説明

インクジェット記録装置及び記録ヘッドの回復方法

【課題】記録ヘッドにおける吐出口の周囲に紙粉等のゴミの付着し易い環境にあるときに、その付着の度合いに従って記録ヘッドの回復動作を行うインクジェット記録装置及び記録ヘッドの回復方法を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置は、記録媒体を切断するカッタ手段と、記録ヘッドにおける吐出口の形成された吐出口形成部で吸引しながら払拭することで回復動作を行う回復手段を有している。そして、記録媒体におけるカッタ手段によって切断された切断部の記録位置を通過した通過回数が閾値以上となったときに、回復手段によって記録ヘッドの回復動作が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出する記録ヘッドに回復動作の行われるインクジェット記録装置及びインクジェット記録装置における記録ヘッドの回復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式の記録装置において、記録ヘッドにおける吐出口からのインク吐出を良好なまま維持し記録画像における品質の低下を少なく抑えるために、クリーニング手段による回復動作が行われることが知られている。このクリーニング手段による回復動作としては、一定条件の下で時間の計測が行われ、計測された時間に基づいてクリーニングが行われるものがある。計測される時間としては、例えば、記録ヘッドがキャッピングされない状態で記録の行われている記録の累積時間、前回の回復動作が行われてからの経過時間、記録終了後から連続してキャッピングの行われているキャッピング時間が測定されるものがある。これらの計測された時間から、テーブルを参照して回復動作のレベルが調節されるものがある。このように回復動作が実施されることで、過度に回復動作が行われることを抑え、ユーザに煩わしさを感じさせないように記録装置が構成されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−289229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなタイミングで回復動作が行われることで、記録ヘッドの吐出口からのインク中の水分蒸発によるインクの増粘等は抑えることができる。しかしながら、インクジェット記録装置が、記録ヘッドにおける吐出口の周囲に紙粉等のゴミの付着し易い環境にある場合、これに対応することができない。従って、上述のように、一定条件の下で時間が計測され、計測された時間に基づいて回復動作が行われるだけでは不十分な場合がある。
【0005】
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、記録ヘッドにおける吐出口の周囲に紙粉等のゴミの付着し易い環境にあるときに、その付着の度合いに従って記録ヘッドの回復動作を行うインクジェット記録装置及びその回復方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインクジェット記録装置は、吐出口からインクを吐出可能な記録ヘッドを用い、記録媒体にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置であって、前記記録ヘッドによって前記記録媒体に記録が可能な記録位置を通る搬送経路に沿って、供給部から供給される前記記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送経路中の切断作業位置に備えられて前記記録媒体を切断可能なカッタ手段と、前記記録ヘッドの前記吐出口からのインクの吐出状態を良好に維持するための回復動作を行う回復手段と、前記カッタ手段によって切断された前記記録媒体の切断部が前記記録位置を通過する通過回数が所定の閾値以上となったときに、前記回復手段によって前記回復動作を行わせる制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、記録ヘッドにおける吐出口の周囲への紙粉等のゴミの付着し易さに応じたタイミングで記録ヘッドの回復動作を行うことができる。従って、紙粉等のゴミの付着によってインク吐出が影響を受けることを抑えることができる。これにより、インクジェット記録装置によって記録された記録画像の品質を高く維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の内部の構成について模式的に示した断面図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置で、片面記録によって記録が行われる際に、シートの搬送経路について模式的に示した断面図である。
【図3】図1のインクジェット記録装置で、両面記録によって記録が行われる際に、シートの搬送経路について模式的に示した断面図である。
【図4】図1のインクジェット記録装置の記録ヘッドの回復動作を行うクリーニング機構であって、記録ヘッドがキャップに当接した状態のクリーニング機構について示した斜視図である。
【図5】図1のインクジェット記録装置の記録ヘッドの回復動作を行うクリーニング機構であって、記録ヘッドがキャップから離間し、記録ヘッドがキャップに取り付けられていない状態のクリーニング機構について示した斜視図である。
【図6】図4、5のクリーニング機構の、吸引ワイパユニットについて拡大して示した斜視図である。
【図7】図6の吸引ワイパユニットが記録ヘッドに当接した状態について示した側面図である。
【図8】図1のインクジェット記録装置の制御系に関する構成を説明するためのブロック図である。
【図9】図1のインクジェット記録装置が片面記録によって記録を行う際に、記録ヘッドの回復動作を行うタイミングの制御が行われる際の制御フローについて示したフローチャートである。
【図10】本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置が両面記録によって記録を行う際の裏面記録時について、記録ヘッドの回復動作を行うタイミングの制御が行われる際の制御フローについて示したフローチャートである。
【図11】本発明の第3実施形態に係るインクジェット記録装置において、記録ヘッドの回復動作を行うタイミングの制御が行われる際の制御フローについて示したフローチャートである。
【図12】図11のフローに基づいて記録ヘッドの回復動作を行うタイミングの制御が行われる際に用いられる、累積カット数と記録位置の通過回数との間の関係について示したテーブルである。
【図13】本発明の第4実施形態に係るインクジェット記録装置において、記録ヘッドの回復動作を行うタイミングの制御が行われる際の制御フローについて示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
(第1実施形態)
本実施形態のインクジェット記録装置は、記録媒体としてロール状に巻かれた連続のシートを使用し、片面記録及び両面記録の両方に対応した形式の高速ラインプリンタとしての適用例である。例えば、そのインクジェット記録装置は、プリントラボ等における大量の枚数のプリントの分野に適している。図1は、インクジェット記録装置100の内部構成を概略的に示す断面図である。インクジェット記録装置100は、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、記録部4、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、シート巻取部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出トレイ12、制御部13の各ユニットを備える。シートは、後述するシート搬送経路に沿ってローラ対やベルトからなる搬送手段によって搬送され、各ユニットで処理がなされる。本実施形態では、シートは、ロール紙が用いられている。ロール紙は、ロール位置に巻かれた状態から、一端がA1、B1方向に搬送される。
【0010】
シート供給部1は、ロール状に巻かれた連続のシートをロール紙として収納し、シートの一端を記録部4の方へ供給するユニットである。シート供給部1には、2つのロール紙R1、R2を収納することが可能なように構成されている。これらの2つのロール紙R1、R2から択一的にシートを矢印A1方向に引き出して、下流の記録位置にシートを供給することが可能な構成となっている。なお、収納可能なロール紙は2つであることに限定はされず、1つ、あるいは3つ以上を収納するものであってもよい。デカール部2は、シート供給部1から供給されたシートのカール(反り)を軽減させるためのユニットである。デカール部2では、後述する2つのシートの経路L1、L2のそれぞれにおいて、1つの駆動ローラr1に対し2つずつのピンチローラp1,p2およびp2,p3を用いてカールの逆向きの反りをシートに与えている。これにより、シートを湾曲させて、シートのカールを矯正させている。このようにシートがしごかれて矯正されることで、シートのカールが軽減される。デカール部2を通過したシートは矢印B1方向に搬送される。斜行矯正部3は、デカール部2を通過したシートの斜行(本来の進行方向に対する傾き)を矯正するユニットである。基準となる側のシート端部をガイド部材に押し付けることにより、シートの斜行が矯正される。
【0011】
記録部4は、矢印B1方向に搬送されるシートに対して記録ヘッド14によりインクを吐出することでシートの上に画像を形成するユニットである。記録部4は、シートを搬送する複数の搬送ローラ4aも備えている。記録部4は、吐出口からインクを吐出する記録ヘッド14を有しており、記録ヘッド14には、インクを吐出可能な吐出口が複数形成されており、複数の吐出口によって列の形成された吐出口列が形成されている。吐出口列は、シートの搬送方向と交差する方向(本例の場合は、直交する方向)に形成されている。本実施形態の記録ヘッド14は、使用が想定されるシートの最大幅をカバーする範囲で、インクジェット方式の吐出口列が形成されたライン型の記録ヘッドである。記録ヘッド14は、複数のチップが搬送方向に沿って平行に並べられて配置されている。本例ではC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、LC(ライトシアン)、LM(ライトマゼンタ)、G(グレー)、K(ブラック)の7色に対応した7つの記録ヘッドを有している。なお、色数及び記録ヘッドの数は7つには限定はされない。インクジェット方式は、電気熱変換発熱素子(ヒータ)を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。ヒータを用いた場合には、その発熱によりインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用して吐出口からインクを吐出させることができる。各色のインクは、インクタンクからそれぞれインクチューブを介して記録ヘッド14に供給される。
【0012】
検査部5は、記録部4でシートに記録された検査パターンや画像を光学的に読み取って、記録ヘッドの吐出口の状態、シート搬送状態、画像位置等を検査するユニットである。カッタ部(カッタ手段)6は、記録後の記録媒体としてのシートを所定長さにカットするように、シートを切断可能なカッタ6aを備えたユニットである。カッタ部6は、シートの搬送経路中の切断作業位置6cに備えられている。カッタ部6は、シートを次工程に送り出すための複数の搬送ローラ6bも備えている。情報記録部7は、カットされたシートの裏面にプリントのシリアル番号や日付などのプリント情報を記録するユニットである。乾燥部8は、記録部4で記録されカットされたシートを加熱して、付与されたインクを短時間に乾燥させるユニットである。乾燥部8は、シートを次工程に送り出すために、搬送ローラ8bに掛け渡された搬送ベルト8aを備えている。また、本実施形態では、カッタ部6は、記録位置4bよりも矢印B1方向の下流側に位置するロール紙の部分が切断できるように、記録位置4bよりも矢印B1方向の下流側に配置されている。
【0013】
シート巻取部9は、両面記録を行う際に表面記録が終了したシートを一時的に巻き取るユニットである。シート巻取部(反転部)9はシートを巻き取るために回転する巻取ドラム20を備えている。両面記録を行う際には、シートの表面にカットシートの所定枚数分に相当する画像が連続的に記録(表面記録)された後、そのカットシートの所定枚数分に相当する画像の記録領域の後端がカッタ部6によってカットされる。そのカットシートの所定枚数分の長さのシートは、カットシートの一枚一枚にまではカットされていない連続のシート(以下、「連続シート」ともいう)である。この連続シートは、搬送経路L3に沿って矢印C方向に搬送されて巻取ドラム20に一時的に巻き取られる。巻取ドラム20への巻き取りが終わったら、巻取ドラム20が逆回転し、連続シートは搬送経路L2に沿って矢印D方向に搬送されてデカール部2に供給され、その後再び記録部4に送られる。このときの連続シートは表裏反転しているので、記録部4で裏面に記録を行うことができる。両面記録のより具体的な動作については後述する。このように、インクジェット記録装置100は、裏面への記録が可能なように連続シートの表面と裏面とを入れ替えるためのシート巻取部9を有している。
【0014】
排出搬送部10は、記録済みのカットシートを搬送経路L4に沿って矢印E方向からソータ部11まで搬送するためのユニットである。ソータ部11は必要に応じて記録済みカットシートをグループ毎に排出トレイ12の異なるトレイに振り分けて排出するユニットである。制御部13は、記録装置全体の各部の制御を司るユニットである。制御部13は、CPU、メモリ、各種I/Oインターフェースを備えたコントローラ15及び電源を有する。記録装置の動作は、コントローラ15又はコントローラ15にI/Oインターフェースを介して接続されるホストコンピュータ等の外部機器16からの指令に基づいて制御される。
【0015】
次に、記録時のインクジェット記録装置における動作について説明する。本実施形態のインクジェット記録装置100は、ロール紙における片面のみに記録を行う片面記録と、ロール紙における表面と裏面の両方に記録を行う両面記録と、によって記録を行うことが可能である。記録は、片面記録と両面記録とではシートの経路及びインクジェット記録装置の動作が異なるので、それぞれの記録動作について説明する。
【0016】
図2は片面記録時のインクジェット記録装置における動作を説明するための図である。シート供給部1から供給されたシートが記録されて排出トレイ12に排出されるまでのシートの搬送経路が示されている。シートは、シート供給部1から搬送経路L1を通して供給され、デカール部2、斜行矯正部3でそれぞれ処理されてから、矢印B1方向に搬送され、記録部4において表面の記録がなされる。記録されたシートは、検査部5を経て、カッタ部6において予め設定されている所定の単位長さのカットシート毎に一枚一枚カットされる。カットされたカットシートは、必要に応じて情報記録部7でシートの裏面に記録情報が記録される。そして、記録済みのカットシートは一枚ずつ乾燥部8に搬送され乾燥が行われる。その後、カットシートは、排出搬送部10を経由し、搬送経路L4に沿って矢印E方向に搬送されてソータ部11のトレイ12に順次排出され積載されていく。
【0017】
図3は両面記録時の動作を説明するための図である。図3には、両面記録によって記録が行われる際の、シートの搬送経路が示されている。シートは、シート供給部1から供給されてから表面に、カットシートの所定枚数分に相当する画像が連続的に記録される。カッタ部6は、シートの表面にカットシートの所定枚数分に相当する画像が連続的に記録された後、そのカットシートの所定枚数分に相当する画像の記録領域の後端をカットする。つまり、カッタ部6は、表面への記録が行われた時点では、一枚一枚のカットシートになるまでのカット動作は行わず、カットシートの所定枚数分の長さの連続シートにカットする。その連続シートは一旦、搬送経路L3に沿って搬送されて巻取ドラム20によって巻き取られる。
【0018】
連続シートは、その先端から巻取ドラム20に巻き取られた後、その後端から搬送経路L2に沿ってデカール部2に戻される。これにより、表面に画像が記録された連続シートは、その表裏面が逆にされてから、デカール部2、斜行矯正部3にて処理された後、記録部4において裏面の記録がなされる。このように、連続シートに対しては、先の表面記録シーケンスに次いで、裏面記録シーケンスが実行される。このとき、裏面への記録が行われる際には、表面への記録が行われた連続シートが再び供給されるようにするために、デカール部2からカッタ部6までのシートの搬送経路にはシートの無い状態にする必要がある。そのため、連続シートがカットされて、検査部5、記録部4、斜行矯正部3、およびデカール部2に取り残されていたシートは、搬送経路L1を通して矢印B2方向および矢印A2方向からシート供給部1に巻き戻される(戻し動作)。
【0019】
このように、本実施形態のインクジェット記録装置100は、搬送手段によってシートをシート供給部1から記録位置4bを通して切断作業位置6cに供給する供給動作を行うことが可能である。また、本実施形態のインクジェット記録装置100は、切断作業位置6cとシート供給部1との間に位置するシートの部分をシート供給部1に戻す戻し動作を行うことが可能である。
【0020】
乾燥部8で表面のインクの乾燥が行われた後の連続シートは、排出搬送部10の側の搬送経路L4ではなく、シート巻取部9の側の搬送経路L3に供給される。シート巻取部9の側に供給された連続シートは、その先端側から、搬送経路L3に沿って、順方向(図面では逆時計回り方向)に回転する巻取ドラム20に巻き取られていく。そして、この連続シートは、その後端までの全てがシート巻取部9に巻き取られる。
【0021】
その後、シート巻取部9の巻取ドラム20を連続シートの巻き取り時とは逆方向(図面では時計回り方向)に回転させる。巻き取られた連続シートの後端部(送り出し時には先端部になる)が搬送経路L2に沿ってデカール部2に送り込まれる。デカール部2では、表面記録時とは逆向きのカール矯正がなされる。これは、巻取ドラム20に巻かれた連続シートは、シート供給部1でのロールとは表裏反転して巻かれ、逆向きのカールとなっているためである。その後は、斜行矯正部3を経て、記録部4で連続シートの裏面に記録が行なわれる。裏面が記録された連続シートは、検査部5を経て、カッタ部6に搬送される。カッタ部6で予め設定されている所定の単位長さ毎に、最終的な記録物の大きさまで一枚一枚にカットされる。ここでカットされるカットシートは両面が記録されているので、情報記録部7での記録はなされない。カットシートは一枚ずつ乾燥部8に搬送され、排出搬送部10を経由して、ソータ部11のトレイ12に順次排出され積載されていく。
【0022】
本実施形態では、カッタ部6は、記録ヘッドによって記録媒体に記録の行われる記録位置よりも矢印B1方向側(下流側)に配置されている。前述したように、両面記録動作において、連続シートがカットされて、検査部5、記録部4、斜行矯正部3、およびデカール部2に取り残されたシートは、シート供給部1に巻き戻される。同様に、一連の片面記録動作の終了後、カットシートがカットされて、検査部5、記録部4、斜行矯正部3、およびデカール部2に取り残されたシートは、シート供給部1に巻き戻すことができる。このような巻き戻し動作の際には、カッタ部によって切断されたロール紙の先端の切断部が、記録位置4bを矢印B2方向に通過してロール位置まで戻される。このようにロール紙の先端の切断部がロール位置S1まで戻されるので、次の片面記録および両面記録を行う際には、ロール紙の先端に近い位置からの領域を記録のために有効に使用することができる。そのため、ロール紙の先端に近い位置について、記録が行われないままその部分が無駄に消費されずに済み、ロール紙の記録に用いることのできる部分を増加させることができる。従って、ロール紙をより効率的に利用することができるので、ロール紙の消費量を低く抑えることができ、インクジェット記録装置の運転コストを低く抑えることができる。また、ロール紙における無駄に排出される部分を少なくすることができるので、環境に優しいインクジェット記録装置を提供することができる。仮に、ロール紙の先端をロール位置まで巻き戻さない場合には、記録位置4bよりも矢印B1方向先端側に位置するロール紙の先端寄りの部分については、記録位置4bにおいて記録が行われないまま下流側に搬送されることになる。従って、そのロール紙の先端よりの部分は、記録に使用されずに記録装置の外部に排出され、その分、ロール紙が無駄に消費されることになる。
【0023】
なお、本実施形態では、カッタ部6によって切断されたロール紙の先端の切断部は、記録位置4bを通過してロール位置S1まで戻されることとされているが、本発明はこれに限定されない。カッタ部6によって切断されたロール紙の先端の切断部は、記録ヘッドからのインク吐出の行われる記録位置4bよりも矢印B2方向側(上流側)の位置まで搬送されるのであれば、ロール位置S1まで戻されなくても良い。シートがカッタ部6によって切断され、査部5、記録部4、斜行矯正部3、およびデカール部2に取り残されたシートの切断部が、ロール位置S1と記録位置4bとの間の位置に戻されることとされても良い。
【0024】
図4、図5には、クリーニング機構21の詳細構成を示す斜視図である。図4はクリーニング機構21の上に記録ヘッド14がある状態(回復動作時)が示されている。また、図5には、クリーニング機構21の上に記録ヘッドがない状態が示されている。クリーニング機構21には、キャップ51、位置決め部材71が設けられている。記録ヘッド14の回復動作が行われる際には、記録ヘッド14がクリーニング機構21に対応する位置に移動して、記録ヘッド14の吐出口からのインクの吐出状態を良好に維持するための回復動作が行われる。
【0025】
クリーニング機構21は、記録ヘッド14の吐出口面に付着した付着物を除去する吸引ワイパユニット(回復手段、吸引ユニット)46と、吸引ワイパユニット46を払拭方向に沿って移動させる移動機構、これらを一体に支持するフレーム47を有している。吸引ワイパユニット46は、後述する吸引口が2つの移動可能なユニットとなっている。吸引ワイパユニット46は、記録ヘッドにおける吐出口の形成された吐出口形成部に紙粉等のゴミがあった場合に、これを吸引しながら払拭することで回復動作を行っている。移動機構は、駆動源の駆動によって、2本のシャフト45によって案内支持された吸引ワイパユニット46を吐出口列の延びた方向に移動させる。駆動源は、駆動モータ41と減速ギア42、43を有し、ドライブシャフト37を回転させる。ドライブシャフト37の回転は、ベルト44とプーリによって伝達されて吸引ワイパユニット46を移動させる。吸引ワイパユニット46は、後述するように吸引口によって、記録ヘッド14の吐出口面に付着している付着物を吸引すると共に記録ヘッド14のワイピングを行うことで付着物の除去を行う。
【0026】
図5において、キャップ51はキャップホルダ52に保持されている。キャップホルダ52は、記録ヘッド14の吐出口面に対して垂直方向に、バネによって付勢され、バネに抗して移動可能となっている。フレーム47がキャップ位置にある状態で、記録ヘッド14が吐出口面に対して垂直方向に移動して、キャップ51と密着及び離間を行う。キャップ51による記録ヘッドの吐出口面への密着によって吐出口面をキャッピングすることで、吐出口の乾燥が抑制される。
【0027】
位置決め部材71は回復動作時及びキャッピング時において、ヘッドホルダに設けられた記録ヘッド側の位置決め部材と当接することで記録ヘッド14とクリーニング機構21との間の位置関係を決める構成となっている。図6は吸引ワイパユニット46の構成を示す斜視図である。2つの吐出口列に対応するように、2つの吸引口22が吸引ワイパユニット46に設けられている。
【0028】
2つの吸引口22は、吸引口22の配置された面内において、吸引ワイパユニット46の走査する方向に直交する方向に沿って、記録ヘッド14における2つの吐出口列の間隔とほぼ同じ間隔を有している。また、2つの吸引口22は、吸引ワイパユニット46の走査する方向に沿って、記録ヘッド14における隣り合う2つのチップ同士の間のずれ量(所定距離)とほぼ同じずれ量を有している。吸引口22は吸引ホルダ23に保持され、吸引ホルダ23は記録ヘッド14の吐出口面に対して垂直な方向に弾性体であるバネ25で付勢されている。すなわち、吸引口22の形成されている吸引部26は、バネに抗して吐出口面に直交する方向に沿って移動可能となっている。つまり、吸引ホルダ23は、吐出口面と記録媒体の間隔方向への直進変位が可能な変位機構によって支持されている。この変位機構は、移動中の吸引部26が、記録ヘッド14におけるチップの封止部を乗り越える際の動きを吸収するためのものである。2つの吸引口22には、吸引ホルダ23を介してチューブ24が接続されており、チューブ24には吸引ポンプ等の負圧発生手段が接続されている。負圧発生手段を駆動させると、吸引口22内部にインクやゴミを吸い取るための負圧が与えられる。
【0029】
図7は、クリーニング機構による回復動作を説明するための側面図である。図7は、吸引口22によって記録ヘッド14の回復動作を行っている状態を示す側面図である。回復動作が行われる際には、吸引部26の先端部と記録ヘッド14の吐出口面とが接触するように、記録ヘッド14の位置が設定される。吸引ワイパユニット46は、吐出口が形成された記録ヘッドの吐出口形成面をワイピングするワイピング手段としても機能する。シートの切断部における記録位置4bの通過回数が閾値以上となったときに、吸引ワイパユニット46が吐出口形成面のワイピングを行う。また、回復動作が行われる際には、吸引ワイパユニット46は、負圧発生手段により吸引口22内に負圧を発生させながら、吐出口列の延びた方向に沿って移動させる。これにより、負圧によって吐出口の周囲に付着したインクやゴミを吸引口22から吸引しつつ、これらを記録ヘッド14から除去することができる。このように、回復動作は、付着物を負圧によって吸引可能な吸引口22が形成され、記録ヘッド14における吐出口列の延びる方向に沿って吸引口22を走査させることが可能な吸引ワイパユニット46によって行われている。このように、吸引ワイパユニット46は、吐出口が形成された記録ヘッドの吐出口形成面に付着した付着物を吸引する吸引手段としても機能する。吸引ワイパユニット46が吐出口列の延びた方向に移動する途中で記録ヘッド14の吐出口面よりも突出した封止部に接触した際には、吸引部26が吐出口面に直交する方向に沿って押される。上述したように、吸引ワイパユニット46において吸引ホルダ23は吐出口面に直交する方向に沿って変位可能なので、吸引部26が押されても、その動きを吸引ホルダ23の変位によって逃がすことができる。
【0030】
なお、記録ヘッドに付着した紙粉等のゴミを除去するための回復動作としては、本実施形態では、吸引口22からの吸引動作が行われると共に、吸引ワイパユニット46を記録ヘッド14に当接させ吸引ワイパユニット46によるワイピングが行われている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、上記のもの以外の回復動作が行われても良い。例えば、回復動作として、吸引動作とワイピングの両方が行われずに、いずれか一方のみが行われることとしても良い。また、シートのカールによってシートが記録ヘッドに当接し、これによってシートからの紙粉等が記録ヘッドに付着し、記録ヘッド14にゴミが付着する可能性もある。このように、シートのカールの結果、記録ヘッド14に付着する紙粉等のゴミを除去するために、予備吐出等の回復動作が行われることとしても良い。予備吐出が行われる際には、回復動作の行われるタイミングで吐出口から記録に寄与しないインク滴が吐出される。これにより、吐出口内に入り込んだ紙粉等のゴミが吐出口から除去される。予備吐出は、記録ヘッド14の吐出口からキャップに対してインク吐出の行われる形式であっても良く、またプラテンや搬送ベルト等、シートから離れた位置に対してインク吐出の行われる形式であっても良い。また、記録ヘッド14の吐出口をキャップで覆った状態で吸引回復手段によって吐出口からインクを強制的に吸引排出する吸引回復が行われることとしても良い。また、回復動作として、加圧回復手段によって記録ヘッド内のインクを加圧し、インクを吐出口から排出する加圧回復が用いられても良い。また、その他の回復動作が行われても良い。
【0031】
次に、上述したインクジェット記録装置に用いられる制御系のブロック図を図8に示す。ホストコンピュータ60から記録すべき文字や画像のデータがインクジェット記録装置100の受信バッファ61に入力される。また、正しくデータが転送されているかなどを確認するデータや、インクジェット記録装置100の動作状態を知らせるデータがインクジェット記録装置100からホストコンピュータ60に出力される。受信バッファ61のデータは制御部(CPU:Central Processing Unit)62の管理のもとで、メモリ部63に転送されRAM(ランダムアクセスメモリ)に一時的に記憶される。
【0032】
キャリッジモータドライバ64はCPU62からの指令により、キャリッジモータ65を駆動させてラインヘッドキャリッジ72を制御する。また、CPU62からの指令により、キャップ51、吸引ワイパユニット46等の機構部(メカ部)が駆動されて、その動作が制御される。搬送モータドライバ66は、CPU62からの指令によって搬送モータ67を駆動させ、記録媒体を搬送する搬送ローラ73を制御する。カッタモータドライバ68は、CPU62からの指令により、カッタモータ69を駆動させ、記録媒体を所定長さでカットするためのカッタ74を制御する。インク循環モータドライバ70は、CPU62からの指令によって、循環ポンプや開閉弁を駆動するインク循環モータ71を制御する。CPU62からの指令により、記録ヘッド14を駆動制御し、画像の記録及び予備吐出の実施が制御される。
【0033】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置における記録ヘッドの回復動作の実施タイミングについて説明する。本実施形態のインクジェット記録装置100は、記録終了後に、ロール紙の先端(最も下流側の端部)をカッタ部6からロール位置S1まで巻き戻すための巻き戻し手段を有している。この巻戻し手段によって、インクジェット記録装置100では、一旦記録装置が起動されてから記録装置の電源を落とすまでの記録工程毎に、記録終了後にロール紙の切断部がロール位置S1まで巻き戻される巻戻し動作が行われる。巻戻し動作が行われると、ロール紙の先端の切断部が、記録ヘッドからのインク吐出によって記録の行われる記録位置4bを通過することになる。ロール紙の切断部の周囲は、紙粉等のゴミが付着している可能性が他の部分に比べて高い。そのため、このような切断部が記録位置4bを通過する際には、切断部の周囲に付着した紙粉等のゴミがそこで舞って、記録ヘッド14に付着するおそれがある。それらの紙粉等のゴミが記録ヘッド14における吐出口の周囲に付着した場合には、ゴミが吐出口を塞いでしまい、インクの良好な吐出が維持できなくなるおそれがある。また、これらのゴミが吐出口を塞ぐまでに至らなくても、ゴミが吐出口の一部に位置することでインク滴の飛翔方向に影響を与えてしまい、インク吐出における着弾精度を低下させてしまうおそれがある。そのため、本実施形態のインクジェット記録装置100では、巻戻し動作によってロール紙の切断部が記録位置を通過する回数に応じて回復動作が実施される。
【0034】
本実施形態における、片面記録によって記録が行われる際の所定のタイミングで行われる記録ヘッドの回復動作について説明する。図9は、記録ヘッド14への回復動作の実施されるタイミングが制御される際に用いられるフローチャートである。
【0035】
まず、オペレーターからの記録命令を受けて、記録動作が開始される。記録動作が開始されると、S11でキャリッジモータドライバ64が、ラインヘッドキャリッジを駆動させ、記録ヘッド14を移動させる。また、それと共に、キャップ及びワイパ等の機構部(メカ部)も移動する。このとき、記録ヘッド14は、キャップによって記録ヘッドにおける吐出口形成面のキャッピングの行われるキャップポジションから、インクを吐出して記録を行う記録ポジションへと移動させる。
【0036】
記録ヘッド14が記録ポジションに移動すると、S12で、記録ヘッド14による記録媒体への画像の記録が開始される。その際、搬送モータドライバ66は、シートを搬送する搬送ローラ66を制御して、シートが連続的に搬送されると共に、CPU62からの指令によって記録ヘッド14の駆動が制御される。
【0037】
このとき、記録ヘッド14は連続的に搬送されるシート上に記録する記録画像と記録画像の間の位置に、記録に関与しないインク滴を吐出口から吐出して、記録ヘッド内における吐出口周辺の増粘したインクを排出する画像間予備吐出を実施する。このような予備吐出は、記録ヘッド内における吐出口周辺のインクが増粘しないように、一定時間ごとに行われることが望ましい。画像間予備吐出は、所定の記録領域への記録が終わってから次の記録領域への記録が開始されるまでの時間に行われる。ところが、比較的大きな記録画像の記録を行う場合、その画像の記録に時間が長くかかってしまい、画像間予備吐出同士の間隔が長くなる場合がある。そのため、画像間予備吐出同士の間隔が一定時間を超えてしまい、記録ヘッド内の吐出口周辺のインクが増粘する可能性がある。そのため、所定領域への記録画像の記録同士の間に行われる画像間予備吐出だけでは予備吐出の頻度が不足する場合には、画像間予備吐出に加え、記録画像上に吐出回復処理を実施する紙面予備吐出を行うこととしても良い。また、これらの予備吐出が必要とされない場合には、画像間予備吐出及び紙面予備吐出のいずれもが行われないこととしても良い。
【0038】
ロール紙に画像の記録が行われると、シートに記録された検査パターンや画像が光学的に読み取られる。その後に、S13でカッタモータドライバ68は、CPU62からの指令に応じてカッタモータ69を駆動させる。これによってカッタの刃を移動させて、記録後のロール紙を所定長さに切断する(カット工程)。切断されたカットシートはそのまま搬送され、カットシートの乾燥工程が行われた後に、ソータ部のトレイに順次搬送される。S14で、搬送モータドライバ66は、カットシートを搬送する搬送モータ67を制御して、連続的なカットシートの搬送が終了し、画像の記録を終了する。
【0039】
一連の画像の記録工程が終了すると、S15で、ロール位置からカット位置まで延在しているロール紙は、カットの後に、元々のシート供給部1へ巻き戻される(巻戻し動作)。そして、S16で巻戻し動作の行われた回数がカウントされ、記録ヘッドの回復動作を行うかどうかの判定が行われる。このように、本実施形態では、巻戻し動作の行われる回数が、ロール紙の先端における切断部の、記録位置を通過する回数の目安としてカウントされている。ここで、巻戻し動作を行うことで記録媒体の先端の切断部が記録位置を通過した回数が、予め設定した閾値以上であるときには、S17で記録ヘッドの回復動作を実施するように記録装置が制御される。本実施形態では、巻戻し動作の行われる回数に関する閾値が、10回に設定されている。回復動作では、記録ヘッドの吐出口へと付着した紙粉を取り除くために、吸引ワイパによって吐出口の形成された部分で吸引が行われながらワイピングが行われる。
【0040】
このように、巻戻し動作の行われる回数が予め定められた閾値以上となったときに、記録ヘッド14の回復動作が行われる(回復工程)。本実施形態では、カッタ部6によって切断されたロール紙の先端の切断部が記録位置を通過した通過回数の代わりとして、巻き戻し動作の行われる回数が用いられている。このときCPU62が、記録ヘッド14の回復動作が行われるように吸引ワイパユニット46を制御する制御手段として機能する。巻き戻し動作の行われる回数のカウント値は、それが閾値以上となる毎に零にリセットされる。すなわち、通過回数のカウント値は、それが閾値以上となる毎に零にリセットされる。
【0041】
なお、本実施形態では、巻戻し動作が行われた回数が閾値以上となったときに、回復動作が行われることとされている。巻戻し動作が行われる際には、シートのB1方向の先端部は、シート供給部1に戻されるときに記録位置4bを通過するだけでなく、その後再び記録を行うために、シートがB1方向に供給される際にも記録位置4bを通過する。そのため、1回の巻戻し動作が行われると、実際にはシートの切断部が2回記録位置4bを通過することになる。そのため、1回の巻戻し動作が行われるごとに2回の通過回数がカウントされ、シートのB1方向における先端部が記録位置4bを通過する実際の記録位置4bの通過回数と閾値とが比較されることとされても良い。このように、シートの切断部が、実際に記録位置4bを通過した回数がカウントされ、そのカウント数に基づいて回復動作が行われることとしても良い。このように、シートの切断部における記録位置4bの通過回数は、シートのB1方向への供給動作時にシートの切断部が記録位置4bを通過する回数をも含むようにカウントされても良い。
【0042】
また、巻戻し動作時には、シートがカットされて検査部5、記録部4、斜行矯正部3、およびデカール部2に取り残されたシートのB1方向の先端部は、シートの切断が行われた後、あまり時間が経過しないうちに記録位置4bを通過することになる。そのため、このときには、紙粉が記録ヘッド14に比較的多く付着する可能性がある。従って、この巻戻し動作時の直後におけるシートの記録位置4bの通過が問題になる場合がある。従って、このときの巻戻し動作直後におけるシートの記録位置4bの通過が特に問題になるようであれば、巻戻し動作の回数のみがカウントされ、そのカウント値に基づいて回復動作が行われても良い。
【0043】
S18で、キャリッジモータドライバ64は、ラインヘッドキャリッジ、キャップ及びワイパ等の機構部(メカ部)65を駆動させて、記録あるいは回復動作の終了した記録ヘッド14を、記録ポジションからキャップポジションへと移動させる。これにより、一連の記録動作が終了する。
【0044】
このように、本実施形態ではロール紙の先端の切断部が記録位置を通過した回数に着目し、その回数が閾値以上であるときに回復動作が行われるように回復動作の行われるタイミングが制御される。これにより、記録ヘッド14における吐出口の周辺に紙粉が付着し、これによって吐出口に目詰まり等が生じることを抑えることができる。従って、吐出口の周囲に紙粉等のゴミが付着することに起因した記録画像における記録品位の低下を抑えることができ、記録画像の品質を高く維持することができる。また、記録ヘッド14に紙粉等のゴミが付着することで生じる記録画像の品質の低下を少なく抑えることができるので、その後の記録画像への光学的な検知によって記録画像の品質が一定のレベルに到達していないと判定されることを少なく抑えることができる。これにより、記録画像の品質が一定のレベルに到達していないと判定されることで記録物が廃棄されることが少なくなり、シートの廃棄量を少なく抑えることができ、結果的に紙ゴミ量を少なく抑えることができる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、上記第1実施形態と同様に構成される部分については図中同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。本実施形態は、インクジェット記録装置100が両面記録を行う点で第1実施形態と異なる。以下、インクジェット記録装置100が両面記録を行う際に実施される記録ヘッドの回復動作のタイミングについて説明する。
【0046】
図10は、両面記録が行われる場合に、裏面への記録を行うときの記録ヘッド14の回復動作の実施タイミングについて示したフローチャートである。表面記録時は第1実施形態と同様のため説明を省略し、図10では表面記録が終了して裏面記録を始めるところから説明している。
【0047】
両面記録を行う際には、まず表面の記録が行われる。表面の記録の際の記録ヘッド14の回復動作については、第1実施形態で既に述べている。ただし、ロール紙がロール位置に配置されたロールR1、R2に連なったままでは裏面の記録を行うことができない。そのため、表面の記録の際には、所定枚数のカットシートに相当する記録画像領域への表面への記録を終えたところで、ロール紙の切断が行われる。その後、連続シートは、裏面記録のために一旦搬送経路L3に沿ってC方向に搬送されてシート巻取部9に巻き取られる。そこで連続シートの表裏の状態及び先端と後端とが入れ替えられて連続シートが反転し、再び記録ヘッド14に対向した記録位置4bにシートが搬送される。
【0048】
その後、引き続きS21で裏面記録が開始される。このとき、キャリッジモータドライバ64がラインヘッドキャリッジを駆動させると共に、CPU62によってキャップ及びワイパ等の機構部(メカ部)が駆動されて、記録ヘッド14をキャップポジションから記録ポジションへと移動させる。S22で裏面記録を開始するために、表面記録が行われた後の連続シートを記録ヘッドの直前まで給紙する。S23で、CPU62からの指令により記録ヘッド14が駆動制御されて画像の記録が行われる。連続シートは既に表面記録がなされているものであり、連続シートの先端部は表面記録が行われた最後に切断されている。そのため、連続シートの搬送方向の前側における先端部も記録媒体の切断部となり、裏面記録の際の給紙回数が、記録位置を通過した回数としてカウントされる。また、このとき、裏面記録を行うために反転した連続シートを記録位置4bまで供給する必要があることから、シートが切断された後に記録位置4bの側に残された方のシートがシート供給部1まで巻き戻される。このときにも、シートの切断部が記録位置4bを通過することになる。
【0049】
裏面への画像の記録が行われると、シートに記録された検査パターンや画像を光学的に読み取った後、S24で記録後の連続シートが一枚一枚のカットシートごとにカットされる。このように、裏面記録が行われると、所定枚数のカットシートに相当する領域で切断された連続シートが、一枚一枚のカットシートの記録領域ごとに切断される。
【0050】
このようなシートの巻戻し動作の際や、裏面記録の際に連続シートが再び記録位置4bに供給される際には、シートの切断部には、カットの際に発生した細かな紙粉が付着することがある。
【0051】
切断されたカットシートは、シート巻取部9の方には搬送されずに、乾燥を行った後、搬送経路Eに沿ってソータ部のトレイに順次搬送される。S25で、搬送モータドライバ66は、シートを搬送する搬送モータ67を制御してシートの搬送を終了し、記録装置が画像の記録を終了する。
【0052】
一定の記録画像の記録が終了し、そのときの記録工程が終了すると、S26で連続シートがカットされて、検査部5、記録部4、斜行矯正部3、およびデカール部2に取り残されたシートは、シート供給部1に巻き戻される。この巻戻し動作中にシートの端部が記録ヘッド14の直下の記録位置を通過するため、シートに付着していた紙粉が舞い上がり記録ヘッド14の吐出口の周囲に付着することがある。そこで、S27で巻戻し動作と裏面給紙を行った回数をそれぞれカウントして合計する。
【0053】
このように、本実施形態では、シートの切断部が記録位置4bを通過した数の代わりとして、巻戻し動作と裏面給紙を行った回数とが合計された数が用いられている。巻戻し動作と裏面給紙を行った回数とが合計された値が、予め設定されていた閾値と比較されることで、記録ヘッドの回復動作が行われるかどうかが判定される。すなわち、通過回数として、シート巻取部9によるシートの記録位置4bへの供給時に、シートの切断部が記録位置4bを通過する回数も含まれる。これにより、ロール紙の切断部が記録位置を通過した回数を基に回復動作が実施されるように、インクジェット記録装置100が制御される。巻戻し動作と裏面給紙を行った回数をそれぞれカウントして合計した値が閾値以上である場合には、S28で記録ヘッドの回復動作が実施される。本実施形態では、巻戻し動作と裏面給紙を行った回数をそれぞれカウントして合計した値の閾値は、10回に設定されている。回復動作では、記録ヘッド14の吐出口の周囲に付着した紙粉を取り除くために、吸引ワイパユニット46によって吸引が行われながらワイピングが実施される。そして、S29で、キャリッジモータドライバ64は、ラインヘッドキャリッジを駆動させ、記録終了あるいは回復動作が終了した記録ヘッド14を記録ポジションからキャップポジションへと移動させ、一連の記録動作を終了する。
【0054】
このように、両面記録によって記録が行われる際には、通過回数は、巻戻し動作の行われた回数と、裏面への記録が可能なようにロール紙の表面と裏面とを入れ替えるためのシート巻取部9への給紙回数とを合計した回数を含んでいる。従って、両面記録が行われる際には、巻戻し動作の行われた回数と、裏面記録のために給紙された回数とが合計されたカウント数を閾値と比較し、カウント数が閾値以上であるときに回復動作が行われるように、制御が行われている。
【0055】
なお、両面記録が行われる際に、最後の一枚が記録される際には、シートの搬送方向における前側と後側の両方が切断部になっている。そのため、この場合には、一回の裏面記録の給紙で、シートの切断部が記録位置を2回通過することになる。従って、巻戻しの回数に、裏面記録のために給紙された回数を単純に合計するだけでは、実際にシートの切断部が記録位置を通過した回数の目安としてはずれが生じる場合がある。そのため、巻戻しの回数に裏面記録のために給紙された回数を合計した回数と、実際にシートの切断部が記録位置を通過した回数との間でずれが生じた場合には、実際にシートの切断部が記録位置を通過した回数の方を優先させる方が好ましい。そのため、裏面記録の最後の一枚への記録の際には、実際の裏面記録のための給紙回数よりも多くカウントすることとしても良い。また、その他の理由により、巻戻しの回数に裏面記録のために給紙された回数を合計した値と、実際にシートの切断部が記録位置を通過した回数との間でずれが生じる場合には、その都度、裏面記録のために給紙された回数に計算上の補正が行われても良い。シートにおける切断部の記録位置4bを通過する回数が、正確にカウントされれば良い。
【0056】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、上記第1実施形態及び第2実施形態と同様に構成される部分については図中同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0057】
第3実施形態は、回復動作の行われるタイミングについての判定が行われる際に、シートの切断部における記録位置の通過回数の閾値がシートのカットの行われた累積のカット数によって変化する点で第1、第2実施形態と異なる。本実施形態の記録ヘッドの回復動作の実施タイミングについて説明する。図11は、第3実施形態における記録ヘッドの回復動作の実施タイミングを判定する際に使用されるフローチャートである。まず、オペレーターからの記録命令を受けて記録が開始される。そこから、S31で、キャリッジモータドライバ64は、ラインヘッドキャリッジを駆動させると共に、キャップ及びワイパ等の機構部(メカ部)が駆動されて、記録ヘッド14がキャップポジションから記録ポジションへと移動する。S32で、搬送モータドライバ66は、シートを搬送する搬送ローラ66を制御して、連続シートが搬送され、CPU62からの指令は記録ヘッド14を駆動制御して画像の記録を始める。記録媒体への画像の記録を終えると、シートに記録された検査パターンや画像を光学的に読み取った後、S33でカッタモータドライバ68はCPU62からの指令によってカッタモータ69を駆動させる。これによって、カッタを移動させることにより、記録後のシートが所定長さにカットされる。このとき、カッタの切断部に、カットの際に発生した紙粉等が付着していることがある。そして、カッタによってシートをカットする工程で、カッタの切断部に付着して蓄積した紙粉が、カッタの切断部からシートに移動してそこで付着する可能性がある。S34で、搬送モータドライバ66は、シートを搬送する搬送モータ67を制御して、シートの搬送を終了し、画像の記録を終了する。
【0058】
画像の記録が終了するとS35で、カットの工程の後に、まだ記録されていないロール紙のシートの端部がロール紙のロール位置まで戻るように、巻戻し動作が行われる。この巻戻し動作中に、シートが記録ヘッドからのインク吐出による記録位置を通過するので、シートに付着していた紙粉が記録位置で舞い上がり、記録ヘッドの吐出口の周囲へと付着することがある。紙粉が吐出口の周囲に付着すると、紙粉によってインク吐出が影響を受ける可能性がある。これによって、記録品位が低下してしまう可能性がある。
【0059】
また、このときの巻戻し動作による記録ヘッドへの紙粉の付着量は、インクジェット記録装置が使用され始めてからのカットが行われた累積のカット数によって異なる場合がある。一般に、カッタが、多くの回数のロール紙の切断を行うと、そのカッタの刃は鈍くなる傾向にある。そのため、多くの回数のロール紙の切断が行われた段階では、インクジェット記録装置が使用され始めたときに比べてカッタの刃が鈍くなっているので、シートを切断した際に生じる紙粉の量が増加する可能性がある。従って、カッタに付着する紙粉の量が増加し、これに伴いロール紙に付着する紙粉の量が増加し、ロール紙の端部が記録位置を通過する際に記録ヘッドに付着する紙粉の量が増加する可能性がある。
【0060】
また、記録ヘッドの回復動作が行われた際に、記録ヘッドに付着した紙粉等のゴミは全てが除去されるわけではない可能性がある。従って、インクジェット記録装置が使用され始めてから時間が経過すると共に、記録ヘッドの回復動作で除去できなかった紙粉等のゴミが蓄積し、記録ヘッドに付着した紙粉等のゴミの量が増えている可能性がある。
【0061】
このような理由から、同じ数の分だけロール紙の端部が記録位置を通過したとしても、インクジェット記録装置が使用され始めてからのロール紙のカットが行われた累積のカット数によっては記録ヘッドに付着する紙粉等のゴミの量が異なる場合がある。従って、その対策として、インクジェット記録装置が使用され始めてからのロール紙のカットが行われた累積のカット数に応じて、回復動作の行われる頻度を変更することが考えられる。一般に、インクジェット記録装置が使用され始めてからのロール紙のカットが行われた累積のカット数の多い程、記録ヘッド14に付着する紙粉等のゴミの量が多い。従って、本実施形態では、インクジェット記録装置が使用され始めてからのロール紙のカットが行われた累積の切断回数が多いとき程、累積のカット数が少ない場合に比べて通過回数についての閾値の値を小さくしている。すなわち、通過回数についての閾値は、通過回数の累積数が多くなる程、小さく設定されている。これにより、記録ヘッド14において、ロール紙のカットが行われた累積の切断回数が多いとき程、回復動作の行われる頻度を多くしている。
【0062】
図11のフローチャートにおけるS36では、カットが行われた累積回数とロール紙の切断部が記録位置を通過した回数とがカウントされる。そして、ロール紙の端部の記録位置を通過した数のカウント値が、予め設定されているテーブルからの閾値と比較される。ロール紙の端部における記録位置を通過した数のカウント値が、閾値の回数を超えるごとにS37で記録ヘッドの回復動作が行われる。本実施形態では、図12に示されるテーブルが用いられて、記録ヘッド14の回復動作が行われる。図12のテーブルにおける左側の欄は、インクジェット記録装置における使用され始めてからのカットが行われた累積回数である。また、図12のテーブルにおける右側の欄は、カットが行われた累積回数に応じて定められたロール紙の端部における記録位置を通過した数のカウント値についての閾値である。ロール紙の端部における記録位置を通過した数のカウント値は、回復動作が行われるとそこでカウント値がリセットされて0になる。インクジェット記録装置における使用され始めてからのカットが行われた累積回数の値は、回復動作が行われてもリセットされない。すなわち、図12に示されるように、インクジェット記録装置が使用され始めてからカットの行われた累積回数が0〜10000回の範囲では、ロール紙の端部における記録位置の通過が100回行われるごとに、記録ヘッドの回復動作が行われる。以後、カットの行われた累積回数が10000〜50000、50000〜200000回と多くなるにつれて、回復動作の行われる際のロール紙の端部における記録位置の通過回数が50回、30回ごとにと、回復動作の頻度が多くなる。そして、カットの行われた累積回数が200000回以上の範囲では、ロール紙の端部における記録位置の通過が10回行われるごとに、記録ヘッドの回復動作が行われる。S38で、キャリッジモータドライバ64がラインヘッドキャリッジを駆動させると共に、キャップ及びワイパ等の機構部(メカ部)が駆動されて、記録終了あるいは回復動作が終了した記録ヘッド14を記録ポジションからキャップポジションへと移動する。これにより、一連の記録動作が終了する。
【0063】
このように、インクジェット記録装置における使用され始めてからのカットが行われた累積回数が多い場合には、それに応じて回復動作の行われる頻度を多くしている。これにより、記録ヘッド14の吐出口の周囲に紙粉等のゴミが付着することがより確実に抑えられ、記録画像の品質の低下をより確実に抑えることができる。
【0064】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。なお、上記第1実施形態ないし第3実施形態と同様に構成される部分については図中同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。第4実施形態では、インク吐出によるドット数がカウントされ、吐出されたドット数に基づいた回復動作も合わせて行われる点で、第1実施形態ないし第3実施形態と異なる。
【0065】
図13を用いて本実施形態の記録ヘッドの回復動作の実施タイミングについて説明する。図13は、記録ヘッド14における回復動作の実施タイミングを制御する際に用いられるフローチャートである。本実施形態では、記録ヘッド14に付着した紙粉等のゴミを除去するための記録ヘッド14の回復動作を行うと共に、記録ヘッド14に付着したインクミスト等の固化したインクを除去するための回復動作が行われる。また、それぞれの回復動作の用途に合わせ、それぞれの回復動作に応じた吸引の際の負圧及び吸引ワイパユニット46の走査速度によって記録ヘッド14の回復動作が行われる。
【0066】
まず、オペレーターからの記録命令を受けて記録が開始される。そして、S41で、キャリッジモータドライバ64がラインヘッドキャリッジを駆動させると共に、キャップ及びワイパ等の機構部(メカ部)が駆動されて、記録ヘッド14をキャップポジションから記録ポジションへと移動させる。S42で、搬送モータドライバ66は、シートを搬送する搬送ローラ66を制御して、連続シートが搬送され、CPU62からの指令は記録ヘッド14を駆動制御して画像の記録を始める。
【0067】
記録の際には、記録ヘッド14からのインクの吐出に伴い、記録に用いられる主インク滴以外の、浮遊する微細なインクミストが発生する場合がある。このインクミストが、記録ヘッドにおける吐出口の周囲に付着し、これによってインク吐出性能が低下することがある。従って、本実施形態のインクジェット記録装置では、紙粉等のゴミを除去するためのものとは別に、記録ヘッド14に付着したインクミストを除去するための回復動作が行われる。記録ヘッド14に付着したインクミストを除去するための回復動作では、吐出口からのインク吐出回数をカウントし、そのカウントされた値が所定の発数(吐出回数用閾値)を越えたときに回復動作を行うように、インクジェット記録装置100が制御される。
【0068】
インク吐出の数がカウントされると共にシートへの画像の記録が行われると、シートに記録された検査パターンや画像が光学的に読み取られる。その後、S43で、カッタモータドライバ68がCPU62からの指令によってカッタモータ69を駆動させ、シートが所定長さにカットされる。S44で、搬送モータドライバ66は、シートを搬送する搬送モータ67を制御して、シートの搬送を終了し、CPU62からの指令によって記録ヘッド14を駆動制御させて画像の記録を終了する。
【0069】
画像の記録が終了するとS45で、ロール位置から延びている側の連続シートが、カットの後に、元々のシート供給部へ巻き戻される巻戻し動作が行われる。そして、S46で巻戻し動作の行われた回数がカウントされ、記録ヘッド14の回復動作を行うかどうかの判定が行われる。ここで、巻戻し動作を行うことで記録媒体の切断部が記録位置を通過した回数が、あらかじめ設定されている閾値以上となったときには、S47で記録ヘッド14の回復動作を実施するように記録装置が制御される。回復動作では、記録ヘッド14の吐出口へと付着した紙粉を取り除くために、吸引ワイパユニット46によって吐出口周辺で吸引を行いながらワイピングが行われる。
【0070】
記録ヘッド14の吐出口の周囲に付着した紙粉を取り除くための回復動作では、比較的強い負圧による吸引が行われて、回復動作が行われる。このとき、吸引ワイパユニット46は、0.5inch/secと比較的遅い速度によって、吐出口列の延びる方向に走査される。このように、比較的強い負圧によって吸引が行われ、比較的遅い走査速度によって行われる回復動作を回復動作Bとする。回復動作Bは、吸引の際の負圧が高く、走査速度が遅いため、吸引量が比較的多くなる。
【0071】
S46で巻戻し動作を行うことで記録媒体の切断部が記録位置を通過した回数が予め設定された閾値を下回っている場合には、S49で記録の際にインク吐出の行われたドットカウント値と、ドットカウント値についての閾値とが比較される。ドットカウント値が閾値以上である場合には、S50で記録ヘッド14に付着したインクミストを除去するための回復動作Aが行われる。
【0072】
このように、本実施形態では、インクの吐出回数がカウントされ、吐出回数が予め定められた吐出回数についての閾値以上となったときに、記録ヘッド14の回復動作Aが行われるように、ワイパユニット46が制御する。このとき、CPU62が、ワイパユニット46を制御する制御手段として機能する。回復動作Aでは、吸引ワイパユニット46の吐出口列の延びる方向への走査速度が2.0inch/secと、比較的速い速度で走査が行われる。すなわち、回復動作Bが行われる際の吸引ワイパユニット46の走査速度は、回復動作Aが行われる際の吸引ワイパユニット46の走査速度よりも遅く設定されている。すなわち、記録媒体の切断部が記録位置を通過した回数が閾値以上となったときのワイピング速度は、吐出回数が吐出回数用閾値以上となったときに吸引ワイパユニット46が吐出口形成面をワイピングするワイピング速度よりも遅く設定されている。また、回復動作Aでは、吸引の際の負圧が比較的小さく、吸引量が回復動作Bに比べて少ないので、付着物の除去能力は比較的弱い。すなわち、回復動作Bが行われる際の吸引口22からの負圧は、回復動作Aが行われる際の前記吸引口からの負圧よりも大きく設定されている。このように、シートの切断部が記録位置4bを通過する通過回数が閾値以上となったときの回復動作における吸引圧は、吐出回数が吐出回数用閾値以上となったときの回復動作における吸引圧よりも大きい。回復動作Aが行われる際の吸引ワイパによる負圧は、回復動作Bが行われる際の吸引ワイパユニット46による負圧に比べて小さく、回復動作Aの際の走査速度は回復動作Bの際の走査速度よりも大きい。従って、回復動作Bの行われているときの方が回復動作Aよりもより多くの付着物を吸引することができ、回復動作Bの機能が回復動作Aの機能も兼ねることができる。すなわち、回復動作Bを実施した場合には、回復動作Aの分もまかなうことができる。これにより、回復動作Aが行われたときにはもちろん、回復動作Bが行われたときにも、S48でインク吐出によるドットカウント値がリセットされる。
【0073】
その後、S51で、キャリッジモータドライバ64は、ラインヘッドキャリッジ、キャップ及びワイパ等の機構部(メカ部)65を駆動させて、記録を終了させる。それから、回復動作が終了した記録ヘッド14を記録ポジションからキャップポジションへと移動させて記録動作を終了させる。このように、本実施形態では、記録ヘッド14に付着した紙粉等のゴミを除去するための記録ヘッド14の回復動作を行うと共に、記録ヘッド14に付着したインクミストを除去するための回復動作が合わせて行われている。従って、記録ヘッド14における吐出口の周囲に紙粉が付着することによるインク吐出への影響を少なく抑えることができるだけでなく、吐出口の周囲に付着するインクミストによるインク吐出への影響を少なく抑えることができる。これにより、記録画像の品質が低下することをより確実に抑えることができる。
【0074】
(その他の実施形態)
なお、この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わずに用いられる。また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0075】
また、「記録媒体」(「シート」という場合もある)とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0076】
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきものである。記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0077】
またさらに、「ノズル」とは、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路及びインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
【符号の説明】
【0078】
6 カッタ部
14 記録ヘッド
46 吸引ワイパユニット
100 インクジェット記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口からインクを吐出可能な記録ヘッドを用い、記録媒体にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドによって前記記録媒体に記録が可能な記録位置を通る搬送経路に沿って、供給部から供給される前記記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送経路中の切断作業位置に備えられて前記記録媒体を切断可能なカッタ手段と、
前記記録ヘッドの前記吐出口からのインクの吐出状態を良好に維持するための回復動作を行う回復手段と、
前記カッタ手段によって切断された前記記録媒体の切断部が前記記録位置を通過する通過回数が所定の閾値以上となったときに、前記回復手段によって前記回復動作を行わせる制御手段と、
を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記搬送手段は、前記記録媒体を前記供給部から前記記録位置を通して前記切断作業位置に供給する供給動作と、前記切断作業位置と前記供給部との間に位置する前記記録媒体の部分を前記供給部に戻す戻し動作と、が可能であり、
前記通過回数は、前記戻し動作時に前記記録媒体の前記切断部が前記記録位置を通過する回数を含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記通過回数は、前記供給動作時に前記記録媒体の前記切断部が前記記録位置を通過する回数も含むことを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記搬送経路に、前記カッタ手段によって切断された後の前記記録媒体の表裏面を逆にして前記記録位置に供給する反転部を備え、
前記通過回数は、前記反転部による前記記録媒体の供給時に、前記記録媒体の前記切断部が前記記録位置を通過する回数を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記通過回数は、前記閾値以上となる毎にリセットされることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記閾値は、前記通過回数の累積数が多くなる程、小さく設定されることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記閾値は、前記カッタ手段による前記記録媒体の切断回数が多くなる程、小さく設定されることを特徴とする請求項5または6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記回復手段は、前記吐出口が形成された前記記録ヘッドの吐出口形成面をワイピングするワイピング手段、前記吐出口形成面に付着した付着物を吸引する吸引手段、前記吐出口から画像の記録に寄与しないインクを吐出させる予備吐出手段、前記吐出口から前記記録ヘッド内のインクを吸引排出する吸引回復手段、および前記記録ヘッド内のインクを加圧して前記吐出口から排出する加圧回復手段の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記記録ヘッドから吐出されるインクの吐出回数が予め定められた吐出回数用閾値以上となったときに、前記回復手段によって前記回復動作を行わせることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記回復手段は、前記吐出口が形成された前記記録ヘッドの吐出口形成面をワイピングするワイピング手段であり、
前記通過回数が前記閾値以上となったときに前記ワイピング手段が前記吐出口形成面をワイピングするワイピング速度は、前記吐出回数が吐出回数用閾値以上となったときに前記ワイピング手段が前記吐出口形成面をワイピングするワイピング速度よりも遅いことを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記回復手段は、前記吐出口が形成された前記記録ヘッドの吐出口形成面に付着した付着物を吸引する吸引手段であり、
前記通過回数が前記閾値以上となったときに前記吸引手段が前記付着物を吸引する吸引圧は、前記吐出回数が吐出回数用閾値以上となったときに前記吸引手段が前記付着物を吸引する吸引圧よりも大きいことを特徴とする請求項9または10のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記回復手段は、前記吐出口が形成された前記記録ヘッドの吐出口形成面をワイピングするワイピング手段と、前記吐出口が形成された前記記録ヘッドの吐出口形成面に付着した付着物を吸引する吸引手段と、を備えた吸引ワイパユニットを構成することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
インクを吐出可能な記録ヘッドを用い、記録媒体にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置における、記録ヘッドの回復方法であって、
前記記録ヘッドによって前記記録媒体に記録が可能な記録位置を通る搬送経路に沿って、供給部から供給される前記記録媒体を搬送する工程と、
前記搬送経路中の切断作業位置に備えられたカッタ手段によって前記記録媒体を切断する工程と、
前記カッタ手段によって切断された前記記録媒体の切断部が前記記録位置を通過する通過回数が所定の閾値以上となったときに、前記記録ヘッドの回復動作を行う工程と、
を含むことを特徴とする記録ヘッドの回復方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−166426(P2012−166426A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28479(P2011−28479)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】