説明

インク供給装置およびこれを備えたインクジェット記録装置

【課題】紫外線硬化インクの供給形態に係らず、紫外線供給インクの攪拌を適切に行うことができるインク供給装置等を提供することである。
【解決手段】インクジェットヘッド9に紫外線硬化インクを供給するメインタンク51と、インクジェットヘッド9とメインタンク51とを接続するインク供給流路52と、インク供給流路52に介設されたサブタンク53と、紫外線硬化インクの液位を一定にするフロート弁54と、フロート弁54を強制的に開弁動作させる弁作動装置67と、インク供給流路52の下流側およびメインタンク51に接続したバイパス流路56と、バイパス流路56を開閉するバイパス流路開閉バルブ57と、バイパス流路56に介設した送液ポンプ58と、これら装置を制御する制御装置13と、を備え、制御装置13は、フロート弁54を強制的に開弁させ、バイパス流路開閉バルブ57を開放させた後、送液ポンプ58を駆動するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドに顔料インクを供給するインク供給装置およびこれを備えたインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のインク供給装置として、インクジェット記録ヘッド(インクジェットヘッド)にインク(顔料インク)を供給するインク補充ユニット(インク供給源)と、インクジェット記録ヘッドとインク補充ユニットとを接続するチューブ(インク供給流路)と、チューブに介設されたサブタンクユニット(インク貯留部)と、サブタンクユニットに設けられ、サブタンクユニットの液位を一定レベルに維持するフロート弁と、を備えたものが知られている(特許文献1の図5参照)。
このインク供給装置は、インクジェット記録ヘッドの吐出駆動により、サブタンクユニットに貯留しているインクの液面が降下すると、軸に枢支されたフロート弁が液面の降下に伴って傾き、インク注入口からインクがサブタンクユニット内に補充される。そして、インクが所定の液位に達したら、フロート弁がインク注入口を封止してインクの供給を停止する。これにより、サブタンクユニットの液位が一定レベルに維持され、インクジェット記録ヘッドに、一定の水頭圧でインクを供給できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−203049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しなしながら、このようなインク供給装置において、インクとして白色のUVインク(紫外線硬化型インク)等の、溶媒に対して顔料の比重が特に大きいインクを用いると、印刷休止時に、サブタンクユニット等のインク流路に顔料が沈降してしまい、変色や吐出不良の原因となる。かかる場合に、インク流路においてインクを循環させ、攪拌により顔料の沈降を解消することが考えられる。しかし、サブタンクユニットにフロート弁が設けられているため、循環の際にフロート弁が作動(開閉)しまい、インクの循環が良好に行われなくなることが想定される。
【0005】
本発明は、顔料インクの供給形態に係らず、顔料インクの攪拌を適切に行うことができるインク供給装置およびこれを備えたインクジェット記録装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインク供給装置は、インクジェットヘッドに顔料インクを供給するインク供給装置であって、インクジェットヘッドにインクを供給するインク供給源と、インクジェットヘッドとインク供給源とを接続するインク供給流路と、インク供給流路に介設されたインク貯留部と、インク貯留部に設けられ、インク貯留部の液位を一定レベルに維持するフロート弁と、フロート弁を強制的に開弁動作させる弁作動手段と、一端を、インク供給流路におけるインク貯留部の下流側に接続され、他端をインク供給源に接続したバイパス流路と、バイパス流路を開閉するバイパス流路開閉手段と、バイパス流路に介設した送液手段と、弁作動手段、バイパス流路開閉手段および送液手段を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、攪拌指令に基づいて、フロート弁を強制的に開弁動作させると共にバイパス流路開閉手段を開放動作させた後、送液手段を駆動することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、フロート弁を強制的に開弁動作させると共に、バイパス流路開閉手段を開放動作させることで、インク供給流路、インク貯留部およびバイパス流路に、顔料インクを循環させる循環流路が構成される。この状態で、送液手段を駆動すると、顔料インクは、この循環流路を循環し攪拌される。この場合、フロート弁は、強制的に開弁されているため、インク貯留部の液位により開閉動作することがなく、顔料インクの循環を阻害することがない。これにより、顔料が溶媒中で沈降してしまった場合であっでも、顔料インクを効率よく攪拌することができる。したがって、溶媒に対して比重が特に大きい顔料インクを用いても、変色等の印刷品質の悪化やインクジェットヘッドの吐出不良等を有効に防止することができる。
【0008】
この場合、バイパス流路の他端が、インク供給源に代えて、インク供給源近傍のインク供給流路に接続されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、インク供給流路、インク貯留部およびバイパス流路の間で循環流路を形成し、顔料インクを循環させることができるため、インク貯留部において沈降した顔料インクのみならず、全流路の顔料インク(沈降インク)を攪拌することができる。
【0010】
この場合、インク貯留部の上流側近傍のインク供給流路に介設され、インク供給流路を開閉する供給流路開閉手段を、更に備え、バイパス流路の他端が、インク供給源に代えて、供給流路開閉手段とインク貯留部との間のインク供給流路に接続され、制御手段は、送液手段の駆動に先立って、供給流路開閉手段を閉塞動作させることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、バイパス流路からの顔料インクが、インク供給源に向かって逆流することがなく、インク貯留部内の顔料インクを効率よく攪拌することができる。
【0012】
この場合、弁作動手段は、駆動源と、駆動源の動力をフロート弁に伝達し、フロート弁を開弁動作させる開弁機構と、開弁機構とフロート弁との間に介設され、開弁機構からフロート弁に伝達する動力を断続させるクラッチ機構と、を有していることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、クラッチ機構により開弁機構からフロート弁への動力を断続することができるため、印刷時におけるフロート弁の自由な開閉弁動作が損なわれることがない。
【0014】
本発明のインクジェット記録装置は、上記のインク供給装置と、インク供給装置からインクの供給を受けるインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドが搭載されたキャリッジと、記録媒体への印刷に際し、キャリッジを介してインクジェットヘッドを記録媒体に対し相対的に移動させる印刷移動機構と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、顔料が沈降していない顔料インクをインクジェットヘッドに供給することができるため、変色等が生じない描画動作を適切に実行することができる。
【0016】
この場合、インク貯留部が、キャリッジに搭載されていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、インク貯留部およびインクジェットヘッドが近接して配設されるため、顔料インクが、インクジェットヘッドへの供給途中で沈降することがなく、適切に描画することができる。
【0018】
この場合、インクジェットヘッドのノズル面に密接し、インクジェットヘッドのノズルから顔料インクを吸引するインク吸引手段、を更に備え、制御手段は、インク吸引手段を更に制御し、送液手段の駆動を停止した後に、インクジェットヘッドのノズルから顔料インクを吸引させる吸引動作を実施することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、吸引動作により、インクジェットヘッド側の沈降インクを吸引廃棄することができ、顔料が沈降していない顔料インクをインクジェットヘッドに充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態に係るインクジェット記録装置の(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【図2】第1実施形態に係るインク供給装置を模式的に示した系統図である。
【図3】フロート弁廻りを模式的に示した説明図である。
【図4】第2実施形態に係るインク供給装置を模式的に示した系統図である。
【図5】第3実施形態に係るインク供給装置を模式的に示した系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付した図面を参照して、本発明のインク供給装置を搭載したインクジェット記録装置について説明する。このインクジェット記録装置は、いわゆるリール・ツー・リール形式で除給材される薄いフィルム状の記録媒体に対して、紫外線硬化インク(顔料インク)をインクジェットヘッドにより吐出することで、所望の画像等を印刷するものである。なお、以下の説明では、記録媒体の搬送方向をX軸方向とし、X軸方向に直交する方向をY軸方向と規定する。
【0022】
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、機台2と、ロール状に巻回された長尺の記録媒体Wを繰り出す繰出装置3と、印刷済みの記録媒体Wを巻き取る巻取装置4と、機台2上に配設され、給材された記録媒体Wを吸着セットするワークステージ5と、X軸方向に延在し、ワークステージ5を介して記録媒体WをX軸方向に間欠送りするX軸テーブル6と、X軸テーブル6を跨ぐようにY軸方向に架け渡されたY軸テーブル7と、Y軸テーブル7に移動自在に搭載されたキャリッジ8と、キャリッジ8に搭載され、紫外線硬化インクを吐出して記録媒体Wに描画を行うインクジェットヘッド9と、キャリッジ8に搭載され、描画後の記録媒体Wに紫外線を照射して紫外線硬化インクを硬化させる紫外線照射装置10と、を備えている。なお、請求項にいう印刷移動機構は、X軸テーブル6およびY軸テーブル7から構成されている。
【0023】
また、インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド9に紫外線硬化インクを供給する紫外線硬化インク色別複数のインク供給装置11と、インクジェットヘッド9のノズル面32に密接し、インクジェットヘッド9の全吐出ノズル31から紫外線硬化インクを吸引するインク吸引装置41(インク吸引手段)を有し、インクジェットヘッド9の機能の保守および回復を図る保守装置12と、インクジェット記録装置1を統括制御する制御装置13(制御手段)と、を備えている。
【0024】
このインクジェット記録装置1では、繰出装置3により繰り出された記録媒体Wをワークステージ5で吸着セットした後、X軸テーブル6によりワークステージ5を介して記録媒体WをX軸方向に間欠送り(副走査)すると共に、吸着セットされた記録媒体Wの描画可能領域に対し、キャリッジ8を往復動作(主走査)させながらインクジェットヘッド9から紫外線硬化インクを吐出して描画を行う。
記録媒体Wは、連続的に供給可能なロール状のものに限定されるものではなく、枚葉の記録媒体Wを用いてもよい。
【0025】
繰出装置3および巻取装置4は、機台2やワークステージ5を挟むようにしてX軸方向上流側および下流側にそれぞれ配設されている。記録媒体Wは、軽いテンションを付与された状態で繰出装置3から繰り出され、巻取装置4に巻き取られる。
【0026】
ワークステージ5は、その表面に複数形成された孔(図示省略)を介して、繰出装置3から送られてきた記録媒体Wを吸着セットする。ワークステージ5の搬送(X軸)方向上流端部および下流端部には、送込ローラー21と送出ローラー22とが、それぞれ添設されている。なお、詳細な説明は省略するが、ワークステージ5に形成された複数の孔は、図外の真空吸引設備および圧縮エアー供給設備にそれぞれ連通している。
【0027】
送込ローラー21および送出ローラー22は、それぞれ昇降可能に設けられた自由回転するニップローラーであり、X軸方向に並んで配設され、記録媒体Wを挟み込んで、ワークステージ5の上面に記録媒体Wを臨ませる。そして、ワークステージ5は、記録媒体Wを吸着セットした状態で、X軸テーブル6によりX軸方向(上流側から下流側)に間欠送りされる。
【0028】
X軸テーブル6は、機台2上に配設され、X軸方向に延在する一対のX軸ガイドレール23と、ワークステージ5をX軸ガイドレール23に沿ってスライド自在に移動させるX軸移動機構24と、を有している。X軸テーブル6は、往動(または復動)時には停止したキャリッジ8を、次の復動(または往動)までに、描画幅(改行距離)分、記録媒体WをX軸方向(副走査方向)の下流側に送る(改行送り)。
【0029】
Y軸テーブル7は、機台2をY軸方向に跨ぐように架け渡されたY軸ガイドレール25と、キャリッジ8をY軸ガイドレール25に沿ってスライド自在に移動させるY軸移動機構26と、を有している。Y軸テーブル7は、キャリッジ8を介してインクジェットヘッド9および紫外線照射装置10をY軸方向(主走査方向)に往復動させる。
【0030】
キャリッジ8は、紫外線硬化インクを貯留したメインタンク51(インク供給源)に接続したサブタンク53(インク貯留部)と、サブタンク53に接続したインクジェットヘッド9と、紫外線照射装置10を搭載し、X軸方向上流側においてY軸ガイドレール25にスライド自在に係合している。なお、図1では、メインタンク51およびサブタンク53をそれぞれ1つ図示しているが、実際のものは紫外線硬化インクのインク色の数に対応する数、存在する。
【0031】
インクジェットヘッド9は、複数の吐出ノズル31が開口したノズル面32を有し、ノズル面32には、複数の吐出ノズル31が等間隔で並んで構成された複数本のノズル列33が、相互に平行に列設されている。このインクジェットヘッド9では、ノズル列33ごとに、異なる種類(色)の紫外線硬化インクを、それぞれ吐出するようになっている。
【0032】
本実施形態では、いわゆる紫外線硬化型のインクを用いており、ノズル面32には、クリアー(CL)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)、クリアー(CL)から成る複数本のノズル列33が主走査方向(Y軸方向)に順に配設されている。なお、紫外線硬化インクの色、色数および各色の配列は、その用途により任意に設定してよい。また、インクは、紫外線硬化型のものに限られず、赤外線硬化型や可視光硬化型等であってもよい。
【0033】
紫外線照射装置10は、インクジェットヘッド9を挟むようにしてキャリッジ8に搭載された一対の光照射ランプ34,34を有している。各光照射ランプ34は、複数の発光ダイオード(LED)がX軸方向に等間隔に並んだLEDアレイで構成され、その照射面は、インクジェットヘッド9のノズル面32より高い位置に配設されている。紫外線照射装置10は、描画直後の記録媒体Wに臨み紫外線を照射させて紫外線硬化インクを硬化させる。なお、照射光量が十分にとれる場合には、紫外線照射装置10を片側の光照射ランプ34のみで構成してもよい。
【0034】
保守装置12は、インク吸引装置41およびワイピング装置42を有しており、ワイピング装置42は、紫外線硬化インク吸引後のインクジェットヘッド9のノズル面32を払拭する。インク吸引装置41は、インクジェットヘッド9のノズル面32に密着して各吐出ノズル31を封止するヘッドキャップ43と、ヘッドキャップ43を昇降させる図外の昇降機構と、廃液流路77を介してヘッドキャップ43に連通し、吸引した紫外線硬化インクを貯留する廃液タンク44と、廃液流路77に介設された廃液バルブ45と、廃液タンク44に接続され、紫外線硬化インクを吸引する真空吸引機構46と、を備えている。インク吸引装置41は、ヘッドキャップ43をインクジェットヘッド9に密着させ、廃液バルブ45を開放した状態で、真空吸引機構46を駆動することで、各吐出ノズル31から紫外線硬化インクを強制的に吸引する。
【0035】
制御装置13は、インクジェット記録装置1の描画動作を制御すると共に、インク供給装置11における紫外線硬化インクの攪拌動作を制御する。描画動作においては、X軸テーブル6により記録媒体WをX軸方向に間欠送り(副走査)すると共に、キャリッジ8を往復動作(主走査)させながらインクジェットヘッド9から紫外線硬化インクを吐出して描画を行う。また、攪拌動作においては、弁作動装置67(弁動作手段)と、バイパス流路開閉バルブ57(バイパス流路開閉手段)と、送液ポンプ58(送液手段)と、廃液バルブ45および送液ポンプ58を制御する。具体的には、フロート弁54を弁作動装置67により強制的に開弁動作させると共に、バイパス流路開閉バルブ57を開放動作させ、廃液バルブ45を閉塞動作させた後、送液ポンプ58(送液手段)を駆動して紫外線硬化インクを攪拌する。
【0036】
図2および図3に示すように、インク色別の各インク供給装置11は、インクジェットヘッド9に紫外線硬化インクを供給するメインタンク51と、インクジェットヘッド9とメインタンク51とを接続するインク供給流路52(チューブ)と、インク供給流路52に介設されたサブタンク53と、サブタンク53に設けられ、サブタンク53の液位を一定レベルに維持するフロート弁54と、フロート弁54を強制的に開弁動作させる弁作動装置67(弁作動手段)と、一端を、インク供給流路52におけるサブタンク53の下流側に接続され、他端をメインタンク51に接続したバイパス流路56と、バイパス流路56を開閉するバイパス流路開閉バルブ57(バイパス流路開閉手段)と、バイパス流路56に介設した送液ポンプ58と、を有している。
【0037】
メインタンク51は、保守装置12に併設されており、インク供給流路52を介して、キャリッジ8に搭載されたサブタンク53に接続されている。メインタンク51は、インクジェットヘッド9の吐出駆動によるサブタンク53内の紫外線硬化インクの液面降下に伴う、フロート弁54の開弁動作により紫外線硬化インクを供給する。この場合、メインタンク51は、自然水頭あるいは圧力送液により紫外線硬化インクを供給する。
【0038】
インク供給流路52は、一端がメインタンク51に接続されており、他端がサブタンク53に接続された上流側インク供給流路59と、一端がサブタンク53の下端部に接続され、他端がインクジェットヘッド9に接続された下流側インク供給流路60と、から構成されている。下流側インク供給流路60には、バイパス流路56が分岐して接続されている。
【0039】
サブタンク53は、キャリッジ8に搭載されており、インク流入口61にはメインタンク51に接続された上流側インク供給流路59の下流端が接続され、インク流出口62にはインクジェットヘッド9に接続された下流側インク供給流路60の上流端が接続されている。サブタンク53は、メインタンク51から供給される紫外線硬化インクの液面を一定に保持することにより、一定の圧力でインクジェットヘッド9に紫外線硬化インクを供給するようになっている。また、サブタンク53には、フロート弁54および弁作動装置67が設けられており、紫外線硬化インクの攪拌動作時において、フロート弁54を開放状態に維持できるようになっている。
【0040】
フロート弁54は、フロート63と、フロート63を一方の端部で回動自在に支持する支持軸64と、フロート63の上下動作に伴ってサブタンク53のインク流入口61を開閉する弁本体65と、から構成されている。
【0041】
フロート63は、サブタンク53に貯留している紫外線硬化インクの液面が降下すると、支持軸64を中心に傾き、紫外線硬化インクの液面が上昇すると、支持軸64を中心に略水平となる。弁本体65は、フロート63に上側から当接した作動ロッド66を有し、略水平に上動したフロート63により閉弁動作し、下動して傾いたフロート63および自身のばね68により開弁動作する。
【0042】
インクジェットヘッド9の吐出駆動により、紫外線硬化インクが消費されサブタンク53内の液面が降下すると、フロート63が下動し、弁本体65が開弁する。これにより、紫外線硬化インクが、インク流入口61からサブタンク53内に補充される。一方、紫外線硬化インクの補充がすすみサブタンク53内の液面が上昇すると、フロート63が略水平となって、弁本体65が閉弁する。これにより、サブタンク53への紫外線硬化インクの補充が行われる。また、フロート弁54は、紫外線硬化インクの攪拌動作時においては、後述の弁作動装置67により、液面の上下に関係なく開放状態を維持する。
【0043】
図3に示すように、弁作動装置67は、制御装置13に接続されたモーター71(駆動源)と、モーター71の動力をフロート弁54(支持軸64)に伝達し、これを回転させてフロート弁54を開弁動作させる開弁機構72と、開弁機構72とフロート弁54との間に介設され、開弁機構72からフロート弁54に伝達する動力を断続させるクラッチ機構73と、を有している。クラッチ機構73は、モーター71の正転によりフロート63と、開弁機構72と、を接続し、逆転によりフロート63と、開弁機構72との動力伝達を遮断する。開弁機構72は、モーター71の正転により、クラッチ機構73を介してフロート弁54(支持軸64)を開弁させ、フロート弁54が開弁した後はスリップ回転してフロート弁54の開弁動作を維持する。
【0044】
バイパス流路56は、一端が下流側インク供給流路60に接続されており、他端がメインタンク51に接続されている。バイパス流路56には、第1開閉バルブ74および第2開閉バルブ75からなるバイパス流路開閉バルブ57と、サブタンク53内の紫外線硬化インクをメインタンク51に向かって送液する送液ポンプ58と、が介設されている。
【0045】
第1開閉バルブ74は、下流側インク供給流路60近傍のバイパス流路56に介設され、第2開閉バルブ75は、メインタンク51近傍のバイパス流路56に介設されている。これら第1開閉バルブ74および第2開閉バルブ75は、それぞれ制御装置13に接続されている。第1開閉バルブ74および第2開閉バルブ75を開放することで、サブタンク53とメインタンク51とが連通する。これにより、メインタンク51と、上流側インク供給流路59と、サブタンク53と、下流側インク供給流路60およびバイパス流路56からなる循環流路が構成される。
【0046】
送液ポンプ58は、第1開閉バルブ74および第2開閉バルブ75の間のバイパス流路56に介設され、制御装置13に接続されている。第1開閉バルブ74および第2開閉バルブ75を開放し、送液ポンプ58を駆動することで、サブタンク53内の紫外線硬化インクがメインタンク51に送液される。すなわち、送液ポンプ58は、上記の循環流路に対し循環ポンプとして機能する。
【0047】
図2を参照して、インク供給装置11における紫外線硬化インクの攪拌動作について説明する。この攪拌動作では、先ずヘッドキャップ43を上昇させてインクジェットヘッド9(ノズル面32)に対して密着させることで、各吐出ノズル31を封止する。その後、モーター71を正転してフロート弁54を開弁させ、紫外線硬化インクをメインタンク51からサブタンク53内に流入させる。また、この動作と並行して、第1開閉バルブ74および第2開閉バルブ75を開放して、サブタンク53およびメインタンク51を連通させ上記の循環流路を構成する。次に、送液ポンプ58を駆動して、サブタンク53から流出した紫外線硬化インクをメインタンク51に送液する。すなわち、メインタンク51、上流側インク供給流路59、サブタンク53、下流側インク供給流路60、インクジェットヘッド9およびバイパス流路56を連通させた状態で、送液ポンプ58を駆動し、循環流路を介して紫外線硬化インクを循環させる。これにより、紫外線硬化インクは攪拌され、分離した顔料および溶媒が混合する。
【0048】
所定時間攪拌したら、モーター71を逆転させ、フロート弁54をフリーとする。また、送液ポンプ58を停止させると共に、第1開閉バルブ74および第2開閉バルブ75を閉鎖する。フリー状態となったフロート弁54は、サブタンク53内の紫外線硬化インクが所定の液位に達したら、閉弁して紫外線硬化インクの供給を停止する。
【0049】
その後、廃液バルブ45を開放してインクジェットヘッド9および廃液タンク44を連通した状態で、送液ポンプ58を駆動して、インクジェットヘッド9の全ノズルから紫外線硬化インクを吸引する。これにより、攪拌されなかった吐出ノズル31近傍の紫外線硬化インクが排出されると共に、攪拌された紫外線硬化インクがインクジェットヘッド9に充填される。したがって、インクジェットヘッド9内には、攪拌された紫外線硬化インクのみが充填され、描画可能な状態となる。
【0050】
以上の構成によれば、フロート弁54を強制的に開弁動作させることで形成された循環流路に紫外線硬化インクを循環させることで、紫外線硬化インクを攪拌することができる。特に、白色の紫外線硬化インクなどで顔料が溶媒に対して沈降してしまった場合であっでも、紫外線硬化インクを効率よく攪拌することができ、インクジェットヘッド9の吐出不良等を有効に防止することができる。
【0051】
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。なお、重複した記載を避けるべく、第1実施形態と異なる部分を主として説明する。このインクジェット記録装置1のインク供給装置11は、上記のメインタンク51と、インク供給流路52と、サブタンク53と、フロート弁54と、弁作動装置67と、バイパス流路56と、バイパス流路開閉バルブ57と、送液ポンプ58と、を備えており、バイパス流路56の他端が、メインタンク51に代えて、メインタンク51近傍の上流側インク供給流路59に接続されている。
【0052】
この場合における攪拌動作では、第1開閉バルブ74および第2開閉バルブ75を開放することで、サブタンク53、下流側インク供給流路60、インクジェットヘッド9、バイパス流路56および上流側インク供給流路59を連通させ、循環流路を構成する。次に、送液ポンプ58を駆動することで、循環流路を介して紫外線硬化インクを循環させる。これにより、紫外線硬化インクは攪拌され、分離した顔料および溶媒が混合する。
【0053】
以上の構成によれば、サブタンク53内で沈降した紫外線硬化インクのみならず、全流路の紫外線硬化インク(沈降インク)を攪拌することができる。
【0054】
次に、図5を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。このインクジェット記録装置1のインク供給装置11は、上記のメインタンク51と、インク供給流路52と、サブタンク53と、フロート弁54と、弁作動装置67と、バイパス流路56と、バイパス流路開閉バルブ57と、送液ポンプ58に加え、サブタンク53の上流側近傍の上流側インク供給流路59に介設され、上流側インク供給流路59を開閉するインク供給流路バルブ76(供給流路開閉手段)を、備えている。そして、バイパス流路56の他端は、メインタンク51に代えて、インク供給流路バルブ76とサブタンク53との間の上流側インク供給流路59に接続されている。
【0055】
この場合における攪拌動作では、インク供給流路バルブ76を閉鎖させると共に、第1開閉バルブ74および第2開閉バルブ75を開放する。これにより、サブタンク53、下流側インク供給流路60、インクジェットヘッド9およびバイパス流路56(および上流側インク供給流路59)を連通させ、循環流路を構成する。次に、送液ポンプ58を駆動することで、循環流路を介して紫外線硬化インクを循環させる。これにより、紫外線硬化インクは攪拌され、分離した顔料および溶媒が混合する。
【0056】
以上の構成によれば、サブタンク53内の紫外線硬化インクを効率よく攪拌することができる。
【符号の説明】
【0057】
6…X軸テーブル 7…Y軸テーブル 8…キャリッジ 9…インクジェットヘッド 11…インク供給装置 13…制御装置 41…インク吸引装置 51…メインタンク 52…インク供給流路 53…サブタンク 54…フロート弁 55…弁作動装置 56…バイパス流路 57…バイパス流路開閉バルブ 58…送液ポンプ 71…モーター 72…開弁機構 73…クラッチ機構 76…インク供給流路開閉バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドに顔料インクを供給するインク供給装置であって、
前記インクジェットヘッドにインクを供給するインク供給源と、
前記インクジェットヘッドと前記インク供給源とを接続するインク供給流路と、
前記インク供給流路に介設されたインク貯留部と、
前記インク貯留部に設けられ、前記インク貯留部の液位を一定レベルに維持するフロート弁と、
前記フロート弁を強制的に開弁動作させる弁作動手段と、
一端を、前記インク供給流路における前記インク貯留部の下流側に接続され、他端を前記インク供給源に接続したバイパス流路と、
前記バイパス流路を開閉するバイパス流路開閉手段と、
前記バイパス流路に介設した送液手段と、
前記弁作動手段、前記バイパス流路開閉手段および前記送液手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、攪拌指令に基づいて、前記フロート弁を強制的に開弁動作させると共に前記バイパス流路開閉手段を開放動作させた後、前記送液手段を駆動することを特徴とするインク供給装置。
【請求項2】
前記バイパス流路の前記他端が、前記インク供給源に代えて、前記インク供給源近傍の前記インク供給流路に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のインク供給装置。
【請求項3】
前記インク貯留部の上流側近傍の前記インク供給流路に介設され、前記インク供給流路を開閉する供給流路開閉手段を、更に備え、
前記バイパス流路の前記他端が、前記インク供給源に代えて、前記供給流路開閉手段と前記インク貯留部との間の前記インク供給流路に接続され、
前記制御手段は、前記送液手段の駆動に先立って、前記供給流路開閉手段を閉塞動作させることを特徴とする請求項1に記載のインク供給装置。
【請求項4】
前記弁作動手段は、
駆動源と、
駆動源の動力を前記フロート弁に伝達し、前記フロート弁を開弁動作させる開弁機構と、
前記開弁機構と前記フロート弁との間に介設され、前記開弁機構から前記フロート弁に伝達する動力を断続させるクラッチ機構と、を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のインク供給装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のインク供給装置と、
前記インク供給装置からインクの供給を受ける前記インクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドが搭載されたキャリッジと、
記録媒体への印刷に際し、前記キャリッジを介して前記インクジェットヘッドを前記記録媒体に対し相対的に移動させる印刷移動機構と、を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記インク貯留部が、前記キャリッジに搭載されていることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記インクジェットヘッドのノズル面に密接し、前記インクジェットヘッドのノズルから前記顔料インクを吸引するインク吸引手段、を更に備え、
前記制御手段は、前記インク吸引手段を更に制御し、
前記送液手段の駆動を停止した後に、前記インクジェットヘッドのノズルから前記顔料インクを吸引させる吸引動作を実施することを特徴とする請求項5または6に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−166410(P2012−166410A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28279(P2011−28279)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】