インクジェット記録装置及び記録方法
【課題】記録媒体における非画像部の質感を維持しつつ、転写性を向上させ、高品質な画像を実現する。
【解決手段】中間転写体10上の全面に第1離型剤を付与する第1離型剤付与手段30と、中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して第2離型剤を打滴する第2離型剤打滴手段32と、中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴するインク打滴手段34と、中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する転写手段36と、中間転写体上をクリーニングするクリーニング手段38と、中間転写体を加熱する加熱手段44と、クリーニング時の温度(Tc)>第1離型剤のガラス転移温度(Tg1)>転写時の温度(Tt)>第2離型剤のガラス転移温度(Tg2)を満たすように加熱手段を制御する制御手段とを備えたインクジェット記録装置。
【解決手段】中間転写体10上の全面に第1離型剤を付与する第1離型剤付与手段30と、中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して第2離型剤を打滴する第2離型剤打滴手段32と、中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴するインク打滴手段34と、中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する転写手段36と、中間転写体上をクリーニングするクリーニング手段38と、中間転写体を加熱する加熱手段44と、クリーニング時の温度(Tc)>第1離型剤のガラス転移温度(Tg1)>転写時の温度(Tt)>第2離型剤のガラス転移温度(Tg2)を満たすように加熱手段を制御する制御手段とを備えたインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置及び記録方法に係り、特に、インクジェット方式の記録ヘッドからインク液滴を吐出することによって中間転写体上に画像を形成し、中間転写体上に形成された画像を記録媒体に転写する転写方式のインクジェット記録装置及び記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にインクジェット記録装置は、ランニングコストが安く、記録動作時の騒音が低く、多種多様な記録媒体に対して記録可能であり、家庭用から産業用まで幅広く利用されている。例えば、インクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)の各ノズルからインク滴をそれぞれ記録媒体に対して吐出する方式(直接記録方式)が知られている。
【0003】
しかしながら、直接記録方式では、インクジェットヘッドから記録媒体に液体(インク)が直接吐出されるため、浸透性を有する記録媒体(例えば、普通紙や再生紙など)が用いられる場合にはカールやコックリングが発生したり、非浸透性を有する記録媒体(例えば、プラスチックや金属など)が用いられる場合には記録媒体上でインクの滲みや混色が発生したりして、記録媒体の種類によって十分な画像品質が得られないという問題がある。
【0004】
このような問題を解消するために、インクジェットヘッドから中間転写体に対してインク吐出することによって中間転写体上に画像を形成し、中間転写体に形成された画像を記録媒体に転写する転写方式が提案されている。転写方式によれば、中間転写体上に画像を形成後、中間転写体上の溶媒成分(液体)を除去してから記録媒体に転写することが可能であり、記録媒体の種類に左右されることなく高品質な画像を得ることができる。
【0005】
例えば、特許文献1には、基材上に転写層(離型層)を設けた中間転写媒体に、インクを打滴して画像を形成し、画像を転写層ごと被記録媒体(紙)へ転写するインクジェット記録装置及び記録方法が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、基材上にインクと、粘着性を有する化合物を含む液(粘着性インク)を別々に打滴し、表面を加熱した後に、被記録媒体(紙)へ転写するインクジェット記録方法が記載されている。
【特許文献1】特開2002−240411号公報
【特許文献2】特開2003−1924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、転写層を全面に設けた場合には、紙上の画像が無い領域にも転写層が転写されてしまうことにより、紙の質感(光沢、手触り感)が変化してしまう。
【0008】
また、特許文献2に記載された発明では、粘着性インクのドットが吐出しなかった場合、若しくは、インクドットと粘着性インクドットの吐出位置が大きくずれてしまった場合には、基材上に直接インクのみがついてしまった後に加熱されることになり、紙への転写性不良が生じたり、その後のクリーニングにおいても基材からインクが取り除けないことがあったりする。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、記録媒体における非画像部の質感を維持しつつ、転写性を向上させ、高品質な画像を実現することのできるインクジェット記録装置及び記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、中間転写体上の全面に所定の温度で軟化する第1離型剤を付与する第1離型剤付与手段と、前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して、前記第1離型剤に比べて低い温度で軟化する第2離型剤を打滴する第2離型剤打滴手段と、前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴するインク打滴手段と、前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する転写手段と、前記中間転写体上をクリーニングするクリーニング手段と、前記中間転写体を加熱する加熱手段と、前記第1離型剤のガラス転移温度をTg1、前記第2離型剤のガラス転移温度をTg2、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式 Tc>Tg1>Tt>Tg2を満たすように前記加熱手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、中間転写体上の全面に第1離型剤からなる第1離型層を形成後、画像データに応じて決定されるドット形成位置に対して第2離型剤、インク液滴を順次打滴して、更に、転写時には第2離型剤のみが流動状態となり、クリーニング時には第1離型剤も流動状態となるように制御が行われる。このため、第1離型剤が記録媒体に転写されることがなく、記録媒体における非画像部の質感を維持することができるとともに、転写性を向上させることができる。また、中間転写体上の転写後残存物を容易に除去することができ、クリーニング不良を防止することができる。これにより、高品質な画像を実現することが可能となる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、中間転写体上の全面に電気粘性流体である第1離型剤を付与する第1離型剤付与手段と、前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して所定の温度で軟化する第2離型剤を打滴する第2離型剤打滴手段と、前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴するインク打滴手段と、前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する転写手段と、前記中間転写体上をクリーニングするクリーニング手段と、前記中間転写体を加熱する加熱手段と、前記中間転写体に電界を印加する電界印加手段と、前記第2離型剤のガラス転移温度をTg、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式Tt>Tg、且つ、Tc>Tgを満たすように前記加熱手段を制御する第1制御手段と、前記第1離型剤の付与後、前記第2離型剤が打滴される前から転写が完了するまで前記中間転写体に対して電界を印加し続け、転写完了後、クリーニングが開始されるまでに前記電界の印加を解除するように前記電界印加手段を制御する第2制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
更に、請求項3に記載の発明は、中間転写体上の全面に所定の温度で軟化する第1離型剤を付与する第1離型剤付与手段と、前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して電気粘性流体である第2離型剤を打滴する第2離型剤打滴手段と、前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴するインク打滴手段と、前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する転写手段と、前記中間転写体上をクリーニングするクリーニング手段と、前記中間転写体を加熱する加熱手段と、前記中間転写体に電界を印加する電界印加手段と、前記第1離型剤のガラス転移温度をTg、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式 Tc>Tg>Ttを満たすように前記加熱手段を制御する第1制御手段と、前記第2離型剤の打滴後、前記インク液滴が打滴される前から転写が開始されるまで前記中間転写体に対して電界を印加し続け、転写が開始される時には前記電界の印加が解除されるように前記電界印加手段を制御する第2制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2又は請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様、第1離型剤が記録媒体に転写されることがなく、記録媒体における非画像部の質感を維持することができるとともに、転写性を向上させることができる。また、中間転写体上の転写後残存物を容易に除去することができ、転写不良を防止することができる。これにより、高品質な画像を実現することが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の一実施形態に係り、前記第2離型剤打滴手段は、前記ドット形成位置と同一位置だけでなく、前記ドット形成位置に隣接する位置にも前記第2離型剤を打滴することを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、インク液滴の着弾安定性が向上し、画像品質が更に向上する。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明の一実施形態に係り、前記第2離型剤打滴手段及び前記インク打滴手段は同一解像度をもつインクジェットヘッドでそれぞれ構成されることを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、画像データに応じて決定されるドット形成位置に対応して第2離型剤及びインク液滴を正確に打滴することができ、転写性が向上する。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明の一実施形態に係り、前記中間転写体に対する前記第2離型剤の接触角をθ1、前記第1離型剤によって形成される離型層に対する前記第2離型剤の接触角をθ2とするとき、次式 θ1>θ2の関係を満足することを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、中間転写体の表面エネルギーが低い場合でも、第1離型剤によって形成される離型層上に第2離型剤を安定的に付与することが可能であり、中間転写体の材料選択の幅が広がる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明の一実施形態に係り、前記第2離型剤は、前記インク液滴の色材を凝集させる成分、又は前記インク液滴の着弾後に該インク液滴を増粘させる成分を含有することを特徴とする。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、画像データに応じて決定されるドット形成位置に対して打滴されたインク液滴は中間転写体上で第2離型剤と反応して色材が凝集する。よって、隣接するドット形成位置に対して打滴されるインク液滴同士の着弾干渉が防止される。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明の一実施形態に係り、前記第1離型剤及び前記第2離型剤の転写温度における貯蔵弾性率の差は102[Pa]以上であることを特徴とする。
【0024】
また、前記目的を達成するために、請求項9〜11に記載の発明は方法発明を提供する。
【0025】
即ち、請求項9に記載の発明は、中間転写体上の全面に所定の温度で軟化する第1離型剤を付与する工程と、前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して、前記第1離型剤に比べて低い温度で軟化する第2離型剤を打滴する工程と、前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴する工程と、前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する工程と、前記中間転写体上をクリーニングする工程と、前記第1離型剤のガラス転移温度をTg1、前記第2離型剤のガラス転移温度をTg2、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式 Tc>Tg1>Tt>Tg2を満たすように制御する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0026】
また、請求項10に記載の発明は、中間転写体上の全面に電気粘性流体である第1離型剤を付与する工程と、前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して所定の温度で軟化する第2離型剤を打滴する工程と、前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴する工程と、前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する工程と、前記中間転写体上をクリーニングする工程と、前記第2離型剤のガラス転移温度をTg、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式 Tt>Tg、且つ、 Tc>Tgを満たすように制御する工程と、前記第1離型剤の付与後、前記第2離型剤が打滴される前から転写が完了するまで前記中間転写体に対して電界を印加し続け、転写完了後、クリーニングが開始されるまでに前記電界の印加を解除するように制御する工程と、を含むことを特徴とする。
【0027】
また、請求項11に記載の発明は、中間転写体上の全面に所定の温度で軟化する第1離型剤を付与する工程と、前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して電気粘性流体である第2離型剤を打滴する工程と、前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴する工程と、前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する工程と、前記中間転写体上をクリーニングする工程と、前記第1離型剤のガラス転移温度をTg、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式 Tc>Tg>Ttを満たすように制御する工程と、前記第2離型剤の打滴後、前記インク液滴が打滴される前から転写が開始される直前にわたって前記中間転写体に対して電界を印加し続けるとともに、転写完了後、遅くともクリーニング時には前記電界の印加を解除するように制御する工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、第1離型剤が記録媒体に転写されることがなく、記録媒体における非画像部の質感を維持することができるとともに、転写性を向上させることができる。また、中間転写体上の転写後残存物を容易に除去することができ、クリーニング不良を防止することができる。これにより、高品質な画像を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0030】
まず、本発明に係るインクジェット記録方法について説明し、次いで、そのインクジェット記録方法が適用された、本発明に係るインクジェット記録装置の構成例(第1〜第3の実施形態)について説明する。
【0031】
〔インクジェット記録方法〕
図1及び図2は、本発明に係るインクジェット記録方法の概要を示した説明図である。
【0032】
本発明に係るインクジェット記録方法は、図1に示すように、まず、中間転写体10上に第1離型剤αを全面塗布することにより、中間転写体10の表面全体に第1離型層12を形成する(図1(a))。次に、画像データ(記録画像)に応じて決定されるドット形成位置(インク液滴が打滴される位置)に対応して、インクジェットヘッド(不図示)の各ノズルから第2離型剤βを打滴することにより、第1離型層12上に第2離型層14を形成する(図1(b))。更に、画像データに応じて決定されるドット形成位置に対して、インクジェットヘッド(不図示)の各ノズルからインク液滴を打滴することにより、第2離型層14上にインクドット16を形成する(図1(c))。
【0033】
このように中間転写体10上に第1離型層12及び第2離型層14を介してインクドット16からなるインク画像を形成した後、中間転写体10上に形成されたインク画像を記録媒体18に対して転写する(図1(d))。更に、その後、中間転写体10上の転写残存物をクリーナー20(後述するクリーニングローラ38A(図4参照)に相当)に付着させて除去する(図1(e))。以後、上記の各工程が順次繰り返される。
【0034】
本発明で用いられる第1離型剤α、第2離型剤β、及びインクの一例を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
「第1離型剤α」及び「第2離型剤β」については、例えば、電子写真における現像と同様の方法で樹脂そのものを中間転写体10に付与しても良いし、又は、樹脂を溶媒に溶解若しくは分散させた液体を塗布しても良い。即ち、本発明における「第1離型剤α」及び「第2離型剤β」は、固体状態のものに限定されず、液体状態のものも含む広い概念で用いられる。
【0037】
また、第1離型層12及び第2離型層14に関しては、各離型剤α、βが液体状態である場合には、溶媒を蒸発させた後に残った残存物(例えば、樹脂を溶媒に溶解若しくは分散させた場合では樹脂)のことを主として示すが、各離型剤α、βを塗布した時に溶媒量が少ない場合には、必ずしも蒸発工程を経ずとも離型層として取り扱ってよい。また、後述する電気粘性流体の場合には、流体自身の粘弾性が電界によって変化するため、流体そのもの(即ち、溶媒と分散物の混合物)を「離型層」として定義する。
【0038】
本発明においては、第1離型剤αのガラス転移温度をTg1、第2離型剤βのガラス転移温度をTg2、転写温度をTt、クリーニング温度をTcとするとき、次式 Tc>Tg1>Tt>Tg2 の関係を満たすように、転写温度(Tt)やクリーニング温度(Tc)の制御が行われる。このため、転写時においては、第1離型剤αが流動状態になることなく、第2離型剤βのみが流動状態となり、図1(d)に示すように、第2離型剤βからなる第2離型層14の一部(又は全部)が分離され(以下、このような現象を「泣き別れ」ともいう。)、分離された第2離型層14の一部(又は全部)が記録媒体18に転写される。これにより、第1離型剤αからなる第1離型層12が記録媒体18に転写されることがなく、記録媒体18における非画像部の質感を維持することができ、転写性も向上する。例えば、紙の質感を保ったまま画像を転写することができる。
【0039】
本発明における「転写温度」や「クリーニング温度」とは、それぞれの工程(転写工程、クリーニング工程)における離型層自身の温度のことである。実質的には、離型層に物質が接触する場合には、離型層の温度は接触する物質の温度にほぼ等しくなるため、転写温度とは転写時における記録媒体18の温度、クリーニング温度とはクリーニング時におけるクリーナー20(クリーニングローラ38A)の温度とみなしてよい。
【0040】
また、クリーニング時においては、第2離型剤βだけでなく第1離型剤αも流動状態となり、図1(e)に示すように、第2離型剤βからなる第2離型層14とともに、第1離型剤αからなる第1離型層12がクリーナー20に付着するので、中間転写体上の転写後残存物(各離型剤α、β、インク、塵埃など)を容易に除去することができ、クリーニング不良を防止することができる。これにより、高品質な画像を実現することが可能となる。
【0041】
なお、中間転写体10上に第1離型剤αからなる第1離型層12の一部が残存することがあるが(図1(e))、中間転写体10上には第1離型剤αが再び付与されるため、次工程での転写性に影響を与えることはない。
【0042】
本発明によれば、例えば、図2に示すように、中間転写体10の表面全体に第1離型層12を形成後(図2(a))、画像データに応じて決定されるドット形成位置に対応して第2離型剤βを打滴する際、インクジェットヘッドに不吐ノズルが存在し、一部のドット形成位置に対して第2離型剤βが打滴されなかった場合でも(図2(b))、その後に打滴されるインク液滴は、中間転写体10ではなく第1離型層12上に着弾するので(図2(c))、中間転写体10の表面がインクに含有される色材で汚されることがなく、転写不良を防止することができる。また、第1離型層12上に着弾したインク液滴によって形成されるインクドット16Aは記録媒体18に転写されなかった場合においても(図2(d))、クリーニング時にクリーナー20にインクドット16Aを付着させて除去することが可能である(図2(e))。
【0043】
また、中間転写体10の表面全体に第1離型剤αからなる第1離型層12を形成してから、第1離型層12上に第2離型剤βを打滴するようにしているため、中間転写体10の表面エネルギーが低い場合でも第2離型剤βを安定的に着弾させることが可能となる。即ち、中間転写体10に対する第2離型剤βの接触角をθ1、第1離型剤αに対する第2離型剤βの接触角をθ2とするとき、次式 θ1>θ2という関係を満たすことにより、中間転写体10上に直接付与する場合に比べて第2離型剤βを安定的に付与することが可能となる。これにより、中間転写体10の材料選択の幅が広がり、中間転写体10として、例えば、25[mN/m]以下の低表面自由エネルギーをもつものを適用することが可能となる。これにより、中間転写体10として、シリコンゴムのような低表面自由エネルギーの部材を使用可能となり、良好な転写特性を得ることができる。
【0044】
また、本発明によれば、中間転写体10に表面に傷などがついた場合においても、中間転写体10の表面全体に第1離型剤αからなる第1離型層12を形成することによって、傷部分を覆い隠すことができるので、傷などによる転写不良を防止することができる。
【0045】
本発明において、中間転写体10上に打滴されたインク液滴によって形成される画像部(ドット打滴部)の外側周辺に位置する輪郭部にも第2離型剤βを打滴する態様が好ましい。具体的には、画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置だけでなく、少なくともドット形成位置に隣接する位置に第2離型剤βを打滴するようにする。
【0046】
例えば、図3(a)に示すように、12個のインク液滴(インクドット)22からなる画像部24が形成される場合には、図3(b)に示すように、画像部24だけでなく、その外側周辺に位置する輪郭部26にも第2離型剤βを打滴するようにすればよい。
【0047】
なお、図示の例では、各インク液滴22が打滴されるドット形成位置に対して縦横の4方向に隣接する位置に第2離型剤βを打滴しているが、図3(c)に示すように、斜め方向を含む8方向に隣接する位置にも第2離型剤βを打滴するようにしてもよい。また、図3(d)に示すように、各インク液滴22が打滴されるドット形成位置の4方向(縦方向及び横方向)にそれぞれ複数の第2離型剤βが存在するように打滴してもよい。
【0048】
このように画像部の外側周辺に位置する輪郭部にも第2離型剤βを打滴することにより、インク液滴の着弾安定性が向上する。特に、エッジ品質に優れた画像を得ることができる。
【0049】
また、上述した画像部の輪郭部にも第2離型剤βを打滴する態様に代えて、ドット形成位置(インク液滴が打滴される位置)と同一位置に対して、インク液滴に比べて第2離型剤βの液滴量(液滴体積)を多くする態様も可能であり、同様な効果を得ることができる。
【0050】
また、本発明においては、後述するように、第1離型剤α及び第2離型剤βのうち、一方の離型剤を所定の温度で軟化する材料(例えば、樹脂など)とし、他方の離型剤を印加される電界に応じて粘度変化する電気粘性流体(ER流体)とする態様がある。
【0051】
また、本発明においては、回転型動的粘弾性測定装置によって測定された第1離型剤α及び第2離型剤βの転写温度における貯蔵弾性率の差が102[Pa]以上離れていることが好ましく、第2離型剤βの貯蔵弾性率の値(Gβ’)が2×102[Pa]未満であることが更に好ましい。
【0052】
〔インクジェット記録装置〕
次に、本発明に係るインクジェット記録装置の構成例(第1〜第3の実施形態)について説明する。
【0053】
(第1の実施形態)
図4は、第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の概略を示した構成図である。図4に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置100は、中間転写体10の搬送方向(図4中、矢印Aで示す方向;以下、「中間転写体搬送方向」という。)に関して上流側から順に、第1離型剤αを付与する第1離型剤付与部30と、第2離型剤βを打滴する第2離型剤打滴部32と、インク液滴を打滴するインク打滴部34と、中間転写体10上に形成されたインク画像を記録媒体18に対して転写を行う転写部36と、中間転写体10上をクリーニングするクリーニング部38とから主に構成される。
【0054】
本実施形態のインクジェット記録装置100では、所定の温度で軟化する第1離型剤αと、第1離型剤αに比べてガラス転移温度の低い第2離型剤βとが用いられ、第1離型剤αのガラス転移温度をTg1、第2離型剤βのガラス転移温度をTg2、転写温度をTt、クリーニング温度をTcとするとき、次式 Tc>Tg1>Tt>Tg2 を満たすように転写温度(Tt)やクリーニング温度(Tc)の制御が行われる。なお、本制御は、後述するシステムコントローラ(図4中不図示、図9に符号72で図示)を中心として行われる。
【0055】
図4に示す中間転写体10には無端状ベルトが適用され、中間転写体(無端状ベルト)10は複数のローラ(図4には2つの張架ローラ40A、40B、及び転写加熱用の加熱対向ローラ36Bを図示)に巻きかけられた構造を有し、これらローラの少なくとも1つにモータ(図4中不図示、図9に符号88で図示)の動力が伝達されることにより、中間転写体10は、図4において反時計回り方向(図1中、矢印Aで示す方向;中間転写体搬送方向)に駆動される。
【0056】
中間転写体(無端状ベルト)10は、第2離型剤打滴部32及びインク打滴部34と対向する表面(画像形成面)10Aの少なくともインク画像(1次画像)が形成される画像形成領域(不図示)には、樹脂、金属やゴムなどのインク液滴が浸透しない非浸透性を有している。また、中間転写体10の少なくとも画像形成領域は、所定の平坦性を有する水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0057】
中間転写体10の画像形成面10Aを含む表面層に用いられる好ましい材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂等の公知の材料が挙げられる。
【0058】
中間転写体搬送方向の最上流側に配置される第1離型剤付与部30は、塗布ローラ30A、及び第1離型剤αが収容される塗布液容器(不図示)を含んで構成される。塗布ローラ30Aは中間転写体10に対して従動して回転するか、独立して塗布ローラ30Aが駆動し回転制御可能となっており、塗布ローラ30Aの回転に応じて、塗布液容器内に収容される第1離型剤αが中間転写体10の画像形成面10Aに全面塗布される。
【0059】
塗布ローラ30Aには、多孔質材料や表面に凹凸がある材料が望ましく、例えば、グラビアロール状のもの等を用いることができる。本例では、第1離型剤αを中間転写体10に付与する手段として、ローラ形状を有する塗布部材を例示したが、第1離型剤αを中間転写体10に付与する手段はローラ形状に限定されず、ブレードにより塗布する方式やスプレー、インクジェットヘッドを用いることができる。
【0060】
本発明において、第1離型剤αは中間転写体10の画像形成面10A全体に付与する必要があるため、本例のように塗布によって付与する態様が好ましい。また、第1離型剤αを直接塗布してもよいし、第1離型剤αを溶媒に分散若しくは溶解させた液体を中間転写体10上に塗布し、その後に第1離型剤αを含む液体を乾燥させることにより溶媒を蒸発させ、中間転写体10上に第1離型層12(図1参照)を形成するようにしてもよい。
【0061】
中間転写体搬送方向に関して第1離型剤付与部30より下流側に配置される第2離型剤打滴部32は、インクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)32Aを含んで構成され、ヘッド32Aから中間転写体10の画像形成面10Aに対して第2離型剤βが打滴される。第2離型剤βは、画像データ(記録画像)に応じて決定されるドット形成位置(インク液滴が打滴される位置)に対応して打滴される。
【0062】
本発明において、上述したように画像部の外側周辺に位置する輪郭部にも第2離型剤βを打滴する態様、即ち、画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置だけでなく、ドット形成位置に隣接する位置にも第2離型剤βを打滴する態様が好ましい(図3(a)、(b)参照)。
【0063】
また、第2離型剤βにインク中の色材を凝集させる成分、又はインク液滴の着弾後に該インク液滴を増粘させる成分(処理剤)を含有させる態様も好ましい。中間転写体10上で第2離型剤βとインク液滴が反応して色材凝集体が形成されるので、隣接するドット形成位置に打滴されたインク液滴同士の着弾干渉を防止することができる。
【0064】
ここで、インクとしては、液体の溶媒に色材が分子の状態(イオンの状態であってもよい)で溶解している染料インク、液体の溶媒に色材が微小な塊の状態で分散している顔料インク等が挙げられる。言い換えると、インクに含有される色材は、分子の状態(イオンの状態であってもよい)で液体の溶媒に溶解する物質や、微小な塊となった状態で液体の溶媒に分散する物質が挙げられる。
【0065】
一方、処理剤とは「インクと反応してインク中の色材を析出あるいは不溶化させる成分」、「インク中の色材を含む半固体状の物質(ゲル)を生成する成分」等が挙げられる。インクと反応するときの処理剤の状態としては、固体もしくは半固形状態であることが好ましい。
【0066】
このような反応を引き起こす手段としては、インク中のアニオン性の色材を処理剤中のカチオン性の化合物を反応させる方法、互いにpHの異なるインクと処理剤とを混合させることでインクのpHを変化させ、インク中の顔料の分散破壊を起こし、顔料を凝集させる方法、処理剤中の多価金属塩との反応によりインク中の顔料の分散破壊を起こし、顔料を凝集させる方法などがある。
【0067】
中間転写体搬送方向に関して第2離型剤打滴部32より下流側に配置されるインク打滴部34は、中間転写体搬送方向に沿って上流側から、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の各色インクに対応したインクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)34C、34M、34Y、34Kが順に設けられる。各ヘッド34C、34M、34Y、34Kから中間転写体10の画像形成面10Aに対してそれぞれ対応する各色のインク液滴が打滴される。
【0068】
図5に示すように、第2離型剤打滴部32のヘッド32A、及びインク打滴部34の各ヘッド34C、34M、34Y、34Kは、それぞれ中間転写体10における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有し、そのインク吐出面には画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズル(図5中不図示、図6に符号51で図示)が複数配列されたフルライン型のヘッドで構成されており、それぞれ中間転写体搬送方向と直交する方向に延在するように固定設置される。
【0069】
本例では、第2離型剤打滴部32のヘッド32Aは、インク打滴部34のヘッド34C、34M、34Y、34Kと同一構造が適用される。なお、第2離型剤打滴部32のヘッド32Aは、画像データに応じて決定されるドット形成位置に対して第2離型剤βを打滴可能なものであればよく、例えば、インク打滴部34のヘッド34C、34M、34Y、34Kよりも打滴密度(解像度)を落とした構造のヘッドを適用してもよい。
【0070】
中間転写体10の幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッドを吐出液別に設ける構成によれば、中間転写体搬送方向(副走査方向)について、中間転写体10と第2離型剤打滴部32及びインク打滴部34を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、中間転写体10の画像形成領域にインク画像(1次画像)を記録することができる。これにより、中間転写体搬送方向と直交する方向(主走査方向;図5参照)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドが適用される場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
【0071】
本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0072】
液体貯蔵/装填部(不図示)は、各ヘッド32A、34C、34M、34Y、34Kにそれぞれ供給する液体(第2離型剤β又は各色インク)を各々貯蔵する液体タンク(図4中不図示、図8に符号60で図示)を含んで構成され、各タンクは所要の流路を介してそれぞれ対応するヘッドと連通されており、各ヘッドに対してそれぞれ対応する液体を供給する。また、液体貯蔵/装填部は、タンク内の液体残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、液体間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0073】
中間転写体搬送方向に関してインク打滴部34より下流側であって転写部36より上流側には、加熱乾燥部42が設けられる。加熱乾燥部42は、中間転写体10の画像形成面10Aの裏面10B側に設けられたヒータ(図4中不図示、図9に符号89で図示)を含んで構成され、インク画像(1次画像)が形成された中間転写体10を裏面10B側からヒータによって加熱する。
【0074】
加熱乾燥部42に配置されるヒータの加熱温度範囲は、転写時の加熱温度(転写温度)よりも低く設定される。中間転写体10の画像形成領域を予備加熱することで、予備加熱を行わない場合に比べて転写部36の加熱温度を低く設定することが可能となり、更に、転写部36の転写時間を少なくすることができる。
【0075】
加熱乾燥部42は、中間転写体10上に形成されたインク画像に含まれる溶媒を乾燥させる溶媒除去部を兼ねている。加熱乾燥部42の構成としては、中間転写体10の裏面10B側にヒータを具備し、中間転写体10の表面(画像形成面)10A側から乾燥した熱風を中間転写体10に対して当てる方式が最も簡便であり好ましい。もちろん、加熱乾燥部42に代えて、又は加熱乾燥部42に併設して、例えば、表面が多孔質体で構成されたローラ状の溶媒吸収部材(溶媒除去ローラ)を中間転写体10の画像形成面10Aに接触させて、溶媒を吸収除去する態様もある。また、溶媒除去ローラに代えて、エアナイフで余剰な溶媒を中間転写体10から取り除く方式などを適用することも可能である。
【0076】
記録媒体18を転写部36へ供給する給紙部(不図示)の構成としては、ロール紙(連続用紙)のマガジンを備える態様、或いは、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給する態様がある。ロール紙を使用する装置構成の場合、裁断用のカッターが設けられており、該カッターによってロール紙は所望のサイズにカットされる。紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンやカセットを併設してもよい。
【0077】
複数種類の記録媒体を利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0078】
本例に適用される記録媒体18の具体例を挙げると、普通紙、インクジェット専用紙などの浸透性媒体、コート紙などの非浸透性又は低浸透性の媒体、裏面に粘着剤と剥離ラベルの付いたシール用紙、OHPシートなどの樹脂フィルム、金属シート、布、木など様々な媒体がある。
【0079】
加熱乾燥部42の中間転写体搬送方向下流側に配置される転写部36は、ヒータ(図4中不図示、図9に複数のヒータを代表して符号89で図示)を有した転写加熱ローラ36Aと、これに対向して配置される加熱加圧ニップ用の加熱対向ローラ36Bとを含んで構成され、これらローラ36A、36B間に中間転写体10と記録媒体18とを挟み込み、所定の温度に加熱しながら、所定の圧力(ニップ圧)で加圧することにより、中間転写体10上に形成されたインク画像(1次画像)が記録媒体18に転写される構成となっている。
【0080】
転写部36による転写時の加熱温度(転写温度)は、第1離型剤α及び第2離型剤βのガラス転移温度に応じて決定される。具体的には、転写温度(Tt)が第1離型剤αのガラス転移温度(Tg1)より低く、且つ、第2離型剤βのガラス転移温度(Tg2)より高くなるように(即ち、Tg1>Tt>Tg2)、後述するシステムコントローラ(図4中不図示、図9に符合72で図示)によって転写部36に配置されるヒータの制御が行われる。
【0081】
転写部36における転写時のニップ圧を調整するための手段としては、例えば、転写加熱ローラ36Aを図4の上下方向(符号Cで図示)に移動させる機構(駆動手段)が挙げられる。
【0082】
転写部36の記録媒体搬送方向(図4中、矢印Bで示す方向)下流側には、定着部(不図示)が配置されることが好ましい。例えば、定着部には、100℃〜180℃の範囲で温度調整可能な加熱ローラ対を含んで構成され、転写部36にてインク画像が転写された記録媒体18を加熱ローラ対の間を通過させることにより、記録媒体18に対するインク画像の定着性や耐擦過性を向上させることができる。
【0083】
中間転写体搬送方向に関して転写部36より下流側に配置されるクリーニング部38は、中間転写体10上をクリーニングする手段として、中間転写体10の画像形成面10Aに当接しながら転写後残存物を表面に付着させて除去するクリーニングローラ38Aを含んで構成される。
【0084】
なお、中間転写体10から転写後残存物を除去するクリーニング手段の構成は、上記の例に限らず、ブレードを用いて転写後残存物を払拭除去する方式、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、粘着ロール方式或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
【0085】
本実施形態のインクジェット記録装置100には、中間転写体10を挟んでクリーニング部38のクリーニングローラ38Aに対向する位置に加熱部44が設けられる。加熱部44は、上述した加熱乾燥部42と同様な構成が適用され、中間転写体10の画像形成面10Aの裏面10B側に設けられたヒータ(図4中不図示、図9に符号89で図示)を含んで構成される。
【0086】
クリーニング部38において中間転写体10の画像形成面10Aをクリーニングする際、中間転写体10を裏面10B側から加熱部44のヒータによって所定温度に加熱しながら、中間転写体10上のクリーニングが行われ、中間転写体10上から転写後残存物が除去される構成となっている。
【0087】
クリーニング部38に対応して設けられる加熱部44の加熱温度(クリーニング温度)は、転写温度と同様に、第1離型剤α及び第2離型剤βのガラス転移温度に応じて決定される。具体的には、クリーニング温度(Tc)が第1離型剤αのガラス転移温度(Tg1)及び第2離型剤βのガラス転移温度(Tg2)より高くなるように(即ち、Tc>Tg1>Tt>Tg2)、後述するシステムコントローラ(図4中不図示、図9に符合72で図示)によって加熱部44に配置されるヒータの制御が行われる。
【0088】
次に、第2離型剤打滴部32に配置されるヘッド32A、及びインク打滴部34に配置されるヘッド34C、34M、34Y、34Kの構造について詳説する。なお、各ヘッド32A、34C、34M、34Y、34Kの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示す。また、説明の便宜上、ヘッドから吐出される液体がインクである場合について説明するが、第2離型剤打滴部32に配置されるヘッド32Aの場合には「インク」を「第2離型剤β」と読み替えればよい。
【0089】
図6(a)はヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図6(b)はその一部の拡大図である。また、図6(c)はヘッド50の他の構造例を示す平面透視図、図7はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図6(a)、(b)中の7−7線に沿う断面図)である。
【0090】
中間転写体10上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図6(a)、(b)に示すように、インク滴の吐出孔であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(中間転写体搬送方向と直交する主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0091】
中間転写体10の搬送方向と略直交する方向に中間転写体10の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図6(a)の構成に代えて、図6(c)に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドブロック50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで中間転写体10の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
【0092】
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。共通流路55はインク供給源たるインク供給タンク(図7中不図示、図8に符号60で図示)と連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは図7の共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
【0093】
圧力室52の天面を構成し共通電極と兼用される振動板56には個別電極57を備えた圧電素子58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによって圧電素子58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
【0094】
本例では、ヘッド50に設けられたノズル51から吐出させるインクの吐出力発生手段として圧電素子58を適用したが、圧力室52内にヒータを備え、ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させるサーマル方式を適用することも可能である。
【0095】
かかる構造を有するインク室ユニット53を図6(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0096】
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0097】
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
【0098】
また、本発明の適用範囲はライン型ヘッドによる印字方式に限定されず、中間転写体10の幅方向(主走査方向)の長さに満たない短尺のヘッドを中間転写体10の幅方向に走査させて当該幅方向の印字を行い、1回の幅方向の印字が終わると中間転写体10を幅方向と直交する方向(副走査方向)に所定量だけ移動させて、次の印字領域の中間転写体10の幅方向の印字を行い、この動作を繰り返して中間転写体10の印字領域の全面にわたって印字を行うシリアル方式を適用してもよい。
【0099】
図8は、インクジェット記録装置100におけるインク供給系の構成を示した概要図である。なお、処理液供給系についてもインク供給系と同様の構成が適用される。
【0100】
インク供給タンク60はヘッド50にインクを供給する基タンクであり、上述した液体貯蔵/装填部(不図示)に含まれる。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
【0101】
図8に示したように、インク供給タンク60とヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
【0102】
なお、図8には示さないが、ヘッド50の近傍又はヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
【0103】
また、インクジェット記録装置100には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ヘッド50のインク吐出面の清掃手段としてクリーニングブレード66が設けられている。
【0104】
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によってヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
【0105】
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によってヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド50に密着させることにより、ノズル面をキャップ64で覆う。
【0106】
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、圧電素子58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
【0107】
このような状態になる前に(圧電素子58の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)圧電素子58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ64(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。
【0108】
なお、中間転写体10に向けてインクを打滴して予備吐出を行う態様も可能である。例えば、複数の画像を連続的に形成する場合には、画像間で予備吐出を実行することが可能である。特に、同一画像を複数枚形成する場合には、特定のノズルにおいてインク吐出の頻度が低くなり、吐出異常の発生する可能性が高くなり、当該特定のノズルについて画像間で予備吐出を行うことが好ましい。
【0109】
中間転写体10に予備吐出を行う場合には、転写加熱ローラ36Aに予備吐出によるインクが付着しないように、転写加熱ローラ36Aを移動させて、転写加熱ローラ36Aと中間転写体10との間に所定のクリアランス(例えば、10mm程度)を設けるとよい。
【0110】
また、ヘッド50内(圧力室52内)のインクに気泡が混入した場合、圧電素子58が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合にはヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。
【0111】
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
【0112】
クリーニングブレード66はゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構によりヘッド50のインク吐出面に摺動可能である。インク吐出面にインク液滴または異物が付着した場合、クリーニングブレード66をインク吐出面に摺動させることでインク吐出面を拭き取り、インク吐出面を清掃する。
【0113】
図9は、インクジェット記録装置100のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置100は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
【0114】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置100に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。
【0115】
メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0116】
システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置100の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御し、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
【0117】
メモリ74には、システムコントローラ72のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、メモリ74は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ74は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0118】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがって、モータ88を駆動するドライバである。図9には、装置内の各部に配置されるモータ(アクチュエータ)を代表して符号88で図示されている。例えば、図9に示すモータ88には、図4のローラ40A、40B、36Bの中の駆動ローラを駆動するモータや、転写加熱ローラ36Aの移動機構のモータなどが含まれている。
【0119】
ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって、ヒータ89を駆動するドライバである。図9には、インクジェット記録装置100に備えられる複数のヒータを代表して符号89で図示されている。例えば、図9に示すヒータ89には、図4に示す加熱乾燥部42、加熱部44のヒータや、転写加熱ローラ36Aに含まれるヒータなどが含まれている。
【0120】
転写制御部79は、システムコントローラ72からの指示にしたがって、転写部36の転写加熱ローラ36Aの押圧制御や温度制御を行う。記録媒体18の種類やインクの種類ごとに、転写加熱ローラ36Aの押圧最適値や温度最適値が予め求められ、データテーブル化されて所定のメモリ(例えば、メモリ74)に記憶され、記録媒体18の情報や使用インクの情報を取得すると、当該メモリを参照して転写加熱ローラ36Aの押圧や温度が制御される。
【0121】
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ84を介して第2離型剤打滴部32及びインク打滴部34に配置される各ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0122】
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0123】
第1離型剤付与制御部81は、図4に示す塗布ローラ30Aによる第1離型剤αの塗布量を制御する。本例では、中間転写体10と塗布ローラ30Aとを接触、離間可能に構成し、塗布ローラ30Aを中間転写体10に接触させる時間を可変することで、第1離型剤αの付与量を制御する。また、第1離型剤付与部30の塗布液容器内の第1離型剤αの残量を検出するセンサを備え、第1離型剤付与制御部81は該センサから得られる情報に基づいて塗布液容器内の第1離型剤αの残量を判断し、残量が所定量以下になると、その旨を報知する。
【0124】
ヘッドドライバ84は、プリント制御部80から与えられる画像データに基づいて第2離型剤打滴部32及びインク打滴部34の各ヘッド50の圧電素子58に印加される駆動信号を生成するとともに、該駆動信号を圧電素子58に印加して圧電素子58を駆動する駆動回路を含んで構成される。なお、図9に示すヘッドドライバ84には、ヘッド50の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0125】
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース70を介して外部から入力され、メモリ74に蓄えられる。この段階では、RGBの画像データがメモリ74に記憶される。
【0126】
メモリ74に蓄えられた画像データは、システムコントローラ72を介してプリント制御部80に送られ、該プリント制御部80においてインク色ごとのドットデータ及び第2離型剤βのドットデータに変換される。即ち、プリント制御部80は、入力されたRGB画像データをCMYKの4色のドットデータ及び第2離型剤βのドットデータに変換する処理を行う。プリント制御部80で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ82に蓄えられる。
【0127】
なお、中間転写体10上に形成される1次画像は、転写の際に反転することを考慮して、最終的に記録媒体18に形成される二次画像の鏡面画像としなければならない。即ち、各ヘッド50に供給される駆動信号は鏡面画像に対応した駆動信号であり、プリント制御部80にて入力画像に対して反転処理を施す必要がある。
【0128】
プログラム格納部90には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部90はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部90は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
【0129】
次に、上記のように構成されたインクジェット記録装置100の動作について説明する。
【0130】
本実施形態のインクジェット記録装置100では、中間転写体10が中間転写体搬送方向に搬送されつつ、まず、第1離型剤付与部30において中間転写体10上の全面に第1離型剤αが付与され、これにより、第1離型剤αからなる第1離型層12が中間転写体10の表面全体に形成される(図1(a))。
【0131】
次いで、画像データに応じて決定されるドット形成位置(インク液滴が打滴される位置)に対応して、第2離型剤打滴部32のヘッド32Aから第2離型剤βが打滴される。これにより、第2離型剤βからなる第2離型層14が第1離型層12上に形成される(図1(b))。
【0132】
このとき、ドット形成位置と同一位置だけでなく、ドット形成位置に隣接する位置にも第2離型剤βが打滴されることが好ましい(図3参照)。これにより、この後に打滴されるインク液滴の着弾安定性が向上し、転写性が向上する。特に、エッジ品質に優れた画像を得ることができる。
【0133】
第2離型剤βが打滴された後、画像データに応じて決定されるドット形成位置に対して、インク打滴部34の各ヘッド34C、34M、34Y、34Kからインク液滴が打滴される。上述したように、各色のインク液滴が打滴される位置(ドット形成位置)には既に第2離型剤βからなる第2離型層14が形成されており、各ヘッドから打滴されたインク液滴は第2離型層14上に着弾してインクドット16が形成される(図1(c))。
【0134】
こうして中間転写体10上に形成されたインク画像は、中間転写体10の搬送に伴って、加熱乾燥部42において予備加熱されながら、インク画像に含まれる溶媒成分が除去される。その後、転写部36において、ヒータを有する転写加熱ローラ36Aによって所定の温度に加圧加熱されながら、中間転写体10上に形成されたインク画像が記録媒体18に転写される。
【0135】
このとき、転写温度(Tt)が第1離型剤αのガラス転移温度(Tg1)より低く、且つ、第2離型剤βのガラス転移温度(Tg2)より高くなるように(即ち、Tg1>Tt>Tg2)、上述したシステムコントローラ72によって制御が行われているため、転写時においては、第1離型剤αからなる第1離型層12は流動状態になることなく、第2離型剤βからなる第2離型層14のみが流動状態となり、図1(d)に示すように、第2離型層14の一部(又は全部)が記録媒体18に転写される。
【0136】
また、転写後、クリーニング部38に対応して設けられる加熱部44によって所定温度に加熱されながら、クリーニング部38のクリーニングローラ38Aによって中間転写体10上のクリーニングが行われる。このとき、クリーニング温度(Tc)は第1離型剤αのガラス転移温度(Tg1)及び第2離型剤βのガラス転移温度(Tg2)より高くなるように(即ち、Tc>Tg1>Tt>Tg2)、システムコントローラ72によって制御が行われているため、第2離型剤βからなる第2離型層14だけでなく、第1離型剤αからなる第1離型層12も流動状態となり、第2離型剤βからなる第2離型層14とともに、第1離型剤αからなる第1離型層12を中間転写体10上から容易に除去することができる。
【0137】
本実施形態のインクジェット記録装置100によれば、中間転写体10上の全面に第1離型剤αからなる第1離型層12を形成後、画像データに応じて決定されるドット形成位置に対して第2離型剤β、インク液滴を順次打滴して、更に、転写時には第2離型剤βのみが流動状態となり、クリーニング時には第1離型剤αも流動状態となるように制御が行われる。これにより、第1離型剤αが記録媒体18に転写されることがなく、記録媒体18における非画像部の質感を維持することができるとともに、転写性を向上させることができる。また、中間転写体10上の転写後残存物を容易に除去することができ、転写不良を防止することができる。これにより、高品質な画像を実現することが可能となる。
【0138】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係るインクジェット記録装置の第2の実施形態について説明する。以下、第1の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
【0139】
図10は、第2の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成例を示した概略図である。図10中、図4と共通又は類似する部分には同一番号を付している。
【0140】
第2の実施形態は、第1離型剤αが印加される電界に応じて粘度変化する電気粘性流体(ER流体)であり、第2離型剤βが所定の温度で流動状態となる材料(例えば、樹脂など)である態様である。
【0141】
電気粘性流体とは、前述したように、この液体を電界中に置くと、瞬時に、無電界の状態に比べてこの液体の粘度が変化する液体をいう。この電気粘性流体の構成材料としては、粒子分散型と均一型とがあるが、粘度変化の大きさ、および材料選択の広さでは粒子分散型が勝っている。粒子分散型にも水系と非水系があり、水系粒子分散型としては、水溶液や極性溶媒中に、シリカ、表面処理シリカ、アクリル酸ポリマー、シリコンポリマー、デンプン、ゼラチン、多孔質物質等の粒子を分散したものが適している。非水系粒子分散型としては、絶縁性有機液体中に、シリカ、TiO2、銅フタロシアニン、ポリアニリン、金属コロイド、炭素粉体、チタン酸塩、酒石酸塩などを分散したものが適している。
【0142】
図10に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置200には、中間転写体10の裏面10B側に電界付与部46(46A、46B)が設けられている。
【0143】
電界付与部46は、第1離型剤付与部30と第2離型剤打滴部32の間から中間転写体搬送方向下流側に向かって転写部36までの領域に渡って設けられており、第1離型剤αの付与後、第2離型剤βが打滴される前から記録媒体18に対する画像転写が完了するまで所定の電界が印加され続け、転写完了後、クリーニングが開始されるまでに前記電界の印加が解除されるように制御が行われる。
【0144】
また、中間転写体搬送方向下流側に位置する電界付与部46Bは、ヒータを含んで構成されており、第1の実施形態における加熱乾燥部42(図4参照)を兼ねている。
【0145】
また、第2離型剤βのガラス転移温度(Tg2)が転写温度(Tt)及びクリーニング温度(Tc)より低くなるように、転写温度(Tt)やクリーニング温度(Tc)の制御が行われる。即ち、次式 Tt>Tg2、且つ、Tc>Tg2を満たすように制御が行われる。
【0146】
かかる構成により、第1離型剤付与部30の塗布ローラ30Aによって第1離型剤αが全面塗布されると、中間転写体10上に第1離型層12が形成される(図1(a))。中間転写体10の搬送に伴って、中間転写体10上の第1離型層12が形成された領域が中間転写体搬送方向下流側に向かって移動すると、電界付与部46(46A、46B)によって電界が印加され、第1離型剤αからなる第1離型層12は増粘状態となる。
【0147】
この後、第1の実施形態と同様に、画像データに応じて決定されるドット形成位置に対して第2離型剤β、インク液滴が順次打滴される。そして、加熱乾燥部を兼ねる電界付与部46Bによって予備加熱されながら、インク画像に含まれる溶媒成分(液体)が除去された後、転写部36の転写加熱ローラ36Aによって所定の温度に加圧加熱され、第2離型剤βは流動状態となり、中間転写体10上に形成されたインク画像が記録媒体18に転写される。転写後、電界の印加が解除され、第1離型剤αからなる第1離型層12は低粘度化した状態となり、クリーニング部38のクリーニングローラ38Aによって中間転写体10上のクリーニングが行われる。
【0148】
本実施形態によれば、転写時には、第1離型剤αからなる第1離型層12が低粘度化することなく、第2離型剤βからなる第2離型層14が流動状態となるので、記録媒体18に第1離型剤αが転写されることがなく、記録媒体18の非画像部の質感を維持しつつ、転写性を向上させることができる。また、クリーニング時には、第1離型剤αからなる第1離型層12が低粘度化した状態となるので、中間転写体10上の転写後残存物を容易に除去することができ、転写不良を防止することができる。これにより、高品質な画像を実現することが可能となる。
【0149】
(第3の実施形態)
次に、本発明に係るインクジェット記録装置の第3の実施形態について説明する。以下、第1及び第2の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
【0150】
図11は、第3の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成例を示した概略図である。図11中、図4又は図10と共通又は類似する部分には同一番号を付している。
【0151】
第3の実施形態では、第1離型剤αが所定の温度で流動状態となる材料(例えば、樹脂など)であり、第2離型剤βが印加される電界に応じて粘度変化する電気粘性流体(ER流体)である態様である。
【0152】
図11に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置300には、中間転写体10の裏面10B側に電界付与部46(46A、46B)が設けられている。
【0153】
電界付与部46は、第2離型剤打滴部32とインク打滴部34の間から中間転写体搬送方向下流側に向かって転写部36の直前までの領域にわたって設けられており、第2離型剤βの打滴後、インク液滴が打滴される前から転写が開始されるまで電界が印加され続け、転写が開始される時には前記電界の印加が解除されるように制御が行われる。
【0154】
また、本実施形態のインクジェット記録装置300には、第1の実施形態と同様に、クリーニング部38に対応する加熱部44が中間転写体10の裏面10B側に設けられている。
【0155】
また、第1離型剤αのガラス転移温度(Tg1)が転写温度(Tt)より高く、且つクリーニング温度(Tc)より低くなるように、転写温度(Tt)やクリーニング温度(Tc)の制御が行われる(即ち、Tc>Tg1>Tt)。
【0156】
かかる構成により、第1離型剤付与部30の塗布ローラ30Aによって第1離型剤αが全面塗布されると、中間転写体10上に第1離型層12が形成される(図1(a))。その後、中間転写体10の搬送に伴って、画像データに応じて決定されるドット形成位置に対して第2離型剤βが打滴されると、電界付与部46(46A)から印加される電界によって、第2離型剤βからなる第2離型層14は増粘状態となる。
【0157】
インク液滴を打滴する前に第2離型剤βからなる第2離型層14を増粘させておくことにより、第2離型層14に着弾したインク液滴が第2離型層14内部に入り込むことによって、転写時にインク液滴が記録媒体18に転写されない現象を未然に防止することができる。
【0158】
第2離型剤βの打滴後、第1の実施形態と同様に、インク液滴が打滴される。その後、中間転写体10の搬送に伴って、電界付与部46による中間転写体10に対する電界の印加は転写部36の直前で解除され、第2離型剤βからなる第2離型層14は低粘度化した状態となる。そして、転写部36の転写加熱ローラ36Aによって所定の温度に加圧加熱され、中間転写体10上に形成されたインク画像が記録媒体18に転写される。このとき、第1離型剤αからなる第1離型層12は非流動状態である。その後、加熱部44によって所定の温度に加熱され、第1離型剤αからなる第1離型層12は流動状態となり、クリーニング部38のクリーニングローラ38Aによって中間転写体10上のクリーニングが行われる。
【0159】
本実施形態によれば、転写時には、第1離型剤αからなる第1離型層12が流動状態になることなく、第2離型剤βからなる第2離型層14が低粘度化した状態となるので、記録媒体18に第1離型剤αが転写されることがなく、記録媒体18の非画像部の質感を維持しつつ、転写性を向上させることができる。また、クリーニング時には、第1離型剤αからなる第1離型層12が流動状態となるので、中間転写体10上の転写後残存物を容易に除去することができ、転写不良を防止することができる。これにより、高品質な画像を実現することが可能となる。
【0160】
以上、本発明のインクジェット記録装置及び記録方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】本発明に係るインクジェット記録方法の概要を示した説明図
【図2】本発明に係るインクジェット記録方法の概要を示した説明図
【図3】画像部の輪郭部に第2離型剤を打滴する態様を示した説明図
【図4】第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の概略を示した説明図
【図5】第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の印字部周辺の要部平面図
【図6】ヘッドの構造例を示す平面透視図
【図7】図6中7−7線に沿う断面図
【図8】第1の実施形態に係るインクジェット記録装置のインク供給系の構成を示す概略図
【図9】第1の実施形態に係るインクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【図10】第2の実施形態に係るインクジェット記録装置の概略を示した説明図
【図11】第3の実施形態に係るインクジェット記録装置の概略を示した説明図
【符号の説明】
【0162】
10…中間転写体、12…第1離型層、14…第2離型層、16…インクドット、18…記録媒体、20…クリーナー、22…インク液滴、24…画像部、26…輪郭部、30…第1離型剤付与部、32…第2離型剤打滴部、34…インク打滴部、36…転写部、38…クリーニング部、42…加熱乾燥部、44…加熱部、50…ヘッド、51…ノズル、80…システムコントローラ、100、200、300…インクジェット記録装置
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置及び記録方法に係り、特に、インクジェット方式の記録ヘッドからインク液滴を吐出することによって中間転写体上に画像を形成し、中間転写体上に形成された画像を記録媒体に転写する転写方式のインクジェット記録装置及び記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にインクジェット記録装置は、ランニングコストが安く、記録動作時の騒音が低く、多種多様な記録媒体に対して記録可能であり、家庭用から産業用まで幅広く利用されている。例えば、インクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)の各ノズルからインク滴をそれぞれ記録媒体に対して吐出する方式(直接記録方式)が知られている。
【0003】
しかしながら、直接記録方式では、インクジェットヘッドから記録媒体に液体(インク)が直接吐出されるため、浸透性を有する記録媒体(例えば、普通紙や再生紙など)が用いられる場合にはカールやコックリングが発生したり、非浸透性を有する記録媒体(例えば、プラスチックや金属など)が用いられる場合には記録媒体上でインクの滲みや混色が発生したりして、記録媒体の種類によって十分な画像品質が得られないという問題がある。
【0004】
このような問題を解消するために、インクジェットヘッドから中間転写体に対してインク吐出することによって中間転写体上に画像を形成し、中間転写体に形成された画像を記録媒体に転写する転写方式が提案されている。転写方式によれば、中間転写体上に画像を形成後、中間転写体上の溶媒成分(液体)を除去してから記録媒体に転写することが可能であり、記録媒体の種類に左右されることなく高品質な画像を得ることができる。
【0005】
例えば、特許文献1には、基材上に転写層(離型層)を設けた中間転写媒体に、インクを打滴して画像を形成し、画像を転写層ごと被記録媒体(紙)へ転写するインクジェット記録装置及び記録方法が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、基材上にインクと、粘着性を有する化合物を含む液(粘着性インク)を別々に打滴し、表面を加熱した後に、被記録媒体(紙)へ転写するインクジェット記録方法が記載されている。
【特許文献1】特開2002−240411号公報
【特許文献2】特開2003−1924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、転写層を全面に設けた場合には、紙上の画像が無い領域にも転写層が転写されてしまうことにより、紙の質感(光沢、手触り感)が変化してしまう。
【0008】
また、特許文献2に記載された発明では、粘着性インクのドットが吐出しなかった場合、若しくは、インクドットと粘着性インクドットの吐出位置が大きくずれてしまった場合には、基材上に直接インクのみがついてしまった後に加熱されることになり、紙への転写性不良が生じたり、その後のクリーニングにおいても基材からインクが取り除けないことがあったりする。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、記録媒体における非画像部の質感を維持しつつ、転写性を向上させ、高品質な画像を実現することのできるインクジェット記録装置及び記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、中間転写体上の全面に所定の温度で軟化する第1離型剤を付与する第1離型剤付与手段と、前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して、前記第1離型剤に比べて低い温度で軟化する第2離型剤を打滴する第2離型剤打滴手段と、前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴するインク打滴手段と、前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する転写手段と、前記中間転写体上をクリーニングするクリーニング手段と、前記中間転写体を加熱する加熱手段と、前記第1離型剤のガラス転移温度をTg1、前記第2離型剤のガラス転移温度をTg2、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式 Tc>Tg1>Tt>Tg2を満たすように前記加熱手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、中間転写体上の全面に第1離型剤からなる第1離型層を形成後、画像データに応じて決定されるドット形成位置に対して第2離型剤、インク液滴を順次打滴して、更に、転写時には第2離型剤のみが流動状態となり、クリーニング時には第1離型剤も流動状態となるように制御が行われる。このため、第1離型剤が記録媒体に転写されることがなく、記録媒体における非画像部の質感を維持することができるとともに、転写性を向上させることができる。また、中間転写体上の転写後残存物を容易に除去することができ、クリーニング不良を防止することができる。これにより、高品質な画像を実現することが可能となる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、中間転写体上の全面に電気粘性流体である第1離型剤を付与する第1離型剤付与手段と、前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して所定の温度で軟化する第2離型剤を打滴する第2離型剤打滴手段と、前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴するインク打滴手段と、前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する転写手段と、前記中間転写体上をクリーニングするクリーニング手段と、前記中間転写体を加熱する加熱手段と、前記中間転写体に電界を印加する電界印加手段と、前記第2離型剤のガラス転移温度をTg、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式Tt>Tg、且つ、Tc>Tgを満たすように前記加熱手段を制御する第1制御手段と、前記第1離型剤の付与後、前記第2離型剤が打滴される前から転写が完了するまで前記中間転写体に対して電界を印加し続け、転写完了後、クリーニングが開始されるまでに前記電界の印加を解除するように前記電界印加手段を制御する第2制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
更に、請求項3に記載の発明は、中間転写体上の全面に所定の温度で軟化する第1離型剤を付与する第1離型剤付与手段と、前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して電気粘性流体である第2離型剤を打滴する第2離型剤打滴手段と、前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴するインク打滴手段と、前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する転写手段と、前記中間転写体上をクリーニングするクリーニング手段と、前記中間転写体を加熱する加熱手段と、前記中間転写体に電界を印加する電界印加手段と、前記第1離型剤のガラス転移温度をTg、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式 Tc>Tg>Ttを満たすように前記加熱手段を制御する第1制御手段と、前記第2離型剤の打滴後、前記インク液滴が打滴される前から転写が開始されるまで前記中間転写体に対して電界を印加し続け、転写が開始される時には前記電界の印加が解除されるように前記電界印加手段を制御する第2制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2又は請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様、第1離型剤が記録媒体に転写されることがなく、記録媒体における非画像部の質感を維持することができるとともに、転写性を向上させることができる。また、中間転写体上の転写後残存物を容易に除去することができ、転写不良を防止することができる。これにより、高品質な画像を実現することが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の一実施形態に係り、前記第2離型剤打滴手段は、前記ドット形成位置と同一位置だけでなく、前記ドット形成位置に隣接する位置にも前記第2離型剤を打滴することを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、インク液滴の着弾安定性が向上し、画像品質が更に向上する。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明の一実施形態に係り、前記第2離型剤打滴手段及び前記インク打滴手段は同一解像度をもつインクジェットヘッドでそれぞれ構成されることを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、画像データに応じて決定されるドット形成位置に対応して第2離型剤及びインク液滴を正確に打滴することができ、転写性が向上する。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明の一実施形態に係り、前記中間転写体に対する前記第2離型剤の接触角をθ1、前記第1離型剤によって形成される離型層に対する前記第2離型剤の接触角をθ2とするとき、次式 θ1>θ2の関係を満足することを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、中間転写体の表面エネルギーが低い場合でも、第1離型剤によって形成される離型層上に第2離型剤を安定的に付与することが可能であり、中間転写体の材料選択の幅が広がる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明の一実施形態に係り、前記第2離型剤は、前記インク液滴の色材を凝集させる成分、又は前記インク液滴の着弾後に該インク液滴を増粘させる成分を含有することを特徴とする。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、画像データに応じて決定されるドット形成位置に対して打滴されたインク液滴は中間転写体上で第2離型剤と反応して色材が凝集する。よって、隣接するドット形成位置に対して打滴されるインク液滴同士の着弾干渉が防止される。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明の一実施形態に係り、前記第1離型剤及び前記第2離型剤の転写温度における貯蔵弾性率の差は102[Pa]以上であることを特徴とする。
【0024】
また、前記目的を達成するために、請求項9〜11に記載の発明は方法発明を提供する。
【0025】
即ち、請求項9に記載の発明は、中間転写体上の全面に所定の温度で軟化する第1離型剤を付与する工程と、前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して、前記第1離型剤に比べて低い温度で軟化する第2離型剤を打滴する工程と、前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴する工程と、前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する工程と、前記中間転写体上をクリーニングする工程と、前記第1離型剤のガラス転移温度をTg1、前記第2離型剤のガラス転移温度をTg2、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式 Tc>Tg1>Tt>Tg2を満たすように制御する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0026】
また、請求項10に記載の発明は、中間転写体上の全面に電気粘性流体である第1離型剤を付与する工程と、前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して所定の温度で軟化する第2離型剤を打滴する工程と、前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴する工程と、前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する工程と、前記中間転写体上をクリーニングする工程と、前記第2離型剤のガラス転移温度をTg、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式 Tt>Tg、且つ、 Tc>Tgを満たすように制御する工程と、前記第1離型剤の付与後、前記第2離型剤が打滴される前から転写が完了するまで前記中間転写体に対して電界を印加し続け、転写完了後、クリーニングが開始されるまでに前記電界の印加を解除するように制御する工程と、を含むことを特徴とする。
【0027】
また、請求項11に記載の発明は、中間転写体上の全面に所定の温度で軟化する第1離型剤を付与する工程と、前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して電気粘性流体である第2離型剤を打滴する工程と、前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴する工程と、前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する工程と、前記中間転写体上をクリーニングする工程と、前記第1離型剤のガラス転移温度をTg、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式 Tc>Tg>Ttを満たすように制御する工程と、前記第2離型剤の打滴後、前記インク液滴が打滴される前から転写が開始される直前にわたって前記中間転写体に対して電界を印加し続けるとともに、転写完了後、遅くともクリーニング時には前記電界の印加を解除するように制御する工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、第1離型剤が記録媒体に転写されることがなく、記録媒体における非画像部の質感を維持することができるとともに、転写性を向上させることができる。また、中間転写体上の転写後残存物を容易に除去することができ、クリーニング不良を防止することができる。これにより、高品質な画像を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0030】
まず、本発明に係るインクジェット記録方法について説明し、次いで、そのインクジェット記録方法が適用された、本発明に係るインクジェット記録装置の構成例(第1〜第3の実施形態)について説明する。
【0031】
〔インクジェット記録方法〕
図1及び図2は、本発明に係るインクジェット記録方法の概要を示した説明図である。
【0032】
本発明に係るインクジェット記録方法は、図1に示すように、まず、中間転写体10上に第1離型剤αを全面塗布することにより、中間転写体10の表面全体に第1離型層12を形成する(図1(a))。次に、画像データ(記録画像)に応じて決定されるドット形成位置(インク液滴が打滴される位置)に対応して、インクジェットヘッド(不図示)の各ノズルから第2離型剤βを打滴することにより、第1離型層12上に第2離型層14を形成する(図1(b))。更に、画像データに応じて決定されるドット形成位置に対して、インクジェットヘッド(不図示)の各ノズルからインク液滴を打滴することにより、第2離型層14上にインクドット16を形成する(図1(c))。
【0033】
このように中間転写体10上に第1離型層12及び第2離型層14を介してインクドット16からなるインク画像を形成した後、中間転写体10上に形成されたインク画像を記録媒体18に対して転写する(図1(d))。更に、その後、中間転写体10上の転写残存物をクリーナー20(後述するクリーニングローラ38A(図4参照)に相当)に付着させて除去する(図1(e))。以後、上記の各工程が順次繰り返される。
【0034】
本発明で用いられる第1離型剤α、第2離型剤β、及びインクの一例を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
「第1離型剤α」及び「第2離型剤β」については、例えば、電子写真における現像と同様の方法で樹脂そのものを中間転写体10に付与しても良いし、又は、樹脂を溶媒に溶解若しくは分散させた液体を塗布しても良い。即ち、本発明における「第1離型剤α」及び「第2離型剤β」は、固体状態のものに限定されず、液体状態のものも含む広い概念で用いられる。
【0037】
また、第1離型層12及び第2離型層14に関しては、各離型剤α、βが液体状態である場合には、溶媒を蒸発させた後に残った残存物(例えば、樹脂を溶媒に溶解若しくは分散させた場合では樹脂)のことを主として示すが、各離型剤α、βを塗布した時に溶媒量が少ない場合には、必ずしも蒸発工程を経ずとも離型層として取り扱ってよい。また、後述する電気粘性流体の場合には、流体自身の粘弾性が電界によって変化するため、流体そのもの(即ち、溶媒と分散物の混合物)を「離型層」として定義する。
【0038】
本発明においては、第1離型剤αのガラス転移温度をTg1、第2離型剤βのガラス転移温度をTg2、転写温度をTt、クリーニング温度をTcとするとき、次式 Tc>Tg1>Tt>Tg2 の関係を満たすように、転写温度(Tt)やクリーニング温度(Tc)の制御が行われる。このため、転写時においては、第1離型剤αが流動状態になることなく、第2離型剤βのみが流動状態となり、図1(d)に示すように、第2離型剤βからなる第2離型層14の一部(又は全部)が分離され(以下、このような現象を「泣き別れ」ともいう。)、分離された第2離型層14の一部(又は全部)が記録媒体18に転写される。これにより、第1離型剤αからなる第1離型層12が記録媒体18に転写されることがなく、記録媒体18における非画像部の質感を維持することができ、転写性も向上する。例えば、紙の質感を保ったまま画像を転写することができる。
【0039】
本発明における「転写温度」や「クリーニング温度」とは、それぞれの工程(転写工程、クリーニング工程)における離型層自身の温度のことである。実質的には、離型層に物質が接触する場合には、離型層の温度は接触する物質の温度にほぼ等しくなるため、転写温度とは転写時における記録媒体18の温度、クリーニング温度とはクリーニング時におけるクリーナー20(クリーニングローラ38A)の温度とみなしてよい。
【0040】
また、クリーニング時においては、第2離型剤βだけでなく第1離型剤αも流動状態となり、図1(e)に示すように、第2離型剤βからなる第2離型層14とともに、第1離型剤αからなる第1離型層12がクリーナー20に付着するので、中間転写体上の転写後残存物(各離型剤α、β、インク、塵埃など)を容易に除去することができ、クリーニング不良を防止することができる。これにより、高品質な画像を実現することが可能となる。
【0041】
なお、中間転写体10上に第1離型剤αからなる第1離型層12の一部が残存することがあるが(図1(e))、中間転写体10上には第1離型剤αが再び付与されるため、次工程での転写性に影響を与えることはない。
【0042】
本発明によれば、例えば、図2に示すように、中間転写体10の表面全体に第1離型層12を形成後(図2(a))、画像データに応じて決定されるドット形成位置に対応して第2離型剤βを打滴する際、インクジェットヘッドに不吐ノズルが存在し、一部のドット形成位置に対して第2離型剤βが打滴されなかった場合でも(図2(b))、その後に打滴されるインク液滴は、中間転写体10ではなく第1離型層12上に着弾するので(図2(c))、中間転写体10の表面がインクに含有される色材で汚されることがなく、転写不良を防止することができる。また、第1離型層12上に着弾したインク液滴によって形成されるインクドット16Aは記録媒体18に転写されなかった場合においても(図2(d))、クリーニング時にクリーナー20にインクドット16Aを付着させて除去することが可能である(図2(e))。
【0043】
また、中間転写体10の表面全体に第1離型剤αからなる第1離型層12を形成してから、第1離型層12上に第2離型剤βを打滴するようにしているため、中間転写体10の表面エネルギーが低い場合でも第2離型剤βを安定的に着弾させることが可能となる。即ち、中間転写体10に対する第2離型剤βの接触角をθ1、第1離型剤αに対する第2離型剤βの接触角をθ2とするとき、次式 θ1>θ2という関係を満たすことにより、中間転写体10上に直接付与する場合に比べて第2離型剤βを安定的に付与することが可能となる。これにより、中間転写体10の材料選択の幅が広がり、中間転写体10として、例えば、25[mN/m]以下の低表面自由エネルギーをもつものを適用することが可能となる。これにより、中間転写体10として、シリコンゴムのような低表面自由エネルギーの部材を使用可能となり、良好な転写特性を得ることができる。
【0044】
また、本発明によれば、中間転写体10に表面に傷などがついた場合においても、中間転写体10の表面全体に第1離型剤αからなる第1離型層12を形成することによって、傷部分を覆い隠すことができるので、傷などによる転写不良を防止することができる。
【0045】
本発明において、中間転写体10上に打滴されたインク液滴によって形成される画像部(ドット打滴部)の外側周辺に位置する輪郭部にも第2離型剤βを打滴する態様が好ましい。具体的には、画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置だけでなく、少なくともドット形成位置に隣接する位置に第2離型剤βを打滴するようにする。
【0046】
例えば、図3(a)に示すように、12個のインク液滴(インクドット)22からなる画像部24が形成される場合には、図3(b)に示すように、画像部24だけでなく、その外側周辺に位置する輪郭部26にも第2離型剤βを打滴するようにすればよい。
【0047】
なお、図示の例では、各インク液滴22が打滴されるドット形成位置に対して縦横の4方向に隣接する位置に第2離型剤βを打滴しているが、図3(c)に示すように、斜め方向を含む8方向に隣接する位置にも第2離型剤βを打滴するようにしてもよい。また、図3(d)に示すように、各インク液滴22が打滴されるドット形成位置の4方向(縦方向及び横方向)にそれぞれ複数の第2離型剤βが存在するように打滴してもよい。
【0048】
このように画像部の外側周辺に位置する輪郭部にも第2離型剤βを打滴することにより、インク液滴の着弾安定性が向上する。特に、エッジ品質に優れた画像を得ることができる。
【0049】
また、上述した画像部の輪郭部にも第2離型剤βを打滴する態様に代えて、ドット形成位置(インク液滴が打滴される位置)と同一位置に対して、インク液滴に比べて第2離型剤βの液滴量(液滴体積)を多くする態様も可能であり、同様な効果を得ることができる。
【0050】
また、本発明においては、後述するように、第1離型剤α及び第2離型剤βのうち、一方の離型剤を所定の温度で軟化する材料(例えば、樹脂など)とし、他方の離型剤を印加される電界に応じて粘度変化する電気粘性流体(ER流体)とする態様がある。
【0051】
また、本発明においては、回転型動的粘弾性測定装置によって測定された第1離型剤α及び第2離型剤βの転写温度における貯蔵弾性率の差が102[Pa]以上離れていることが好ましく、第2離型剤βの貯蔵弾性率の値(Gβ’)が2×102[Pa]未満であることが更に好ましい。
【0052】
〔インクジェット記録装置〕
次に、本発明に係るインクジェット記録装置の構成例(第1〜第3の実施形態)について説明する。
【0053】
(第1の実施形態)
図4は、第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の概略を示した構成図である。図4に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置100は、中間転写体10の搬送方向(図4中、矢印Aで示す方向;以下、「中間転写体搬送方向」という。)に関して上流側から順に、第1離型剤αを付与する第1離型剤付与部30と、第2離型剤βを打滴する第2離型剤打滴部32と、インク液滴を打滴するインク打滴部34と、中間転写体10上に形成されたインク画像を記録媒体18に対して転写を行う転写部36と、中間転写体10上をクリーニングするクリーニング部38とから主に構成される。
【0054】
本実施形態のインクジェット記録装置100では、所定の温度で軟化する第1離型剤αと、第1離型剤αに比べてガラス転移温度の低い第2離型剤βとが用いられ、第1離型剤αのガラス転移温度をTg1、第2離型剤βのガラス転移温度をTg2、転写温度をTt、クリーニング温度をTcとするとき、次式 Tc>Tg1>Tt>Tg2 を満たすように転写温度(Tt)やクリーニング温度(Tc)の制御が行われる。なお、本制御は、後述するシステムコントローラ(図4中不図示、図9に符号72で図示)を中心として行われる。
【0055】
図4に示す中間転写体10には無端状ベルトが適用され、中間転写体(無端状ベルト)10は複数のローラ(図4には2つの張架ローラ40A、40B、及び転写加熱用の加熱対向ローラ36Bを図示)に巻きかけられた構造を有し、これらローラの少なくとも1つにモータ(図4中不図示、図9に符号88で図示)の動力が伝達されることにより、中間転写体10は、図4において反時計回り方向(図1中、矢印Aで示す方向;中間転写体搬送方向)に駆動される。
【0056】
中間転写体(無端状ベルト)10は、第2離型剤打滴部32及びインク打滴部34と対向する表面(画像形成面)10Aの少なくともインク画像(1次画像)が形成される画像形成領域(不図示)には、樹脂、金属やゴムなどのインク液滴が浸透しない非浸透性を有している。また、中間転写体10の少なくとも画像形成領域は、所定の平坦性を有する水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0057】
中間転写体10の画像形成面10Aを含む表面層に用いられる好ましい材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂等の公知の材料が挙げられる。
【0058】
中間転写体搬送方向の最上流側に配置される第1離型剤付与部30は、塗布ローラ30A、及び第1離型剤αが収容される塗布液容器(不図示)を含んで構成される。塗布ローラ30Aは中間転写体10に対して従動して回転するか、独立して塗布ローラ30Aが駆動し回転制御可能となっており、塗布ローラ30Aの回転に応じて、塗布液容器内に収容される第1離型剤αが中間転写体10の画像形成面10Aに全面塗布される。
【0059】
塗布ローラ30Aには、多孔質材料や表面に凹凸がある材料が望ましく、例えば、グラビアロール状のもの等を用いることができる。本例では、第1離型剤αを中間転写体10に付与する手段として、ローラ形状を有する塗布部材を例示したが、第1離型剤αを中間転写体10に付与する手段はローラ形状に限定されず、ブレードにより塗布する方式やスプレー、インクジェットヘッドを用いることができる。
【0060】
本発明において、第1離型剤αは中間転写体10の画像形成面10A全体に付与する必要があるため、本例のように塗布によって付与する態様が好ましい。また、第1離型剤αを直接塗布してもよいし、第1離型剤αを溶媒に分散若しくは溶解させた液体を中間転写体10上に塗布し、その後に第1離型剤αを含む液体を乾燥させることにより溶媒を蒸発させ、中間転写体10上に第1離型層12(図1参照)を形成するようにしてもよい。
【0061】
中間転写体搬送方向に関して第1離型剤付与部30より下流側に配置される第2離型剤打滴部32は、インクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)32Aを含んで構成され、ヘッド32Aから中間転写体10の画像形成面10Aに対して第2離型剤βが打滴される。第2離型剤βは、画像データ(記録画像)に応じて決定されるドット形成位置(インク液滴が打滴される位置)に対応して打滴される。
【0062】
本発明において、上述したように画像部の外側周辺に位置する輪郭部にも第2離型剤βを打滴する態様、即ち、画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置だけでなく、ドット形成位置に隣接する位置にも第2離型剤βを打滴する態様が好ましい(図3(a)、(b)参照)。
【0063】
また、第2離型剤βにインク中の色材を凝集させる成分、又はインク液滴の着弾後に該インク液滴を増粘させる成分(処理剤)を含有させる態様も好ましい。中間転写体10上で第2離型剤βとインク液滴が反応して色材凝集体が形成されるので、隣接するドット形成位置に打滴されたインク液滴同士の着弾干渉を防止することができる。
【0064】
ここで、インクとしては、液体の溶媒に色材が分子の状態(イオンの状態であってもよい)で溶解している染料インク、液体の溶媒に色材が微小な塊の状態で分散している顔料インク等が挙げられる。言い換えると、インクに含有される色材は、分子の状態(イオンの状態であってもよい)で液体の溶媒に溶解する物質や、微小な塊となった状態で液体の溶媒に分散する物質が挙げられる。
【0065】
一方、処理剤とは「インクと反応してインク中の色材を析出あるいは不溶化させる成分」、「インク中の色材を含む半固体状の物質(ゲル)を生成する成分」等が挙げられる。インクと反応するときの処理剤の状態としては、固体もしくは半固形状態であることが好ましい。
【0066】
このような反応を引き起こす手段としては、インク中のアニオン性の色材を処理剤中のカチオン性の化合物を反応させる方法、互いにpHの異なるインクと処理剤とを混合させることでインクのpHを変化させ、インク中の顔料の分散破壊を起こし、顔料を凝集させる方法、処理剤中の多価金属塩との反応によりインク中の顔料の分散破壊を起こし、顔料を凝集させる方法などがある。
【0067】
中間転写体搬送方向に関して第2離型剤打滴部32より下流側に配置されるインク打滴部34は、中間転写体搬送方向に沿って上流側から、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の各色インクに対応したインクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)34C、34M、34Y、34Kが順に設けられる。各ヘッド34C、34M、34Y、34Kから中間転写体10の画像形成面10Aに対してそれぞれ対応する各色のインク液滴が打滴される。
【0068】
図5に示すように、第2離型剤打滴部32のヘッド32A、及びインク打滴部34の各ヘッド34C、34M、34Y、34Kは、それぞれ中間転写体10における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有し、そのインク吐出面には画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズル(図5中不図示、図6に符号51で図示)が複数配列されたフルライン型のヘッドで構成されており、それぞれ中間転写体搬送方向と直交する方向に延在するように固定設置される。
【0069】
本例では、第2離型剤打滴部32のヘッド32Aは、インク打滴部34のヘッド34C、34M、34Y、34Kと同一構造が適用される。なお、第2離型剤打滴部32のヘッド32Aは、画像データに応じて決定されるドット形成位置に対して第2離型剤βを打滴可能なものであればよく、例えば、インク打滴部34のヘッド34C、34M、34Y、34Kよりも打滴密度(解像度)を落とした構造のヘッドを適用してもよい。
【0070】
中間転写体10の幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッドを吐出液別に設ける構成によれば、中間転写体搬送方向(副走査方向)について、中間転写体10と第2離型剤打滴部32及びインク打滴部34を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、中間転写体10の画像形成領域にインク画像(1次画像)を記録することができる。これにより、中間転写体搬送方向と直交する方向(主走査方向;図5参照)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドが適用される場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
【0071】
本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0072】
液体貯蔵/装填部(不図示)は、各ヘッド32A、34C、34M、34Y、34Kにそれぞれ供給する液体(第2離型剤β又は各色インク)を各々貯蔵する液体タンク(図4中不図示、図8に符号60で図示)を含んで構成され、各タンクは所要の流路を介してそれぞれ対応するヘッドと連通されており、各ヘッドに対してそれぞれ対応する液体を供給する。また、液体貯蔵/装填部は、タンク内の液体残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、液体間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0073】
中間転写体搬送方向に関してインク打滴部34より下流側であって転写部36より上流側には、加熱乾燥部42が設けられる。加熱乾燥部42は、中間転写体10の画像形成面10Aの裏面10B側に設けられたヒータ(図4中不図示、図9に符号89で図示)を含んで構成され、インク画像(1次画像)が形成された中間転写体10を裏面10B側からヒータによって加熱する。
【0074】
加熱乾燥部42に配置されるヒータの加熱温度範囲は、転写時の加熱温度(転写温度)よりも低く設定される。中間転写体10の画像形成領域を予備加熱することで、予備加熱を行わない場合に比べて転写部36の加熱温度を低く設定することが可能となり、更に、転写部36の転写時間を少なくすることができる。
【0075】
加熱乾燥部42は、中間転写体10上に形成されたインク画像に含まれる溶媒を乾燥させる溶媒除去部を兼ねている。加熱乾燥部42の構成としては、中間転写体10の裏面10B側にヒータを具備し、中間転写体10の表面(画像形成面)10A側から乾燥した熱風を中間転写体10に対して当てる方式が最も簡便であり好ましい。もちろん、加熱乾燥部42に代えて、又は加熱乾燥部42に併設して、例えば、表面が多孔質体で構成されたローラ状の溶媒吸収部材(溶媒除去ローラ)を中間転写体10の画像形成面10Aに接触させて、溶媒を吸収除去する態様もある。また、溶媒除去ローラに代えて、エアナイフで余剰な溶媒を中間転写体10から取り除く方式などを適用することも可能である。
【0076】
記録媒体18を転写部36へ供給する給紙部(不図示)の構成としては、ロール紙(連続用紙)のマガジンを備える態様、或いは、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給する態様がある。ロール紙を使用する装置構成の場合、裁断用のカッターが設けられており、該カッターによってロール紙は所望のサイズにカットされる。紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンやカセットを併設してもよい。
【0077】
複数種類の記録媒体を利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0078】
本例に適用される記録媒体18の具体例を挙げると、普通紙、インクジェット専用紙などの浸透性媒体、コート紙などの非浸透性又は低浸透性の媒体、裏面に粘着剤と剥離ラベルの付いたシール用紙、OHPシートなどの樹脂フィルム、金属シート、布、木など様々な媒体がある。
【0079】
加熱乾燥部42の中間転写体搬送方向下流側に配置される転写部36は、ヒータ(図4中不図示、図9に複数のヒータを代表して符号89で図示)を有した転写加熱ローラ36Aと、これに対向して配置される加熱加圧ニップ用の加熱対向ローラ36Bとを含んで構成され、これらローラ36A、36B間に中間転写体10と記録媒体18とを挟み込み、所定の温度に加熱しながら、所定の圧力(ニップ圧)で加圧することにより、中間転写体10上に形成されたインク画像(1次画像)が記録媒体18に転写される構成となっている。
【0080】
転写部36による転写時の加熱温度(転写温度)は、第1離型剤α及び第2離型剤βのガラス転移温度に応じて決定される。具体的には、転写温度(Tt)が第1離型剤αのガラス転移温度(Tg1)より低く、且つ、第2離型剤βのガラス転移温度(Tg2)より高くなるように(即ち、Tg1>Tt>Tg2)、後述するシステムコントローラ(図4中不図示、図9に符合72で図示)によって転写部36に配置されるヒータの制御が行われる。
【0081】
転写部36における転写時のニップ圧を調整するための手段としては、例えば、転写加熱ローラ36Aを図4の上下方向(符号Cで図示)に移動させる機構(駆動手段)が挙げられる。
【0082】
転写部36の記録媒体搬送方向(図4中、矢印Bで示す方向)下流側には、定着部(不図示)が配置されることが好ましい。例えば、定着部には、100℃〜180℃の範囲で温度調整可能な加熱ローラ対を含んで構成され、転写部36にてインク画像が転写された記録媒体18を加熱ローラ対の間を通過させることにより、記録媒体18に対するインク画像の定着性や耐擦過性を向上させることができる。
【0083】
中間転写体搬送方向に関して転写部36より下流側に配置されるクリーニング部38は、中間転写体10上をクリーニングする手段として、中間転写体10の画像形成面10Aに当接しながら転写後残存物を表面に付着させて除去するクリーニングローラ38Aを含んで構成される。
【0084】
なお、中間転写体10から転写後残存物を除去するクリーニング手段の構成は、上記の例に限らず、ブレードを用いて転写後残存物を払拭除去する方式、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、粘着ロール方式或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
【0085】
本実施形態のインクジェット記録装置100には、中間転写体10を挟んでクリーニング部38のクリーニングローラ38Aに対向する位置に加熱部44が設けられる。加熱部44は、上述した加熱乾燥部42と同様な構成が適用され、中間転写体10の画像形成面10Aの裏面10B側に設けられたヒータ(図4中不図示、図9に符号89で図示)を含んで構成される。
【0086】
クリーニング部38において中間転写体10の画像形成面10Aをクリーニングする際、中間転写体10を裏面10B側から加熱部44のヒータによって所定温度に加熱しながら、中間転写体10上のクリーニングが行われ、中間転写体10上から転写後残存物が除去される構成となっている。
【0087】
クリーニング部38に対応して設けられる加熱部44の加熱温度(クリーニング温度)は、転写温度と同様に、第1離型剤α及び第2離型剤βのガラス転移温度に応じて決定される。具体的には、クリーニング温度(Tc)が第1離型剤αのガラス転移温度(Tg1)及び第2離型剤βのガラス転移温度(Tg2)より高くなるように(即ち、Tc>Tg1>Tt>Tg2)、後述するシステムコントローラ(図4中不図示、図9に符合72で図示)によって加熱部44に配置されるヒータの制御が行われる。
【0088】
次に、第2離型剤打滴部32に配置されるヘッド32A、及びインク打滴部34に配置されるヘッド34C、34M、34Y、34Kの構造について詳説する。なお、各ヘッド32A、34C、34M、34Y、34Kの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示す。また、説明の便宜上、ヘッドから吐出される液体がインクである場合について説明するが、第2離型剤打滴部32に配置されるヘッド32Aの場合には「インク」を「第2離型剤β」と読み替えればよい。
【0089】
図6(a)はヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図6(b)はその一部の拡大図である。また、図6(c)はヘッド50の他の構造例を示す平面透視図、図7はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図6(a)、(b)中の7−7線に沿う断面図)である。
【0090】
中間転写体10上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図6(a)、(b)に示すように、インク滴の吐出孔であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(中間転写体搬送方向と直交する主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0091】
中間転写体10の搬送方向と略直交する方向に中間転写体10の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図6(a)の構成に代えて、図6(c)に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドブロック50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで中間転写体10の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
【0092】
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。共通流路55はインク供給源たるインク供給タンク(図7中不図示、図8に符号60で図示)と連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは図7の共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
【0093】
圧力室52の天面を構成し共通電極と兼用される振動板56には個別電極57を備えた圧電素子58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによって圧電素子58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
【0094】
本例では、ヘッド50に設けられたノズル51から吐出させるインクの吐出力発生手段として圧電素子58を適用したが、圧力室52内にヒータを備え、ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させるサーマル方式を適用することも可能である。
【0095】
かかる構造を有するインク室ユニット53を図6(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0096】
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0097】
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
【0098】
また、本発明の適用範囲はライン型ヘッドによる印字方式に限定されず、中間転写体10の幅方向(主走査方向)の長さに満たない短尺のヘッドを中間転写体10の幅方向に走査させて当該幅方向の印字を行い、1回の幅方向の印字が終わると中間転写体10を幅方向と直交する方向(副走査方向)に所定量だけ移動させて、次の印字領域の中間転写体10の幅方向の印字を行い、この動作を繰り返して中間転写体10の印字領域の全面にわたって印字を行うシリアル方式を適用してもよい。
【0099】
図8は、インクジェット記録装置100におけるインク供給系の構成を示した概要図である。なお、処理液供給系についてもインク供給系と同様の構成が適用される。
【0100】
インク供給タンク60はヘッド50にインクを供給する基タンクであり、上述した液体貯蔵/装填部(不図示)に含まれる。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
【0101】
図8に示したように、インク供給タンク60とヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
【0102】
なお、図8には示さないが、ヘッド50の近傍又はヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
【0103】
また、インクジェット記録装置100には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ヘッド50のインク吐出面の清掃手段としてクリーニングブレード66が設けられている。
【0104】
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によってヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
【0105】
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によってヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド50に密着させることにより、ノズル面をキャップ64で覆う。
【0106】
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、圧電素子58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
【0107】
このような状態になる前に(圧電素子58の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)圧電素子58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ64(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。
【0108】
なお、中間転写体10に向けてインクを打滴して予備吐出を行う態様も可能である。例えば、複数の画像を連続的に形成する場合には、画像間で予備吐出を実行することが可能である。特に、同一画像を複数枚形成する場合には、特定のノズルにおいてインク吐出の頻度が低くなり、吐出異常の発生する可能性が高くなり、当該特定のノズルについて画像間で予備吐出を行うことが好ましい。
【0109】
中間転写体10に予備吐出を行う場合には、転写加熱ローラ36Aに予備吐出によるインクが付着しないように、転写加熱ローラ36Aを移動させて、転写加熱ローラ36Aと中間転写体10との間に所定のクリアランス(例えば、10mm程度)を設けるとよい。
【0110】
また、ヘッド50内(圧力室52内)のインクに気泡が混入した場合、圧電素子58が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合にはヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。
【0111】
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
【0112】
クリーニングブレード66はゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構によりヘッド50のインク吐出面に摺動可能である。インク吐出面にインク液滴または異物が付着した場合、クリーニングブレード66をインク吐出面に摺動させることでインク吐出面を拭き取り、インク吐出面を清掃する。
【0113】
図9は、インクジェット記録装置100のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置100は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
【0114】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置100に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。
【0115】
メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0116】
システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置100の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御し、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
【0117】
メモリ74には、システムコントローラ72のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、メモリ74は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ74は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0118】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがって、モータ88を駆動するドライバである。図9には、装置内の各部に配置されるモータ(アクチュエータ)を代表して符号88で図示されている。例えば、図9に示すモータ88には、図4のローラ40A、40B、36Bの中の駆動ローラを駆動するモータや、転写加熱ローラ36Aの移動機構のモータなどが含まれている。
【0119】
ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって、ヒータ89を駆動するドライバである。図9には、インクジェット記録装置100に備えられる複数のヒータを代表して符号89で図示されている。例えば、図9に示すヒータ89には、図4に示す加熱乾燥部42、加熱部44のヒータや、転写加熱ローラ36Aに含まれるヒータなどが含まれている。
【0120】
転写制御部79は、システムコントローラ72からの指示にしたがって、転写部36の転写加熱ローラ36Aの押圧制御や温度制御を行う。記録媒体18の種類やインクの種類ごとに、転写加熱ローラ36Aの押圧最適値や温度最適値が予め求められ、データテーブル化されて所定のメモリ(例えば、メモリ74)に記憶され、記録媒体18の情報や使用インクの情報を取得すると、当該メモリを参照して転写加熱ローラ36Aの押圧や温度が制御される。
【0121】
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ84を介して第2離型剤打滴部32及びインク打滴部34に配置される各ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0122】
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0123】
第1離型剤付与制御部81は、図4に示す塗布ローラ30Aによる第1離型剤αの塗布量を制御する。本例では、中間転写体10と塗布ローラ30Aとを接触、離間可能に構成し、塗布ローラ30Aを中間転写体10に接触させる時間を可変することで、第1離型剤αの付与量を制御する。また、第1離型剤付与部30の塗布液容器内の第1離型剤αの残量を検出するセンサを備え、第1離型剤付与制御部81は該センサから得られる情報に基づいて塗布液容器内の第1離型剤αの残量を判断し、残量が所定量以下になると、その旨を報知する。
【0124】
ヘッドドライバ84は、プリント制御部80から与えられる画像データに基づいて第2離型剤打滴部32及びインク打滴部34の各ヘッド50の圧電素子58に印加される駆動信号を生成するとともに、該駆動信号を圧電素子58に印加して圧電素子58を駆動する駆動回路を含んで構成される。なお、図9に示すヘッドドライバ84には、ヘッド50の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0125】
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース70を介して外部から入力され、メモリ74に蓄えられる。この段階では、RGBの画像データがメモリ74に記憶される。
【0126】
メモリ74に蓄えられた画像データは、システムコントローラ72を介してプリント制御部80に送られ、該プリント制御部80においてインク色ごとのドットデータ及び第2離型剤βのドットデータに変換される。即ち、プリント制御部80は、入力されたRGB画像データをCMYKの4色のドットデータ及び第2離型剤βのドットデータに変換する処理を行う。プリント制御部80で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ82に蓄えられる。
【0127】
なお、中間転写体10上に形成される1次画像は、転写の際に反転することを考慮して、最終的に記録媒体18に形成される二次画像の鏡面画像としなければならない。即ち、各ヘッド50に供給される駆動信号は鏡面画像に対応した駆動信号であり、プリント制御部80にて入力画像に対して反転処理を施す必要がある。
【0128】
プログラム格納部90には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部90はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部90は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
【0129】
次に、上記のように構成されたインクジェット記録装置100の動作について説明する。
【0130】
本実施形態のインクジェット記録装置100では、中間転写体10が中間転写体搬送方向に搬送されつつ、まず、第1離型剤付与部30において中間転写体10上の全面に第1離型剤αが付与され、これにより、第1離型剤αからなる第1離型層12が中間転写体10の表面全体に形成される(図1(a))。
【0131】
次いで、画像データに応じて決定されるドット形成位置(インク液滴が打滴される位置)に対応して、第2離型剤打滴部32のヘッド32Aから第2離型剤βが打滴される。これにより、第2離型剤βからなる第2離型層14が第1離型層12上に形成される(図1(b))。
【0132】
このとき、ドット形成位置と同一位置だけでなく、ドット形成位置に隣接する位置にも第2離型剤βが打滴されることが好ましい(図3参照)。これにより、この後に打滴されるインク液滴の着弾安定性が向上し、転写性が向上する。特に、エッジ品質に優れた画像を得ることができる。
【0133】
第2離型剤βが打滴された後、画像データに応じて決定されるドット形成位置に対して、インク打滴部34の各ヘッド34C、34M、34Y、34Kからインク液滴が打滴される。上述したように、各色のインク液滴が打滴される位置(ドット形成位置)には既に第2離型剤βからなる第2離型層14が形成されており、各ヘッドから打滴されたインク液滴は第2離型層14上に着弾してインクドット16が形成される(図1(c))。
【0134】
こうして中間転写体10上に形成されたインク画像は、中間転写体10の搬送に伴って、加熱乾燥部42において予備加熱されながら、インク画像に含まれる溶媒成分が除去される。その後、転写部36において、ヒータを有する転写加熱ローラ36Aによって所定の温度に加圧加熱されながら、中間転写体10上に形成されたインク画像が記録媒体18に転写される。
【0135】
このとき、転写温度(Tt)が第1離型剤αのガラス転移温度(Tg1)より低く、且つ、第2離型剤βのガラス転移温度(Tg2)より高くなるように(即ち、Tg1>Tt>Tg2)、上述したシステムコントローラ72によって制御が行われているため、転写時においては、第1離型剤αからなる第1離型層12は流動状態になることなく、第2離型剤βからなる第2離型層14のみが流動状態となり、図1(d)に示すように、第2離型層14の一部(又は全部)が記録媒体18に転写される。
【0136】
また、転写後、クリーニング部38に対応して設けられる加熱部44によって所定温度に加熱されながら、クリーニング部38のクリーニングローラ38Aによって中間転写体10上のクリーニングが行われる。このとき、クリーニング温度(Tc)は第1離型剤αのガラス転移温度(Tg1)及び第2離型剤βのガラス転移温度(Tg2)より高くなるように(即ち、Tc>Tg1>Tt>Tg2)、システムコントローラ72によって制御が行われているため、第2離型剤βからなる第2離型層14だけでなく、第1離型剤αからなる第1離型層12も流動状態となり、第2離型剤βからなる第2離型層14とともに、第1離型剤αからなる第1離型層12を中間転写体10上から容易に除去することができる。
【0137】
本実施形態のインクジェット記録装置100によれば、中間転写体10上の全面に第1離型剤αからなる第1離型層12を形成後、画像データに応じて決定されるドット形成位置に対して第2離型剤β、インク液滴を順次打滴して、更に、転写時には第2離型剤βのみが流動状態となり、クリーニング時には第1離型剤αも流動状態となるように制御が行われる。これにより、第1離型剤αが記録媒体18に転写されることがなく、記録媒体18における非画像部の質感を維持することができるとともに、転写性を向上させることができる。また、中間転写体10上の転写後残存物を容易に除去することができ、転写不良を防止することができる。これにより、高品質な画像を実現することが可能となる。
【0138】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係るインクジェット記録装置の第2の実施形態について説明する。以下、第1の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
【0139】
図10は、第2の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成例を示した概略図である。図10中、図4と共通又は類似する部分には同一番号を付している。
【0140】
第2の実施形態は、第1離型剤αが印加される電界に応じて粘度変化する電気粘性流体(ER流体)であり、第2離型剤βが所定の温度で流動状態となる材料(例えば、樹脂など)である態様である。
【0141】
電気粘性流体とは、前述したように、この液体を電界中に置くと、瞬時に、無電界の状態に比べてこの液体の粘度が変化する液体をいう。この電気粘性流体の構成材料としては、粒子分散型と均一型とがあるが、粘度変化の大きさ、および材料選択の広さでは粒子分散型が勝っている。粒子分散型にも水系と非水系があり、水系粒子分散型としては、水溶液や極性溶媒中に、シリカ、表面処理シリカ、アクリル酸ポリマー、シリコンポリマー、デンプン、ゼラチン、多孔質物質等の粒子を分散したものが適している。非水系粒子分散型としては、絶縁性有機液体中に、シリカ、TiO2、銅フタロシアニン、ポリアニリン、金属コロイド、炭素粉体、チタン酸塩、酒石酸塩などを分散したものが適している。
【0142】
図10に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置200には、中間転写体10の裏面10B側に電界付与部46(46A、46B)が設けられている。
【0143】
電界付与部46は、第1離型剤付与部30と第2離型剤打滴部32の間から中間転写体搬送方向下流側に向かって転写部36までの領域に渡って設けられており、第1離型剤αの付与後、第2離型剤βが打滴される前から記録媒体18に対する画像転写が完了するまで所定の電界が印加され続け、転写完了後、クリーニングが開始されるまでに前記電界の印加が解除されるように制御が行われる。
【0144】
また、中間転写体搬送方向下流側に位置する電界付与部46Bは、ヒータを含んで構成されており、第1の実施形態における加熱乾燥部42(図4参照)を兼ねている。
【0145】
また、第2離型剤βのガラス転移温度(Tg2)が転写温度(Tt)及びクリーニング温度(Tc)より低くなるように、転写温度(Tt)やクリーニング温度(Tc)の制御が行われる。即ち、次式 Tt>Tg2、且つ、Tc>Tg2を満たすように制御が行われる。
【0146】
かかる構成により、第1離型剤付与部30の塗布ローラ30Aによって第1離型剤αが全面塗布されると、中間転写体10上に第1離型層12が形成される(図1(a))。中間転写体10の搬送に伴って、中間転写体10上の第1離型層12が形成された領域が中間転写体搬送方向下流側に向かって移動すると、電界付与部46(46A、46B)によって電界が印加され、第1離型剤αからなる第1離型層12は増粘状態となる。
【0147】
この後、第1の実施形態と同様に、画像データに応じて決定されるドット形成位置に対して第2離型剤β、インク液滴が順次打滴される。そして、加熱乾燥部を兼ねる電界付与部46Bによって予備加熱されながら、インク画像に含まれる溶媒成分(液体)が除去された後、転写部36の転写加熱ローラ36Aによって所定の温度に加圧加熱され、第2離型剤βは流動状態となり、中間転写体10上に形成されたインク画像が記録媒体18に転写される。転写後、電界の印加が解除され、第1離型剤αからなる第1離型層12は低粘度化した状態となり、クリーニング部38のクリーニングローラ38Aによって中間転写体10上のクリーニングが行われる。
【0148】
本実施形態によれば、転写時には、第1離型剤αからなる第1離型層12が低粘度化することなく、第2離型剤βからなる第2離型層14が流動状態となるので、記録媒体18に第1離型剤αが転写されることがなく、記録媒体18の非画像部の質感を維持しつつ、転写性を向上させることができる。また、クリーニング時には、第1離型剤αからなる第1離型層12が低粘度化した状態となるので、中間転写体10上の転写後残存物を容易に除去することができ、転写不良を防止することができる。これにより、高品質な画像を実現することが可能となる。
【0149】
(第3の実施形態)
次に、本発明に係るインクジェット記録装置の第3の実施形態について説明する。以下、第1及び第2の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
【0150】
図11は、第3の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成例を示した概略図である。図11中、図4又は図10と共通又は類似する部分には同一番号を付している。
【0151】
第3の実施形態では、第1離型剤αが所定の温度で流動状態となる材料(例えば、樹脂など)であり、第2離型剤βが印加される電界に応じて粘度変化する電気粘性流体(ER流体)である態様である。
【0152】
図11に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置300には、中間転写体10の裏面10B側に電界付与部46(46A、46B)が設けられている。
【0153】
電界付与部46は、第2離型剤打滴部32とインク打滴部34の間から中間転写体搬送方向下流側に向かって転写部36の直前までの領域にわたって設けられており、第2離型剤βの打滴後、インク液滴が打滴される前から転写が開始されるまで電界が印加され続け、転写が開始される時には前記電界の印加が解除されるように制御が行われる。
【0154】
また、本実施形態のインクジェット記録装置300には、第1の実施形態と同様に、クリーニング部38に対応する加熱部44が中間転写体10の裏面10B側に設けられている。
【0155】
また、第1離型剤αのガラス転移温度(Tg1)が転写温度(Tt)より高く、且つクリーニング温度(Tc)より低くなるように、転写温度(Tt)やクリーニング温度(Tc)の制御が行われる(即ち、Tc>Tg1>Tt)。
【0156】
かかる構成により、第1離型剤付与部30の塗布ローラ30Aによって第1離型剤αが全面塗布されると、中間転写体10上に第1離型層12が形成される(図1(a))。その後、中間転写体10の搬送に伴って、画像データに応じて決定されるドット形成位置に対して第2離型剤βが打滴されると、電界付与部46(46A)から印加される電界によって、第2離型剤βからなる第2離型層14は増粘状態となる。
【0157】
インク液滴を打滴する前に第2離型剤βからなる第2離型層14を増粘させておくことにより、第2離型層14に着弾したインク液滴が第2離型層14内部に入り込むことによって、転写時にインク液滴が記録媒体18に転写されない現象を未然に防止することができる。
【0158】
第2離型剤βの打滴後、第1の実施形態と同様に、インク液滴が打滴される。その後、中間転写体10の搬送に伴って、電界付与部46による中間転写体10に対する電界の印加は転写部36の直前で解除され、第2離型剤βからなる第2離型層14は低粘度化した状態となる。そして、転写部36の転写加熱ローラ36Aによって所定の温度に加圧加熱され、中間転写体10上に形成されたインク画像が記録媒体18に転写される。このとき、第1離型剤αからなる第1離型層12は非流動状態である。その後、加熱部44によって所定の温度に加熱され、第1離型剤αからなる第1離型層12は流動状態となり、クリーニング部38のクリーニングローラ38Aによって中間転写体10上のクリーニングが行われる。
【0159】
本実施形態によれば、転写時には、第1離型剤αからなる第1離型層12が流動状態になることなく、第2離型剤βからなる第2離型層14が低粘度化した状態となるので、記録媒体18に第1離型剤αが転写されることがなく、記録媒体18の非画像部の質感を維持しつつ、転写性を向上させることができる。また、クリーニング時には、第1離型剤αからなる第1離型層12が流動状態となるので、中間転写体10上の転写後残存物を容易に除去することができ、転写不良を防止することができる。これにより、高品質な画像を実現することが可能となる。
【0160】
以上、本発明のインクジェット記録装置及び記録方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】本発明に係るインクジェット記録方法の概要を示した説明図
【図2】本発明に係るインクジェット記録方法の概要を示した説明図
【図3】画像部の輪郭部に第2離型剤を打滴する態様を示した説明図
【図4】第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の概略を示した説明図
【図5】第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の印字部周辺の要部平面図
【図6】ヘッドの構造例を示す平面透視図
【図7】図6中7−7線に沿う断面図
【図8】第1の実施形態に係るインクジェット記録装置のインク供給系の構成を示す概略図
【図9】第1の実施形態に係るインクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【図10】第2の実施形態に係るインクジェット記録装置の概略を示した説明図
【図11】第3の実施形態に係るインクジェット記録装置の概略を示した説明図
【符号の説明】
【0162】
10…中間転写体、12…第1離型層、14…第2離型層、16…インクドット、18…記録媒体、20…クリーナー、22…インク液滴、24…画像部、26…輪郭部、30…第1離型剤付与部、32…第2離型剤打滴部、34…インク打滴部、36…転写部、38…クリーニング部、42…加熱乾燥部、44…加熱部、50…ヘッド、51…ノズル、80…システムコントローラ、100、200、300…インクジェット記録装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間転写体上の全面に所定の温度で溶融する第1離型剤を付与する第1離型剤付与手段と、
前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して、前記第1離型剤に比べて低い温度で溶融する第2離型剤を打滴する第2離型剤打滴手段と、
前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴するインク打滴手段と、
前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する転写手段と、
前記中間転写体上をクリーニングするクリーニング手段と、
前記中間転写体を加熱する加熱手段と、
前記第1離型剤のガラス転移温度をTg1、前記第2離型剤のガラス転移温度をTg2、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式 Tc>Tg1>Tt>Tg2を満たすように前記加熱手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
中間転写体上の全面に電気粘性流体である第1離型剤を付与する第1離型剤付与手段と、
前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して所定の温度で溶融する第2離型剤を打滴する第2離型剤打滴手段と、
前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴するインク打滴手段と、
前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する転写手段と、
前記中間転写体上をクリーニングするクリーニング手段と、
前記中間転写体を加熱する加熱手段と、
前記中間転写体に電界を印加する電界印加手段と、
前記第2離型剤のガラス転移温度をTg、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式 Tt>Tg、且つ、 Tc>Tg を満たすように前記加熱手段を制御する第1制御手段と、
前記第1離型剤の付与後、前記第2離型剤が打滴される前から転写が完了するまで前記中間転写体に対して電界を印加し続け、転写完了後、クリーニングが開始されるまでに前記電界の印加を解除するように前記電界印加手段を制御する第2制御手段と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
中間転写体上の全面に所定の温度で溶融する第1離型剤を付与する第1離型剤付与手段と、
前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して電気粘性流体である第2離型剤を打滴する第2離型剤打滴手段と、
前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴するインク打滴手段と、
前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する転写手段と、
前記中間転写体上をクリーニングするクリーニング手段と、
前記中間転写体を加熱する加熱手段と、
前記中間転写体に電界を印加する電界印加手段と、
前記第1離型剤のガラス転移温度をTg、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式 Tc>Tg>Ttを満たすように前記加熱手段を制御する第1制御手段と、
前記第2離型剤の打滴後、前記インク液滴が打滴される前から転写が開始されるまで前記中間転写体に対して電界を印加し続け、転写が開始される時には前記電界の印加が解除されるように前記電界印加手段を制御する第2制御手段と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記第2離型剤打滴手段は、前記ドット形成位置と同一位置だけでなく、前記ドット形成位置に隣接する位置にも前記第2離型剤を打滴することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記第2離型剤打滴手段及び前記インク打滴手段は同一解像度をもつインクジェットヘッドでそれぞれ構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記中間転写体に対する前記第2離型剤の接触角をθ1、前記第1離型剤によって形成される離型層に対する前記第2離型剤の接触角をθ2とするとき、次式 θ1>θ2の関係を満足することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記第2離型剤は、前記インク液滴の色材を凝集させる成分、又は前記インク液滴の着弾後に該インク液滴を増粘させる成分を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記第1離型剤及び前記第2離型剤の転写温度における貯蔵弾性率の差は102[Pa]以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
中間転写体上の全面に所定の温度で溶融する第1離型剤を付与する工程と、
前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して、前記第1離型剤に比べて低い温度で溶融する第2離型剤を打滴する工程と、
前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴する工程と、
前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する工程と、
前記中間転写体上をクリーニングする工程と、
前記第1離型剤のガラス転移温度をTg1、前記第2離型剤のガラス転移温度をTg2、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式 Tc>Tg1>Tt>Tg2を満たすように制御する工程と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項10】
中間転写体上の全面に電気粘性流体である第1離型剤を付与する工程と、
前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して所定の温度で溶融する第2離型剤を打滴する工程と、
前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴する工程と、
前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する工程と、
前記中間転写体上をクリーニングする工程と、
前記第2離型剤のガラス転移温度をTg、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式 Tt>Tg、且つ、 Tc>Tgを満たすように制御する工程と、
前記第1離型剤の付与後、前記第2離型剤が打滴される前から転写が完了するまで前記中間転写体に対して電界を印加し続け、転写完了後、クリーニングが開始されるまでに前記電界の印加を解除するように制御する工程と、
を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項11】
中間転写体上の全面に所定の温度で溶融する第1離型剤を付与する工程と、
前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して電気粘性流体である第2離型剤を打滴する工程と、
前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴する工程と、
前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する工程と、
前記中間転写体上をクリーニングする工程と、
前記第1離型剤のガラス転移温度をTg、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式 Tc>Tg>Ttを満たすように制御する工程と、
前記第2離型剤の打滴後、前記インク液滴が打滴される前から転写が開始される直前にわたって前記中間転写体に対して電界を印加し続けるとともに、転写完了後、遅くともクリーニング時には前記電界の印加を解除するように制御する工程と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項1】
中間転写体上の全面に所定の温度で溶融する第1離型剤を付与する第1離型剤付与手段と、
前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して、前記第1離型剤に比べて低い温度で溶融する第2離型剤を打滴する第2離型剤打滴手段と、
前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴するインク打滴手段と、
前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する転写手段と、
前記中間転写体上をクリーニングするクリーニング手段と、
前記中間転写体を加熱する加熱手段と、
前記第1離型剤のガラス転移温度をTg1、前記第2離型剤のガラス転移温度をTg2、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式 Tc>Tg1>Tt>Tg2を満たすように前記加熱手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
中間転写体上の全面に電気粘性流体である第1離型剤を付与する第1離型剤付与手段と、
前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して所定の温度で溶融する第2離型剤を打滴する第2離型剤打滴手段と、
前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴するインク打滴手段と、
前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する転写手段と、
前記中間転写体上をクリーニングするクリーニング手段と、
前記中間転写体を加熱する加熱手段と、
前記中間転写体に電界を印加する電界印加手段と、
前記第2離型剤のガラス転移温度をTg、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式 Tt>Tg、且つ、 Tc>Tg を満たすように前記加熱手段を制御する第1制御手段と、
前記第1離型剤の付与後、前記第2離型剤が打滴される前から転写が完了するまで前記中間転写体に対して電界を印加し続け、転写完了後、クリーニングが開始されるまでに前記電界の印加を解除するように前記電界印加手段を制御する第2制御手段と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
中間転写体上の全面に所定の温度で溶融する第1離型剤を付与する第1離型剤付与手段と、
前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して電気粘性流体である第2離型剤を打滴する第2離型剤打滴手段と、
前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴するインク打滴手段と、
前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する転写手段と、
前記中間転写体上をクリーニングするクリーニング手段と、
前記中間転写体を加熱する加熱手段と、
前記中間転写体に電界を印加する電界印加手段と、
前記第1離型剤のガラス転移温度をTg、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式 Tc>Tg>Ttを満たすように前記加熱手段を制御する第1制御手段と、
前記第2離型剤の打滴後、前記インク液滴が打滴される前から転写が開始されるまで前記中間転写体に対して電界を印加し続け、転写が開始される時には前記電界の印加が解除されるように前記電界印加手段を制御する第2制御手段と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記第2離型剤打滴手段は、前記ドット形成位置と同一位置だけでなく、前記ドット形成位置に隣接する位置にも前記第2離型剤を打滴することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記第2離型剤打滴手段及び前記インク打滴手段は同一解像度をもつインクジェットヘッドでそれぞれ構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記中間転写体に対する前記第2離型剤の接触角をθ1、前記第1離型剤によって形成される離型層に対する前記第2離型剤の接触角をθ2とするとき、次式 θ1>θ2の関係を満足することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記第2離型剤は、前記インク液滴の色材を凝集させる成分、又は前記インク液滴の着弾後に該インク液滴を増粘させる成分を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記第1離型剤及び前記第2離型剤の転写温度における貯蔵弾性率の差は102[Pa]以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
中間転写体上の全面に所定の温度で溶融する第1離型剤を付与する工程と、
前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して、前記第1離型剤に比べて低い温度で溶融する第2離型剤を打滴する工程と、
前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴する工程と、
前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する工程と、
前記中間転写体上をクリーニングする工程と、
前記第1離型剤のガラス転移温度をTg1、前記第2離型剤のガラス転移温度をTg2、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式 Tc>Tg1>Tt>Tg2を満たすように制御する工程と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項10】
中間転写体上の全面に電気粘性流体である第1離型剤を付与する工程と、
前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して所定の温度で溶融する第2離型剤を打滴する工程と、
前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴する工程と、
前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する工程と、
前記中間転写体上をクリーニングする工程と、
前記第2離型剤のガラス転移温度をTg、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式 Tt>Tg、且つ、 Tc>Tgを満たすように制御する工程と、
前記第1離型剤の付与後、前記第2離型剤が打滴される前から転写が完了するまで前記中間転写体に対して電界を印加し続け、転写完了後、クリーニングが開始されるまでに前記電界の印加を解除するように制御する工程と、
を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項11】
中間転写体上の全面に所定の温度で溶融する第1離型剤を付与する工程と、
前記第1離型剤が付与された前記中間転写体上の画像データに応じて決定されるドット形成位置と同一位置に対して電気粘性流体である第2離型剤を打滴する工程と、
前記第2離型剤が打滴された前記中間転写体上のドット形成位置に対してインク液滴を打滴する工程と、
前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に対して転写する工程と、
前記中間転写体上をクリーニングする工程と、
前記第1離型剤のガラス転移温度をTg、転写時の温度をTt、クリーニング時の温度をTcとするとき、次式 Tc>Tg>Ttを満たすように制御する工程と、
前記第2離型剤の打滴後、前記インク液滴が打滴される前から転写が開始される直前にわたって前記中間転写体に対して電界を印加し続けるとともに、転写完了後、遅くともクリーニング時には前記電界の印加を解除するように制御する工程と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−51118(P2009−51118A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220924(P2007−220924)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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