説明

インク受容性粒子、記録装置、記録用の材料、及びインク受容性粒子収納カートリッジ

【課題】種々のインクを受容可能であるとともに、吸液性を向上させたインク受容性粒子を提供することである。また、本発明の課題は、このインク受容性粒子を利用した、記録用の材料、記録装置、及びインク受容性粒子収納カートリッジを提供すること。
【解決手段】例えば、中間転写体に粒子層を形成する。粒子層上にインク滴を吐出し画像を形成する。これによりインク受容性粒子にインクを受容させる。記録媒体を中間転写体と重ね合わせ、記録媒体上にインク受容性粒子層を転写した後、定着する。この記録装置に適用されるインク受容性粒子200として、親水性樹脂を含んで構成され、表層部の前記親水性樹脂の中和度が中央部の前記親水性樹脂の中和度よりも高い親水性粒子を用いて構成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク受容性粒子に関する。また、本発明は、このインク受容性粒子を利用した、記録装置、記録用の材料、インク受容性粒子収納カートリッジに関する。
【0002】
インクを利用した記録方式として、中間体に記録した後、記録媒体に転写する方式が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、記録材を含むインクを受容するインク受容性粒子であって、少なくともインクの液体成分をトラップするトラップ構造を有し、且つ吸液性樹脂を含んで構成したインク受容性粒子を、中間転写体へ供給した後、これにインクを吐出して、記録媒体へ転写する記録装置が提案されている。
【特許文献1】特開2006−347085
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、定着後の画像のベタつきを抑制するインク受容性粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
酸性官能基の少なくとも1種を持つ親水性樹脂を含んで構成され、粒子1g当たりの前記酸性官能基の量が1.4×10−3mol/g以上4.0×10−3mol/g以下であり、且つ粒子が予め定められた範囲の比率で混合されたイソプロピルアルコールと水の混合溶媒に溶解する親水性粒子を有するインク受容性粒子。
ここで、「予め定められた範囲の比率」とは、イソプロピルアルコールと水の混合溶媒の比率の範囲が「混合溶媒100質量%中のイソプロピルアルコールの配合比率が45質量%以上65質量%以下」であることを意味する。
【0006】
請求項2に係る発明は、
前記親水性粒子が少なくとも集合した複合体粒子を有することを特徴とする請求項1に記載のインク受容性粒子。
【0007】
請求項3に係る発明は、
中間転写体と、
請求項1又は2に記載のインク受容性粒子を前記中間転写体上に供給する供給手段と、
前記中間転写体上に供給された前記インク受容性粒子にインクを吐出するインク吐出手段と、
前記インク受容性粒子を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された前記インク受容性粒子を定着する定着手段と、
を有する記録装置。
【0008】
請求項4に係る発明は、
請求項1又は2に記載のインク受容性粒子を記録媒体上に供給する供給手段と、
前記記録媒体上に供給された前記インク受容性粒子にインクを吐出するインク吐出手段と、
前記記録媒体上に供給された前記インク受容性粒子を定着する定着手段と、
を有する記録装置。
【0009】
請求項5に係る発明は、
インクと、請求項1又は2に記載のインク受容性粒子と、を備える記録用の材料。
【0010】
請求項6に係る発明は、
記録装置に脱着され、請求項1又は2に記載のインク受容性粒子を収納するインク受容性粒子収納カートリッジ。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、本発明の構成を有さない場合に比較して、定着後の画像のベタつきが抑制される。
請求項2に係る発明によれば、インク受容性粒子が親水性粒子単体の場合に比べ、吸液性が向上する。
請求項3、4、5、及び6に係る発明によれば、本発明の構成を有さない場合に比較して、定着後の画像のベタつきが抑制された画像が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(インク受容性粒子)
実施形態に係るインク受容性粒子は、インクが当該粒子と接触したとき、インク成分を受容するものである。ここで、インク受容性とは、インク成分の少なくとも一部(少なくとも液体成分)を保持することを示す。
【0013】
本実施形態に係るインク受容性粒子において、親水性粒子における粒子1g当たりの前記酸性官能基の量は、1.4×10−3mol/g以上4.0×10−3mol/g以下であるが、望ましくは2.1×10−3mol/g以上3.2×10−3mol/g以下である。
【0014】
この酸性官能基は、以下の如く測定される。
まず、親水性粒子を特定比のイソプロピルアルコール(IPA)/水混合溶媒(IPA/水=65/35以上45/55以下:質量比)に加えて溶解させる。
【0015】
次に、全て溶解した場合はその溶液を、不溶残渣物が存在する場合は遠心分離処理した上澄み液を用いて、次に処理を行う。即ち、溶液又は上澄み液を滴定溶液として、KOH水溶液を使用してJIS K2501の酸価の電位差測定法(測定には電位差計とpH計を用いる)に準じ、KOH水溶液の消費量を測定して酸性官能基のmol量を算出する。これに基づき、官能基量が算出される。
【0016】
本実施形態に係るインク受容性粒子において、親水性粒子は溶解する粒子が予め定められた範囲の比率で混合されたイソプロピルアルコールと水の混合溶媒に溶解する。酸性官能基を持つ親水性樹脂を含んで構成された親水性粒子は、当該酸性官能基量が粒子中で非局在化せずバラツキがない場合は、全て溶解する。一方で、当該酸性官能基量が粒子中で局在化してバラツキがある場合には他の領域よりも当該酸性官能基量が低い領域が、一部溶解せず、不溶残渣物として残る。したがって、不溶残渣物は少なければ少ないほどよく、親水性粒子が上記特定の混合溶媒に溶解することは、酸性官能基量が非局在化しバラツキが少ないことを意味し、例えば、酸性官能基量が粒子表層部と中央部とでほぼ等しいことを意味する。
【0017】
ここで、親水性粒子が上記特定の混合溶媒に溶解するとは、25℃において親水性粒子0.5gが上記特定の混合溶媒100gに対して、沈殿物や残渣を生じないことを目視にて判断している。
【0018】
上記構成の親水性粒子を得るには、例えば、少なくとも親水性樹脂を有機溶媒(例えば、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、テトラヒドロフラン、アセトン、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミドなど、またはその混合溶媒)に溶解させ、中和(造塩)処理をする場合、当該樹脂が溶解した有機溶媒中で中和(造塩)処理(具体的には例えばアルカリ処理)を施した後、例えば、当該有機溶媒に貧溶媒(例えば、水)を加えて親水性樹脂を乳化処理を行う。そして、乾燥・粒子化を行い、必要に応じて、粉砕・分級を行う。
【0019】
以下、本実施形態に係るインク受容性粒子についてさらに詳細に説明する。まず。本実施形態に係るインク受容性粒子の粒子形態について説明する。
【0020】
本実施形態に係るインク受容性粒子は、上記親水性樹脂を含んで構成される親水性粒子の単独粒子(以下、「一次粒子」と称する場合がある)で構成してもよいし、少なくとも親水性粒子が集合した複合体粒子であってもよい。この親水性粒子の単独粒子、又は少なくとも親水性粒子が集合した複合体粒子を「母粒子」と称することがある。
【0021】
なお、母粒子を一次粒子で構成する場合、上記少なくとも親水性樹脂を乳化処理させた乳化液(エマルジョン液)を、例えば、凍結乾燥等の乾燥処理を施すことで得られる。その後、必要に応じて、粉砕/分級を行ってもよい。
一方、母粒子を複合体粒子で構成する場合、上記少なくとも親水性樹脂を乳化処理させた乳化液(エマルジョン液)を、例えば、例えば、噴霧乾燥(スプレードライ)等により乾燥・造粒(複合化)処理を施すことで得られる。また、親水性粒子と他の粒子(無機粒子、疎水性粒子、ワックス粒子等)とを複合化させて複合体粒子を構成する場合、例えば、当該乳化液(エマルジョン液)に、当該他の粒子を混合して、乾燥・造粒(複合化)処理を施ことで得られる。その後、必要に応じて、粉砕/分級を行ってもよい。
【0022】
ここで、インク受容性粒子が親水性粒子の単独粒子で構成された形態の場合、インク受容性粒子がインクを受容する際、インクがインク受容性粒子に付着すると、少なくともインクの液体成分が親水性粒子によって吸液される。
【0023】
このようにして、インク受容性粒子はインクを受容する。そして、インクを受容したインク受容性粒子を記録媒体に転写することで、記録が行われる。
【0024】
他方、インク受容性粒子が少なくとも親水性粒子が集合した複合体粒子で構成された形態の場合、インク受容性粒子がインクを受容する際、まず、インクがインク受容性粒子に付着すると、少なくともインクの液体成分が、複合体粒子を構成する粒子(少なくとも親水性粒子)間の空隙(以下、粒子間空隙を「トラップ構造」と称する場合がある)により捕獲(トラップ)されると考えられる。このとき、インクの成分のうち記録材は、インク受容性粒子表面に付着又はトラップ構造により捕獲(トラップ)されると考えられる。そして、この空隙に存在するインクが粒子によって吸液されると考えられる。このようにして、インク受容性粒子はインクを受容する。そして、インクを受容したインク受容性粒子を記録媒体に転写することで、記録が行われる。
【0025】
このトラップ構造によるインク成分(液体成分、記録材)の捕獲(トラップ)は、粒子間の空隙(物理的な粒子壁構造)による物理的及び/又は化学的な捕獲であると考えられる。
【0026】
そして、少なくとも親水性粒子が集合した複合体粒子で構成された形態を適用することで、当該複合体粒子を構成する粒子間の空隙(物理的な粒子壁構造)による捕獲(トラップ)に加え、親水性粒子によってインク液体成分が吸液・保持されると考えられる。
【0027】
以下、本実施形態に係るインク受容性粒子の粒子形態についてさらに詳細に説明する。上述のように、本実施形態に係るインク受容性粒子は、母粒子が親水性粒子単独の粒子で構成された形態であってもよく、少なくとも親水性粒子が集合した複合体粒子で構成された形態あってもよい。
【0028】
また、親水性粒子には、上記有機樹脂の他、その他成分(例えば、無機材料、疎水性樹脂、離型剤(ワックス)等)を含んでもよい。一方、吸液粒子以外で複合体粒子を構成する粒子としては、例えば、無機粒子、疎水性粒子、離型剤粒子(ワックス粒子)等が挙げられる。
【0029】
また、母粒子には、親水性粒子又は複合体粒子の表面に、例えば、無機粒子等を付着してもよい。
【0030】
本実施形態に係るインク受容性粒子の具体的な構成としては、例えば、図1に示すように、親水性粒子201の単独粒子からなる母粒子202と、母粒子202(親水性粒子201)の表面に付着した無機粒子204と、を有するインク受容性粒子200の形態が挙げられる。また、図2に示すように、親水性粒子201と、他の粒子203(例えば無機粒子、疎水性樹脂を含んで構成される疎水性粒子、ワックス粒子等)とが複合化された複合体粒子からなる母粒子202と、母粒子202(複合体粒子)の表面に付着された無機粒子204と、を有するインク受容性粒子210の形態も挙げられる。なお、この複合体粒子は各粒子間の空隙により空隙構造が形成される。また、これら形態は一例であり、これらに限定されるものではなく、例えば、無機粒子204を付着(外添)させない形態、親水性粒子201のみで複合体粒子を構成する形態であってもよい。
【0031】
ここで、インク受容性粒子全体の球換算平均粒径としては、例えば0.5μm以上50μm以下の範囲(望ましくは、1μm以上30μm以下、より望ましくは3μm以上20μm以下、さらに望ましくは5μm以上10μm以下)が挙げられる。
ここで、球換算平均粒径は次のようにして求められる。粒子サイズによって最適方法は異なるが、例えば粒子を液体中に分散し光散乱原理で粒径を求める、粒子の投影像を画像処理で求める等多種の方法が利用される。汎用的に使用される方法としては、マイクロトラックUPA法やコールターカウンター法が挙げられる。
【0032】
母粒子を複合体粒子で構成する場合、親水性粒子と他の粒子との質量比率(親水性粒子:他の粒子)は、例えば、他の粒子が無機粒子の場合、5:1以上1:10以下の範囲が挙げられる。
【0033】
また、母粒子の粒径は、球換算平均粒径が例えば、0.1μm以上50μm以下、望ましくは0.5μm以上25μm以下、より望ましくは1μm以上10μm以下の範囲が挙げられる。球換算平均粒径が上記範囲であると、高画質が達成される。即ち、球換算平均粒径が大きい場合、画像面上で粒子の存在する部分と、存在しない部分で高さ方向の段差が生じるため、画像の平滑性が劣ることがある。一方、球換算平均粒径が小さい場合には、粉体のハンドリング性が低下し、転写体上の所望の位置に粉体を供給することが出来なくなる傾向にある。従って、画像上において親水性粒子が存在しない箇所が生じ、高速記録、高画質が達成されなくなることがある。なお、インク受容性粒子を一次粒子で構成する場合、上記球換算平均粒径での範囲を適用することがよい。
【0034】
また、母粒子を複合体粒子で構成する場合、そのBET比表面積(N)が例えば1m/g以上750m/g以下の範囲が挙げられる。
【0035】
そして、母粒子を複合体粒子で構成する場合、複合体粒子は、例えば、粒子が半焼結状態で造粒されることで得られる。半焼結状態とは、粒子形状がある程度の残っており、当該粒子間で空隙を保持している状態を示す。なお、複合体粒子は、トラップ構造にインク液体成分がトラップされたとき、粒子の少なくとも一部が解離する、即ち複合体粒子が解体され、これを構成する粒子がばらけてもよい。
【0036】
なお、親水性粒子の粒径は、その一次粒子を母粒子とする場合、球換算平均粒径が例えば、0.1μm以上50μm以下、望ましくは0.5μm以上25μm以下、より望ましくは1μm以上10μm以下の範囲が挙げられる。一方、複合体粒子を構成する場合、親水性粒子の粒径は、球換算平均粒径で例えば、10nm以上30μm以下、望ましくは50nm以上1μm以下、より望ましくは50nmμm以上700nm以下の範囲が挙げられる。
【0037】
また、親水性粒子のインク受容性粒子全体に対する比率は、例えば質量比で75%以上、望ましくは85%以上、より望ましくは90%以上99%以下の範囲が挙げられる。
【0038】
以下、各材料について詳細に説明する。
まず、親水性樹脂について説明する。親水性樹脂は、酸性官能基の少なくとも1種を持つ親水性樹脂である。
【0039】
ここで、上記官能基としての酸性官能基としては、弱酸性官能基、強酸性官能基が挙げられる。弱酸性官能基とは、水溶液中にてほとんど、または一部しか解離しないものを示し、例えば、水酸基、エチレンオキサイド基、カルボン酸基等が挙げられる。強酸性官能基とは、水溶液中にてほぼ完全に解離するものを示し、例えばスルホン酸基等が挙げられる。
【0040】
なお、例えば、粒子が負帯電付与の場合、カルボン酸基、スルホン酸基等の酸性官能基を含む有機酸の単量体を用いることが望ましい。
【0041】
これらの官能基の中でも、酸性官能基、より望ましくは弱酸性官能基、特にカルボン酸基であることが望ましい。この官能基は解離定数が低く、他の官能基の場合に比べて、画像ベタつき抑制が向上する。
特に、カルボン酸基を有すると、未中和の場合(塩構造を持たない場合)、空気中の湿度では解離し難く、インク(弱アルカリ性の液体)で解離することから、保存安定性に有利である。また、カルボン酸基を有すると、インク中のイオンで架橋(擬似架橋)し、系全体(インク+インク受容性粒子)が固定化されて易くなり、定着性に有利である。
【0042】
親水性樹脂は、上記官能基が塩構造(造塩された構造)を有さないものを用いてもよいし、上記官能基の少なくとも一部が塩構造(造塩された構造)を有するものを用いてもよい。
【0043】
ここで、造塩された官能基の構造(塩構造)は、例えば、アルカリ金属による塩構造、多価金属による塩構造、有機アミンによる塩構造が好適に挙げられる。その他、アンモニアによる塩構造も挙げられる。即ち、造塩処理(中和処理)は、これら各材料により施されてもよい。
【0044】
ここで、親水性樹脂は、上記官能基を持つ親水性単量体と疎水性単量体との共重合体からなってもよいし、当該官能基を持つ親水性単量体単独の重合体からなってもよい。なお、単量体だけでなく、ポリマー/オリゴマー構造などのユニットをスタートに他のユニットを共重合させるグラフト共重合体やブロック共重合体でもよい。
【0045】
なお、親水性樹脂は、上記官能基を持ち、全単量体成分に対する上記官能基を持つ親水性単量体の比率が10mol%以上100mol%以下であることが望ましい。この上記官能基を持つ親水性単量体の比率は、次のようにして求める。まず質量分析、NMR(核磁気共鳴),IR(赤外吸収スペクトル)などの分析手法から有機成分の構成を特定する。その後、JIS K0070又はJIS K2501に準拠して、有機成分の酸価、塩基価を測定する。有機成分の構成、及び、酸価/塩基価から極性単量体の比率を計算で求める。
【0046】
親水性ユニット若しくは単量体としては、上記官能基として、−OH、−EOユニット(エチレンオキサイド基)、−COOM(Mは例えば水素、Na、Li、K等のアルカリ金属、アンモニア、有機アミン類等である。)、−SO3M(Mは例えば水素、Na、Li、K等のアルカリ金属、アンモニア、有機アミン類等)、−NR3(Rは例えば、H、アルキル、フェニル等である。)、−NR4X(Rは例えば、H、アルキル、フェニル等であり、Xは例えば、ハロゲン、硫酸根、カルボン酸等の酸アニオン類、BF4、等々である。)等を含むユニット若しくは単量体が挙げられる。
【0047】
この親水性ユニット若しくは単量体と疎水性ユニット若しくは単量体との共重合体である親水性樹脂として、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン/(メタ)アクリル酸/(無水)マレイン酸類共重合体、エチレン/プロピレン等のオレフィン系ポリマー(又はこの変性体、又は共重合によるカルボン酸ユニット導入物)、トリメリット酸等で酸価を向上した分岐ポリエステル、ポリアミド等が好適に挙げられる。
【0048】
親水性樹脂は、吸液したインク液体成分(例えば水、水性溶媒)が樹脂(ポリマー)の可塑剤として作用するため、軟化して定着性に寄与される
【0049】
親水性樹脂は、例えば、親水性単量体の単独重合体、或いは親水性単量体と疎水性単量体との両単量体から構成された共重合体で構成してもよいが、弱吸水性樹脂とするためには当該共重合体が望ましい。
【0050】
親水性樹脂の重量平均分子量は、例えば、5000以上100000以下で調整される。重量平均分子量は、以下の条件で行ったものである。例えば、GPCは「HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー(株)社製)装置」を用い、カラムは「TSKgel、SuperHM−H(東ソー(株)社製6.0mmID×15cm)」を2本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min.、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、IR検出器を用いて実験を行った。また、検量線は東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作製した。
【0051】
親水性樹脂の酸価は、例えば、カルボン酸基(−COOH)換算で50mgKOH/g以上500mgKOH/g以下で調整される。
【0052】
酸価は、JIS K0070に従って行い、中和滴定法を用いた測定で行った。即ち、適当量の試料を分取し、溶剤(ジエチルエーテル/エタノール混合液)100ml、及び、指示薬(フェノールフタレイン溶液)数滴を加え、水浴上で試料が溶けるまで充分に振り混ぜる。これに、0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の紅色が30秒間続いた時を終点とした。酸価をA、試料量をS(g)、滴定に用いた0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液をB(ml)、fを0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液のファクターとした時、A=(B×f×5.611)/Sとして算出した。
【0053】
また、本実施形態に係るインク受容性粒子には、離型剤(ワックス)が含まれていてもよい。離型剤は、上記親水性樹脂と共に親水性粒子に含ませてもよいし、親水性粒子と共に離型剤の粒子(ワックス粒子)を複合化して含ませてもよい。
【0054】
以上説明した本実施形態に係るインク受容性粒子は、単独で用いてもよいが、キャリアと組み合わせて用いてもよい。なお、キャリアとしては、例えば、電子写真用トナーの現像剤に用いられるキャリアを適用され得る。
【0055】
(記録用の材料)
本実施形態記録用の材料は、少なくとも記録材を含むインクと、上記本実施形態に係るインク受容性粒子と、を備える。記録用の材料は、インク受容性粒子にインクを受容させた後、当該インク受容性粒子を記録媒体に転写することで記録を行うことが可能である。
【0056】
以下、インクについて詳細に説明する。インクは水性インク、油性インク共に使用してもよいが、環境性の点で水性インクが使用される。水性インク(以下、単にインクと称する)は、記録材に加え、インク溶媒(例えば、水、水溶性有機溶媒)を含んでいる。また、必要に応じて、その他、添加剤を含んでいてもよい。
【0057】
まず、記録材について説明する。記録材としては、主に色材が挙げられる。色材としては、染料、顔料のいずれも用いてもよいが、顔料であることがよい。顔料としては有機顔料、無機顔料のいずれも使用でき、黒色顔料ではファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料等が挙げられる。黒色とシアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料、プラスチックピグメント等を使用してもよい。また、本実施形態ために、新規に合成した顔料でも構わない。
【0058】
また、シリカ、アルミナ、又は、ポリマービード等をコアとして、その表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等を顔料として使用することも可能である。
【0059】
黒色顔料の具体例としては、Raven7000(コロンビアン・カーボン社製)、Regal400R(キャボット社製)、Color Black FW1(デグッサ社製)等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
シアン色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Blue−1が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
マゼンタ色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Red−5が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
黄色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Yellow−1が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
ここで、色材として顔料を使用した場合には、併せて顔料分散剤を用いることが望ましい。使用可能な顔料分散剤としては、高分子分散剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0064】
高分子分散剤としては、親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体が好適に用いられる。親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体としては、縮合系重合体と付加重合体とが使用される。縮合系重合体としては、公知のポリエステル系分散剤が挙げられる。付加重合体としては、α,β−エチレン性不飽和基を有する単量体の付加重合体が挙げられる。親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体と疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体を組み合わせて共重合することにより目的の高分子分散剤が得られる。また、親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体の単独重合体も用いられる。
【0065】
色材として水に自己分散可能な顔料を用いてもよい。水に自己分散可能な顔料とは、顔料表面に水に対する可溶化基を数多く有し、高分子分散剤が存在しなくとも水中で分散する顔料のことを指す。具体的には、通常のいわゆる顔料に対して酸・塩基処理、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等の表面改質処理等を施すことにより、水に自己分散可能な顔料が得られる。
【0066】
また、水に自己分散可能な顔料としては、上記顔料に対して表面改質処理を施した顔料の他、キャボット社製のCab−o−jet−200、Cab−o−jet−300、Cab−o−jet−250、Cab−o−jet−260、Cab−o−jet−270、オリエント化学社製のMicrojet Black CW−1、CW−2等の市販の自己分散顔料等も使用され得る。
【0067】
記録材としては、その他、親水性のアニオン染料、直接染料、カチオン染料、反応性染料、高分子染料等や油溶性染料等の染料類、染料で着色したワックス粉・樹脂粉類やエマルション類、蛍光染料や蛍光顔料、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、フェライトやマグネタイトに代表される強磁性体等の磁性体類、酸化チタン、酸化亜鉛に代表される半導体や光触媒類、その他有機、無機の電子材料粒子類などが挙げられる。
【0068】
記録材の含有量(濃度)は、例えばインクに対して2質量%以上20質量%以下の範囲が挙げられる。
【0069】
記録材の体積平均粒径は、例えば10nm以上300nm以下の範囲が挙げられる。
【0070】
記録材の体積平均粒径とは、記録材そのものの粒径、又は記録材に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒径をいう。体積平均粒径の測定装置には、マイクロトラックUPA粒度分析計 9340 ( Leeds&Northrup社製 )を用いた。その測定は、インク4mlを測定セルに入れ、所定の測定法に従って行った。なお、測定時の入力値として、粘度にはインクの粘度を、分散粒子の密度は記録材の密度とした。
【0071】
次に、水溶性有機溶媒について説明する。水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。
【0072】
水溶性有機溶媒の具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2−へキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、キシリトールなどの糖アルコール類、キシロース、グルコース、ガラクトースなどの糖類等が挙げられる。
【0073】
多価アルコール類誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0074】
含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0075】
水溶性有機溶媒としては、その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いられる。
【0076】
水溶性有機溶媒は、少なくとも1種類以上使用してもよい。水溶性有機溶媒の含有量としては、例えば1質量%以上70質量%以下の範囲が挙げられる。
【0077】
次に、水について説明する。水としては、特に不純物が混入することを防止するため、イオン交換水、超純水、蒸留水、限外濾過水を使用することが望ましい。
【0078】
次に、その他の添加剤について説明する。インクには、界面活性剤を添加してもよい。
【0079】
これら界面活性剤の種類としては、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、望ましくは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が用いられる。
【0080】
これらの界面活性剤は単独で使用しても混合して使用してもよい。また界面活性剤の親水性/疎水性バランス(HLB)は、溶解性等を考慮すると、例えば3以上20以下の範囲が挙げられる。
【0081】
これらの界面活性剤の添加量は、例えば0.001質量%以上5質量%以下、望ましくは0.01質量%以上3質量%以下の範囲が挙げられる。
【0082】
(インク受容性粒子収納カートリッジ)
本実施形態に係るインク受容性粒子収納カートリッジは、記録装置に脱着可能であり、上記本実施形態に係るインク受容性粒子を収納すると共に、記録装置の粒子塗布装置(粒子供給装置)に当該インク受容性粒子を供給するための部材である。
【0083】
以下、本実施形態に係るインク受容性粒子収納カートリッジの実施の形態ついて図面を参照しつつ説明する。図3は、実施の形態に係るインク受容性粒子収納するカートリッジを示す斜視図である。図4は、図3のA−A断面図である。
【0084】
実施の形態に係るインク受容性粒子収納カートリッジ50は、図3及び図4に示すように、円筒状の粒子収納カートリッジ本体51と、この粒子収納カートリッジ本体51の両端に嵌合する側壁部52、54とから構成されている。
【0085】
そして、一端側の粒子収納カートリッジ本体51の周面にはインク受容性粒子を記録装置の粒子塗布装置(粒子供給装置:不図示)に向けて搬出するための搬出口60が設けられている。また、粒子収納カートリッジ本体51に対してスライド自在に帯部56が取付けられている。この帯部56には、搬出口60の外側に搬出口60を格納する格納部58が設けられている。
【0086】
従って、粒子収納カートリッジ50が記録装置に装着されていない状態(或いは装着直後)は、搬出口60は格納部58に格納され、搬出口60から粒子収納カートリッジ本体51内のインク受容性粒子が外に漏れ出ない。
【0087】
また、粒子収納カートリッジ本体51の他端側の側壁部54の中央部分には孔62が開けられており、カップリング部64の連結部66が、この側壁部54の孔62から粒子収納カートリッジ本体51内部に貫通している。また、これにより、カップリング部64は側壁部54に対して、回転自在となっている。
【0088】
そして、アジテーター68が、粒子収納カートリッジ本体51内部に配設されている。アジテーター68は、断面円形の金属製の線状部材、例えば、ステンレス(SUS304WP)からなり、螺旋状に形成されている。また、一方のアジテーターの一端部は、回転軸(回転中心)に向かって曲げられ、カップリング部64の連結部66に連結されている。尚、他方の端部の先は、拘束されていない自由端となっている。
【0089】
アジテーター68はカップリング部64の連結部66から回転力を付与されて回転し、粒子収納カートリッジ本体51内のインク受容性粒子を攪拌しながら搬出口60の方に搬送する。このように、粒子を搬出口60から排出し、インク受容性粒子を記録装置に追加補充される。
【0090】
なお、本実施形態に係るインク受容性粒子収納カートリッジは、上記構成に限られるものではない。
【0091】
(記録装置)
本実施形態記録装置(記録方法)は、記録材を含むインクと、上記本実施形態に係るインク受容性粒子と、を用いた記録装置(記録方法)であり、中間転写体と、インク受容性粒子を中間転写体上に供給する供給手段(供給工程)と、中間転写体上に供給されたインク受容性粒子にインクを吐出するインク吐出手段(インク吐出工程)と、インク受容性粒子を記録媒体に転写する転写手段(転写工程)と、記録媒体に転写されたインク受容性粒子を定着する定着手段(定着工程)と、を有し、インク受容性粒子は、中間転写体上に供給されるとともに、インク吐出手段から吐出されたインクを受容する記録装置(記録方法)である。
【0092】
具体的には、例えば、まず、供給手段により中間体(中間転写体)にインク受容性粒子を層状に供給する。層状に供給されたインク受容性粒子(以下、インク受容性粒子層)に対して、インク吐出手段によりインクを吐出して受容させる。インクを受容したインク受容性粒子層を転写手段により中間体から記録媒体へ転写する。この転写は、インク受容性粒子層の全部或いは記録部(インク受容部)を選択的に行われる。その後、記録媒体に転写されたインク受容性粒子層に対し、定着手段により加圧(或いは加熱・加圧)を施し、定着させる。このようにして、インクを受容したインク受容性粒子による記録が行われる。なお、転写と定着は実質的に同時に行ってもよいし、別で行ってもよい。
【0093】
ここで、インク受容性粒子はインクを受容する際、例えば、層状に形成されるが、そのインク受容性粒子層の厚さは、例えば1μm以上100μm以下、望ましくは3μm以上60μm以下、より望ましくは5μm以上30μm以下の範囲が挙げられる。また、インク受容性粒子層中の空隙率(即ち、インク受容性粒子間空隙率+インク受容性粒子内空隙率(トラップ構造))は、例えば10%以上80%以下、望ましくは30以上70%以下、より望ましくは40%以上60%以下の範囲が挙げられる。
【0094】
また、中間体の表面には、インク受容性粒子供給前に予め、離型剤を塗布してもよい。この離型剤としては、(変性)シリコーン・オイル、フッ素系オイル、炭化水素オイル、鉱物油、植物油、ポリアルキレングリコール、アルキレングリコールエーテル、アルカンジオール、溶融ワックス類などが挙げられる。
【0095】
なお、記録媒体としては、浸透媒体(例えば、普通紙や、コート紙等)、非浸透媒体(例えば、アート紙、樹脂フィルムなど)、いずれも適用される。また、記録媒体は、これらに限られず、その他、半導体基板など工業製品も含まれる。
【0096】
一方、本実施形態記録装置(記録方法)は、インク受容性粒子を記録媒体上に供給する供給手段と、記録媒体上に供給されたインク受容性粒子にインクを吐出するインク吐出手段と、記録媒体上に供給されたインク受容性粒子を定着する定着手段と、を有し、インク受容性粒子は、記録媒体上に供給されるとともに、インク吐出手段から吐出されたインクを受容する記録装置(記録方法)であってもよい。
【0097】
具体的には、まず、供給手段により記録媒体にインク受容性粒子を層状に供給する。層状に供給されたインク受容性粒子(以下、インク受容性粒子層)に対して、インク吐出手段によりインクを吐出して受容させる。インクを受容したインク受容性粒子層に対し、定着手段により加圧(或いは加熱・加圧)を施し、定着させる。このようにして、インクを受容したインク受容性粒子による記録が行われる。このように、記録媒体に直接、記録媒体上に供給する形態であってもよい。
【0098】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、実質的に同じ作用・機能を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0099】
図5は、実施の形態に係る記録装置を示す構成図である。図6は、実施の形態に係る記録装置の主要部を示す構成図である。図7は、実施の形態に係るインク受容性粒子層を示す構成図である。なお、以下の実施の形態では、インク受容性粒子として複合体粒子を適用した場合を説明している。
【0100】
実施の形態に係る記録装置10は、図5及び図6に示すように、例えば、無端ベルト状の中間転写体12、中間転写体12表面を帯電させる帯電装置28、中間転写体12上の帯電された領域にインク受容性粒子16を供給し粒子層を形成する粒子供給装置18、粒子層上にインク滴を吐出し画像を形成するインクジェット記録ヘッド20、記録媒体8を中間転写体12と重ね合わせ、圧力及び熱を加えることにより記録媒体8上にインク受容性粒子層を転写及び定着する転写定着装置22を含んで構成されている。そして、粒子供給装置18には、供給管19Aを介してインク受容性粒子収納カートリッジ19が脱着可能に連結されている。
【0101】
帯電装置28の上流側には、離型剤14Dを供給して離形層14Aを形成する離型剤供給装置14が配置される。
【0102】
帯電装置28により表面に電荷を形成した中間転写体12の表面は粒子供給装置18にてインク受容性粒子16を層として形成され、粒子層上には各色ごとのインクジェット記録ヘッド20すなわち20K、20C、20M、20Yから各色のインク滴が吐出されカラー画像が形成される。
【0103】
表面にカラー画像が形成された粒子層は転写定着装置(転写定着ロール)22にて記録媒体8にカラー画像ごと転写される。転写定着装置22の下流には、中間転写体12表面に残留しているインク受容性粒子16の除去、粒子以外の異物(記録媒体8の紙粉等)の中間転写体付着物の除去を行うためのクリーニング装置24が配置されている。
【0104】
カラー画像を転写された記録媒体8はそのまま搬出され、中間転写体12は再度帯電装置28で表面に電荷を形成される。このとき、記録媒体8に転写されたインク受容性粒子はインク滴20Aを吸収・保持するので速やかに搬出が可能でされる。
【0105】
また、必要に応じて、クリーニング装置24と離型剤供給装置14の間(以下、AとBとの間とは特記がない限り、いずれも含まない間を意味する)に、中間転写体12表面に残留する電荷を除去する為の除電装置29を配置してもよい。
【0106】
本実施の形態においては、中間転写体12は、厚さ1mmのポリイミドフィルムのベース層の上に厚さ400μmのエチレンプロピレンゴム(EPDM)の表面層が形成されている。ここでは表面抵抗値が1013Ω/□程度、体積抵抗値が1012Ω・cm程度(半導電性)であることが望ましい。
【0107】
中間転写体12が周動され、まず離型剤供給装置14により中間転写体12表面に離形層14Aが形成される。離型剤供給装置14の供給ロール14Cにより中間転写体12表面に離型剤14Dが供給され、ブレード14Bで層厚を規定する。
【0108】
このとき、連続的に画像形成及びプリントを行う目的で、離型剤供給装置14を中間転写体12に連続的に接触するようにしてもよいし、中間転写体12から離間する構成としてもよい。
【0109】
離型剤供給装置14に、独立した液体供給システム(図示せず)より離型剤14Dを供給して、離型剤14Dの供給がとぎれないようにしてもよい。
【0110】
次に、帯電装置28によって正の電荷を中間転写体12表面に付与することにより、中間転写体12表面に正の電荷が帯電される。ここでは、粒子供給装置18の供給ロール18Aと中間転写体12表面とで形成しうる電界による静電力により、インク受容性粒子16が中間転写体12表面に供給/吸着可能な電位を形成すればよい。
【0111】
本実施の形態においては、帯電装置28を用いて、帯電装置28と中間転写体12を挟んで配置されている従動ロール31(グラウンドに接続)間に電圧を印加し、中間転写体12表面を帯電させる構成としている。
【0112】
帯電装置28は、ステンレスを材料とする棒状の外周面に、導電性付与材を分散させた弾性層(発泡ウレタン樹脂)を形成し、体積抵抗率10Ω・cm以上10Ω・cm以下程度に調整したロール形状の部材とする。さらに、弾性層の表面を厚さ5μm以上100μm以下の撥水撥油性の被覆層(例えば四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)で構成)で被覆する。
【0113】
帯電装置28にはDC電源が接続され、従動ロール31はフレームグランドに電気的に接続されている。帯電装置28は、従動ロール31との間で中間転写体12を挟みつつ従動し、押圧位置では、接地された従動ロール31との間に所定の電位差が生じるため、中間転写体12の表面に電荷を与える。ここでは帯電装置28により中間転写体12表面に例えば電圧1kvを印加し、中間転写体12表面を帯電させる。
【0114】
また、帯電装置28をコロトロン等で構成してもよい。
【0115】
次に粒子供給装置18により、中間転写体12表面にインク受容性粒子16が供給され、インク受容性粒子層16Aを形成する。粒子供給装置18は、インク受容性粒子16が収容される容器の、中間転写体12と向合う部分に供給ロール18Aが配され、供給ロール18Aに押圧するように帯電ブレード18Bが配される。この帯電ブレード18Bは供給ロール18A表面に供給するインク受容性粒子16の層厚を規制する機能も併せ持つ。
【0116】
供給ロール18A(導電性ロール)にインク受容性粒子16を供給し、帯電ブレード18B(導電性ブレード)でインク受容性粒子層16Aを規制するとともに中間転写体12表面の電荷と逆極性である負に帯電する。供給ロール18Aはアルミ製の中実ロール、帯電ブレード18Bは圧力をかけるためにウレタンゴムが獲り付けられた金属板(SUSなど)を用いる。帯電ブレード18Bはドクターブレード方式で供給ロール18Aと接する。
【0117】
帯電されたインク受容性粒子16は供給ロール18A表面に例えば1層の粒子層を形成し、中間転写体12表面と対向する部位に搬送され、これと近接すると供給ロール18Aと中間転写体12表面との電位差により形成された電界により、帯電したインク受容性粒子16は静電力により中間転写体12表面に移動する。
【0118】
この時、中間転写体12表面に1層の粒子層を形成するように中間転写体12の移動速度と供給ロール18Aの回転速度を相対的に設定する(周速比)。この周速比は、中間転写体12の帯電量やインク受容性粒子16の帯電量、供給ロール18Aと中間転写体12の位置関係等、他のパラメータに依存する。
【0119】
上記の、1層のインク受容性粒子層16Aを形成する周速比を基準に、供給ロール18Aの周速を相対的に早くすることにより、中間転写体12上に供給される粒子数を増加させる。転写される画像濃度が低い(インク打ち込み量が少ない(例えば0.1g/m以上1.5g/m以下))場合には、層厚を必要最小限の厚さ(例えば、1μm以上5μm以下)とし、また、画像濃度が高い(インク打ち込み量が多い(例えば4g/m以上15g/m以下))場合には、インク液体成分(溶媒や分散媒)を保持可能である充分な層厚(例えば10μm以上25μm以下)となるように制御することが望ましい。
【0120】
例えば、インク打ち込み量が少ない文字画像等の場合、中間転写体上の1層のインク受容性粒子層に対して像形成を行った場合、インク中の画像形成材(顔料)は中間転写体上のインク受容性粒子層表面に捕獲され、深さ方向に対して分布が少なくなるように、インク受容性粒子表面や内部の粒子空隙に固定される。
【0121】
例えば、最終的な画像となる画像層16Bの上に保護層となる粒子層16Cを設けたい場合は、インク受容性粒子層16Aを3層程度の厚みとし、最上層にインクで像形成を行えば((図7(A)参照)、像形成を行わない2層分の粒子層16Cが転写定着後には保護層となり画像層16Bの上に形成される(図7(B)参照)。
【0122】
あるいは2次色や3次色の画像等、インク打ち込み量が高い画像を形成する場合には、インク受容性粒子層を、インク液体成分(溶媒や分散媒)が保持可能で、記録材(例えば顔料)が捕獲され、最下層まで到達しない充分な粒子数となるようにインク受容性粒子16を積層させる。この場合、転写定着後の画像層表面に画像形成材(顔料)は露出せず、像形成を行わないインク受容性粒子16が画像表面に保護層として形成してもよい。
【0123】
次に、インクジェット記録ヘッド20がインク受容性粒子層16Aにインク滴20Aを付与する。インクジェット記録ヘッド20は所定の画像情報に基づき、所定の位置にインク滴20Aを付与する。
【0124】
最後に、転写定着装置22により記録媒体8と中間転写体12を挟み込んで、インク受容性粒子層16Aに圧力と熱を加える事で、記録媒体8上にインク受容性粒子層16Aが転写される。
【0125】
転写定着装置22は加熱源を内蔵する加熱ロール22Aと、中間転写体12を挟んで対向する加圧ロール22Bとから構成され、加熱ロール22A及び加圧ロール22Bは接して接触部を形成する。加熱ロール22A及び加圧ロール22Bには、アルミコアの外表面にシリコーンゴムを被覆し、更にその上をPFAチューブにて被覆された物を使用する。
【0126】
加熱ロール22Aと加圧ロール22Bの接触部において、ヒーターによりインク受容性粒子層16Aが加熱され、かつ圧力が加わる為、記録媒体8にインク受容性粒子層16Aが転写されると共に定着される。
【0127】
このとき、非画像部におけるインク受容性粒子16を構成する有機樹脂粒子がガラス転移温度Tg)以上に加熱されることにより軟化し(あるいは溶融され)、圧力により中間転写体12表面に形成された離形層14Aからインク受容性粒子層16Aが離形され、記録媒体8上に転写定着される。そして、圧力により中間転写体12表面に形成された離形層14Aからインク受容性粒子層16Aが離形され、記録媒体8上に転写される。この時、加熱によって転写定着性が向上する。本実施の形態では加熱ロール22Aの表面を160℃に制御している。この時、インク受容性粒子層16Aに保持されたインク液体成分(溶媒や分散媒)は、転写後もそのままインク受容性粒子層16A内に保持され、定着される。また転写定着装置22より前に、中間転写体12に予備加熱を行ってもよい。
【0128】
なお、記録媒体8としては、浸透媒体(例えば、普通紙や、インクジェットコート紙等)、非浸透媒体(例えば、アート紙、樹脂フィルムなど)、いずれも適用される。また、記録媒体は、これらに限られず、その他、半導体基板など工業製品も含まれる。
【0129】
以下、実施の形態に係る記録装置の画像形成のプロセスをより詳細に説明する。本実施の形態に係る記録装置では、図6に示すように、中間転写体12の表面には離形層供給装置14にて離形層14Aを形成する。中間転写体12の素材がアルミやPETベースであれば特に離形層14Aを形成することが望ましい。あるいはフッ素樹脂・シリコーンゴム系の素材を用いて、中間転写体12の表面自体に離形性を持たせるようにしてもよい。
【0130】
次に帯電装置28にて中間転写体12の表面をインク受容性粒子16と逆の極性に帯電させる。これにより、粒子供給装置18の供給ロール18Aにて供給されるインク受容性粒子16を静電的に吸着させ、中間転写体12の表面にインク受容性粒子16の層を形成する。
【0131】
次いで中間転写体12の表面に粒子供給装置18の供給ロール18Aにてインク受容性粒子16を層として形成する。例えば、形成されたインク受容性粒子層16Aはインク受容性粒子16が3層程度重なった厚みと成るように形成する。すなわち、上記のように帯電ブレード18Bと供給ロール18Aの空隙によってインク受容性粒子層16Aを所望の厚さに制御することで記録媒体8に転写されるインク受容性粒子層16Aの厚さを制御する。あるいは供給ロール18Aと中間転写体12の周速比によって制御してもよい。
【0132】
次に、形成されたインク受容性粒子層16A上に、圧電式(ピエゾ)、サーマル式などにより駆動される各色のインクジェット記録ヘッド20によってインク滴20Aが吐出され、インク受容性粒子層16Aに画像層16Bが形成される。インクジェット記録ヘッド20から吐出されたインク滴20Aは、インク受容性粒子層16Aに打ち込まれ、インクの液体成分はインク受容性粒子16間の空隙及びインク受容性粒子16を構成する空隙に速やかに吸収されるともに、記録材(例えば顔料)もインク受容性粒子16(構成する粒子)表面或いはインク受容性粒子16を構成する粒子間の空隙に捕獲される。
【0133】
このときインク滴20Aに含まれるインク液体成分(溶媒や分散媒)はインク受容性粒子層16Aに浸透するが、顔料等の記録材はインク受容性粒子層16Aの表面又は粒子間空隙に捕獲される。すなわち、インク液体成分(溶媒や分散媒)はインク受容性粒子層16Aの裏面まで浸透させてもよいが、顔料等の記録材はインク受容性粒子層16Aの裏面には浸透しない。これにより、記録媒体8に転写した際には顔料等の記録材が浸透していない粒子層16Cが画像層16Bの上に層を形成するため、この粒子層16Cが画像層16Bの表面を封じ込める保護層となり、表面に記録材(例えば顔料などの色材)が露出しない画像を形成する。
【0134】
次いで画像層16Bが形成されたインク受容性粒子層16Aを中間転写体12から記録媒体8上に転写/定着することにより、記録媒体8上にカラー画像が形成される。中間転写体12上のインク受容性粒子層16Aはヒーターなどの加熱手段にて加熱された転写定着装置(転写定着ロール)22によって、加熱・加圧され記録媒体8上に転写される。
【0135】
このとき後述のように加熱・加圧を調節することで画像表面の凸凹を調整し、光沢度を制御してもよい。また冷却剥離を行って光沢度を制御してもよい。
【0136】
インク受容性粒子層16Aが剥離した後の中間転写体12表面に残った残留粒子16Dはクリーニング装置24にて回収され(図5参照)、中間転写体12の表面は再度帯電装置28にて帯電され、インク受容性粒子16が供給されインク受容性粒子層16Aが形成される。
【0137】
ここで、図7には、本発明の実施の形態に係る画像形成に用いられる粒子層が示されている。図7(A)に示すように、中間転写体12の表面には離形層14Aが形成される。
【0138】
次いで中間転写体12の表面に粒子供給装置18にてインク受容性粒子16を層として形成する。前述のように形成されたインク受容性粒子層16Aはインク受容性粒子16が3層程度重なった厚みが望ましい。インク受容性粒子層16Aを所望の厚さに制御することで記録媒体8に転写されるインク受容性粒子層16Aの厚さを制御する。このときインク受容性粒子層16Aの表面はインク滴20Aの吐出による画像形成(画像層16Bの形成)に支障がない程度に均されている。
【0139】
また、吐出されたインク滴20Aに含まれる顔料等の記録材は図7(A)のようにインク受容性粒子層16Aの1/3以上半分以下程度まで浸透し、その下には顔料等の記録材の浸透していない粒子層16Cが残存している。
【0140】
転写定着装置(転写定着ロール)22による加熱・加圧転写で記録媒体8上に形成されたインク受容性粒子層16Aは図7(B)のように画像層16B上にインクを含まない粒子層16Cが存在するので、画像層16Bが直接表面に現れず一種の保護層としての働きをする。このため少なくとも定着後のインク受容性粒子16は透明である必要がある。
【0141】
粒子層16Cは転写定着装置(転写定着ロール)22によって加熱・加圧されるので表面を平らにすることが可能であり、画像表面の光沢度を加熱・加圧によって制御する。
【0142】
また加熱によってインク受容性粒子16内部に捕獲されていたインク液体成分(溶媒や分散媒)の乾燥を促進させるようにしてもよい。
【0143】
インク受容性粒子層16Aに受容/保持されたインク液体成分(溶媒や分散媒)は、転写定着後もインク受容性粒子層16A内に保持され、自然乾燥にて除去される。
【0144】
上記の工程を経て、画像形成が終了する。中間転写体12については、インク受容性粒子16を記録媒体8に転写した後、中間転写体12上に残留した残留粒子16Dや、記録媒体8から離脱した紙粉の如く異物が存在する場合には、クリーニング装置24により除去してもよい。
【0145】
また、クリーニング装置24の下流に、除電装置29を配置してもよい。例えば、除電装置29として導電性ロールを使用して、従動ロール31(接地)と挟み込んで、中間転写体12表面に±3kV、500Hz程度の電圧を印加して、中間転写体12表面を除電する。
【0146】
上記の帯電電圧や、粒子層厚、定着温度等、その他の各種装置的条件は、インク受容性粒子16あるいはインクの組成、インクの吐出量等によって最適条件が決定される為、それぞれにおいて最適化する。
【0147】
<各構成要素>
次に、実施の形態の各ステップの構成要素について詳しく説明する。
【0148】
<中間転写体>
インク受容性粒子層が形成される中間転写体12は実施の形態のようにベルト状でも、あるいは円筒状(ドラム状)でもよい。中間転写体表面にインク受容性粒子を静電力により供給保持する為には、中間転写体外周面が半導電性あるいは絶縁性の粒子保持特性を有する必要がある。中間転写体表面の電気的特性として、半導電性の場合は表面抵抗率が1010Ω/□以上1014Ω/□以下、体積抵抗率が10Ω・cm以上1013Ω・cm以下、絶縁性の場合には表面抵抗率が1014Ω/□以上、体積抵抗率が1013Ω・cm以上の部材を用いる。
【0149】
ベルト形状の場合、基材としては、装置内におけるベルト回転駆動が可能で、必要な機械強度を持ち、特に転写/定着時に熱を使用する場合には、必要な耐熱性を持つものであればよい。具体的には、ポリイミド、ポリアミドイミド、アラミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエーテルサルフォン、ステンレス等が使用される。
【0150】
ドラム形状の場合、基材としてはアルミやステンレス等が考えられる。
【0151】
なお、転写定着装置(転写定着ロール)22における定着工程において電磁誘導による加熱方式を発揮するためには、転写定着装置(転写定着ロール)22ではなく中間転写体12に発熱層を形成してもよい。発熱層には電磁誘導作用を生じる金属が用いられる。例えばニッケル、鉄、銅、アルミニウム、クロム等が選択可能である。
【0152】
<粒子供給プロセス>
まず、離型剤供給装置14により、インク受容性粒子16供給前に中間転写体12表面に離型剤14Dによる離形層14Aを形成する。
【0153】
離形層14Aの供給方法は、離型剤14Dを内蔵し離型剤供給部材に離型剤14Dを供給し、供給部材により中間転写体12表面に離型剤14Dを供給することで離形層14Aを形成する方法や、離型剤14Dを含浸した供給部材により中間転写体12表面に離形層14Aを形成する方法等が使用される。
【0154】
離型剤14Dとしてはシリコーン系オイル、フッ素系オイル、ポリアルキレングリコール、界面活性剤等の離型材料が挙げられる。
【0155】
シリコーン系オイルとしては、例えば、ストレートシリコーンオイル、変性シリコーンオイルが挙げられる。
ストレートシリコーンオイルとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。
変性シリコーンオイルとしては、例えばメチルスチリル変性オイル、アルキル変性オイル、高級脂肪酸エステル変性オイル、フッ素変性オイル、アミノ変性オイルが挙げられる。
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、ポリブチレングリコールが挙げられるが、これらの中もポリプロピレングリコールが望ましい。
界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が挙げられるが、これらの中でもノニオン性界面活性剤が望ましい。
【0156】
離型剤14Dの粘度は、例えば5mPa・s以上200mPa・s以下が望ましく、より望ましくは5mPa・s以上100mPa・s以下、さらに望ましくは5mPa・s以上50mPa・s以下である。
【0157】
なお、粘度の測定は次のようにして行われる。レオマット115(Contraves製)を測定装置として用いて、得られたインクの粘度を測定した。その測定は、試料を測定容器に入れ、所定の方法で装置に装着し、測定温度は40℃、せん断速度は1400s−1の条件で行った。
【0158】
離型剤14Dの表面張力は、例えば40mN/m以下(望ましくは30mN/m以下、より望ましくは25mN/m以下)の範囲が挙げられる。
【0159】
なお、表面張力の測定は次のようにして行われる。23±0.5℃、55±5%RHの環境において、ウイルヘルミー型表面張力計(協和界面科学株式会社製)を用いて、得られた試料の表面張力を測定した。
【0160】
離型剤14Dの沸点は、例えば760mmHg下で250℃以上(望ましくは300℃以上、より望ましくは350℃以上)の範囲が挙げられる。
【0161】
なお、沸点の測定は次のようにして行われる。JIS K2254に準じて測定を行い、その初留点を沸点として用いた。
【0162】
次に、帯電装置28にて中間転写体12の表面をインク受容性粒子16と逆の極性に帯電させる。そして、帯電された中間転写体12の表面にインク受容性粒子層16Aを形成する。このときインク受容性粒子層16Aを形成する方法は一般的な電子写真のトナーを感光体に供給する方法が応用される。すなわち、予め中間転写体12表面に一般的な電子写真の帯電方式(帯電装置28による帯電など)により、電荷を供給する。インク受容性粒子16は中間転写体12表面の電荷と逆極性に摩擦帯電(1成分摩擦帯電方式や、2成分方式)させる。
【0163】
供給ロール18Aに保持されたインク受容性粒子16は中間転写体12の表面と電界を形成し、静電力により中間転写体12上に移動/供給され、保持される。このとき、インク受容性粒子層16Aに形成される画像層16Bの厚みにより(打ち込まれるインク量に合わせて)、インク受容性粒子層16Aの厚さをコントロールしてもよい。この際、インク受容性粒子16の帯電量の絶対値としては、5μc/g以上50μc/g以下の範囲が望ましい。
【0164】
ここで、インク受容性粒子層16Aの厚さは、1μm以上100μm以下が望ましく、より望ましくは1μm以上50μm以下、さらに望ましくは5μm以上25μm以下である。また、インク受容性粒子層中の空隙率(即ち、インク受容性粒子間空隙率+インク受容性粒子内空隙率(トラップ構造))は、10%以上80%以下であることが望ましく、より望ましくは30%以上70%以下、さらに望ましくは40%以上60%以下である。
【0165】
以下、1成分供給(現像)方式相当の粒子供給プロセスについて説明する。
【0166】
供給ロール18Aにインク受容性粒子16を供給し、帯電ブレード18Bで粒子層の厚みを規制するとともに帯電する。
【0167】
帯電ブレード18Bは供給ロール18A表面におけるインク受容性粒子16の層厚を規制する働きを持ち、例えば、供給ロール18Aへの圧力を変化させて、供給ロール18A表面のインク受容性粒子16の層厚を変化させる。例えば、供給ロール18A表面上のインク受容性粒子16層厚を例えば1層とし、中間転写体12の表面上に形成されるインク受容性粒子16層厚を概1層に形成する。また、帯電ブレード18Bの押圧力を低く制御し、供給ロール18A表面上に形成されるインク受容性粒子16層厚を増加させ、中間転写体12表面上に形成されるインク受容性粒子層厚を増加させてもよい。
【0168】
他の方法として、中間転写体12表面上に例えば1層の粒子層を形成する供給ロール18Aと中間転写体12の周速を1とした場合、供給ロール18Aの周速を速くして中間転写体12上に供給されるインク受容性粒子16の数を増加させ、中間転写体12上のインク受容性粒子層厚を増加させるよう制御してもよい。また上記方法を組み合わせて制御することも可能である。上記構成では例えばインク受容性粒子16を負に帯電し、中間転写体12の表面を正に帯電させている。
【0169】
このようにインク受容性粒子層の層厚を制御することにより、インク受容性粒子層の消費量を抑えつつ、表面が保護層で覆われたパターンを形成する。
【0170】
帯電装置28における帯電ロールとしてはアルミニウム、ステンレススチール等を材料とする棒状又はパイプ状部材の外周面に導電性付与材を分散させた弾性層を形成し、体積抵抗率10Ω・cm以上10Ω・cm以下程度に調整したφ10mm以上25mm以下のロールなどが使用される。
【0171】
弾性層は、ウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマー、エピクロルヒドリンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、シリコーン系ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、ポリノルボーネンゴム等の樹脂材料が単独又は二種以上の混合物として使用され、望ましい材料としては発泡ウレタン樹脂がある。
【0172】
上記発泡ウレタン樹脂としては、ウレタン系樹脂に中空ガラスビーズや熱膨張型マイクロカプセル等の中空体を混合分散して独立気泡構造を付与したものが望ましい。
【0173】
さらに、弾性層の表面を厚さ5μm以上100μm以下の撥水性の被覆層で被覆してもよい。
【0174】
帯電装置28にはDC電源が接続され、従動ロール31はフレームグランドに電気的に接続されている。帯電装置28は、従動ロール31との間で中間転写体12を挟みつつ従動し、押圧位置では、接地された従動ロール31との間に所定の電位差が生じる。
【0175】
<マーキングプロセス>
中間転写体12の表面に形成されたインク受容性粒子16の層(インク受容性粒子層16A)に、画像信号に基づいてインクジェット記録ヘッド20からインク滴20Aが吐出され、画像が形成される。インクジェット記録ヘッド20から吐出されたインク滴20Aは、インク受容性粒子層16Aに打ち込まれ、インク滴20Aはインク受容性粒子16内に形成された粒子間空隙により速やかに吸収され、記録材(例えば、顔料)はインク受容性粒子16表面又はインク受容性粒子16を構成する粒子間空隙に捕獲(トラップ)される。
【0176】
この場合、インク受容性粒子層16Aの表面に多くの記録材(例えば顔料)を捕獲(トラップ)することが望ましい。インク受容性粒子16内の粒子間空隙がフィルターの効果を発揮し、インク受容性粒子層16A表面に記録材(例えば顔料)をトラップすると共に、インク受容性粒子16内の粒子間空隙に捕獲(トラップ)され固定されることにより発現される。
【0177】
インク受容性粒子層16Aの表面及びインク受容性粒子16内の粒子間空隙に記録材(例えば顔料)を確実にトラップさせるために、インクとインク受容性粒子16を反応させることにより、記録材(例えば顔料)を速やかに不溶化(凝集)させる方法を採用してもよい。具体的には、上記反応はインクと多価金属塩との反応や、pH反応型を応用することが可能である。
【0178】
また、記録媒体の幅と同等又はそれ以上の幅を持つライン型インクジェット記録ヘッドが望ましいが、従来のスキャン型のインクジェット記録ヘッドを用いて、中間転写体上に形成された粒子層に順次画像を形成してもよい。インクジェット記録ヘッド20のインク吐出手段は、圧電素子駆動型、発熱素子駆動型等、インク吐出可能な手段であれば制限はない。インク自体も従来の染料を色材としたインクを用いられるが、顔料インクが望ましい。
【0179】
インク受容性粒子16をインクと反応させる場合は、インク受容性粒子16をインクと反応して顔料を凝集させる効果を与える凝集剤(例えば多価金属塩、有機酸)を含む水溶液にて処理を行い、乾燥させたものを使用する。
【0180】
<転写プロセス>
インク滴20Aを受容し、画像が形成されたインク受容性粒子層16Aは、記録媒体8に転写及び定着される事により、記録媒体8上に画像を形成する。上記転写と定着は別のプロセスにて行われてもよいが、望ましくは転写と定着を実質的に同時に行う方式がよい。定着はインク受容性粒子層16Aを加熱あるいは加圧することのいずれかの方法、あるいは加熱と加圧の両方を用いる方法等あるが、望ましくは加熱/加圧を実質的に同時に行う方式がよい。
【0181】
また、加熱/加圧を制御することで、インク受容性粒子層16Aの表面物性を制御し、グロス(光沢度)を制御することが可能である。また加熱/加圧した後、画像(インク受容性粒子層16A)が転写された記録媒体8を中間転写体12から剥離するときに、インク受容性粒子層16Aが冷却された後に剥離されてもよい。冷却方法は、自然冷却や空冷等の強制冷却などが考えられる。これらのプロセスに対しては、中間転写体12としてはベルト形状が望ましい。
【0182】
インク画像は中間転写体12上に形成されたインク受容性粒子16層の表層部に形成され(記録材(顔料)がインク受容性粒子層16Aの表面にトラップされる)、記録媒体8に転写される事により、インク画像がインク受容性粒子16の粒子層16Cにより保護されるように形成されることがよい。
【0183】
インク受容性粒子16層に受容/保持されたインク液体成分(溶媒や分散媒)は、転写定着後もインク受容性粒子16層内に保持され、自然乾燥にて除去される。
【0184】
<クリーニングプロセス>
中間転写体12表面をリフレッシュして繰返し使用を可能にするために表面をクリーニング装置24でクリーニングする工程が必要である。クリーニング装置24はクリーニング部と粒子搬送回収部(図示せず)から成り立っており、上記クリーニングにより、中間転写体12表面に残留しているインク受容性粒子16(残留粒子16D)の除去、粒子以外の異物(記録媒体8の紙粉等)といった中間転写体12の表面に付着した付着物の除去を行う。また、回収した残留粒子16Dは再利用してもよい。
【0185】
<除電プロセス>
離形層14Aを形成する前に除電装置29を用いて中間転写体12の表面を除電するようにしてもよい。
【0186】
以上説明した実施の形態に係る記録装置では、中間転写体12表面に離型剤供給装置14により離型剤14Dを供給して離型層14Aを形成した後、帯電装置28により中間転写体表面を帯電させる。次に、中間転写体12の離型層が形成及び帯電された領域に粒子供給装置18よりインク受容性粒子16を供給させ粒子層を形成する。そして、インクジェット記録ヘッド20により粒子層上にインク滴を吐出し画像を形成する。これによりインク受容性粒子16にインクを受容させる。次に、記録媒体8を中間転写体12と重ね合わせ、転写定着装置22により圧力及び熱を加えることにより記録媒体8上にインク受容性粒子層を転写及び定着する。
【0187】
なお、記録装置は、中間転写方式の形態に限定されるものではなく、次で説明するインク受容性粒子を直接記録媒体上に供給する他の形態であってもよい。
【0188】
図8は、他の実施の形態に係る記録装置を示す構成図である。図9は、他の実施の形態に係る記録装置の主要部を示す構成図である。なお、以下の他の実施の形態でも、後述するインク受容性粒子として複合体粒子を適用した場合を説明している。
【0189】
他の実施の形態に係る記録装置11は、図8及び図9に示すように、無端ベルト状の搬送ベルト13を備えている。搬送ベルト13は回転移動し、収容容器(図示略)などから送られてきた記録媒体8を搬送する。
【0190】
まず、搬送ベルト13によって搬送されている記録媒体8に、イオン流制御静電記録ヘッド100(以降、「静電記録ヘッド100」と略して記す)が、放電によるイオン流を制御して記録媒体8上に照射することによって静電潜像を形成する。(図10(A)参照)。
【0191】
記録媒体8に形成された静電潜像をインク受容性粒子供給装置18が顕像化し、インク受容性粒子16からなるインク受容性粒子層16Aを形成する。(図10(B)参照)。
【0192】
記録媒体8に形成されたインク受容性粒子層16Aを、予備定着装置150が予備加熱定着する。
【0193】
予備加熱定着されたインク受容性粒子層16Aに、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色毎のインクジェット記録ヘッド20K、20C、20M、20Yから、画像データに基づき、各色のインク滴20A(図9参照)が吐出されインク画像が形成される。(図10(C)参照)。なお、以降、各色を区別する必要があるときは、符号の後にY,M,C,Kを付すが、特に、区別する必要がない場合は、Y,M,C,Kを省略する。
【0194】
インク滴20Aの吐出によってインク画像が形成されたインク受容性粒子層16Aは、定着装置23が圧力及び熱を加えることにより記録媒体8上に定着する。
【0195】
なお、静電記録ヘッド100及びインクジェット記録ヘッド20は、記録媒体8の幅以上あるライン型記録ヘッド、所謂FWA(Full Width Array)方式の記録ヘッドである。
【0196】
次に、各構成要素と画像形成のプロセスについての詳細を説明する。
【0197】
無端ベルト状の搬送ベルト13で、記録媒体8を搬送している。本実施の形態では、搬送ベルト13に記録媒体8を吸着した状態で搬送している。
【0198】
ここで、搬送ベルト13に記録媒体8を吸着させる方法の一例としては、例えば、搬送ベルト13に孔(図示せず)を設け、この孔から吸引して吸着させる吸引機構が挙げられる。その他、記録媒体8を搬送ベルト13に吸着させる方法は、例えば、粘着力で吸着させる方式であってもよく、搬送ベルト13に記録媒体8を静電吸着させる方式であってもよい。
【0199】
そして、搬送方向の上流側には、搬送ベルト13に搬送されている記録媒体8に静電潜像を形成する静電記録ヘッド100が、記録媒体8の上方に間隔を持って配置されている。
【0200】
静電記録ヘッド100は、平面矩形状の絶縁基板102の表面に、複数の駆動電極104が互いに平行に設けられていると共に、その裏面にこれらの駆動電極104と交差するようにして複数の制御電極106が設けられている。なお、駆動電極104と制御電極106とでマトリックス(格子)が形成されている。また、制御電極106には、駆動電極104と交差する位置に円形の開口部106Aが形成されている。そして、制御電極106の下面には、絶縁基板101を介してスクリーン電極108が設けられている。これらの絶縁基板101及びスクリーン電極108には、制御電極106の開口部106Aと対応した位置に、空間111とイオン導出用開口部110が形成されている。
【0201】
交流電源112によって駆動電極104とスクリーン電極108との間に高周波高電圧が印加されるようになっている。一方、制御電極106にはイオン制御電源114により画像情報に応じたパルス電圧印加されるようになっている。更に、スクリーン電極108には直流電源116により直流電圧が、印加されるようになっている。
【0202】
そして、このように絶縁された駆動電極104と制御電極106との間に交番電界を与えることにより、空間111において沿面コロナ放電を誘発させ、この沿面コロナ放電によって発生したイオンを、制御電極106とスクリーン電極108との間に形成される電界によって加速もしくは吸収して、イオン導出用開口部110からのイオン流の放出を制御し、画像信号(インク画像)に応じたイオン(本実施の形態ではプラスイオン)により、記録媒体8の表面に静電潜像(図10(A)参照)の形成を行うようになっている。
【0203】
静電潜像の電位は、次工程で、インク受容性粒子供給装置18の粒子供給ロール18Aと記録媒体8に形成された静電潜像とで形成する電界による静電力により、インク受容性粒子16が記録媒体8に供給/吸着可能な電位であれば良い。
【0204】
なお、この静電記録ヘッド100は、静電潜像を形成する領域を選択し得る。よって、記録媒体8の表面に形成する静電潜像は、インク画像が形成される領域としている。例えば、形成画像が文字「あ」の場合は、図10(A)に概念的に示すようになる。
【0205】
表面に静電潜像が形成されている記録媒体8は、インク受容性粒子供給装置18に送られ、静電潜像を顕像化し、静電潜像に対応したインク受容性粒子層16Aを形成する。(図10(B)参照)。これにより、画像信号に基づいて形成される、インク画像の領域にのみに記録媒体8上にインク受容性粒子層16Aが形成される(非画像部領域には殆どインク受容性粒子層16Aが形成されない)。
【0206】
次に、画像形成のプロセスについての説明に戻る。
【0207】
図10(A)に示すように、つぎに、記録媒体8に形成されたインク受容性粒子層16Aを予備定着装置150によって、予備定着する。
【0208】
記録媒体8上に形成されたインク受容性粒子層16Aは静電力で、記録媒体8上に固定されている。よって、このまま次工程でインクジェット記録ヘッド20からインク滴20Aをインク受容性粒子層16Aに打ち込むと、インク量によっては、インク受容性粒子層16Aが乱れる場合がある。このため、事前にインク受容性粒子層16Aを予備定着することで、インク受容性粒子16を記録媒体8の表面に仮固定しておく。
【0209】
なお、予備定着によって、インク滴20Aの打ち込みによってインク受容性粒子16が飛散し、インクジェット記録ヘッド20のノズル面20Bが汚染することも防止される。
【0210】
予備定着装置150での予備加熱は、最終的な定着装置23における定着用の加熱よりも低温である。すなわち、予備定着装置150での予備定着は、インク受容性粒子16中の樹脂粒子を完全に溶融させて圧力により定着するのではなく、粒子間の空隙を残して、粒子間及び粒子と記録媒体表面とを結着させる程度でよい。このことにより、インク滴20Aが受容可能な程度に予備定着される。
【0211】
また、予備定着装置150は、電子写真方式の画像形成装置に用いる一般的な加熱定着器(フューザー)を応用することが可能である。更に、電子写真方式の画像形成装置に用いる加熱定着器の他に、ヒーター加熱方法、オーブン方式、電磁誘導加熱方式等も使用され得る。
【0212】
次に、インク受容性粒子層16Aが予備定着された記録媒体8は、インクジェット記録ヘッド20の下方に搬送される。
【0213】
そして、画像データに基づき、インクジェット記録ヘッド20からインク滴20Aが吐出され、記録媒体8の表面に形成されたインク受容性粒子層16Aに打ち込まれ、インク画像が形成される。(図10(C))。この際、インクは、インク受容性粒子16により受容される。
【0214】
なお、高速で画像を書き込むためには、本実施の形態の如く記録媒体幅以上あるライン型インクジェット記録ヘッドが望ましいが、スキャン型のインクジェット記録ヘッドを用いて、順次画像を形成しても良い。また、インクジェット記録ヘッド20のインク吐出手段は、圧電素子駆動型、発熱素子駆動型等、インク吐出可能な手段であれば制限はない。
【0215】
次に、記録媒体8は、搬送ベルト13から剥離し、定着装置23に送られ、インク受容性粒子層16Aに、圧力と熱を加えることで、記録媒体8上にインク受容性粒子層16Aが定着する。
【0216】
定着装置23は加熱源を内蔵する加熱ロール23Aと対向する加圧ロール23Bとから構成され、加熱ロール23A及び加圧ロール23Bは接して接触部を形成する。加熱ロール23A及び加圧ロール23Bには、例えば、アルミコアの外表面にシリコーンゴムを被覆し、更にその上をPFAチューブにて被覆されたものを使用している。なお、電子写真方式の画像形成装置に用いる定着装置(フューザー)と同様の構成である。更に、上記電子写真方式の画像形成装置に用いる加熱定着器の他に、ヒーター加熱方法、オーブン方式、電磁誘導加熱方式等も使用され得る。
【0217】
記録媒体8が加熱ロール23Aと加圧ロール23Bとの接触部を通過する際に、インク受容性粒子層16Aが加熱され、かつ圧力が加わり、記録媒体8にインク受容性粒子層16Aが定着する。なお、加熱と加圧の両方を用いる方法でなく、加熱のみ、又は加圧のみを用いる方法であっても良い。しかし、望ましくは加熱と加圧とを同時に行う方式が良い。
【0218】
以上の工程を経て、画像形成が終了し、記録媒体8は装置外に排出される。
【0219】
以上説明した他の実施の形態に係る記録装置11では、搬送ベルト13により記録媒体8を搬送しつつ、静電記録ヘッド100により静電潜像を形成し、当該静電潜像に粒子供給装置18よりインク受容性粒子16を供給させ粒子層を形成する。そして、インクジェット記録ヘッド20により粒子層上にインク滴を吐出し画像を形成する。これによりインク受容性粒子16にインクを受容させる。次に、記録媒体8を搬送ベルト13から剥離させた後、定着装置23により圧力及び熱を加えることにより記録媒体8上にインク受容性粒子層が定着される。なお、上記説明した以外は、上記実施の形態に係る記録装置と同様であるため、説明を省略する。
【0220】
以上、実施の形態においては、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のインクジェット記録ヘッド20から画像データに基づいて選択的にインク滴20Aが吐出されてフルカラーの画像が記録媒体8に記録されるようになっているが、本発明の実施の形態は記録媒体上への文字や画像の記録に限定されるものではない。すなわち、工業的に用いられる液滴吐出(噴射)装置全般に対して、本発明の実施の形態に係る液滴吐出装置が適用される。
【実施例】
【0221】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0222】
[実施例A]
親水性樹脂として、スチレン/n−ブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(重量平均分子量Mw=40000、カルボン酸基を持つ単量体比率=40mol%)を準備した。
【0223】
上記親水性樹脂10質量部を、イソプロピルアルコール(IPA)20質量部とチルエチルケトン(MEK)5質量部との混合溶媒(溶解溶媒)を加えて溶解し後、pHが6.7になるまで中和剤として10質量%水酸化ナトリウム水溶液(NaOH aq.)を加えて、樹脂溶液を調製した。
【0224】
得られた樹脂溶液を50℃に保温しつつ水を加えて、超音波ホモジナイザーにて乳化処理した後、室温(25℃)まで自然冷却して、樹脂固形分濃度10質量%のエマルジョン液を得た。
【0225】
その後、得られたエマルジョン液をスプレードライヤー装置(製品名BUCHI社製、ミニスプレードライヤーB290型、噴霧乾燥条件:使用スプレーガン口径が1.5mm、入口温度が125℃、アスピレーター設定が100%、ポンプ設定が25%、出口温度が60℃)にて噴霧乾燥を行い、インク受容性粒子を得た。
【0226】
[実施例B〜G]
表1に従って、用いる材料種や操作を変更した以外は、実施例Aと同様にしてインク受容性粒子を得た。
但し、実施例D、E、Gについては、エマルジョン液を凍結乾燥(フリーズドライ)を施し、得られた固形物を粉砕/分級して、インク受容性粒子を得た。
【0227】
[比較例A]
まず、実施例Aと同様の親水性樹脂を準備した。上記親水性樹脂10質量部を、イソプロピルアルコール(IPA)20質量部とチルエチルケトン(MEK)5質量部との混合溶媒(溶解溶媒)を加えて溶解し後、70℃に保温しつつ水を加えて、超音波ホモジナイザーにて乳化処理して、樹脂固形分濃度10質量%のエマルジョン液を得た。
【0228】
得られたエマルジョン液を50℃に保温しつつ、pH7.1になるまで中和剤として10質量%水酸化ナトリウム水溶液(NaOH aq.)を加えて、超音波ホモジナイザーにて乳化処理を続けた後、室温(25℃)まで自然冷却して、エマルジョン液を得た。
【0229】
その後、得られたエマルジョン液をスプレードライヤー装置(製品名BUCHI社製、ミニスプレードライヤーB290型、噴霧乾燥条件:使用スプレーガン口径が1.5mm、入口温度が125℃、アスピレーター設定が100%、ポンプ設定が25%、出口温度が60℃)にて噴霧乾燥を行い、インク受容性粒子を得た。
【0230】
[比較例B]
まず、実施例Aと同様の親水性樹脂を準備した。上記親水性樹脂10質量部を、70℃に保温しつつ水90質量部に加えて、pH13.0になるまで中和剤として10質量%水酸化ナトリウム水溶液(NaOH aq.)を加えて、超音波ホモジナイザーにて攪拌した後、室温(25℃)まで自然冷却して、樹脂溶液(樹脂固形分濃度約10質量%)を得た。
【0231】
その後、得られたエマルジョン液をスプレードライヤー装置(製品名BUCHI社製、ミニスプレードライヤーB290型、噴霧乾燥条件:使用スプレーガン口径が1.5mm、入口温度が125℃、アスピレーター設定が100%、ポンプ設定が25%、出口温度が60℃、)にて噴霧乾燥を行い、インク受容性粒子を得た。
【0232】
[評価]
表1乃至表2に従って上記各粒子(インク受容性粒子)、及び下記インクを用いて以下の評価を行った。結果を表1乃至表2に示す。
【0233】
(インクの調製)
下記インク成分を混合し、攪拌した後、ポアサイズ5μmのメンブレンフィルターを用いて濾過することによりインクを調製した。
・C.I.Pigment Blue 15:3:7質量%
・スチレン−アクリル酸共重合体:2.5質量%
・グリセリン:10質量%
・プロピレングリコール:10質量%
・1,2−ヘキサンジオール:5質量%
・オルフィンE1010 (日信化学社製):1.5質量%
・NaOH:適量
・水:残部
得られたインクのpHが8.5となるように水酸化ナトリウム水溶液で調整した。インクの表面張力31mN/mであった。
【0234】
(評価)
−粒子性状−
各粒子につき、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)により、球換算平均粒径を測定すると共に、SEM(走査型電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope;倍率5000倍)によりを形状観察を行った。また、粒子形状が複合体粒子の場合、これを構成する一次粒子の球換算平均粒径は、SEM観察画像から無作為に一次粒子を100個選択し、その平均値とした。
【0235】
−粒子の溶解/不溶の判定、及び官能基量−
官能基量を、上記にしたがって測定した。その際、粒子の溶解/不溶の判定も行った。各粒子0.5gに対して、イソプロピルアルコール(IPA)と水との混合溶媒(混合比:65/35から45/55の範囲)100gを添加、25℃にてスターラーにて10分間撹拌処理を行った後に静置、残渣物の有無を目視にて行い、液色が無色透明かつ残渣物が見られない場合を溶解、液が白色に濁ったり残渣物が見られた場合を不溶と判断した。
但し、用いたIPA/水混合溶液は、各粒子につき以下の質量比のものを用いた。
・実施例A:IPA/水=50/50(SP値20.7)
・実施例B:IPA/水=60/40(SP値19.7)
・実施例C:IPA/水=65/35(SP値19.2)
・実施例D:IPA/水=45/55(SP値21.1)
・実施例E:IPA/水=50/50(SP値20.7)
・実施例F:IPA/水=50/50(SP値20.7)
・実施例G:IPA/水=50/50(SP値20.7)
【0236】
比較例A、Bは、いずれも混合比:65/35から45/55の範囲のIPA/水混合溶液には残渣物が見られ、不溶と判断した。
溶解分の官能基量を測定するために用いたIPA/水混合溶液は、下記の通りである。
・比較例A:IPA/水=45/55(SP値21.1)
・比較例B:IPA/水=65/35(SP値19.2)
なお、粒子形状が複合体粒子の場合、これを構成する一次粒子について官能基量を測定した。
【0237】
−吸液量−
粒子をケーキプリンターを用いて中間媒体(PETフィルム)上に粒子を散布(粒子散布量:5〜12g/m)し、ピエゾ型インクジェット装置を用い、この粒子を散布した中間媒体上にインクを付与(4.5g/m)してベタ画像(1200dpi×1200dpi(dpi:1インチ当たりのドット数))の画像面積率で、100%カバレッジパターン)を形成して、0.3秒後に画像部分にローラー(金属製の円筒状芯金の表面に弾性層がシリコーンゴムを弾性層)を2×10Paの荷重で押し当てた際のローラー側へのインクの転写量を測定した。評価基準は以下の通りである。
◎:拡大画像において印字移りが全く発生していない
○:拡大画像印字移りが生じているが、目視で判別不能であり、許容範囲のもの
△:目視により、全体的に印字移りを判別可能であるが、許容範囲のもの
×:印字移りを目視で判別可能であり、許容範囲外のもの
【0238】
−画像ベタつき−
粒子を上記同様に、中間媒体(PETフィルム)上に粒子を散布(粒子散布量:5〜12g/m)した後、ピエゾ型インクジェット装置を用い、この粒子を散布した中間媒体上にインクを付与(4.5g/m)してベタ画像(1200dpi×1200dpi(dpi:1インチ当たりのドット数))の画像面積率で、100%カバレッジパターン)を形成、アート紙を圧接した後、加熱/転写処理を行い画像を得た。この画像を30℃,80%RH環境下に保管し、1週間保管した後、指で触って画像のベタつきを評価した。評価基準は以下の通りである。
○:指で押しても全くベタつかず、画像にも乱れは発生しない。
△:指で押すと、ややベタつき感があるが、画像に乱れは発生しない。
×:指で押すと、ベタつき感があり、画像が指に付着して乱れるが生じる。
【0239】
−画像耐水性−
粒子を上記同様に、中間媒体(PETフィルム)上に粒子を散布(粒子散布量:5〜12g/m)した後、ピエゾ型インクジェット装置を用い、この粒子を散布した中間媒体上にインクを付与(4.5g/m)して、1dotラインの線画像(1200dpi×1200dpi(dpi:1インチ当たりのドット数))の画像面積率で、100%カバレッジパターン)を形成、アート紙を圧接した後、加熱/転写処理を行い画像を得た。この線画像に対して、水をスポイトにて滴下(20g/m)して、1時間後の線画像を観察した。
◎:目視及び拡大画像(25倍)の双方について、画像の乱れが見られない。
○:拡大画像(25倍)では、画像の乱れが見られるが、目視では判別不可能
△:拡大画像(25倍)では、画像の乱れが見られ、目視でも一部判別が可能
×:目視及び拡大画像(25倍)の双方について、画像の乱れが見られる。
【0240】
【表1】

【0241】
【表2】

【0242】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、吸液量、画像保存(耐水性及び画像ベタつき)性が共に優れ、その両立が実現されていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0243】
【図1】実施形態に係るインク受容性粒子の一例を示す概念図である。
【図2】実施形態に係るインク受容性粒子の他の一例を示す概念図である。
【図3】実施形態に係るインク受容性粒子収納カートリッジを示す斜視図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
【図6】実施形態に係る記録装置の主要部を示す構成図である。
【図7】実施形態に係るインク受容性粒子層を示す構成図である。
【図8】他の実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
【図9】他の実施形態に係る記録装置の主要部を示す構成図である。
【図10】他の実施形態に係る記録装置において、画像が形成される工程を概念的に示す図である。
【符号の説明】
【0244】
10 記録装置
11 記録装置
12 中間転写体
13 搬送ベルト
14 離型剤供給装置
14A 離型層
14B ブレード
14C 供給ローラ
14D 離型剤
16 インク受容性粒子
16A インク受容性粒子層
16B 画像層
16D 残留粒子
18 インク受容性粒子供給装置
18A 粒子供給ロール
18B 帯電ブレード
19 インク受容性粒子収納カートリッジ
19A 供給管
20 インクジェット記録ヘッド
20A インク滴
20B ノズル面
22 転写定着装置
22A 加熱ロール
22B 加圧ロール
23 定着装置
23A 加熱ロール
23B 加圧ロール
24 クリーニング装置
28 帯電装置
29 除電装置
31 従動ロール
50 インク受容性粒子収納カートリッジ
51 粒子収納カートリッジ本体
52 側壁部
54 側壁部
56 帯部
58 格納部
60 搬出口
64 カップリング部
66 連結部
68 アジテーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性官能基の少なくとも1種を持つ親水性樹脂を含んで構成され、粒子1g当たりの前記酸性官能基の量が1.4×10−3mol/g以上4.0×10−3mol/g以下であり、且つ粒子が予め定められた範囲の比率で混合されたイソプロピルアルコールと水の混合溶媒に溶解する親水性粒子を有するインク受容性粒子。
【請求項2】
前記親水性粒子が少なくとも集合した複合体粒子を有することを特徴とする請求項1に記載のインク受容性粒子。
【請求項3】
中間転写体と、
請求項1又は2に記載のインク受容性粒子を前記中間転写体上に供給する供給手段と、
前記中間転写体上に供給された前記インク受容性粒子にインクを吐出するインク吐出手段と、
前記インク受容性粒子を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された前記インク受容性粒子を定着する定着手段と、
を有する記録装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のインク受容性粒子を記録媒体上に供給する供給手段と、
前記記録媒体上に供給された前記インク受容性粒子にインクを吐出するインク吐出手段と、
前記記録媒体上に供給された前記インク受容性粒子を定着する定着手段と、
を有する記録装置。
【請求項5】
インクと、請求項1又は2に記載のインク受容性粒子と、を備える記録用の材料。
【請求項6】
記録装置に脱着され、請求項1又は2に記載のインク受容性粒子を収納するインク受容性粒子収納カートリッジ。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−76214(P2010−76214A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246212(P2008−246212)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】