説明

インクジェット記録装置

【課題】キャップ内に乾燥したインクが残存していても、当該インクによって吐出口近傍のインクの水分が吸収されるのを抑制する。
【解決手段】インクジェットプリンタは、支持部材41と、吐出面2aと接触して複数の吐出口を覆う凹部43を支持部材41と共に画定する環状の弾性部材42と、凹部43内に配置されたキャップチップ44とを有するキャップ31を含んでいる。弾性部材42の内周面には、環状のリブ45が形成されている。リブ45は、弾性部材42が吐出面2aと接触していないときにキャップチップ44と離隔し、弾性部材42が吐出面2aとの接触によって弾性変形することによってキャップチップ44とその全周に亘って接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体にインクを吐出するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、記録ヘッドの吐出を回復させるためにキャップ内にインクをパージさせるインクジェット記録装置について記載されている。このインクジェット記録装置のキャップ内には、矩形平面形状を有する流れ規制部材が設けられている。流れ規制部材には、複数の孔が全体にわたって分散して形成されている。流れ規制部材の中央部分に形成された複数の孔は、両端部分に形成された複数の孔よりもその径が小さくなっている。このため、インク排出口からキャップ内のインクを吸引したときに、中央部分からインク排出口に向かう流路抵抗が両端部分よりも大きくなり、キャップ内におけるインクの流れを均一化させることができる。その結果、ノズル列方向全域にわたり、十分な回復状態を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−195712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術においては、キャップ内のインクを吸引したときにインクの流れを均一化させているが、キャップ内からインクをすべて吸引することは非常に困難である。特に、キャップの底面と流れ規制部材との間にインクが残存し、この残存したインクは、ある程度時間が経過すると乾燥する。そして、乾燥したインクが残存したキャップで記録ヘッドの吐出面を覆って保存すると、乾燥したインクがインク吐出口近傍のインクから水分を吸収し、インク吐出口近傍のインクが増粘する。
【0005】
そこで、本発明の目的は、キャップ内に乾燥したインクが残存していても、当該インクによって吐出口近傍のインクの水分が吸収されるのを抑制することが可能なインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインクジェット記録装置は、インクを吐出する複数の吐出口が形成された吐出面を有するインクジェットヘッドと、支持部材と、前記支持部材に固定され、前記吐出面と接触して前記複数の吐出口を覆う凹部を前記支持部材と共に画定する環状の弾性部材と、前記凹部内に配置された板状部材と、前記凹部に形成された排出口とを有するキャップと、前記キャップ内のインクを前記排出口から排出させる排出機構とを備えている。そして、前記弾性部材の内周面には、当該弾性部材が前記吐出面と接触していないときに前記板状部材と離隔し、前記弾性部材が前記吐出面との接触によって弾性変形することによって前記板状部材とその外周に沿って接触する環状のリブが形成されている。
【0007】
これによると、キャップで吐出面を覆ったとき、すなわち、弾性部材と吐出面とが接触したキャッピング状態のときには、リブが板状部材とその外周に沿って接触するので、凹部のリブよりも下方の空間と凹部のリブよりも上方の空間とが連通しにくくなる。そのため、乾燥したインクが凹部の底面に残存していても、当該インクによって吐出口近傍のインクの水分が吸収されるのを抑制することが可能となる。したがって、キャッピング状態における吐出口近傍のインクの増粘を抑制することができる。
【0008】
本発明において、前記リブが、前記板状部材よりも上方に配置されており、前記弾性部材が前記吐出面との接触によって弾性変形することによって前記板状部材の上面と接触することが好ましい。これにより、簡易な構成でリブと板状部材とを確実に接触させることができる。
【0009】
また、本発明において、前記弾性部材の前記リブと前記支持部材との間には、薄肉部が形成されていることが好ましい。これにより、弾性部材と吐出面とを接触させたときに、弾性部材がより弾性変形しやすくなる。そのため、リブと板状部材とを確実に接触させることができる。
【0010】
また、このとき、前記薄肉部が、前記弾性部材の全周に亘って形成されていることが好ましい。これにより、弾性部材と吐出面とを接触させたときに、弾性部材がより一層弾性変形しやすくなる。
【0011】
また、このとき、前記薄肉部は、前記弾性部材が前記吐出面と接触することによって外側に弾性変形することが好ましい。これにより、弾性部材と吐出面とを接触させたときに、リブが内側に倒れやすくなる。そのため、リブと板状部材とをより確実に接触させることができる。
【0012】
また、本発明において、前記板状部材が、前記インクジェットヘッドの長手方向に沿って延在しており、前記板状部材の上面が、前記長手方向と直交する方向に関して、中央部から両端に向かって下方に傾斜していることが好ましい。これにより、インクジェットヘッドからキャップ内にパージされたインクが、板状部材の上面から凹部の底面側に流れやすくなり、板状部材の上面にインクが滞留しにくくなる。
【0013】
また、本発明において、前記板状部材が、前記インクジェットヘッドの長手方向に沿って延在しており、前記板状部材の上面が、前記長手方向と直交する方向に関して、中央部が両端よりも下方に凹むように湾曲しており、前記板状部材の中央部には、厚み方向に貫通した孔が形成されていることが好ましい。これにより、インクジェットヘッドからキャップ内にパージされたインクが板状部材の中央部に集まりやすくなるとともに、集まったインクが孔を通って凹部の底面側に流れやすくなる。そのため、板状部材の上面にインクが滞留しにくくなる。
【0014】
また、このとき、前記孔が、前記板状部材の中央部に前記長手方向に沿って複数形成されており、前記排出口が、前記孔と対向する位置に複数配置されていることが好ましい。これにより、インクが凹部の底面側により流れやすくなる。
【0015】
また、本発明において、前記板状部材の外周側面には、前記厚み方向に延在する複数の溝が形成されており、前記溝の幅が、毛細管現象が生じる幅であることが好ましい。これにより、板状部材の上面の周縁近傍に存在するインクを、溝で引き寄せつつ凹部の底面側に流すことが可能となる。そのため、板状部材の上面にインクが滞留しにくくなる。
【0016】
また、本発明において、前記板状部材の少なくとも上面には、撥水層が形成されていることが好ましい。これにより、板状部材の上面にインクが滞留しにくくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のインクジェット記録装置によると、キャップで吐出面を覆ったとき、すなわち、弾性部材と吐出面とが接触したキャッピング状態のときには、リブが板状部材とその外周に沿って接触するので、凹部のリブよりも下方の空間と凹部のリブよりも上方の空間とが連通しにくくなる。そのため、乾燥したインクが凹部の底面に残存していても、当該インクによって吐出口近傍のインクの水分が吸収されるのを抑制することが可能となる。したがって、キャッピング状態における吐出口近傍のインクの増粘を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態によるインクジェットプリンタの外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示すインクジェットプリンタの内部構造を示す概略側面図である。
【図3】(a)はキャップの平面図であり、(b)は図3(a)に示すIII−III線に沿った断面図である。
【図4】メンテナンスユニットを示す斜視図である。
【図5】キャッピング動作を示すインクジェットプリンタの部分側面図である。
【図6】図1に示すインクジェットプリンタの制御系統図である。
【図7】(a)はインクジェットヘッドからキャップ内にインクをパージする状況を示す断面図であり、(b)はインクジェットヘッドの吐出面をキャップで覆った状況を示す断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態によるインクジェットプリンタのキャップを示しており、(a)はキャップの平面図であり、(b)は図8(a)に示すVIII−VIII線に沿った断面図である。
【図9】(a)はインクジェットヘッドからキャップ内にインクをパージする状況を示す断面図であり、(b)はインクジェットヘッドの吐出面をキャップで覆った状況を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
本発明の第1実施形態によるインクジェットプリンタ1は、図1に示すように、直方体形状の筐体1aを有し、その正面(図1の紙面手前側の面)には、4つの開口3a〜3dが形成されている。開口3aには、下端の水平軸を支点として開閉可能な扉4aが設けられている。開口3bには給紙ユニット4bが、開口3cにはインクユニット4cが、開口3dには廃インクユニット4dが挿入されている。そして、筐体1aの上部には、排紙部15が設けられている。扉4aは、筐体1aの主走査方向(図1中奥行き方向)に関して搬送ユニット50と対向配置されている。
【0021】
次に、図2を参照しつつ、インクジェットプリンタ1の内部構成について説明する。図2に示すように、インクジェットプリンタ1の筐体1a内は、上から順に3つの空間A,B,Cに区分されている。空間Aには、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクをそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド2、メンテナンスユニット30、及び、搬送ユニット50が配置されている。
【0022】
空間Bは、給紙ユニット4bが配置される空間である。空間Cは、副走査方向に並んだ2つの空間C1、C2に仕切られている。空間C1は、インクユニット4cが配置される空間である。空間C2は、廃インクユニット4dが配置される空間である。これらユニット4b〜4dの筐体1aに対する着脱は、主走査方向(図2中紙面垂直方向)に沿って行われる。なお、本実施形態において、副走査方向とは搬送ユニット50で用紙Pを搬送するときの搬送方向Gと平行な方向であり、主走査方向とは副走査方向に直交する方向であって水平面に沿った方向である。また、プリンタ1には、給紙ユニット4b、搬送ユニット50、メンテナンスユニット30及びインクジェットヘッド2などを制御する制御部100が設けられている。
【0023】
4つのインクジェットヘッド2は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有しており、副走査方向に沿って互いに隣接配置された状態で、枠状のフレーム7に固定されている。すなわち、このインクジェットプリンタ1は、ライン式プリンタである。また、フレーム7は、筐体1a内において、昇降機構(不図示)によって上下方向に移動可能に配置されている。昇降機構は、制御部100の制御によって、インクジェットヘッド2を印刷位置(図2に示す位置)及び印刷位置よりも上方の退避位置(図5(a)参照)の間を移動させる。
【0024】
インクジェットヘッド2は、圧力室を含むインク流路が形成された流路ユニットと、圧力室のインクに圧力を与えるアクチュエータとが貼り合わされた積層体(ともに図示せず)を有している。そして、インクジェットヘッド2の底面は、インクを吐出する複数の吐出口(不図示)が形成された吐出面2aとなっている。
【0025】
インクユニット4cは、カートリッジトレイ11と、4つのインクカートリッジ12とを有している。4つのインクカートリッジ12には、副走査方向に沿って、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクが順に貯留されている。これら4つのインクカートリッジ12は、インクユニット4cが筐体1aに装着されると、対応するインクジェットヘッド2に繋がったインク供給路(例えば、インクチューブ:不図示)とそれぞれ接続される。なお、インク供給路の途中部位には、制御部100により制御されることで、インクカートリッジ12のインクをインクジェットヘッド2に強制的に送液するポンプ13(図6参照)が設けられている。
【0026】
廃インクユニット4dは、スポンジなどの多孔質部材からなるインク吸収体71と、インク吸収体71が収納された容器72とを有している。容器72は、後述のキャップ31と連通しており、キャップ31から排出されてきたインクを収容する。また、廃インクユニット4dは、筐体1aに対して着脱可能に構成されているので、廃インクユニット4dを新しいものに取り替えることが容易である。
【0027】
インクジェットプリンタ1の内部には、給紙ユニット4bから排紙部15に向けて、図2に示す太矢印に沿って、用紙Pが搬送される用紙搬送経路が形成されている。給紙ユニット4bは、複数枚の用紙Pを収納することが可能な給紙トレイ23と、給紙トレイ23に取り付けられた給紙ローラ25とを有している。給紙ローラ25は、給紙トレイ23内に収納された複数の用紙Pのうち、最も上方にある用紙Pを送り出す。給紙ローラ25によって送り出された用紙Pは、ガイド27a、27bによりガイドされ且つ送りローラ対26によって挟持されつつ搬送ユニット50へと送られる。
【0028】
搬送ユニット50は、2つのベルトローラ51,52と、両ローラ51,52間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト53とを有しており、用紙Pを搬送方向G(図2中矢印G方向)に搬送する装置である。ベルトローラ52は、図示しない搬送モータから駆動力が与えられることで、図2中時計回りに回転する駆動ローラである。ベルトローラ51は、搬送ベルト53が走行するのに伴って、図2中時計回りに回転する従動ローラである。
【0029】
搬送ベルト53の外周面54にはシリコーン処理が施されており、粘着性を有している。用紙搬送経路上においてベルトローラ51と対向する位置には、搬送ベルト53を挟んでニップローラ58が配置されている。ニップローラ58は、給紙ユニット4bから送り出された用紙Pを搬送ベルト53の外周面54に押さえ付ける。外周面54に押さえ付けられた用紙Pは、その粘着力によって外周面54上に保持されつつ、図2中右方へと搬送される。
【0030】
搬送ベルト53によって囲まれた領域内には、上面が平坦なプラテン55が配置されている。プラテン55の上面は、図2に示すように、搬送ベルト53の上側ループの内周面と接触しており、搬送ベルト53の内周側からこれを支持している。これにより、上側ループの外周面54とインクジェットヘッド2の吐出面2aとが対向しつつ平行になり、且つ、吐出面2aと外周面54との間に印字に適した隙間が形成される。当該隙間は、用紙搬送経路の一部を構成している。搬送ベルト53の外周面54上に保持された用紙Pが4つのインクジェットヘッド2のすぐ下方を通過する際に、各インクジェットヘッド2から用紙Pの上面に向けて各色のインクが順に吐出され、用紙P上に所望のカラー画像が形成される。
【0031】
また、用紙搬送経路上においてベルトローラ52と対向する位置には、搬送ベルト53を挟んで剥離プレート9が設けられている。剥離プレート9は、用紙Pを外周面54から剥離する。剥離された用紙Pは、ガイド29a,29bによりガイドされ且つ二組の送りローラ対28によって挟持されつつ搬送され、排紙部15へと排出される。
【0032】
メンテナンスユニット30は、副走査方向に沿って等間隔で配置された4つの板状部材32と、各板状部材32上に固定され、各インクジェットヘッド2の吐出面2aを覆うことが可能な4つのキャップ31とを有している。メンテナンスユニット30は、図2に示すように、4つのインクジェットヘッド2と搬送ユニット50との間に配置されている。
【0033】
キャップ31は、図3(a)に示すように、一方向に沿って長尺に形成されており、その長手方向がインクジェットヘッド2の長手方向(主走査方向)と平行となっている。4つのキャップ31は、印字動作を妨げないように、搬送方向Gに関して対応するインクジェットヘッド2の上流に配置されている。具体的には、最も上流にあるキャップ31は最も上流にあるインクジェットヘッド2の上流に配置され、残りの3つのキャップ31は、インクジェットヘッド間にそれぞれ配置されている。そして、4つのキャップ31は、メンテナンスユニット30の動きに伴って、対応するインクジェットヘッド2に対して、図2中上下及び左右方向に移動される。
【0034】
キャップ31は、図3(b)に示すように、板状の支持部材41と、凹部43を支持部材41と共に画定する環状の弾性部材42と、凹部43内に配置された板状のキャップチップ44とを有している。弾性部材42は、支持部材41の上面の周縁部に立設されており、その先端が先細り形状となっている。弾性部材42の内周面には、内側に突出した環状のリブ45が形成されている。リブ45は、キャップチップ44の上面よりも上方に配置されており、キャップチップ44から離隔している。
【0035】
本実施形態では、リブ45は、その先端部が鉛直方向に沿ってキャップチップ44の周縁部と重なっている。なお、リブ45の先端は、弾性部材42が吐出面2aと接触したときに、吐出面2aの吐出口形成領域の外側に位置する。つまり、吐出面2aを垂直方向から見たときに、リブ45はいずれの吐出口とも重ならない。インクジェットプリンタ1は、インクの吐出特性を維持するために、インクを強制排出するパージ処理を行うことがあるが、このときリブ45の上面がインクで汚染されることがない。
【0036】
また、弾性部材42のリブ45よりも下方部分(基端からリブ45までの部分)には、その厚みが減じられた薄肉部42aが形成されている。この下方部分において、薄肉部42aが最も薄くなっている。これにより、弾性部材42と吐出面2aとを接触させたときに、弾性部材42がより弾性変形しやすくなる。そのため、弾性変形時には、リブ45とキャップチップ44とが確実に接触することになる。また、薄肉部42aは、弾性部材42の内周面に全周に亘る切欠部46が形成されることで構成されている。つまり、薄肉部42aは、弾性部材42の全周に亘って形成されている。このため、薄肉部42aを起点とした弾性変形がより一層起こりやすい。このように薄肉部42aが形成されていることで、弾性部材42の先端と吐出面2aとが接触すると、このときの押圧力によって、薄肉部42aは外側に膨らむように弾性変形する(図7(b)参照)。これによって、リブ45が下方に変位しつつ内側に倒れやすくなり、リブ45とキャップチップ44の上面の周縁部とが全周に亘って確実に接触する。
【0037】
また、このような吐出面2aに対するキャッピングにおいて、凹部43の内容積が減る一方で、内圧が高くなることがある。内圧の上昇によって吐出口のメニスカスが破壊される虞があるが、薄肉部42aからの弾性変形が内圧の上昇を緩和するので、メニスカス破壊が起こりにくくなる。
【0038】
弾性部材42が吐出面2aに接触したとき、薄肉部42aがより確実に外側に膨らみ、リブ45がキャップチップ44に接触するためには、吐出面2aから受ける力の作用点が薄肉部42aの厚み方向の中点より凹部43の内側に位置する構成にしてもよい。これにより、キャップ31に押圧力が加わると、薄肉部42aが外側に向かって容易に座屈できる。さらに、少なくともリブ45の先端がキャップチップ44に向かって傾斜していてもよい。リブ45のキャップチップ44に対する確実な接触に寄与する。以上により、リブ45がキャップチップ44に接触すると、凹部43において、キャップチップ44の上面より上方の空間と下方の空間とが分離され、下方の空間内に残留するインクの影響が上方の空間に露出する吐出口のインクに及ばなくなる。
【0039】
凹部43の底面をなす支持部材41には、図3(b)に示すように、2つの排出孔(排出口)48が形成されている。これら排出孔48は、支持部材41の主走査方向の両端部であって副走査方向の中央部に配置されている。また、排出孔48は、キャップチップ44と弾性部材42の内周面との隙間と対向する位置に配置されている。
【0040】
板状部材32の各排出孔48と対向する位置には、図3(b)に示すように、排出孔48と連通する孔61が形成されている。また、板状部材32の下面には、孔61の周縁から下方に突出した筒状のジョイント部62が形成されている。ジョイント部62には、排出機構65の分岐管66が接続されており、分岐管66と孔61とが連通している。
【0041】
排出機構65は、吸引ポンプ67と、吸引ポンプ67に接続された配管68と、配管68から分岐した8本の分岐管66と、吸引ポンプ67と容器72とを連通させる配管69とを有している。なお、図3(b)には、1つの板状部材32に対する配管形態が示されている。各板状部材32には2つの分岐管66がそれぞれ接続されており、配管68は合計8本の分岐管66と繋がっている。吸引ポンプ67は、制御部100により制御されることで、キャップ31内のインクを排出孔48、孔61、分岐管66及び配管68,69を通して廃インクユニット4dに排出する。
【0042】
キャップチップ44は、長方形平面形状を有しており、その長手方向がインクジェットヘッド2の長手方向と平行となっている。また、キャップチップ44は、外周側面と弾性部材42の内周面との隙間が、全周に亘ってほぼ均一に形成されるように支持部材41上に配置されている。
【0043】
また、キャップチップ44の表面全体には、図3(b)に示すように、撥水処理によって撥水層44aが形成されている。これにより、インクジェットヘッド2からキャップ31内にパージされたインクが流れやすくなって、キャップチップ44上に滞留しにくくなる。また、キャップチップ44の上面には、副走査方向に関して、中央部から両端に向かって下方に傾斜した傾斜面44bが形成されている。これにより、パージされたインクがキャップチップ44の上面から凹部43の底面側に流れやすくなる。このため、キャップチップ44上にインクがより滞留しにくくなる。
【0044】
また、キャップチップ44の外周側面には、図3(a)に示すように、鉛直方向に延在する複数の溝47が形成されている。溝47は、毛細管現象が生じる程度の幅に形成されている。これにより、キャップチップ44の上面の周縁近傍においてインクと溝47とが接触すると、溝47による毛管力によってインクが溝47に引き寄せられる。このため、インクを効果的に凹部43の底面側に流すことが可能となる。その結果、キャップチップ44の上面にインクが滞留しにくくなる。
【0045】
また、メンテナンスユニット30は、各板状部材32を挟持する一対の内側フレーム33と、内側フレーム33と外側から対向して配置された一対の外側フレーム36と、内側フレーム33を水平方向(搬送方向)に移動させる水平移動機構と、内側フレーム33を垂直方向に移動させる垂直移動機構とを有している。内側フレーム33には、図4(a)に示すように、その延在方向両端部に上方に突出した角部33aが形成されている。
【0046】
水平移動機構は、主には駆動モータ126(図6参照)と、ラック&ピニオンとから構成される。図4(a)に示すように、平板状のラックギア35が1つの角部33aに対して水平に固定されている。円形状のピニオンギア34は、駆動モータ126の軸に固定され、ラックギア35と噛み合うように配置されている。また、この水平移動機構が、各内側フレーム33に構成されている。なお、図4(a)においては、手前側の内側フレーム33においてのみ、ピニオンギア34を図示している。
【0047】
垂直移動機構は、主には駆動モータ127(図6参照)とラック&ピニオンとから構成される。図4(b)に示すように、平板状のラックギア38が外側フレーム36の端部に対して鉛直に固定されている。円形状のピニオンギア37は、駆動モータ127の軸に固定され、ラックギア38と噛み合うように配置されている。このとき、ラックギア38の固定先は、外側フレーム36側でも筐体1aの本体フレーム側でもよいが、本実施形態では本体フレーム側である。また、ラックギア35の固定先は、内側フレーム33(角部33a)側でも外側フレーム36側でもよいが、本実施形態では外側フレーム36の内側である。
【0048】
この構成において、制御部100の制御により、2つのピニオンギア34を同期させて回転させることにより、一対の内側フレーム33が外側フレーム36に対して副走査方向に沿って移動する。また、制御部100の制御により、ピニオンギア37を回転させることにより、内側及び外側フレーム33,36が垂直方向に沿って移動する。
【0049】
具体的には、印字動作を妨げないように、板状部材32同士の間の3つの開口39a、及び、最も下流の板状部材32と角部33aとの間の開口39bが、吐出面2aにそれぞれ対向している。この初期状態から、キャップ31で吐出面2aを覆うキャッピング動作が開始されると、図5(a)に示すように、昇降機構によってインクジェットヘッド2が印刷位置から退避位置に移動される。
【0050】
次に、水平移動機構によって一対の内側フレーム33が搬送方向Gに沿って下流側に移動され、図5(b)に示すように、キャップ31が吐出面2aと対向する位置に配置される。次に、垂直移動機構によって外側フレーム36が垂直方向に上昇されることで、図5(c)に示すように、キャップ31(弾性部材42)が吐出面2aに押し付けられて吐出面2aを覆うキャップ位置に配置される。以上の手順により、各キャップ31の凹部43によって対応する複数の吐出口が覆われる。なお、印字動作を再開する場合、逆の手順により、キャップ31が初期位置に復帰されるとともに、インクジェットヘッド2も印刷位置に配置される。一方、キャッピング動作後に印刷要求がなかったり、装置を停止する場合には、キャップ31は、上述のキャップ位置に保持されたままとなる。
【0051】
次に、制御部100について、図6に基づいて説明する。制御部100は、例えば汎用のパーソナルコンピュータによって構成されている。かかるコンピュータは、CPU、ROM、RAM、ハードディスクなどのハードウェアが収納されており、ハードディスクには、プリンタ1の動作を制御する為のプログラムを含む各種のソフトウェアが記憶されている。そして、制御部100によって、インクジェットヘッド2、昇降機構、各モータ126,127、ポンプ13及び吸引ポンプ67などが制御される。
【0052】
次に、メンテナンス動作について、図5及び図7を参照しつつ説明する。メンテナンス動作には、パージ動作、廃インク処理動作、及び、キャッピング動作などが含まれる。インクジェットヘッド2が吐出不良などに陥ったときなどは、吐出口からインクをパージ(強制排出)するパージ動作が行われる。この場合は、制御部100が昇降機構を制御し、インクジェットヘッド2を印刷位置から退避位置に移動させる(図5(a)参照)。次に、制御部100は、駆動モータ126を制御し、各キャップ31を吐出面2aと対向する位置に移動させる(図5(b)参照)。そして、制御部100は、駆動モータ127を制御し、図7(a)に示すように、各キャップ31を吐出面2aに近づける。このとき、キャップ31は、弾性部材42の先端と吐出面2aとが僅かに離隔したパージ位置に配置される。
【0053】
次に、制御部100は、ポンプ13を所定時間だけ駆動し、インクカートリッジ12のインクをインクジェットヘッド2に強制的に送液する。これによって、インクジェットヘッド2内のインクがキャップ31内にパージされる。このとき、パージされたインクは、図7(a)に示すように、傾斜面44bに沿って移動し、キャップチップ44と弾性部材42の内周面との間に流れ込む。また、このとき、キャップチップ44の上面の周縁近傍において、インクが滞留しようとしても、外周側面に形成された溝47によって当該インクが引き寄せられる。これによって、インクが凹部43の底面側に流れる。
【0054】
そして、パージが終了した後、制御部100は、吸引ポンプ67を駆動して、廃インク処理動作を行う。つまり、制御部100が、吸引ポンプ67を所定時間(20〜30秒)駆動させ、各キャップ内のインクを排出孔48から吸引して廃インクユニット4dに排出する。このとき、リブ45がキャップチップ44の上面と僅かの間隙を介して対向しているので、キャップチップ44の上面に沿ってキャップチップ44の周縁部に向かう気流が生じる。この気流に促されて、一部のインクは、キャップチップ44上を周縁部に向かって移動されることになる。この吸引動作によってキャップ内のインクの大半が廃インクユニット4dに排出される。
【0055】
この廃インク処理動作の後に、用紙Pに対する印刷を行う場合は、制御部100が駆動モータ127,126を制御して、各キャップ31をパージ位置から初期位置に戻す。このとき、パージ動作によって吐出面2aに付着したインクを払拭機構(不図示)で除去してもよい。その後、昇降機構を制御して、インクジェットヘッド2を退避位置から印刷位置に戻し、用紙Pに対する印刷動作が行われる。
【0056】
印刷動作が行われた後にキャッピング動作を行う場合は、制御部100が、昇降機構を制御して、インクジェットヘッド2を退避位置に移動させる。その後、制御部100が、駆動モータ126,127を制御し、各キャップ31を吐出面2aと対向する位置に配置させた後、図7(b)に示すように、キャップ位置に配置させる。なお、廃インク処理動作の後に印刷動作を行わずキャッピング動作を行う場合も、制御部100が駆動モータ127を制御して、各キャップ31をパージ位置からキャップ位置に移動させる。
【0057】
このキャッピング動作によって弾性部材42が吐出面2aに押し付けられ、弾性部材42の薄肉部42aが外側に膨らむように弾性変形する。そして、この弾性部材42の弾性変形によって、リブ45が凹部43の内側に倒れるように変位する。このとき、リブ45がキャップチップ44の上面の周縁部とその全周に亘って当接し、凹部43のリブ45よりも上方の空間と、リブ45よりも下方の空間との連通が遮断される。こうして、キャッピング動作が完了する。
【0058】
以上のように、本実施形態のインクジェットプリンタ1によると、キャップ31で吐出面2aを覆ったとき(キャッピング状態のとき)には、リブ45がキャップチップ44の上面の周縁部とその全周に亘って接触するので、凹部43のリブ45よりも下方の空間と上方の空間とが連通しにくくなる。そのため、乾燥したインクが凹部43の底面に残存していても、当該インクによって吐出口近傍のインクの水分が吸収されるのを抑制することが可能となる。したがって、キャッピング状態における吐出口近傍のインクの増粘を抑制することができる。
【0059】
また、リブ45は、弾性部材42の弾性変形によってキャップチップ44の上面の周縁部と接触するように、キャップチップ44より上方に配置されている。このように簡易な構成でリブ45とキャップチップ44とを確実に接触させることができる。
【0060】
続いて、本発明の第2実施形態によるインクジェットプリンタについて、図8及び図9を参照しつつ以下に説明する。本実施形態においては、主にキャップ231及び排出機構265が第1実施形態のキャップ31及び排出機構65と異なるだけで、これ以外は第1実施形態とほぼ同様である。なお、第1実施形態と同様なものに関しては、同符号で示し説明を省略する。
【0061】
本実施形態におけるキャップ231は、図8(b)に示すように、支持部材241と、弾性部材42と、凹部43内に配置されたキャップチップ244とを有している。キャップチップ244は、第1実施形態のキャップチップ31と同様な平面形状及び平面サイズを有しており、弾性部材42の内周面との間に僅かな隙間が形成されるように支持部材241上に配置されている。
【0062】
キャップチップ244の中央には、凹部244aが形成されている。凹部244aは、キャップチップ244の上面が副走査方向に関して中央部が両端よりも下方に凹むように湾曲することで構成されている(図9参照)。また、凹部244aの底面には、厚み方向に貫通する4つの孔244bが形成されている。これら孔244bは、凹部244aの副走査方向の中央部において、主走査方向に沿って等間隔に配置されている。これにより、キャップ231内にパージされたインクがキャップチップ244の上面の中央部に集まりやすくなるとともに、集まったインクが孔244aを通って凹部244aから凹部43の底面側に流れやすくなる。そのため、キャップチップ244の上面にインクが滞留しにくくなる。また、孔244bが複数形成されていることで、パージされたインクが凹部244aから凹部43の底面側により流れやすくなる。
【0063】
支持部材241には、各孔244bと対向する位置に排出孔(排出口)248が形成されている。また、板状部材232の各排出孔248と対向する位置には、図8(b)に示すように、排出孔248と連通する孔261が形成されている。また、板状部材232の下面には、孔261の周縁から下方に突出した筒状のジョイント部262が形成されている。ジョイント部262には、排出機構265の分岐管266が接続されており、分岐管266と孔261とが連通している。
【0064】
排出機構265は、吸引ポンプ67と、吸引ポンプ67に接続された配管268と、配管268から分岐した16本の分岐管266と、各分岐管266の途中部位に設けられた16個の切替弁267と、配管69とを有している。これら切替弁267は、制御部100により制御されることで、分岐管266を凹部43内に対して連通状態及び遮断状態のいずれかに切り替える。なお、図8(b)においては、1つの板状部材232のジョイント部262と接続された4本の分岐管266を示しているが、各板状部材232には4本の分岐管266がそれぞれ接続されており、配管268は合計16本の分岐管266と繋がっている。吸引ポンプ67は、制御部100により制御されることで、キャップ231内のインクを排出孔248、孔261、分岐管266及び配管268,69を通して廃インクユニット4dに排出する。
【0065】
次に、メンテナンス動作について、図9を参照しつつ説明する。本実施形態においてパージ動作を行う場合は、第1実施形態と同様に、インクジェットヘッド2が印刷位置から退避位置に移動され、各キャップ231が初期位置からパージ位置に配置される。そして、図9(a)に示すように、インクジェットヘッド2からキャップ231内にインクがパージされる。パージされたインクは、キャップチップ244の上面の湾曲形状に沿って当該上面の中央部に集まる。そして、孔244bを通って凹部43の底面側に流れる。
【0066】
パージ動作が終了すると、廃インク処理動作が行われる。制御部100は、吸引ポンプ67を駆動して、各キャップ内のインクを排出孔248から吸引して廃インクユニット4dに排出する。このとき、制御部100は、吸引ポンプ67を駆動し始めたときから第1所定時間(例えば、15秒)が経過する間は、すべての切替弁267を連通状態とする。この間、キャップ231内の大半のインクが廃インクユニット4dに排出される。そして、第1所定時間が経過した後、第2所定時間(例えば、5秒)だけ、各キャップ231について、4つの切替弁267のうち1つの切替弁267だけが連通状態とする。なお、この制御は、残りの3つの切替弁267についても、第2所定時間が経過した後、順次行う。なお、本実施形態における第2所定時間は第1所定時間よりも短いが、第2所定時間が第1所定時間よりも長くてもよいし、同じでもよい。
【0067】
このように各分岐管266に切替弁267が設けられていることで、1つのキャップ231において分岐管毎にインクを吸引させることが可能となる。このため、すべての分岐管266から同時にインクを吸引させることも、より強い吸引力で1つの分岐管266毎にインクを吸引させることもできる。このように分岐管266の吸引力を向上させることが可能になることで、吸引力が増した分岐管266と対向する排出孔248及び孔244bに作用する吸引力も増大し、これら排出孔248及び孔244bの詰まりなどを解消することも可能となる。加えて、分岐管266の吸引力を増大させるために、複数の吸引ポンプの設置や吸引ポンプの大型化をする必要がなくなる。
【0068】
さらに、全ての分岐管266によるインクの吸引では、1つの分岐管266の周辺から吸引されるべきインクが枯渇した場合、この分岐管266だけが凹部43の内部空間と連通することになる。このとき、吸引力は、この分岐管266からのエア吸引に専ら使われることになり、他の分岐管266からのインク吸引には使われなくなる。しかし、全ての分岐管266によるインクの吸引に続いて、個別の分岐管266によるインクの吸引を行うことにより、キャップチップ244上のインクをほぼ全面に亘って均一に取り除くことができる。
【0069】
この廃インク処理動作の後に、用紙Pに対する印刷を行う場合は、第1実施形態と同様に、各キャップ31をパージ位置から初期位置に戻す。このとき、パージ動作によって吐出面2aに付着したインクを払拭機構(不図示)で除去してもよい。その後、インクジェットヘッド2を退避位置から印刷位置に戻し、用紙Pに対する印刷動作が行われる。
【0070】
印刷動作が行われた後にキャッピング動作を行う場合、及び、廃インク処理動作の後に印刷動作を行わずキャッピング動作を行う場合も、第1実施形態と同様に行われる。これにより、本実施形態においても、図9(b)に示すように、弾性部材42の薄肉部42aが外側に膨らむように弾性変形し、リブ45が凹部43の内側に倒れるように変位する。このとき、リブ45がキャップチップ244の上面の周縁部とその全周に亘って当接し、凹部43のリブ45よりも上方の空間と、リブ45よりも下方の空間との連通が遮断される。こうして、キャッピング動作が完了する。
【0071】
以上のように、本実施形態のインクジェットプリンタ1においても、第1実施形態と同様に、キャッピング状態のときには、凹部43のリブ45よりも下方の空間と上方の空間とが連通しにくくなる。そのため、乾燥したインクが凹部43の底面に残存していても、吐出口近傍のインクの水分が吸収されにくくなって、キャッピング状態における吐出口近傍のインクの増粘を抑制することができる。なお、第1実施形態と同様な構成においては、同じ効果を得ることができる。
【0072】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、キャップで吐出面2aを覆うことによって弾性部材42が弾性変形したときに、キャップチップと接触するリブが、当該キャップチップの外周側面と対向する位置に配置されていてもよい。この場合は、リブは、キャップチップの外周側面と接触可能になり、上述の第1及び第2実施形態と同様な効果を得ることができる。このとき、外周面を滑らかな平面とすることで、接触するリブとの水密性が向上する。
【0073】
また、薄肉部42aは、弾性部材42の全周に亘って形成されていなくてもよいし、弾性部材42に形成されていなくてもよい。また、薄肉部42aは、弾性部材42と吐出面2aとが接触したときに、凹部43の内側に弾性変形してもよい。この場合、弾性部材42の接触によって、凹部43内の圧力上昇を助長する。そのため、弾性部材42による接触が完了するまでは、凹部43内を大気連通状態とするとよい。このとき、インクが排出される経路を介して大気と連通してもよいし、大気と連通可能な別経路をさらに設けておいてもよい。このような大気連通動作は、凹部43が外側に変形する構成においても有効である。
【0074】
また、キャップチップ44,244の上面が平坦であってもよい。また、キャップチップ44,244の外周側面に溝47が形成されていなくてもよい。また、撥水層44aは、キャップチップ44,244の上面だけに形成されていてもよいし、キャップチップ44,244に形成されていなくてもよい。
【0075】
また、リブは、弾性部材42に内周面の全長に亘って形成されていなくてもよい。リブ及びキャップチップの上面によって分割される凹部43の底面側空間と上側空間とが、高い流路抵抗によって連通しているだけならば、比較的長期間に亘ってインクの増粘を防ぐことができる。
【0076】
また、メンテナンスユニット30は、駆動モータ127、ピニオンギア37及びラックギア38の移動機構を有していなくてもよい。この場合、当該移動機構の役割を昇降機構が補えばよい。
【符号の説明】
【0077】
1 インクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)
2 インクジェットヘッド
2a 吐出面
31,231 キャップ
41,241 支持部材
42 弾性部材
42a 薄肉部
43 凹部
44,244 キャップチップ(板状部材)
44a 撥水層
45 リブ
47 溝
48,248 排出孔(排出口)
65,265 排出機構
66,266 分岐管
67 吸引ポンプ
68,268 配管
244b 孔
267 切替弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数の吐出口が形成された吐出面を有するインクジェットヘッドと、
支持部材と、前記支持部材に固定され、前記吐出面と接触して前記複数の吐出口を覆う凹部を前記支持部材と共に画定する環状の弾性部材と、前記凹部内に配置された板状部材と、前記凹部に形成された排出口とを有するキャップと、
前記キャップ内のインクを前記排出口から排出させる排出機構とを備えており、
前記弾性部材の内周面には、当該弾性部材が前記吐出面と接触していないときに前記板状部材と離隔し、前記弾性部材が前記吐出面との接触によって弾性変形することによって前記板状部材とその外周に沿って接触する環状のリブが形成されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記リブが、前記板状部材よりも上方に配置されており、前記弾性部材が前記吐出面との接触によって弾性変形することによって前記板状部材の上面と接触することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記弾性部材の前記リブと前記支持部材との間には、薄肉部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記薄肉部が、前記弾性部材の全周に亘って形成されていることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記薄肉部は、前記弾性部材が前記吐出面と接触することによって外側に弾性変形することを特徴とする請求項3又は4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記板状部材が、前記インクジェットヘッドの長手方向に沿って延在しており、
前記板状部材の上面が、前記長手方向と直交する方向に関して、中央部から両端に向かって下方に傾斜していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記板状部材が、前記インクジェットヘッドの長手方向に沿って延在しており、
前記板状部材の上面が、前記長手方向と直交する方向に関して、中央部が両端よりも下方に凹むように湾曲しており、
前記板状部材の中央部には、厚み方向に貫通した孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記孔が、前記板状部材の中央部に前記長手方向に沿って複数形成されており、
前記排出口が、前記孔と対向する位置に複数配置されていることを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記板状部材の外周側面には、前記厚み方向に延在する複数の溝が形成されており、
前記溝の幅が、毛細管現象が生じる幅であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記板状部材の少なくとも上面には、撥水層が形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−274421(P2010−274421A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125939(P2009−125939)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】