インクジェット記録装置
【課題】 ノズルチップを千鳥配列した記録ヘッドからシート上に予備吐出を行うことができるインクジェット記録装置を提供する。かかるインクジェット記録装置において、インクを受容したシートから搬送ローラへのインク転写を軽減する。
【解決手段】
ノズルチップ60を千鳥配列して一部にノズル8の重なり領域58を持つフルマルチ記録ヘッド1を用いてシート10に画像記録と予備吐出を行なう。シート記録面と接するローラ6、16は、シートへの接触部16aと非接触部16cを有し、前記接触部は前記第2方向において前記複数のノズルチップの全てに対応した複数の位置に形成され、前記非接触部は前記第2方向において少なくとも前記重なり領域に対応した位置に形成されている。
【解決手段】
ノズルチップ60を千鳥配列して一部にノズル8の重なり領域58を持つフルマルチ記録ヘッド1を用いてシート10に画像記録と予備吐出を行なう。シート記録面と接するローラ6、16は、シートへの接触部16aと非接触部16cを有し、前記接触部は前記第2方向において前記複数のノズルチップの全てに対応した複数の位置に形成され、前記非接触部は前記第2方向において少なくとも前記重なり領域に対応した位置に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシートの搬送方向と交差する方向に配列された複数のノズルを有するフルマルチ型のインクジェット記録ヘッドからインクを吐出してシートに記録を行う記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置には、記録ヘッドを搭載したキャリッジの往復移動とシートの搬送を交互に繰り返すシリアルタイプと、シート幅をカバーするフルマルチ型の記録ヘッドを用いて連続的に記録するラインタイプがある。多くのインクジェット方式の記録装置では、インクジェット記録ヘッドのノズル内のインクの性状劣化を回復するために、記録を目的としないインク吐出によるいわゆる予備吐出が行われる。
【0003】
特許文献1は、予備吐出を行なうことが可能なフルマルチ型の記録ヘッドを用いた記録装置を開示している。特許文献2は、ノズルが形成される基板が複数のノズルチップに分割されて千鳥配列されたフルマルチ型の記録ヘッドを開示している。この記録ヘッドは、隣接するノズルチップのノズル列に搬送方向と交差する方向においてノズルの重なり領域を有している。なお、特許文献2には予備吐出についてはなんら開示が無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02−231147号公報
【特許文献2】特開2007−331291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、千鳥配列の複数のノズル列を有するフルマルチ型の記録ヘッドにおいて、シート表面に対して予備吐出を行うことを想定する。シートへの記録中に、重なりのある部分(重なり領域)は重なりのない部分(非重なり領域)に較べてノズル当たりの吐出数は減少する。また、予備吐出においては、記録中の吐出数が少なかったノズルほどインクの増粘を考慮して予備吐出の吐出数を増やすような制御が行なわれる。従って、重なり領域のノズルは非重なり領域に較べて予備吐出数を増やす必要がある。そのため、重なり領域ではより多くのインクがシートに付与されて、このシートに接触する搬送ローラの表面にインクが転写されてしまい、搬送ローラを汚す場合がある。搬送ローラに付着したインクは搬送ローラが1回転した後に今度はシートに再転写される場合がある。
【0006】
本発明は上述した技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、ノズルチップを千鳥配列した記録ヘッドからシート上に予備吐出を行うことができるインクジェット記録装置の提供である。発明の更なる目的は、上記インクジェット記録装置において、インクを受容したシートから搬送ローラへのインク転写を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シートの記録面に接するローラを有し、第1方向にシートを搬送する搬送機構と、前記ローラよりも前記第1方向の上流側に設けられ、前記第1方向と交差する第2方向に沿って使用するシートの幅をカバーする範囲に渡って複数のノズルが形成された記録ヘッドを用いて前記記録面に記録する記録機構と、前記搬送機構と前記記録機構を制御して、前記記録面への画像記録動作と前記記録面への予備吐出動作を行なわせることができる制御部と、を備え、前記記録ヘッドのノズル面は、複数のノズルチップが、隣り合うノズルチップが前記第1方向且つ前記第2方向に関してずれた位置に配されると共に、隣り合うノズルチップにそれぞれ含まれる複数のノズルが前記第2方向において重なり領域を持つように配列され、前記ローラは回転軸方向に沿って交互に形成されたシートへの接触部と非接触部とを有し、前記接触部のそれぞれは前記第2方向において前記複数のノズルチップのそれぞれに対応して形成され、前記非接触部のそれぞれは前記第2方向において前記重なり領域のそれぞれに対応して形成されていることを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0008】
別の本発明は、シートの記録面に接するローラを有し、第1方向にシートを搬送する搬送機構と、前記ローラよりも前記第1方向の上流側に設けられ、前記第1方向と交差する第2方向に沿って使用するシートの幅をカバーする範囲に渡って複数の記録素子が形成された記録ヘッドを用いて前記記録面に記録する記録機構と、前記搬送機構と前記記録機構を制御して、前記記録面への画像記録動作と前記記録面への予備吐出動作を行なわせることができる制御部と、を備え、前記記録ヘッドの面は、複数のチップが、隣り合うチップが前記第1方向且つ前記第2方向に関してずれた位置に配されると共に、隣り合うチップにそれぞれ含まれる複数の記録素子が前記第2方向において重なり領域を持つように配列され、前記ローラは回転軸方向に沿って交互に形成されたシートへの接触部と非接触部とを有し、前記接触部のそれぞれは前記第2方向において前記複数のチップのそれぞれに対応して形成され、前記非接触部のそれぞれは前記第2方向において前記重なり領域のそれぞれに対応して形成されていることを特徴とする記録装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ノズルチップを千鳥配列した記録ヘッドからシート上に予備吐出を行うことができるインクジェット記録装置において、インクを受容したシートから搬送ローラへのインク転写を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る記録装置の縦断面図
【図2】記録装置の要部の斜視図
【図3】シート搬送機構の斜視図
【図4】シート搬送機構の縦断面図
【図5】搬送ローラの部分縦断面図
【図6】記録ヘッドのノズル面および記録面側のローラを下方から見た拡大図
【図7】記録ヘッドのノズル面および記録面側のローラを下方から見た図
【図8】第2の実施形態に係る記録装置の送りローラと従動ローラの正面図
【図9】図8中の9−9に沿った縦断面図
【図10】第3の実施形態に係る記録装置の搬送機構の斜視図
【図11】図10の搬送上流側部分の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一または対応部分を示すものである。
〔第1の実施形態〕
図1は第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の縦断面図である。図2は記録装置の要部の斜視図である。記録ヘッドを含む記録機構1は、シート10の幅をカバーする長さを有するノズル面5に、シート搬送方向(第1方向)と交差(本実施例では直交)する方向(第2方向)のほぼ全域にわたってノズル(記録素子)が形成されたフルマルチ型の記録ヘッドである。記録ヘッドはインクジェット方式を採用したものであり、インクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式などを採用することができる。
【0012】
記録機構1は、インク色の数だけ搬送方向Aの方向に一定間隔ごとに配された6本の記録ヘッド1a、1b、1c、1d、1e、1fで構成されている。記録機構1の各記録ヘッドの近傍には回復ユニット2が移動可能に配されている。各回復ユニット2は、ノズル面5をクリーニングするためのワイパーや、ノズルの乾燥を防ぐためにノズル面5に密着されるキャップなどを具備している。記録媒体であるシート10は矢印A方向(第1方向)に搬送される。装置内には、インク色数分のインクタンク57が装着されている。インクタンク57からポンプ等で記録機構1の各記録ヘッドまでインクが供給され、シート10を搬送しながら記録ヘッドを駆動することで、各色の画像を順次形成していく。画像を形成されたシート10は、矢印A方向に搬送されながら、排出口から送り出され、排紙トレイ等に積載される。記録されたシートは、必要に応じて、カッター55で切断されて排出される。
【0013】
また、装置内には、CPU、メモリ、各種I/Oインターフェースを内蔵し装置全体の動作を制御する制御部3(コントローラ)が設けられている。制御部3は後述する搬送機構と記録機構1を制御して、シートの記録面上への画像記録動作とシートの記録面上への予備吐出動作を行なわせることができる。
【0014】
図3、図4、図5を用いて、記録機構1と対向する位置でシートを搬送するための搬送機構について説明する。シート10を搬送するための回転駆動量が与えられた駆動ローラ9は搬送方向最上流の記録ヘッド1aの上流側近傍に配される。駆動ローラ9には従動回転するピンチローラ6が押圧されている。記録機構1の各記録ヘッドの間には、駆動ローラ9と同期回転する回転駆動力が与えられた送りローラ17と、送りローラ17のそれぞれに押圧される従動ローラ16が配されている。駆動ローラ9および送りローラ17はシートの裏面(非記録面)側に配され、ピンチローラ6および従動ローラ16はシートの記録面(オモテ面)側に配されている。駆動ローラ9とピンチローラ6により搬送ローラ対が構成され、各送りローラ17と各従動ローラ16により複数の送りローラ対が構成されている。搬送方向の複数箇所にシートを搬送するためのローラ対が配され、シートの記録面に接するローラはいずれも従動ローラである。
【0015】
駆動ローラ9の一端部には搬送プーリ12が設けられ、駆動ローラ9は、搬送モータ7の駆動をモータプーリ51および駆動ベルト52を介して搬送プーリ12に伝達することにより駆動される。送りローラ17は記録機構1の各記録ヘッドの間および最下流の記録ヘッド1fの近傍に配されている。各送りローラ17の一端部には送りプーリ13が固定され、駆動ローラ9の一端部には駆動プーリ53が固定されている。最下流の記録ヘッド1fの下流側にアイドラプーリ54が配されており、駆動プーリ53とアイドラプーリ54との間にエンドレスの搬送ベルト11が張架されている。搬送ベルト11の上側走行部は各送りプーリ13の上方を通過するとともに下側走行部は各送りプーリ13の下側を通過している。駆動プーリ53および各送りプーリ13の間には上方へばね付勢されたテンションプーリ14が配されており、搬送ベルト11は各テンションプーリ14により駆動プーリ53および各送りローラ17に押圧係合されている。
【0016】
搬送モータ7により駆動ローラ9を駆動すると、搬送ベルト11を介して各送りローラ17を同期回転することができ、これに従動してピンチローラ6および各従動ローラ16が回転することでシート10を矢印A方向に搬送する。なお、各送りローラ17に対する従動ローラ16の押圧力は、最上流に配された駆動ローラ9に対するピンチローラ6の押圧力より弱く設定されており、基本的な搬送精度は、駆動ローラ9とピンチローラ6のニップ力によって得られる。記録機構1の各記録ヘッドのノズル面5と対向する位置には、ノズル面5との間に所定の隙間をもってシート10を支持するためのプラテン15が配設されている。こうして、駆動ローラ9および送りローラ17からなるシート裏面側の搬送ローラと、ピンチローラ6および従動ローラ16からなる記録面側のローラとを備えた搬送機構が構成されている。
【0017】
図6、図7は記録ヘッドのノズル面および記録面側のローラを下方から見た図である。図6は図7の部分拡大図である。矢印A方向に並べられた各記録ヘッドはシート10の幅方向に延びるフルマルチ型の記録ヘッドである。各記録ヘッドは、第2方向に沿って使用するシートの幅をカバーする範囲に渡って複数(例えば4000個)のノズル(ノズル列8)が形成されている。本実施形態に係る記録ヘッドは、ノズル面5の全域に配された複数のノズルを所定数のノズル列8ごとに分割している。そして、複数のノズル列8は、搬送方向位置を交互にずらすとともに、隣接するノズル列8の間に搬送方向と交差する方向の重なり領域58を設けて配列されている。各ノズル列8は単一基板からなるノズルチップ60に形成されており、各ノズルチップ60は第2方向に沿って2列で千鳥配列で並べられている。
【0018】
シート10の記録面側に配された搬送ローラであるピンチローラ6および従動ローラ16には、第2方向において隣接するノズル列8の各重なり領域58と対応した位置に、重なり領域58と同じかより広い幅Eを有する非接触部16cが設けられている。非接触部16c以外の領域がシートと接触する接触部16aとなる。各非接触部16cは接触部16aに対して窪んだ形状を有し、各非接触部16cの径は各接触部16aの径よりも小さい。これにより各非接触部16cは搬送されるシート10と接触しない。もしくは非接触部16cは搬送されるシート10に接触部16aよりも小さな接触圧で接触する。本発明において「非接触」とはこれら両方の意味を含むものとする。例えば、図5に示すように、シートを挟持する接触部16aの半径と、これより細い非接触部16cの半径との差は、使用が想定される最も厚いシートの厚さtより大きな差t1を有している。また、非接触部16cと接触部16aとは単一のローラとして一体に形成されたものであり、高い剛性を有している。1本のローラは成型あるいは切削によって製造する。
【0019】
以上、記録ヘッドのノズル面は、複数のノズルチップが、隣り合うノズルチップが第1方向且つ第2方向に関してずれた位置に配されると共に隣り合うノズルチップにそれぞれ含まれる複数のノズルが第2方向において重なり領域58を持つように配列されている。そして、シート記録面に接するローラはシートへの接触部と非接触部を有し、接触部は第2方向において複数のノズルチップの全てに対応した複数の位置に形成され、非接触部は第2方向において少なくとも重なり領域58に対応した位置に形成されている。
【0020】
重なり領域58に配されたノズルは、記録中のノズル当たりのインク吐出数が少なくなり、その分予備吐出で使用されるノズル当たりの吐出数が多くなる。このため、重なり領域58では、記録中のシート上のインク付着量が増えることになり、記録面側のピンチローラ6、従動ローラ16へインクが転写され、さらにこのインクがシート10に再転写されることで画質低下が生じやすい。この問題に対して本実施形態では、ピンチローラ6、従動ローラ16に非接触部16cを設けることで、重なり領域58で記録面に付与されたインクがローラに転写することが無い。加えて、接触部16aは第2方向において複数のノズルチップ60の全てに対応した複数の位置に形成され、第2の方向において広い領域でシートを挟持するので、十分な搬送力を確保すると共に局所的なシートの浮き上がりを抑えることが可能となる。
【0021】
次に、画像記録中の各ノズルの吐出数(吐出量)と予備吐出の関係について説明する。ノズルチップ60を2列で千鳥配列すると、重なり領域58におけるシート搬送方向(第1方向)のノズルの数が重なりが無い非重なり領域に較べて2倍に増える。従って、制御部は画像記録動作においては、重なり領域58のノズル当たりの吐出数を非重なり領域のノズル当たりの吐出数の半分に減らすことで、幅方向のいずれの領域でも吐出数が一様になるように制御する。画像記録において吐出数が少ないノズルは、その分ノズルの乾燥が進むことから、予備吐出動作においては、重なり領域58ではノズル当たりのインク吐出数を増やす必要がある。
【0022】
ピンチローラ6と複数の従動ローラ16のそれぞれには、シート10を挟持する複数の接触部16aとシートを接触しない複数の非接触部16cとが設けられている。非接触部16c以外の領域は接触部になっており、接触部16aと非接触部16cは従動ローラ16の回転軸方向に沿って交互に形成されている。接触部16aは第2方向において複数のノズルチップの全てに対応した複数の位置に形成されている。また、各非接触部16cは第2方向において各重なり領域58に対応する位置に設けられ、且つ各非接触部16cは第2方向において対応する重なり領域58と同じかより広い幅Eを持って形成されている。シート10は、駆動ローラ9とピンチローラ6のニップ力、及び送りローラ17と従動ローラ16のニップ力で保持され、これらのニップ力は各ローラの接触部によって得られる。非接触部16cの半径は接触部16aの半径に対して、使用するシートの厚さ以上の差で窪んいるので、シートが非接触部16cの周面に接触することはない。
【0023】
以上の実施形態によれば、重なり領域58のノズルにおいて必要なだけ多くの吐出数で予備吐出を行うことで記録面にインクが溢れた場合でも、記録面からピンチローラ6、従動ローラ16へのインクの転写を防ぐことができる。これにより、インクのシート10への再転写に起因する画質低下を無くすことができる。加えて、すべてのノズルチップに対応してローラの接触部が設けられているので、搬送中にシートの局所的な浮き上がりを防止することができ、且つ十分なシート挟持力を得ることができる。上述した特許文献2の構成では、千鳥配列の片列のノズルチップに対応した位置にしかローラが設けられていないのでシートを押さえる場所が少なく、押さえの無い場所でのシートの浮きが生じ易く且つ挟持力も不十分となる畏れがある。
【0024】
〔第2の実施形態〕
図8は第2の実施形態に係るインクジェット記録装置の送りローラと従動ローラの正面図である。図9は図8中の9−9に沿った縦断面図である。本実施形態は、第1の実施形態において従動ローラ16に代えて従動ローラ18を使用する点で相違するが、その他の点では第1の実施形態と同じ構成を有する。
【0025】
各従動ローラ18は両端部に位置する最外部18aで送りローラ17と接する。この最外部18aはシートが通過しない部分に設けられている。その内側のシートが通過する部分には、複数の接触部18bと複数の非接触部18cが交互に形成されている。記録ヘッドの隣り合うノズルチップのノズルの重なり領域58と対応する位置には、非接触部18cが形成され、非接触部18cは対応する重なり領域58と同じかより広い幅Eを持っている。接触部18bの半径は最外部18aの半径よりt2だけ小さくなっており、このt2は使用するシート10の厚さtより小さい。非接触部18cの半径はさらに小さく、非接触部18cの半径と最外部18aの半径との差t1がシート10の厚さtより大きい。
【0026】
搬送の際にシート10はシート厚より小さな隙間t2を介して接触部18bと送りローラ17との間に挟持される。シート先端が隙間t2に挿入されるとき、隙間の存在によって従動ローラ18の押し上げ量が少なくて済むので、搬送抵抗の変動が小さくてすむ。その他は、第1の実施形態と同じ効果を有する。
【0027】
〔第3の実施形態〕
図10は第3の実施形態に係るインクジェット記録装置の搬送機構の斜視図である。図11は図10の搬送上流側部分の縦断面図である。本実施形態は、記録面側で搬送最上流に配される搬送ローラを、シート10が通過する全域で同一径のピンチローラ19で構成したものであり、その他の点では第1の実施形態と同じ構成を有する。
【0028】
駆動ローラ9に押圧されるピンチローラ19のシートに当接する領域を同一径で形成するので、記録直前の搬送精度に支配的を影響を有するピンチローラの全域で高いニップ圧を確保することができる。これにより、フルマルチ型の記録ヘッドの近傍において、シート搬送の一層の高精度化と安定化を実現できる。また、第1の実施形態と同様、記録面側の他の従動ローラ16のノズル列8の重なり領域58と対応する位置に、重なり領域58より広い幅の非接触部16cが設けられている。
【0029】
なお、以上の各実施形態では、複数のフルマルチ記録ヘッドを用いる記録装置を例に挙げたが、本発明は1個のフルマルチ記録ヘッドを用いる場合にも同様に適用可能である。また、ノズル列を有するノズルチップを2列に千鳥配列する場合を例に挙げたが、3列以上に重なり領域をもってノズルチップを配列するようにしてもよい。すなわち、記録ヘッドのノズル面は、複数のノズルチップが隣り合うノズルチップが第1方向且つ第2方向に関してずれた位置に配されると共に、隣り合うノズルチップにそれぞれ含まれる複数のノズルが第2方向において重なり領域を持つように配列すればよい。
【符号の説明】
【0030】
1 記録機構
1a〜1f 記録ヘッド
3 制御部
5 ノズル面
6、19 ピンチローラ
8 ノズル列
9 駆動ローラ
10 シート
16、18 従動ローラ
16a 接触部
16c 非接触部
17 送りローラ
18a 最外部
18b 接触部
18c 非接触部
19 ピンチローラ
58 重なり領域
60 ノズルチップ
t シートの厚さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシートの搬送方向と交差する方向に配列された複数のノズルを有するフルマルチ型のインクジェット記録ヘッドからインクを吐出してシートに記録を行う記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置には、記録ヘッドを搭載したキャリッジの往復移動とシートの搬送を交互に繰り返すシリアルタイプと、シート幅をカバーするフルマルチ型の記録ヘッドを用いて連続的に記録するラインタイプがある。多くのインクジェット方式の記録装置では、インクジェット記録ヘッドのノズル内のインクの性状劣化を回復するために、記録を目的としないインク吐出によるいわゆる予備吐出が行われる。
【0003】
特許文献1は、予備吐出を行なうことが可能なフルマルチ型の記録ヘッドを用いた記録装置を開示している。特許文献2は、ノズルが形成される基板が複数のノズルチップに分割されて千鳥配列されたフルマルチ型の記録ヘッドを開示している。この記録ヘッドは、隣接するノズルチップのノズル列に搬送方向と交差する方向においてノズルの重なり領域を有している。なお、特許文献2には予備吐出についてはなんら開示が無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02−231147号公報
【特許文献2】特開2007−331291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、千鳥配列の複数のノズル列を有するフルマルチ型の記録ヘッドにおいて、シート表面に対して予備吐出を行うことを想定する。シートへの記録中に、重なりのある部分(重なり領域)は重なりのない部分(非重なり領域)に較べてノズル当たりの吐出数は減少する。また、予備吐出においては、記録中の吐出数が少なかったノズルほどインクの増粘を考慮して予備吐出の吐出数を増やすような制御が行なわれる。従って、重なり領域のノズルは非重なり領域に較べて予備吐出数を増やす必要がある。そのため、重なり領域ではより多くのインクがシートに付与されて、このシートに接触する搬送ローラの表面にインクが転写されてしまい、搬送ローラを汚す場合がある。搬送ローラに付着したインクは搬送ローラが1回転した後に今度はシートに再転写される場合がある。
【0006】
本発明は上述した技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、ノズルチップを千鳥配列した記録ヘッドからシート上に予備吐出を行うことができるインクジェット記録装置の提供である。発明の更なる目的は、上記インクジェット記録装置において、インクを受容したシートから搬送ローラへのインク転写を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シートの記録面に接するローラを有し、第1方向にシートを搬送する搬送機構と、前記ローラよりも前記第1方向の上流側に設けられ、前記第1方向と交差する第2方向に沿って使用するシートの幅をカバーする範囲に渡って複数のノズルが形成された記録ヘッドを用いて前記記録面に記録する記録機構と、前記搬送機構と前記記録機構を制御して、前記記録面への画像記録動作と前記記録面への予備吐出動作を行なわせることができる制御部と、を備え、前記記録ヘッドのノズル面は、複数のノズルチップが、隣り合うノズルチップが前記第1方向且つ前記第2方向に関してずれた位置に配されると共に、隣り合うノズルチップにそれぞれ含まれる複数のノズルが前記第2方向において重なり領域を持つように配列され、前記ローラは回転軸方向に沿って交互に形成されたシートへの接触部と非接触部とを有し、前記接触部のそれぞれは前記第2方向において前記複数のノズルチップのそれぞれに対応して形成され、前記非接触部のそれぞれは前記第2方向において前記重なり領域のそれぞれに対応して形成されていることを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0008】
別の本発明は、シートの記録面に接するローラを有し、第1方向にシートを搬送する搬送機構と、前記ローラよりも前記第1方向の上流側に設けられ、前記第1方向と交差する第2方向に沿って使用するシートの幅をカバーする範囲に渡って複数の記録素子が形成された記録ヘッドを用いて前記記録面に記録する記録機構と、前記搬送機構と前記記録機構を制御して、前記記録面への画像記録動作と前記記録面への予備吐出動作を行なわせることができる制御部と、を備え、前記記録ヘッドの面は、複数のチップが、隣り合うチップが前記第1方向且つ前記第2方向に関してずれた位置に配されると共に、隣り合うチップにそれぞれ含まれる複数の記録素子が前記第2方向において重なり領域を持つように配列され、前記ローラは回転軸方向に沿って交互に形成されたシートへの接触部と非接触部とを有し、前記接触部のそれぞれは前記第2方向において前記複数のチップのそれぞれに対応して形成され、前記非接触部のそれぞれは前記第2方向において前記重なり領域のそれぞれに対応して形成されていることを特徴とする記録装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ノズルチップを千鳥配列した記録ヘッドからシート上に予備吐出を行うことができるインクジェット記録装置において、インクを受容したシートから搬送ローラへのインク転写を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る記録装置の縦断面図
【図2】記録装置の要部の斜視図
【図3】シート搬送機構の斜視図
【図4】シート搬送機構の縦断面図
【図5】搬送ローラの部分縦断面図
【図6】記録ヘッドのノズル面および記録面側のローラを下方から見た拡大図
【図7】記録ヘッドのノズル面および記録面側のローラを下方から見た図
【図8】第2の実施形態に係る記録装置の送りローラと従動ローラの正面図
【図9】図8中の9−9に沿った縦断面図
【図10】第3の実施形態に係る記録装置の搬送機構の斜視図
【図11】図10の搬送上流側部分の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一または対応部分を示すものである。
〔第1の実施形態〕
図1は第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の縦断面図である。図2は記録装置の要部の斜視図である。記録ヘッドを含む記録機構1は、シート10の幅をカバーする長さを有するノズル面5に、シート搬送方向(第1方向)と交差(本実施例では直交)する方向(第2方向)のほぼ全域にわたってノズル(記録素子)が形成されたフルマルチ型の記録ヘッドである。記録ヘッドはインクジェット方式を採用したものであり、インクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式などを採用することができる。
【0012】
記録機構1は、インク色の数だけ搬送方向Aの方向に一定間隔ごとに配された6本の記録ヘッド1a、1b、1c、1d、1e、1fで構成されている。記録機構1の各記録ヘッドの近傍には回復ユニット2が移動可能に配されている。各回復ユニット2は、ノズル面5をクリーニングするためのワイパーや、ノズルの乾燥を防ぐためにノズル面5に密着されるキャップなどを具備している。記録媒体であるシート10は矢印A方向(第1方向)に搬送される。装置内には、インク色数分のインクタンク57が装着されている。インクタンク57からポンプ等で記録機構1の各記録ヘッドまでインクが供給され、シート10を搬送しながら記録ヘッドを駆動することで、各色の画像を順次形成していく。画像を形成されたシート10は、矢印A方向に搬送されながら、排出口から送り出され、排紙トレイ等に積載される。記録されたシートは、必要に応じて、カッター55で切断されて排出される。
【0013】
また、装置内には、CPU、メモリ、各種I/Oインターフェースを内蔵し装置全体の動作を制御する制御部3(コントローラ)が設けられている。制御部3は後述する搬送機構と記録機構1を制御して、シートの記録面上への画像記録動作とシートの記録面上への予備吐出動作を行なわせることができる。
【0014】
図3、図4、図5を用いて、記録機構1と対向する位置でシートを搬送するための搬送機構について説明する。シート10を搬送するための回転駆動量が与えられた駆動ローラ9は搬送方向最上流の記録ヘッド1aの上流側近傍に配される。駆動ローラ9には従動回転するピンチローラ6が押圧されている。記録機構1の各記録ヘッドの間には、駆動ローラ9と同期回転する回転駆動力が与えられた送りローラ17と、送りローラ17のそれぞれに押圧される従動ローラ16が配されている。駆動ローラ9および送りローラ17はシートの裏面(非記録面)側に配され、ピンチローラ6および従動ローラ16はシートの記録面(オモテ面)側に配されている。駆動ローラ9とピンチローラ6により搬送ローラ対が構成され、各送りローラ17と各従動ローラ16により複数の送りローラ対が構成されている。搬送方向の複数箇所にシートを搬送するためのローラ対が配され、シートの記録面に接するローラはいずれも従動ローラである。
【0015】
駆動ローラ9の一端部には搬送プーリ12が設けられ、駆動ローラ9は、搬送モータ7の駆動をモータプーリ51および駆動ベルト52を介して搬送プーリ12に伝達することにより駆動される。送りローラ17は記録機構1の各記録ヘッドの間および最下流の記録ヘッド1fの近傍に配されている。各送りローラ17の一端部には送りプーリ13が固定され、駆動ローラ9の一端部には駆動プーリ53が固定されている。最下流の記録ヘッド1fの下流側にアイドラプーリ54が配されており、駆動プーリ53とアイドラプーリ54との間にエンドレスの搬送ベルト11が張架されている。搬送ベルト11の上側走行部は各送りプーリ13の上方を通過するとともに下側走行部は各送りプーリ13の下側を通過している。駆動プーリ53および各送りプーリ13の間には上方へばね付勢されたテンションプーリ14が配されており、搬送ベルト11は各テンションプーリ14により駆動プーリ53および各送りローラ17に押圧係合されている。
【0016】
搬送モータ7により駆動ローラ9を駆動すると、搬送ベルト11を介して各送りローラ17を同期回転することができ、これに従動してピンチローラ6および各従動ローラ16が回転することでシート10を矢印A方向に搬送する。なお、各送りローラ17に対する従動ローラ16の押圧力は、最上流に配された駆動ローラ9に対するピンチローラ6の押圧力より弱く設定されており、基本的な搬送精度は、駆動ローラ9とピンチローラ6のニップ力によって得られる。記録機構1の各記録ヘッドのノズル面5と対向する位置には、ノズル面5との間に所定の隙間をもってシート10を支持するためのプラテン15が配設されている。こうして、駆動ローラ9および送りローラ17からなるシート裏面側の搬送ローラと、ピンチローラ6および従動ローラ16からなる記録面側のローラとを備えた搬送機構が構成されている。
【0017】
図6、図7は記録ヘッドのノズル面および記録面側のローラを下方から見た図である。図6は図7の部分拡大図である。矢印A方向に並べられた各記録ヘッドはシート10の幅方向に延びるフルマルチ型の記録ヘッドである。各記録ヘッドは、第2方向に沿って使用するシートの幅をカバーする範囲に渡って複数(例えば4000個)のノズル(ノズル列8)が形成されている。本実施形態に係る記録ヘッドは、ノズル面5の全域に配された複数のノズルを所定数のノズル列8ごとに分割している。そして、複数のノズル列8は、搬送方向位置を交互にずらすとともに、隣接するノズル列8の間に搬送方向と交差する方向の重なり領域58を設けて配列されている。各ノズル列8は単一基板からなるノズルチップ60に形成されており、各ノズルチップ60は第2方向に沿って2列で千鳥配列で並べられている。
【0018】
シート10の記録面側に配された搬送ローラであるピンチローラ6および従動ローラ16には、第2方向において隣接するノズル列8の各重なり領域58と対応した位置に、重なり領域58と同じかより広い幅Eを有する非接触部16cが設けられている。非接触部16c以外の領域がシートと接触する接触部16aとなる。各非接触部16cは接触部16aに対して窪んだ形状を有し、各非接触部16cの径は各接触部16aの径よりも小さい。これにより各非接触部16cは搬送されるシート10と接触しない。もしくは非接触部16cは搬送されるシート10に接触部16aよりも小さな接触圧で接触する。本発明において「非接触」とはこれら両方の意味を含むものとする。例えば、図5に示すように、シートを挟持する接触部16aの半径と、これより細い非接触部16cの半径との差は、使用が想定される最も厚いシートの厚さtより大きな差t1を有している。また、非接触部16cと接触部16aとは単一のローラとして一体に形成されたものであり、高い剛性を有している。1本のローラは成型あるいは切削によって製造する。
【0019】
以上、記録ヘッドのノズル面は、複数のノズルチップが、隣り合うノズルチップが第1方向且つ第2方向に関してずれた位置に配されると共に隣り合うノズルチップにそれぞれ含まれる複数のノズルが第2方向において重なり領域58を持つように配列されている。そして、シート記録面に接するローラはシートへの接触部と非接触部を有し、接触部は第2方向において複数のノズルチップの全てに対応した複数の位置に形成され、非接触部は第2方向において少なくとも重なり領域58に対応した位置に形成されている。
【0020】
重なり領域58に配されたノズルは、記録中のノズル当たりのインク吐出数が少なくなり、その分予備吐出で使用されるノズル当たりの吐出数が多くなる。このため、重なり領域58では、記録中のシート上のインク付着量が増えることになり、記録面側のピンチローラ6、従動ローラ16へインクが転写され、さらにこのインクがシート10に再転写されることで画質低下が生じやすい。この問題に対して本実施形態では、ピンチローラ6、従動ローラ16に非接触部16cを設けることで、重なり領域58で記録面に付与されたインクがローラに転写することが無い。加えて、接触部16aは第2方向において複数のノズルチップ60の全てに対応した複数の位置に形成され、第2の方向において広い領域でシートを挟持するので、十分な搬送力を確保すると共に局所的なシートの浮き上がりを抑えることが可能となる。
【0021】
次に、画像記録中の各ノズルの吐出数(吐出量)と予備吐出の関係について説明する。ノズルチップ60を2列で千鳥配列すると、重なり領域58におけるシート搬送方向(第1方向)のノズルの数が重なりが無い非重なり領域に較べて2倍に増える。従って、制御部は画像記録動作においては、重なり領域58のノズル当たりの吐出数を非重なり領域のノズル当たりの吐出数の半分に減らすことで、幅方向のいずれの領域でも吐出数が一様になるように制御する。画像記録において吐出数が少ないノズルは、その分ノズルの乾燥が進むことから、予備吐出動作においては、重なり領域58ではノズル当たりのインク吐出数を増やす必要がある。
【0022】
ピンチローラ6と複数の従動ローラ16のそれぞれには、シート10を挟持する複数の接触部16aとシートを接触しない複数の非接触部16cとが設けられている。非接触部16c以外の領域は接触部になっており、接触部16aと非接触部16cは従動ローラ16の回転軸方向に沿って交互に形成されている。接触部16aは第2方向において複数のノズルチップの全てに対応した複数の位置に形成されている。また、各非接触部16cは第2方向において各重なり領域58に対応する位置に設けられ、且つ各非接触部16cは第2方向において対応する重なり領域58と同じかより広い幅Eを持って形成されている。シート10は、駆動ローラ9とピンチローラ6のニップ力、及び送りローラ17と従動ローラ16のニップ力で保持され、これらのニップ力は各ローラの接触部によって得られる。非接触部16cの半径は接触部16aの半径に対して、使用するシートの厚さ以上の差で窪んいるので、シートが非接触部16cの周面に接触することはない。
【0023】
以上の実施形態によれば、重なり領域58のノズルにおいて必要なだけ多くの吐出数で予備吐出を行うことで記録面にインクが溢れた場合でも、記録面からピンチローラ6、従動ローラ16へのインクの転写を防ぐことができる。これにより、インクのシート10への再転写に起因する画質低下を無くすことができる。加えて、すべてのノズルチップに対応してローラの接触部が設けられているので、搬送中にシートの局所的な浮き上がりを防止することができ、且つ十分なシート挟持力を得ることができる。上述した特許文献2の構成では、千鳥配列の片列のノズルチップに対応した位置にしかローラが設けられていないのでシートを押さえる場所が少なく、押さえの無い場所でのシートの浮きが生じ易く且つ挟持力も不十分となる畏れがある。
【0024】
〔第2の実施形態〕
図8は第2の実施形態に係るインクジェット記録装置の送りローラと従動ローラの正面図である。図9は図8中の9−9に沿った縦断面図である。本実施形態は、第1の実施形態において従動ローラ16に代えて従動ローラ18を使用する点で相違するが、その他の点では第1の実施形態と同じ構成を有する。
【0025】
各従動ローラ18は両端部に位置する最外部18aで送りローラ17と接する。この最外部18aはシートが通過しない部分に設けられている。その内側のシートが通過する部分には、複数の接触部18bと複数の非接触部18cが交互に形成されている。記録ヘッドの隣り合うノズルチップのノズルの重なり領域58と対応する位置には、非接触部18cが形成され、非接触部18cは対応する重なり領域58と同じかより広い幅Eを持っている。接触部18bの半径は最外部18aの半径よりt2だけ小さくなっており、このt2は使用するシート10の厚さtより小さい。非接触部18cの半径はさらに小さく、非接触部18cの半径と最外部18aの半径との差t1がシート10の厚さtより大きい。
【0026】
搬送の際にシート10はシート厚より小さな隙間t2を介して接触部18bと送りローラ17との間に挟持される。シート先端が隙間t2に挿入されるとき、隙間の存在によって従動ローラ18の押し上げ量が少なくて済むので、搬送抵抗の変動が小さくてすむ。その他は、第1の実施形態と同じ効果を有する。
【0027】
〔第3の実施形態〕
図10は第3の実施形態に係るインクジェット記録装置の搬送機構の斜視図である。図11は図10の搬送上流側部分の縦断面図である。本実施形態は、記録面側で搬送最上流に配される搬送ローラを、シート10が通過する全域で同一径のピンチローラ19で構成したものであり、その他の点では第1の実施形態と同じ構成を有する。
【0028】
駆動ローラ9に押圧されるピンチローラ19のシートに当接する領域を同一径で形成するので、記録直前の搬送精度に支配的を影響を有するピンチローラの全域で高いニップ圧を確保することができる。これにより、フルマルチ型の記録ヘッドの近傍において、シート搬送の一層の高精度化と安定化を実現できる。また、第1の実施形態と同様、記録面側の他の従動ローラ16のノズル列8の重なり領域58と対応する位置に、重なり領域58より広い幅の非接触部16cが設けられている。
【0029】
なお、以上の各実施形態では、複数のフルマルチ記録ヘッドを用いる記録装置を例に挙げたが、本発明は1個のフルマルチ記録ヘッドを用いる場合にも同様に適用可能である。また、ノズル列を有するノズルチップを2列に千鳥配列する場合を例に挙げたが、3列以上に重なり領域をもってノズルチップを配列するようにしてもよい。すなわち、記録ヘッドのノズル面は、複数のノズルチップが隣り合うノズルチップが第1方向且つ第2方向に関してずれた位置に配されると共に、隣り合うノズルチップにそれぞれ含まれる複数のノズルが第2方向において重なり領域を持つように配列すればよい。
【符号の説明】
【0030】
1 記録機構
1a〜1f 記録ヘッド
3 制御部
5 ノズル面
6、19 ピンチローラ
8 ノズル列
9 駆動ローラ
10 シート
16、18 従動ローラ
16a 接触部
16c 非接触部
17 送りローラ
18a 最外部
18b 接触部
18c 非接触部
19 ピンチローラ
58 重なり領域
60 ノズルチップ
t シートの厚さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの記録面に接するローラを有し、第1方向にシートを搬送する搬送機構と、
前記ローラよりも前記第1方向の上流側に設けられ、前記第1方向と交差する第2方向に沿って使用するシートの幅をカバーする範囲に渡って複数のノズルが形成された記録ヘッドを用いて前記記録面に記録する記録機構と、
前記搬送機構と前記記録機構を制御して、前記記録面への画像記録動作と前記記録面への予備吐出動作を行なわせることができる制御部と、を備え、
前記記録ヘッドのノズル面は、複数のノズルチップが、隣り合うノズルチップが前記第1方向且つ前記第2方向に関してずれた位置に配されると共に、隣り合うノズルチップにそれぞれ含まれる複数のノズルが前記第2方向において重なり領域を持つように配列され、
前記ローラは回転軸方向に沿って交互に形成されたシートへの接触部と非接触部とを有し、前記接触部のそれぞれは前記第2方向において前記複数のノズルチップのそれぞれに対応して形成され、前記非接触部のそれぞれは前記第2方向において前記重なり領域のそれぞれに対応して形成されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記複数のノズルチップは前記第2方向に沿って2列で千鳥配列で並べられていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記非接触部は、前記第2方向において、前記重なり領域と同じかより広い幅を有していることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記ローラは非接触部は前記接触部よりも径が小さく、且つ前記非接触部と前記接触部とは単一のローラとして一体に形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記ローラは、前記第2方向に関して、シートが通過する領域に前記接触部と前記非接触部が形成され、、前記シートが通過する領域の外の両端に最外部を有し、前記接触部は前記最外部より半径が小さく且つ前記接触部と前記最外部の半径の差が使用するシートの厚さよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記第1方向に沿って複数箇所に配された複数の前記記録ヘッドと複数の前記ローラが設けられ、前記ローラのそれぞれは前記記録ヘッドのそれぞれに対応して設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記ローラは前記第1方向に沿って複数箇所に配され、前記第1方向の最上流に配されたローラはシートが通過する全域で径が同一であることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記ローラは従動ローラであり、回転駆動が与えられた送りローラが前記従動ローラに対向して設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
シートの記録面に接するローラを有し、第1方向にシートを搬送する搬送機構と、
前記ローラよりも前記第1方向の上流側に設けられ、前記第1方向と交差する第2方向に沿って使用するシートの幅をカバーする範囲に渡って複数の記録素子が形成された記録ヘッドを用いて前記記録面に記録する記録機構と、
前記搬送機構と前記記録機構を制御して、前記記録面への画像記録動作と前記記録面への予備吐出動作を行なわせることができる制御部と、を備え、
前記記録ヘッドの面は、複数のチップが、隣り合うチップが前記第1方向且つ前記第2方向に関してずれた位置に配されると共に、隣り合うチップにそれぞれ含まれる複数の記録素子が前記第2方向において重なり領域を持つように配列され、
前記ローラは回転軸方向に沿って交互に形成されたシートへの接触部と非接触部とを有し、前記接触部のそれぞれは前記第2方向において前記複数のチップのそれぞれに対応して形成され、前記非接触部のそれぞれは前記第2方向において前記重なり領域のそれぞれに対応して形成されている
ことを特徴とする記録装置。
【請求項1】
シートの記録面に接するローラを有し、第1方向にシートを搬送する搬送機構と、
前記ローラよりも前記第1方向の上流側に設けられ、前記第1方向と交差する第2方向に沿って使用するシートの幅をカバーする範囲に渡って複数のノズルが形成された記録ヘッドを用いて前記記録面に記録する記録機構と、
前記搬送機構と前記記録機構を制御して、前記記録面への画像記録動作と前記記録面への予備吐出動作を行なわせることができる制御部と、を備え、
前記記録ヘッドのノズル面は、複数のノズルチップが、隣り合うノズルチップが前記第1方向且つ前記第2方向に関してずれた位置に配されると共に、隣り合うノズルチップにそれぞれ含まれる複数のノズルが前記第2方向において重なり領域を持つように配列され、
前記ローラは回転軸方向に沿って交互に形成されたシートへの接触部と非接触部とを有し、前記接触部のそれぞれは前記第2方向において前記複数のノズルチップのそれぞれに対応して形成され、前記非接触部のそれぞれは前記第2方向において前記重なり領域のそれぞれに対応して形成されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記複数のノズルチップは前記第2方向に沿って2列で千鳥配列で並べられていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記非接触部は、前記第2方向において、前記重なり領域と同じかより広い幅を有していることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記ローラは非接触部は前記接触部よりも径が小さく、且つ前記非接触部と前記接触部とは単一のローラとして一体に形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記ローラは、前記第2方向に関して、シートが通過する領域に前記接触部と前記非接触部が形成され、、前記シートが通過する領域の外の両端に最外部を有し、前記接触部は前記最外部より半径が小さく且つ前記接触部と前記最外部の半径の差が使用するシートの厚さよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記第1方向に沿って複数箇所に配された複数の前記記録ヘッドと複数の前記ローラが設けられ、前記ローラのそれぞれは前記記録ヘッドのそれぞれに対応して設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記ローラは前記第1方向に沿って複数箇所に配され、前記第1方向の最上流に配されたローラはシートが通過する全域で径が同一であることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記ローラは従動ローラであり、回転駆動が与えられた送りローラが前記従動ローラに対向して設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
シートの記録面に接するローラを有し、第1方向にシートを搬送する搬送機構と、
前記ローラよりも前記第1方向の上流側に設けられ、前記第1方向と交差する第2方向に沿って使用するシートの幅をカバーする範囲に渡って複数の記録素子が形成された記録ヘッドを用いて前記記録面に記録する記録機構と、
前記搬送機構と前記記録機構を制御して、前記記録面への画像記録動作と前記記録面への予備吐出動作を行なわせることができる制御部と、を備え、
前記記録ヘッドの面は、複数のチップが、隣り合うチップが前記第1方向且つ前記第2方向に関してずれた位置に配されると共に、隣り合うチップにそれぞれ含まれる複数の記録素子が前記第2方向において重なり領域を持つように配列され、
前記ローラは回転軸方向に沿って交互に形成されたシートへの接触部と非接触部とを有し、前記接触部のそれぞれは前記第2方向において前記複数のチップのそれぞれに対応して形成され、前記非接触部のそれぞれは前記第2方向において前記重なり領域のそれぞれに対応して形成されている
ことを特徴とする記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−89499(P2010−89499A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205637(P2009−205637)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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