説明

インク供給装置

【課題】インク塗布の品質を向上し得るインク供給装置を提供する。
【解決手段】インク9を貯留するインクタンク2と、インクタンク2よりも低い位置に配設されると共にインクタンク2から供給されるインク9をノズル3aから噴出するヘッド3と、インクタンク2におけるインク9の液面9aの上方に形成される空隙10内を負圧に維持する負圧生成部4と、インクタンク2内のインク9の液面高さh2を検出する液面センサ5と、ノズル3aからインクタンク2の底板内面までの高さh1と液面高さh2とを加算してノズル3aから液面9aまでの高さ(h1+h2)を算出し、この高さ(h1+h2)に応じて負圧生成部4に対して空隙10内の負圧を制御させることにより、ノズル3a内のインク9に一定の負圧を付与する制御部8とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタにおけるインク供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のインク供給装置として、特開2006−44015号公報に開示されているインクジェット印刷装置に使用されているインク供給装置が知られている。このインク供給装置は、インク液滴を重力方向に噴出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドの上部に配置されて大容量のインクを貯溜するインクタンクと、インクタンクとインクジェットヘッドとの間のインク供給路に設けられて小容量のインクを貯溜するためのインク室と、インク室に連結されてインクジェットヘッドのノズルに付与する負圧を調整するインク室負圧調整手段(圧力調整器)とを備えている。この場合、インク室は、第1インク分室と第2インク分室とで構成されており、このうちの第2インク分室には、インクの水位を検出するための2個のインクセンサが配設されている。また、第2インク分室は、その内部の上部に空気溜り部を有し、空気溜り部に連通する圧力調整器によってその内部が負圧に調整されている。
【0003】
このインク供給装置では、圧力調整器が空気溜り部の吸引圧(負圧)を初回時に調整する。その後、第2インク分室に設けた2個のインクセンサを用いて第2インク分室の水位を検出しつつ、印刷動作によるインクの消費によって、検出された水位が2個のインクセンサの一方のインクセンサで検出される水位(下限水位)に達したときには、他方のインクセンサで検出される水位(上限水位)に達するまでインクを補充する。この処理を繰り返すことにより、インクの水位が一定の範囲に保持される結果、インクジェットヘッドのノズルに付与される負圧が適正な範囲に維持される。
【特許文献1】特開2006−44015号公報(第4−7頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記した従来のインク供給装置には、以下のような解決すべき課題がある。すなわち、このインク供給装置では、初回時に一度、圧力調整器で空気溜り部内の負圧を調整した後は、この負圧の圧力調整は行われない。他方、上記公報中の式(1)に示されるように、インクジェットヘッドのノズルに付与される負圧は、第2インク分室の水位(具体的にはノズルからインクの液面までの高さ)と第2インク分室内の負圧とで決定される。このため、インク供給装置には、第2インク分室の水位の変動に伴い、インクジェットヘッドのノズルに付与されている負圧が変動するため、インクジェットヘッドによるインク塗布の品質が低いという解決すべき課題が存在している。
【0005】
本発明は、かかる解決すべき課題に鑑みてなされたものであり、インク塗布の品質を向上し得るインク供給装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載のインク供給装置は、インクを貯留するインクタンクと、前記インクタンクよりも低い位置に配設されると共に当該インクタンクから供給される前記インクをノズルから噴出するインクジェットヘッドと、前記インクタンクにおける前記インクの液面の上方に形成される空隙内を負圧に維持する負圧生成部と、前記ノズルから前記液面までの高さを検出する高さ検出部と、前記高さ検出部によって検出された前記高さに応じて前記負圧生成部に対して前記空隙内の負圧を制御させることにより、前記ノズル内の前記インクに一定の負圧を付与する制御部とを備えている。
【0007】
また、請求項2記載のインク供給装置は、請求項1記載のインク供給装置において、前記インクジェットヘッドの温度を検出する温度検出部を備え、前記制御部は、前記温度検出部によって検出された前記温度に応じて前記インクに付与する前記一定の負圧を決定する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載のインク供給装置によれば、高さ検出部によって検出されたノズルから液面までの高さに応じて制御部が負圧生成部に対してインクタンク内の空隙の負圧を制御させることにより、インクが消費されてインクタンク内のインクの量が減少したとしても、インクの量の減少に比例して空隙内の負圧を減少させることができ、この結果、ノズル内のインクに一定の負圧を付与することができる。したがって、インクジェットヘッドによるインク塗布の品質を向上させることができる。
【0009】
また、請求項2記載のインク供給装置によれば、制御部がヘッドの温度に応じてインクに付与する一定の負圧を決定することにより、温度変化に応じてインクの粘度が変化したときにおいても、温度に適合した一定の負圧をノズル内のインクに付与することができる。したがって、インクジェットヘッドによるインク塗布の品質を一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るインク供給装置の最良の形態について説明する。
【0011】
最初に、インク供給装置1の構成について説明する。
【0012】
インク供給装置1は、インクジェット式のインク塗布装置に使用されるインク供給装置であって、図1に示すように、インクタンク2、ノズル3aを有するインクジェットヘッド(以下、「ヘッド」ともいう)3、負圧生成部4、液面センサ5、温度検出部6、記憶部7および制御部8を備えて、ノズル3a内のインク9に対して、ヘッド3の温度tに対応した一定の負圧(目標負圧P0)を付与可能に構成されている。
【0013】
インクタンク2は、インク9の満タンの状態において、液面9aの上方に空隙10が形成されるようにインク9を貯留する。ヘッド3は、インクタンク2(の底板)よりも低い位置に配設され、かつ一端側がインクタンク2の底板内面で開口する第1管路11の他端側に連結されている。また、ヘッド3は、インクタンク2から第1管路11を介して供給されたインク9を、ヘッド3の下面に開口するようにして配設されたノズル3aから下方に向けて噴出させる機能を備えている。また、ヘッド3は、ノズル3aの開口位置(ヘッド3の下端面)からインクタンク2の底板内面までの高さが所定の高さh1となるようにその位置が規定されている。
【0014】
負圧生成部4は、例えば、圧力調整機能を備えた真空ポンプを備えて構成されている。また、負圧生成部4は、一端側がインクタンク2の上部側壁内面で開口する第2管路12の他端側に連結されている。これにより、負圧生成部4は、第2管路12を介してインクタンク2内の空隙10と連通して、制御部8の制御に従って空隙10内を負圧に維持する。具体的には、負圧生成部4は、空隙10内の負圧P1を制御する。
【0015】
液面センサ5は、制御部8と共に本発明における高さ検出部を構成し、インクタンク2内に配設されている。また、液面センサ5は、インクタンク2内のインク9の液面高さ(インクタンク2の底板内面からインク9の液面9aまでの高さ)h2を連続的に、所定のサンプリング周期で検出して出力する。温度検出部6は、ヘッド3の温度tを所定のサンプリング周期で検出して出力する。
【0016】
記憶部7は、ROMおよびRAMで構成されている。この場合、ROMには、制御部8の動作を規定するプログラム、目標負圧テーブル、所定の高さh1、およびインク9の比重ρが予め記憶されている。この場合、インク9の粘性は温度によって変化するため、ノズル3aからのインク9の垂れ易さも温度tによって変化する。したがって、ノズル3a内のインク9に付与する目標負圧P0も、ヘッド3の温度tに応じて変更するのが好ましい。このため、このインク供給装置1では、ヘッド3の温度t毎の目標負圧P0が目標負圧テーブルとして記憶されている。RAMは、制御部8のワークメモリとして使用される。制御部8は、CPUを備えて構成されて、記憶部7に記憶されているプログラムに従い、後述する負圧制御処理を実行する。また、制御部8は、高さ検出部として機能して、液面高さh2と記憶部7に記憶されている所定の高さh1とを加算することにより、液面9aのノズル3aからの高さ(h1+h2)を検出する。
【0017】
次に、インク供給装置1の動作について説明する。
【0018】
インク供給装置1では、作動状態において、液面センサ5が、所定のサンプリング周期でインク9の液面高さh2を検出して制御部8に出力している。また、温度検出部6が、所定のサンプリング周期でヘッド3の温度tを検出して制御部8に出力している。
【0019】
一方、制御部8は、液面高さh2および温度tを入力する都度、これらを記憶部7に更新記憶させる。これにより、記憶部7には、最新の液面高さh2および温度tが記憶される。また、制御部8は、所定の周期で負圧制御処理を繰り返し実行する。
【0020】
この負圧制御処理では、制御部8は、まず、最新の温度tを記憶部7から読み出し、次いで、目標負圧テーブルを参照してこの最新の温度tに対応する目標負圧P0を決定する。続いて、制御部8は、インクタンク2内の空隙10の負圧P1を算出するために必要なパラメータである、所定の高さh1、比重ρ、最新の液面高さh2を記憶部7から読み出す。次いで、制御部8は、読み出したこれらのパラメータを下記(1)式に代入することにより、空隙10内の負圧P1を算出する。最後に、制御部8は、空隙10内の圧力がこの負圧P1となるように負圧生成部4を制御する。
P1=−ρ×(h1+h2)+P0 ・・・・ (1)
【0021】
このように、このインク供給装置1では、制御部8が、液面センサ5によって検出されたインク9の液面高さh2に応じて負圧生成部4に対してインクタンク2内の空隙10の負圧P1を制御させる。したがって、このインク供給装置1によれば、インク9が消費されてインクタンク2内のインク9の量が減少したとしても、インク9の量の減少に比例して空隙10内の負圧P1を減少させる(つまり正圧に近付ける)ことができ、この結果、ノズル3a内のインク9に付与される負圧を目標負圧P0に維持することができる。したがって、ヘッド3によるインク塗布の品質を向上させることができる。
【0022】
また、このインク供給装置1によれば、制御部8が、ヘッド3の最新の温度tに応じて目標負圧P0を決定(変更)することにより、温度変化に応じてインク9の粘度が変化したときにおいても、ノズル3a内のインク9に付与される負圧を最新の温度tに適合した目標負圧P0に維持することができる。したがって、ヘッド3によるインク塗布の品質を一層向上させることができる。
【0023】
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、インク供給装置1では、上記したように、ヘッド3の温度tに応じて目標負圧P0を決定する構成が採用されているが、ヘッド3の温度tの温度変化を考慮する必要のないときには、温度検出部6および目標負圧テーブルを設けない構成を採用することもできる。この構成によれば、インク供給装置のコストを低減することができる。また、インク供給装置1では、液面センサ5が所定のサンプリング周期でインク9の液面高さh2を検出して制御部8に出力し、かつ温度検出部6が所定のサンプリング周期でヘッド3の温度tを検出して制御部8に出力する構成を採用しているが、液面センサ5がインク9の液面高さh2に応じて変化するアナログ信号を制御部8に出力し、かつ温度検出部6がヘッド3の温度tに応じて変化するアナログ信号を制御部8に出力して、制御部8が各アナログ信号を所定のサンプリング周期でサンプリングして、インク9の液面高さh2およびヘッド3の温度tを検出する構成を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】インク供給装置1の構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0025】
1 インク供給装置
2 インクタンク
3 ヘッド
3a ノズル
4 負圧生成部
5 高さ検出部
6 温度検出部
7 記憶部
8 制御部
9 インク
9a 液面
10 空隙
11,12 管路
h1 高さ
h2 液面高さ
ρ 比重
t 温度
P0 目標負圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを貯留するインクタンクと、
前記インクタンクよりも低い位置に配設されると共に当該インクタンクから供給される前記インクをノズルから噴出するインクジェットヘッドと、
前記インクタンクにおける前記インクの液面の上方に形成される空隙内を負圧に維持する負圧生成部と、
前記ノズルから前記液面までの高さを検出する高さ検出部と、
前記高さ検出部によって検出された前記高さに応じて前記負圧生成部に対して前記空隙内の負圧を制御させることにより、前記ノズル内の前記インクに一定の負圧を付与する制御部とを備えているインク供給装置。
【請求項2】
前記インクジェットヘッドの温度を検出する温度検出部を備え、
前記制御部は、前記温度検出部によって検出された前記温度に応じて前記インクに付与する前記一定の負圧を決定する請求項1記載のインク供給装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−253402(P2007−253402A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79225(P2006−79225)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】