説明

インクリボン、ドットマトリクスプリンタおよびその寿命判定方法

【課題】印刷前にインクリボンの寿命を正確に判定できるドットマトリックスプリンタを提供する。
【解決手段】ドットマトリックスプリンタは、インクリボンと、複数のピンからなるライン印字ヘッドと、文字コードデータを受信する通信部と、前記文字コードデータに対応するフォントデータを参照して印字ドットイメージデータに変換するフォントデータ参照部と、前記ピン単位ごとの印字予定ドット数をカウントするピン単位カウント部と、前記ピン単位ごとの印字予定ドット数を印字前の印字ドット数累計カウント値に加算し、この更新後の印字ドット数累計カウント値が前記インクリボンのピン単位の寿命カウント値よりも大きい場合に、前記インクリボンの交換を表示する交換ガイド表示部と、前記フォントデータ、ピン単位の印字ドット数累計カウント値、インクリボンの交換履歴を含むプリンタデータが保存されたプリンタ保存部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インクリボン、ドットマトリクスプリンタおよびその寿命判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドットマトリクスプリンタではインクリボンの寿命判定は行なわないことが一般的である。従ってユーザは、印刷結果を見てインクが薄くなってきていること確認してリボンが寿命に達したと判断、またはリボンに穴が開いた等の損傷を確認してインクリボンの寿命を判断していた。しかしながら、これには、印刷した後、印刷が薄くなるか、リボンが損傷してジャムが発生するなど問題が発生するまで気づかないという欠点(問題点)がある。
【0003】
また、印字ヘッドやプラテンを含むドットマトリックスプリンタ全体のメンテナンスのために、印刷した総ドット数、印字文字数等をカウン卜した情報を印刷または液晶画面等に表示し、接続されるパーソナルコンピュータからコマンドを送信することによりこれらの情報を確認できるものもあるが、印刷総ドット数、または印刷文字数だけでは印字ヘッドやプラテンの寿命に与える要因の確認が不十分である。
【0004】
ドットマトリクスプリンタは、インクリボンと印字ヘッドの縦位置の関係が固定されており、例えば24ピンドットプリンタでは1ピンがインクリボンをインパク卜する縦位置は、インクリボンが機械的な摩擦等でずれる要因を除けばいつも同じ位置である。同じように、2ピンから24ピンのそれぞれに対してもインパク卜する縦位置もいつも同じ位置である。同じ位置を何度もインパク卜すれば、その位置に付着しているインクがなくなり易くなり、そのピンの印刷が薄くなる。また、同じ位置をインパク卜すると、その位置のリボンの生地を損傷し易くなる。特に、ドットマトリクスプリンタは、罫線などを多く含む帳票や定型書類に印刷することが多いため、印字ヘッドの特定のピンのみが多く使用されるということが起こる。従って、印字ヘッドまたはインクリボンの寿命の判断には、ピン単位で印刷ドット数をカウン卜することが有効になる。
【0005】
印字ヘッドの寿命の推定に対して個々のドットピンの駆動パルスをカウントアップする方法があるが、ヘッド寿命のカウントの表示を行うだけであるため、印字がかすれて印刷が失敗となる可能性の低減やインクリボンの寿命を判定することには対応していない(特許文献1参照)。
【0006】
また、印字ドット数を書き込み回数に制限のある不揮発性メモリに格納する場合、インクリボンの寿命内では書き込み保証回数を超えないように、ある仕様を決めて書き込む必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−209249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上記課題を解決し印刷前にインクリボンの寿命を正確に判定できるドットマトリクスプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、実施形態のドットマトリクスプリンタは、インクリボンと、複数のピンからなるライン印字ヘッドと、文字コードデータを受信する通信部と、前記文字コードデータに対応するフォントデータを参照して印字ドットイメージデータに変換するフォントデータ参照部と、前記印字ドットイメージデータが格納され、少なくとも前記複数のピン数と同じ行数の行画素からなるイメージバッファメモリと、前記イメージバッファに格納された印字ドットイメージデータの行画素ごとに前記複数のピンを対応付け、ピン単位ごとの印字予定ドット数をカウントするピン単位カウント部と、前記ピン単位ごとの印字予定ドット数を印字前の印字ドット数累計カウント値に加算し、この更新後の印字ドット数累計カウント値が前記インクリボンのピン単位の寿命カウント値よりも大きい場合に、前記インクリボンの交換を表示する交換ガイド表示部と、前記フォントデータ、ピン単位の印字ドット数累計カウント値、インクリボンの交換履歴を含むプリンタデータが保存されたプリンタ保存部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態におけるドットマトリクスプリンタのブロック図。
【図2】同実施形態におけるイメージバッファメモリのピン単位でのドット数カウントを説明する図。
【図3】同実施形態におけるインクリボンの寿命判定処理を示すフローチャート。
【図4】同実施形態におけるインクリボンの交換検出処理を示すフローチャート。
【図5】同実施形態におけるインクリボン交換ガイド画面の一例。
【図6】第2の実施形態におけるプリンタ状態表示の一例。
【図7】同実施形態におけるプリンタ状態問い合わせ処理を示すフローチャート。
【図8】第3の実施形態における印字ヘッドの寿命判定処理を示すフローチャート。
【図9】同実施形態における印字ヘッド交換ガイド画面の一例。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための実施形態について図1から図9を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
本実施形態は印字ヘッドのピン単位で印刷ドット数をカウントし、インクリボンの寿命を判定するものである。
【0013】
図1は本実施形態に係るドットマトリックスプリンタのブロック図である。図1は一般的な使用形態としてドットプリンタ全体を制御するプリンタ制御部10とこれに接続されるパーソナルコンピュータ11などの端末(以下PC端末)を想定している。
【0014】
プリンタ制御部10は、通信部101、プリンタデータ保存部102、フォントデータ参照部103、文字修飾部104、イメージバッファ部105、交換検出部106、ピン単位カウント部107、インクリボンデータ保存部108、寿命判定部109、機構制御部110、印字ヘッド111、インクリボン112および表示部113から構成されている。各部の概略の動作は以下のようである。実線の矢印は各部の接続を示している。
【0015】
通信部101は、PC端末11と有線、無線などの通信手段によって通信を可能とし、印字文字データの受信、プリンタの状態問い合わせ受信、およびインクリボン112および印字ヘッド111の交換ガイドなどのメンテナンス情報の送信などを行う。
【0016】
プリンタデータ保存部102は、本実施形態のドットマトリックスプリンタを動作させるためのファームウエア、フォントデータ、プリンタ設定データ、インクリボン112や印字ヘッド111交換のメンテナンス履歴情報などの各種プリンタデータを保持し、比較的大容量のフラッシュメモリ等で構成される。
【0017】
フォントデータ参照部103は、印字文字コードを通信部101から受け取り、プリンタデータ保存部102に設定されたフォントのフォントデータを参照し、印字文字コードから印字ドットイメージデータに変換する。
【0018】
文字修飾部104では、印字文字コードに下線や反転、および上付き下付きなどの文字修飾がある場合に、更に印字ドットイメージデータ上に文字修飾を施す。
【0019】
イメージバッファ部105は、文字修飾が施された印字ドットイメージデータをRAM(Random Access Memory)などで構成するイメージバッファメモリ上に2値の画素値として格納する。このイメージバッファメモリについては図2にて後述する。
【0020】
交換検出部106は、インクリボン112または印字ヘッド111が交換されたことを検出する。交換検出方法は例えば、機械的に脱着されているかどうかをフックなどの位置などによって検出する。または光学的、電気的な検出でもよい。ジャムなどに起因する単純な脱着なのか交換なのかを区別するために、製品シリアルナンバなどの製品識別番号を読み取り、その使用履歴からその判断を行う。
【0021】
ピン単位カウント部107は、イメージバッファメモリ上に展開された印字ドットパターンデータに対して、対応する印字ヘッドのピン毎の印字ドット数のカウントを実施する。
【0022】
インクリボンデータ保存部108では、イメージバッファメモリに格納された、これから印刷すべきピン単位のドット数カウント値を現在までに印刷された印字ドット数カウント値に加算し、累積カウント値を算出する。
【0023】
インクリボンデータ保存部108は、EEPOM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などの不揮発性メモリで構成され、少なくともインクリボン112交換後から、印字ヘッド111のピン単位でカウントされた印字ドット数の累計カウント値が保存される。また、このインクリボンデータ保存部108のEEPROMをインクリボン112のカセット内に搭載し、製造シリアルナンバなどの製品識別番号やインクリボン長に対応する寿命カウント値などを事前に格納することにより交換検出やリボン長などの製品オプション(製品属性値)に対応する寿命を正確に判断できる。
【0024】
寿命判定部109は、インクリボン112のリボン長に対応する寿命カウント値と現在までの累積カウント値を比較し、累積カウント値が寿命カウント値より大きい場合は、表示部113にインクリボン112の交換を促すガイド情報を表示させる。
【0025】
機構制御部110は、イメージバッファメモリに格納された印字ドットイメージデータに基づき、図示しない印字ヘッド駆動機構や、紙送り機構などを制御して所望の位置に印字行う。
【0026】
印字ヘッド部111は、本実施形態ではラインドットを有する印字ヘッドを仮定する。一般的に漢字対応で使用される印字ヘッドであれば24ピンのドットを持つ。
【0027】
インクリボン112は、その脱着を検出する機構が形成され、交換されたことを交換検出部106に通知する。また好ましくは、図示しないインクリボンカセットにインクリボンデータ保存部108のEEPROMが搭載される。
【0028】
表示部113は、プリンタの設定情報、インクリボンの使用状態表示、およびメンテナンスガイド表示などのユーザインタフェースを受け持つ。一般的には液晶などの表示画面とコマンド選択のためのボタンなどを有する。
【0029】
次に、図2を用いてイメージバッファ部105に搭載されるイメージバッファメモリ21について説明する。このイメージバッファメモリ21は、行数は印字ヘッド111のピン数N(Nは自然数)、列数はM(Mは自然数)の画素数を持つ画素メモリである。通常ドットマトリクスプリンタの印字文字は縦横ともに、8ドットの整数倍で表され、特に漢字を使用する場合は1文字24×24ドットの場合が一般的であるので、N=24、Mは24の整数倍とするイメージバッファメモリ21を構成すると汎用のフォントデータなどが使用できるので好ましい。印字ヘッド111のピン数は解像度を決定する。
【0030】
例えば、PC端末11より送信された一連の印字文字コード(図2の例ではBの2文字)を通信部101を介して受信し、プリンタデータ保存部102で設定されている印字フォント(例えば明朝体)に対応するフォントデータ(AB)を参照する。さらに文字修飾部104において下線などの文字修飾情報22を反映してイメージバッファメモリ21上に印字ドットイメージデータとして展開する。
【0031】
イメージバッファメモリ21の各行画素は印字ヘッド111のピン1からピンNと対応付けられている。ピン単位カウント部107では、この各行画素を印字方向にM回、印字予定となるドット数をカウントする。
【0032】
図3は、インクリボンの寿命判定処理を示すフローチャートであり、図1の各ブロックを参照しながら説明する。まず、ステップST301では、PC端末11から送信される印字文字コードを通信部101にて受信する。
【0033】
ステップST302では、通信部101で受信した印字文字データに対して、プリンタデータ保存部102に設定されたフォントのフォントデータを参照し、印字文字コードから印字ドットイメージデータに変換する。さらに印字文字データに文字修飾情報が含まれていれば、文字修飾部104では、印字文字コードに下線や白黒反転、上付き下付きなどの文字修飾がある場合に印字ドットイメージデータ上に文字修飾を施す。
【0034】
ステップST303では、イメージバッファ部105は、文字修飾が施された印字ドットイメージデータをRAMなどで構成するイメージバッファメモリ21上に2値の画素値として展開し格納する。ここでは黒で示した画素をインパクトして印字するものとする。
【0035】
ステップST304では、ピン単位カウント部107において、このイメージバッファメモリ21の各行画素を印字ヘッド111の各ピンと対応させることにより、印刷予定のドット数をピン単位でカウントする。
【0036】
ステップST305では、この印刷予定のピン単位のドット数カウント値を、インクリボンデータ保存部108に保存し、さらにインクリボン112交換後からのピン単位での印字ドット数の累計カウント値を更新する。
【0037】
ステップST306では、この印字ヘッド111各ピンの累計カウント値とインクリボン112の寿命カウント値と比較する。各ピンの累計カウント値のすべてがインクリボン寿命カウント値より小さい場合には(ST306:No)、印字を実行する(ステップST307)。
【0038】
また各ピンの累計カウント値のどれか1つがインクリボン112の寿命カウント値より大きい場合には(ST306:Yes)、表示部113にインクリボン112の交換を促すガイド画面を出力する。また、PC端末11に同様のメッセージ画面を表示させ、このまま印刷すると文字のかすれなどが生じる可能性があることを操作者に伝える。表示部113の表示例については図5に示す(ステップST308)。このガイド画面表示後には、このまま印刷するか印刷を中止するかを操作者は選択できるものとする。
【0039】
ここで、インクリボン112の寿命とインクリボン保存部108の書き込み保証回数について説明する。インクリボン112の寿命は、リボン長やエンドレスタイプのインクリボンであれば、何回転まで使用可能であるかなどの条件で変化するが、おおよそ300万文字程度を印字できるものが開発されている。一方、インクリボン保存部108に使用されるEEPROMはおおよそ100万回の書き込みが保証されている。したがってインクリボン112の印字文字数の方が書き込み回数の方が大きいため、少なくとも数文字以上の単位にてカウント値を書き込む必要がある。
【0040】
本実施形態では、イメージバッファ部105に一度に印刷する文字数の印字ドットイメージデータを格納し、そのピン単位での印字ドット数のカウントを行うため、書き込み回数は、格納する文字数分の1で済むことになる。搭載するイメージバッファメモリ21の容量を大きくすることにより一回あたりの印字文字数は大きくすることができるため、その書き込み回数を大幅に低減可能であり、しかも印字ドット数のカウントは正確に保たれる。
【0041】
また、インクリボン112の印字寿命文字数とインクリボン保存部108のEEPROMの書き込み保証回数のオーダが同じであることから、インクリボン112の交換とともにインクリボン保存部108に搭載するEEPROMなどの不揮発性メモリを、図示しないインクリボンカセット内に搭載し、このインクリボンカセットと一緒に交換することが利便性に富む。すなわち交換とともに新しいEEPROMがセットされるため、特別にEEPROMの寿命を管理しなくてよい。また、このEEPROMなどの不揮発性メモリ内に、製造シリアルナンバ、リボン長などの製品属性もあらかじめ工場出荷時に格納しておくことにより、本体のドットマトリックスプリンタでこれらを読み出して正確な交換検出、寿命判断が行える。
【0042】
次に、インクリボン112の交換検出について図4のフローチャートに従い説明する。なお、インクリボン保存部108に搭載されるEEPROMなどの不揮発性メモリをインクリボンカセット内に搭載し、このインクリボンカセットと一緒に交換することを想定して説明する。
【0043】
ステップST401では、インクリボン112が交換される。このインクリボン112の交換は、機構的に検出するか、インクリボンカセットに貼付されたバーコード、QRコード(Quick Response Code)などの検出物を光学的に検出するか、さらには、抵抗値、EEPROM内の情報にアクセスして電気的に検出する。これらどのような方法を用いてもよい。
【0044】
ステップST402では、インクリボン112の製品識別番号を読み取る。この製品識別番号は例えば製造シリアルナンバである。この製品識別番号はバーコードなどで読み取ってもよいし、EEPROM内に格納されている情報を読み取ってもよい。
【0045】
ステップST403では、この読み取った製品識別番号をプリンタデータ保存部102に交換履歴として記憶されている製品識別番号と比較する。読み取った製品識別番号がプリンタデータ保存部102に記憶されている製品識別番号と一致しない場合(ST403:Yes)、インクリボン112が交換されたと判断し、プリンタデータ保存部102にこの読み取った製品識別番号を記憶する。新しいインクリボン112をセットしたと判断された場合は、図5(b)に示すような表示画面を表示部113に表示するとともにPC端末11にも同様なメッセージウインドウを表示する。
【0046】
また読み取った製品識別番号がプリンタデータ保存部102に記憶されている製品識別番号と一致すれば(ST403:No)、ジャムなどでインクリボンを再セットしたか、間違えて古いインクリボンを再セットしたと判断する。またこの場合、製品識別番号だけの判断では、同機種のドットマトリクスプリンタに使用済みのリボンをセットすると誤検出をしてしまうため、同時にEEPROM内の累計カウント値、または使用済みフラグなど適宜保存して、これらと合わせて判断する。古いインクリボンを再セットしたと判断された場合は、インクリボンが再セットされた旨を示す表示画面を表示部113に表示するとともにPC端末11にも同様なメッセージウインドウを表示する。
【0047】
ステップST404では、EEPROM内から製品属性値としてリボン長を読み取る。また製品識別番号からリボン長をテーブルから参照する方法でもよい。
【0048】
ステップST405では、このリボン長などの製品属性値からピン単位の寿命カウント値を設定する。この寿命カウント値は、インクリボンカセット内のEEPROM内にあらかじめ製品属性値の一つとして格納され、これを直接読み出してもよい。
【0049】
ステップST405では、現在の印字ドット数の累計カウント値を0とする。インクリボンカセット内にEEPROMが搭載されている場合には、工場出荷時にこの累計カウント値が0とされている場合は確認するだけにとどめてもよい。
【0050】
図5は、表示部113の一例を示している。表示部113はドットマトリクスプリンタの操作性と視認性のよい部分に配置され、液晶パネル等の表示モニタ50と各種メニューをこの表示モニタ50で表示するためのボタン51などから構成されている。図5(a)はインクリボン交換ガイド表示例、図5(b)は新しいインクリボンがセットされた時のガイド表示例である。
【0051】
以上述べたように、第1の実施形態においては、イメージバッファメモリを使用したピン単位での印字ドット数カウントを行っているため、インクリボンの生地の損傷やそれに伴う印字のかすれに対して正確な寿命管理が可能となる。しかも印刷前に寿命判断が可能なため、印刷の失敗を低減できる。また、イメージバッファ容量単位でカウント値の書き込みを行うためEEPROMなどの不揮発性メモリの書き込み回数を保証することが可能である。さらに、EEPROMなどの不揮発性メモリがインクリボンに搭載されている場合は、各種インクリボンの製品属性情報をインクリボン交換とともに新しくできるため、正確なインクリボン交換検出と寿命管理が行えるとともにメンテナンスが容易となる。
【0052】
(第2の実施形態)
本実施形態はPC端末から本実施形態のドットマトリクスプリンタにコマンド送信することにより、プリンタ状態表示の問い合わせが行えるものである。
【0053】
図6は、PC端末11に表示されるプリンタ状態表示画面61の一例である。このプリンタ状態表示の例では、フォント、印字ピッチ、用紙、余白、改行ピッチなどのプリンタ設定情報と、ピン単位の印刷総ドット数、また印刷総ドット数などのインクリボン使用状態と、印字総文字数、インクリボンデータ保存部108へのアクセス回数、プリンタデータ保存部102へのアクセス回数、および印字ヘッド交換後の印刷総ドット数などのその他情報が表示される。
【0054】
PC端末11の操作者は、このプリンタ情報表示画面61を見ながら、プリンタの状態を把握することができる。図7のフローチャートを参照してプリンタ状態問い合わせについて説明する。点線矢印は、問い合わせの流れを示している。
【0055】
PC端末11からプリンタ状態表示のコマンドが発行されると、ステップST701では、イメージバッファメモリ21にて計算される、現在のピン単位での印字ドット数カウント値を取得する。そしてインクリボンデータ保存部108に格納されている累計カウント数と加算しこれを更新することにより、プリンタデータ保存部102のインクリボン使用状態に反映する。
【0056】
ステップST702では、データプリンタデータ保存部102に保存されているプリンタ設定やその他情報を読み出し、インクリボン使用状態と合わせたプリント状態表示データを作成して、表示部113を経由して通信部101に送る。通信部101では、PC端末11にプリント状態表示画面を表示させる。このプリンタ状態表示は、表示部113に接続される表示モニタ50などにも表示可能である。
【0057】
従って、第2の実施形態によれば、PC端末からのプリンタ状態コマンドを発行することによって、ピン単位のドット数カウントをはじめとするドットマトリクスプリンタの状態を確認できる。
【0058】
(第3の実施形態)
本実施形態はインクリボンの印字ドット数のカウントが正確に行われることを利用して印字ヘッドの寿命管理が行えるものである。
【0059】
印字ヘッド111は、その寿命が約10億回ドットとインクリボンに比べて長い寿命を持つ。このためピン単位での印字ドット数カウント値を不揮発性メモリに保存しようとすると、書き込み回数保証回数を大幅に超えてしまう可能性がある。本実施形態では、正確なインクリボンの交換検出と、正確な印字ドット数カウントを利用して、印字ヘッドの寿命も管理しようというものである。
【0060】
図8に示す印字ヘッド交換後の寿命判定処理を示すフローチャートを用いて、印字ヘッド111の寿命管理について説明する。なお、以下のフローチャートでは同リボン長のインクリボンを順次交換したものとして説明する。
【0061】
ステップST801では、印字ヘッド111の交換を検出する。この検出は図1の一点鎖線の矢印で示されるように交換検出部106で行われる。その交換検出の方法は、インクリボン112の交換検出と同様の方法が考えられる。
【0062】
ステップST802では、製造シリアルナンバや製品型番などの製品識別番号を読み取る。この製品読み取り方法もインクリボンと同様の構成にて実現可能である。
【0063】
ステップST803では、印字ヘッド111交換時にインクリボン112のピン単位のドット数累計カウント値をインクデータ保存部108から取得する。この値をピン数N個の配列変数Nc(N)としてプリンタデータ保存部102に保存する。
【0064】
ステップST804では、プリンタデータ保存部102に保存されているインクリボン112の交換履歴から交換回数Nrと、インクリボン112の寿命カウント値Njを取得する。また、印字ヘッド111の寿命カウント値Nhは、あらかじめプリンタデータ保存部102に保存されていてもよいし、インクリボン112に搭載されるEEPROMに格納されていてもよい。インクリボンと印字ヘッドの組み合わせでお互いの寿命、Nj、Nhが決定されるからである。これらの寿命カウント値は、製品開発時に各種の実験によって決定される。
【0065】
ステップST805では、現在のインクリボン112のピン単位での累計ドット数カウント値Nn(N)を図3のステップST304に示したイメージバッファメモリ21の印字ドット数のカウント時に取得する。
【0066】
ステップST806では、現在までの印字ヘッド111の印字ドット累計カウント値をピン単位で計算する。各ピン単位の計算式は、(1)式に示される。
【0067】
印字ドット累計カウント値=Nr×Nj−Nc(I)+Nn(I) …(1)
(Iは1≦I≦Nの整数)
ステップST807では、この印字ヘッド111の印字ドット数累計カウント値と、印字ヘッド寿命カウント値Nhとを比較する。印字ヘッド111の印字ドット数累計カウント値が、印字ヘッド寿命カウント値Nhより小さい場合に(ST807:No)は、印字を行う(ステップST808)。また、また各ピンの印字ドット数累計カウント値のどれか1つが印字ヘッド111の寿命カウント値Nhより大きい場合には(ST807:Yes)、表示部113に印字ヘッド111の交換を促すガイド画面を出力する。また、PC端末11に同様のメッセージウインドウを表示させ、このまま印刷すると文字のかすれなどが生じる可能性があることを操作者に伝える。表示部113の表示例については図9に示す(ステップST309)。このガイド画面表示後には、このまま印刷するか印刷を中止するかを操作者は選択できるものとする。
【0068】
従って、第3の実施形態によれば、インクリボンの印字ドット数が正確にカウントされることを利用して印字ヘッドの寿命管理が行える。なお、リボン長の異なるインクリボンを交換する場合には、交換されたインクリボンそれぞれの印字ドット数累積カウント値を交換履歴から参照して積算すればよい。
【0069】
以上述べた少なくとも一つの実施形態によれば、イメージバッファを使用したピン単位のカウントを行っているため、リボンの生地を損傷や印字のかすれに対して正確な寿命管理が可能となる。しかも寿命判定を印刷前に行えるため印刷の失敗を低減できる。また、イメージバッファ容量単位での書き込みを行っているため、EEPROMなどの不揮発性メモリの書き込み回数を保証することが可能である。さらに、EEPROMなどの不揮発性メモリがインクリボンに搭載されている場合は、各種インクリボンの製品属性情報をインクリボン交換とともに新しくできるため、正確なインクリボン交換検出と寿命管理が行えるとともにメンテナンスが容易となる。さらにインクリボンの印字ドット数が正確に行われることを利用して印字ヘッドの寿命管理が行える。
【0070】
このような構成をとることにより、ユーザやサービスマンはインクリボンや印字ヘッドの寿命を正確にしかも簡単に確認することができるようになる。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0072】
例えば、本発明の実施形態ではピン単位ごとの印字予定ドット数を印字前の印字ドット累計カウント値に加算し、この更新後の印字ドット数累計カウント値がインクリボンのピン単位の寿命カウント値よりも大きい場合に、インクリボンの交換を促すといった構成として説明したが、これに限るものではない。ピン単位ごとのドット印字寿命カウント値を予め保持しておき、この寿命カウント値から印字ごとに減算を行い、この寿命カウント値がゼロ以下となった場合にインクリボンの交換を促すようにしてもよい。
【0073】
これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
101…通信部
102…プリンタデータ保存部
103…フォントデータ参照部
104…文字修飾部
105…イメージバッファ部
106…交換検出部
107…ピン単位カウント部
108…インクリボンデータ保存部
109…寿命判定部
110…機構制御部
111…印字ヘッド
112…インクリボン
113…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクリボンと、
複数のピンからなるライン印字ヘッドと、
文字コードデータを受信する通信部と、
前記文字コードデータに対応するフォントデータを参照して印字ドットイメージデータに変換するフォントデータ参照部と、
前記印字ドットイメージデータが格納され、少なくとも前記複数のピン数と同じ行数の行画素からなるイメージバッファメモリと、
前記イメージバッファに格納された印字ドットイメージデータの行画素ごとに前記複数のピンを対応付け、ピン単位ごとの印字予定ドット数をカウントするピン単位カウント部と、
前記ピン単位ごとの印字予定ドット数を印字前の印字ドット数累計カウント値に加算し、この更新後の印字ドット数累計カウント値が前記インクリボンのピン単位の寿命カウント値よりも大きい場合に、前記インクリボンの交換を表示する交換ガイド表示部と、
前記フォントデータ、ピン単位の印字ドット数累計カウント値、インクリボンの交換履歴を含むプリンタデータが保存されたプリンタ保存部と、
を有することを特徴とするドットマトリクスプリンタ。
【請求項2】
前記インクリボンの交換を検出する交換検出部を更に有し、製品識別番号を取得することを特徴とする請求項1記載のドットマトリクスプリンタ。
【請求項3】
請求項2のドットマトリクスプリンタに使用され、前記製品識別番号と、リボン長に対応するピン単位の印字ドット数寿命カウント値情報を有するインクリボン。
【請求項4】
前記製品識別番号がインクリボンの交換履歴にない場合、前記ピン単位の印字ドット数累計カウント値を0とすることを特徴とする請求項2記載のドットマトリクスプリンタ。
【請求項5】
交換検出部は、更に前記ライン印字ヘッドの交換を検出することを特徴とする請求項4記載のドットマトリクスプリンタ。
【請求項6】
前記ライン印字ヘッドの印字寿命を前記インクリボンの交換回数と印字ドット数累計カウント値から求めることを特徴とする請求項5記載のドットマトリックスプリンタ。
【請求項7】
受信した文字コードデータに対してフォントデータを参照し、さらに文字修飾された印字ドットイメージデータに変換するステップと、
前記印字ドットイメージデータを印字ヘッドのピン数と同数の行画素から構成されるイメージバッファメモリに展開して保存するステップと、
前記イメージバッファメモリの各行画素ごとに前記印字ヘッドのピンを対応づけ、ピンごとの印字予定ドット数をカウントするステップと、
前記印刷予定ドット数カウント値を印字前の印字ドット数累計カウント値に加算し、この更新後の印字ドット数累計カウント値とインクリボンの寿命カウント値とをピン単位で比較するステップと、
を有するインクリボン寿命判定方法。
【請求項8】
インクリボンの交換回数と印字ドット数累計カウント値から印字ヘッドの印字ドット数累計カウント値をピン単位で求め、印字ヘッドの寿命カウント値と比較するステップを有する印字ヘッドの寿命判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−179840(P2012−179840A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45187(P2011−45187)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】