説明

インクジェット記録装置、浮き上がり検知装置、記録ユニット

【課題】記憶媒体の浮き上がりの確実な検知を極力簡素な構成で実現することのできるインクジェット記録装置、浮き上がり検知装置、及び記録ユニットを提供すること。
【解決手段】本発明に係るインクジェット記録装置、浮き上がり検知装置、及び記録ユニットは、インクを吐出するインク吐出面が設けられた記録ヘッド31〜34と、記録媒体を前記インク吐出面に対向させつつ搬送する搬送ユニット5と、記録ヘッド31〜34より前記記録媒体の搬送方向上流側において前記記録媒体の搬送方向に直交する方向に並設され、前記記録媒体に生じ得る浮き上がり部に接触して個別に変位する複数の可動部92A〜92Fと、複数の可動部92A〜92Fに共通して設けられ、複数の可動部92A〜92Fの少なくとも一つの可動部が変位した場合にその変位を検知する一つの変位検知部93とを備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出してその記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置に関し、特に、記録媒体に生じ得る浮き上がりを検知するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録ヘッドから用紙(記録媒体)にインクを吐出して、その用紙に画像を記録するインクジェット記録装置が知られている。このインクジェット記録装置は、例えばプリンタ装置、複写機、ファクシミリ装置、又はこれらの複合機として利用される。
また、インクジェット記録装置のタイプの一つに、用紙搬送経路に沿って固定された各色の記録ヘッドを備える所謂ラインヘッド型インクジェット記録装置がある。このタイプのインクジェット記録装置では、用紙が用紙搬送ベルトにより記録ヘッド各々のインク吐出面に対向した状態で搬送され、その搬送中の用紙に記録ヘッド各々からインクが吐出される。
【0003】
このようなインクジェット記録装置において、記録ヘッドのインク吐出面と用紙搬送ベルト上の用紙との間隔はごく僅か(例えば1mm程度)である。そのため、用紙搬送経路で搬送される用紙の一部に波打った箇所又は折れ曲がった箇所などの浮き上がりが生じていると、その浮き上がり部が記録ヘッドのインク吐出面に擦れてインク吐出面を傷つけるおそれがある。インク吐出面が傷つくと、インクの吐出口(ノズル)の目詰まりが生じて印字品質が低下する。具体的に、インク吐出面には、インク滴が垂直に吐出されるように撥水膜が設けられる。また、この撥水膜は、インク吐出面の吐出口近傍にインク滴が堆積し、そのインク滴が乾燥して固着することを防止するなどの機能を有する。そのため、用紙の浮き上がり部がインク吐出面に接触して撥水膜が傷つくと、その撥水膜の本来の機能が発揮されずインク滴の吐出不良又は吐出口の目詰まりなどの問題が生じる。
これに対し、例えば特許文献1には、記録ヘッドの用紙搬送方向上流側に、用紙の浮き上がり部に接触する押圧アームの変位をマイクロスイッチ部で検出する用紙押え機構を設ける構成が開示されている。また、前記特許文献1には、前記用紙押え機構を用紙の幅方向に複数設けることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−26154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、用紙の僅かな浮き上がりを確実に検知するためには、その僅かな浮き上がり部から受ける小さな力で変位する小型の変位部(前記押圧アームに相当)を用いることが望ましい。そこで、小型の変位部を用紙の幅方向に複数並設する構成が考えられる。
しかしながら、例えば前記特許文献1に開示された前記用紙押え機構を用紙の幅方向に複数設ける構成では、その用紙抑え機構のそれぞれに個別のマイクロスイッチ部などのセンサが配置されることになる。そのため、用紙抑え機構の数が多くなるに従ってセンサの数も増加し、例えば部品点数及びコストの増加やセンサ各々に接続される配線の敷設の手間が増えるなどの問題が生じる。
従って、本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、記憶媒体の浮き上がりの確実な検知を極力簡素な構成で実現することのできるインクジェット記録装置、浮き上がり検知装置、及び記録ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明は、以下の(1)〜(4)の構成要素を備えることを特徴とするインクジェット記録装置として構成される。
(1)インクを吐出するインク吐出面が設けられた記録ヘッド。
(2)記録媒体を前記インク吐出面に対向させつつ搬送する搬送ユニット。
(3)前記記録ヘッドより前記記録媒体の搬送方向上流側において前記記録媒体の搬送方向に直交する方向に並設され、前記記録媒体に生じ得る浮き上がり部に接触して個別に変位する複数の可動部。
(4)前記複数の可動部に共通して設けられ、前記複数の可動部の少なくとも一つの可動部が変位した場合にその変位を検知する一つの変位検知部。
【0007】
本発明によれば、前記複数の可動部に対して共通の前記変位検知部を設けることにより極力簡単な構成で前記記録媒体の浮き上がり検知を実現することができる。具体的には、前記可動部の数に関係なく一つの前記変位検知部を備える構成であるため、前記可動部各々に対応して個別に前記変位検知部を設ける構成に比べて前記変位検知部の数を省減することができる。特に、前記記録媒体に生じる僅かな浮き上がりを検出するためには、前記可動部はその僅かな浮き上がり部との接触により容易に変位するものであることが望ましい。この点、本発明によれば、前記変位検知部の数を増加させることなく前記可動部の数だけを増加させて前記可動部各々の小型化を実現することができる。
【0008】
さらに、前記変位検知部により前記可動部の変位が検知された場合に少なくとも前記搬送ユニットによる前記記録媒体の搬送を停止させる停止制御手段を備えることが望ましい。これにより、前記記録媒体に生じた浮き上がり部と前記インク吐出面との接触を回避することができる。
また、本発明のより具体的な構成としては、前記インクジェット記録装置における最大通紙サイズの幅より長く、前記記録媒体の搬送方向に直交する方向と平行に配置された一つの支持軸を更に備え、前記可動部各々が、前記支持軸により回動自在に支持され、前記記録媒体に生じ得る浮き上がり部に接触して個別に回動する構成が考えられる。これにより、前記可動部各々が共通の前記支持軸に支持されることとなるため、構成をより簡素化することができ、前記可動部の数の増減にも容易に対応することもできる。
ここに、前記変位検知部は、光を照射する発光部及び前記発光部からの光を受光する受光部を有してなり、前記発光部からの光が前記受光部で受光されないことを条件に前記可動部の変位を検知するものであることが考えられる。このとき、前記発光部及び前記受光部は、前記可動部各々の回動時に前記発光部から前記受光部への光が遮断される位置に配置されたものである。これにより、共通の前記変位検知部により前記可動部各々の変位を検知する構成が実現される。
一方、例えば前記変位検知部は、前記支持軸と平行に配置されて前記可動部各々の回動時に前記可動部に接触する一つの接触部を有してなり、前記接触部への前記可動部の接触を検知するものである。さらに、前記接触部及び前記可動部各々の接触箇所が少なくとも導電性を有することが考えられる。この場合、前記変位検知部は、前記接触部の電気特性の変化により前記接触部及び前記可動部の接触を検知するものであることが考えられる。これらの構成によっても、共通の前記変位検知部により前記可動部各々の変位を検知する構成が実現される。
また、前記可動部各々は、その上端部で前記支持軸に回動自在に支持されてなることが望ましい。この場合、前記可動部各々の下端部に前記記録媒体の浮き上がり部が接触した場合に前記可動部各々が回動しやすくなり、前記記録媒体に生じ得る小さな浮き上がりも検知可能となる。
なお、前記可動部各々は、その下端が前記インク吐出面を含む平面上に位置し又は前記平面より前記搬送ユニット側に突出している。これにより、前記インク吐出面に接触するおそれがある前記記録媒体の浮き上がりを検知することができる。
【0009】
ところで、本発明は、浮き上がり検知装置又は記録ユニットの発明として捉えることも可能である。
即ち、記録媒体を搬送する搬送ユニットと、前記録媒体の搬送方向に直交する方向に並設され、前記記録媒体に生じ得る浮き上がり部に接触して個別に変位する複数の可動部と、前記複数の可動部に共通して設けられ、前記複数の可動部の少なくとも一つの可動部が変位した場合にその変位を検知する一つの変位検知部と、を備えてなることを特徴とする浮き上がり検知装置として構成される。
また、インク吐出面に対向しつつ搬送される記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドより前記記録媒体の搬送方向上流側において前記記録媒体の搬送方向に直交する方向に並設され、前記記録媒体に生じ得る浮き上がり部に接触して個別に変位する複数の可動部と、前記複数の可動部に共通して設けられ、前記複数の可動部の少なくとも一つの可動部が変位した場合にその変位を検知する一つの変位検知部と、を備えてなることを特徴とする記録ユニットとして構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の可動部に対して共通の変位検知部を設けることにより極力簡単な構成で記録媒体の浮き上がり検知を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置Xの概略構成を示す模式断面図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る浮き上がり検知装置9の概略構成を説明するための要部斜視図。
【図3A】本発明の第1実施形態に係る浮き上がり検知装置9の動作を説明するための要部断面図。
【図3B】本発明の第1実施形態に係る浮き上がり検知装置9の動作を説明するための要部断面図。
【図4】本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置Xで実行される印刷制御処理の手順の一例を示すフローチャート。
【図5】本発明の第1実施形態に係る浮き上がり検知装置9の変形例を説明するための要部断面図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る浮き上がり検知装置9Aの概略構成を説明するための要部斜視図。
【図7A】本発明の第2実施形態に係る浮き上がり検知装置9Aの動作を説明するための要部断面図。
【図7B】本発明の第2実施形態に係る浮き上がり検知装置9Aの動作を説明するための要部断面図。
【図8】本発明の第3実施形態に係る浮き上がり検知装置9Bの概略構成を説明するための要部斜視図。
【図9A】本発明の第3実施形態に係る浮き上がり検知装置9Bの動作を説明するための要部断面図。
【図9B】本発明の第3実施形態に係る浮き上がり検知装置9Bの動作を説明するための要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0013】
<第1実施形態>
まず、図1〜図4を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置X(以下「記録装置X」と略称する)について説明する。
図1に示すように、前記記録装置Xは、給紙カセット1、給紙部2、画像形成部3、インクタンク部4、搬送ユニット5、昇降機構6、排紙部7、制御ユニット8、浮き上がり検知装置9、及びこれらを収容又は支持する本体フレーム10などを備えている。
前記記録装置Xは、パソコン等の情報処理装置から入力される画像データに基づいて印刷処理を実行するプリンタ装置である。なお、本発明に係るインクジェット記録装置は、プリンタ装置に限らず、複写機、ファクシミリ装置、複合機などにも適用可能である。
【0014】
前記給紙カセット1には、前記記録装置Xにおいて印刷対象となる用紙P(記録媒体の一例)が収容される。もちろん、印刷対象は、紙に限らずOHPシート又は布などの記録媒体であってもよい。
前記給紙部2は、ピックアップローラ21、搬送ローラ22、搬送路23、レジストローラ24、手差しフィーダ25、及び給紙ローラ26を備えている。前記ピックアップローラ21は、前記給紙カセット1から前記用紙Pを1枚ずつ取り出す。前記搬送ローラ22及び前記搬送路23は、前記ピックアップローラ21により取り出された前記用紙Pを前記レジストローラ24まで搬送する。前記レジストローラ24は、所定の搬送タイミング(画像の書き出しタイミング)で前記用紙Pを前記画像形成部3に搬送する。前記手差しフィーダ25及び前記給紙ローラ26は、外部から前記用紙Pを供給するために用いられる。
【0015】
前記画像形成部3は、K(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の各色に対応する記録ヘッド31、32、33、34と、これらを支持するヘッドフレーム35とを有している。前記ヘッドフレーム35は前記本体フレーム10に支持されている。なお、本実施の形態では、KCMYの4色に対応した4つの前記記録ヘッド31〜34を有する構成を例に挙げて説明するが記録ヘッドの数はこれに限らない。
前記記録ヘッド31〜34は、前記用紙Pの搬送方向に垂直な方向(用紙の幅方向)に長尺状を成しており、前記用紙Pの搬送方向に沿って所定間隔ごとに順に固定されている。また、前記記録ヘッド31〜34の下端部には、インクを吐出する多数のノズル(吐出口)を有するインク吐出面31A〜34Aがそれぞれ設けられている。
そして、前記画像形成部3では、前記搬送ユニット5によって搬送される前記用紙Pに対して前記インク吐出面31A〜34Aからインクが吐出されることにより前記用紙Pに画像が記録される。即ち、前記記録装置Xは、所謂ラインヘッド型のインクジェット記録装置である。なお、前記記録ヘッド31〜34のインクの吐出方式には、例えばピエゾ素子を利用してインクを吐出させるピエゾ方式又は加熱により気泡を発生させてインクを吐出させるサーマル方式などが採用される。
また、前記インクタンク部4は、K、C、M、Yの各色に対応するインクが収容されたインクタンク41、42、43、44を備えている。前記インクタンク41〜44は、不図示のインクチューブにより同色の前記記録ヘッド31〜34にそれぞれ接続されており、前記記録ヘッド31〜34にインクを補給する。なお、インクタンク41〜44内ではインクの上部に空気が存在しており、前記インクタンク41〜44内のインクの液面は、前記記録ヘッド31〜34のインク吐出面31A〜34Aよりも低くなるように調整されている。
【0016】
前記搬送ユニット5は、前記記録ヘッド31〜34の下方に配置されており、前記用紙Pを前記インク吐出面31A〜34Aに対向させつつ搬送する。具体的に、前記搬送ユニット5は、前記用紙Pが載置される用紙搬送ベルト51、前記用紙搬送ベルト51を張架する張架ローラ52〜54、及びこれらを支持する搬送フレーム55などを備えている。なお、前記用紙搬送ベルト51と前記インク吐出面31A〜34Aとの間隙が例えば1mmとなるように定められる。
また、前記張架ローラ52は、不図示のモータの回転軸に連結されている。そして、前記張架ローラ52は、前記モータの駆動により反時計回りに回転して前記用紙搬送ベルト51を図示する矢印方向(図1において右から左に進む方向)に走行させる。これにより、前記給紙部2から供給された前記用紙Pは、前記用紙搬送ベルト51の走行によって前記画像形成部3を経て前記排紙部7に搬送される。
なお、前記搬送ユニット5には、前記用紙Pを前記用紙搬送ベルト51に吸着させるべく、前記搬送ベルト51に形成された多数の貫通孔から吸気を行う吸引ユニット(不図示)なども設けられている。また、前記張架ローラ53の対向位置には、前記用紙Pを前記用紙搬送ベルト51に押しつけて搬送させるためのローラ56が設けられている。
【0017】
前記昇降機構6は、前記搬送ユニット5を下方から支持しており、前記搬送ユニット5を前記記録ヘッド31〜34に対して上下に昇降させる。即ち、前記昇降機構6は、前記搬送ユニット5及び前記記録ヘッド31〜34を相対的に移動させることにより、前記搬送ユニット5及び前記記録ヘッド31〜34を離間及び接近させる。
具体的に、前記昇降機構6は、前記搬送ユニット5の底面の四隅に対応する四組の偏心カム61、回転軸62、及びベアリング群63を備えている。前記偏心カム61は前記回転軸62により回転可能に軸支されており、前記回転軸62は不図示のモータの回転軸に連結されている。前記ベアリング群63は、その一部が前記偏心カム61の外周縁部よりも外側に突出した状態で前記偏心カム61に支持された複数のベアリングを含む。前記搬送ユニット5は、前記ベアリング群63に設けられた複数のベアリングのうち鉛直方向の位置が最も高いベアリングによって下方から支持される。
そして、前記昇降機構6では、不図示のモータで前記回転軸62が回転駆動されることにより前記偏心カム61が回転する。このとき、前記偏心カム61の回転に伴って、前記ベアリング群63に設けられたベアリングのうち鉛直方向の位置が最も高いベアリングが順に入れ替わる。これにより、前記搬送ユニット5を下方から支持するベアリングが入れ替わり、前記搬送ユニット5が鉛直方向に昇降することとなる。
例えば、図1において左側の前記偏心カム61が時計回りに、右側の前記偏心カム61が反時計回りに回転されることにより、前記搬送ユニット5は徐々に下降する。また、図1において左側の前記偏心カム61が反時計回りに、右側の前記偏心カム61が時計回りに回転されることにより、前記搬送ユニット5は徐々に上昇する。なお、前記ベアリング群63において前記搬送ユニット5を支持するベアリングの切り替わり時は、隣接する二つのベアリングで前記搬送ユニット5を同時に支持した状態を経由する。また、前記昇降機構6は、ボールねじ又はラックとピニオン等を利用して前記搬送ユニット5を昇降させる構成であってもよい。
【0018】
前記排紙部7は、前記画像形成部3の用紙搬送方向下流側に設けられており、乾燥装置71、搬送路72、排紙ローラ73、及び排紙トレイ74などを有している。前記乾燥装置71は、例えば前記用紙Pに送風することにより、前記用紙Pに付着したインクを乾燥させる。そして、前記乾燥装置71で乾燥された前記用紙Pは、前記搬送路72を介して前記排紙ローラ73により前記排紙トレイ74に排出される。
【0019】
前記制御ユニット8は、演算装置であるCPU、一時記憶領域として用いられるRAM、及び各種の制御プログラムが予め記憶されたROMなどの制御機器を有している。そして、前記制御ユニット8は、外部から入力される画像データに基づいて前記記録装置Xの各構成要素を統括的に制御することにより、前記画像データに対応する画像を前記用紙Pに記録させる。具体的に、前記制御ユニット8は、後述の印刷制御処理(図4参照)などを実行する。
【0020】
(浮き上がり検知装置9)
ところで、前記画像形成部3に供給される前記用紙Pの一部に波打った箇所又は折れ曲がった箇所などの浮き上がりが生じていると、その浮き上がった部分(浮き上がり部)が前記記録ヘッド31〜34のインク吐出面31A〜34Aに接触するおそれがある。そのため、前記記録装置Xには、前記画像形成部3の記録ヘッド31〜34より前記用紙Pの搬送方向上流側に前記浮き上がり検知装置9が設けられている。
そして、前記浮き上がり検知装置9は、前記用紙搬送ベルト51により搬送される前記用紙Pに浮き上がりが生じている場合に、その浮き上がりの発生を検知する。なお、前記浮き上がり検知装置9及び前記画像形成部3を一つのユニットとして構成した記録ユニットを本発明として捉えてもよい。
【0021】
ここで、図2及び図3を参照しつつ、前記浮き上がり検知装置9について説明する。
図2に示すように、前記浮き上がり検知装置9は、支持軸91、可動部92A〜92F、変位検知部93、及びコイルバネ94などを備えている。前記支持軸91及び前記変位検知部93は、前記本体フレーム10又は前記ヘッドフレーム35などに支持されている。
前記支持軸91は、前記記録装置Xにおける最大通紙サイズの幅方向(用紙搬送方向に直交する方向)の寸法より長い軸である。前記支持軸91は、前記記録ヘッド31〜34より前記用紙Pの搬送方向上流側において、前記用紙Pの搬送方向に直交する方向と平行に配置されている。
【0022】
前記可動部92A〜92Fは、その上端部で一つの前記支持軸91に回動自在に支持されている。これにより、前記可動部92A〜92Fは、前記記録ヘッド31〜34より前記用紙Pの搬送方向上流側において、前記用紙Pの搬送方向に直交する方向に並設されている。
具体的に、前記可動部92A〜92Fは、円筒部921、当接部922、及び係止部923をそれぞれ有する同形状の部材である。前記円筒部921は、前記可動部92A〜92Fの上端部に設けられており、前記支持軸91に回動自在に軸支されている。これにより、前記可動部92A〜92Fは、前記支持軸91を中心に個別に回動可能である。前記当接部922は、前記円筒部921の外周面からその直径方向に突出して形成されている。前記係止部923は、前記当接部922の一部に形成されており、前記コイルバネ94を係止する部位である。
【0023】
前記当接部922の下端は、前記インク吐出面31A〜34Aを含む平面(水平面)より前記搬送ユニット5側に突出しており(図3A参照)、その突出量は0以上1mm未満であって好ましくは0.1mm以上0.5mm以下である。これにより、前記インク吐出面31A〜34Aに接触するおそれのある浮き上がり部が前記用紙Pに生じている場合には、その浮き上がり部が前記当接部922の下端部に接触することとなる。なお、前記当接部922の下端は、前記インク吐出面31A〜34Aを含む平面上に位置するものであってもよい。即ち、前記当接部922の下端及び前記用紙搬送ベルト51の隙間は、前記インク吐出面31A〜34A及び前記用紙搬送ベルト51の隙間と同一又はそれ以下である。なお、前記変位検知部93で検知し得る用紙Pの浮き上がり部の程度は、前記当接部922の下端及び前記インク吐出面31A〜34Aの間隔を適宜設定することにより変更可能である。
また、前記当接部922各々の下端部は、少なくとも前記記録装置Xにおける最大通紙サイズの全幅を細分化した幅を有する。即ち、前記当接部922各々を用紙搬送方向に見たとき、前記当接部922各々は、前記最大通紙サイズの全幅に亘る壁面を形成する。これにより、前記記録装置Xにおいて、前記用紙Pはその幅方向の全域が前記当接部922に対向した状態で前記用紙搬送ベルト51により搬送される。
このように構成された前記可動部92A〜92Fは、前記当接部922の下端部が前記用紙Pに生じ得る浮き上がり部に接触することにより個別に回動(変位)することとなる。このとき、前記可動部92A〜92Fは、その上端部に設けられた前記円筒部921を中心に回動する。そのため、前記可動部92A〜92Fにおける回動中心(上端部)から力の作用点(下端部)までの距離が十分に長く、前記可動部92A〜92Fは前記当接部922の下端部に小さな力(トルク)が作用するだけで容易に回動可能である。
【0024】
前記変位検知部93は、前記可動部92A〜92Fに共通して設けられ、前記可動部92A〜92Fの少なくとも一つの可動部が回動(変位)した場合にその変位を検知する。具体的に、前記変位検知部93は、光を照射する発光部93Aと前記発光部93Aからの光を受光する受光部93Bとを備えている。前記発光部93Aは前記可動部92Fの外側に配置され、前記受光部93Bは前記可動部92Aの外側に配置されている。そして、前記発光部93Aから前記受光部93Bへの光軸93Cは、前記可動部92A〜92Fよりも前記用紙Pの搬送方向下流側であって、前記可動部92A〜92F各々の前記当接部922の回動範囲内を通過している。これにより、前記発光部93Aから出射された前記光軸93C上の光は、前記可動部92A〜92Fの少なくとも一つの前記当接部922が回動した場合に、その当接部922によって遮断される。なお、前記発光部93A及び前記受光部93は、前記可動部92A〜92Fの当接部922が前記用紙Pの搬送方向下流側に微少角度だけ回転したときに、前記発光部93Aから出射された前記光軸93C上の光が前記当接部922によって遮断される位置に配置されている(図3B参照)。
そして、前記変位検知部93は、前記発光部93Aから出射された前記光軸93C上の光が遮断されたか否かを前記受光部93Bで検知することにより前記可動部92A〜92Fの変位の有無を判断する。具体的に、前記変位検知部93では、前記記録装置Xにおける印刷処理の実行時に前記発光部93Aからの光の照射と前記受光部93Bによる受光の監視とを開始する。
このとき、前記可動部92A〜92Fの少なくとも一つが回動(変位)して、前記発光部93Aから出射された前記光軸93C上の光を遮断すると、少なくとも一時的に前記受光部93Bが前記発光部93Aからの光を受光しなくなる。これにより、前記変位検知部93では、前記受光部93Bで光が受光されなくなったことを条件に、前記可動部92A〜92Fの少なくとも一つが回動(変位)したことが検知可能である。そして、前記受光部93Bによる受光の有無の検知結果は前記制御ユニット8に伝達される。従って、前記制御ユニット8は、前記受光部93Bで受光が検知されなくなったことを条件に前記用紙Pに浮き上がりが生じていると判断することが可能である。
【0025】
前記コイルバネ94は、前記可動部92A〜92Fごとに対応して設けられている。前記コイルバネ94は、前記支持軸91に回動自在に支持された前記可動部92A〜92Fの前記当接部922を予め定められた所定位置に保持又は復帰させるための弾性を有するものである。前記所定位置は、前記当接部922の下端部が前記支持軸91の鉛直下方向に位置する状態(図3A参照)である。
図2に示すように、前記コイルバネ94の一端は、前記ヘッドフレーム35(図外)の一部に設けられた係止部35Aで係止されている。また、前記コイルバネ94の他端は、前記可動部92A〜92F各々に設けられた前記係止部923で係止されている。なお、前記コイルバネ94は、前記用紙Pの浮き上がり部が前記当接部922を押す力よりも弱い弾性力を有するものである。これにより、前記当接部922は前記用紙Pの浮き上がり部で押されて回動するが、その後、前記用紙Pが取り除かれると前記コイルバネ94の弾性力により前記当接部922はその下端部が前記支持軸91の鉛直下方向に位置する状態に復帰する。
なお、本実施の形態では、前記コイルバネ94により前記可動部92A〜92F各々を所定位置に位置決めする場合を例に挙げて説明するが、これに限らない。例えば、前記浮き上がり検知装置9では、前記可動部92A〜92F各々が、その上端部で回動自在に支持されているため、前記可動部92A〜92F各々の当接部922の下端部は自重で自然に前記支持軸91の鉛直下方向に位置する。そのため、前記浮き上がり検知装置9では前記コイルバネ94を省略することも考えられる。
【0026】
ここに、図3A及び図3Bは前記可動部92Aを通過する平面で切断した状態を模式的に示した縦断面図であり、図3Aは前記用紙Pに浮き上がりが発生していないときの状態を示す図、図3Bは前記用紙Pに浮き上がりが発生しているときの作動状態を示している。
前記用紙Pの浮き上がりが生じていない状態では、前記用紙搬送ベルト51で搬送される前記用紙Pは前記可動部92A〜92Fの前記当接部922に接触しない。そのため、図3Aに示すように、前記可動部92A〜92Fの当接部922は鉛直方向に平行な状態であり、前記当接部922が前記発光部93Aから出射された前記光軸93C上の光を遮断しない。
一方、前記用紙Pの少なくとも一部に浮き上がりが生じている状態では、その浮き上がり部が前記可動部92A〜92Fの少なくとも一つの前記当接部922に接触する。ここでは、前記用紙Pに生じた浮き上がり部が前記可動部92Bの当接部922に接触した場合を考える。この場合、図3Bに示すように、前記可動部92Bの当接部922が、前記用紙Pの浮き上がり部に押されることにより前記支持軸91を中心に前記用紙Pの搬送方向下流側に向けて回動し、前記発光部93Aから出射された前記光軸93C上の光を遮断することになる。これにより、前記変位検知部93では、前記受光部93Bで光が受光されなくなるため、前記可動部92A〜92Fの少なくとも一つが回動(変位)したことが検知される。
そして、前記記録装置Xにおいて、前記用紙搬送ベルト51上の前記用紙Pに浮き上がりが生じていると、その浮き上がり部が前記記録ヘッド31〜34のインク吐出面31A〜34Aに接触するおそれがある。そのため、前記記録装置Xでは、前記制御ユニット8により実行される後述の印刷制御処理において、前記用紙Pの浮き上がりが検知された場合は印刷処理が停止される。
【0027】
(印刷制御処理)
以下、前記記録装置Xにおいて前記制御ユニット8により実行される印刷制御処理(図4参照)について説明する。ここに、図示するS1、S2、・・・は処理手順(ステップ)の番号を示すものである。
(ステップS1〜S2)
まず、ステップS1において、前記制御ユニット8は、印刷処理の開始要求を待ち受ける(S1のNo側)。例えば、前記記録装置Xにおいて、前記制御ユニット8は、外部のパソコン等の情報処理装置から画像データを受信した場合に、印刷処理の開始要求がなされたと判断する(S1のYes側)。次に、ステップS2において、前記制御ユニット8は、前記給紙部2を制御することにより前記給紙カセット1から前記用紙Pの搬送を開始させる。
【0028】
(ステップS3〜S5)
続いて、ステップS3において、前記制御ユニット8は、前記浮き上がり検知装置9により前記用紙Pの浮き上がりが検知されたか否かを判断する。具体的に、前記制御ユニット8は、前記浮き上がり検知装置9により前記可動部92A〜92Fの少なくとも一つが前記発光部93Aから出射された前記光軸93C上の光を遮断したことが前記受光部93Bで検知されたか否かを判断する。
ここで、前記浮き上がり検知装置9により前記用紙Pの浮き上がりが検知されていなければ(S3のNo側)、処理はステップS4に移行する。前記浮き上がり検知装置9により前記用紙Pの浮き上がりが検知されていなければ、前記用紙Pが前記インク吐出面31A〜34Aに接触しない。そのため、前記制御ユニット8は、ステップS4において、前記ステップS1で要求された印刷処理を実行する。その後、前記制御ユニット8は、ステップS5において印刷処理が終了したと判断されると(S5のYes側)、一連の前記印刷制御処理を終了させ、処理を前記ステップS1に移行させる。
一方、前記浮き上がり検知装置9により浮き上がりが検知された場合(S3のYes側)、処理はステップS6に移行する。
【0029】
(ステップS6〜S7)
前記浮き上がり検知装置9により前記用紙Pの浮き上がりが検知された場合は、その浮き上がり部が前記インク吐出面31A〜34Aに接触するおそれがある。
そのため、ステップS6〜S7において、前記制御ユニット8は、前記搬送ユニット5による前記用紙Pの搬送及び前記画像形成部3によるインクの吐出を停止させる。即ち、前記ステップS6〜S7により前記印刷処理が停止される。ここに、係る処理を実行するときの前記制御ユニット8が停止制御手段に相当する。なお、前記ステップS6〜S7で印刷処理が停止される場合、前記制御ユニット8は不図示の表示パネルなどにエラーを表示させる。
【0030】
以上説明したように、前記記録装置Xでは、前記用紙Pに生じ得る浮き上がり部が前記インク吐出面31A〜34Aと前記用紙搬送ベルト51との間に侵入して前記インク吐出面31A〜34Aに接触することが防止される。従って、前記インク吐出面31A〜34Aへの前記用紙Pの接触で生じる傷に起因する前記インク吐出面31A〜34Aの目詰まり等の障害を防止し、前記記録装置Xの印刷品質の低下を防止することができる。具体的に、前記インク吐出面31A〜34Aには、インク滴が垂直に吐出されるように撥水膜が設けられる。また、この撥水膜は、前記インク吐出面31A〜34Aの吐出口近傍にインク滴が堆積し、そのインク滴が乾燥して固着することを防止するなどの機能を有する。そのため、前記用紙Pの浮き上がり部がインク吐出面31A〜34Aに接触して撥水膜を傷つけることを防止することで、インク滴の吐出不良又は吐出口の目詰まりなどを回避することができる。特に、前記浮き上がり検知装置9では、前記可動部92A〜92Fが小さいトルクで容易に回動するものであるため、前記用紙Pに生じ得る僅かな浮き上がりをより確実に検知することが可能である。
そして、前記記録装置Xでは、前記可動部92A〜92Fに対して共通の前記変位検知部93を設けることにより極力簡単な構成で前記用紙Pの浮き上がり検知が実現されている。具体的には、前記可動部92A〜92Fの数に関係なく一つの前記変位検知部93を備える構成であるため、前記可動部92A〜92F各々に対応して個別に前記変位検知部93を設ける構成に比べて前記変位検知部93の数を省減することができる。特に、前記用紙Pに生じる僅かな浮き上がりを検出するためには、前記可動部92A〜92Fはその僅かな浮き上がり部との接触により容易に変位するものであることが望ましい。この点、前記記録装置Xによれば、前記変位検知部93の数を増加させることなく、小型化した多数の前記可動部92A〜92Fを設置することができる。
【0031】
ところで、前記浮き上がり検知装置9における前記可動部92A〜92Fの数(6つ)は単なる一例に過ぎず、5つ以下又は7つ以上の可動部を設けることも考えられる。なお、前記可動部92A〜92F各々の前記用紙Pの搬送方向に直交する方向(幅方向)の寸法は同じでなくてもよい。
なお、前記用紙Pの極端な浮き上がりは前記用紙Pの端部に生じることが多い。そこで、前記記録装置Xにおいて使用可能な複数の用紙サイズの幅方向の端部に対応する位置にのみ、その端部の微少範囲(例えば1cm程度)に対応する小型の前記可動部を配置することも考えられる。例えば、ハガキ、A5、B5、A4、B4、A3の6種類のサイズ各々の両端部に対応する位置に合計12個の前記可動部を設ける構成が考えられる。
【0032】
なお、本実施形態では、浮き上がり検知装置9が前記記録ヘッド31の直前にのみ設けられる場合について説明した。しかし、例えば図5に示すように、前記記録ヘッド31〜34各々の用紙搬送方向上流側に前記浮き上がり検知装置9を配置する構成も他の実施例として考えられる。
具体的に、図5に示す構成例では、前記支持軸91が前記記録ヘッド31〜34のそれぞれの間隙の上方に配置され、前記当接部922の下端は前記インク吐出面31A〜34Aから若干突出する位置まで延設されている。これにより、前記当接部922のみが前記記録ヘッド31〜34のそれぞれの間隙に配置される構成となる。従って、複数の前記浮き上がり検知装置9を設置するために前記記録ヘッド31〜34のそれぞれの間隔を無駄に広げる必要がなく、前記記録ヘッド31〜34各々の直前における前記用紙Pの浮き上がり検知をコンパクトな構成で実現することができる。また、前記制御ユニット8は、前記用紙Pの浮き上がりを検知した場合に、前記用紙搬送ベルト51を停止させると共に、前記昇降機構6により前記搬送ユニット5を下降させることも考えられる。これにより、前記用紙Pの浮き上がり部が前記インク吐出面31A〜34Aに接触したままになる状態を回避し、インク漏れ等を防止することができる。なお、4つの前記浮き上がり検知装置9を一つの検知ユニットとして一体構成することも考えられる。
【0033】
<第2実施形態>
次に、図6及び図7を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係る浮き上がり検知装置9Aについて説明する。前記浮き上がり検知装置9Aは、前記浮き上がり検知装置9に代えて前記記録装置Xに搭載される。本第2実施形態において、前記記録装置X及び前記浮き上がり検知装置9と同様の構成要素については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0034】
図6に示すように、前記浮き上がり検知装置9Aは、前記可動部92A〜92Fに代えて、同じく前記支持軸91に回動自在に支持され、前記用紙Pの搬送方向上流側において前記用紙Pの搬送方向に直交する方向に並設された可動部92G〜92Lを備えている。前記可動部92G〜92Lは、前記支持軸91に回動自在に支持される円筒部924、前記円筒部911の外周部からその直径方向に突出して形成された当接部925、同じく前記円筒部911の外周部からその直径方向に突出して形成された遮断部926、及び前記コイルバネ94を係止する係止部927などをそれぞれ有している。
【0035】
前記当接部925の下端は、前記インク吐出面31A〜34Aを含む平面(水平面)より前記搬送ユニット5側に突出しており(図7A参照)、その突出量は0以上1mm未満であって好ましくは0.1mm以上0.5mm以下である。これにより、前記インク吐出面31A〜34Aに接触するおそれのある浮き上がり部が前記用紙Pに生じている場合には、その浮き上がり部が前記当接部925の下端部に接触することとなる。なお、前記当接部925の下端は、前記インク吐出面31A〜34Aを含む平面上に位置するものであってもよい。
また、前記当接部925及び前記遮断部926は、前記円筒部924の直径方向上で対向する位置に設けられている。また、前記当接部925各々の下端部は、少なくとも前記記録装置Xにおける最大通紙サイズの全幅を細分化した幅を有する。即ち、前記当接部925各々を用紙搬送方向に見たとき、前記当接部925各々は、前記最大通紙サイズの全幅に亘る壁面を形成する。これにより、前記記録装置Xにおいて、前記用紙Pはその幅方向の全域が前記当接部925に対向した状態で前記用紙搬送ベルト51により搬送される。
このように構成された前記可動部92G〜92Lは、前記当接部925の下端部が前記用紙Pに生じ得る浮き上がり部に接触することにより個別に回動(変位)することとなる。
【0036】
また、前記変位検知部93の前記発光部93Aは前記可動部92Lの外側に配置され、前記受光部93Bは前記可動部92Gの外側に配置されている。そして、前記光軸93Cは、前記可動部92G〜92Lよりも前記用紙Pの搬送方向上流側であって、前記可動部92G〜92L各々の前記遮断部926の回動範囲内を通過している。これにより、前記発光部93Aから出射された前記光軸93C上の光は、前記可動部92G〜92Lの少なくとも一つの前記遮断部926が回動した場合に、その遮断部926によって遮断される。なお、前記発光部93A及び前記受光部93は、前記可動部92G〜92Lの遮断部926が前記用紙Pの搬送方向上流側に微少角度だけ回転したときに、前記発光部93Aから出射された前記光軸93C上の光が前記遮断部926によって遮断される位置に配置されている(図7B参照)。
一方、前記可動部92G〜92Lの係止部927及び前記係止部35Aは前記コイルバネ94の両端を係止している。これにより、前記コイルバネ94は、前記可動部92G〜92Lの当接部925を予め定められた所定位置に保持又は復帰させる。前記所定位置は、前記当接部925の下端部が前記支持軸91の鉛直下方向に位置する状態(図7A参照)である。
【0037】
ここに、図7A及び図7Bは前記可動部92Gを通過する平面で切断した状態を模式的に示した縦断面図であり、図7Aは前記用紙Pに浮き上がりが発生していないときの状態を示す図、図7Bは前記用紙Pに浮き上がりが発生しているときの作動状態を示している。
前記用紙Pの浮き上がりが生じていない状態では、前記用紙搬送ベルト51で搬送される前記用紙Pは前記可動部92G〜92Lの当接部925に接触しない。そのため、図7Aに示すように、前記可動部92G〜92Lの当接部925は鉛直方向に平行な状態であり、前記遮断部926が前記発光部93Aから出射された前記光軸93C上の光を遮断しない。
一方、前記用紙Pの少なくとも一部に浮き上がりが生じている状態では、その浮き上がり部が前記可動部92G〜92Lの少なくとも一つの前記当接部925に接触する。ここでは、前記用紙Pに生じた浮き上がり部が前記可動部92Gの当接部925に接触した場合を考える。この場合、図7Bに示すように、前記可動部92Gの当接部925が前記用紙Pの浮き上がり部で押されることにより、前記可動部92Gは前記支持軸91を中心に前記用紙Pの搬送方向に向けて回動する。このとき、前記可動部92Gの前記遮断部926は、図7Bに示すように時計回りに回動して、前記発光部93Aから出射された前記光軸93C上の光を遮断することになる。これにより、前記変位検知部93では、前記受光部93Bで光が受光されなくなるため、前記可動部92G〜92Lの少なくとも一つが回動(変位)したことが検知される。
【0038】
そして、このように構成された前記浮き上がり検知装置9Aを備えた前記記録装置Xにおいても、前記制御ユニット8によって前記印刷制御処理(図4参照)が実行される。これにより、前記記録装置Xでは、前記用紙Pに生じ得る浮き上がり部が前記インク吐出面31A〜34Aと前記用紙搬送ベルト51との間に侵入して前記インク吐出面31A〜34Aに接触することが防止される。従って、前記インク吐出面31A〜34Aへの前記用紙Pの接触で生じる傷に起因する前記インク吐出面31A〜34Aの目詰まり等の障害を防止し、前記記録装置Xの印刷品質の低下を防止することができる。そして、前記記録装置Xでは、前記可動部92G〜92Lに対して共通の前記変位検知部93を設けることにより極力簡単な構成で前記用紙Pの浮き上がり検知が実現されている。
【0039】
<第3実施形態>
次に、図8及び図9を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係る浮き上がり検知装置9Bについて説明する。前記浮き上がり検知装置9Bは、前記浮き上がり検知装置9に代えて前記記録装置Xに搭載される。本第3実施形態において、前記記録装置X及び前記浮き上がり検知装置9と同様の構成要素については同じ符号を付し、その説明を省略する。
図8に示すように、前記浮き上がり検知装置9Bは、前記変位検知部93に代えて、前記用紙Pの搬送方向下流側において前記可動部92A〜92Fの変位を検知する変位検知部931を備えている。また、前記可動部92A〜92Fは、導電性樹脂などの導電性を有する部材により形成されている。なお、前記第2実施形態における前記浮き上がり検知装置9Aが、前記変位検知部93に代えて前記変位検知部931を備える構成も他の実施形態として考えられる。
前記変位検知部931は、前記支持軸91と平行に配置され、導電性を有する金属製の通電ワイヤ931A(接触部の一例)を有している。前記通電ワイヤ931Aは、前記可動部92Aの外側と前記可動部92Fの外側との間に亘って張架されている。また、前記通電ワイヤ931Aは、前記支持軸91よりも前記用紙Pの搬送方向下流側の位置であって、前記可動部92A〜92F各々の前記当接部922の回動範囲に設けられている。これにより、前記通電ワイヤ931Aは、前記可動部92A〜92Fのいずれの前記当接部922が回動した場合でもその当接部922に接触する。なお、前記通電ワイヤ93Aは、前記可動部92A〜92Fの当接部922が前記用紙Pの搬送方向下流側に微少角度だけ回転したときに接触する位置に配置されている(図9B参照)。
【0040】
そして、前記変位検知部931は、前記可動部92A〜92Fの前記通電ワイヤ93Aへの接触を検知する。具体的に、前記変位検知部931は、前記記録装置Xにおける印刷処理の実行時に前記通電ワイヤ931Aへの通電を行い、前記通電ワイヤ931Aの両端の電圧変化を監視する。
このとき、導電性を有する前記可動部92A〜92Fの少なくとも一つが回動(変位)して前記通電ワイヤ931Aに接触すると、前記通電ワイヤ931Aの電気特性が変化して前記通電ワイヤ931Aの両端の電圧が変化する。そこで、前記変位検知部931は、前記通電ワイヤ931Aの両端の電圧が変化したこと、即ち前記通電ワイヤ931Aの電気特性が変化したことを条件に、前記可動部92A〜92Fの少なくとも一つが回動して前記通電ワイヤ931Aに接触したことを検知する。なお、前記変位検知部931の検知結果は前記制御ユニット8に伝達される。これにより、前記制御ユニット8は、前記用紙Pに浮き上がりが生じていると判断することが可能である。
【0041】
ここに、図9A及び図9Bは前記可動部92Aを通過する平面で切断した状態を模式的に示した縦断面図であり、図9Aは前記用紙Pに浮き上がりが発生していないときの状態を示す図、図9Bは前記用紙Pに浮き上がりが発生しているときの作動状態を示している。
前記用紙Pの浮き上がりが生じていない状態では、前記用紙搬送ベルト51で搬送される前記用紙Pは前記可動部92A〜92Fの当接部922に接触しない。そのため、図9Aに示すように、前記可動部92A〜92Fの当接部922は鉛直方向に平行な状態であり、前記当接部922が通電ワイヤ931Aに接触しない。
一方、前記用紙Pの少なくとも一部に浮き上がりが生じている状態では、その浮き上がり部が前記可動部92A〜92Fの少なくとも一つの前記当接部922に接触する。ここでは、前記用紙Pに生じた浮き上がり部が前記可動部92Bの当接部922に接触した場合を考える。この場合、図9Bに示すように、前記可動部92Bの当接部922が前記用紙Pの浮き上がり部で押されることにより、前記可動部92Bは前記支持軸91を中心に前記用紙Pの搬送方向下流側に向けて回動する。このとき、前記可動部92Bの前記当接部922は、図9Bに示すように時計回りに回動して前記通電ワイヤ931Aに接触する。これにより、前記変位検知部931は、前記可動部92A〜92Fの少なくとも一つが前記通電ワイヤ931Aに接触したことを検知する。
なお、前記変位検知部931は、電圧変化により電気特性の変化を監視するものに限らず、例えば電流、抵抗、静電容量などの変化を監視することにより電気特性の変化の有無を判断するものであってもよい。また、前記通電ワイヤ931A及び前記当接部922各々の接触箇所が少なくとも導電性を有するものであればよく、例えばその接触箇所に導電性を有する板部材又はフィルムが接合(貼付)された構成も考えられる。
【0042】
なお、前記第1〜第3実施形態の浮き上がり検知装置9、9A、9Bの用途は、前記記録装置Xに搭載することに限らず、例えば記録媒体に浮き上がりが生じていることで問題が生じる各種の装置に搭載することが考えられる。例えば、電子写真方式の画像形成装置において記録媒体の浮き上がりが問題になるような場合にはその画像形成装置に前記浮き上がり検知装置9、9A、9Bを搭載することが考えられる。
【符号の説明】
【0043】
1 :給紙カセット
2 :給紙部
3 :画像形成部
31〜34:記録ヘッド
31A〜34A:インク吐出面
35:ヘッドフレーム
4 :インクタンク部
5 :搬送ユニット
51:用紙搬送ベルト
52〜54:張架ローラ
55:搬送フレーム
6 :昇降機構
7 :排紙部
8 :制御ユニット
9、9A、9B:浮き上がり検知装置
91:支持軸
92A〜92F:可動部
92G〜92L:可動部
921、924:円筒部
922、925:当接部
923、927:係止部
926:遮断部
93、931:変位検知部
931A:通電ワイヤ
94:コイルバネ
10:本体フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するインク吐出面が設けられた記録ヘッドと、
記録媒体を前記インク吐出面に対向させつつ搬送する搬送ユニットと、
前記記録ヘッドより前記記録媒体の搬送方向上流側において前記記録媒体の搬送方向に直交する方向に並設され、前記記録媒体に生じ得る浮き上がり部に接触して個別に変位する複数の可動部と、
前記複数の可動部に共通して設けられ、前記複数の可動部の少なくとも一つの可動部が変位した場合にその変位を検知する一つの変位検知部と、
を備えてなることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記変位検知部により前記可動部の変位が検知された場合に少なくとも前記搬送ユニットによる前記記録媒体の搬送を停止させる停止制御手段を更に備えてなる請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記インクジェット記録装置における最大通紙サイズの幅より長く、前記記録媒体の搬送方向に直交する方向と平行に配置された一つの支持軸を更に備えてなり、
前記可動部各々は、前記支持軸により回動自在に支持され、前記記録媒体に生じ得る浮き上がり部に接触して個別に回動するものである請求項1又は2のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記変位検知部は、光を照射する発光部及び前記発光部からの光を受光する受光部を有してなり、前記発光部からの光が前記受光部で受光されないことを条件に前記可動部の変位を検知するものであって、
前記発光部及び前記受光部は、前記可動部各々の回動時に前記発光部から前記受光部への光が遮断される位置に配置されたものである請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記変位検知部は、前記支持軸と平行に配置されて前記可動部各々の回動時に前記可動部に接触する一つの接触部を有してなり、前記接触部への前記可動部の接触を検知するものである請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記接触部及び前記可動部各々の接触箇所が少なくとも導電性を有しており、
前記変位検知部は、前記接触部の電気特性の変化により前記接触部及び前記可動部の接触を検知するものである請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記可動部各々は、その上端部で前記支持軸に回動自在に支持されてなる請求項3〜6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記可動部各々は、その下端が前記インク吐出面を含む平面上に位置し又は前記平面より前記搬送ユニット側に突出してなる請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
記録媒体を搬送する搬送ユニットと、
前記録媒体の搬送方向に直交する方向に並設され、前記記録媒体に生じ得る浮き上がり部に接触して個別に変位する複数の可動部と、
前記複数の可動部に共通して設けられ、前記複数の可動部の少なくとも一つの可動部が変位した場合にその変位を検知する一つの変位検知部と、
を備えてなることを特徴とする浮き上がり検知装置。
【請求項10】
インク吐出面に対向しつつ搬送される記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドより前記記録媒体の搬送方向上流側において前記記録媒体の搬送方向に直交する方向に並設され、前記記録媒体に生じ得る浮き上がり部に接触して個別に変位する複数の可動部と、
前記複数の可動部に共通して設けられ、前記複数の可動部の少なくとも一つの可動部が変位した場合にその変位を検知する一つの変位検知部と、
を備えてなることを特徴とする記録ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【公開番号】特開2013−79138(P2013−79138A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220696(P2011−220696)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】