説明

インク受容層、インク受容層形成用塗布液、インク受容層の形成方法、及び導電パターンの形成方法

【課題】基板上に定着性に優れるインク受容層を形成後、該基板上に金属微粒子分散液をパターニングして、焼成する導電性と密着性に優れる、導電材の形成方法を提供する。
【解決手段】基板(K)表面に形成され、かつ金属微粒子(P)と多価アルコール(S1)を含有する還元性溶媒(A)とを含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後、加熱、焼成により導電パターンを形成することが可能なインク受容層(R)であって、該インク受容層(R)がフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤(C)で表面を撥液処理された、非導電性無機粒子(G)が親水性バインダー(B)により結合されて形成されている層であり、インク受容層(R)の表面が無機粒子(G)に基づく凹凸形状が形成されていて、インク受容層(R)表面に存在する親水性バインダー(B)が水酸基を有していることを特徴とするインク受容層。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面に形成され、かつ導電性インクを塗布又はパターン化後、加熱、焼成により導電パターンを形成することが可能なインク受容層、該インク受容層形成用塗布液、該インク受容層の形成方法、及び導電パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からプリント配線板上に回路パターンなどの微細な配線パターンを形成する方法としては、液滴吐出方法が知られている。この方法は、パターン形成成分を含む機能液を液滴吐出ヘッドから基板上に吐出すること等により配線パターンを形成する方法である。この方法によれば、フォトリソグラフィ工程が不要となるので、プロセスが大幅に簡略化されるというメリットがある。このパターン形成において、パターン形成成分を含む機能液として金属微粒子分散液を用いてパターニングを行い、続けて焼成を行うことで金属微粒子の導電パターンを形成する方法が知られている。
近年、コスト低減および耐マイグレーション性の観点から、インクジェットプロセス等の液滴吐出方法で吐出させる導電性インクに銅などの卑金属の微粒子を用いた分散溶液の使用が望まれている。しかしながら、卑金属は酸化されやすい金属であるため、焼成時に酸化され、導電性、密着性に優れた導電パターンを形成することが難しいという問題がある。
【0003】
一方、金属微粒子分散液を用いて導電パターンを形成する際に、基板との密着性向上やパターニング性の向上を目的として、金属微粒子分散液を受容する薄膜層(受容層)を基板表面に設けることが提案されている。一般的な金属微粒子分散液の受容層は、無機粒子とバインダーから成る多孔質構造であり、該分散液の溶媒が多孔質層に吸収されることで、金属微粒子分散液中の金属微粒子が受容層表面に残存する構造となっている。特許文献1には、基板上方に微小空隙型の受容層を形成し、導電性微粒子を含有する液状体を受容層上へ設け、続けて熱処理を行うことで導電パターンを形成する方法が開示されている。具体的には、基板上方に形成した受容層が液状体の液分のみを吸収し、導電性微粒子が受容層表面に残存することで、効率良く導電パターンの厚膜化を可能とする方法が開示されている。ここで使用される受容層は、多孔性シリカ粒子、アルミナ、アルミナ水和物のうち少なくとも一つとバインダーとの混合物を塗布することにより形成される。さらに、受容層表面を撥液性とすることで液状態が受容層に吸収される前に基板上に濡れ広がることを防ぐ構造となっている。
【0004】
特許文献1で使用されている受容層は、受容層表面を撥液処理することで液状体の濡れ広がりを防ぎ、パターニング性が向上するものの、厚膜の導電パターンの形成を容易にするために、多孔質の受容層によって該分散液中の液体成分を受容層中に吸収させる構造となっているので、加熱処理時に導電性微粒子に対して還元効果を発現する溶媒を含んだ金属微粒子分散液をパターニングしても該受容層中では還元効果を効果的に発揮させることは困難であえる。従って、導電性インク中の還元性溶媒によって、金属微粒子を還元性雰囲気下で焼結させることはできない。また、特許文献1には、金属系の導電性微粒子として金、銀、銅、パラジウム、ニッケルが挙げられている。しかし、実際に卑な金属である銅微粒子等を用いようとすると、インク中に還元性溶媒を含有させて還元性の雰囲気を形成することができない場合には、水素ガス等の還元性ガスを使用した雰囲気下で焼成する必要が生じる。そのために、特許文献1の実施例では金属微粒子として金微粒子を使用した例が挙げられているのみである。
【0005】
特許文献2には、超微粒子シリカ、シランカップリング剤、親水性バインダー、カチオン性樹脂を含有する色材受容層が設けられたインクジェット記録用紙が開示されている。具体的には、水溶性染料を吸収する受容層を上記の構成とすることで、耐水性、保全性、白地、被膜強度に優れたインクジェット記録用紙が開示されている。特許文献2で使用されている色材受容層は、高インク吸収性、高乾燥性の性質を持つことで画質を向上させる受容層であることが前提であることから、インク溶媒を受容層中に吸収する構造となっている。このため、特許文献2に開示された受容層を用いた場合には、還元性を有する溶媒を含んだインクを使用しても、加熱、焼成時に導電性微粒子に対して還元効果を発現することができない。
【0006】
特許文献3には、樹脂、酸化ケイ素微粒子、パーフルオロエーテル鎖あるいはパーフルオロアルキル鎖を有する化合物を含む有機膜が形成された配線基板が開示され、この有機膜は、表面を撥液性にし、かつ表面に適切な粗さを持たせることで、金属微粒子分散液の濡れ広がりや断線を防ぐことができると記載されている。特許文献3に記載されている有機膜は、有機膜表面の凹凸形状によって金属微粒子分散液を保持しており、有機膜表面上には親水性基が極めて少ないか存在しないため、還元性を有する多価アルコール分散媒に対する付着性は低く、焼成による導電パターン形成時に密着性を向上することは困難である。
すなわち、上記特許文献1と特許文献2に開示された受容層では、金属微粒子分散液の溶媒が該受容層内に吸収されてしまうので、焼成時には金属微粒子と分散液の溶媒が分離して、焼成中に分散液中の還元性物質の還元作用が充分に発揮されず、金属微粒子表面の酸化抑制と還元が迅速に進行しないので比較的低温での焼結では導電性に優れた配線パターン等を形成することができない。また、上記特許文献3に開示された受容層では、受容層に対する還元性を有する分散液及び金属微粒子の付着性が充分でなく、その結果、焼成後の導電パターンの密着性を向上させることが困難であるという問題点がある。インク受容層に対する導電パターンの密着性が低いと、外部からの衝撃や、導電パターンに電流を流した際に発生する熱応力により導電パターンが剥離しやすくなる。特に、熱応力はインク受容層と導電パターンの界面に集中するため、該界面の密着性が低いと長期使用による剥離が起こり易くなり、導電パターンの長期信頼性の低下につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−6578号公報
【特許文献2】特開2001−10209号公報
【特許文献3】特開2005−191330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来技術の問題点を改良して、基板上に形成される、導電性と密着性が良好な導電パターンを形成することが可能なインク受容層、該インク受容層形成用塗布液、該インク受容層の形成方法、及び導電パターンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、基板上に、撥液性のフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤により表面処理された非導電性無機粒子同士が親水性バインダーで結合された構造を持つインク受容層を基板表面に設けることにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、以下の(1)ないし(13)に記載する発明を要旨とする。
(1)基板(K)表面に形成され、かつ金属微粒子(P)と、多価アルコール(S1)成分を含有する還元性溶媒(A)とを含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後、加熱、焼成により導電パターンを形成することが可能なインク受容層(R)であって、
該インク受容層(R)がフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤(C)で表面を撥液処理された、非導電性無機粒子(G)が親水性バインダー(B)により結合されて形成されている層で、
インク受容層(R)中の非導電性無機粒子(G)と親水性バインダー(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(B+G)]×100)が50〜90(体積%)であり、
インク受容層(R)の表面が非導電性無機粒子(G)に基づく凹凸形状が形成されていて、
インク受容層(R)に存在する親水性バインダー(B)が水酸基を有している、
ことを特徴とするインク受容層(以下、第1の態様ということがある)。
(2)前記シランカップリング剤(C)が、フッ素原子数が9〜17個のフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤である、ことを特徴とする前記(1)に記載のインク受容層。
(3)前記親水性バインダー(B)がポリビニルアルコールである、ことを特徴とする前記(1)または(2)に記載のインク受容層。
(4)前記非導電性無機粒子(G)が1次粒子の平均粒子径10〜1000nmのアルミナ粒子及びシリカ粒子から選択された1種又は2種であり、かつインク受容層(R)の厚みが1〜100μmである、ことを特徴とする前記(1)から(3)のいずれに記載のインク受容層。
【0010】
(5)前記非導電性無機粒子(G)が
(i)導電性インク(I)をインク受容層(R)上に塗布又はパターン化後、加熱、焼成する際に多価アルコール(S1)の分解を促進する触媒作用を有する触媒性非導電性無機粒子(G1)からなるか、
又は(ii)触媒性非導電性無機粒子(G1)と、前記触媒作用を有しない非触媒性非導電性無機粒子(G2)からなり、非導電性無機粒子(G)中の触媒性非導電性無機粒子(G1)の割合が0.1質量%以上である、
前記(1)から(3)のいずれに記載のインク受容層。
(6)前記非導電性無機粒子(G)が触媒性非導電性無機粒子(G1)と、非触媒性非導電性無機粒子(G2)とからなり、非導電性無機粒子(G)中の触媒性非導電性無機粒子(G1)の割合が0.1〜5.0質量%である、
前記(5)に記載のインク受容層。
(7)前記非導電性無機粒子(G)中の触媒性非導電性無機粒子(G1)の平均粒子径が1〜1000nmである、
前記(5)又は(6)に記載のインク受容層。
(8)前記触媒性非導電性無機粒子(G1)がアルミナ及びチタニアから選択された1種又は2種である、
前記(5)から(7)のいずれに記載のインク受容層。
(9)前記インク受容層(R)が
(i)フルオロアルキル基を有するシランカップリング剤(C)で予め表面処理された非導電性無機粒子(G)、及び親水性バインダー(B)を含む溶液、又は
(ii)非導電性無機粒子(G)、フルオロアルキル基を有するシランカップリング剤(C)、及び親水性バインダー(B)を含む溶液
をインク受容層形成用塗布液とし、該インク受容層形成用塗布液を基板(K)上に塗布後形成された層であることを特徴とする、前記(1)から(8)のいずれに記載のインク受容層。
【0011】
(10)非導電性無機粒子(G)の表面がシランカップリング剤(C)で処理された粒子、及び親水性バインダー(B)を含むインク受容層形成用塗布液であって、
(i)非導電性無機粒子(G)が1次粒子の平均粒径10〜1000nmの粒子から選択された1種又は2種、又は、
(ii)非導電性無機粒子(G)が導電性インク(I)をインク受容層(R)上に塗布又はパターン化後、加熱、焼成する際に多価アルコール(S1)の分解を促進する触媒作用を有する触媒性非導電性無機粒子(G1)と、前記触媒作用を有しない非触媒性非導電性無機粒子(G2)からなり、非導電性無機粒子(G)中の触媒性非導電性無機粒子(G1)の割合が0.1〜5.0質量%で、かつ触媒性非導電性無機粒子(G1)の平均粒子径が1〜1000nmで、非触媒性非導電性無機粒子(G2)の平均粒子径が10〜1000nmであり、
シランカップリング剤(C)が、フッ素原子数9〜17個のフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤であり、
該インク受容層形成用塗布液に占める全固形分の割合([全固形分/インク受容層形成用塗布液]質量比)が0.08〜0.3、
非導電性無機粒子(G)と親水性バインダー(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(B+G)]×100)が50〜90(体積%)、
及び非導電性無機粒子(G)に対するシランカップリング剤(C)の使用割合([C/G]質量比)が0.0002〜0.02、
であることを特徴とする、インク受容層形成用塗布液(以下、第2の態様ということがある)。
(11)非導電性無機粒子(G)、シランカップリング剤(C)、及び親水性バインダー(B)を含むインク受容層形成用塗布液であって、
(i)非導電性無機粒子(G)が1次粒子の平均粒径10〜1000nmの粒子から選択された1種又は2種、又は、
(ii)非導電性無機粒子(G)が導電性インク(I)をインク受容層(R)上に塗布又はパターン化後、加熱、焼成する際に多価アルコール(S1)の分解を促進する触媒作用を有する触媒性非導電性無機粒子(G1)と、前記触媒作用を有しない非触媒性非導電性無機粒子(G2)からなり、非導電性無機粒子(G)中の触媒性非導電性無機粒子(G1)の割合が0.1〜5.0質量%で、かつ触媒性非導電性無機粒子(G1)の平均粒子径が1〜1000nmで、非触媒性非導電性無機粒子(G2)の平均粒子径が10〜1000nmであり、
シランカップリング剤(C)が、フッ素原子数9〜17個のフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤であり、
該インク受容層形成用塗布液に占める全固形分の割合([全固形分/インク受容層形成用塗布液]質量比)が0.08〜0.3、
非導電性無機粒子(G)と親水性バインダー(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(B+G)]×100)が50〜90(体積%)、
及び非導電性無機粒子(G)に対するシランカップリング剤(C)の割合([C/G]質量比)が0.0002〜0.02、
であることを特徴とする、インク受容層形成用塗布液(以下、第3の態様ということがある)。
【0012】
(12)前記(10)又は(11)に記載のインク受容層形成用塗布液を基板(K)上に塗布後、乾燥することを特徴とする、インク受容層の形成方法(以下、第4の態様ということがある)。
(13)前記(1)から(9)のいずれかに記載のインク受容層(R)上に、金属微粒子(P)と還元性溶媒(A)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後、加熱、焼成して金属微粒子(P)を焼結させることを特徴とする、導電パターンの形成方法(以下、第5の態様ということがある)。
【発明の効果】
【0013】
(イ)上記(1)ないし(9)に記載のインク受容層(R)、上記(10)ないし(11)に記載のインク受容層形成用塗布液から得られるインク受容層(R)、並びに、上記(12)に記載のインク受容層の形成方法により得られるインク受容層(R)は、還元性溶媒(A)と金属微粒子(P)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターニングする際に、その表面が撥液性を有する非導電性無機粒子(G)がインク受容層(R)表面で凹凸形状を形成しているので、導電性インク(I)の濡れ広がり、および金属微粒子(P)の拡散を抑制してパターニング性を向上する。また、導電性インク(I)中の還元性溶媒(A)はインク受容層(R)中の親水性バインダー(B)への付着性に優れているので、導電性インク(I)の加熱焼結後の導電パターンの密着性が向上する。
さらに、非導電性無機粒子(G)として、還元性溶媒(A)中の多価アルコール(S1)の分解を促進する触媒作用を有する非導電性無機粒子(G1)を用いることで、導電性インク(I)中の金属微粒子(P)の非導電性無機粒子表面近傍における焼結が促進し、その結果、インク受容層との密着性に一層優れた導電パターンを形成することができる。
(ロ)上記(13)に記載の導電パターンの形成方法は、導電性インク(I)の焼成時にインク受容層(R)上の導電性インク(I)中に還元性溶媒(A)が存在することにより、還元性液と還元性ガスの雰囲気が形成されるので、比較的低温での焼成工程を経て、高導電性の導電パターンが形成できる。また、焼成工程において導電性インク(I)中の金属微粒子(P)がインク受容層(R)表面の非導電性無機粒子(G)から形成される凹凸に固着することで、導電パターンの密着性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明のインク受容層(R)の概念を説明するための断面図である。
【図2】図2は、本発明のインク受容層(R)を用いた導電パターンの形成方法を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、インク受容層(R)(第1の態様)、インク受容層形成用塗布液(第2、3の態様)、インク受容層(R)の形成方法(第4の態様)、及び導電パターンの形成方法(第5の態様)について説明する。
〔1〕インク受容層(R)、インク受容層形成用塗布液、及びインク受容層(R)の形成方法(第1〜4の態様)
本発明のインク受容層(R)(第1の態様)は、以下に記載するインク受容層形成用塗布液(第2、3の態様)を基板(K)表面に塗布する、インク受容層(R)の形成方法(第4の態様)により形成される。
【0016】
(1)インク受容層形成用塗布液(第2、3の態様)
基板(K)上にインク受容層(R)を形成するための「インク受容層形成用塗布液」は、
(I)非導電性無機粒子(G)の表面がシランカップリング剤(C)で処理された粒子、及び親水性バインダー(B)を含むインク受容層形成用塗布液であって、
(i)非導電性無機粒子(G)が1次粒子の平均粒径10〜1000nmのアルミナ粒子及びシリカ粒子から選択された1種又は2種、又は、
(ii)非導電性無機粒子(G)が導電性インク(I)をインク受容層(R)上に塗布又はパターン化後、加熱、焼成する際に多価アルコール(S1)の分解を促進する触媒作用を有する触媒性非導電性無機粒子(G1)と、前記触媒作用を有しない非触媒性非導電性無機粒子(G2)からなり、非導電性無機粒子(G)中の触媒性非導電性無機粒子(G1)の割合が0.1〜5.0質量%で、かつ触媒性非導電性無機粒子(G1)の平均粒子径が1〜1000nmで、非触媒性非導電性無機粒子(G2)の平均粒子径が10〜1000nmであり、
シランカップリング剤(C)が、フッ素原子数9〜17個のフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤であり、
該インク受容層形成用塗布液に占める全固形分の割合([全固形分/インク受容層形成用塗布液]質量比)が0.08〜0.3、
非導電性無機粒子(G)と親水性バインダー(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(B+G)]×100)が50〜90(体積%)、
及び非導電性無機粒子(G)に対するシランカップリング剤(C)の使用割合([C/G]質量比)が0.0002〜0.02、
であることを特徴とする(第2の態様)、又は、
(II)非導電性無機粒子(G)、シランカップリング剤(C)、及び親水性バインダー(B)を含むインク受容層形成用塗布液であって、
(i)非導電性無機粒子(G)が1次粒子の平均粒径10〜1000nmのアルミナ粒子及びシリカ粒子から選択された1種又は2種、又は、
(ii)非導電性無機粒子(G)が導電性インク(I)をインク受容層(R)上に塗布又はパターン化後、加熱、焼成する際に多価アルコール(S1)の分解を促進する触媒作用を有する触媒性非導電性無機粒子(G1)と、前記触媒作用を有しない非触媒性非導電性無機粒子(G2)からなり、非導電性無機粒子(G)中の触媒性非導電性無機粒子(G1)の割合が0.1〜5.0質量%で、かつ触媒性非導電性無機粒子(G1)の平均粒子径が1〜1000nmで、非触媒性非導電性無機粒子(G2)の平均粒子径が10〜1000nmであり、
シランカップリング剤(C)が、フッ素原子数9〜17個のフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤であり、
該インク受容層形成用塗布液に占める全固形分の割合([全固形分/インク受容層形成用塗布液]質量比)が0.08〜0.3、
非導電性無機粒子(G)と親水性バインダー(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(B+G)]×100)が50〜90(体積%)、
及び非導電性無機粒子(G)に対するシランカップリング剤(C)の割合([C/G]質量比)が0.0002〜0.02、
であることを特徴とする(第3の態様)。
【0017】
(イ)非導電性無機粒子(G)
インク受容層(R)に用いられる非導電性無機粒子(G)の例としては、例えばアルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等の無機粒子を挙げることができる。これらの非導電性無機粒子(G)は、1次粒子のまま用いても、又、2次凝集粒子を形成した状態で使用することもでき、非導電性無機粒子(G)の一次粒子径に特に制限はなく、インク受容層(R)の厚みよりも少ない粒子径であれば、10μm程度の一次粒子径のものでも使用可能であるが、1次粒子の平均粒子径が10〜1000nmの無機粒子を使用することが好ましい。
非導電性無機粒子(G)の一次粒子径が10nm以上であると、無機粒子の比表面積の増加による無機粒子表面のシランカップリング剤(C)の量が増加するのを抑制し、無機粒子間同士の結合を促進し、インク受容層(R)の膜強度が向上することが期待でき、一方1000nm以下であるとインク受容層(R)表面の平坦性を向上して、導電性インク(I)のパターニング性を向上することが可能になる。
入手が容易で低コストであり、かつ表面がカチオン性であるため金属微粒子(P)との親和性に優れている等の観点から非導電性無機粒子(G)としてアルミナ粒子及びシリカ粒子から選択される1種又は2種を用いることが好ましい。
また、非導電性無機粒子(G)として多孔質の無機粒子を用いると、無機粒子表面の凹凸が増加し、金属微粒子(P)と固着する面積が大きくなるため、導電パターンの密着性をより向上することができる。尚、多孔質の無機粒子を用いても無機粒子(G)表面がシランカップリング剤(C)で撥液処理されているので、導電性インク(I)中の還元性溶媒(A)がインク受容層中に吸収されることはない。
【0018】
さらに、非導電性無機粒子(G)の中には、導電性インク(I)をインク受容層上に塗布又はパターン化後、加熱、焼成する際に還元性溶媒(A)中の多価アルコール(S1)の分解を促進する触媒作用を有する、アルミナ粒子、チタニア粒子等の触媒性非導電性無機粒子(G1)があり、一方、このような触媒作用を有しないジルコニア、シリカ、コロイダルシリカ等の非触媒性非導電性無機粒子(G2)がある。
非導電性無機粒子(G)が触媒性非導電性無機粒子(G1)と、前記触媒作用を有しない非触媒性非導電性無機粒子(G2)からなり、非導電性無機粒子(G)中の触媒性非導電性無機粒子(G1)の割合が0.1〜5.0質量%で、かつ触媒性非導電性無機粒子(G1)の平均粒子径が1〜1000nmで、非触媒性非導電性無機粒子(G2)の平均粒子径が10〜1000nmであることが好ましい。
インク受容層(R)と導電パターンの密着性は、インク受容層(R)表面の非導電性無機粒子(G)により形成される凹凸形状に導電性インク(I)が進入し、その状態で焼結が起こることで、導電パターンがくさびのような役割を担い、機械的な結合が生じるアンカー効果により生じると考えられている。このとき、非導電性無機粒子(G)として触媒性非導電性無機粒子(G1)を用いると、該無機粒子近傍のくさびの役割を担う導電パターン部の焼結が促進され、焼結体の機械的強度が向上する。結果として、アンカー効果による結合が強固になることで、インク受容層(R)に対する導電パターンの密着性が向上する。
非導電性無機粒子(G)と導電パターンの界面は、導電パターンに電流が流れた際に発生する熱応力が集中する部分であるため、密着性が低いと使用時に導電パターンの剥離が生じ易くなる。インク受容層(R)中の非導電性無機粒子(G)と導電パターンの界面の密着性を向上することで、長期使用に耐える高信頼性の導電パターンを形成することが可能になる。
触媒性非導電性無機粒子(G1)の触媒作用はその粒子の表面積に影響されるため、粒子径が小さいほど、単位重量当たりの触媒作用がより大きくなる。そのため、触媒性非導電性無機粒子(G1)の粒子径は1〜1000nmが好ましい。該粒子径が1nm未満では無機粒子間同士の結合が阻害され、インク受容層(R)の膜強度が低下するおそれがあり、一方、該粒子径が1000nmを超えると上記触媒作用が充分に発揮されなくなるおそれがある。かかる観点から、触媒性非導電性無機粒子(G1)の粒子径は1〜100nmがより好ましく、1nm以上でかつ10nm以下が更に好ましい。
【0019】
非導電性無機粒子(G)は、触媒性非導電性無機粒子(G1)からなるか、また、触媒性非導電性無機粒子(G1)と、前記触媒作用を有しない非触媒性非導電性無機粒子(G2)からなり、非導電性無機粒子(G)中の触媒性非導電性無機粒子(G1)の割合が0.1質量%以上からなることが好ましい。更に、非導電性無機粒子(G)が触媒性非導電性無機粒子(G1)と、非触媒性非導電性無機粒子(G2)とからなり、非導電性無機粒子(G)中の触媒性非導電性無機粒子(G1)の割合が0.1〜5.0質量%からなることがより好ましい。
触媒性非導電性無機粒子(G1)の割合が前記0.1質量%以上で金属微粒子(P)を焼成する際に前記多価アルコール(S1)の分解を促進する触媒活性が発現し、前記5.0質量%以下で導電パターンの密着性をより強化することが可能になる。
【0020】
(ロ)フルオロアルキル基を有するシランカップリング剤(C)
本発明で使用するシランカップリング剤(C)は、下記一般式(I)で表わされるシランカップリング剤、又は該シランカップリング剤を加水分解して得られた一般式(II)で示す化合物である。
X−Si−Y (I)
X−Si(OH) (II)
但し、一般式(I)及び(II)中、Xはフッ素原子を9〜17個を含むフルオロアルキル基であり、Yはケイ素原子と結合する加水分解性を有する炭素数1〜3のアルコキシ基あるいはハロゲン原子である。
Xはフッ素原子を含むフルオロアルキル基であるので、このフルオロアルキル基がインク受容層(R)中の非導電性無機粒子(G)表面に存在することで、還元性溶媒(A)を含む導電性インク(I)をインク受容層(R)上で撥液し続けることが可能となる。インク受容層(R)上で非導電性無機粒子(G)と還元性溶媒(A)が共存するため、焼成による金属微粒子(P)の焼結時に還元効果が発現し、導電性の良い導電パターンを形成することができる。また、インク受容層(R)上においてインク溶媒(還元性溶媒(A))が撥液されるため、導電性インク(I)の流動が防止されパターニング性が向上する。このようにインク溶媒の撥液性が発現する理由は、表面張力が低いフルオロアルキル基がインク受容層(R)の表面に存在することで、導電性インク(I)とインク受容層(R)の表面張力に差が生じ、導電性インク(I)の接触角が増大するためと推定される。
【0021】
このようなXとして、任意のフッ素原子を含むフルオロアルキル基が使用可能であるが、フッ素原子を9〜17個を含む炭素数4〜10のフルオロアルキル基が好ましい。例えば、ナノフルオロヘシルトリエトキシシランや(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2,−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン等が挙げられる。フルオロアルキル基中のフッ素原子が9個未満ではインクを撥液する効果が小さくなり、パターニング性および撥液性が低下する。一方、フルオロアルキル基中のフッ素原子が17個を超えるとシランカップリング剤は環境への悪影響の懸念が大きいため使用しないことが望ましい。フルオロアルキル基中の炭素数は、フルオロアルキル基中に含まれるフッ素原子数の数である程度決まり、例えば、上述のナノフルオロヘシルトリエトキシシランでは、炭素数は6個である。
Xと相対する位置にあるYはケイ素原子と結合する加水分解性を有する炭素数1〜3のアルコキシ基あるいはハロゲン原子である。
Y又は(OH)基は、一般式[I]で表されるシランカップリング剤(C)、又は一般式[II]で示す化合物を含む溶液が基板(K)上に塗布された後に、基板(K)表面に存在している(OH)基と脱水縮合反応を起こすので、表面に(OH)基を有する基板(K)に対してインク受容層(R)の密着性が向上する。また、アルミナ粒子表面のOH基とシランカップリング剤(C)のSiが加水分解反応により結合し、アルミナ粒子表面にフルオロアルキル基を含むシラノール基が形成される。
【0022】
(ハ)シランカップリング剤(C)で表面処理された非導電性無機粒子(G)
シランカップリング剤(C)で表面処理された非導電性無機粒子(G)は、水、エタノール等の溶媒中で前記非導電性無機粒子(G)に対するシランカップリング剤(C)の割合([C/G]質量比)が後述する0.0002〜0.02となる割合で配合することにより、表面処理することができる。
前記表面処理後、遠心分離処理を行うことでシランカップリング剤(C)で表面処理された非導電性無機粒子(G)を得ることができる。
尚、第3の態様における非導電性無機粒子(G)のシランカップリング剤(C)による表面処理については後述する。
【0023】
(ニ)親水性バインダー(B)
インク受容層(R)に用いられる親水性バインダー(B)としては、特に制限されるものではないが、インク受容層(R)の塗布液に使用される溶媒としては水溶性溶媒が好ましいこと、および親水性基である(OH)基を有する還元性溶媒(A)の付着性が向上することを考慮すると親水性ポリマーが好ましい。このような親水性ポリマーとしては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン等が挙げられ、これらの親水性ポリマーは2種以上併用することも可能である。
本発明で用いられる親水性バインダー(B)はポリビニルアルコールの使用がより好ましい。ポリビリルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。取り扱いや汎用性の高さを考慮すると、通常のポリビニルアルコールを用いるのが好ましい。
【0024】
前記通常のポリビニルアルコールは、平均重合度が1000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1000〜2400ものが好ましい。鹸化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
親水性バインダー(B)は、インク受容層(R)形成時に非導電性無機粒子(G)同士を結合させることで該受容層の膜強度を向上させると共に、インク受容層形成用塗布液中の非導電性無機粒子(G)を基板(K)上に接着させるため、インク受容層(R)と基板(K)の密着性をも向上させる。また、親水性ポリマーは(OH)基のような親水性基を持つ分子をとの親和性が高いため、還元性溶媒(A)中の複数の(OH)基を含む多価アルコール(S1)の付着性が向上し、その結果、導電性インク(I)および金属微粒子(P)がインク受容層(R)表面に固定され、密着性の高い導体パターンを作製することが可能となる。
本発明においてポリビニルアルコールを用いると、非導電性無機粒子(G)の結合、および還元性溶媒(A)の付着性向上に寄与していないポリビニルアルコール中のOH基が撥液性のシランカップリング剤(C)で処理されるため、非導電性無機粒子(G)表面の撥液効果に加え、さらにインク受容層(R)の撥液性を向上することが可能である。
【0025】
(ホ)インク受容層形成用塗布液の組成
(ホ−1)表面未処理の非導電性無機粒子(G)を用いる場合
シランカップリング剤(C)で表面処理されていない非導電性無機粒子(G)を用いる場合のインク受容層形成用塗布液の組成について以下に説明する。
尚、インク受容層形成用塗布液の溶媒としては水又は親水性溶媒を用いることが好ましい。
(i)全固形分の割合
該インク受容層形成用塗布液に占める全固形分の割合([全固形分/インク受容層形成用塗布液]質量比)は0.08〜0.3であることが好ましい。該質量比が0.08未満であると、塗布液に占める該無機粒子の濃度が減少して、塗布膜を乾燥した際に緻密なインク受容層を作製することが困難となる場合があり、撥液性が低下する。一方、該質量比が0.3を越えると塗布液の粘度が増加して塗布性が低下するため、均一なインク受容層を作製することが困難になる場合がある。
【0026】
(ii)非導電性無機粒子(G)と親水性バインダー(B)の割合
受容層(R)中の非導電性無機粒子(G)と親水性バインダー(B)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(B+G)]×100)は50〜90(体積%)である。
該体積割合が50(体積%)未満であると、非導電性無機粒子(G)表面に存在するシランカップリング剤(C)で処理された非導電性無機粒子(G)が少なくなり、受容槽表面での撥液性が不十分になりパターニング性が低下する。また、非導電性無機粒子(G)の大部分を親水性バインダー(B)が覆って、非導電性無機粒子(G)表面をフルオロアルキル基を含むシランカップリング剤(C)で処理させることが困難となる場合があり、一方、該体積割合が90(体積%)を超えると該無機粒子同士、及び非導電性無機粒子(G)と基板(K)を結び付ける親水性バインダー(B)が少なすぎて膜強度の高い受容層を作製することが困難になる場合がある。
(iii)非導電性無機粒子(G)とシランカップリング剤(C)の割合
非導電性無機粒子(G)に対するシランカップリング剤(C)の割合([C/G]質量比)は0.0002〜0.02であることが好ましい。
該質量比が0.0002未満であると、インク受容層(R)に十分な撥液性を付与することができないおそれがある。一方、該質量比が0.02を超えると、シランカップリング剤(C)が過剰となり、インク受容層(R)の膜強度が低下するおそれがある。
(ホ−2)表面処理された非導電性無機粒子(G)を用いる場合
シランカップリング剤(C)で表面処理された非導電性無機粒子(G)を用いる場合のインク受容層形成用塗布液の組成については、基本的に(ホ−1)に記載したのと同様のインク受容層(R)を形成することになるので、シランカップリング剤(C)の割合が少ないことから、シランカップリング剤(C)を除いて、結果的にシランカップリング剤(C)で表面処理されていない非導電性無機粒子(G)を用いる場合と同様の組成になる条件を選択すればよい。
【0027】
(2)インク受容層(R)の形成方法(第4の態様)
インク受容層(R)の形成方法は、インク受容層形成用塗布液を基板(K)上に塗布後、乾燥することを特徴とする。
(イ)基板(K)について
本発明で使用する基板(K)は、特に限定されるものではなくガラス基板等の無機材料基板、樹脂基板等を広く使用することができる。樹脂基板としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂などを挙げることができる。これらの中でも、耐熱性、機械的特性、熱的特性などの面からポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はポリエステル樹脂を用いるのが好ましく、中でもポリイミド樹脂が特に好ましい。
尚、ガラス基板を使用する場合には予め、酸洗浄、水洗、及び乾燥処理をこの順に施しておくことが望ましい。樹脂基板を用いる場合には予めその表面をコロナ処理、電子線照射、プラズマ処理、及びエッチング処理から選択された1種又は2種以上の操作により表面処理することが好ましい。
前記インク受容層形成用塗布液は、固形分が0.005〜1000g/mとなるように基板(K)上に塗布することが好ましい。
【0028】
(ロ)インク受容層形成用塗布液の塗布方法
インク受容層形成用塗布液の塗布方法としては公知の方法を用いることができる。例えば、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法、エアナイフコーティング法等がある。インク受容層形成用塗布液を塗布後、乾燥を行うことで基板(K)上にインク受容層(R)を形成することができる。乾燥工程は加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理条件はシランカップリング剤(C)およびその他材料の熱安定性によるが、例えば、100℃以下で0.5〜1時間程度が好ましい。乾燥工程後のインク受容層(R)の厚みは1〜100μmが好ましく、耐屈曲性や透明性の観点から1〜10μmがより好ましい。
【0029】
(3)インク受容層(R)(第1の態様)
第1の態様のインク受容層(R)は、図1に示す通り、基板(K)表面に形成され、かつ金属微粒子(P)と、多価アルコール(S1)を含有する還元性溶媒(A)とを含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後、加熱、焼成により導電パターンを形成することが可能なインク受容層(R)であって、該インク受容層(R)がフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤(C)で表面を撥液処理された、非導電性無機粒子(G)が親水性バインダー(B)により結合されて形成されている層であり、インク受容層(R)の表面が非導電性無機粒子(G)に基づく凹凸形状が形成されていて、インク受容層(R)表面に存在する親水性バインダー(B)が水酸基を有していることを特徴とする。
かかるインク受容層(R)は、基板(K)との密着性に優れているばかりでなく、還元性溶媒(A)と金属微粒子(P)を含む導電性インク(I)を用いてパターンを形成する際に、該インクの濡れ広がり、および金属微粒子(P)の拡散を抑制して、パターニング性を向上する。インク受容層(R)の表面が導電性インク(I)に対して撥液性を持ち、かつ非導電性無機粒子(G)に基づく凹凸形状を有していて導電性インク(I)の溶媒成分を該表面に保持することができる。また、導電性インク(I)中の還元性溶媒(A)のインク受容層(R)中の親水性バインダー(B)への付着性が向上することで、導電性インク(I)および金属微粒子(P)の密着性が向上する。さらに、非導電性無機粒子(G)として、還元性溶媒(A)中の多価アルコール(S1)の分解を促進する触媒作用を有するアルミナ粒子、チタニア粒子等の触媒性非導電性無機粒子(G1)を用いることで、導電性インク(I)中の金属微粒子(P)の非導電性無機粒子表面における焼結が促進し、インク受容層(R)との密着性に優れた導電パターンを形成することができる。
【0030】
〔2〕導電パターンの形成方法(第5の態様)
導電パターンの形成方法は、前記第4の態様に記載されたインク受容層(R)上に、金属微粒子(P)と還元性溶媒(A)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後、加熱、焼成して金属微粒子(P)を焼結させることを特徴とする。
導電パターンの形成方法を図1、2を用いて説明する。
図1はインク受容層(R)の概念を説明するための断面図であり、インク受容層(R)12は基板(K)11上に形成されており、インク受容層(R)上には導電パターン13が形成されている。
図2は導電パターンの形成方法を説明する概念図である。
図2中の(A1)は基板(K)上にインク受容層(R)が形成されている概念図であり、基板(K)11上にインク受容層(R)12が形成されていて、(A1)のインク受容層(R)表面の部分拡大図である(A2)において非導電性無機粒子(G)15の表面はシランカップリング基16が存在しており、非導電性無機粒子(G)15同士は親水性バインダー(B)17で結合されている。
【0031】
図2中の(B1)はインク受容層(R)上に導電性インク(I)がパターニングされた概念図であり、インク受容層(R)12上に導電性インク(I)14がパターン化されていて、(B1)におけるインク受容層(R)12上に導電性インク(I)14がパターン化された部分の拡大図である(B2)において非導電性無機粒子(G)15の表面に還元性溶媒(A)18中に金属微粒子(P)19が分散された状態で保持されている。
図2中の(C1)はインク受容層(R)上に導電性インク(I)中の金属微粒子(P)が焼結されて、導電パターンが形成された概念図であり、インク受容層(R)12上に導電パターン13が形成されていて、(C1)の導電パターンが形成された部分の拡大図である(C2)において非導電性無機粒子(G)15の表面に焼結された金属微粒子(P)19がパターンを形成した状態で保持されている。
導電性インク(I)は、金属微粒子(P)が還元性溶媒(A)に分散されているインクであり、分散性向上のために分散剤を配合することができる。
【0032】
(1)金属微粒子(P)
金属微粒子(P)としては、特に制限されるものではないが、金、銀、銅,白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、鉄、コバルト、タンタル、ビスマス、鉛、インジウム、錫、亜鉛、チタン、及びアルミニウムから選択される1種又は2種以上の微粒子が挙げられるが、これらの中でも、銀、銅、白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、鉄、コバルト、及びタンタルから選択される1種もしくは2種以上の微粒子が好ましい。
導電性インク(I)中の金属微粒子(P)の粒子径は、精密な導電材料を形成する上で10μm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、1〜500nmが更に好ましい。
導電性インク(I)は、金属微粒子(P)を以下に記載する還元性溶媒(A)に分散させて得ることができるが、導電性インク(I)中の金属微粒子(P)の濃度は2〜70質量%が好ましい。該金属微粒子(P)の濃度が2質量%未満では、焼成後の導電材の機械的強度が低下するという不都合を生ずるおそれがあり、一方、70質量%を超えると還元性溶媒(A)中で高い分散性を得ることが困難になるおそれがある。
【0033】
(2)還元性溶媒(A)
導電性インク(I)に含まれる還元性溶媒(A)としては、分子中にヒドロキシル基を2つ以上有する多価アルコール(S1)の単独、或いは複数を含有する混合溶媒を使用することが好ましい。
好ましい多価アルコール(S1)として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トレイトール、エリトリトール、ペンタエリスリトール、ペンチトール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ヘキシトール、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール、グリセルアルデヒド、ジオキシアセトン、トレオース、エリトルロース、エリトロース、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、イドース、ソルボース、グロース、タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、アルトロース、ラクトース、イソマルトース、グルコヘプトース、ヘプトース、マルトトリオース、ラクツロース、及びトレハロースの中から選択される1種又は2種以上を挙げることができる。これらの中で融点が高いものについては他の多価アルコール(S1)と混合して使用することができる。
【0034】
これらの多価アルコール(S1)はインクの焼成に伴う熱分解時に水素ラジカルを発生し、その水素ラジカルが金属微粒子(P)の表面の酸化膜を還元あるいは酸化を防止する機能を発現し、卑な金属の微粒子においても焼結性が良好な導電性の高い金属膜を形成することが可能となる。また、多価アルコール(S1)は親水性基であるヒドロキシル基を有することから親水性バインダー(B)への親和性が高く、インク受容層(R)中の親水性バインダー(B)に付着されることにより、導電性インク(I)および金属微粒子(P)の密着性が向上する。この結果、焼成された際に作製される導体パターンのインク受容層(R)に対する密着性が向上し、密着性に優れた導体パターンを作製することができる。
還元性溶媒(A)の成分としては、上記多価アルコール(S1)以外に、以下に記載するアミド基を有する有機溶媒(S2)、エーテル系化合物(S3)、アルコール(S4)、ケトン系化合物(S5)、及びアミン系化合物(S6)等を配合することができる。
【0035】
前記アミド基を有する有機溶媒(S2)としては、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルプロパンアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、及びアセトアミドの中から選択される1種又は2種以上が例示できる。
還元性溶媒(A)の他の成分としては、一般式R−O−R(R、Rは、それぞれ独立したアルキル基で、炭素原子数は1〜4である。)で表されるエーテル系化合物(S3)、一般式R−OH(Rは、アルキル基で、炭素原子数は1〜4である。)で表されるアルコール(S4)、R−C(=O)−R(R、Rは、それぞれ独立したアルキル基で、炭素原子数は1〜2である。)で表されるケトン系化合物(S5)、及び一般式R−(N−R)−R(R、R、Rは、それぞれ独立したアルキル基、又は水素で、炭素原子数は0〜2である。)で表されるアミン系化合物(S6)が例示できる。
【0036】
前記エーテル系化合物(S3)の具体例として、ジエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、t−アミルメチルエーテル、ジビニルエーテル、エチルビニルエーテル、及びアリルエーテルの中から選択される1種又は2種以上が例示でき、前記アルコール(S4)の具体例として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、及び2−メチル2−プロパノールの中から選択される1種又は2種以上が例示でき、前記ケトン系化合物(S5)の具体例として、アセトン、メチルエチルケトン、及びジエチルケトンの中から選択される1種又は2種以上が例示でき、前記アミン系化合物(S6)の具体例として、トリエチルアミン、及び/又はジエチルアミンが例示できる。
【0037】
(3)分散剤
上記還元性溶媒(A)には金属微粒子(P)の分散剤を配合することができる。
分散剤は、還元性溶媒(A)中で少なくとも金属微粒子(P)の表面の一部を覆って、二次凝集性が少ない状態で金属微粒子(P)を分散させる作用を発揮する。上記分散剤として好ましいのは、水溶性高分子化合物である、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン等のアミン系の高分子;ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等のカルボン酸基を有する炭化水素系高分子;ポリアクリルアミド等のアクリルアミド;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、更にはデンプン、及びゼラチンの中から選択される1種又は2種以上である。
【0038】
上記例示した水溶性高分子化合物の具体例として、ポリビニルピロリドン(分子量:1000〜500、000)、ポリエチレンイミン(分子量:100〜100,000)、カルボキシメチルセルロース(アルカリセルロースのヒドロキシル基Na塩のカルボキシメチル基への置換度:0.4以上、分子量:1000〜100,000)、ポリアクリルアミド(分子量:100〜6,000,000)、ポリビニルアルコール(分子量:1000〜100,000)、ポリエチレングリコール(分子量:100〜50,000)、ポリエチレンオキシド(分子量:50,000〜900,000)、ゼラチン(平均分子量:61,000〜67,000)、水溶性のデンプン等が挙げられる。
【0039】
上記かっこ内にそれぞれの高分子化合物の数平均分子量を示すが、このような分子量範囲にあるものは本発明の有機物保護被膜として好適に使用できる。尚、これらの2種以上を混合して使用することもできる。
また、分散剤の添加量は、分散溶液に存在する金属微粒子(P)に対する質量比([分散剤/金属微粒子(P)]質量比)として0.01〜30が好ましい。分散剤の添加量比が前記30を超えると溶液の粘性が高くなる場合がある。一方、前記0.01未満では粒子が粗大化したり、もしくは架橋効果により粒子同士が強固な凝集体を形成したりする場合がある。より好ましい上記添加量比は0.5〜10である。
このようにして得られた導電性インク(I)は、金属微粒子(P)が少なくともその表面の一部が分散剤に覆われた状態で還元性溶媒(A)中に分散している。このような分散剤が金属微粒子(P)を分散させるメカニズムは完全に解明されてはいないが、高分子分散剤を使用する場合には、例えば高分子に存在する官能基の非共有電子対を有する原子部分が金属微粒子(P)の表面に吸着して、分子層を形成し、互いに金属微粒子(P)同士の接近をさせない、斥力が発生していることが予想される。
【0040】
(4)金属微粒子(P)の分散性向上
導電性インク(I)中での金属微粒子(P)の分散性を更に向上するのに、撹拌手段を採用することが望ましい。分散溶液の撹拌方法としては、公知の撹拌方法を採用することができるが、超音波照射方法を採用するのが好ましい。
上記超音波照射時間は、特に制限はなく任意に選択することが可能である。例えば、超音波照射時間を5〜60分間の間で任意に設定すると照射時間が長い方が平均二次凝集サイズは小さくなる傾向にある。更に超音波照射時間を長くすると分散性は一層向上する。
【0041】
(5)導電パターンの形成方法
前記インク受容層(R)上に導電性インク(I)を吐出、塗布、又は転写手段により、パターン化された液膜を形成する。パターンを形成する方法としては特に制限されず、スクリーン印刷、マスク印刷、スプレーコート、バーコート、ナイフコート、スピンコート、インクジェット印刷、ディスペンサ印刷等の方法を用いることができる。
本発明によれば、線幅25μm、線間25μm程度の緻密なパターンを形成することが可能である。また、これらの吐出、塗布、又は転写手段は公知の方法を採用することができる。
パターン化された液膜を形成する際には、インク受容層(R)を常温で使用しても良いし、加熱した状態で使用しても良い。
上記パターン化された液膜は、例えば200℃程度の比較的低温で非酸化性ガス雰囲気下又は還元性ガス雰囲気下にある炉内で焼成して、導電パターンを形成することが可能である。
【0042】
上記焼成条件は、塗布厚にもよるが例えば190〜250℃で20〜40分間程度、好ましくは190〜220℃で20〜40分間程度である。
このようにして得られる導電パターンは、良好な導電性を有しており、その電気抵抗値は、1.0Ωcm以下で例えば、1.0×10−5Ωcm〜1×10−3Ωcm程度を達成することが可能である。更に、上記導電パターンは、インク受容層(R)上方の非導電性無機粒子(G)と固着することでアンカー効果を発現するため、インク受容層(R)への密着性に優れている。
【実施例】
【0043】
実施例により本発明をより具体的に説明する。尚、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下に本実施例、比較例の評価方法を記載する。
(1)インク受容層の基板密着性の評価
基板上に形成したインク受容層の基板密着性を以下の方法で評価した。
JIS D0202−1988に準拠してインク受容層のテープ剥離試験を行った。
評価試料の描画パターンを1mmずつ、計10マス区切り、セロハンテープ(ニチバン(株)製、商品名:セロテープ(登録商標)No.405)を用い、フィルムに密着させた後剥離した。評価結果を表1に示す。
尚、評価基準は、10マスの内、剥離しないマス目の数から以下の基準により表した。
○:剥離したマス目が1マス以下
△:剥離したマス目が2〜4マス
×:5マス以上剥離した
【0044】
(2)導電性インクのパターンの評価
導電性インクのパターンを以下の方法で評価した。
(イ)インク撥液性
インク受容層上にインク液滴を少量滴下した時のインクの接触角(α)を評価した。
評価には接触角計を用いた。下記の判定基準で撥液性を評価した。
○:α≧60度
△:30度≦α<60度
×:α<30度
(ロ)印刷性
市販のインクジェットメディア印刷幅を1とした場合の滲み幅Xを求め、下記の判定基準で導電性インクのインク受容層への印刷性を評価した。なお、滲み幅Xは、得られた配線材料をデジタルマイクロスコープにより観察して求めた。
○:0.1≦X≦1.2
△:1.2<X≦1.5
×:1.5<X
【0045】
(3)導電パターンの評価
得られた各配線材料の性能を以下の方法で評価した。
(イ)密着性
JIS D0202−1988に準拠して導電パターンのテープ剥離試験を行った。
評価試料の描画パターンを1mmずつ、計10マス区切り、セロハンテープ(ニチバン(株)製、商品名:セロテープ(登録商標)No.405)を用い、フィルムに密着させた後剥離した。
判定は10マスの内、剥離しないマス目の数から以下の規準により表した。
◎:剥離なし
○:剥離したマス目が1〜2マス
△:剥離したマス目が3〜4マス
×:剥離したマス目が5マス以上
【0046】
(ロ)導電性
JIS D0202−1988に準拠して、導電パターンの体積抵抗率を直流四端子法(使用測定機:ケースレー社製、デジタルマルチメータDMM2000型(四端子電気抵抗測定モード))により評価した。判定は以下の基準により表した。
○:体積抵抗率が100μΩ・cm以下
△:体積抵抗率が100μΩ・cm超、200μΩ・cm以下
×:体積抵抗率が200μΩ・cm超
【0047】
[実施例1]
(1)インク受容層の形成
インク受容層の形成に下記材料(イ)から(ニ)を使用した。
下記(ロ)のポリビニルアルコール1.5質量部を、90℃に加熱した下記(ハ)のイオン交換水83質量部に溶解し、続けて下記(イ)のアルミナ粒子13.5質量部を添加してアルミナ粒子の分散溶液を調製した。その後、この分散溶液を室温まで冷却した後に下記(ニ)のシランカップリング剤2質量部を加えることで、インク受容層形成用塗布液を調製した。次に、この塗布液をドロップコーティングによって、エタノールに浸漬して洗浄したガラス基板(松浪硝子工業(株)製、商品名;Micro Slide Glass)上に塗布し、室温で12時間乾燥することにより、インク受容層を形成した。形成したインク受容層中のアルミナ粒子とポリビニルアルコールの合計量に対するアルミナ粒子の体積割合は70体積%であった。
(イ)平均一次粒子径700nmのアルミナ粒子(住友化学(株)製、商品名:AA−07,スミコランダム)
(ロ)ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名:PVA117)
(ハ)イオン交換水
(ニ)ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン(Gelest社製、商品名:SIN6597−65)
【0048】
(2)導電パターンの形成
水溶性高分子からなる有機分散剤で覆われた銅微粒子を以下の手順で調製した。
銅微粒子原料として酢酸銅((CHCOO)Cu・HO)0.2gを蒸留水10mlに溶解させた酢酸銅水溶液10mlと、金属イオン還元剤として5.0mol/リットル(l)となるように水素化ホウ素ナトリウムと蒸留水とを混合した水素化ホウ素ナトリウム水溶液100mlを調製した。その後、上記水素化ホウ素ナトリウム水溶液に、保護被膜を形成する水溶性高分子としてポリビニルピロリドン(PVP、数平均分子量約3500)0.5gを添加して、攪拌溶解させた後、窒素ガス雰囲気中で、上記酢酸銅水溶液10mlを滴下した。
この混合液を約60分間よく攪拌しながら反応させた結果、一次粒子径5〜10nmの銅微粒子が水溶液中に分散した微粒子分散液を得た。
次に、上記方法で得られた銅微粒子分散液100mlに、凝集促進剤としてクロロホルムを5ml添加してよく攪拌した。数分間攪拌した後、反応液を遠心分離機に供給し、銅微粒子を沈殿回収した。その後、得られた銅微粒子と蒸留水30mlとを試験管に添加し、超音波ホモジナイザーを用いてよく攪拌した後、遠心分離機で銅微粒子成分を回収する水洗浄を3回、続いて、得られた銅微粒子と1−ブタノール30mlとを同じく試験管中に添加してよく攪拌した後、遠心分離機で銅微粒子を回収するアルコール洗浄を3回行った。
以上の工程により回収された銅微粒子を、混合有機溶媒としてN−メチルアセトアミド50体積%、トリエチルアミン10体積%、及びグリセリン40体積%からなる混合有機溶媒10mlに分散させ、1時間、超音波ホモジナイザーを用いて分散液中に超音波振動を与えてよく攪拌し、銅微粒子を含む導電性インクを調製した。
ガラス基板上に形成されたインク受容層の表面に、上記導電性インクを、スクリーン印刷法(パターン:線幅200μm、長さ50mm、厚み10μm)にて印刷し、窒素ガス共存下200℃にて30分間焼成することにより、導電パターンを作製した。
【0049】
[実施例2]
(1)インク受容層の形成
実施例1と同様の方法にて、インク受容層形成用塗布液を調製した。この塗布液をドロップコーティングによってポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、商品名:カプトン)上に塗布し、室温で12時間乾燥することにより、ポリイミドフィルム上にインク受容層を形成した。
(2)導電パターンの形成
実施例1と同様の方法で、ポリイミドフィルム上に形成されたインク受容層の表面に導電パターンを作製した。
(3)インク受容層と導電パターンの評価
得られたインク受容層および導電パターンを実施例1と同様の方法で評価した。
評価結果を表1に示す。
【0050】
[実施例3]
(1)インク受容層の形成
実施例2と同様の方法にて、インク受容層形成用塗布液を調製した。この塗布液をドロップコーティングによってポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、商品名:カプトン)上に塗布し、室温で12時間乾燥することにより、ポリイミドフィルム上にインク受容層を形成した。
(2)導電パターンの形成
混合有機溶媒としてN−メチルアセトアミド65体積%、トリメチルアミン5体積%、及びグリセリン25体積%、エタノール5体積%からなる混合有機溶媒を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて銅微粒子を10mlに分散させ、1時間、超音波ホモジナイザーを用いて分散液中に超音波振動を与えることで調製した導電性インクを調製した。
前記導電性インクを、インクジェット用ヘッド(メクト社製、型式:MICROJET(登録商標) Model MJ−040)に入れ、基板上に形成したインク受容層の表面に、所定のパターン(線幅100μm、長さ20mm、厚み3μm)を形成した。窒素雰囲気中120℃で30分間乾燥した後、さらに窒素雰囲気中、220℃で1時間熱処理し、導電パターンを作製した。
(3)インク受容層と導電パターンの評価
得られたインク受容層および導電パターンを実施例1と同様の方法で評価した。
評価結果を表1に示す。
【0051】
[実施例4]
(1)インク受容層の形成
実施例2に記載のインク受容層形成方法のうち、ポリビニルアルコールを2.5質量部、アルミナ粒子を12.5質量部に変更してインク受容層を形成した。本方法で作製したインク受容層中のアルミナ粒子とポリビニルアルコールの合計量に対するアルミナ粒子の体積割合は60体積%であった。
(2)導電パターンの形成
実施例3と同様の方法で、インク受容層の表面に導電パターンを作製した。
(3)インク受容層と導電パターンの評価
得られたインク受容層および導電パターンを実施例1と同様の方法で評価した。
評価結果を表1に示す。
【0052】
[比較例1]
(1)インク受容層の形成
実施例2に記載のインク受容層形成方法のうち、ポリビニルアルコールを4.3質量部、アルミナ粒子を10.7質量部に変更してインク受容層を形成した。本方法で作製したインク受容層中のアルミナ粒子とポリビニルアルコールの合計量に対するアルミナ粒子の体積割合は45体積%であった。
(2)導電パターンの形成
実施例3と同様の方法で、インク受容層の表面に導電パターンを作製した。
(3)インク受容層と導電パターンの評価
得られたインク受容層および導電パターンを実施例1と同様の方法で評価した。
評価結果を表1に示す。
【0053】
[実施例5]
(1)インク受容層の形成
実施例2に記載のインク受容層形成方法のうち、ポリビニルアルコールを1.1質量部、アルミナ粒子を13.9質量部に変更してインク受容層を形成した。本方法で作製したインク受容層中のアルミナ粒子とポリビニルアルコールの合計量に対するアルミナ粒子の体積割合は80体積%であった。
(2)導電パターンの形成
実施例3と同様の方法で、インク受容層の表面に導電パターンを作製した。
(3)インク受容層と導電パターンの評価
得られたインク受容層および導電パターンを実施例1と同様の方法で評価した。
評価結果を表1に示す。
【0054】
[比較例2]
(1)インク受容層の形成
実施例2に記載のインク受容層形成方法のうち、ポリビニルアルコールを0.2質量部、アルミナ粒子を14.8質量部に変更してインク受容層を形成した。本方法で作製したインク受容層中のアルミナ粒子とポリビニルアルコールの合計量に対するアルミナ粒子の体積割合は95体積%であった。
(2)導電パターンの形成
実施例3と同様の方法で、インク受容層の表面に導電パターンを作製した。
(3)インク受容層と導電パターンの評価
得られたインク受容層および導電パターンを実施例1と同様の方法で評価した。
評価結果を表2に示す。
【0055】
[実施例6]
(1)インク受容層の形成
インク受容層の形成に下記材料(イ)から(ニ)を使用した。
下記(ロ)のポリビニルアルコール1.5質量部を、90℃に加熱した下記(ハ)のイオン交換水48.5質量部に溶解し、ポリビニルアルコールの水溶液を調製した。
続けて下記(イ)のアルミナ粒子13.5質量部を(ハ)のイオン交換水34.5質量部に分散し、続けて(ニ)のシランカップリング剤2質量部を加えることでアルミナ粒子の分散液を調製した。室温まで冷却したポリビニルアルコール水溶液とアルミナ粒子分散液を混合することでインク受容層形成用塗布液を調製した。次に、この塗布液を用い、実施例2に記載の方法でポリイミドフィルム上にインク受容層を作製した。本方法で作製したインク受容層中のアルミナ粒子とポリビニルアルコールの合計量に対するアルミナ粒子の体積割合は70体積%であった。
(イ)平均一次粒子径700nmのアルミナ粒子(住友化学(株)製、商品名:AA−07,スミコランダム)
(ロ)ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名:PVA117)
(ハ)イオン交換水
(ニ)ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン(Gelest社製、商品名:SIN6597−65)
(2)導電パターンの形成
実施例3と同様の方法で、インク受容層の表面に導電パターンを作製した。
(3)インク受容層と導電パターンの評価
得られたインク受容層および導電パターンを実施例1と同様の方法で評価した。
評価結果を表2に示す。
【0056】
[実施例7]
(1)インク受容層の形成
インク受容層の形成に下記材料(イ)から(ニ)を使用した。
下記(ロ)のポリビニルアルコール2.5質量部を、90℃に加熱した下記(ハ)のイオン交換水47.5質量部に溶解し、ポリビニルアルコールの水溶液を調製した。続けて下記(イ)のアルミナ粒子12.5質量部を(ハ)のイオン交換水35.5質量部に分散し、続けて(ニ)のシランカップリング剤2質量部を加えることでアルミナ粒子の分散液を調製した。室温まで冷却したポリビニルアルコール水溶液とアルミナ粒子分散液を混合することでインク受容層形成用塗布液を調製した。次に、この塗布液を用い、実施例2に記載の方法でポリイミドフィルム上にインク受容層を作製した。本方法で作製したインク受容層中のアルミナ粒子とポリビニルアルコールの合計量に対するアルミナ粒子の体積割合は60体積%であった。
(イ)平均一次粒子径700nmのアルミナ粒子(住友化学(株)製、商品名:AA−07,スミコランダム)
(ロ)ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名:PVA117)
(ハ)イオン交換水
(ニ)ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン(Gelest社製、商品名:SIN6597−65)
(2)導電パターンの形成
実施例3と同様の方法で、インク受容層の表面に導電パターンを作製した。
(3)インク受容層と導電パターンの評価
得られたインク受容層および導電パターンを実施例1と同様の方法で評価した。
評価結果を表2に示す。
【0057】
[比較例3]
ガラス基板上にインク受容層を形成しない以外は、実施例1と同様の方法にて、導電パターンを作製した。
得られたインク受容層と導電パターンの性能を実施例1と同様の方法で評価した。なお、比較例3ではインク受容層を形成しないため、インク受容層の基板密着性は評価していない。インク撥液性と印刷性はインク受容層を形成していないガラス基板上で評価した。
評価結果を表2に示す。
【0058】
[比較例4]
ポリイミドフィルム上にインク受容層を形成しない以外は、実施例2と同様の方法にて、導電パターンを作製した。
得られたインク受容層と導電パターンの性能を実施例1と同様の方法で評価した。なお、比較例4ではインク受容層を形成しないため、インク受容層の基板密着性は評価していない。インク撥液性と印刷性はインク受容層を形成していないポリイミド基板上で評価した。
評価結果を表2に示す。
【0059】
[比較例5]
ポリイミドフィルム上にインク受容層を形成する際のコーティング溶液にシランカップリング剤を添加しない以外は、実施例1と同様の方法にて、導電パターンを作製した。
得られたインク受容層と導電パターンの性能を実施例1と同様の方法で評価した。
評価結果を表2に示す。
【0060】
[実施例8]
(1)インク受容層の形成
インク受容層の形成に下記材料(イ)から(ニ)を使用した。
下記(ロ)のポリビニルアルコール1.5質量部を、90℃に加熱した下記(ハ)のイオン交換水83質量部に溶解し、続けて下記(イ)のシリカ粒子13.5質量部を添加してシリカ粒子の分散溶液を調製した。その後、この分散溶液を室温まで冷却した後に下記(ニ)のシランカップリング剤2質量部を加えることで、インク受容層形成用塗布液を調製した。次に、この塗布液をドロップコーティングによって、エタノールに浸漬して洗浄したガラス基板(松浪硝子工業(株)製、商品名;Micro Slide Glass)上に塗布し、室温で12時間乾燥することにより、インク受容層を形成した。形成したインク受容層中のシリカ粒子とポリビニルアルコールの合計量に対するシリカ粒子の体積割合は70体積%であった。
(イ)一次粒子径30nmのシリカ粒子((株)トクヤマ、商品名:QS−09、レオロシール)
(ロ)ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名:PVA117)
(ハ)イオン交換水
(ニ)ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン(Gelest社製、商品名:SIN6597−65)
(2)導電パターンの形成
実施例3と同様の方法で、インク受容層の表面に導電パターンを作製した。
(3)インク受容層と導電パターンの評価
得られたインク受容層および導電パターンを実施例1と同様の方法で評価した。
評価結果を表3に示す。
【0061】
[実施例9]
(1)インク受容層の形成
インク受容層の形成に下記材料(イ)から(ホ)を使用した。
下記(ハ)のポリビニルアルコール1.5質量部を、90℃に加熱した下記(ニ)のイオン交換水83質量部に溶解し、続けて下記(イ)のシリカ粒子13質量部と下記(ロ)のアルミナ粒子0.5質量部を添加して分散溶液を調製した。その後、この分散溶液を室温まで冷却した後に下記(ホ)のシランカップリング剤2質量部を加えることで、インク受容層の塗布液を調製した。次に、この塗布液をドロップコーティングによって、エタノールに浸漬して洗浄したガラス基板(松浪硝子工業(株)製、商品名;Micro Slide Glass)上に塗布し、室温で12時間乾燥することにより、インク受容層を形成した。形成したインク受容層中のアルミナ粒子とシリカ粒子とポリビニルアルコールの合計量に対するシリカ粒子の体積割合は70体積%であった。また、アルミナ粒子とシリカ粒子の合計量に対するアルミナ粒子の重量割合は3.7質量%であった。
【0062】
(イ)一次粒子径30nmのシリカ粒子((株)トクヤマ、商品名:QS−09,レオロシール)
(ロ)平均粒子径700nmのアルミナ粒子(住友化学(株)製、商品名:AA−07,スミコランダム)
(ハ)ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名:PVA117)
(ニ)イオン交換水
(ホ)ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン(Gelest社製、商品名:SIN6597−65)
(2)導電パターンの形成
実施例3と同様の方法で、インク受容層の表面に導電パターンを作製した。
(3)インク受容層と導電パターンの評価
得られたインク受容層および導電パターンを実施例1と同様の方法で評価した。
評価結果を表3に示す。
【0063】
[実施例10]
(1)インク受容層の形成
インク受容層の形成に下記材料(イ)から(ホ)を使用した。
下記(ハ)のポリビニルアルコール1.5質量部を、90℃に加熱した下記(ニ)のイオン交換水83質量部に溶解し、続けて下記(イ)のシリカ粒子13質量部と下記(ロ)のアルミナ粒子0.5質量部を添加して分散溶液を調製した。その後、この分散溶液を室温まで冷却した後に下記(ホ)のシランカップリング剤2質量部を加えることで、インク受容層形成用塗布液を調製した。次に、この塗布液をドロップコーティングによって、エタノールに浸漬して洗浄したガラス基板(松浪硝子工業(株)製、商品名;Micro Slide Glass)上に塗布し、室温で12時間乾燥することにより、インク受容層を形成した。形成したインク受容層中のアルミナ粒子とシリカ粒子とポリビニルアルコールの合計量に対するシリカ粒子の体積割合は70体積%であった。また、アルミナ粒子とシリカ粒子の合計量に対するアルミナ粒子の重量割合は3.7質量%であった。
【0064】
(イ)一次粒子径30nmのシリカ粒子((株)トクヤマ、商品名:QS−09,レオロシール)
(ロ)平均粒子径10μmのアルミナ粒子(住友化学(株)製、商品名:AA−10,スミコランダム)
(ハ)ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名:PVA117)
(ニ)イオン交換水
(ホ)ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン(Gelest社製、商品名:SIN6597−65)
(2)導電パターンの形成
実施例3と同様の方法で、インク受容層の表面に導電パターンを作製した。
(3)インク受容層と導電パターンの評価
得られたインク受容層および導電パターンを実施例1と同様の方法で評価した。
評価結果を表3に示す。
【0065】
[実施例1〜10、比較例1〜5の評価結果]
実施例1〜10、比較例1〜5の評価結果を表1、表2、表3に示す。
実施例1、2、3においては、基板上に形成したインク受容層の基板密着性は良好であり、導電性インクのパターンにおけるインク撥液性、印刷性も良好であることが分かる。また該導電性インクのパターンを形成後焼成して得られた、実施例1、2、3導電材は密着性、及び導電性が良好であることが分かる。
実施例4、5においては、実施例3と同様に良好なインク受容層の機能が発現しているが、受容層の構成材料の配合割合を変えることで、受容層の基板密着性や印刷性に若干の変化が見られた。
これに対し、受容層を構成する材料の割合が本願の規定から外れている比較例1、2では、適切な導体パターンを作製するためのインク受容層が形成できていないことが分かる。すなわち、アルミナ粒子に対するポリビニルアルコールの割合が低い実施例6のインク受容層では、インク受容層の膜強度が低く、導電パターンの作製が可能なインク受容層が得られなかった。また、アルミナ粒子に対するポリビニルアルコールの割合が高い比較例1では、インク受容層を作製することはできるものの、インクの撥液性、導電パターンの密着性が低下していた。
【0066】
インク受容層の塗布液を調製する際に、あらかじめシランカップリング剤で撥液処理されたアルミナ粒子を作製し、つづけてポリビニルアルコール水溶液を加えることでインク受容層形成用の塗布液を調製した実施例6、7では、実施例3や実施例4と同様の機能を持つインク受容層が得られた。
インク受容層を形成しない比較例3、4ではインク撥液性と印刷性が悪くなった。比較例3では評価が可能な導電パターンを得ることができず、比較例4では密着性及び導電性の低い導電パターンが得られた。
また、シランカップリング剤を配合しない比較例5では、インクの撥液性が低下するため、評価が可能な導電パターンを得ることができなかった。
実施例3、8、9、10より、非導電性無機粒子として、多価アルコールを分解する触媒作用を発揮するアルミナ粒子を用いた場合は、導電パターンの密着性が良好であることが確認される。実施例8で、非導電性無機粒子として、多価アルコールを分解する触媒作用を有しないシリカ粒子を用いた場合は、触媒効果を有するアルミナ粒子に比べると向上効果は低い結果となった。また、実施例9では、非導電性無機粒子として、シリカに数質量%のアルミナ粒子を添加することにより、密着性が向上する結果が得られており、多価アルコールの分解を促進する触媒性非導電性無機粒子の添加により導電パターンの密着性が向上されていることが分かる。一方、実施例10では、触媒性非導電性無機粒子として、シリカに粒子径が1000nmを超えるアルミナ粒子を添加した場合では更なる密着性向上が発現しておらず、触媒作用を有する粒子であっても粒子径が大きいと触媒作用による向上効果は低いことが分かる。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【符号の説明】
【0070】
11 基板(K)
12 インク受容層(R)
13 導電パターン
14 導電性インク(I)
15 非導電性無機粒子(G)
16 シランカップリング基
17 親水性バインダー(B)
18 還元性溶媒(A)
19 金属微粒子(P)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(K)表面に形成され、かつ金属微粒子(P)と、多価アルコール(S1)成分を含有する還元性溶媒(A)とを含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後、加熱、焼成により導電パターンを形成することが可能なインク受容層(R)であって、
該インク受容層(R)がフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤(C)で表面を撥液処理された、非導電性無機粒子(G)が親水性バインダー(B)により結合されて形成されている層で、
インク受容層(R)中の非導電性無機粒子(G)と親水性バインダー(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(B+G)]×100)が50〜90(体積%)であり、
インク受容層(R)の表面が非導電性無機粒子(G)に基づく凹凸形状が形成されていて、
インク受容層(R)に存在する親水性バインダー(B)が水酸基を有している、
ことを特徴とするインク受容層。
【請求項2】
前記シランカップリング剤(C)が、フッ素原子数が9〜17個のフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤である、ことを特徴とする請求項1に記載のインク受容層。
【請求項3】
前記親水性バインダー(B)がポリビニルアルコールである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のインク受容層。
【請求項4】
前記非導電性無機粒子(G)が1次粒子の平均粒子径10〜1000nmのアルミナ粒子及びシリカ粒子から選択された1種又は2種であり、かつインク受容層(R)の厚みが1〜100μmである、ことを特徴とする請求項1から3のいずれに記載のインク受容層。
【請求項5】
前記非導電性無機粒子(G)が
(i)導電性インク(I)をインク受容層(R)上に塗布又はパターン化後、加熱、焼成する際に多価アルコール(S1)の分解を促進する触媒作用を有する触媒性非導電性無機粒子(G1)からなるか、
又は(ii)触媒性非導電性無機粒子(G1)と、前記触媒作用を有しない非触媒性非導電性無機粒子(G2)からなり、非導電性無機粒子(G)中の触媒性非導電性無機粒子(G1)の割合が0.1質量%以上である、
請求項1から3のいずれかに記載のインク受容層。
【請求項6】
前記非導電性無機粒子(G)が触媒性非導電性無機粒子(G1)と、非触媒性非導電性無機粒子(G2)とからなり、非導電性無機粒子(G)中の触媒性非導電性無機粒子(G1)の割合が0.1〜5.0質量%である、
請求項5に記載のインク受容層。
【請求項7】
前記非導電性無機粒子(G)中の触媒性非導電性無機粒子(G1)の平均粒子径が1〜1000nmである、
請求項5又は6に記載のインク受容層。
【請求項8】
前記触媒性非導電性無機粒子(G1)がアルミナ及びチタニアから選択された1種又は2種である、
請求項5から7のいずれに記載のインク受容層。
【請求項9】
前記インク受容層(R)が
(i)フルオロアルキル基を有するシランカップリング剤(C)で予め表面処理された非導電性無機粒子(G)、及び親水性バインダー(B)を含む溶液、又は
(ii)非導電性無機粒子(G)、フルオロアルキル基を有するシランカップリング剤(C)、及び親水性バインダー(B)を含む溶液
をインク受容層形成用塗布液とし、該インク受容層形成用塗布液を基板(K)上に塗布後形成された層であることを特徴とする、請求項1から8のいずれに記載のインク受容層。
【請求項10】
非導電性無機粒子(G)の表面がシランカップリング剤(C)で処理された粒子、及び親水性バインダー(B)を含むインク受容層形成用塗布液であって、
(i)非導電性無機粒子(G)が1次粒子の平均粒径10〜1000nmの粒子から選択された1種又は2種、又は、
(ii)非導電性無機粒子(G)が導電性インク(I)をインク受容層(R)上に塗布又はパターン化後、加熱、焼成する際に多価アルコール(S1)の分解を促進する触媒作用を有する触媒性非導電性無機粒子(G1)と、前記触媒作用を有しない非触媒性非導電性無機粒子(G2)からなり、非導電性無機粒子(G)中の触媒性非導電性無機粒子(G1)の割合が0.1〜5.0質量%で、かつ触媒性非導電性無機粒子(G1)の平均粒子径が1〜1000nmで、非触媒性非導電性無機粒子(G2)の平均粒子径が10〜1000nmであり、
シランカップリング剤(C)が、フッ素原子数9〜17個のフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤であり、
該インク受容層形成用塗布液に占める全固形分の割合([全固形分/インク受容層形成用塗布液]質量比)が0.08〜0.3、
非導電性無機粒子(G)と親水性バインダー(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(B+G)]×100)が50〜90(体積%)、
及び非導電性無機粒子(G)に対するシランカップリング剤(C)の使用割合([C/G]質量比)が0.0002〜0.02、
であることを特徴とする、インク受容層形成用塗布液。
【請求項11】
非導電性無機粒子(G)、シランカップリング剤(C)、及び親水性バインダー(B)を含むインク受容層形成用塗布液であって、
(i)非導電性無機粒子(G)が1次粒子の平均粒径10〜1000nmの粒子から選択された1種又は2種、又は、
(ii)非導電性無機粒子(G)が導電性インク(I)をインク受容層(R)上に塗布又はパターン化後、加熱、焼成する際に多価アルコール(S1)の分解を促進する触媒作用を有する触媒性非導電性無機粒子(G1)と、前記触媒作用を有しない非触媒性非導電性無機粒子(G2)からなり、非導電性無機粒子(G)中の触媒性非導電性無機粒子(G1)の割合が0.1〜5.0質量%で、かつ触媒性非導電性無機粒子(G1)の平均粒子径が1〜1000nmで、非触媒性非導電性無機粒子(G2)の平均粒子径が10〜1000nmであり、
シランカップリング剤(C)が、フッ素原子数9〜17個のフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤であり、
該インク受容層形成用塗布液に占める全固形分の割合([全固形分/インク受容層形成用塗布液]質量比)が0.08〜0.3、
非導電性無機粒子(G)と親水性バインダー(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(B+G)]×100)が50〜90(体積%)、
及び非導電性無機粒子(G)に対するシランカップリング剤(C)の割合([C/G]質量比)が0.0002〜0.02、
であることを特徴とする、インク受容層形成用塗布液。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のインク受容層形成用塗布液を基板(K)上に塗布後、乾燥することを特徴とする、インク受容層の形成方法。
【請求項13】
請求項1から9のいずれかに記載のインク受容層(R)上に、金属微粒子(P)と還元性溶媒(A)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後、加熱、焼成して金属微粒子(P)を焼結させることを特徴とする、導電パターンの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−166546(P2012−166546A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−7759(P2012−7759)
【出願日】平成24年1月18日(2012.1.18)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】