。数値が大きい方が良好である。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【符号の説明】
【0071】
A 空間
1 記録ヘッド
2 本体筐体
7 処理液、記録液共通カートリッジ
16 ギア機構
17 副走査モーター
18 キャリッジ
20 記録液カートリッジ
21 ガイドシャフト
22 ガイドシャフト
23 タイミングベルト
24 主走査モーター
25 ギア機構
26 主走査モーター
27 ギア機構
31 前処理液が吐出されるノズル
32 記録液が吐出されるノズル
33 記録液が吐出されるノズル
34 記録液が吐出されるノズル
35 記録液が吐出されるノズル
36 前処理液が吐出されるノズル
37 記録液が吐出されるノズル
38 記録液が吐出されるノズル
39 記録液が吐出されるノズル
40 記録液が吐出されるノズル
41 カートリッジ筐体
42 液吸収体
43 ケース
44 上蓋部材
45 液供給口
46 シールリング
47 大気解放口
48 溝
50 キャップ部材
51 液漏れ防止用突部
53 キャップ部材
55 シール部材
71 カートリッジ位置決め部
81 カートリッジ着脱用突状部
81a カートリッジ着脱用指掛け部
82 カートリッジ着脱用窪み部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】
【特許文献1】特開2004−149600号公報
【特許文献2】特開平9−25442号公報
【特許文献3】特開2006−16458号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、顔料、高分子化合物、及びヒドラジン化合物を含むインクジェット記録用インクにおいて、該高分子化合物が、アニオン構成単位を含まず、ヒドラジノ基と反応可能なカルボニル基を有する単位及びアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基の少なくとも一つを有する単位を含み、前記カルボニル基を有する単位が前記高分子化合物全体の40〜90質量%であり、pHが9以上であることを特徴とするインクジェット記録用インク。
【請求項2】
前記高分子化合物と顔料を、該高分子化合物と顔料からなるpH9〜11の顔料分散体として含有することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用インク。
【請求項3】
前記ヒドラジノ基と反応可能なカルボニル基が、ダイアセトンアクリルアミド基又はアセトアセチル基であることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録用インク。
【請求項4】
アニオン構成単位を含まず、ヒドラジノ基と反応可能なカルボニル基を有する単位及びアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基の少なくとも一つを有する単位を含み、前記カルボニル基を有する単位が全体の40〜90質量%である高分子化合物と、顔料と水からなる、pH9〜11の顔料分散体。
【請求項5】
前記ヒドラジノ基と反応可能なカルボニル基が、ダイアセトンアクリルアミド基又はアセトアセチル基であることを特徴とする請求項4記載の顔料分散体。
【請求項6】
酸性化合物を含有する前処理液を用いて記録媒体表面を前処理した後、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用インクを用いて該記録媒体表面上に画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用インク及び前処理液を容器に収容したことを特徴とするカートリッジ。
【請求項8】
インクジェット記録用インクを吐出させるヘッドを備え、請求項7に記載のカートリッジを搭載したことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用インクを用いて作成されたことを特徴とする画像形成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−229411(P2012−229411A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−89646(P2012−89646)
【出願日】平成24年4月10日(2012.4.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】