説明

インクジェット記録紙

沈降炭酸カルシウム(PCC)および該沈降炭酸カルシウムを含有するインクジェット記録紙の生成物およびその調製方法が開示される。沈降炭酸カルシウムは脱水され、そして両性および/またはアニオン性分散剤の存在下に粉砕されて、高固形分PCC組成物が製造される。コーティング配合物に使用されると、インクジェット紙の印刷性を高める表面形態(モルフォロジー)および化学的性質を、該PCCは有する。本発明教示のPCCを含有するインクジェット記録紙は、低減されたインクのフェザリングおよび拡散、並びに改良された光学濃度、乾燥時間、および耐水性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録媒体に使用される、磨砕された(milled)および/または粉砕された(comminuted)沈降炭酸カルシウム(PCC)顔料に関する。加えて、本発明は、そのような顔料を取り込んで、高められた印刷品質を与えるインクジェット記録紙に関する。本発明はさらに、PCCを製造する方法および当該物をインクジェット記録紙に施与する方法に関する。
【0002】
本発明教示の方法に従って製造されたPCC粒子は、紙の填料、コーティング配合物用の顔料として、塗料用顔料として、ポリマー中の耐衝撃改質剤として、並びに食品、栄養食品、化粧品および医薬品産業における適用にも有用である。
【背景技術】
【0003】
サーマルインクジェット方法は、記録紙に向けられたオリフィスを持つ小室内の少量の希釈された水性インクを加熱することによって、該インクを紙の表面上に施与する。加熱された少量のインクは、急速にその沸点に達し、生成された水蒸気泡が、液状インクの小滴を紙に向けて押出し、そこで該液滴は、シート上に文字または画像を形成するドットマトリクス中の単一ドットを作り出す。加熱要素を汚し、またオリフィスを詰めることがある残渣を残すことなく、インクが急速に沸騰する能力を持つように、固形分が低く、かつ低沸点成分を有するところのインクを、この方法は要求する。したがって、インクジェットプリンターインクの約96重量パーセントまでが、水と低分子量グリコールとの混合物である。このようなインクは、加熱されると急速に沸騰して、迅速な印刷を確実にし、かつ詰まリ易くはないけれども、施与されたインクが非常に動き易く、乾燥するのが遅い結果をもたらす。したがって、インクの着色剤または染料が紙の外表面上またはその近くに留まり、かつそれが施与された点から拡散せずまたは移動しない場合にのみ、良好な印刷品質が得られることができる。
【0004】
着色剤の汚れを防ぐために、乾燥が急速に生じることも重要である。加熱要素を備えていないプリンターでは、紙の表面上の着色剤の適切な乾燥のために、インクの水およびグリコール成分は紙の本体中に浸透しなければならない。液相が紙中に浸透するときに、液相とともに着色相が紙中に運び込まれるならば、または着色剤が紙の表面を横断して移行するならば、得られる印刷文字または画像の品質は劣るだろう。また、印刷された表面が濡らされまたは蛍光ペンで印を付けられるならば、紙上に永久的に固定されていない乾燥したインク着色剤は、にじみまたは流れるだろう。したがって、最適な性能のためには、乾燥したインクは、水および蛍光ペンに対する優れた堅牢性を持たなければならない。
【0005】
多目的事務用紙は一般に、不適当なまたは不満足なインクジェット印刷品質を提供する。このことは、重ね合わせインク施与を伴う多色印刷が使用される場合に特に当てはまる。印刷ヘッドが右に動くときにある順番で、そして印刷ヘッドが左に動くときにその逆の順番で色を施与するプリンターにおいて、不満足な印刷品質は一層ひどくなる。多目的事務用紙はしばしば、着色剤が紙中に浸透することを許し、これは印刷された画像の光学濃度の低減および紙の反対側への透き通し(裏抜け)の増加をもたらす。高度にサイズ処理された多目的事務用紙は液体の浸透を防ぎ、比較的高いインク光学濃度をもたらすが、同時に、過度のフェザリング(「ぼやけた」画像をもたらす毛管作用によるインクの散り)および拡散(印刷された領域の増大または広幅化)ももたらす。
【0006】
インクジェット印刷品質を改良する一つの方法は、インク着色剤を紙の表面に結合するが、水/グリコール液相は紙の本体中に通過して行くことを許し、それによって乾燥を速める物質を該表面に施与することである。しかし、インク着色剤は多くの場合不飽和または芳香族有機化合物であり、また該表面物質が着色剤とあまりにも強く相互作用するならば、インクの色は変化しかねない。したがって、インク着色剤が紙に浸透するのは妨げるが、着色剤に働きかけて色の変化を引き起こすほど強くは相互作用しない表面物質が得られなければならない。
【0007】
他の方法は、正電荷に帯電した顔料を使用しており、この場合にはこれらの顔料はインクジェット染料と比較的大きく相互作用するだろうと考えられた。しかし、これらの顔料は通常、固形分濃度が約10パーセント〜約20パーセントと低く、したがって低固形分濃度の故の施与の制限、たとえば製造速度の減少および/または塗工機速度の低下がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の教示は、インクジェット印刷用のコーティング配合物中に取り込まれたときに良好な光学濃度および画像品質を持ち、それによって印刷された画像の全体の品質を改良する顔料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の教示は、沈降炭酸カルシウム(PCC)を含んでいるインクジェット記録紙を提供する。
【0010】
まず酸化カルシウムを水と混合して、水酸化カルシウムスラリーを製造することによって、該PCCは調製される。クエン酸が該水酸化カルシウムスラリーと混合され、そして該スラリーが炭酸化されて、PCCスラリーが製造される。PCCスラリーは、それから脱水されて、高固形分のPCC組成物が製造される。該高固形分PCC組成物は、両性および/またはアニオン性の分散剤で処理され、引き続いて該PCC組成物は粉砕される。分散剤が高固形分PCC組成物に添加される前に、それと同時に、またはその後に、任意的に、クエン酸が添加されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
フルカラーのインクジェット印刷品質を提供するインクジェット記録媒体が、従来から製造されている。沈降炭酸カルシウム(PCC)の粒子サイズ、表面積、表面の化学的性質、および凝集の程度を選択することによって、各インクジェット印刷特性が個々に調整され、最適化されることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明教示のインクジェット記録媒体用のPCC顔料が製造され、その場合、酸化カルシウムが水と混合されて、水酸化カルシウムスラリーが製造される。該水酸化カルシウムスラリーはクエン酸に混合され、その場合クエン酸は、溶液または固体の形態で供給されることができる。水酸化カルシウムスラリーが沈降炭酸カルシウム(PCC)に実質的に転化されるまで、二酸化炭素が該水酸化物スラリー中に導入される。得られたPCCは、篩分され、脱水されて、高固形分PCC組成物が製造される。両性またはアニオン性分散剤が、高固形分PCC組成物に添加され、粉砕されて、インクジェットコーティング配合物に使用される磨砕されたPCC顔料が製造される。
【0013】
PCCの調製
【0014】
酸化カルシウムを水と混合して、水酸化カルシウムスラリーを製造する。水酸化カルシウムスラリーの温度を約10℃〜約30℃に調整する。製造される炭酸カルシウム当たり約0.25重量パーセント〜約1.5重量パーセントの濃度で、クエン酸を該水酸化カルシウムスラリーと混合する。水酸化カルシウムスラリーが沈降炭酸カルシウム(PCC)スラリーに実質的に転化されるまで、二酸化炭素を該水酸化カルシウムスラリーに添加する。転化にかかる時間は約30分間〜約90分間のどの時間でもありうる。PCC当たり約0.1重量パーセント〜約0.8重量パーセントの濃度で、リン酸がPCCスラリーに添加されて、PCC製品の表面積が維持される。PCCスラリーは篩分され、脱水されて、PCC固形分約25重量パーセント〜約65重量パーセントの高固形分PCC組成物が製造される。磨砕されおよび/または粉砕される前に、両性および/またはアニオン性分散剤をPCC当たり活性分散剤約1.0重量パーセント〜約5.0重量パーセント、高固形分PCC組成物は混合される。
【0015】
所望の施与粘度を得るために、分散剤レベルは、PCC当たり活性分散剤約8.0重量パーセント〜約10.0重量パーセントより多くてもよい。さらに、従来技術で知られた各種の界面活性剤、たとえば2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、オクチフェノールポリエトキシレート、および/またはポリビニルアルコールを包含するが、これらに限定されないものが、脱水された高固形分PCC組成物に添加されて、分散工程を促進し、かつ所望のレオロジーを得ることができる。
【0016】
本発明の教示に従って製造されたPCCスラリーは、グラム当たり約40平方メートル(約40m/g)〜約70m/gの比表面積、およびPCC当たり約10重量パーセント〜約15重量パーセントの固形分濃度を持つ。PCCスラリーは、それから篩分され、脱水され、そして分散剤の存在下に粉砕されて、本発明の高品質、低コストのインクジェット記録媒体の特性を有する高固形分PCC組成物が得られる。分散剤が加えられる前に、それと同時に、またはその後に、界面活性剤が任意的に添加されることができる。
【0017】
遠心分離、フィルタープレス、たとえばプレートアンドフレームプレス、Laroxプレス、Andritzプレス、ベルトプレス、チューブプレス、真空、および/または他の公知の脱水技術を包含するが、これらに限定されない従来技術で知られた技術を使用して、脱水は実施されることができる。
【0018】
慣用のボールミル、ジェットミル、マイクロミル、Cowles型分散ミキサー、Kadyミル、衝撃型ミル、サンドミルおよび/または媒体ミルを包含するが、これらに限定されない従来技術で知られた技術を使用する湿式かあるいは乾式の磨砕プロセスで、PCCの粉砕は実施されることができる。約0.7mm〜約0.9mmの大きさのガラス媒体を含有する媒体ミル中にPCCの濃縮されたスラリーを導入することによって、粉砕は実施されることができる。媒体ミルは機械式撹拌機を備え、PCCスラリーの得られる固形分重量パーセントは、PCCと水との合計重量当たり約25〜約65パーセントである。本発明教示のPCCスラリーについて媒体ミル磨砕が実施されると、比表面積はグラム当たり約40平方メートル(約40m/g)〜約70m/gである。本発明教示のPCCスラリーについて、適当なスピンドルを使用して1分間当たり100回転(100rpm)で、約200センチポイズ(cps)〜約2000cpsの目標Brookfield粘度まで、磨砕は実施される。
【0019】
クエン酸
【0020】
本発明教示のクエン酸は、任意の公知のクエン酸であることができる。製造されるPCCの重量当たり約0.25重量パーセント〜約1.5重量パーセントのレベルで、水酸化カルシウムスラリーにクエン酸は混合される。溶液および/または固体の形態で、クエン酸は使用されることができる。
【0021】
両性分散剤
【0022】
本発明教示の両性分散剤は、アクリル酸と塩化ジアリルジメチルアンモニウム(DMDAAC)とのコポリマーのナトリウム塩からのものであることができる。アクリル酸とアクリル酸ジメチルアミノエチルの塩化メチル四級アミン(DMAEA:四級アミン)とのコポリマーのナトリウム塩であってもよい。アクリル酸(AA)とDMDAAC:四級アミンとのコポリマーであってもよい。本発明の教示に有用な両性分散剤は、約2000〜約10000または約2000〜約6000の範囲の平均分子量を有する。これは、ポリマー中の特定の分子鎖長に依らないでポリマー中の分子鎖の平均分子量を与える特定の温度における溶液中のポリマーの粘度によって決定される分子量である。重量平均分子量と数平均分子量との間に、この値は入る。
【0023】
PCC当たり活性分散剤約1.0重量パーセント〜約5.0重量パーセント、またはPCC当たり活性分散剤約2.0重量パーセント〜約3.5重量パーセントの範囲で、両性分散剤はPCCスラリーに混合されることができる。
【0024】
アニオン性分散剤
【0025】
本発明の教示に有用なアニオン性分散剤は、約2000〜約10000または約2000〜約6000の範囲の分子量を有するポリアクリル酸ナトリウムであることができる。これは、ポリマー中の特定の分子鎖長に依らないでポリマー中の分子鎖の平均分子量を与える特定の温度における溶液中のポリマーの粘度によって決定される分子量である。重量平均分子量と数平均分子量との間に、この値は入る。
【0026】
本発明の教示に有用な、商業的に入手できるアニオン性分散剤の例は、米国、30144、ジョージア州、Kennesaw、Town Park Drive、245、Suite 200、Kemira Chemicals社からのColloids 207、211、220および260;米国、19106−2399、ペンシルベニア州、Philadelphia、Independence Mall West、100、Rohm & Haas社からのAcumer 9300;および米国、ノースカロライナ州、Charlotte、Steele Creek Rd.、11501、BASF社Polymers部門からのSokalan HP−80である。また、アニオン性分散剤は、アクリル酸とマレイン酸とのコポリマーまたはカルボキシメチルセルロースであることができる。
【0027】
PCC当たり活性分散剤約1.0重量パーセント〜約5.0重量パーセント、またはPCC当たり活性分散剤約2.0重量パーセント〜約3.5重量パーセントの範囲で、アニオン性分散剤はPCCスラリーに混合される。任意的に、界面活性剤が高固形分PCC組成物に添加されることができる。
【0028】
本発明の教示では、水酸化カルシウムが炭酸カルシウムに実質的に転化された後に、PCCの篩分は開始する。スラリーの導電率が最小値に達するときとして、これは示され、該最小値は典型的には約7〜約8のpHのときである。
【0029】
本発明教示のPCCを含んでいるインクジェット記録紙が、調製された。以下は、使用された手順および試験方法の概要である。本発明教示のPCCが製造されると、全体の試験工程は四つの分野、すなわち顔料の調製、バインダーとの配合、紙のコーティングおよび処理、並びに試験に分類されることができる。これらの手順のそれぞれの具体的な詳細が、以下に示される。
【0030】
顔料の調製
【0031】
試験されるべき顔料は典型的には、約25パーセント〜約65パーセントの固形分濃度を有する、濃縮されたスラリーまたはフィルターケーキの形態をしている。スラリーの形態をしているサンプルは、真空ろ過および/または同様なろ過によって所望の固形分まで濃縮される。それに加えて、各種の界面活性剤または分散剤が添加されて、スラリーの濃縮を促進することができる。ある場合には、たとえば約40m/g〜約70m/gの比表面積を有する、媒体ミルで磨砕されたPCCでは、試行条件を再現するために、スラリーの固形分はこれからさらには変えられない。目標のコーティング配合物固形分が設定され、必要であれば顔料は水で希釈され、そして十分に混合される。比表面積(Flowsorb)、固形分濃度、表面電荷および粘度(Brookfield)によって、顔料は特性付けられる。
【0032】
窒素を吸着ガスとして用いる、BET理論を利用するMicromeritics Flowsorb II 2300を使用することによって、生成物の表面積は得られた。ドップラー電気泳動光散乱分析法(DELSA)を使用して、生成物の表面電荷は測定された。上記のBrookfield粘度計を使用して、粘度は測定された。
【0033】
コーティング配合物
【0034】
典型的なバインダーは、デンプン、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリ酢酸ビニルおよび/またはラテックスを包含し、従来技術で知られるように単独のバインダーとしておよび/またはブレンドされて使用されることができる。デンプンがバインダーとして使用されるときは、乾燥デンプンが固形分約10〜約35パーセントで水中に分散され、約200℃で約50分間〜約190分間、自動化された実験室加熱レンジ中で加熱される。目標の配合物固形分を得るように予め適切に調製されていた顔料と、得られた粘稠なデンプンスラリーは一緒にされ、そしてミル、たとえば米国ウィスコンシン州、Delavan、SPX Process Equipment社のPremier Mill、並びに/またはCowles型開放回転翼および/若しくは同様の撹拌羽根を有する同様のミルによって得ることができるもので完全に混合される。均質なおよび/または均一なスラリーが得られるまで約5分間、配合物は混合される。(10、20、50および100rpmでの)Brookfield粘度および固形分濃度によって、得られた配合物は特性付けられる。
【0035】
乾燥ポリビニルアルコール(PVOH)は、デンプンについて使用されたのと同様の様式で調製される。実験室加熱レンジ中で約200℃で約50分間〜約190分間、固形分約10パーセント〜約25パーセントで、PVOHは水和される。ラテックスバインダー(固形分50パーセント)、液状のPVOHおよび/またはポリ酢酸ビニルについては、試験前の準備は必要ない。これらのバインダーと顔料との配合は、デンプンについてと同じである。
【0036】
試験のための配合物固形分は、固形分約20重量パーセント〜約50重量パーセントの範囲にあったが、典型的なコーティング配合物は固形分約30重量パーセント〜約45重量パーセントを有する。
【0037】
バインダー
【0038】
インクジェット記録紙用のコーティング組成物に有用なバインダーの例は、これまで従来技術で慣用的に使用されてきたものであり、ポリビニルアルコール(PVOH)および/若しくはその誘導体、酸化デンプン、エステル化デンプン、デキストリンおよび/若しくは同様のデンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよび/若しくは同様のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆タンパク、無水マレイン酸樹脂、慣用のスチレンブタジエンコポリマー、メタクリル酸メチル−ブタジエンコポリマーおよび/若しくは同様の共役ジエンポリマーおよび/若しくはコポリマーのラテックス、並びに/またはアクリル酸エステルおよび/若しくはメタクリル酸エステルポリマーおよび/若しくはコポリマーおよび/若しくは同様のアクリルポリマーのラテックス、並びに/またはラテックスを包含するが、これらに限定されない。必要ならば、コーティング組成物はさらにその中に、慣用の顔料の従来技術において慣用的に使用される量で、分散剤、粘着性付与剤、流動性改質剤、消泡剤、発泡抑制剤、離型剤、着色剤等を取り込んでいてもよい。
【0039】
紙のコーティング
【0040】
平方メートル当たり約81.3グラム(約81.3g/m)〜約83.0g/mの坪量の、サイズ処理されていない基礎紙料が、試験に使用される。該紙は12インチ(30.5センチメートル)×17インチ(43.2センチメートル)のシートへと切断され、米国フロリダ州、OldsmarのCSD Tech International社によって製作されたCSDドローダウン装置に固定される。該装置は、ばねクリップを上面に有する金属台上に設けられたガラス板(12インチ×17インチ)からなる。目標被覆重量に応じて選択されたCSDドローダウンロッドを紙の上部に据え、該ロッドの下に、コーティング配合物の均一な一線を紙の上部を横断して加え、そして軽い圧力および一定で安定した速度を用いて約2秒間ローダウンロッドを上部から下部へ引くことによって、コーティング配合物が該ロッドを用いて塗布される。
【0041】
所定のコーティング量を紙表面に送達するように特定の溝が彫られている、ステンレス鋼のローダウンロッドによって、被覆重量は決定される。より少ない溝を有するロッドは、溝と溝の間隔がより広いので、より重い被覆重量を送達する。次に、より数の多い、より狭い間隔で設けられた溝を有するロッドは、より軽い被覆重量を生成する。典型的な被覆重量は、平方メートル当たり約2グラム(約2g/m)〜約12g/mである。
【0042】
コーティング配合物が基礎紙料に塗布された後、基礎紙料は直ちに手持ち熱線銃で約30秒間〜約60秒間乾燥される。コーティングされた紙は、一定の温度および湿度の環境中で約24時間にわたって調整される。調整された紙はそれから、試験用の8.5インチ(21.6センチメートル)×11インチ(27.9センチメートル)のシートへと切断される。
【0043】
本発明教示のコーティング配合物は、従来技術で公知の任意の紙塗工機、たとえばロッドコーター、ブレードコーター、エアナイフ、メタリングサイズプレス、サイズプレス、カーテンコーターおよび/またはキャストコーターを、これらに限定されないが、使用して基礎紙料に施与されることができることが理解されるべきである。
【0044】
紙の試験
【0045】
インクジェット印刷品質の判断基準は、Hewlett Packard社(「HP」)によって確立された。したがって、他様に記述されない限り、以下の印刷特性を決定するために、HP試験方法が使用された。
【0046】
光学濃度は、画像の反射濃度の尺度である。特定のテストパターンが紙上に印刷され、純粋なブラック、混合ブラック、シアン、マゼンタ、およびイエローのインクの光学濃度が、反射濃度計(Macbeth RD918)を使用して測定される。得られた光学濃度がHP規格と比較される。
【0047】
インクの拡散およびフェザリングはどちらも、インクジェット印刷の品質を減少しうる。インクの拡散は、印刷された領域の増大および/または広幅化と定義される。フェザリングは、インクの毛管作用による散りであり、これはぼやけた画像をもたらす。光学濃度測定に使用されたのと同じ印刷パターンの特定の部分を分析することによって、これは測定される。該特定の部分は、インク領域の拡散およびインク周辺のフェザリングを評価される。得られた、デジタル化されたパターンは、市販のプレミアムインクジェット紙と定量的に比較される。インクの拡散およびフェザリングについてのHP試験方法は、これらの試験では使用されなかった。というのは、該HP試験は、定量的であるよりもむしろ主観的であるからである。
【0048】
インク乾燥時間は、紙のシート中へのインク吸収速度の尺度である。特定のテストパターンが印刷され、画像に吸取紙が当てられ、そして移行されたブラックインクの得られた光学濃度が測定される。HPによる指数関数的減衰モデルに、該結果が当てはめられ、インク乾燥時間が計算される。最終乾燥時間が、HPによって設定された判断基準と比較される。
【0049】
耐水性は、水が施与されたときに、印刷された領域から印刷されていない領域へ移行された着色剤の量の尺度である。耐水性テストパターンが紙上に印刷され、250マイクロリットル(μl)の水が該印刷を横断して施与され、印刷された領域および隣接する印刷されていない領域の上を流れることを許される。印刷されていない領域上に移行されたブラックインクの光学濃度が測定される。得られた光学濃度がHP基準と比較される。
【0050】
明度試験では、Technidyne S−4 明度計を使用して、コーティングされた紙がTAPPI明度を試験される。コーティングされていない基礎紙料と、結果が比較される。
【0051】
他のインクジェット媒体
【0052】
本発明の教示は、板紙、OHPシート、織物、Tシャツアイロンプリントに特に有用なインクジェットコーティング配合物に該PCC顔料を使用する方法にも関する。インクジェットコーティング配合物を調製するための本発明教示の方法に従って、これらの用途に使用されるPCCは調製される。
【0053】
以下の非限定的な実施例は、本発明の教示の単なる例示的な実施態様であり、本発明を限定するものと解釈されてはならず、本発明の範囲は添付された特許請求の範囲によって定められる。
【実施例1】
【0054】
水酸化カルシウム(Ca(OH))スラリーを製造する石灰消化機中で、酸化カルシウム(CaO)と水とが混合され、そこで、メチルオレンジ(MO)滴定によって測定されて、CaOの少なくとも90パーセントがCa(OH)に転化された。
【0055】
水酸化カルシウムスラリーは、炭酸カルシウム固形分当たり約10重量パーセント〜約15重量パーセントまで希釈され、反応槽に移送され、そして水酸化カルシウム当たり約0.5重量パーセントのクエン酸が水酸化カルシウムスラリーに添加された。温度は15℃に調整された。電導度が最小値に達する(75分間未満)まで、二酸化炭素が添加され、該最小値は、水酸化カルシウムスラリーが炭酸カルシウムスラリーに実質的に転化されたことを示す。炭酸化はさらに5分間続けられ、その後二酸化炭素が閉じられた。炭酸カルシウム当たり約0.33重量パーセントの濃度でリン酸が添加され、そして炭酸カルシウムがさらに5分間撹拌されて、約7.5〜約8.5のpHを持つ、固形分約15パーセントの沈降炭酸カルシウム(PCC)スラリーが製造された。
【0056】
PCCスラリーは325メッシュで篩分され、遠心分離によって脱水されて、高固形分PCC組成物が製造された。該PCC組成物は分散剤で処理され、それからKadyミルを使用して加工処理されて、固形分濃度約40パーセント〜約50パーセントである、分散されたPCC組成物が製造された。適当なスピンドルを用いて100rpmで測定された、約500センチポイズ(cps)〜約1000cpsのBrookfield粘度を、該組成物は有していた。約60m/g〜約70m/gの比表面積、および使用された分散剤の化学的性質に応じて、約マイナス(−)30ミリボルト(mV)〜約プラス(+)5mVの表面電荷を、該PCC粒子は有していた。
【実施例2】
【0057】
実施例1に記載されたのと同じ様式で、分散沈降炭酸カルシウム(PCC)が製造された。1のアニオン性(サンプル202)および4の両性(サンプル205、206、209および210)分散剤のそれぞれを含有する、5のインクジェットコーティング組成物中で、分散PCCは評価され、コーティングされていない基礎紙料と比較された。PCC100部当たりポリビニルアルコール7部を持つインクジェットコーティング中へと、各PCC組成物は配合された。上記のドローダウン手法を使用してコーティング配合物約6g/m〜約9g/mで、紙サンプルはコーティングされた。乾燥後、手でドローダウンされたものは、光学濃度およびカラーブリード(色にじみ)の評価を試験された。これらの試験の結果が表1に示される。
【表1】

【0058】
本発明教示の分散剤の化学的性質は、コーティングされていない基礎紙料の印刷濃度よりも優れた印刷濃度を維持しながら、より低いインクの拡散およびフェザリング(数字が低いほど良い。)を与えることを、この結果は示す。
【実施例3】
【0059】
実施例1に記載されたのと同じ様式で、分散沈降炭酸カルシウム(PCC)が製造された。デンプン(サンプル229)、ポリビニルアルコール(サンプル209)、およびポリビニルアルコールとデンプンとのブレンド(サンプル233)を含有するインクジェットコーティング中へと、分散PCCは配合された。コーティング配合物約5g/m〜約7g/mで、紙サンプルはコーティングされた。乾燥後、手でドローダウンされたものは、光学濃度およびカラーブリードの評価を試験された。これらの試験の結果が表2に示される。
【表2】

【0060】
本発明のPCCは、各種のバインダーとともに使用されて、コーティングされていない基礎紙料の光学濃度よりも優れた光学濃度を与えることができ、並びにコーティングされていない基礎紙料のインクの拡散およびフェザリング結果と同等またはより良いインクの拡散およびフェザリング結果を与えることを、この結果は示す。
【0061】
本明細書に開示された教示は、上記の目的を達成するように十分に計算されているけれども、多数の変形事物および実施態様が当業者によって案出されうることは理解されるだろう。従って、添付された特許請求の範囲は、本発明の範囲内に属する、全てのそのような変形事物および実施態様を包含することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)酸化カルシウムを水と混合して、水酸化カルシウムスラリーを製造すること、
b)クエン酸を該水酸化カルシウムスラリーと混合すること、
c)二酸化炭素を該水酸化カルシウムスラリーに導入して、沈降炭酸カルシウムスラリーを製造すること、
d)リン酸を該沈降炭酸カルシウムスラリーに混合すること、
e)該炭酸カルシウムスラリーを篩分し、脱水すること、および
f)両性および/またはアニオン性分散剤の存在下に該沈降炭酸カルシウムを粉砕して、固形分約25重量パーセント〜約65重量パーセント濃度、約200センチポイズ〜約2000センチポイズの粘度、およびグラム当たり約40平方メートル(約40m/g)〜約70m/gのBET比表面積の沈降炭酸カルシウム(PCC)生成物を製造すること
を含む、インクジェット記録紙用の沈降炭酸カルシウムの製造方法。
【請求項2】
PCC当たり約0.25重量パーセント〜約1.5重量パーセントの量で、クエン酸が水酸化カルシウムスラリーに添加される、請求項1に従うインクジェット紙用の沈降炭酸カルシウムの製造方法。
【請求項3】
PCC当たり約0.1重量パーセント〜約0.8重量パーセントの濃度で、リン酸が沈降炭酸カルシウムスラリーに添加される、請求項1に従うインクジェット紙用の沈降炭酸カルシウムの製造方法。
【請求項4】
分散剤が、約2000〜約10000の範囲の分子量を有する、請求項1に従うインクジェット紙用の沈降炭酸カルシウムの製造方法。
【請求項5】
分散剤が、約2000〜約6000の分子量を有する、請求項1に従うインクジェット紙用の沈降炭酸カルシウムの製造方法。
【請求項6】
PCCが両性分散剤の存在下に粉砕される、請求項1に従うインクジェット紙用の沈降炭酸カルシウムの製造方法。
【請求項7】
アクリル酸と塩化ジアリルジメチルアンモニウム(DMDAAC)とのコポリマーのナトリウム塩;アクリル酸と、アクリル酸ジメチルアミノエチルの塩化メチル四級アミン(DMAEA:四級アミン)とのコポリマーのナトリウム塩;アクリル酸(AA)とDMDAAC:四級アミンとのコポリマーから、両性分散剤が選択される、請求項6に従うインクジェット紙用の沈降炭酸カルシウムの製造方法。
【請求項8】
PCCがアニオン性分散剤の存在下に粉砕される、請求項1に従うインクジェット紙用の沈降炭酸カルシウムの製造方法。
【請求項9】
ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸とマレイン酸とのコポリマー、およびカルボキシメチルセルロースから、アニオン性分散剤が選択される、請求項8に従うインクジェット紙用の沈降炭酸カルシウムの製造方法。
【請求項10】
沈降炭酸カルシウムを磨砕する前に、またはそれと同時に、クエン酸が添加されてもよい、請求項1に従うインクジェット紙用の沈降炭酸カルシウムの製造方法。
【請求項11】
約25重量パーセント〜約65重量パーセントの固形分濃度、約500センチポイズ〜約1000センチポイズの粘度、約40m/g〜約70m/gの比表面積、および約マイナス(−)30ミリボルト(mV)〜約プラス(+)5mVの表面電荷を有する沈降炭酸カルシウムを、バインダーと混合すること
から製造されてなる、インクジェット記録紙用のコーティング配合物。
【請求項12】
バインダーが、ポリビニルアルコール(PVOH)、酸化デンプン、エステル化デンプン、デキストリンおよび/若しくは同様のデンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、大豆タンパク、無水マレイン酸樹脂、慣用のスチレンブタジエンコポリマー、メタクリル酸メチル−ブタジエンコポリマーおよび/若しくはコポリマーのラテックス、並びに/またはアクリル酸エステルおよび/若しくはメタクリル酸エステルのポリマーおよび/若しくはコポリマーのラテックス、並びに/またはラテックスであることができ、かつ該バインダーが単独で、または互いの任意の組み合わせで使用されることができる、請求項11に従うインクジェット記録紙用のコーティング配合物。
【請求項13】
分散剤、粘着性付与剤、流動性改質剤、消泡剤、発泡抑制剤、離型剤、着色剤等をさらに含んでいる、請求項10に従うインクジェット記録紙用のコーティング配合物。
【請求項14】
両性および/またはアニオン性分散剤の存在下に沈降炭酸カルシウムを磨砕することによって製造された、粉砕された沈降炭酸カルシウム顔料であって、約25重量パーセント〜約65重量パーセントの固形分濃度、約200センチポイズ〜約2000センチポイズの粘度、および約40m/g〜約70m/gの比表面積を有している該粉砕された沈降炭酸カルシウムを含んでいるコーティングを有する、基礎紙料を含んでいるインクジェット記録紙。
【請求項15】
a)酸化カルシウムを水と混合して、水酸化カルシウムスラリーを製造すること、
b)二酸化炭素を該水酸化カルシウムスラリーに導入して、沈降炭酸カルシウムスラリーを製造すること、
c)リン酸を該沈降炭酸カルシウムスラリーに混合すること、
d)該炭酸カルシウムスラリーを篩分し、脱水すること
e)両性および/またはアニオン性分散剤の存在下に該沈降炭酸カルシウムを粉砕して、沈降炭酸カルシウム生成物を製造すること、および
f)粉砕された沈降炭酸カルシウムとバインダーとを含んでいるコーティング配合物で基礎紙料のすくなくとも1面をコーティングして、インクジェット記録紙を形成すること
を含む、インクジェット記録紙の製造方法。
【請求項16】
沈降炭酸カルシウムが、板紙、OHPシート、織物、およびTシャツアイロンプリント用のインクジェットコーティング配合物に使用されるものである、請求項1に従う沈降炭酸カルシウムの製造方法。

【公表番号】特表2008−502579(P2008−502579A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527700(P2007−527700)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/020201
【国際公開番号】WO2005/123593
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(502335051)スペシャルティ ミネラルズ (ミシガン) インク. (14)
【Fターム(参考)】