説明

インクジェット記録用染料黒インク

【課題】黒染料、調色カラー染料、水溶性有機溶剤及び水を含有する調色されたインクジェット記録用染料黒インクによる印字物について、光による退色の前後のそれぞれにおいて良好なカラーバランスを実現する黒色インクの提供。
【解決手段】光沢紙に印字された平均光学濃度0.9以上1.1以下の黒インクベタ印字部について、イエロー色成分、マゼンタ色成分、シアン色成分それぞれの光学濃度のうち最大光学濃度をODimax(0)、最小光学濃度をODimin(0)とし、黒インクベタ印字部に対し所定の耐光性試験を行い、試験後のそれぞれの光学濃度のうち最大光学濃度をODimax(1)、最小光学濃度をODimin(1)としたときに、以下の式(1)及び(2)を同時に満たすインクジェット記録用染料黒インク。ODimax(0)−ODimin(0)≦0.15(1)、ODimax(1)−ODimin(1)≦0.15(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用染料黒インクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、単独の黒染料を用いたインクジェット記録用染料黒インクが広く用いられている。このような染料黒インクで光沢紙に黒ベタ印字を行って得られる印字物について、イエロー(Y)色成分、マゼンタ(M)色成分及びシアン(C)色成分に分割して光学濃度を測定すると、図3に示すように、一般に色成分ごとに光学濃度が相違している。このため、単独の黒染料のみを用いたインクジェット記録用染料黒インクから得られる黒ベタ印字物は、例えば、図3のようにY色成分が相対的に弱い場合には、青味がかった黒色となる。
【0003】
そこで、できるだけ無彩色に近い黒色を得るために、黒インクで印字した黒ベタ印字物のY色成分、M色成分及びC色成分の光学濃度がほぼ同じとなるように(図4参照)、黒染料に光学濃度が不足している色成分に該当するカラー染料を調色のために加えることが行われている(特許文献1)。従って、このように調色されたインクジェット記録用染料黒インクを用いて得られる印字物のカラーバランス(黒ベタ印字物のY色成分、M色成分及びC色成分の光学濃度のバランス)は、当然に良好なものとなる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−36164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したように調色したインクジェット記録用染料黒インクを用いて作成した印字物に太陽光や蛍光灯光が照射されると、染料が退色して印字物の光学濃度が減ずる。この場合、カラーバランスが維持されていれば、印字物の光学濃度が低下したとしても退色が目立ち難くなるが、実際には、Y色成分、M色成分及びC色成分に分割した成分間において、光学濃度の減少の程度が異なる。しかも、黒色調色のために併用している調色カラー染料自体の退色も重なる。このように、調色したインクジェット記録用染料黒インクの場合には、光照射後の印字物の光学濃度が減少するだけでなく、そのカラーバランスが大きく乱れる。
【0006】
本発明は、以上の従来の課題を解決しようとするものであり、黒染料、調色カラー染料、水溶性有機溶剤及び水を含有する調色されたインクジェット記録用染料黒インクによる印字物について、光による退色の前後のそれぞれにおいて良好なカラーバランスを実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述したような調色されたインクジェット記録用染料黒インクを用いて光沢紙に印字された黒ベタ印字部について、耐光性試験を施した際に、耐光性試験前後の光学濃度差を単純に小さくするのではなく、黒ベタ印字物について、Y色成分、M色成分及びC色成分の光学濃度を測定し、耐光性試験前後のそれぞれにおいて、それら3成分のうち最大の光学濃度と最小の光学濃度の差を所定の数値以下とすることにより、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、黒染料、調色カラー染料、水溶性有機溶剤及び水を含有するインクジェット記録用染料黒インクであって、
黒インクを用いて光沢紙に印字された平均光学濃度0.9以上1.1以下の黒インクベタ印字部について、Y色成分の光学濃度をODiy(0)、M色成分の光学濃度をODim(0)、C色成分の光学濃度をODic(0)とし、ODiy(0)、ODim(0)及びODic(0)のうち最大光学濃度をODimax(0)、最小光学濃度をODimin(0)と定義し、
黒インクベタ印字部に対し所定の耐光性試験を行い、試験後のY色成分の光学濃度をODiy(1)、M色成分の光学濃度をODim(1)、C色成分の光学濃度をODic(1)とし、これらのODiy(1)、ODim(1)及びODic(1)のうち最大光学濃度をODimax(1)、最小光学濃度をODimin(1)と定義したときに、以下の式(1)及び(2)を同時に満たすことを特徴とするインクジェット記録用染料黒インクを提供する。
【0009】
【数1】

【発明の効果】
【0010】
本発明のインクジェット記録用染料黒インクは、光沢紙に印字された黒インクベタ印字部について、Y色成分、M色成分及びC色成分の光学濃度を、耐光性試験前後のそれぞれにおいて、それら3成分のうちで最大の光学濃度と最小の光学濃度との差を0.15以下としている。このため、耐光性試験前後の双方で良好なカラーバランスを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のインクジェット記録用染料黒インクは、黒染料、調色カラー染料、水溶性有機溶剤及び水を含有し、以下の式(1)及び(2)を同時に満足することを特徴とする。
【0012】
【数2】

【0013】
式(1)及び(2)中、ODimax(0)、ODimin(0)、ODimax(1)及びODimin(1)は、以下に説明する光学濃度を意味する。即ち、インクジェット記録用染料黒インクを用いて光沢紙に印字された平均光学濃度0.9以上1.1以下の黒インクベタ印字部について、Y色成分の光学濃度をODiy(0)、M色成分の光学濃度をODim(0)、C色成分の光学濃度をODic(0)とする。これらのODiy(0)、ODim(0)及びODic(0)のうち最大光学濃度を最大光学濃度ODimax(0)、最小光学濃度を最小光学濃度ODimin(0)とする。また、黒インクベタ印字部に対し所定の耐光性試験を行い、試験後のY色成分の光学濃度をODiy(1)、M色成分の光学濃度をODim(1)、C色成分の光学濃度をODic(1)とする。これらのODiy(1)、ODim(1)及びODic(1)のうち最大光学濃度を最大光学濃度ODimax(1)、最小光学濃度を最小光学濃度ODimin(1)とする。
【0014】
参考までに、黒インクベタ印字部に関する光学濃度の定義の一覧を以下に示す。
【0015】
ODiy(0): 黒インクベタ印字部Y色成分の初期(試験前)光学濃度
ODim(0): 黒インクベタ印字部M色成分の初期(試験前)光学濃度
ODic(0): 黒インクベタ印字部C色成分の初期(試験前)光学濃度
ODimax(0): 黒インクベタ印字部の初期(試験前)最大光学濃度
ODimin(0): 黒インクベタ印字部の初期(試験前)最小光学濃度
ODiy(1): 黒インクベタ印字部Y色成分の試験後光学濃度
ODim(1): 黒インクベタ印字部M色成分の試験後光学濃度
ODic(1): 黒インクベタ印字部C色成分の試験後光学濃度
ODimax(1): 黒インクベタ印字部の試験後最大光学濃度
ODimin(1): 黒インクベタ印字部の試験後最小光学濃度
【0016】
なお、耐光性試験としては、「温度25℃、湿度50%RHの環境下で、キセノンランプから発した光を、320nm以下の波長光をカットするガラス製フィルターを通過させた後、黒インクベタ印字部又は黒染料溶液ベタ印字部に照度93kluxで100時間照射する」という試験を挙げることができる。具体的には、スガ試験機(株)製の強エネルギーキセノンウェザーメーターSC780−WNを用いて行うことができる。また、光学濃度値の測定は、Gretag Macbeth社製のSpectrolino(光源:D65、視野角:2°、status A)を用いて行うことができる。ここで、「status A」とは、ISO5/3に準拠した分光感度特性を示す。
【0017】
ODimax(0)、ODimin(0)、ODimax(1)及びODimin(1)の相互の関係を図1に示す。図1(A)は、単独の黒染料のみを着色剤とした黒染料溶液を用いて、光沢紙に黒染料溶液ベタ印字して得られる印字物について、Y色成分、M色成分及びC色成分の光学濃度の説明図である。この印字物の光学濃度は、C色成分に対して、Y色成分が著しく不足し、M色成分が不足しているので、全体として青味がかった黒色を呈している。ここで、光沢紙とは、ベースペーパー(原紙ペーパー)に表面平滑性を与えるコート層を設けた紙のことをいう。光沢紙を使用する理由は、印字した際のインクのにじみが少なく、鮮やかな発色が得られるからである、具体的には、ブラザー工業(株)製写真光沢紙BP61GLA;王子製紙(株)製カラーインクジェット用紙プレミアムフォト光沢紙;コクヨ(株)製インクジェットプリンタ用紙高精細フォト出力用超光沢紙;コニカミノルタホールディングス(株)製PhotolikeQP<写真画質>シリーズ;富士フイルム(株)製画彩(登録商標)シリーズの写真仕上げPro、写真仕上げAdvance及びフジフイルム高級光沢紙;等が挙げられる。また、黒インクベタ印字部は、光学濃度値1.0付近が印字物の濃〜淡の濃度をカバーできると考えられるため、初期(試験前)平均光学濃度((ODiy(0)+ODim(0)+ODic(0))/3)が0.9以上1.1以下の部分を利用する。なお、初期(試験前)平均光学濃度が0.9以上1.1以下の部分は、ベタ印字物の階調等を調節することによって得ることができる。
【0018】
次に、図1(B)に示す様に、調色カラー染料としてイエロー染料及びマゼンタ染料を黒染料と併用し、Y色成分及びM色成分の光学濃度を、最も高い光学濃度であるC色成分の光学濃度と同じレベルとする。これにより、耐光性試験前の印字物のカラーバランスが良好となる。本発明では、ODiy(0)、ODim(0)及びODic(0)のいずれか2つの差が必ず0.15以下となっている。差が0.15を超えるとカラーバランスが許容できないレベルに崩れる。図1(B)の場合、M色成分の光学濃度ODim(0)がODimax(0)、C色成分の光学濃度ODic(0)がODimin(0)となる。
【0019】
更に、本願発明においては、黒インクベタ印字部に対し所定の耐光性試験を施しても、図1(C)に示す様に、ODiy(1)、ODim(1)及びODic(1)のいずれか2つの差が必ず0.15以下となっている。差が0.15を超えるとカラーバランスが許容できないレベルに崩れる。図1(C)の場合、Y色成分の光学濃度ODiy(1)がODimax(1)、C色成分の光学濃度ODic(1)がODimin(1)となる。
【0020】
本発明のインクジェット記録用染料黒インクにおいて、調色カラーインクを除くインクジェット記録用染料黒インクの構成成分である黒染料、水溶性有機溶剤及び水を含有する黒染料溶液を用いて光沢紙に印字された黒染料溶液ベタ印字部について、Y色成分の光学濃度をODdy(0)、M色成分の光学濃度をODdm(0)、C色成分の光学濃度をODdc(0)とし、ODdy(0)、ODdm(0)及びODdc(0)のうち最大光学濃度をODdmax(0)とし、黒染料溶液ベタ印字部に対し所定の耐光性試験を行い、試験後のY色成分の光学濃度をODdy(1)、M色成分の光学濃度をODdm(1)、C色成分の光学濃度をODdc(1)とし、以下の式(3)〜(5)で定義されるΔODdy、ΔODdm及びΔODdcのうち最大光学濃度差をΔODdmaxとしたときに、ΔODdmaxを示す色成分が、ODdmax(0)を示す色成分と一致する黒染料溶液を構成する黒染料を使用することが好ましい。このような黒染料は、そのY色、M色及びC色の色成分において、耐光性試験前に最も光学濃度が高い色成分が最も退色しやすい黒染料である。この結果、退色後のカラーバランスを改善することが可能となる。換言すれば、耐光性試験前に最も光学濃度が高い色成分が最も退色し難いとすると、耐光性試験後のその色成分の光学濃度が他の色成分の光学濃度よりも相対的に著しく高くなる結果となり、カラーバランスの維持が困難となる。なお、本発明のインクジェット記録用染料黒インクに使用する黒染料としてはシアン味を帯びたものが多いため、ΔODdmaxを示す色成分はC成分の光学濃度の減少率が大きいものが好ましい。
【0021】
なお、黒染料溶液としては、例えば、インクジェット記録用染料黒インクの組成から調色カラー染料を除いた組成を均一に混合することにより得られるものを使用することが好ましい。この場合、除いた調色カラー染料に相当する量の水もしくは水溶性有機溶剤またはそれらの混合溶剤を黒染料溶液に添加してもよい。これにより、黒染料の濃度をインクジェット記録用染料黒インクから大きく変化させることなく評価試験を行うことができる。また、黒染料溶液ベタ印字部の選択に際し、Y色成分、M色成分及びC色成分うち最も高い光学濃度を示す色成分の当該光学濃度が0.9以上1.1以下となる黒染料溶液ベタ印字部を選択することが好ましい。これにより、インクジェット記録用染料黒インクの評価試験との対比が容易となる。最も高い光学濃度を示す色成分の当該光学濃度が0.9に達しない場合には、当該光学濃度が0.9以上1.1以下となるように黒染料濃度を上げたり、印字の階調を調節したりする等すればよい。
【0022】
【数3】

【0023】
参考までに、黒染料溶液ベタ印字部に関する光学濃度の定義の一覧を以下に示す。
【0024】
ODdy(0):黒染料溶液ベタ印字部Y色成分の初期(試験前)光学濃度
ODdm(0):黒染料溶液ベタ印字部M色成分の初期(試験前)光学濃度
ODdc(0):黒染料溶液ベタ印字部C色成分の初期(試験前)光学濃度
ODdmax(0):黒染料溶液ベタ印字部の初期(試験前)最大光学濃度
ODdy(1):黒染料溶液ベタ印字部Y色成分の試験後光学濃度
ODdm(1):黒染料溶液ベタ印字部M色成分の試験後光学濃度
ODdc(1):黒染料溶液ベタ印字部C色成分の試験後光学濃度
ΔODdy:黒染料溶液ベタ印字部Y色成分の試験前後における光学濃度差
ΔODdm:黒染料溶液ベタ印字部M色成分の試験前後における光学濃度差
ΔODdc:黒染料溶液ベタ印字部C色成分の試験前後における光学濃度差
ΔODdmax:黒染料溶液ベタ印字部の最大光学濃度差
【0025】
本発明において、黒染料の含有量は、少なすぎると黒染料及び調色カラー染料の合計含有量がインクジェット記録用染料黒インクにおける好ましい含有量であったとしても、充分な光学濃度のベタ画像の形成が困難となるので、黒染料及び調色カラー染料の合計含有量に対して、好ましくは50重量%以上である。
【0026】
調色カラー染料としては、黒染料のC色成分の光学濃度が最も高く、逆にY色成分の光学濃度が最も低い場合、好ましくはイエロー染料であり、場合によりマゼンタ染料を使用することができる。また、両者を併用することもできる。なお、黒染料によっては、C色成分の光学濃度が相対的に低い場合もあり得るので、そのような場合には、調色カラー染料として、シアン染料を使用することができる。また、黒染料自体の光退色が甚だしい場合には、イエロー染料、マゼンタ染料及びシアン染料を同時に使用することもできる。
【0027】
本発明においては、黒インクベタ印字部における以下式(6)〜(8)で定義される耐光性試験前に対する耐光性試験後のY色成分の光学濃度減少率Aiy、M色成分の光学濃度減少率Aim及びC色成分の光学濃度減少率Aicが、いずれも好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である。それぞれの色成分の光学濃度減少率が20%以下であることは、各色成分ごとに良好な耐光性を示していることを意味しており、耐光性試験前の良好なカラーバランスを耐光性試験後にもほぼそのまま維持することが可能となる。
【0028】
【数4】

【0029】
参考までに、光学濃度減少率に関する定義の一覧を以下に示す。
【0030】
Aiy: 耐光性試験後のY色成分の光学濃度減少率(%)
Aim: 耐光性試験後のM色成分の光学濃度減少率(%)
Aic: 耐光性試験後のC色成分の光学濃度減少率(%)
【0031】
本発明において使用可能な黒染料とは、分光光度計(例えば、(株)島津製作所製のUV−3600等)を用いて、染料水溶液の吸光度を380〜650nmの全波長範囲に亘って測定した際に、図2に示すように、最小吸光度が最大吸光度(最大ピーク)の25%以上である染料を意味する。この場合、染料水溶液の染料濃度は、最大吸光度が0.50〜1.50となるような濃度であることが好ましい。
【0032】
このような黒染料としては、以下の一般式(Bk−0)、C.I.アシッドブラック2,7,24,26,31,52,63,112及び118等;C.I.ダイレクトブラック17,19,32,51,71,108,146,154及び168等;C.I.ベーシックブラック2;C.I.フードブラック1及び2;等を好ましく使用できる。






【0033】
【化1】

【0034】
一般式(Bk−0)中、A及びDはそれぞれ独立に置換されていても良いフェニル基、ナフチル基を表し、B及びCはそれぞれ独立に置換されていても良いナフチル基を表す。またA、B、C及びDの各々の成分にはそれぞれ少なくとも1つ以上のスルホ基を含み、X、Yの一方はヒドロキシル基を、他方はアミノ基を表す。Mは水素原子、アルカリ金属、有機アミンのカチオン又はアンモニウムイオンを表す。ここで、一般式(Bk−0)で表される黒染料の中でも、光学濃度減少率が小さいという点から、化学式(Bk−1)及び化学式(Bk−2)で表される黒染料を特に好ましく使用できる。
【0035】
【化2】

【0036】
【化3】

【0037】
また、本発明において使用可能な調色カラー染料としては、C.I.ダイレクトイエロー12,24,26,27,28,33,39,58,86,98,100,132,142及び169;C.I.アシッドイエロー3,11,17,19,23,25,29,38,42,49,59,61,71及び72;C.I.ベーシックイエロー40;C.I.リアクティブイエロー2;等のイエロー染料、以下一般式(M−0)、一般式(M−00)、C.I.ダイレクトレッド4,17,28,37,63,75,79,80,81,83及び254;C.I.アシッドレッド1,6,8,18,32,35,37,42,52,85,88,115,133,134,154,186,249、289及び407;C.I.ベーシックレッド9,12及び13;C.I.リアクティブレッド4,23,24,31及び56;等で表されるマゼンタ染料等が挙げられる。その他、C.I.ダイレクトブルー1,6,8,15,22,25,71,76,80,86,87,90,106,108,123,163,165,199及び226;C.I.アシッドブルー9,22,29,40,59,62,93,102,104,112,113,117,120,167,175,183,229及び234;C.I.ベーシックブルー1,3,5,7,9,24,25,26,28及び29;C.I.リアクティブブルー7,13及び49;等のシアン染料も使用することができる。
【0038】
【化4】

【0039】
一般式(M−0)中、Rは、水素原子、置換されてもよいアルキル基又は置換されてもよいアリール基を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。Rは、水素原子、置換されてもよいアルキル基、置換されてもよいアリール基又は置換されてもよいヘテロ環基を表す。R、R、R及びRは、それぞれ独立的に水素原子、置換されてもよいアルキル基、置換されてもよいアリール基、置換されてもよいヘテロ環基、置換されてもよいスルホニル基又は置換されてもよいアシル基を表す。ただし、RとRが共に水素原子であることはなく、RとRが共に水素原子であることはない。A及びAは、いずれもが置換されていてもよい炭素原子であるか、あるいはこれらの一方が置換されていてもよい炭素原子であり、他方が窒素原子である。
【0040】
【化5】

【0041】
一般式(M−00)中、R、R及びR10は、それぞれ独立的に置換されてもよいアルキル基、置換されてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子、水素原子、ヒドロキシル基、置換されてもよいカルバモイル基、置換されてもよいスルファモイル基、置換されてもよいアミノ基、ニトロ基、スルホン酸エステルの基、置換されてもよいアルキルスルホニル基、置換されてもよいアリールスルホニル基、カルボキシル基又はカルボン酸エステルの基を表わす。mは0、1又は2の数を表わし、R11、R12及びR13は、それぞれ独立的に水素原子、置換されてもよいアルキル基、置換されてもよいアルケニル基、置換されてもよいアリール基、置換されてもよいアラルキル基、置換されてもよい脂環基又は置換されてもよいヘテロ環基を表わす。
【0042】
ここで、一般式(M−0)及び一般式(M−00)で表されるマゼンタ染料の中でも、光学濃度減少率が小さいという点から、化学式(M−1)〜化学式(M−7)で表されるマゼンタ染料を特に好ましく使用できる。
【0043】
【化6】



















【0044】
【化7】

【0045】
【化8】












【0046】
【化9】

【0047】
【化10】


【0048】
【化11】



【0049】
【化12】

【0050】
本発明のインクジェット記録用染料黒インクは、黒染料、調色カラー染料に加えて、溶媒として、水及び水溶性有機溶媒を含有する。
【0051】
水としては、脱イオン水を使用することが好ましい。水の含有量は、水溶性有機溶媒の種類や組成、所望のインク特性に応じて広い範囲で決定されるが、本発明のインクジェット記録用染料黒インク全量に対して、一般に10〜95重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは20〜80重量%である。
【0052】
水溶性有機溶媒は、主としてインクジェットヘッドの先端部におけるインクの乾燥防止効果を有する湿潤剤と、紙面での乾燥速度を速くする浸透剤とに分類される。湿潤剤としては特に限定されず、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の低級アルコール;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール等のアルキレングリコール;グリセリン;2−ピロリドン;N−メチル−2−ピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができる。なかでも、アルキレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが好適である。
【0053】
湿潤剤の含有量は、本発明のインクジェット記録用染料黒インク全量に対して、一般には0〜95重量%、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは5〜50重量%である。
【0054】
浸透剤としては特に限定されず、例えば、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールプロピルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコールプロピルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル等のグリコール系エーテルを挙げることができる。
【0055】
浸透剤の含有量は、含有量が過剰であると、インクの紙への浸透性が高くなりすぎて滲みの原因となってしまうことがあるので、本発明のインクジェット記録用染料黒インク全量に対して、一般には0〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは0.2〜10重量%である。
【0056】
本発明のインクジェット記録用染料黒インクは、更に必要に応じて、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及び水溶性樹脂等の粘度調整剤;表面張力調整剤;防黴剤;pH調整剤等の従来公知の添加剤を含有していてもよい。
【0057】
本発明のインクジェット記録用染料黒インクは、黒染料及び調色カラー染料と、水及び水溶性有機溶剤等の他の添加成分とを、均一に混合し、フィルターで不溶解物を除去することにより調製することができる。
【0058】
本発明のインクジェット記録用染料黒インクは、従来公知のインクジェットプリンターのインクカートリッジに充填し、インクジェット記録に使用することができる。
【実施例】
【0059】
1)黒インク及び黒染料溶液の調製
1−1)実施例1〜7及び比較例1〜6
表1のインク組成を混合攪拌後、東洋濾紙(株)製の親水性PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)タイプメンブランフィルタ(孔径0.2μm)で濾過することにより、実施例1〜7及び比較例1〜6の調色したインクジェット記録用染料黒インクを得た。なお、表1のインク組成において、黒染料(Bk−1)及び(Bk−2)は、それぞれ化学式(Bk−1)及び(Bk−2)で表される化合物、マゼンタ染料(M−1)〜(M〜7)は、それぞれ化学式(M−1)〜(M−7)で表される化合物である。




















【0060】
【表1】

【0061】
1−2)黒染料溶液1〜6
黒染料を3.0重量%使用し、調色カラー染料を使用しない以外は、実施例及び比較例と同様の操作にて、表2の黒染料溶液組成となる黒染料溶液1〜6を得た。ただし、黒染料の増減配合量及び使用しない調色カラー染料の配合量は、水にて置換した。なお、表2の黒染料溶液組成において、黒染料(Bk−1)及び(Bk−2)は、それぞれ化学式(Bk−1)及び(Bk−2)で表される化合物である。


















【0062】
【表2】

【0063】
2)評価サンプル印字
上記1)にて調製した黒インク及び黒染料溶液をそれぞれインクカートリッジに充填し、ブラザー工業(株)製インクジェットプリンタ搭載デジタル複合機DCP−115Cに装着し、ブラザー工業(株)製写真光沢紙BP61GLAに、16階調のグラデーションサンプル(ブラック〜グレー〜白)をベタ印字した。
【0064】
3)黒インク評価
3−1)耐光性試験前の各色成分の光学濃度測定
上記2)にて印字した評価サンプル(グラデーションサンプル)から、Y色成分、M色成分及びC色成分の平均光学濃度が0.9以上1.1以下の黒インクベタ印字部を評価サンプルとして選択し、Y色成分、M色成分及びC色成分に分割した初期(試験前)光学濃度(ODiy(0)、ODim(0)及びODic(0))をGretag Macbeth社製Spectrolino(光源:D65、視野角:2°、status A)を用いて測定した。得られた結果を表3に示す。
【0065】
また、Y色成分、M色成分及びC色成分の初期(試験前)光学濃度から、ODimax(0)とODimin(0)を特定し、以下の評価基準に従って評価した。得られた結果を表3に示す。
A: ODimax(0)−ODimin(0)≦0.15
B: 0.15<ODimax(0)−ODimin(0)≦0.20
C: 0.20<ODimax(0)−ODimin(0)
【0066】
3−2)耐光性試験後の各色成分の光学濃度測定
上記3−1)で使用した評価サンプルに対し、スガ試験機(株)製の強エネルギーキセ
ノンウェザーメーターSC780−WNを用いて耐光性試験を施した。具体的には、温度
25℃、湿度50%RHの環境下で、キセノンランプから発した光を、石英ガラス製の光
源ランプフィルター、石英ガラス製のインナーフィルター及び320nm以下の波長光を
カットするガラス製のアウターフィルターを通過させた後、評価サンプルに照度93kl
uxで100時間照射した。耐光性試験後、Y色成分、M色成分及びC色成分に分割した
試験後光学濃度(ODiy(1)、ODim(1)及びODic(1))をGretag Macbet
h社製Spectrolino(光源:D65、視野角:2°、status A)を用
いて測定した。得られた結果を表3に示す。
【0067】
また、Y色成分、M色成分及びC色成分の試験後光学濃度から、ODimax(1)とODimi
n(1)を特定し、以下の評価基準に従って評価した。得られた結果を表3に示す。
A: ODimax(1)−ODimin(1)≦0.15
B: 0.15<ODimax(1)−ODimin(1)≦0.20
C: 0.20<ODimax(1)−ODimin(1)
【0068】
3−3)耐光試験後の各色成分の光学濃度減少率
上記3−1)の初期(試験前)光学濃度及び上記3−2)の試験後光学濃度から、Y色
成分、M色成分及びC色成分の光学濃度減少率(Aiy、Aim及びAic)を求めた。得られ
た結果を表3に示す。
【0069】
3−4)総合評価
実施例1〜7及び比較例1〜7の黒インクについて、以下の評価基準にしたがい評価し
た。得られた結果を表3に示す。
Excellent: 上記3−1)及び3−2)の評価が共にAであって、且つAiy、Aim及
びAicのすべてが15%以下である
Very Good: 上記3−1)及び3−2)の評価が共にAであって、且つAiy、Aim及
びAicのすべてが15%を超え、20%以下である
Good: 上記3−1)及び3−2)の評価が共にAであるが、Aiy、Aim及びAic
いずれかが20%を超える
Not Good: 上記3−1)及び3−2)の評価いずれかがBまたはCである













【0070】
【表3】

【0071】
4)黒染料溶液評価
4−1)耐光性試験前の各色成分の光学濃度測定
上記2)にて印字した評価サンプル(グラデーションサンプル)から、Y色成分、M色成分及びC色成分のいずれかの色成分の光学濃度が0.9以上1.1以下、かつそのうち最も高い色成分の光学濃度を有する黒染料溶液ベタ印字部を評価サンプルとして選択し、Y色成分、M色成分及びC色成分に分割した初期(試験前)光学濃度(ODdy(0)、ODdm(0)及びODdc(0))をGretag Macbeth社製Spectrolino(光源:D65、視野角:2°、status A)を用いて測定した。得られた結果を表2に示す。
【0072】
4−2)耐光性試験後の各色成分の光学濃度測定
上記4−1)で使用した評価サンプルに対し、スガ試験機(株)製の強エネルギーキセノンウェザーメーターSC780−WNを用いて耐光性試験を施した。具体的には、温度25℃、湿度50%RHの環境下で、キセノンランプから発した光を、石英ガラス製の光源ランプフィルター、石英ガラス製のインナーフィルター及び320nm以下の波長光をカットするガラス製のアウターフィルターを通過させた後、評価サンプルに照度93kluxで100時間照射した。耐光性試験後、Y色成分、M色成分及びC色成分に分割した試験後光学濃度(ODdy(1)、ODdm(1)及びODdc(1))をGretag Macbeth社製Spectrolino(光源:D65、視野角:2°、status A)を用いて測定した。得られた結果を表2に示す。
【0073】
4−3)耐光試験前後の各色成分の光学濃度差
上記4−1)の初期(試験前)光学濃度及び上記4−2)の試験後光学濃度から、Y色成分、M色成分及びC色成分の光学濃度差(ΔODdy、ΔODdm及びΔODdc)を求めた。得られた結果を表2に示す。
【0074】
(考察)
実施例1〜7及び比較例1〜6において、使用した黒染料中の最大光学濃度(OD値)を有する色成分はいずれもC色成分であるので、調色カラー染料としてイエロー染料とマゼンタ染料を黒染料と共に併用した。
【0075】
実施例1及び2の場合、評価サンプルの耐光性試験前及び試験後共に各色成分中の最大の光学濃度と最小の光学濃度との差が0.15以下であるため、耐光性試験前及び試験後におけるカラーバランスが良好であった。更に、耐光性試験による各色成分のOD減少率が全て15%以下であり、耐光性も極めて良好であった。
【0076】
実施例3及び4の場合、評価サンプルの耐光性試験前及び試験後共に各色成分中の最大の光学濃度と最小の光学濃度との差が0.15以下であるため、耐光性試験前及び試験後におけるカラーバランスが良好であった。しかし、耐光性試験によるシアン各色成分のOD減少率が15%をわずかに超えていたので、実施例1及び2の場合に比べて耐光性が低下したが、実用上問題がなかった。
【0077】
実施例5〜7の場合、評価サンプルの耐光性試験前及び試験後共に各色成分中の最大の光学濃度と最小の光学濃度との差が0.15以下であるため、耐光性試験前及び試験後におけるカラーバランスが良好であった。なお、耐光性試験による各色成分のOD減少率が、実施例7のY色成分を除き、15%を大きく超えていたので、実施例1及び2の場合に比べて耐光性の点では見通りしたが、前述したようにカラーバランスに関する限り実用上問題がなかった。
【0078】
比較例1の場合、評価サンプルの耐光性試験前の各色成分中の最大の光学濃度と最小の光学濃度との差が0.15以下であるため、耐光性試験前のカラーバランスは良好であった。しかし、耐光性試験後にY色成分及びC色成分の光学濃度が大幅に減少し、最大の光学濃度と最小の光学濃度の差が0.15を超えたため、耐光性試験後のカラーバランスに問題があった。
【0079】
比較例2の場合、評価サンプルの耐光性試験前の各色成分中の最大の光学濃度と最小の光学濃度との差が0.15を超え、さらには耐光性試験後の差も0.15を大きく超えていたため、耐光性試験前及び試験後共にカラーバランスに問題があった。
【0080】
比較例3及び4の場合、評価サンプルの耐光性試験前の各色成分中の最大の光学濃度と最小の光学濃度との差は0.15以下であったが、耐光性試験後の最大の光学濃度と最小の光学濃度の差が0.15を超えていたため、耐光性試験後のカラーバランスに問題があった。
【0081】
比較例5の場合、評価サンプルの耐光性試験前の各色成分中の最大の光学濃度と最小の光学濃度との差が0.15を超えていたため、耐光性試験前のカラーバランスに問題があった。
【0082】
比較例6の場合、評価サンプルの耐光性試験前の各色成分中の最大の光学濃度と最小光学濃度との差が0.15以下であったため、耐光性試験前のカラーバランスは良好であったが、耐光性試験後は0.15を超え、耐光性試験後カラーバランスに問題があった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の調色されたインクジェット記録用染料系黒インクは、それから得られる印字物について、光による退色の前後のそれぞれにおいて良好なカラーバランスを実現できる。従って、光退色の目立たない印字物を提供することができ、インクジェット記録用の染料系黒インクとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1(A)は単独の黒染料のみを用いた黒染料溶液による黒染料溶液ベタ印字物の各色成分の光学濃度図であり、図1(B)は、調色カラー染料としてイエロー染料とマゼンタ染料を黒染料と併用した黒インクによる黒インクベタ印字物の各色成分の光学濃度図であり、図1(C)は、調色カラー染料としてイエロー染料とマゼンタ染料を黒染料と併用した黒インクによる黒インクベタ印字物の耐光性試験後の各色成分の光学濃度の説明図である。
【図2】黒染料の吸光度曲線図である。
【図3】単独の黒染料だけを用いたインクジェット記録用染料黒インクによる黒インクベタ印字物の各色成分の光学濃度の説明図である。
【図4】調色カラー染料であるイエロー染料及びマゼンタ染料を、黒染料と併用した場合のベタ印字物の各色成分の光学濃度の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒染料、調色カラー染料、水溶性有機溶剤及び水を含有するインクジェット記録用染料黒インクであって、
黒インクを用いて光沢紙に印字された平均光学濃度0.9以上1.1以下の黒インクベタ印字部について、イエロー色成分の光学濃度をODiy(0)、マゼンタ色成分の光学濃度をODim(0)、シアン色成分の光学濃度をODic(0)とし、ODiy(0)、ODim(0)及びODic(0)のうち最大光学濃度をODimax(0)、最小光学濃度をODimin(0)とし、
黒インクベタ印字部に対し所定の耐光性試験を行い、試験後のイエロー色成分の光学濃度をODiy(1)、マゼンタ色成分の光学濃度をODim(1)、シアン色成分の光学濃度をODic(1)とし、ODiy(1)、ODim(1)及びODic(1)のうち最大光学濃度をODimax(1)、最小光学濃度をODimin(1)と定義したときに、以下の式(1)及び(2)を同時に満たすことを特徴とするインクジェット記録用染料黒インク。
【数1】

【請求項2】
該黒染料が、
調色カラーインクを除くインクジェット記録用染料黒インクの構成成分である黒染料、水溶性有機溶剤及び水を含有する黒染料溶液を用いて光沢紙に印字された黒染料溶液ベタ印字部について、イエロー色成分の光学濃度をODdy(0)、マゼンタ色成分の光学濃度をODdm(0)、シアン色成分の光学濃度をODdc(0)とし、ODdy(0)、ODdm(0)及びODdc(0)のうち最大光学濃度をODdmax(0)とし、
黒染料溶液ベタ印字部に対し所定の耐光性試験を行い、試験後のイエロー色成分の光学濃度をODdy(1)、マゼンタ色成分の光学濃度をODdm(1)、シアン色成分の光学濃度をODdc(1)とし、以下の式(3)〜(5)で定義されるΔODdy、ΔODdm及びΔODdcのうち最大光学濃度差をΔODdmaxと定義したときに、
ΔODdmaxを示す色成分が、ODdmax(0)を示す色成分と一致する黒染料溶液を構成する黒染料である請求項1記載のインクジェット記録用染料インク。
【数2】

【請求項3】
ΔODdmaxを示す色成分が、シアン色成分である請求項2記載のインクジェット記録用染料黒インク。
【請求項4】
黒染料が、黒染料及び調色カラー染料の合計含有量に対して、50重量%以上含有されている請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用染料黒インク。
【請求項5】
調色カラー染料が、イエロー染料である請求項1〜4にいずれかに記載のインクジェット記録用染料黒インク。
【請求項6】
調色カラー染料が、マゼンタ染料である請求項1〜4にいずれかに記載のインクジェット記録用染料黒インク。
【請求項7】
調色カラー染料が、イエロー染料及びマゼンタ染料である請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録用染料黒インク。
【請求項8】
以下の式(6)〜(8)で定義されるAiy、Aim及びAicが、いずれも20%以下である請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット記録用染料黒インク。
【数3】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−189905(P2008−189905A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329239(P2007−329239)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】