説明

インク供給機構及びそれを備えた記録装置

【課題】取り外し時に良好にインクカートリッジをカートリッジホルダから押し出す。
【解決手段】インク供給機構71は、インクカートリッジ12に供給バルブ付勢スプリング124U,Lの付勢力で供給バルブ123U,Lを押し付け、空気供給路125U,Lを介して内部に空気を供給する加圧機構74と、インクカートリッジ12の導出口159U,Lに導出針111U,Lを挿入して孔112U,Lを通じてインクを導出するインク導出機構110とを備える。カートリッジホルダ13からインクカートリッジ12を取り外す時に、シール部材116U,Lから導出針111U,Lの開口部113U,Lが露出する前かつ供給バルブ123Lがインクカートリッジ12から離れる前に、供給バルブ123Uをインクカートリッジ12から離して空気供給路125U,Lを大気開放し、導出針111U,Lのシール部材116U,Lとの嵌合を解除させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを供給するインク供給機構及びそれを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体にノズルからインク滴を吐出して印刷を行う記録ヘッドを備えたインクジェット式の記録装置が広く用いられている。
このインクジェット式記録装置には、インクカートリッジ内に、インクを貯留したインクパックを収容し、インクカートリッジ内を加圧することで、記録ヘッドにインクを圧送するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−82290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、インクカートリッジは、記録装置本体側のカートリッジホルダにワンタッチで着脱可能に設けられている。つまり、取り付け時に、インクカートリッジをカートリッジホルダのスライダに挿入すると、移動途中でインクカートリッジに形成された係合溝に記録装置本体側のロックレバーが入り込み、インクカートリッジをスライダと一体に奥位置まで押し当ててから操作力を解除すると、スライダとともにインクカートリッジがスライダを付勢するスプリングの付勢力で若干取り外し方向に戻されるとともに、ロックレバーが係合溝の案内で係合溝の係止位置に至って停止する。
【0004】
このとき、記録装置本体側に設けられた加圧機構が、そのスプリングの付勢力で供給バルブをインクカートリッジに押し付け、この供給バルブ内の空気供給路を介してインクカートリッジ内に空気を供給可能な状態となる。またこのとき、記録装置本体側に設けられたインク導出機構が、インクカートリッジの導出口に設けられた弁をそのスプリングの付勢力に抗して開きつつ、導出針を導出口に挿入してインクパックに貯留されたインクを導出可能な状態となる。
【0005】
また、インクカートリッジの取り外し時には、上記の状態から、インクカートリッジを再び押すことで、係合溝の案内で係合溝によるロックレバーの係止が解除され、この状態で操作力を解除すると、インクカートリッジがスライダを付勢するスプリングの付勢力と、加圧機構の供給バルブを付勢するスプリングの付勢力と、インクカートリッジの導出口に設けられた弁のスプリングの付勢力とで、カートリッジホルダから押し出される。
【0006】
しかしながら、インクカートリッジの取り外し時にインクカートリッジを押した後、徐々に操作力を緩めるように操作すると、インクカートリッジの導出口に設けられたシール部材の導出針への摺動抵抗で、インクカートリッジがカートリッジホルダから十分に押し出されなくなってしまう可能性がある。このため、スプリングの付勢力を大きくすることも考えられるが、そうすると、ロックレバーに加わる荷重が増えることになってロックレバーにクリープを生じてしまう可能性が高くなるため、好ましくない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、インクカートリッジの取り外し時に良好にインクカートリッジをカートリッジホルダから押し出すことができるインク供給機構及びそれを備えた記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することのできる本発明に係るインク供給機構は、インクカートリッジが着脱可能に装着されるカートリッジホルダと、前記カートリッジホルダに装着されたインクカートリッジに付勢部材の付勢力で供給バルブを押し付け前記供給バルブ内の空気供給路を介して前記インクカートリッジ内に空気を供給してインクパックを加圧する加圧機構と、前記カートリッジホルダに装着された前記インクカートリッジの導出口に導出針を挿入し、前記インクパックに貯留されたインクを前記導出針の孔を通じて導出するインク導出機構とを有するインク供給機構であって、前記加圧機構は、前記インクカートリッジの前記カートリッジホルダからの取り外し方向移動時に、前記導出口に設けられたシール部材から前記導出針の孔の開口部が露出する前かつ前記供給バルブが前記インクカートリッジから離れる前に前記空気供給路が大気開放され、前記導出針の前記シール部材との嵌合解除後、前記供給バルブが前記インクカートリッジから離れることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、インクカートリッジの取り外し方向移動時に、インク導出機構の導出針がインクカートリッジの導出口に設けられたシール部材との嵌合解除後、加圧機構が供給バルブをインクカートリッジから離すことになるため、加圧機構の供給バルブを付勢する付勢部材の付勢力を、シール部材への導出針の摺動抵抗が解除されるまでインクカートリッジに与え続けることができる。したがって、例えばインクカートリッジの取り外し時にインクカートリッジへの操作力を徐々に緩めるように操作しても、付勢部材の付勢力で、シール部材と導出針との摺動抵抗が解除されるまでインクカートリッジを押すことができるため、良好にインクカートリッジをカートリッジホルダから押し出すことができる。
【0010】
また、供給バルブを付勢する付勢部材の付勢力を利用するため、ロックレバーへの荷重を増大させることがなく、ロックレバーに生じるクリープを防止できる。しかも、このとき加圧機構は、シール部材から導出針の孔の開口部が露出する前かつ供給バルブがインクカートリッジから離れる前に空気供給路を大気開放するため、空気でインクが加圧された状態のままシール部材から導出針の孔の開口部が露出してしまうことがなく、導出針の孔の開口部からの液漏れを抑制できる。
【0011】
また、前記加圧機構は、前記供給バルブを複数有しており、一方の付勢部材で付勢される一方の供給バルブのストロークが、他方の付勢部材で付勢される他方の供給バルブのストロークよりも長く設定され、前記インクカートリッジの前記カートリッジホルダからの取り外し方向移動時に、前記導出口に設けられたシール部材から前記導出針の孔の開口部が露出する前かつ前記一方の供給バルブが前記インクカートリッジから離れる前に前記他方の供給バルブが前記インクカートリッジから離れて前記空気供給路が大気開放され、前記導出針の前記シール部材との嵌合解除後、前記一方の供給バルブが前記インクカートリッジから離れるようにしても良い。
【0012】
この構成によれば、インクカートリッジの取り外し方向移動時に、シール部材から導出針の孔の開口部が露出する前かつ一方の供給バルブがインクカートリッジから離れる前に他方の供給バルブをインクカートリッジから離して空気供給路を大気開放し、その後、導出針のシール部材との嵌合解除後、他方の供給バルブよりもストロークが長く設定された一方の供給バルブをインクカートリッジから離すため、導出針の孔の開口部のシール部材からの露出前に空気供給路を大気開放しインクへの加圧を解除した上で、一方の供給バルブを付勢する付勢部材の付勢力で導出針がシール部材から離れるまでインクカートリッジを押し続けることができる。したがって、加圧機構が複数の供給バルブを有している場合には、一方の供給バルブのストロークを他方の供給バルブのストロークよりも長く設定するという簡素な構造で、導出針の孔の開口部からの液漏れを抑制しつつ良好にインクカートリッジをカートリッジホルダから押し出すことができる。
【0013】
また、前記加圧機構は、前記供給バルブを内筒と前記内筒に対し摺動可能とされ前記付勢部材で付勢される外筒とからなる二重構造を有し、前記内筒に前記空気供給路を大気開放する大気開放穴が設けられ、前記インクカートリッジの前記カートリッジホルダからの取り外し方向移動時に、前記導出口に設けられたシール部材から前記導出針の孔の開口部が露出する前かつ前記外筒が前記インクカートリッジから離れる前に前記内筒の前記大気開放穴が露出されて前記空気供給路が大気開放され、前記導出針の前記シール部材との嵌合解除後、前記外筒が前記インクカートリッジから離れるようにしても良い。
【0014】
この構成によれば、インクカートリッジの取り外し方向移動時に、シール部材から導出針の孔の開口部が露出する前かつ供給バルブの外筒がインクカートリッジから離れる前に外筒を内筒から突出させて空気供給路を大気開放穴で大気開放し、その後、導出針のシール部材との嵌合解除後、供給バルブの外筒をインクカートリッジから離すため、導出針の孔の開口部のシール部材からの露出前に空気供給路を大気開放しインクへの加圧を解除した上で、供給バルブの外筒を付勢する付勢部材の付勢力で導出針がシール部材から離れるまでインクカートリッジを押し続けることができる。したがって、加圧機構が一つの供給バルブを有している場合でも、導出針の孔の開口部からの液漏れを抑制しつつ良好にインクカートリッジをカートリッジホルダから押し出すことができる。
【0015】
また、本発明の記録装置は、上記のインク供給機構を備え、前記インク供給機構から供給されるインクをノズルから吐出して記録媒体に印刷を行うことを特徴とする。
【0016】
この記録装置によれば、インクカートリッジを、インク漏れを抑えつつカートリッジホルダから良好に取り外すことができ、操作性に優れた記録装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るインク供給機構及びそれを備えた記録装置の実施形態について図面を参照して説明する。
なお、本実施形態では、記録装置を備えたメディア処理装置を例示して説明する。
図1はパブリッシャ(メディア処理装置)の外観斜視図、図2はパブリッシャに設置されたレーベルプリンタ部分の斜視図である。
【0018】
パブリッシャ1は、例えばCDあるいはDVD等の円板状のメディア(記録媒体)へのデータの書き込みやメディアのレーベル面への印刷を行うメディア処理装置であり、ほぼ直方体形状のケース2を備えている。このケース2の前面には、左右に開閉可能な開閉扉3,4が取り付けられている。ケース2の上側左端部には、表示ランプ、操作ボタンなどが配列された操作面5が設けられており、また、ケース2の下端には、作成したメディアを排出するメディア排出口6が設けられている。
【0019】
正面視右側の開閉扉3は、ブランクメディアをセットする時、あるいは作成済みメディアを取り出す時に開閉する。
【0020】
正面視左側の開閉扉4は、図2に示すレーベルプリンタ(記録装置)11のインクカートリッジ12の交換時に開閉するためのものであり、この開閉扉4を開けると、鉛直方向に配列された複数のカートリッジホルダ13を有するカートリッジ装着部14が露出するようになっている。なお、パブリッシャ1のケース2の内部には、図示は略すが、レーベルプリンタ11以外に、未使用のブランクメディアを複数枚スタック可能なブランクメディアスタッカ、メディアへのデータ書き込みを行うメディアドライブ、作成済みメディアが保管される作成済みメディアスタッカ、各部の間でメディアを搬送するメディア搬送機構等が設けられている。
【0021】
レーベルプリンタ11はインクジェットプリンタであり、インク供給機構71に取り付けられる各色(本実施形態ではブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタの6色)のインクカートリッジ12を有しており、これらのインクカートリッジ12がカートリッジ装着部14の各カートリッジホルダ13に前方から装着される。
【0022】
レーベルプリンタ11はインク吐出用のノズルを備えたインクジェットヘッド61を有するキャリッジ62を備えており、このキャリッジ62は、キャリッジモータ(図示省略)の駆動力でキャリッジガイド軸に沿って水平方向に往復移動する。
【0023】
レーベルプリンタ11は、インクカートリッジ12が装着されるカートリッジ装着部14を有するインク供給機構71を備えている。このインク供給機構71は、縦型構造を有しており、パブリッシャ1のベース72上に立設されて鉛直方向に配設されている。このインク供給機構71には、可撓性を有するインク供給チューブ73の一端が接続されており、このインク供給チューブ73の他端は、キャリッジ62に接続されている。
【0024】
そして、インク供給機構71に装着されるインクカートリッジ12のインクは、インク供給チューブ73を介してキャリッジ62に供給され、このキャリッジ62に設けられたダンパユニット及び背圧調整ユニットを経てインクジェットヘッド61に供給されノズルから吐出される。
なお、インク供給機構71には、その上部に主部を配置するように加圧機構74が設けられており、この加圧機構74は、インクカートリッジ12内を加圧し、インクカートリッジ12内のインクパックに貯留しているインクを送り出す。
【0025】
また、キャリッジ62のホームポジション(図2に示す位置)における下方側には、インク吸引機構81が設けられている。このインク吸引機構81は、ホームポジションに配置されたキャリッジ62の下面に露出するインクジェットヘッド61のノズルを覆うキャップ82と、インクジェットヘッド62のヘッドクリーニング動作やインク充填動作によってキャップ82に排出された廃インクを吸引する廃インク吸引ポンプ83とを備えている。
【0026】
そして、このインク吸引機構81の廃インク吸引ポンプ83によって吸引された廃インクは、チューブ84を介して、廃インク吸収タンク85へ送り込まれる。
この廃インク吸収タンク85は、ケース86内に図示略の吸収材を配設したもので、その上面は、複数の通気孔87を有するカバー88によって覆われている。
なお、廃インク吸引機構81の下方には、廃インク吸収タンク85の一部である廃インク受け部89が設けられ、廃インク吸引機構81から滴下した廃インクを受け止め、吸収材によって吸収するようになっている。
【0027】
次に、インク供給機構71について説明する。
まず、インク供給機構71に着脱可能に装着されるインクカートリッジ12について、図3を参照して説明する。
【0028】
インクカートリッジ12は、ほぼ直方体形状のカートリッジケース151を有しており、カートリッジケース151の内部には仕切り板(図示省略)により隔てられた上下一対の空気室152U,152Lが形成されている。各空気室152U,152L内には、それぞれインクを収容するインクパック153U,153Lが収容されている。各インクパック153U,153Lには、インクパック153U,153Lの内部に連通するインク導出部材154U,154Lが設けられている。カートリッジケース151の後面151aの中央部には、カートリッジケース151の内外を連通する上下一対の取着孔155U,155Lが設けられており、これら取着孔155U,155Lを介してインク導出部材154U,154Lの各導出口159U,159Lが露出している。これらの導出口159U,159Lには、カートリッジホルダ13内に配置された導出針(後述する)が挿入されて導出針を介してインクが導出される。カートリッジケース151の後面151aにおける取着孔155U,155Lの近傍には、それぞれ各空気室152U,152Lに空気を圧入するための上下一対の空気導入孔156U,156Lが設けられている。さらにカートリッジケース151の後面151aには、取着孔155U,155L及び空気導入孔156U,156Lを挟むようにして左右一対の挿入穴157が設けられている。これらの挿入穴157は、カートリッジホルダ13内の位置決め部材が挿入されるものであり、カートリッジケース151の内部空間とは連通していない。
【0029】
カートリッジケース151の一側面の前端部には、ICチップ158が設けられている。このICチップ158は、インクカートリッジ12をカートリッジホルダ13内に挿入して装着した際に、パブリッシャ1の制御部と電気的に接続されるようになっている。ICチップ158には、各インクパック153U,153L内のインクの種類や残量等に関する情報が記憶されている。
【0030】
インクカートリッジ12は、カートリッジケース151の空気導入孔156U,156Lから空気室152U,152Lに加圧空気を導入することにより、インクパック153U,153Lを押し潰して、インクパック153U,153L内部に収容されているインクを、インク導出部材154U,154Lを介して圧送するようになっている。
【0031】
図4は、インクカートリッジ12が着脱可能に装着されるカートリッジホルダ13にインクカートリッジ12が装着された状態を示すものである。カートリッジホルダ13は、インクカートリッジ12の取り付けまたは取り外し方向に延在する底板部131と底板部131のインクカートリッジ12の取り付け方向奥側に立設された奥壁部132とを有するホルダベース133と、このホルダベース133にインクカートリッジ12の取り付けまたは取り外し方向にスライド可能に保持されたスライダ135と、このスライダ135をインクカートリッジ12の取り外し方向に付勢する左右一対のスライダ付勢スプリング136とを有している。
【0032】
スライダ135は、底壁部138と側壁部139とを有しており、インクカートリッジ12の取り付け時に、側壁部139の内側にインクカートリッジ12が挿入される。そして、挿入されたインクカートリッジ12で底壁部138が押されてインクカートリッジ12と一体に移動する。
【0033】
ここで、インクカートリッジ12の下面には、係合溝160が形成されており、この係合溝160がホルダベース133に回動可能に支持されたロックレバー100の先端のピン101を係止することでインクカートリッジ12が位置決めされる。つまり、係合溝160はロックレバー100とでハートカム機構を構成しており、取り付け時に、インクカートリッジ12をスライダ135に挿入して押し込むと、その途中で係合溝160にロックレバー100が入り込み、インクカートリッジ12及びスライダ135を奥位置まで押し当ててから操作力を解除すると、スライダ135とともにインクカートリッジ12がスライダ付勢スプリング136の付勢力を主体として若干取り外し方向に戻されるとともに、ロックレバー100のピン101が係合溝160の案内で係合溝160の係止位置160aに至って係止される。これにより、インクカートリッジ12がカートリッジホルダ13に装着された装着状態となる。
【0034】
他方、取り外し時には、上記の装着状態から、インクカートリッジ12をスライダ13とともに奥位置まで再び押し当てることで、係合溝160の案内で係合溝160によるロックレバー100の係止が解除される。この状態で操作力を解除すると、インクカートリッジ12がスライダ付勢スプリング136の付勢力を主体として、カートリッジホルダ13から押し出される。
【0035】
図5〜図7に示すように、ホルダベース133には、上記したインクジェットヘッド62に向けてインクカートリッジ12のインクを導出するインク導出機構110が設けられており、インク導出機構110は、ホルダベース133の奥壁部132からインクカートリッジ12の取り付けまたは取り外し方向に沿って延出する上下一対の導出針111U,111Lを有している。これら導出針111U,111L内には、上記したインク供給チューブ73に連通する孔112U,112Lがそれぞれ形成されており、各孔112はそれぞれの開口部113U,113Lが導出針111U,111Lの先端側から上向きに開口している。
【0036】
これらの導出針111U,111Lは、インクカートリッジ12の取り付け時に、インクカートリッジ12のインク導出部材154U,154Lの導出口159U,159Lに挿入されることになる。ここで、インク導出部材154U,154L内には、それぞれ密閉弁115U,115Lが設けられている。これらの密閉弁115U,115Lは、導出口159U,159Lに設けられる環状のシール部材116U,116Lと、シール部材116U,116Lよりも内側にあってインクカートリッジ12の取り付けまたは取り外し方向に沿って移動可能に設けられた弁体117U,117Lと、弁体117U,117Lよりも内側にあって弁体117U,117Lをシール部材116U,116Lに押し付ける方向に付勢する弁体付勢スプリング118U,118Lとを有している。
【0037】
そして、導出針111U,111Lは、インクカートリッジ12の取り付け時に、スライダ135の挿通孔を通過した状態で、インク導出部材154U,154Lの各密閉弁115U,115Lのシール部材116U,116Lに嵌合しつつ、弁体117U,117Lを押して弁体付勢スプリング118U,118の付勢力に抗して移動させて、シール部材116U,116Lから離間させる。そして、インクカートリッジ12がカートリッジホルダ13に装着された装着状態では、図5に示すように、導出針111U,111Lの開口部113U,113Lがシール部材116U,116Lと離間した弁体117U,117Lとの間にあってインクパック153U,153Lに連通する。つまり、インク導出機構110は、カートリッジホルダ13に装着されたインクカートリッジ12のインク導出部材154U,154Lの導出口159U,159Lに導出針111U,111Lを挿入し、インクパック153U,153Lに貯留されたインクを導出針111U,111Lの各孔112U,112Lを通じて導出可能となる。
【0038】
上記した加圧機構74は、ホルダベース133側から、インクカートリッジ12の取り付けまたは取り外し方向に沿って延出する上下一対(複数)の空気供給部120U,120Lを有している。これらの空気供給部120U,120Lは、段付き円筒状をなしており、先端に頭部121U,121Lが、中間部にフランジ部122U,122Lが形成されてインクカートリッジ12の取り付けまたは取り外し方向に移動可能に設けられた供給バルブ123U,123Lを有している。さらに、空気供給部120U,120Lは、供給バルブ123U,123Lをインクカートリッジ12の方向に付勢する供給バルブ付勢スプリング(付勢部材)124U,124L(図6参照)を有している。供給バルブ付勢スプリング124U,124Lは、供給バルブ123U,123Lのフランジ部122U,122Lとホルダベース133の奥壁部132との間に介装されている。なお、供給バルブ123U,123Lには、加圧機構74の加圧された空気を案内する空気供給路125U,125Lが形成されている。
【0039】
これらの空気供給部120U,120Lは、インクカートリッジ12の取り付け時に、供給バルブ123U,123Lがスライダ135の挿通孔を通過した状態で、インクカートリッジ12の後面151aに上下の空気導入孔156U,156Lを塞ぐように当接して、供給バルブ付勢スプリング124U,124Lの付勢力で押し付けられることになる。そして、インクカートリッジ12がカートリッジホルダ13に装着された装着状態にあっても、この状態が維持され、空気供給路125U,125Lを介して空気導入孔156U,156Lに空気を供給可能となる。つまり、これらの空気供給部120U,120Lを有する加圧機構74は、カートリッジホルダ13に装着されたインクカートリッジ12に供給バルブ付勢スプリング124U,124Lの付勢力で供給バルブ123U,123Lを押し付け、空気供給路125U,125Lを介してインクカートリッジ12内に空気を供給してインクパック153U,153Lを加圧可能となる。
【0040】
そして、本実施形態においては、加圧機構74が、下側(一方)の供給バルブ付勢スプリング124Lで付勢される下側(一方)の供給バルブ123Lの移動のストロークを、上側(他方)の供給バルブ付勢スプリング124Uで付勢される上側(他方)の供給バルブ123Uの移動のストロークよりも長く設定しており、両供給バルブ123U,123Lの引込側のストローク端の位置を合わせている結果、図7に示すように、下側の供給バルブ123Lの方が上側の供給バルブ123Uよりも突出側のストローク端の位置が前方に位置するようになっている。なお、両供給バルブ付勢スプリング124U,124Lは、自然長が同一長さとされており、これにより、圧縮時に生じる付勢力は同等とされている。
【0041】
また、本実施形態において、加圧機構74は、装着状態にあったインクカートリッジ12を、取り外しのためカートリッジホルダ13から取り外し方向に移動させると、上下一対の導出口159U,159Lに設けられた密閉弁115U,115Lのシール部材116U,116Lから上下一対の導出針111U,111Lの孔112U,112Lの開口部113U,113Lが露出する前、かつ、下側の供給バルブ123Lがインクカートリッジ12から離れる前に、上側の供給バルブ123Uをインクカートリッジ12から離して空気供給路125U,125Lを大気開放し、導出針111U,111Lがシール部材116との嵌合解除後(つまり実質的にこれらの間の摺動抵抗が0となった以後)に、下側の供給バルブ123Lをインクカートリッジ12から離すように、導出針111U,111Lに対する空気供給部120U,120Lの位置が設定されている。
【0042】
つまり、加圧機構74は、インクカートリッジ12のカートリッジホルダ13からの取り外し方向移動時に、導出口159U,159Lに設けられたシール部材116U,116Lから導出針111U,111Lの開口部113U,113Lが露出する前、かつ、供給バルブ123Lがインクカートリッジ12から離れる前に、空気供給路125U,125Lを大気開放し、導出針111U,111Lがシール部材116U,116Lとの嵌合解除後、供給バルブ123Lをインクカートリッジ12から離すように設定されている。
【0043】
図5に示すように、カートリッジホルダ13に対して装着状態にあるインクカートリッジ12には、図4に示すスライダ付勢スプリング136の付勢力がスライダ135を介して取り外し方向に加わり、密閉弁115U,115Lの弁体付勢スプリング118U,118Lの付勢力が弁体117U,117Lを導出針111U,111Lに押し当てることで取り外し方向に加わり、上下一対の供給バルブ付勢スプリング124U,124Lの付勢力が供給バルブ123U,123Lを介して取り外し方向に加わっており、これらの付勢力でロックレバー100のピン101が係合溝160の係止位置160aに係止されて停止している。
【0044】
この状態から、カートリッジホルダ13に対し装着状態にあるインクカートリッジ12をスライダ135とともに奥位置まで再び押し当てることで、係合溝160の案内で係合溝160によるロックレバー100の係止を解除し、この状態で操作力を解除すると、インクカートリッジ12には、上記したスライダ付勢スプリング136の付勢力、弁体付勢スプリング118U,118Lの付勢力及び上下一対の供給バルブ付勢スプリング124U,124Lの付勢力が取り外し方向に加わっているため、これらの付勢力で取り外し方向に移動する。
【0045】
そして、インクカートリッジ12の取り外し方向移動中に、図6に示すように、上下一対の導出口159U,159Lに設けられた密閉弁115U,115Lのシール部材116U,116Lよりも内側に上下一対の導出針111U,111Lの開口部113U,113Lが位置する状態で、上側の供給バルブ123Uが前端位置までストローク分移動した状態となる。このとき、下側の供給バルブ123Lは、上記設定により未だ移動途中の状態であり、また、導出針111U,111Lも密閉弁115を開いた状態にあるため、インクカートリッジ12には、スライダ付勢スプリング136の付勢力、弁体付勢スプリング118U,118Lの付勢力及び下側の供給バルブ付勢スプリング124Lの付勢力が取り外し方向に加わっている。
【0046】
そして、これらの付勢力で、インクカートリッジ12がさらに取り外し方向に移動すると、図7に示すように、上側の供給バルブ123Uがインクカートリッジ12から離れて空気供給路125Uを大気開放する。すると、インクカートリッジ12の上側の空気室152Uも大気開放され、また、下側の空気室152Lも上側の空気供給部120Uの空気供給路125Uと連通する下側の空気供給部120Lの空気供給路125Lを介して大気開放される。これにより、両空気室152U,152Lが大気圧になる。
【0047】
スライダ付勢スプリング136の付勢力、弁体付勢スプリング118U,118Lの付勢力、及び下側の供給バルブ付勢スプリング124Lの付勢力でインクカートリッジ12がさらに取り外し方向に移動すると、上下一対の導出口159U,159Lに設けられたシール部材116U,116Lから上下一対の導出針111U,111Lの開口部113U,113Lが露出することになる。その後、導出針111U,111Lは弁体117U,117Lへの押圧を解除して両密閉弁115U,115Lを閉塞状態とした後、シール部材116U,116Lとの嵌合を解除してシール部材116U,116Lから離れることになる。このとき、下側の供給バルブ123Lは、上記設定により、少なくとも導出針111U,111Lのシール部材116U,116Lとの嵌合が解除されるまでは移動途中の状態である。そのため、インクカートリッジ12には、スライダ付勢スプリング136の付勢力及び下側の供給バルブ付勢スプリング124Lの付勢力が取り外し方向に加わることになる。その後、下側の供給バルブ123Lが前端位置まで移動した状態となる。
【0048】
なお、取り外し時にカートリッジホルダ13に対し装着状態にあるインクカートリッジ12をスライダ135とともに奥位置まで再び押し当てた後、操作力を一気に解除すれば、スライダ付勢スプリング136の付勢力、弁体付勢スプリング118の付勢力及び上下一対の供給バルブ付勢スプリング124U,124Lの付勢力でインクカートリッジ12はカートリッジホルダ13から勢い良く大きく突出する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、インクカートリッジ12の取り外し方向移動時に、導出針111U,111Lの開口部113U,113Lのシール部材116U,116Lからの露出前に上側の供給バルブ123Uをインクカートリッジ12から離して空気供給路125U,125Lを大気開放しインクへの加圧を解除した上で、下側の供給バルブ123Lを付勢する下側の供給バルブ付勢スプリング124Lの付勢力で、導出針111U,111Lがシール部材116U,116Lとの嵌合を解除するまでインクカートリッジ12を押し続けることができる。
【0050】
したがって、例えばインクカートリッジ12の取り外し時にインクカートリッジ12への操作力を徐々に緩めるように操作しても、スライダ付勢スプリング136の付勢力及び下側の供給バルブ付勢スプリング124Lの付勢力で、シール部材116U,116Lと導出針111U,111Lとの摺動抵抗が解除されるまでインクカートリッジ12を押すことができるため、インクカートリッジ12をカートリッジホルダ13から良好に押し出すことができる。しかも、このとき、加圧機構74は、シール部材116U,116Lから導出針111U,111Lの開口部113U,113Lが露出する前かつ供給バルブ123Lがインクカートリッジ12から離れる前に空気供給路125U,125Lを大気開放するため、空気でインクが加圧された状態のままシール部材116U,116Lから導出針111U,111Lの開口部113U,113Lが露出してしまうことがなく、導出針111U,111Lの開口部113U,113Lからの液漏れを抑制できる。さらに、供給バルブ123Lを付勢する供給バルブ付勢スプリング124Lの付勢力をストロークを伸ばして利用するだけのため、装着状態でのロックレバー100への荷重が大きくならず、ロックレバー100のクリープを防止できる。
【0051】
しかも、加圧機構74が、下側の供給バルブ付勢スプリング124Lで付勢される下側の供給バルブ123Lのストロークを、上側の供給バルブ付勢スプリング124Uで付勢される上側の供給バルブ123Uのストロークよりも長く設定するという簡素な構造で、導出針111U,111Lの開口部113U,113Lからの液漏れを抑制しつつ良好にインクカートリッジ12をカートリッジホルダ13から押し出すことができる。
【0052】
なお、上記の実施形態の加圧機構74の空気供給部120U,120Lの構成を、上下を逆にして、上側の供給バルブ付勢スプリング124Uで付勢される上側の供給バルブ123Uのストロークを、下側の供給バルブ付勢スプリング124Lで付勢される下側の供給バルブ123Lのストロークよりも長く設定するようにしても同様の効果を得ることができる。
【0053】
また、上記の実施形態のように加圧機構74が、一つのインクカートリッジ12に対して空気供給部120U,120Lを複数有するのではなく、インクパック、インク導出部材、空気導入孔がそれぞれ一つだけ設けられたインクカートリッジを装着させるために空気供給部および導出針をそれぞれ一つだけ有する場合には、図8に示すように、空気供給部120の供給バルブ123を略円筒状の内筒170と内筒170に対し所定量摺動可能とされ供給バルブ付勢スプリング(付勢部材)124で付勢される略円筒状の外筒171とからなる二重構造とし、内筒170の中間位置に内周側の空気供給路125を大気開放する大気開放穴173を設ければ良い。このとき、図8(a)に示す装着状態からインクカートリッジのカートリッジホルダからの取り外し方向移動時に、導出口に設けられたシール部材から導出針の孔の開口部が露出する前、かつ、図8(b)に示すように外筒171がインクカートリッジ12から離れる前に、外筒171を内筒170から突出させて大気開放穴173を露出して空気供給路125を大気開放し、導出針がシール部材との嵌合解除後、図8(c)に示すように外筒171をインクカートリッジ12から離すように加圧機構が設定されることになる。
【0054】
このように構成すれば、インクカートリッジの取り外し方向移動時に、シール部材から導出針の開口部が露出する前、かつ、供給バルブ123の外筒171がインクカートリッジ12から離れる前に空気供給路125を大気開放穴173で大気開放し、その後、導出針がシール部材との嵌合解除後、供給バルブ123の外筒171をインクカートリッジ12から離す。そのため、導出針の開口部のシール部材からの露出前に、空気供給路125を大気開放してインクへの加圧を解除した上で、導出針がシール部材との嵌合が解除されるまで、供給バルブ123の外筒171を付勢する供給バルブ付勢スプリング124の付勢力でインクカートリッジ12を押し続けることができる。したがって、加圧機構が一つの供給バルブ123を有している場合でも、導出針の開口部からの液漏れを抑制しつつ良好にインクカートリッジをカートリッジホルダから押し出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態のパブリッシャ(メディア処理装置)の外観斜視図である。
【図2】図1のパブリッシャに設置された記録装置部分の斜視図である。
【図3】本実施形態のインクカートリッジの斜視図である。
【図4】本実施形態の記録装置のカートリッジホルダ部分の(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図5】図4の記録装置のカートリッジホルダ部分の拡大断面図である。
【図6】図4の記録装置のカートリッジホルダ部分の拡大断面図である。
【図7】図4の記録装置のカートリッジホルダ部分の拡大断面図である。
【図8】供給バルブの別の形態例の動作を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0056】
11…レーベルプリンタ(記録装置)、12…インクカートリッジ、13…カートリッジホルダ、71…インク供給機構、74…加圧機構、110…インク導出機構、111U,111L…導出針、112U,112L…孔、113U,113L…開口部、116U,116L…シール部材、123,123U,123L…供給バルブ、124,124U,124L…供給バルブ付勢スプリング(付勢部材)、125,125U,125L…空気供給路、153U,153L…インクパック、159U,159L…導出口、170…内筒、171…外筒、174…大気開放穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクカートリッジが着脱可能に装着されるカートリッジホルダと、
前記カートリッジホルダに装着されたインクカートリッジに付勢部材の付勢力で供給バルブを押し付け前記供給バルブ内の空気供給路を介して前記インクカートリッジ内に空気を供給してインクパックを加圧する加圧機構と、
前記カートリッジホルダに装着された前記インクカートリッジの導出口に導出針を挿入し、前記インクパックに貯留されたインクを前記導出針の孔を通じて導出するインク導出機構とを有するインク供給機構であって、
前記加圧機構は、前記インクカートリッジの前記カートリッジホルダからの取り外し方向移動時に、前記導出口に設けられたシール部材から前記導出針の孔の開口部が露出する前かつ前記供給バルブが前記インクカートリッジから離れる前に前記空気供給路が大気開放され、前記導出針の前記シール部材との嵌合解除後、前記供給バルブが前記インクカートリッジから離れることを特徴とするインク供給機構。
【請求項2】
請求項1に記載のインク供給機構であって、
前記加圧機構は、前記供給バルブを複数有しており、一方の付勢部材で付勢される一方の供給バルブのストロークが、他方の付勢部材で付勢される他方の供給バルブのストロークよりも長く設定され、前記インクカートリッジの前記カートリッジホルダからの取り外し方向移動時に、前記導出口に設けられたシール部材から前記導出針の孔の開口部が露出する前かつ前記一方の供給バルブが前記インクカートリッジから離れる前に前記他方の供給バルブが前記インクカートリッジから離れて前記空気供給路が大気開放され、前記導出針の前記シール部材との嵌合解除後、前記一方の供給バルブが前記インクカートリッジから離れることを特徴とするインク供給機構。
【請求項3】
請求項1に記載のインク供給機構であって、
前記加圧機構は、前記供給バルブを内筒と前記内筒に対し摺動可能とされ前記付勢部材で付勢される外筒とからなる二重構造を有し、前記内筒に前記空気供給路を大気開放する大気開放穴が設けられ、前記インクカートリッジの前記カートリッジホルダからの取り外し方向移動時に、前記導出口に設けられたシール部材から前記導出針の孔の開口部が露出する前かつ前記外筒が前記インクカートリッジから離れる前に前記内筒の前記大気開放穴が露出されて前記空気供給路が大気開放され、前記導出針の前記シール部材との嵌合解除後、前記外筒が前記インクカートリッジから離れることを特徴とするインク供給機構。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載のインク供給機構を備え、
前記インク供給機構から供給されるインクをノズルから吐出して記録媒体に印刷を行うことを特徴とする記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−155425(P2008−155425A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345055(P2006−345055)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】