説明

インクジェット記録装置

【課題】インクカートリッジを交換する際の作業性を向上するとともに、用紙を取り出す際の作業性を向上する。
【解決手段】インクジェット記録装置10は、筐体20と、インクカートリッジ44a〜44dおよび記録ヘッド46を搭載するキャリッジ48と、排紙トレイ28と、「蓋体」としてのスキャナ部14と、インクカートリッジの交換時にキャリッジ48が位置するキャリッジ領域S2および排紙トレイ28に排出された用紙16が位置する排紙領域S1の両方を照射可能に設けられた光源32a〜32dとを備え、排紙領域S1の筐体20内に位置する部分は、筐体20の外部から見えるように構成されており、光源32a〜32dの少なくとも1つは、スキャナ部14を閉じた状態において、少なくとも排紙領域S1の筐体20内に位置する部分に光を照射し、かつ、スキャナ部14を開いた状態において、少なくともキャリッジ領域S2に光を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内に設けられた記録ヘッドで用紙に画像を記録するとともに、画像が記録された用紙を筐体内に設けられた排紙トレイに排出する、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ機能およびスキャナ機能を併有するインクジェット記録装置は、一般に、プリンタ機能を有するプリンタ部の上部にスキャナ機能を有するスキャナ部がヒンジを介して取り付けられており、プリンタ部を構成する第1筐体には、記録ヘッドとインクカートリッジとを搭載したキャリッジと、画像が記録された用紙が排出される排紙トレイの少なくとも一部とが収容されており、スキャナ部を構成する第2筐体には、原稿を載置するプラテンガラスと、原稿から画像を読み取るイメージセンサとが設けられている。そして、従来、インクカートリッジを交換する際には、スキャナ部をヒンジで回動させながら持ち上げて、第1筐体の上部に設けられた開口部を開き、その後、開口部からキャリッジが位置する領域に手を入れて、空になったインクカートリッジを新たなインクカートリッジに交換するようにしていた。また、排紙トレイに排出された用紙を取り出す際には、第1筐体の前部に設けられた用紙取出し口から当該用紙を目視で確認し、これを手で掴んで取り出すようにしていた。
【0003】
しかし、スキャナ部の重量は、プラテンガラスおよびイメージセンサ等が設けられていることから、かなり大きくなっており、スキャナ部を持ち上げる角度は、転倒防止等のために小角度に制限されていた。そのため、スキャナ部を持ち上げて開口部を開いたときでも、室内照明の光をキャリッジが位置する領域に十分に取り込むことが困難であり、当該領域が暗いために、インクカートリッジを交換する際の作業性が悪くなっていた。
【0004】
また、葉書等の小型用紙が排紙トレイに排出された場合には、当該小型用紙の全部または大部分が室内照明の光が届き難い筐体の内部に位置するため、当該小型用紙の存在を用紙取出し口から目視で確認することが困難であり、小型用紙を取り出す際の作業性が悪くなっていた。
【0005】
ところで、従来、「インクカートリッジを交換する際の作業性」を高める様々な技術が提案されており、たとえば、特許文献1には、スキャナユニットの画像読取部に搭載されている光源の光を、スキャナユニットと記録ユニットとの間に設けられている窓を通して、記録ユニット内に照射する構成が記載されており、特許文献2には、表示灯の光を、メンテナンスカバーに設けられた透過手段(穴等)を通して、インクタンクに照射する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−129369(段落[0030]参照)
【特許文献2】特開2004−188638(段落[0022]参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の先行技術(引用文献1,2)では、記録ユニットまたはインクタンク(すなわちインクカートリッジ)に光を照射することによって、「インクカートリッジを交換する際の作業性」を高めることが可能であるが、「用紙を取り出す際の作業性」を高めることは全く考慮されておらず、その作業性は、依然として改善されていなかった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、「インクカートリッジを交換する際の作業性」を高めることができるとともに、「用紙を取り出す際の作業性」を高めることができる、インクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るインクジェット記録装置は、上部に開口部を有する筐体と、前記筐体内に往復移動可能に設けられ、インクカートリッジおよび記録ヘッドを搭載するキャリッジと、少なくとも一部が前記筐体内に設けられ、前記記録ヘッドから吐出されたインクにより画像が記録された用紙が排出される排紙トレイと、前記筐体の上部に設けられ、前記開口部を開閉する蓋体と、前記インクカートリッジの交換時に前記キャリッジが位置するキャリッジ領域および前記排紙トレイに排出された用紙が位置する排紙領域の両方を照射可能に設けられた光源とを備え、前記排紙領域の前記筐体内に位置する部分は、前記筐体の外部から見えるように構成されており、前記光源は、前記蓋体を閉じた状態において、少なくとも前記排紙領域の前記筐体内に位置する部分に光を照射し、かつ、前記蓋体を開いた状態において、少なくとも前記キャリッジ領域に光を照射する。
【0010】
この構成では、蓋体を閉じた状態において、光源が排紙領域の筐体内に位置する部分に光を照射するので、排紙トレイに排出された用紙を目視で容易に確認することが可能であり、排紙トレイから用紙を取り出す際の作業性を高めることができる。また、蓋体を開いた状態において、光源がキャリッジ領域に光を照射するので、インクカートリッジを交換する際の作業性を高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記の構成によって、「インクカートリッジを交換する際の作業性」を高めることができるとともに、「用紙を取り出す際の作業性」を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は第1実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示す斜視図である。
【図2】図2は第1実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示す正面図である。
【図3】図3は第1実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示す断面図である。
【図4】図4は第1実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示すブロック図である。
【図5】図5は第1実施形態に係るインクジェット記録装置の「記録時の状態」を示す断面図である。
【図6】図6は第1実施形態に係るインクジェット記録装置の「待機時の状態」を示す断面図である。
【図7】図7は第1実施形態に係るインクジェット記録装置の「インクカートリッジ交換時の状態」を示す断面図である。
【図8】図8は第2実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示す断面図である。
【図9】図9は第3実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施形態に係るインクジェット記録装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、本発明をプリンタ機能、スキャナ機能およびコピー機能を併有するインクジェット記録装置(複合機)に適用しているが、本発明は、プリンタ機能だけを有する単なるプリンタ等にも適用可能である。
(第1実施形態)
[インクジェット記録装置の全体構成]
図1は、第1実施形態に係るインクジェット記録装置10の構成を示す斜視図であり、図2は、インクジェット記録装置10の構成を示す正面図であり、図3は、インクジェット記録装置10の構成を示す断面図である。
【0014】
図1に示すように、インクジェット記録装置10は、用紙16に画像を記録する「プリンタ機能」を有するプリンタ部12と、原稿から画像を読み取る「スキャナー機能」を有するスキャナ部14とを備えており、スキャナ部14で読み取った画像をプリンタ部12で用紙16に記録することで「コピー機能」を発揮できるようになっている。
[プリンタ部の構成]
図1〜3に示すように、プリンタ部12は、略直方体状の第1筐体20を有しており、第1筐体20の内部には、記録部22と、キャッピング装置24(図2)と、用紙カセット26と、排紙トレイ28と、搬送部30(図3)と、光源32a〜32dと、「光源制御手段」としての制御部34(図3、図4)とが設けられている。
【0015】
図1に示すように、第1筐体20は、平面視略四角形の底板部20aと、底板部20aの周縁部から立ち上がって形成された4枚の側板部20b〜20eとを有しており、第1筐体20の上部には、開口部35(図3)が形成されており、第1筐体20の前面を構成する側板部20bには、用紙取出し口36が形成されている。また、第1筐体20の前部における側板部20bの上方には、操作部38が所定角度で傾斜して形成されており、操作部38には、表示パネル40と各種の入力ボタン42とが設けられている。そして、第1筐体20の内部における操作部38の下方には、制御部34(図3)が配設されている。
【0016】
図1に示すように、記録部22は、外部装置(コンピュータ等)やスキャナ部14から与えられた画像情報に基づいて、用紙16に画像を記録する部分であり、異なる色(本実施形態では、シアン、イエロー、マゼンダおよびブラックの4色)のインクを収容する複数(本実施形態では4個)のインクカートリッジ44a〜44dと、インクカートリッジ44a〜44dから供給されたインクを用紙16に向けて吐出する記録ヘッド46と、インクカートリッジ44a〜44dおよび記録ヘッド46を搭載するキャリッジ48と、キャリッジ48を往復移動させる駆動部50とを有している。
【0017】
図3に示すように、キャリッジ48は、記録ヘッド46を保持するヘッドホルダ48aと、インクカートリッジ44a〜44dのそれぞれを着脱可能に保持するカートリッジホルダ48bとを有しており、カートリッジホルダ48bには、インクカートリッジ44a〜44dの有無を検出する「カートリッジ検出手段」としてのカートリッジセンサ52と、インクの残量を検出する「インク残量検出手段」としてのインク残量センサ54とが、インクカートリッジ44a〜44dのそれぞれに対応して設けられている。なお、カートリッジセンサ52およびインク残量センサ54の構成は、特に限定されるものではなく、公知技術を適宜選択して用いることができる。
【0018】
図1に示すように、駆動部50は、キャリッジ48を往復移動可能に支持する第1レール56aおよび第2レール56bと、第1レール56aおよび第2レール56bのいずれか一方(本実施形態では第2レール56b)に設けられた主動プーリ58aおよび従動プーリ58bと、主動プーリ58aに接続された駆動モータ60と、主動プーリ58aおよび従動プーリ58bに掛け渡された無端ベルト62とを有しており、無端ベルト62の一部がキャリッジ48の側面に固定されている。
【0019】
そして、図1に示すように、用紙16に画像を記録するときには、駆動モータ60が駆動されることによって、キャリッジ48が走査領域R(すなわち、用紙16に画像を記録するときにキャリッジ48が移動し得る領域)をレール56a,56bに沿って往復移動される。また、図6に示すように、記録ヘッド46の吐出不良を回復するパージ動作を実行するときや、インクジェット記録装置10を待機状態にするときには、駆動モータ60(図1)が駆動されることによって、キャリッジ48が走査領域Rの側方に位置する待機位置P1に移動される。さらに、図2に示すように、インクカートリッジ44a〜44dを交換するときには、駆動モータ60(図1)が駆動されることによって、キャリッジ48が走査領域Rの中央部に移動される。
【0020】
図2に示すように、キャッピング装置24は、パージ動作のときに、記録ヘッド46からインクを吸引したり、待機状態のときに、記録ヘッド46のノズル(図示省略)の乾燥を防止したりする機能を有するものであり、所定のキャッピング位置P2において記録ヘッド46を覆うヘッドキャップ64と、ヘッドキャップ64を昇降させる昇降部66と、インクを吸引する吸引ポンプ(図示省略)とを有している。
【0021】
図2に示すように、用紙カセット26は、葉書、B5用紙およびA4用紙等の様々なサイズの用紙16を収容する容器であり、用紙カセット26の底部には、用紙16の位置を規定する2つの用紙ガイド70a,70bが設けられており、用紙カセット26の側部には、用紙16のサイズを認識する「用紙サイズ認識手段」としての用紙サイズセンサ72が設けられている。用紙ガイド70a,70bは、用紙16の搬送方向に対して直交する方向(図2の左右方向)に位置調整可能に構成されており、一対の用紙ガイド70a,70bによって用紙16の両側縁がガイドされるようになっている。また、用紙サイズセンサ72は、用紙ガイド70a,70b間の間隔に基づいて、用紙16のサイズに応じた信号を出力するように構成されている。
【0022】
なお、「用紙サイズ認識手段」は、用紙サイズセンサ72に限定されるものではなく、たとえば、ユーザが用紙サイズを手動入力する場合には、用紙サイズを入力する入力ボタン42と、入力されたサイズを認識する制御部34とを「用紙サイズ認識手段」として用いてもよい。また、インクジェット記録装置10を外部装置(コンピュータ等)に接続して使用する場合には、外部装置から入力される用紙サイズ信号を「用紙サイズ認識手段」として用いてもよい。
【0023】
図2に示すように、排紙トレイ28は、用紙カセット26の上方に設けられた板状のトレイ本体74aと、用紙16の搬送方向に対して直交する方向(図2の左右方向)におけるトレイ本体74aの両側に配設された側板部74b,74cとを有している。そして、図3に示すように、トレイ本体74aの上方には、排紙トレイ28に排出された用紙16が位置する領域(以下、「排紙領域」という。)S1と、それよりも上方に位置する領域とを仕切る仕切板76が設けられており、仕切板76には、光源32a〜32dの光を排紙領域S1に導く長孔状の導光口78が、キャリッジ48の移動方向(以下、「走査方向」という。)に延びて形成されている。
【0024】
本実施形態の排紙トレイ28は、その大部分が第1筐体20の内部に位置しているが、その一部は用紙取出し口36から突出して第1筐体20の外部に位置している。そして、図3に示すように、排紙領域S1の第1筐体20内に位置する部分は、用紙取出し口36を通して第1筐体20の外部から見えるように構成されており、第1筐体20内に位置する排紙領域S1の奥側端部の上方から、排紙トレイ28に用紙16が排出されるようになっている。
【0025】
図3に示すように、搬送部30は、用紙カセット26に収容された用紙16を所定のタイミングで記録部22に与えるとともに、画像が記録された用紙16を排紙トレイ28に排出する部分であり、略U状の搬送経路80と、記録ヘッド46と対向する位置で用紙16を支持するプラテン82と、ピックアップローラ84と、給紙ローラ86と、排紙ローラ88とを有している。そして、用紙カセット26に収容された用紙16がピックアップローラ84によって搬送経路80に与えられると、当該用紙16が、給紙ローラ86によって所定のタイミングでプラテン82に与えられ、記録ヘッド46で画像が記録されながら、排紙ローラ88によって排紙トレイ28に排出される。
【0026】
図1に示すように、光源32a〜32dは、「シアン」、「イエロー」、「マゼンダ」および「ブラック」のインクカートリッジ44a〜44dに対応するように、「青」、「黄」、「赤」および「緑」の光を出射する発光部であり、インクカートリッジ44a〜44dの交換時にキャリッジ48が位置するキャリッジ領域S2および排紙トレイ28に排出された用紙16が位置する排紙領域S1の両方を照射できるように、出光方向が上を向くようにしてキャリッジ48の側面に設けられている。
【0027】
一方、図2および図3に示すように、スキャナ部14におけるキャリッジ領域S2に向いた下面14aには、鏡等のような光反射材90がキャリッジ48の走査方向に延びて、かつ、用紙16の搬送方向において傾斜して設けられており、図5に示すように、スキャナ部14で開口部35(図3)を閉じた状態では、光源32a〜32dから出射された光が、光反射材90で反射されて、導光口78を通して第1筐体20内の排紙領域S1に照射される。
【0028】
また、図2に示すように、スキャナ部14の下面14aにおけるキャッピング装置24に対向する部分には、鏡等のような光反射材92がキャリッジ48の走査方向において傾斜して設けられており、図6に示すように、スキャナ部14で開口部35(図3)を閉じ、かつ、キャリッジ48を待機位置P1に位置決めした状態では、光源32aから出射された光が、光反射材92で反射されて、導光口78を通して第1筐体20内の排紙領域S1に照射される。
【0029】
このように、本実施形態では、光反射材90,92で光を所定方向に反射させるようにしているので、光源32a〜32dとしては、発光ダイオード等のような強い指向性を有するものが用いられている。
【0030】
図4に示すように、制御部34は、各種のセンサ等から与えられた信号に基づいて、光源32a〜32dの点灯および消灯のタイミングを制御する「光源制御手段」として機能するものであり、具体的には、各種の演算処理を実行する中央演算処理装置(CPU)、各種のデータを記憶する記憶装置(ROM,RAM)およびタイマ等を有している。そして、制御部34に対して、カートリッジセンサ52、インク残量センサ54、用紙サイズセンサ72、開閉センサ94、記録部22、キャッピング装置24、搬送部30、入力ボタン42および光源32a〜32d等が接続されている。
[スキャナ部の構成]
図3に示すように、スキャナ部14は、略直方体状の第2筐体100を有しており、第2筐体100の上面には、原稿を載置するプラテンガラス102が設けられており、第2筐体100の内部には、原稿から画像を読み取るイメージセンサ104が設けられている。また、第2筐体100の上部には、プラテンガラス102を保護するカバー106が第2ヒンジ108を介して開閉可能に取り付けられている。なお、スキャナ部14の下面14aに光反射材90,92が設けられていることは、上述した通りである。
【0031】
そして、スキャナ部14の全体が、第1ヒンジ110を介してプリンタ部12における第1筐体20の上部に取り付けられており、スキャナ部14が「蓋体」として機能することで、第1筐体20の開口部35が開閉される。さらに、プリンタ部12およびスキャナ部14の一方(本実施形態ではプリンタ部12)には、スキャナ部14の開閉状態を認識する開閉センサ94が設けられている。
[記録動作]
図5は、インクジェット記録装置10の「記録時の状態」を示す断面図である。
【0032】
インクジェット記録装置10では、「蓋体」としてのスキャナ部14が閉じられた状態において、用紙16に画像を記録するための「記録動作」が実行される。この「記録動作」では、用紙カセット26に収容された用紙16が搬送部30によって記録部22に与えられ、記録ヘッド46から用紙16にインクが吐出されることによって、当該用紙16に画像が記録される。そして、画像が記録された用紙16が排紙領域S1の奥側端部の上方から排紙トレイ28に排出される。なお、光源32a〜32dの動作は、「光源制御手段」としての制御部34によって制御され、ユーザは、入力ボタン42を操作することによって、必要な動作態様を適宜選択することができる。以下には、代表的な動作態様について説明する。
<第1の動作態様>
「第1の動作態様」では、制御部34は、記録動作の最中に光源32a〜32dの少なくとも1つを点灯させ、当該光源の光を光反射材90で反射させて、排紙領域S1に照射する。したがって、排紙トレイ28に排出されてくる用紙16の画像を、当該光の下で目視で容易に確認することが可能であり、記録不良を早期に発見することができる。また、記録動作の最中には、光源32a〜32dがキャリッジ48と共に往復移動するので、排紙領域S1の幅方向(すなわち走査方向)の全域をサーチライトのように照らすことが可能であり、小出力の光源32a〜32dを用いた場合でも、排紙領域S1に位置する用紙16を用紙取出し口36から容易に視認することができる。
【0033】
また、「記録動作」が終了すると、駆動モータ60(図1)が、キャリッジ48を走査領域Rの走査方向中央部に移動させるとともに、制御部34が、光源32a〜32dの少なくとも1つを点灯させ、当該光源の光を光反射材90で反射させて排紙領域S1に照射する。したがって、ユーザは、点灯された光源が走査方向中央部に位置していることを見て、「記録動作の終了」を知ることができるとともに、当該光源の光で照らされた排紙トレイ28上の用紙16を、目視で確認しながら容易に取り出すことができる。
【0034】
そして、「記録動作」が終了した後、一定時間が経過すると、駆動モータ60(図1)が、キャリッジ48を待機位置P1に移動させるとともに、キャリッジ48が記録ヘッド46を所定のキャッピング位置P2に位置決めする。また、制御部34が、光源32a〜32dの少なくとも1つを一定時間だけ点灯させ、当該光源の光を光反射材90または92で反射させて排紙領域S1に照射する。つまり、キャリッジ48が待機位置P1に移動するまでは、光源32a〜32dの少なくとも1つの光を、光反射材90で反射させて排紙領域S1に照射し、キャリッジ48が待機位置P1に移動した後は、光源32a〜32dの少なくとも1つの光を、光反射材92で反射させて排紙領域S1に照射し、その後、光源32a〜32dの全てを消灯させる。
【0035】
したがって、「記録動作」の終了後の一定時間は、排紙領域S1が光源32a〜32dの少なくとも1つの光で照らされることになり、キャリッジ48が待機位置P1に移動した後であっても、排紙トレイ28に排出された用紙16を目視で確認しながら容易に取り出すことができる。また、キャリッジ48が待機位置P1に移動してから一定時間が経過すると、光源32a〜32dの全てが消灯されるので、光源32a〜32dの電力消費量を低減することができる。
【0036】
なお、他の動作態様においては、記録動作の最中には、光源32a〜32dの全てを消灯させてもよい。この場合でも、制御部34が、「記録動作」の終了後に光源32a〜32dの少なくとも1つを点灯させることで、排紙領域S1に光を照射することができるので、排紙トレイ28に排出された用紙16を目視で確認しながら容易に取り出すことができる。また、他の動作態様においては、「記録動作」の終了後には、消灯用の入力ボタン42が押されるまで、光源32a〜32dの点灯状態を保持するようにしてもよい。
<第2の動作態様>
「第2の動作態様」は、「第1の動作態様」に付加される動作態様である。「第2の動作態様」では、制御部34は、複数の光源32a〜32dのうち、動作状況に応じた色の光源32a〜32dを選択的に点灯させる。
【0037】
たとえば、インク残量センサ54が検出するインクカートリッジ44a〜44dのいずれかのインク残量が所定の基準値よりも少なくなると、制御部34は、光源32a〜32dの中から当該インクカートリッジの色に対応する色の光源を選択して点灯させる。これにより、ユーザは、点灯されている光源の色に基づいて、交換すべきインクカートリッジ44a〜44dの種類(色)と交換時期とを簡単に知ることができる。
【0038】
また、制御部34は、記録対象となっている用紙16の残り枚数が20枚のときに「青」、10枚のときに「黄」、3枚のときに「赤」といったように、残り枚数に応じて異なる色の光源を点灯させる。これにより、ユーザは、点灯された光源の色に基づいて、「記録動作」の終了までのおおよその時間を知ることができる。
【0039】
なお、「第2の動作態様」では、光源の色で動作状況を知らせるようにしているが、他の動作態様では、点灯方式を点滅等に変えることによって、或いは、点滅周期を変えることによって、動作状況を知らせるようにしてもよい。この場合には、電球の色数にかかわらず、様々な動作状況を知らせることができるので、光源の数は1個だけでもよい。
<第3の動作態様>
「第3の動作態様」は、最小サイズの用紙16を取り出す際の作業性を優先的に改善するための動作態様である。「第3の動作態様」では、制御部34は、少なくとも「用紙サイズ認識手段」としての用紙サイズセンサ72が認識したサイズが最小サイズ(本実施形態では葉書サイズ)のときに、上記第1および第2の動作態様を実行するように光源32a〜32dを制御する。
【0040】
「第3の動作態様」を実現するための「第1の方法」では、第1筐体20内の排紙領域S1に光を照射する必要がある用紙16のサイズ(最小サイズを含む。)を予め制御部34の記憶装置に記憶させ、当該サイズの用紙16に画像が記録されるときにだけ、制御部34で光源32a〜32dの少なくとも1つを点灯させる。
【0041】
また、「第2の方法」では、「基準サイズ」を予め制御部34の記憶装置に記憶させ、基準サイズ以下のサイズの用紙16に画像が記録されるときにだけ、制御部34で光源32a〜32dの少なくとも1つを点灯させる。
【0042】
なお、ユーザが用紙サイズを手動入力する場合には、用紙サイズを入力する入力ボタン42と、入力されたサイズを認識する制御部34とが「用紙サイズ認識手段」となる。
[待機動作]
図6は、インクジェット記録装置10の「待機時の状態」を示す断面図である。
【0043】
インクジェット記録装置10を待機状態にするときや、パージ動作を実行するときには、「待機動作」が実行され、駆動モータ60(図1)がキャリッジ48を待機位置P1に移動させるとともに、キャリッジ48が記録ヘッド46を所定のキャッピング位置P2に位置決めする。そして、キャッピング装置24の昇降部66がヘッドキャップ64を上昇させ、当該ヘッドキャップ64を記録ヘッド46に装着する。さらに、パージ動作においては、吸引ポンプ(図示省略)が記録ヘッド46内のインクを吸引する。
【0044】
上記「第1の動作態様」の項で説明したように、キャリッジ48が待機位置P1に位置する状態では、光源32aから出射された光が、光反射材92で反射されて排紙領域S1に照射されるので、排紙トレイ28に用紙16が残っている場合には、当該用紙16を目視で確認しながら容易に取り出すことができる。
【0045】
なお、本実施形態では、待機位置P1で出射された光を排紙領域S1に効率よく導くために、待機位置P1では、排紙領域S1に最も近い光源32aだけを使用しているが、他の光源32b〜32aを単独で使用してもよいし、2個以上の光源を併用してもよい。
[カートリッジ交換動作]
図7は、インクジェット記録装置10の「インクカートリッジ交換時の状態」を示す断面図である。
【0046】
インクカートリッジ44a〜44dの交換時には、ユーザが入力ボタン42のうちカートリッジ交換用のボタンを手動で操作したときに、或いは、開閉センサ94がスキャナ部14の「開状態」を認識したときに、駆動モータ60によってキャリッジ48が走査領域Rの中央部(図2の位置)に移動され、当該キャリッジ48がインクカートリッジ44a〜44dを所定のカートリッジ交換位置P3に位置決めする。また、「光源制御手段」としての制御部34が、光源32a〜32dの少なくとも1つを点灯させ、当該光源の光をキャリッジ領域S2に照射する。
【0047】
したがって、図7に示すように、「蓋体」としてのスキャナ部14を開いた状態では、インクカートリッジ44a〜44dが光源の光で照らされることになり、ユーザは、インクカートリッジ44a〜44dの位置を目視で確認しながら、その交換作業を容易に行うことができる。また、上述のように、インク残量が少なくなったインクカートリッジの色に対応する色の光源を点灯させるようにすると、ユーザは、その光源の色に基づいて交換すべきインクカートリッジ44a〜44dの種類(色)を簡単に知ることができるので、その交換作業をより容易に行うことができる。
【0048】
図7に示すように、「蓋体」としてのスキャナ部14が開かれた状態において、カートリッジホルダ48bから空になったインクカートリッジ44aを取り出すと、カートリッジセンサ52が、カートリッジホルダ48bにインクカートリッジ44aが無いことを検出し、制御部34は、その不在になったインクカートリッジ44aに対応する光源、或いは、他の光源を点灯させる。そして、その後、新たなインクカートリッジ44aがカートリッジホルダ48bに装着されて、「カートリッジホルダ48bにインクカートリッジ44aが有ること」をカートリッジセンサ52が検出し、かつ、「当該インクカートリッジ44aのインク残量が所定の基準値以上であること」をインク残量センサ54が検出すると、制御部34は、点灯させていた光源を消灯させる。
【0049】
したがって、ユーザは、光源が消灯したことを見て、インクが十分に残存している新たなインクカートリッジ44aが正しく装着された、と判断することができる。
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係るインクジェット記録装置120の構成を示す断面図である。
【0050】
インクジェット記録装置120では、光源32a〜32dが、第1レール56aの長手方向(すなわち走査方向)の中央部に取り付けられている。また、スキャナ部14の下面14aには、光源32a〜32dから出射された光を反射して、排紙領域S1に照射する光反射材90が設けられている。そして、インクカートリッジ44a〜44dを交換する際には、キャリッジ48が走査領域Rの中央部に移動され、インクカートリッジ44a〜44dが光源32a〜32dの近傍に位置する所定のカートリッジ交換位置P3に位置決めされる。
【0051】
したがって、スキャナ部14を閉じた状態では、光源32a〜32dの光を導光口78を通して第1筐体20内の排紙領域S1に照射することが可能であり、一方、スキャナ部14を開いた状態では、光源32a〜32dの光をキャリッジ領域S2に照射することが可能であり、排紙トレイ28から用紙16を取り出す際の作業性を向上することができるとともに、インクカートリッジ44a〜44dを交換する際の作業性を向上することができる。
【0052】
なお、第2実施形態では、光源32a〜32dが第1レール56aに固定されているので、光反射板90は、光源32a〜32dと対向する位置にだけ設けられていてもよく、導光口78は、光反射板90に対応する位置にだけ設けられていてもよい。
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態に係るインクジェット記録装置130の構成を示す断面図である。
【0053】
インクジェット記録装置130では、光源132a〜132dの指向性が弱く、光源132a〜132dから出射された光が全方位に均等に拡散されるようになっている。したがって、導光口78の近傍に光源132a〜132dを配置することによって、排紙領域S1およびキャリッジ領域S2の両方を同時に照らすことが可能であり、光反射材90,92を省略することができる。
【0054】
なお、インクジェット記録装置130(図9)では、光源132a〜132dを第1レール56aに取り付けているが、光源132a〜132dをキャリッジ48に取り付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
P1… 待機位置
P2… キャッピング位置
P3… カートリッジ交換位置
S1… 排紙領域
S2… キャリッジ領域
R… 走査領域
10… インクジェット記録装置
12… プリンタ部
14… スキャナ部(蓋体)
14a… 下面
16… 用紙
20… 第1筐体
22… 記録部
24… キャッピング装置
26… 用紙カセット
28… 排紙トレイ
30… 搬送部
32a〜32d… 光源
34… 制御部(光源制御手段)
35… 開口部
36… 用紙取出し口
38… 操作部
42… 入力ボタン(用紙サイズ認識手段)
44a〜44d… インクカートリッジ
46… 記録ヘッド
48a… ヘッドホルダ
48b… カートリッジホルダ
48… キャリッジ
50… 駆動部
52… カートリッジセンサ(カートリッジ検出手段)
54… インク残量センサ(インク残量検出手段)
56a… 第1レール
56b… 第2レール
60… 駆動モータ
64… ヘッドキャップ
72… 用紙サイズセンサ(用紙サイズ認識手段)
78… 導光口
90,92… 光反射材
94… 開閉センサ
110… 第1ヒンジ
120,130… インクジェット記録装置
132a〜132d… 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部を有する筐体と、
前記筐体内に往復移動可能に設けられ、インクカートリッジおよび記録ヘッドを搭載するキャリッジと、
少なくとも一部が前記筐体内に設けられ、前記記録ヘッドから吐出されたインクにより画像が記録された用紙が排出される排紙トレイと、
前記筐体の上部に設けられ、前記開口部を開閉する蓋体と、
前記インクカートリッジの交換時に前記キャリッジが位置するキャリッジ領域および前記排紙トレイに排出された用紙が位置する排紙領域の両方を照射可能に設けられた光源とを備え、
前記排紙領域の前記筐体内に位置する部分は、前記筐体の外部から見えるように構成されており、
前記光源は、前記蓋体を閉じた状態において、少なくとも前記排紙領域の前記筐体内に位置する部分に光を照射し、かつ、前記蓋体を開いた状態において、少なくとも前記キャリッジ領域に光を照射する、インクジェット記録装置。
【請求項2】
画像が記録される用紙のサイズを認識する用紙サイズ認識手段と、
少なくとも前記用紙サイズ認識手段が認識したサイズが最小サイズのときに、前記排紙領域に光を照射するように前記光源を制御する光源制御手段とを有する、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記蓋体における前記キャリッジ領域に向いた面には、光反射材が設けられており、
前記蓋体が閉じた状態においては、前記光源から出射された光が前記光反射材で反射されて前記排紙領域に照射される、請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記光源は前記キャリッジに設けられている、請求項1ないし3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
所定のキャッピング位置で前記記録ヘッドを覆うヘッドキャップを有するキャッピング装置を備え、
前記蓋体が閉じた状態においては、記録動作の終了後に、前記キャリッジが前記記録ヘッドを前記キャッピング位置に位置決めし、かつ、前記光源が前記排紙領域に光を照射する、請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記光源は、発光色が異なる複数の光源を有しており、動作状況に応じた色の前記光源が選択的に点灯される、請求項1ないし5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記蓋体が閉じた状態においては、記録動作の最中に、前記光源が前記排紙領域に光を照射する、請求項1ないし6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記蓋体が閉じた状態においては、記録動作の終了後に、前記光源が前記排紙領域に光を照射する、請求項1ないし7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記光源の点灯および消灯のタイミングを制御する光源制御手段と、
前記インクカートリッジのインク残量を検出するインク残量検出手段と、
前記キャリッジに設けられたカートリッジホルダにおける前記インクカートリッジの有無を検出するカートリッジ検出手段とを備え、
前記蓋体が開いた状態において、前記インクカートリッジが無いことを前記カートリッジ検出手段が検出すると、前記光源制御手段が前記光源を点灯させ、その後、前記インクカートリッジが有ることを前記カートリッジ検出手段が検出し、かつ、前記インクカートリッジのインク残量が所定の基準値以上であることを前記インク残量検出手段が検出すると、前記光源制御手段が前記光源を消灯させる、請求項1ないし8のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−207039(P2011−207039A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76921(P2010−76921)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】