説明

インクジェット記録用インク組成物

【課題】記録画像における虹ムラの発生を回避又は抑制できるインクジェット記録用インク組成物を提供する。
【解決手段】顔料を含有し、水溶性有機溶剤として、1,2−アルカンジオール及びグリコールの炭素数が3以上のアルキルエーテル誘導体を含有し、浸透剤として、ポリシロキサン系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤を含有するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用インク組成物に関し、詳しくは、顔料を着色剤とするインクジェット記録用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法においては、着色剤として顔料を含有する水性インク組成物が用いられている。こうした水性インク組成物においては、印刷安定性、吐出安定性及び保存安定性を向上させるために、様々な水溶性有機溶剤や界面活性剤が用いられている。
【0003】
例えば、水溶性有機溶媒として多価アルコールのアルキルエーテル誘導体及び/又は1,2−アルカンジオールが用いられ、界面活性剤としてポリシロキサン系界面活性剤及び/又はアセチレングリコール系界面活性剤が用いられることが既に開示されている(特許文献1)。このような水溶性有機溶剤や界面活性剤は、顔料を着色剤として含むインクジェット記録用インク組成物に使用されることがあるものである(特許文献2、3、4)。
【特許文献1】特開2002−30237号公報
【特許文献2】特開平9−183931号公報
【特許文献3】特開平11−228891号公報
【特許文献4】特開2001−152060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らによれば、こうした水溶性有機溶剤や浸透剤を組み合わせて含有するインクジェット記録用インク組成物は、良好な印刷特性を示す一方で、光沢紙などの記録媒体上にカラー画像を形成したとき、特に、画像のグラデーション部分などに光源の強さや角度によっては画像の一部に虹状のムラ(虹ムラ)が観察されることを見出した。このような虹ムラは場合によっては記録画像の品質を損なうにも拘わらず、有効な抑制手段が見出されていなかった。また、これらの水溶性有機溶剤や浸透剤がインクジェット記録用インク組成物に使用されていたが、これらを用いたある組み合わせにより虹ムラが発生し他のある組み合わせにより虹ムラが回避又は抑制されることは知られていなかった。
【0005】
そこで、本発明では、インクジェット記録用インク組成物を用いた記録画像における虹ムラの発生を回避又は抑制できるインクジェット記録用インク組成物、インクジェット記録方法及び記録物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するため、本発明者らはインクジェット記録用インク組成物に含まれる水溶性有機溶剤と浸透剤との組み合わせについて検討したところ、意外にも、水溶性有機溶剤と浸透剤とを特定の組み合わせで用いることにより虹ムラを効果的に回避又は抑制できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明によれば、以下の手段が提供される。
【0007】
本発明によれば、顔料と、水溶性有機溶剤と、浸透剤と、を含有するインクジェット記録用インク組成物であって、
前記水溶性有機溶剤として、1,2−アルカンジオール及びグリコールの炭素数が3以上のアルキルエーテル誘導体を含有し、
前記浸透剤として、下記式(1)で表されるポリシロキサン系界面活性剤及び下記式(2)で表されるアセチレングリコール系界面活性剤を含有する、組成物が提供される。
【化5】

(上記式中、R〜Rは、独立して、C1−6アルキル基を表し、j及びkは、独立して1以上の整数を表し、lは、0以上の整数を表し、EOはエチレンオキシ基を表し、POはプロピレンオキシ基を表し、m及びnは0以上の整数を表すが、但しm+nは1以上の整数を表し、EO及びPOは、[ ]内においてその順序は問わず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
【化6】

(上記式中、R11〜R14は、独立して、C1−6アルキル基を表し、o及びpはそれぞれ0以上の整数を表し、0≦o+p≦50である。)
【0008】
このインク組成物においては、前記ポリシロキサン系界面活性剤は、式(1)の化合物が、R〜Rがすべてメチル基を表し、j及びkがそれぞれ1又は2であり、lが1を表し、mが1以上5以下の整数を表し、nが0を表すものとしてもよい。また、前記ポリシロキサン系界面活性剤は、式(1)の化合物が、R〜Rがすべてメチル基を表し、jが1を表し、kが2を表し、lが1を表し、mが2以上5以下の整数を表し、nが0を表すものとしてもよい。
【0009】
また、これらのインク組成物において、前記アセチレングリコール系界面活性剤は、下記式(3)及び下記式(4)で表されるアセチレングリコール系界面活性剤から選択してもよい。
【化7】

【化8】

(上記式中、8≦o+p≦12である。)
【0010】
これらのいずれかのインク組成物において、前記グリコールのアルキルエーテル誘導体は、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールのモノn−ブチルエーテルから選択してもよいし、これらのいずれかのインク組成物においては、前記1,2−アルカンジオールは、1,2−ヘキサンジオール及び1,2−ヘプタンジオールから選択してもよい。さらに、これらのいずれかのインク組成物においては、前記グリコールのアルキルエーテル誘導体は、ジ又はトリエチレングリコールモノn−ブチルエーテルであり、前記1,2−アルカンジオールは、1,2−ヘキサンジオールであり、前記ポリシロキサン系界面活性剤は、式(1)の化合物が、R〜Rがすべてメチル基であり、kが2を表し、jが1を表し、lが1であり、mが2以上5以下の整数を表し、nが0を表し、前記アセチレングリコール系界面活性剤は、式(3)で表される化合物及び式(4)においてm+nが8以上12以下の化合物から選択してもよい。
【0011】
これらのいずれかのインク組成物において、前記ポリシロキサン系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤の総量は、インク組成物に対して、0.5重量%以上2重量%以下とすることができる。
【0012】
さらに、これらのいずれかのインク組成物は、前記顔料の分散剤としてスチレン-アクリル酸系樹脂を含有していてもよい。
【0013】
これらのいずれかのインク組成物は、シアンインク組成物、マゼンタインク組成物、イエローインク組成物、オレンジインク組成物、グリーンインク組成物及びブラックインク組成物のいずれかとすることができる。
【0014】
また、本発明によれば、少なくとも、シアンインク組成物、マゼンタインク組成物及びイエローインク組成物を備えるカラーインクセットであって、前記シアンインク組成物、前記マゼンタインク組成物及び前記イエローインク組成物は、いずれも請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェット記録用インク組成物である、カラーインクセットが提供される。
【0015】
さらに、本発明によれば、インク組成物の液滴を吐出して、該液滴を記録媒体に付着させて画像を形成するインクジェット記録方法であって、前記インク組成物として、上記いずれかに記載のインクジェット記録用インク組成物を用いる、記録方法が提供される。
【0016】
また、本発明によれば、記録媒体上に画像を有する記録物であって、前記記録媒体上に上記いずれかに記載のインクジェット記録用インク組成物の付着物層からなる画像を有する、記録物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、インクジェット記録用インク組成物、インクジェット記録方法及び記録物等の各種の実施態様を包含している。本発明の各種実施態様はいずれも、インクジェット記録用インク組成物に関連している。本発明のインクジェット記録用インク組成物は、顔料と、水溶性有機溶剤と、浸透剤と、を含有するインクジェット記録用インク組成物であって、前記水溶性有機溶剤として、1,2−アルカンジオール及びグリコールのモノブチルエーテルを含有し、前記浸透剤として、式(1)で表されるアセチレングリコール系界面活性剤及び式(2)で表されるポリシロキサン系界面活性剤を含有することを特徴としている。
【0018】
本インク組成物によれば、本組成物を用いてインクジェット記録方法により得られる記録物において、虹ムラを効果的に回避又は抑制できる。このため、高画質の記録画像を得ることができる。特に光沢性記録媒体において虹ムラを回避できるため、均一な光沢性を備える高画質の光沢性記録画像を容易に得ることができる。本発明を拘束するものではないが、本インク組成物によれば、少なくとも特定の水溶性有機溶剤と浸透剤との組み合わせを備えることでインク組成物の記録媒体への浸透制御及び顔料粒子の記録媒体上での付着形態が最適化された結果、虹ムラが抑制され均一な記録画像が得られるものであると推測される。また、本インク組成物は、光沢性記録媒体上への画像記録用として好ましく、さらに、虹ムラが発生しやすい、写真画像、典型的には、ポートレイトなど人物、特に人の顔を含む画像の記録用として好ましい。以下、本インク組成物について詳細に説明するとともに、カラーインクセット、インクジェット記録方法及び記録物等の各種の実施態様について詳細に説明する。
【0019】
(インクジェット記録用インク組成物)
本発明によるインク組成物は、顔料と、浸透剤と、水溶性有機溶剤と、水とを少なくとも含んでいる。
【0020】
(顔料)
本インク組成物に用いられる顔料としては、有機顔料及びカーボンブラックが挙げられる。有機顔料の具体例としては、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料またはアゾ系顔料などが挙げられる。また、カーボンブラックは、中性、酸性、塩基性カーボンのいずれであってもよい。本発明によるインク組成物に用いられる顔料の具体例としては下記のものが挙げられる。
【0021】
シアンインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:34、16、22、60等;C.I.バットブルー4、60等が挙げられ、好ましくは、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4、及び60からなる群から選択される一種または二種以上の混合物である。また、これらの顔料はシアンインク組成物に対して0.5〜10重量%程度、好ましくは1〜5重量%程度含有することができる。マゼンタインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、209等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントレッド122、202、及び209からなる群から選択される一種または二種以上の混合物である。また、これらの顔料に加え、C.I.ピグメントバイオレット19も好ましく用いられる。これらの顔料はマゼンタインク組成物に対して0.5〜10重量%程度、好ましくは1〜5重量%程度含有することができる。イエローインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14C、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、128、129、138、150、151、154、155、180、185等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントイエロー74、109、110、128、及び138からなる群から選択される一種または二種以上の混合物である。また、これらの顔料はイエローインク組成物に対して0.5〜10重量%程度、好ましくは1〜5重量%程度含有することができる。
【0022】
オレンジインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ36もしくは43またはこれらの混合物である。また、これらの顔料はオレンジインク組成物に対して0.5〜10重量%程度、好ましくは1〜5重量%程度含有することができる。グリーンインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7もしくは36またはこれらの混合物である。また、これらの顔料はグリーンインク組成物に対して0.5〜10重量%程度、好ましくは1〜5重量%程度含有することができる。
【0023】
ブラックインク組成物に使用される顔料としては、カーボンブラックとして、三菱化学製のNo.2300、900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No2200B等;コロンビア社製のラヴェン5750、5250、5000、3500、1255、700等;キャボット社製のリガール400R、330R、660R、モグルL、モナーチ700、800、880、900、1000、1100、1300、1400等;デグッサ社製の カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリンテックス35、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4等;が挙げられ、これらの一種または二種以上の混合物として用いてよい。また、これらの顔料はブラックインク組成物に対して0.5〜10重量%程度、好ましくは1〜5重量%程度含有することができる。
【0024】
本発明において用いられる顔料は、一次粒子としての最大粒子径が300nm程度以下であり、好ましくは200nm程度以下であり、かつ、一次粒子の平均粒子径が10〜150nm程度、好ましくは10〜100nm程度の範囲にあるものが好ましい。
【0025】
(樹脂被覆顔料)
顔料は、水性媒体中に分散されて本インク組成物に含有されている。顔料の水性媒体における分散形態は特に限定しないが、樹脂によって被覆された状態で分散されていてもよい。顔料が樹脂で被覆されていると、均一な膜厚の塗膜を形成しやすく、虹ムラを効果的に抑制できる。この被覆樹脂はアニオン性基を含有してなる高分子である。このような樹脂被覆顔料は、特開平9−151342号、特開平10−140065号、特開平11−209672号、特開平11−172180号、特開平10−25440号、または特開平11−43636号公報に記載されている。顔料の含有量は、被覆樹脂と顔料との総量に対して35〜90重量%の範囲とすることができ、好ましくは50〜90重量%である。
【0026】
顔料を被覆する樹脂は、水に対して自己分散能または溶解能を有し、かつアニオン性基(酸性)を有する高分子の化合物を用いる。この樹脂は、通常、数平均分子量が1、000〜100、000範囲程度のものが好ましく、3、000〜50、000範囲程度のものが特に好ましい。また、この樹脂は有機溶剤に溶解して溶液となるものが好ましい。樹脂の数平均分子量がこの範囲であることにより、顔料の被覆膜として、またはインク組成物における塗膜としての機能を十分に発揮することができる。
【0027】
本発明における被覆樹脂として好ましい樹脂は、特開2002−30237号公報に開示されている。具体的には、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニル系、アルキド樹脂、フタル酸樹脂等のポリエステル系、メラミン樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アミノアルキド共縮合樹脂、尿素樹脂等のアミノ系の材料;熱可塑性、熱硬化性あるいは変性のアクリル系、エポキシ系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリアミド系、不飽和ポリエステル系、フェノール系、シリコーン系、フッ素系高分子化合物、あるいはそれらの共重合体または混合物などであってアニオン性基を有する材料などが挙げられる。
【0028】
アニオン基を有する樹脂中のアニオン性基の量は、酸価が30KOHmg/g程度以上、好ましくは50〜250KOHmg/g程度範囲がより好ましい。樹脂の酸価がこの様な範囲であることにより、塗膜化した顔料の貯蔵安定性が向上し、また記録画像の耐水性が著しく向上するとの効果が可能となる。
【0029】
被覆樹脂として用いるアニオン性樹脂としては、アニオン性アクリル系樹脂が好ましい。アニオン性アクリル系樹脂は、例えば、アニオン性基を有するアクリルモノマー(以下、アニオン性基含有アクリルモノマーという)と、更に必要に応じてこれらのモノマーと共重合し得る他のモノマーを溶媒中で重合して得られる。アニオン性基含有アクリルモノマーとしては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、及びホスホン酸基からなる群から選ばれる1個以上のアニオン性基を含有するアクリルモノマーが挙げられ、これらの中でもカルボキシル基を有するアクリルモノマーが特に好ましい。
【0030】
カルボキシキル基を有するアクリルモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマール酸等が挙げられる。これらの中でもアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。 スルホン酸基を有するアクリルモノマーの具体例としては、スルホエチルメタクリレート、ブチルアクリルアミドスルホン酸等が挙げられる。 ホスホン酸基を有するアクリルモノマーの具体例としては、ホスホエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0031】
アニオン性基含有アクリルモノマーと共重合し得る他のモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ベンジル等のような(メタ)アクリル酸エステル;ステアリン酸とグリシジルメタクリレートの付加反応物等のような油脂肪酸とオキシラン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの付加反応物;炭素原子数3以上のアルキル基を含むオキシラン化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応物;スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等のようなスチレン系モノマー;イタコン酸ベンジル等のようなイタコン酸エステル;マレイン酸ジメチル等のようなマレイン酸エステル;フマール酸ジメチル等のようなフマール酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸アミノプロピル、アクリル酸メチルアミノエチル、アクリル酸メチルアミノプロピル、アクリル酸エチルアミノエチル、アクリル酸エチルアミノプロピル、アクリル酸アミノエチルアミド、アクリル酸アミノプロピルアミド、アクリル酸メチルアミノエチルアミド、アクリル酸メチルアミノプロピルアミド、アクリル酸エチルアミノエチルアミド、アクリル酸エチルアミノプロピルアミド、メタクリル酸アミド、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸メチルアミノエチル、メタクリル酸メチルアミノプロピル、メタクリル酸エチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸アミノエチルアミド、メタクリル酸アミノプロピルアミド、メタクリル酸メチルアミノエチルアミド、メタクリル酸メチルアミノプロピルアミド、メタクリル酸エチルアミノエチルアミド、メタクリル酸エチルアミノプロピルアミド、アクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、N−メチロールアクリルアミド、アリルアルコール等が挙げられる。
【0032】
本発明における被覆樹脂は、(メタ)アクリル酸をアニオン性基含有アクリルモノマーとして用い、他のモノマーとして少なくとも上記スチレン系モノマーの1種又は2種以上、さらに必要に応じ上記(メタ)アクリル酸エステルから選択される1種又は2種以上のモノマーとの共重合体であるスチレンーアクリル系樹脂を用いることが好ましい。こうしたスチレン−アクリル酸系樹脂によれば、上述した水溶性有機溶剤や浸透剤との相互作用により記録媒体上での皮膜が均一になりやすく、結果として虹ムラを抑制させる効果がある。
【0033】
なお、被覆樹脂には、架橋性官能基を有するモノマーのユニットも含めることができる。当該モノマーとしては、以下のものが挙げられる。ブロックイソシアネート基含有モノマー、グリシジル(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマーなどのエポキシ基含有モノマー、1、3−ジオキソラン−2−オン−4−イルメチル(メタ)アクリレート、1、3−ジオキソラン−2−オン−4−イルメチルビニルエーテルなどの1、3−ジオキソラン−2−オン−4−イル基含有モノマーが挙げられる。
【0034】
顔料はこれらの樹脂に加え、硬化剤及び/または追加の高分子化合物を含む樹脂組成物により被覆されていてもよい。硬化剤または追加の高分子化合物は、顔料の被覆壁を硬化し、また印字の耐擦性を高めることができる。こうした硬化剤及び追加の高分子化合物は、特開2002−30237号公報において開示されているものと同様のものを用いることができる。
【0035】
当業者であれば、モノマーの種類に応じた適切な重合方法や溶剤、重合開始剤などの重合条件を適宜選択してこれらのモノマーの重合体を得ることができる。また、樹脂によって被覆された顔料の製造方法は本分野において周知技術であり、当業者であれば、特開平9−151342号、特開平10−140065号に記載の転相法及び酸析法等のほか、特開平11−209672号、特開平11−172180号、特開平10−25440号、または特開平11−43636号に開示されている方法に準じて本発明の樹脂被覆顔料を容易に製造できる。
【0036】
こうした樹脂被覆顔料の最大粒子径は1、000nm以下であることが好ましく、より好ましくは500nm以下である。また、その平均粒子径300nm以下であることが好ましく、より好ましくは250nm以下である。本発明の好ましい態様によれば、樹脂被覆顔料はその最大粒子径が1、000nm以下で、かつ平均粒子径が300nm以下であるものが好ましい。
【0037】
顔料は、必ずしも樹脂により被覆された形態で分散されていなくてもよい。顔料を水性媒体に分散させるには、上記被覆樹脂と同様のアニオン性樹脂のほか、一般に顔料を用いた水性インク組成物に用いられる天然あるいは人工高分子である高分子分散剤等を用いることができる。
【0038】
(水溶性有機溶剤)
本インク組成物は、水溶性有機溶剤として、1,2−アルカンジオールとグリコールの炭素数が3以上のアルキルエーテル誘導体とを含有することが好ましい。これらの両溶剤のうちいずれか一方を欠くと虹ムラが発生してしまうため、これらの両溶剤を含有することで、虹ムラを回避又は抑制することができる。
【0039】
(1,2−アルカンジオール)
本インク組成物は、1,2−アルカンジオールを含有することが好ましい。1,2−アルカンジオールとしては、炭素数が4〜8の直鎖あるいは分岐アルカンジオールが挙げられ、なかでも、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールが好ましく用いられる。さらにこのましくは、1,2−ヘプタンジオール及び1,2−ヘキサンジオールであり、より好ましくは1,2−ヘキサンジオールである。1,2−アルカンジオールの添加量は適宜決定されてよいが、1重量%以上15重量%以下程度が好ましく、より好ましくは2重量%以上10重量%以下程度である。
【0040】
(グリコールのアルキルエーテル誘導体)
グリコールとしては、具体的には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールが挙げられる。なかでも、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが好ましい。グリコールのアルキルエーテル誘導体としては、これらのn−プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、t−ブチルエーテル誘導体(モノあるはジエーテル)が挙げられる。アルキル基としては、n−ブチルエーテル及びt−ブチルエーテルが好ましく、より好ましくは、n−ブチルエーテルである。また、グリコールのモノアルキルエーテルが好ましい。したがって、本発明においては、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノn−ブチルエーテルが好ましく用いられる。特に好ましくはトリエチレングリコールモノn−ブチルエーテルである。この多価アルコールのアルキルエーテル誘導体の添加量はインク組成物に対して1重量%以上15重量%以下程度が好ましく、より好ましくは1重量%以上10重量%以下程度である。
【0041】
なお、1,2−アルカンジオールとグリコールのアルキルエーテル誘導体との総量は、インク組成物に対して、3重量%以上20重量%以上であることが好ましい。この範囲内であると、印刷特性を維持して虹ムラを抑制できる。より好ましくは10重量%以下である。また、1,2−アルカンジオールとグリコールのアルキルエーテル誘導体の総量に対して、当該アルキルエーテル誘導体は重量比で当該アルキルエーテル誘導体と等量又はより多く使用することで、虹ムラの回避又は抑制に効果的である。
【0042】
(浸透剤)
本インク組成物は、浸透剤として、アセチレングリコール系界面活性剤及びポリシロキサン系界面活性剤の双方を含有することが好ましい。これらの浸透剤の一方を欠くことで、虹ムラが発生してしまい、これらの浸透剤の双方を含有することにより、虹ムラを回避又は抑制できる。
【0043】
(ポリシロキサン系界面活性剤)
ポリシロキサン系界面活性剤は、上記した式(1)において、R〜Rは、独立して、C1−6アルキル基、好ましくはメチル基を表す。j及びkは、独立して、1以上の整数を表すが、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4、もっとも好ましくは1又は2でありj=k=1あるいはk=j+1を満足することが好ましい。また、lは0以上の整数を表し、好ましくは1〜3であり、もっとも好ましくは1である。さらに、m及びnはそれぞれ0以上の整数を表し、好ましくは1〜5を表す。但しm+nは1以上の整数であり、好ましくはm+nは2以上4以下である。
【0044】
本発明におけるポリシロキサン系界面活性剤の好ましい第1の形態は、式(1)の化合物として、R〜Rはすべてメチル基を表し、jが1を表し、kが2を表し、lが1を表し、mが2以上5以下の整数を表し、nが0を表すものである。
また、本発明のポリシロキサン系界面活性剤の第2の好ましい形態は、式(1)の化合物として、R〜Rはすべてメチル基を表し、jが1を表し、kが1を表し、lが1を表し、mが1以上の整数、好ましくは1〜5、より好ましくは1を表し、nが0を表すものも好ましく用いられる。
【0045】
これらの好ましいポリシロキサン系界面活性剤は単独であるいは組み合わせて用いることができるが、好ましくは、上記した第1の形態のものを単独であるいは組み合わせて用いる。
【0046】
こうしたポリシロキサン系界面活性剤の添加量は適宜決定されてよいが、0.03〜3重量%が好ましく、より好ましくは0.1重量%以上2重量%以下程度であり、さらに好ましくは0.2重量%以上1重量%以下程度である。0.2重量%以上1重量%以下であると、アセチレングリコール系界面活性剤との併用によって、好ましい虹ムラ抑制効果が発揮される。
【0047】
このようなポリシロキサン系界面活性剤は商業的に入手可能である。例えば、ビックケミー・ジャパン株式会社より供給される、シリコン系界面活性剤BYK−347、同348が利用可能である。
【0048】
(アセチレングリコール系界面活性剤)
アセチレングリコール系界面活性剤は、上記式(2)において、R11〜R14は、独立してアルキル基、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基を表し、o及びpは独立して0以上の整数を表し、o+pは0以上50以下である。
【0049】
アセチレングリコール系界面活性剤は、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。好ましくは、上記式(3)の化合物である、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤としては、式(4)に化合物が挙げられる。式(4)の化合物としては、o+pが8以上12以下であることが好ましく、より好ましくはo+pが10である。
【0050】
本インク組成物においては、アセチレングリコール系界面活性剤は、式(3)の化合物及び式(4)の化合物をいずれも好ましく用いることができ、それぞれ単独でも組み合わせても用いることができる。単独で用いるには、好ましくは式(4)の化合物である。
【0051】
上記の式(2)で表されるアセチレングリコール系界面活性剤として市販品を利用することも可能であり、その具体例としてはサーフィノール82、104、440、465、485、またはTG(いずれもAir Products and Chemicals. Inc.より入手可能)、オルフィンSTG、オルフィンE1010(以上 日信化学社製 商品名)が挙げられる。
【0052】
このアセチレングリコール系界面活性剤の添加量は適宜決定されてよいが、インク組成物に対して0.1重量%以上が好ましく、より好ましくは0.3重量%以上である。また、上限は、好ましくは3重量%以下であり、より好ましくは1重量%以下である。アセチレングリコール系界面活性剤が0.3重量%以上1重量%以下であると、ポリシロキサン系界面活性剤とともに虹ムラを効果的に抑制することができる。
【0053】
なお、ポリシロキサン系界面活性剤とアセチレングリコール系界面活性剤との総量は、インク組成物に対して、0.5重量%以上2重量%以下であることが好ましい。この範囲内であると、印刷特性を維持して虹ムラを抑制できる。より好ましくは1重量%以下である。また、ポリシロキサン系界面活性剤とアセチレングリコール系界面活性剤の総量に対して、重量比でアセチレングリコール系界面活性剤をポリシロキサン系界面活性剤と等量又はより多く使用することで、虹ムラの回避又は抑制に効果的である。
【0054】
(水、水溶性有機溶媒、及びその他の任意の成分)
本インク組成物は、水を含有することができる。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。また、紫外線照射、または過酸化水素添加などにより滅菌した水を用いることにより、本インク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
【0055】
また、本発明の好ましい態様によれば、沸点が180℃以上の水溶性有機溶媒の利用が好ましい。沸点が180℃以上の水溶性有機溶媒の具体例としては、エチレングリコール(沸点:197℃;以下括弧内は沸点を示す)、プロピレングリコール(187℃)、ジエチレングリコール(245℃)、ペンタメチレングリコール(242℃)、トリメチレングリコール(214℃)、2−ブテン−1、4−ジオール(235℃)、2−エチル−1、3−ヘキサンジオール(243℃)、2−メチル−2、4ーペンタンジオール(197℃)、1−メチル−2−ピロリドン(202℃)、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(257〜260℃)、2−ピロリドン(245℃)、グリセリン(290℃)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(243℃)、ジプロピレングリコールモノエチルグリコール(198℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(190℃)、ジプロピレングリコール(232℃)、トリエチレングリコルモノメチルエーテル(249℃)、テトラエチレングリコール(327℃)、トリエチレングリコール(288℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(230℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(202℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(194℃)が挙げられる。これらは単独または二種以上の混合物として使用されてよい。上記の中でも、グリセリンなど沸点が200℃以上であるものがより好ましい。これら水溶性有機溶媒の含有量は好ましくは10〜40重量%程度であり、より好ましくは10〜20重量%である。
【0056】
本発明の好ましい態様によれば、本発明によるインク組成物は、糖、三級アミン、または水酸化アルカリを含んでなることができる。糖及び三級アミンの添加は湿潤性をもたらす。糖の具体例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類及び四糖類を含む)及び多糖類が挙げられ、好ましくはグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、ソルビット、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、などが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、アルギン酸、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール(一般式HOCH(CHOH)nCHOH(ここで、n=2〜5の整数を表す)で表される)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ糖などが挙げられる。特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。これら糖類の添加量は0.1〜40重量%程度が好ましく、より好ましくは1〜30重量%程度である。
【0057】
三級アミンの具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリイソプロペノールアミン、ブチルジエタノールアミン等が挙げられる。これらは単独または二種以上の混合物として使用されてよい。これら三級アミンのインク組成物への添加量は、0.1〜10重量%程度が好ましく、より好ましくは、0.5〜5重量%である。
【0058】
水酸化アルカリの具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムであり、その添加量は0.01〜5重量%程度が好ましく、より好ましくは0.05〜3重量%程度である。
【0059】
本発明によるインク組成物は、さらにノズルの目詰まり防止剤、防腐剤・防かび剤、酸化防止剤、導電率調整剤、pH調整剤、溶解助剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤などを添加することができる。
【0060】
防腐剤・防かび剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1、2−ジベンゾチアゾリン−3−オン(ICI社のプロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルTN)などが挙げられる。
【0061】
さらに、pH調整剤、溶解助剤、または酸化防止剤の例としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリンなどのアミン類及びそれらの変成物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩類、水酸化アンモニウム、四級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウムなど)、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩類その他燐酸塩など、あるいはN−メチル−2−ピロリドン、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸及びその塩を挙げることができる。
【0062】
また、本発明によるインク組成物は紫外線吸収剤を含むことができ、その例としてはチバガイギーのTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024、ランタニドの酸化物が挙げられる。
【0063】
本発明によるインク組成物は、その表面張力が20〜40mN/m程度の範囲、好ましくは15〜30mN/m程度の範囲であるのが好ましい。
【0064】
本発明によるインク組成物は、前記成分を適当な方法で分散、混合することによって製造することができる。好ましくは、まず樹脂と必要に応じて硬化剤または追加の高分子化合物とを分散させた分散樹脂溶液を調製する。調製した分散樹脂溶液と顔料とを適当な分散機(例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、オングミルなど)で混合し、均一な着色剤を調製して、次いで、水、水溶性有機溶媒、糖、pH調整剤、防腐剤、防かび剤等を加えて充分溶解させてインク溶液を調製する。充分に攪拌した後に、目詰まりの原因となる粗大粒子及び異物を除去するためにろ過を行って目的のインク組成物を得る。
【0065】
(カラーインクセット)
本インク組成物を組み合わせてカラー印刷用のカラーインクセットを構成することができる。カラーインクセットを構成するシアンインク組成物、マゼンタインク組成物、イエローインク組成物及びブラックインク組成物等の各種インク組成物においては、既に説明した各顔料を好ましく用いることができる。
【0066】
こうしたカラーインクセットは、光沢性画像の記録用インクセット、写真画像の記録用インクセット、特にポートレイトなど人物を含む画像の記録用インクセットとして好ましく用いられる。
【0067】
(インクジェット記録方法及び記録物)
本インク組成物あるいはカラーインクセットによれば、インクジェット記録方法及びインクジェット記録物が提供されることになる。本発明のインクジェと記録方法によれば、光沢性記録媒体上において虹ムラが回避又は抑制されて光沢性が均一な光沢性画像を得ることができる。このため、写真画像、人物画像の記録に適した記録方法となっている。さらに、こうしたインク組成物等を用いた記録物によれば、高画質な光沢性画像を得ることができ、特に、高画質な写真画像、人物画像を得ることができる。
【実施例】
【0068】
以下の実施例により本発明の内容を具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
【0069】
分散樹脂の合成
1リットルビーカーに、下記組成の成分を全量が500gになるように混合し、さらに重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシオクトエートを4g添加して、混合液を得た。
【0070】
n−ブチルメタクリレート 40重量%
n−ブチルアクリレート 5重量%
スチレン 20重量%
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 15重量%
メタクリル酸 20重量%
【0071】
次に、メチルエチルケトン500gを1lフラスコに入れて、窒素雰囲気下で撹拌しながら75℃まで昇温させた。75℃、攪拌状態で上記混合液を3時間にわたって滴下した。さらに75℃、攪拌状態で8時間反応を続けた。その後、反応合成物を25℃まで自然冷却した後、固形分が50%になるようにメチルエチルケトンを加えて希釈した。酸価(KOH)110、平均分子量13000の分散樹脂液を得た。
【0072】
顔料分散液の調製
下記に示された成分を用いて顔料分散液を調製した。
顔料 15重量%
5%水酸化カリウム水溶液 4重量%
分散樹脂溶液 10重量%
超純水 残量
【0073】
まず、各種顔料と上記で合成した分散樹脂溶液とを混合し、サンドミル(安川製作所製)中で、ガラスビーズ(直径1.7mm、混合物の1.5倍量(重量))とともに2時間分散させた。その後ガラスビーズを取り除き、他の成分を加え常温で20分間撹拌した後に、5μmのメンブランフィルターでろ過した。得られたろ過物を80℃、常圧下で溶剤を蒸留した。さらに、撹拌しながら1規定の塩酸溶液を滴下して、樹脂層を凝結した。これを水洗しながら吸引ろ過し顔料の含水ケーキを得た。この含水ケーキを撹拌しながら、5%の水酸化カリウム水溶液を滴下し、液性をpH9±0.5に調整して、さらに固形分が20%になるように超純水を加え、顔料分散液を得た。
【0074】
なお、得られた計7種類の顔料分散液C1、C2、M1、M2、Y1、Y2、Kに用いた顔料は表1に示す通りであった。なお、これらの各種顔料分散液は、表2に示すように3群に分けて組み合わせて後述するインクセットA、B及びCに対応させた。
【表1】

【表2】

【0075】
インク組成物の調製
表3に示す組成1〜10中の顔料分散液以外の成分を撹拌して混合溶液を用意し、次いで、各種顔料分散液を攪拌しながら、この中に上記混合溶液を滴下して、多種類のインク組成物を調製した。各顔料分散液から、それぞれ10種類のインク組成物を調製した。なお、表3の組成1〜4は本発明に対応する実施例の組成であり、組成5〜10は比較例の組成である。

【表3】

【0076】
表3中、サーフィノール465(Air Products and Chemicals Inc.製)は、式(4)において、o+pが10である化合物であり、オルフィンSTG(日信科学株式会社製)は、式3の化合物(85重量%)とエチレングリコール(15重量%)の混合液である。また、BYK347(ビックケミー・ジャパン製)は、式(1)においてR〜Rは全てメチル基を表し、j=k=1であり、l=1〜3、m=1であり、n=0である化合物であり、BYK348は、同社製であって、式(1)においてR〜Rは全てメチル基を表し、j=1、k=2であり、l=1、m>1であり、n=0である化合物である。
【0077】
こうして調製した各種インク組成物を、表2に示すシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色の顔料分散液の組み合わせA〜Cに基づいて組み合わせ、組み合わせAについて組成1〜10に対応するA1〜A10の10種のインクセット、組み合わせBについて組成1〜10に対応するB1〜B10の10種のインクセット及び組み合わせCについて組成3及び4に対応するC3及びC4の2種のインクセットを構成した。各インクセットの構成を表4に示す。
【表4】

【0078】
(虹ムラ評価試験)
インクジェットプリンタPXV−600(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、上記で調製したインク組成物を上記セット構成でセットして、インクジェット専用記録媒体(セイコーエプソン株式会社製、専用光沢フィルム)に印刷した。
【0079】
虹ムラの評価は、A4サイズ用紙に、8種類の画像を印刷して行った。8種類の画像は、赤い帽子の女性、青い背景を備える3人の女性、海辺の親子、若い女性、赤ちゃん、赤ちゃんと女性、黒人の若い女性、少女とし、各画像の顔の丸み部分、背景、頭髪部分などの虹のような斑(虹ムラ)ができやすい部分を中心として虹ムラの有無や程度を観察した。なお、評価基準は以下のとおりとした。なお、以下の評価基準ではC以上の評価であれば、印刷品質が適性であるということができる。
A:虹ムラが全く認められない。
B:円形のグラデーションのかかった部分(赤ちゃんの頭髪部分など)で、わずかに虹ムラが認められる。
C:おおむね虹ムラは認められないが、その他の人肌部分で光源やその角度によっては虹ムラが認められる。
D:強い光源で虹ムラが顕著に認められる。
E:光源の強さによらないで、画像の向きを変えると虹ムラが顕著に認められる。
F:光源の強さによらないで、画像の向きを少し変えただけで虹ムラが顕著に認められる。
【0080】
各インクセットについて評価結果を表5〜7に示す。
【表5】

【表6】

【表7】

【0081】
表5〜7に示すように、各インクセットについて、いずれも、組成1〜4において虹ムラについてC以上の評価が得られた一方、それ以外の組成では、D以下の評価しか得られなかった。また、グリコールとしてはトリエチレングリコールのモノブチルエーテルにおいてより高い評価が得られるとともに、BYK347よりBYK348においてより高い評価が得られる傾向が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、水溶性有機溶剤と、浸透剤と、を含有するインクジェット記録用インク組成物であって、
前記水溶性有機溶剤として、1,2−アルカンジオール及びグリコールの炭素数が3以上のアルキルエーテル誘導体を含有し、
前記浸透剤として、下記式(1)で表されるポリシロキサン系界面活性剤及び下記式(2)で表されるアセチレングリコール系界面活性剤を含有する、組成物。
【化1】

(上記式中、R〜Rは、独立して、C1−6アルキル基を表し、j及びkは独立して1以上の整数を表し、lは0以上の整数を表し、EOはエチレンオキシ基を表し、POはプロピレンオキシ基を表し、m及びnは0以上の整数を表すが、但しm+nは1以上の整数を表し、EO及びPOは、[ ]内においてその順序は問わず、ランダムであってもブロックであってもよい。)
【化2】

(上記式中、R11〜R14は、独立して、C1−6アルキル基を表し、o及びpはそれぞれ0以上の整数を表し、0≦o+p≦50である。)
【請求項2】
前記ポリシロキサン系界面活性剤は、式(1)の化合物が、R〜Rがすべてメチル基を表し、j及びkがそれぞれ1又は2を表し、lが1を表し、mが1以上5以下の整数を表し、nが0を表す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリシロキサン系界面活性剤は、式(1)の化合物が、R〜Rがすべてメチル基を表し、jが1を表し、kが2を表し、lが1を表し、mが2以上5以下の整数を表し、nが0を表す、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アセチレングリコール系界面活性剤は、下記式(3)及び下記式(4)で表されるアセチレングリコール系界面活性剤から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【化3】

【化4】

(上記式中、8≦o+p≦12である。)
【請求項5】
前記グリコールのアルキルエーテル誘導体は、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールのモノn−ブチルエーテルから選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記1,2−アルカンジオールは、1,2−ヘキサンジオール及び1,2−ヘプタンジオールから選択される、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記グリコールのアルキルエーテル誘導体は、ジ又はトリエチレングリコールモノn−ブチルエーテルであり、
前記1,2−アルカンジオールは、1,2−ヘキサンジオールであり、
前記ポリシロキサン系界面活性剤は、式(1)の化合物が、R〜Rがすべてメチル基であり、kが2を表し、jが1を表し、lが1を表し、mが2以上5以下の整数を表し、nが0を表し、
前記アセチレングリコール系界面活性剤は、式(3)で表される化合物及び式(4)においてm+nが8以上12以下の化合物から選択される、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリシロキサン系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤の総量は、インク組成物に対して、0.5重量%以上2重量%以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
さらに、前記顔料の分散剤としてスチレン-アクリル酸系樹脂を含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記インクジェット記録用インク組成物は、シアンインク組成物、マゼンタインク組成物、イエローインク組成物、オレンジインク組成物、グリーンインク組成物及びブラックインク組成物のいずれかである、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも、シアンインク組成物、マゼンタインク組成物及びイエローインク組成物を備えるカラーインクセットであって、
前記シアンインク組成物、前記マゼンタインク組成物及び前記イエローインク組成物は、いずれも請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェット記録用インク組成物である、カラーインクセット。
【請求項12】
インク組成物の液滴を吐出して、該液滴を記録媒体に付着させて画像を形成するインクジェット記録方法であって、
前記インク組成物として、請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェット記録用インク組成物を用いる、記録方法。
【請求項13】
記録媒体上に画像を有する記録物であって、
前記記録媒体上に請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェット記録用インク組成物の付着物層からなる画像を有する、記録物。

【公開番号】特開2006−206688(P2006−206688A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18676(P2005−18676)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】