インクタンク及びインクジェットプリンタ
【課題】顔料系のブラックインクの量の検出に対する信頼性を向上させやすくする。
【解決手段】インクタンクは、インクを収容するタンク本体51と、タンク本体51内の前記インクに接して設けられ、前記インクの量が光学的に検出されるときの光157bの経路を形成するプリズム107とを備え、前記インクは、少なくともイエロー、マゼンタ及びシアンの各顔料系インクを混合した構成を有する。
【解決手段】インクタンクは、インクを収容するタンク本体51と、タンク本体51内の前記インクに接して設けられ、前記インクの量が光学的に検出されるときの光157bの経路を形成するプリズム107とを備え、前記インクは、少なくともイエロー、マゼンタ及びシアンの各顔料系インクを混合した構成を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクタンク及びインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクタンク内に収容されているインクの量が所定量を下回った状態(以下、インクエンドと呼ぶ)を光学式センサで検出するためのプリズムを備えたインクタンクが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−130776号公報(第12〜13頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されたインクタンクに、顔料系のブラックインクを適用すると、プリズムがインクから露出していても、インクエンドが検出されない場合が考えられる。これは、顔料系のブラックインクが光学式センサの光を吸収することがあることと、プリズムがインクから露出しても、プリズムの表面にインクが付着する場合があることとによって発生し得ると考えられる。つまり、インクの量が減少してプリズムがインクから露出しても、プリズムの表面に付着したインクが光学式センサの光を吸収してしまうことが考えられる。
【0005】
従って、上記特許文献1に記載されたインクタンクでは、顔料系のブラックインクの量の検出に対する信頼性を向上させることが困難であるという未解決の課題がある。
【0006】
本発明は、この未解決の課題に着目してなされたものであり、顔料系のブラックインクの量の検出に対する信頼性を向上させやすくするすることができるインクタンク及びインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のインクタンクは、インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部内の前記インクに接して設けられ、前記インクの量が光学的に検出されるときの光の経路を形成するプリズムとを備え、前記インクは、少なくともイエロー、マゼンタ及びシアンの各顔料系インクを混合した構成を有することを特徴とする。
【0008】
このインクタンクでは、インク収容部に収容されるインクは、イエロー、マゼンタ及びシアンの混合によるブラックを呈する。また、インク収容部に収容されるインクは、少なくともイエロー、マゼンタ及びシアンの各顔料系インクを混合した構成を有しているため、インクの量を光学的に検出するときの光を吸収しにくい。従って、このインクタンクでは、顔料系のブラックインクの量の検出に対する信頼性を向上させやすくすることが可能となる。
【0009】
本発明のインクジェットプリンタは、上記のインクタンクから前記インクの供給を受けるインク受部と、前記プリズムを介して前記インクの量を光学的に検出する検出部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
このインクジェットプリンタでは、インク受部がインクタンクから、少なくともイエロー、マゼンタ及びシアンの各顔料系インクを混合した構成を有するインクの供給を受ける。そして、このインクジェットプリンタでは、検出部がプリズムを介して、インクタンクのインク収容部に収容されているインクの量を光学的に検出する。従って、このインクジェットプリンタでは、顔料系のブラックインクの量の検出に対する信頼性を向上させやすくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態におけるインクジェットプリンタ1は、平面図である図1(a)及び正面図である図1(b)に示すように、送り装置3と、記録ヘッド5と、キャリジ7と、キャリジ移動装置9と、タンク装着部11と、検出器13とを備えている。
【0012】
送り装置3は、図1(a)に示すように、送りローラ15と、押さえローラ17と、送りモータ19とを備えている。送りローラ15と、押さえローラ17とは、互いに外周を接し合って回転可能に構成されている。送りモータ19は、図示しない制御部によって動作が制御され、送りローラ15を回転駆動するための動力を発生する。この送り装置3は、送りモータ19から送りローラ15に動力が伝達され、送りローラ15と押さえローラ17との間に挟持した記録用紙Pを、図1(a)に示す送り方向に間欠送りする。
【0013】
記録ヘッド5は、底面にインクをインク滴として吐出する複数のノズルが形成されている。なお、記録ヘッド5において、複数のノズルが形成されている面をノズル面21と呼ぶ。この記録ヘッド5は、図示しない制御部から出力される駆動信号に基づいて、複数のノズルから選択的にインク滴を吐出して、記録用紙Pに記録を行う。
【0014】
キャリジ7には、記録ヘッド5が配設されている。なお、記録ヘッド5は、図1(b)に示すように、ノズル面21がキャリジ7の底面から記録用紙P側に突出した状態で、且つノズル面21と記録用紙Pとの間に隙間を保った状態で、キャリジ7に配設されている。
【0015】
キャリジ移動装置9は、図1(a)に示すように、一対のプーリ23a及び23bと、タイミングベルト25と、キャリジモータ27と、キャリジガイド軸29とを備えている。タイミングベルト25は、一対のプーリ23a及び23b間に、図1中の主走査方向に沿って張設されており、一部がキャリジ7に固定されている。
【0016】
キャリジモータ27は、図示しない制御部によって動作が制御され、プーリ23aを回転駆動するための動力を発生する。キャリジガイド軸29は、主走査方向に沿って延びているとともに、両端が図示しない筐体に支持されており、キャリジ7を主走査方向にガイドする。
【0017】
上記の構成を有するキャリジ移動装置9は、キャリジモータ27からプーリ23a及びタイミングベルト25を介してキャリジ7に動力が伝達されて、キャリジ7を主走査方向に往復移動させる。
【0018】
タンク装着部11は、インクを収容したインクタンク33が着脱自在に装着される。タンク装着部11と記録ヘッド5とは、チューブ35で接続されている。そして、タンク装着部11にインクタンク33が装着されているとき、インクタンク33に収容されているインクは、チューブ35を介して記録ヘッド5に供給される。
【0019】
タンク装着部11には、図1(b)中のA−A線での断面図である図2に示すように、底面に、チューブ35の一端が接続される接続口41が形成されている。接続口41は、タンク装着部11の内部に連通している。タンク装着部11の内部には、フィルタ43と、インク供給針45とが配設されている。フィルタ43は、接続口41をタンク装着部11の内部から覆うように設けられている。インク供給針45は、フィルタ43をタンク装着部11の内部から覆うように設けられている。
【0020】
インク供給針45は、後述するインクタンク33のインク供出口に挿入され、インクタンク33からインクの供給を受ける。フィルタ43は、インク供給針45を介して供給されたインクをろ過して、インク内の気泡や塵などが接続口41側に流出するのを妨げる。フィルタ43によってろ過されたインクは、接続口41からチューブ35を介して記録ヘッド5に供給される。
【0021】
検出器13は、図1(a)に示すように、検出部49a及び検出部49bを備えている。検出部49a及び49bのそれぞれは、一対の発光素子及び受光素子を備えた光学式センサで構成されている。検出部49aは、タンク装着部11にインクタンク33が装着されているか否かを検出する。検出部49bは、インクタンク33内のインクの量を検出する。なお、本実施形態では、検出部49bは、インクタンク33内のインクの量が所定量を下回っているか否かを検出する。
【0022】
上記の構成を有するインクジェットプリンタ1は、送りモータ19の駆動が図示しない制御部によって制御され、送り装置3が記録用紙Pを記録ヘッド5に対向させながら、送り方向に間欠送りする。このとき、制御部は、キャリジモータ27の駆動を制御して、キャリジ7を主走査方向に往復移動させながら、記録ヘッド5の駆動を制御して、所定の位置でインク滴を吐出させる。このような動作によって、記録用紙Pにドットが形成され、この記録用紙Pに文字や画像などの記録情報に基づく記録が行われる。
【0023】
ここで、インクタンク33の構成について詳細を説明する。
インクタンク33は、図1(b)中のB視方向における側面図である図3(a)に示すように、タンク本体51と、蓋53と、プリズム板55とを備えている。
【0024】
タンク本体51は、インクを収容する容器として機能する。このタンク本体51には、図3(a)で見て底面から下に向かって突出するインク供出部57が形成されている。インク供出部57の底面には、インクタンク33の底面図である図3(b)に示すように、インク供出口59が穿孔されている。タンク本体51内に収容されているインクは、インク供出口59から、前述したタンク装着部11内のインク供給針45に供出される。
【0025】
なお、インク供出部57の底面には、インク供出口59を覆うようにシール61が付されている。インクタンク33がタンク装着部11に装着される前の状態では、インク供出口59は、このシール61によって塞がれている。そして、インクタンク33がタンク装着部11に装着されると、インク供給針45がシール61を突き破ってインク供出口59内に進入する。
【0026】
タンク本体51内には、平面図である図4(a)及び図4(a)中のC−C線での断面図である図4(b)に示すように、枠状の仕切壁63が形成されている。仕切壁63は、タンク本体51内でインク供出部57を仕切っている。なお、タンク本体51内において、仕切壁63で仕切られた外側の空間を第1インク室65と呼び、仕切壁63によって仕切られたインク供出部57の内側の空間を第2インク室67と呼ぶことにする。
【0027】
第2インク室67内には、前述したインク供出口59を囲む円筒部69が、第2インク室67の底部71からタンク本体51内に向かって延びるように形成されている。円筒部69には、インク供出口59を第2インク室67側から覆う天板部73が形成されている。この天板部73には、第2インク室67とインク供出口59とを連通させる連通孔75が形成されている。
【0028】
タンク本体51の側面には、側面図である図5(a)及び図5(a)中のD−D線での断面図である図5(b)に示すように、プリズム板設置部76が形成されている。プリズム板設置部76には、後述するプリズム板55が設置される。プリズム板設置部76には、開口77と、突起78a及び78bと、凹部79とが形成されている。開口77は、タンク本体51の外側から第2インク室67内に通じている。この開口77には、後述するプリズムが挿入される。凹部79内には、後述するプリズムが収容される。突起78a及び78bは、後述するプリズム板55に形成されている位置決め孔にはまって、プリズム板55の設置位置を決める。
【0029】
蓋53は、インクタンク33の平面図である図6(a)に示すように、天面81からインクタンク33の内部に通じる大気連通孔83が形成されている。この大気連通孔83によって、インクタンク33内が大気に開放される。天面81には、シール貼付領域85が設定されているとともに、シール貼付領域85内で大気連通孔83から蓋53の一側縁部に至る溝87が形成されている。
【0030】
蓋53には、図6(b)に示すように、シール貼付領域85にシール91が付されている。大気連通孔83及び溝87は、このシール91によって、天面81側から塞がれている。シール91は、切取線93が設けられており、切取線93からシール貼付領域85の外側に向かって延びる領域が剥離部95として設定されている。そして、インクタンク33がタンク装着部11に装着されて使用されるときに、図6(c)に示すように、剥離部95が切取線93で分断され、溝87の一端部が露呈する。溝87の一端部が露呈すると、溝87及び大気連通孔83を介して、インクタンク33の内部が大気に開放された状態となる。
【0031】
プリズム板55は、平面図である図7(a)に示すように、ベース板101の面103に2つのプリズム105及び107が形成されている。ベース板101には、図7(a)中のF視方向における側面図である図7(b)に示すように、位置決め孔115a及び115bが形成されている。
【0032】
ベース板101とプリズム105及び107とは、検出部49a及び49bのそれぞれを構成する光学式センサの光に対して透過性を有する材料で一体的に形成されている。本実施形態では、プリズム板55の材料として、ポリプロピレンが採用されている。
【0033】
プリズム105及び107のそれぞれは、図7(a)及び図7(b)に示すように、面109aと面109bとを有している。これらの面109a及び面109bは、後述する発光素子からの光を反射する機能を有している。このため、以下においては、これらの面109a及び109bをそれぞれ、反射面109a及び反射面109bと呼ぶことにする。
【0034】
上記の構成を有するプリズム板55は、図3(a)中のG−G線での断面図である図8に示すように、面103がタンク本体51のプリズム板設置部76に、溶着などによって固着されている。なお、プリズム板55は、位置決め孔115a及び115bのそれぞれが、タンク本体51の突起78a及び78bのそれぞれにはめられることによって、タンク本体51に対する位置が決められる。これにより、プリズム105がタンク本体51の凹部79内に収容され、プリズム107が開口77内に挿入される。また、プリズム板55の面103は、少なくともプリズム107の周囲を1周にわたってプリズム板設置部76に固着される。これにより、開口77がプリズム板55によって塞がれる。
【0035】
また、インクタンク33は、分解斜視図である図9に示すように、タンク本体51の内部に、インク吸収体121と、第1フィルタ123と、キャップ125と、第2フィルタ127と、コイルばね129と、弁131と、パッキン133とを備えている。
【0036】
インク吸収体121は、フェルトやスポンジなどのインクを吸収する能力が高い材料から形成されている。インク吸収体121は、インクを吸収した状態で、タンク本体51内に収容されている。なお、本実施形態では、インク吸収体121に吸収された状態でタンク本体51内に収容されるインクは、イエローの顔料系インク、マゼンタの顔料系インク及びシアンの顔料系インクを混合した構成を有している。これにより、タンク本体51内に収容されているインクは、イエロー、マゼンタ及びシアンの混合によってブラックを呈している。
【0037】
第1フィルタ123は、例えば不織布やメッシュフィルタなどから形成されており、図3(a)中のH−H線での断面図である図10に示すように、タンク本体51内の仕切壁63に載置されている。これにより、第2インク室67は、底部71と仕切壁63と第1フィルタ123とによって囲まれる。なお、インク吸収体121は、図10に示すように、蓋53と第1フィルタ123とによって挟まれた状態で、タンク本体51内に収容されている。
【0038】
キャップ125は、断面図である図11(a)及び底面図である図11(b)に示すように、円筒状の胴部141と、胴部の上端を塞ぐ天板部143とを有している。胴部141の下端には、4つの脚部145が形成されている。胴部141内には、上端側から下端側に向かって内径が広くなるテーパ部147が形成されている。
【0039】
このキャップ125は、図10に示すように、タンク本体51内の円筒部69に被せられ、4つの脚部145が第2インク室67の底部71に載置されている。
ここで、タンク本体51内の円筒部69には、図4(a)及び図4(b)に示すように、4つのリブ149が形成されている。キャップ125は、テーパ部147よりも下端側の内周が4つのリブ149にはめ込まれて円筒部69に被せられている。
【0040】
第2フィルタ127は、例えば不織布やメッシュフィルタなどから形成されており、図10に示すように、タンク本体51内の円筒部69に載置されている。なお、キャップ125は、図10中のJ部の拡大図である図12(a)に示すように、天板部143と第2フィルタ127との間に隙間を有した状態で円筒部69に被せられている。
【0041】
コイルばね129と、弁131と、パッキン133とは、図12(a)に示すように、この順序でインク供出口59から円筒部69内に向かって挿入されている。コイルばね129は、円筒部69の天板部73と、弁131とによって挟まれている。このコイルばね129は、弁131をインク供出口59側に向けて付勢している。
【0042】
パッキン133は、図12(a)に示すように、貫通孔135が形成されているとともに、貫通孔135の一縁に沿って環状に設けられる突条部137が形成されている。パッキン133は、例えば、ゴムやエラストマーなどの弾力性に富んだ材料から形成されている。弁131は、コイルばね129からの付勢を受けて、パッキン133の貫通孔135を、パッキン133の突条部137側から塞いでいる。
【0043】
上記の構成を有するインクタンク33は、インクジェットプリンタ1のタンク装着部11に装着されると、図12(b)に示すように、インク供給針45がシール61を突き破ってインク供出口59内に進入する。このとき、インク供給針45は、パッキン133の貫通孔135を貫通して、弁131を円筒部69の天板部73側に押し上げる。これにより、第2インク室67とチューブ35とがインク供給針45を介して連通した状態となる。
【0044】
第2インク室67とチューブ35とが連通した状態で、チューブ35を介して第2インク室67内に吸引力を作用させると、インク吸収体121に吸収されているインクが第1フィルタ123を経て第2インク室67内に流入する。第2インク室67内に流入したインクは、毛管現象によりキャップ125と円筒部69との隙間を経て第2フィルタ127に至る。第2フィルタ127に至ったインクは、第2フィルタ127を通過して、連通孔75及びインク供給針45を介してチューブ35に供出される。そして、チューブ35に供出されたインクは、記録ヘッド5に供給される。
【0045】
本実施形態のインクジェットプリンタ1では、検出部49aがインクタンク33を検出し、検出部49bがインクの量を検出する。インクタンク33がタンク装着部11に装着された状態において、検出部49a及び49bは、図8に示すように、検出部49aがプリズム105に対向する位置に配設され、検出部49bがプリズム107に対向する位置に配設されている。検出部49aは、発光素子153aと、受光素子155aとを備えている。検出部49bは、発光素子153bと、受光素子155bとを備えている。
【0046】
インクタンク33がタンク装着部11に装着されると、発光素子153aからの光157aは、プリズム105の反射面109a及び109bで反射して受光素子155aに到達する。つまり、検出部49aは、インクタンク33がタンク装着部11に装着されていることを検出する。そして、プリズム105は、検出部49aの光157aの経路を形成しており、光157aを発光素子153aから受光素子155aに導く。
【0047】
検出部49bの発光素子153bからの光157bは、インクタンク33内のインクの量が所定量を下回っている状態において、プリズム107の反射面109a及び109bで反射して受光素子155bに到達する。つまり、プリズム107は、インクの量が所定量を下回った状態で検出部49bの光157bの経路を形成し、光157bを発光素子153bから受光素子155bに導く。
【0048】
ここで、プリズム107は、第2インク室67内のインクの量が、図12(b)に示す光157bよりも上回っている場合には、光157bを受光素子155bに反射させる機能が作用しない。インクが消費されて第2インク室67内のインクの量が光157bを下回ると、プリズム107は、光157bを受光素子155bに反射させる機能を有するようになる。つまり、検出部49bは、インクの量が光157bを下回ったこと(インクエンド)を検出する。
【0049】
ここで、ブラックの顔料系インクでは、カーボンブラックを用いてブラックを表現するのが一般的である。ここでは、カーボンブラックを用いたブラックの顔料系インクと、本実施形態で使用するインクとを区別するために、カーボンブラックを用いたブラックの顔料系インクを単一インクと呼ぶことにする。
【0050】
ここで、単一インクをタンク本体51内に収容した場合、プリズム107の反射面109aや反射面109bに単一インクが付着して、第2インク室67内のインクの量が所定量を下回っているにもかかわらず、インクエンドが検出されない場合が考えられる。これは、図13の特性線L1に示すように、単一インクが、光157bの波長Wにおいて、吸光度を有しているためである。つまり、発光素子153bからの光157bは、反射面109aや反射面109bで反射されずに、単一インクに吸収されてしまう。そこで、本実施形態では、イエローの顔料系インク、マゼンタの顔料系インク及びシアンの顔料系インクを混合した構成を有するインクが採用されている。
【0051】
イエローの顔料系インク、マゼンタの顔料系インク及びシアンの顔料系インクのそれぞれは、図13の特性線L2、特性線L3及び特性線L4のそれぞれに示すように、波長がWよりも短い領域では吸光度を有していない。従って、これらイエローの顔料系インク、マゼンタの顔料系インク及びシアンの顔料系インクを混合した構成を有するインクも、波長がWよりも短い領域では吸光度を有さない。
【0052】
なお、本実施形態において、タンク本体51がインク収容部に対応し、インク供給針45がインク受部に対応している。
【0053】
本実施形態のインクジェットプリンタ1では、インクタンク33は、イエローの顔料系インク、マゼンタの顔料系インク及びシアンの顔料系インクを混合した構成を有するインクをタンク本体51内に収容している。従って、タンク本体51内に収容されているインクを顔料系のブラックインクとすることができる。また、タンク本体51内に収容されているインクが光157bの波長Wで吸光度を有していないため、顔料系のブラックインクの量の検出に対する信頼性を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態において、プリズム107に撥液処理を施せば、反射面109a及び109bのそれぞれにインクが付着しにくくすることができるため、顔料系のブラックインクの量の検出に対する信頼性を一層向上させることが可能となる。撥液とは、液状体をはじく性質をいう。
【0055】
なお、本実施形態では、記録用紙Pを例に説明したが、記録媒体は記録用紙Pに限らず、インク滴が付着してドットを形成できるものであれば、任意の記録媒体を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態におけるインクジェットプリンタの主要構成を示す外観図。
【図2】図1(b)中のA−A線での断面図。
【図3】本発明の実施形態におけるインクタンクの外観図。
【図4】本発明の実施形態におけるインクタンクのタンク本体の構成を説明する図。
【図5】本発明の実施形態におけるインクタンクのタンク本体に形成されているプリズム板設置部の構成を説明する図。
【図6】本発明の実施形態におけるインクタンクの平面図。
【図7】本発明の実施形態におけるインクタンクのプリズム板の構成を説明する図。
【図8】図3(a)中のG−G線での断面図。
【図9】本発明の実施形態におけるインクタンクの分解斜視図。
【図10】図3(a)中のH−H線での断面図。
【図11】本発明の実施形態におけるインクタンクのキャップの構成を説明する図。
【図12】図10中のJ部の拡大図。
【図13】従来のインクの吸光度を調査した結果を示す図。
【符号の説明】
【0057】
1…インクジェットプリンタ、11…タンク装着部、33…インクタンク、45…インク供給針、49a,49b…検出部、51…タンク本体、105…プリズム、107…プリズム、157a,157b…光。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクタンク及びインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクタンク内に収容されているインクの量が所定量を下回った状態(以下、インクエンドと呼ぶ)を光学式センサで検出するためのプリズムを備えたインクタンクが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−130776号公報(第12〜13頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されたインクタンクに、顔料系のブラックインクを適用すると、プリズムがインクから露出していても、インクエンドが検出されない場合が考えられる。これは、顔料系のブラックインクが光学式センサの光を吸収することがあることと、プリズムがインクから露出しても、プリズムの表面にインクが付着する場合があることとによって発生し得ると考えられる。つまり、インクの量が減少してプリズムがインクから露出しても、プリズムの表面に付着したインクが光学式センサの光を吸収してしまうことが考えられる。
【0005】
従って、上記特許文献1に記載されたインクタンクでは、顔料系のブラックインクの量の検出に対する信頼性を向上させることが困難であるという未解決の課題がある。
【0006】
本発明は、この未解決の課題に着目してなされたものであり、顔料系のブラックインクの量の検出に対する信頼性を向上させやすくするすることができるインクタンク及びインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のインクタンクは、インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部内の前記インクに接して設けられ、前記インクの量が光学的に検出されるときの光の経路を形成するプリズムとを備え、前記インクは、少なくともイエロー、マゼンタ及びシアンの各顔料系インクを混合した構成を有することを特徴とする。
【0008】
このインクタンクでは、インク収容部に収容されるインクは、イエロー、マゼンタ及びシアンの混合によるブラックを呈する。また、インク収容部に収容されるインクは、少なくともイエロー、マゼンタ及びシアンの各顔料系インクを混合した構成を有しているため、インクの量を光学的に検出するときの光を吸収しにくい。従って、このインクタンクでは、顔料系のブラックインクの量の検出に対する信頼性を向上させやすくすることが可能となる。
【0009】
本発明のインクジェットプリンタは、上記のインクタンクから前記インクの供給を受けるインク受部と、前記プリズムを介して前記インクの量を光学的に検出する検出部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
このインクジェットプリンタでは、インク受部がインクタンクから、少なくともイエロー、マゼンタ及びシアンの各顔料系インクを混合した構成を有するインクの供給を受ける。そして、このインクジェットプリンタでは、検出部がプリズムを介して、インクタンクのインク収容部に収容されているインクの量を光学的に検出する。従って、このインクジェットプリンタでは、顔料系のブラックインクの量の検出に対する信頼性を向上させやすくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態におけるインクジェットプリンタ1は、平面図である図1(a)及び正面図である図1(b)に示すように、送り装置3と、記録ヘッド5と、キャリジ7と、キャリジ移動装置9と、タンク装着部11と、検出器13とを備えている。
【0012】
送り装置3は、図1(a)に示すように、送りローラ15と、押さえローラ17と、送りモータ19とを備えている。送りローラ15と、押さえローラ17とは、互いに外周を接し合って回転可能に構成されている。送りモータ19は、図示しない制御部によって動作が制御され、送りローラ15を回転駆動するための動力を発生する。この送り装置3は、送りモータ19から送りローラ15に動力が伝達され、送りローラ15と押さえローラ17との間に挟持した記録用紙Pを、図1(a)に示す送り方向に間欠送りする。
【0013】
記録ヘッド5は、底面にインクをインク滴として吐出する複数のノズルが形成されている。なお、記録ヘッド5において、複数のノズルが形成されている面をノズル面21と呼ぶ。この記録ヘッド5は、図示しない制御部から出力される駆動信号に基づいて、複数のノズルから選択的にインク滴を吐出して、記録用紙Pに記録を行う。
【0014】
キャリジ7には、記録ヘッド5が配設されている。なお、記録ヘッド5は、図1(b)に示すように、ノズル面21がキャリジ7の底面から記録用紙P側に突出した状態で、且つノズル面21と記録用紙Pとの間に隙間を保った状態で、キャリジ7に配設されている。
【0015】
キャリジ移動装置9は、図1(a)に示すように、一対のプーリ23a及び23bと、タイミングベルト25と、キャリジモータ27と、キャリジガイド軸29とを備えている。タイミングベルト25は、一対のプーリ23a及び23b間に、図1中の主走査方向に沿って張設されており、一部がキャリジ7に固定されている。
【0016】
キャリジモータ27は、図示しない制御部によって動作が制御され、プーリ23aを回転駆動するための動力を発生する。キャリジガイド軸29は、主走査方向に沿って延びているとともに、両端が図示しない筐体に支持されており、キャリジ7を主走査方向にガイドする。
【0017】
上記の構成を有するキャリジ移動装置9は、キャリジモータ27からプーリ23a及びタイミングベルト25を介してキャリジ7に動力が伝達されて、キャリジ7を主走査方向に往復移動させる。
【0018】
タンク装着部11は、インクを収容したインクタンク33が着脱自在に装着される。タンク装着部11と記録ヘッド5とは、チューブ35で接続されている。そして、タンク装着部11にインクタンク33が装着されているとき、インクタンク33に収容されているインクは、チューブ35を介して記録ヘッド5に供給される。
【0019】
タンク装着部11には、図1(b)中のA−A線での断面図である図2に示すように、底面に、チューブ35の一端が接続される接続口41が形成されている。接続口41は、タンク装着部11の内部に連通している。タンク装着部11の内部には、フィルタ43と、インク供給針45とが配設されている。フィルタ43は、接続口41をタンク装着部11の内部から覆うように設けられている。インク供給針45は、フィルタ43をタンク装着部11の内部から覆うように設けられている。
【0020】
インク供給針45は、後述するインクタンク33のインク供出口に挿入され、インクタンク33からインクの供給を受ける。フィルタ43は、インク供給針45を介して供給されたインクをろ過して、インク内の気泡や塵などが接続口41側に流出するのを妨げる。フィルタ43によってろ過されたインクは、接続口41からチューブ35を介して記録ヘッド5に供給される。
【0021】
検出器13は、図1(a)に示すように、検出部49a及び検出部49bを備えている。検出部49a及び49bのそれぞれは、一対の発光素子及び受光素子を備えた光学式センサで構成されている。検出部49aは、タンク装着部11にインクタンク33が装着されているか否かを検出する。検出部49bは、インクタンク33内のインクの量を検出する。なお、本実施形態では、検出部49bは、インクタンク33内のインクの量が所定量を下回っているか否かを検出する。
【0022】
上記の構成を有するインクジェットプリンタ1は、送りモータ19の駆動が図示しない制御部によって制御され、送り装置3が記録用紙Pを記録ヘッド5に対向させながら、送り方向に間欠送りする。このとき、制御部は、キャリジモータ27の駆動を制御して、キャリジ7を主走査方向に往復移動させながら、記録ヘッド5の駆動を制御して、所定の位置でインク滴を吐出させる。このような動作によって、記録用紙Pにドットが形成され、この記録用紙Pに文字や画像などの記録情報に基づく記録が行われる。
【0023】
ここで、インクタンク33の構成について詳細を説明する。
インクタンク33は、図1(b)中のB視方向における側面図である図3(a)に示すように、タンク本体51と、蓋53と、プリズム板55とを備えている。
【0024】
タンク本体51は、インクを収容する容器として機能する。このタンク本体51には、図3(a)で見て底面から下に向かって突出するインク供出部57が形成されている。インク供出部57の底面には、インクタンク33の底面図である図3(b)に示すように、インク供出口59が穿孔されている。タンク本体51内に収容されているインクは、インク供出口59から、前述したタンク装着部11内のインク供給針45に供出される。
【0025】
なお、インク供出部57の底面には、インク供出口59を覆うようにシール61が付されている。インクタンク33がタンク装着部11に装着される前の状態では、インク供出口59は、このシール61によって塞がれている。そして、インクタンク33がタンク装着部11に装着されると、インク供給針45がシール61を突き破ってインク供出口59内に進入する。
【0026】
タンク本体51内には、平面図である図4(a)及び図4(a)中のC−C線での断面図である図4(b)に示すように、枠状の仕切壁63が形成されている。仕切壁63は、タンク本体51内でインク供出部57を仕切っている。なお、タンク本体51内において、仕切壁63で仕切られた外側の空間を第1インク室65と呼び、仕切壁63によって仕切られたインク供出部57の内側の空間を第2インク室67と呼ぶことにする。
【0027】
第2インク室67内には、前述したインク供出口59を囲む円筒部69が、第2インク室67の底部71からタンク本体51内に向かって延びるように形成されている。円筒部69には、インク供出口59を第2インク室67側から覆う天板部73が形成されている。この天板部73には、第2インク室67とインク供出口59とを連通させる連通孔75が形成されている。
【0028】
タンク本体51の側面には、側面図である図5(a)及び図5(a)中のD−D線での断面図である図5(b)に示すように、プリズム板設置部76が形成されている。プリズム板設置部76には、後述するプリズム板55が設置される。プリズム板設置部76には、開口77と、突起78a及び78bと、凹部79とが形成されている。開口77は、タンク本体51の外側から第2インク室67内に通じている。この開口77には、後述するプリズムが挿入される。凹部79内には、後述するプリズムが収容される。突起78a及び78bは、後述するプリズム板55に形成されている位置決め孔にはまって、プリズム板55の設置位置を決める。
【0029】
蓋53は、インクタンク33の平面図である図6(a)に示すように、天面81からインクタンク33の内部に通じる大気連通孔83が形成されている。この大気連通孔83によって、インクタンク33内が大気に開放される。天面81には、シール貼付領域85が設定されているとともに、シール貼付領域85内で大気連通孔83から蓋53の一側縁部に至る溝87が形成されている。
【0030】
蓋53には、図6(b)に示すように、シール貼付領域85にシール91が付されている。大気連通孔83及び溝87は、このシール91によって、天面81側から塞がれている。シール91は、切取線93が設けられており、切取線93からシール貼付領域85の外側に向かって延びる領域が剥離部95として設定されている。そして、インクタンク33がタンク装着部11に装着されて使用されるときに、図6(c)に示すように、剥離部95が切取線93で分断され、溝87の一端部が露呈する。溝87の一端部が露呈すると、溝87及び大気連通孔83を介して、インクタンク33の内部が大気に開放された状態となる。
【0031】
プリズム板55は、平面図である図7(a)に示すように、ベース板101の面103に2つのプリズム105及び107が形成されている。ベース板101には、図7(a)中のF視方向における側面図である図7(b)に示すように、位置決め孔115a及び115bが形成されている。
【0032】
ベース板101とプリズム105及び107とは、検出部49a及び49bのそれぞれを構成する光学式センサの光に対して透過性を有する材料で一体的に形成されている。本実施形態では、プリズム板55の材料として、ポリプロピレンが採用されている。
【0033】
プリズム105及び107のそれぞれは、図7(a)及び図7(b)に示すように、面109aと面109bとを有している。これらの面109a及び面109bは、後述する発光素子からの光を反射する機能を有している。このため、以下においては、これらの面109a及び109bをそれぞれ、反射面109a及び反射面109bと呼ぶことにする。
【0034】
上記の構成を有するプリズム板55は、図3(a)中のG−G線での断面図である図8に示すように、面103がタンク本体51のプリズム板設置部76に、溶着などによって固着されている。なお、プリズム板55は、位置決め孔115a及び115bのそれぞれが、タンク本体51の突起78a及び78bのそれぞれにはめられることによって、タンク本体51に対する位置が決められる。これにより、プリズム105がタンク本体51の凹部79内に収容され、プリズム107が開口77内に挿入される。また、プリズム板55の面103は、少なくともプリズム107の周囲を1周にわたってプリズム板設置部76に固着される。これにより、開口77がプリズム板55によって塞がれる。
【0035】
また、インクタンク33は、分解斜視図である図9に示すように、タンク本体51の内部に、インク吸収体121と、第1フィルタ123と、キャップ125と、第2フィルタ127と、コイルばね129と、弁131と、パッキン133とを備えている。
【0036】
インク吸収体121は、フェルトやスポンジなどのインクを吸収する能力が高い材料から形成されている。インク吸収体121は、インクを吸収した状態で、タンク本体51内に収容されている。なお、本実施形態では、インク吸収体121に吸収された状態でタンク本体51内に収容されるインクは、イエローの顔料系インク、マゼンタの顔料系インク及びシアンの顔料系インクを混合した構成を有している。これにより、タンク本体51内に収容されているインクは、イエロー、マゼンタ及びシアンの混合によってブラックを呈している。
【0037】
第1フィルタ123は、例えば不織布やメッシュフィルタなどから形成されており、図3(a)中のH−H線での断面図である図10に示すように、タンク本体51内の仕切壁63に載置されている。これにより、第2インク室67は、底部71と仕切壁63と第1フィルタ123とによって囲まれる。なお、インク吸収体121は、図10に示すように、蓋53と第1フィルタ123とによって挟まれた状態で、タンク本体51内に収容されている。
【0038】
キャップ125は、断面図である図11(a)及び底面図である図11(b)に示すように、円筒状の胴部141と、胴部の上端を塞ぐ天板部143とを有している。胴部141の下端には、4つの脚部145が形成されている。胴部141内には、上端側から下端側に向かって内径が広くなるテーパ部147が形成されている。
【0039】
このキャップ125は、図10に示すように、タンク本体51内の円筒部69に被せられ、4つの脚部145が第2インク室67の底部71に載置されている。
ここで、タンク本体51内の円筒部69には、図4(a)及び図4(b)に示すように、4つのリブ149が形成されている。キャップ125は、テーパ部147よりも下端側の内周が4つのリブ149にはめ込まれて円筒部69に被せられている。
【0040】
第2フィルタ127は、例えば不織布やメッシュフィルタなどから形成されており、図10に示すように、タンク本体51内の円筒部69に載置されている。なお、キャップ125は、図10中のJ部の拡大図である図12(a)に示すように、天板部143と第2フィルタ127との間に隙間を有した状態で円筒部69に被せられている。
【0041】
コイルばね129と、弁131と、パッキン133とは、図12(a)に示すように、この順序でインク供出口59から円筒部69内に向かって挿入されている。コイルばね129は、円筒部69の天板部73と、弁131とによって挟まれている。このコイルばね129は、弁131をインク供出口59側に向けて付勢している。
【0042】
パッキン133は、図12(a)に示すように、貫通孔135が形成されているとともに、貫通孔135の一縁に沿って環状に設けられる突条部137が形成されている。パッキン133は、例えば、ゴムやエラストマーなどの弾力性に富んだ材料から形成されている。弁131は、コイルばね129からの付勢を受けて、パッキン133の貫通孔135を、パッキン133の突条部137側から塞いでいる。
【0043】
上記の構成を有するインクタンク33は、インクジェットプリンタ1のタンク装着部11に装着されると、図12(b)に示すように、インク供給針45がシール61を突き破ってインク供出口59内に進入する。このとき、インク供給針45は、パッキン133の貫通孔135を貫通して、弁131を円筒部69の天板部73側に押し上げる。これにより、第2インク室67とチューブ35とがインク供給針45を介して連通した状態となる。
【0044】
第2インク室67とチューブ35とが連通した状態で、チューブ35を介して第2インク室67内に吸引力を作用させると、インク吸収体121に吸収されているインクが第1フィルタ123を経て第2インク室67内に流入する。第2インク室67内に流入したインクは、毛管現象によりキャップ125と円筒部69との隙間を経て第2フィルタ127に至る。第2フィルタ127に至ったインクは、第2フィルタ127を通過して、連通孔75及びインク供給針45を介してチューブ35に供出される。そして、チューブ35に供出されたインクは、記録ヘッド5に供給される。
【0045】
本実施形態のインクジェットプリンタ1では、検出部49aがインクタンク33を検出し、検出部49bがインクの量を検出する。インクタンク33がタンク装着部11に装着された状態において、検出部49a及び49bは、図8に示すように、検出部49aがプリズム105に対向する位置に配設され、検出部49bがプリズム107に対向する位置に配設されている。検出部49aは、発光素子153aと、受光素子155aとを備えている。検出部49bは、発光素子153bと、受光素子155bとを備えている。
【0046】
インクタンク33がタンク装着部11に装着されると、発光素子153aからの光157aは、プリズム105の反射面109a及び109bで反射して受光素子155aに到達する。つまり、検出部49aは、インクタンク33がタンク装着部11に装着されていることを検出する。そして、プリズム105は、検出部49aの光157aの経路を形成しており、光157aを発光素子153aから受光素子155aに導く。
【0047】
検出部49bの発光素子153bからの光157bは、インクタンク33内のインクの量が所定量を下回っている状態において、プリズム107の反射面109a及び109bで反射して受光素子155bに到達する。つまり、プリズム107は、インクの量が所定量を下回った状態で検出部49bの光157bの経路を形成し、光157bを発光素子153bから受光素子155bに導く。
【0048】
ここで、プリズム107は、第2インク室67内のインクの量が、図12(b)に示す光157bよりも上回っている場合には、光157bを受光素子155bに反射させる機能が作用しない。インクが消費されて第2インク室67内のインクの量が光157bを下回ると、プリズム107は、光157bを受光素子155bに反射させる機能を有するようになる。つまり、検出部49bは、インクの量が光157bを下回ったこと(インクエンド)を検出する。
【0049】
ここで、ブラックの顔料系インクでは、カーボンブラックを用いてブラックを表現するのが一般的である。ここでは、カーボンブラックを用いたブラックの顔料系インクと、本実施形態で使用するインクとを区別するために、カーボンブラックを用いたブラックの顔料系インクを単一インクと呼ぶことにする。
【0050】
ここで、単一インクをタンク本体51内に収容した場合、プリズム107の反射面109aや反射面109bに単一インクが付着して、第2インク室67内のインクの量が所定量を下回っているにもかかわらず、インクエンドが検出されない場合が考えられる。これは、図13の特性線L1に示すように、単一インクが、光157bの波長Wにおいて、吸光度を有しているためである。つまり、発光素子153bからの光157bは、反射面109aや反射面109bで反射されずに、単一インクに吸収されてしまう。そこで、本実施形態では、イエローの顔料系インク、マゼンタの顔料系インク及びシアンの顔料系インクを混合した構成を有するインクが採用されている。
【0051】
イエローの顔料系インク、マゼンタの顔料系インク及びシアンの顔料系インクのそれぞれは、図13の特性線L2、特性線L3及び特性線L4のそれぞれに示すように、波長がWよりも短い領域では吸光度を有していない。従って、これらイエローの顔料系インク、マゼンタの顔料系インク及びシアンの顔料系インクを混合した構成を有するインクも、波長がWよりも短い領域では吸光度を有さない。
【0052】
なお、本実施形態において、タンク本体51がインク収容部に対応し、インク供給針45がインク受部に対応している。
【0053】
本実施形態のインクジェットプリンタ1では、インクタンク33は、イエローの顔料系インク、マゼンタの顔料系インク及びシアンの顔料系インクを混合した構成を有するインクをタンク本体51内に収容している。従って、タンク本体51内に収容されているインクを顔料系のブラックインクとすることができる。また、タンク本体51内に収容されているインクが光157bの波長Wで吸光度を有していないため、顔料系のブラックインクの量の検出に対する信頼性を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態において、プリズム107に撥液処理を施せば、反射面109a及び109bのそれぞれにインクが付着しにくくすることができるため、顔料系のブラックインクの量の検出に対する信頼性を一層向上させることが可能となる。撥液とは、液状体をはじく性質をいう。
【0055】
なお、本実施形態では、記録用紙Pを例に説明したが、記録媒体は記録用紙Pに限らず、インク滴が付着してドットを形成できるものであれば、任意の記録媒体を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態におけるインクジェットプリンタの主要構成を示す外観図。
【図2】図1(b)中のA−A線での断面図。
【図3】本発明の実施形態におけるインクタンクの外観図。
【図4】本発明の実施形態におけるインクタンクのタンク本体の構成を説明する図。
【図5】本発明の実施形態におけるインクタンクのタンク本体に形成されているプリズム板設置部の構成を説明する図。
【図6】本発明の実施形態におけるインクタンクの平面図。
【図7】本発明の実施形態におけるインクタンクのプリズム板の構成を説明する図。
【図8】図3(a)中のG−G線での断面図。
【図9】本発明の実施形態におけるインクタンクの分解斜視図。
【図10】図3(a)中のH−H線での断面図。
【図11】本発明の実施形態におけるインクタンクのキャップの構成を説明する図。
【図12】図10中のJ部の拡大図。
【図13】従来のインクの吸光度を調査した結果を示す図。
【符号の説明】
【0057】
1…インクジェットプリンタ、11…タンク装着部、33…インクタンク、45…インク供給針、49a,49b…検出部、51…タンク本体、105…プリズム、107…プリズム、157a,157b…光。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部内の前記インクに接して設けられ、前記インクの量が光学的に検出されるときの光の経路を形成するプリズムとを備え、
前記インクは、少なくともイエロー、マゼンタ及びシアンの各顔料系インクを混合した構成を有することを特徴とするインクタンク。
【請求項2】
請求項1に記載のインクタンクから前記インクの供給を受けるインク受部と、前記プリズムを介して前記インクの量を光学的に検出する検出部とを備えたことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項1】
インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部内の前記インクに接して設けられ、前記インクの量が光学的に検出されるときの光の経路を形成するプリズムとを備え、
前記インクは、少なくともイエロー、マゼンタ及びシアンの各顔料系インクを混合した構成を有することを特徴とするインクタンク。
【請求項2】
請求項1に記載のインクタンクから前記インクの供給を受けるインク受部と、前記プリズムを介して前記インクの量を光学的に検出する検出部とを備えたことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−119913(P2008−119913A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304930(P2006−304930)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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