説明

インクジェット記録装置

【課題】画像記録精度の低下を抑制できるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置は、プラテン36と、プラテン36の上方に配置された記録部40と、プラテン36の前方に配置された排紙ローラ対54と、プラテン36と排紙ローラ対54との間に回動可能に設けられた可動ガイド部材70と、駆動部と、制御部とを備える。制御部は、被記録媒体14の種類及び記録部40が吐出するインク量とにより可動ガイド部材70の変位量を決定し、駆動部を制御して当該変位量に応じた姿勢に可動ガイド部材70を姿勢変化させ、搬送向き38における被記録媒体14の先端部を下方へ逃がす。その後、制御部18は、可動ガイド部材70を支持姿勢に戻し、可動ガイド部材70により、被記録媒体14の先端を排紙ローラ対54のニップ位置へ案内する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送する被記録媒体にインクを吐出するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水平方向に並んで配置された搬送ローラ対及び排紙ローラ対と、搬送ローラ対と排紙ローラ対との間に配置されたプラテンと、プラテンの上方に配置されインク滴を吐出する記録ヘッドと、を備えたインクジェット記録装置がある(例えば、特許文献1参照)。被記録媒体は、搬送ローラ対により記録ヘッドへ向かって搬送され、搬送向きにおける先端側から記録ヘッドにより画像が記録され、当該先端が排紙ローラ対に達すると搬送ローラ対及び排紙ローラ対により搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−15533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェット記録装置では、インクの付着により上方に膨らむように被記録媒体が撓むことがある。被記録媒体が撓むと、被記録媒体が記録ヘッドや案内部材に当接し、ジャムが発生することがある。この問題を解決するために、記録ヘッドと排紙ローラ対との間に姿勢変化可能なガイド部材が設けられ、被記録媒体が撓む場合にガイド部材を下げて被記録媒体の上記先端を下方へ逃がすことが考えられる。
【0005】
しかしながら、被記録媒体が撓む量はインクの吐出量により変わるから、撓み量が小さいときにガイド部材を下げ過ぎると、被記録媒体と記録ヘッドとの間の距離が大きくなり過ぎて被記録媒体に記録される画像が乱れてしまう。つまり、ガイド部材を下げ過ぎると、画像記録の精度が低下してしまう。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、画像記録の精度の低下を抑えることができるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明のインクジェット記録装置は、被記録媒体を搬送向きへ搬送する第1搬送機構と、上記第1搬送機構より上記搬送向き下流側に配置され、搬送される被記録媒体を支持するプラテンと、上記プラテンより上記搬送向き下流側に配置され、駆動ローラ及び当該駆動ローラに対向する従動ローラによって被記録媒体を上記搬送向きへ搬送する第2搬送機構と、上記プラテンの上方に配置されており、印刷データに基づいて、被記録媒体へ向かってインク滴を吐出する記録ヘッドと、上記第2搬送機構の上記駆動ローラと上記従動ローラとのニップ位置と上記プラテンとの上記搬送向きにおける間に配置されており、上記第1搬送機構により搬送される被記録媒体を上記ニップ位置へ案内する第1姿勢及び上記搬送向きにおける被記録媒体の先端を上記ニップ位置よりも下方にする複数の第2姿勢に姿勢変化可能なガイド部材と、上記ガイド部材を姿勢変化させる駆動部と、上記駆動部の駆動を制御して上記ガイド部材を姿勢変化させる制御部と、を備える。上記制御部は、上記印刷データに基づいて上記第1姿勢からの上記ガイド部材の変位量を決定し、上記駆動部の駆動を制御して上記ガイド部材を当該変位量に応じた姿勢にする。
【0008】
被記録媒体の撓み量は、被記録媒体に吐出されるインク量により決まる。このインク量は印刷データに基づく。また、ガイド部材の変位量も印刷データに基づく。つまり、ガイド部材は、被記録媒体の撓み量に応じた適切な変位量で姿勢変化される。被記録媒体の撓み量に応じた適切な変位量でガイド部材が姿勢変化されることにより、画像記録精度の低下を抑えることができる。
【0009】
(2) 上記制御部は、上記印刷データのうち、被記録媒体に吐出されるインク量の情報であるインク量情報に基づいて上記変位量を決定するものであってもよい。
【0010】
(3) 上記制御部は、上記インク量が多いほど上記変位量を大きくするものであってもよい。ガイド部材の変位量を容易に適切な量にできる。
【0011】
(4) 上記制御部は、被記録媒体の種類情報に基づいて上記変位量をゼロにするか否かを決定し、上記変位量をゼロにしないと決定すると、上記印刷データに基づいて上記変位量を決定するものであってもよい。制御部は、吐出されるインクの量に拘わらず撓まないような剛性の高い被記録媒体に画像を記録する場合は変位量をゼロにする。制御部は、剛性の低い被記録媒体に画像を記録する場合は被記録媒体に吐出されるインク量に応じた変位量とする。剛性の高い被記録媒体への画像記録の精度を低下させることなく、剛性の低い被記録媒体への画像記録の精度を高めることができる。
【0012】
(5) 本発明のインクジェット記録装置は、上記ガイド部材より上記搬送向き上流側に設けられており、搬送される被記録媒体の先端を検出する第1検出部と、被記録媒体の搬送量を検出する第2検出部と、を更に備える。上記制御部は、上記第1検出部及び上記第2検出部の検出結果に基づいて上記駆動部の駆動を制御し、上記搬送向きにおける被記録媒体の先端が上記ガイド部材に到達するまでに上記ガイド部材を上記変位量に応じた姿勢にし、上記先端が上記ニップ位置に到達するまでに上記ガイド部材を上記第1姿勢にする。被記録媒体は、ガイド部材が第2姿勢にある状態において搬送される間にインクの乾燥により撓み量が減少し、第1姿勢にされたガイド部材により第2搬送機構のニップ位置に案内される。
【0013】
(6) 本発明のインクジェット記録装置は、上記ガイド部材の上方に配置された当接部材を更に備える。上記制御部は、上記駆動部の駆動を制御し、上記搬送向きにおける被記録媒体の先端が上記当接部材を越えた後、上記ガイド部材を上記第2姿勢から上記第1姿勢に姿勢変化させて被記録媒体を上記当接部材に当接させるものである。被記録媒体は、第1姿勢にされたガイド部材により当接部材に当接されることで撓みが矯正される。
【0014】
(7) 上記制御部は、上記印刷データに基づいて、上記搬送向きにおける被記録媒体の先端が上記ニップ位置に到達する改行動作までに上記記録ヘッドによりインク滴が吐出される領域を被記録媒体の特定領域として定め、上記印刷データのうち、上記特定領域に記録される画像に相当する情報から上記変位量を決定するものであってもよい。被記録媒体全体に吐出されるインク量により変位量が決定される場合に比べ、画像記録の精度を高めることができる。
【0015】
(8) 上記制御部は、上記印刷データのうち、上記特定領域に吐出されるインク滴の総量の情報に基づいて上記変位量を決定するものであってもよい。
【0016】
(9) 上記制御部は、上記第1搬送機構の駆動及び上記記録ヘッドにおけるインク滴の吐出を制御し、上記プラテン上において被記録媒体の搬送を停止させた後上記記録ヘッドにインク滴を吐出させる1行の画像記録動作と、上記印刷データから決定した所定の搬送量で被記録媒体を搬送する改行動作とを交互に行うものであり、上記印刷データに基づいて、上記特定領域内での複数行の画像記録動作における各行ごとのインクの吐出量のうちの最大量を推定し、推定した最大量から上記変位量を決定するものであってもよい。
【0017】
(10) 上記ガイド部材は、上記ガイド部材の上記搬送向き上流側に配置された回動軸を中心に回動可能に設けられており、上記駆動部は、上記搬送向き下流側の先端を回動先端として回動させるものであってもよい。ガイド部材は搬送向き下流側の先端を回動先端として回動されるから、搬送向きにおける被記録媒体の先端部は徐々に下方へ逃がされ、ガイド部材全体が下方へ移動される構成に比べ、画像記録の精度を高めることができる。
【0018】
(11) 上記第2搬送機構の上記駆動ローラ及び上記従動ローラのうち少なくとも一方は、回転軸方向に沿って複数が並列されたものであり、上記ガイド部材は、上記第1姿勢において、上記搬送向きに上記ニップ位置と対向する第1ガイド端部と、上記回転軸方向において隣り合うローラの間に設けられ、上記第1ガイド端部よりも上記搬送向き下流側まで延びた第2ガイド端部とを備えたものであってもよい。第2ガイド端部により、搬送向きにおける被記録媒体の先端を、第2搬送機構のニップ位置に、より近い位置まで案内することができる。
【0019】
(12) 上記ガイド部材は、上記第1姿勢において、上記搬送向きに沿う第1ガイド面と、上記第1ガイド面よりも上記搬送向き下流側に配置され、上記搬送向き下流側へ向かうにつれて上方へ向かって傾斜する第2ガイド面と、を備えたものであってもよい。第2ガイド面により被記録媒体の先端が第2搬送機構のニップ位置へ円滑に案内される。
【発明の効果】
【0020】
本発明のインクジェット記録装置は、印刷データに基づいてガイド部材の変位量を決め、ガイド部材を当該変位量に応じた姿勢にするから、被記録媒体の撓み量に応じた量で搬送向きにおける被記録媒体の先端を下方へ逃がすことができ、画像記録の精度の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】インクジェット記録装置の斜視図である。
【図2】プリンタ部の模式的な断面図である。
【図3】記録ヘッドの下面図である。
【図4】可動ガイド部材の斜視図である。
【図5】プリンタ部の斜視図である。
【図6】プリンタ部の一部の斜視図である。
【図7】可動ガイド部材の動作を説明する動作説明図である。
【図8】インクジェット記録装置のブロック図である。
【図9】制御部の動作が示されたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、適宜図面が参照されて本発明の実施形態が説明される。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。以下の説明では、インクジェット記録装置10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、入力部17が設けられている側を前側として前後方向8が定義され、インクジェット記録装置10を前側から見て左右方向9が定義される。
【0023】
[インクジェット記録装置10の概要]
図1に示されるように、インクジェット記録装置10は概ね直方体状である。インクジェット記録装置10は、下部のプリンタ部11と上部のスキャナ部12とを備えた、プリント、スキャン、コピーなどを実現可能な複合機である。プリンタ部11やスキャナ部12は、入力部17やパソコンなどの外部機器から入力された信号により動作する。
【0024】
プリンタ部11は、普通紙や光沢紙や葉書などである被記録媒体14(図2)が収容される給紙カセット60を前方へ引き出し可能に下部に収容している。給紙カセット60は、後部側の上部が開口する扁平な直方体状である。図2に示されるように、被記録媒体14は給紙カセット60の底63に載置される。給紙カセット60の後壁64は、底63の後端から後方斜め上へ向かって延びている。後述の給送機構20により送り出される被記録媒体14は後壁64に摺接することにより後方斜め上へ向かう。
【0025】
図2に示されるように、プリンタ部11は、給送機構20、搬送部30、記録部40、検知機構90(図8)及び駆動部80(図8)を備える。
【0026】
[給送機構20]
図2に示されるように、給送機構20は、フレーム19(図5,6)に回転可能に支持された第1回転軸21と、第1回転軸21に一端が支持されたアーム22と、アーム22の他端に回転可能に支持された左右一対の給送ローラ23とを備える。第1回転軸21は、左右方向9に沿って延びる丸棒状であり、駆動部80により回転される。
【0027】
アーム22は、第1回転軸21を中心に回動可能に第1回転軸21に一端が支持されている。従って、アーム22の他端に設けられた給送ローラ23は第1回転軸21を中心としたアーム22の回動により上下に変位する。アーム22は、給紙カセット60が前後方向8へスライドされる際に給紙カセット60に設けられた不図示の摺接面に摺接することにより回動される。給送ローラ23はアーム22の回動により上下に変位する。給送ローラ23は、アーム22がバネや自重により付勢されることで給紙カセット60に収容された被記録媒体14に圧接される。
【0028】
給送ローラ23は、後述の第1駆動伝達機構85(図8)により第1回転軸21の回転が伝達されることで回転され、被記録媒体14を後方へ送り出す。後方へ送り出された被記録媒体14は搬送部30により搬送される。
【0029】
[搬送部30]
図2に示されるように、搬送部30は、搬送路31と、搬送ローラ対51と、排紙ローラ対54とを備える。搬送路31は、第1ガイド部材32、第2ガイド部材33、可動ガイド部材70及びプラテン36などにより区画された空間である。被記録媒体14は搬送路31を通過する。搬送路31は、給紙カセット60の後端を起点に、給紙カセット60の上方へ向かって湾曲した後、前方へ向かって直線状に延びている。プラテン36は、給紙カセット60の上方に配置されている。第2ガイド部材33及び可動ガイド部材70については後で詳説される。
【0030】
搬送ローラ対51はプラテン36の後方に配置されている。搬送ローラ対51は、左右方向9に沿って延びる第3回転軸59に設けられた第1駆動ローラ52と、第1駆動ローラ52に従動する第1従動ローラ53とを備える。第1駆動ローラ52と第1従動ローラ53とは搬送路31を挟んで対向している。搬送ローラ対51は、第3回転軸59が駆動部80により回転されることで被記録媒体14を挟んで搬送する。搬送ローラ対51が第1搬送機構に相当する。
【0031】
排紙ローラ対54はプラテン36の前方に配置されている。排紙ローラ対54は、左右方向9に沿って延びる第2回転軸57に設けられた複数個の第2駆動ローラ55と、複数個の第2従動ローラ56とを備える。複数個の第2駆動ローラ55は、左右方向9において互いに離間されている。複数個の第2従動ローラ56は、左右方向9において互いに離間されている。第2駆動ローラ55と第2従動ローラ56とは搬送路31を挟んで対向している。排紙ローラ対54は、第2回転軸57が駆動部80により回転されることで被記録媒体14を挟んで搬送する。排紙ローラ対54が第2搬送機構に相当する。第2駆動ローラ55が駆動ローラに相当する。第2従動ローラ56が従動ローラに相当する。搬送ローラ対51又は排紙ローラ対54により搬送される被記録媒体14には記録部40により画像が記録される。
【0032】
[記録部40]
図2,5に示されるように、記録部40はプラテン36の上方に配置されたキャリッジ41に保持されている。キャリッジ41は、図5に示される前後一対のガイドレール37に跨り、左右方向9に沿って移動可能にガイドレール37に支持されている。つまり、記録部40はプラテン36の上方にスライド可能に設けられている。
【0033】
図2に示されるように、記録部40は、インクカートリッジ(不図示)から供給されるインクを貯留する4つのサブタンク43と記録ヘッド42とを備える。記録ヘッド42は、プラテン36に臨む複数個のノズル45(図3参照)と、サブタンク43とノズル45とを繋ぐ不図示のインク流路と、インク流路の一部を変形させることでノズル45からインク滴を吐出させる圧電素子44(図8参照)とを備える。
【0034】
各サブタンク43には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色のインクの一つが貯留される。図3に示されるように、シアンのサブタンク43に対して複数個のノズル45からなる第1ノズル列46が設けられている。第1ノズル列46は前後方向8に沿って延びている。第1ノズル列46と同様に、マゼンタ、イエロー、ブラックの各サブタンク43に対してそれぞれ第2ノズル列47、第3ノズル列48、第4ノズル列49が設けられている。
【0035】
図8に示される圧電素子44は、不図示のドライブ回路を介して制御部18により給電されることで動作する。制御部18は、圧電素子44への給電を制御し、各ノズル列46〜49の複数のノズル45から選択的にインク滴を吐出させる。また、制御部18は、印刷データに応じて圧電素子44への給電を調整することにより、ノズル45から吐出されるインク滴の大きさを調整する。
【0036】
[駆動部80]
図8に示されるように、駆動部80は、第1駆動モータ81、第2駆動モータ82、第3駆動モータ83及び第4駆動モータ84を備える。各駆動モータ81〜84の駆動力は、第1駆動伝達機構85、第2駆動伝達機構86、第3駆動伝達機構87及び第4伝達機構88により、給送ローラ23や搬送ローラ対51や排紙ローラ対54やキャリッジ41へ伝達される。
【0037】
第1駆動伝達機構85は、給送機構30のアーム22に取り付けられた複数個のギア(不図示)からなるギア機構であり、第1駆動モータ81により回転される第1回転軸21の回転を給送ローラ23へ伝達する。
【0038】
図6に示されるように、第2駆動伝達機構86はカムベルト機構であり、第2駆動モータ82の回転を第1駆動ローラ52の第3回転軸59及び第2駆動ローラ55の第2回転軸57へ伝達する。搬送ローラ対51及び排紙ローラ対54は、第2駆動伝達機構86により、同じ向きへ被記録媒体14を搬送する向きへ同時に回転される。被記録媒体14が搬送向き38へ搬送される向きの第2駆動モータ82の回転が正回転とされて以下説明がされる。
【0039】
第3駆動伝達機構87は、カムベルト機構であり、第3駆動モータ83の回転によりキャリッジ41(図2)を左右方向9に沿って移動させる。
【0040】
第4駆動伝達機構88は、例えばギア機構であり、回動可能に設けられた後述の可動ガイド部材70へ第4駆動モータ84の回転を伝達する。
【0041】
[検知機構90]
検知機構90は、搬送される被記録媒体14の位置を検出するためのものである。図8に示されるように、検知機構90は、センサ91と、第1エンコーダ92と、第2エンコーダ93とを備える。センサ91は第1検出部に相当する。第1エンコーダ92及び第2エンコーダ93は第2検出部に相当する。
【0042】
図2に示されるように、センサ91は、搬送ローラ対51の搬送向き38上流側に配置されている。センサ91は、発光ダイオード及びフォトダイオードを有するフォトインタラプタと、出没可能に搬送路31に設けられた検出子とで構成されている。搬送された被記録媒体14に押されて検出子が姿勢変化されると、発光ダイオードからの光がフォトダイオードに到達することが阻止され、または、検出子に阻止されていた光がフォトダイオードに到達するようになり、センサ91の出力が変化する。つまり、検出子が設けられた場所を被記録媒体14が通過している間と通過していないときとでセンサ91の出力が異なる。センサ91の出力は制御部18(図8)に入力される。制御部18は、センサ91の出力変化により、搬送向き38における被記録媒体14の先端や後端がセンサ91を通過したことを検知する。
【0043】
図5に示されるように、第1エンコーダ92は、フォトインタラプタ95と、第1駆動ローラ52の第3回転軸59に取り付けられたディスク96とを備える。光が透過する透光部及び光を遮断する遮光部(図示せず)がディスク96に設けられている。ディスク96の回転により、透光部と遮光部とが交互にフォトインタラプタの光路上を通過し、第1エンコーダ92の出力が変化する。つまり、第1エンコーダ92の出力は、第1駆動ローラ52の回転量に応じた回数で変化する。従って、第1エンコーダ92の出力変化の回数は、搬送ローラ対51又は排紙ローラ対54により搬送される被記録媒体14の搬送量に相当する。
【0044】
第2エンコーダ93は、第1エンコーダ92と同様の構成のフォトインタラプタ及びディスク(不図示)を備える。ディスクは、第1駆動モータ81又は第1回転軸21に取り付けられている。第2エンコーダ93の出力は、第1駆動モータ81又は第1回転軸21の回転量に応じた回数で変化する。従って、第2エンコーダ93の出力変化の回数は、給送ローラ23により搬送される被記録媒体14の搬送量に相当する。
【0045】
第1エンコーダ92及び第2エンコーダ93の出力変化の回数は、カウンタによりカウントされ、制御部18に入力される。制御部18は、搬送ローラ対51、後述の拍車ローラ34等の搬送向き38における位置に対応する所定値や後述するガイド駆動テーブル等を記憶した記憶部を備える。制御部18は、センサ91の出力が変化したときからの第1エンコーダ92及び第2エンコーダ93の出力変化の回数から、搬送向き38における被記録媒体14の先端位置を推定する。
【0046】
[可動ガイド部材70]
図2に示されるように、可動ガイド部材70はプラテン36と排紙ローラ対54のニップ位置との間に配置されている。可動ガイド部材70は、プラテン36上において画像が記録された被記録媒体14の搬送向き38における先端を排紙ローラ対54のニップ位置に案内するためのものである。
【0047】
図4に示されるように、可動ガイド部材70は、板状の基部71と、基部71の左右両端の後端側から後方へ向かって突出された左右一対の突出片72と、各突出片72の後端部から左右方向9の中央へ向かってそれぞれ突出された円柱状の軸突部73とを備える。軸突部73は、図6に示されるようにフレーム19により支持されている。つまり、可動ガイド部材70は軸突部73を中心に回動可能である。可動ガイド部材70がガイド部材に相当する。軸突部73が回動軸に相当する。
【0048】
可動ガイド部材70は、回動することにより、その前端部の位置が下がり、図7(A)の支持姿勢から図7(B)の第1前傾姿勢を経て図7(C)の第2前傾姿勢に姿勢変化する。または、第2前傾姿勢から第1前傾姿勢を経て支持姿勢に姿勢変化する。支持姿勢は、排紙ローラ対54のニップ位置に搬送向き38における被記録媒体14の先端を案内する姿勢である。第1前傾姿勢及び第2前傾姿勢は、基部71の前端部が排紙ローラ対54のニップ位置よりも下方に位置する姿勢であって、搬送向き38における被記録媒体14の先端を下方へ逃がす姿勢である。可動ガイド部材70は、回動することにより、支持姿勢からの変位量が異なる2つの前傾姿勢となる。支持姿勢が第1姿勢に相当する。第1前傾姿勢及び第2前傾姿勢が第2姿勢に相当する。なお、本実施形態では、第1前傾姿勢における可動ガイド部材70の前端の方が第2前傾姿勢における可動ガイド部材70の前端よりも上方に位置している。
【0049】
図4に示されるように、可動ガイド部材70の基部71の上面であるガイド面78は、支持姿勢においてほぼ水平となる後側の第1ガイド面76と、支持姿勢において前方に向かうにつれて上がる前側の第2ガイド面77とを備える。被記録媒体14は、支持姿勢にある可動ガイド部材70の第1ガイド面76及び第2ガイド面77に案内されることにより、排紙ローラ対54のニップ位置に到達する。
【0050】
また、可動ガイド部材70は、支持姿勢における回動先端として、複数個の第1ガイド端部74及び第2ガイド端部75を備える。可動ガイド部材70が支持姿勢であると、第1ガイド端部74は排紙ローラ対54のニップ位置と前後方向8において対向している。第2ガイド端部75は、隣り合う第1ガイド端部74の間に設けられ、第1ガイド端部74よりも前方まで突出している。その状態では、第2ガイド端部75は、左右方向9に離間された複数個の第2駆動ローラ55(第2従動ローラ56)の間に位置することとなる。第2ガイド端部75が設けられたことにより、可動ガイド部材70は、排紙ローラ対54のニップ位置に、より近い位置まで被記録媒体14を案内することができる。
【0051】
支持姿勢を基準とした回転角度で表される可動ガイド部材70の変位量の制御は、制御部18が第4駆動モータ84の回転量を制御することにより行われる。つまり、可動ガイド部材70の姿勢は制御部18により制御される。例えば、制御部18により回転量を制御可能なステッピングモータが第4駆動モータ84に用いられる。または、第4駆動モータ84の回転軸に上述と同様の構成のエンコーダが設けられ、制御部18は、このエンコーダの出力変化の回数をカウントすることにより第4駆動モータ84の回転量を制御する構成であってもよい。
【0052】
可動ガイド部材70は樹脂成型品であり、金属で形成されたものよりも軽量である。可動ガイド部材70は、軸突部73とフレーム19などとの間に生じる摩擦力により、支持姿勢、第1前傾姿勢または第2前傾姿勢に維持される。
【0053】
可動ガイド部材70は、支持姿勢及び第2前傾姿勢においてフレーム19やプラテン36などに当接するストッパ79を備える。ストッパ79がフレーム19やプラテン36に当接することにより、可動ガイド部材70が支持姿勢及び第2前傾姿勢を越えて回動することが防止される。
【0054】
[第2ガイド部材33]
図2に示されるように、第2ガイド部材33は可動ガイド部材70の上方に配置されている。第2ガイド部材33には拍車ローラ34が回転可能に設けられている。拍車ローラ34は可動ガイド部材70の第1ガイド面76の上方に配置されている。拍車ローラ34が当接部材に相当する。
【0055】
[制御部18]
制御部18は、不図示の基板に実装されたマイコンや種々の電子部品により実現されている。制御部18は、上述の所定値などが記憶された記憶部を備え、これらの所定値や、検知機構90から入力された信号や、入力された印刷データなどに基づいてプリンタ部11を動作させる。印刷データには、使用される被記録媒体14の種類についての種類情報や、記録させる画像についての画像情報等が含まれる。
【0056】
[プリンタ部11の動作]
制御部18は、印刷データによる印刷指示を受けると、第1駆動モータ81を回転させて給送を行う。制御部18は、センサ91の出力変化及び第2エンコーダ93の出力変化の回数と記憶部に記憶された各構成の位置に対応する所定値とから被記録媒体14の先端の位置を監視し、当該先端が搬送ローラ対51のニップ位置に到達する前に第2駆動モータ82を逆回転させ、当該先端が搬送ローラ対51に到達してから所定時間が経過した後、第2駆動モータ82を正回転させる。被記録媒体14は、逆回転された搬送ローラ対51で止められてレジスト補正がされた後、第2駆動モータ82の正回転により搬送向き38へ搬送される。
【0057】
制御部18は、センサ91の出力変化及び第1エンコーダ92の出力変化の回数から搬送向き38における被記録媒体14の先端位置を監視し、被記録媒体14の先端が記録ヘッド42の下方の所定位置に到達したと判断すると、第2駆動モータ82を止める。次いで、制御部18は、圧電素子44への給電を行って記録ヘッド42にインク滴を吐出させると共に、キャリッジ41を移動させ、所定の改行幅で1行の印刷を行う。改行幅は、制御部18がどのノズル45(図3)を選択するかにより決まる。改行幅の最大値はノズル列46〜49の長さに相当する。制御部18は、1行の印刷が終了すると第2駆動モータ82を駆動させて被記録媒体14を搬送し、被記録媒体14の搬送量が上記改行幅となると、第2駆動モータ82を停止させ、1行の印刷を再び行う。このように、制御部18は、被記録媒体14を間欠搬送して改行を行いながら被記録媒体14への画像記録を行う。
【0058】
また、制御部18は、印刷データから可動ガイド部材70の姿勢を決めて上述の印刷動作を行う。以下の説明では、可動ガイド部材70を支持姿勢から第2傾斜姿勢に姿勢変化させる向きの第4駆動モータ84の回転が正回転とされる。
【0059】
続いて、印刷にかかる一連の動作を図9のフローに従って説明する。制御部18は、印刷指示がされると第4駆動モータ84を所定の回転量だけ逆回転させ、可動ガイド部材70を支持姿勢にする(S1)。所定の回転量は、第2傾斜姿勢にある可動ガイド部材70が支持姿勢に姿勢変化する回転量以上に設定され、記憶部に所定値として記憶されている。第4駆動モータ84が所定量で逆回転されることにより、可動ガイド部材70の初期姿勢が支持姿勢に確定する。その後、制御部18は、印刷データを取得する(S2)。印刷データを取得した制御部18は、記憶部に記憶されたガイド駆動テーブルを読み込む(S3)。ガイド駆動テーブルについては後述する。次に、制御部18は、印刷データに含まれる画像情報や印刷精度(速度)などの情報からインク滴を吐出させるノズル45を選択して改行幅を決定する(S4)。なお、ステップS1〜S3は並列で実行されてもよい。
【0060】
次に、制御部18は、印刷データに含まれる被記録媒体14の種類情報から、使用する被記録媒体14が厚紙や光沢紙などの剛性が高い被記録媒体14であるか、普通紙などの剛性の低い被記録媒体14であるかを判断する(S5)。なお、この情報は、ユーザが印刷指令時に入力するものであってもよい。制御部18は、被記録媒体14の剛性が高いと判断すると(S5,Y)、第1駆動モータ81を駆動させて給送を開始する(S11)。つまり、可動ガイド部材70を支持姿勢としたまま画像記録を開始する。
【0061】
制御部18は、被記録媒体14の剛性が低いと判断すると(S5,N)、ステップS4で決定した改行幅及び使用ノズル45から、被記録媒体14の先端が排紙ローラ対54に到達するまでに要する改行の回数を推定する。制御部18は、推定した改行回数分改行が実行されるまでに被記録媒体14へ吐出するインク量を決定する(S6)。具体的には、制御部18は、推定した改行回数内でのインク滴の種類と各インク滴の吐出回数とを印刷データから決定し、決定したインク滴の種類にインク滴の吐出回数を乗じることによりインク量を決定する。なお、インク量を決定する改行回数は、予め設定され記憶部に記憶された回数であってもよい。すなわち、予め設定された領域の印刷データに基づいて、インク量を決定してもよい。以下では、推定した改行回数におけるインク量が決定吐出量と称されて説明がされる。決定吐出量はインク量情報に相当する。
【0062】
ステップS3で読み込んだガイド駆動テーブルは、決定吐出量に対応する第4駆動モータ84の回転量が表されたテーブルであり、決定吐出量の範囲を決定する第1閾値及び第2閾値を有している。なお、本実施形態においては、第1閾値は第2閾値よりも小さい値に設定されている。制御部18は、ステップS6で決定した決定吐出量と第1閾値とを比較する(S7)。制御部18は、決定吐出量が第1閾値以上であると判断すると(S7,Y)、可動ガイド部材70が第2前傾姿勢となる回転量で第4駆動モータ84を正回転させる(S8)。可動ガイド部材70が第2前傾姿勢となる回転量に相当する所定値はガイド駆動テーブルが有している。制御部18は、決定吐出量が第1閾値より小さいと判断すると(S7,N)、決定吐出量と第2閾値とを比較する(S9)。制御部18は、決定吐出量が第2閾値以上であると判断すると(S9,Y)、可動ガイド部材70が第1前傾姿勢となる回転量で第4駆動モータ84を正回転させる(S10)。可動ガイド部材70が第1前傾姿勢となる回転量に相当する所定値は、ガイド駆動テーブルが有している。制御部18は、決定吐出量が第2所定値より小さいと判断すると(S9,N)、第4駆動モータ84を駆動させない。つまり、可動ガイド部材70を支持姿勢で維持する。すなわち、決定吐出量が第1閾以上であると、第2前傾姿勢となる回転量分第4駆動モータ84を回転させ、決定吐出量が第2閾値以上第1閾値未満であると、第1前傾姿勢となる回転量分第4駆動モータ84を回転させ、可動ガイド部材70を姿勢変化させる。第2前傾姿勢は、第1前傾姿勢よりもガイド面78が下方に配置されている。すなわち、第2前傾姿勢は、第1前傾姿勢よりも被記録媒体14を逃がす量が大きい。
【0063】
上述のように、制御部18は、ステップS6からS10において、決定吐出量が大きい程可動ガイド部材70の変位量を大きくして可動ガイド部材70を姿勢変化させ、決定吐出量が第2閾値より小さい場合は、変位量をゼロとして可動ガイド部材70を支持姿勢で維持する。つまり、制御部18は、被記録媒体14の先端部に吐出されるインクの量により、可動ガイド部材70の変位量を決めている。なお、上記先端部とは、搬送向き38における被記録媒体14の先端が排紙ローラ対54のニップ位置に到達するまでに印刷される特定領域である。特定領域は、印刷データによって決定される使用ノズル45のうちの最上流側のノズル45から排紙ローラ対54のニップ位置までの搬送向き38における距離と、印刷データによって決定される改行幅とから、決定できる。すなわち、被記録媒体14の先端が排紙ローラ対54のニップ位置に到達する改行が実行されるまでの改行回数を決定し、その改行回数分改行された時点での印刷が完了する領域を特定領域とする。この特定領域に吐出されるインクの量が印刷データに基づいて決定されるのである。
【0064】
制御部18は、ステップS5〜10の後、印刷開始位置まで被記録媒体14の給送を行う(S11)。印刷開始位置まで被記録媒体14を搬送できたかは、センサ91によって被記録媒体14の先端が検知された後の第1エンコーダ92及び第2エンコーダ93によって検出される被記録媒体14の搬送量から判断される。なお、搬送向き38における被記録媒体14の先端の位置は、第1エンコーダ92及び第2エンコーダ93の出力から、常に監視される。ステップS11の給送を行った後、制御部18は、可動ガイド部材70が支持姿勢であるか否かを判断する(S12)。制御部18は、可動ガイド部材70が支持姿勢であると判断すると(S12,Y)、記録部40によるインク滴の吐出を1行分行う(S13)。1行分の印刷後、印刷するデータが残っているか否かを判断する(S14)。印刷するデータが残っていると判断すると(S14,Y)、第2駆動モータ82を駆動して、所定改行幅分の改行を行う(S15)。その後、ステップS13の記録部40による1行の印刷を行う。印刷するデータが残っていないと判断すると(S14,N)、第2駆動モータ82を駆動して被記録媒体14を排紙ローラ対54から排出する(S21)。
【0065】
制御部18は、ステップS12において可動ガイド部材70が第1前傾姿勢又は第2前傾姿勢であると判断すると(S12,N)、記録部40によるインク滴の吐出を1行分行う(S16)。インク滴の吐出が終了すると、印刷するデータが残っているか否かを判断する(S17)。印刷するデータが残っていないと判断すると(S17,N)、第2駆動モータ82を駆動して被記録媒体14を排紙ローラ対54から排出する(S21)。印刷するデータが残っていると判断すると(S17,Y)、次の改行によって被記録媒体14の先端が排紙ローラ対54のニップ位置を越えるか否かを判断する(S18)。制御部18は、被記録媒体14の先端がセンサ91を越えた後における第1エンコーダ92及び第2エンコーダ93の出力変化の回数が記憶部に記憶されている所定値を越えたか否かと、ステップS4で決定した改行幅とにより、次の改行で被記録媒体14の先端が排紙ローラ対54のニップ位置に到達するか否かを判断する。
【0066】
制御部18は、搬送向き38における被記録媒体14の先端が次回の改行動作で排紙ローラ対54のニップ位置を越えないと判断すると(S18,N)、第2駆動モータ82を駆動して改行を行い(S20)、その後、ステップS16に戻って1行の印刷を行う。制御部18は、搬送向き38における被記録媒体14の先端が排紙ローラ対54のニップ位置を越えると判断すると(S18,Y)、第4駆動モータ84を逆回転させ、可動ガイド部材70を第1前傾姿勢または第2前傾姿勢から支持姿勢にする(S19)。その後、制御部18は、第2駆動モータ82を駆動して所定改行分の改行を行う(S20)。その後、ステップS16に戻って1行の印刷を行う。
【0067】
本実施形態では、搬送向き38における被記録媒体14の先端部が撓むような量のインクが吐出された剛性の低い被記録媒体14は、搬送向き38における先端が排紙ローラ対54のニップ位置に到達するまでの間、第1前傾姿勢又は第2前傾姿勢にある可動ガイド部材70により当該先端部が下方へ逃がされる。被記録媒体14は、次の改行で排紙ローラ対54のニップ位置に到達する場合には、当該ニップ位置に到達する前に可動ガイド部材70が支持姿勢に戻されることにより、可動ガイド部材70のガイド面78と拍車ローラ34とに上下に挟まれる。搬送向き38における被記録媒体14の先端は、可動ガイド部材70の前端部である第1ガイド端部74及び第2ガイド端部75により排紙ローラ対54のニップ位置へ案内される。
【0068】
[本実施形態の効果]
本実施形態では、普通紙などの剛性の低い被記録媒体14の搬送向き38における先端部に、当該先端部が撓むような量のインクが吐出される場合には、可動ガイド部材70が第1前傾姿勢または第2前傾姿勢にされ、当該先端部が下方へ逃がされる。当該先端部が下方へ逃がされることにより、被記録媒体14が拍車ローラ34や排紙ローラ対54に接触して破損したり、詰まったりすることが防止される。また、被記録媒体14の先端が排紙ローラ対54のニップ位置に到達する改行が行われる前に可動ガイド部材70が支持姿勢に戻されるから、被記録媒体14の搬送が円滑に行われる。
【0069】
また、搬送向き38における被記録媒体14の先端部に吐出されるインク量に応じた変位量で可動ガイド部材70を姿勢変化させるから、インク量が比較的少なく被記録媒体14の撓み量が小さい場合に可動ガイド部材70が大きく下がることを防止できる。その結果、被記録媒体14と記録ヘッド42との間の距離が変化することが抑制され、適切な距離で画像記録ができるため、高い精度で画像記録を行うことができる。
【0070】
また、搬送向き38における被記録媒体14の先端部に吐出されるインク量により可動ガイド部材70の変位量を決定するから、被記録媒体14全体に吐出されるインク量により可動ガイド部材70の変位量を決定する場合よりも、高い精度で画像記録を行うことができる。
【0071】
また、可動ガイド部材70が第1前傾姿勢や第2前傾姿勢から支持姿勢に戻されると、拍車ローラ34と可動ガイド部材70とにより被記録媒体14が上下に挟まれるから、被記録媒体14の撓みが矯正される。その結果、被記録媒体14の撓みを矯正した上で、被記録媒体14を排紙ローラ対54のニップ位置へ案内することができる。
【0072】
また、厚紙や光沢紙などの剛性の高い被記録媒体14に画像を記録する場合には変位量をゼロとして可動ガイド部材70を支持姿勢のままで維持するから、剛性の高い被記録媒体14に画像を記録する際の画像記録の精度を落とすことなく、普通紙などの剛性の低い被記録媒体14に画像を記録する際の画像記録の精度を高めることができる。
【0073】
また、レジスト補正や改行のために設けられた検知機構90を利用して可動ガイド部材70を姿勢変化させるタイミングを決めているから、新たにセンサを設けることなく画像記録の精度を高めることができる。
【0074】
また、インク滴が吐出されない間に可動ガイド部材70を第1前傾姿勢または第2前傾姿勢から支持姿勢に姿勢変化させるから(図9のS18,19)、可動ガイド部材70の姿勢変化により画像が乱れることがない。
【0075】
また、可動ガイド部材70が回動可能に設けられることにより、簡単な構成で可動ガイド部材70を姿勢変化可能とすることができる。
【0076】
また、軸突部73が可動ガイド部材70の基部71の後方に設けられたことにより、簡単な構成で、可動ガイド部材70の前端部を上げ下げ可能とすることができる。また、搬送向き38における被記録媒体14の先端を徐々に下げることができ、その結果、被記録媒体14の当該先端を急激に下げる場合に比べ、画像記録の精度が高くなる。
【0077】
また、第1ガイド端部74の他、第2ガイド端部75が可動ガイド部材70に設けられたことにより、より確実に、搬送向き38における被記録媒体14の先端を排紙ローラ対54のニップ位置へ案内することができる。
【0078】
また、第1ガイド面76の他、第2ガイド面77が可動ガイド部材70に設けられたことにより、被記録媒体14を円滑に排紙ローラ対54のニップ位置へ案内することができる。
【0079】
また、被記録媒体14に吐出されるインク量により可動ガイド部材70の変位量を変えるから、可動ガイド部材70を常に第2前傾姿勢にする構成よりも、可動ガイド部70の姿勢変化により印刷時間が長くなることを抑えることができる。
[変形例]
【0080】
本実施形態では、特定領域に吐出されるインクの総量により可動ガイド部材70の変位量を決定する例が説明されたが、特定領域での複数行の画像記録動作における各行ごとのインクの吐出量の最大値から変位量を決定することもできる。また、本実施形態のような特定領域ではなく、被記録媒体14全体に吐出されるインク量により変位量を決定してもよいし、被記録媒体14の撓みが画像記録の精度に影響し易い領域を予め実験的に特定しておき、その領域を特定領域としても良い。
【0081】
また、本実施形態では、圧電素子44によりノズル45にインク滴を吐出させる例が説明されたが、ヒータによりインク流路内のインクの一部を突沸させることによりインク滴を吐出させてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、検知機構90を用いて被記録媒体14の先端位置が検出される例が説明されたが、他の検知機構を用いて被記録媒体14の位置検出が行われてもよい。例えば、記録部40に設けられており、プラテン36を搬送される被記録媒体14の先端を検知可能なメディアセンサと、第1エンコーダ92とを用いて搬送向き38における被記録媒体14の先端の位置が検出されてもよい。また、搬送向き38における被記録媒体14の先端の位置を検出する専用のセンサが設けられてもよい。
【0083】
また、本実施形態では、拍車ローラ34が設けられた例が説明されたが、拍車ローラ34が設けられず、支持姿勢に戻された可動ガイド部材70と第2ガイド部材33とにより被記録媒体14が上下に挟まれることにより被記録媒体14の撓みが矯正されてもよい。
【0084】
また、本実施形態では、被記録媒体14の種類によって可動ガイド部材70の変位量をゼロにするか否かを決定する例が説明されたが、被記録媒体14として普通紙などの剛性の低い被記録媒体14のみが使用される場合には、吐出されるインクの量のみによって可動ガイド部材70の変位量が決められてもよい。
【0085】
また、本実施形態では、回動により可動ガイド部材70が姿勢変化される構成が説明されたが、上下方向7に沿ったスライドにより可動ガイド部材70が姿勢変化される構成が採用されてもよい。例えば、上下方向7に沿って延びるガイドレールがフレーム19に設けられ、第4駆動伝達機構88の代わりにカムベルト機構が用いられることで、可動ガイド部材70が上下方向7に沿ってスライド可能とされる。
【0086】
また、本実施形態では、記録ヘッド42がインク滴を吐出していない間に可動ガイド部材70を支持姿勢に戻す構成(図9のS18,19)が説明されたが、画像記録に影響がなければ、記録ヘッド42がインク滴を吐出している間に可動ガイド部材70が姿勢変化される構成が採用されてもよい。この構成が採用された場合、改行とインク滴の吐出とからなる印刷動作を停止させることなく可動ガイド部材70を姿勢変化させることができるから、可動ガイド部材70の姿勢変化により画像記録に要する時間が長くなることがない。
【0087】
また、本実施形態では、記録ヘッド42がインク滴を吐出しておらず、且つ、改行動作が行われていない間に可動ガイド部材70を姿勢変化させる構成が説明された。つまり、改行を行った後からインク滴が吐出されるまでの第1期間、及び、インク滴が吐出されてから改行が始まるまでの第2期間に可動ガイド部材70が姿勢変化される。画像記録の精度の低下を防止するために、第1期間又は第2期間に可動ガイド部材70が姿勢変化されることが望ましい。但し、画像記録の精度に影響がなければ、改行中に可動ガイド部材70が姿勢変化されてもよい。改行中に可動ガイド部材70が姿勢変化されると、可動ガイド部材70の姿勢変化によって画像記録に要する時間が長くなるということがない。
【0088】
また、本実施形態では、第4駆動モータ84により可動ガイド部材70を姿勢変化させる例が説明されたが、第1駆動モータ81や第3駆動モータ83により可動ガイド部材70が姿勢変化されてもよい。例えば、ワンウェイクラッチを用いて、第1駆動モータ81の一方の向きの回転で第1回転軸21を回転させ、他方の向きの半回転で可動ガイド部材70を支持姿勢から第1前傾姿勢又は第2前傾姿勢に姿勢変化させ、残りの半回転で可動ガイド部材70を第1前傾姿勢又は第2前傾姿勢から支持姿勢に姿勢変化させる。また、周知のギア切換機構などを用いて、第1駆動モータ81や第3駆動モータ83で可動ガイド部材70を姿勢変化させてもよい。また、キャリッジ41のスライド移動を利用し、可動ガイド部材70を姿勢変化させる部材をキャリッジ41で押すことにより可動ガイド部材70を姿勢変化させてもよい。第1駆動モータ81や第3駆動モータ83やキャリッジ41などを利用することにより、駆動モータの個数を減らすことができる。
【0089】
また、本実施形態では、可動ガイド部材70が第1前傾姿勢と第2前傾姿勢との2段階で姿勢変化される構成が説明されたが、可動ガイド部材70は、第2前傾姿勢を変位量が最も大きい最大前傾姿勢として、支持姿勢と最大前傾姿勢との間で3段階以上に姿勢変化可能とされてもよい。この構成が採用された場合、ガイド駆動テーブルには、可動ガイド部材70が姿勢変化可能とする姿勢の数に応じた個数の閾値が設けられる。
【0090】
また、可動ガイド部材70は、リニアに姿勢変化されてもよい。例えば、制御部18は、決定吐出量に対する第4駆動モータ84の回転量を関数で設定し、その関数によって算出される回転量で第4駆動モータ84を正回転させることで、可動ガイド部材70をリニアに姿勢変化させる。より適した変位量で可動ガイド部材70が回動するため、画像記録の精度を向上できる。
【0091】
また、本実施形態では、給送開始前に可動ガイド部材70が支持姿勢にされる構成が説明されたが、可動ガイド部材70は、被記録媒体14の先端が可動ガイド部材70の基部71の後端に到達するまでに支持姿勢に姿勢変化されればよい。
【0092】
また、本実施形態では、支持姿勢が可動ガイド部材70の初期姿勢とされた例が説明されたが、第2前傾姿勢が初期姿勢とされてもよい。
【0093】
また、本実施形態では、制御部18は、第2駆動モータ82の回転量を制御することにより可動ガイド部材70の姿勢を制御する例が説明されたが、可動ガイド部材70の姿勢を検知するセンサが設けられてもよい。制御部18は、このセンサからの入力により可動ガイド部材70が所望の姿勢となったことを検知すると、第4駆動モータ84の駆動を停止させる。
【0094】
また、本実施形態では、可動ガイド部材70はフレーム19やプラテン36との間に生じる摩擦力により各姿勢で維持される例が説明されたが、軸突部73の周面と軸突部73を受けるフレーム19とにそれぞれリブが設けられることにより各姿勢で維持されてもよい。第4駆動モータ84のトルクにより一方のリブが他方のリブを乗り越え、第4駆動モータ84が駆動されない場合は、リブ同士が当接することにより可動ガイド部材70は各姿勢で維持される。
【0095】
また、本実施形態では、1つの制御部18により圧電素子44への給電と第4駆動ロータ84の駆動とを制御する例が説明されたが、2つの制御部により圧電素子44への給電と第4駆動ローラ84の駆動とを個別に制御してもよい。
【0096】
また、本実施形態では、排紙ローラ対54のニップ位置に到達する改行動作までに印刷される領域を特定領域としたが、単純に、被記録媒体14の先端が排紙ローラ対54のニップ位置に到達したときにおける印刷領域の最上流端から当該先端までの領域を被記録媒体14の特定領域と決定してもよい。その場合、本実施形態と異なり、改行幅を考慮せず、印刷データから決定される使用ノズル45のうち最上流側のノズル45から排紙ローラ対54のニップ位置までの搬送向き38における距離を算出し、被記録媒体14の先端からその距離分の位置までの領域を特定領域とする。
【符号の説明】
【0097】
10・・・インクジェット記録装置
18・・・制御部
34・・・拍車ローラ(当接部材)
36・・・プラテン
42・・・記録ヘッド
51・・・搬送ローラ対(第1搬送機構)
54・・・排紙ローラ対(第2搬送機構)
70・・・可動ガイド部材(ガイド部材)
73・・・軸突部(回動軸)
74・・・第1ガイド端部
75・・・第2ガイド端部
76・・・第1ガイド面
77・・・第2ガイド面
80・・・駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体を搬送向きへ搬送する第1搬送機構と、
上記第1搬送機構より上記搬送向き下流側に配置され、搬送される被記録媒体を支持するプラテンと、
上記プラテンより上記搬送向き下流側に配置され、駆動ローラ及び当該駆動ローラに対向する従動ローラによって被記録媒体を上記搬送向きへ搬送する第2搬送機構と、
上記プラテンの上方に配置されており、印刷データに基づいて、被記録媒体へ向かってインク滴を吐出する記録ヘッドと、
上記第2搬送機構の上記駆動ローラと上記従動ローラとのニップ位置と上記プラテンとの上記搬送向きにおける間に配置されており、上記第1搬送機構により搬送される被記録媒体を上記ニップ位置へ案内する第1姿勢及び上記搬送向きにおける被記録媒体の先端を上記ニップ位置よりも下方にする複数の第2姿勢に姿勢変化可能なガイド部材と、
上記ガイド部材を姿勢変化させる駆動部と、
上記駆動部の駆動を制御して上記ガイド部材を姿勢変化させる制御部と、を備え、
上記制御部は、上記印刷データに基づいて上記第1姿勢からの上記ガイド部材の変位量を決定し、上記駆動部の駆動を制御して上記ガイド部材を当該変位量に応じた姿勢にするインクジェット記録装置。
【請求項2】
上記制御部は、上記印刷データのうち、被記録媒体に吐出されるインク量の情報であるインク量情報に基づいて上記変位量を決定するものである請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
上記制御部は、上記インク量が多いほど上記変位量を大きくするものである請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
上記制御部は、被記録媒体の種類情報に基づいて上記変位量をゼロにするか否かを決定し、上記変位量をゼロにしないと決定すると、上記印刷データに基づいて上記変位量を決定するものである請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
上記ガイド部材より上記搬送向き上流側に設けられており、搬送される被記録媒体の先端を検出する第1検出部と、
被記録媒体の搬送量を検出する第2検出部と、を更に備え、
上記制御部は、上記第1検出部及び上記第2検出部の検出結果に基づいて上記駆動部の駆動を制御し、上記搬送向きにおける被記録媒体の先端が上記ガイド部材に到達するまでに上記ガイド部材を上記変位量に応じた姿勢にし、上記先端が上記ニップ位置に到達するまでに上記ガイド部材を上記第1姿勢にする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
上記ガイド部材の上方に配置された当接部材を更に備え、
上記制御部は、上記駆動部の駆動を制御し、上記搬送向きにおける被記録媒体の先端が上記当接部材を越えた後、上記ガイド部材を上記第2姿勢から上記第1姿勢に姿勢変化させて被記録媒体を上記当接部材に当接させるものである請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
上記制御部は、上記印刷データに基づいて、上記搬送向きにおける被記録媒体の先端が上記ニップ位置に到達する改行動作までに上記記録ヘッドによりインク滴が吐出される領域を被記録媒体の特定領域として定め、上記印刷データのうち、上記特定領域に記録される画像に相当する情報から上記変位量を決定するものである請求項1から6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
上記制御部は、上記印刷データのうち、上記特定領域に吐出されるインク滴の総量の情報に基づいて上記変位量を決定するものである請求項7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
上記制御部は、上記第1搬送機構の駆動及び上記記録ヘッドにおけるインク滴の吐出を制御し、上記プラテン上において被記録媒体の搬送を停止させた後上記記録ヘッドにインク滴を吐出させる1行の画像記録動作と、上記印刷データから決定した所定の搬送量で被記録媒体を搬送する改行動作とを交互に行うものであり、上記印刷データに基づいて、上記特定領域内での複数行の画像記録動作における各行ごとのインクの吐出量のうちの最大量を推定し、推定した最大量から上記変位量を決定するものである請求項7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
上記ガイド部材は、上記ガイド部材の上記搬送向き上流側に配置された回動軸を中心に回動可能に設けられており、
上記駆動部は、上記搬送向き下流側の先端を回動先端として上記ガイド部材を回動させるものである請求項1から9のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
上記第2搬送機構の上記駆動ローラ及び上記従動ローラのうち少なくとも一方は、回転軸方向に沿って複数が並列されたものであり、
上記ガイド部材は、上記第1姿勢において、
上記搬送向きに上記ニップ位置と対向する第1ガイド端部と、
上記回転軸方向において隣り合うローラの間に設けられ、上記第1ガイド端部よりも上記搬送向き下流側まで延びた第2ガイド端部と、を備えたものである請求項1から10のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
上記ガイド部材は、上記第1姿勢において、
上記搬送向きに沿う第1ガイド面と、
上記第1ガイド面よりも上記搬送向き下流側に配置され、上記搬送向き下流側へ向かうにつれて上方へ向かって傾斜する第2ガイド面と、を備えたものである請求項1から11のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−139906(P2012−139906A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293968(P2010−293968)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】