説明

インクセット及び画像形成方法

【課題】耐擦性及び耐オフセット性に優れた画像の形成が可能なインクセットを提供する。
【解決手段】着色剤を含むインク組成物と、酸発生剤と凝集剤とを含む処理液と、を含むインクセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクセット及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー画像を記録する画像形成方法としては、近年、様々な方法が提案されているが、いずれにおいても画像の品質、風合い、記録後のカールなど、記録物の品位に対する要求は高い。
【0003】
例えば、インクジェット技術は、オフィスプリンタ、ホームプリンタ等の分野に適用されてきたが、近年では商業印刷分野での応用がなされつつある。商業印刷分野では、写真のような表面を有するものではなく、汎用の印刷紙に印刷された印刷物のような印刷の風合いを有する記録物が要求されている。一般にインクジェット記録専用の記録媒体は、溶媒吸収層が20〜30μmと厚いため、記録媒体の表面光沢、質感、こわさ(コシ)等が制限されてしまい、印刷物の風合いを有する記録物を得ることは難しく、さらに溶媒吸収層、耐水層を有することによりコスト高となってしまう。そのため、商業印刷分野でのインクジェット技術の適用は、記録媒体に対する表面光沢、質感、こわさ(コシ)等の制限が許容されるポスター、帳票印刷等に留まっている。
【0004】
一方、高画質な画像を形成するインクジェット記録方法として、通常のインクジェット用インクとは別に、画像を良好にするための液体組成物を用意し、この液体組成物をインクジェット用インクの吐出に先立って記録媒体上に付着して画像を記録する方法が、種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。これらの方法では、インクジェット用インクの定着成分によりインク中の成分を紙の表面で凝集させて、クスミや滲みが発生する前に定着する。
【0005】
また、インク溶媒の記録媒体への浸透を早める観点から、インク溶媒の記録媒体への浸透を早めるための浸透液に界面活性剤を含有させる技術や、画像部の耐擦性などの性能を向上するために、画像部にオーバーコート液を塗布する技術も知られている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−59933号公報
【特許文献2】特開2004−174834号公報
【特許文献3】特開2005−271590号公報
【特許文献4】特表2003−514999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜4に記載の技術においては、良好な画像品質が得られない場合があり、さらに画像部の耐擦性向上等のために定着ローラーを用いた定着処理を行なう場合には、記録媒体上の画像部が定着ローラーに転写してしまうオフセットが発生する場合があった。
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、耐擦性及び耐オフセット性に優れた画像の形成が可能なインクセット及び画像形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1>
着色剤を含むインク組成物と、酸発生剤と凝集剤とを含む処理液と、を含むインクセット。
<2>
前記インク組成物は、水溶性有機溶媒及び水を更に含む上記<1>に記載のインクセット。
<3>
前記酸発生剤は、光および熱の少なくとも一方により酸を発生する上記<1>又は<2>に記載のインクセット。
<4>
前記酸発生剤が、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、及びニトロベンジルスルホネートから選択される少なくとも1種である上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のインクセット。
<5>
前記凝集剤が、酸性物質および多価金属塩から選択される少なくとも1種である上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のインクセット。
<6>
前記酸発生剤が、下記一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)、及び一般式(IV)より選ばれる少なくとも1種である上記<4>又は<5>に記載のインクセット。
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(I)中、C(炭素原子)とC(炭素原子)間は単結合あるいは二重結合で結合され、R又はRは、同じでも異なってもよく、下記(1)〜(4)のいずれか1つを表す。
(1)それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基。
(2)C、Cとともに1つあるいは複数のヘテロ原子を含んでよい単環または多環を形成する基。
(3)CとCを含む縮合した芳香環を形成する基。
(4)N−スルフォニルオキシイミドを含む残基。
はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、置換基を有してよいアリール基、置換基を有してよいアラルキル基、又は樟脳基を表す。
一般式(II)中、R及びRは、置換基を有していてもよい炭素数1から16のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、ヘテロアリール基、シアノ基を表す。また、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数2から8のアルキレン鎖、アルケニレン鎖、アルキニリン鎖、または、置換基を有していてもよいフェニレン、フリーレン、チエニレン、−O−、−S−、−N−、−CO−を含む連結鎖を介して、別の一般式(II)で表される化合物のRまたはRと結合されていてもよい。
は置換基を有していてもよい炭素数1〜16のアルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
一般式(III)中、Zは、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、ハロゲン置換されたアルキル基、ハロゲン置換されたアリール基、ハロゲン置換されたアルキルアリール基、ニトロ置換されたアリール基、ニトロ置換されたアルキルアリール基、ニトロ置換基とハロゲン置換基を有するアリール基、ニトロ置換基とハロゲン置換基を有するアルキルアリール基、又は、式−CSOCHR’C4−m(NO)を有する基を表す。R’は水素原子、メチル基、又はニトロ置換されたアリール基を表す。mは0、1又は2を表し、mが1又は2のときの各Qはそれぞれ独立に炭化水素基、ヒドロカルボノキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子又は有機ケイ素基を表す。但し、Qは酸性の基ではない。また、Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアシル基を表す。
一般式(IV)中、R’およびR”はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐若しくは環状のアルキル基、または置換を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基を示す。)
<7>
前記酸性物質が、3価以下の酸性物質である上記<5>又は<6>に記載のインクセット。
<8>
前記酸性物質の濃度が、処理液の全質量中の40質量%以下である上記<5>〜<7>のいずれか1項に記載のインクセット。
<9>
前記多価金属塩が、2価金属塩及び3価金属塩から選択される少なくとも1種の多価金属塩である上記<5>〜<7>のいずれか1項に記載のインクセット。
<10>
前記インク組成物が、樹脂粒子を更に含む上記<1>〜<9>のいずれか1項に記載のインクセット。
<11>
上記<1>〜<10>のいずれか1項に記載のインクセットを用いて、処理液を記録媒体上へ付与する処理液付与工程と、インク組成物を記録媒体上に付与するインク付与工程とを有する画像形成方法。
<12>
前記記録媒体が塗工紙である上記<11>に記載の画像形成方法。
<13>
記録媒体上に、前記処理液付与工程により処理液を付与した後、前記インク付与工程によりインク組成物を付与する上記<11>又は上記<12>に記載の画像形成方法。
<14>
前記インク付与工程は、前記インク組成物をインクジェット法により吐出して画像を形成する上記<11>〜<13>のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐擦性及び耐オフセット性に優れた画像の形成が可能なインクセット及び画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<インクセット>
本発明のインクセットは、着色剤を含むインク組成物の少なくとも1種と、酸発生剤と凝集剤とを含む処理液の少なくとも1種を含む。
本発明のインクセットは、処理液が酸発生剤と凝集剤を共に含むことで、処理液とインク組成物との接触による凝集体の形成速度がより向上するためと、画像の品質が良好であると共に、画像の耐擦性、耐オフセット性が向上する。
本発明のインクセットはインクジェット方式の画像形成方法に用いるものであるが、一般の筆記具用、記録計用、ペンプロッター用等に使用することもできる。
【0013】
[処理液]
本発明における処理液は、インク組成物中の成分を凝集させる酸を発生する酸発生剤を少なくとも1種と、インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤と、を少なくとも1種を含有する。
【0014】
(酸発生剤)
酸発生剤は、酸を発生する化合物であれば特に限定されるものではないが、中でも、効率的な酸の発生の点から、光(光照射)及び熱の少なくとも一方により酸を発生する化合物あることが好ましい。
酸発生剤は1種単独で用いても2種以上を併用して用いることもできる。また、感度調整のために、酸発生剤と共に増感剤などを併用して用いることもできる。
【0015】
(a1)光酸発生剤
光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射(光照射)により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物や、キノンジアジド化合物、ジヒドロピリジン化合物等を適宜に選択して使用することができる。
【0016】
たとえば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。好ましい光酸発生剤としては、スルホン酸を発生する化合物であるイミドスルホネート、オキシムスルホネート、及びニトロベンジルスルホネートから選択される少なくとも1種である。これらの光酸発生剤を含有することにより、インク組成物中の成分を凝集させる酸を効率的に発生することができ、インク組成物中の成分が凝集して固定化された画像の品質が向上し、また、画像の耐擦性、及び耐オフセット性が向上する。
【0017】
また、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基、あるいは化合物を樹脂の主鎖又は側鎖に導入した化合物、たとえば、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。
【0018】
さらに米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0019】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の内で好ましい化合物として、下記一般式(ZI)、(ZII)、(ZIII)で表される化合物を挙げることができる。
【0020】
【化2】

【0021】
一般式(ZI)〜(ZIII)において、
201〜R207は、各々独立に有機基を表す。
201〜R207の有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
は、非求核性アニオンを表し、好ましくはスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン等の炭素原子を有する有機アニオン、BF4−、PF6−、SbF6−などが挙げられ、好ましくは炭素原子を有する有機アニオン(以下、有機アニオンという。)である。
【0022】
好ましい有機アニオンとしては、下記一般式に示す有機アニオンが挙げられる。
【0023】
【化3】

【0024】
上記一般式に於いて、Rcは、有機基を表す。
Rcにおける有機基として、炭素数1〜30のものが挙げられ、好ましくは置換していてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、またはこれらの複数が、単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SON(Rd)−などの連結基で連結された基を挙げることができる。
Rdは、水素原子又はアルキル基を表す。
Rc、Rc及びRcは、各々独立に、有機基を表す。
Rc、Rc及びRcの有機基としては、Rcにおける好ましい有機基と同じものを挙げることができ、好ましくは、炭素数1〜4のパーフロロアルキル基である。
RcとRcが結合して環を形成していてもよい。
RcとRcが結合して形成される基としてはアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基が挙げられる。好ましくは炭素数2〜4のパーフロロアルキレン基である。
Rc及びRc〜Rcの有機基として、好ましくは1位がフッ素原子またはフロロアルキル基で置換されたアルキル基、フッ素原子またはフロロアルキル基で置換されたフェニル基である。フッ素原子またはフロロアルキル基を有することにより、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。また、RcとRcが結合して環を形成するとき、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上し、好ましい。
【0025】
前記一般式(ZI)におけるR201〜R203の特定の置換基としては、トリアリールスルホニウム塩のアリール基の少なくとも一つが電子吸引性基を置換基として有することが好ましく、更に、アリール骨格に結合する置換基のハメット値の総和が0.18より大きいことが好ましい。
【0026】
ここで、電子吸引性基とは、ハメット値(Hammet置換基定数σ)が0より大きい置換基を意味する。本発明においては、高感度化の観点から、特定光酸発生剤中のアリール骨格に結合する置換基のハメット値の総和が0.18以上であることが好ましく、0.46より大きいことがより好ましく、0.60より大きいことが更に好ましい。
また、ハメット値は、トリアリールスルホニウム塩構造を有するカチオンの電子吸引性の程度を表すものであり、高感度化の観点からは特に上限値はないが、反応性と安定性との観点からは、0.46を超え4.0未満であることが好ましく、より好ましくは0.50を超え、3.5未満であり、特に好ましくは0.60を超え3.0未満の範囲である。
【0027】
なお、本発明におけるハメット値は、稲本直樹 編、化学セミナー10 ハメット則−構造と反応性−(1983年、丸善(株)発行)に記載の数値を用いている。
アリール骨格に導入する電子吸引性基としては、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、エステル基、スルホキシド基、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、カルボニル基等が挙げられる。これらの置換基のハメット値を以下に示す。トリフルオロメチル基(−CF、m:0.43、p:0.54)、ハロゲン原子〔例えば、−F(m:0.34、p:0.06)、−Cl(m:0.37、p:0.23)、−Br(m:0.39、p:0.23)、−I(m:0.35、p:0.18)〕、エステル基(例えば、−COCH、o:0.37、p:0.45)、スルホキシド基(例えば、−SOCH、m:0.52、p:0.45)、シアノ基(−CN、m:0.56、p:0.66)、アミド基(例えば、−NHCOCH、m:0.21、p:0.00)、カルボキシル基(−COOH、m:0.37、p:0.45)、カルボニル基(−CHO、m:0.36、p:(043))等が挙げられる。かっこ内は、その置換基のアリール骨格における導入位置と、そのハメット値を表し、(m:0.50)とは、当該置換基がメタ位に導入された時のハメット値が0.50であることを示す。
【0028】
これらの置換基のなかでも、疎水性の観点から、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基等の非イオン性の置換基が好ましく、なかでも、反応性の観点から−Clが好ましく、疎水性を与えるという観点からは、−F、−CF、−Cl、−Brが好ましい。
【0029】
これらの置換基は、トリアリールスルホニウム塩構造の3つのアリール骨格のいずれか一つに導入されていてもよく、2以上のアリール骨格に導入されていてもよい。また、3つのアリール骨格のそれぞれに導入される置換基は、1つでも複数でもよい。本発明においては、これらのアリール骨格に導入された置換基のハメット値の総和が0.18を超えるものが好ましく、0.46を越えるものがより好ましい。導入される置換基の数は、任意である。例えば、トリアリールスルホニウム塩構造のアリール骨格のうち1ヶ所に特にハメット値の大きい(例えば、ハメット値が単独で0.46を超える)置換基を1つだけ導入していてもよい。また、例えば、複数の置換基が導入されそれぞれのハメット値の合計が0.46を超えるものを導入してもよい。
【0030】
上記のように、置換基のハメット値は導入される位置によって異なるため、本発明に係る特定光酸発生剤におけるハメット値の総和は、置換基の種類、導入位置、導入数により確定されることになる。
なお、ハメット値は、通常、m位、p位で表されるが、本発明においては、電子吸引性の指標として、o位での置換基効果はp位と同値として計算する。好ましい置換位置としては、合成上の観点からm位、p位が好ましく、p位が最も好ましい。
本発明において好ましいのは、ハロゲン原子により3置換以上されているスルホニウム塩であり、最も好ましいのは、クロロ基により3置換されているスルホニウム塩であり、具体的には、3つのアリール骨格のそれぞれにハロゲン原子、最も好ましくは、−Clが導入されたトリアリールスルホニウム塩構造を有するものが好ましく、−Clがp位に置換されているものがより好ましい。
【0031】
本発明の組成物が含有するトリアリールスルホニウム塩が有するスルホン酸アニオンとしては、例えば、アリールスルホン酸アニオン、アルカンスルホン酸アニオンなどが挙げられ、フッ素原子又はフッ素原子を有する有機基で置換されているアニオンが好ましい。
【0032】
トリアリールスルホニウム塩構造を有する化合物は、例えば、J.Am.Chem.Soc.第112巻(16)、1990年;pp.6004−6015、J.Org.Chem.1988年;pp.5571−5573、WO02/081439A1パンフレット、或いは欧州特許(EP)第1113005号明細書等に記載の方法により容易に合成することが可能である。
【0033】
以下に具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
【化4】

【0035】
【化5】

【0036】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の内で好ましい化合物(光酸発生剤)としては、発生酸としてpKaが2以下と強い、スルホン酸や電子吸引基の置換したアルキル乃至はアリールカルボン酸、同じく電子吸引基の置換したジスルホニルイミドなどが好ましい。電子吸引基としてはF原子などのハロゲン原子、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基を挙げることができる。
光酸発生剤としては、例えばN−ヒドロキシイミドスルホネート化合物、オキシムスルホネート等を挙げることができる。
【0037】
−イミドスルホネート化合物−
光酸発生剤として好ましいイミドスルホネート化合物としては、以下の一般式の化合物を挙げることができる。
【0038】
【化6】

【0039】
一般式(I)中、C(炭素原子)とC(炭素原子)間は単結合あるいは二重結合で結合され、R又はRは、同じでも異なってもよく、下記(1)〜(4)のいずれか1つを表し、(1)それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、(2)C、Cとともに1つあるいは複数のヘテロ原子を含んでよい単環または多環を形成する基、(3)CとCを含む縮合した芳香環を形成する基、(4)N−スルフォニルオキシイミドを含む残基を表す。
はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、置換基を有してよいアリール基、置換基を有してよいアラルキル基、又は樟脳基を表す。
【0040】
一般式(I)における、RおよびRが(1)のケースに当たる場合、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等の炭素数3〜8のものがあげられる。アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基等の炭素数6〜14のものを挙げることができる。
また、RおよびRが(2)のケースに当たる場合、例えば以下の様な部分構造を挙げることができる。
【0041】
【化7】

【0042】
およびRが(3)のケースに当たる場合、例えば以下の様な部分構造をあげることができる。
【0043】
【化8】

【0044】
およびRが(4)のケースに当たる場合は、いわゆる少なくとも2つのN−スルフォニルオキシイミド残基が上記(1)〜(3)の部分構造を有するRおよびRの部分で単結合もしくは以下のような2価の有機基で結合したものをあげることができる。但し、下記連結基は単独であるいは2つ以上の組合せで使用される。
〔2価の有機基〕:−O−、−S−、−SO−、−SO−、−NH−、−CO−、−CO−、−NHSO−、−NHCO−、−NHCO−、
【0045】
のアルキル基としては炭素数1〜20個の直鎖あるいは分岐のアルキル基をあげることができる。好ましくは炭素数1〜16個の直鎖あるいは分岐のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜12個のものである。炭素数が21個以上のアルキル基の場合、感度、解像力が低下するため好ましくない。ハロゲン化アルキル基としては上記アルキル基の1つあるいは2つ以上の水素原子がハロゲン化されたものをあげることができる。置換するハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子をあげることができる。好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子であり、特に好ましくはフッ素原子である。但し、置換するハロゲン原子は一分子当たり複数の種類であってもよい。環状アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等の炭素数3〜12個のシクロアルキル基やノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデカニル基等の多環状置換基をあげることができる。アルケニル基としては炭素数1〜20個の直鎖あるいは分岐のアルケニル基をあげることができる。好ましくは炭素数1〜16個の直鎖あるいは分岐のアルケニル基であり、更に好ましくは炭素数1〜12個のものである。炭素数が21個以上のアルケニル基の場合、感度、解像力が低下するため好ましくない。
【0046】
のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基をあげることができ、アラルキル基としてはベンジル基をあげることができる。アリール基とアラルキル基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等の低級アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トルイル基、キシリル基、メシチル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の低級アルコキシ基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、ホルミル基、アセチル基等のアシル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子をあげることができる。好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等の低級アルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トルイル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の低級アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子である。なおアリール基、アラルキル基上の置換基は2種類以上であっても構わない。
以下にこれらの化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0047】
【化9】

【0048】
【化10】

【0049】
【化11】

【0050】
−オキシムスルホネート化合物−
光酸発生剤として好ましいオキシムスルホネート化合物としては以下の一般式(II)の化合物を挙げることができる。
【0051】
【化12】

【0052】
上記一般式(II)中、R及びRは、置換基を有していてもよい炭素数1から16のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、ヘテロアリール基、シアノ基を表す。また、R及びRは、置換基を有していてもよい炭素数2から8のアルキレン鎖、アルケニレン鎖、アルキニリン鎖、または、置換基を有していてもよいフェニレン、フリーレン、チエニレン、−O−、−S−、−N−、−CO−を含む連結鎖を介して、別の一般式(II)で表される化合物のRまたはRと結合されていてもよい。即ち、一般式(II)で表される化合物は、オキシムスルホネート構造が連結鎖を介して2つ又は3つ有するものも包含する。
は置換基を有していてもよい炭素数1〜16個のアルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
【0053】
〜Rにおける炭素数1〜16個のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、i−オクチル基、n−デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基等のアルキル基、トリフルオロメチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロ−t−ブチル基、ペルフルオロオクチル基、ペルフルオロウンデシル基、1,1−ビストリフルオロメチルエチル基、等が挙げられる。
【0054】
及びRにおけるアルケニル基としては、アリル基、メタリル基、ビニル基、メチルアリル基、1−ブテニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、1,3−ペンタジエニル基、5−ヘキセニル基、2−オキソ−3−ペンテニル基、デカペンタエニル基、7−オクテニル基等が挙げられる。
【0055】
及びRにおけるアルキニル基としては、エチニル基、プロパルギル基、2−ブチニル基、4−ヘキシニル基、2−オクチニル基、フェニルエチニル基、シクロヘキシルエチニル基等が挙げられる。
【0056】
〜Rにおけるシクロアルキル基としては、置換基を有していてもよい、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基のような炭素数3〜8個のものが挙げられる。
【0057】
及びRにおけるシクロアルケニル基としては、シクロブテニル基、シクロヘキセニル基、シクロペンタジエニル基、ビシクロ〔4.2.4〕ドデカ−3,7−ジエン−5−イル基等が挙げられる。
【0058】
〜Rにおけるアリール基としては、置換基を有していてもよい、フェニル基、トリル基、メトキシフェニル基、ナフチル基のような炭素数6〜14個のものが挙げられる。
【0059】
上記の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、沃素原子)、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ニトロ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アラルキル基、下記一般式(1A)で示される基等が挙げられる。
ここでアルキル基、シクロアルキル基は上記で挙げたものと同義である。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基のような炭素数1〜4個のものが挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、ナフチルメチル基、フリル基、チエニル基などが挙げられる。
【0060】
【化13】

【0061】
上記式(1A)中、R及びRは、前記一般式(II)中のR及びRと同義である。
【0062】
一般式(II)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
【化14】

【0064】
【化15】


より好ましいオキシムスルホネート化合物の具体例としては、下記(z66)〜(z70)が挙げられる。
【0065】
【化16】

【0066】
−ニトロベンジルスルホネート化合物−
ニトロベンジルスルホネート化合物としては一般式(III)で表される化合物を挙げることができる。
【0067】
【化17】

【0068】
(この式のZは、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、ハロゲン置換されたアルキル基、ハロゲン置換されたアリール基、ハロゲン置換されたアルキルアリール基、ニトロ置換されたアリール基、ニトロ置換されたアルキルアリール基、ニトロ置換基とハロゲン置換基を有するアリール基、ニトロ置換基とハロゲン置換基を有するアルキルアリール基、又は、式−CSOCHR’C4−m(NO)を有する基を表す。
R’は水素原子、メチル基、又はニトロ置換されたアリール基を表し、mは0、1又は2を表し、mが1又は2のときの各Qは炭化水素基、ヒドロカルボノキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子又は有機ケイ素基をそれぞれ独立に表し、但しQは酸性の基ではない。また、Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアシル基を表す。)
一般式(III)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物を挙げることができる。
【0069】
【化18】

【0070】
本発明における処理液において、光酸発生剤の配合量は、凝集剤の総量100質量部に対して、0.5〜30質量部が好ましく、2〜20質量部がより好ましい。酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
(a2)熱酸発生剤
本発明における酸発生剤としては、熱により酸が発生する熱酸発生剤が好ましく、通常、熱分解点が130℃〜250℃、好ましくは150℃〜220℃の範囲の化合物である。具体的には、例えば、加熱によりスルホン酸、カルボン酸、ジスルホニルイミドなどの低求核性の酸を発生する化合物が挙げられる。
発生酸としては、pKaが2以下と強いスルホン酸や電子吸引基の置換したアルキル乃至はアリールカルボン酸、同じく電子吸引基の置換したジスルホニルイミドなどが好ましい。電子吸引基としてはF原子などのハロゲン原子、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基を挙げることができる。
熱酸発生剤としては、上記露光により酸を発生する光酸発生剤の適用が可能である。例えばスルホニウム塩やヨードニウム塩等のオニウム塩、N−ヒドロキシイミドスルホネート化合物、オキシムスルホネート、o−ニトロベンジルスルホネート等を挙げることができる。中でもN−ヒドロキシイミドスルホネート化合物、オキシムスルホネート、o−ニトロベンジルスルホネートが好ましい。
【0072】
本発明においては、熱酸発生剤は熱によってスルホン酸を発生する化合物を使用することが好ましい。
【0073】
前記スルホン酸を発生する化合物としては、下記一般式(IV)で表されるスルホン酸エステルを好ましい。
【0074】
【化19】

【0075】
上記式において、R’およびR”はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐若しくは環状のアルキル基または置換を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基を示す。置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ビニル基、アセチレン基、炭素数1〜10の直鎖または環状のアルキル基が挙げられる。
スルホン酸エステルの好ましい具体例として下記が挙げられる。
【0076】
【化20】

【0077】
該スルホン酸エステルの分子量は、一般的には230〜1000、好ましくは230〜800である。
【0078】
該スルホン酸エステルとして、下記一般式(2)で表される化合物が、耐熱性の点で更に好ましく使用できる。
【0079】
【化21】

【0080】
Aは、h価の連結基を表す。
は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、または環状アルキル基を表す。
0’は、水素原子、アルキル基、またはアラルキル基を表す。
hは、2〜8の整数を表す。
【0081】
Aで表されるh価の連結基としては、例えば、アルキレン基(例えばメチレン、エチレン、プロピレン等)、シクロアルキレン基(シクロへキシレン、シクロペンチレン等)、アリーレン基(1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、ナフチレン等)、エーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、およびこれらに基を組み合わせた基などの2価の基の任意の水素原子をh−2個除いたh価の基が挙げられる。
Aは炭素数1〜15の連結基であり、炭素数1〜10の連結基であることが好ましく、炭素数1〜6の連結基であることがさらに好ましい。
およびR0’のアルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜15のアルキル基、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基である。具体的にはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル等を挙げることができる。
およびR0’のアラルキル基としては、炭素数7〜25のアラルキル基であり、好ましくは炭素数7〜20のアラルキル基、更に好ましくは炭素数7〜15のアラルキル基である。具体的にはベンジル、トルイルメチル、メシチルメチル、フェネチル等を挙げることができる。
の環状アルキル基としては、炭素数3〜20の環状アルキル基であり、
好ましくは炭素数4〜20の環状アルキル基、更に好ましくは炭素数5〜15の環状アルキル基である。具体的にはシクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル、樟脳基等を挙げることができる。
【0082】
Aとしての連結基は、さらに置換基を有していてもよく、置換基としては、アルキル基(炭素数1〜10のアルキル基であり、具体的にはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル等)、アラルキル基(炭素数7〜15のアラルキル基であり、具体的にはベンジル、トルイルメチル、メシチルメチル、フェネチル等)、アリール基(炭素数6〜10のアリール基であり、具体的にはフェニル、トルイル、キシリル、メシチル、ナフチル等)、アルコキシ基(アルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい、炭素数1〜10のアルコキシ基であり、具体的には、メトキシ、エトキシ、直鎖又は分岐プロポキシ、直鎖又は分岐ブトキシ、直鎖又は分岐ペントキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等)、アリールオキシ基(炭素数6〜10のアリールオキシ基であり、具体的にはフェノキシ、トルイルオキシ、1−ナフトキシ等)、アルキルチオ基(直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい、炭素数1〜10のアルキルチオ基であり、具体的には、メチルチオ、エチルチオ、直鎖又は分岐プロピルチオ、シクロペンチルチオ、シクロヘキシルチオ)、アリールチオ基(炭素数6〜10のアリールチオ基であり、具体的にはフェニルチオ、トルイルチオ、1−ナフチルチオ等)、アシルオキシ基(炭素数2〜10のアシルオキシ基で、具体的には、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、アルコキシカルボニル基(炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基であり、具体的にはメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、直鎖又は分岐プロポキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル等)、を挙げることができる。
【0083】
一般式(2)において、Rはアルキル基又はアリール基が好ましい。R0’は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基が好ましく、水素原子が最も好ましい。
【0084】
本発明のスルホン酸エステルとしては、下記の様な具体的化合物を例としてあげることができるが、これに限るものではない。
【0085】
【化22】

【0086】
【化23】

【0087】
(a3)増感剤
本発明の処理液において、上記スルホニウム塩との組み合わせにおいて、その分解を促進させるために増感剤を添加することが好ましい。増感剤は、活性光線または放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感剤は、スルホニウムと接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用が生じる。これにより重合開始剤は化学変化を起こして分解し、ラジカル、酸或いは塩基を生成する。
【0088】
好ましい増感剤の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有する化合物を挙げることができる。
多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、アントラセン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ4−メチルクマリン)。中でも増感剤として、特にアントラセン誘導体が好ましい。
【0089】
好ましい具体例としては、以下に示す(C−1)〜(C−26)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0090】
【化24】

【0091】
【化25】

【0092】
【化26】

【0093】
【化27】

【0094】
上述のような増感剤は、市販のものを用いてもよいし、公知の合成方法により合成してもよい。
【0095】
増感剤の添加量は、前記光酸発生剤100質量部に対して、20〜200質量部が好ましく、30〜150質量部がより好ましい。
【0096】
(凝集剤)
インク組成物中の成分を凝集(固定化)させる凝集剤は、酸性物質及び多価金属塩から選択される少なくとも1種であることが好ましい。本明細書では、酸性物質及び多価金属塩の2種を「固定化剤」と称する場合がある。
本発明における酸性物質は、紙上においてインク組成物と接触することにより、インク組成物中の成分を固定化(凝集)可能なものであり、固定化剤として機能する。例えば、処理液を塗工紙に付与することにより紙上に酸性物質が存在している状態で、インク組成物をさらに付与して酸性物質に接触することにより、インク組成物中の成分を凝集させて、インク組成物を紙上に固定化することができる。
【0097】
−酸性物質−
酸性物質としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、およびこれらの化合物の誘導体、ならびにこれらの塩等が好適に挙げられる。
【0098】
中でも、水溶性の高い酸性物質が好ましい。また、インク組成物と反応してインク全体を固定化させる観点から、3価以下の酸性物質が好ましく、2価以上3価以下の酸性物質が特に好ましい。
酸性物質は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0099】
処理液が酸性物質を含む場合、処理液のpH(25℃)は、0.1〜6.8であることが好ましく、0.5〜6.0であることがより好ましく、0.8〜5.0であることがさらに好ましい。
【0100】
(多価金属塩)
本発明における多価金属塩は、アルカリ土類金属、亜鉛族金属等の2価以上の金属を含む化合物の塩であり、Ca2+、Cu2+、Al3+等の金属イオンの塩等を挙げることができる。
本発明において、前記処理液が付与された塗工紙にインク組成物を付与したときのインク組成物の凝集反応は、インク組成物中に分散した粒子、例えば、顔料に代表される着色剤や、樹脂粒子等の粒子の分散安定性を減じ、インク組成物全体の粘度を上昇させることで達成することができる。
例えば、インク組成物中の顔料や、樹脂粒子などの粒子がカルボキシル基等の弱酸性の官能基を有するとき、当該粒子は前記弱酸性の官能基の働きにより分散安定化しているが、当該粒子の表面電荷を、多価金属塩と相互作用させることにより減じ、分散安定性を低下することができる。
したがって、処理液に含まれる凝集剤としての多価金属塩は、凝集反応の観点で、2価金属塩及び3価金属塩から選択される少なくとも1種の多価金属塩であることが好ましく、3価の多価金属塩であることが好ましい。
【0101】
以上の観点から、本発明の処理液に用いることのできる多価金属塩は、以下に示す多価金属イオンと陰イオンとの塩、ポリ塩化アルミニウムのいずれか1種以上であることが好ましい。
【0102】
多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Sr2+、Zn2+、Ba2+、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、Fe2+、La3+、Nd3+、Y3+、及びZr4+などが挙げられる。
塩とは、上記のような多価金属イオンと、これらのイオンに結合する陰イオンとから構成される金属塩のことであるが、溶媒に可溶なものであることを要する。ここで、前記溶媒とは、多価金属塩とともに処理液を構成する媒体であり、例えば、水や後述する水溶性有機溶剤が挙げられる。
【0103】
前記多価金属イオンと塩を形成するための好ましい陰イオンとしては、例えば、Cl、NO、I、Br、ClO、CHCOO、SO2−などが挙げられる。
多価金属イオンと陰イオンとは、それぞれ単独種または複数種を用いて多価金属イオンと陰イオンとの塩を形成することができる。
【0104】
上記以外の多価金属塩としては、例えば、ポリ塩化アルミニウムなどが挙げられる。
【0105】
本発明においては、反応性や着色性、さらには取り扱いの容易さなどの点から、多価金属イオンと陰イオンとの塩を用いることが好ましく、多価金属イオンとしては、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Al3+及びY3+が好ましく、さらには、Ca2+が好ましい。
また、陰イオンとしては、溶解性などの観点から、NOが特に好ましい。
前記多価金属塩は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0106】
凝集剤の含有量は、処理液の全質量に対し、凝集速度、耐オフセット性の向上の観点から、15質量%以上40質量%以下であることが好ましく、15質量%〜35質量%であることが好ましく、20質量%〜30質量%であることがより好ましい。
凝集剤として酸性物質を用いる場合の酸性物質の濃度が、15質量%以上であるとインク組成物中の成分を凝集する反応が有効に進行しインク組成物中の成分が固定化し易くなる点で好ましく、処理液の全質量中の40質量%以下であることが処理液安定性の点で好ましい。
【0107】
凝集剤の塗工紙への付与量としては、インク組成物を安定化させるに足る量であれば特に制限はないが、インク組成物を固定化し易いとの観点から、0.5g/m〜4.0g/mであることが好ましく、0.9g/m〜3.75g/mであることがより好ましい。
【0108】
(その他成分)
本発明における処理液は、前記酸発生剤、凝集剤に加えて、一般には水溶性有機溶剤を含んでもよく、更にその他の各種添加剤を用いて構成することができる。水溶性有機溶剤、その他の各種添加剤の詳細については、後述のインク組成物におけるものと同様である。
【0109】
処理液を付与する領域は、記録媒体(塗工紙)全体に付与する全面付与であっても、後のインク付与工程でインクジェット法によりインク組成物を付与して画像を形成する領域に部分的に付与する部分付与であってもよい。
本発明においては、処理液の付与量を均一に調整し、細線や微細な画像部分等を均質に記録し、画像ムラ等の濃度ムラを抑える観点から、塗布ローラー等を用いた塗布によって塗工紙全体に付与する全面付与が好ましい。
【0110】
凝集剤の付与量を前記範囲に制御して塗布する方法としては、例えば、アニロックスローラーを用いた方法が挙げられる。アニロックスローラーとは、セラミックが溶射されたローラー表面をレーザーで加工しピラミッド型や斜線、亀甲型などの形状を付したローラーである。このローラー表面に付けられた凹みの部分に処理液が入り込み、紙面と接触すると転写されて、アニロックスローラーの凹みで制御された塗布量にて塗布される。
【0111】
処理液の表面張力(25℃)は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、25mN以上50mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上45mN/m以下である。
表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学株式会社製)を用い、処理液を25℃の条件下で測定されるものである。
【0112】
処理液の粘度(25℃)は、インク組成物の凝集速度の観点から、1〜30mPa・sの範囲が好ましく、1〜20mPa・sの範囲がより好ましく、2〜15mPa・sの範囲が更に好ましく、2〜10mPa・sの範囲が特に好ましい。
本発明において、処理液の粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用い、処理液を25℃の条件下で測定されるものである。
【0113】
[インク組成物]
本発明におけるインク組成物は、着色剤を少なくとも1種含有し、更に、水溶性有機溶媒及び水を含む構成であることが好ましい。必要に応じて、更にその他の成分を含んで構成される。
本発明におけるインク組成物(以下、単に「インク」ということがある)は、単色画像の形成のみならず、多色画像(例えばフルカラー画像)の形成に用いられ、所望の1色又は2色以上を選択して画像形成することができる。フルカラー画像を形成する場合、インク組成物は、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクとして用いることができる。また、色調を整えるために、更にブラック色調インクとして用いてもよい。
【0114】
また、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の色調以外のレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)、白色(W)の色調のインク組成物や、いわゆる印刷分野における特色のインク組成物等として用いることができる。
上記の各色調のインク組成物は、着色剤(例えば顔料)の色相を所望により変更することにより調製できる。
尚、本発明におけるインク組成物は重合性化合物を実質的に含まない。ここで実質的に含まないとは、不可避不純物の存在を容認することを意味する。
【0115】
−着色剤−
本発明におけるインク組成物は、着色剤(以下、色材ともいう。)の少なくとも1種を含む。前記着色剤は、着色により画像を形成する機能を有するものであればよく、顔料、染料、着色粒子等を使用することができる。中でも顔料であることが好ましく、水分散性顔料であることがより好ましく、水不溶性ポリマー分散剤で被覆された顔料であることがさらに好ましい。
【0116】
前記水分散性顔料の具体例としては、下記(1)〜(4)の顔料を挙げることができる。
(1)カプセル化顔料、即ち、ポリマー粒子に顔料を含有させてなるポリマー分散物であり、より詳しくは、親水性の水不溶性の樹脂で顔料を被覆し、顔料表面の樹脂層にて親水化することで顔料を水に分散可能にしたもの(以下、「樹脂被覆顔料」ということがある)。
(2)自己分散顔料、即ち、表面に少なくとも1種の親水基を有し、分散剤の不存在下で水分散性及び水溶性の少なくともいずれかを示す顔料、より詳しくは、主にカーボンブラックなどを表面酸化処理して親水化し、顔料単体が水に分散するようにしたもの。
(3)樹脂分散顔料、即ち、重量平均分子量50,000以下の水溶性高分子化合物により分散された顔料。
(4)界面活性剤分散顔料、即ち、界面活性剤により分散された顔料。
これらのうち、好ましくは(1)カプセル化顔料、(2)自己分散顔料であり、特に好ましくは(1)カプセル化顔料である。
【0117】
ここで、(1)カプセル化顔料について詳述する。
カプセル化顔料の樹脂(以下、「水不溶性ポリマー分散剤」ということがある)は、限定されるものではないが、水と水溶性有機溶媒の混合溶媒中で自己分散能又は溶解能を有し、かつアニオン性基(酸性)を有する高分子化合物であるのが好ましい。この樹脂は、通常は数平均分子量が1,000〜100,000の範囲程度のものが好ましく、3,000〜50,000の範囲程度のものが特に好ましい。また、この樹脂は、水溶性有機溶媒に溶解して溶液となるものが好ましい。樹脂の数平均分子量は、この範囲内であると顔料における被覆膜として又はインクとした際の塗膜としての機能を発揮することができる。樹脂は、アルカリ金属や有機アミンの塩の形で用いられるのが好ましい。
【0118】
カプセル化顔料の樹脂の具体例としては、熱可塑性、熱硬化性あるいは変性のアクリル系、エポキシ系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリアミド系、不飽和ポリエステル系、フェノール系、シリコーン系、又はフッ素系の樹脂;塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、又はポリビニルブチラール等のポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、フタル酸樹脂等のポリエステル系樹脂、メラミン樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アミノアルキド共縮合樹脂、ユリア樹脂、尿素樹脂等のアミノ系材料、あるいはそれらの共重合体又は混合物などのアニオン性基を有する材料などが挙げられる。
これら樹脂のうち、アニオン性のアクリル系樹脂は、例えば、アニオン性基を有するアクリルモノマー(以下、「アニオン性基含有アクリルモノマー」という。)及び必要に応じて該アニオン性基含有アクリルモノマーと共重合可能な他のモノマーを溶媒中で重合して得られる。アニオン性基含有アクリルモノマーとしては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、及びホスホン基からなる群より選ばれる1個以上のアニオン性基を有するアクリルモノマーが挙げられ、中でもカルボキシル基を有するアクリルモノマーが特に好ましい。
【0119】
カルボキシキル基を有するアクリルモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。
【0120】
カプセル化顔料は、上記の成分を用いて、従来の物理的、化学的方法により製造することができる。例えば、特開平9−151342号、特開平10−140065号、特開平11−209672号、特開平11−172180号、特開平10−25440号、又は特開平11−43636号の各公報に記載の方法により製造することができる。
具体的には、特開平9−151342号及び特開平10−140065号の各公報に記載の転相乳化法と酸析法等が挙げられ、中でも、分散安定性の点で転相乳化法が好ましい。転相乳化法については後述する。
【0121】
また、前記自己分散顔料も好ましい例の1つである。自己分散顔料とは、多数の親水性官能基及び/又はその塩(以下、「分散性付与基」という。)を、顔料表面に直接又はアルキル基、アルキルエーテル基、アリール基等を介して間接的に結合させたもので、顔料分散用の分散剤を用いずに水性媒体中に分散可能な顔料である。ここで、「分散剤を用いずに水性媒体中に分散」とは、顔料を分散させるための分散剤を用いなくても水性媒体中に分散可能なことをいう。
自己分散顔料を着色剤として含有するインクは、通常、顔料を分散させるために含有させる分散剤を含む必要がないため、分散剤に起因する消泡性の低下による発泡がほとんどなく、吐出安定性に優れるインクを調製しやすい。自己分散顔料の表面に結合される分散性付与基には、−COOH、−CO−、−OH、−SOH、−PO及び第4級アンモニウム並びにそれらの塩が例示でき、これらは顔料に物理的処理又は化学的処理を施すことで、分散性付与基又は分散性付与基を有する活性種を顔料表面に結合(グラフト)させることにより結合される。前記物理的処理としては、例えば、真空プラズマ処理等が例示できる。また、前記化学的処理としては、例えば、水中で酸化剤により顔料表面を酸化する湿式酸化法や、p−アミノ安息香酸を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介してカルボキシル基を結合させる方法、等が例示できる。
例えば、次亜ハロゲン酸及び/又は次亜ハロゲン酸塩による酸化処理、あるいはオゾンによる酸化処理により表面処理される自己分散顔料を好ましい例として挙げることができる。
自己分散顔料として市販品を使用してもよく、具体的には、マイクロジェットCW−1(商品名;オリヱント化学工業(株)製)、CAB−O−JET200、CAB−O−JET300(商品名;キャボット社製)等が挙げられる。
【0122】
−a)転相乳化法−
転相乳化法は、基本的には、自己分散能又は溶解能を有する樹脂と顔料との混合溶融物を水に分散させる自己分散(転相乳化)方法である。ここで、混合溶融物とは、溶解せず混合した状態、溶解して混合した状態、又はこれら両者の状態のいずれの状態を含むものをいう。「転相乳化法」のより具体的な製造方法は、特開平10−140065号に記載の方法が挙げられる。
【0123】
(顔料)
本発明において着色剤として用いられる顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。
前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
【0124】
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。
なお、カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
【0125】
上記の着色剤は、1種単独で使用してもよく、また、上記した各群内もしくは各群間より複数種を選択して組み合わせて使用してもよい。
着色剤(特に顔料)のインク組成物中における含有量としては、色濃度、粒状性、インク安定性、吐出信頼性の観点から、インク組成物(着色剤、樹脂粒子、水溶性有機溶媒、及び水を含む)の全質量に対して、1〜25質量%となる量が好ましく、5〜20質量%となる量がより好ましい。
【0126】
(水不溶性ポリマー分散剤)
本発明における水不溶性ポリマー分散剤(以下、単に「分散剤」ということがある)としては、水不溶性のポリマーであって、顔料を分散可能であれば特に制限は無く、従来公知の水不溶性ポリマー分散剤を用いることができる。水不溶性ポリマー分散剤は、例えば、疎水性の構成単位と親水性の構成単位の両方を含んで構成することができる。
【0127】
前記疎水性の構成単位を構成するモノマーとしては、スチレン系モノマー、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
また前記親水性構成単位を構成するモノマーとしては、親水性基を含むモノマーであれば特に制限はない。前記親水性基としては、ノニオン性基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等を挙げることができる。尚、ノニオン性基は自己分散性ポリマーにおけるノニオン性基と同義である。
本発明における親水性構成単位は、分散安定性の観点から、少なくともカルボキシル基を含むことが好ましく、ノニオン性基とカルボキシル基を共に含む形態であることもまた好ましい。
【0128】
本発明における水不溶性ポリマー分散剤として、具体的には、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。
ここで「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
【0129】
本発明において水不溶性ポリマー分散剤としては、顔料の分散安定性の観点から、カルボキシル基を含むビニルポリマーであることが好ましく、疎水性の構成単位として少なくとも芳香族基含有モノマーに由来する構成単位を有し、親水性の構成単位としてカルボキシル基を含む構成単位を有するビニルポリマーであることがより好ましい。
【0130】
また前記水不溶性ポリマー分散剤の重量平均分子量としては、顔料の分散安定性の観点から、3,000〜200,000が好ましく、より好ましくは5,000〜100,000、更に好ましくは5,000〜80,000、特に好ましくは10,000〜60,000である。
【0131】
本発明における着色剤中における分散剤の含有量は、顔料の分散性、インク着色性、分散安定性の観点から、着色剤に対し、分散剤が10〜100質量%であることが好ましく、20〜70質量%がより好ましく、30〜50質量%が特に好ましい。
前記着色剤中の分散剤の含有量が、上記範囲であることにより、着色剤が適量の分散剤で被覆され、粒径が小さく経時安定に優れた着色粒子を得やすい傾向となり好ましい。
【0132】
本発明における着色剤は、前記水不溶性ポリマー分散剤に加えて、その他の分散剤を含んでいてもよい。例えば、従来公知の水溶性低分子分散剤や、水溶性ポリマー等を用いることができる。前記水不溶性ポリマー分散剤以外の分散剤の含有量は、前記分散剤の含有量の範囲内で用いることができる。
【0133】
−水溶性有機溶媒−
本発明におけるインク組成物は、インク組成物の溶媒として水溶性有機溶媒を少なくとも1種を含むことが好ましい。水溶性有機溶媒を含有することで、乾燥防止、湿潤あるいは浸透促進の効果を得ることができる。乾燥防止には、噴射ノズルのインク吐出口においてインク組成物が付着乾燥して凝集体ができ、目詰まりするのを防止する乾燥防止剤として用いられ、乾燥防止や湿潤には、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶媒が好ましい。また、浸透促進には、紙へのインク浸透性を高める浸透促進剤として用いることができる。
【0134】
水溶性有機溶媒の例としては、例えば、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルカンジオール(多価アルコール類);糖アルコール類;エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類等が挙げられる。
これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0135】
乾燥防止や湿潤の目的としては、多価アルコール類が有用であり、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0136】
浸透促進の目的としては、ポリオール化合物が好ましく、脂肪族ジオールが好適である。脂肪族ジオールとしては、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールが好ましい例として挙げることができる。
【0137】
また、水溶性有機溶媒としては、記録媒体におけるカール発生抑制の点から、下記構造式(1)で表される化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0138】
【化28】

【0139】
構造式(1)において、l、m、及びnは、それぞれ独立に1以上の整数を表し、l+m+n=3〜15を満たし、l+m+nは3〜12の範囲が好ましく、3〜10の範囲がより好ましい。l+m+nの値は、3以上であると良好なカール抑制力を示し、15以下であると良好な吐出性が得られる。構造式(1)中、AOは、エチレンオキシ(EO)及び/又はプロピレンオキシ(PO)を表し、中でもプロピレンオキシ基が好ましい。前記(AO)l、(AO)m、及び(AO)nにおける各AOはそれぞれ同一でも異なってもよい。
【0140】
以下、前記構造式(1)で表される化合物の例をSP値(カッコ内)と共に示す。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
【0141】
【化29】

【0142】
・nCO(AO)−H(AO=EO又はPOで、比率はEO:PO=1:1)
・nCO(AO)10−H AO=EO又はPOで、比率はEO:PO=1:1)
・HO(A’O)40−H(A’O=EO又はPOで、比率はEO:PO=1:3)
・HO(A’’O)55−H(A’’O=EO又はPOで、比率はEO:PO=5:6)
・HO(PO)−H
・HO(PO)−H
・1,2−ヘキサンジオール
【0143】
前記構造式(1)で表される化合物の全水溶性有機溶媒中に占める含有割合は、3質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、更に5質量%以上が好ましい。前記範囲とすることにより、インクの安定性や吐出性を悪化させずにカールを抑制することができ好ましい。
【0144】
水溶性有機溶媒は、1種単独で使用しても、2種類以上混合して使用してもよい。
水溶性有機溶媒のインク中における含有量としては、1質量%以上60質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上40質量%以下である。
【0145】
−水−
本発明におけるインク組成物は、インク溶媒として水を含有することができるが、水の含有量には特に制限はない。中でも、好ましくは10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは、30質量%以上80質量%以下である。更に好ましくは、50質量%以上70質量%以下である。
【0146】
(樹脂粒子)
本発明のインク組成物は、樹脂粒子の少なくとも1種を含有することが好ましい。樹脂粒子を含むことにより、インク組成物の記録媒体への定着性、画像の耐ブロッキング性、耐オフセット性及び耐擦性を効果的に向上させることができる。
また樹脂粒子は、処理液又はこれを乾燥させた紙領域と接触した際に凝集、又は分散不安定化してインク組成物を増粘させることにより、インク組成物により形成される画像を固定化させる機能を有することが好ましい。このような樹脂粒子は、水及び有機溶媒の少なくとも1種に分散されているものが好ましい。
【0147】
樹脂粒子としては、例えば、熱可塑性の(メタ)アクリル系、エポキシ系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリアミド系、不飽和ポリエステル系、フェノール系、シリコーン系、又はフッ素系の樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、又はポリビニルブチラール等のポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、フタル酸樹脂等のポリエステル系樹脂、あるいはそれらの共重合体又は混合物などの樹脂から構成される樹脂粒子が挙げられる。
【0148】
本発明における樹脂粒子としては、吐出安定性及び着色剤(特に顔料)を用いた場合の液安定性(特に分散安定性)の観点から、自己分散性ポリマーの粒子が好ましく、カルボキシル基を有する自己分散性ポリマーの粒子がより好ましい。自己分散性ポリマーの粒子(以下、「自己分散性ポリマー粒子」とも称する)とは、他の界面活性剤の不存在下に、ポリマー自身が有する官能基(特に酸性基又はその塩)によって、水性媒体中で分散状態となり得る水不溶性ポリマーであって、遊離の乳化剤を含有しない水不溶性ポリマーの粒子を意味する。
【0149】
ここで分散状態とは、水性媒体中に水不溶性ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルション)、及び、水性媒体中に水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンション)の両方の状態を含むものである。
本発明における水不溶性ポリマーにおいては、液体組成物としたときの凝集速度と定着性の観点から、水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態となりうる水不溶性ポリマーであることが好ましい。
【0150】
自己分散性ポリマー粒子の分散状態とは、水不溶性ポリマー30gを70gの有機溶媒(例えば、メチルエチルケトン)に溶解した溶液、該水不溶性ポリマーの塩生成基を100%中和できる中和剤(塩生成基がアニオン性であれば水酸化ナトリウム、カチオン性であれば酢酸)、及び水200gを混合、攪拌(装置:攪拌羽根付き攪拌装置、回転数200rpm、30分間、25℃)した後、該混合液から該有機溶媒を除去した後でも、分散状態が25℃で少なくとも1週間安定に存在することを目視で確認することができる状態をいう。
【0151】
また、水不溶性ポリマーとは、ポリマーを105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100g中に溶解させたときに、その溶解量が10g以下であるポリマーをいい、その溶解量が好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である。前記溶解量は、水不溶性ポリマーの塩生成基の種類に応じて、水酸化ナトリウム又は酢酸で100%中和した時の溶解量である。
【0152】
前記水性媒体は、水を含んで構成され、必要に応じて水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。本発明においては、水と水に対して0.2質量%以下の水溶性有機溶媒とから構成されることが好ましく、水から構成されることがより好ましい。該水溶性有機溶媒はインク組成物に含有することが好ましい前記水溶性有機溶媒と同様のものであり、好ましい例も同様である。
【0153】
本発明における樹脂粒子を構成する樹脂の主鎖骨格としては、特に制限は無く、例えば、ビニルポリマー、縮合系ポリマー(エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース、ポリエーテル、ポリウレア、ポリイミド、ポリカーボネート等)を用いることができる。その中で、特にビニルポリマーが好ましく、樹脂粒子の分散安定性の観点から、(メタ)アクリル系樹脂粒子がより好ましい。
尚、(メタ)アクリル系樹脂とは、メタクリル系樹脂およびアクリル系樹脂を意味する。
【0154】
ビニルポリマー及びビニルポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−181549号公報及び特開2002−88294号公報に記載されているものを挙げることができる。また、解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する連鎖移動剤や重合開始剤、イニファーターを用いたビニルモノマーのラジカル重合や、開始剤或いは停止剤のどちらかに解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する化合物を用いたイオン重合によって高分子鎖の末端に解離性基を導入したビニルポリマーも使用できる。
また、縮合系ポリマーと縮合系ポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−247787号公報に記載されているものを挙げることができる。
【0155】
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、自己分散性の観点から、親水性の構成単位と、疎水性の構成単位として芳香族基含有モノマーに由来する構成単位および脂環式モノマーに由来する構成単位の少なくとも1種と、を含む水不溶性ポリマーを含むことが好ましい。
【0156】
前記親水性の構成単位は、親水性基含有モノマーに由来するものであれば特に制限はなく、1種の親水性基含有モノマーに由来するものであっても、2種以上の親水性基含有モノマーに由来するものであってもよい。前記親水性基としては、特に制限はなく、解離性基であってもノニオン性親水性基であってもよい。
本発明において前記親水性基は、自己分散促進の観点、形成された乳化又は分散状態の安定性の観点から、解離性基であることが好ましく、アニオン性の解離基であることがより好ましい。前記解離性基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられ、中でも、インク組成物を構成した場合の定着性の観点から、カルボキシル基が好ましい。
【0157】
本発明における親水性基含有モノマーは、自己分散性と凝集性の観点から、解離性基含有モノマーであることが好ましく、解離性基とエチレン性不飽和結合とを有する解離性基含有モノマーであることが好ましい。
解離性基含有モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
【0158】
不飽和カルボン酸モノマーとして具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーとして具体的には、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。不飽和リン酸モノマーとして具体的には、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記解離性基含有モノマーの中では、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方がより好ましい。
【0159】
またノニオン性親水性基を有するモノマーとしては、例えば、2−メトキシエチルアクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルアクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルメタクリレート、エトキシトリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(分子量200〜1000)モノメタクリレート、ポリエチレングリコール(分子量200〜1000)モノメタクリレートなどの(ポリ)エチレンオキシ基またはポリプロピレンオキシ基を含有するエチレン性不飽和モノマーや、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーが挙げられる。
また、ノニオン性親水性基を有するモノマーとしては、末端が水酸基のエチレン性不飽和モノマーよりも、末端がアルキルエーテルのエチレン性不飽和モノマーのほうが、粒子の安定性、水溶性成分の含有量の観点で好ましい。
【0160】
本発明における親水性の構成単位としては、アニオン性の解離性基を有する親水性単位のみを含有する態様、および、アニオン性の解離性基を有する親水性の構成単位と、ノニオン性親水性基を有する親水性の構成単位とを両方含有する態様のいずれかであることが好ましい。
また、アニオン性の解離性基を有する親水性単位を2種以上含有する態様や、アニオン性の解離性基を有する親水性の構成単位と、ノニオン性親水性基を有する親水性の構成単位を2種以上併用する態様であることもまた好ましい。
【0161】
前記自己分散性ポリマーにおける親水性構成単位の含有率は、インク組成物の粘度と経時安定性の観点から、25質量%以下であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましく、2〜23質量%であることがさらに好ましく、4〜20質量%であることが特に好ましい。
また2種以上の親水性の構成単位を有する場合、親水性の構成単位の総含有率が前記範囲内であることが好ましい。
【0162】
前記自己分散性ポリマーにおけるアニオン性の解離性基を有する構成単位の含有量は、酸価が後述する好適な範囲となるような範囲が好ましい。
また、ノニオン性親水性基を有する構成単位の含有量としては、吐出安定性と経時安定性の観点から、好ましくは0〜25質量%であって、より好ましくは0〜20質量%であって、特に好ましいのは0〜15質量%である。
【0163】
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、自己分散性と処理液と接触したときの凝集速度の観点から、カルボキシル基を有するポリマーを含むことが好ましく、カルボキシル基を有し、酸価(mgKOH/g)が25〜100であるポリマーを含むことがより好ましい。更に、前記酸価は、自己分散性と処理液と接触したときの凝集速度の観点から、25〜80であることがより好ましく、30〜65であることが特に好ましい。
特に、酸価は、25以上であると自己分散性の安定性が良好になり、100以下であると凝集性が向上する。
【0164】
前記芳香族基含有モノマーは、芳香族基と重合性基とを含む化合物であれば特に制限はない。前記芳香族基は芳香族炭化水素に由来する基であっても、芳香族複素環に由来する基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、芳香族炭化水素に由来する芳香族基であることが好ましい。
また前記重合性基は、縮重合性の重合性基であっても、付加重合性の重合性基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、付加重合性の重合性基であることが好ましく、エチレン性不飽和結合を含む基であることがより好ましい。
【0165】
本発明における芳香族基含有モノマーは、芳香族炭化水素に由来する芳香族基とエチレン性不飽和結合とを有するモノマーであることが好ましい。芳香族基含有モノマーは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0166】
前記芳香族基含有モノマーとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー等が挙げられる。中でも、ポリマー鎖の親水性と疎水性のバランスとインク定着性の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びフェニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが更に好ましい。
【0167】
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を含み、その含有量が10質量%〜95質量%であることが好ましい。芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位の含有量が10質量%〜95質量%であることで、自己乳化又は分散状態の安定性が向上し、更にインク粘度の上昇を抑制することができる。
本発明においては、自己分散状態の安定性、芳香環同士の疎水性相互作用による水性媒体中での粒子形状の安定化、粒子の適度な疎水化による水溶性成分量の低下の観点から、15質量%〜90質量%であることがより好ましく、15質量%〜80質量%であることがより好ましく、25質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
【0168】
また、芳香族基含有モノマーとしてスチレン系モノマーを用いる場合、自己分散性ポリマー粒子とした際の安定性の観点から、スチレン系モノマーに由来する構成単位は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、スチレン系モノマーに由来する構成単位を含まない態様が特に好ましい。
ここで、スチレン系モノマーとは、スチレン、置換スチレン(α−メチルスチレン、クロロスチレンなど)、および、ポリスチレン構造単位を有するスチレンマクロマーのことを指す。
【0169】
前記脂環式モノマーは、脂環式炭化水素基と重合性基とを含む化合物であれば特に制限はないが、分散安定性の観点から、脂環式(メタ)アクリレートであることが好ましい。
前記脂環式(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリル酸に由来する構造部位と、アルコールに由来する構造部位とを含み、アルコールに由来する構造部位に、無置換または置換された脂環式炭化水素基を少なくとも1つ含む構造を有しているものである。尚、前記脂環式炭化水素基は、アルコールに由来する構造部位そのものであっても、連結基を介してアルコールに由来する構造部位に結合していてもよい。
また、「脂環式(メタ)アクリレート」とは、脂環式炭化水素基を有する、メタクリレートまたはアクリレートを意味する。
【0170】
脂環式炭化水素基としては、環状の非芳香族炭化水素基を含むものであれば特に限定はなく、単環式炭化水素基、2環式炭化水素基、3環式以上の多環式炭化水素基が挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基や、シクロアルケニル基、ビシクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基、デカヒドロナフタレニル基、ペルヒドロフルオレニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、およびビシクロ[4.3.0]ノナン等を挙げることができる。
【0171】
前記脂環式炭化水素基は、更に置換基を有してもよい。該置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アルキルまたはアリールカルボニル基、およびシアノ基等が挙げられる。
また脂環式炭化水素基は、さらに縮合環を形成していてもよい。
本発明における脂環式炭化水素基としては、粘度や溶解性の観点から、脂環式炭化水素基部分の炭素数が5〜20であることが好ましい。
【0172】
脂環式炭化水素基とアルコールに由来する構造部位とを結合する連結基としては、炭素数1から20までの、アルキル基、アルケニル基、アルキレン基、アラルキル基、アルコキシ基、モノまたはオリゴエチレングルコール基、モノまたはオリゴプロピレングリコール基などが好適なものとして挙げられる。
【0173】
本発明における脂環式(メタ)アクリレートの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
単環式(メタ)アクリレートとしては、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基の炭素数が3〜10のシクロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2環式(メタ)アクリレートとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3環式(メタ)アクリレートとしては、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0174】
これらのうち、自己分散性ポリマー粒子の分散安定性と、定着性、ブロッキング耐性の観点から、2環式(メタ)アクリレート、または3環式以上の多環式(メタ)アクリレートを少なくとも1種であることが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、およびジシクロペンタニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0175】
本発明において、自己分散性ポリマー粒子に含まれる脂環式(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有率としては、自己分散状態の安定性、脂環式炭化水素基同士の疎水性相互作用による水性媒体中での粒子形状の安定化、粒子の適度な疎水化による水溶性成分量の低下の観点から、20質量%以上90質量%以下であることが好ましく、40質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。特に好ましいのは50質量%以上80質量%以下である。
脂環式(メタ)アクリレートに由来する構成単位を20質量%以上とすることで、定着性、ブロッキングを改良することができる。一方、脂環式(メタ)アクリレートに由来する構成単位が90質量%以下であることでポリマー粒子の安定性が向上する。
【0176】
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、例えば、疎水性の構成単位として、芳香族基含有モノマーに由来する構成単位および脂環式モノマーに由来する構成単位に加えて、必要に応じて、その他の構成単位を更に含んでもよい。
前記その他の構成単位を形成するモノマー(以下、「その他共重合可能なモノマー」ということがある)としては、前記親水性基含有モノマー、芳香族基含有モノマーおよび脂環式モノマーと共重合可能なモノマーであれば特に制限はない。中でも、ポリマー骨格の柔軟性やガラス転移温度(Tg)制御の容易さの観点から、アルキル基含有モノマーであることが好ましい。
【0177】
前記アルキル基含有モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、Nーヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−,イソ)ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−、イソ)ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0178】
中でも、ポリマー骨格の柔軟性やガラス転移温度(Tg)制御の容易さの観点および自己分散ポリマーの分散安定性の観点から、炭素数が1〜8の鎖状アルキル基を含有する(メタ)アクリレートの少なくとも1種であることが好ましく、より好ましくは炭素数が1〜4の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートであり、特に好ましくはメチル(メタ)アクリレートまたはエチル(メタ)アクリレートである。ここで、鎖状アルキル基とは、直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基のことをいう。
【0179】
本発明においてその他共重合可能なモノマーは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
自己分散性ポリマー粒子が、その他の構成単位を含有する場合、その含有量は10〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜75質量%であって、特に好ましいのは20〜70質量%である。その他の構成単位を形成するモノマーを、2種以上を組み合わせて使用する場合、その総含有量が前記範囲であることが好ましい。
【0180】
また本発明における自己分散性ポリマーは、分散安定性の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートおよび脂環式(メタ)アクリレートの少なくとも一方、その他共重合可能なモノマー、ならびに親水性基含有モノマーの少なくとも3種を重合して得られるポリマーであることもまた好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレートおよび脂環式(メタ)アクリレートの少なくとも一方、炭素数が1〜8の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基含有(メタ)アクリレート、および親水性基含有モノマーの少なくとも3種を重合して得られるポリマーであることがより好ましい。
本発明においては、分散安定性の観点から、炭素数が9以上の直鎖または分岐鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、および、芳香族基含有マクロモノマー等に由来する疎水性が大きい置換基を有する構成単位の含有量は、実質的に含まないことが好ましく、全く含まない態様であることがより好ましい
【0181】
本発明における自己分散性ポリマーは、各構成単位が不規則的に導入されたランダム共重合体であっても、規則的に導入されたブロック共重合体であっても良く、ブロック共重合体である場合の各構成単位は、如何なる導入順序で合成されたものであっても良く、同一の構成成分を2度以上用いてもよいが、ランダム共重合体であることが汎用性、製造性の点で好ましい。
【0182】
本発明における自己分散性ポリマーの分子量範囲は、重量平均分子量で、3000〜20万であることが好ましく、5000〜15万であることがより好ましく、10000〜10万であることが更に好ましい。更に加えて、酸価が25〜100であって重量平均分子量が3000〜20万であることが好ましく、酸価が25〜95であって重量平均分子量が5000〜15万であることがより好ましい。重量平均分子量を3000以上とすることで水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を20万以下とすることで、自己分散安定性を高めることができる。
【0183】
なお、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)で測定される。GPCは、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、条件としては、試料濃度を0.35質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、IR検出器を用いて行なう。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
【0184】
本発明における自己分散性ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構造単位(好ましくは、フェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及び/又はベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位)を共重合比率として自己分散性ポリマー粒子の全質量の15〜80質量%を含み、酸価が25〜100で重量平均分子量が3000〜20万であることが好ましい。
また自己分散性ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を共重合比率として15〜80質量%と、カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位と、アルキル基含有モノマーに由来する構成単位(好ましくは、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルに由来する構造単位)とを含むことが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及び/又はベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を共重合比率として15〜80質量%と、カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位と、アルキル基含有モノマーに由来する構成単位(好ましくは、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜4のアルキルエステルに由来する構造単位)とを含み、酸価が25〜95で重量平均分子量が5000〜15万であることがより好ましい。
【0185】
以下に、樹脂粒子(自己分散性ポリマー粒子)を構成する水不溶性ポリマーの具体例として、例示化合物B−01〜B−36を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、括弧内は共重合成分の質量比を表す。
【0186】
B−01:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(50/45/5)
B−02:フェノキシエチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(30/35/29/6)
B−03:フェノキシエチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(50/44/6)
B−04:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸共重合体(30/55/10/5)
B−05:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(35/59/6)
B−06:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(10/50/35/5)
B−07:ベンジルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(55/40/5)
B−08:フェノキシエチルメタクリレート/ベンジルアクリレート/メタクリル酸共重合体(45/47/8)
B−09:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/ブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(5/48/40/7)
B−10:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(35/30/30/5)
B−11:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メタクリル酸共重合体(12/50/30/8)
B−12:ベンジルアクリレート/イソブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(93/2/5)
B−13:スチレン/フェノキシエチルメタクリレート/ブチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(50/5/20/25)
B−14:スチレン/ブチルアクリレート/アクリル酸共重合体(62/35/3)
B−15:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/51/4)
B−16:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/49/6)
B−17:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/48/7)
B−18:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/47/8)
B−19:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/45/10)
B−20:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(20/72/8)
【0187】
B−21:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(30/62/8)
B−22:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(40/52/8)
B−23:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(50/42/8)
B−24:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(38/52/10)
B−25:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(30/50/14/6)
B−26:メチルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(40/50/10)
B−27:メチルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/フェノキシエチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(30/50/14/6)
B−28:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(n=2)/メタクリル酸共重合体(30/54/10/6)
B−29:メチルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(n=2)/メタクリル酸共重合体(54/35/5/6)
B−30:メチルメタクリレート/アダマンチルメタクリレート/メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(n=23)/メタクリル酸共重合体(30/50/15/5)
B−31:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(20/50/22/8)
B−32:エチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/アクリル酸共重合体(50/45/5)
B−33:イソブチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/アクリル酸共重合体(40/50/10)
B−34:n−ブチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/スチレン/アクリル酸共重合体(30/55/10/5)
B−35:メチルメタクリレート/ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(40/52/8)
B−36:ラウリルメタクリレート/ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(25/65/10)
【0188】
また本発明の自己分散性ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、脂環式(メタ)アクリレートに由来する構造を共重合比率として20質量%以上90質量%以下と、解離性基含有モノマーに由来する構造と、炭素数1〜8の鎖状アルキル基を含有する(メタ)アクリレートに由来する構造の少なくとも1種とを含み、酸価が20〜120であって、親水性構造単位の総含有率が25質量%以下であって、重量平均分子量が3000〜20万であるビニルポリマーであることもまた好ましい。
さらに、2環式または3環式以上の多環式(メタ)アクリレートに由来する構造を共重合比率として30質量%以上90質量%未満と、炭素数1〜4の鎖状アルキル基を含有する(メタ)アクリレートに由来する構造を共重合比率として10質量%以上70質量%未満と、カルボキシル基含有モノマーに由来する構造を酸価が25〜100の範囲で含み、親水性構造単位の総含有率が25質量%以下であって、重量平均分子量が10000〜20万であるビニルポリマーであることがより好ましい。
さらに、2環式または3環式以上の多環式(メタ)アクリレートに由来する構造を共重合比率として40質量%以上80質量%未満と、少なくともメチル(メタ)アクリレートまたはエチル(メタ)アクリレートに由来する構造を共重合比率として20質量%以上60質量%未満含み、アクリル酸又はメタクリル酸に由来する構造を酸価が30〜80の範囲で含み、親水性構造単位の総含有率が25質量%以下であって、重量平均分子量が30000〜15万であるビニルポリマーであることが特に好ましい。
【0189】
本発明における樹脂粒子を構成する水不溶性ポリマーの製造方法としては特に制限はなく、例えば、重合性界面活性剤の存在下に、乳化重合を行い、界面活性剤と水不溶性ポリマーとを共有結合させる方法、上記親水性基含有モノマーと芳香族基含有モノマーとを含むモノマー混合物を溶液重合法、塊状重合法等の公知の重合法により、共重合させる方法を挙げることができる。前記重合法の中でも、凝集速度とインク組成物としたときの打滴安定性の観点から、溶液重合法が好ましく、有機溶媒を用いた溶液重合法がより好ましい。
【0190】
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、凝集速度の観点から、有機溶媒中で合成されたポリマーを含み、該ポリマーはカルボキシル基を有し、(好ましくは酸価が20〜100であって)該ポリマーのカルボキシル基の一部又は全部は中和され、水を連続相とするポリマー分散物として調製されたものであることが好ましい。すなわち、本発明における自己分散性ポリマー粒子の製造は、有機溶媒中でポリマーを合成する工程と、前記ポリマーのカルボキシル基の少なくとも一部が中和された水性分散物とする分散工程とを設けて行なうことが好ましい。
【0191】
前記分散工程は、次の工程(1)及び工程(2)を含むことが好ましい。
工程(1):ポリマー(水不溶性ポリマー)、有機溶媒、中和剤、及び水性媒体を含有する混合物を、攪拌する工程
工程(2):前記混合物から前記有機溶媒を除去する工程
【0192】
前記工程(1)は、まずポリマー(水不溶性ポリマー)を有機溶媒に溶解させ、次に中和剤と水性媒体を徐々に加えて混合、攪拌して分散体を得る処理であることが好ましい。このように、有機溶媒中に溶解した水不溶性ポリマー溶液中に中和剤と水性媒体を添加することで、強いせん断力を必要とせずに、より保存安定性の高い粒径の自己分散性ポリマー粒子を得ることができる。
該混合物の攪拌方法に特に制限はなく、一般に用いられる混合攪拌装置や、必要に応じて超音波分散機や高圧ホモジナイザー等の分散機を用いることができる。
【0193】
有機溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒が好ましく挙げられる。
アルコール系溶媒としては、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、エタノール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒とイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒が好ましい。また、油系から水系への転相時への極性変化を穏和にする目的で、イソプロピルアルコールとメチルエチルケトンを併用することも好ましい。該溶剤を併用することで、凝集沈降や粒子同士の融着が無く、分散安定性の高い微粒径の自己分散性ポリマー粒子を得ることができる。
【0194】
中和剤は、解離性基の一部又は全部が中和され、自己分散性ポリマーが水中で安定した乳化又は分散状態を形成するために用いられる。本発明の自己分散性ポリマーが解離性基としてアニオン性の解離基(例えば、カルボキシル基)を有する場合、用いられる中和剤としては有機アミン化合物、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物等の塩基性化合物が挙げられる。有機アミン化合物の例としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチル−エタノールアミン、N,N−ジエチル−エタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。中でも、本発明の自己分散性ポリマー粒子の水中への分散安定化の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
【0195】
これら塩基性化合物は、解離性基100モル%に対して、5〜120モル%使用することが好ましく、10〜110モル%であることがより好ましく、15〜100モル%であることが更に好ましい。15モル%以上とすることで、水中での粒子の分散を安定化する効果が発現し、100モル%以下とすることで、水溶性成分を低下させる効果がある。
【0196】
前記工程(2)においては、前記工程(1)で得られた分散体から、減圧蒸留等の常法により有機溶剤を留去して水系へと転相することで自己分散性ポリマー粒子の水性分散物を得ることができる。得られた水性分散物中の有機溶媒は実質的に除去されており、有機溶媒の量は、好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
【0197】
樹脂粒子の平均粒子径は、体積平均粒子径で10nm〜1μmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましく、10〜100nmの範囲が更に好ましく、10〜50nmの範囲が特に好ましい。体積平均粒子径は、10nm以上であると製造適性が向上し、1μm以下であると保存安定性が向上する。
また、樹脂粒子の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布を持つもの又は単分散の粒径分布を持つもののいずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つ樹脂粒子を2種以上混合してもよい。
なお、樹脂粒子の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により求められるものである。
【0198】
樹脂粒子(特に自己分散性ポリマー粒子)は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
樹脂粒子のインク組成物中における含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.5〜20質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましく、3〜15質量%がさらに好ましい。
【0199】
(界面活性剤)
本発明のインク組成物は、必要に応じて、界面活性剤を含むことができる。界面活性剤は、表面張力調整剤として用いることができる。
表面張力調整剤として、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等が有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤のいずれも使用することができる。更に、上記の分散剤(高分子分散剤)を界面活性剤としても用いてもよい。
本発明においては、インクの打滴干渉抑制の観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましく、中でもアセチレングリコール誘導体がより好ましい。
【0200】
界面活性剤(表面張力調整剤)をインク組成物に含有する場合、界面活性剤はインクジェット法によりインク組成物の吐出を良好に行なう観点から、インク組成物の表面張力を20〜60mN/mに調整できる範囲の量を含有するのが好ましく、表面張力の点からはより好ましくは20〜45mN/mであり、更に好ましくは25〜40mN/mである。
界面活性剤のインク組成物中における界面活性剤の具体的な量としては、前記表面張力となる範囲が好ましいこと以外は特に制限はなく、1質量%以上が好ましく、より好ましくは1〜10質量%であり、更に好ましくは1〜3質量%である。
【0201】
<その他成分>
インク組成物は、上記の成分に加え、必要に応じて更にその他成分として各種の添加剤を含むことができる。
前記各種の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、褪色防止剤、防黴剤、pH調整剤、防錆剤、酸化防止剤、乳化安定剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、キレート剤、固体湿潤剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0202】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
【0203】
褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としては、例えば、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。
【0204】
防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、ソルビン酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウムなどが挙げられる。
防黴剤は、インク組成物中の含有量が0.02〜1.00質量%である範囲とするのが好ましい。
【0205】
pH調整剤としては、調合されるインク組成物に悪影響を及ぼさずにpHを所望の値に調整できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、アルコールアミン類(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールなど)、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アンモニウム水酸化物(例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物など)、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。
【0206】
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
【0207】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0208】
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0209】
固体湿潤剤としては、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の糖類;糖アルコール類;ヒアルロン酸類;尿素類等を挙げることができる。
【0210】
〜インク組成物の物性〜
本発明のインク組成物の表面張力(25℃)としては、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上40mN/m以下である。
表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学株式会社製)を用い、インク組成物を25℃の条件下で測定される。
【0211】
また、本発明のインク組成物の25℃での粘度は、1.2mPa・s以上15.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2mPa・s以上13mPa・s未満であり、更に好ましくは2.5mPa・s以上10mPa・s未満である。
粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用い、インク組成物を25℃の条件下で測定される。
【0212】
<画像形成方法>
以下、本発明の画像形成方法について詳細に説明する。
本発明の画像形成方法は、本発明のインクセットを用いて、記録媒体上に(i)インク組成物中の成分を凝集させる酸発生剤と凝集剤とを含む処理液を付与する処理液付与工程と、記録媒体上に(ii)着色剤、好ましくは更に水溶性有機溶媒及び水を含むインク組成物を付与して画像を形成するインク付与工程と、を有する画像形成方法である。
また、本発明の画像形成方法は、必要に応じて、塗工紙に付与されたインク組成物中の有機溶剤を乾燥除去するインク乾燥工程や、インク組成物中に含まれる樹脂粒子や又はポリマーラテックスを溶融定着する加熱定着工程などの他の工程を更に設けて構成されてもよい。
【0213】
本発明において、前記記録媒体としては塗工紙であることが好ましい。即ち、記録媒体として、アート紙又はコート紙に代表される塗工紙に、着色剤を含むインク組成物と、このインク組成物中の成分を凝集させる凝集成分である酸発生剤及び凝集剤を特定量含有する処理液とを用いて画像形成をすることが好ましい。
当該画像形成の際に、前記処理液が酸発生剤及び凝集剤を含むことを考慮し、処理液の量を選択して付与することで、凝集反応を効率的に利用し、画像定着を迅速に行なうことができる。
そのため、表面荒れなど紙表面が変化して最終的な画像面を損なうことがなく、細線や微細な画像部分等を精細にかつ均質に描画でき、ベタ記録など広範囲にインク組成物を付与した際にはムラの発生を抑えて濃度均一性の高い画像を得ると共に、画像の耐擦性(紙との密着性)、耐オフセット性も向上する。また、高濃度の画像形成が可能で、画像の色再現性も良好になる。
【0214】
本発明の画像形成方法においては、処理液付与工程とインク付与工程とのいずれを先行して行なってもよい。細線や微細な画像部分等をより精細にかつ均質に描画し、あるいはベタ記録など広範囲にインクを付与した際のムラ発生を極力低減して濃度均一性をより高めることにより画像品質、耐擦性及び耐オフセット性をより向上させる観点からは、記録媒体上に、処理液付与工程により処理液を付与した後に、インク付与工程によりインク組成物を付与して画像を形成する態様が好ましい。前記記録媒体上に処理液を付与する際は、紙上の一部に又は紙全面に付与できるが好ましくは紙全面に付与することが好ましい。
【0215】
[処理液付与工程]
本発明における処理液付与工程では、本発明におけるインク組成物中の成分を凝集させる(「固定化させる」ともいう)成分である凝集剤、酸発生剤を含む処理液を塗工紙に付与する。画像記録方法を、処理液の存在下でインク組成物を用いて画像形成する構成とすることにより、記録後のカールとカックル、及びインクハジキの発生に対する抑制効果も得られ、画像品質、耐擦性及び耐オフセット性が良好な画像を記録することができる。
【0216】
処理液の記録媒体上への付与は、公知の液体付与方法を特に制限なく用いることができ、スプレー塗布、塗布ローラー等の塗布、インクジェット方式による付与、浸漬などの任意の方法を選択することができる。
【0217】
具体的には、例えば、ホリゾンタルサイズプレス法、ロールコーター法、カレンダーサイズプレス法などに代表されるサイズプレス法;エアーナイフコーター法などに代表されるサイズプレス法;エアーナイフコーター法などに代表されるナイフコーター法;ゲートロールコーター法などのトランスファーロールコーター法、ダイレクトロールコーター法、リバースロールコーター法、スクイズロールコーター法などに代表されるロールコーター法;ビルブレードコーター法、ショートデュエルコーター法;ツーストリームコーター法などに代表されるブレードコーター法;ロッドバーコーター法などに代表されるバーコーター法;ロッドバーコーター法などに代表されるバーコーター法;キャストコーター法;グラビアコーター法;カーテンコーター法;ダイコーター法;ブラシコーター法;転写法などが挙げられる。
【0218】
また、特開平10−230201号公報に記載の塗布装置のように、液量制限部材を備えた塗布装置を用いることで塗布量を制御して塗布する方法であってもよい。
【0219】
処理液付与工程における処理液の付与量としては特に制限はないが、例えば、0.01〜5g/mとすることができ、耐オフセット性と画像品質の観点から、0.1〜4.5g/mであることが好ましく、0.2〜4.0g/mであることがより好ましい。
【0220】
[インク付与工程]
本発明におけるインク付与工程は、着色剤を含むインク組成物を記録媒体上に付与して画像を形成する。
該インク組成物は本発明のインクセットにおける前述のインク組成物の項に記載したものと同義であり、好ましい例も同様である。
インク付与工程は、記録媒体上にインク組成物をインクジェット方式で付与して画像を記録することができれば特に制限はない。インクジェット方式による画像形成は、エネルギーを供与することにより、記録媒体上にインク組成物を吐出し、着色画像を形成する。なお、本発明に好ましいインクジェット記録方法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
【0221】
インクジェット方式には、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式等のいずれであってもよい。
尚、前記インクジェット方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【0222】
[インク乾燥工程]
本発明の画像形成方法においては、必要に応じて、記録媒体上に付与されたインク組成物中のインク溶媒(例えば、水、水溶性有機溶媒等)を乾燥除去するインク乾燥工程を備えていてもよい。インク乾燥工程は、インク溶媒の少なくとも一部を除去できれば特に制限はなく、通常用いられる方法を適用することができる。
【0223】
[固定化工程]
本発明のインクジェット記録方法は、処理液付与工程後、インク付与工程で記録された画像を、記録媒体上に固定化する固定化工程をさらに備えることが好ましい。固定化工程は、インク組成物中に含まれることがある樹脂粒子を溶融定着する加熱加圧定着工程であることが好ましい。また前記加熱加圧定着工程としては、インク組成物中に含まれる樹脂粒子を溶融定着することができる方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、特開2004−174981号公報等に記載の加熱加圧定着工程を本発明においても適用することができる。
【0224】
[記録媒体]
本発明の画像形成方法では、記録媒体として、前述の通り、一般のオフセット印刷などに用いられるいわゆる塗工紙を用いることが好ましい。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。
【0225】
これらの一般印刷用紙は、通常の水性インクを用いたインクジェット方式による画像形成においては、画像の滲みや耐擦性など、品質上の問題を生じるが、本発明の画像形成方法におけるインクジェット画像形成方法では、画像滲みが抑制されて均質で濃度ムラの発生が防止され、耐擦性、耐オフセット性の良好な画像を記録することができる。
【0226】
塗工紙は、一般に上市されているものを入手して使用できる。例えば、一般印刷用塗工紙を用いることができ、具体的には、王子製紙製の「OKトップコート+」、日本製紙社製の「オーロラコート」、「ユーライト」等のコート紙(A2、B2)、及び三菱製紙社製の「特菱アート」等のアート紙(A1)などを挙げることができる。
【実施例】
【0227】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0228】
(ポリマー分散剤P−1の合成)
攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコにメチルエチルケトン88gを加えて窒素雰囲気下で72℃に加熱し、ここにメチルエチルケトン50gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、ベンジルメタクリレート60g、メタクリル酸10g、及びメチルメタクリレート30gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後、メチルエチルケトン2gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温して4時間加熱した。得られた反応溶液は大過剰量のヘキサンに2回再沈殿し、析出した樹脂を乾燥し、ポリマー分散剤P−1を96g得た。
得られた樹脂の組成は、H−NMRで確認し、また、該樹脂をテトラヒドロフランにて0.1%に希釈し、GPC((ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によりポリスチレン換算で算出、使用カラムはTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製))より求めた重量平均分子量(Mw)は44,600であった。さらに、JIS規格(JISK0070:1992)に記載の方法により酸価を求めたところ、65.2mgKOH/gであった。
【0229】
(樹脂被覆顔料の分散物の調製)
−樹脂被覆シアン顔料分散物−
ピグメント・ブルー15:3(フタロシアニンブルーA220、大日精化工業(株)製)10部と、ポリマー分散剤P−1を5部と、メチルエチルケトン42部と、1mol/L NaOH水溶液5.5部と、イオン交換水87.2部とを混合し、ビーズミルにより0.1mmφジルコニアビーズを用いて2〜6時間分散した。
得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去することにより、顔料濃度が10.2質量%の樹脂被覆シアン顔料(カプセル化顔料)分散物(色材)を得た。
【0230】
−樹脂被覆マゼンタ顔料分散物−
上記樹脂被覆シアン顔料分散物の調製において、顔料として用いたフタロシアニンブルーA220の代わりに、Chromophthal Jet Magenta DMQ(ピグメント・レッド122、チバ・ジャパン社製)を用いた以外は上記と同様にして樹脂被覆マゼンタ顔料分散物(色材)を得た。
【0231】
−樹脂被覆イエロー顔料分散物−
上記樹脂被覆シアン顔料分散物の調製において、顔料として用いたフタロシアニンブルーA220の代わりに、Irgalite Yellow GS(ピグメント・イエロー74、チバ・ジャパン社製)を用いた以外は上記と同様にして樹脂被覆イエロー顔料分散物(色材)を得た。
【0232】
−樹脂被覆ブラック顔料分散物−
上記樹脂被覆シアン顔料分散物の調製において、顔料として用いたフタロシアニンブルーA220の代わりに、顔料分散体CAB−O−JETTM 200(カーボンブラック、CABOT社製)を用いた以外は上記と同様にして樹脂被覆ブラック顔料分散物(色材)を得た。
【0233】
(自己分散性ポリマー粒子の調製)
−自己分散性ポリマー粒子B−20の合成−
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン540.0gを仕込んで、窒素雰囲気下で75℃まで昇温した。反応容器内温度を75℃に保ちながら、メチルメタクリレート108g、イソボルニルメタクリレート388.8g、メタクリル酸43.2g、メチルエチルケトン108g、及び「V−601」(和光純薬工業(株)製)2.16gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、「V−601」1.08g、メチルエチルケトン15.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌後、さらに「V−601」0.54g、メチルエチルケトン15.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した後、85℃に昇温して、さらに2時間攪拌を続けた。
得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は61000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出、使用カラムはTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製))、酸価は52.1(mgKOH/g)であった。
尚、B−20のモノマー組成(質量基準)は、メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸(20/72/8)である。
【0234】
次に、重合溶液588.2gを秤量し、イソプロパノール165g、1モル/LのNaOH水溶液120.8mlを加え、反応容器内温度を80℃に昇温した。次に蒸留水718gを20ml/minの速度で滴下し、水分散化せしめた。その後、大気圧下にて反応容器内温度80℃で2時間、85℃で2時間、90℃で2時間保って溶媒を留去した。更に、反応容器内を減圧して、イソプロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を留去し、固形分濃度26.0%の自己分散性ポリマー粒子B−20(樹脂粒子)の水性分散物を得た。
【0235】
上記自己分散性ポリマー粒子B−20の水性分散物の調製において、モノマーの種類と添加量とをそれぞれ変更した以外は、上記と同様にして下記モノマー組成を有する自己分散性ポリマー粒子(樹脂粒子)の水性分散物をそれぞれ調製した。なお、括弧内は共重合成分の質量比を表す。
【0236】
・B−22:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(40/52/8)
・B−24:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(38/52/10)
【0237】
[インクセット1の調製]
以下のようにして、シアンインク(C−1)、マゼンタインク(M−1)、イエローインク(Y−1)、およびブラックインク(K−1)をそれぞれ調製し、これらのインク組成物からなるインクセット1を調製した。
【0238】
(シアンインクC−1の調製)
上記の樹脂被覆シアン顔料分散物と自己分散性ポリマーB−20の水性分散物とを用い、下記組成となるように、水溶性有機溶剤、界面活性剤、及びイオン交換水を混合し、その後5μmメンブランフィルタでろ過してシアンインクを調製した。
【0239】
−シアンインクC−1の組成−
・シアン顔料(ピグメント・ブルー15:3) ・・・4%
・ポリマー分散剤P−1(固形分) ・・・2%
・自己分散性ポリマー粒子B−20(樹脂粒子、固形分) ・・・6%
・POP(3)グリセリルエーテル(GP−250、水溶性有機溶剤)
・・・8%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME、水溶性有機溶剤)
・・・8%
・オルフィンE1010 ・・・1%
(日信化学工業(株)製;界面活性剤)
・イオン交換水 ・・・全体で100%となるように添加。
【0240】
pHメーターWM−50EG(東亜DKK(株)製)を用いて、シアンインクC−1のpH(25℃)を測定したところ、pH値は8.5であった。
【0241】
(マゼンタインクM−1の調製)
上記シアンインクC−1の調製において、樹脂被覆シアン顔料分散物の代わりに、樹脂被覆マゼンタ顔料分散物を用いた以外は上記と同様にして、マゼンタインクM−1を調製した。pH値は8.5であった。
【0242】
−マゼンタインクM−1の組成−
・マゼンタ顔料(ピグメント・レッド122) ・・・4%
・ポリマー分散剤P−1(固形分) ・・・2%
・自己分散性ポリマー粒子B−20(樹脂粒子、固形分) ・・・6%
・POP(3)グリセリルエーテル(GP−250、水溶性有機溶剤)
・・・8%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME、水溶性有機溶剤)
・・・8%
・オルフィンE1010 ・・・1%
(日信化学工業(株)製;界面活性剤)
・イオン交換水 ・・・全体で100%となるように添加。
【0243】
(イエローインクY−1の調製)
上記シアンインクC−1の調製において、樹脂被覆シアン顔料分散物の代わりに、樹脂被覆イエロー顔料分散物を用いた以外は上記と同様にして、イエローインクY−1を調製した。pH値は8.5であった。
【0244】
−イエローインクY−1の組成−
・イエロー顔料(ピグメント・イエロー74) ・・・4%
・ポリマー分散剤P−1(固形分) ・・・2%
・自己分散性ポリマー粒子B−20(樹脂粒子、固形分) ・・・6%
・POP(3)グリセリルエーテル(GP−250、水溶性有機溶剤)
・・・8%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME、水溶性有機溶剤)
・・・8%
・オルフィンE1010 ・・・1%
(日信化学工業(株)製;界面活性剤)
・イオン交換水 ・・・全体で100%となるように添加。
【0245】
(ブラックインクK−1の調製)
上記シアンインクC−1の調製において、樹脂被覆シアン顔料分散物の代わりに、樹脂被覆ブラック顔料分散物を用いた以外は上記と同様にして、ブラックインクK−1を調製した。
【0246】
−ブラックインクK−1の組成−
・ブラック顔料(カーボンブラック) ・・・4%
・ポリマー分散剤P−1(固形分) ・・・2%
・自己分散性ポリマー粒子B−20(樹脂粒子、固形分) ・・・6%
・POP(3)グリセリルエーテル(GP−250、水溶性有機溶剤)
・・・8%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME、水溶性有機溶剤)
・・・8%
・オルフィンE1010 ・・・1%
(日信化学工業(株)製;界面活性剤)
・イオン交換水 ・・・全体で100%となるように添加。
【0247】
[インクセット2〜3の調製]
インクセット1の調製において、樹脂粒子の種類を自己分散性ポリマーB−22に変更したものをインクセット2、自己分散性ポリマーB−24に変更したものをインクセット3とした以外は、インクセット1と同様にして、インクセット2〜3を調製した。
【0248】
(処理液1の調製)
以下の成分を混合して、処理液1を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液1のpH(25℃)を測定したところ、1.21であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・イミドスルホネート(AG−1) : 3.0g
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :64.3%
【0249】
(処理液2の調製)
以下の成分を混合して、処理液2を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液2のpH(25℃)を測定したところ、1.21であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・イミドスルホネート(AG−1、酸発生剤) : 5.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :62.3%
【0250】
(処理液3の調製)
以下の成分を混合して、処理液3を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液3のpH(25℃)を測定したところ、1.25であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・イミドスルホネート(AG−2、酸発生剤) : 3.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :64.3%
【0251】
(処理液4の調製)
以下の成分を混合して、処理液4を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液4のpH(25℃)を測定したところ、1.25であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・イミドスルホネート(AG−2、酸発生剤) : 5.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :62.3%
【0252】
(処理液5の調製)
以下の成分を混合して、処理液5を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液5のpH(25℃)を測定したところ、1.25であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・イミドスルホネート(AG−3、酸発生剤) : 3.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :64.3%
【0253】
(処理液6の調製)
以下の成分を混合して、処理液6を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液6のpH(25℃)を測定したところ、1.25であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・イミドスルホネート(AG−3、酸発生剤) : 5.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :62.3%
【0254】
(処理液7の調製)
以下の成分を混合して、処理液7を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液7のpH(25℃)を測定したところ、1.25であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・イミドスルホネート(AG−4、酸発生剤) : 3.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :64.3%
【0255】
(処理液8の調製)
以下の成分を混合して、処理液8を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液8のpH(25℃)を測定したところ、1.25であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・イミドスルホネート(AG−4、酸発生剤) : 5.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :62.3%
【0256】
(処理液9の調製)
以下の成分を混合して、処理液9を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液9のpH(25℃)を測定したところ、1.12であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・オキシムスルホネート(AG−5、酸発生剤) : 3.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :64.3%
【0257】
(処理液10の調製)
以下の成分を混合して、処理液10を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液10のpH(25℃)を測定したところ、1.12であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・オキシムスルホネート(AG−5、酸発生剤) : 5.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :62.3%
【0258】
(処理液11の調製)
以下の成分を混合して、処理液11を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液11のpH(25℃)を測定したところ、1.21であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・オキシムスルホネート(AG−6、酸発生剤) : 3.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :64.3%
【0259】
(処理液12の調製)
以下の成分を混合して、処理液12を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液12のpH(25℃)を測定したところ、1.21であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・オキシムスルホネート(AG−6、酸発生剤) : 5.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :62.3%
【0260】
(処理液13の調製)
以下の成分を混合して、処理液13を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液13のpH(25℃)を測定したところ、1.12であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・オキシムスルホネート(AG−7、酸発生剤) : 3.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :64.3%
【0261】
(処理液14の調製)
以下の成分を混合して、処理液14を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液14のpH(25℃)を測定したところ、1.12であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・オキシムスルホネート(AG−7、酸発生剤) : 5.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :62.3%
【0262】
(処理液15の調製)
以下の成分を混合して、処理液15を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液15のpH(25℃)を測定したところ、1.21であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・オキシムスルホネート(AG−8、酸発生剤) : 3.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :64.3%
【0263】
(処理液16の調製)
以下の成分を混合して、処理液16を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液16のpH(25℃)を測定したところ、1.21であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・オキシムスルホネート(AG−8、酸発生剤) : 5.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :62.3%
【0264】
(処理液17の調製)
以下の成分を混合して、処理液17を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液17のpH(25℃)を測定したところ、0.95であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・ニトロベンジルスルホネート(AG−9、酸発生剤) : 3.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :64.3%
【0265】
(処理液18の調製)
以下の成分を混合して、処理液18を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液18のpH(25℃)を測定したところ、0.95であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・ニトロベンジルスルホネート(AG−9、酸発生剤) : 5.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :62.3%
【0266】
(処理液19の調製)
以下の成分を混合して、処理液19を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液19のpH(25℃)を測定したところ、1.15であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・ニトロベンジルスルホネート(AG−10、酸発生剤) : 3.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :64.3%
【0267】
(処理液20の調製)
以下の成分を混合して、処理液20を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液20のpH(25℃)を測定したところ、1.15であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・ニトロベンジルスルホネート(AG−10、酸発生剤) : 5.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :62.3%
【0268】
(処理液21の調製)
以下の成分を混合して、処理液21を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液21のpH(25℃)を測定したところ、1.15であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・ニトロベンジルスルホネート(AG−11、酸発生剤) : 3.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :64.3%
【0269】
(処理液22の調製)
以下の成分を混合して、処理液22を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液22のpH(25℃)を測定したところ、1.15であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・ニトロベンジルスルホネート(AG−11、酸発生剤) : 5.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :62.3%
【0270】
(処理液23の調製)
以下の成分を混合して、処理液23を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液23のpH(25℃)を測定したところ、1.21であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・スルホネート化合物(AG−12、酸発生剤) : 3.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :64.3%
【0271】
(処理液24の調製)
以下の成分を混合して、処理液24を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液24のpH(25℃)を測定したところ、1.21であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・スルホネート化合物(AG−12、酸発生剤) : 5.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :62.3%
【0272】
(処理液25の調製)
以下の成分を混合して、処理液25を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液25のpH(25℃)を測定したところ、1.25であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・スルホネート化合物(AG−13、酸発生剤) : 3.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :64.3%
【0273】
(処理液26の調製)
以下の成分を混合して、処理液26を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液26のpH(25℃)を測定したところ、1.25であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・スルホネート化合物(AG−13、酸発生剤) : 5.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :62.3%
【0274】
(処理液27の調製)
以下の成分を混合して、処理液27を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液27のpH(25℃)を測定したところ、1.12であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・スルホネート化合物(AG−14、酸発生剤) : 3.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :64.3%
【0275】
(処理液28の調製)
以下の成分を混合して、処理液28を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液28のpH(25℃)を測定したところ、1.12であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・スルホネート化合物(AG−14、酸発生剤) : 5.0%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :62.3%
【0276】
(処理液29の調製)
以下の成分を混合して、処理液29を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液29のpH(25℃)を測定したところ、1.00であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :22.5%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :67.3%
【0277】
(処理液30の調製)
以下の成分を混合して、処理液30を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液30のpH(25℃)を測定したところ、1.00であった。
−処理液組成−
・マロン酸(凝集剤(酸性物質)) :27.5%
・GP−250 : 10%
・界面活性剤A(10%) : 0.2%
・イオン交換水 :62.3%
【0278】
上記処理液に用いた界面活性剤Aの構造、酸発生剤を下記に示す。
界面活性剤A:
15−CH=CH−C14−C(=O)−N(CH)−CHCH−SONa
【0279】
【化30】

【0280】
【表1】

【0281】
<実施例1>
[インクジェット記録]
記録媒体(塗工紙)として、特菱アート(坪量104.7g/m、三菱製紙(株)製)、OKトップコート+(坪量104.7g/m、王子製紙(株)製)、およびシルバーダイヤ(坪量104.7g/m、日本製紙(株)製)を用意して、以下に示すようにして画像を形成し、形成された画像について以下の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0282】
インク組成物として、上記で得られたシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、およびブラックインクからなるインクセットを用い、処理液1と共に、4色シングルパス記録によりライン画像とベタ画像を形成した。
このとき、ライン画像は、1200dpiの1ドット幅のライン、2ドット幅のライン、4ドット幅のラインをシングルパスで主走査方向に吐出することによりライン画像を形成した。
またベタ画像は、記録媒体をA5サイズにカットしたサンプルの全面にインク組成物を吐出することによりベタ画像を形成した。なお、記録する際の諸条件は下記の通りである。
【0283】
(1)処理液付与工程
記録媒体の全面に、アニロックスローラー(線数100〜300/インチ)で塗布量が制御されたロールコーターにて付与量が、1.4g/mとなるように処理液を塗布した。
【0284】
(2)処理工程
次いで、下記条件にて処理液が塗布された記録媒体について乾燥処理及び浸透処理を施した。
・風速:10m/s
・温度:記録媒体の記録面側の表面温度が60℃となるように、記録媒体の記録面の反対側(背面側)から接触型平面ヒーターで加熱した。
【0285】
(3)インク付与工程
その後、処理液が塗布された記録媒体の塗布面に、下記条件にてインク組成物をインクジェット方式で吐出し、ライン画像、ベタ画像をそれぞれ形成した。
・ヘッド:1,200dpi/20inch幅のピエゾフルラインヘッドを4色分配置
・吐出液滴量:2.0pL
・駆動周波数:30kHz
【0286】
(4)インク乾燥工程
次いで、インク組成物が付与された記録媒体を下記条件で乾燥した。
・乾燥方法:送風乾燥
・風速:15m/s
・温度:記録媒体の記録面側の表面温度が60℃となるように、記録媒体の記録面の反対側(背面側)から接触型平面ヒーターで加熱した。
【0287】
(5)固定化工程
次に、下記条件でローラ対を通過させることにより加熱定着処理を実施した。
・シリコンゴムローラ(硬度50°、ニップ幅5mm)
・ローラ温度:70℃
・圧力:0.2MPa
【0288】
[評価]
−耐擦性−
ベタ画像が記録された記録媒体の2cm四方のベタ部を印字直後、記録していない記録媒体(記録に用いたものと同じ記録媒体(以下、本評価において未使用サンプルという。))を重ねて荷重150kg/mをかけて10往復擦り、未使用サンプルの白地部分へのインクの転写度合いを目視で観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
A:インクの転写は全くなかった。
B:インクの転写が僅かに観られたが、実用上問題ないレベルであった。
C:インクの転写が多少見られ、実用上の許容限界レベルであった。
D:インクの転写が顕著であり、実用性の極めて低いレベルであった。
【0289】
−耐オフセット性−
マゼンタインクによるベタ画像上にシアンインクによるベタ画像を形成したときの均一画像部を目視にて観察し、濃度ムラの程度を下記の評価基準にしたがって評価した。
〜評価基準〜
A:オフセットは見られなかった。
B:一部に僅かにオフセットが見られたが、実用上問題ないレベルであった。
C:オフセットが発生し、実用上の許容限界レベルであった。
D:オフセットの発生が顕著であり、実用性の極めて低いレベルであった。
【0290】
<実施例2〜69>
実施例1において、用いる記録媒体およびインクセット、ならびに、処理液の種類および付与量を表1、2のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット方式による画像形成を行い、同様に評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0291】
<比較例1〜9>
実施例1において、用いる記録媒体およびインクセット、並びに処理液を表2のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット方式による画像形成を行い、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0292】
【表2】

【0293】
【表3】

【0294】
上記表1、表2に示すように、本発明の構成を有する実施例では、塗工紙を用いた場合に、均質な幅長のライン画像が得られ、ベタ記録した場合には濃度ムラの発生が抑えられ、均一で高い濃度の画像を得ることができた。しかも、オフセットによる画像バラツキが抑えられており、画像全体の光沢も良好であり、耐擦性も良好であった。
これに対し、凝集剤を用いない比較例では、濃度ムラ、ライン画像の描画性に劣っており、画像の耐擦性、耐オフセット性も悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤を含むインク組成物と、酸発生剤と凝集剤とを含む処理液と、を含むインクセット。
【請求項2】
前記インク組成物は、水溶性有機溶媒及び水を更に含む請求項1に記載のインクセット。
【請求項3】
前記酸発生剤は、光および熱の少なくとも一方により酸を発生する請求項1又は請求項2に記載のインクセット。
【請求項4】
前記酸発生剤が、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、及びニトロベンジルスルホネートから選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項5】
前記凝集剤が、酸性物質および多価金属塩から選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項6】
前記酸発生剤が、下記一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)及び、一般式(IV)より選ばれる少なくとも1種である請求項4又は請求項5に記載のインクセット。
【化1】



(一般式(I)中、C(炭素原子)とC(炭素原子)間は単結合あるいは二重結合で結合され、R又はRは、同じでも異なってもよく、下記(1)〜(4)のいずれか1つを表す。
(1)それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基。
(2)C、Cとともに1つあるいは複数のヘテロ原子を含んでよい単環または多環を形成する基。
(3)CとCを含む縮合した芳香環を形成する基。
(4)N−スルフォニルオキシイミドを含む残基。
はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、置換基を有してよいアリール基、置換基を有してよいアラルキル基、又は樟脳基を表す。
一般式(II)中、R及びRは、置換基を有していてもよい炭素数1から16のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、ヘテロアリール基、シアノ基を表す。また、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数2から8のアルキレン鎖、アルケニレン鎖、アルキニリン鎖、または、置換基を有していてもよいフェニレン、フリーレン、チエニレン、−O−、−S−、−N−、−CO−を含む連結鎖を介して、別の一般式(II)で表される化合物のRまたはRと結合されていてもよい。
は置換基を有していてもよい炭素数1〜16のアルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
一般式(III)中、Zは、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、ハロゲン置換されたアルキル基、ハロゲン置換されたアリール基、ハロゲン置換されたアルキルアリール基、ニトロ置換されたアリール基、ニトロ置換されたアルキルアリール基、ニトロ置換基とハロゲン置換基を有するアリール基、ニトロ置換基とハロゲン置換基を有するアルキルアリール基、又は、式−CSOCHR’C4−m(NO)を有する基を表す。R’は水素原子、メチル基、又はニトロ置換されたアリール基を表す。mは0、1又は2を表し、mが1又は2のときの各Qはそれぞれ独立に炭化水素基、ヒドロカルボノキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子又は有機ケイ素基を表す。但し、Qは酸性の基ではない。また、Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアシル基を表す。
一般式(IV)中、R’およびR”はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐若しくは環状のアルキル基、または置換を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基を示す。)
【請求項7】
前記酸性物質が、3価以下の酸性物質である請求項5又は請求項6に記載のインクセット。
【請求項8】
前記酸性物質の濃度が、処理液の全質量中の40質量%以下である請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項9】
前記多価金属塩が、2価金属塩及び3価金属塩から選択される少なくとも1種の多価金属塩である請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項10】
前記インク組成物が、樹脂粒子を更に含む請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のインクセットを用い、処理液を記録媒体上へ付与する処理液付与工程と、インク組成物を記録媒体上に付与するインク付与工程とを有する画像形成方法。
【請求項12】
前記記録媒体が塗工紙である請求項11に記載の画像形成方法。
【請求項13】
記録媒体上に、前記処理液付与工程により処理液を付与した後、前記インク付与工程によりインク組成物を付与する請求項11又は請求項12に記載の画像形成方法。
【請求項14】
前記インク付与工程は、前記インク組成物をインクジェット法により吐出して画像を形成する請求項11〜13のいずれか1項に記載の画像形成方法。

【公開番号】特開2011−73195(P2011−73195A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225192(P2009−225192)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】