説明

インクセット、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置

【課題】普通紙に対して、減法混色法に適したカラーインク、すなわちシアン、マゼンタ、イエローのインクを用いてカラー画像を形成する際に、好適なインクセットの提供。
【解決手段】インクジェット用記録ヘッドから吐出される、色材を含有する水性インクを複数具備してなるインクセットであって、該複数の水性インクの表面張力が34mN/m以下であり、かつ該インクセットが少なくとも、シアン、マゼンタ、イエローの3色相の水性インクの組み合わせを有し、該3色相のうちの少なくとも2色相の水性インクの組み合わせが、同一色相でありながら、接触すると色材の凝集を生じる2つの水性インクで構成されていることを特徴とするインクセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用のインクセット、該インクセットを用いたインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録システムの普及に伴い、印字物の品位向上と堅牢性向上とが進められている。さらに、最近では、インク液滴が5pl以下のものが主流となり、また、デジタルカメラの写真画像やホームページなどの各種カラー情報を普通紙にしかも両面に印刷したいという要求が高まっている。そして、普通紙におけるカラー画像の品位を向上するためには、先ず、文字品位が高濃度で、かつシャープで滲みのないことが要求される。また、複数色の記録インクが接触することによって生ずる異色境界部分の滲み(ブリード(現象))やラインマーカーによる汚染を軽減することも重要である。
【0003】
これらの課題に対して、以下のような様々な方法が開示されている。例えば、特許文献1には、所定の色相について、浸透性の異なる2種類のインクを用い、このうち、該所定の色相とは異なるインクとの境界部分では、浸透性が高い方のインクを中心に用いて記録を行うことで、ブリードを軽減させる方法が開示されている。また、特許文献2には、少なくとも3色のインクを用いてカラー画像を形成する際、全てのインクの組み合わせにおいて、化学反応による凝集が起こるようにして、ブリードを軽減させる方法が開示されている。また、特許文献3には、ブラックインクとして、極性の異なる2種類のインクを用いることで、ブラックインクとして十分な画像濃度を有し、記録画像の耐水性と耐光性に優れ、カラー画像を形成する際もブリードが防止されるインクセットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−193529号公報
【特許文献2】特開2001−172536号公報
【特許文献3】特開2000−7964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、普通紙に対して、減法混色法に適したカラーインク、すなわちシアン、マゼンタ、イエローのインクを用いてカラー画像を形成する際に、好適なインクセット、インクジェット記録方法などに関するものである。そして、本発明が解決しようとする課題は、以下に集約される。
1)高速でインクが定着する。
2)画像の耐ラインマーカー性が良好である。
3)カラー間でブリードしない。
4)裏抜け及び耐擦過性に問題がなく、両面印刷できる。
5)カラーインクの単色と混色の両方において高濃度で鮮明な画像が得られる。
【0006】
これらの課題に対して、前述した従来の方法によれば、特定色間のブリードについては、ある程度、満足できるようになる。しかし、最近では、インクの打ち込み量が文字中心のデータよりも多い写真画像の記録も増えていることから、普通紙に対して、高速定着で、画像の高画質化を達成することが、より強く要望されている。そこで、上記に挙げた課題の全てを同時に十二分に満足できる記録方法が求められている。また、省エネルギーの観点から考えると、両面印刷適性も重要である。
【0007】
したがって、本発明の目的は、上記課題1)〜5)を全て満足するインクセット、該インクセットを用いたインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明の第1の発明は、インクジェット用記録ヘッドから吐出される、色材を含有する水性インクを複数具備してなるインクセットであって、該複数の水性インクの表面張力が34mN/m以下であり、かつ該インクセットが少なくとも、シアン、マゼンタ、イエローの3色相の水性インクの組み合わせを有し、該3色相のうちの少なくとも2色相の水性インクの組み合わせが、同一色相でありながら、接触すると色材の凝集を生じる2つの水性インクで構成されていることを特徴とするインクセットである。
【0009】
本発明の第2の発明は、インクジェット用記録ヘッドから複数の水性インクを吐出することにより記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法において、前記本発明のインクセットを用い、該インクセットを構成する同一色相でありながら、接触すると色材の凝集が生じる2つの水性インクを、記録媒体上で接触させて記録を行うことを特徴とするインクジェット記録方法である。
【0010】
また、本発明の第3の発明は、複数の水性インクをそれぞれに収容したインク収容部と、該複数の水性インクを吐出するためのインクジェット用記録ヘッドと、該インク収容部からインクジェット用記録ヘッドに水性インクを供給するためのインク供給部とを具備してなるインクジェット記録装置において、該複数の水性インクが、前記本発明のインクセットを構成する複数の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、普通紙に対して、減法混色法に適したカラーインク、すなわちシアン、マゼンタ、イエローのインクを用いてカラー画像を形成する際に、好適なインクセットが提供される。具体的には、高速でインクが定着し、画像の耐ラインマーカー性が良好であり、カラー間でブリードせず、裏抜け及び耐擦過性に問題がなく両面印刷ができ、カラーインクの単色と混色の両方において高濃度で鮮明な画像が得られるインクセットが提供される。また、本発明によれば、前記インクセットを用いた、上記の優れた画像の形成が可能なインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】インクジェット記録装置の記録ヘッド部の縦断面図である。
【図2】インクジェット記録装置の記録ヘッド部の横断面図である。
【図3】図1に示した記録ヘッドをマルチ化した記録ヘッドの外観斜視図である。
【図4】インクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。
【図5】インクカートリッジの縦断面図である。
【図6】記録ユニットの斜視図である。
【図7】本発明に使用する2つの記録ヘッドが配列した記録部を示す斜視図である。
【図8】記録ドットの形成方法の一例を示す説明図である。
【図9】本発明に使用する5つの記録ヘッドが配列した記録部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、好ましい実施の形態を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明にかかるインクセットは、色材を含有する水性インクを複数具備してなるものであり、かかる複数の水性インクの表面張力は34mN/m以下である。本発明においては、水性インクの表面張力は常法によって測定することができる。かかる表面張力の測定は、例えば、温度25℃、湿度50%の環境下で自動表面張力計(CBVP−Z型;協和界面科学製)を用いて、白金プレートを用いたプレート法により行うことができる。
【0014】
また、本発明にかかるインクセットは、必須のインクとして、色相が、シアン、マゼンタ、イエローの水性インク(単にインクという場合がある)の組み合わせを有する構成である。そして、シアン、マゼンタ、イエローの3色相のインクの組み合わせのうち、少なくとも2色相のインクの組み合わせが、同一色相でありながら、接触すると色材の凝集を生じる2つのインクで構成される。この条件を満たすことにより、前記した課題1)〜5)に対する効果が格段に増し、これらの課題全てを初めて満足に解決できるようになる。一方で、1色相のインクのみが、接触すると色材の凝集を生じる2つのインクのセットである場合には、前記した課題全てを同時に解決することができない。本発明のインクセットは、さらに、前記3色相のインクが全て、同一色相でありながら、接触すると色材の凝集が生じる2つのインクで構成されることが好ましい。
【0015】
また、本発明のインクセットは、さらに、必要に応じて、ブラックの色相のインクをさらに有していてもよく、該ブラックの色相のインクが、同一色相でありながら、接触すると色材の凝集を生じる2つのインクのセットで構成されていることが特に好ましい。この場合、黒文字が多用されている情報印刷に際してより好適となる。
【0016】
ここで、本発明でいう同一色相とは、以下のことを示す。先ず、各々のインクを、吐出量が4pl(ピコリットル)程度のインクジェット用記録ヘッドを用いて、普通紙上に吐出し、形成した1,200dpi(dot per inch)×1,200dpiのベタ画像を目視で観察する。次に、画像の色相を、マンセルの色票に基づくマンセル記号の10のカテゴリー(R、YR、Y、GY、G、BG、B、PB、P、RP)に分類する。そして、本発明においては、色相分類のイエローはYとGYが同一色相に属し、マゼンタはPとRPが同一色相に属し、シアンはBGとBとPBが同一色相に属しているとそれぞれ判定できる。また、本発明における、色相が同一で接触すると色材の凝集がする2つのインクのセットでは、凝集する事実が大切であり、凝集反応のメカニズムについては、特に制約されるものではない。
【0017】
前記凝集の発生するセットとなる第1のインクと第2のインクの組み合わせ例としては、以下の態様が挙げられる。勿論、これらの態様に限定されるものではない。
1)第1のインク中の色材の水溶性基(親水性基)と、第2のインク中の色材の水溶性基との極性が異なる態様。この態様においては、前記水溶性基が、色材分子中に共有結合により直接導入されていてもよいし、水不溶性色材を分散させるための分散剤に導入されていてもよい。
2)pHの変化により溶解度が大きく変化する色材を含むインクを使用する態様。例えば、酸性領域で不溶化する色材を含み、かつアルカリ性に調整した第1のインクと、酸性領域で安定に溶解する色材を含み、かつ酸性に調整した第2のインクとからなり、これらの混合液が酸性となるように調整したインクセットなどが挙げられる。
3)多価金属との反応により凝集する色材を含有する第1のインクと、多価金属塩及び多価金属に対して安定な色材を含有する第2のインクとを使用する態様。多価金属との反応により凝集する色材としては、例えば、水溶性基としてカルボキシル基を有している色材が挙げられる。
4)カチオン性ポリマーとの反応により凝集する色材を含有する第1のインクと、カチオン性ポリマー及びカチオン性ポリマーに対して安定な色材を含有する第2のインクとを使用する態様。
5)ソルベントショックを受けて凝集する色材を含有する第1のインクと、第1のインク中の色材を凝集させるソルベント及びソルベントショックに対して安定な色材を含有する第2のインクとを使用する態様。
【0018】
また、本発明でいう凝集とは、インクが接触した際に不溶物が生じることを指す。また、この不溶物は、目視にて判断できる場合が大半であるが、例えば、孔径1μm程度のフィルターでろ過した際に析出物があるか否かが確認できる程度の凝集物を指す。また、本発明において、前記した2つのインクの接触により生じる色材の凝集反応には、第1のインクと第2のインクの双方の色材が同時に凝集される場合と、どちらか一方のインクの色材が凝集される場合とがある。
【0019】
以下、本発明に用いるインクの構成成分について詳細に説明する。
(色材)
本発明において、凝集の主体となっているのは、インク中の色材である。色材の選定にあたっては、自らが凝集する色材と、自らは凝集しないが相手のインクの色材を凝集させる凝集剤と併用して用いるのに都合のよい色材とに分けられる。これらの色材は、状況に応じて使い分ける必要がある。本発明に用いるインク中に含まれる色材は、凝集に関与するものであれば、染料と顔料のどちらも使用できる。インク中への色材の添加量は、この範囲に限定されるものではないが、インク全質量に対して、0.1質量%以上15質量%以下の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは0.2質量%以上12質量%以下の範囲であり、より好ましくは0.3質量%以上10質量%以下の範囲である。
【0020】
また、前記2つのインクのセットが、色材濃度の異なる濃淡インクの組み合わせであり、第2のインクとして第1のインクの淡インクを使用する場合には、以下の関係を有することが好ましい。すなわち、第1のインク(濃インク)に対する第2のインク(淡インク)の、最大ピーク波長における吸光度比(淡インク/濃インク)が、1/10乃至1/2の範囲であることが好ましい。この場合、前記した課題1)〜5)を解決すること以外に、インクジェット専用紙を用いた際の、写真画像の粒状性の課題も同時に解決することができ、最高レベルの写真画像を得ることができる。一方で、この範囲から外れる場合は、画像濃度が低くなり過ぎるか、高くなり過ぎて粒状性低減の効果がないものとなる場合がある。なお、本発明において、濃インクとは、具体的には、インク中に含まれる色材の濃度が2.0質量%以上のインクのことであり、また、淡インクとは、具体的には、インク中に含まれる色材の濃度が2.0質量%未満のインクのことである。
【0021】
<染料>
本発明において、インクに用いられる染料としては、カラーインデックス(COLOR INDEX)に記載されている水溶性の酸性染料、直接染料、塩基性染料、反応染料のほとんど全てが使用できる。また、カラーインデックスに記載されていないものでも、水溶性染料であれば使用できる。
【0022】
本発明で使用する上記染料の具体例を以下に挙げる。例えば、アルカリ性領域で安定であり、酸性領域で凝集するものは、酸性染料、直接染料である。その中でも、イエローインクに使用される染料としては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー173、142、144、86、132及びC.I.アシッドイエロー23、17などが挙げられる。マゼンタインクに使用される染料としては、例えば、C.I.アシッドレッド92、289、35、37、52などが挙げられる。シアンインクに使用される染料としては、例えば、C.I.アシッドブルー9、7、103、1、90、C.I.ダイレクトブルー86、87、199などが挙げられる。ブラックインクに使用される染料としては、例えば、C.I.フードブラック2、C.I.ダイレクトブラック52、154、195などが挙げられる。
【0023】
一方、酸性領域で安定であり、アルカリ性領域で凝集するものは、塩基性染料である。その中でも、特に限定はされないが、好適なものとして、イエローインクに使用される染料としては、例えば、C.I.ベーシックイエロー21、28、40、51、67などが挙げられる。マゼンタインクに使用される染料としては、C.I.ベーシックレッド27、29、36、46、70などが挙げられる。シアンインクに使用される染料としては、C.I.ベーシックブルー41、54、69、75、129などが挙げられる。これらの染料は、採用する凝集メカニズムの違いにより適宜選択されるものである。
【0024】
また、さらにより好適なものとして、pHの変化により水に対する溶解度が大きく変化する染料が挙げられる。該染料は、例えば、米国特許第5,053,495号、5,203,912号、5,177,195号、5,281,263号、5,374,301号、5,279,656号、5,296,023号、5,423,906号に開示されている。これらの染料も凝集反応利用に好適に使用できる。上市されている染料としては、PRO−JET Fast Yellow 2 Liquid、PRO−JET Fast Magenta 2 Liquid、PRO−JET Fast Cyan 2 Liquid、PRO−JET Fast Black 2 Liquid(商品名、Avecia社製)も好適に使用できるものである。さらに、前記した反応染料としては、例えば、C.I.リアクティブイエロー95、C.I.リアクティブレッド226、C.I.リアクティブブルー15、C.I.リアクティブブラック5などが挙げられる。
【0025】
<顔料>
また、本発明においては、色材として顔料を用いる場合も良い効果をもたらす。
ブラックインクに使用される顔料としてはカーボンブラックが好適に使用される。例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。その中でも、一次粒子径が15nm以上40nm以下、BET法による比表面積が50m2/g以上300m2/g以下、DBP吸油量が40ml/100g以上150ml/100g以下、揮発分が0.5質量%以上10質量%以下の特性を持つものが好適である。
【0026】
カラーインクに使用される顔料としては、有機顔料が好適である。具体的には、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの水溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレットなどのペリレン系顔料、イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッドなどのイミダゾロン系顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系顔料、チオインジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレットなどの顔料が例示できる。
【0027】
また、有機顔料を、カラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、55、74、83、86、93、97、98、109、110、117、120、125、128、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、202、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26などが例示できる。本発明においては、上記のような顔料以外でも使用することができる。特に、これらの顔料の中でも、イエロー顔料としてC.I.ピグメントイエロー13、17、55、74、93、97、98、110、128、139、147、150、151、154、155、180、185、マゼンタ顔料としてC.I.ピグメントレッド122、202、209、シアン顔料としてC.I.ピグメントブルー15:3、15:4を用いることがさらに好ましい。これらの顔料は、通常法によって分散剤により分散されるものである。
【0028】
一方、顔料を分散剤で分散させるのではなく、顔料粒子の表面に、直接若しくは、他の原子団を介して水溶性基を化学的に結合させた自己分散型顔料も本発明に好適に使用できる。アニオン性の官能基(水溶性基)としては、例えば、以下に示したような親水性基を結合させたものが挙げられる。−COO(M2)、−SO3(M2)2、−PO3H(M2)、−PO3(M2)2(ただし、式中のM2は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。)
【0029】
上記親水性基中「M2」として表したもののうち、アルカリ金属の具体例としては、例えば、Li、Na、K、Rb及びCsなどが挙げられる。また、有機アンモニウムの具体例としては、例えば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、モノヒドロキシメチルアミン、ジヒドロキシメチルアミン、トリヒドロキシメチルアミンなどが挙げられる。
【0030】
上記顔料の製造方法の具体例としては、例えば、カーボンブラックを次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法などが挙げられる。この方法によれば、カーボンブラック表面に、親水性基であるカルボキシル基及びラクトン基を形成することができる。
【0031】
ところで、上記したような種々の親水性基は、顔料の表面に直接結合させてもよいし、或いは他の原子団を顔料表面と上記したような親水性基との間に介在させ、親水性基を顔料表面に間接的に結合させてもよい。ここで、他の原子団の具体例としては、例えば、炭素原子数1乃至12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、置換若しくは未置換のフェニレン基、置換若しくは未置換のナフチレン基が挙げられる。ここでフェニレン基及びナフチレン基の置換基としては、例えば、炭素数1乃至6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。また、他の原子団と親水性基の組み合わせの具体例としては、例えば、−C24−COO(M2)、−Ph−SO3(M2)2、−Ph−COO(M2)(ただし、式中のM2は前記と同義であり、また、Phはフェニル基を表す)などが挙げられる。
【0032】
また、水溶性基として、カチオン性のものを導入する場合は、例えば、フェニル基、ベンジル基、フェナシル基、ナフチル基などの少なくとも1つの芳香族基、又はピリジル基などの複素環基と、少なくとも1つのカチオン性基とからなっていることが好ましい。また、さらに好ましくは、カーボンブラックの表面に結合されているカチオン性基が、第4級アンモニウム基であることが好ましい。
【0033】
本発明において、インク中の色材として顔料を用いた場合の顔料の平均粒径は、50nm以上200nm以下の範囲であることが好ましい。平均粒径の測定方法としては、レーザ光の散乱を利用した、ELS−8000(大塚電子社製)、マイクロトラックUPA 150(日機装社製)などを使用して測定できる。
【0034】
(分散剤)
本発明において、顔料を分散剤で分散させる場合に用いる分散剤としては、水溶性のものであれば、特に制約はない。具体的には、以下の単量体から選ばれた少なくとも2つの単量体(このうち少なくとも1つは親水性単量体)からなるブロック共重合体或いはランダム共重合体、グラフト共重合体、又はこれらの塩などが挙げられる。単量体としては、スチレン及びその誘導体、ビニルナフタレン及びその誘導体、α、β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステルなど、アクリル酸及びその誘導体、マレイン酸及びその誘導体、イタコン酸及びその誘導体、フマール酸及びその誘導体、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体などが挙げられる。中でも、本発明を実施するうえで特に好ましい分散剤は、ブロック共重合体である。上記ブロック共重合体を本発明に用いることにより、特に熱エネルギーを用いた記録ヘッドにて、高い駆動周波数、例えば、10KHz以上で駆動させた場合に、インクの吐出性の向上効果がより好ましく得られる。また、分散剤として用いる共重合体の重量平均分子量は1,000以上30,000以下の範囲であることが好ましい。
【0035】
また、インク中における分散剤の含有量は、インク全質量に対して、0.5質量%以上10質量%以下の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは0.8質量%以上8質量%以下の範囲であり、より好ましくは、1質量%以上6質量%以下の範囲である。一方で、分散剤の含有量が、この範囲よりも高い場合には、所望のインク粘度を維持するのが困難となる場合がある。
【0036】
(水性媒体)
本発明に用いるインクは、水を必須成分とするが、インク中における水の含有量は、インク全質量に対して、30質量%以上であることが好ましく、また、95質量%以下であることが好ましい。また、水と水溶性溶剤が併用された水性媒体が使用される場合も多い。水と併用される水溶性溶剤としては、従来よりインクジェット用インクに用いられてきたものが挙げられる。中でも、エチレングリコール、ポリエチレングリコール(平均分子量200以上1,000以下)、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、エチレン尿素、トリメチロールプロパン、ジグリセリンを用いることが好ましい。また、本発明に用いるインクにおいて、水と併用される水溶性溶剤の種類や含有量は特に限定されない。例えば、インク中における水溶性溶剤の含有量は、インク全質量に対して、3質量%以上であることが好ましく、また、60質量%以下であることが好ましい。
【0037】
(凝集剤)
本発明を構成する、前記第1のインク或いは第2のインクに含有され、これらの2つのインクを接触した場合に、相手方のインクの色材を凝集させる凝集剤は、色材の凝集メカニズムに基づいて個別に設定されるものであり、限定されるべき性質のものではない。例えば、多価金属塩、酸、アルカリ、pH調整剤、カチオン性ポリマーなどが凝集剤として有効である場合が多い。
【0038】
先ず、多価金属塩について述べると、多価金属塩は、アニオン性の官能基を有する色材を凝集させる場合に有効であり、特にカルボキシル基を有する色材を凝集させる場合に有効である。具体的には、例えば、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸、酢酸やヒドロキシカルボン酸などの有機酸、或いは、ポリオールリン酸エステルなどの、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、鉄(II)塩、銅(II)塩、亜鉛塩、アルミニウム塩などが挙げられる。これらの中でも好ましいのは、硝酸、硫酸又は酢酸の、マグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩又はアルミニウム塩である。
【0039】
また、pH変化によって不溶化して凝集する色材に対しては、インクの接触時に色材が不溶化するpH領域となるように相手方のインクにpH調整剤を導入することが有効である。pH調整剤としては、具体的には、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化アンモニウムなどの水酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム及び硫酸アンモニウムなどの硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムなどの炭酸塩、リン酸リチウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウムなどのリン酸塩、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム及び酢酸アンモニウムなどの酢酸塩、塩酸塩などが挙げられる。これらのpH調整剤は、第1のインク及び第2のインクのいずれにも使用でき、単独又は2種以上の併用も可能である。
【0040】
次に、色材中にアニオン性の官能基を有する色材に対しては、カチオン性ポリマーも凝集剤として有効である。具体的には、例えば、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアミンスルホン塩酸塩、ポリビニルアミン塩酸塩、キトサン酢酸塩などを挙げることができるが、勿論、これらに限定されるわけではない。また、塩酸塩型や酢酸塩型に限定されるわけではない。
【0041】
以上のような各種凝集剤のインク中における含有量は、インク全質量を基準として、0.01質量%以上10質量%以下の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1質量%以上5質量%以下の範囲である。
【0042】
(界面活性剤)
本発明に用いるインクにおいては、表面張力を34mN/m以下に調整することとバランスの良い吐出安定性を得るために、インク中に界面活性剤を含有させることが好ましい。その中でもノニオン系界面活性剤を含有させることが好適である。また、ノニオン性界面活性剤の中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物が特に好ましい。これらのノニオン性界面活性剤のHLB値(Hydrophile−Lipophile Balance)は、10以上であることが好ましい。こうして併用される界面活性剤の含有量は、インク全質量に対して、0.6質量%以上5質量%以下の範囲であることが好ましい。さらには好ましくは0.7質量%以上4質量%以下の範囲であり、より好ましくは0.8質量%以上3質量%以下の範囲である。
【0043】
(その他の添加剤)
また、本発明に用いるインクには、所望の物性値を有するインクとするために、上記した成分の他に必要に応じて、添加剤として、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、浸透剤などを添加することができる。
【0044】
(インクジェット記録方法)
次に、本発明のインクセットを用いるインクジェット記録方法について説明する。
本発明のインクジェット記録方法では、少なくとも、シアン、マゼンタ、イエローの3色相の水性インクの組み合わせを用いる。さらに該3色相の水性インクの組み合わせのうちの少なくとも2色相の水性インクの組み合わせについては、同一色相でありながら、接触すると色材の凝集が生じる2つのインクを用いる。そして、本発明のインクジェット記録方法は、該2つのインクを、記録ヘッドからそれぞれ個別に吐出させ、記録媒体上で接触させて記録できる方法であればよく、これらのインクを凝集させる場合、いずれのインクを先に記録媒体上に付与してもよい。ただし、定着性や耐ブリード性をより向上させる目的で、少なくともどちらか一方のインクに含まれる色材として顔料を使用することがより好ましく、また、表面張力を前述したように34mN/m以下にする。また、記録にあたってのインクセットの構成は、例えば、最もインクの色相数が少なくなる、シアン、マゼンタ、イエローの3色相のインクでの記録の場合、最低5つのインクからなる。
【0045】
同一色相のインクは、基本的には、各々独立して電気信号に応じて、個別のノズル列より飛翔し、同一のマトリックスを記録することが可能である。したがって、同一色相の2つのインクによる記録に際してのインクの付与比率は、特に制限はないが、好ましくは、第1のインク:第2のインク=1:9乃至9:1の範囲であることが好ましい。さらには2:8乃至8:2の範囲で使用して画像を形成することが好ましい。上記範囲外であると、前記した2つのインクによる色材の凝集効果が不十分となり、所望の効果が得られない場合がある。
【0046】
また、前記した第1のインク及び第2のインクのインクを記録媒体上で共存させる方法として、記録媒体上の記録ドットの同一個所に両者のインクを付着させることでもよいし、隣接ドットに交互に両者のインクを付与してもよい。ただし、両者のインクが記録媒体上で接触する必要がある。また、第2のインクに先立って第1のインクを付与する場合、第1のインクを記録媒体に付与してから、第2のインクを付着させるまでの時間は、特に制限はないが、本発明をより一層効果的に実施するためには、数秒以内、特には3秒以内であることが好ましい。
【0047】
(インクジェット記録装置)
次に、本発明で用いられるインクジェット記録装置について説明する。本発明のインクセットを用いて記録を行うのに好適なインクジェット記録装置としては、記録ヘッドの室内のインクに記録信号に対応した熱エネルギーを与え、該熱エネルギーによりインク滴を発生させるインクジェット記録装置が挙げられる。
【0048】
前記インクジェット記録装置の主要部である記録ヘッドの構成例を図1、図2及び図3に示す。記録ヘッド13はインクを通す溝14を有するガラス、セラミック又はプラスチック板などと、感熱記録に用いられる発熱抵抗体を有する発熱ヘッド15(図ではヘッドが示されているが、これに限定されるものではない)とを接着して得られる。発熱ヘッド15は、酸化シリコンなどで形成される保護膜16、アルミニウム電極17−1及び17−2、ニクロムなどで形成される発熱抵抗体層18、蓄熱層19、アルミナなどの放熱性の良い基板20より構成されている。インク21は、吐出オリフィス(微細孔)22まできており、不図示の圧力によりメニスカス23を形成している。今、電極17−1、17−2に電気信号が加わると、発熱ヘッド15のnで示される領域が急激に発熱し、ここに接しているインク21に気泡が発生する。そして、その圧力でメニスカス23が突出し、インク21が吐出し、吐出オリフィス22より記録液滴24となり、記録媒体25に向かって飛翔する。
【0049】
図3には、図1に示したノズルを多数並べたマルチノズルヘッドの外観図を示す。該マルチノズルヘッドは、マルチ溝26を有するガラス板27と、図1に説明したものと同じような発熱ヘッド28を密着して製作される。なお、図1は、インク流路に沿った記録ヘッド13の断面図であり、図2は図1のA−B線での切断面である。記録ユニットに組み込まれる場合は、マルチノズルヘッドが多層構造となり、本発明の場合は、最低でも5列のマルチノズル列が必要である。
【0050】
図4に、上記ヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の1例を示す。図4において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持されて固定端となり、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は、記録ヘッドによる記録領域に隣接した位置に配設される。
【0051】
また、本例の場合、記録ヘッドの移動経路中に突出した形態で保持される。62は記録ヘッド65の吐出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配設され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を具備する。さらに、63はブレード61に隣接して配設されるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッドの移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62、インク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体63によってインク吐出口面の水分、塵埃などの除去が行われる。
【0052】
65は吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッドであり、66は、この記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66は、ガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモータ68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これにより、キャリッジ66は、ガイド軸67に沿って移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。
【0053】
51は記録媒体を挿入するための給紙部であり、52は不図示のモータにより駆動される紙送りローラである。これらの構成によって記録ヘッド65の吐出口面と対向する位置へ記録媒体が給紙され、記録が進行するにつれて排紙ローラ53を配した排紙部へ排紙される。
【0054】
上記の構成において、記録ヘッド65が記録終了などでホームポジションに戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。この結果、記録ヘッド65の吐出口面がワイピングされる。なお、キャップ62が記録ヘッド65の吐出口面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。
【0055】
記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は、上記したワイピング時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても、記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。
【0056】
上記の記録ヘッド65のホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッド65が記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【0057】
図5は、記録ヘッドにインク供給部、例えば、チューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジ45の一例を示す図である。ここで、40は供給用インクを収容したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端には、ゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクを記録ヘッドに供給可能ならしめる。44は廃インクを受容するインク吸収体である。インク収容部としては、インクとにおける接液面が、ポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが本発明にとって好ましい。
【0058】
本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、上記の如き記録ヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、図6に示す如きそれらが一体となったものにも好適に用いられる。図6において、70は記録ユニットであって、この中には複数のインクを収容したインク収容部(インク吸収体が一部又は全域にわたって収納されている)がある。インク収容部は、各色インクを個別に独立して交換可能な構成となってもよい。かかるインク収容部より複数のマルチノズル列を有する記録ヘッド部71からインク別に個別にインク滴として吐出される構成になっている。本発明の場合、最低でも5つのインクのインク列が必要であり、本図の構成のユニットで吐出インク列が不足の場合は、本図構成の記録ユニットを複数使用して記録ユニットとして使用することもできる。インク吸収体の材料としては、ポリウレタン、セルロース、ポリビニルアセテート又はポリオレフィン系樹脂を用いることが本発明にとって好ましい。
【0059】
72は、記録ユニット内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は、図4で示す記録ヘッドに代えて用いられるものであって、キャリッジ66に対し着脱自在になっている。
【0060】
なお、本発明に使用するインクジェット記録装置として、上記ではインクに熱エネルギーを作用させてインク液滴を吐出するインクジェット記録装置を例に挙げた。しかし、本発明は、その他にも、圧電素子を使用するピエゾ方式などその他のインクジェット記録装置でも同様に利用できる。
【0061】
また、本発明のインクジェット記録方法を実施する場合には、例えば、図3の記録ヘッドを2つキャリッジ66上に並べたヘッドセットを搭載した記録装置を使用することができる。図7はそのヘッドセットの一例である。81、82は、同一色相でありながら混合すると色材の凝集が生じるインクを個別に搭載した記録ヘッドである。これらの記録ヘッドは、前記した記録装置に配置されており、インクは記録信号に応じて吐出される。
【0062】
また、別の実施態様の記録ユニットでは、例えば、図3の記録ヘッドを5つキャリッジ66上に並べた記録装置を使用する。図9は、本発明の最も簡略な構成の一例である。81は、イエローのインク、82は、マゼンタの第1のインク、83は、マゼンタの第2のインク、84は、シアンの第1のインク、85は、シアンの第2のインクが搭載された記録ヘッドである。上記の各色相の第1のインクと第2のインクは混合することにより凝集するものである。これらの記録ヘッドは、前記した記録装置に配置されており、インクは記録信号に応じて、吐出される。
【実施例】
【0063】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の記載で「部」及び「%」とあるものは、特に断りのない限り質量基準である。先ず、実施例及び比較例のインクセットを構成するインクに含まれる顔料、さらには顔料分散体の製造方法について説明する。
【0064】
(顔料及び顔料分散体の製造)
<自己分散型カチオン顔料1の製造>
30gの水に、H3+64+(CH33Cl-・I-を3.08g溶解した溶液中に、硝酸銀1.69gを撹拌しながら加えた。発生した沈殿物をろ過により除去し、得られたろ液を、水70gに、比表面積が230m2/gであり、DBPAが70m1/100gであるカーボンブラック10gが分散している懸濁液に撹拌しながら加えた。次に、2.25gの濃塩酸を加えた後、水10gに0.83gの亜硝酸ナトリウムを溶解した溶液を加えたところ、NN+64+(CH33基を有するジアゾニウム塩がカーボンブラックと反応して、窒素ガスが発生した。この窒素ガスの泡が止まった後、その分散液を120℃のオーブンで乾燥させた。この結果、カーボンブラックの表面にC64+(CH33基が付いた自己分散型カチオン顔料1が得られた。なお、DBPA(Di−Butyl phthalate Adsorption)とは、ジブチルフタレートを用いた吸油量の測定により得られる値である。
【0065】
<自己分散型アニオン顔料分散体1の製造>
水5.3gに濃塩酸5gを溶かした溶液に、5℃においてアントラニル酸1.58gを加えた。この溶液を、アイスバスで撹拌することにより常に10℃以下に保ち、5℃の水8.7gに亜硝酸ナトリウム1.78gを加えた溶液を加えた。さらに、15分撹拌した後、比表面積が320m2/gであり、DBPAが120m1/100gであるカーボンブラック20gを混合した状態のまま加えた。その後、さらに15分撹拌した。得られたスラリーを東洋濾紙No.2(アドバンテック社製)で濾過し、顔料粒子を充分に水洗し、110℃のオープンで乾燥させた後、この顔料に水を足して顔料濃度10%の顔料水溶液を調製した。以上の方法により、表面に、フェニル基を介して親水性基(カルボキシル基)が結合した自己分散型アニオン顔料分散体1を得た。
【0066】
<樹脂分散型アニオン顔料分散体1の製造>
先ず、ベンジルメタクリレート、メタクリル酸及びエトキシエチレングリコールメタクリレートを原料として、アニオンリビング重合法により、酸価350mgKOH/g、重量平均分子量7,500のABC型ブロックポリマーを合成した。さらに、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50%ポリマー水溶液を作成した。上記のポリマー溶液を100g、C.I.ピグメントレッド122を100g及びイオン交換水300gを混合し、そして機械的に0.5時間撹拌した。次いで、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を液体圧力約10,000psi(約70MPa)下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。さらに、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去してマゼンタ色の樹脂分散型アニオン顔料分散体1を得た。なお、得られた樹脂分散型アニオン顔料分散体1は、顔料濃度が10%であり、分散剤濃度が6%であった。
【0067】
<樹脂分散型アニオン顔料分散体2の製造>
前記樹脂分散型アニオン顔料分散体1の製造において、C.I.ピグメントレッド122の代わりにC.I.ピグメントブルー15:3を用いた以外は同様な操作を行いシアン色の樹脂分散型アニオン顔料分散体2を得た。なお、得られた樹脂分散型アニオン顔料分散体2は、顔料濃度が10%であり、分散剤濃度が5.5%であった。
【0068】
(インクの調製)
次に、本発明の実施例及び比較例に用いるインクの調製例について説明する。以下のインクの調製は、インクを構成する全成分(合計で100部)を混合した後、1時間攪拌し、染料インクの場合は孔径0.45μm、顔料インクの場合は孔径2.5μmのフィルターを用いて、ろ過することを基本として行った。なお、水はイオン交換水を用いた。表面張力は、いずれのインクも34mN/m以下となっている。
【0069】
<イエローインク1の調製>
以下の成分を用いてインクを調製した。pHは、水酸化ナトリウムにより8.5に調整した。
・C.I.ダイレクトイエロー86 2部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 10部
・イソプロパノール 2部
・アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH、川研ファインケミカル社製、
HLB「13」)。以下アセチレノールEHと記載する。) 1部
・水 残部
【0070】
<イエローインク2の調製>
酸性領域で水溶解性が急激に低下する下記のAvecia社製の染料(PRO−JET Fastシリーズ)を用いて、以下の構成のインクを調製した。pHは、以下の全構成成分を混合した後、水酸化リチウムによりpH9.0に調整した。
・Yellow 2 Liquid(商品名) 50部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 10部
・イソプロパノール 2部
・硫酸アンモニウム 0.5部
・アセチレノールEH 1部
・水 残部
【0071】
<イエローインク3の調製>
以下の成分を用いてインクを調製した。pHは、以下の全構成成分を混合した後、水酸化ナトリウムによりpH8に調整し、さらにクエン酸によりpH4.0に調整した。
・C.I.リアクティブイエロー95 2部
・ジエチレングリコール 20部
・イソプロパノール 2部
・アセチレノールEH 1部
・水 残部
【0072】
<マゼンタインク1の調製>
前記で得た樹脂分散型アニオン顔料分散体1を用いて、以下の成分により、顔料濃度2.5%、分散剤濃度1.5%のインクを調製した。pHは、以下の全構成成分を混合した後、水酸化カリウムによりpH8.5に調整した。
・樹脂分散型アニオン顔料分散体1 25部
・グリセリン 10部
・エチレン尿素 2部
・2−ピロリドン 3部
・1,2,6−ヘキサントリオール 5部
・ポリオキシエチレンセチルエーテル
(エチレンオキサイド付加数20、HLB17) 0.1部
・アセチレノールEH 1部
・水 残部
【0073】
<マゼンタインク2の調製>
以下の成分を用いてインクを調製した。pHは、酢酸により4.5に調整した。
・C.I.ベーシックレッド36 2.5部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 10部
・イソプロパノール 2部
・ポリアリルアミン(平均分子量1,300) 2部
・塩化ベンザルコニウム 0.3部
・アセチレノールEH 1部
・水 残部
【0074】
<マゼンタインク3の調製>
以下の成分を用いてインクを調製した。pHは、水酸化ナトリウムにより8.5に調整した。
・C.I.アシッドレッド52 3部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 10部
・イソプロパノール 2部
・アセチレノールEH 1部
・水 残部
【0075】
<マゼンタインク4の調製>
酸性領域で水溶解性が急激に低下する下記のAvecia社製の染料(PRO−JET Fastシリーズ)を用いて、以下の構成のインクを調製した。pHは、以下の全構成成分を混合した後、水酸化リチウムによりpH9.0に調整した。
・Magenta 2 Liquid(商品名) 50部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 10部
・イソプロパノール 2部
・アセチレノールEH 1部
・水 残部
【0076】
<マゼンタインク5の調製>
以下の成分を用いてマゼンタ淡インクを調製した。pHは、以下の全構成成分を混合した後、水酸化ナトリウムによりpH8に調整し、さらにクエン酸を添加することによりpH4.0に調整した。
・C.I.リアクティブレッド226 0.5部
・ジエチレングリコール 20部
・イソプロパノール 2部
・硫酸アンモニウム 0.5部
・アセチレノールEH 1部
・水 残部
【0077】
<マゼンタインク6の調製>
以下の成分を用いてマゼンタ淡インクを調製した。pHは、水酸化ナトリウムにより8.5に調整した。
・C.I.アシッドレッド52 0.5部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 10部
・イソプロパノール 2部
・アセチレノールEH 1部
・水 残部
【0078】
<シアンインク1の調製>
前記で得た樹脂分散型アニオン顔料分散体2を用いて、以下の成分により、顔料濃度2.5%、分散剤濃度1.375%のインクを調製した。pHは、以下の全構成成分を混合した後、水酸化カリウムによりpH8.5に調整した。
・樹脂分散型アニオン顔料分散体2 25部
・グリセリン 10部
・エチレン尿素 2部
・2−ピロリドン 3部
・1,2,6−ヘキサントリオール 5部
・ポリオキシエチレンセチルエーテル
(エチレンオキサイド付加数20、HLB17) 0.1部
・アセチレノールEH 1部
・水 残部
【0079】
<シアンインク2の調製>
以下の成分を用いてインクを調製した。pHは、水酸化ナトリウムにより8.5に調整した。
・C.I.ダイレクトブルー86 3部
・グリセリン 5部
・ジエチレングリコール 10部
・1,2,6ヘキサントリオール 5部
・イソプロパノール 2部
・硝酸マグネシウム 2部
・アセチレノールEH 1部
・水 残部
【0080】
<シアンインク3の調製>
以下の成分を用いてインクを調製した。pHは、水酸化ナトリウムにより8.5に調整した。
・C.I.ダイレクトブルー86 3部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 10部
・イソプロパノール 2部
・アセチレノールEH 1部
・水 残部
【0081】
<シアンインク4の調製>
酸性領域で水溶解性が急激に低下する下記のAvecia社製の染料(PRO−JET Fastシリーズ)を用いて、以下の構成のインクを調製した。pHは、以下の全構成成分を混合した後、水酸化リチウムによりpH9.0に調整した。
・Cyan 2 Liquid(商品名) 40部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 10部
・イソプロパノール 2部
・硫酸アンモニウム 0.5部
・アセチレノールEH 1部
・水 残部
【0082】
<シアンインク5の調製>
下の成分を用いてシアン淡インクを調製した。pHは、以下の全構成成分を混合した後、水酸化ナトリウムによりpH8に調整し、さらにクエン酸を添加することによりpH4.0に調整した。
・C.I.リアクティブブルー15 0.5部
・ジエチレングリコール 20部
・イソプロパノール 2部
・アセチレノールEH 1部
・水 残部
【0083】
<シアンインク6の調製>
以下の成分を用いてシアン淡インクを調製した。pHは、水酸化ナトリウムにより8.5に調整した。
・C.I.ダイレクトブルー86 0.5部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 10部
・イソプロパノール 2部
・アセチレノールEH 1部
・水 残部
【0084】
<ブラックインク1の調製>
前記で得た自己分散型アニオン顔料分散体1を用いて、以下の構成のインクを調製した。pHは、以下の全構成成分を混合した後、水酸化リチウムによりpH8.5に調整した。
・自己分散型アニオン顔料分散体1 30部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 10部
・イソプロパノール 2部
・アセチレノールEH 1部
・水 残部
【0085】
<ブラックインク2の調製>
前記で得た自己分散型カチオン顔料1を用いて、以下の構成のインクを調製した。pHは、以下の全構成成分を混合した後、酢酸によりpH5に調整した。
・自己分散型カチオン顔料1 3部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 10部
・イソプロパノール 2部
・アセチレノールEH 1部
・水 残部
【0086】
<ブラックインク3の調製>
酸性領域で水溶解性が急激に低下する下記のAvecia社製の染料(PRO−JET Fastシリーズ)を用いて、以下の構成のインクを調製した。pHは、以下の全構成成分を混合した後、水酸化リチウムによりpH9.0に調整した。
・Black 2 Liquid(商品名) 60部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 10部
・イソプロパノール 2部
・硫酸アンモニウム 0.5部
・アセチレノールEH 1部
・水 残部
【0087】
<ブラックインク4の調製>
以下の成分を用いてインクを調製した。pHは、以下の全構成成分を混合した後、水酸化ナトリウムによりpH8に調整し、さらにクエン酸を添加することによりpH4.0に調整した。
・C.I.リアクティブブラック5 3部
・ジエチレングリコール 20部
・イソプロパノール 2部
・アセチレノールEH 1部
・水 残部
【0088】
以上、調製したインクを、同一色相のインク間で混合し、色材の凝集発生の有無について確認した。得られた結果を表1〜4に示した。
【0089】

【0090】

【0091】

【0092】

【0093】
(実施例1〜4及び比較例1〜3のインクセットの作成)
上記で調製した各色相の各インクを用いて、表5に示した組み合わせで実施例1〜4及び比較例1〜3のインクセットを作成した。
【0094】

【0095】
(評価)
次に、前記で得た各実施例及び比較例のインクセットを用いて、市販コピー用紙(キヤノン社製 PBペーパー、ゼロックス社製 4024ペーパー)及びボンド紙(ploverBond)にそれぞれ記録を行った。使用したインクジェット記録装置は、1色当り256ノズルの印字列を6列有する記録ヘッドを2個搭載したBJ−W9000(商品名:キヤノン社製、インクジェットプリンター)である。そして、各記録ヘッドで3乃至4列のノズル列を使用して、第1の記録ヘッドには第1のインクを、第2の記録ヘッドには第2のインクをそれぞれ搭載して記録を行った。BJ−W9000(商品名:キヤノン社製、インクジェットプリンター)の駆動周波数は、5kHzとした。記録画像を形成する方法としては、2つの記録ヘッドを用いて、同一色相のインクをベタ部、合計100%デューティ(duty)となるように、一方の記録ヘッドで50%dutyを記録して、もう一方の記録ヘッドで残りの50%dutyを記録した。記録ドットの形成方法は、図8に例を示したように、隣接ドットに交互に第1のインクと第2のインクを付与する記録とした。
【0096】
実施例1〜4及び比較例1〜3のインクセットを用いて得た記録物の裏抜け性、耐ラインマーカー性、耐ブリード性の評価を行い、その評価結果を表7に示した。なお、記録物の評価は、以下の方法により行った。
【0097】
<裏抜け性>
各色相インクのベタ印字部の裏抜け性を以下の評価基準にて評価した。
〇:いずれの印字部も裏抜けが認められない。
△:一部の印字部でわずかに裏抜けが認められる。
×:複数の印字部で明らかな裏抜けが認められる。
【0098】
<耐ラインマーカー性>
各色相インクの印字部を、印字後30秒後に、通常の筆圧でパイロット社製のイエロー蛍光ペン、スポットライター(商品名)を用いて1度マークした。そして、マークした部分を目視で観察し、以下の評価基準にて耐ラインマーカー性を評価した。
〇:印字物に滲みや白地部分の汚れが認められず、ペン先も汚れていない。
△:印字物に白地部分の汚れが認められないが、ペン先がやや汚れている。
×:印字物に白地部分の汚れが認められる。
【0099】
<耐ブリード性>
各色相インクのベタ部に対して、印字直後に、全ての組み合わせについて隣接して他色相のベタ部をさらに印字して、その境界部の様子を目視で観察し、以下の評価基準にて耐ブリード性を評価した。
○:全ての境界部でのブリーディングが許容範囲である。
△:色相の組み合わせによっては境界部においてわずかにブリーディングが認められる。
×:複数の色相の組み合わせでブリーディングが認められる。
【0100】
<実施例5及び比較例4>
実施例5及び比較例4は、シアンとマゼンタの第2インクに淡インクを用いた例である。これらのインクセットの構成を表6に示す。また、実施例5及び比較例4のシアンインクにおいては、第1のインク(濃インク)に対する第2のインク(淡インク)の、最大ピーク波長における吸光度比が0.2であった。また、実施例5及び比較例4のマゼンタインクにおいては、第1のインク(濃インク)に対する第2のインク(淡インク)の、最大ピーク波長における吸光度比が0.2であった。また、実施例5及び比較例4の評価に使用した記録装置や記録方法は、実施例1の場合の条件に準じたが、記録密度のみ、同一色相のインクのベタ部を形成するに際し、第1のインクと第2のインクのデューティ(duty)が合計130%となるようにした。なお、一方の記録ヘッドで第1のインクを100%dutyで記録して、もう一方の記録ヘッドで第2のインクを30%dutyで記録した。得られた評価結果を表7に示した。
【0101】

【0102】

【0103】
なお、実施例1〜5のインクセットを用いて得た前記記録物について、発色性を目視で確認したところ、各色相インクの印字部全てにおいて、発色性が良好であり、鮮明な画像が形成されていることが確認された。すなわち、実施例1〜5のインクセットを用いて得た記録物は、高速でインクが定着し、発色性に優れ、ブリードもしにくく、耐ラインマーカー性、裏抜け性も良好であることから、両面印刷適性に優れているといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット用記録ヘッドから吐出される、色材を含有する水性インクを複数具備してなるインクセットであって、該複数の水性インクの表面張力が34mN/m以下であり、かつ該インクセットが少なくとも、シアン、マゼンタ、イエローの3色相の水性インクの組み合わせを有し、該3色相のうちの少なくとも2色相の水性インクの組み合わせが、同一色相でありながら、接触すると色材の凝集を生じる2つの水性インクで構成されていることを特徴とするインクセット。
【請求項2】
前記3色相の水性インクの組み合わせのいずれもが、同一色相でありながら、接触すると色材の凝集を生じる2つの水性インクで構成されている請求項1に記載のインクセット。
【請求項3】
ブラックの色相のインクをさらに有し、該ブラックの色相のインクが、同一色相でありながら、接触すると色材の凝集を生じる2つの水性インクで構成されている請求項1又は2に記載のインクセット。
【請求項4】
前記同一色相でありながら、接触すると色材の凝集を生じる2つの水性インクのうち少なくとも一方の水性インクに含まれる色材が、顔料である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項5】
前記少なくとも2色相の水性インクの組み合わせの少なくとも一方が、色材濃度の異なる濃淡インクの組み合わせであり、濃インクに対する淡インクの、最大ピーク波長における吸光度比が、1/10乃至1/2の範囲である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項6】
インクジェット用記録ヘッドから複数の水性インクを吐出することにより記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法において、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクセットを用い、該インクセットを構成する同一色相でありながら、接触すると色材の凝集が生じる2つの水性インクを、記録媒体上で接触させて記録を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項7】
複数の水性インクをそれぞれに収容したインク収容部と、該複数の水性インクを吐出するためのインクジェット用記録ヘッドと、該インク収容部からインクジェット用記録ヘッドに水性インクを供給するためのインク供給部とを具備してなるインクジェット記録装置において、該複数の水性インクが、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクセットを構成する複数の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−270287(P2010−270287A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125838(P2009−125838)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】