説明

インクジェット記録装置

【課題】障害物を検出する検出手段の軸部材のたわみを抑制し、障害物の検出精度を向上する。
【解決手段】左側フレーム部材182、右側フレーム部材183、横フレーム部材200、を備えた筐体2と、クリアランスセンス機構8と、接触部位が検出された場合プラテン5を待機位置へ搬送するCPUと、を有し、クリアランスセンス機構8は、軸部材81と板状部材84とを備えており、軸部材81の左端部を支持する左側軸受282が左側フレーム部材182に支持され、軸部材81の右端部を支持する右側軸受283が右側フレーム部材183に支持され、左側軸受282及び右側軸受283の少なくとも一方は横フレーム部材200を介し左側又は右側フレーム部材182,183に設けられ、左側軸受282と右側軸受283との間は、プラテン5の左右方向寸法より大きく筐体2の左右方向寸法より小さな距離だけ離隔し配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを被記録媒体に吐出し所望の画像を記録するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを被記録媒体に吐出し所望の画像を記録するインクジェット記録装置として、従来、特許文献1に記載の技術が知られている。この従来技術のインクジェット記録装置は、送り機構(プラテン駆動モータ)によって、載置台(プラテン)が、記録開始前の待機位置から、記録手段(インクジェットヘッド)の記録が実行される記録位置(印刷実行位置)まで搬送される。当該載置台の待機位置と記録位置との間で載置台に対向可能となるように、検出手段(クリアランスセンサ機構)が設けられている。
【0003】
検出手段では、載置台の搬送方向と直交する直交方向(左右方向)に沿う軸部材が回動可能に設けられ、その軸部材に板状部材が固定されている。載置台と共に搬送される被記録媒体(Tシャツ等の布帛)の皺などの障害物が接触部位となって板状部材に接触すると、板状部材の上記搬送方向への移動とともに軸部材が回動する。この結果、軸部材に一体に設けられた隠蔽部材が例えばフォトセンサからなるセンサ部によって検出され、上記接触部位の存在が検出される。これにより、載置台の搬送が停止される(又は載置台が待機位置へ搬送される)。この結果、被記録媒体とヘッドの接触を防止し、被記録媒体に対する円滑かつ高品質な記録を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−199507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術において、前述の障害物の検出の際、当該障害物の接触により回動しやすいように、軸部材として比較的細い径のものが使用される場合が多い。その結果、軸部材をあまり長く延設すると、軸部材にたわみが生じるおそれがある。たわみが生じた場合、板状部材と載置台との間の距離が一定とならず局所的に小さくなることから、障害物の検出精度が低下する懸念がある。したがって、上記軸部材の上記直交方向における寸法は、載置台の幅より大きい限りにおいて、なるべく短くすることが望ましい。しかしながら、上記従来技術は、そのような点について特に配慮されていなかった。
【0006】
本発明の目的は、軸部材のたわみを抑制し、障害物の検出精度を向上できるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、被記録媒体にインクを噴射して記録を行うノズル面を備える記録手段と、前記ノズル面に対向して配置され、前記被記録媒体を前記ノズル面と間隔をあけて載置する載置台と、記録開始前の載置台の待機位置から記録手段による被記録媒体への記録を実行する記録位置へ前記載置台を搬送する送り機構と、前記載置台から前記送り機構の送り方向に直交する直交方向の一方側に立設された一方側フレーム部材、前記載置台から前記直交方向の他方側に設けられた他方側フレーム部材、及び、前記一方側フレーム部材と前記他方側フレーム部材とを連結しつつ前記直交方向に沿って配置される水平方向フレーム部材、を備えた筐体と、前記待機位置と前記記録位置との間で、前記載置台に対向可能に設けられ、前記載置台に支持された前記被記録媒体の前記ノズル面に接触する接触部位を、検出する検出手段と、前記検出手段が前記接触部位を検出した場合、前記載置台の搬送を停止し、又は前記載置台を前記待機位置へ搬送するように前記送り機構を制御する送り機構制御手段と、を有し、前記検出手段は、前記直交方向に沿って配置される軸部材と、前記軸部材に固定され、前記被記録媒体の前記接触部位に当接可能な板状部材と、前記接触部位の検出の有無を判別するために前記軸部材と一体に設けられ、前記載置台の搬送により前記接触部位が前記板状部材に接触したときに前記軸部材とともに回動する隠蔽部材と、前記隠蔽部材を検出するためのセンサ部と、を備えており、前記軸部材の前記直交方向一方側の端部を支持する一方側軸受手段が、前記一方側フレーム部材に支持されるとともに、前記軸部材の前記直交方向他方側の端部を支持する他方側軸受手段が、前記他方側フレーム部材に支持されており、前記一方側軸受手段及び前記他方側軸受手段の少なくとも一方は、前記水平方向フレーム部材を介して前記一方側フレーム部材又は前記他方側フレーム部材に設けられており、前記一方側軸受手段と前記他方側軸受手段との間は、前記載置台の前記直交方向に沿った寸法より大きく前記筐体の前記直交方向に沿った寸法より小さな、所定の距離だけ当該直交方向に互いに離隔して配置されていることを特徴とする。
【0008】
本願第1発明のインクジェット記録装置では、送り機構によって、載置台が、記録開始前の待機位置から、記録手段の記録が実行される記録位置まで搬送される。当該載置台の待機位置と記録位置との間で載置台に対向可能となるように、検出手段が設けられている。
【0009】
検出手段では、載置台の搬送方向と直交する直交方向に沿う軸部材が回動可能に設けられ、その軸部材に板状部材が固定されている。載置台と共に搬送される被記録媒体の皺などの障害物が接触部位となって板状部材に接触すると、板状部材の上記搬送方向への回動とともに軸部材が回動する。この結果、軸部材に一体に設けられた隠蔽部材がセンサ部によって検出され、上記接触部位の存在が検出手段によって検出される。これにより、送り機構制御手段により載置台の搬送が停止される(又は載置台が待機位置へ搬送される)。この結果、被記録媒体とヘッドの接触を防止できるため、被記録媒体に対する円滑かつ高品質な記録を行うことができる。
【0010】
本願第1発明のインクジェット記録装置の筐体において、載置台の直交方向一方側に一方側フレーム部材が設けられ、載置台の直交方向他方側に他方側フレーム部材が設けられ、またそれら一方側フレーム部材と他方側フレーム部材との間に、水平方向フレーム部材が架け渡されている。前述の障害物の検出時において、上記障害物の接触により回動しやすいように、検出手段の軸部材は、比較的細い径のものが使用される場合が多い。このため、上記軸部材を筐体の一方側端部から他方側端部まで延設した場合、軸部材にたわみが生じるおそれがある。そこで本願第1発明では、一方側フレーム部材及び他方側フレーム部材に、適宜、水平方向フレーム部材を介して、互いに所定距離(載置台の直交方向寸法より大きく筐体の直交方向寸法より小さい)だけ離間させて一方側軸受手段及び他方側軸受手段を設ける。これら一方側軸受手段及び他方側軸受手段が軸部材の両端部を支持することにより、軸部材の上記直交方向に沿った長さを、筐体の上記直交方向寸法よりも大きく低減し、載置台の直交方向寸法より若干大きい程度とすることができる。この結果、上記のように比較的細い径の軸部材が用いられる場合であっても、当該軸部材のたわみの発生を抑制し、板状部材と載置台との間の距離を略一定に保持できるので、被記録媒体の上記障害物を高精度に検出することができる。
【0011】
第2発明は、上記第1発明において、前記記録手段を前記直交方向一方側及び他方側に往復移動させるための搬送手段を有し、前記水平方向フレーム部材は、前記搬送手段が前記往復移動するときに当該搬送手段に備えられたローラが走行する案内レールを兼ねていることを特徴とする。
【0012】
これにより、搬送手段のローラが走行する案内レールを兼ねる水平方向フレーム部材が一方側フレーム部材と他方側フレーム部材とを連結する強度部材として機能し、部品点数を減らせるとともに、これら一方側フレーム部材と他方側フレーム部材との連結体全体の剛性を向上することができる。この結果、それら連結体に両端部を支持される軸部材に取り付けられた板状部材と載置台との間の距離の変動が抑制されるので、これによっても被記録媒体の上記障害物を高精度に検出することができる。
【0013】
第3発明は、上記第2発明において、前記一方側軸受手段、前記他方側軸受手段、及び前記軸部材は、前記案内レールの下面よりも下方となる高さ方向位置に配置されていることを特徴とする。
【0014】
これにより、軸部材の高さ方向位置が案内レールの高さ方向位置と同等の場合に比べ、軸部材を配置するために必要となる水平方向スペースを小さくできる。この結果、筐体及び装置全体の小型化を図ることができる。
【0015】
第4発明は、上記第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記一方側軸受手段又は前記他方側軸受手段が取り付けられると共に、前記センサ部が取り付けられる、共通の取付板を有し、前記共通の取付板が、前記一方側フレーム部材又は前記他方側フレーム部材に取り付けられていることを特徴とする。
【0016】
一方側又は他方側軸受手段を取り付ける部材と、センサ部を取り付ける部材とを、1つの共通の取付板で兼ねることにより、部品点数を少なくし、省スペース化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、検出手段の軸部材のたわみを抑制し、障害物の検出精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態におけるインクジェットプリンタの全体的な構成を表す斜視図である。
【図2】インクジェットプリンタの全体的な構成を表す正面図である。
【図3】インクジェットプリンタの全体的な構成を表す平面図である。
【図4】プラテンとキャリッジとクリアランスセンサ機構との配置関係を表す斜視図である。
【図5】キャリッジとクリアランスセンサ機構との配置関係を表す斜視図である。
【図6】キャリッジとクリアランスセンサ機構との配置関係を表す、別の角度からみた斜視図である。
【図7】インクジェットプリンタの要部構成を表す、左側面図である。
【図8】クリアランスセンサ機構におけるソレノイドの通電状態を表す、部分拡大図である。
【図9】クリアランスセンサ機構におけるソレノイドの非通電状態を表す、部分拡大図である。
【図10】隠蔽部材の詳細構造を表す上面図、正面図、右側面図、及び背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態のインクジェット記録装置であるインクジェットプリンタ1を、図1〜図4により説明する。
【0020】
<インクジェットプリンタの概略構成>
図1乃至図4に示すように、インクジェットプリンタ1は、左右方向を長手方向とする略直方体形状の筐体2を有している。筐体2は、左側に立設された左側フレーム部材182と、右側に立設された右側フレーム部材183と、を備えている。
【0021】
図1において、筐体2は左側の前方に水平断面略L形状の左前L字部材182aと、左側の後方に水平断面略L字形状の左後L字部材182bを備える。筐体2は左前L字部材182aと左後L字部材182bを連結する前後方向に伸びる左側連結部材182cを備えている。左側フレーム部材182は左前L字部材182aと左後L字部材182bと左側連結部材182cを有している。
【0022】
また、筐体2は右側の前方に水平断面略L形状の右前L字部材183aと、右側の後方に水平断面略L字形状の右後L字部材183bを備える。筐体2は右前L字部材183aと右後L字部材183bを連結する前後方向に伸びる右側連結部材183cを備えている。右側フレーム部材183は右前L字部材183aと右後L字部材183bと右側連結部材183cを有している。なお、後述の取付部材300は右側フレーム部材183に備えられる右側連結部材183cに取り付けられている。
【0023】
加えて、筐体2は左側フレーム部材182の左前L字部材182aと右側フレーム部材183の右前L字部材183aに架設される横フレーム部材200を備えている。そして、筐体2の下部の略中央の、上記左側フレーム部材182と、右側フレーム部材183との間には、前後方向に向かう2本のレール3,3が列設されている。2本のレール3は、筐体2の垂直方向に立ち上げられた基部A上にそれぞれ支持されており、その上部に、レール3に沿って筐体2の前後方向に移動可能な平板状のプラテン支持台7を支持している。そして、プラテン支持台7の略中央に垂直に立ち上げられた支柱の上端には、取り換え可能なプラテン5(載置台;載置手段)が固定されている。また、筐体2の前後方向の略中央で、かつ、プラテン5の上方の位置にて、筐体2の両側面間には、キャリッジ20(搬送手段)の移動を案内するためのガイド部材9が架設されている。
【0024】
キャリッジ20には、複数(この例では8個)のインクジェットヘッド21(記録手段)が搭載される。すなわち、キャリッジ20は、略直方体形状を有し、その底面に圧電式の8個のインクジェットヘッド21を搭載している。上記ガイド部材9の右端付近にはキャリッジモータ24が設けられている。このキャリッジモータ24と、左端付近に設けられたプーリー25との間に駆動ベルト101が架設されている。駆動ベルト101は、筐体2の左右にわたって配置されている。キャリッジモータ24が駆動ベルト101を駆動することにより、キャリッジ20が当該走査方向一方側及び他方側(筐体2の左右方向)に駆動する。このとき、キャリッジ20の後縁端において左右一対となって突出状に形成された筒状のガイド係合部20aがガイド部材9に係合することで、キャリッジ20はガイド部材9に沿って円滑に往復移動できる。なお、キャリッジモータ24はDCモータであり、リニアエンコーダECからの出力に基づき、キャリッジ20の位置検出が行われる。
【0025】
このインクジェットプリンタ1では、シアンインク,マゼンタインク,イエローインク,ブラックインクとホワイトインクが用いられる。インクジェットプリンタ1の左側面には、各インクを収容した8つのインクカートリッジを着脱可能に収容するための8つのインクカートリッジ収容部(図示せず)がそれぞれ設けられている。なお、4つのインクカートリッジにはシアンインク,マゼンタインク,イエローインク,ブラックインクが収容され、残りの4つのインクカートリッジにはホワイトインクが収容される。そして、各インクカートリッジ収容部と、各インクジェットヘッド21とはインク供給用チューブによってそれぞれ連結され、各インクカートリッジ収容部に収容されたインクは、各々連結された各インク供給用チューブによって、各チャンネルにインクが供給されるようになっている。すなわち、各々のインクカートリッジ収容部のインク供給口にインク供給用チューブが装着されている。インク供給用チューブは、ポリエチレン等からなる可撓性のチューブであり、インクジェットプリンタ1において、キャリッジ20の移動等に対応して屈曲や捩れが生じるような柔軟性を有する。
【0026】
このとき、上記8個のインクジェットヘッド21は、例えばシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のカラーインクと4つのホワイトインクのそれぞれに対応して設けられており、各インクを噴射するための、例えば128個のチャンネル(図示せず)をそれぞれ備えている。そして、各チャンネルには、各々個別に駆動される圧電アクチュエータ(図示せず)が設けられており、各チャンネルに対応してインクジェットヘッド21の底面に孔設された微細な噴射ノズル(図示せず)から下向きに、インクの液滴が噴射されるように制御される。
【0027】
一方、プラテン5は、筐体2の前後方向を長手方向とする、平面視が略長方形状の板体であり、その上面に、例えばTシャツなどの布帛からなる被記録媒体を水平に載置するためのものである。プラテン5の上面には、Tシャツ等の印刷面を緊張状態にして載置される。このとき、Tシャツ等の載置位置が印刷中にずれたりしないようにするため、滑り止め部材(図示せず)が設けられている。また、プラテン支持台7に支持されたトレー4は、プラテン5の上面と略平行な底面を有し、平面視において、その外周がプラテン5より一回り大きめに構成されている。このトレー4は、利用者がTシャツ等をプラテン5に載置する際に、Tシャツの袖などを受けて筐体2の底面には落ちないように保護するためのものである。そして、プラテン支持台を移動させるために設けられたプラテン駆動機構6の後端部には、プラテン駆動モータM(送り機構)が設けられる。なお、プラテン駆動機構6とプラテン駆動モータMとが送り機構に相当する。このプラテン駆動モータM及びプラテン駆動機構6の駆動によって、プラテン支持台7がレール3に沿って筐体2の前後方向に移動する。
【0028】
すなわち、プラテン駆動モータMの駆動軸と、レール3の前端部(筐体2の前面側にあたるレール3の端部)付近に設けられたプーリーとの間に駆動ベルトが架け渡されており、その駆動ベルトに固定されたプラテン支持台が、プラテン駆動モータMの駆動によってレール3に沿って筐体2の前後方向に往復移動される。なお、上記レール3の前端部付近における前端位置が、印刷(記録)開始前のプラテン5の待機位置(デフォルト位置)である。
【0029】
なお、図示しないが、レール3の前端部付近には、印刷実行時に筐体2の後面から前面方向へ移動されるプラテン5が、移動方向の終点にあることを検出するためのフォトセンサが設けられている。このフォトセンサは発光部と受光部とを備え、発光部から出射された光を受光部で受光したか否かに基づき被検出体の検出をおこなう。そして、プラテン支持台の下面には、このフォトセンサの発光部と受光部との間を遮ってフォトセンサによるプラテン5の位置の検出を行うための図示しない遮蔽板が突設されている。プラテン駆動モータMはステッピングモータであり、これらフォトセンサの発光部と受光部との間に、図示しない遮蔽板が位置することによって検出されるプラテン5の位置を基準とし、プラテン駆動モータ7の駆動制御に基づくプラテン5の位置検出が行われるように構成されている。これにより、印刷実行の準備段階としてのプラテン5の搬送動作を行う印刷準備時には、デフォルト位置に待機するプラテン5は、レール3の後端部付近の後端位置まで搬送される。その後の実際に印刷を実行するためのプラテン5の搬送動作を行う印刷実行時には、この後端位置を始点として前端位置へ向けて移動制御される。
【0030】
そして、本実施形態のインクジェットプリンタ1においては、ガイド部材9よりも前方の位置に、筐体2の左右にわたってクリアランスセンサ機構8(検出手段)が設けられている。クリアランスセンサ機構8は、印刷を開始するより前に事前にプラテン5がレール3に沿って上記前端位置から後端位置へ移動する際に、プラテン5に載置された布帛等の皺やゴミなどの障害物を検出する。
【0031】
<クリアランスセンサの概略>
上記クリアランスセンサ機構8の構成を、図5〜図7を用いて説明する。図5及び図6に示すように、クリアランスセンサ機構8に設けられる軸部材81が、前述した筐体2の横フレーム部材200に固定された支持部82と、前述した筐体2の右側フレーム部材183の右側連結部材183cに固定された取付板部材300(詳細は後述)とに軸支されて、その軸線のまわりを回動可能に設けられている。このとき、軸部材81は、プラテン5が搬送される位置の上方に、プラテン5の搬送される方向(前後方向)と直交する方向(左右方向)に設けられており、プラテン5の表面に対して平行になっている。また、軸部材81は、ガイド部材9と並行して、平面視において、キャリッジ20が走査するためのガイド部材9の前方向に設けられている。
【0032】
ここで、印刷時のプラテン5の搬送動作について説明する。なお、「印刷時」は、印刷実行の準備段階としてのプラテン5の搬送動作を行う「印刷準備」時と、実際に印刷を実行するためのプラテン5の搬送動作を行う「印刷実行」時とを含んでいる。プラテン5はレール3に沿って筐体2の前後方向に搬送される。前述の前端位置が上記印刷準備を行う前及び上記印刷実行後にプラテン5が待機させられるデフォルト位置にあたる。そして、印刷準備時には、デフォルト位置に待機されるプラテン5が、前述の後端位置へ向けてレール3に沿って搬送される。そして、プラテン5が後端位置に至ると、印刷実行時にはプラテン5の搬送方向を反転して、後端位置から前端位置へ向けて、レール3に沿ってプラテン5が搬送される。その過程で、プラテン5がインクジェットヘッド21が走査される印刷実行位置(記録位置)に至ると、インクジェットヘッド21により布帛に対して印刷が実行される。インクジェットヘッド21による印刷が終了すると、布帛が載せられたプラテン5はさらに前端位置であるデフォルト位置に搬送されて、印刷実行時の動作を終了する。なお、以下では、レール3の前端部、前端位置への方向を搬送方向の上流とし、レール3の後端部、後端位置への方向を搬送方向の下流として、説明をする。
【0033】
また、軸部材81には、当該軸部材81から突出するように板状部材84が形成されている。板状部材84は軸部材81の軸線方向を長手とする略長方形の形状をなしている。この板状部材84がキャリッジ20の走査位置からみてプラテン5の搬送方向の上流に、かつ、プラテン5の上方に接近して設けられる。詳細には、図7(上記図4も参照)に示すように、プラテン5が板状部材84の直下を搬送される際、板状部材84の下端部とプラテン5の上面とが所定間隔(例えば数mm)離間した位置で、軸部材81から板状部材84が垂下される。よって、軸部材81から垂下された板状部材84の下端部は、上下方向において、インクジェットヘッド21のノズル面とプラテン5の上面の間に存在する。なお、板状部材84の軸線方向への長さは、プラテン5の左右方向の幅よりも若干広くなっている。
【0034】
このように、軸部材81から垂下される板状部材84は、その直下を搬送されるプラテン5に載置された布帛に皺やゴミ等の障害物(接触部位)が存在する場合は、板状部材84の下端部にその障害物が接触する。そして、布帛の上記障害物が板状部材84に接触すると、板状部材84は軸部材81の軸線のまわりを、プラテン5が搬送される動力により自然回動するように構成されている。
【0035】
<センサ部による検出>
このとき、軸部材81の右端部には隠蔽部材85が設けられており、上記軸部材81の回動に伴うこの隠蔽部材85の回動をセンサ部88が検出することにより、上記障害物の検出が行われる。以下、この隠蔽部材85に対するセンサ部88の検出挙動について、図8及び図9により説明する。
【0036】
図8及び図9に示すように、クリアランスセンサ機構8は、右側フレーム部材183に設けられた取付板部材300(請求項に記載の共通の取付板に相当する。図5及び図6も参照)を有している。そして、隠蔽部材85は、取付板部材300に設けられたフォトセンサであるセンサ部88を隠蔽する。センサ部88には凹陥部が設けられており、この凹陥部の内部の側面間でセンサ光が伝搬されている。センサ部88の凹陥部は下方向に開口するように設けられており、隠蔽部材85が、この凹陥部に非接触に嵌め込まれる遊嵌状態となっている。そして、この凹陥部の内部の側面間で伝搬されるセンサ光が、隠蔽部材85によって遮断されることによって、センサ部88は隠蔽部材85を検出することができる。
【0037】
<隠蔽部材の形状>
そして、本実施形態の特徴の1つとして、隠蔽部材85が、図8、図9、及び図10に示すように、略鉤型形状に構成されている。すなわち、隠蔽部材85は、軸部材81に接続される鉤型の根元部分に相当する基端部85aと、径方向内側部分に上記センサ部88による被検出領域を備えた、鉤型先端の円弧部分に相当する略円弧部85cと、センサ部88の設置空間を周方向に迂回しつつ基端部85aと略円弧部85cとを接続する、鉤型中間のアーム部分に相当する接続部85bとから構成されている。そして、基端部85aよりも径方向外側には、当該基端部85aと接続部85bと略円弧部85cとによって形成された凹部85dが形成され、この凹部85dに上記センサ部88が設置される。このように、本実施形態では、略鉤型形状の隠蔽部材85の内側にセンサ部88が配置され、当該センサ部88の径方向外側の上記被検出領域が検出される。
【0038】
取付板部材300は、図6のように、上端に位置し略水平方向に右側まで延設された上板部300aと、上板部300aの左側部分から下方へ向けて立設された立板部300dと、立板部300dから上記右側に折曲されるように形成された中板部300bと、当該中板部300bの下方側において上記立板部300d右側に折曲されるように形成された下板部300cと、から構成されている(図8、図9参照)。そして、センサ部88は、上記中板部300bの下面に取り付けられることで、隠蔽部材85の凹部85dに当該センサ部88の凹陥部が対向配置される。ここで、上記取付板部材300は、隠蔽部材85の略円弧部85cよりも径方向外側に離間した位置では、折れ曲がって上記左右方向に沿って隠蔽部材85よりさらに外方まで延設されている(特に図6参照)。
【0039】
<ソレノイド>
また、取付板部材300の上記水平方向に延びる上板部300aの下方には、ソレノイド87(駆動手段)が設けられている。ソレノイド87は、コイルに電流が流れる際に発生する磁気作用を利用して、電気的エネルギーを機械的直線運動に変換させて、突起部分である可動部材87aを上下方向へ移動させるものである。可動部材87aにはバネ87bが巻かれており、このバネ87bの作用によって、ソレノイド87の非動作時には、図9のように、可動部材87aが上方に伸ばされた状態に保持される。
【0040】
また、可動部材87aには、ソレノイド87の駆動力をクリアランスセンス機構8の板状部材84に伝達するためのクランク状のレバー187(伝達手段)の中間部187aが揺動自在に枢着されている。また、レバー187の後端部187bが上記取付板部材300の立板部300dに対して回動可能に支持され、レバー187の前端側にはL字状の被係合部187cが形成されている。そして、隠蔽部材85の接続部85bは、レバー187からの駆動力を入力可能に当該レバー187の被係合部187cと係合するブラケット部85e(係合部)を備えている。ブラケット85eは接続部85bから右方に折り曲げて形成されている。このブラケット部85eがレバー187に下から引っ掛けられ持ち上げられることで、隠蔽部材85が回動する。
【0041】
すなわち、障害物を検出するときに、ソレノイド87が動作すると、可動部材87aが下方向へ吸引されて当該可動部材87aの突出した部分が短くなる。これにより、板状部材84及び隠蔽部材85が図8及び図9における時計回り(第2方向)へ回動し、板状部材84は、軸部材81から垂下される。
【0042】
一方、障害物を検出しないときには、上記吸引動作を行わず可動部材87aを開放する。すると、バネ87bの作用によって、可動部材87aは上方向に伸ばされた状態に戻される(図9参照)。これにより、レバー187の被係合部187cはブラケット部85eに下から引っ掛けられ持ち上げられることで、隠蔽部材85は反時計回り(第1方向)へ回動し、板状部材84は、筐体2の背面方向(後方向)に傾斜する。
【0043】
なお、ブラケット部85eから前方へ折り曲げて形成された取付部85gには、引張りバネであるコイルバネ400(付勢手段)の一端(上端)が接続されている。なお、接続部85bと、接続部85bから右方に折り曲げて形成されたブラケット部85eと、ブラケット部85eから前方に折り曲げて形成された取付部85gは、図10に示すように、断面コ字状に形成されているこのコイルバネ400の他端(下端)は、取付板部材300の上記下板部300cに接続されており、隠蔽部材85および板状部材84を時計回り(第2方向)へ回動するような付勢力を与えている。さらに、取付板部材300の下板部300cには、ブラケット部85eと当接して隠蔽部材85の回動範囲を規制するストッパー部材401が設けられている。この例では、ストッパー部材401はボルトにより構成されており、下板部300cの下方からねじ込まれるとともに、上方に突き出された先端の平面部をブラケット部85eに当接させることで、隠蔽部材85の回転範囲の終点を決定する。
【0044】
<軸部材の支持構造>
次に、本実施形態のもう1つの特徴である、クリアランスセンサ機構8の軸部材1の支持構造について、上記図1〜図6を用いて説明する。すなわち、クリアランスセンサ機構8においては、前述の皺やゴミ等の障害物の検出の際に軸部材81が当該障害物の接触により回動しやすいように、上記軸部材81は、比較的細い径のものが使用される場合が多い。このため、もし仮に、軸部材81を筐体2の左側端部から右側端部まで(すなわち筐体2の幅方向全域にわたって)延設した場合、軸部材81にたわみが生じるおそれがある。そこで本実施形態では、上記した図1〜図6に示したように、左側フレーム部材182及び右側フレーム部材183の上部手前側に、それら左側フレーム部材182及び右側フレーム部材183を接続するように、横フレーム部材200(水平方向フレーム部材)を設けている。そして、その横フレーム部材200のうち、プラテン5の左側端部近傍に対応する位置に上記支持部82が設けられ、この支持部82が上記軸部材81の左端部を回転自在に支持する左側軸受282(一方側軸受手段)を備えている。言い換えれば、左側軸受282は、横フレーム部材200を介して左側フレーム部材182に設けられている。さらに、右側フレーム部材183の右側連結部材183cに設けられ、前述のようにセンサ部88が取り付けられた上記取付板部材300が、上記軸部材81の右端部を回転自在に支持する右側軸受283(他方側軸受手段)を備えている。これにより、これら左側軸受282及び右側軸受283は、互いに所定距離(この例ではプラテン5の左右方向寸法より大きく、筐体2全体の左右方向寸法より小さい距離)だけ離間して配置されている。
【0045】
なお、上記横フレーム部材200は図7に示すように断面形状が略L字形に形成されている。そして、上記キャリッジ20がガイド部材9に沿って往復移動するときに、当該キャリッジ20の前端部にそれぞれ設けた一対のローラ201a,201b(図3及び図5参照)が走行する、案内レールとしての機能を兼ねるようになっている。このとき、左側軸受282、右側軸受283、及び軸部材81は、案内レールとしての上記横フレーム部材200の下面よりも、下方となる高さ方向位置に配置されている。すなわち、横フレーム部材200の下面は、上記した取付板部材300よりも上側に配置されている。
【0046】
なお、本実施形態においては、左側軸受282は、横フレーム部材200を介して筐体2の左側フレーム部材182に設けられており、プラテン5の比較的近くに設置されている。一方、右側軸受283は、右側フレーム部材183のうち筐体2の右端部近くに位置する上記取付板部材300に取り付けられており、プラテン5よりも比較的遠い位置となっている。そこで、軸部材81の軸線上におけるプラテン5と右側軸受283との間に、別の軸受(中間軸受)をさらに付加することで、軸部材81のたわみをより一層抑制するようにしてもよい。
【0047】
<インクジェットプリンタの電気的構成>
次に、インクジェットプリンタ1の電気的な構成について説明する。上記のような構成のインクジェットプリンタ1には、各部の電気的な制御を実行する制御部(図示せず)が設けられている。この制御部には、インクジェットプリンタ1全体の制御を司るCPUが設けられ、CPUには、バスを介して、CPUが実行する各種の制御プログラム等を記憶したROMと、データを一時的に記憶するRAMと、が接続されている。また、CPUには、インクジェットヘッド21の各チャンネルに設けられた上記圧電アクチュエータを駆動させるためのヘッド駆動部と、キャリッジモータ24やプラテン駆動モータ7を駆動させるためのモータ駆動部とが、バスを介して接続されている。さらに、モータ駆動部には、上記ソレノイド87が接続されて、ソレノイド87の動作を制御する。また、入力検知部には、図示しない操作パネルやフォトセンサが接続されている。また、入力検知部には、クリアランスセンサ機構8に備えられた上記センサ部88が接続されて、センサ部88の凹陥部で伝搬されるセンサ光によって隠蔽部材85が検出される。なお、上記CPUが、各請求項記載の送り機構制御手段として機能する。
【0048】
<インクジェットプリンタの動作>
次に、上記構成の本実施形態のインクジェットプリンタ1の動作について説明する。上記操作パネルから印刷開始が指示されると、上記モータ駆動部の制御によりソレノイド87の可動部材87aが吸引動作されて、可動部材87aの突出した部分が短くなる。この結果、隠蔽部材85が図8に示す状態に保持され、凹部85dがセンサ部88の凹陥部の内部に遊嵌され、センサ光をほぼ遮断しない状態(非隠蔽状態)となる。センサ部88は、この隠蔽部材85の非隠蔽状態に対応する信号を上記CPUに出力する(隠蔽部材85の非検出状態)。また、板状部材84は、軸部材81から垂直方向に垂下した状態で保持される。
【0049】
そして、布帛であるTシャツが載せられたプラテン5は、上記前端位置にあたる上記デフォルト位置から筐体2の後端位置に向けて搬送される。前述のようにプラテン5が印刷準備時の搬送方向の前端位置側から後端位置へと搬送される。その際、インクジェットヘッド21が走査される印刷実行位置に至る手前には、プラテン5の上方に、上記板状部材84が軸部材81から垂下されている。そして、搬送されるプラテン5が板状部材84の直下に至ると、板状部材84の下端部とプラテン5の表面との間で隙間が形成されて、布帛はこの隙間を通過して、さらにインクジェットヘッド21が走査される印刷実行位置の直下も通過して、後端位置まで搬送される。
【0050】
<障害物存在時の動作>
次に、上記のようにプラテン5に載せられた布帛にゴミや皺などの障害物が存在した場合の動作挙動について説明する。
【0051】
プラテン5に載せられた布帛には特有の皺が生じ、この皺の高さが上述した板状部材84の下端部とプラテン5の表面と隙間よりも大きい場合がある。このような場合、上記のようにして後端位置へと搬送される布帛のうち上記皺の生じている箇所が板状部材84の直下に至ると、板状部材84と皺とが接触する。ここで、軸部材81は軸線方向のまわりを回動可能であるため、板状部材84と皺との接触により、板状部材84はプラテン5が搬送される方向への動力に従って自然回動する。その結果、板状部材84は、筐体2を右側面からみると(図8及び図9参照)、軸部材81の軸線のまわりを反時計回りに回動する。すなわち、板状部材84は、筐体2の背面方向(後方向)に傾斜する。
【0052】
一方、この軸部材81の回動に伴って、前述の図8に示す状態に保持されていた隠蔽部材85も反時計回りに回動し、隠蔽部材85が後方向へ傾斜する(例えば図9のような傾斜状態となる)。これにより、隠蔽部材85の凹部85dは、センサ部88の凹陥部から外れ上記センサ光が隠蔽部材85の隠蔽部85fによって遮断されるようになる。この隠蔽部85fは円弧部85cから上方の径方向内側に突出するように形成されている。(図10参照)センサ部88は、この隠蔽部材85の隠蔽状態に対応する信号を上記CPUに出力する(隠蔽部材85の検出状態)。
【0053】
このようにしてセンサ部88が隠蔽部材85を検出した場合は、上記CPUがプラテン駆動モータMを制御することにより、プラテン5が搬送方向とは反対方向へ搬送されて、前端位置である印刷開始前のデフォルト位置へ戻される(なお、隠蔽部材85の検出時に単にプラテン搬送が停止されるようにしてもよい)。
【0054】
このようにして、クリアランスセンサ機構8により、布帛上のゴミや皺などを確実に検出することができる。また、クリアランスセンサ機構8が布帛上のゴミや皺などを検出した場合には、プラテン5が印刷準備時の搬送方向とは反対方向へ搬送される(又は搬送が停止される)。これにより、布帛上のゴミや皺などがインクジェットヘッド21のノズル面と接触することを防止できると、布帛に対する円滑かつ高品質な印刷を行うことができる。
【0055】
<障害物非存在時の動作>
次に、プラテン5に載せられた布帛にゴミや皺などの障害物が存在せず、通常の印刷動作が実行される場合の動作挙動について説明する。
【0056】
上記と異なり、布帛にゴミや皺などの障害物が存在しない場合は、布帛が板状部材84の直下を通過する際に板状部材84との接触が発生しない。この結果、布帛を載せたプラテン5はインクジェットヘッド21が走査される印刷実行位置の直下を通過して、後端位置まで搬送される。後端位置に到達すると搬送方向を反転して、プラテン5は前端位置へ向けて搬送される。
【0057】
そして、布帛を載せたプラテン5が、インクジェットヘッド21が移動するときの印刷実行位置(記録位置)に到達する。ソレノイド87による前述の可動部材87aの吸引動作が中断されて、可動部材87aが開放される。その結果、可動部材87aが上方向に伸ばされた状態に戻され、図9に示すように、ブラケット部85eはレバー187の被係合部187cに下から引っ掛けられ持ち上げられる。これにより、隠蔽部材85は、上記第1方向へ回動して図8の状態から図9の状態となり、板状部材84が前述のように筐体2の背面方向(後方向)に傾斜する。この結果、板状部材84の下端部はより高い位置に保持されて、板状部材84とプラテン5の上面との高さの差が大きくなり、搬送されるプラテン5が板状部材84の直下を通過する際に、プラテン5に載せられた印刷を終えたTシャツが板状部材84と接触することを防止する。この状態で、プラテン5が後端位置から前端位置へ向けて搬送されるとともに、インクジェットヘッド21の走査によって印刷が実行される。さらに、印刷実行後はプラテン5が前端位置に位置するデフォルト位置へ搬送されて、印刷動作を終了する。
【0058】
以上説明したように、本実施形態では、左側フレーム部材182及び右側フレーム部材183に(適宜横フレーム部材200を介し)設けた左側軸受282及び右側軸受283により、軸部材81の両端部を支持している。これにより、プラテン5の左右方向寸法よりは大きく筐体2全体の左右方向寸法よりは小さい距離だけ離間した支持構造を実現している。これにより、軸部材81の左右方向に沿った長さを、筐体2の直交方向寸法よりも大きく低減し、プラテン5の直交方向寸法より若干大きい程度とすることができる。したがって、比較的細い径の軸部材81が用いられる場合であっても、当該軸部材81のたわみの発生を抑制することができる。この結果、板状部材84とプラテン5との間の距離を略一定に保持できるので、布帛の障害物を高精度に検出することができる。
【0059】
また、本実施形態においては特に、横フレーム部材200が、キャリッジ20が往復移動するときの案内レールを兼ねている。これにより、横フレーム部材200が左側フレーム部材182と右側フレーム部材183とを連結する強度部材として機能し、部品点数を減らせるとともに、これら左側フレーム部材182と右側フレーム部材183との連結体全体の剛性を向上することができる。この結果、それら連結体に両端部を支持される軸部材81に取り付けられた板状部材84とプラテン5との間の距離の変動が抑制されるので、これによっても布帛の上記障害物を高精度に検出することができる。
【0060】
また、本実施形態においては特に、左側軸受282、右側軸受283、及び軸部材81は、案内レールである横フレーム部材200の下面よりも下方となる高さ方向位置に配置されている。これにより、軸部材81の高さ方向位置が案内レールの高さ方向位置と同等の場合に比べ、軸部材81を配置するために必要となる水平方向スペースを小さくすることができる。この結果、筐体2及びインクジェットプリンタ1全体の小型化を図ることができる。
【0061】
また、本実施形態においては特に、右側軸受283を取り付ける部材と、センサ部88を取り付ける部材とを、1つの共通の取付板部材300で兼ねている。これにより、部品点数を少なくし、省スペース化を図ることができる。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0063】
例えば、上記実施形態においては、左側軸受282が横フレーム部材200を介して左側フレーム部材182に設けられ、右側軸受283が右側フレーム部材183に設けられていたが、これに限られない。すなわち、右側軸受283が横フレーム部材200を介して右側フレーム部材183に設けられ、左側軸受282が左側フレーム部材182に設けられる構成でもよい。あるいは、左側軸受282及び右側軸受283がいずれも横フレーム部材200を介して左側フレーム部材182及び右側フレーム部材183にそれぞれ設けられる構成でもよい。その際、センサ部88や隠蔽部材85等の構成を軸部材81の右側ではなく左側に設け、左側軸受282を、上記取付板部材300に相当する部材(センサ部88が設けられる部材)に設けるようにしてもよい。
【0064】
また、上記実施の形態におけるインクジェットプリンタ1は、印刷準備時には、デフォルト位置に待機されるプラテン5が、レール3の後端部へ向けて搬送される。その後、印刷実行時には、プラテン5の搬送方向を反転して、レール3の後端部から前端部へ向けてプラテン5が搬送される。その過程で、プラテン5がインクジェットヘッド21の走査する印刷実行位置に至ると、インクジェットヘッド21により布帛に対して印刷が実行される印刷方式を用いている。しかしながら、これに限られない。すなわち、プラテン5がデフォルト位置からレール3の後端部へ搬送される過程で、プラテン5がインクジェットヘッド21の走査する印刷実行位置に至ると、布帛に対して記録が実行される印刷方式のインクジェット記録装置についても、本発明を適用できる。
【0065】
また、本発明は、布帛が載置されたプラテンが搬送されつつ記録が実行されるインクジェット記録装置であれば適用でき、上記実施の形態のように、記録ヘッドを走査させて1文字ずつ、もしくは1ドットずつ印刷していくシリアルプリンタに限定されず、例えば、固定された記録ヘッドによって1行ずつ印刷していくラインプリンタなどにも適用できる。
【0066】
また、インクジェット記録装置を構成する各機構の制御は様々な態様が可能である。上記実施の形態では、インクジェットヘッド21が印刷を開始した場合、ソレノイド87による可動部材87aの吸引動作が中断されているが、少なくとも記録実行後の布帛が載せられたプラテン5が板状部材84の直下に搬送されるまでに、ソレノイド87が動作して板状部材84を退避させることができればよい。そのため、例えば、印刷準備時に搬送されるプラテン5が板状部材84の直下を通過し終えた場合は、布帛からはゴミや皺などの障害物を検出できなかったとみなすことができるから、インクジェットヘッド21による印刷が開始されていなくても、ソレノイド87が動作して板状部材84を退避させるように制御してもよい。なお、このような各機構の制御は、ROMに記憶された各種の制御プログラムによって実現されているため、利用者又は設計者はこれら制御プログラムの追加又は変更によって、任意の各機構の制御を実現できる。
【0067】
また、上記実施の形態では、クリアランスセンサ機構8を回動させるアクチュエータとして、ソレノイド87を用いているが、油圧モータや空気圧シリンダなどの他のアクチュエータを用いてもよい。
【0068】
また、上記実施の形態では、センサ部88をフォトセンサとし、隠蔽部材85でセンサ光をON/OFFして検出するとしているが、磁気センサやコンタクトセンサを用いて隠蔽部材85の位置を検出しON/OFFを判断してもよい。
【0069】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0070】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0071】
1 インクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)
2 筐体
5 プラテン(載置台、載置手段)
6 プラテン駆動機構(送り機構)
8 クリアランスセンサ機構(検出手段)
20 キャリッジ(搬送手段)
21 インクジェットヘッド(記録手段)
81 軸部材
84 板状部材
85 隠蔽部材
85a 基端部
85b 接続部
85c 略円弧部
85d 凹部
87 ソレノイド(駆動手段)
88 センサ部
182 左側フレーム部材(一方側フレーム部材)
183 右側フレーム部材(他方側フレーム部材)
187 レバー(伝達手段)
200 横フレーム部材(水平方向フレーム部材、案内レール)
282 左側軸受(一方側軸受手段)
283 右側軸受(他方側軸受手段)
300 取付板部材(共通の取付板)
400 コイルバネ(付勢手段)
401 ストッパー部材
M プラテン駆動モータ(送り機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体にインクを噴射して記録を行うノズル面を備える記録手段と、
前記ノズル面に対向して配置され、前記被記録媒体を前記ノズル面と間隔をあけて載置する載置台と、
記録開始前の載置台の待機位置から記録手段による被記録媒体への記録を実行する記録位置へ前記載置台を搬送する送り機構と、
前記載置台から前記送り機構の送り方向に直交する直交方向の一方側に立設された一方側フレーム部材、前記載置台から前記直交方向の他方側に設けられた他方側フレーム部材、及び、前記一方側フレーム部材と前記他方側フレーム部材とを連結しつつ前記直交方向に沿って配置される水平方向フレーム部材、を備えた筐体と、
前記待機位置と前記記録位置との間で、前記載置台に対向可能に設けられ、前記載置台に支持された前記被記録媒体の前記ノズル面に接触する接触部位を、検出する検出手段と、
前記検出手段が前記接触部位を検出した場合、前記載置台の搬送を停止し、又は前記載置台を前記待機位置へ搬送するように前記送り機構を制御する送り機構制御手段と、
を有し、
前記検出手段は、
前記直交方向に沿って配置される軸部材と、
前記軸部材に固定され、前記被記録媒体の前記接触部位に当接可能な板状部材と、
前記接触部位の検出の有無を判別するために前記軸部材と一体に設けられ、前記載置台の搬送により前記接触部位が前記板状部材に接触したときに前記軸部材とともに回動する隠蔽部材と、
前記隠蔽部材を検出するためのセンサ部と、
を備えており、
前記軸部材の前記直交方向一方側の端部を支持する一方側軸受手段が、前記一方側フレーム部材に支持されるとともに、前記軸部材の前記直交方向他方側の端部を支持する他方側軸受手段が、前記他方側フレーム部材に支持されており、
前記一方側軸受手段及び前記他方側軸受手段の少なくとも一方は、前記水平方向フレーム部材を介して前記一方側フレーム部材又は前記他方側フレーム部材に設けられており、
前記一方側軸受手段と前記他方側軸受手段との間隔は、前記載置台の前記直交方向に沿った寸法より大きく前記筐体の前記直交方向に沿った寸法より小さな、所定の距離だけ当該直交方向に互いに離隔して配置されている
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1記載のインクジェット記録装置において、
前記記録手段を前記直交方向一方側及び他方側に往復移動させるための搬送手段を有し、
前記水平方向フレーム部材は、前記搬送手段が前記往復移動するときに当該搬送手段に備えられたローラが走行する案内レールを兼ねている、
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項2記載のインクジェット記録装置において、
前記一方側軸受手段、前記他方側軸受手段、及び前記軸部材は、
前記案内レールの下面よりも下方となる高さ方向位置に配置されている
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のインクジェット記録装置において、
前記一方側軸受手段又は前記他方側軸受手段が取り付けられると共に、前記センサ部が取り付けられる、共通の取付板を有し、
前記共通の取付板が、
前記一方側フレーム部材又は前記他方側フレーム部材に取り付けられている
ことを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−28444(P2013−28444A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166498(P2011−166498)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】