説明

インクジェット記録用顔料インクの製造方法、インクジェット記録用顔料インク、インクジェット記録方法

【課題】
高い分散安定性を有し、長期保存後においても吐出安定性が高いインクジェット記録用水性インクの製造方法を提供する。
【解決手段】
顔料とアニオン性親水基と疎水基を持つ高分子分散剤、塩基性化合物、水および水溶性有機溶剤を含有する水性インクをインク化した後、熱処理および加圧処理を行う工程を設け、その後にインク中の増粒分を除去することで高い分散性と長期保存後も安定したt6お出性を得ることが可能なインクジェット記録用水性インクの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用顔料分散液(以下、顔料分散液と記述する)を用いたインクジェット記録液の製造方法、インクジェット記録用水性インク、インクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットインクでは、耐水性や耐光性などの堅牢性の面から、顔料を用いた水性インクを用いるようになってきた。顔料を均一に安定して水中に分散させるため、界面活性剤や高分子分散剤などの分散剤を添加する方法が取られている。主に顔料を水中に均一に分散させた顔料分散型の水性インクが使用されているが、この分散は簡単ではない。
特に、顔料分散型の水性インクは温度条件や圧力条件が変化すると、分散剤の顔料への吸着平衡が崩れ、顔料粒子同士の相互作用に影響を及ぼし、長期保存において物性の変化及び/または多量の凝集異物を発生することがある。
【0003】
これまで、凝集異物の対策として、特開平3−64376号公報では顔料分散液を50℃から65℃で100時間から500時間加熱処理することにより、長期保存下にて発生する凝集異物をあらかじめ取り除く方法が提案されている。また、特開2006−160951号公報では、インク化した後加熱処理を施し、凝集物を取り除く方法が提案されている。しかし、吐出に熱エネルギーを吐出エネルギーに利用しているサーマルヘッドでは、ヒーターボード上のインクがこれらの公報で提案されているよりもはるかに高熱になるため、これまでの濾過条件では濾過しきれなかった凝集異物が発生し、ヘッドノズル内部で凝集し、ヘッドの中で詰まるという問題があった。
【特許文献1】特開平3−64376号公報
【特許文献2】特開2006−160951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記問題点に鑑みて為されたもので、高い分散安定性を有し、長期保存後においても吐出安定性が高いインクジェット記録用水性インクの製造方法及びインクジェット記録用水性インク、インクジェット記録方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明において、上記課題点を解決するべく鋭意検討した結果、以下の発明によって解決できることを見出した。すなわち、本発明は、少なくとも顔料とアニオン性親水基と疎水基を持つ高分子分散剤、塩基性化合物、水および水溶性有機溶剤を含有する水性インクをインク化した後、熱処理を行うインクジェット記録用顔料インク製造方法において、
・ 前記顔料、前記高分子分散剤、前記塩基性化合物、前記水および前記水溶性有機溶剤を混合して、インク化する第一工程、
・ 第一工程で混合したインクを濾過する第二工程、
・ 第二工程で得られたインクを80℃≦t≦200℃、0.20Mpa≦P≦0.35Mpaの条件で加熱処理及び加圧処理を行う第三工程、
(t:インクの処理温度、P:インクの処理圧力)
・ 第三工程で処理を加えたインクの増粒分を除去する第四工程
を少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録用インク製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
上記本発明によれば、高い分散安定性を有し、長期保存後においても吐出安定性が高いインクジェット記録用水性インクを製造することが可能であり、さらには分散安定性と長期保存後の吐出安定性に優れたインクジェット記録用水性インク、インクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】

以下に本発明の製造方法を、詳細に説明する。本発明のインクの製造方法は、
少なくとも顔料と、アニオン性親水基と疎水基を持つ高分子分散剤、塩基性化合物、水溶性有機溶剤、水とを含有するインクジェット記録用インクの製造方法において、
(1)前記顔料、前記高分子分散剤、前記塩基性化合物、前記水および前記水溶性有機溶剤とを混合して、インク化する第一工程と
(2)第一工程で混合したインクを濾過する第二工程と
(3)第二工程で得られたインクを80℃≦t≦200℃、0.20Mpa≦P≦0.35Mpaの条件で加熱処理及び加圧処理を行う第三工程(t:インクの処理温度、P:インクの処理圧力)と
(4)第三工程で処理を加えたインクの増粒分を除去する第四工程とを少なくとも有することで、分散安定性に優れ、長期保存後においても吐出安定性が高いインクジェット用水性顔料インクを提供することのできる製造方法を見出した。
【0008】
本発明において使用されるアニオン性親水基を持つ高分子酸化防止剤に含まれるカルボン酸基などの親水性基は塩基性化合物で中和される。これにより顔料の分散安定性を維持しつつ、インクジェットプリンターのノズルの周辺への付着を少なくすることができ、長期にわたる連続印字製においても良好なと出安定性を示す。
【0009】
本発明においてインクに用いられる顔料分散液は、顔料表面に高分子分散剤を吸着させて、顔料に分散性を付与している。顔料表面に存在する高分子分散剤は、塩基性化合物により中和され、高分子分散剤の親水基が水中でイオンとして解離し、安定に水媒体中に分散することができる。しかしながら、一般的な顔料インクは、長期保存すると、インクのpH値が低下し、インク中の顔料の分散安定性や吐出安定性が低下する。原因としては、顔料に吸着している高分子分散剤の中には、未中和の親水基が存在しているものがあることがあげられる。これらの顔料に吸着している未中和の親水基が、徐々に水性媒体側へ配向し、水性媒体中の塩基性化合物により中和され、インク中の塩基性化合物が減少するためと考えられる。
【0010】
インクを加熱処理すると、未中和の親水基の中和が促進され、高分子分散剤の運動が活性化し、高分子分散剤の分子鎖が広がることで、顔料に吸着している未中和のカルボン酸基は水媒体側へ向き、顔料分散液の分散性は向上する。 このようなことから、加熱温度を高くすることで、高分子分散剤の活性をさらに高め、短時間の加熱で、インク中の顔料分散液の分散性を高める手法が用いられてきたが、過剰な加熱は高分子分散剤の分解の原因となるため十分な効果が得られない。これに対して本発明では、インクを加熱処理と加圧処理を併用することで、高分子分散剤の運動を活性化させることで、過剰な加熱温度を行うことなく短時間の処理で、顔料分散液の分散性をよりいっそう高めることが可能となっている。インクの加熱・加圧処理を併用することにより顔料分散液の安定化が促進され、インクを長期間保存してもpH値変動が少なく、インクを保存した後に連続印字させてもノズル周辺にインクの凝集物が付着することなく、優れた吐出安定性を示す。
【0011】
次に本発明の製造方法を工程ごとに説明する。第一工程においては、アニオン性親水基を持つ高分子分散剤を水溶性有機溶剤で溶解した溶液に、顔料と水とを添加し、分散することで顔料分散液を調整する。さらに、調整した顔料分散液に水溶性有機溶剤、界面活性剤、水を等を混合し顔料分散液をインク化する。第二工程では、上記インクをフィルターで濾過した後、イオン交換樹脂層を通してカルシウム等を除去する。フィルターで濾過にはインク中のごみや粗大粒子を除去する目的がある。使用するフィルターとしては、有効系が10μm以下、好ましくは1μm〜5μmである。フィルターの材質としては種々のものを用いることが可能であるが、水系の溶媒用のフィルターが好ましい。ろ過の方法としては、加圧濾過、減圧濾過のいずれも使用できる。第三工程においては、第二工程で得られたインクに対して加熱処理及び加圧処理を行う。加熱処理の温度は80℃以上、200℃以下の範囲が好ましく、さらに好ましくは100℃以上、160℃以下の範囲である。80℃未満の温度で加熱処理をした場合、十分な効果が得られず、200℃を超えた温度で加熱すると高分子分散剤が分解し、凝集する場合がある。加圧処理の圧力は0.20Mpa以上、0.35Mpa以下の範囲が好ましい。0.20Mpa未満の加圧処理では十分な効果が得られず、0.35Mpaを超えた圧力で加圧すると窒素等の気体がインク中に溶け込み、インク中に気泡が発生しやすくなるため吐出安定性が低下する。更に、処理時間は処理温度及び処理圧力により異なるが、処理時間を1時間〜20時間以内にすることが好ましい。処理時間が20時間以上では、インクの製造に時間がかかりすぎ、製造効率が悪くなるため好ましくない。また、1時間未満の場合、前記処理効果が不十分となる場合がある。第4工程においては、第三工程で加熱処理及び加圧処理を施したインクの増粒分を除去する。上記、本発明を実施するに当たり、第四工程のインクを濾過する工程において凝集物を取り除く方法はフィルターによるフィルタリングを用いてもよいし、遠心分離を用いて上澄み液をインクとしてもよい。更に両方の処理を行うことがさらに好ましい。
【0012】
次に本願のインクに使用する各種材料について説明する。
(顔料)
本発明に使用する顔料としては、従来公知公用のインクジェット記録方法に通常使用されている有機/無機顔料が全て使用出来る。例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料やフタウシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料や塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキやニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、シリカ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化鉄系、カーボンブラック系等の無機顔料が挙げられる。又、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても水性媒体に分散可能ならいずれも使用出来る。具体例を以下にあげる。イエロー顔料として、C.I.ピグメントイエロー74、93、109、110、128、138、マゼンタ顔料として、C.I.ピグメントレッド122、202、209、シアン顔料として、C.I.ピグメントブルー15:3、60、ブラック顔料として、C.I.ピグメントブラック7、オレンジ顔料として、C.I.ピグメントオレンジ36、43、グリーン顔料として、C.I.ピグメントグリーン7、36等を用いることができる。顔料は粉末状、顆粒状あるいは塊状の乾燥顔料でもよく、ウエットケーキやスラリーでもよい。これらの顔料の含有量は、構造により異なるが一般的にはインクにおいて3〜20重量%、好ましくは3〜12重量%の範囲を占める割合で用いられる。
(高分子分散剤)
本発明においては、顔料の分散に高分子分散剤を用いる。高分子分散剤としては、疎水性基と、カルボン酸基やスルホン酸基などのアニオン性親水基を有し、親水基が塩基性化合物で中和されることにより保存安定性が良好で、長期にわたる連続印字においても良好な吐出安定性が得られる。本発明に使用可能な高分子分散剤としては、例えば、リグニンスルホン塩酸、セラック等の天然高分子、ポリアクリル酸、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体或いはこれらの塩、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、リン酸塩等の陰イオン性高分子等があげられるが、これらに限定されるものではない。
これらの共重合体の重量平均分子量は好ましくは3000〜30000、より好ましくは5000〜15000であり、酸価は、50〜500mg−KOH/gが好ましく、高分子分散剤の酸価が50mg−KOH/g未満の場合は、水性媒質に対する高分子分散剤の溶解性が不足し、顔料微粒子の分散安定性が低下する場合がある。500mg−KOH/gを超える場合は、本発明のインクを用いた印刷物の耐水性が低下する場合がある。また、高分子分散剤の水溶性が高くなりすぎて高分子分散剤単独で水中に溶解してしまい、顔料の分散に寄与しなくなる場合もある。より好ましくは70〜250mg−KOH/gの範囲である。
(塩基性化合物)
本発明において高分子分散剤の中和に用いる塩基性化合物は、上記高分子分散剤のアニオン性親水基を中和することが可能なものであり、水に溶解するものであれば使用できる。このような塩基性化合物しては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属類、モノエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類、アンモニアなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(界面活性剤)
本発明のインク中に使用可能な界面活性剤としては、従来からインクジェット記録用水性インクに用いられているものであれば、いずれも用いることが可能である。具体的な例としては、脂肪酸塩類、高級アルキルジカルボン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩類、高級アルキルスルホン酸塩、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、スルホ琥珀酸エステル塩、ナフテン酸塩、液体脂肪油硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類などの陰イオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類などのノニオン性界面活性剤などを挙げることができる。これらの分散剤の添加量は、顔料1重量%に対して、好ましくは0.06〜3.00重量%の範囲、より好ましくは0.1〜3.0重量%の範囲である。
(水溶性有機溶剤)
本発明のインクに使用する水溶性有機溶媒としては、水溶性の有機溶媒であれば使用することができ、2種以上の水溶性有機溶媒の混合溶媒としても使用できる。 好ましい水溶性有機溶媒の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどの低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、チオジグリコール、1,4−シクロヘキサンジオールなどのジオール類;グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオールなどのトリオール類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトールなどのヒンダードアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコーリモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;ジメチルスルホキシキド、グリセリンモノアリルエーテル、ポリエチレングリコール、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルフォラン、β−ジヒドロキシエチルウレア、ウレア、アセトニルアセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン、ジアセトンアルコールなどである。これらの中でも、沸点が120℃以上の水溶性有機溶媒を使用すると、ノズル先端部でのインク濃縮が抑制されるため好ましい。これらの水溶性有機溶媒のインク中に占める割合は、インク全質量に対して、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。
以上が本発明のインクの必須成分であるが、これらの成分以外に、その他の界面活性剤、pH調整剤、酸化防止剤、防黴剤などの各種の添加剤を添加してもよい。
本発明において、顔料を分散する方法としては、インク製造時に用いられる公知公用の分散技術が使用できる。分散機としては、縦型あるいは横型のアジテーターミル、アトライター、コロイドミル、ボールミル、3本ロールミル、パールミル、スーパーミル、インペラー、デスパーサー、KDミル、ダイナトロン、加圧ニーダー等が挙げられる。以上のようにして得られた顔料分散液に後述する水溶性有機溶剤や水などを添加してインクジェット用インクとする。
本発明のインクは、熱エネルギーを利用したサーマルインクジェット方式に対して有効である。この際、記録ヘッドは記録幅を有するフルマルチヘッドを用いても、いくつかのヘッドを記録幅方向に並べても、固定式のフルラインヘッドを用いてもよい。
【0013】
本発明のインクジェット記録方法の特徴は、インクにエネルギーを与えてインクを飛翔させて行なうインクジェット記録方法において、上記本発明のインクを使用することである。エネルギーとしては、熱エネルギーや力学的エネルギーを用いることができるが、熱エネルギーを用いる場合が好ましい。
【0014】
本発明のインクジェット記録方法において、被記録材は限定されるものではないが、インクジェット専用紙、ハガキや名刺用紙、ラベル用紙、ダンボール用紙、インクジェット用フィルムなど、少なくとも一方の面にインクを受容するコーティング層を持つ被記録材が好ましく使用される。コーティング層を持つ被記録材としては、少なくとも親水性ポリマーおよび/または無機多孔質体を含有した少なくとも一方の面にインクを受容するコーティング層を持つ被記録材が望ましい。
【実施例】
【0015】
以下に、実施例を用いて、本発明を更に詳しく説明する。実施例で使用するインクを詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、文中の部および%とあるのは特に断りのない限り質量換算である。
【実施例1】
【0016】
(顔料分散液1の調製)以下の方法を用いて顔料分散液を調製した。
【0017】
高分子分散剤としてスチレン/アクリル酸/エチルアクリレート共重合体(酸価180、重量平均分子量9000)2.5部と顔料として純水で洗浄したアゾ顔料CROMOPHTAL Yellow8GN(チバ・スペシャルティケミカルズ)をエチレングリコールとともに混合し、充分に撹拌して、顔料と高分子分散剤を含有するエチレングリコール溶液を得た。次にエチレングリコール溶液に所定量のイオン交換水を添加し、顔料分散液を得た。顔料分散液中の高分子分散剤が有する未中和のアニオン性基を中和するため、十分に撹拌しながら水酸化カリウム水溶液を加え、顔料分散液を中和率150%に調整した。その後、ロータリーエバポレーターでエチレングリコールを除去し、顔料分散液を遠心分離機で遠心分離し、粗大粒子などを除去した結果、固形分は約16%の顔料分散液を得た。
(インク1の作成)
上記顔料分散液 70.0質量部
ジエチレングリコール 4.0質量部
グリセリン 4.0質量部
ポリエチレングリコール 4.0質量部
アセチレノールE100(川研ファインケミカル製)0.5質量部
イオン交換水 17.5質量部
上記組成物を3時間攪拌した。・・・・第一工程
1ミクロンのメンブレンフィルターで濾過した後、イオン交換樹脂層を通してカルシウム等の不純物を除去してインクを得た。・・・・第二工程
次いで第二工程で得られたインクをESPEC社製高度加速寿命試験装置(HASTチャンバー) EHS-411(M)を用いて表1〜表2に示した処理温度、処理圧力で処理を行った。・・・・第三工程
ここで、処理時間に対する効果を確認するため、表3に示した処理時間で処理を行った。
その後、1ミクロンのメンブレンフィルターで濾過し、所望のインクを得た。・・・・第四工程
【実施例2】
【0018】
(顔料分散液2の調製)
前記顔料分散液1に用いた高分子分散剤であるスチレン/アクリル酸/エチルアクリレート共重合体を、ブチル-4-ビニルベンゾエート/メタクリル酸共重合体(酸価=94、重量平均分子量=12000)に置き換えた以外は顔料分散液1と同様にして顔料分散液2を調整した。
(インク2の作成)
前記インク1に用いた顔料分散液1を、顔料分散液2に変更した以外は前記インク1と同様にしてインク2を作成した。
【実施例3】
【0019】
(顔料分散液3の調製)
前記顔料分散液1に用いた高分子分散剤であるスチレン/アクリル酸/エチルアクリレート共重合体を、スチレン/メタクリル酸/ブチルアクリレート共重合体(酸価=78、重量平均分子量=8200)に置き換えた以外は顔料分散液1と同様にして顔料分散液3を調整した。
(インク3の作成)
前記インク1に用いた顔料分散液1を、顔料分散液3に変更した以外は前記インク1と同様にしてインク3を作成した。
(評価方法)
前記インク1〜インク3に加熱・加圧処理を施し、下記の表1の通り実施例とし、各実施例の分散安定性及びと出安定性についての評価を行った。
なお、吐出安定性については、各インクを記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置LX750(キヤノンファインテック(株)製)にそれぞれ搭載して、光沢紙SP101(キヤノン(株)製)に印字を行い、評価を行った。
*1:分散安定性
各インク液を密閉状態で更に60℃2週間保存した。試験前後の重量平均粒子径を測定し、式(a)で粒子径増加率(%)を求め分散安定性の尺度とした。粒子径の測定には動的光散乱法(商品名:レーザー粒径解析システムFPAR−1000;大塚電子(株)社製)を用いた。評価基準は下記の通りとした。
【0020】
◎:粒子径増加率(%)が5%未満である。
【0021】
○:粒子径増加率(%)が5%以上10%未満である。
【0022】
△:粒子径増加率(%)が10%以上30%未満である。
【0023】
×:粒子径増加率(%)が30%以上である。
*2:吐出安定性
各インク液を密閉状態で更に60℃2週間保存した。その後、ハガキサイズのグラデーションパターンを10000枚連続印字し、10000枚目の画像のヨレ、不吐の吐出特性を下記の基準で評価した。
【0024】
◎:ヨレ、不吐が無く、正常に印字されている。
【0025】
○:不吐は発生していないが、一部にヨレが見られる。
【0026】
△:不吐が一部発生し、画像全体にヨレが見られる。
【0027】
×:不吐が多く発生し、画像全体にヨレが見られる。
表1.

【0028】
*比較例2は、インクが凝集したため、吐出不可能だった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、pH変動が少なく、長期保存後においても吐出安定性が高く、かつ印字画像の発色性と定着性が良好な画像を提供することのできるインクを製造することができ、さらには吐出性能が良好で堅牢性と品位に優れた画像をいつでも安定して記録し得るインクの製造方法、インクジェット記録方法、インクカートリッジおよびインクジェット記録装置を提供することができる。




































【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも顔料と、アニオン性親水基と疎水基を持つ高分子分散剤、塩基性化合物水溶性有機溶剤、水を含有するインクジェット記録用顔料インクの製造方法において、
・ 前記顔料、前記高分子分散剤、前記塩基性化合物、前記水および前記水溶性有機溶剤とを混合して、インク化する第一工程、
・ 第一工程で混合したインクを濾過する第二工程、
・ 第二工程で得られたインクを80℃≦t≦200℃、0.20Mpa≦P≦0.35Mpaの条件で加熱処理及び加圧処理を行う第三工程、
(t:インクの処理温度、P:インクの処理圧力)
・ 第三工程で処理を加えたインクの増粒分を除去する第四工程
を少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録用水性インクの製造方法。
【請求項2】
前記高分子分散剤のアニオン性親水基がカルボン酸基であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用水性インクの製造方法。
【請求項3】
上記請求項1に記載のインクジェット記録用水性インク製造工程で得られたインクジェット記録用水性インク。
【請求項4】
上記請求項1に記載のインクジェット記録用水性インク製造工程で得られたインクに熱エネルギーを与えて、該インクを飛翔させることを特徴とするインクジェット記録方法。

















【公開番号】特開2012−131872(P2012−131872A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283806(P2010−283806)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】