インクタンク、液滴吐出ヘッド及びインクジェット記録装置
【課題】液滴吐出ヘッドをキャリッジに固定して主走査方向へ往復運動しながらインクを吐出する液滴吐出装置において、部品点数の増加によるコストアップを最小限に抑え、インクタンク内での発塵の心配がなく、更にインク収容部の液面から底部まで満遍なく攪拌でき、濃度変化の少ない画像形成に寄与できるインクタンクを提供する。
【解決手段】インクタンク105のインク収容部104は、該インク収容部を主走査方向における往動側と復動側とに隔てる固定された隔壁120により、インク収容部104aと、インク収容部104bとに区画され、インク収容部104の上下には、下部連通口115と上部連通口116が設けられ、移動時の慣性でインクが移動可能となっている。
【解決手段】インクタンク105のインク収容部104は、該インク収容部を主走査方向における往動側と復動側とに隔てる固定された隔壁120により、インク収容部104aと、インク収容部104bとに区画され、インク収容部104の上下には、下部連通口115と上部連通口116が設けられ、移動時の慣性でインクが移動可能となっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクタンク、該インクタンクを備えた液滴吐出ヘッド、該液滴吐出ヘッドを有する複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、これらのうち少なくとも1つを備えた複合機等のインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料インクを吐出するインクジェット記録装置等の液滴吐出装置においては、インクタンクのインク収容部内に貯留したインクの顔料成分が沈降し、これによりインクの濃度が変化して画像品質を低下させてしまうという問題がある。
顔料成分を沈降させない、又は沈降した顔料成分を攪拌することにより再度分散させる技術として、超音波振動を与えるなど外部の力によりインクを攪拌するものが従来から知られている。
例えば、特許文献1には、顔料成分を振動、回転、超音波など、外部の力で攪拌するインクジェット記録装置及び記録方法が開示されている。 しかしながら、これらの方法では、部品点数が増すことで装置が複雑になり、コストが増加するという問題が指摘されている。
【0003】
一方、特に吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)をキャリッジに固定し主走査方向へ往復運動しながらインクを吐出する液滴吐出装置で、吐出ヘッドに直接、又は前記キャリッジ上に固定するインクカートリッジ又はインクタンクにおいては、キャリッジの往復運動による慣性を利用し、板状攪拌部材や球状攪拌部材等の移動動作によりカートリッジ又はインクタンク内の液体を攪拌する技術が知られている。
例えば、特許文献2に記載のインクタンクおよび記録装置や、特許文献3に記載の液体収容体及び液体噴射装置では、インク収容部にキャリッジの往復運動による慣性を利用した攪拌部材によってインクを攪拌する技術が紹介されている。
これら攪拌部材を用いた攪拌方式は構造が単純であり、有効的な手段ではあるが、攪拌部材が動作するときに摩擦で発塵する削れかすが異物となり、画像品質を低下させてしまうという問題が懸念されている。
【0004】
また、吐出ヘッドをキャリッジに固定し主走査方向へ往復運動しながらインクを吐出する液滴吐出装置であり、インク収容部内に空気が存在するインクタンクの場合、キャリッジの往復運動による慣性により、インク自体が掻き混ぜられることにより攪拌される効果はあるが、往復動作により液面は大きく揺れるのに対し、顔料成分が沈降している底面部については効果は小さく、これだけでは十分な攪拌効果が得られない。
例えば、特許文献4に記載の液体収容容器では、インクタンク底部の形状を工夫し、顔料成分の沈降した底部付近に滞留を起こし効率よく攪拌する技術が記載されている。
しかしながら、この方法においても、液面から底部までの全体に亘って攪拌することは難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような現状に鑑みてなされたもので、液滴吐出ヘッドをキャリッジに固定して主走査方向へ往復運動しながらインクを吐出する液滴吐出装置において、部品点数の増加によるコストアップを最小限に抑え、インクタンク内での発塵の心配がなく、更にインク収容部の液面から底部まで満遍なく攪拌でき、濃度変化の少ない画像形成に寄与できるインクタンクの提供を、その主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、主走査方向に往復運動するキャリッジに搭載され、上部に空間が存在するようにインクが収容されるインク収容部を有するインクタンクにおいて、前記インク収容部が、該インク収容部を主走査方向における往動側と復動側とに隔てる固定された隔壁を有し、前記インク収容部の上部と下部には、前記隔壁で隔てられた各インク収容部を互いに連通させる開口部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクタンクにおいて、前記開口部のうち、上部の開口部の下端と液面とがほぼ同等の位置であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のインクタンクにおいて、前記隔壁の上部と下部のうち、少なくとも一方に前記隔壁で隔てられた各インク収容部間でのインクの流れ方向を一方向に規制する抵抗体を有することを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載のインクタンクにおいて、前記インク収容部の壁面とこれに対向する前記隔壁の側面のうち、少なくとも一方の形状は、緩やかな曲線を描く形状であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、液滴吐出ヘッドにおいて、請求項1〜4のいずれか1つに記載のインクタンクを搭載したことを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、インクジェット記録装置において、請求項5に記載の液滴吐出ヘッドを搭載したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コスト増加を抑制できる簡単な構成で、且つ、発塵を生じない構成で、インク収容部内のインク全体を効果的に撹拌でき、長期間(長時間)放置後でも濃度変化による画質低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るインクタンクを有する液滴吐出ヘッドユニットの斜視図である。
【図2】従来の液滴吐出ヘッドユニットの概要断面図である。
【図3】従来の液滴吐出ヘッドユニットにおいて、インクタンクの底部にインク顔料成分が滞留した状態を示す概要断面図である。
【図4】従来の液滴吐出ヘッドユニットを主走査方向に移動させた場合のインクタンク内の撹拌状態を示す概要断面図である。
【図5】第1の実施形態に係る液滴吐出ヘッドユニットのインクタンクの概要断面図である。
【図6】同液滴吐出ヘッドユニットを主走査方向に移動させた場合のインクタンク内の撹拌動作を示す概要断面図である。
【図7】第2の実施形態に係る液滴吐出ヘッドユニットのインクタンクの概要断面図である。
【図8】同液滴吐出ヘッドユニットを主走査方向に移動させた場合のインクタンク内の撹拌動作を示す概要断面図である。
【図9】第3の実施形態に係る液滴吐出ヘッドユニットのインクタンクの概要断面図である。
【図10】同液滴吐出ヘッドユニットを主走査方向に移動させた場合のインクタンク内の撹拌動作を示す概要断面図である。
【図11】第4の実施形態に係る液滴吐出ヘッドユニットのインクタンクの概要断面図である。
【図12】同液滴吐出ヘッドユニットを主走査方向に移動させた場合のインクタンク内の撹拌動作を示す概要断面図である。
【図13】本発明のインクジェット記録装置の概要平面図である。
【図14】同概要側面図である。
【図15】同外観斜視図である。
【図16】同主要部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
まず、図1乃至図6に基づいて第1の実施形態を説明する。図1は本実施形態に係るインクタンクを備えた液滴吐出ヘッドユニットの斜視図である。すなわち、後述するキャリッジに搭載される液滴吐出ヘッド(以下、「記録ヘッド」、「インクジェットヘッド」ともいう)に本実施形態に係るインクタンクを搭載したユニットの外観図である。
図2は、本発明を分かり易くするために示した、本発明の基本構成としての従来の液滴吐出ヘッドユニットの側部断面図である。
【0012】
液滴吐出ヘッドユニット101は、液滴を吐出する液滴吐出ヘッド102と、液滴吐出ヘッド102に供給される液体(以下「インク」という。)をろ過するフィルタ113が内蔵されたフィルタ室118を有するフィルタ部であるフィルタユニット106を備え、フィルタユニット106を介してインク収容部104を備えたインクタンク105からインク110が供給される。
液滴吐出ヘッド102は、流路板119とノズル板121とを接合して構成され、ノズル板121に形成された液滴を吐出する複数のノズル122が連通する複数の液室123を形成している。
図示しないアクチュエータ手段によって液室123内のインクを加圧することによってノズル122から液滴を吐出させる。液室123にはフィルタユニット106を介してインク110が供給されるインク供給流路124が連通している。なお、図示しないアクチュエータ手段としては圧電型アクチュエータ、静電型アクチュエータ、サーマル型アクチュエータなどを用いることができる。
【0013】
インクタンク105は、図示しないインクチューブを介して外部からインク110が供給充填される。インクタンク105には内部を大気開放するための大気開放機構108が設けられ、また内部のインク110の残量を検知する液面検知センサ109が設けられている。
インクタンク105と液滴吐出ヘッド102との間に介在されるフィルタユニット106は、フィルタケース内にフィルタ室118を有し、フィルタ室118内に液滴吐出ヘッド102に供給するインク110をろ過するフィルタ113を設けている。フィルタ113は、不織布状の金属繊維を重ねた焼結体、SUS繊維などの金属繊維からなるものが好ましい。
【0014】
液滴吐出ヘッドユニット101は、インクタンク105の側面に開口領域を有し、該開口領域にドーム型に形成された可撓性フィルムシート103を溶着または接着してインク収容部104を構成している。
インクタンク105の上部にはインク収容部104にインク110を供給するための図示しない液体供給チューブを接続するインクチューブ接続部107と、インク収容部104にインク110を供給する際、インク収容部104内に溜まった空気111を排出するための大気開放部108とを備えている。
インク収容部104内にインク110を供給する際は、大気開放部108を大気に連通し、インク110を図示しない液体搬送ポンプで送り込むと、インク収容部104内のインク110の液面が上昇する。
インク収容部104の上部に配置した液面検知センサ109によりインク110液面を検知し、液体搬送ポンプを止め、液体供給動作が終了する。
この時、インクタンク105のインク収容部104の上部には、僅かな、空気が存在する空間111が残る。
【0015】
インク収容部104内には可撓性フィルムシート103を外方に付勢する付勢部材112を有している。インク収容部104内のインク110の吸引、または吐出によるインク収容部104内の体積変化により可撓性フィルムシート103が凹み、付勢部材112が縮むことによりインク収容部104内に負圧を発生させている。
【0016】
ここで、従来のヘッドタンクにおける不具合を図3及び図4を参照して説明する。
なお、図3はインクを貯留した従来のインクタンクを接続した液滴吐出ヘッドユニットの側部断面図、図4は前記液滴吐出ヘッドユニットを画像形成装置に搭載した時の主走査方向に移動した際のインク収容部内のインクの状態を図示した液滴吐出ヘッドユニット側部断面図である。
インクタンク105のインク収容部104に貯留したインク110は、長期間使用しない場合にインク110に含まれる顔料成分110bが沈降する場合がある。
インク収容部104の底部104cにはフィルタユニット106にインク110を供給するためのインク供給部114があり、インク収容部104内で沈降した顔料成分110bは、インク供給部114上部に溜まる。
通常の使用状態では、顔料成分110bが沈降する前に吐出動作を行うため、吐出するインク110の濃度が変わることはないが、長期間放置した後に吐出を行うと、インク濃度が通常より濃い状態で吐出されるため、画像濃度が変わり、画質不良が発生することとなる。
【0017】
前記従来のインクタンク105を含む液滴吐出ヘッドを搭載した画像形成装置においては、図4に示すように、液滴吐出ヘッドを固定したキャリッジを主走査方向に往復移動させても、インク液面110a付近及び、顔料成分110bとインク110の境界部は僅かに揺れるが、全体を攪拌しインク110を通常の濃度状態にすることはできない。
【0018】
次に本実施形態に係るインクタンクについて図5及び図6を参照して説明する。
なお、図5は本実施形態に係るインクタンクの側部断面図、図6(a)は該インクタンクを画像形成装置に搭載した時の主走査方向の可撓性フィルムシート側に移動した際のインクの状態を図示した側部断面図、図6(b)は該インクタンクを続けて逆方向に移動した際のインクの状態を図示した側部断面図である。
本実施形態に係るインクタンク105は、インク収容部104を主走査方向における往動側と復動側とに隔てる隔壁120を有しており、インク収容部104は、往動側のインク収容部104aと、復動側のインク収容部104bとに区画されている。隔壁120は、インク収容部104の紙面に直交する方向の側面に固定されている。
隔壁120の上部及び下部には、インク収容部104aとインク収容部104bとを連通させる開口部としての下部連通口115と、上部連通口116とが設けられている。上部連通口116は空間111に連通している。
【0019】
本実施形態に係るインクタンク105においても、長期間放置した場合には顔料成分110bがインク収容部底部104cに沈降することを防ぐことはできないが、液滴吐出ヘッドユニット101を固定したキャリッジを主走査方向に移動することによる慣性で、図6(a)で示すように、可撓性フィルムシート103が接合された開口領域側(往動側)に移動した場合、その反対方向にインク110が偏り、インク収容部104a内のインクがインク収容部104bに流れ込み、インク収容部104bの液面が上昇し、上部連通口116を介して隔壁120の上方を越える。
続いて上記とは逆方向に移動した場合、図6(b)で示すように、上部連通口116を越えたインク110はインク収容部104a側に流れ込む。
これにより、インク収容部104内のインク110はインク収容部底部104cとインク液面110a付近の両方、すなわちインク収容部上下部分で攪拌でき、従来に比べて攪拌能力を向上させることができる。
【0020】
図7及び図8に基づいて第2の実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、特に必要がない限り既にした構成上及び機能上の説明は省略して要部のみ説明する(以下の他の実施形態において同じ)。
図7は本実施形態に係るインクタンクの側部断面図、図8(a)は本実施形態に係るインクタンクを画像形成装置に搭載した時の主走査方向のフィルムシート側(往動側)に移動した際のインクの状態を図示した側部断面図、図8(b)はインクタンクを続けて逆方向(復動側)に移動させた際のインクの状態を図示した側部断面図である。
【0021】
図7に示すように、本実施形態では、インクタンク105の隔壁120に隔てられたインク収容部104aとインク収容部104bとを連通する上部連通口116の下面(下端)は、インク液面110aとほぼ同じ高さになるよう開口している。
これにより、液滴吐出ヘッドユニットを固定したキャリッジを主走査方向に移動することによる慣性で、図8(a)で示すように、可撓性フィルムシート103が接合された開口領域側に移動した場合、その反対方向にインク110が偏り、インク収容部104a内のインクが下部連通口115を介してインク収容部104bに流れ込み、インク収容部104bの液面が上昇し、上部連通口116を介して隔壁120の上方を越える。
【0022】
続いて上記とは逆方向に移動した場合、図8(b)で示すように、隔壁120の上方を越えたインク110は、インク収容部104a側に流れ込むが、上部連通口116はインク液面110aとほぼ同じ高さになるよう開口しているため、より多くのインク110がインク収容部104a内に流入する。
これにより、従来に比べて攪拌能力をさらに向上させることができる。
【0023】
図9及び図10に基づいて第3の実施形態を説明する。
図9は本実施形態に係るインクタンクの側部断面図、図10(a)は本実施形態に係るインクタンクを画像形成装置に搭載した時の主走査方向のフィルムシート側に移動した際のインクの状態を図示した側部断面図、図10(b)はインクタンクを続けて逆方向に移動させた際のインクの状態を図示した側部断面図である。
本実施形態では、図9に示すように、インクタンク105の隔壁120の上部は、インク液面110aより僅かに高く、インク液面110aを覆うように抵抗体117を設ける構成となっている。ここでは抵抗体117は、隔壁120の上端部を略直角に折り曲げて水平方向(主走査方向)に延ばして一体に形成されているが、別部材で構成してもよい。
これにより、図10(a)で示すように、抵抗体117のある側のインク収容部方向にキャリッジが移動する際、インク収容部104aの液面近くのインク110は上面に覆いかぶさる抵抗体117に当たり上部連通口116を通ってインク収容部104b側に流れることはできず、下部連通口115からのみインク収容部104b側に移動する。
【0024】
また、上記とは反対方向にキャリッジが移動する際は、図10(b)で示すように、インク収容部104bの上部には抵抗体がないため、インク液面110aが上昇したインク収容部104b上部のインク110は、上部連通口116を通りインク収容部104a側に流れ込む。
このように、インク収容部104aとインク収容部104bとの間において一方向にだけインクの流れができることにより、攪拌能力を更に向上させることができる。
【0025】
図11及び図12に基づいて第4の実施形態を説明する。
図11は本実施形態に係るインクタンクの側部断面図、図12(a)は本実施形態に係るインクタンクを画像形成装置に搭載した時の主走査方向のフィルムシート側に移動した際のインクの状態を図示した側部断面図、図12(b)はインクタンクを続けて逆方向に移動させた際のインクの状態を図示した側部断面図である。
本実施形態では、図11に示すように、インクタンク105のインク収容部104bの横方向壁面116及び隔壁120は、緩やかな曲線を描いた湾曲面形状となっている。
これにより、液滴吐出ヘッドユニットを固定したキャリッジを主走査方向に移動させることによる慣性で流動するインクの流れを縦方向に変換する力が加わり、より多くのインクを流動させることができ、攪拌能力を更に向上させることができる。
【0026】
なお、図11及び図12(a)、(b)では、インク収容部104bが連続した曲線になるよう構成しているが、断続した曲線形状でもよく、また下方、上方どちらか一方だけが曲線(曲面)になる構成でもよい。
また、隔壁120は曲線ではなく、直線的な形状で構成されていても同様の効果を得ることができる。
【0027】
本発明のインクタンクを搭載したインクジェット記録装置に係るインク供給経路の一例について図13を参照し説明する。なお、図13は本発明のインクジェット記録装置の上面側から見た説明図である。
図13に示されるように、本発明のインクジェット記録装置のインク供給を実施するためのインク供給装置は、記録ヘッド14(上記実施形態の符号102に相当)のインク吐出口面を密閉して覆うキャップ282と、記録ヘッド(インクジェットヘッド)14に近接して設けられたインクタンク35(上記実施形態の符号105に相当)と、キャップ282に排出されたインクを吸収して収容する廃インク貯蔵タンク(図示せず)と、インクを保有するメインタンク10k、10c、10m、10yと、メインインクタンク10k、10c、10m、10yから記録ヘッド14にインクを送るための送液ポンプ(図示せず)と、インクタンクとメインインクタンクとを接続するインクチューブ25からなるインク供給回路とから構成されている。
【0028】
次に、本発明に係る記録ヘッド或いは液滴吐出装置を備えたインクジェット記録装置の一例について図13〜16を参照して説明する。なお、図14はインクジェット記録装置の側面説明図、図15はインクジェット記録装置の外観斜視図、図16はインクジェット記録装置の主要部平面図である。
インクジェット記録装置は、左右のメイン側板に横架したガイド部材であるガイドロッド91とガイドレール(図示せず)とでキャリッジ93を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ94でタイミングベルトを介して図13で矢示方向(主走査方向)に移動走査する。
キャリッジ93には、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個の記録ヘッド14を、複数のインク吐出口を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。なお、記録ヘッド14の構成としては、圧電素子などの圧電アクチュエータを用いたものを使用している。
【0029】
キャリッジ93には、記録ヘッド14に各色のインクを供給するための各色のインクタンク35を搭載している。インクタンク35にはインク供給チューブ25を介してメインタンク10(k、c、m、y)からインクが補充供給される。
この実施形態では、インクタンク35と記録ヘッド14で本発明に係るインクジェット記録装置を構成しているが、記録ヘッド14は、別途インクタンク35を設ける構成とすることもできるし、あるいは、インクタンクを用いないでメインタンクを搭載する構成とすることもできる。
一方、給紙カセット2などの用紙積載部41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙ローラ)43及び給紙ローラ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙ローラ43側に付勢されている。
【0030】
給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド14の下方側で搬送するための搬送部として、用紙42を静電吸着して搬送するための搬送ベルト51と、給紙部からガイド45を介して送られる用紙42を搬送ベルト51との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ46と、略鉛直上方に送られる用紙42を略90°方向転換させて搬送ベルト51上に倣わせるための搬送ガイド47と、押さえ部材49で搬送ベルト51側に付勢された先端加圧コロとを備えている。また、搬送ベルト51表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。
搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、副走査モータ131からタイミングベルト132及びタイミングローラ133を介して搬送ローラ52が回転されることで、図16のベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。なお、搬送ベルト51の裏面側には記録ヘッド14による画像形成領域に対応してガイド部材を配置している。
【0031】
また、図16に示すように、搬送ローラ52の軸には、スリット円板134を取り付け、このスリット円板134のスリットを検知するセンサ135を設けて、これらのスリット円板134及びセンサ135によってエンコーダ136を構成している。
帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に各2.5Nの圧力をかけている。
キャリッジ93の前方側には、図13に示すように、スリットを形成したエンコーダスケール(図示せず)を設け、キャリッジ93の前面側にはエンコーダスケール(図示せず)のスリットを検出する透過型フォトセンサ(図示せず)からなるエンコーダセンサ(図示せず)を設け、これらによって、キャリッジ93の主走査方向位置(ホーム位置に対する位置)を検知するためのエンコーダ(図示せず)を構成している。
さらに、記録ヘッド14で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離部と、排紙ローラ62及び排紙コロ63と、排紙される用紙42をストックする排紙トレイ3とを備えている。
【0032】
また、装置背部には両面給紙ユニット71が着脱自在に装着されている。両面給紙ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。
このように構成したインクジェット記録装置においては、給紙部から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド47で案内されて先端加圧コロで搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、図示しない制御回路によって高圧電源から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。
このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に静電力で吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド14を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。
【0033】
記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
両面印刷の場合には、表面(最初に印刷する面)の記録が終了したときに、搬送ベルト51を逆回転させることで、記録済みの用紙42を両面給紙ユニット71内に送り込み、用紙42を反転させて(裏面が印刷面となる状態にして)再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙し、タイミング制御を行って、前述したと同様に搬送ベル51上に搬送して裏面に記録を行った後、排紙トレイ3に排紙する。
なお、本発明に係るインクジェット記録装置は、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、これらの複合機などにも適用することができる。
また、インク以外の液体、例えばDNA試料やレジスト、パターン材料などを吐出する液滴吐出ヘッドや液滴吐出装置、或いはこれらを備えるインクジェット記録装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
93 キャリッジ
102 液滴吐出ヘッド
104 インク収容部
105 インクタンク
110 インク
115 開口部としての下部連通口
116 開口部としての上部連通口
117 抵抗体
120 隔壁
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】特開2001−322297号公報
【特許文献2】特開2007−62336号公報
【特許文献3】特開2006−44153号公報
【特許文献4】特開2007−130813号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクタンク、該インクタンクを備えた液滴吐出ヘッド、該液滴吐出ヘッドを有する複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、これらのうち少なくとも1つを備えた複合機等のインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料インクを吐出するインクジェット記録装置等の液滴吐出装置においては、インクタンクのインク収容部内に貯留したインクの顔料成分が沈降し、これによりインクの濃度が変化して画像品質を低下させてしまうという問題がある。
顔料成分を沈降させない、又は沈降した顔料成分を攪拌することにより再度分散させる技術として、超音波振動を与えるなど外部の力によりインクを攪拌するものが従来から知られている。
例えば、特許文献1には、顔料成分を振動、回転、超音波など、外部の力で攪拌するインクジェット記録装置及び記録方法が開示されている。 しかしながら、これらの方法では、部品点数が増すことで装置が複雑になり、コストが増加するという問題が指摘されている。
【0003】
一方、特に吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)をキャリッジに固定し主走査方向へ往復運動しながらインクを吐出する液滴吐出装置で、吐出ヘッドに直接、又は前記キャリッジ上に固定するインクカートリッジ又はインクタンクにおいては、キャリッジの往復運動による慣性を利用し、板状攪拌部材や球状攪拌部材等の移動動作によりカートリッジ又はインクタンク内の液体を攪拌する技術が知られている。
例えば、特許文献2に記載のインクタンクおよび記録装置や、特許文献3に記載の液体収容体及び液体噴射装置では、インク収容部にキャリッジの往復運動による慣性を利用した攪拌部材によってインクを攪拌する技術が紹介されている。
これら攪拌部材を用いた攪拌方式は構造が単純であり、有効的な手段ではあるが、攪拌部材が動作するときに摩擦で発塵する削れかすが異物となり、画像品質を低下させてしまうという問題が懸念されている。
【0004】
また、吐出ヘッドをキャリッジに固定し主走査方向へ往復運動しながらインクを吐出する液滴吐出装置であり、インク収容部内に空気が存在するインクタンクの場合、キャリッジの往復運動による慣性により、インク自体が掻き混ぜられることにより攪拌される効果はあるが、往復動作により液面は大きく揺れるのに対し、顔料成分が沈降している底面部については効果は小さく、これだけでは十分な攪拌効果が得られない。
例えば、特許文献4に記載の液体収容容器では、インクタンク底部の形状を工夫し、顔料成分の沈降した底部付近に滞留を起こし効率よく攪拌する技術が記載されている。
しかしながら、この方法においても、液面から底部までの全体に亘って攪拌することは難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような現状に鑑みてなされたもので、液滴吐出ヘッドをキャリッジに固定して主走査方向へ往復運動しながらインクを吐出する液滴吐出装置において、部品点数の増加によるコストアップを最小限に抑え、インクタンク内での発塵の心配がなく、更にインク収容部の液面から底部まで満遍なく攪拌でき、濃度変化の少ない画像形成に寄与できるインクタンクの提供を、その主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、主走査方向に往復運動するキャリッジに搭載され、上部に空間が存在するようにインクが収容されるインク収容部を有するインクタンクにおいて、前記インク収容部が、該インク収容部を主走査方向における往動側と復動側とに隔てる固定された隔壁を有し、前記インク収容部の上部と下部には、前記隔壁で隔てられた各インク収容部を互いに連通させる開口部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクタンクにおいて、前記開口部のうち、上部の開口部の下端と液面とがほぼ同等の位置であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のインクタンクにおいて、前記隔壁の上部と下部のうち、少なくとも一方に前記隔壁で隔てられた各インク収容部間でのインクの流れ方向を一方向に規制する抵抗体を有することを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載のインクタンクにおいて、前記インク収容部の壁面とこれに対向する前記隔壁の側面のうち、少なくとも一方の形状は、緩やかな曲線を描く形状であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、液滴吐出ヘッドにおいて、請求項1〜4のいずれか1つに記載のインクタンクを搭載したことを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、インクジェット記録装置において、請求項5に記載の液滴吐出ヘッドを搭載したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コスト増加を抑制できる簡単な構成で、且つ、発塵を生じない構成で、インク収容部内のインク全体を効果的に撹拌でき、長期間(長時間)放置後でも濃度変化による画質低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るインクタンクを有する液滴吐出ヘッドユニットの斜視図である。
【図2】従来の液滴吐出ヘッドユニットの概要断面図である。
【図3】従来の液滴吐出ヘッドユニットにおいて、インクタンクの底部にインク顔料成分が滞留した状態を示す概要断面図である。
【図4】従来の液滴吐出ヘッドユニットを主走査方向に移動させた場合のインクタンク内の撹拌状態を示す概要断面図である。
【図5】第1の実施形態に係る液滴吐出ヘッドユニットのインクタンクの概要断面図である。
【図6】同液滴吐出ヘッドユニットを主走査方向に移動させた場合のインクタンク内の撹拌動作を示す概要断面図である。
【図7】第2の実施形態に係る液滴吐出ヘッドユニットのインクタンクの概要断面図である。
【図8】同液滴吐出ヘッドユニットを主走査方向に移動させた場合のインクタンク内の撹拌動作を示す概要断面図である。
【図9】第3の実施形態に係る液滴吐出ヘッドユニットのインクタンクの概要断面図である。
【図10】同液滴吐出ヘッドユニットを主走査方向に移動させた場合のインクタンク内の撹拌動作を示す概要断面図である。
【図11】第4の実施形態に係る液滴吐出ヘッドユニットのインクタンクの概要断面図である。
【図12】同液滴吐出ヘッドユニットを主走査方向に移動させた場合のインクタンク内の撹拌動作を示す概要断面図である。
【図13】本発明のインクジェット記録装置の概要平面図である。
【図14】同概要側面図である。
【図15】同外観斜視図である。
【図16】同主要部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
まず、図1乃至図6に基づいて第1の実施形態を説明する。図1は本実施形態に係るインクタンクを備えた液滴吐出ヘッドユニットの斜視図である。すなわち、後述するキャリッジに搭載される液滴吐出ヘッド(以下、「記録ヘッド」、「インクジェットヘッド」ともいう)に本実施形態に係るインクタンクを搭載したユニットの外観図である。
図2は、本発明を分かり易くするために示した、本発明の基本構成としての従来の液滴吐出ヘッドユニットの側部断面図である。
【0012】
液滴吐出ヘッドユニット101は、液滴を吐出する液滴吐出ヘッド102と、液滴吐出ヘッド102に供給される液体(以下「インク」という。)をろ過するフィルタ113が内蔵されたフィルタ室118を有するフィルタ部であるフィルタユニット106を備え、フィルタユニット106を介してインク収容部104を備えたインクタンク105からインク110が供給される。
液滴吐出ヘッド102は、流路板119とノズル板121とを接合して構成され、ノズル板121に形成された液滴を吐出する複数のノズル122が連通する複数の液室123を形成している。
図示しないアクチュエータ手段によって液室123内のインクを加圧することによってノズル122から液滴を吐出させる。液室123にはフィルタユニット106を介してインク110が供給されるインク供給流路124が連通している。なお、図示しないアクチュエータ手段としては圧電型アクチュエータ、静電型アクチュエータ、サーマル型アクチュエータなどを用いることができる。
【0013】
インクタンク105は、図示しないインクチューブを介して外部からインク110が供給充填される。インクタンク105には内部を大気開放するための大気開放機構108が設けられ、また内部のインク110の残量を検知する液面検知センサ109が設けられている。
インクタンク105と液滴吐出ヘッド102との間に介在されるフィルタユニット106は、フィルタケース内にフィルタ室118を有し、フィルタ室118内に液滴吐出ヘッド102に供給するインク110をろ過するフィルタ113を設けている。フィルタ113は、不織布状の金属繊維を重ねた焼結体、SUS繊維などの金属繊維からなるものが好ましい。
【0014】
液滴吐出ヘッドユニット101は、インクタンク105の側面に開口領域を有し、該開口領域にドーム型に形成された可撓性フィルムシート103を溶着または接着してインク収容部104を構成している。
インクタンク105の上部にはインク収容部104にインク110を供給するための図示しない液体供給チューブを接続するインクチューブ接続部107と、インク収容部104にインク110を供給する際、インク収容部104内に溜まった空気111を排出するための大気開放部108とを備えている。
インク収容部104内にインク110を供給する際は、大気開放部108を大気に連通し、インク110を図示しない液体搬送ポンプで送り込むと、インク収容部104内のインク110の液面が上昇する。
インク収容部104の上部に配置した液面検知センサ109によりインク110液面を検知し、液体搬送ポンプを止め、液体供給動作が終了する。
この時、インクタンク105のインク収容部104の上部には、僅かな、空気が存在する空間111が残る。
【0015】
インク収容部104内には可撓性フィルムシート103を外方に付勢する付勢部材112を有している。インク収容部104内のインク110の吸引、または吐出によるインク収容部104内の体積変化により可撓性フィルムシート103が凹み、付勢部材112が縮むことによりインク収容部104内に負圧を発生させている。
【0016】
ここで、従来のヘッドタンクにおける不具合を図3及び図4を参照して説明する。
なお、図3はインクを貯留した従来のインクタンクを接続した液滴吐出ヘッドユニットの側部断面図、図4は前記液滴吐出ヘッドユニットを画像形成装置に搭載した時の主走査方向に移動した際のインク収容部内のインクの状態を図示した液滴吐出ヘッドユニット側部断面図である。
インクタンク105のインク収容部104に貯留したインク110は、長期間使用しない場合にインク110に含まれる顔料成分110bが沈降する場合がある。
インク収容部104の底部104cにはフィルタユニット106にインク110を供給するためのインク供給部114があり、インク収容部104内で沈降した顔料成分110bは、インク供給部114上部に溜まる。
通常の使用状態では、顔料成分110bが沈降する前に吐出動作を行うため、吐出するインク110の濃度が変わることはないが、長期間放置した後に吐出を行うと、インク濃度が通常より濃い状態で吐出されるため、画像濃度が変わり、画質不良が発生することとなる。
【0017】
前記従来のインクタンク105を含む液滴吐出ヘッドを搭載した画像形成装置においては、図4に示すように、液滴吐出ヘッドを固定したキャリッジを主走査方向に往復移動させても、インク液面110a付近及び、顔料成分110bとインク110の境界部は僅かに揺れるが、全体を攪拌しインク110を通常の濃度状態にすることはできない。
【0018】
次に本実施形態に係るインクタンクについて図5及び図6を参照して説明する。
なお、図5は本実施形態に係るインクタンクの側部断面図、図6(a)は該インクタンクを画像形成装置に搭載した時の主走査方向の可撓性フィルムシート側に移動した際のインクの状態を図示した側部断面図、図6(b)は該インクタンクを続けて逆方向に移動した際のインクの状態を図示した側部断面図である。
本実施形態に係るインクタンク105は、インク収容部104を主走査方向における往動側と復動側とに隔てる隔壁120を有しており、インク収容部104は、往動側のインク収容部104aと、復動側のインク収容部104bとに区画されている。隔壁120は、インク収容部104の紙面に直交する方向の側面に固定されている。
隔壁120の上部及び下部には、インク収容部104aとインク収容部104bとを連通させる開口部としての下部連通口115と、上部連通口116とが設けられている。上部連通口116は空間111に連通している。
【0019】
本実施形態に係るインクタンク105においても、長期間放置した場合には顔料成分110bがインク収容部底部104cに沈降することを防ぐことはできないが、液滴吐出ヘッドユニット101を固定したキャリッジを主走査方向に移動することによる慣性で、図6(a)で示すように、可撓性フィルムシート103が接合された開口領域側(往動側)に移動した場合、その反対方向にインク110が偏り、インク収容部104a内のインクがインク収容部104bに流れ込み、インク収容部104bの液面が上昇し、上部連通口116を介して隔壁120の上方を越える。
続いて上記とは逆方向に移動した場合、図6(b)で示すように、上部連通口116を越えたインク110はインク収容部104a側に流れ込む。
これにより、インク収容部104内のインク110はインク収容部底部104cとインク液面110a付近の両方、すなわちインク収容部上下部分で攪拌でき、従来に比べて攪拌能力を向上させることができる。
【0020】
図7及び図8に基づいて第2の実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、特に必要がない限り既にした構成上及び機能上の説明は省略して要部のみ説明する(以下の他の実施形態において同じ)。
図7は本実施形態に係るインクタンクの側部断面図、図8(a)は本実施形態に係るインクタンクを画像形成装置に搭載した時の主走査方向のフィルムシート側(往動側)に移動した際のインクの状態を図示した側部断面図、図8(b)はインクタンクを続けて逆方向(復動側)に移動させた際のインクの状態を図示した側部断面図である。
【0021】
図7に示すように、本実施形態では、インクタンク105の隔壁120に隔てられたインク収容部104aとインク収容部104bとを連通する上部連通口116の下面(下端)は、インク液面110aとほぼ同じ高さになるよう開口している。
これにより、液滴吐出ヘッドユニットを固定したキャリッジを主走査方向に移動することによる慣性で、図8(a)で示すように、可撓性フィルムシート103が接合された開口領域側に移動した場合、その反対方向にインク110が偏り、インク収容部104a内のインクが下部連通口115を介してインク収容部104bに流れ込み、インク収容部104bの液面が上昇し、上部連通口116を介して隔壁120の上方を越える。
【0022】
続いて上記とは逆方向に移動した場合、図8(b)で示すように、隔壁120の上方を越えたインク110は、インク収容部104a側に流れ込むが、上部連通口116はインク液面110aとほぼ同じ高さになるよう開口しているため、より多くのインク110がインク収容部104a内に流入する。
これにより、従来に比べて攪拌能力をさらに向上させることができる。
【0023】
図9及び図10に基づいて第3の実施形態を説明する。
図9は本実施形態に係るインクタンクの側部断面図、図10(a)は本実施形態に係るインクタンクを画像形成装置に搭載した時の主走査方向のフィルムシート側に移動した際のインクの状態を図示した側部断面図、図10(b)はインクタンクを続けて逆方向に移動させた際のインクの状態を図示した側部断面図である。
本実施形態では、図9に示すように、インクタンク105の隔壁120の上部は、インク液面110aより僅かに高く、インク液面110aを覆うように抵抗体117を設ける構成となっている。ここでは抵抗体117は、隔壁120の上端部を略直角に折り曲げて水平方向(主走査方向)に延ばして一体に形成されているが、別部材で構成してもよい。
これにより、図10(a)で示すように、抵抗体117のある側のインク収容部方向にキャリッジが移動する際、インク収容部104aの液面近くのインク110は上面に覆いかぶさる抵抗体117に当たり上部連通口116を通ってインク収容部104b側に流れることはできず、下部連通口115からのみインク収容部104b側に移動する。
【0024】
また、上記とは反対方向にキャリッジが移動する際は、図10(b)で示すように、インク収容部104bの上部には抵抗体がないため、インク液面110aが上昇したインク収容部104b上部のインク110は、上部連通口116を通りインク収容部104a側に流れ込む。
このように、インク収容部104aとインク収容部104bとの間において一方向にだけインクの流れができることにより、攪拌能力を更に向上させることができる。
【0025】
図11及び図12に基づいて第4の実施形態を説明する。
図11は本実施形態に係るインクタンクの側部断面図、図12(a)は本実施形態に係るインクタンクを画像形成装置に搭載した時の主走査方向のフィルムシート側に移動した際のインクの状態を図示した側部断面図、図12(b)はインクタンクを続けて逆方向に移動させた際のインクの状態を図示した側部断面図である。
本実施形態では、図11に示すように、インクタンク105のインク収容部104bの横方向壁面116及び隔壁120は、緩やかな曲線を描いた湾曲面形状となっている。
これにより、液滴吐出ヘッドユニットを固定したキャリッジを主走査方向に移動させることによる慣性で流動するインクの流れを縦方向に変換する力が加わり、より多くのインクを流動させることができ、攪拌能力を更に向上させることができる。
【0026】
なお、図11及び図12(a)、(b)では、インク収容部104bが連続した曲線になるよう構成しているが、断続した曲線形状でもよく、また下方、上方どちらか一方だけが曲線(曲面)になる構成でもよい。
また、隔壁120は曲線ではなく、直線的な形状で構成されていても同様の効果を得ることができる。
【0027】
本発明のインクタンクを搭載したインクジェット記録装置に係るインク供給経路の一例について図13を参照し説明する。なお、図13は本発明のインクジェット記録装置の上面側から見た説明図である。
図13に示されるように、本発明のインクジェット記録装置のインク供給を実施するためのインク供給装置は、記録ヘッド14(上記実施形態の符号102に相当)のインク吐出口面を密閉して覆うキャップ282と、記録ヘッド(インクジェットヘッド)14に近接して設けられたインクタンク35(上記実施形態の符号105に相当)と、キャップ282に排出されたインクを吸収して収容する廃インク貯蔵タンク(図示せず)と、インクを保有するメインタンク10k、10c、10m、10yと、メインインクタンク10k、10c、10m、10yから記録ヘッド14にインクを送るための送液ポンプ(図示せず)と、インクタンクとメインインクタンクとを接続するインクチューブ25からなるインク供給回路とから構成されている。
【0028】
次に、本発明に係る記録ヘッド或いは液滴吐出装置を備えたインクジェット記録装置の一例について図13〜16を参照して説明する。なお、図14はインクジェット記録装置の側面説明図、図15はインクジェット記録装置の外観斜視図、図16はインクジェット記録装置の主要部平面図である。
インクジェット記録装置は、左右のメイン側板に横架したガイド部材であるガイドロッド91とガイドレール(図示せず)とでキャリッジ93を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ94でタイミングベルトを介して図13で矢示方向(主走査方向)に移動走査する。
キャリッジ93には、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個の記録ヘッド14を、複数のインク吐出口を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。なお、記録ヘッド14の構成としては、圧電素子などの圧電アクチュエータを用いたものを使用している。
【0029】
キャリッジ93には、記録ヘッド14に各色のインクを供給するための各色のインクタンク35を搭載している。インクタンク35にはインク供給チューブ25を介してメインタンク10(k、c、m、y)からインクが補充供給される。
この実施形態では、インクタンク35と記録ヘッド14で本発明に係るインクジェット記録装置を構成しているが、記録ヘッド14は、別途インクタンク35を設ける構成とすることもできるし、あるいは、インクタンクを用いないでメインタンクを搭載する構成とすることもできる。
一方、給紙カセット2などの用紙積載部41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙ローラ)43及び給紙ローラ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙ローラ43側に付勢されている。
【0030】
給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド14の下方側で搬送するための搬送部として、用紙42を静電吸着して搬送するための搬送ベルト51と、給紙部からガイド45を介して送られる用紙42を搬送ベルト51との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ46と、略鉛直上方に送られる用紙42を略90°方向転換させて搬送ベルト51上に倣わせるための搬送ガイド47と、押さえ部材49で搬送ベルト51側に付勢された先端加圧コロとを備えている。また、搬送ベルト51表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。
搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、副走査モータ131からタイミングベルト132及びタイミングローラ133を介して搬送ローラ52が回転されることで、図16のベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。なお、搬送ベルト51の裏面側には記録ヘッド14による画像形成領域に対応してガイド部材を配置している。
【0031】
また、図16に示すように、搬送ローラ52の軸には、スリット円板134を取り付け、このスリット円板134のスリットを検知するセンサ135を設けて、これらのスリット円板134及びセンサ135によってエンコーダ136を構成している。
帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に各2.5Nの圧力をかけている。
キャリッジ93の前方側には、図13に示すように、スリットを形成したエンコーダスケール(図示せず)を設け、キャリッジ93の前面側にはエンコーダスケール(図示せず)のスリットを検出する透過型フォトセンサ(図示せず)からなるエンコーダセンサ(図示せず)を設け、これらによって、キャリッジ93の主走査方向位置(ホーム位置に対する位置)を検知するためのエンコーダ(図示せず)を構成している。
さらに、記録ヘッド14で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離部と、排紙ローラ62及び排紙コロ63と、排紙される用紙42をストックする排紙トレイ3とを備えている。
【0032】
また、装置背部には両面給紙ユニット71が着脱自在に装着されている。両面給紙ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。
このように構成したインクジェット記録装置においては、給紙部から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド47で案内されて先端加圧コロで搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、図示しない制御回路によって高圧電源から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。
このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に静電力で吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド14を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。
【0033】
記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
両面印刷の場合には、表面(最初に印刷する面)の記録が終了したときに、搬送ベルト51を逆回転させることで、記録済みの用紙42を両面給紙ユニット71内に送り込み、用紙42を反転させて(裏面が印刷面となる状態にして)再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙し、タイミング制御を行って、前述したと同様に搬送ベル51上に搬送して裏面に記録を行った後、排紙トレイ3に排紙する。
なお、本発明に係るインクジェット記録装置は、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、これらの複合機などにも適用することができる。
また、インク以外の液体、例えばDNA試料やレジスト、パターン材料などを吐出する液滴吐出ヘッドや液滴吐出装置、或いはこれらを備えるインクジェット記録装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
93 キャリッジ
102 液滴吐出ヘッド
104 インク収容部
105 インクタンク
110 インク
115 開口部としての下部連通口
116 開口部としての上部連通口
117 抵抗体
120 隔壁
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】特開2001−322297号公報
【特許文献2】特開2007−62336号公報
【特許文献3】特開2006−44153号公報
【特許文献4】特開2007−130813号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に往復運動するキャリッジに搭載され、上部に空間が存在するようにインクが収容されるインク収容部を有するインクタンクにおいて、
前記インク収容部が、該インク収容部を主走査方向における往動側と復動側とに隔てる固定された隔壁を有し、
前記インク収容部の上部と下部には、前記隔壁で隔てられた各インク収容部を互いに連通させる開口部が設けられていることを特徴とするインクタンク。
【請求項2】
請求項1に記載のインクタンクにおいて、
前記開口部のうち、上部の開口部の下端と液面とがほぼ同等の位置であることを特徴とするインクタンク。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のインクタンクにおいて、
前記隔壁の上部と下部のうち、少なくとも一方に前記隔壁で隔てられた各インク収容部間でのインクの流れ方向を一方向に規制する抵抗体を有することを特徴とするインクタンク。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のインクタンクにおいて、
前記インク収容部の壁面とこれに対向する前記隔壁の側面のうち、少なくとも一方の形状は、緩やかな曲線を描く形状であることを特徴とするインクタンク。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のインクタンクを搭載した液滴吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項5に記載の液滴吐出ヘッドを搭載したインクジェット記録装置。
【請求項1】
主走査方向に往復運動するキャリッジに搭載され、上部に空間が存在するようにインクが収容されるインク収容部を有するインクタンクにおいて、
前記インク収容部が、該インク収容部を主走査方向における往動側と復動側とに隔てる固定された隔壁を有し、
前記インク収容部の上部と下部には、前記隔壁で隔てられた各インク収容部を互いに連通させる開口部が設けられていることを特徴とするインクタンク。
【請求項2】
請求項1に記載のインクタンクにおいて、
前記開口部のうち、上部の開口部の下端と液面とがほぼ同等の位置であることを特徴とするインクタンク。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のインクタンクにおいて、
前記隔壁の上部と下部のうち、少なくとも一方に前記隔壁で隔てられた各インク収容部間でのインクの流れ方向を一方向に規制する抵抗体を有することを特徴とするインクタンク。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のインクタンクにおいて、
前記インク収容部の壁面とこれに対向する前記隔壁の側面のうち、少なくとも一方の形状は、緩やかな曲線を描く形状であることを特徴とするインクタンク。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のインクタンクを搭載した液滴吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項5に記載の液滴吐出ヘッドを搭載したインクジェット記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−158063(P2012−158063A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18741(P2011−18741)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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