インクジェット記録装置及び方法
【課題】吐出トリガ信号の時間軸変動を低減し、描画品質を向上させる。
【解決手段】
記録媒体に対してインクジェットヘッドを往復移動させるインクジェット記録装置において、ヘッド走査手段によるインクジェトヘッドの位置を検知するリニアエンコーダ(70)の出力信号を基にインクジェットヘッドの吐出タイミングを0.1μs単位オーダーの時間分解能で規定する吐出トリガ信号を生成する吐出トリガ生成手段(90)を備える。例えば、エンコーダ信号のエッジタイミングから得られるタイミング信号の周期をカウントし、そのカウント値に対して移動平均化処理を行い、カウント値の持つジッタ成分を低減して吐出トリガ信号を生成する。或いはまた、カウント値に対して逐次演算型のデジタルローパスフィルタを通過させる。さらに、ヘッドに入力させる吐出トリガ周期はヘッド共振周期の整数倍だけずれた長さに設定しておくことが好ましい。
【解決手段】
記録媒体に対してインクジェットヘッドを往復移動させるインクジェット記録装置において、ヘッド走査手段によるインクジェトヘッドの位置を検知するリニアエンコーダ(70)の出力信号を基にインクジェットヘッドの吐出タイミングを0.1μs単位オーダーの時間分解能で規定する吐出トリガ信号を生成する吐出トリガ生成手段(90)を備える。例えば、エンコーダ信号のエッジタイミングから得られるタイミング信号の周期をカウントし、そのカウント値に対して移動平均化処理を行い、カウント値の持つジッタ成分を低減して吐出トリガ信号を生成する。或いはまた、カウント値に対して逐次演算型のデジタルローパスフィルタを通過させる。さらに、ヘッドに入力させる吐出トリガ周期はヘッド共振周期の整数倍だけずれた長さに設定しておくことが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置及び方法に係り、特に、インクジェットヘッドを搭載したキャリッジを往復移動させながら描画を行うシャトル走査方式のインクジェット記録装置における高周波吐出の描画品質を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シャトル走査方式のインクジェットシステムにおいて、打滴タイミングを規定する信号(「吐出トリガ信号」、「吐出タイミング信号」、「吐出クロック」などの用語で呼ばれる場合がある。)は、キャリッジの移動方向(主走査方向)に沿って設置した光学式のリニアエンコーダからの信号をもとに生成している場合が多い(特許文献1、2)。
【0003】
通常、リニアエンコーダは略150lpi(ライン・パー・インチ)〜300lpiの黒帯パターンが形成された透明シート(スケール)と、この透明シートをまたいで対向配置されたLED発光部及び受光部とで構成されており、黒帯の濃淡を検出して位置信号としている。また、濃淡ピッチの1/4周期分ずれた位置に受光部を2個配置して、これら2つの受光部から得られる位相が90度ずれた2つの正弦波出力を用いて、黒帯パターンにおける線密度(lpi)の4倍の記録解像度を達成できる吐出タイミング信号を生成することも行われている。例えば、リニアエンコーダの黒帯パターンが150lpiであるとき、1/4周期分ずれた位置に受光部を2個配置する構成により、600dpi(ドット・パー・インチ)の記録解像度を相当の吐出タイミングを生成することができる。
【0004】
また、これよりもさらに高解像度の吐出タイミングが必要な場合には、600dpiのタイミング信号から逓倍機を用いて1200dpi、2400dpi等の吐出タイミング信号を生成する。逓倍機の構成としては、PLL(Phase Locked Loop)回路を用いたり、或いは、高周波クロックを用いて計数して、概略のタイミングを算出したりする構成がある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−34893号公報
【特許文献2】特許第462310号公報
【特許文献3】特開2009−214326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3に示された従来の構成は、リニアエンコーダの出力を基準信号とし、この基準信号のタイミングで打滴を行うことを主眼としている。ヘッドの共振周期(メニスカスの固有振動周期)に対して十分に長いメニスカス静定時間を確保できる吐出間隔で打滴を行う従来のシステム(例えば、共振周期10μsに対して、10kHz程度の吐出間隔で液滴を吐出させるシステム)の場合には、従来の構成でも特段問題はなかった。
【0007】
しかし、更なるプリント生産性向上等の観点から、キャリッジ走査速度の一層の高速化、吐出間隔の短縮(高周波吐出)を実現しようとするシステムにおいては、従来の吐出トリガ信号をそのまま利用すると描画品質が悪化するという問題がある。この原因について詳細は後述するが(図8〜図9)、従来の吐出トリガ信号の時間軸変動(ジッタ)が影響して画質の低下を招いている。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、吐出トリガ信号の品質を改善し、描画品質を向上させることができるインクジェット記録装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明に係るインクジェット記録装置は、液滴の吐出口となるノズル及び前記ノズルから液滴を吐出させる吐出エネルギー発生素子を有するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドから吐出された液滴を付着させる記録媒体に対して、前記インクジェットヘッドを往復移動させるヘッド走査手段と、前記ヘッド走査手段による前記インクジェトヘッドの位置を検知するリニアエンコーダと、前記リニアエンコーダの出力信号を基に前記インクジェットヘッドの吐出タイミングを0.1μs単位オーダーの時間分解能で規定する吐出トリガ信号を生成する吐出トリガ生成手段と、前記吐出トリガ信号のタイミングに従って前記インクジェットヘッドから液滴を吐出させる吐出駆動制御手段と、を備える。
【0010】
リニアエンコーダの出力信号を利用して吐出トリガ信号を生成するにあたり、吐出トリガの時間分解能を0.1μs単位オーダーとし、この時間分解能で隣接トリガの周期変動を抑え、トリガ信号の品質を向上させる。
【0011】
他の発明態様については、本明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インクジェットヘッドに入力される吐出トリガ(吐出クロック)信号の時間軸変動が低減され、描画品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の外観斜視図
【図2】インクジェット記録装置における記録媒体搬送路を模式的に示す説明図
【図3】キャリッジ上に配置されるインクジェットヘッドの配置形態の例を示す平面透視図
【図4】リニアエンコーダの構成を模式的に示した斜視図
【図5】リニアエンコーダの投光部/受光部の構成例を示した模式図
【図6】リニアエンコーダの出力信号の説明図
【図7】図7(a)はA相のエンコーダ信号、図7(b)はB相のエンコーダ信号、図7(c)はA相エンコーダ信号及びB相エンコーダ信号の各パルスのエッジタイミングで生成されるタイミング信号を示す図
【図8】従来の吐出トリガ信号(エンコーダ信号から直接生成したタイミング信号)の周期変動の例を示したグラフ
【図9】従来の吐出トリガ信号を適用して打滴を行った打滴結果を示す図
【図10】望ましい打滴結果を示す図
【図11】第1実施例による吐出トリガ信号の生成手段に関するブロック図
【図12】移動平均化処理部のブロック図
【図13】連続2パルスの移動平均化処理を行う移動平均化処理部のブロック図
【図14】第1実施例によって得られる吐出トリガ信号の波形図
【図15】第1実施例で得られる吐出トリガ信号と従来の吐出トリガ信号の吐出周期の変動を比較して示したグラフ
【図16】第2実施例による吐出トリガ信号の生成手段に関するブロック図
【図17】PLL回路の構成を示すブロック図
【図18】ヘッド共振周期の整数倍の周期で吐出トリガを生成する例を示す図表
【図19】ヘッド共振周期の整数倍の周期で吐出トリガを生成する他の例を示す図表
【図20】第3実施例による吐出トリガ信号の生成手段に関するブロック図
【図21】インクジェット記録装置の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の外観斜視図である。このインクジェット記録装置10は、紫外線硬化型インク(UV硬化インク)を用いて記録媒体12上にカラー画像を形成するワイドフォーマットプリンタである。ワイドフォーマットプリンタは、大型ポスターや商業用壁面広告など、広い描画範囲を記録するのに好適な装置である。ここでは、A3ノビ以上に対応するものを「ワイドフォーマット」と呼ぶ。
【0016】
ただし、本発明の適用範囲はワイドフォーマット機に限定されない。例えば、パソコンなどに接続され、A4サイズやB5サイズ、ハガキサイズなどの各種用紙サイズに対応したインクジェットプリンタ、或いは、菊半裁など用紙サイズに対応したインクジェット印刷機などについても本発明を適用できる。また、使用するインクの種類についても特に限定はない。UV硬化インクに限らず、通常の水性顔料インクや染料インクなどを用いてよい。
【0017】
インクジェット記録装置10は、装置本体20と、この装置本体20を支持する支持脚22とを備えている。装置本体20には、記録媒体(メディア)12に向けてインクを吐出するドロップオンデマンド型のインクジェットヘッド24(「記録ヘッド」に相当)と、記録媒体12を支持するプラテン26と、ヘッド移動手段(「ヘッド走査手段」に相当)としてのガイド機構28及びキャリッジ30が設けられている。
【0018】
ガイド機構28は、プラテン26の上方において、記録媒体12の搬送方向(X方向)に直交し且つプラテン26の媒体支持面と平行な走査方向(Y方向)に沿って延在するように配置されている。キャリッジ30は、ガイド機構28に沿ってY方向に往復移動可能に支持されている。キャリッジ30には、インクジェットヘッド24が搭載されるとともに、記録媒体12上のインクに紫外線を照射する仮硬化光源(ピニング光源)32A,32Bと、本硬化光源(キュアリング光源)34A,34Bとが搭載されている。
【0019】
仮硬化光源32A,32Bは、インクジェットヘッド24から吐出されたインク滴が記録媒体12に着弾した後に、隣接液滴同士が合一化しない程度にインクを仮硬化させるための紫外線を照射する光源である。本硬化光源34A,34Bは、仮硬化後に追加露光を行い、最終的にインクを完全に硬化(本硬化)させるための紫外線を照射する光源である。
【0020】
キャリッジ30上に配置されたインクジェットヘッド24、仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bは、ガイド機構28に沿ってキャリッジ30とともに一体的に(一緒に)移動する。キャリッジ30の往復移動方向(Y方向)が「主走査方向」、記録媒体12の搬送方向(X方向)が「副走査方向」に相当する。
【0021】
ガイド機構28にはキャリッジ30の位置を検知するリニアエンコーダ(図1中不図示、図4参照)が設けられている。このリニアエンコーダから得られる信号に基づいて吐出タイミングが制御される。本実施形態における吐出トリガ信号の生成手段について詳細は後述する。
【0022】
記録媒体12には、紙、不織布、塩化ビニル、合成化学繊維、ポリエチレン、ポリエステル、ターポリンなど、材質を問わず、また、浸透性媒体、非浸透性媒体を問わず、様々な媒体を用いることができる。なお、本例ではロール状に巻かれた連続媒体を示すが、これに代えて、予め所定サイズに裁断された枚葉媒体(カット紙など)を用いる形態も可能である。
【0023】
記録媒体12は、装置の背面側からロール紙状態(図2参照)で給紙され、印字後は装置正面側の巻き取りローラ(図1中不図示、図2の符号44)で巻き取られる。プラテン26上に搬送された記録媒体12に対して、インクジェットヘッド24からインク滴が吐出され、記録媒体12上に付着したインク滴に対して仮硬化光源32A,32B、本硬化光源34A,34Bから紫外線が照射される。
【0024】
図1において、装置本体20の正面に向かって左側の前面に、インクカートリッジ36の取り付け部38が設けられている。インクカートリッジ36は、紫外線硬化型インクを貯留する交換自在なインク供給源(インクタンク)である。インクカートリッジ36は、本例のインクジェット記録装置10で使用される各色インクに対応して設けられている。色別の各インクカートリッジ36は、それぞれ独立に形成された不図示のインク供給経路によってインクジェットヘッド24に接続される。各色のインク残量が少なくなった場合にインクカートリッジ36の交換が行われる。
【0025】
また、図示を省略するが、装置本体20の正面に向かって右側には、インクジェットヘッド24のメンテナンス部が設けられている。該メンテナンス部は、非印字時におけるインクジェットヘッド24を保湿するためのキャップと、インクジェットヘッド24のノズル面(インク吐出面)を清掃するための払拭部材(ブレード、ウエブ等)が設けられている。インクジェットヘッド24のノズル面をキャッピングするキャップは、メンテナンスのためにノズルから吐出されたインク滴を受けるためのインク受けが設けられている。
【0026】
〔記録媒体搬送路の説明〕
図2は、インクジェット記録装置10における記録媒体搬送路を模式的に示す説明図である。図2に示すように、プラテン26は逆樋状に形成され、その上面が記録媒体12の支持面(媒体支持面)となる。プラテン26の近傍における記録媒体搬送方向(X方向)の上流側には、記録媒体12を間欠搬送するための記録媒体搬送手段である一対のニップローラ40が配設される。このニップローラ40は記録媒体12をプラテン26上で記録媒体搬送方向へ移動させる。
【0027】
ロール・ツー・ロール方式の媒体搬送手段を構成する供給側のロール(送り出し供給ロール)42から送り出された記録媒体12は、印字部の入り口(プラテン26の記録媒体搬送方向の上流側)に設けられた一対のニップローラ40によって、記録媒体搬送方向に間欠搬送される。インクジェットヘッド24の直下の印字部に到達した記録媒体12は、インクジェットヘッド24により印字が実行され、印字後に巻き取りロール44に巻き取られる。印字部の記録媒体搬送方向の下流側には、記録媒体12のガイド46が設けられている。
【0028】
印字部においてインクジェットヘッド24と対向する位置にあるプラテン26の裏面(記録媒体12を支持する面と反対側の面)には、印字中の記録媒体12の温度を調整するための温調部50が設けられている。印字時の記録媒体12が所定の温度となるように調整されると、記録媒体12に着弾したインク液滴の粘度や、表面張力等の物性値が所望の値になり、所望のドット径を得ることが可能となる。なお、必要に応じて、温調部50の上流側にプレ温調部52を設けてもよいし、温調部50の下流側にアフター温調部54を設けてもよい。
【0029】
〔インクジェットヘッドの説明〕
図3は、キャリッジ30上に配置されるインクジェットヘッド24と仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bの配置形態の例を示す平面透視図である。
【0030】
インクジェットヘッド24には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、クリア(透明)インク(CL)、ホワイト(白)インク(W)の各色のインクごとに、それぞれ色のインクを吐出するためのノズル列61Y、61M、61C、61K、61LC、61LM、61CL、61Wが設けられている。図3ではノズル列を点線により図示し、ノズルの個別の図示は省略されている。また、以下の説明では、ノズル列61Y、61M、61C、61K、61LC、61LM、61CL、61Wを総称して符号61を付してノズル列を表すことがある。
【0031】
インク色の種類(色数)や色の組合せについては本実施形態に限定されない。例えば、LC、LMのノズル列を省略する形態、CLやWのノズル列のいずれか一方を省略する形態、メタルインクのノズル列を追加する形態、Wのノズル列に代わりメタルインクのノズル列を具備する形態、特別色のインクを吐出するノズル列を追加する形態などが可能である。また、色別のノズル列の配置順序も特に限定はない。ただし、複数のインク種のうち紫外線に対する硬化感度の低いインクを仮硬化光源32A又は32Bに近い側に配置する構成が好ましい。
【0032】
色別のノズル列61ごとにヘッドモジュールを構成し、これらを並べることによって、カラー描画が可能なインクジェットヘッド24を構成することができる。例えば、イエローインクを吐出するノズル列61Yを有するヘッドモジュール24Yと、マゼンタインクを吐出するノズル列61Mを有するヘッドモジュール24Mと、シアンインクを吐出するノズル列61Cを有するヘッドモジュール24Cと、黒インクを吐出するノズル列61Kを有するヘッドモジュール24Kと、LC、LM、CL、Wの各色のインクを吐出するノズル列61LC、61LM、61CL、61Wをそれぞれ有する各ヘッドモジュール24LC、24LM、24CL、24Wとをキャリッジ30の往復移動方向(主走査方向、Y方向)に沿って並ぶように等間隔に配置する態様も可能である。色別のヘッドモジュール24Y、24M、24C、24K、24LC、24LMのモジュール群(ヘッド群)を「インクジェットヘッド」と解釈してもよいし、各モジュールをそれぞれ「インクジェットヘッド」と解釈することも可能である。或いはまた、1つのインクジェットヘッド24の内部で色別にインク流路を分けて形成し、1ヘッドで複数色のインクを吐出するノズル列を備える構成も可能である。
【0033】
各ノズル列61は、複数個のノズルが一定の間隔で記録媒体搬送方向(副走査方向、X方向)に沿って1列に(直線的に)並んだものとなっている。ただし、本発明の実施に際して、ノズルの配列形態は特に限定されない。2列の千鳥配列や3列以上の2次元ノズル配列形態も可能である。本例のインクジェットヘッド24は、各ノズル列61を構成するノズルの配置ピッチ(ノズルピッチ)が254μm(100dpi)、1列のノズル列61を構成するノズルの数は256ノズル、ノズル列61の全長Lw(ノズル列の全長)は約65mm(254μm×255=64.8mm)である。また、吐出周波数は例えば、15kHzであり、駆動波形の変更によって10pl、20pl、30plの3種類の吐出液滴量を打ち分けることができる。
【0034】
インクジェットヘッド24のインク吐出方式としては、圧電素子(ピエゾアクチュエータ)の変形によってインク滴を飛ばす方式(ピエゾジェット方式)が採用されている。吐出エネルギー発生素子として、静電アクチュエータを用いる形態(静電アクチュエータ方式)の他、ヒータなどの発熱体(加熱素子)を用いてインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばす形態(サーマルジェット方式)を採用することも可能である。ただし、紫外線硬化型インクは、一般に溶剤インクと比べて高粘度であるため、紫外線硬化型インクを使用する場合には、吐出力が比較的大きなピエゾジェット方式を採用することが好ましい。
【0035】
〔作画モードについて〕
本例に示すインクジェット記録装置10は、マルチパス方式の描画制御が適用され、印字パス数の変更によって印字解像度(記録解像度)を変更することが可能である。例えば、高生産モード、標準モード、高画質モードの3種類の作画モードが用意され、各モードでそれぞれ印字解像度が異なる。印刷目的や用途に応じて作画モードを選択することができる。
【0036】
高生産モードでは、600dpi(主走査方向)×400dpi(副走査方向)の解像度で印字が実行される。高生産モードの場合、主走査方向は2パス(2回の走査)によって600dpiの解像度が実現される。1回目の走査(キャリッジ30の往路)では300dpiの解像度でドットが形成される。2回目の走査(復路)では1回目の走査(往路)で形成されたドットの中間を300dpiで補間するようにドットが形成され、主走査方向について600dpiの解像度が得られる。
【0037】
一方、副走査方向については、ノズルピッチが100dpiであり、一回の主走査(1パス)により副走査方向に100dpiの解像度でドットが形成される。したがって、4パス印字(4回の走査)により、ノズルピッチ間の間を埋める補間印字を行うことで400dpiの解像度が実現される。なお、高生産モードのキャリッジ30の主走査速度は、1270mm/secである。
【0038】
標準モードでは、600dpi×800dpiの解像度で印字が実行され、主走査方向は2パス印字、副走査は8パス印字により600dpi×800dpiの解像度を得ている。
【0039】
高画質モードでは、1200×1200dpiの解像度で印字が実行され、主走査方向は4パス、副走査方向が12パスにより1200dpi×1200dpiの解像度を得ている。
【0040】
ヘッド240が主走査方向(図1のY方向)に移動している時にノズル242から打滴が行われる。主走査方向に沿ったヘッド240の往復移動と、副走査方向(図1のX方向)への記録媒体の間欠送りの組合せによって記録媒体上に2次元の描画が行われる。
【0041】
インクジェットヘッド24のノズルから吐出されて記録媒体12上に着弾したインク滴は、その直後にその上を通過する仮硬化光源32A(又は32B)によって仮硬化のための紫外線が照射される。また、記録媒体12の間欠搬送に伴ってインクジェットヘッド24の印字領域を通過した記録媒体12上のインク滴は、本硬化光源34A、34Bにより本硬化のための紫外線が照射される。
【0042】
仮硬化光源32A,32Bの発光源としては、UV−LED素子やUVランプなどを用いることができる。本硬化光源34A、34Bについても、UV−LED素子に限らず、UVランプなどを用いることができる。
【0043】
仮硬化光源32A、32Bは、インクジェットヘッド24による印字動作中、2つ同時に点灯しても良いが、主走査方向のキャリッジ移動において後側となる仮硬化光源のみ点灯させることで光源の寿命を延ばすことを図っても良い。また、本硬化光源34A、34Bは、インクジェット記録装置10の印刷動作中、2つ同時に点灯される。走査速度の遅い作画モードでは、片方を消灯することも可能であり、仮硬化光源32A、32Bと、本硬化光源34A、34Bの発光開始タイミングは、同時でもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
記録解像度から定まる打滴点(画素)の間隔を「打滴点間隔」或いは「画素間隔」、若しくは「ドット間隔」と呼び、記録可能な打滴点(打滴候補点)の位置を表す格子(マトリクス)を「打滴点格子」或いは「画素格子」と呼ぶ。主走査600dpi×副走査400dpiの記録解像度の場合、主走査方向の打滴点間隔は、25.4[mm]/600≒42.3μm、副走査方向の打滴点間隔は、25.4[mm]/400=63.5μmである。これは、打滴点格子の1セル(1画素相当)の大きさ「42.3μm×63.5μm」を表している。記録媒体の送り制御やヘッド240からの打滴位置(打滴タイミング)の制御については、この記録解像度から定まる打滴点間隔を単位として送り量や位置が制御される。なお、記録解像度から定まる打滴点間隔を「解像度ピッチ」、或いは「画素ピッチ」と呼ぶ場合がある。
【0045】
<リニアエンコーダの説明>
ここで、キャリッジ30の位置を検知するリニアエンコーダについて説明する。図4はリニアエンコーダ70の構成を模式的に示した斜視図である。リニアエンコーダ70は、主走査方向に沿って平行に配置される帯状のスケール72と、発光素子74と、受光素子76、77と、を備える。スケール72は、光透過性の(透明の)樹脂材料で構成されており、スケール72上には光を遮る遮光パターンとしての黒色ストライプ(黒帯パターン)73Aが長手方向に一定のピッチで多数形成されている。例えば、黒色ストライプ73Aが1インチ当たり150本(150lpi)の密度で形成されている。
【0046】
スケール72を挟んで発光素子74と受光素子76、77とが対向して配置され、発光素子74から照射された光がスケール72を透過して受光素子76、77に受光される。受光素子76、77は受光量に応じた電気信号を出力する光電変換素子である。受光素子76、77は、スケール72の黒色ストライプ73Aの繰り返しピッチに対して90度(1/4周期)位相がずれた位置関係で配置されている。このような位置関係により、90度位相がずれた2種類の検知信号(A相、B相の信号)を得ることができる。
【0047】
図5に示すように、発光素子74と受光素子76、77は、スケール72を挟んで対面するようにコ字型のフレーム78の内側面に固定され、透過型のフォトインタラプタ80が構成される。フォトインタラプタ80がキャリッジ30に固設され、キャリッジ30とともに移動することにより、スケール72に対してフォトインタラプタ80が相対的に移動する。これにより、黒色ストライプ73Aと受光素子76、77の相対的な位置関係の変化により黒色ストライプ73Aの濃淡に応じた受光信号が得られる。
【0048】
図6は、リニアエンコーダの出力信号の説明図である。ここでは、説明を簡単にするために、スケール72の位置ずれや、キャリッジ30の速度ばらつきなどの誤差がない理想的な出力を説明する。
【0049】
図6(a)はA相の原信号(受光信号)、図6(b)はB相の原信号(受光信号)である。図6(c)はA相の原信号から2値化して得られるA相のエンコーダ信号である。図6(d)はB相の原信号から2値化して得られるB相のエンコーダ信号である。
【0050】
光学式のリニアエンコーダの受光素子から得られる信号は図6(a)(b)のような正弦波的な信号となる。この正弦波的信号の2値化結果として、図6(c)(d)のような矩形波の信号が得られる。図6(e)はA相エンコーダ信号及びB相エンコーダ信号の各パルスのエッジ(立ち上がり、立ち下がり)を検知して各タイミングでタイミングパルスを発生させたタイミング信号である。
【0051】
一例として、スケール72における黒色ストライプ73Aが150lpiであとき、A相エンコーダ信号の立ち上がり、B相エンコーダ信号の立ち上がり、A相エンコーダ信号の立ち下がり、B相エンコーダ信号の立ち下がりをそれぞれ検知することにより、150lpiの4倍に相当する600dpiの打滴に対応したタイミング信号(図6(e))を生成できる。
【0052】
従来このようにして生成されたタイミング信号(図6(e))を吐出トリガ信号として利用していたが、「発明が解決しようとする課題」の欄で説明したような問題がある。
【0053】
<技術課題の解明>
例えば、記録ヘッドを搭載したキャリッジの主走査速度を1.27m/sとし、打滴候補点が300dpiの間隔で存在するシステムを考える(主走査方向の記録解像度が300dpiの作画モードに相当)。
【0054】
この場合、理想的には15kHz間隔(66.667μs)で吐出トリガ信号が生成される。しかし、従来の吐出トリガ信号は、上述のように主走査軸上に設けられた光学式エンコーダの出力を基準信号として用いることが多い。しかし、主走査キャリッジの速度ばらつき、エンコーダそのものの出力の時間軸変動などにより、この吐出トリガ信号の時間間隔は変動する。
【0055】
特に、光学式エンコーダにおいては、受光量に対応する原信号の正弦波的変化のゼロ点の検出方法によって、エンコーダ信号は簡単にデューティ比が50%からずれるので、このエンコーダ信号から生成するタイミング信号は2回又は4回の周期で時間軸変動が現れる場合が多い。
【0056】
このようなタイミング信号の時間軸変動(ジッタ)の要因について図7を用いて説明する。図7(a)はA相のエンコーダ信号、図7(b)はB相のエンコーダ信号であり、両者ともデューティ比が50%からずれたものを示している。図7(c)はA相エンコーダ信号及びB相エンコーダ信号の各パルスのエッジタイミングで生成されるタイミング信号を示している。
【0057】
図7(a)、(b)に例示したとおり、A相エンコーダ信号、B相エンコーダ信号について必ずしもデューティ比50%の理想的なパルスが得られるとは限らない。様々な要因によってデューティ比が50%からずれた信号が得られる。例えば、フォトインタラプタ80内におけるスケール72の位置の変動、スケール72の歪み、キャリッジの速度ばらつき、キャリッジ走行時のメカ的な振動、受光素子における光電変換の時間変動など、様々な要因によって、エンコーダの原信号は変動する。また、原信号を2値化する際のゼロ点の取り方によって、2値化後のパルス信号(エンコーダ信号)のディーティ比は50%デューティから容易にずれ得る。
【0058】
図7(a)、(b)に示したように、A相、B相のエンコーダ信号がデューティ比50%からずれた信号になると、A相エンコーダ信号の立ち上がりタイミング([1])、B相エンコーダ信号の立ち上がりタイミング([2])、A相エンコーダ信号の立ち下がりタイミング([3])、B相エンコーダ信号の立ち下がりタイミング([4])の各タイミング間の間隔(パルス周期)が変動しうる。
【0059】
したがって、A相エンコーダ信号とB相エンコーダ信号のエッジを検知して黒帯パターン線密度(lpi)の4倍の解像度(dpi)に対応するタイミング信号を生成する場合、4回の連続するタイミングパルス([1]〜[4])を1単位とする周期で時間間隔が変動しやすい。
【0060】
A相エンコーダ信号のみ、又はB相エンコーダ信号のみを使用し、そのエッジ(立ち上がり、立ち下がり)を検出してタイミング信号を生成する場合には、2回のタイミング信号の周期で時間軸変動が現れやすい。
【0061】
図8は、従来の吐出トリガ信号(エンコーダ信号から直接生成したタイミング信号)の周期変動の例を示したグラフである。横軸は主走査位置(単位[mm])を表し、縦軸は吐出周期(単位[s])を表す。図示のとおり、吐出トリガ信号は、概ね1回毎、交互に1μs程度の誤差で吐出周期がばらついている。つまり、吐出トリガ信号のパルスの時間間隔が1μs単位のオーダーで変動している。
【0062】
従来、例えば、10kHz程度の打滴時間間隔で1滴を吐出させる場合、100μs程度の吐出間隔(吐出時間インターバル)を確保できていた。このような場合、吐出間隔がヘッドの共振周期(例えば、10μs)から十分に離れており、ある吐出タイミングにおいては、過去の吐出によるノズル液面(メニスカス)の変動が十分収まっている。すなわち、先の吐出によるメニスカスの振動が十分に収まってから次の吐出を行うことができる程度に吐出間隔が確保されていた。
【0063】
したがって、エンコーダ出力信号を直接、吐出トリガ信号として用いたり、エンコーダ出力からPLLや時間カウンタ等を用いて1/nの周期の時間を算出して(nは2以上の任意の整数)、トリガ位置を補完するなどして、吐出トリガ信号を作成すれば、吐出トリガ信号の品質としては十分であった。
【0064】
しかし、より一層の生産性向上を実現すべく、上記例示した主走査速度1.27m/s、打滴候補点300dpiの間隔で存在するシステムのように、従来の構成よりも主走査速度が速く、また吐出間隔が狭く、或いはまた、1つの吐出周期(一記録周期)内で数発の液滴を吐出させたいシステムにおいては、従来の吐出トリガをそのまま利用すると、図9のような打滴結果になってしまい、打滴同士が影響し合う(干渉する)状況となってしまう。
【0065】
図9は、キャリッジの主走査速度を1.27m/sとし、打滴候補点が300dpiの間隔で存在するシステムについて、従来の吐出トリガ信号(図8の周期変動を持つもの)を適用して打滴を行った結果である。図9では2つのノズルについて連続的に打滴した打滴ドット列を示した。
【0066】
理想的には、図10のように、各ノズルからの打滴による液滴が紙面上で独立(孤立分離)して、それぞれ円形に近いドットを形成することが望まれるが、実際には、図9に示したように、隣接打滴点の液滴同士がつながってしまう現象が頻繁に起こる。
【0067】
このように、従来の吐出トリガ信号をそのまま使って高周波な打滴を行うと、打滴クロック(吐出トリガ信号)のわずかな時間軸変動(図7で説明した1μs単位オーダーのジッタ)に対して、ヘッドの吐出が影響を受け、着弾位置が均等に並んでいないものとなる。
【0068】
この現象は、ヘッドの共振周波数をもとに次のように説明できる。すなわち、吐出後にメニスカスが十分に静定していないタイミングで次ぎの吐出指令が入ることになり、吐出用の駆動波形の印加タイミングは、ヘッドの共振周波数約100kHz(共振周期約10μs)の位相成分として寄与する。
【0069】
吐出トリガ信号の時間軸変動が1μsであるとすると、この時間軸方向1μsの変化(ジッタ)が、駆動波形の位相換算で2π/10として寄与することになるので、吐出への影響は多大である。
【0070】
図8に示したように、従来のエンコーダ直結信号は、詳細に(ミクロに)見ると毎回1μs〜2μs程度変動している(1μs単位オーダーで変動している)。このように、エンコーダ信号のタイミングが時間軸方向に変動しているため、これを基準にして打滴タイミングを規定することは適切でない。図9で説明した課題を解決して良好な吐出を実現するには、吐出トリガ信号の時間軸変動を十分に小さく抑えることが望まれる。
【0071】
そこで、本実施形態では、次の手段を採用する。
【0072】
(1)吐出トリガ信号の時間分解能を従来の1μs単位オーダーから、0.1μs単位オーダーとする。
【0073】
(2)さらに、上記の0.1μs単位オーダーの時間分解能で吐出トリガ信号を生成しつつ、吐出トリガ信号が緩やかに増減する(漸次変化する)ようにする。
【0074】
(3)また、さらには、隣接する吐出トリガの周期変動を十分に小さい値に抑えると同時に、吐出トリガの周期がヘッドの共振周期に対して変動しないことが望ましい。すなわち、吐出トリガ信号の周期をヘッドの共振周期の整数倍だけずれた長さに設定する構成が好ましい。
【0075】
なお、ヘッド共振周期とは、インク流路系、インク(音響要素)、圧電素子の寸法、材料、物性値等から定まる振動系全体の固有周期をいう。ピエゾジェット方式のインクジェットヘッドの場合、1ノズルの吐出機構は、ノズル孔(吐出口)に連通する圧力室に振動板を介して圧電素子(吐出エネルギー発生素子)が設けられ、この圧電素子を駆動して振動板を変位させることにより圧力室の容積を変化させ圧力室内の液に圧力変動を与え、ノズル孔から液滴の吐出を行う仕組みとなっている。
【0076】
圧電素子を駆動して振動を動かすと、圧力室内の圧力変動によりノズルのメニスカスは、共振周期で振動する。吐出用の駆動波形の印加による吐出動作は、この振動周期(ヘッド共振周期)を利用して設計される。
【0077】
<第1実施例>
図11は、第1実施例による吐出トリガ信号の生成手段に関するブロック図である。
【0078】
エンコーダ70の出力信号に基づき吐出トリガ信号を生成する信号処理部90は、エンコーダ70から得られるA相エンコーダ信号とB相エンコーダ信号の各パルスのエッジを検知してタイミング信号を生成するタイミング信号生成部92と、タイミング信号生成部92で生成されたタイミング信号の周期を算出する時間カウンタ94と、時間カウンタ94で把握されるタイミング信号の各パルスの周期を移動平均化して移動平均値の周期によるパルスを生成する移動平均化処理部96と、を備える。
【0079】
なお、信号処理部90は、ソフトウエアで構成することができ、ハードウエアとソフトウエアの組み合わせによって構成してもよい。
【0080】
時間カウンタ94は、タイミング信号生成部92の出力信号の間隔を高周波のクロック(例えば、120MHz)でカウントし、タイミング信号の周期を算出する。移動平均化処理部96にて周期が調整されたタイミング信号が吐出トリガ(吐出クロック)信号98として利用される。
【0081】
図12は、移動平均化処理部96のブロック図である。図12は、現在の値を含めて連続する4つの値(4サンプル)で移動平均を求める処理の例である。時間カウンタの計数に基づいて周期演算部95によりタイミング信号の周期が順次算出され、周期の値を表す数値x(n)が得られる。タイミング信号のパルス毎に算出される周期の値について、4サンプルの移動平均が計算される。
【0082】
図中の「Z−1」は、入力を1サンプル時間遅らせる記号である。現在の値x(n)と、現在の値から1サンプルずつ遅らせた3つの値x(n−1)、x(n−2)、x(n−3)を加算し、その足し合わせた合計値をサンプル数の4で割って(1/4にして)、平均を求める。
【0083】
こうして得られる値は4サンプルの移動平均値の周期をもつタイミング信号となる。図で説明したとおり、エンコーダ信号のジッタの特性は、A相の立ち上がりから立ち下がりの間、並びにA相の立ち下がりから立ち上がりの間で小さい。またB相の立ち上がりから立ち下がりの間、並びにB相の立ち下がりから立ち上がりの間で小さいという特性がある。A相及びB相の各エンコーダ信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジを検知して得られるタイミング信号(4つのエッジに対応した4倍の周波数信号、150lpiの4倍に相当する600dpiのタイミング信号)は、4パルスを単位として時間変動しやすい傾向がある。
【0084】
そのため、このようなジッタ特性を利用して、移動平均の母数は4の倍数とすることが好ましい。本例では600dpiの連続4パルスの移動平均を求めたが、これに限らず、連続8パルス、連続12パルス、連続16パルス、・・・などの移動平均を算出してもよい。
【0085】
このような構成により、カウント値のもつジッタ成分を低減することができ、隣接パルス間で時間軸変動の少ない吐出トリガ信号を得ることができる。
【0086】
なお、上記例示したA相及びB相のエンコーダ信号が得られる構成に代えて、はじめからA相またはB相のいずれか一方のエンコーダ信号のエッジ検出によって300dpiのパルス信号だけが得られる場合には、移動平均の母数は2の倍数とすることが好ましく、連続2パルス、連続4パルス、連続8パルス、・・・などの移動平均を算出する構成とする。
【0087】
図13には、連続2パルスの移動平均化処理を行う構成のブロック図を示した。処理内容は、図12で説明した構成とサンプル数が違うだけであるため、説明は省略する。
図14は、第1実施例によって得られる吐出トリガ信号の波形図である。図示のように、本実施形態によって得られる吐出トリガ信号は、エンコーダジッタ成分が低減され、ジッタ成分としては主走査の機械的な変動によるものが支配的となる。その結果、例えば、略300dpi〜600dpiのピッチでは、隣接トリガ(隣接するパルス)の周期の変動が1μsよりも小さい値に収まるようになる。隣接トリガの周期TA、TBの変動(差の絶対値|TA−TB|)は0.2μs以内に抑えられる。
【0088】
主走査方向の全範囲で隣接トリガの周期変動は0.1μs単位オーダーに抑えられ、より好ましくは、0.2μs以内に抑えられる。
【0089】
図15は、第1実施例で得られる吐出トリガ信号と従来の吐出トリガ信号との吐出周期を比較して示したグラフである。横軸は主走査位置(単位は[mm])、縦軸は吐出周期(単位は[秒])を表す。図15の符号100で示した滑らかな曲線が第1実施例の吐出トリガ信号を示しており、符号102は従来の吐出トリガ信号を示している。従来の吐出トリガ信号102は、隣接トリガの周期変動が2μs程度と大きく、トリガ信号は毎回、その周期が激しく変動している。また、従来の吐出トリガ信号102は、主走査位置の全体を見ても主走査移動の機械的な振動を反映したうねりを持って変化している。
【0090】
これに対し、第1実施例により得られる吐出トリガ信号100の周期は、既に説明したとおり、隣接トリガ間の時間軸変動は0.2μs以内に抑えられており、全体としても65.5μsを中心にして1μs程度の範囲内で滑らかに(緩やかに)変化している。
【0091】
このように、本第1実施例によれば、吐出トリガ信号の時間分解能が0.1μs単位オーダーの品質に改善され、図10で説明したような打滴が実現できる。
【0092】
<第2実施例>
次に、第2実施例を説明する。
【0093】
図16は、第2実施例による吐出トリガ信号の生成手段に関するブロック図である。図16において図11と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0094】
図16に示した第2実施例では、図11で説明した第1実施例の信号処理部90に代わって、信号処理部110(図16)を備える。この信号処理部110は、タイミング信号生成部92から出力されるタイミング信号の時間軸変動を抑制する手段として、PLL回路114と、トリガ周期設定部116とを備える。
【0095】
図17はPLL回路114の構成を示すブロック図である。PLL回路114は、位相比較器122、ローパスフィルタ(LPF)124、電圧制御発振器126、分周器128を備える。
【0096】
位相比較器122は、タイミング信号生成部92(図16参照)から得られるタイミング信号と、分周器128を介して帰還されるフィードバック信号との位相差を示す位相差信号を生成する。LPF124は、逐次演算型のデジタルローパスフィルタであり、位相差信号を位相差に応じた電圧値の信号に変換する。LPF124の特性は、例えば、画素クロックが15kHzの場合、その半分の7.5kHzがカットされるように、カットオフ周波数を略10kHzに設定する。
【0097】
発振器126はLPF124の出力信号が示す電圧値に応じた周波数の信号を生成する。
【0098】
分周器128は、発振器126から出力される吐出タイミング信号を分周し、位相比較器122へと戻すフィードバック信号を生成する。
【0099】
PLL回路114の出力が図15で説明した吐出トリガ信号100と同等の品質となるように、回路のパラメータが調整される。PLL回路114の設計によってPLL出力信号自体が第1実施例と同等の品質を有するものであるときには、このPLL出力をそのまま吐出トリガ信号として利用することも可能である。
【0100】
ここでは、更なる性能改善のために、上述した(3)の項目の観点を導入し、PLL回路114の発生タイミングから、ヘッド共振周期の整数倍の周期で吐出トリガタイミングを生成する手段(図16において符号116で示したトリガ周期設定部)を備える。
【0101】
ヘッドに供給する吐出トリガは、予め求めておいたヘッド共振周期の整数倍に設定しておき、PLL出力タイミング(「タイミングA」とおく)の累積値(時間カウントの累積値)に合わせて、次の整数倍の値の吐出トリガタイミングを用いる(「タイミングB」と呼ぶ)。こうすることで、吐出トリガは必ずヘッド共振周期に対して整数倍となるタイミングを保つことができ、理想的な打滴(図10参照)を得ることができる。
【0102】
インクジェットヘッドに供給する吐出トリガのタイミングを選択する手段としてのトリガ周期設定部116は、入力信号のタイミングの累積値を計算し、ヘッド共振周期の整数倍+α(αは0以上ヘッド共振周期未満の定数)で表される打滴タイミングで吐出トリガを発生させる。このトリガ周期設定部116の出力がインクジェットヘッドに入力され、吐出トリガ信号として用いられる。
【0103】
図18は、ヘッド共振周期の整数倍の周期で吐出トリガを生成する例を示す図表である。ここではタイミングAの周期が約66μsであり、ヘッド共振周期が10μsであるとした。図18に示すように、タイミングAの周期(約66μs)に対して、タイミングB(打滴タイミング)は共振周期(10μs)の整数倍である。
【0104】
入力信号のタイミングが一様なピッチ(66μs)であるとき、タイミングの累積値は66μsの倍数となる。実際の吐出タイミング(打滴タイミング)は、ヘッド共振周期(10μsの整数倍(ここでは、70μs、又は60μs)のタイミングに設定(制限)されている。この整数倍のタイミングで次ぎの吐出トリガを生成するように、吐出トリガを発生する時間カウントの累積値が設定される。
【0105】
共振周期の整数倍のタイミングに限定して吐出トリガを出力するため、次第にカウント累積値との誤差が累積していく。この誤差が次の周期分まで累積した時点で整数倍の整数値を1つ上げて、吐出トリガの共振周期の整数倍関係を保つように構成される。
【0106】
また、図18の表中に示す累積値70、130、200・・・[μs]等に対応する打滴タイミングは、理想的な吐出トリガの格子点からのズレ(誤差)が±6%以内に収まっている。一般に、理想的な格子点からの打滴点の重心のズレが格子点間隔の±10%以内であれば、実用上問題のない着弾精度であるとされている。つまり、吐出トリガの格子点からのズレが±10%以内に収まる範囲で打滴タイミングをヘッド共振周期の単位で調整することができる。図18の例によれば、着弾精度を確保しつつ、共振周期の整数倍のタイミングで吐出トリガを生成でき、良好な打滴を実現できる。
【0107】
なお、図18では、打滴タイミングをヘッド共振周期の整数倍としたが、打滴タイミングをヘッド共振周期の整数倍+αとしてもよい。αは0以上、ヘッド共振周期未満の定数として任意の値を定めることができる。図19にα=5(μs)の例を示す。
【0108】
図19の例では、打滴タイミングがヘッド共振周期の整数倍+5μsという設定になっている。このような構成を採用しても、吐出トリガは、必ずヘッド共振周期に対して整数倍の関係を維持することができ、良好な打滴を実現できる。
【0109】
<第3実施例>
図18及び図19で例示したトリガ周期設定部116の構成を第1実施例と組み合わせる構成も可能である。図20にそのブロック図を示す。図20中、図11及び図16と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0110】
移動平均化処理部96から出力された信号に対して、さらに打滴タイミングがヘッド共振周期の整数倍+αとなるように吐出トリガの発生タイミングを制限する構成が好ましい。これにより、吐出トリガを常にヘッド共振周期の整数倍の間隔で発生させることができる。
【0111】
<1記録周期内に複数滴を吐出する場合について>
記録媒体上における1画素(1打滴点候補)のドット記録を担う一記録周期内に複数滴の吐出を行う場合には、吐出トリガの時間軸変動は吐出に大きく影響する。例えば、一記録周期が約66μsであるとするとき、この66μs中に3滴〜4滴の液滴を連続吐出させて、これら複数滴を合体させて大きなドットを形成する場合がある。この場合、一記録周期内で共振周期(例えば10μs)を使って3滴〜4滴を吐出しなければならないため、一記録周期内で3〜4パルスの吐出トリガ信号を入れるときにタイミングが特に重要となる。
【0112】
従来のトリガ信号の1μs単位オーダーの時間変動は吐出に大きく影響し、描画品質を低下させるものであったが、上述した本発明の実施形態によれば、吐出トリガ信号の品質が向上しており、一記録周期内に複数滴を吐出する場合でも良好な打滴を行うことができる。
【0113】
<インクジェット記録装置の制御系の説明>
図21はインクジェット記録装置10の構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット記録装置10は、制御手段としての制御装置202が設けられている。制御装置202としては、例えば、中央演算処理装置(CPU)を備えたコンピュータ等を用いることができる。制御装置202は、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。制御装置202には、記録媒体搬送制御部204、キャリッジ駆動制御部206、光源制御部208、画像処理部210、吐出制御部212が含まれる。これらの各部は、ハードウエア回路又はソフトウエア、若しくはこれらの組合せによって実現される。
【0114】
記録媒体搬送制御部204は、記録媒体12(図1参照)の搬送を行うための搬送駆動部214を制御する。搬送駆動部214は、図2に示すニップローラ40駆動する駆動用モータ、及びその駆動回路が含まれる。プラテン26(図1参照)上に搬送された記録媒体12は、インクジェットヘッド24による主走査方向の往復走査(印刷パスの動き)に合わせて、副走査方向へ間欠送りされる。
【0115】
図21に示すキャリッジ駆動制御部206は、キャリッジ30(図1参照)を主走査方向に移動させるための主走査駆動部216を制御する。主走査駆動部216は、キャリッジ30の移動機構に連結される駆動用モータ、及びその制御回路が含まれる。光源制御部208は、LED駆動回路218を介して仮硬化光源32A、32BのUV−LED素子の発光を制御するとともに、LED駆動回路219を介して本硬化光源34A、34BのUV−LED素子の発光を制御する制御手段である。
【0116】
制御装置202は、操作パネル等の入力装置220、表示装置222が接続されている。入力装置220は、手動による外部操作信号を制御装置202へ入力する手段であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、操作ボタンなど各種形態を採用しうる。表示装置222には、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRTなど、各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置220を操作することにより、作画モード(「作画フォーマット」と同義)の選択、印刷条件の入力や付属情報の入力・編集などを行うことができ、入力内容や検索結果等の各種情報は、表示装置222の表示を通じて確認することができる。
【0117】
また、インクジェット記録装置10には、各種情報を格納しておく情報記憶部224と、印刷用の画像データを取り込むための画像入力インターフェース226が設けられている。画像入力インターフェースには、シリアルインターフェースを適用してもよいし、パラレルインターフェースを適用してもよい。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0118】
画像入力インターフェース226を介して入力された画像データは、画像処理部210にて印刷用のデータ(ドットデータ)に変換される。ドットデータは、一般に、多階調の画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(例えば、RGB各色について8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置10で使用するインク各色の色データに変換する処理である。
【0119】
ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色の色データに対して、誤差拡散法や閾値マトリクス等の処理で各色のドットデータに変換する処理である。ハーフトーン処理の手段としては、誤差拡散法、ディザ法、閾値マトリクス法、濃度パターン法など、各種公知の手段を適用できる。ハーフトーン処理は、一般にM値(M≧3)の階調画像データをN値(N<M)の階調画像データに変換する。最も簡単な例では、2値(ドットのオンオフ)のドット画像データに変換するが、ハーフトーン処理において、ドットサイズの種類(例えば、大ドット、中ドット、小ドットなどの3種類)に対応した多値の量子化を行うことも可能である。
【0120】
こうして得られた2値又は多値の画像データ(ドットデータ)は、各ノズルの駆動(オン)/非駆動(オフ)、さらに、多値の場合には液滴量(ドットサイズ)を制御するインク吐出データ(打滴制御データ)として利用される。
【0121】
吐出制御部212は、画像処理部210において生成されたドットデータに基づいて、ヘッド駆動回路228に対して吐出制御信号を生成する。また、吐出制御部212は、不図示の駆動波形生成部を備えている。駆動波形生成部は、インクジェットヘッド24の各ノズルに対応した吐出エネルギー発生素子(本例では、ピエゾ素子)を駆動するための駆動電圧信号を生成する手段である。駆動電圧信号の波形データは、予め情報記憶部224に格納されており、必要に応じて使用する波形データが出力される。駆動波形生成部から出力された信号(駆動波形)は、ヘッド駆動回路228に供給される。なお、駆動波形生成部から出力される信号はデジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
【0122】
ヘッド駆動回路228を介してインクジェットヘッド24の各吐出エネルギー発生素子に対して、共通の駆動電圧信号が印加され、各ノズルの吐出タイミングに応じて各エネルギー発生素子の個別電極に接続されたスイッチ素子(不図示)のオンオフを切り換えることで、対応するノズルからインクが吐出される。
【0123】
情報記憶部224は、制御装置202のCPUが実行するプログラム、及び制御に必要な各種データなどが格納されている。情報記憶部224は、作画モードに応じた解像度の設定情報、パス数(スキャンの繰り返し数)、副走査送り量の制御に必要な送り量情報、仮硬化光源32A、32B及び本硬化光源34A、34Bの制御情報などが格納されている。
【0124】
エンコーダ70は、図4で説明したように、主走査の移動機構に取り付けられており、キャリッジ30の移動に伴い、エンコーダ信号を出力する。このエンコーダ信号は、制御装置202に送られる。制御装置202は、エンコーダ70の出力信号から吐出トリガ信号を生成する手段として機能する。
【0125】
また、図示しないが、搬送駆動部214の駆動用モータにエンコーダ(不図示)が取り付けられている。このエンコーダは、搬送駆動部214の駆動用モータの回転量及び回転速度に応じたエンコーダ信号を出力する。この搬送系のエンコーダ信号は制御装置202に通知され、当該信号に基づいて記録媒体12(図1参照)の位置が把握される。
【0126】
センサ232は、キャリッジ30に取り付けられており、センサ232から得られたセンサ信号に基づいて記録媒体12の幅が把握される。
【0127】
なお、本実施形態における吐出制御部212は「打滴制御手段」に相当する。
【0128】
<記録媒体について>
「記録媒体」は、ヘッドから吐出された液滴が付着される媒体の総称であり、印字媒体、被記録媒体、被画像形成媒体、受像媒体、被吐出媒体、ブリントメディアなど様々な用語で呼ばれるものが含まれる。本発明の実施に際して、記録媒体の材質や形状等は、特に限定されず、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フィルム、布、不織布、配線パターン等が形成されるプリント基板、ゴムシート、その他材質や形状を問わず、様々な媒体に適用できる。
【0129】
<変形例1>
上記実施形態では、主走査方向についてインクジェットヘッド24の両側に仮硬化光源32A、32Bと本硬化光源34A、34Bを対称的に配置し(中心線に対して線対称に配置)、往復走査(双方向)で打滴及びUV露光を行う例を述べたが、インクジェットヘッド24の片側のみに仮硬化光源、本硬化光源を配置して、一方向走査時に描画を行う態様も可能である。
【0130】
また、本発明の実施に際しては、紫外線硬化型インクを利用することは必ずしも要求されない。すなわち、通常のインクを用い、仮硬化光源32A、32Bや本硬化光源34A、34Bの構成を省略する形態も可能である。
【0131】
<変形例2:副走査方向への送り手段について>
図1のインクジェット記録装置10では、記録媒体12を副走査方向に搬送する例を述べたが、ヘッドと記録媒体を副走査方向に相対的に移動させる手段は、この例に限定されない。例えば、記録媒体を停止させて、ヘッドを副走査方向に移動させる態様も可能であるし、ヘッドの移動と記録媒体の搬送とを組み合わせて、副走査送りを実現する態様も可能である。
【0132】
<主走査方向と副走査方向の関係について>
図1で説明したように、主走査方向と副走査方向は、互いに直交関係であることが制御上、好ましい。ただし、発明の実施に際して、必ずしも厳密に垂直に交わる関係であることは要求されない。2次元の描画(作画)を行うためには、主走査方向と副走査方向は互いに交差する関係であればよい(平行でなければよい)。
【0133】
<装置応用例>
上述の実施形態では、ドロップオンデマンド型のワイドフォーマットインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。ワイドフォーマット以外のインクジェット記録装置への適用も可能である。また、本発明は、グラフフィック印刷用途に限らず、電子回路基板の配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体(「インク」に相当)として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、微細構造物形成装置など、各種の画像パターンを形成し得る様々な画像形成装置に適用可能である。
【0134】
なお、本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有するものにより、多くの変形が可能である。
【0135】
<開示する発明の各種態様>
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書及び図面は以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0136】
(第1態様):液滴の吐出口となるノズル及び前記ノズルから液滴を吐出させる吐出エネルギー発生素子を有するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドから吐出された液滴を付着させる記録媒体に対して、前記インクジェットヘッドを往復移動させるヘッド走査手段と、前記ヘッド走査手段による前記インクジェトヘッドの位置を検知するリニアエンコーダと、前記リニアエンコーダの出力信号を基に前記インクジェットヘッドの吐出タイミングを0.1μs単位オーダーの時間分解能で規定する吐出トリガ信号を生成する吐出トリガ生成手段と、前記吐出トリガ信号のタイミングに従って前記インクジェットヘッドから液滴を吐出させる吐出駆動制御手段と、を備えたインクジェット記録装置。
【0137】
ヘッド走査手段によりインクジェットヘッドが移動すると、その移動に伴いリニアエンコーダからヘッドの位置に対応した信号が出力される。このエンコーダ出力をもとに吐出タイミングを規定する吐出トリガ(吐出クロック)信号が生成される。吐出トリガの時間分解能を従来の1μs単位オーダーから0.1μs単位オーダーとし、この0.1μs単位オーダーの時間分解能でトリガ周期が調整された吐出トリガ信号を生成してインクジェットヘッドに供給する。これより、吐出タイミングが安定に、描画品質を向上させることができる。時間分解能が0.1μs単位オーダーの吐出トリガ信号を用いることにより、1μs以内の精度で打滴タイミングを制御できる。
【0138】
特に、本発明によれば、吐出間隔がヘッドの共振周期の10倍に満たないような高周波吐出を行う場合であっても、吐出トリガ信号の時間軸変動が吐出に影響しないレベルに小さな変動量に抑制され、良好な着弾精度を達成することができる。
【0139】
(第2態様):第1態様に記載のインクジェット記録装置において、前記吐出トリガ信号生成手段は、隣接トリガの周期の変動量が0.1μs単位オーダー内に収められた前記吐出トリガ信号を生成する構成とすることができる。
【0140】
この態様によれば、インクジェットヘッドに与えられる吐出トリガ信号は、隣接する吐出トリガの周期変動量(隣接トリガの周期の差の絶対値)が0.1μs単位オーダー内に収められた高品質の(時間軸変動の小さい)信号となっている。
【0141】
(第3態様):第1態様又は第2態様に記載のインクジェット記録装置において、前記吐出トリガ生成手段は、隣接トリガの周期の変動量が0.2μs以内に収められた前記吐出トリガ信号を生成する構成とすることが好ましい。
【0142】
吐出トリガ信号の周期変動量が0.2μs以内に低減されるように吐出トリガ発生手段の回路を構成することが好ましい。かかる態様によれば、インクジェットヘッドの共振周期に対して吐出トリガの変動量(隣接トリガの周期差)が極めて小さいものとなり、吐出への影響を小さく抑えることができる。また、隣接トリガの周期変化が滑らか(緩やか)なものとなり、安定した吐出が可能である。
【0143】
(第4態様):第1態様から第3態様のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記吐出トリガ生成手段は、前記リニアエンコーダの出力信号のエッジタイミングに基づいて生成されるタイミング信号の周期をカウントする周期演算部と、前記周期演算部から得られる前記タイミング信号の周期を示すカウント値の移動平均を算出する移動平均化処理部と、を備える構成とすることができる。
【0144】
この態様に示すように、移動平均化処理を行うことにより、タイミング信号の周期変動を均して、時間軸変動が低減された吐出トリガ信号を生成することができる。
【0145】
(第5態様):第4態様に記載のインクジェット記録装置において、前記移動平均化処理部における移動平均を求める際の母数は、4の倍数とすることができる。
【0146】
例えば、リニアエンコーダからA相及びB相のエンコーダ信号が得られ、これら各相のエンコーダ出力の立ち上がり及び立ち下がりのエッジからタイミング信号を生成する場合、連続4パルスの単位で周期が変動する傾向があるため、このような変動傾向を考慮して、移動平均化のサンプル数(母数)を4の倍数とすることが好ましい。
【0147】
(第6態様):第4態様に記載のインクジェット記録装置において、前記移動平均化処理部における移動平均を求める際の母数は、2の倍数とすることができる。
【0148】
例えば、リニアエンコーダからA相又はB相のいずれか一方のエンコーダ信号が得られ、そのエンコーダ出力の立ち上がり及び立ち下がりのエッジからタイミング信号を生成する場合、連続2パルスの単位で周期が変動する傾向があるため、このような変動傾向を考慮して、移動平均化のサンプル数(母数)を2の倍数とすることが好ましい。
【0149】
(第7態様):第1態様から第3態様のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記吐出トリガ生成手段は、前記リニアエンコーダの出力信号のエッジタイミングに基づいて生成されるタイミング信号の周期をカウントする周期演算部と、前記周期演算部から得られる前記タイミング信号の周期を示すカウント値に対して、逐次演算型のデジタルローパスフィルタ(LPF)処理を行うローパスフィルタ処理部と、を備える構成とすることができる。
【0150】
吐出トリガの周期変動が0.1μs単位オーダー、好ましくは、0.2μs以内に収まるような吐出トリガ信号が出力される回路構成となるようにLPF等の回路が設計される。
【0151】
(第8態様):第1態様から第7態様のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記インクジェットヘッドによって吐出を行う打滴タイミングの周期は、前記インクジェットヘッドの共振周期の整数倍だけずれた長さに設定される構成とすることができる。
【0152】
エンコーダ出力に基づいて生成される信号の周期を監視(モニタ)し、ヘッド共振周期の整数倍の周期で吐出トリガを出力する構成がさらに好ましい。つまり、吐出トリガの各周期の長さの差分が共振周期の整数倍になる構成が好ましい。かかる態様によれば、吐出トリガは必ずヘッド共振周期に対して整数倍の周期を保つことができ、吐出トリガの時間軸変動による吐出への影響がほとんど無い、良好な打滴を実現できる。
【0153】
(第9態様):第8態様に記載のインクジェット記録装置において、前記インクジェットヘッドに対して供給する前記吐出トリガ信号の出力タイミングを前記インクジェットヘッドの共振周期の整数倍+α(ただし、αは0以上、前記共振周期未満の定数)に制限するトリガ周期設定部を備える構成とすることができる。
【0154】
打滴タイミングをヘッド共振周期の整数倍+αのタイミングに揃えることにより、打滴周期はヘッド共振周期の整数倍となる。これにより、吐出トリガは必ずヘッド共振周期に対して整数倍の周期を保つことができる。
【0155】
(第10態様):第8態様又は第9態様に記載のインクジェット記録装置において、記録解像度で特定される打滴候補点の理想的な格子点からの前記吐出トリガ信号の打滴タイミングのズレが前記格子点の間隔の±10%以内である構成とすることが好ましい。
【0156】
理想的な格子点からの着弾位置のズレが±10%以内であれば、実用上問題のない許容範囲とされる。この許容範囲内で打滴タイミングを調整することが可能である。
【0157】
(第11態様):液滴の吐出口となるノズル及び前記ノズルから液滴を吐出させる吐出エネルギー発生素子を有するインクジェットヘッドを記録媒体に対して往復移動させて前記記録媒体に前記液滴を付着させるインクジェット記録方法であって、前記往復移動による前記インクジェトヘッドの位置を検知するリニアエンコーダの出力信号を基に0.1μs単位オーダーの時間分解能で前記インクジェットヘッドの吐出タイミングを規定する吐出トリガ信号を生成する吐出トリガ生成工程と、前記吐出トリガ信号のタイミングに従って前記インクジェットヘッドから液滴を吐出させる吐出駆動制御工程と、を含むインクジェット記録方法。
【0158】
第11態様において、さらに第2態様又は第3態様と同様の特定事項を組み合わせることができる。
【0159】
(第12態様):第11態様に記載のインクジェット記録方法において、前記吐出トリガ生成工程は、前記リニアエンコーダの出力信号のエッジタイミングに基づいて生成されるタイミング信号の周期をカウントする周期演算工程と、前記周期演算工程から得られる前記タイミング信号の周期を示すカウント値の移動平均を算出する移動平均化処理工程と、を含むことができる。
【0160】
(第13態様):第11態様に記載のインクジェット記録方法において、前記吐出トリガ生成工程は、前記リニアエンコーダの出力信号のエッジタイミングに基づいて生成されるタイミング信号の周期をカウントする周期演算工程と、前記周期演算工程から得られる前記タイミング信号の周期を示すカウント値に対して、逐次演算型のデジタルローパスフィルタ(LPF)処理を行うローパスフィルタ処理工程と、を含むことができる。
【0161】
(第14態様):第11態様から第13態様のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法において、前記インクジェットヘッドに対して供給する前記吐出トリガ信号の周期を、前記インクジェットヘッドの共振周期の整数倍+α(ただし、αは0以上、前記共振周期未満の定数)に制限するトリガ周期設定工程を含むことができる。
【符号の説明】
【0162】
10…インクジェット記録装置、12…記録媒体、24…インクジェットヘッド、26…プラテン、28…ガイド機構、30…キャリッジ、36…インクカートリッジ、61,61C,61M,61Y,61K,61CL,61W…ノズル列、70…リニアエンコーダ、90…信号処理部、92…タイミング信号生成部、94…時間カウンタ、96…移動平均化処理部、110…信号処理部、114…PLL、116…トリガ周期設定部、202…制御装置、204…記録媒体搬送制御部、206…キャリッジ駆動制御部、212…吐出制御部、214…搬送駆動部、216…主走査駆動部
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置及び方法に係り、特に、インクジェットヘッドを搭載したキャリッジを往復移動させながら描画を行うシャトル走査方式のインクジェット記録装置における高周波吐出の描画品質を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シャトル走査方式のインクジェットシステムにおいて、打滴タイミングを規定する信号(「吐出トリガ信号」、「吐出タイミング信号」、「吐出クロック」などの用語で呼ばれる場合がある。)は、キャリッジの移動方向(主走査方向)に沿って設置した光学式のリニアエンコーダからの信号をもとに生成している場合が多い(特許文献1、2)。
【0003】
通常、リニアエンコーダは略150lpi(ライン・パー・インチ)〜300lpiの黒帯パターンが形成された透明シート(スケール)と、この透明シートをまたいで対向配置されたLED発光部及び受光部とで構成されており、黒帯の濃淡を検出して位置信号としている。また、濃淡ピッチの1/4周期分ずれた位置に受光部を2個配置して、これら2つの受光部から得られる位相が90度ずれた2つの正弦波出力を用いて、黒帯パターンにおける線密度(lpi)の4倍の記録解像度を達成できる吐出タイミング信号を生成することも行われている。例えば、リニアエンコーダの黒帯パターンが150lpiであるとき、1/4周期分ずれた位置に受光部を2個配置する構成により、600dpi(ドット・パー・インチ)の記録解像度を相当の吐出タイミングを生成することができる。
【0004】
また、これよりもさらに高解像度の吐出タイミングが必要な場合には、600dpiのタイミング信号から逓倍機を用いて1200dpi、2400dpi等の吐出タイミング信号を生成する。逓倍機の構成としては、PLL(Phase Locked Loop)回路を用いたり、或いは、高周波クロックを用いて計数して、概略のタイミングを算出したりする構成がある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−34893号公報
【特許文献2】特許第462310号公報
【特許文献3】特開2009−214326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3に示された従来の構成は、リニアエンコーダの出力を基準信号とし、この基準信号のタイミングで打滴を行うことを主眼としている。ヘッドの共振周期(メニスカスの固有振動周期)に対して十分に長いメニスカス静定時間を確保できる吐出間隔で打滴を行う従来のシステム(例えば、共振周期10μsに対して、10kHz程度の吐出間隔で液滴を吐出させるシステム)の場合には、従来の構成でも特段問題はなかった。
【0007】
しかし、更なるプリント生産性向上等の観点から、キャリッジ走査速度の一層の高速化、吐出間隔の短縮(高周波吐出)を実現しようとするシステムにおいては、従来の吐出トリガ信号をそのまま利用すると描画品質が悪化するという問題がある。この原因について詳細は後述するが(図8〜図9)、従来の吐出トリガ信号の時間軸変動(ジッタ)が影響して画質の低下を招いている。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、吐出トリガ信号の品質を改善し、描画品質を向上させることができるインクジェット記録装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明に係るインクジェット記録装置は、液滴の吐出口となるノズル及び前記ノズルから液滴を吐出させる吐出エネルギー発生素子を有するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドから吐出された液滴を付着させる記録媒体に対して、前記インクジェットヘッドを往復移動させるヘッド走査手段と、前記ヘッド走査手段による前記インクジェトヘッドの位置を検知するリニアエンコーダと、前記リニアエンコーダの出力信号を基に前記インクジェットヘッドの吐出タイミングを0.1μs単位オーダーの時間分解能で規定する吐出トリガ信号を生成する吐出トリガ生成手段と、前記吐出トリガ信号のタイミングに従って前記インクジェットヘッドから液滴を吐出させる吐出駆動制御手段と、を備える。
【0010】
リニアエンコーダの出力信号を利用して吐出トリガ信号を生成するにあたり、吐出トリガの時間分解能を0.1μs単位オーダーとし、この時間分解能で隣接トリガの周期変動を抑え、トリガ信号の品質を向上させる。
【0011】
他の発明態様については、本明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インクジェットヘッドに入力される吐出トリガ(吐出クロック)信号の時間軸変動が低減され、描画品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の外観斜視図
【図2】インクジェット記録装置における記録媒体搬送路を模式的に示す説明図
【図3】キャリッジ上に配置されるインクジェットヘッドの配置形態の例を示す平面透視図
【図4】リニアエンコーダの構成を模式的に示した斜視図
【図5】リニアエンコーダの投光部/受光部の構成例を示した模式図
【図6】リニアエンコーダの出力信号の説明図
【図7】図7(a)はA相のエンコーダ信号、図7(b)はB相のエンコーダ信号、図7(c)はA相エンコーダ信号及びB相エンコーダ信号の各パルスのエッジタイミングで生成されるタイミング信号を示す図
【図8】従来の吐出トリガ信号(エンコーダ信号から直接生成したタイミング信号)の周期変動の例を示したグラフ
【図9】従来の吐出トリガ信号を適用して打滴を行った打滴結果を示す図
【図10】望ましい打滴結果を示す図
【図11】第1実施例による吐出トリガ信号の生成手段に関するブロック図
【図12】移動平均化処理部のブロック図
【図13】連続2パルスの移動平均化処理を行う移動平均化処理部のブロック図
【図14】第1実施例によって得られる吐出トリガ信号の波形図
【図15】第1実施例で得られる吐出トリガ信号と従来の吐出トリガ信号の吐出周期の変動を比較して示したグラフ
【図16】第2実施例による吐出トリガ信号の生成手段に関するブロック図
【図17】PLL回路の構成を示すブロック図
【図18】ヘッド共振周期の整数倍の周期で吐出トリガを生成する例を示す図表
【図19】ヘッド共振周期の整数倍の周期で吐出トリガを生成する他の例を示す図表
【図20】第3実施例による吐出トリガ信号の生成手段に関するブロック図
【図21】インクジェット記録装置の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の外観斜視図である。このインクジェット記録装置10は、紫外線硬化型インク(UV硬化インク)を用いて記録媒体12上にカラー画像を形成するワイドフォーマットプリンタである。ワイドフォーマットプリンタは、大型ポスターや商業用壁面広告など、広い描画範囲を記録するのに好適な装置である。ここでは、A3ノビ以上に対応するものを「ワイドフォーマット」と呼ぶ。
【0016】
ただし、本発明の適用範囲はワイドフォーマット機に限定されない。例えば、パソコンなどに接続され、A4サイズやB5サイズ、ハガキサイズなどの各種用紙サイズに対応したインクジェットプリンタ、或いは、菊半裁など用紙サイズに対応したインクジェット印刷機などについても本発明を適用できる。また、使用するインクの種類についても特に限定はない。UV硬化インクに限らず、通常の水性顔料インクや染料インクなどを用いてよい。
【0017】
インクジェット記録装置10は、装置本体20と、この装置本体20を支持する支持脚22とを備えている。装置本体20には、記録媒体(メディア)12に向けてインクを吐出するドロップオンデマンド型のインクジェットヘッド24(「記録ヘッド」に相当)と、記録媒体12を支持するプラテン26と、ヘッド移動手段(「ヘッド走査手段」に相当)としてのガイド機構28及びキャリッジ30が設けられている。
【0018】
ガイド機構28は、プラテン26の上方において、記録媒体12の搬送方向(X方向)に直交し且つプラテン26の媒体支持面と平行な走査方向(Y方向)に沿って延在するように配置されている。キャリッジ30は、ガイド機構28に沿ってY方向に往復移動可能に支持されている。キャリッジ30には、インクジェットヘッド24が搭載されるとともに、記録媒体12上のインクに紫外線を照射する仮硬化光源(ピニング光源)32A,32Bと、本硬化光源(キュアリング光源)34A,34Bとが搭載されている。
【0019】
仮硬化光源32A,32Bは、インクジェットヘッド24から吐出されたインク滴が記録媒体12に着弾した後に、隣接液滴同士が合一化しない程度にインクを仮硬化させるための紫外線を照射する光源である。本硬化光源34A,34Bは、仮硬化後に追加露光を行い、最終的にインクを完全に硬化(本硬化)させるための紫外線を照射する光源である。
【0020】
キャリッジ30上に配置されたインクジェットヘッド24、仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bは、ガイド機構28に沿ってキャリッジ30とともに一体的に(一緒に)移動する。キャリッジ30の往復移動方向(Y方向)が「主走査方向」、記録媒体12の搬送方向(X方向)が「副走査方向」に相当する。
【0021】
ガイド機構28にはキャリッジ30の位置を検知するリニアエンコーダ(図1中不図示、図4参照)が設けられている。このリニアエンコーダから得られる信号に基づいて吐出タイミングが制御される。本実施形態における吐出トリガ信号の生成手段について詳細は後述する。
【0022】
記録媒体12には、紙、不織布、塩化ビニル、合成化学繊維、ポリエチレン、ポリエステル、ターポリンなど、材質を問わず、また、浸透性媒体、非浸透性媒体を問わず、様々な媒体を用いることができる。なお、本例ではロール状に巻かれた連続媒体を示すが、これに代えて、予め所定サイズに裁断された枚葉媒体(カット紙など)を用いる形態も可能である。
【0023】
記録媒体12は、装置の背面側からロール紙状態(図2参照)で給紙され、印字後は装置正面側の巻き取りローラ(図1中不図示、図2の符号44)で巻き取られる。プラテン26上に搬送された記録媒体12に対して、インクジェットヘッド24からインク滴が吐出され、記録媒体12上に付着したインク滴に対して仮硬化光源32A,32B、本硬化光源34A,34Bから紫外線が照射される。
【0024】
図1において、装置本体20の正面に向かって左側の前面に、インクカートリッジ36の取り付け部38が設けられている。インクカートリッジ36は、紫外線硬化型インクを貯留する交換自在なインク供給源(インクタンク)である。インクカートリッジ36は、本例のインクジェット記録装置10で使用される各色インクに対応して設けられている。色別の各インクカートリッジ36は、それぞれ独立に形成された不図示のインク供給経路によってインクジェットヘッド24に接続される。各色のインク残量が少なくなった場合にインクカートリッジ36の交換が行われる。
【0025】
また、図示を省略するが、装置本体20の正面に向かって右側には、インクジェットヘッド24のメンテナンス部が設けられている。該メンテナンス部は、非印字時におけるインクジェットヘッド24を保湿するためのキャップと、インクジェットヘッド24のノズル面(インク吐出面)を清掃するための払拭部材(ブレード、ウエブ等)が設けられている。インクジェットヘッド24のノズル面をキャッピングするキャップは、メンテナンスのためにノズルから吐出されたインク滴を受けるためのインク受けが設けられている。
【0026】
〔記録媒体搬送路の説明〕
図2は、インクジェット記録装置10における記録媒体搬送路を模式的に示す説明図である。図2に示すように、プラテン26は逆樋状に形成され、その上面が記録媒体12の支持面(媒体支持面)となる。プラテン26の近傍における記録媒体搬送方向(X方向)の上流側には、記録媒体12を間欠搬送するための記録媒体搬送手段である一対のニップローラ40が配設される。このニップローラ40は記録媒体12をプラテン26上で記録媒体搬送方向へ移動させる。
【0027】
ロール・ツー・ロール方式の媒体搬送手段を構成する供給側のロール(送り出し供給ロール)42から送り出された記録媒体12は、印字部の入り口(プラテン26の記録媒体搬送方向の上流側)に設けられた一対のニップローラ40によって、記録媒体搬送方向に間欠搬送される。インクジェットヘッド24の直下の印字部に到達した記録媒体12は、インクジェットヘッド24により印字が実行され、印字後に巻き取りロール44に巻き取られる。印字部の記録媒体搬送方向の下流側には、記録媒体12のガイド46が設けられている。
【0028】
印字部においてインクジェットヘッド24と対向する位置にあるプラテン26の裏面(記録媒体12を支持する面と反対側の面)には、印字中の記録媒体12の温度を調整するための温調部50が設けられている。印字時の記録媒体12が所定の温度となるように調整されると、記録媒体12に着弾したインク液滴の粘度や、表面張力等の物性値が所望の値になり、所望のドット径を得ることが可能となる。なお、必要に応じて、温調部50の上流側にプレ温調部52を設けてもよいし、温調部50の下流側にアフター温調部54を設けてもよい。
【0029】
〔インクジェットヘッドの説明〕
図3は、キャリッジ30上に配置されるインクジェットヘッド24と仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bの配置形態の例を示す平面透視図である。
【0030】
インクジェットヘッド24には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、クリア(透明)インク(CL)、ホワイト(白)インク(W)の各色のインクごとに、それぞれ色のインクを吐出するためのノズル列61Y、61M、61C、61K、61LC、61LM、61CL、61Wが設けられている。図3ではノズル列を点線により図示し、ノズルの個別の図示は省略されている。また、以下の説明では、ノズル列61Y、61M、61C、61K、61LC、61LM、61CL、61Wを総称して符号61を付してノズル列を表すことがある。
【0031】
インク色の種類(色数)や色の組合せについては本実施形態に限定されない。例えば、LC、LMのノズル列を省略する形態、CLやWのノズル列のいずれか一方を省略する形態、メタルインクのノズル列を追加する形態、Wのノズル列に代わりメタルインクのノズル列を具備する形態、特別色のインクを吐出するノズル列を追加する形態などが可能である。また、色別のノズル列の配置順序も特に限定はない。ただし、複数のインク種のうち紫外線に対する硬化感度の低いインクを仮硬化光源32A又は32Bに近い側に配置する構成が好ましい。
【0032】
色別のノズル列61ごとにヘッドモジュールを構成し、これらを並べることによって、カラー描画が可能なインクジェットヘッド24を構成することができる。例えば、イエローインクを吐出するノズル列61Yを有するヘッドモジュール24Yと、マゼンタインクを吐出するノズル列61Mを有するヘッドモジュール24Mと、シアンインクを吐出するノズル列61Cを有するヘッドモジュール24Cと、黒インクを吐出するノズル列61Kを有するヘッドモジュール24Kと、LC、LM、CL、Wの各色のインクを吐出するノズル列61LC、61LM、61CL、61Wをそれぞれ有する各ヘッドモジュール24LC、24LM、24CL、24Wとをキャリッジ30の往復移動方向(主走査方向、Y方向)に沿って並ぶように等間隔に配置する態様も可能である。色別のヘッドモジュール24Y、24M、24C、24K、24LC、24LMのモジュール群(ヘッド群)を「インクジェットヘッド」と解釈してもよいし、各モジュールをそれぞれ「インクジェットヘッド」と解釈することも可能である。或いはまた、1つのインクジェットヘッド24の内部で色別にインク流路を分けて形成し、1ヘッドで複数色のインクを吐出するノズル列を備える構成も可能である。
【0033】
各ノズル列61は、複数個のノズルが一定の間隔で記録媒体搬送方向(副走査方向、X方向)に沿って1列に(直線的に)並んだものとなっている。ただし、本発明の実施に際して、ノズルの配列形態は特に限定されない。2列の千鳥配列や3列以上の2次元ノズル配列形態も可能である。本例のインクジェットヘッド24は、各ノズル列61を構成するノズルの配置ピッチ(ノズルピッチ)が254μm(100dpi)、1列のノズル列61を構成するノズルの数は256ノズル、ノズル列61の全長Lw(ノズル列の全長)は約65mm(254μm×255=64.8mm)である。また、吐出周波数は例えば、15kHzであり、駆動波形の変更によって10pl、20pl、30plの3種類の吐出液滴量を打ち分けることができる。
【0034】
インクジェットヘッド24のインク吐出方式としては、圧電素子(ピエゾアクチュエータ)の変形によってインク滴を飛ばす方式(ピエゾジェット方式)が採用されている。吐出エネルギー発生素子として、静電アクチュエータを用いる形態(静電アクチュエータ方式)の他、ヒータなどの発熱体(加熱素子)を用いてインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばす形態(サーマルジェット方式)を採用することも可能である。ただし、紫外線硬化型インクは、一般に溶剤インクと比べて高粘度であるため、紫外線硬化型インクを使用する場合には、吐出力が比較的大きなピエゾジェット方式を採用することが好ましい。
【0035】
〔作画モードについて〕
本例に示すインクジェット記録装置10は、マルチパス方式の描画制御が適用され、印字パス数の変更によって印字解像度(記録解像度)を変更することが可能である。例えば、高生産モード、標準モード、高画質モードの3種類の作画モードが用意され、各モードでそれぞれ印字解像度が異なる。印刷目的や用途に応じて作画モードを選択することができる。
【0036】
高生産モードでは、600dpi(主走査方向)×400dpi(副走査方向)の解像度で印字が実行される。高生産モードの場合、主走査方向は2パス(2回の走査)によって600dpiの解像度が実現される。1回目の走査(キャリッジ30の往路)では300dpiの解像度でドットが形成される。2回目の走査(復路)では1回目の走査(往路)で形成されたドットの中間を300dpiで補間するようにドットが形成され、主走査方向について600dpiの解像度が得られる。
【0037】
一方、副走査方向については、ノズルピッチが100dpiであり、一回の主走査(1パス)により副走査方向に100dpiの解像度でドットが形成される。したがって、4パス印字(4回の走査)により、ノズルピッチ間の間を埋める補間印字を行うことで400dpiの解像度が実現される。なお、高生産モードのキャリッジ30の主走査速度は、1270mm/secである。
【0038】
標準モードでは、600dpi×800dpiの解像度で印字が実行され、主走査方向は2パス印字、副走査は8パス印字により600dpi×800dpiの解像度を得ている。
【0039】
高画質モードでは、1200×1200dpiの解像度で印字が実行され、主走査方向は4パス、副走査方向が12パスにより1200dpi×1200dpiの解像度を得ている。
【0040】
ヘッド240が主走査方向(図1のY方向)に移動している時にノズル242から打滴が行われる。主走査方向に沿ったヘッド240の往復移動と、副走査方向(図1のX方向)への記録媒体の間欠送りの組合せによって記録媒体上に2次元の描画が行われる。
【0041】
インクジェットヘッド24のノズルから吐出されて記録媒体12上に着弾したインク滴は、その直後にその上を通過する仮硬化光源32A(又は32B)によって仮硬化のための紫外線が照射される。また、記録媒体12の間欠搬送に伴ってインクジェットヘッド24の印字領域を通過した記録媒体12上のインク滴は、本硬化光源34A、34Bにより本硬化のための紫外線が照射される。
【0042】
仮硬化光源32A,32Bの発光源としては、UV−LED素子やUVランプなどを用いることができる。本硬化光源34A、34Bについても、UV−LED素子に限らず、UVランプなどを用いることができる。
【0043】
仮硬化光源32A、32Bは、インクジェットヘッド24による印字動作中、2つ同時に点灯しても良いが、主走査方向のキャリッジ移動において後側となる仮硬化光源のみ点灯させることで光源の寿命を延ばすことを図っても良い。また、本硬化光源34A、34Bは、インクジェット記録装置10の印刷動作中、2つ同時に点灯される。走査速度の遅い作画モードでは、片方を消灯することも可能であり、仮硬化光源32A、32Bと、本硬化光源34A、34Bの発光開始タイミングは、同時でもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
記録解像度から定まる打滴点(画素)の間隔を「打滴点間隔」或いは「画素間隔」、若しくは「ドット間隔」と呼び、記録可能な打滴点(打滴候補点)の位置を表す格子(マトリクス)を「打滴点格子」或いは「画素格子」と呼ぶ。主走査600dpi×副走査400dpiの記録解像度の場合、主走査方向の打滴点間隔は、25.4[mm]/600≒42.3μm、副走査方向の打滴点間隔は、25.4[mm]/400=63.5μmである。これは、打滴点格子の1セル(1画素相当)の大きさ「42.3μm×63.5μm」を表している。記録媒体の送り制御やヘッド240からの打滴位置(打滴タイミング)の制御については、この記録解像度から定まる打滴点間隔を単位として送り量や位置が制御される。なお、記録解像度から定まる打滴点間隔を「解像度ピッチ」、或いは「画素ピッチ」と呼ぶ場合がある。
【0045】
<リニアエンコーダの説明>
ここで、キャリッジ30の位置を検知するリニアエンコーダについて説明する。図4はリニアエンコーダ70の構成を模式的に示した斜視図である。リニアエンコーダ70は、主走査方向に沿って平行に配置される帯状のスケール72と、発光素子74と、受光素子76、77と、を備える。スケール72は、光透過性の(透明の)樹脂材料で構成されており、スケール72上には光を遮る遮光パターンとしての黒色ストライプ(黒帯パターン)73Aが長手方向に一定のピッチで多数形成されている。例えば、黒色ストライプ73Aが1インチ当たり150本(150lpi)の密度で形成されている。
【0046】
スケール72を挟んで発光素子74と受光素子76、77とが対向して配置され、発光素子74から照射された光がスケール72を透過して受光素子76、77に受光される。受光素子76、77は受光量に応じた電気信号を出力する光電変換素子である。受光素子76、77は、スケール72の黒色ストライプ73Aの繰り返しピッチに対して90度(1/4周期)位相がずれた位置関係で配置されている。このような位置関係により、90度位相がずれた2種類の検知信号(A相、B相の信号)を得ることができる。
【0047】
図5に示すように、発光素子74と受光素子76、77は、スケール72を挟んで対面するようにコ字型のフレーム78の内側面に固定され、透過型のフォトインタラプタ80が構成される。フォトインタラプタ80がキャリッジ30に固設され、キャリッジ30とともに移動することにより、スケール72に対してフォトインタラプタ80が相対的に移動する。これにより、黒色ストライプ73Aと受光素子76、77の相対的な位置関係の変化により黒色ストライプ73Aの濃淡に応じた受光信号が得られる。
【0048】
図6は、リニアエンコーダの出力信号の説明図である。ここでは、説明を簡単にするために、スケール72の位置ずれや、キャリッジ30の速度ばらつきなどの誤差がない理想的な出力を説明する。
【0049】
図6(a)はA相の原信号(受光信号)、図6(b)はB相の原信号(受光信号)である。図6(c)はA相の原信号から2値化して得られるA相のエンコーダ信号である。図6(d)はB相の原信号から2値化して得られるB相のエンコーダ信号である。
【0050】
光学式のリニアエンコーダの受光素子から得られる信号は図6(a)(b)のような正弦波的な信号となる。この正弦波的信号の2値化結果として、図6(c)(d)のような矩形波の信号が得られる。図6(e)はA相エンコーダ信号及びB相エンコーダ信号の各パルスのエッジ(立ち上がり、立ち下がり)を検知して各タイミングでタイミングパルスを発生させたタイミング信号である。
【0051】
一例として、スケール72における黒色ストライプ73Aが150lpiであとき、A相エンコーダ信号の立ち上がり、B相エンコーダ信号の立ち上がり、A相エンコーダ信号の立ち下がり、B相エンコーダ信号の立ち下がりをそれぞれ検知することにより、150lpiの4倍に相当する600dpiの打滴に対応したタイミング信号(図6(e))を生成できる。
【0052】
従来このようにして生成されたタイミング信号(図6(e))を吐出トリガ信号として利用していたが、「発明が解決しようとする課題」の欄で説明したような問題がある。
【0053】
<技術課題の解明>
例えば、記録ヘッドを搭載したキャリッジの主走査速度を1.27m/sとし、打滴候補点が300dpiの間隔で存在するシステムを考える(主走査方向の記録解像度が300dpiの作画モードに相当)。
【0054】
この場合、理想的には15kHz間隔(66.667μs)で吐出トリガ信号が生成される。しかし、従来の吐出トリガ信号は、上述のように主走査軸上に設けられた光学式エンコーダの出力を基準信号として用いることが多い。しかし、主走査キャリッジの速度ばらつき、エンコーダそのものの出力の時間軸変動などにより、この吐出トリガ信号の時間間隔は変動する。
【0055】
特に、光学式エンコーダにおいては、受光量に対応する原信号の正弦波的変化のゼロ点の検出方法によって、エンコーダ信号は簡単にデューティ比が50%からずれるので、このエンコーダ信号から生成するタイミング信号は2回又は4回の周期で時間軸変動が現れる場合が多い。
【0056】
このようなタイミング信号の時間軸変動(ジッタ)の要因について図7を用いて説明する。図7(a)はA相のエンコーダ信号、図7(b)はB相のエンコーダ信号であり、両者ともデューティ比が50%からずれたものを示している。図7(c)はA相エンコーダ信号及びB相エンコーダ信号の各パルスのエッジタイミングで生成されるタイミング信号を示している。
【0057】
図7(a)、(b)に例示したとおり、A相エンコーダ信号、B相エンコーダ信号について必ずしもデューティ比50%の理想的なパルスが得られるとは限らない。様々な要因によってデューティ比が50%からずれた信号が得られる。例えば、フォトインタラプタ80内におけるスケール72の位置の変動、スケール72の歪み、キャリッジの速度ばらつき、キャリッジ走行時のメカ的な振動、受光素子における光電変換の時間変動など、様々な要因によって、エンコーダの原信号は変動する。また、原信号を2値化する際のゼロ点の取り方によって、2値化後のパルス信号(エンコーダ信号)のディーティ比は50%デューティから容易にずれ得る。
【0058】
図7(a)、(b)に示したように、A相、B相のエンコーダ信号がデューティ比50%からずれた信号になると、A相エンコーダ信号の立ち上がりタイミング([1])、B相エンコーダ信号の立ち上がりタイミング([2])、A相エンコーダ信号の立ち下がりタイミング([3])、B相エンコーダ信号の立ち下がりタイミング([4])の各タイミング間の間隔(パルス周期)が変動しうる。
【0059】
したがって、A相エンコーダ信号とB相エンコーダ信号のエッジを検知して黒帯パターン線密度(lpi)の4倍の解像度(dpi)に対応するタイミング信号を生成する場合、4回の連続するタイミングパルス([1]〜[4])を1単位とする周期で時間間隔が変動しやすい。
【0060】
A相エンコーダ信号のみ、又はB相エンコーダ信号のみを使用し、そのエッジ(立ち上がり、立ち下がり)を検出してタイミング信号を生成する場合には、2回のタイミング信号の周期で時間軸変動が現れやすい。
【0061】
図8は、従来の吐出トリガ信号(エンコーダ信号から直接生成したタイミング信号)の周期変動の例を示したグラフである。横軸は主走査位置(単位[mm])を表し、縦軸は吐出周期(単位[s])を表す。図示のとおり、吐出トリガ信号は、概ね1回毎、交互に1μs程度の誤差で吐出周期がばらついている。つまり、吐出トリガ信号のパルスの時間間隔が1μs単位のオーダーで変動している。
【0062】
従来、例えば、10kHz程度の打滴時間間隔で1滴を吐出させる場合、100μs程度の吐出間隔(吐出時間インターバル)を確保できていた。このような場合、吐出間隔がヘッドの共振周期(例えば、10μs)から十分に離れており、ある吐出タイミングにおいては、過去の吐出によるノズル液面(メニスカス)の変動が十分収まっている。すなわち、先の吐出によるメニスカスの振動が十分に収まってから次の吐出を行うことができる程度に吐出間隔が確保されていた。
【0063】
したがって、エンコーダ出力信号を直接、吐出トリガ信号として用いたり、エンコーダ出力からPLLや時間カウンタ等を用いて1/nの周期の時間を算出して(nは2以上の任意の整数)、トリガ位置を補完するなどして、吐出トリガ信号を作成すれば、吐出トリガ信号の品質としては十分であった。
【0064】
しかし、より一層の生産性向上を実現すべく、上記例示した主走査速度1.27m/s、打滴候補点300dpiの間隔で存在するシステムのように、従来の構成よりも主走査速度が速く、また吐出間隔が狭く、或いはまた、1つの吐出周期(一記録周期)内で数発の液滴を吐出させたいシステムにおいては、従来の吐出トリガをそのまま利用すると、図9のような打滴結果になってしまい、打滴同士が影響し合う(干渉する)状況となってしまう。
【0065】
図9は、キャリッジの主走査速度を1.27m/sとし、打滴候補点が300dpiの間隔で存在するシステムについて、従来の吐出トリガ信号(図8の周期変動を持つもの)を適用して打滴を行った結果である。図9では2つのノズルについて連続的に打滴した打滴ドット列を示した。
【0066】
理想的には、図10のように、各ノズルからの打滴による液滴が紙面上で独立(孤立分離)して、それぞれ円形に近いドットを形成することが望まれるが、実際には、図9に示したように、隣接打滴点の液滴同士がつながってしまう現象が頻繁に起こる。
【0067】
このように、従来の吐出トリガ信号をそのまま使って高周波な打滴を行うと、打滴クロック(吐出トリガ信号)のわずかな時間軸変動(図7で説明した1μs単位オーダーのジッタ)に対して、ヘッドの吐出が影響を受け、着弾位置が均等に並んでいないものとなる。
【0068】
この現象は、ヘッドの共振周波数をもとに次のように説明できる。すなわち、吐出後にメニスカスが十分に静定していないタイミングで次ぎの吐出指令が入ることになり、吐出用の駆動波形の印加タイミングは、ヘッドの共振周波数約100kHz(共振周期約10μs)の位相成分として寄与する。
【0069】
吐出トリガ信号の時間軸変動が1μsであるとすると、この時間軸方向1μsの変化(ジッタ)が、駆動波形の位相換算で2π/10として寄与することになるので、吐出への影響は多大である。
【0070】
図8に示したように、従来のエンコーダ直結信号は、詳細に(ミクロに)見ると毎回1μs〜2μs程度変動している(1μs単位オーダーで変動している)。このように、エンコーダ信号のタイミングが時間軸方向に変動しているため、これを基準にして打滴タイミングを規定することは適切でない。図9で説明した課題を解決して良好な吐出を実現するには、吐出トリガ信号の時間軸変動を十分に小さく抑えることが望まれる。
【0071】
そこで、本実施形態では、次の手段を採用する。
【0072】
(1)吐出トリガ信号の時間分解能を従来の1μs単位オーダーから、0.1μs単位オーダーとする。
【0073】
(2)さらに、上記の0.1μs単位オーダーの時間分解能で吐出トリガ信号を生成しつつ、吐出トリガ信号が緩やかに増減する(漸次変化する)ようにする。
【0074】
(3)また、さらには、隣接する吐出トリガの周期変動を十分に小さい値に抑えると同時に、吐出トリガの周期がヘッドの共振周期に対して変動しないことが望ましい。すなわち、吐出トリガ信号の周期をヘッドの共振周期の整数倍だけずれた長さに設定する構成が好ましい。
【0075】
なお、ヘッド共振周期とは、インク流路系、インク(音響要素)、圧電素子の寸法、材料、物性値等から定まる振動系全体の固有周期をいう。ピエゾジェット方式のインクジェットヘッドの場合、1ノズルの吐出機構は、ノズル孔(吐出口)に連通する圧力室に振動板を介して圧電素子(吐出エネルギー発生素子)が設けられ、この圧電素子を駆動して振動板を変位させることにより圧力室の容積を変化させ圧力室内の液に圧力変動を与え、ノズル孔から液滴の吐出を行う仕組みとなっている。
【0076】
圧電素子を駆動して振動を動かすと、圧力室内の圧力変動によりノズルのメニスカスは、共振周期で振動する。吐出用の駆動波形の印加による吐出動作は、この振動周期(ヘッド共振周期)を利用して設計される。
【0077】
<第1実施例>
図11は、第1実施例による吐出トリガ信号の生成手段に関するブロック図である。
【0078】
エンコーダ70の出力信号に基づき吐出トリガ信号を生成する信号処理部90は、エンコーダ70から得られるA相エンコーダ信号とB相エンコーダ信号の各パルスのエッジを検知してタイミング信号を生成するタイミング信号生成部92と、タイミング信号生成部92で生成されたタイミング信号の周期を算出する時間カウンタ94と、時間カウンタ94で把握されるタイミング信号の各パルスの周期を移動平均化して移動平均値の周期によるパルスを生成する移動平均化処理部96と、を備える。
【0079】
なお、信号処理部90は、ソフトウエアで構成することができ、ハードウエアとソフトウエアの組み合わせによって構成してもよい。
【0080】
時間カウンタ94は、タイミング信号生成部92の出力信号の間隔を高周波のクロック(例えば、120MHz)でカウントし、タイミング信号の周期を算出する。移動平均化処理部96にて周期が調整されたタイミング信号が吐出トリガ(吐出クロック)信号98として利用される。
【0081】
図12は、移動平均化処理部96のブロック図である。図12は、現在の値を含めて連続する4つの値(4サンプル)で移動平均を求める処理の例である。時間カウンタの計数に基づいて周期演算部95によりタイミング信号の周期が順次算出され、周期の値を表す数値x(n)が得られる。タイミング信号のパルス毎に算出される周期の値について、4サンプルの移動平均が計算される。
【0082】
図中の「Z−1」は、入力を1サンプル時間遅らせる記号である。現在の値x(n)と、現在の値から1サンプルずつ遅らせた3つの値x(n−1)、x(n−2)、x(n−3)を加算し、その足し合わせた合計値をサンプル数の4で割って(1/4にして)、平均を求める。
【0083】
こうして得られる値は4サンプルの移動平均値の周期をもつタイミング信号となる。図で説明したとおり、エンコーダ信号のジッタの特性は、A相の立ち上がりから立ち下がりの間、並びにA相の立ち下がりから立ち上がりの間で小さい。またB相の立ち上がりから立ち下がりの間、並びにB相の立ち下がりから立ち上がりの間で小さいという特性がある。A相及びB相の各エンコーダ信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジを検知して得られるタイミング信号(4つのエッジに対応した4倍の周波数信号、150lpiの4倍に相当する600dpiのタイミング信号)は、4パルスを単位として時間変動しやすい傾向がある。
【0084】
そのため、このようなジッタ特性を利用して、移動平均の母数は4の倍数とすることが好ましい。本例では600dpiの連続4パルスの移動平均を求めたが、これに限らず、連続8パルス、連続12パルス、連続16パルス、・・・などの移動平均を算出してもよい。
【0085】
このような構成により、カウント値のもつジッタ成分を低減することができ、隣接パルス間で時間軸変動の少ない吐出トリガ信号を得ることができる。
【0086】
なお、上記例示したA相及びB相のエンコーダ信号が得られる構成に代えて、はじめからA相またはB相のいずれか一方のエンコーダ信号のエッジ検出によって300dpiのパルス信号だけが得られる場合には、移動平均の母数は2の倍数とすることが好ましく、連続2パルス、連続4パルス、連続8パルス、・・・などの移動平均を算出する構成とする。
【0087】
図13には、連続2パルスの移動平均化処理を行う構成のブロック図を示した。処理内容は、図12で説明した構成とサンプル数が違うだけであるため、説明は省略する。
図14は、第1実施例によって得られる吐出トリガ信号の波形図である。図示のように、本実施形態によって得られる吐出トリガ信号は、エンコーダジッタ成分が低減され、ジッタ成分としては主走査の機械的な変動によるものが支配的となる。その結果、例えば、略300dpi〜600dpiのピッチでは、隣接トリガ(隣接するパルス)の周期の変動が1μsよりも小さい値に収まるようになる。隣接トリガの周期TA、TBの変動(差の絶対値|TA−TB|)は0.2μs以内に抑えられる。
【0088】
主走査方向の全範囲で隣接トリガの周期変動は0.1μs単位オーダーに抑えられ、より好ましくは、0.2μs以内に抑えられる。
【0089】
図15は、第1実施例で得られる吐出トリガ信号と従来の吐出トリガ信号との吐出周期を比較して示したグラフである。横軸は主走査位置(単位は[mm])、縦軸は吐出周期(単位は[秒])を表す。図15の符号100で示した滑らかな曲線が第1実施例の吐出トリガ信号を示しており、符号102は従来の吐出トリガ信号を示している。従来の吐出トリガ信号102は、隣接トリガの周期変動が2μs程度と大きく、トリガ信号は毎回、その周期が激しく変動している。また、従来の吐出トリガ信号102は、主走査位置の全体を見ても主走査移動の機械的な振動を反映したうねりを持って変化している。
【0090】
これに対し、第1実施例により得られる吐出トリガ信号100の周期は、既に説明したとおり、隣接トリガ間の時間軸変動は0.2μs以内に抑えられており、全体としても65.5μsを中心にして1μs程度の範囲内で滑らかに(緩やかに)変化している。
【0091】
このように、本第1実施例によれば、吐出トリガ信号の時間分解能が0.1μs単位オーダーの品質に改善され、図10で説明したような打滴が実現できる。
【0092】
<第2実施例>
次に、第2実施例を説明する。
【0093】
図16は、第2実施例による吐出トリガ信号の生成手段に関するブロック図である。図16において図11と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0094】
図16に示した第2実施例では、図11で説明した第1実施例の信号処理部90に代わって、信号処理部110(図16)を備える。この信号処理部110は、タイミング信号生成部92から出力されるタイミング信号の時間軸変動を抑制する手段として、PLL回路114と、トリガ周期設定部116とを備える。
【0095】
図17はPLL回路114の構成を示すブロック図である。PLL回路114は、位相比較器122、ローパスフィルタ(LPF)124、電圧制御発振器126、分周器128を備える。
【0096】
位相比較器122は、タイミング信号生成部92(図16参照)から得られるタイミング信号と、分周器128を介して帰還されるフィードバック信号との位相差を示す位相差信号を生成する。LPF124は、逐次演算型のデジタルローパスフィルタであり、位相差信号を位相差に応じた電圧値の信号に変換する。LPF124の特性は、例えば、画素クロックが15kHzの場合、その半分の7.5kHzがカットされるように、カットオフ周波数を略10kHzに設定する。
【0097】
発振器126はLPF124の出力信号が示す電圧値に応じた周波数の信号を生成する。
【0098】
分周器128は、発振器126から出力される吐出タイミング信号を分周し、位相比較器122へと戻すフィードバック信号を生成する。
【0099】
PLL回路114の出力が図15で説明した吐出トリガ信号100と同等の品質となるように、回路のパラメータが調整される。PLL回路114の設計によってPLL出力信号自体が第1実施例と同等の品質を有するものであるときには、このPLL出力をそのまま吐出トリガ信号として利用することも可能である。
【0100】
ここでは、更なる性能改善のために、上述した(3)の項目の観点を導入し、PLL回路114の発生タイミングから、ヘッド共振周期の整数倍の周期で吐出トリガタイミングを生成する手段(図16において符号116で示したトリガ周期設定部)を備える。
【0101】
ヘッドに供給する吐出トリガは、予め求めておいたヘッド共振周期の整数倍に設定しておき、PLL出力タイミング(「タイミングA」とおく)の累積値(時間カウントの累積値)に合わせて、次の整数倍の値の吐出トリガタイミングを用いる(「タイミングB」と呼ぶ)。こうすることで、吐出トリガは必ずヘッド共振周期に対して整数倍となるタイミングを保つことができ、理想的な打滴(図10参照)を得ることができる。
【0102】
インクジェットヘッドに供給する吐出トリガのタイミングを選択する手段としてのトリガ周期設定部116は、入力信号のタイミングの累積値を計算し、ヘッド共振周期の整数倍+α(αは0以上ヘッド共振周期未満の定数)で表される打滴タイミングで吐出トリガを発生させる。このトリガ周期設定部116の出力がインクジェットヘッドに入力され、吐出トリガ信号として用いられる。
【0103】
図18は、ヘッド共振周期の整数倍の周期で吐出トリガを生成する例を示す図表である。ここではタイミングAの周期が約66μsであり、ヘッド共振周期が10μsであるとした。図18に示すように、タイミングAの周期(約66μs)に対して、タイミングB(打滴タイミング)は共振周期(10μs)の整数倍である。
【0104】
入力信号のタイミングが一様なピッチ(66μs)であるとき、タイミングの累積値は66μsの倍数となる。実際の吐出タイミング(打滴タイミング)は、ヘッド共振周期(10μsの整数倍(ここでは、70μs、又は60μs)のタイミングに設定(制限)されている。この整数倍のタイミングで次ぎの吐出トリガを生成するように、吐出トリガを発生する時間カウントの累積値が設定される。
【0105】
共振周期の整数倍のタイミングに限定して吐出トリガを出力するため、次第にカウント累積値との誤差が累積していく。この誤差が次の周期分まで累積した時点で整数倍の整数値を1つ上げて、吐出トリガの共振周期の整数倍関係を保つように構成される。
【0106】
また、図18の表中に示す累積値70、130、200・・・[μs]等に対応する打滴タイミングは、理想的な吐出トリガの格子点からのズレ(誤差)が±6%以内に収まっている。一般に、理想的な格子点からの打滴点の重心のズレが格子点間隔の±10%以内であれば、実用上問題のない着弾精度であるとされている。つまり、吐出トリガの格子点からのズレが±10%以内に収まる範囲で打滴タイミングをヘッド共振周期の単位で調整することができる。図18の例によれば、着弾精度を確保しつつ、共振周期の整数倍のタイミングで吐出トリガを生成でき、良好な打滴を実現できる。
【0107】
なお、図18では、打滴タイミングをヘッド共振周期の整数倍としたが、打滴タイミングをヘッド共振周期の整数倍+αとしてもよい。αは0以上、ヘッド共振周期未満の定数として任意の値を定めることができる。図19にα=5(μs)の例を示す。
【0108】
図19の例では、打滴タイミングがヘッド共振周期の整数倍+5μsという設定になっている。このような構成を採用しても、吐出トリガは、必ずヘッド共振周期に対して整数倍の関係を維持することができ、良好な打滴を実現できる。
【0109】
<第3実施例>
図18及び図19で例示したトリガ周期設定部116の構成を第1実施例と組み合わせる構成も可能である。図20にそのブロック図を示す。図20中、図11及び図16と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0110】
移動平均化処理部96から出力された信号に対して、さらに打滴タイミングがヘッド共振周期の整数倍+αとなるように吐出トリガの発生タイミングを制限する構成が好ましい。これにより、吐出トリガを常にヘッド共振周期の整数倍の間隔で発生させることができる。
【0111】
<1記録周期内に複数滴を吐出する場合について>
記録媒体上における1画素(1打滴点候補)のドット記録を担う一記録周期内に複数滴の吐出を行う場合には、吐出トリガの時間軸変動は吐出に大きく影響する。例えば、一記録周期が約66μsであるとするとき、この66μs中に3滴〜4滴の液滴を連続吐出させて、これら複数滴を合体させて大きなドットを形成する場合がある。この場合、一記録周期内で共振周期(例えば10μs)を使って3滴〜4滴を吐出しなければならないため、一記録周期内で3〜4パルスの吐出トリガ信号を入れるときにタイミングが特に重要となる。
【0112】
従来のトリガ信号の1μs単位オーダーの時間変動は吐出に大きく影響し、描画品質を低下させるものであったが、上述した本発明の実施形態によれば、吐出トリガ信号の品質が向上しており、一記録周期内に複数滴を吐出する場合でも良好な打滴を行うことができる。
【0113】
<インクジェット記録装置の制御系の説明>
図21はインクジェット記録装置10の構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット記録装置10は、制御手段としての制御装置202が設けられている。制御装置202としては、例えば、中央演算処理装置(CPU)を備えたコンピュータ等を用いることができる。制御装置202は、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。制御装置202には、記録媒体搬送制御部204、キャリッジ駆動制御部206、光源制御部208、画像処理部210、吐出制御部212が含まれる。これらの各部は、ハードウエア回路又はソフトウエア、若しくはこれらの組合せによって実現される。
【0114】
記録媒体搬送制御部204は、記録媒体12(図1参照)の搬送を行うための搬送駆動部214を制御する。搬送駆動部214は、図2に示すニップローラ40駆動する駆動用モータ、及びその駆動回路が含まれる。プラテン26(図1参照)上に搬送された記録媒体12は、インクジェットヘッド24による主走査方向の往復走査(印刷パスの動き)に合わせて、副走査方向へ間欠送りされる。
【0115】
図21に示すキャリッジ駆動制御部206は、キャリッジ30(図1参照)を主走査方向に移動させるための主走査駆動部216を制御する。主走査駆動部216は、キャリッジ30の移動機構に連結される駆動用モータ、及びその制御回路が含まれる。光源制御部208は、LED駆動回路218を介して仮硬化光源32A、32BのUV−LED素子の発光を制御するとともに、LED駆動回路219を介して本硬化光源34A、34BのUV−LED素子の発光を制御する制御手段である。
【0116】
制御装置202は、操作パネル等の入力装置220、表示装置222が接続されている。入力装置220は、手動による外部操作信号を制御装置202へ入力する手段であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、操作ボタンなど各種形態を採用しうる。表示装置222には、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRTなど、各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置220を操作することにより、作画モード(「作画フォーマット」と同義)の選択、印刷条件の入力や付属情報の入力・編集などを行うことができ、入力内容や検索結果等の各種情報は、表示装置222の表示を通じて確認することができる。
【0117】
また、インクジェット記録装置10には、各種情報を格納しておく情報記憶部224と、印刷用の画像データを取り込むための画像入力インターフェース226が設けられている。画像入力インターフェースには、シリアルインターフェースを適用してもよいし、パラレルインターフェースを適用してもよい。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0118】
画像入力インターフェース226を介して入力された画像データは、画像処理部210にて印刷用のデータ(ドットデータ)に変換される。ドットデータは、一般に、多階調の画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(例えば、RGB各色について8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置10で使用するインク各色の色データに変換する処理である。
【0119】
ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色の色データに対して、誤差拡散法や閾値マトリクス等の処理で各色のドットデータに変換する処理である。ハーフトーン処理の手段としては、誤差拡散法、ディザ法、閾値マトリクス法、濃度パターン法など、各種公知の手段を適用できる。ハーフトーン処理は、一般にM値(M≧3)の階調画像データをN値(N<M)の階調画像データに変換する。最も簡単な例では、2値(ドットのオンオフ)のドット画像データに変換するが、ハーフトーン処理において、ドットサイズの種類(例えば、大ドット、中ドット、小ドットなどの3種類)に対応した多値の量子化を行うことも可能である。
【0120】
こうして得られた2値又は多値の画像データ(ドットデータ)は、各ノズルの駆動(オン)/非駆動(オフ)、さらに、多値の場合には液滴量(ドットサイズ)を制御するインク吐出データ(打滴制御データ)として利用される。
【0121】
吐出制御部212は、画像処理部210において生成されたドットデータに基づいて、ヘッド駆動回路228に対して吐出制御信号を生成する。また、吐出制御部212は、不図示の駆動波形生成部を備えている。駆動波形生成部は、インクジェットヘッド24の各ノズルに対応した吐出エネルギー発生素子(本例では、ピエゾ素子)を駆動するための駆動電圧信号を生成する手段である。駆動電圧信号の波形データは、予め情報記憶部224に格納されており、必要に応じて使用する波形データが出力される。駆動波形生成部から出力された信号(駆動波形)は、ヘッド駆動回路228に供給される。なお、駆動波形生成部から出力される信号はデジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
【0122】
ヘッド駆動回路228を介してインクジェットヘッド24の各吐出エネルギー発生素子に対して、共通の駆動電圧信号が印加され、各ノズルの吐出タイミングに応じて各エネルギー発生素子の個別電極に接続されたスイッチ素子(不図示)のオンオフを切り換えることで、対応するノズルからインクが吐出される。
【0123】
情報記憶部224は、制御装置202のCPUが実行するプログラム、及び制御に必要な各種データなどが格納されている。情報記憶部224は、作画モードに応じた解像度の設定情報、パス数(スキャンの繰り返し数)、副走査送り量の制御に必要な送り量情報、仮硬化光源32A、32B及び本硬化光源34A、34Bの制御情報などが格納されている。
【0124】
エンコーダ70は、図4で説明したように、主走査の移動機構に取り付けられており、キャリッジ30の移動に伴い、エンコーダ信号を出力する。このエンコーダ信号は、制御装置202に送られる。制御装置202は、エンコーダ70の出力信号から吐出トリガ信号を生成する手段として機能する。
【0125】
また、図示しないが、搬送駆動部214の駆動用モータにエンコーダ(不図示)が取り付けられている。このエンコーダは、搬送駆動部214の駆動用モータの回転量及び回転速度に応じたエンコーダ信号を出力する。この搬送系のエンコーダ信号は制御装置202に通知され、当該信号に基づいて記録媒体12(図1参照)の位置が把握される。
【0126】
センサ232は、キャリッジ30に取り付けられており、センサ232から得られたセンサ信号に基づいて記録媒体12の幅が把握される。
【0127】
なお、本実施形態における吐出制御部212は「打滴制御手段」に相当する。
【0128】
<記録媒体について>
「記録媒体」は、ヘッドから吐出された液滴が付着される媒体の総称であり、印字媒体、被記録媒体、被画像形成媒体、受像媒体、被吐出媒体、ブリントメディアなど様々な用語で呼ばれるものが含まれる。本発明の実施に際して、記録媒体の材質や形状等は、特に限定されず、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フィルム、布、不織布、配線パターン等が形成されるプリント基板、ゴムシート、その他材質や形状を問わず、様々な媒体に適用できる。
【0129】
<変形例1>
上記実施形態では、主走査方向についてインクジェットヘッド24の両側に仮硬化光源32A、32Bと本硬化光源34A、34Bを対称的に配置し(中心線に対して線対称に配置)、往復走査(双方向)で打滴及びUV露光を行う例を述べたが、インクジェットヘッド24の片側のみに仮硬化光源、本硬化光源を配置して、一方向走査時に描画を行う態様も可能である。
【0130】
また、本発明の実施に際しては、紫外線硬化型インクを利用することは必ずしも要求されない。すなわち、通常のインクを用い、仮硬化光源32A、32Bや本硬化光源34A、34Bの構成を省略する形態も可能である。
【0131】
<変形例2:副走査方向への送り手段について>
図1のインクジェット記録装置10では、記録媒体12を副走査方向に搬送する例を述べたが、ヘッドと記録媒体を副走査方向に相対的に移動させる手段は、この例に限定されない。例えば、記録媒体を停止させて、ヘッドを副走査方向に移動させる態様も可能であるし、ヘッドの移動と記録媒体の搬送とを組み合わせて、副走査送りを実現する態様も可能である。
【0132】
<主走査方向と副走査方向の関係について>
図1で説明したように、主走査方向と副走査方向は、互いに直交関係であることが制御上、好ましい。ただし、発明の実施に際して、必ずしも厳密に垂直に交わる関係であることは要求されない。2次元の描画(作画)を行うためには、主走査方向と副走査方向は互いに交差する関係であればよい(平行でなければよい)。
【0133】
<装置応用例>
上述の実施形態では、ドロップオンデマンド型のワイドフォーマットインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。ワイドフォーマット以外のインクジェット記録装置への適用も可能である。また、本発明は、グラフフィック印刷用途に限らず、電子回路基板の配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体(「インク」に相当)として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、微細構造物形成装置など、各種の画像パターンを形成し得る様々な画像形成装置に適用可能である。
【0134】
なお、本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有するものにより、多くの変形が可能である。
【0135】
<開示する発明の各種態様>
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書及び図面は以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0136】
(第1態様):液滴の吐出口となるノズル及び前記ノズルから液滴を吐出させる吐出エネルギー発生素子を有するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドから吐出された液滴を付着させる記録媒体に対して、前記インクジェットヘッドを往復移動させるヘッド走査手段と、前記ヘッド走査手段による前記インクジェトヘッドの位置を検知するリニアエンコーダと、前記リニアエンコーダの出力信号を基に前記インクジェットヘッドの吐出タイミングを0.1μs単位オーダーの時間分解能で規定する吐出トリガ信号を生成する吐出トリガ生成手段と、前記吐出トリガ信号のタイミングに従って前記インクジェットヘッドから液滴を吐出させる吐出駆動制御手段と、を備えたインクジェット記録装置。
【0137】
ヘッド走査手段によりインクジェットヘッドが移動すると、その移動に伴いリニアエンコーダからヘッドの位置に対応した信号が出力される。このエンコーダ出力をもとに吐出タイミングを規定する吐出トリガ(吐出クロック)信号が生成される。吐出トリガの時間分解能を従来の1μs単位オーダーから0.1μs単位オーダーとし、この0.1μs単位オーダーの時間分解能でトリガ周期が調整された吐出トリガ信号を生成してインクジェットヘッドに供給する。これより、吐出タイミングが安定に、描画品質を向上させることができる。時間分解能が0.1μs単位オーダーの吐出トリガ信号を用いることにより、1μs以内の精度で打滴タイミングを制御できる。
【0138】
特に、本発明によれば、吐出間隔がヘッドの共振周期の10倍に満たないような高周波吐出を行う場合であっても、吐出トリガ信号の時間軸変動が吐出に影響しないレベルに小さな変動量に抑制され、良好な着弾精度を達成することができる。
【0139】
(第2態様):第1態様に記載のインクジェット記録装置において、前記吐出トリガ信号生成手段は、隣接トリガの周期の変動量が0.1μs単位オーダー内に収められた前記吐出トリガ信号を生成する構成とすることができる。
【0140】
この態様によれば、インクジェットヘッドに与えられる吐出トリガ信号は、隣接する吐出トリガの周期変動量(隣接トリガの周期の差の絶対値)が0.1μs単位オーダー内に収められた高品質の(時間軸変動の小さい)信号となっている。
【0141】
(第3態様):第1態様又は第2態様に記載のインクジェット記録装置において、前記吐出トリガ生成手段は、隣接トリガの周期の変動量が0.2μs以内に収められた前記吐出トリガ信号を生成する構成とすることが好ましい。
【0142】
吐出トリガ信号の周期変動量が0.2μs以内に低減されるように吐出トリガ発生手段の回路を構成することが好ましい。かかる態様によれば、インクジェットヘッドの共振周期に対して吐出トリガの変動量(隣接トリガの周期差)が極めて小さいものとなり、吐出への影響を小さく抑えることができる。また、隣接トリガの周期変化が滑らか(緩やか)なものとなり、安定した吐出が可能である。
【0143】
(第4態様):第1態様から第3態様のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記吐出トリガ生成手段は、前記リニアエンコーダの出力信号のエッジタイミングに基づいて生成されるタイミング信号の周期をカウントする周期演算部と、前記周期演算部から得られる前記タイミング信号の周期を示すカウント値の移動平均を算出する移動平均化処理部と、を備える構成とすることができる。
【0144】
この態様に示すように、移動平均化処理を行うことにより、タイミング信号の周期変動を均して、時間軸変動が低減された吐出トリガ信号を生成することができる。
【0145】
(第5態様):第4態様に記載のインクジェット記録装置において、前記移動平均化処理部における移動平均を求める際の母数は、4の倍数とすることができる。
【0146】
例えば、リニアエンコーダからA相及びB相のエンコーダ信号が得られ、これら各相のエンコーダ出力の立ち上がり及び立ち下がりのエッジからタイミング信号を生成する場合、連続4パルスの単位で周期が変動する傾向があるため、このような変動傾向を考慮して、移動平均化のサンプル数(母数)を4の倍数とすることが好ましい。
【0147】
(第6態様):第4態様に記載のインクジェット記録装置において、前記移動平均化処理部における移動平均を求める際の母数は、2の倍数とすることができる。
【0148】
例えば、リニアエンコーダからA相又はB相のいずれか一方のエンコーダ信号が得られ、そのエンコーダ出力の立ち上がり及び立ち下がりのエッジからタイミング信号を生成する場合、連続2パルスの単位で周期が変動する傾向があるため、このような変動傾向を考慮して、移動平均化のサンプル数(母数)を2の倍数とすることが好ましい。
【0149】
(第7態様):第1態様から第3態様のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記吐出トリガ生成手段は、前記リニアエンコーダの出力信号のエッジタイミングに基づいて生成されるタイミング信号の周期をカウントする周期演算部と、前記周期演算部から得られる前記タイミング信号の周期を示すカウント値に対して、逐次演算型のデジタルローパスフィルタ(LPF)処理を行うローパスフィルタ処理部と、を備える構成とすることができる。
【0150】
吐出トリガの周期変動が0.1μs単位オーダー、好ましくは、0.2μs以内に収まるような吐出トリガ信号が出力される回路構成となるようにLPF等の回路が設計される。
【0151】
(第8態様):第1態様から第7態様のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記インクジェットヘッドによって吐出を行う打滴タイミングの周期は、前記インクジェットヘッドの共振周期の整数倍だけずれた長さに設定される構成とすることができる。
【0152】
エンコーダ出力に基づいて生成される信号の周期を監視(モニタ)し、ヘッド共振周期の整数倍の周期で吐出トリガを出力する構成がさらに好ましい。つまり、吐出トリガの各周期の長さの差分が共振周期の整数倍になる構成が好ましい。かかる態様によれば、吐出トリガは必ずヘッド共振周期に対して整数倍の周期を保つことができ、吐出トリガの時間軸変動による吐出への影響がほとんど無い、良好な打滴を実現できる。
【0153】
(第9態様):第8態様に記載のインクジェット記録装置において、前記インクジェットヘッドに対して供給する前記吐出トリガ信号の出力タイミングを前記インクジェットヘッドの共振周期の整数倍+α(ただし、αは0以上、前記共振周期未満の定数)に制限するトリガ周期設定部を備える構成とすることができる。
【0154】
打滴タイミングをヘッド共振周期の整数倍+αのタイミングに揃えることにより、打滴周期はヘッド共振周期の整数倍となる。これにより、吐出トリガは必ずヘッド共振周期に対して整数倍の周期を保つことができる。
【0155】
(第10態様):第8態様又は第9態様に記載のインクジェット記録装置において、記録解像度で特定される打滴候補点の理想的な格子点からの前記吐出トリガ信号の打滴タイミングのズレが前記格子点の間隔の±10%以内である構成とすることが好ましい。
【0156】
理想的な格子点からの着弾位置のズレが±10%以内であれば、実用上問題のない許容範囲とされる。この許容範囲内で打滴タイミングを調整することが可能である。
【0157】
(第11態様):液滴の吐出口となるノズル及び前記ノズルから液滴を吐出させる吐出エネルギー発生素子を有するインクジェットヘッドを記録媒体に対して往復移動させて前記記録媒体に前記液滴を付着させるインクジェット記録方法であって、前記往復移動による前記インクジェトヘッドの位置を検知するリニアエンコーダの出力信号を基に0.1μs単位オーダーの時間分解能で前記インクジェットヘッドの吐出タイミングを規定する吐出トリガ信号を生成する吐出トリガ生成工程と、前記吐出トリガ信号のタイミングに従って前記インクジェットヘッドから液滴を吐出させる吐出駆動制御工程と、を含むインクジェット記録方法。
【0158】
第11態様において、さらに第2態様又は第3態様と同様の特定事項を組み合わせることができる。
【0159】
(第12態様):第11態様に記載のインクジェット記録方法において、前記吐出トリガ生成工程は、前記リニアエンコーダの出力信号のエッジタイミングに基づいて生成されるタイミング信号の周期をカウントする周期演算工程と、前記周期演算工程から得られる前記タイミング信号の周期を示すカウント値の移動平均を算出する移動平均化処理工程と、を含むことができる。
【0160】
(第13態様):第11態様に記載のインクジェット記録方法において、前記吐出トリガ生成工程は、前記リニアエンコーダの出力信号のエッジタイミングに基づいて生成されるタイミング信号の周期をカウントする周期演算工程と、前記周期演算工程から得られる前記タイミング信号の周期を示すカウント値に対して、逐次演算型のデジタルローパスフィルタ(LPF)処理を行うローパスフィルタ処理工程と、を含むことができる。
【0161】
(第14態様):第11態様から第13態様のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法において、前記インクジェットヘッドに対して供給する前記吐出トリガ信号の周期を、前記インクジェットヘッドの共振周期の整数倍+α(ただし、αは0以上、前記共振周期未満の定数)に制限するトリガ周期設定工程を含むことができる。
【符号の説明】
【0162】
10…インクジェット記録装置、12…記録媒体、24…インクジェットヘッド、26…プラテン、28…ガイド機構、30…キャリッジ、36…インクカートリッジ、61,61C,61M,61Y,61K,61CL,61W…ノズル列、70…リニアエンコーダ、90…信号処理部、92…タイミング信号生成部、94…時間カウンタ、96…移動平均化処理部、110…信号処理部、114…PLL、116…トリガ周期設定部、202…制御装置、204…記録媒体搬送制御部、206…キャリッジ駆動制御部、212…吐出制御部、214…搬送駆動部、216…主走査駆動部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴の吐出口となるノズル及び前記ノズルから液滴を吐出させる吐出エネルギー発生素子を有するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドから吐出された液滴を付着させる記録媒体に対して、前記インクジェットヘッドを往復移動させるヘッド走査手段と、
前記ヘッド走査手段による前記インクジェトヘッドの位置を検知するリニアエンコーダと、
前記リニアエンコーダの出力信号を基に前記インクジェットヘッドの吐出タイミングを0.1μs単位オーダーの時間分解能で規定する吐出トリガ信号を生成する吐出トリガ生成手段と、
前記吐出トリガ信号のタイミングに従って前記インクジェットヘッドから液滴を吐出させる吐出制御手段と、
を備えたインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記吐出トリガ信号生成手段は、隣接トリガの周期の変動量が0.1μs単位オーダー内に収められた前記吐出トリガ信号を生成する請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記吐出トリガ生成手段は、隣接トリガの周期の変動量が0.2μs以内に収められた前記吐出トリガ信号を生成する請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記吐出トリガ生成手段は、前記リニアエンコーダの出力信号のエッジタイミングに基づいて生成されるタイミング信号の周期をカウントする周期演算部と、
前記周期演算部から得られる前記タイミング信号の周期を示すカウント値の移動平均を算出する移動平均化処理部と、を備える請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記移動平均化処理部における移動平均を求める際の母数は、4の倍数である請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記移動平均化処理部における移動平均を求める際の母数は、2の倍数である請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記吐出トリガ生成手段は、前記リニアエンコーダの出力信号のエッジタイミングに基づいて生成されるタイミング信号の周期をカウントする周期演算部と、
前記周期演算部から得られる前記タイミング信号の周期を示すカウント値に対して、逐次演算型のデジタルローパスフィルタ(LPF)処理を行うローパスフィルタ処理部と、
を備える請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記インクジェットヘッドによって吐出を行う打滴タイミングの周期は、前記インクジェットヘッドの共振周期の整数倍だけずれた長さに設定される請求項1から7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記インクジェットヘッドに対して供給する前記吐出トリガ信号の出力タイミングを、前記インクジェットヘッドの共振周期の整数倍+α(ただし、αは0以上、前記共振周期未満の定数)に制限するトリガ周期設定部を備える請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
記録解像度で特定される打滴候補点の理想的な格子点からの前記吐出トリガ信号の打滴タイミングのズレが前記格子点の間隔の±10%以内である請求項8又は9に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
液滴の吐出口となるノズル及び前記ノズルから液滴を吐出させる吐出エネルギー発生素子を有するインクジェットヘッドを記録媒体に対して往復移動させて前記記録媒体に前記液滴を付着させるインクジェット記録方法であって、
前記往復移動による前記インクジェトヘッドの位置を検知するリニアエンコーダの出力信号を基に0.1μs単位オーダーの時間分解能で前記インクジェットヘッドの吐出タイミングを規定する吐出トリガ信号を生成する吐出トリガ生成工程と、
前記吐出トリガ信号のタイミングに従って前記インクジェットヘッドから液滴を吐出させる吐出駆動制御工程と、
を含むインクジェット記録方法。
【請求項12】
前記吐出トリガ生成工程は、
前記リニアエンコーダの出力信号のエッジタイミングに基づいて生成されるタイミング信号の周期をカウントする周期演算工程と、
前記周期演算工程から得られる前記タイミング信号の周期を示すカウント値の移動平均を算出する移動平均化処理工程と、
を含む請求項11に記載のインクジェット記録方法。
【請求項13】
前記吐出トリガ生成工程は、
前記リニアエンコーダの出力信号のエッジタイミングに基づいて生成されるタイミング信号の周期をカウントする周期演算工程と、
前記周期演算工程から得られる前記タイミング信号の周期を示すカウント値に対して、逐次演算型のデジタルローパスフィルタ(LPF)処理を行うローパスフィルタ処理工程と、
を含む請求項11に記載のインクジェット記録方法。
【請求項14】
前記インクジェットヘッドに対して供給する前記吐出トリガ信号の周期を、前記インクジェットヘッドの共振周期の整数倍+α(ただし、αは0以上、前記共振周期未満の定数)に制限するトリガ周期設定工程を含む請求項11から13のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項1】
液滴の吐出口となるノズル及び前記ノズルから液滴を吐出させる吐出エネルギー発生素子を有するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドから吐出された液滴を付着させる記録媒体に対して、前記インクジェットヘッドを往復移動させるヘッド走査手段と、
前記ヘッド走査手段による前記インクジェトヘッドの位置を検知するリニアエンコーダと、
前記リニアエンコーダの出力信号を基に前記インクジェットヘッドの吐出タイミングを0.1μs単位オーダーの時間分解能で規定する吐出トリガ信号を生成する吐出トリガ生成手段と、
前記吐出トリガ信号のタイミングに従って前記インクジェットヘッドから液滴を吐出させる吐出制御手段と、
を備えたインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記吐出トリガ信号生成手段は、隣接トリガの周期の変動量が0.1μs単位オーダー内に収められた前記吐出トリガ信号を生成する請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記吐出トリガ生成手段は、隣接トリガの周期の変動量が0.2μs以内に収められた前記吐出トリガ信号を生成する請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記吐出トリガ生成手段は、前記リニアエンコーダの出力信号のエッジタイミングに基づいて生成されるタイミング信号の周期をカウントする周期演算部と、
前記周期演算部から得られる前記タイミング信号の周期を示すカウント値の移動平均を算出する移動平均化処理部と、を備える請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記移動平均化処理部における移動平均を求める際の母数は、4の倍数である請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記移動平均化処理部における移動平均を求める際の母数は、2の倍数である請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記吐出トリガ生成手段は、前記リニアエンコーダの出力信号のエッジタイミングに基づいて生成されるタイミング信号の周期をカウントする周期演算部と、
前記周期演算部から得られる前記タイミング信号の周期を示すカウント値に対して、逐次演算型のデジタルローパスフィルタ(LPF)処理を行うローパスフィルタ処理部と、
を備える請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記インクジェットヘッドによって吐出を行う打滴タイミングの周期は、前記インクジェットヘッドの共振周期の整数倍だけずれた長さに設定される請求項1から7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記インクジェットヘッドに対して供給する前記吐出トリガ信号の出力タイミングを、前記インクジェットヘッドの共振周期の整数倍+α(ただし、αは0以上、前記共振周期未満の定数)に制限するトリガ周期設定部を備える請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
記録解像度で特定される打滴候補点の理想的な格子点からの前記吐出トリガ信号の打滴タイミングのズレが前記格子点の間隔の±10%以内である請求項8又は9に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
液滴の吐出口となるノズル及び前記ノズルから液滴を吐出させる吐出エネルギー発生素子を有するインクジェットヘッドを記録媒体に対して往復移動させて前記記録媒体に前記液滴を付着させるインクジェット記録方法であって、
前記往復移動による前記インクジェトヘッドの位置を検知するリニアエンコーダの出力信号を基に0.1μs単位オーダーの時間分解能で前記インクジェットヘッドの吐出タイミングを規定する吐出トリガ信号を生成する吐出トリガ生成工程と、
前記吐出トリガ信号のタイミングに従って前記インクジェットヘッドから液滴を吐出させる吐出駆動制御工程と、
を含むインクジェット記録方法。
【請求項12】
前記吐出トリガ生成工程は、
前記リニアエンコーダの出力信号のエッジタイミングに基づいて生成されるタイミング信号の周期をカウントする周期演算工程と、
前記周期演算工程から得られる前記タイミング信号の周期を示すカウント値の移動平均を算出する移動平均化処理工程と、
を含む請求項11に記載のインクジェット記録方法。
【請求項13】
前記吐出トリガ生成工程は、
前記リニアエンコーダの出力信号のエッジタイミングに基づいて生成されるタイミング信号の周期をカウントする周期演算工程と、
前記周期演算工程から得られる前記タイミング信号の周期を示すカウント値に対して、逐次演算型のデジタルローパスフィルタ(LPF)処理を行うローパスフィルタ処理工程と、
を含む請求項11に記載のインクジェット記録方法。
【請求項14】
前記インクジェットヘッドに対して供給する前記吐出トリガ信号の周期を、前記インクジェットヘッドの共振周期の整数倍+α(ただし、αは0以上、前記共振周期未満の定数)に制限するトリガ周期設定工程を含む請求項11から13のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図8】
【図9】
【図10】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図8】
【図9】
【図10】
【図15】
【公開番号】特開2013−78859(P2013−78859A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218641(P2011−218641)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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