説明

インクジェット記録装置

【課題】ポンプが稼動していない状況を含めてその劣化状況を把握し、適切なポンプの交換時期を使用者に報知することができるインクジェット記録装置を提供すること。
【解決手段】 インクジェット記録装置100であって、交換可能に設置されてノズルからインクを吸引する吸引ポンプ19と、吸引ポンプ19の装置搭載時間及び実稼動時間を計数するカウント手段23並びにカウント手段23による計数結果に応じて吸引ポンプの交換時期を示す信号を報知部24に出力する制御部20とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に係り、特に吸引ポンプを用いてメンテナンスを行うインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、普通紙を代表とする様々な記録媒体に対して印刷可能な記録装置として、インクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置は、記録ヘッドから記録媒体に対して吐出し、記録媒体上に着弾、浸透若しくは定着されたインクにより記録媒体上に画像を形成する記録装置であり、工程の単純さ、印刷時における静粛性及び印字、印画品質の点で非常に優れた特徴がある(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、このインクジェット記録装置では、ヘッドのノズル形成面(以下、ノズル面という)覆うことが可能なキャップと、廃液タンクと、キャップ及び廃液タンクを接続するインク排出管と、このインク排出管の途中に配置された吸引ポンプと具備したメンテナンスユニットを備えている。
【0004】
そして、装置のメンテナンス動作として、キャップを記録ヘッドのノズル面に密着させた状態で吸引ポンプを駆動させることで、ノズル面とキャップとの間で形成される空間が減圧され、ノズルから外部にインクを吸引する。その結果、ノズル内の増粘インクや残留気泡を廃液タンクに排出させている。また、このキャップには、キャリッジの移動等により開閉可能なバルブが備えられており、前記空間を減圧させた状態でバルブを開放させることで、当該空間の減圧が解除されてキャップ内のインクのみを吸引させ、メニスカス形成時等、空吐出する際にキャップからインクが溢れて外部に漏れるのを防止している。かかる構成を備えた装置は公知であり、例えば特許文献2では、吸引ポンプとしてチューブポンプを適用させて前述のメンテナンス動作を行わせるとともに、その際、当該ポンプの稼働時間や、インク吸引動作時のインク吸引量に応じて予め設定されたポイントを動作回数に対応させたポンプ動作のパターンに応じて、ポンプの劣化状況を把握し、ポンプ交換を促していた。
【特許文献1】特開2001−310454号公報
【特許文献2】特開2000−238295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポンプの稼働時間や動作パターンに応じてポンプ交換を行っているため、ポンプ自体の機械的耐久性(ポンプの稼動による劣化)のみを考慮しているにすぎず、ポンプが稼動していない状況を含めたポンプの耐久性についてまでは考慮されていなかった。
【0006】
特に、インクによるポンプの劣化については想定されておらず、カチオン重合系インクを使用した場合、インクに含有されるオキセタンが樹脂中の可塑剤に影響を与えやすく、チューブポンプに適用される軟質性のチューブにおいては、単にチューブ内にインクが残存しているだけでも溶解あるいは膨潤により劣化してしまう。そのため、ポンプをほとんど稼動させていない状態でもポンプの交換を必要とする場合を生じさせてしまうとともに、適切にポンプの劣化状況を把握することができず、ポンプが劣化した状態で装置を作動させていた。
【0007】
一方、ポンプの交換を必要としないまでも、経時的な劣化を受けたチューブでは、インク送液量が増大して膨潤する。特に、ローラにより押しつぶされる箇所は、磨耗しやすく、チューブ自体にかかる負荷を一層増大させてしまう。かかる状態でメンテナンス動作が繰り返されると、チューブは亀裂や破断を生じ、前述したようなメンテナンス動作を行う際に、適切に動作することができない。また、亀裂からインクが漏出して装置内に付着し、当該インクの硬化・増粘による装置トラブルを生じさせてしまう。
【0008】
また、ポンプを交換する際、装置との接続部やチューブ内からインクが液だれし、当該インクが装置内に付着することで装置トラブルを派生したり、あるいは、交換作業に携わる作業者へのインクの付着を生じさせてしまう。
【0009】
そこで、本発明は、前記した点に鑑みてなされたものであり、ポンプが稼動していない状況を含めてその劣化状況を把握し、適切なポンプの交換時期を使用者に報知することができるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の問題を解決するために、請求項1に記載のインクジェット記録装置は、
交換可能に搭載されてノズルからインクを吸引する吸引ポンプと、
前記吸引ポンプの装置搭載時間及び実稼動時間を計数するカウント手段並びに前記カウント手段による計数結果に応じて前記吸引ポンプの交換時期を示す信号を報知部に出力する制御部とを具備することを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、かかる構成とすることで、吸引ポンプの実稼働時間の他に、吸引ポンプの装置搭載時間を考慮して該ポンプの交換時期を示すことができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
前記カウント手段は、前記吸引ポンプが装置内に搭載されてから最初に行うインクの吸引をトリガとして前記装置搭載時間及び前記実稼動時間の計数を開始することを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、カウント手段は、吸引ポンプの交換の場合など、新たに吸引ポンプが装置内に搭載されると、装置内に搭載されてから最初に行うインクの吸引をトリガとして装置搭載時間及び実稼動時間の計数を開始する。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録装置において、
前記カウント手段は、前記吸引ポンプが装置内に搭載されると、前記装置搭載時間及び前記実稼動時間の計数を初期化することを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、カウント手段は、吸引ポンプの交換の場合など、新たに吸引ポンプが装置内に搭載されると、装置搭載時間及び実稼動時間の計数を初期化する。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御部は、前記実稼働時間より前記装置搭載時間を優先して前記交換時期を示す信号を出力することを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、実稼働時間より装置搭載時間を優先して交換時期を示すことで、ポンプの使用状況が少ない、つまり、印字の出力枚数が少ないユーザーなど装置を頻繁に使用しない場合に対応して、ポンプ交換の時期を適切に知らせることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御部は、前記装置搭載時間が基準値を超えたら前記信号を出力することを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、装置搭載時間が基準値を超えたら信号を出力するので、装置を頻繁に使用しない場合、ユーザーは装置搭載時間が基準値を超えると、ポンプの交換時期であることを知ることができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御部は、前記装置搭載時間より前記実稼働時間を優先して前記交換時期を示す信号を出力することを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、装置搭載時間より実稼働時間を優先して交換時期を示すことで、ポンプの使用状況が多い、つまり、大量に印字出力するユーザーなど装置を頻繁に使用する場合に対応して、ポンプ交換の時期を適切に知らせることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御部は、前記実稼働時間が基準値を超えたら前記信号を出力することを特徴とする。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、実稼働時間が基準値を超えたら信号を出力するので、装置を頻繁に使用する場合、ユーザーは実稼働時間が基準値を超えると、ポンプの交換時期であることを知ることができる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御部は、前記信号が出力されると、前記吸引ポンプを空吸引することを特徴とする。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、信号が出力されると、吸引ポンプを空吸引するので、該ポンプ内の残留インクが除去され、作業者がポンプを交換する際に、吸引ポンプ内の残留インクを除去した状態で作業を進めることができる。
【0026】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記インクは、紫外線硬化型インクであることを特徴とする。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、装置に適用されるインクは、紫外線により硬化可能な紫外線硬化型インクであるので、紫外線が照射されることで適切に記録媒体上のインクを硬化させることができる。
【0028】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のインクジェット記録装置において、
前記紫外線硬化型インクは、カチオン重合系インクであることを特徴とする。
【0029】
請求項10に記載の発明によれば、装置に適用されるインクは、紫外線硬化型インクの中でも特にカチオン重合系インクであり、ラジカル重合系インクに比べ、酸素による重合反応の阻害作用が少ないあるいは無い点や低照度の光でも長時間照射することで硬化可能な点で有用なインクである。
【0030】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記インクは、25℃における粘度が10〜50(mPa・s)であることを特徴とする。
【0031】
請求項11に記載の発明によれば、かかるインクはいわゆる高粘度インクであり、高粘度インクを用いて画像記録を行うようになっている。
【0032】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記インクは、25℃における表面張力が20〜40(mN/m)であることを特徴とする。
【0033】
請求項12に記載の発明は、かかるインクは濡れ性が悪いインクであり、濡れ性が悪いインクを用いて画像記録を行うようになっている。
【0034】
請求項13に記載の発明によれば、請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記インクは、オキセタンを含有することを特徴とする。
【0035】
請求項13に記載の発明は、オキセタンを含有するインクを用いて画像記録を行うようになっており、オキセタンは、軟質チューブなど樹脂中に含まれる可塑剤を溶解させるなど、インクに触れる構成部材を劣化させやすい性質のものである。
【発明の効果】
【0036】
請求項1に記載の発明によれば、ポンプが稼動していない状況を含めてその劣化状況を把握し適切なポンプの交換時期を使用者に報知することができる。
【0037】
請求項2及び請求項3に記載の発明によれば、カウント手段は、吸引ポンプの交換の場合など、新たに吸引ポンプが装置内に搭載されると、装置搭載時間及び実稼動時間の計数を初期化し、その後、最初に行われるインクの吸引をトリガとして装置搭載時間及び実稼動時間の計数を開始して、装置搭載時間及び実稼動時間の計数を行うことで正確なポンプの劣化状況を把握させることができる。
【0038】
請求項3〜請求項7に記載の発明によれば、出力枚数の少ないユーザーから大量に印字出力を行うユーザーまで、ポンプの使用状況に応じて適切なポンプ交換の時期をユーザーに知らせることができる。
【0039】
請求項8に記載の発明によれば、ポンプ交換時に、ポンプと装置との接続部やポンプ内に残留したインクの液だれを防止することができ、ユーザー及び装置へのインクの付着を防止するとともに、装置内へのインクの付着に起因する装置トラブルを防止することができる。
【0040】
請求項9に記載の発明によれば、紫外線が照射されることでインクを硬化させることができるので、PETフィルムなどインク吸収性のない記録媒体に対しても記録媒体上でのインクの流動を生じることがなく高画質な画像記録を行うことが可能である。
【0041】
請求項10に記載の発明によれば、カチオン重合系インクを用いることで、特に、ラジカル重合系インクを用いる場合に比べて、機能性・汎用性を向上させることができる。
【0042】
請求項11に記載の発明によれば、高粘度インクを用いて画像記録を行うものの、インクの粘度が小さ過ぎて記録媒体上で滲んだり、粘度が大き過ぎて画質の平滑性が損なわれることを防止し、高精細な画像記録を行うことができる。
【0043】
請求項12に記載の発明は、濡れ性が悪いインクを用いて画像記録を行うものの、前記の表面張力の範囲内であれば、着弾したインクが記録媒体上で適度に広がるため、高精細な画像記録を行うことができる。
【0044】
請求項13に記載の発明は、オキセタンのような接触された構成部材を劣化させやすい化合物を含んだインクを用いて画像記録を行うものの、請求項1〜請求項12に記載された発明と併せることで、メンテナンス時にインクチューブ内の残存インクを確実に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、図1〜図5を参照しつつ、本発明に係るインクジェット記録装置の一実施形態について、説明する。
【0046】
図1に示すように、本実施形態においてインクジェット記録装置100は、シリアルプリント方式のインクジェット記録装置であり、このインクジェット記録装置100には、記録媒体Pを下方から支持するプラテン1が平板状に設けられている。
【0047】
プラテン1の上流側及び下流側には、それぞれプラテン1の上面に記録媒体Pを搬送する搬送ローラ2,2が回転自在に配設されており、記録媒体Pは、ローラ駆動機構3(図3参照)により搬送ローラ2が回転されることで、プラテン1の上面に沿って所定の搬送方向Xに搬送されるようになっている。
【0048】
また、プラテン1の上方には、搬送方向Xに直交する方向に延在する棒状のガイドレール4が設けられている。
ガイドレール4には、このレールに沿って往復自在に支持されたキャリッジ5が備え付けられている。なお、以下の記載では、キャリッジの移動方向を主走査方向として説明する。
【0049】
キャリッジ5には、本実施形態におけるインクジェット記録装置100で使用される各色(例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)。)に対応した記録ヘッド6が搭載されている。記録ヘッド6の記録媒体Pに対向する面にはインクを吐出するノズル(図示せず)が複数設けられている。各記録ヘッド6のノズルには、例えば、電圧を印加することによって変形する圧電素子としてのピエゾ素子(図示せず)が付設されており、ピエゾ素子に駆動電圧を印加することによってピエゾ素子を変形させ、これによりインク流路を圧縮してノズルからインクを吐出させるようになっている。
【0050】
本実施形態に用いられるインクは、光としての紫外線が照射されることにより硬化する性質を具備する光硬化型インクであり、主成分として、少なくとも重合性化合物と、光開始剤と、色材とを含むものである。上記光硬化型インクは、重合性化合物としてラジカル重合性化合物を含むラジカル重合系インクとカチオン重合性化合物を含むカチオン重合系インクとに大別されるが、この両系のインクが本実施形態に用いられるインクとしてそれぞれ適用可能である。また、ラジカル重合系インクとカチオン重合系インクとを複合させたハイブリッド型インクを本実施形態に用いられるインクとして適用してもよい。
しかしながら、酸素による重合反応の阻害作用が少ない又は無い点や、低照度の光でも長時間照射することで硬化可能なエネルギー蓄積型である点など機能性・汎用性に優れることから、特に、カチオン重合系インクを用いることが好ましい。カチオン重合系インクは、少なくともオキセタン化合物,エポキシ化合物,ビニルエーテル化合物等のカチオン重合性化合物と、光カチオン開始剤と、色材とを含む混合物である。特に、このオキセタン化合物は、軟質チューブなど樹脂中に含まれる可塑剤を溶解させるなど、当該インクが触れる構成部材を劣化させやすい性質を具備するものである。
【0051】
また、本実施形態におけるインクは、25℃の温度条件下において、粘度が10〜50[mPa・s]、表面張力が20〜40[mN/m]の液体であり、いわゆる粘性が高く、濡れ性が悪いインクとされている。しかしながら、インクの粘度が小さ過ぎて記録媒体上で滲んだり粘度が大き過ぎて画質の平滑性が失われたりするおそれがなく、また、前記の表面張力の範囲内であれば、着弾したインクが記録媒体上で適度に広がるため、高精細で鮮明な画像記録を行うことが可能となる。
【0052】
また、キャリッジ5の内部であって、キャリッジ5の側壁と記録ヘッド6との間には、少なくとも記録ヘッド6の記録媒体搬送方向Xに対する長さより大きい長さ寸法の紫外線照射装置7が記録ヘッド6の長手方向に延在して配設されている。紫外線照射装置7には、図示しない紫外線光源が設けられている。なお、紫外線光源としては、例えば高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、半導体レーザ、冷陰極管、エキシマーランプ、又はLED(Light Emitting Diode)等を適用することが可能である。なお、紫外線照射装置7を設ける位置はこれに限定されず、例えば、各記録ヘッド6の間にそれぞれ紫外線照射装置7を設けるようにしてもよい。
【0053】
これら各記録ヘッド6には、各色のインクを一時的に貯留するサブタンク8がそれぞれ可撓性を有する材料で形成されたインク供給管9aを介して連結されている。また、各サブタンク8には、それぞれインク供給管9bを介してメインインクタンク10が連結されており、各メインインクタンク10内のインクは、インク供給管9bによりサブタンク8に供給され、一旦、サブタンク8内に貯留された後、インク供給管9aにより各記録ヘッド6に供給されるようになっている。
【0054】
また、インク供給管9a,9bは、その表面のうち少なくとも外光に曝される部分は遮光部材により形成されており、光が照射されることでインク供給管9a,9b内のインクが硬化してしまうことを防止するようになっている。
【0055】
また、インク供給管9aの途中であって、キャリッジ5の内部のうち記録ヘッド6に近接する位置には、記録ヘッド6への背圧をコントロールするダンパー11が備えられている。
【0056】
インク供給管9aの途中であってダンパー11とサブタンク10との間には、ダンパー11にインクを送液する送液ポンプ12が設けられており、送液ポンプ12では、ダンパー11内のインク量が一定量以下になると、サブタンク10内に貯留されているインクを強制的に送液するようになっている。
【0057】
また、インク供給管9bの途中には、メインタンク11からサブタンク10に対するインクの流入を制限するための供給弁13が設けられている。供給弁13は、例えば、ソレノイドの切り替えによるソレノイドバルブ(図示せず)であり、弁の開閉を行うものである。供給弁13では、図示しないセンサ等によりサブタンク10内のインク残量が所定量以下であることが検知されると、所定の時間だけ供給弁13が開いて、各メインタンク11内のインクをそれぞれ対応するサブタンク10に供給するようになっている。
【0058】
キャリッジ5の移動可能範囲であって記録領域の外側一端には、記録ヘッド6のノズルに対してメンテナンス動作を行うヘッドメンテナンスユニット14が設けられている。ここで、本実施形態のインクジェット記録装置100では、所定回数の画像記録が行われると、キャリッジ5をヘッドメンテナンスユニット14の所定の位置まで移動させてメンテナンス動作を行うようになっている。なお、メンテナンス動作に移行するタイミングは所定回数の画像記録には限定されず、例えば、画像記録開始時から所定の時間が経過したときや所定枚数の画像記録を行うごとにメンテナンス動作を行うようにしてもよい。また、ユーザが記録ヘッド6のメンテナンス動作を行うタイミングを任意に設定できるようにしてもよい。
【0059】
ヘッドメンテナンスユニット14には、記録ヘッド6のノズルから増粘インクや残留気泡を吸引して外部に排出するためのインク吸引機構15が備えられており、インク吸引機構15は、キャリッジ5がヘッドメンテナンスユニット14に移動した際に、記録ヘッド6と対向する位置に、記録ヘッド6のノズル面に密着して覆うことが可能なキャップ16を備えている。このキャップ16には、インク排出管17を介して廃液タンク18が連結されており、インク排出管17の途中であって、キャップ16と廃液タンクとの間には、キャップ16がノズル面に密着した際、ノズル面とキャップ16との間に生じる空間を減圧しノズル内のインクを吸引する吸引ポンプ19が交換可能に配設されている。そして、これらインク排出管17、廃液タンク18、吸引ポンプ19もまたインク吸引機構15を構成している。
【0060】
ここで、吸引ポンプ19について説明すると、吸引ポンプ19は、特にチューブポンプが好適である。チューブポンプは、従来公知のものであれば何れのものも適用可能であるがここでは、一例として図2に示す構成のものを取り上げて説明する。
【0061】
図2に示すように、チューブポンプは、円弧状のガイド部材191と、このガイド部材191の内周面に沿って配置された軟質性のインクチューブ192と、このインクチューブ192をガイド部材191に対して押圧する一対のローラ193と、ローラ193の軸を支持する回転ロータ194とを備えている。これより、ローラ193が押圧したガイド部材191の箇所では、インクチューブが押しつぶされ、この状態で回転ロータ194が図中矢印の方向に回転することで、ローラ193は、回転ロータ194に沿って摺動され、図中矢印の方向にインクチューブ192をガイド部材191に対して押しつぶしながら回転するようになっている。
【0062】
この他、ヘッドメンテナンスユニット14には、記録ヘッド6のノズルをワイプするブレードやインク拭き取り装置(いずれも図示せず)等が備えられている。
【0063】
また、本実施形態に用いられる記録媒体Pとしては、普通紙、再生紙、光沢紙等の各種紙、各種布地、各種不織布等の他、PETフィルムを始めとして樹脂、金属、ガラス等のインク吸収性のないもの等、種々の材質からなる記録媒体Pが適用可能である。また、記録媒体Pの形態としては、ロール状、カットシート状、板状等の各種形態が適用可能である。
【0064】
次にインクジェット記録装置100の制御構成について説明する。
図3に示すように、インクジェット記録装置100は、例えばCPU(Central Processing Unit)、各種の処理プログラム等を格納するROM(Read Only Memory)、各種データ等を一時記憶するRAM(Random Access Memory)(いずれも図示せず)等から構成されインクジェット記録装置100の各部を制御する制御部20を備えている。制御部20は、ROMに記録された処理プログラムをRAMの作業領域に展開してCPUによりこの処理プログラムを実行するようになっている。なお、本実施形態において、制御部20は、後述するように、前記ヘッドメンテナンスユニット14を制御するヘッドメンテナンス制御部を兼ねるようになっている。
【0065】
制御部20には、装置各部に対して電力を供給する電源(図示せず)が接続されている。
【0066】
また、インクジェット記録装置100は、記録ヘッド6のメンテナンス動作を行うタイミングや画像記録条件等を設定、入力する設定手段としての入力部21を有しており、入力部21から入力された情報は、制御部20に送られるようになっている。入力部21は、例えばキーボードや操作パネルであり、ユーザーは入力部21を操作することにより各種の設定を行うことができるようになっている。
【0067】
さらに、制御部20には、キャリッジ駆動機構22及びローラ駆動機構3が接続されており、キャリッジ駆動機構22を制御することでキャリッジ5を駆動して主走査方向Aに往復移動させるとともに、ローラ駆動機構3を制御することでキャリッジ5の動作に合わせて記録媒体Pの搬送と停止とを繰り返し、記録媒体Pを間欠的に副走査方向Bに搬送させるように、搬送ローラ2を制御するようになっている。
【0068】
また、制御部20には、記録ヘッド6及び紫外線照射装置7が接続されており、記録ヘッド6を動作させてノズルから記録媒体P上に所定量のインクを吐出させるとともに、紫外線照射装置7を制御して記録媒体Pに着弾したインクに対して紫外線光源から紫外線を照射させ、インクを硬化定着させて所定の画像を形成させるようになっている。
【0069】
また、制御部20は、キャリッジ駆動機構22を制御してキャリッジ5をヘッドメンテナンスユニット14に移動させ、記録ヘッド6のメンテナンス動作を行わせるようになっている。
すなわち、本実施形態においては、キャリッジ5がインク吸引機構15の上方に移動すると、制御部20は、キャップ16が記録ヘッド6のノズル面に密着する位置までインク吸引機構15を上昇させる。さらに、キャップ16がノズル面に密着すると、制御部20は、吸引ポンプ19を動作させてキャップ16と記録ヘッド6のノズル面との間の空間内の空気を吸引し前記空間内を減圧することによりノズルの中のインク等の異物を吸引除去するようになっている。ノズル中の異物を吸引除去した後、制御部20は、インク吸引機構15を下降させ、記録ヘッド6を制御してノズルからキャップ16に向かってインクを空出射させるようになっている。
【0070】
また、制御部20は、空出射後や吸引ポンプ19の交換時などにインク吸引機構15のメンテナンス動作を行わせるようになっている。
すなわち、本実施形態においては、空出射が行われたり、後述する報知部24に吸引ポンプ19の交換時期を示す信号が出力されると、制御部20は、回転ロータ194を制御して回転させるようになっている。
【0071】
また、制御部20には、タイマーなどにより構成されるカウント手段23が備えられており、カウント手段23では、吸引ポンプ19がインクジェット記録装置100の所定位置に搭載されている時間(装置搭載時間)と、吸引ポンプが実際に稼動している時間(実稼動時間)とを計数するようになっている。
【0072】
また、制御部20は、図示しないセンサ等により吸引ポンプ19が装置内に搭載されたことを検知すると、カウント手段23を制御して、カウント手段23に装置搭載時間及び実稼動時間をリセット(計数の初期化)させるとともに、吸引ポンプ19が装置内に搭載されてから最初に行うキャップ16へのインクの吸引をトリガとして装置搭載時間及び実稼動時間の計数を開始させるようになっている。なお、前記トリガとしては、装置搭載時間及び実稼動時間の計数が初期化された状態で行われるインクの吸引動作(ポンプ動作)を挙げることができる。
【0073】
また、制御部20は、カウント手段23により計数された装置搭載時間及び実稼動時間に応じて後述する報知部24に吸引ポンプ19の交換時期を報知させるようになっている。
【0074】
具体的には、制御部20は、カウント手段23を介して装置搭載時間及び実稼働時間のうちいずれか一方が予め装置に登録された設定時間を超過しているか否か検出しており、いずれか一方が設定時間を超過したことを検出すると、吸引ポンプ19の交換時期を示す信号を報知部24に出力するようになっている。設定時間の超過の検出に際しては、例えば装置搭載時間が100時間、実稼働時間50時間などとして一定の基準値を設け、当該基準値を超えたか否かで判断すればよい。
【0075】
なお、本実施形態においては、制御部20は装置搭載時間及び実稼働時間のうち、一方の時間が設定時間を超過していることを検出して、吸引ポンプ19の交換時期を示す信号を出力する構成とするが、インクジェト記録装置100の使用状況等に応じてユーザーが予め優先的に時間超過を検出する方の時間項目を登録し、登録された時間項目について出力手段24が時間超過を検出すると、前記信号を出力する構成としてもよい。
【0076】
あるいは、制御部20は、単位時間あたりに稼動する吸引ポンプ19の稼働時間が所定時間を超過した場合に優先的に実稼働時間の設定時間の超過を検出し、当該時間が所定時間以下の場合には優先的に装置搭載時間の設定時間の超過を検出するように構成されていてもよく、時間超過を検出して前記信号を出力する構成となっている。
【0077】
なお、実稼働時間より装置搭載時間を優先させると、ポンプの使用状況が少ない、つまり、印字の出力枚数が少ないユーザーなど装置を頻繁に使用しない場合に対応した仕様となり、装置搭載時間より実稼働時間を優先させると、ポンプの使用状況が多い、つまり、大量に印字出力するユーザーなど装置を頻繁に使用する場合に対応した仕様とすることができる。
【0078】
また、制御部20は、前記信号を出力すると、吸引ポンプ19を空吸引するようになっている。以下の説明において、「空吸引」とは、「吸引ポンプ19内にインクがなくなるまで行う吸引動作」であり、図1中、「キャップ16から廃液タンク18にインクが排出されるまでの間の構成部材(キャップ16、吸引ポンプ19、インク排出管17)にインクが残存しない状態となるように行う吸引動作」を指している。具体的には、制御部20は、回転ロータ194を一定時間回転させるように制御するように構成されている。
【0079】
この他、インクジェット記録装置100は、表示パネルやディスプレイ等により構成される表示部及びスピーカ等により構成される音声部などにより構成される報知部24を有している。報知部24は制御部20により前記信号が出力されると、吸引ポンプ19の交換時期であることを知らせる旨を報知させるようになっている。
【0080】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置100における動作について説明する。
図4に示すように、インクジェット記録装置100が新しい場所に搬入された場合では、既に装置内の所定の場所に吸引ポンプ19が設置されている(ステップS1)。そして、装置を使用する際には、メインインクタンク8内にインクを補充し、その後電源をONにして装置を使用する。
【0081】
そして、インクジェット記録装置100の電源がONとなると(ステップS2)、電源からインクジェット記録装置100の各部に対して給電が行われる。この状態では、装置搭載時間及び実稼動時間の計数は初期化されている。
【0082】
その後、インクジェット記録装置100に所定の画像情報が送られ、記録媒体Pが記録領域における所定の位置まで搬送されると、キャリッジ5がガイドレール4に沿って記録媒体Pの直上を往復移動する。
【0083】
そして、キャリッジ5の移動中に、制御部20が、図示しない外部装置や入力部21等から送られた画像情報に基づいて記録ヘッド6を動作させることにより各ノズルから記録媒体Pに向けてインクが吐出される。制御部20が紫外線照射装置7を制御することにより紫外線照射装置7から記録媒体P上に着弾したインクに対して紫外線が照射される。このとき、キャリッジ5の移動方向の記録ヘッド6よりも下流側にある紫外線照射装置7から照射される紫外線により、記録ヘッド6から吐出されたインクが速やかに硬化し、記録媒体P上に定着する。
【0084】
その後、インクジェット記録装置が前記各動作を繰り返すことにより、記録媒体P上に画像が記録される。
【0085】
所定回数の画像記録が行われると、制御部20は、キャリッジ5をヘッドメンテナンスユニット14の所定の位置まで移動させる。そして、制御部20が、ヘッドメンテナンスユニット14の各部を動作させることにより、記録ヘッド6のメンテナンス動作が行われる。
【0086】
具体的には、まず、キャリッジ5がインク吸引機構15の上方に移動すると、制御部20がインク吸引機構15を動作させ、キャップ16をノズル面に密着させる。キャップ16がノズル面に密着されると、制御部20は、吸引ポンプ19を動作させて、回転ロータ194を回転させる。すると、ローラ193は、回転ロータ194の回転に伴い、回転ロータ194にそって回転移動する。ローラ193が押圧した箇所のインクチューブ192は、押しつぶされてインクチューブ192内のインクを回転ロータ194の回転方向に押し出し、当該インクを吸引ポンプ19から送り出して廃液タンク18に排出させる。次いで、ローラ193の移動によりローラ193の押圧が解除されると、インクチューブ192は復元力によって元の形状に戻る。このとき、インクチューブ192内部に真空が発生し、インク排出管17から次のインクが吸引ポンプ19内に吸引され、ノズル面とキャップ16との間の空間が減圧される。この動作を連続的に行うことで、ノズルからノズル内に残っているインク等の異物が吸引除去される。
【0087】
ここで、制御部20は、電源がONとなっている間、吸引ポンプ19の動作開始を検知しており、装置搭載時間及び実稼動時間の計数が初期化された状態で吸引ポンプ19の動作開始を検知すると(ステップS3;yes)、カウント手段23に装置搭載時間及び実稼働時間の計数を開始させる(ステップS4)。ここでは、装置搭載時間及び実稼動時間の計数が初期化された状態で行われるインクの吸引が、装置に吸引ポンプ19が搭載されてから最初に行われるインクの吸引となっており、これをトリガとして装置搭載時間及び実稼動時間の計数が開始される。
【0088】
その後、制御部20は、装置搭載時間及び実稼働時間のうちいずれか一方が予め装置に登録された設定時間を超過しているか否か検出する(ステップS5)。装置搭載時間及び実稼働時間のうちいずれか一方が設定時間を超過したことを検出すると(ステップS5;yes)、制御部20は、報知部24に吸引ポンプ19の交換時期を示す信号を出力して吸引ポンプが交換時期であることを報知させた後、電源をOFFにする。
【0089】
これよりユーザは、吸引ポンプ19の交換が可能となり、吸引ポンプ19が交換されると(ステップS6)、制御部20は、カウント手段23に吸引ポンプ19が設置されたことを検知し、装置搭載時間及び実稼動時間の計数を初期化し(ステップS7)、ステップ2以降の動作が繰り返される。
【0090】
なお、ステップS3において、装置搭載時間及び実稼動時間の計数が初期化された状態で吸引ポンプ19の動作開始が検知されないと(ステップS3;no)、ステップS5以降の動作が繰り返される。
【0091】
また、ステップS5において、制御部20が装置搭載時間及び実稼働時間のいずれも設定時間を超過していないことを検出すると(ステップS5;no)、電源をOFFにする状況にあるか否か検出する(ステップS8)。そして、電源をOFFにする状況にあると制御部20が検出すると(ステップS8;yes)、吸引ポンプ19の動作を停止させる。すると、カウント手段23は吸引ポンプ19の動作停止を検知し、実稼働時間の計数を停止させる(ステップS9)。
【0092】
ここで、インクジェット記録装置100は、制御部20により装置搭載時間及び実稼働時間のうちいずれか一方が設定時間を超過したことが検出されるまで装置の電源のON・OFFが繰り返された状態で使用される。
【0093】
そして、制御部20により装置搭載時間及び実稼働時間のうちいずれか一方が設定時間を超過したことが検出されると(ステップS10;yes)、ステップS6以降の動作が繰り返され、検出されない場合(ステップS10;no)、再び吸引ポンプ19の動作開始を検知する(ステップS11)。そして、吸引ポンプ19の動作開始が検知されると(ステップS11;yes)、実稼働時間の計数を開始して実稼働時間が積算され(ステップS12)、ステップS5以降の動作が繰り返される。これに対し、吸引ポンプ19の動作開始を検知しない場合には(ステップS11;no)、ステップS5以降の動作が繰り返される。
【0094】
なお、ステップS8において、制御部20が電源をOFFする状況にないと検出すると(ステップS8;no)、ステップS10以降の動作が繰り返される。
【0095】
以上のように、本実施形態におけるインクジェット記録装置100では、吸引ポンプ19の実稼働時間の他に、吸引ポンプ19の装置搭載時間を考慮して該ポンプ19の交換時期を示すことができるので、吸引ポンプ19が稼動していない状況を含めてその劣化状況を把握し適切な吸引ポンプ19の交換時期を使用者に報知することができる。
【0096】
また、カウント手段23は、吸引ポンプ19の交換の場合など、新たに吸引ポンプ19が装置内に搭載された後、最初に行われるインクの吸引をトリガとして装置搭載時間及び実稼動時間の計数を開始するので、装置搭載時間及び実稼動時間の計数を行うことで正確な吸引ポンプ19の劣化状況を把握させることができる。
【0097】
また、使用状況に応じて、実稼働時間より装置搭載時間を優先して交換時期を示すことで、ポンプの使用状況が少ない、つまり、印字の出力枚数が少ないユーザーなど装置を頻繁に使用しない場合に対応して、ポンプ交換の時期を適切に知らせることができる。この場合、ポンプ交換の時期の出力に際しては、装置搭載時間が基準値を超えたら信号を出力するので、装置を頻繁に使用しない場合、ユーザーは装置搭載時間が基準値を超えると、ポンプの交換時期であることを知ることができる。
【0098】
これに対し、装置搭載時間より実稼働時間を優先して交換時期を示すことで、ポンプの使用状況が多い、つまり、大量に印字出力するユーザーなど装置を頻繁に使用する場合に対応して、ポンプ交換の時期を適切に知らせることができる。この場合のポンプ交換の時期の出力に際しては、実稼働時間が基準値を超えたら信号を出力するので、装置を頻繁に使用する場合、ユーザーは実稼働時間が基準値を超えると、ポンプの交換時期であることを知ることができる。
【0099】
したがって、出力枚数が少ないユーザーから大量に印字出力を行うユーザーまで、ポンプの使用状況に応じて適切なポンプ交換の時期をユーザーに知らせることができる。
【0100】
また、本発明にかかるインクジェット記録装置を適用可能なインクジェット記録装置1としては、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式のいずれの記録ヘッド7を用いるものでも構わない。また、吐出方式としては、例えば、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)等のうち、いずれの吐出方式の記録ヘッド7を用いるものでも構わない。
【0101】
また、本実施形態では、紫外線を照射することにより硬化するインクを用いて画像記録を行うものとしたが、インクは必ずしもこれには限定されず、例えば、紫外線、電子線、X線、可視光線、赤外線等の電磁波といった紫外線以外の光を照射することにより硬化するインクであってもよい。この場合、インクには、紫外線以外の光で重合して硬化する重合性化合物と、紫外線以外の光で重合性化合物同士の重合反応を開始させる光開始剤とが適用される。また、紫外線以外の光で硬化する光硬化型のインクを用いる場合は、紫外線光源に代えて、その光を照射する光源を適用する。さらに、光を照射することなく硬化するインクを用いて画像記録を行うものであってもよい。この場合には、光を照射する装置を設ける必要がなく、装置構成の簡易化を図ることができる。
【0102】
また、本実施形態では、インクジェット記録装置100の動作として、装置搭載時間及び実稼働時間のうちいずれか一方が予め装置に登録された設定時間を超過しているか否か検出した際に、装置搭載時間及び実稼働時間のうちいずれか一方が設定時間を超過したことを検出すると、報知部24に交換時期を示す信号を出力し、吸引ポンプが交換時期であることを報知させた後、電源をOFFにして、吸引ポンプ19の交換を行ったが、電源をOFFにする前に空吸引を行わせる構成としてもよい。
【0103】
空吸引を行う場合、図5に示すように、前記信号の出力に基づき(ステップS13)、制御部20は吸引ポンプ19に空吸引動作を行わせるように制御する(ステップS14)。次いで、制御部20は、電源をOFFにする状況にあるか否か検出し(ステップS15)、電源をOFFにする状況にあると検出すると(ステップS15;yes)、電源をOFFにして吸引ポンプ19の交換を行う(ステップS17)。一方、電源をOFFにする状況にないと検出すると、ステップS13以降の動作が繰り返される。
【0104】
したがって、この場合、ポンプ交換の時期を示す信号が出力されると、吸引ポンプ19の空吸引動作が行われるので、吸引ポンプ19内の残留インクが確実に除去される。そのため、作業者がポンプを交換する際には、吸引ポンプ19内の残留インクを除去した状態で作業を進めることができ、ポンプ交換時に、吸引ポンプ19と装置100との接続部や吸引ポンプ19内に残留したインクの液だれを防止して、ユーザー及び装置100へのインクの付着を防止するとともに、装置100内へのインクの付着に起因する装置トラブルを防止することができる。
【0105】
また、吸引ポンプ19は、いわゆるチューブ式ポンプであり、吸引ポンプ19の交換時期を示す信号が出力されることで、回転ロータ194を一定時間回転駆動させ、回転ロータ194の回転に伴い、ローラ193はインクチューブ192を押しつぶしてチューブ内の液体を確実にチューブの外に排出させることができる。
【0106】
したがって、吸引ポンプ19の空吸引により、インクチューブ192及びインク排出管17内にインクが残存した状態となるのを防止でき、ヘッドメンテナンスユニット14で行われるメンテナンス動作を常に適切に行わせるとともに、メンテナンス動作の正常な作動期間を延長させることができる。
【0107】
そして、吸引ポンプ19の繰り返し使用によりインクチューブ192に亀裂が生じることで生じる装置トラブルを解消することができる。
【0108】
また、吸引ポンプ19の交換時に、装置100との接続部やチューブ内の残存インクの液だれにより装置内や作業者等にインクを付着させることもなく、付着されたインクが硬化することで生じる装置トラブルを回避することができる。
その結果、記録ヘッド6の各ノズルから正常にインクを吐出させることができ、高精細な画像記録を行うことができる。
【0109】
その他、本発明が上記実施の形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本実施形態におけるインクジェット記録装置の概略構成を表す側断面図である。
【図2】図1の吸引ポンプの概略構成を表す上面図である。
【図3】図1の制御構成を表すブロック図である。
【図4】図1のインクジェット記録装置の動作の一例を表すフロー図である。
【図5】図1のインクジェット記録装置の動作の一例を表すフロー図である。
【符号の説明】
【0111】
100 インクジェット記録装置
1 プラテン
2 搬送ローラ
3 ローラ駆動機構
4 ガイドレール
5 キャリッジ
6 記録ヘッド
7 紫外線照射装置
8 サブタンク
9a,9b インク供給管
10メインインクタンク
11ダンパー
12 送液ポンプ
13 供給弁
14 ヘッドメンテナンスユニット
15 インク吸引機構
16 キャップ
17 インク排出管
18 廃液タンク
19 吸引ポンプ
191 ガイド部材
192 インクチューブ
193 ローラ
194 回転ロータ
20 制御部
21 入力部
22 キャリッジ駆動機構
23 カウント手段
24 報知部
P 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換可能に搭載されてノズルからインクを吸引する吸引ポンプと、
前記吸引ポンプの装置搭載時間及び実稼動時間を計数するカウント手段並びに前記カウント手段による計数結果に応じて前記吸引ポンプの交換時期を示す信号を報知部に出力する制御部とを具備することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記カウント手段は、前記吸引ポンプが装置内に搭載されてから最初に行うインクの吸引をトリガとして前記装置搭載時間及び前記実稼動時間の計数を開始することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記カウント手段は、前記吸引ポンプが装置内に搭載されると、前記装置搭載時間及び前記実稼動時間の計数を初期化することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記実稼働時間より前記装置搭載時間を優先して前記交換時期を示す信号を出力することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記装置搭載時間が基準値を超えたら前記信号を出力することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記装置搭載時間より前記実稼働時間を優先して前記交換時期を示す信号を出力することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記実稼働時間が基準値を超えたら前記信号を出力することを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記信号が出力されると、前記吸引ポンプを空吸引することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記インクは、紫外線硬化型インクであることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記紫外線硬化型インクは、カチオン重合系インクであることを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記インクは、25℃における粘度が10〜50(mPa・s)であることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記インクは、25℃における表面張力が20〜40(mN/m)であることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記インクは、オキセタンを含有することを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−176049(P2007−176049A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378200(P2005−378200)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】