説明

インクジェット記録装置

【課題】記録を中断することなくインクタンクの交換が可能なインクジェット記録装置において、サブタンクの構成を簡易にし、かつ装置の大型化を抑制する。
【解決手段】インクを収容可能で、交換が可能なインクタンク201と、インクタンク201で加圧されたインクが流れる供給チューブ53と、供給チューブ53から流入したインクを収容可能なサブタンク15と、第1の圧力でインクタンク201を加圧するとともに第1の圧力よりも小さな第2の圧力でサブタンク15を加圧する加圧21と、供給チューブ53に設けられ、供給チューブ53を開閉可能な弁14と、サブタンク15で加圧されたインクが流入する負圧タンク152と、負圧タンク152から供給されたインクを吐出する記録ヘッド151と、を有し、第1の圧力が、供給チューブ53の圧力損失と、第2の圧力との和よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出することで記録を行うインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録装置では、一般的に、インクタンクから記録ヘッドにインクが供給され、記録ヘッドは、供給されたインクを吐出ノズルから記録媒体へ吐出する。インクタンクと記録ヘッドは、柔軟でしかも中空な流体導管で接続されている。また、インクジェット記録装置には、一般的に、インクタンクにおけるインクの残量を検知するセンサーが設けられている。インクタンクのインクが減ると、センサーが、インクの残量が僅かである状態またはインク無しの状態であることを検知する。その後、インクタンクの交換を促す表示(アラーム)が行われる。この表示が行われている間、記録は中断され、ユーザがインクタンクを交換すると、記録が再開される。インクタンクの交換に伴う記録の中断を解消する記録装置が、特許文献1および特許文献2に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された記録装置には、インクタンクと記録ヘッドの間に2室からなるサブタンクが設けられている。このサブタンクでは、一方の室を減圧することによってインクタンクからインクが供給され、供給されたインクは他方の室に流入する。そして、他方の室に流入したインクは、記録ヘッドに供給される。インクタンクの交換が行われているとき、2室の連通は遮断され、他方の室から記録ヘッドへのインクの供給が継続される。
【0004】
一方、特許文献2に開示された記録装置では、同一色のインクを収納する2つのインクタンクと、各インクタンクに接続されたサブタンクと、インクタンクとサブタンクとの接続を切り換えるインク供給弁とが設けられている。この記録装置では、一方のインクタンクのインクがなくなると、インク供給弁が他方のインクタンクとサブタンクとを接続させる。これにより、一方のインクタンクを交換している間、他方のインクからサブタンクにインクが供給されるので記録が中断されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−254702号公報
【特許文献2】特開2002−52731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された記録装置では、サブタンクは、減圧や2室の連通の遮断のために数多くの弁が必要になり、複雑な構成となっている。一方、特許文献2に開示された記録装置では、サブタンクは簡易な構成となっている。しかし、この記録装置は、1色ごとに交換用のインクタンクを2つ用意しなければならない。そのため、インクタンクの装着スペースやインクタンクを交換するのに必要な操作スペースが増え、装置の大型化を招く。
【0007】
本発明は、記録を中断することなくインクタンクの交換が可能なインクジェット記録装置において、サブタンクの構成を簡易にし、かつ装置の大型化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のインクジェット記録装置は、インクを収容可能で、交換が可能なインクタンクと、前記インクタンクで加圧されたインクが流れる供給チューブと、前記供給チューブから流入したインクを収容可能なサブタンクと、第1の圧力で前記インクタンクを加圧するとともに、前記第1の圧力よりも小さな第2の圧力で前記サブタンクを加圧する加圧手段と、前記供給チューブに設けられ、前記供給チューブを開閉可能な弁と、前記サブタンクで加圧されたインクが流入する負圧タンクと、前記負圧タンクから供給されたインクを吐出する記録ヘッドと、を有し、前記第1の圧力が、前記供給チューブの圧力損失と、前記第2の圧力との和よりも大きい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、1色に対して2つのインクタンクを必要としない構成となっているので装置の大型化を抑制できる。また、上述した第1の圧力でインクタンクを加圧するとともに上述した第2の圧力でサブタンクを加圧することによって、インクタンクが装着されているときは、インクはインクタンクからサブタンクを経由して負圧タンクへ供給される。負圧タンクへ供給されたインクは記録ヘッドから吐出される。インクタンクを交換するときは、第1の圧力は作用しないが加圧手段がサブタンクを加圧し弁が供給チューブを閉鎖することによって、サブタンクから負圧タンクへのインクの供給が継続される。そのため、記録ヘッドはインクを吐出できる。このようにインクタンクの圧力およびサブタンクの圧力を設定することで、サブタンクが、2つの室や数多くの弁が設けられていない簡易な構成であっても、記録を中断することなくインクタンクを交換することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の要部の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態のインクジェット記録装置を流れるインクの経路を示す図である。
【図3】負圧タンクの構成を示す断面図である
【図4】圧力レギュレータの構成を示す断面図である。
【図5】インクタンクの交換時におけるインクの経路を説明するための図である。
【図6】本発明の第二の実施形態のインクジェット記録装置の要部の構成を示す図である。
【図7】本発明の第三の実施形態のインクジェット記録装置の要部の構成を示す図である。
【図8】本発明の第四の実施形態のインクジェット記録装置の要部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第一の実施形態)
図1は、本発明のインクジェット記録装置の要部の構成を示す斜視図である。図2は、本発明の第一の実施形態のインクジェット記録装置を流れるインクの経路を示す図である。本実施形態のインクジェット記録装置では、ブラック、シアン、マゼンダ、およびイエローの4色のインクを使用する。
【0012】
図1に示すように、本発明のインクジェット記録装置には、供給ユニット200が設けられている。供給ユニット200は、インクを収納可能で、交換が可能なインクタンク201、202、203、および204を有する。インクタンク201にはブラックのインクが収容されている。インクタンク202にはシアンのインクが収容されている。インクタンク203にはマゼンタのインクが収容されている。インクタンク204にはイエローのインクが収容されている。インクタンク201〜204には、インクチューブ251、261、271、281がそれぞれ接続されている。インクチューブ251、261、271、281は、キャリッジ410まで這い回される。キャリッジ410の上には、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色に対応した記録ヘッド151、161、171、181が搭載されている。
【0013】
本発明のインクジェット記録装置では、後述する加圧ポンプ210、211により押し出された各色のインクは、インクチューブ251、261、271、281をそれぞれ流れる。各インクチューブを流れるインクは、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色に対応した負圧タンク152、162、172、182をそれぞれ経由して記録ヘッド151、161、171、181に供給される。キャリッジ410は、スライド軸450に沿って移動可能であり、記録用紙601上を往復移動する。記録ヘッド151、161、171、181は、制御部(不図示)の制御に従って記録用紙601上へインクを選択的に吐出する。このとき、記録装置下方に設けられたLFローラー470が記録用紙601を矢印A方向に間欠送りすることによって、連続的な記録が行われる。
【0014】
また、本発明のインクジェット記録装置には、回復ユニット300が設けられている。回復ユニット300は、チューブポンプなどの吸引手段を有し、キャリッジ410の往復移動領域における記録領域の外側に位置している。回復ユニット300では、キャップ320が記録ヘッド151、161、171、181に接合する。この状態で、前記吸引手段が各記録ヘッドの吐出ノズル(不図示)からインクを吸引する。また、記録装置の休止時にはキャップ320が吐出ノズルをキャッピングする。これにより、吐出ノズルが保護され、記録ヘッドが良好な状態に維持される。
【0015】
負圧タンク152、162、172、182と回復ユニット300とは、空気排出チューブ321、331、341、351(図2参照)でそれぞれ接続されている。各空気排出チューブは、インクチューブ251、261、271、281と共にU字を描いて束ねられ、キャリッジ410まで這い回される。
【0016】
次に、図2を参照して本実施形態のインクジェット記録装置におけるインク経路について説明する。なお、インクタンク201、202、203、204、及び記録ヘッド151、161、171、181の周りの構成は同一なので、主にブラックに対応するインクタンク201、記録ヘッド151の周りの構成について説明し、適宜他の色の構成を説明する。
【0017】
インクタンク201は、加圧空気に耐えられるような樹脂又は金属で形成されたケース11を有する。ケース11内には、ゴム、フィルム等の柔軟部材で形成され、内部にインクを充填したインク袋12が設けられている。インクなしでは、インク袋12は潰れた状態になる。ケース11は、インク袋12の外側を密閉している。インク袋12のインク導出口は、ゴム栓10で密閉されている。ゴム栓10にはインク針が差し込まれ、これによりインクが導出可能になる。
【0018】
インクタンク201は、加圧手段21の加圧ポンプ210(第1の加圧ポンプ)に加圧される。加圧ポンプ210とインクタンク201は、インクタンク加圧チューブ51で接続される。インクタンク加圧チューブ51には、ケース11に加圧空気を通したり遮断したりする開閉可能な加圧開閉弁13が設けられている。また、インクタンク201は、供給チューブ53でサブタンク15に接続されている。
【0019】
サブタンク15は、インクタンク201から供給チューブ53を通じて流入したインクを収容可能である。供給チューブ53には、インクタンク201からサブタンク15へインクを流し、サブタンク15からインクタンク201へのインクの流れを阻止可能な一方向弁14が設けられている。サブタンク15の上部には、サブタンク15のインク量を電気導通によって検知する一対の電極ピン16が取り付けられている。また、サブタンク15の上部には、サブタンク15に溜まった空気を外部に逃がすための大気開放弁17が取り付けられている。サブタンク15は、加圧手段21の加圧ポンプ211(第2の加圧ポンプ)に加圧される。加圧ポンプ211とサブタンク15は、サブタンク加圧チューブ52で接続されている。サブタンク加圧チューブ52には、サブタンク15へ加圧空気を流し、逆方向には流さない一方向弁18が設けられる。
【0020】
なお、加圧ポンプ210、211の構造としては、小型化に有利で、空気流量を大きくとれる周知のダイアフラム式ポンプが適している。
【0021】
インクタンク202、203、204の各々は、インクタンク加圧チューブ61、71、81で加圧ポンプ210と接続されている。インクタンク加圧チューブ61、71、81は、インクタンク加圧チューブ51と合わせ、加圧ポンプ210から4本に分岐して、各インクタンクへ加圧空気を送る。加圧ポンプ210の下流で、各インクタンク加圧チューブへ分岐する手前には、インクタンク用の圧力レギュレータ221が設けられている。圧力レギュレータ221は、コントローラ510によって加圧値が所定の範囲で制御される。加圧ポンプ210が4本のインクタンク加圧チューブに対して並列に加圧しているため、各インクタンクは、ほぼ均等に加圧される。
【0022】
また、サブタンク25、35、45の各々は、サブタンク加圧チューブ62、72、82で加圧ポンプ211と接続されている。サブタンク加圧チューブ62、72、82は、サブタンク加圧チューブ52と合わせ、加圧ポンプ211から4本に分岐して各サブタンクへ加圧空気を送る。加圧ポンプ211の下流で、各インクタンク加圧チューブへ分岐する手前には、サブタンク用の圧力レギュレータ222が設けられている。圧力レギュレータ222は、コントローラ510によって加圧値が所定の範囲で制御される。加圧ポンプ211が4本のサブタンク加圧チューブに対して並列に加圧しているため、各サブタンクは、ほぼ均等に加圧される。
【0023】
インクタンク201のケース11に加圧ポンプ210により圧力を制御された加圧空気を送ることでインク袋12の周囲は加圧される。すると、インク袋12の内部のインクは、供給チューブ53を通り、一方向弁14を介してサブタンク15へ送られる。サブタンク15の底部からインクが溜まるように供給チューブ53は、サブタンク15の底部に接続している。加圧ポンプ210と同時に、サブタンク15には加圧ポンプ211により圧力を制御された加圧空気を送ることで、サブタンク15の内部のインクは加圧される。サブタンク15のインク液面16aを加圧するため、サブタンク加圧チューブ52は、サブタンク15の上部に接続されている。インク液面16aは、電極ピン16の下端とほぼ一致する。
【0024】
ここで、サブタンク15、25、35、45の各々の近傍に設けられた一方向弁18、28、38、48の機能について説明する。サブタンク加圧チューブ52、62、72、82は、4つに分岐しているため、もし、一方向弁18、28、38、48を設けていないと、互いに空気が行き来できる状態になる。サブタンク内のインク量は電極ピン16で監視されているが、何らかの不具合により液面が上昇し、サブタンク加圧チューブ52、62、72、82のいずれか一つにでもインクが侵入すると、他のサブタンクにそのインクが混じる恐れがある。このような混色を防止するために一方向弁18、28、38、48は設けられている。
【0025】
インクタンク201が装着され、インク袋12にインクがあり、インク袋12が潰れていなければ、インクは、加圧ポンプ210と211で加圧され、インクチューブ251を経て負圧タンク152にインクが供給される。
【0026】
なお、サブタンク15のインク液面16aには、外部から取り込んだ加圧空気が接するので、ゴミや塵埃を除去するために、加圧ポンプ211の外気の吸入口(不図示)にエアーフィルターを設けてもよい。
【0027】
次に、記録ヘッド151の周りの構成について説明する。
【0028】
負圧タンク152は、記録ヘッド151に微負圧を発生させると供に、サブタンク15からインクの供給を受ける。循環ポンプ153は、記録ヘッド151と負圧タンク152の間でインクを循環する。空気抜き弁154は、負圧タンク152に溜まった空気を吸引する際に開くように制御される。切替え弁322は、キャップ320と負圧タンク152との経路を切替える。チューブポンプ323は、吸引手段である。
【0029】
記録ヘッド151と負圧タンク152は、供給チューブ155で接続されるとともに、循環チューブ156、循環ポンプ153、ポンプチューブ157で接続される。負圧タンク152とチューブポンプ323は、切替え弁322を介して空気排出チューブ321で接続される。
【0030】
負圧タンク152から記録ヘッド151へ供給チューブ155を介してインクが供給される。この間の供給は、記録ヘッド151のノズルの毛管力である。キャリッジ410内に設けられた供給チューブ155は、記録装置内を這い回されたインクチューブ251に比べ短いため、流路抵抗が小さく、インク供給量は十分に確保される。
【0031】
記録ヘッド151には、記録中に泡が溜まることがあり、吐出不良を起す原因となる。そこで、必要に応じて循環ポンプ153によりインクを循環すると供に、記録ヘッド151から負圧タンク152に泡を移動させる。インクは、負圧タンク152、供給チューブ155、記録へッド151、循環チューブ156、循環ポンプ153、ポンプチューブ157、負圧タンク152・・・という順に循環する。この過程で、負圧タンク152の上部に自然に泡が溜まり、やがて空気になる。空気抜き弁154が開いて、切替え弁322が空気排出チューブ321の経路に切替わると、負圧タンク152の上部から空気排出チューブ321を介してチューブポンプ323が泡を排出する。
【0032】
上述した構成は、他の記録ヘッド161、171、181の周りにも各々設けられている。
【0033】
図3は、負圧タンクの構成を示す断面図である。図3(a)は、負圧弁112が供給口118を閉鎖している状態を示し、図3(b)は、負圧弁112が供給口118を開放している状態を示す。
【0034】
負圧タンク152は、インク吐出のために微負圧を発生する機構を有している。その機構について説明する。インク室111は、サブタンク15からインクチューブ251を通じて供給されたインクを収納する。負圧弁112は、インク室111の内部圧力の変化に対応して供給口118を開閉する。作動子113は、負圧弁112と一体に形成されている。可撓膜114は、ゴムやフィルム、アルミ蒸着されたフィルムなどで形成された自在に撓むことができる薄い膜である。負圧バネ115は、可撓膜114を外側に膨らませるように作動子113を付勢することによって、負圧弁112に供給口118を閉鎖させる。ガイド116は、作動子113をガイドする。シール部117は、負圧弁112が供給口118を閉鎖しているときに負圧弁112と接触する。
【0035】
負圧バネ115が、インク室111内の容積を増加させる方向に可撓膜114を付勢することによって、インク室111内は所定の微負圧(例えば、大気圧マイナス80mmAq)状態になる。単位mmAqは、下記の式(1)で換算される圧力の単位である。
【0036】
圧力[Pa]=密度[kg/m3]×重力加速度[m/sec2]×水頭[m]・・・(1)
例えば、上記の式(1)で、水頭が、0.08[m]であれば、これを80mmAqと表記する。
【0037】
インク室111内が上記の微負圧値になると、記録ヘッド151は、負圧タンク152と記録ヘッド151の配置による高低差分を加えた微負圧値となる。例えば、負圧タンク152が記録ヘッド151よりも上方20mmに位置する場合は、大気圧マイナス60mmAqとなる。記録ヘッド151を微負圧状態とすることによって、吐出ノズルに良好なメニスカスが形成される。
【0038】
インクの吐出に伴って記録ヘッド152内のインクが消費されると、インク室111のインクが減少する。これにより、可撓膜114は内側(インク室111側)に変形する。可撓膜114の変形により作動子113が変位し、負圧弁112が供給口118を開放する(図3(b)参照)。供給口118が開放されると、サブタンク15で加圧されたインクが供給口118よりインク室111に流入する。インク室111内のインク量の増加に伴い可撓膜114が外側に変形すると、作動子113は負圧弁112が供給口118を閉鎖する方向に移動する。負圧弁112がシール部117に接触することによって供給口118が閉鎖され、再び所定の微負圧となる。
【0039】
記録ヘッド152からのインクの吐出が連続的に行なわれる連続記録動作においては、負圧弁112は上記開閉動作を間欠的に繰り返す。インクはインクタンク201からインクチューブ251を介し、負圧タンク152に供給され、そして供給チューブ155を介して記録ヘッド151に安定的に供給される。
【0040】
図4は、圧力レギュレータの構成を示す断面図である。図4(a)は、インクタンクの圧力が所定範囲にある状態(定常状態)を示す。図4(b)は、インクタンクの圧力が下限値に達している状態を示す。図4(c)は、インクタンクの圧力が上限値に達している状態を示す。図4(d)は、インクタンクおよびサブタンクの各々の圧力の大小関係を表す図である。
【0041】
図4(a)を参照して、インクタンク用の圧力レギュレータ221の構成を説明する。圧力レギュレータ221は、薄膜231aと、アーム232と、フラグ234と、ボール235と、調圧バネ238と、センサー239とを有する。
【0042】
薄膜231aは、ゴムや樹脂フィルム、アルミ蒸着されたフィルムなどで形成され、空気圧によって自在に膨らんだり、萎んだりする。アーム232は、薄膜231aが膨張した際に押圧され、支点233を中心に回動する。フラグ234は、アーム232の一端に設けられている。ボール235は、鋼製又は樹脂製であり、ボール弁バネ236でシール部237に押し付けられ、加圧空気をシールしている。調圧バネ238は、アーム232を薄膜231aの膨張方向とは逆の矢印Cの方向に付勢する。センサー239は、フラグ234の位置を検知する。
【0043】
図4(a)に示すように、アーム232において空気圧P0と調圧バネ238の力が釣り合う状態が、定常状態である。定常状態では、センサー239は、フラグ234を検知しておらず、加圧ポンプ210は作動せず、ケース11やサブタンク15の空気は、加圧状態が保持されている。
【0044】
記録やノズル吸引によってインクが消費されると、インクが消費された体積分だけケース11やサブタンク15の加圧空気が膨張するため、インクタンクの圧力は低下する。圧力が低下すると、調圧バネ238が優勢となる。インクタンクの圧力が下限値である空気圧P1まで低下すると、薄膜231aは、図4(b)に示す形状のように萎む。その結果、アーム232は、矢印Cの方向に付勢されてセンサー239がフラグ234を検知する。
【0045】
センサー239がフラグ234を検知すると、コントローラ510が加圧ポンプ210に加圧動作を開始させる。その後、薄膜231aが図4(a)に示す形状に戻ると、コントローラ510は加圧ポンプ210を停止させる。この加圧動作によって各インクタンクの圧力が制御される。ここで、コントローラ510の制御にタイムラグが生じ、薄膜231aが、図4(a)に示す形状から図4(c)に示す形状まで膨らんだ場合を想定する。図4(c)では、インクタンクの圧力が上限値である空気圧P2となっている。インクタンクの圧力が空気圧P2よりも高くなると薄膜231cが破損することもあるので、ストッパー230でアーム232の回動が規制される。図4(c)に示す状態では、ボール弁バネ236が縮み、ボール235が、シール部237から離れる。これにより、加圧空気は、矢印Dで示すように、排気口237aから外部に逃げることができる。空気が逃げ、インクタンクの圧力が空気圧P0まで戻れば、ボール235は、再びシール部237と接触し、シールする。このような圧力レギュレータ221の加圧空気を逃がす仕組みは、加圧経路の一部であるインクタンク201やインクタンク加圧チューブ51、及びこれら接続箇所の保護にもなっている。このようにして、インクタンクの圧力は、圧力P1(下限値)と圧力P2(上限値)との間で制御される。
【0046】
加圧ポンプ211で加圧されるサブタンク15の圧力を制御する圧力レギュレータ222の構成も圧力レギュレータ221と同様である。但し、圧力の設定範囲が異なる。次に、加圧ポンプ210と加圧ポンプ211の圧力値について図4(d)を参照し説明する。
【0047】
加圧ポンプ211がインクを加圧する圧力(第2の圧力)は、サブタンク15から負圧タンク152までインクを供給するに必要な圧力であり、サブタンク15から負圧タンク152までの流路抵抗によって決定され、下限値は、圧力P3である。圧力P3以上で加圧すれば、サブタンク15から負圧タンク152までインクを供給できる。加圧空気をサブタンク加圧チューブ52に流すための流路抵抗は、ゼロではないが、殆ど無視できる。また上限値を圧力P4とする。なお、サブタンク加圧チューブ52には、一方向弁18が設けられているので、その分の流路抵抗が生じる。前述の圧力P3は、一方向弁18の流路抵抗を加味して、サブタンク15から負圧タンク152までインクを供給するのに実質的に必要な圧力、と言う意味である。
【0048】
一方、加圧ポンプ210がインクを加圧する圧力(第1の圧力)は、インクタンク201からサブタンク15までインクを供給するのに必要な圧力PRと、加圧ポンプ211がインクを加圧する圧力との和よりも常に大きくする。圧力PRは、供給チューブ53の圧力損失を考慮して、例えば下記の式(2)で算出される。
【0049】
圧力PR[N/m2]=流路抵抗[NS/m-5]×流量[m3/S]・・・(2)
上記の式(2)において、流路抵抗は、一方向弁14を含んだ供給チューブ53の流路抵抗を示し、流量は、供給チューブ53におけるインクの流量を示す。加圧ポンプ210で制御される圧力範囲の下限値P1は、図4(d)に示すように、加圧ポンプ211が制御される圧力範囲の上限値の圧力P4、圧力PRよりも大きい。更に制御バラツキや部品精度バラツキを考慮したマージンαを加えることによって、圧力P1は下記の式(3)によって設定される。
【0050】
P1=P4+PR+α・・・(3)
したがって、圧力P1は、圧力P4と圧力PRの和よりも大きい関係にある。
【0051】
加圧ポンプ210と加圧ポンプ211は、インクタンク201にインクがある状態では、同時に制御されている。そのため、インクタンク201から負圧タンク152までの圧力は、圧力値の大きい加圧ポンプ210の圧力に支配される。サブタンク15から負圧タンク152へのインク供給量として必要な圧力は、加圧ポンプ211の圧力値である。加圧ポンプ211の圧力値よりも加圧ポンプ210の圧力値が大きいのでインク供給量は満足される。因みに、もし、圧力P1が、圧力P4と圧力PRの和よりも小さいと、インクタンク201からサブタンク15へインクを供給できなくなる。
【0052】
記録ヘッド151がインクを消費するのに伴い、サブタンンク15のインクは減少しようとするが、同時にインクタンク201からサブタンンク15にインクが供給される。そのため、サブタンンク15のインク量は変らず、インクタンク201のインクが減少する。
【0053】
インクタンク201のインクの残量は、コントローラ510が記録ヘッド152からの吐出数をカウントすることにより検出している。なお、回復系300により吐出ノズルから吸引されるインク量は、1回分の吸引量を設定しておき、その吸引回数に基づいてコントローラ510が残量を検出している。インクタンク201のインク残量は、他にもインクタンクの重量を検知する、またはインク袋12の潰れ変位を検知するなどの方式を用いて検出することが可能である。
【0054】
図5は、インクタンクの交換時におけるインクの経路を説明するための図である。インクタンク201の残量がしきい値を下回っていることがコントローラ510によって検知されると、インクタンクの交換を促す表示が行われる。
【0055】
インクタンク201が新品のインクタンク201aに交換されるまで、インクタンク201のインク袋12aが潰れた状態となる。この状態では、加圧ポンプ210の圧力は、サブタンク15へ伝わらず、ケース11の中までしか作用しない。その間、サブタンク15に収容されたインク19が消費される。そのため、インク袋12aを潰し切った後も負圧タンク152へのインク供給量が不足することはない。また、この後、負圧タンク152への供給は、加圧ポンプ211が受け持つことになるが、サブタンク15の圧力は、直ちに加圧ポンプ211の圧力(圧力P3から圧力P4の範囲の圧力)に変るのではない。サブタンンク15の上部にある空気が、サブタンク15のインクの消費に伴い次第に膨張する。これにより、サブタンク15の圧力は、徐々に低下して、加圧ポンプ211の圧力値に変化する。そのため、特許文献1に開示された記録装置のようにサブタンクに設けられた弁の切り替え制御を行なわず、かつ特許文献2に開示された記録装置のようにインクの経路を切替えなくても、記録は継続される。したがって、特別な動作や手順でインクタンンク201のインクを使い切るのではなく、インクタンク201のインクは、自然にサブタンク15へ供給される。
【0056】
インクタンク201を装置本体から外す前には、加圧開閉弁13が手動又は自動(コントローラ510によって)で閉じられる。加圧開閉弁13が閉じているので、他のインクタンク202、203、204に作用する圧力は、加圧ポンプ210の圧力が保たれている。
【0057】
インクタンク201を外した後、インクタンク201aを装着する前であっても、供給チューブ53に設けられた一方向弁14によりインクの逆流が防止されている。そのため、サブタンク15からインクはもちろん加圧空気が漏れることはない。ここで、一方向弁14の替わりに、インクタンク201、201aが未装着の場合には、供給チューブ53を閉じ、インクタンク201、201aが装着されている場合には、供給チューブ53を開く開閉弁を設けてもよい。なお、この開閉弁は、一方向弁14と同様にコントローラ510によって制御される。
【0058】
インクタンク201aを装着した後は、加圧開閉弁13を手動又は自動で開ける。このとき、交換していないインクタンク202、203、204から加圧空気がインクタンク201に回り込み、4つのインクタンク201〜204は、全体に圧力が低下する。しかし、圧力レギュレータ221の検知により、直ちに加圧ポンプ210の圧力値が増加する。その間も、各サブタンク15、25、35、45は、加圧ポンプ211と圧力レギュレータ222で圧力制御されており、負圧タンク152へのインク供給量が不足することはない。ただし、インクタンク201aを装着した後、サブタンク15のインク19が減った状態のまま加圧ポンプ210の圧力に移行し、インクタンク201aからサブタンク15を経由して負圧タンク152にインクが供給される。サブタンク15を加圧する圧力は作用しているので供給不足にはならない。しかし、サブタンク15のインク量が少ない状態のままなので、インクタンク201aの交換が必要になった際に、インク19に相当するインク量をサブタンク15に確保できない可能性がある。サブタンク15内のインク量が適当か否かは電極ピン16によって検知できる。そこで、ページ間など、記録用紙の給紙動作または排紙動作により一時的に記録が途切れる時間を利用して、サブタンク15のインク量を元のインク量まで補給することが望ましい。
【0059】
インクタンク201aからサブタンク15へのインク補給は、コントローラ520が加圧ポンプ211を停止させるとともに、大気開放弁17を開放させる。この状態で、コントローラ520は加圧ポンプ210を駆動させることによってインクタンク201aからサブタンク15へインクが送り込まれる。大気開放弁17から空気を追い出し、電極ピン16によってインク液面の上昇が検知された後、コントローラ520は、大気開放弁17を閉鎖させ、再び加圧ポンプ211を駆動させる。
【0060】
なお、インクタンク202、203、204を交換する場合は、それぞれ加圧開閉弁23、33、43を手動又は自動で閉じ、インクタンク202、203、204を外す。インクタンクの交換が、複数であっても、インクタンク201、201aと同様に記録は継続できる。
【0061】
本実施形態のインクジェット記録装置によれば、1色ごとに一つのインクタンクを使用している。そのため、インクタンクの交換に必要なスペースは1個分で済むので、装置の大型化を抑制できる。
【0062】
また、インクタンクからサブタンクへインクを供給しているときからインクタンクおよびサブタンクの両方を加圧している。そのため、インクタンクの交換時にサブタンクの加圧を開始するのではないため、サブタンク内のインクを加圧するのに要する時間を割り込ませないように記録を続けることが可能となる。
【0063】
また、サブタンクを1室で構成でき、サブタンクの構成が複雑化しないため、コストダウンを図ることが可能となる。
【0064】
また、インクを加圧供給しているため、インクタンクやサブタンクは、記録ヘッドとの高さ関係に関し水頭差による制約はなく、インクの種類による制約もなく、加圧手段の能力に応じて自由に配置することができる。そのため、装置をコンパクトにできる。
【0065】
また、インクはサブタンクを経由して記録ヘッドに供給されるため、インクタンクのインクをサブタンクに全て移してインクタンクのインクを使い切ることが可能となる。
【0066】
なお、本実施形態では、インクタンク201を交換するときに、加圧ポンプ210は、他のインクタンク202、203、204を加圧していた。これに替わって、インクタンク201〜204のいずれかの残量がしきい値を下回った場合、コントローラ520が加圧ポンプ210を停止させ、加圧ポンプ211で4つのサブタンク15、25、35、45を加圧するように制御してもよい。4色まとめてサブタンクから負圧タンクへの加圧供給に切替えたことになり、サブタンクのインクが消費される。インクが消費された色のサブタンクは、電極ピン16によって検知できる。そのため、全てのインクタンクが装着された後、ページ間などの用紙の給排紙動作により一時的に記録が途切れる時間を利用して、インクタンクからサブタンクに元のインク量まで補給することが望ましい。
【0067】
(第二の実施形態)
図6は、本発明の第二の実施形態のインクジェット記録装置の要部の構成を示す図である。図6(a)は、本実施形態のインクジェット記録装置を流れるインクの経路を示す図である。図6(b)は、圧力調整機構であるリリーフ弁の構成を示す断面図である。なお、本実施形態のインクジェット記録装置には、図2に示す第一の実施形態のインクジェット記録装置と同様の構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0068】
本実施形態のインクジェット記録装置は、加圧手段21に代わって加圧手段22を備えている点が第一の実施形態のインクジェット記録装置と異なる。加圧手段22には、加圧ポンプ211、圧力レギュレータ222の代わりにリリーフ弁223が設けられている。本実施形態のインクジェット記録装置では、コントローラ510の制御対象は、加圧ポンプ210と圧力レギュレータ221である。
【0069】
リリーフ弁223は、加圧ポンプ210とサブタンク15との間に配置され、加圧ポンプ210から与えられた圧力を調整する。以下、リリーフ弁223について図6(b)を参照して説明する。
【0070】
ボール235、シール部237、排気口237aは、圧力レギュレータ221又は圧力レギュレータ222と同様の構成である。つまり、大きな圧力がボール235に作用すると排気口237aから加圧空気が逃げる構成は同様である。異なる箇所は、薄膜231aをなくして流路壁とし、ボール弁バネ236よりも低荷重のリリーフ弁バネ224にしている点である。
【0071】
リリーフ弁バネ224の荷重は、サブタンンク15から負圧タンク152までインクを供給するのに必要な圧力値まではボール235とシール部237をシールする荷重である。図4(d)に示す圧力の大小関係を参照すると、圧力レギュレータ221のボール弁バネ236は、圧力P2を決める荷重であり、圧力レギュレータ222のボール弁バネは、圧力P4を決める荷重である。これに対し、リリーフ弁バネ224の荷重は、圧力P3以上圧力P4以下でボール235を変位するような荷重である。リリーフ弁バネ224は、ボール弁バネ236に比べバネ精度を緩和できるので製作しやすい。
【0072】
リリーフ弁バネ224の荷重を圧力値に換算した値をP5とすると、圧力P1は下記の式(4)で示される。
【0073】
P1=P5+PR+α・・・(4)
したがって、圧力P1は、圧力P5と圧力PRの和よりも大きい関係にある。
【0074】
本実施形態のインクジェット記録装置によれば、リリーフ弁223を用いることで一つの加圧源でインクタンクおよびサブタンクをそれぞれ異なる圧力値で加圧できる。そのため、第一の実施形態のインクジェット記録装置に比べ、構成を簡略化できるので、コストを下げることが可能となる。
【0075】
(第三の実施形態)
図7は、本発明の第三の実施形態のインクジェット記録装置の要部の構成を示す図である。図7(a)は、本実施形態のインクジェット記録装置を流れるインクの経路を図である。図7(b)は、インクタンクからインクが供給されているときのサブタンクの状態を示す断面図である。図7(c)は、インクタンクからインクが供給されていないときのサブタンクの状態を示す断面図である。なお、本実施形態のインクジェット記録装置には、図2に示す第一の実施形態のインクジェット記録装置と同様の構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0076】
本実施形態のインクジェット記録装置には、サブタンク711の加圧経路に大気開放弁225が設けられている。サブタンク711の底部には供給チューブ53が接続され、サブタンク711の最上部にはインクチューブ251が接続されている。サブタンク711の内部には、ベローズ712が設けられている。ベローズ712は、樹脂製で伸縮自在である。ベローズ712の内部はサブタンク加圧チューブ52と接続されている。ベローズ712は、サブタンク加圧チューブ52との接続部を除き、密閉されている。ベローズ712の伸縮状態はセンサー713によって検知される。ベローズ712は、伸縮の繰り返しにより伸びきってしまい、元の形状に戻らなくなることが想定される。そこで、本実施形態のインクジェット記録装置は、センサー713がベローズ712の変位を検知してベローズ712が元の縮んだ形状に戻っているか否か監視することによって、上記の不具合に備えている。センサー713の検知方式としては、サブタンク711の外部から周知のLED(Light Emitting Diode)センサーやレーザーセンサーを用いる方式を採用できる。なお、本実施形態のインクジェット記録装置には、ベローズ712が必要以上に伸びることを防止するためのストッパー714が設けられている。
【0077】
加圧ポンプ210、圧力レギュレータ221、及び加圧ポンプ211、圧力レギュレータ222の制御は、第一の実施形態と同様である。
【0078】
次に、サブタンク711内の状態について説明する。インクタンク201にインクがある場合、図7(b)に示す矢印Eは、サブタンク711と供給チューブ53の接続部に作用する圧力を示す。圧力Eの値は、圧力値(P1−PR)以上で圧力(P2−PR)以下である。矢印Fは、サブタンク711とサブタンク加圧チューブ52との接続部の圧力を示す。圧力Fの値は、圧力値P3以上で、圧力値P4以下である。したがって、圧力Eは、圧力Fよりも大きい。サブタンンク711のインクには、圧力Eが作用する。ベローズ711には、外側から圧力E、内側から圧力Fが作用する。上述したように圧力Eが圧力Fよりも大きいので、ベローズ711は押しつぶされた状態となっている。
【0079】
インクタンク201がインク無しとなった場合には、圧力Eが作用しなくなる一方でサブタンク711のインクが消費される。そのため、ベローズ712は、圧力Fにより図7(c)に示すように伸びた状態となる。図7(b)に示すベローズ712から図7(c)に示すベローズ712に変形したときに増加した体積715が、インクが消費された体積である。
【0080】
新品のインクタンクが装着され、加圧ポンプ210により圧力Eがサブタンク711に作用しても、ベローズ712は元の形状(図7(b)参照)には戻らず、伸びた形状のまま加圧ポンプ210による加圧供給に移行する。本実施形態のインクジェット記録装置は、第一の実施形態のインクジェット記録装置と同様に、サブタンク711内のインクの液面が変らないまま加圧ポンプ210による加圧供給に移行する。
【0081】
ベローズ712を元の形状に戻すには、加圧ポンプ211を停止し、大気開放弁225を開け、加圧ポンプ210を作動させる。すると、圧力Eがサブタンク711に作用し、圧力Fが大気圧になるから、ベローズ712は、次第に縮み、図7(b)に示すような元の形状に戻る。この動作は、第一の実施形態のインクジェット記録装置と同様に、ページ間などの一時的に記録が途切れる時間に行われる。
【0082】
本実施形態のインクジェット記録装置は、インクを空気に触れさせずに加圧している。これにより、空気用のチューブとインク用のチューブを使い分けることができる。インク用のチューブは、使用するインクが溶剤系のインクである場合や、揮発性のインクである場合など、耐薬品性、耐気密性などの点から材質選定に制限がある。また、リークを考慮すると、インク用のチューブは、屈曲の耐久性を高めることや肉厚アップなども必要である。一方で空気用のチューブは、空気用のチューブは、特別な材質である必要はなく、リークに関しての障害も、ほとんど生じないため、安価なチューブを選択できる。
【0083】
(第四の実施形態)
図8は、本発明の第四の実施形態のインクジェット記録装置の要部の構成を示す図である。図8(a)は、本実施形態のインクジェット記録装置を流れるインクの経路図である。図8(b)は、インクタンクからインクが供給されているときのサブタンクの状態を示す断面図である。図8(c)は、インクタンクからインクが供給されていないときのサブタンクの状態を示す断面図である。なお、本実施形態のインクジェット記録装置には、図2に示す第一の実施形態のインクジェット記録装置と同様の構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0084】
本実施形態のインクジェット記録装置は、加圧手段23と、伸縮可能なベローズで構成されたサブタンク811を備えている点が他の実施形態で説明したインクジェット記録装置と大きく異なる。加圧手段23は、インクタンク201〜204を加圧する加圧ポンプ210と、サブタンク811を加圧するベローズ加圧バネ812(バネ機構)と、を有する。サブタンク811の伸縮状態はセンサー813によって検知される。サブタンク811は、インクタンク201の出口や、一方向弁14、供給チューブ53が詰まってしまう等により、インクタンク201からインクが供給されず、収縮したまま元の形状に戻らなくなることが想定される。そこで、本実施形態のインクジェット記録装置は、センサー813がサブタンク811の荷重点(ベローズバネ812が作用する点)の変位を検知してサブタンク811が元の伸びた状態に戻っているか否か監視することによって、上記の不具合に備えている。なお、本実施形態のインクジェット記録装置には、サブタンク811が必要以上に伸びることを防止するストッパー814が設けられている。
【0085】
サブタンク811の上部には、供給チューブ53およびインクチューブ251が接続されている。
【0086】
加圧ポンプ210、圧力レギュレータ221の制御は、第一の実施形態と同様である。
【0087】
次に、サブタンク811の状態について説明する。インクタンク201にインクがある場合、図8(b)に示す矢印Eは、サブタンク711と供給チューブ53の接続部に作用する圧力を示す。圧力Eの値は、圧力値(P1−PR)以上で圧力値(P2−PR)以下である。また、サブタンンク811には、ベローズバネ812によって圧力Fが作用する。圧力Eは、圧力Fよりも大きい。サブタンク811のインクには、圧力Eが作用する。サブタンク811には、内側から圧力E、外側から圧力Fが作用する。上述したように圧力Eが圧力Fよりも大きいのでサブタンク811は、伸びた状態となっている。
【0088】
インクタンク201がインク無しとなった場合には、圧力Eが作用しなくなる一方でサブタンク811のインクが消費される。そのため、サブタンク811は、圧力Fにより図8(c)に示すように収縮した状態となる。図8(b)に示すサブタンク811から図8(c)に示すサブタンク811に収縮したときに減少した体積815が、インクが消費された体積である。
【0089】
新品のインクタンクが装着され、加圧ポンプ210により圧力Eが作用すると、サブタンク811は、インクチューブ251に供給するインク量と、インクタンクから供給されるインク量とをバランスさせながら、自然に元の形状に戻る。そして、加圧ポンプ210による加圧供給に移行する。本実施形態のインクジェット記録装置は、第一の実施形態または第三の実施形態のインクジェット記録装置と異なり、サブタンク811を元の形状に戻す為の動作を必要としない。
【符号の説明】
【0090】
14 一方向弁
15 サブタンク
21 加圧手段
53 供給チューブ
151 記録ヘッド
152 負圧タンク
201 インクタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容可能で、交換が可能なインクタンクと、前記インクタンクで加圧されたインクが流れる供給チューブと、前記供給チューブから流入したインクを収容可能なサブタンクと、第1の圧力で前記インクタンクを加圧するとともに、前記第1の圧力よりも小さな第2の圧力で前記サブタンクを加圧する加圧手段と、前記供給チューブに設けられ、前記供給チューブを開閉可能な弁と、前記サブタンクで加圧されたインクが流入する負圧タンクと、前記負圧タンクから供給されたインクを吐出する記録ヘッドと、を有し、
前記第1の圧力が、前記供給チューブの圧力損失と、前記第2の圧力との和よりも大きい、インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記加圧手段は、前記インクタンクに接続され、前記第1の圧力でインクを加圧する第1の加圧ポンプと、前記サブタンクに接続され、前記第2の圧力でインクを加圧する第2の加圧ポンプと、を有する、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記加圧手段は、前記インクタンクに接続され、前記第1の圧力でインクを加圧する第1の加圧ポンプと、前記サブタンクの外部から前記第2の圧力で前記サブタンクを押圧するバネ機構と、を有し、
前記サブタンクは、前記第1の加圧ポンプが停止したときに前記バネ機構の押圧によって収縮する、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記加圧手段は、前記インクタンクに接続され、前記第1の圧力でインクを加圧する第1の加圧ポンプと、前記第1の加圧ポンプと前記サブタンクとの間に配置され、前記第1の加圧ポンプから与えられた圧力を前記第2の圧力に調整する圧力調整機構と、を有する請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記インクタンクは、互いに異なる複数色毎に設けられ、
複数の前記インクタンクの各々におけるインクの残量のいずれかがしきい値を下回ると前記第1の加圧ポンプを停止させるコントローラをさらに有する請求項2または3に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−106372(P2012−106372A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255712(P2010−255712)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】