説明

インクジェット記録装置

【課題】インクカートリッジのインク室を大気連通するために設けられる半透膜の面積を小さくすることが可能な手段を提供する。
【解決手段】インクカートリッジ30は、インクが貯留されるインク室36を有する本体31と、本体31に設けられており、インク室36に貯留されたインクを外部へ流出させるインク供給部37と、本体31に設けられており、インク室36へ空気を流入可能な大気連通部38と、を有する。カートリッジ装着部110は、4個のインクカートリッジ30がそれぞれ挿入されるケース101と、ケース10に設けられており、各大気連通部38とそれぞれ接続可能な4個の気体流路107と、4個の気体流路107と接続されており、各気体流路107との接続部とは異なる箇所において開口109を有する合流路108と、合流路108の開口109を封止する半透膜124と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートリッジ装着部にインクカートリッジが装着されるインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクを用いて記録用紙に画像を記録する画像記録装置が知られている。この画像記録装置は、インクジェット方式の記録ヘッドを備え、記録ヘッドのノズルからインク滴を記録用紙へ向けて選択的に噴出する。このインク滴が記録用紙に着弾することによって、記録用紙に所望の画像が記録される。この画像記録装置には、記録ヘッドへ供給するインクを貯蔵するインクカートリッジが設けられる。インクカートリッジは、画像記録装置に設けられた装着部に対して着脱可能である。
【0003】
記録ヘッドからインク滴が円滑に吐出されるためには、記録ヘッドからインク滴が吐出された量だけ、インクカートリッジからインクが円滑に流出しなければならない。そのために、インクカートリッジには、空気が流入可能な通気孔が設けられている。また、この通気孔からインクが漏れ出すこと防止するために、空気を通過させ且つインクを通過させない半透膜により通気孔が封止されている(特許文献1)。
【0004】
また、一般的に、インク漏れを防止しつつ、空気の透過度を上げるためには、半透膜の面積を大きくする必要があることが知られている(特許文献2、特に段落0059)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−141891号公報
【特許文献2】特開2001−301187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インクジェット方式の画像記録装置は、カラー画像を記録するために複数色のインクがそれぞれ貯留された複数のインクカートリッジが設けられている。従来のように、インクカートリッジの通気孔に半透膜を設けることとすると、複数のインクカートリッジそれぞれに半透膜が必要である。しかしながら、半透膜は、インクカートリッジの他の部材と比較すると高価な素材により形成されており、消耗品であるインクカートリッジにおいて多用することは、コストアップを惹起させるので望ましくない。
【0007】
また、高速で画像を記録する装置のように、単位時間当たりのインク消費量が多い画像記録装置に用いられるインクカートリッジにおいては、インクカートリッジから記録ヘッドへ流出するインクの流量が大きくなり、半透膜に要求される空気の通過度を大きくする必要があるので、前述されたように、半透膜の面積が大きくなるという問題もある。
【0008】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクカートリッジのインク室を大気連通するために設けられる半透膜の面積を小さくすることが可能な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数のインクカートリッジと、当該複数のインクカートリッジが装着されるカートリッジ装着部と、を備え、当該カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジから供給されるインクを記録部が選択的に吐出して画像記録を行うインクジェット記録装置に関する。上記複数のインクカートリッジの各々は、内部にインクが貯留されるインク室を有する筐体と、上記筐体に設けられており、上記インク室に貯留されたインクを外部へ流出させるインク供給部と、上記筐体に設けられており、上記インク室へ気体を流入可能な気体流入部と、を有する。上記カートリッジ装着部は、上記複数のインクカートリッジがそれぞれ挿入されるケースと、上記ケースに設けられており、上記複数のインクカートリッジの上記気体流入部とそれぞれ接続可能な複数の気体流路と、上記複数の気体流路と接続されており、上記複数の気体流路との接続部とは異なる箇所において開口している合流路と、上記合流路の開口を封止する半透膜と、を有する。
【0010】
カートリッジ装着部にインクカートリッジが装着されると、インクカートリッジの気体流入部が気体流路と接続される。この気体流路は合流路を介して半透膜に通じているので、気体を透過する半透膜から、合流路、気体流路及び気体流入部を介して、インク室へ気体が流入する。一方、インク室から合流路へインクが流れ出しても、半透膜により開口からインクが流出することが防止される。
【0011】
複数のインクカートリッジの気体流入部と各々接続される気体流路は、合流路に接続して合流されており、その合流路の開口に半透膜が設けられているので、半透膜に求められる空気の透過度は、単独のインクカートリッジから流出されるインク流量及び複数のインクカートリッジから同時に流出されるインク流量に対応したものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のインクカートリッジの気体流入部と各々接続される気体流路は、合流路に接続して、合流されており、その合流路の開口に半透膜が設けられているので、半透膜に求められる空気の透過度は、単独のインクカートリッジから流出されるインク流量及び複数のインクカートリッジから同時に流出されるインク流量に対応したものとすることができる。インクジェット記録装置において、複数のインクカートリッジの各々から同時に最大インク流量でインクが流出されて画像記録が行われることはないので、半透膜に求められる面積を小さくすることができる。詳述すると、単独のインクカートリッジから流出される最大インク流量に対応する空気の透過度を確保するための半透膜の面積を面積Sとすると、従来のように、複数のインクカートリッジ、例えばN個のインクカートリッジのそれぞれに半透膜が設けられている場合には、複数の半透膜の面積の合計T1は、面積S×Nとなる。しかしながら、インクジェット記録装置において、複数のインクカートリッジの各々から同時に最大インク流量でインクが流出されて画像記録が行われることはないので、本発明においては、半透膜の面積T2を前述された合計T1より小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の一実施態様であるプリンタ10の内部構造を模式的に示す模式断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態のインクカートリッジ30の外観構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態のインクカートリッジ30の内部構成を示す縦断面図である。
【図4】図4は、カートリッジ装着部110の構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、カートリッジ装着部110の構成を示す正面図である。
【図6】図6は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される過程を示すインクカートリッジ30及びカートリッジ装着部110の断面図である。
【図7】図7は、図5におけるVII−VII断面に沿った大気接続部105の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明が具体化された一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0015】
[プリンタ10の概要]
図1に示されるように、プリンタ10は、インクジェット記録方式に基づいて、記録用紙に対してインク滴を選択的に吐出することにより画像を記録するものである。プリンタ10は、インク供給装置100を備えている。インク供給装置100には、カートリッジ装着部110が設けられている。カートリッジ装着部110には、インクカートリッジ30が装着され得る。カートリッジ装着部110には、その一面が外部に開放された開口112が設けられている。インクカートリッジ30は、開口112を介してカートリッジ装着部110に挿入され、或いはカートリッジ装着部110から抜き出される。プリンタ10が、インクジェット記録装置に相当する。
【0016】
インクカートリッジ30には、プリンタ10で使用可能なインクが貯留されている。カートリッジ装着部110に装着された状態において、インクカートリッジ30と記録ヘッド21とがインクチューブ20で接続されている。記録ヘッド21にはサブタンク28が設けられている。サブタンク28は、インクチューブ20を通じて供給されるインクを一時的に貯留する。記録ヘッド21は、インクジェット記録方式によって、サブタンク28から供給されたインクをノズル29から選択的に吐出する。記録ヘッド21が記録部に相当する。
【0017】
給紙トレイ15から給紙ローラ23によって搬送路24へ送給された記録用紙は、搬送ローラ対25によってプラテン26上へ搬送される。記録ヘッド21は、プラテン26上を通過する記録用紙に対してインクを選択的に吐出する。これにより、画像が記録用紙に記録される。プラテン26を通過した記録用紙は、排出ローラ対22によって、搬送路24の最下流側に設けられた排紙トレイ16に排出される。
【0018】
[インクカートリッジ30]
図2,3に示されるように、インクカートリッジ30はインクが貯留される容器である。インクカートリッジ30の内部に形成されている空間がインクを貯留するインク室36である。なお、インク室36に貯留されているインクのインク室36の容積に対する割合は、大きい方が好ましい。具体的には、インク室36に貯留され、インク室36において高さ方向52の下側を占めるインクと、インク室36において高さ方向52の上側を占める空気との界面が、後述する残量検知部33よりも上側となることが好ましい。
【0019】
インクカートリッジ30は、図2に示された起立状態、つまり、同図の下側の面を底面とし、同図の上側の面を上面として、カートリッジ装着部110に対して矢印50(図6参照)で示される方向(以下「挿入及び取出方向50」と称する。)に沿って挿抜される。すなわち、インクカートリッジ30は、挿入向き56(図6参照)に沿ってカートリッジ装着部110に挿入され、また、取出向き55(図6参照)に沿ってカートリッジ装着部110から抜き出される。インクカートリッジ30は、起立状態のままカートリッジ装着部110に挿抜される。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される向きが挿入向き56であり、抜き出される向きが取出向き55である。起立状態における高さ方向52が、重力方向に相当する。
【0020】
インクカートリッジ30は、本体31とカバー32とを有する。インク室36を区画する本体31は、カバー32により覆われている。カバー32には、第1突起45及び第2突起46が設けられている。第1突起45は、カバー32の前壁34から奥行き方向53に沿ってインク室36から離れる向きに延びるように設けられている。第1突起45の幅(幅方向51に沿った寸法)は、前壁34の幅と同じである。第1突起45は、前壁34から挿入向き56へ突出されている。第1突起45の先端は、後述されるインク供給部37の先端に形成されているインク供給口71より挿入向き56の前側まで突出されている。この第1突起45は、前壁34の幅と同幅であるが、前壁34の幅より狭い幅の板状のものであってもよいし、必ずしも設けられていなくてもよい。本体31及びカバー32が筐体に相当する。
【0021】
第2突起46は、カバー32の前壁34の下端に設けられている。したがって、第2突起46は、後述されるインク供給部37のさらに下方に配置されている。第2突起46の幅は、前壁34の幅と同じである。第2突起46は、前壁34から挿入向き56へ突出されている。第2突起46の先端は、インク供給部37の先端であるインク供給口71より挿入向き56の前側まで突出されている。第2突起46も、第1突起45と同様に、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0022】
図2,3に示されるように、カバー32の内部には、略直方体形状の本体31が設けられている。本体31は、幅方向(左右方向)51に細く、高さ方向(上下方向)52と奥行き方向(前後方向)53が幅方向51よりも大きい扁平形状である。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ装着されるときに前方側となる本体31の壁が本体前壁40であり、後方側となる本体31の壁が本体後壁42である。本体前壁40と本体後壁42とは、奥行き方向53において対向している。本体前壁40及び本体後壁42とを接続し、かつ本体前壁40の上端から本体後壁42の上端に向けて延びる本体31の外壁が本体上壁39であり、本体前壁40及び本体後壁42とを接続し、かつ本体前壁40の下端から本体後壁42の下端に向けて延びる本体31の外壁が本体下壁41である。なお、挿入及び取出方向50は奥行き方向53と平行である。
【0023】
本体31は、その内部にインク室36を有する。インク室36は、本体31と、本体31の両側に固着されるフィルム(不図示)により区画される空間である。インク室36内には、補強などを目的として複数のリブが設けられているが、インク室36は、後述される残量検知部33、インク流路72、大気流路77とインク及び空気の流通が可能な空間である。
【0024】
図3に示されるように、本体31の本体前壁40における高さ方向52の中央付近には、残量検知部33が設けられている。残量検知部33は、幅方向51に細く、高さ方向52と奥行き方向53が幅方向51よりも大きい扁平形状である。残量検知部33は中空であり、インク室36とインクが流通可能に通じている。つまり、残量検知部33とインク室との間には隔壁が存在しない。
【0025】
残量検知部33の中空部分にはセンサーアーム60のインジケータ部62が挿入されている。センサーアーム60は、板状のアーム本体61の両端に、インジケータ部62及びフロート部63とがそれぞれ設けられたものである。センサアーム60は、インク室36において、幅方向51に沿って延びる支軸64により回動可能に支持されている。センサーアーム60は、インク室36に存在するインク量に対応して、インジケータ部62が残量検知部33の高さ方向52下側に位置する下位姿勢と、インジケータ部62が残量検知部33の高さ方向52上側に位置する上位姿勢に姿勢変化可能である。なお、図3では、インジケータ部62が下位姿勢であり、インク室36内にインクが所定量存在する状態が示されている。
【0026】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態において、カートリッジ装着部110に設けられた光センサ114に対して、残量検知部33は、赤外光を所定量以上透過させる状態と、残量検知部33が赤外光を所定量未満に遮光又は減衰させる状態とに変化する。インジケータ部62が上位姿勢であれば残量検知部33は赤外光を透過させ、インジケータ部62が下位姿勢であれば、残量検知部33は赤外光を遮光又は減衰させる。この残量検知部33の透光状態に応じて、インク室36内のインク残量が所定量未満になったことが判定される。
【0027】
図3に示されるように、本体31の本体前壁40における残量検知部33の上側に、大気連通部38が設けられている。大気連通部38は、円筒形状の外形をなしており、本体前壁40から挿入及び取出方向50に沿って外側へ突出している。この大気連通部38は、カバー32の開口35を通じて外部へ露出されている。大気連通部38の突出端には、中空円筒形状の弾性部材80が設けられている。弾性部材80には、大気連通口76が形成されている。この大気連通口76から大気連通部38の内部空間を通じて、挿入及び取出方向50に延びてインク室36に通ずる大気流路77が形成されている。大気連通口76は、大気連通バルブ75により開閉可能に構成されている。大気連通バルブ75は、コイルバネ78により大気連通口76側へ付勢されて、常時は、弾性部材80に密接して大気連通口76を閉じている。また、大気連通バルブ75の一部であるロッド79は、大気連通口76から外側へ突出されている。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、カートリッジ装着部110に設けられた大気接続部105の先端(図6参照)が、大気連通バルブ75のロッド79に当接して、コイルバネ78の付勢力に抗して大気連通バルブ75を弾性部材80から離反させる。これにより大気連通口76が開かれて、負圧に維持された状態のインク室36の気圧が外気圧となる。また、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、大気接続部105の先端が弾性部材80内に入り込み、弾性部材80の内周面が大気接続部105の外周面に密着する。すなわち、弾性部材80が、弾性変形しつつ、大気接続部105の外周面に接触した状態となる。大気連通部38が気体流入部に相当する。
【0028】
なお、大気連通口76は、必ずしも大気連通バルブ75によって開閉可能な構成に限定されず、例えば、大気連通口76が弾性フィルムやゴム栓などで閉塞されており、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、大気接続部105などが弾性フィルムやゴム栓を突き破ることにより大気連通口76が開かれる構成であってもよい。
【0029】
図3に示されるように、本体31の本体前壁40における高さ方向52の中央より下側に、インク供給部37が設けられている。インク供給部37は、円筒形状の外形をなしており、本体前壁40から挿入及び取出方向50に沿って外側へ突出している。このインク供給部37は、カバー32の外側へ露出されている。インク供給部37の突出端にはインク供給口71が形成されている。このインク供給口71からインク供給部37の内部空間を通じて、挿入及び取出方向50に延びてインク室36へ通ずるインク流路72が形成されている。インク供給口71は、インク供給バルブ70によって開閉可能に構成されている。インク供給バルブ70は、コイルバネ73によりインク供給口71側へ付勢されて、常時は、インク供給口71を閉じている。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、カートリッジ装着部110に設けられたインクニードル122(図5参照)が、インク供給口71に挿入されてインク供給バルブ70をコイルバネ73の付勢力に抗してインク供給口71から離反させる。これにより、インク供給口71が開かれて、インク流路72を通ってインク室36から、カートリッジ装着部110に設けられたインクニードル122へインクが流出される。
【0030】
なお、インク供給口71は、必ずしもインク供給バルブ70によって開閉可能な構成に限定されず、例えば、インク供給口71が弾性フィルムやゴム栓などで閉塞されており、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、インクニードル122が弾性フィルムやゴム栓を突き破ることによりインク供給口71が開かれる構成であってもよい。
【0031】
本体31の本体上壁39における奥行き方向53の中央付近には、係合部43が形成されている。係合部43は、インクカートリッジ30の幅方向51及び高さ方向52に拡がる平面を有する突起である。係合部43は、カバー32には覆われておらず、外部へ露出されている。係合部43には、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態で、後述されるロックレバー145が係合する。この係合部43は、インクカートリッジ30を取出向き55に押し出させる付勢力を受けるものである。
【0032】
[インク供給装置100]
図1に示されるように、インク供給装置100は、プリンタ10に設けられている。インク供給装置100は、プリンタ10が備える記録ヘッド21へインクを供給するものである。インク供給装置100は、インクカートリッジ30を装着可能なカートリッジ装着部110を備えている。なお、図1においては、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着された状態が示されている。
【0033】
[カートリッジ装着部110]
図4〜6に示されるように、カートリッジ装着部110の筐体を形成するケース101は、プリンタ10の正面側に開口112を有する。開口112を通じてケース101へインクカートリッジ30が挿抜される。ケース101には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色のインクに対応する4つのインクカートリッジ30が収容可能である。
【0034】
ケース101には、内部空間を縦方向に長い4つの空間に仕切り分ける3つのプレート102が設けられている。このプレート102によって仕切り分けられた各空間それぞれにインクカートリッジ30が収容される。プレート102は、ケース101において開口112と反対側となる終面側(奥側)に設けられている。
【0035】
図5に示されるように、ケース101の終面の下部にインク接続部103が設けられている。インク接続部103は、終面において、ケース101に装着された各インクカートリッジ30のインク供給部37に対応する位置にそれぞれ配置されている。本実施形態では、ケース101に収容可能な4つのインクカートリッジ30に対応して4つのインク接続部103が設けられている。
【0036】
インク接続部103は、インクニードル122と、保持部121とを有する。インクニードル122は、管状の樹脂針からなる。インクニードル122は、ケース101の終面と表裏をなす外面側でインクチューブ20に接続されている。各インクニードル122から外面側へ引き出された各インクチューブ20は、ケース101の終面と対向する外側面において上方へ引き上げられたのち、プリンタ10の記録ヘッド21へインクを流通可能に延出されている。
【0037】
保持部121は、円筒状に形成されている。保持部121の中心にインクニードル122が配置されている。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、インク供給部37の外周面が保持部121の円筒の内周面にガイドされつつ、インク供給部37が保持部121の円筒の内側に挿入される。インク供給部37が保持部121へ挿入されると、インクニードル122がインク供給部37のインク供給口71に挿入される。これにより、インク室36に貯留されているインクが外部へ流出可能となる。インク室36から流出されたインクは、インクニードル122へ流入する。
【0038】
図6に示されるように、ケース101の終面において、インク接続部103より高さ方向52の上側にセンサユニット104が設けられている。センサユニット104は、基板113と、光センサ114とを備える。基板113に光センサ114が装着されることで、センサユニット104が構成されている。センサユニット104には、4つの光センサ114が設けられている。これら4つの光センサ114は、ケース101に収容可能な4つのインクカートリッジ30に対応している。4つの光センサ114は、各プレート102の間において、ケース101の幅方向に(幅方向51と一致する)に一列に配列されている。
【0039】
各光センサ114は、LEDなどの発光素子118と、フォトトランジスタなどの受光素子119とをそれぞれ有する。発光素子118及び受光素子119は、それぞれが筐体に囲まれている。光センサ114は、この筐体により形成される外形が馬蹄形である。発光素子118は、筐体から一方向へ光を照射可能である。受光素子は、筐体に対して一方向から照射された光を受光可能である。このような発光素子118と受光素子119とが、馬蹄形の筐体において所定の間隔を空けて対向配置されている。発光素子118と受光素子119との間の空間には、インクカートリッジ30の残量検知部33が進入可能である。光センサ114の光路に残量検知部33が進入すると、光センサ114は、残量検知部33による透光状態の変化を検知し得る。
【0040】
図5に示されるように、ケース101の終面の上部に大気接続部105が設けられている。大気接続部105は、終面において、ケース101に装着された各インクカートリッジ30の大気連通部38に対応する位置にそれぞれ配置されている。本実施形態では、ケース101に収容可能な4つのインクカートリッジ30に対応して4つの大気接続部105が設けられている。
【0041】
大気接続部105は、ケース101の終面から開口112側へ向かって突出する中空円筒状に形成されている。大気接続部105の突出端には、開口106が形成されている。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、大気接続部105がカバー32の開口35へ進入して、大気接続部105の突出端が大気連通部38の弾性部材80内に入り込む。このとき、弾性部材80の内周面が大気接続部105の外周面に密着する。すなわち、弾性部材80が、弾性変形しつつ、大気接続部105の外周面に接触した状態となる。これにより、大気接続部105の突出端により大気連通バルブ75のロッド79がコイルバネ78の付勢力に抗して押し込まれて、大気連通口76が開かれる。そして、大気接続部105の開口106から、大気連通口76、大気流路77を通じてインク室36に空気が流入する。なお、弾性部材80の内周面が大気接続部105の外周面に密着しているので、弾性部材80の内周面と大気接続部105の外周面との間を空気やインクが通過することが防止されている。
【0042】
図6に示されるように、スライド部材135は、カートリッジ装着部110の奥部の下端側に形成された空間130に配置されている。本実施形態では、ケース101に収容可能な4つのインクカートリッジ30に対応して4つのスライド部材135が設けられている。空間130は、カートリッジ装着部110の内部空間と連続している。スライド部材135は、空間130において挿入及び取出方向50に沿って延出された支持ロッド133によって挿入及び取出方向50に沿ってスライド可能に支持されている。スライド部材135は、概ね直方体の外形をなす。スライド部材135は、インクカートリッジ30の第2突起46の挿入経路に配置されており、第2突起46の先端と当接可能である。つまり、スライド部材135は、第2突起46の先端と挿入向き56に対向して設けられている。
【0043】
空間130にはコイルバネ139が設けられている。コイルバネ139は、スライド部材135を開口112側、つまり、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から抜き出される向きへ、つまり開口112へ向かって、インクカートリッジ30を弾性付勢するものである。コイルバネ139は、空間130において挿入及び取出方向50に沿って延出された支持ロッド133に外嵌されて、空間130の終端を画定している終壁131とスライド部材135との間に介在されている。コイルバネ139が自然長である場合、つまり、スライド部材135に外力が加えられていない状態では、スライド部材135は、開口112側の所定の位置に配置される。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される過程で、インクカートリッジ30の第2突起46がスライド部材135に当接して、スライド部材135が空間130の終壁131側へ押圧される。これにより、コイルバネ139が収縮されるとともに、スライド部材135が終壁131側の位置へスライドされる。収縮したコイルバネ139は、スライド部材135を介してインクカートリッジ30を取出向き55へ付勢する。
【0044】
ケース101には、ロックレバー145が設けられている。ロックレバー145は、カートリッジ装着部110に装着されたインクカートリッジ30を、コイルバネ139の付勢力に抗して、装着状態に維持するためのものである。ロックレバー145は、ケース101の開口112の上側に設けられている。本実施形態では、ケース101に装着可能な4つのインクカートリッジ30に対応して4つのロックレバー145が設けられている。
【0045】
ロックレバー145は、全体がアーム状に形成されている。ロックレバー145の中央付近に支軸147が設けられている。この支軸147がケース101に支持されている。これにより、ケース101の開口112の上側においてロックレバー145が支軸147を中心に回動可能に支持されている。ロックレバー145は、大別すると、操作部149と、被係合部146とに大別される。操作部149は、ケース101の開口112から外側へ突出されている。操作部149は、ロックレバー145を回動させるための操作を受け付ける部分である。被係合部146は、ケース101の内部へ進入している。被係合部146は、インクカートリッジ30の係合部43と係合可能である。被係合部146が係合部43と係合することにより、コイルバネ139に付勢されているインクカートリッジ30が、ケース101に対して装着状態に維持される。被係合部146が係合部43と係合可能な位置となるロックレバー145の回動位置がロック位置と称され、被係合部146が係合部43と係合しない位置がアンロック位置と称される。
【0046】
ロックレバー145には、コイルバネ148が取り付けられている。コイルバネ148によって、ロックレバー145は、ロック位置側へ付勢されている。ロック位置のロックレバー145に対して、操作部149が高さ方向52下向きへ押し下げられると、ロックレバー145がロック位置からアンロック位置へ回動される。
【0047】
図6に示されるように、大気接続部105の内部空間は空洞であり、空気が流通可能な気体流路107が形成されている。気体流路107は、大気接続部105の開口106から挿入及び取出方向50に沿って大気接続部105の基端側へ延びている。大気接続部105は、ケース101に装着された各インクカートリッジ30の大気連通部38に対応して4つ設けられているので、気体流路107も相互に独立して4つが形成されている。
【0048】
図7に示されるように、4つの気体流路107は、ケース101の終面と表裏をなす外面側において合流路108に接続して、合流されている。この合流路108は、4つの気体流路と接続する側と反対側において開口109を有する。この開口109を封止するようにして半透膜124が設けられている。半透膜124は、微小な孔を有する多孔質膜であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体などのフッ素樹脂からなる。
【0049】
半透膜124が開口109を封止しているので、開口109は液密に封止される。一方、半透膜124は、ガーレー数に応じた抵抗により空気を通過させる。単位時間当たりに開口109を通過可能な空気量(流量)は、半透膜124のガーレー数に依存し、開口109の大きさに対応する半透膜124の面積(半透膜124の有効面積)に比例する。したがって、同じ素材、つまりガーレー数が同じ半透膜124を用いる場合には、開口109の大きさに対応する半透膜124の面積(半透膜124の有効面積)を広くするほど、つまり半透膜124により封止される開口109を大きくするほど空気の流量が上がる。換言すると、半透膜124のガーレー数及び面積により、半透膜124の空気の透過度が決まる。
【0050】
[インクカートリッジ30の装着動作]
以下、図6が参照されつつ、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される動作が説明される。
【0051】
図には示されていないが、カートリッジ装着部110の開口112は、プリンタ10の筐体に設けられた開閉可能なカバーによって閉じられている。インクカートリッジ30が装着されるときには、このカバーが開かれる。
【0052】
図6に示されるように、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に対して挿入向き56へ挿入される。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入されると、まず、カバー32の挿入向き56の先端に形成された挿入向き56前側へ傾斜する案内面が、ロックレバー145の被係合部146に当接する。更にインクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿入されると、ロックレバー145の被係合部146がカバー32に乗りあがる。これにより、ロックレバー145が反時計回りに回動して、図6に示されるように、ロック位置からアンロック位置へ移動する。
【0053】
また、インクカートリッジ30の第2突起46の先端がスライド部材135に当接する。このとき、スライド部材135は、コイルバネ139に付勢された、空間130における開口112側に位置されている。ユーザは、図6に示されている状態から、さらにインクカートリッジ30をカートリッジ装着部110に挿入するために、コイルバネ139の付勢力に抗して、カバー32の後壁側を押し込む。
【0054】
インクカートリッジ30の係合部43がロックレバー145の被係合部146より挿入向き56の前側へ到達すると、ロックレバー145が図6における時計回りに回動して、アンロック位置からロック位置へ移動する。これにより、ロックレバー145の被係合部146とインクカートリッジ30の係合部43とが係合して、コイルバネ139の付勢力に抗して、インクカートリッジ30が装着位置に保持される。
【0055】
装着位置において、インクカートリッジ30のインク供給口71にはインクニードル122が挿入されており、このインクニードル122によりインク供給バルブ70が開位置へ移動される。したがって、インク室36からインク流路72、インクニードル122を通じてインクチューブ20へインクが流出可能となる。また、ケース101の終面に設けられた大気接続部105により、大気連通バルブ75が開放されて、インク室36内が大気圧となる。すなわち、半透膜124から、合流路108、気体流路107、開口106、大気連通口76、大気流路77を介して、インク室36に空気が流入する。また、残量検知部33は、光センサ114により検知可能な位置へ到達され、残量検知部33内におけるセンサーアーム60のインジケータ部62の位置が検知されることに基づいて、インク室36のインク残量が判定される。
【0056】
インク室36のインクが消費されると、大気連通部38からインク室36内へ、インクの消費量に対応した量の空気が流入する。大気連通部38からインク室36内へ流入する単位時間当たりの空気の量(流量)は、単位時間当たりに消費されるインク室36のインクの量が多いほど、大きくする必要がある。大気連通部38は、大気接続部105の開口106、気体流路107、合流路108を介して半透膜124に通じているので、これら流路における流路抵抗はあるものの、最大の流路抵抗を発生する半透膜124により、大気連通部38からインク室36内へ流入する空気の流量が設定される。そして、前述されたように、半透膜124のガーレー数が決まると、合流路108の開口109の大きさ、すなわち、半透膜124の有効面積が空気の流量を確保するための主たる設計要素となる。
【0057】
仮に、単独のインクカートリッジ30から流出される最大インク流量に対応する空気の透過度を確保するための半透膜124の有効面積を面積Sとすると、従来のように、例えば、4個のインクカートリッジ30の大気連通口76それぞれに半透膜124が設けられている場合には、各インクカートリッジ30の大気連通口76に設けられた半透膜124の有効面積の合計T1は、面積S×4となる。
【0058】
しかしながら、プリンタ10においてフルカラー印刷を行ったとしても、4個のインクカートリッジ30の各々から同時に最大インク流量でインクが流出されて画像記録が行われることはない。4個のインクカートリッジ30の各々から最大インク流量でインクが流出されて画像記録が行われるとは、記録ヘッド21の各ノズル29から最大インク滴量で、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色インクを吐出することなので、例えば、シアン、マゼンタ及びイエローにより全てが黒色の画像が形成されているにも拘わらず、さらにブラックで全てが黒色の画像を形成することであり、不合理だからである。したがって、本実施形態では、合流路108の開口109の大きさを合計T1より小さくでき、その結果、開口109の大きさに対応する半透膜104の有効面積T2は、単独のインクカートリッジからの最大インク流量に対応する範囲内で、前述された合計T1より小さくすることができる。
【0059】
また、プリンタ10において紙詰まりの処理や、修理のための梱包、搬送において、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着された状態で、プリンタ10が縦置きなどにされることが想定される。その結果、インクカートリッジ30の大気連通口76が下側となる姿勢にプリンタ10が保持されると、インク室36から大気流路77、大気連通口76を通じて、インクが、気体流路107、合流路108に流れ込むおそれがあるが、合流路108の開口109が半透膜124で封止されているので、開口109からインクが流出して、センサユニット104等の電子部品を汚すことが防止される。
【0060】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、4個のインクカートリッジ30の大気連通部38と各々接続される気体流路107は、合流路108に接続して、合流されており、その合流路108の開口109に半透膜124が設けられているので、半透膜124に求められる空気の透過度は、単独のインクカートリッジ30から流出されるインク流量及び4個のインクカートリッジ30から同時に流出されるインク流量に対応したものとすることができる。プリンタ10において、4個のインクカートリッジ30の各々から同時に最大インク流量でインクが流出されて画像記録が行われることはないので、半透膜124に求められる面積を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0061】
10・・・プリンタ(インクジェット記録装置)
21・・・記録ヘッド(記録部)
30・・・インクカートリッジ
31・・・本体(筐体)
36・・・インク室
37・・・インク供給部
38・・・大気連通部(気体流入部)
101・・・ケース
107・・・気体流路
108・・・合流路
109・・・開口
110・・・カートリッジ装着部
124・・・半透膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のインクカートリッジと、当該複数のインクカートリッジが装着されるカートリッジ装着部と、を備え、当該カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジから供給されるインクを記録部が選択的に吐出して画像記録を行うインクジェット記録装置であって、
上記複数のインクカートリッジの各々は、
内部にインクが貯留されるインク室を有する筐体と、
上記筐体に設けられており、上記インク室に貯留されたインクを外部へ流出させるインク供給部と、
上記筐体に設けられており、上記インク室へ気体を流入可能な気体流入部と、を有しており、
上記カートリッジ装着部は、
上記複数のインクカートリッジがそれぞれ挿入されるケースと、
上記ケースに設けられており、上記複数のインクカートリッジの上記気体流入部とそれぞれ接続可能な複数の気体流路と、
上記複数の気体流路と接続されており、上記複数の気体流路との接続部とは異なる箇所において開口している合流路と、
上記合流路の開口を封止する半透膜と、を有するインクジェット記録装置。
【請求項2】
上記複数のインクカートリッジは、上記インク室にブラック色のインクを貯留するものと、上記インク室にシアン色のインクを貯留するものと、上記インク室にマゼンタ色のインクを貯留するものと、上記インク室にイエロー色のインクを貯留するものと、を含む請求項1に記載のインクジェット記録装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−201073(P2012−201073A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69818(P2011−69818)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】