説明

インク組成物およびその製造方法、インクセット、ならびに画像形成方法

【課題】吐出性と硬化感度に優れるインク組成物を提供する。
【解決手段】インク組成物を、水不溶性重合開始剤および水溶性ポリマーを含むとともに体積平均粒子径が500nm以下である開始剤粒子と、水溶性重合性化合物と、顔料と、水と、を含んで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物およびその製造方法、インクセット、ならびに画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー画像を記録する画像記録の方法として、インクジェット技術が知られている。インクジェット技術は、オフィスプリンタ、ホームプリンタ等の分野に適用されてきたが、近年では商業印刷分野での応用がなされつつある。
【0003】
インクジェットに用いられるインク材料の含有成分の1つには、顔料が広く用いられている。顔料を用いる場合、形成された画像の耐水性、耐光性や、吐出ヘッドからの吐出性などが重要であり、これらを向上させる技術の検討が種々行われている。形成された画像の耐水性、耐光性を高める発明として、例えば、特許特定構造の重合性モノマーを含む活性エネルギー線硬化型水性インクが開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−219158号
【特許文献2】特開2000−336295号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術では、吐出ヘッドからの吐出性が不十分である場合があり、まだ改良の余地がある。また、硬化感度に対しても更なる改良が求められている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、吐出性と硬化感度に優れるインク組成物およびその製造方法、インクセット、ならびに画像形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、水不溶性開始剤が粒径500nm以下の開始剤粒子としてインク組成物に導入されることにより、吐出性、および硬化感度を向上させることができることを新たに見出し、本発明に至った。
すなわち、前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 水不溶性重合開始剤および水溶性ポリマーを含むとともに体積平均粒子径が500nm以下である開始剤粒子と、水溶性重合性化合物と、顔料と、水と、含むインク組成物。
<2> 前記水溶性ポリマーは、ノニオン性の水溶性ポリマーである前記<1>に記載のインク組成物。
<3> 前記ノニオン性の水溶性ポリマーは、ポリオキシエチレン構造およびポリオキシプロピレン構造を有するブロック共重合体である前記<2>に記載のインク組成物。
<4> 前記開始剤粒子は、前記水不溶性重合開始剤を含む有機溶剤溶液と、前記水溶性ポリマーを含む水溶液とを混合して得られる、前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のインク組成物。
<5> 前記顔料は、その表面の少なくとも一部が水不溶性ポリマーで被覆されている水分散性顔料である前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0008】
<6> 前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のインク組成物と、該インク組成物と接触して凝集体を形成可能な処理液と、を含むインクセット。
<7> 前記処理液は、酸性化合物、多価金属塩、およびカチオン性ポリマーから選ばれる少なくとも1種を含む前記<6>に記載のインクセット。
【0009】
<8> 前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のインク組成物をインクジェット法により記録媒体上に付与して画像を形成するインク付与工程と、前記インク組成物と接触して凝集体を形成可能な処理液を、記録媒体上に付与する処理液付与工程と、を有する画像形成方法。
<9> 前記記録媒体上に付与されたインク組成物に活性エネルギー線を照射する重合工程をさらに有する前記<8>に記載の画像形成方法。
<10> 前記記録媒体が塗工紙である前記<8>または<9>に記載の画像形成方法。
<11> 前記インク付与工程は、前記処理液付与工程によって処理液が付与された記録媒体上に、前記インク組成物を付与する前記<8>〜<10>のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0010】
<12> 水不溶性重合開始剤を含む有機溶剤溶液および水溶性ポリマーを含む水溶液を、混合して、水不溶性重合開始剤および水溶性ポリマーを含むとともに体積平均粒子径が500nm以下である開始剤粒子を得る工程と、前記開始剤粒子、水溶性重合性化合物、顔料、および水を混合してインク組成物を得る工程と、を有するインク組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吐出性と硬化感度に優れるインク組成物およびその製造方法、インクセット、ならびに画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の画像形成方法の実施に用いるインクジェット記録装置の構成例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<インク組成物>
本発明のインク組成物は、水不溶性重合開始剤および水溶性ポリマーを含むとともに体積平均粒子径が500nm以下である開始剤粒子の少なくとも1種と、水溶性重合性化合物の少なくとも1種と、顔料の少なくとも1種と、水と、含み、必要に応じてその他の成分を含んで構成される。
水不溶性の重合性開始剤が、体積平均粒子径500nm以下の開始剤粒子として含まれていることにより、吐出性に優れ、また高い硬化感度を達成することができる。
【0014】
[開始剤粒子]
本発明のインク組成物は、水不溶性重合開始剤の少なくとも1種および水溶性ポリマーの少なくとも1種を含み、体積平均粒子径が500nm以下である開始剤粒子を少なくとも1種含有する。
前記開始剤粒子は体積平均粒子径が500nm以下である。開始剤粒子の体積平均粒子径が500nmを超えると、吐出性が低下したり、硬化感度が低下したりする。本発明においては、吐出性、硬化感度に加えて、インク安定性の観点から、10〜500nmであることが好ましく、10〜400nmであることがより好ましく、10〜300nmであることがさらに好ましい。
【0015】
本発明において、開始剤粒子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ開始剤粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
尚、開始剤粒子の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められるものである。
【0016】
(水不溶性重合開始剤)
前記開始剤粒子は、水不溶性重合開始剤の少なくとも1種を含む。本発明における重合開始剤は、水不溶性であれば特に制限はなく、公知の重合開始剤を使用することができる。中でも、硬化感度の観点から、ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
尚、本発明において「水不溶性」とは、25℃における100gの純水に対する溶解度が、3g以下であることを意味し、1g以下であることが好ましい。
【0017】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びに(m)アルキルアミン化合物等が挙げられる。
開始剤の具体例としては、例えば、加藤清視著「紫外線硬化システム」(株式会社総合技術センター発行:平成元年)の第65〜148頁に記載されている重合開始剤などを挙げることができる。
【0018】
重合開始剤として具体的には、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ジクロロベンゾフェン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン(DETX)、2−イソプロピルチオキサントン(ITX)、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(IRGACURE 651)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE 184)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(IRGACURE 2959)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン-1−オン(DAROCUR 1173)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(IRGACURE 127)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン(IRGACURE 907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1(IRGACURE 369)、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(IRGACURE 379)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド(DAROCUR TPO)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(IRGACURE 819)、メチルベンゾイルフォーメートが挙げられる。尚、「IRGACURE」、「DAROCUR」はチバ・ジャパン社の登録商標である。
更に、例えばトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等の、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物等が挙げられる。
本発明において水不溶性重合開始剤は1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明における水不溶性重合開始剤としては、吐出性と硬化感度の観点から、(a)芳香族ケトン類(例えば、ベンゾフェノン、2,4−ジエチルチオキサントン(DETX)、2−イソプロピルチオキサントン(ITX)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE 184)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(IRGACURE 127)、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン(IRGACURE 907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1(IRGACURE 369)、および、(b)アシルホスフィン化合物(例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド(DAROCUR TPO)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(IRGACURE 819)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、(a)芳香族ケトン類(例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン(IRGACURE 907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1(IRGACURE 369)から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0020】
(水溶性ポリマー)
前記開始剤粒子は水溶性ポリマーの少なくとも1種を含む。前記水溶性ポリマーとしては、前記水不溶性開始剤を水系溶媒に分散可能であって、25℃における100gの純水に対する溶解度が3g以上の高分子化合物であれば、特に制限はないが、前記溶解度が5g以上であることが好ましい。
【0021】
また前記水溶性ポリマーは、ノニオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマーおよびベタイン性ポリマーのいずれであってもよいが、インク安定性と吐出性の観点から、ノニオン性ポリマーまたはアニオン性ポリマーであることが好ましく、ノニオン性ポリマーであることがより好ましい。
【0022】
前記ノニオン性ポリマーとしては、吐出性と硬化感度の観点から、ポリオキシアルキレン構造を有するものであることが好ましく、炭素数2〜10のアルキレン鎖を含むポリオキシアルキレン構造を有するものであることがより好ましく、オキシエチレン基とオキシプロピレン基を有する共重合体であることがさらに好ましく、ポリオキシエチレン構造とポリオキシプロピレン構造を有するブロック共重合体であることが特に好ましい。
【0023】
前記水溶性ポリマーの分子量としては、吐出性と硬化感度の観点から、重量平均分子量が1000〜50000であることが好ましく、2000〜30000であることがより好ましい。
前記水溶性ポリマーの重量平均分子量は、GPCを用いて常法により測定される。
【0024】
本発明における水溶性ポリマーは、吐出性と硬化感度の観点から、炭素数2〜10のアルキレン鎖を含むポリオキシアルキレン構造を有し、重量平均分子量が1000〜50000であるノニオン性ポリマーであることが好ましく、ポリオキシエチレン構造とポリオキシプロピレン構造を有するブロック共重合体であって、重量平均分子量が2000〜30000であることがより好ましい。
本発明において水溶性ポリマーは1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
また、開始剤粒子に含まれる前記水不溶性重合開始剤に対する水溶性ポリマーの含有比率(水溶性ポリマー/水不溶性重合開始剤)としては、吐出性と硬化感度の観点から、0.1〜3.0であることが好ましく、0.15〜2.5であることがより好ましい。
【0026】
(開始剤粒子の調製方法)
本発明における開始剤粒子の調製方法としては、水不溶性重合開始剤と水溶性ポリマーを含む開始剤粒子の体積平均粒子径を500nm以下にすることができれば、特に制限はない。
例えば、水不溶性重合開始剤および水溶性ポリマーを含む混合物を通常用いられる乳化方法・分散方法を用いて処理することにより、開始剤粒子を調製することができる。具体的には、水不溶性重合開始剤および水溶性ポリマーを含む混合物を、二本ロール、三本ロール、ボールミル、トロンミル、ディスパー、ニーダー、コニーダー、ホモジナイザー、ブレンダー、単軸若しくは2軸の押出機等を用いて、強い剪断力を与えながら混練分散処理を行うことで調製することができる。
なお、混練、分散についての詳細は、T.C.Patton著”Paint Flow and Pigment Dispersion”(1964年、John Wiley and Sons社刊)等に記載されている。
また、必要に応じて、縦型もしくは横型のサンドグラインダー、ピンミル、スリットミル、超音波分散機等を用い、0.01〜1mmの粒径のガラス、ジルコニア等でできたビーズを用いた微分散処理を行うことにより調製することもできる。
【0027】
前記開始剤粒子は、吐出性、硬化感度およびインク安定性の観点から、前記水不溶性重合開始剤および有機溶剤を含む有機溶剤溶液と、前記水溶性ポリマーおよび水を含む水溶液とを混合して、開始剤粒子の乳化物・分散物を得る工程を含み、必要に応じてその他の工程を含む製造方法によって製造されることが好ましい。
【0028】
前記有機溶剤溶液と水溶液とを混合する方法としては、既述の混練分散処理と同様の方法を挙げることができるが、中でも、吐出性と硬化感度の観点から、攪拌速度が5000rpm以上である高速攪拌で行うことが好ましく、6000rpm以上であることがより好ましく、7000rpm以上であることさらに好ましい。攪拌速度の上限は特に制限されないが、例えば、50000rpmとすることができる。
【0029】
攪拌時間は、例えば、1分〜60分とすることができ、2分〜45分であることがより好ましく、3分〜30分であることがさらに好ましい。
本発明においては、吐出性と硬化感度の観点から、5000rpm以上で、1分〜60分の条件で高速攪拌により混合することが好ましく、6000rpm以上で2分〜45分の条件がより好ましく、7000rpm以上で3分〜30分の条件であることがさらに好ましい。
また高速攪拌は連続的に行っても、断続的に行ってもよいが、断続的に行うことでより効率的に開始剤粒子の乳化物・分散物を製造することができる。
【0030】
さらに高速攪拌時の温度条件等には特に制限はないが、液温が10℃〜70℃であることが好ましく、15℃〜55℃であることがより好ましく、20℃〜40℃であることがさらに好ましい。
また攪拌装置としては、強い剪断力を与えることができるものであることが好ましく、例えば、クレアミックス(エム・テクニック株式会社)を好適に用いることができる。
【0031】
また前記有機溶剤溶液は、水不溶性重合開始剤の少なくとも1種と有機溶剤の少なくとも1種とを含み、必要に応じてその他の成分を含んで構成される。
前記水不溶性重合開始剤については既述の通りであり、好ましい態様も同様である。
また、前記有機溶剤としては、水不溶性重合開始剤を溶解可能であれば、特に制限はなく、水不溶性重合開始剤に応じて適宜選択することができる。本発明においては、吐出性、硬化感度およびインク安定性の観点から、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤が挙げられる。これらのうちアルコール系溶剤としては、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、第3級ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。エーテル系溶剤としては、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。これらの有機溶剤の中でも、アルコール系溶剤およびケトン系溶剤が好ましく、イソプロパノール、アセトンおよびメチルエチルケトンがより好ましく、特に、メチルエチルケトンが好ましい。有機溶剤は、1種単独で用いても複数併用してもよい。
【0032】
前記有機溶剤溶液中の水不溶性重合開始剤の含有率には特に制限はなく、有機溶剤および水不溶性重合開始剤の種類に応じて適宜選択することができる。中でも、吐出性、硬化感度、製造適性の観点から、有機溶剤に対する水不溶性重合開始剤の含有率が3〜20質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。
【0033】
また前記水溶液は、水溶性ポリマーの少なくとも1種と水とを含み、必要に応じてその他の成分を含んで構成される。
前記水溶性ポリマーについては既述の通りであり、好ましい態様も同様である。
【0034】
前記水溶液中の水溶性ポリマーの含有率には特に制限はなく、水溶性ポリマーの種類に応じて適宜選択することができる。中でも、吐出性、硬化感度、製造適性の観点から、水に対する水溶性ポリマーの含有率が0.5〜10質量%であることが好ましく、1.0〜5.0質量%であることがより好ましい。
【0035】
さらに前記有機溶剤溶液と前記水溶液の混合比率は、有機溶剤溶液中の水不溶性重合開始剤の含有率および水溶液中の水溶性ポリマーの含有率等に応じて適宜選択することができるが、水不溶性重合開始剤に対する水溶性ポリマーの含有比率(水溶性ポリマー/水不溶性重合開始剤)が既述の好ましい範囲となるように選択されることが好ましい。
【0036】
本発明における開始剤粒子の製造方法は、前記その他の工程として、前記開始剤粒子の乳化物・分散物から、有機溶剤の少なくとも一部を除去する工程をさらに含むことが好ましい。
開始剤粒子の製造方法における有機溶剤の除去は、特に方法が限定されるものではなく、減圧蒸留等の公知の方法により行うことができる。
また本発明においては、インク安定性と吐出性の観点から、開始剤粒子の乳化物・分散物に含まれる有機溶剤の含有率が、3.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましい。
【0037】
このようにして得られた開始剤粒子の分散物・乳化物における開始剤粒子は良好な分散状態を保ち、かつ、得られた開始剤粒子の分散物・乳化物は経時安定性に優れたものとなる。
また、前記開始剤粒子は、粒径が500nm以下の状態で存在するためインク組成物を構成した場合に、その保存安定性に優れ、また微細かつ均一に乳化・分散していることで、吐出性・硬化感度が向上すると推測される。
【0038】
開始剤粒子の分散物・乳化物中における含有率としては、分散物・乳化物の全質量に対して0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜25質量%が更に好ましく、1.0〜20質量%が最も好ましい。
本発明における開始剤粒子は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0039】
[水溶性重合性化合物]
本発明におけるインク組成物は、重合性基を有する水溶性の重合性化合物の少なくとも1種を含有し、活性エネルギー線が照射されることにより重合する。この重合性化合物は、前記開始剤粒子によってその重合が開始されるが、後述する顔料が処理液と接触して凝集するときにその粒子間に取り込まれて、重合硬化により画像を強化することができる。
【0040】
ここでいう水溶性とは、水に一定濃度以上溶解できることをいい、水性のインク組成物中に(望ましくは均一に)溶解し得るものであればよい。また、後述する水溶性有機溶剤を添加することにより溶解度が上がってインク中に(望ましくは均一に)溶解するものであってもよい。具体的には、水に対する溶解度(25℃)が10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。
【0041】
水溶性重合性化合物としては、後述する凝集剤と、顔料との反応を妨げない点で、ノニオン性又はカチオン性の重合性化合物が好ましく、水に対する溶解度が10質量%以上(更には15質量%以上)の重合性化合物が好ましい。
【0042】
ノニオン性の重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルモノマー類などの重合性化合物を挙げることができる。
【0043】
前記(メタ)アクリルモノマー類としては、例えば、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、多価アルコールのグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル、多価アルコールのエチレンオキシド付加化合物の(メタ)アクリル酸エステル、多塩基酸無水物と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとの反応物などの紫外線硬化型モノマー、オリゴマーが挙げられる。
前記多価アルコールは、エチレンオキシドの付加により内部にエチレンオキシド鎖で鎖延長されたものでもよい。
【0044】
以下、ノニオン性の重合性化合物の具体例(ノニオン性化合物1〜6)を示す。但し、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0045】
【化1】

【0046】
また、多水酸基化合物から誘導される1分子中に2以上のアクリロイル基を有するアクリル酸エステル、も用いることができる。前記多水酸基化合物としては、例えば、グリコール類の縮合物、オリゴエーテル、オリゴエステル類等が挙げられる。
【0047】
更に、ノニオン性の重合性化合物としては、単糖類、2糖類などの2以上の水酸基を有するポリオールの(メタ)アクリル酸エステル又は;トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリスヒドロキシアミノメタン、トリスヒドロキシアミノエタン等との(メタ)アクリル酸エステル、も好適である。
【0048】
また、ノニオン性の重合性化合物としては分子内にアクリルアミド構造を有する水溶性の重合性化合物も好適である。
ここで、分子内にアクリルアミド構造有する重合性化合物は、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0049】
【化2】

【0050】
一般式(1)中、Qはn価の連結基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。また、nは1以上の整数を表す。
【0051】
一般式(1)で表される化合物は不飽和ビニル単量体が、アミド結合により連結基Qに結合したものである。Rは、水素原子、またはメチル基を表し、好ましくは水素原子である。連結基Qの価数nに制限はないが、重合効率、吐出性を向上させる観点から、nは、2以上であることが好ましく、2以上6以下であることがより好ましく、2以上4以下であることがさらに好ましい。
【0052】
また、前記連結基Qは、(メタ)アクリルアミド構造と連結可能な基であれば特に制限はないが、一般式(1)で表される化合物が前述の水溶性を満たすような連結基から選択されることが好ましい。具体的には以下の化合物群Xから選ばれる化合物から、1以上の水素原子またはヒドロキシル基が除去された残基をあげることができる。
【0053】
−化合物群X−
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール,1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、チオグリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びこれらの縮合体、低分子ポリビニルアルコール、または糖類などのポリオール類。
エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンジアミンなどのポリアミン類。
【0054】
さらに、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン基等の炭素数4以下の置換又は無置換のアルキレン鎖、更にはピリジン環、イミダゾール環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環などの飽和もしくは不飽和のヘテロ環を有する官能基などを例示することができる。
【0055】
前記連結基Qとしては、これらの中でも、オキシアルキレン基(好ましくは、オキシエチレン基)を含むポリオール類の残基であることが好ましく、オキシアルキレン基(好ましくは、オキシエチレン基)を3以上含むポリオール類の残基であることが特に好ましい。
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例(重合性化合物1〜41)を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
【化3】



【0057】
【化4】

【0058】
【化5】

【0059】
【化6】

【0060】
【化7】

【0061】
【化8】

【0062】
また、前記カチオン性の重合性化合物は、カチオン基と不飽和二重結合等の重合性基とを有する化合物であり、例えば、エポキシモノマー類、オキタセンモノマー類などを好適に用いることができる。カチオン性の重合性化合物を含有すると、カチオン基を有することでインク組成物のカチオン性が強くなり、アニオン性インクを用いたときの混色がより効果的に防止される。
前記カチオン性の重合性化合物としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアミノアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノメタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド、及びこれらの4級化化合物などが挙げられる。
エポキシモノマー類としては、例えば、多価アルコールのグリシジルエーテル、グリシジルエステル、脂肪族環状のエポキシドなどが挙げられる。
さらに、カチオン性の重合性化合物の例として、下記構造を有するものを挙げることができる。
【0063】
【化9】

【0064】
前記構造において、Rは、ポリオールの残基を表す。また、Xは、H又はCH3を表し、AはCl、HSO又はCHCOOを表す。このポリオールを導入するための化合物としては、例えば、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、脂環型ビスフェノールA及びこれらの縮合物等を挙げることができる。
以下、カチオン基を有する重合性化合物の具体例(カチオン性化合物1〜11)を例示するが、本発明はこれらに限定されない。
【0065】
【化10】

【0066】
【化11】

【0067】
【化12】

【0068】
【化13】

【0069】
本発明における水溶性重合性化合物としては、擦過耐性を高め得る観点から、多官能のモノマーが好ましく、2官能〜6官能のモノマーが好ましく、溶解性と擦過耐性の両立の観点から、2官能〜4官能のモノマーが好ましい。
【0070】
水溶性重合性化合物は、1種単独又は2種以上を組み合わせて含有することができる。
水溶性重合性化合物のインク組成物中における含有率としては、インク組成物全質量に対して、5〜50質量%が好ましく、10〜30質量%が更に好ましく、15〜25質量%が特に好ましい。
また水溶性重合性化合物の、顔料の固形分に対する含有率としては、200〜1000質量%が好ましく、250〜1000質量%がより好ましい。重合性化合物の含有量は、200質量%以上であると画像強度がより向上して画像の耐擦過性に優れ、1000質量%以下であるとパイルハイトの点で有利である。
【0071】
[顔料]
本発明におけるインク組成物は、顔料の少なくとも1種を含有する。顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。顔料は、水に殆ど不溶であるか又は難溶である顔料であることが、インク着色性の点で好ましい。
【0072】
本発明における顔料としては、その種類に特に制限はなく、従来公知の有機および無機顔料を用いることができる。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
【0073】
また前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。なお、前記カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
【0074】
本発明に用いることができる顔料として具体的には、例えば、特開2007−100071号公報の段落番号[0142]〜[0145]に記載の顔料などが挙げられる。
【0075】
上記の顔料は、1種単独で使用してもよく、また、上記した各群内もしくは各群間より複数種を選択して組み合わせて使用してもよい。
顔料のインク組成物中における含有量としては、色濃度、粒状性、インク安定性、吐出信頼性の観点から、インク組成物の全質量に対して、1〜25質量%となる量が好ましく、5〜20質量%となる量がより好ましい。
【0076】
(分散剤)
前記顔料は、分散剤によって水系溶媒に分散された着色粒子を構成していることが好ましい。前記分散剤としては、ポリマー分散剤でも低分子の界面活性剤型分散剤でもよい。また、ポリマー分散剤としては水溶性ポリマー分散剤でも水不溶性ポリマー分散剤の何れでもよい。
本発明において分散剤は、分散安定性とインクジェット方式に適用した場合の吐出性の観点から、水不溶性ポリマー分散剤であることが好ましい。
【0077】
−水不溶性ポリマー分散剤−
本発明における水不溶性ポリマー分散剤(以下、単に「分散剤」ということがある)としては、水不溶性のポリマーであって、顔料を分散可能であれば特に制限は無く、従来公知の水不溶性ポリマー分散剤を用いることができる。水不溶性ポリマー分散剤は、例えば、疎水性の構成単位と親水性の構成単位の両方を含んで構成することができる。
【0078】
前記疎水性の構成単位を構成するモノマーとしては、スチレン系モノマー、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
また前記親水性構成単位を構成するモノマーとしては、親水性基を含むモノマーであれば特に制限はない。前記親水性基としては、ノニオン性基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等を挙げることができる。尚、ノニオン性基としては、水酸基、(窒素原子が無置換の)アミド基、アルキレンオキシド重合体(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等)に由来する基、糖アルコールに由来する基等が挙げられる。
本発明における親水性構成単位は、分散安定性の観点から、少なくともカルボキシル基を含むことが好ましく、ノニオン性基とカルボキシル基を共に含む形態であることもまた好ましい。
【0079】
本発明における水不溶性ポリマー分散剤として、具体的には、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。
ここで「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
【0080】
本発明において水不溶性ポリマー分散剤としては、顔料の分散安定性の観点から、カルボキシル基を含むビニルポリマーであることが好ましく、疎水性の構成単位として少なくとも芳香族基含有モノマーに由来する構成単位を有し、親水性の構成単位としてカルボキシル基を含む構成単位を有するビニルポリマーであることがより好ましい。
【0081】
また前記水不溶性ポリマー分散剤の重量平均分子量としては、顔料の分散安定性の観点から、3,000〜200,000が好ましく、より好ましくは5,000〜100,000、更に好ましくは5,000〜80,000、特に好ましくは10,000〜60,000である。
【0082】
水不溶性ポリマー分散剤の酸価としては、処理液が接触したときの凝集性が良好である観点から、200mgKOH/g以下が好ましい。更には、該酸価は、25〜180mgKOH/gがより好ましく、25〜150mgKOH/gが更に好ましく、30〜130mgKOH/gが特に好ましい。ポリマー分散剤の酸価は、200mgKOH/g以下、更には150mgKOH/g以下になると、相対的に顔料が疎水的になり、画像の耐水性が良好になる。ポリマー分散剤の酸価は25mgKOH/g以上であると、自己分散性の安定性が良好になる。
【0083】
水不溶性ポリマー分散剤は、自己分散性と処理液が接触したときの凝集速度の観点から、カルボキシル基を有するポリマーを含むことが好ましく、カルボキシル基を有し、酸価が25〜150mgKOH/gのポリマーを含むことがより好ましく、カルボキシル基を有し、酸価が30〜130mgKOH/gのポリマーを含むことがさらに好ましい。
【0084】
本発明における着色粒子における分散剤の含有量は、顔料の分散性、インク着色性、分散安定性の観点から、顔料に対し、分散剤が10〜100質量%であることが好ましく、20〜70質量%がより好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。
前記着色粒子中の分散剤の含有量が、上記範囲であることにより、顔料が適量の分散剤で被覆され、粒径が小さく経時安定に優れた着色粒子を得やすい傾向となり好ましい。
【0085】
本発明における前記着色粒子は、前記水不溶性ポリマー分散剤に加えて、その他の分散剤を含んでいてもよい。例えば、従来公知の水溶性低分子分散剤や、水溶性ポリマー等を用いることができる。前記水不溶性ポリマー分散剤以外の分散剤の含有量は、前記分散剤の含有量の範囲内で用いることができる。
【0086】
本発明における着色粒子は、分散安定性と吐出性の観点から、前記顔料および前記水不溶性ポリマー分散剤を含んで構成されていることが好ましく、顔料の表面の少なくとも一部が水不溶性ポリマー分散剤で被覆されて構成されていることが好ましい。かかる着色粒子は、例えば、顔料、分散剤、必要に応じて溶媒(好ましくは有機溶剤)等を含む混合物を、分散機により分散することで着色粒子分散物として得ることができる。
【0087】
前記着色粒子分散物は、例えば、前記顔料と前記水不溶性ポリマー分散剤と該分散剤を溶解または分散する有機溶剤との混合物に、塩基性物質を含む水溶液を加える工程(混合・水和工程)の後、前記有機溶剤を除く工程(溶剤除去工程)を設けて分散物として製造することができる。これにより、着色剤が微細に分散され、保存安定性に優れた着色粒子の分散物を作製することができる。
【0088】
有機溶剤は、前記分散剤を溶解または分散できることが必要であるが、これに加えて水に対してある程度の親和性を有することが好ましい。具体的には、20℃下で水に対する溶解度が10質量%以上50質量%以下であるものが好ましい。
【0089】
前記着色粒子の分散物は、更に詳細には、下記の工程(1)および工程(2)を含む製造方法で製造することができるが、これに限定されるものではない。
工程(1):顔料、分散剤、および該分散剤を溶解または分散する有機溶剤と共に、塩基性物質を含み、水を主成分とする溶液を含有する混合物を分散処理する工程
工程(2):分散処理後の混合物から、前記有機溶剤の少なくとも一部を除去する工程
【0090】
前記工程(1)では、まず、前記分散剤を有機溶剤に溶解または分散させて混合物を得る(混合工程)。次に、着色剤、塩基性物質を含み、水を主成分とする溶液、水、および必要に応じて界面活性剤等を、前記混合物に加えて混合、分散処理し、水中油型の分散物を得る。
【0091】
前記塩基性物質は、ポリマーが有することがあるアニオン性基(好ましくは、カルボキシル基)の中和に用いられる。前記アニオン性基の中和度には、特に限定がない。通常、最終的に得られる着色剤粒子の分散物の液性が、例えばpHが4.5〜10であるものが好ましい。前記ポリマーの望まれる中和度により、pHを決めることもできる。
【0092】
前記有機溶剤の好ましい例としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒が挙げられる。これらのうちアルコール系溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、第3級ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、イソプロパノール、アセトンおよびメチルエチルケトンが好ましく、特に、メチルエチルケトンが好ましい。有機溶剤は、1種単独で用いても複数併用してもよい。
【0093】
前記着色粒子の分散物の製造においては、二本ロール、三本ロール、ボールミル、トロンミル、ディスパー、ニーダー、コニーダー、ホモジナイザー、ブレンダー、単軸若しくは2軸の押出機等を用いて、強い剪断力を与えながら混練分散処理を行なうことができる。なお、混練、分散についての詳細は、T.C.Patton著”Paint Flow and Pigment Dispersion”(1964年、John Wiley and Sons社刊)等に記載されている。
また、必要に応じて、縦型もしくは横型のサンドグラインダー、ピンミル、スリットミル、超音波分散機等を用い、0.01〜1mmの粒径のガラス、ジルコニア等でできたビーズを用いた微分散処理を行うことにより得ることができる。
【0094】
本発明における着色粒子分散物の製造方法における有機溶剤の除去は、特に方法が限定されるものではなく、減圧蒸留等の公知に方法により行うことができる。
【0095】
このようにして得られた着色粒子分散物における着色粒子は良好な分散状態を保ち、かつ、得られた着色粒子分散物は経時安定性に優れたものとなる。
【0096】
本発明において顔料(または着色粒子)の体積平均粒径としては、10〜200nmが好ましく、10〜150nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。体積平均粒径が200nm以下であることで色再現性が良好になり、インクジェット方式の場合には打滴特性が良好になる。また、体積平均粒径が10nm以上であることで、耐光性が良好になる。
また、顔料(または着色粒子)の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ顔料を、2種以上混合して使用してもよい。
尚、顔料(または着色粒子)の体積平均粒径および粒径分布は、例えば、光散乱法を用いて測定することができる。
本発明において、上記顔料(または着色粒子)は1種単独で、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0097】
[水系媒体]
本発明におけるインク組成物は水を含み、必要に応じて後述する水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含んで構成される。
本発明における水としては、イオン交換水、蒸留水などのイオン性不純物を含まない水を用いることが好ましい。また、インク組成物における水の含有率は、目的に応じて適宜選択されるが、通常、10〜95質量%であることが好ましく、30〜90質量%であることがより好ましい。
【0098】
(水溶性有機溶剤)
本発明におけるインク組成物は、水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含有していてもよい。水溶性有機溶剤を含有することで、乾燥防止、湿潤あるいは浸透促進の効果を得ることができる。乾燥防止には、噴射ノズルのインク吐出口においてインクが付着乾燥して凝集体ができ、目詰まりするのを防止する乾燥防止剤として用いられ、乾燥防止や湿潤には、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。また、浸透促進には、紙へのインク浸透性を高める浸透促進剤として用いることができる。
【0099】
水溶性有機溶剤の例としては、例えば、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルカンジオール(多価アルコール類);糖アルコール類;エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0100】
乾燥防止や湿潤の目的としては、多価アルコール類が有用であり、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0101】
浸透促進の目的としては、ポリオール化合物が好ましく、脂肪族ジオールが好適である。脂肪族ジオールとしては、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールが好ましい例として挙げることができる。
【0102】
また本発明における水溶性有機溶剤としては、記録媒体におけるカール発生抑制の点から、下記構造式(1)で表される化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0103】
【化14】

【0104】
構造式(1)において、l、m、およびnは、それぞれ独立に1以上の整数を表し、l+m+n=3〜15を満たし、l+m+nは3〜12の範囲が好ましく、3〜10の範囲がより好ましい。l+m+nの値は、3以上であると良好なカール抑制力を示し、15以下であると良好な吐出性が得られる。構造式(1)中、AOは、エチレンオキシ(EO)および/又はプロピレンオキシ(PO)を表し、中でもプロピレンオキシ基が好ましい。前記(AO)、(AO)、および(AO)における各AOはそれぞれ同一でも異なってもよい。
以下、前記構造式(1)で表される化合物の例を示す。但し、本発明はこれに限定されるものではない。尚、例示化合物中、「POP(3)グリセリルエーテル」との記載は、グリセリンにプロピレンオキシ基が合計で3つ結合したグリセリルエーテルであることを意味し、他の記載についても同様である。
【0105】
【化15】

【0106】
さらに本発明における水溶性有機溶剤は、記録媒体におけるカール発生抑制の点から、以下に例示する水溶性有機溶剤であることもまた好ましい。
・n−CO(AO)−H(AO=EO又はPOで、比率はEO:PO=1:1)
・n−CO(AO)10−H AO=EO又はPOで、比率はEO:PO=1:1)
・HO(AO)40−H(AO=EO又はPOで、比率はEO:PO=1:3)
・HO(AO)55−H(AO=EO又はPOで、比率はEO:PO=5:6)
・HO(PO)−H
・HO(PO)−H
・1,2−ヘキサンジオール
【0107】
本発明において水溶性有機溶剤は、1種単独で使用しても、2種類以上混合して使用してもよい。
また水溶性有機溶剤のインク組成物中における含有率としては、1質量%以上60質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上40質量%以下である。
【0108】
(樹脂粒子)
本発明におけるインク組成物は、必要に応じて樹脂粒子を含有することができる。前記樹脂粒子は、後述する処理液又はこれを乾燥させた紙領域と接触した際に凝集、又は分散不安定化してインクを増粘させることにより、インク組成物、すなわち画像を固定化させる機能を有することが好ましい。このような樹脂粒子は、水および有機溶剤の少なくとも1種に分散されているものが好ましい。
【0109】
樹脂粒子としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、パラフィン系樹脂、フッ素系樹脂等あるいはそのラテックスを用いることができる。アクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂を好ましい例として挙げることができる。
また樹脂粒子はラテックスの形態で用いることもできる。
【0110】
樹脂粒子の重量平均分子量は1万以上、20万以下が好ましく、より好ましくは10万以上、20万以下である。
また樹脂粒子の平均粒径は、10nm〜1μmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましく、20〜100nmの範囲が更に好ましく、20〜50nmの範囲が特に好ましい。
樹脂粒子のガラス転移温度Tgは30℃以上であることが好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。
【0111】
樹脂粒子の添加量はインク組成物に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましく、0.1〜15質量%がさらに好ましい。
また、樹脂微子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つ樹脂粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
【0112】
(界面活性剤)
本発明におけるインク組成物は、必要に応じて、界面活性剤の少なくとも1種を含むことができる。界面活性剤は、表面張力調整剤として用いることができる。
表面張力調整剤として、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等が有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤のいずれも使用することができる。更に、上記の分散剤(高分子分散剤)を界面活性剤としても用いてもよい。
本発明においては、インクの打滴干渉抑制の観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましく、中でもアセチレングリコール誘導体がより好ましい。
【0113】
界面活性剤(表面張力調整剤)をインク組成物に含有する場合、界面活性剤はインクジェット方式によりインク組成物の吐出を良好に行う観点から、インク組成物の表面張力を20〜60mN/mに調整できる範囲の量を含有するのが好ましく、表面張力の点からはより好ましくは20〜45mN/mであり、更に好ましくは25〜40mN/mである。
界面活性剤のインク組成物中における界面活性剤の具体的な量としては、前記表面張力となる範囲が好ましいこと以外は特に制限はなく、1質量%以上が好ましく、より好ましくは1〜10質量%であり、更に好ましくは1〜3質量%である。
【0114】
(その他成分)
インク組成物は、上記の成分に加え、必要に応じて更にその他成分として各種の添加剤を含むことができる。
前記各種の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、褪色防止剤、防黴剤、pH調整剤、防錆剤、酸化防止剤、乳化安定剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、キレート剤、および固体湿潤剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0115】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
【0116】
褪色防止剤としては、各種の有機系および金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としては、例えば、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。
【0117】
防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、ソルビン酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウムなどが挙げられる。
防黴剤は、インク組成物中の含有量が0.02〜1.00質量%である範囲とするのが好ましい。
【0118】
pH調整剤としては、調合されるインク組成物に悪影響を及ぼさずにpHを所望の値に調整できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、アルコールアミン類(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールなど)、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アンモニウム水酸化物(例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物など)、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。
【0119】
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
【0120】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0121】
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0122】
〜インク組成物の物性〜
本発明におけるインク組成物の表面張力(25℃)としては、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上40mN/m以下である。
表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学株式会社製)を用い、インク組成物を25℃の条件下で測定される。
【0123】
また、本発明におけるインク組成物の25℃での粘度は、1.2mPa・s以上15.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2mPa・s以上13mPa・s未満であり、更に好ましくは2.5mPa・s以上10mPa・s未満である。
粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用い、インク組成物を25℃の条件下で測定される。
【0124】
<インク組成物の製造方法>
本発明のインク組成物の製造方法は、水不溶性重合開始剤を含む有機溶剤溶液、および水溶性ポリマーを含む水溶液を混合して、水不溶性重合開始剤および水溶性ポリマーを含むとともに体積平均粒子径が500nm以下である開始剤粒子を得る工程と、前記開始剤粒子、水溶性重合性化合物、顔料、および水を混合してインク組成物を得る工程と、を有し、必要に応じてその他の工程を含んで構成される。
かかる製造方法で製造されるインク組成物は、吐出性と硬化感度、さらにインク安定性に優れる。
【0125】
前記開始剤粒子を得る工程については、既述の通りである。
また、得られた開始剤粒子と、水溶性重合性化合物と、顔料と、水と、必要に応じて含まれるその他の成分とを混合する方法については、通常用いられる混合方法を特に制限はなく用いることができる。
さらに本発明においては、前記成分の混合後に、粗大粒子の除去工程を含むことが好ましい。粗大粒子の除去は、例えば、適宜選択されるメンブランフィルターを用いて行なうことができる。
【0126】
<インクセット>
本発明のインクセットは、前記インク組成物の少なくとも1種と、該インク組成物と接触して凝集体を形成可能な処理液の少なくとも1種とを含んで構成される。かかるインクセットを用いて画像を形成することにより、高精細で耐擦性に優れる画像を高速に形成することができる
インクセットに含まれるインク組成物の詳細ついては既述の通りであり、好ましい態様も同様である。
【0127】
[処理液]
処理液は、既述のインク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を少なくとも含み、必要に応じて、さらに他の成分を用いて構成することができる。インク組成物と共に処理液を用いることで、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い描画性(例えば細線や微細部分の再現性)に優れた画像が得られる。処理液が凝集剤を含むことで、良好な画像品質で耐擦性に優れた画像を形成することができる。
【0128】
(凝集剤)
処理液は、インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤の少なくとも1種を含んでなる。本発明における凝集剤は、記録媒体上においてインク組成物と接触することにより、インク組成物を凝集(固定化)可能なものであり、固定化剤として機能する。例えば、処理液を記録媒体(好ましくは、塗工紙)に付与することにより記録媒体上に凝集剤が存在している状態で、インク組成物がさらに着滴して凝集剤に接触することにより、インク組成物中の成分が凝集して、インク組成物を記録媒体上に固定化することができる。
前記インク組成物中の成分を固定化させる成分としては、酸性化合物、多価金属塩、およびカチオン性ポリマー等を挙げることができる。これらは1種単独でも、2種以上を併用することができる。
【0129】
−酸性化合物−
酸性化合物としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、およびこれらの化合物の誘導体、ならびにこれらの塩等が好適に挙げられる。
【0130】
これらの中でも、水溶性の高い酸性化合物が好ましい。また、インク組成物と反応してインク全体を固定化させる観点から、3価以下の酸性化合物が好ましく、2価以上3価以下の酸性化合物が特に好ましい。
酸性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0131】
前記処理液が酸性化合物を含む場合、処理液のpH(25℃)は、0.1〜6.8であることが好ましく、0.5〜6.0であることがより好ましく、0.8〜5.0であることがさらに好ましい。
【0132】
前記酸性化合物の含有量は、前記処理液の全質量に対し、40質量%以下であることが好ましく、15〜40質量%であることがより好ましい。酸性化合物の含有量を15〜40質量%とすることでインク組成物中の成分をより効率的に固定化することができる。
さらに酸性化合物の含有量は、前記処理液の全質量に対し、15質量%〜35質量%であることが好ましい。
【0133】
酸性化合物の記録媒体への付与量としては、インク組成物を凝集させるに足る量であれば特に制限はないが、インク組成物を固定化し易いとの観点から、
0.5g/m〜4.0g/mであることが好ましく、0.9g/m〜3.75g/mであることがより好ましい
【0134】
−多価金属塩−
本発明における多価金属塩は、アルカリ土類金属、亜鉛族金属等の2価以上の金属を含む化合物であり、Ca2+、Cu2+、Al3+等の金属イオンの酢酸塩、酸化物等を挙げることができる。
本発明において、前記多価金属塩を含む処理液が付与された記録媒体(好ましくは、塗工紙)にインク組成物を吐出したときのインク組成物の凝集反応は、インク組成物中に分散した粒子、例えば、顔料に代表される着色剤や、樹脂粒子等の粒子の分散安定性を減じ、インク組成物全体の粘度を上昇させることで達成することができる。例えば、インク組成物中の顔料や、樹脂粒子などの粒子がカルボキシル基等の弱酸性の官能基を有するとき、当該粒子は前記弱酸性の官能基の働きにより分散安定化しているが、当該粒子の表面電荷を、多価金属塩と相互作用させることにより減じ、分散安定性を低下することができる。したがって、処理液に含まれる固定化剤としての多価金属塩は、凝集反応の観点で、価数が2価以上、すなわち多価であることが必要であり、凝集反応性の観点で、3価以上の多価金属イオンからなる多価金属塩であることが好ましい。
【0135】
以上の観点から、本発明における処理液に用いることのできる多価金属塩は、以下に示す多価金属イオンと陰イオンとの塩、ポリ水酸化アルミニウムおよびポリ塩化アルミニウムのいずれか1種以上であることが好ましい。
【0136】
多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Sr2+、Zn2+、Ba2+、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、Fe2+、La3+、Nd3+、Y3+、およびZr4+などが挙げられる。これら多価金属イオンを処理液中に含有させるためには、前記多価金属の塩を用いればよい。
塩とは、上記のような多価金属イオンと、これらのイオンに結合する陰イオンとから構成される金属塩のことであるが、溶媒に可溶なものであることが好ましい。ここで、前記溶媒とは、多価金属塩とともに処理液を構成する媒質であり、例えば、水や必要に応じて含まれる有機溶剤が挙げられる。
【0137】
前記多価金属イオンと塩を形成するための好ましい陰イオンとしては、例えば、Cl、NO、I、Br、ClO、CHCOO、SO2−などが挙げられる。
多価金属イオンと陰イオンとは、それぞれ単独種または複数種を用いて多価金属イオンと陰イオンとの塩を形成することができる。
【0138】
上記以外の多価金属塩としては、例えば、ポリ水酸化アルミニウムおよびポリ塩化アルミニウムなどが挙げられる。
【0139】
本発明においては、反応性や着色性、さらには取り扱いの容易さなどの点から、多価金属イオンと陰イオンとの塩を用いることが好ましく、多価金属イオンとしては、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Al3+およびY3+から選ばれる少なくとも1種が好ましく、さらには、Ca2+が好ましい。
また、陰イオンとしては、溶解性などの観点から、NOが特に好ましい。
前記多価金属塩は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0140】
前記多価金属塩の含有量は、前記処理液の全質量に対し、15質量%以上である。多価金属塩の含有量が15質量%以上とすることでより効果的にインク組成物中の成分を固定化することができる。
多価金属塩の含有量は、前記処理液の全質量に対し、15質量%〜35質量%であることが好ましい。
【0141】
多価金属塩の記録媒体への付与量としては、インク組成物を凝集させるに足る量であれば特に制限はないが、インク組成物を固定化し易いとの観点から、
0.5g/m〜4.0g/mであることが好ましく、0.9g/m〜3.75g/mであることがより好ましい。
【0142】
−カチオン性ポリマー−
カチオン性ポリマーとしては、ポリ(ビニルピリジン)塩、ポリアルキルアミノエチルアクリレート、ポリアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリ(ビニルイミダゾール)、ポリエチレンイミン、ポリビグアニド、及びポリグアニドから選ばれる少なくとも1種のカチオン性ポリマーを挙げることができる。
カチオン性ポリマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記カチオン性ポリマーの中でも、凝集速度の観点で有利な、ポリグアニド(好ましくは、ポリ(ヘキサメチレングアニジン)アセテート、ポリモノグアニド、ポリメリックビグアニド)、ポリエチレンイミン、ポリ(ビニルピリジン)が好ましい。
【0143】
前記カチオン性ポリマーの重量平均分子量としては、処理液の粘度の観点では分子量が小さい方が好ましい。処理液をインクジェット方式で記録媒体に付与する場合には、500〜500,000の範囲が好ましく、700〜200,000の範囲がより好ましく、更に好ましくは1,000〜100,000の範囲である。重量平均分子量は、500以上であると凝集速度の観点で有利であり、500,000以下であると吐出信頼性の点で有利である。但し、処理液をインクジェット以外の方法で記録媒体に付与する場合には、この限りではない。
【0144】
前記処理液はカチオン性ポリマーを含むが、処理液のpH(25℃)は、1.0〜10.0であることが好ましく、2.0〜9.0であることがより好ましく、3.0〜7.0であることがさらに好ましい。
【0145】
カチオン性ポリマーの含有量は、前記処理液の全質量に対して、1質量%〜35質量%であることが好ましく、5質量%〜25質量%であることがより好ましい。
カチオン性ポリマーの記録媒体への付与量としては、インク組成物を安定化させるに足る量であれば特に制限はないが、インク組成物を固定化し易いとの観点から、0.5g/m〜4.0g/mであることが好ましく、0.9g/m〜3.75g/mであることがより好ましい。
【0146】
処理液は、本発明の効果を損なわない範囲内で、更にその他の成分として他の添加剤を含有することができる。他の添加剤としては、例えば、インク組成物の項に詳述した開始剤、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0147】
<画像形成方法>
本発明の画像形成方法は、既述のインク組成物および処理液を用いたものであり、水不溶性重合開始剤および水溶性ポリマーを含むとともに体積平均粒子径が500nm以下である開始剤粒子と、水溶性重合性化合物と、顔料と、水とを含むインク組成物を記録媒体にインクジェット法で付与して画像を形成するインク付与工程と、前記インク組成物と接触して凝集体を形成可能な処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程とを有して構成される。また本発明の画像形成方法は、必要に応じて、更に他の工程を設けて構成することができる。
【0148】
以下、本発明の画像形成方法を構成する各工程を説明する。
(インク付与工程)
インク付与工程は、前記インク組成物を記録媒体上にインクジェット法で付与する。本工程では、記録媒体上に選択的にインク組成物を付与でき、所望の可視画像を形成できる。なお、インク組成物の詳細及び好ましい態様などインク組成物の詳細については、インク組成物に関する説明で既述した通りである。
【0149】
インクジェット法を利用した画像の記録は、具体的には、エネルギーを供与することにより、所望の被記録媒体、すなわち普通紙、上質紙、コート紙、アート紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載のインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等にインク組成物を吐出することにより行なえる。なお、本発明に好ましいインクジェット記録方法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
【0150】
インクジェット法は、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。
尚、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【0151】
また、インクジェット法で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。
さらに前記インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0152】
インクジェット法としては、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、記録媒体の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とがある。ライン方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像記録を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要になり、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。本発明の画像形成方法は、これらのいずれにも適用可能であるが、一般にダミージェットを行なわないライン方式に適用した場合に、吐出精度及び画像の耐擦過性の向上効果が大きい。
【0153】
インクジェットヘッドから吐出されるインクの液滴量としては、高精細な画像を得る観点で、1〜10pl(ピコリットル)が好ましく、1.5〜6plがより好ましい。また、画像のムラ、連続諧調のつながりを改良する観点で、異なる液適量を組み合わせて吐出することも有効であり、このような場合でも本発明は好適に使用できる。
【0154】
本発明においては、インク組成物の記録媒体への最大付与量は、画像密着性と画像濃度の観点から、10〜36ml/mであることが好ましく、15〜30ml/mであることがより好ましい。
【0155】
(処理液付与工程)
処理液付与工程は、インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液を記録媒体に付与し、凝集剤をインク組成物と接触させて画像化する。この場合、インク組成物中の顔料等の分散粒子が凝集し、記録媒体上に画像が固定化される。なお、処理液は凝集剤を少なくとも含有してなり、各成分の詳細及び好ましい態様については、既述した通りである。
【0156】
処理液の付与は、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。塗布法としては、バーコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター等を用いた公知の塗布方法によって行なうことができる。インクジェット法の詳細については、既述の通りである。
【0157】
処理液付与工程は、インク組成物を用いたインク付与工程の前又は後のいずれに設けてもよい。本発明においては、処理液付与工程で処理液を付与した後にインク付与工程を設けた態様が好ましい。具体的には、記録媒体上に、インク組成物を付与する前に、予めインク組成物中の顔料(好ましくは、顔料を含む着色粒子)を凝集させるための処理液を付与しておき、記録媒体上に付与された処理液に接触するようにインク組成物を付与して画像化する態様が好ましい。これにより、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
【0158】
処理液の付与量としては、インク組成物を凝集可能であれば特に制限はないが、好ましくは、凝集剤の付与量が0.1g/m以上となる量とすることができる。中でも、凝集剤の付与量が0.2〜0.7g/mとなる量が好ましい。凝集剤は、付与量が0.1g/m以上であるとインク組成物の種々の使用形態に応じ良好な高速凝集性が保てる。また、凝集剤の付与量が0.7g/m以下であることは、付与した記録媒体の表面性に悪影響(光沢の変化等)を与えない点で好ましい。
【0159】
また、本発明においては、処理液付与工程後にインク付与工程を設け、処理液を記録媒体上に付与した後、インク組成物が付与されるまでの間に、記録媒体上の処理液を加熱乾燥する加熱乾燥工程を更に設けることが好ましい。インク付与工程前に予め処理液を加熱乾燥させることにより、滲み防止などのインク着色性が良好になり、色濃度及び色相の良好な可視画像を記録できる。
【0160】
加熱乾燥は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段により行なえる。加熱方法としては、例えば、記録媒体の処理液の付与面と反対側からヒータ等で熱を与える方法や、記録媒体の処理液の付与面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
【0161】
(重合工程)
本発明の画像形成方法は、記録媒体上に付与されたインク組成物に活性エネルギー線を照射する重合工程を含むことが好ましい。活性エネルギー線を照射することでインク組成物に含まれる水溶性重合性化合物が重合して、顔料を含む硬化膜を形成する。これにより画像の耐擦性、耐ブロッキング性がより効果的に向上する。
【0162】
記録媒体上に付与されたインク組成物は、活性エネルギー線を照射することで硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる水不溶性重合開始剤が活性エネルギー線の照射により分解して、ラジカル、酸、塩基などの開始種を発生し、その開始種により重合性化合物の重合反応が開始・促進されてインク組成物が硬化するためである。
【0163】
ここで、使用される活性エネルギー線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光、赤外光などが使用される。活性エネルギー線の波長としては、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることがさらに好ましい。
活性エネルギー線の出力としては、5000mJ/cm以下であることが好ましく、10〜4000mJ/cmであることがより好ましく、20〜3000mJ/cmであることがさらに好ましい。
【0164】
活性エネルギー線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インクの硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更にLED(UV−LED)、LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
また、発光ダイオード(LED)およびレーザーダイオード(LD)を活性放射線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LEDおよび紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。
本発明で特に好ましい活性エネルギー線源は、UV−LEDであり、特に好ましくは、350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
【0165】
(乾燥工程)
本発明においては、インク付与工程で記録媒体上に付与されたインク組成物に含まれる水の少なくとも一部を除去する乾燥工程をさらに含むことが好ましい。
前記乾燥工程は、前記重合工程の前に行われても重合工程の後に行われてもよいが、形成される画像の耐擦性、密着性の観点から、前記重合工程の前に行われることが好ましい。
【0166】
乾燥工程における水の除去方法としては、特に制限はないが、加熱処理による水の除去であることが好ましい。
加熱の方法は、特に制限されないが、ニクロム線ヒーター等の発熱体で加熱する方法、温風又は熱風を供給する方法、ハロゲンランプ、赤外線ランプなどで加熱する方法など、非接触で乾燥させる方法を好適に挙げることができる。
【0167】
(記録媒体)
本発明の画像形成方法は、記録媒体に上に画像を記録するものである。記録媒体には、特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。セルロースを主体とする一般印刷用紙は、水性インクを用いた一般のインクジェット法による画像記録においては比較的インクの吸収、乾燥が遅く、打滴後に色材移動が起こりやすく、画像品質が低下しやすいが、本発明の画像形成方法によると、色材移動を抑制して色濃度、色相に優れた高品位の画像の記録が可能である。
【0168】
記録媒体としては、一般に市販されているものを使用することができ、例えば、王子製紙(株)製の「OKプリンス上質」、日本製紙(株)製の「しおらい」、及び日本製紙(株)製の「ニューNPI上質」等の上質紙(A)、王子製紙(株)製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙(株)製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙(株)製の「OKコートL」及び日本製紙(株)製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」及び日本製紙(株)製の「オーロラコート」等のコート紙(A2、B2)、王子製紙(株)製の「OK金藤+」及び三菱製紙(株)製の「特菱アート」等のアート紙(A1)等が挙げられる。また、インクジェット記録用の各種写真専用紙を用いることも可能である。
【0169】
記録媒体の中でも、一般のオフセット印刷などに用いられる塗工紙が好ましい。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。塗工紙は、通常の水性インクジェットによる画像形成においては、画像の光沢や擦過耐性など、品質上の問題を生じやすいが、本発明の画像形成方法では、光沢ムラが抑制されて光沢性、耐擦性の良好な画像を得ることができる。特に、原紙と無機顔料を含むコート層とを有する塗工紙を用いるのが好ましく、原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙を用いるのがより好ましい。具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、又は微塗工紙がより好ましい。
【0170】
(インクジェット記録装置)
次に、本発明の画像形成方法を実施するのに好適なインクジェット記録装置の一例を、図1を参照して具体的に説明する。図1は、インクジェット記録装置全体の構成例を示す概略構成図である。
【0171】
図1に示すように、インクジェット記録装置は、記録媒体の搬送方向(図中の矢印方向)に向かって順次、処理液を吐出する処理液吐出用ヘッド12Sを備えた処理液付与部12と、付与された処理液を乾燥させる加熱手段(不図示)を備えた処理液乾燥ゾーン13と、各種インク組成物を吐出するインク吐出部14と、吐出されたインク組成物を乾燥させるインク乾燥ゾーン15とが配設されている。また、記録媒体の搬送方向におけるインク乾燥ゾーン15の下流側には、紫外線照射ランプ16Sを備えた紫外線照射部16が配設されている。
【0172】
このインクジェット記録装置に供給された記録媒体は、記録媒体が装填されたケースから記録媒体を給紙する給紙部から、搬送ローラによって、処理液付与部12、処理液乾燥ゾーン13、インク吐出部14、インク乾燥ゾーン15、紫外線照射部16と順に送られて集積部に集積される。搬送は、搬送ローラによる方法のほか、ドラム状部材を用いたドラム搬送方式やベルト搬送方式、ステージを用いたステージ搬送方式などを採用してもよい。
【0173】
複数配置された搬送ローラのうち、少なくとも1つのローラはモータ(不図示)の動力が伝達された駆動ローラとすることができる。モータで回転する駆動ローラを定速回転することにより、記録媒体は所定の方向に所定の搬送量で搬送されるようになっている。
【0174】
処理液付与部12には、処理液を貯留する貯留タンクに繋がる処理液吐出用ヘッド12Sが設けられている。処理液吐出用ヘッド12Sは、記録媒体の記録面と対向配置された吐出ノズルから処理液を吐出し、記録媒体の上に処理液を液滴付与できるようになっている。なお、処理液付与部12は、ノズル状のヘッドから吐出する方式に限らず、塗布ローラを用いた塗布方式を採用することもできる。この塗布方式は、下流側に配置されたインク吐出部14で記録媒体上にインク滴が着弾する画像領域を含むほぼ全面に処理液を容易に付与することができる。記録媒体上の処理液の厚みを一定にするために、例えば、エアナイフを用いたり、あるいは尖鋭な角を有する部材を、処理液の規定量に対応するギャップを記録媒体との間に設けて設置する等の方法を設けてもよい。
【0175】
処理液付与部12の記録媒体搬送方向の下流側には、処理液乾燥ゾーン13が配置されている。処理液乾燥ゾーン13は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段を用いて構成することができる。加熱手段は、記録媒体の遮断層形成面と反対側(例えば、記録媒体を自動搬送する場合は記録媒体を載せて搬送する搬送機構の下方)にヒータ等の発熱体を設置する方法や、記録媒体の遮断層形成面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
【0176】
また、記録媒体の種類(材質、厚み等)や環境温度等によって、記録媒体の表面温度は変化するため、記録媒体の表面温度を計測する計測部と該計測部で計測された記録媒体の表面温度の値を加熱制御部にフィードバックする制御機構を設けて温度制御しながら遮断層を形成することが好ましい。記録媒体の表面温度を計測する計測部としては、接触又は非接触の温度計が好ましい。
また、溶媒除去ローラー等を用いて溶媒除去を行なってもよい。他の態様として、エアナイフで余剰な溶媒を記録媒体から取り除く方式も用いられる。
【0177】
インク吐出部14は、処理液乾燥ゾーン13の記録媒体搬送方向下流側に配置されている。インク吐出部14には、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の各色インクを貯留するインク貯留部の各々と繋がる記録用ヘッド(インク吐出用ヘッド)30K、30C、30M、30Yが配置されている。不図示の各インク貯留部には、各色相に対応する顔料と樹脂粒子と水溶性有機溶剤と水とを含有するインク組成物が貯留されており、画像の記録に際して必要に応じて各インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Yに供給されるようになっている。また、インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、及び30Yの搬送方向下流側には、図1に示すように、必要に応じて特色インクを吐出可能なように、特色インク吐出用の記録ヘッド30A、30Bを更に配設することもできる。
【0178】
インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Yは、記録媒体の記録面と対向配置された吐出ノズルから、それぞれ画像に対応するインクを吐出する。これにより、記録媒体の記録面上に各色インクが付与され、カラー画像が記録される。
【0179】
処理液吐出用ヘッド12S、並びにインク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Y、30A、及び30Bはいずれも、記録媒体上に記録される画像の最大記録幅(最大記録幅)にわたって多数の吐出口(ノズル)が配列されたフルラインヘッドとなっている。記録媒体の幅方向(記録媒体搬送面において搬送方向と直交する方向)に短尺のシャトルヘッドを往復走査しながら記録を行なうシリアル型のものに比べて、記録媒体に高速に画像記録を行なうことができる。本発明においては、シリアル型での記録、又は比較的高速記録が可能な方式、例えば1回の走査で1ラインを形成するシングルパスで主走査方向に吐出して記録できる方式での記録のいずれを採用してもよいが、本発明の画像記録方法によればシングルパスによる方式でも再現性の高い高品位の画像が得られる。
【0180】
ここでは、処理液吐出用ヘッド12S、並びにインク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Y、30A、及び30Bは、全て同一構造になっている。
【0181】
処理液の付与量とインク組成物の付与量とは、必要に応じて調節することが好ましい。例えば、記録媒体に応じて、処理液とインク組成物とが混合してできる凝集物の粘弾性等の物性を調節する等のために、処理液の付与量を変えてもよい。
【0182】
インク乾燥ゾーン15は、インク吐出部14の記録媒体搬送方向下流側に配置されている。インク乾燥ゾーン15は、処理液乾燥ゾーン13と同様に構成することができる。
【0183】
紫外線照射部16は、インク乾燥ゾーン15の記録媒体搬送方向のさらに下流側に配置されており、紫外線照射部16に設けられた紫外線照射ランプ16Sにより紫外線を照射し、画像乾燥後の画像中のモノマー成分を重合硬化させるようになっている。紫外線照射ランプ16Sは、記録媒体の記録面と対向配置されたランプにより記録面の全体を照射し、画像全体の硬化が行なえるようになっている。なお、紫外線照射部16は、紫外線照射ランプ16Sに限らず、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、レーザー、LED、電子線照射装置などを採用することもできる。
紫外線照射部16は、インク乾燥ゾーン15の前後のいずれに設置されていてもよく、インク乾燥ゾーン15の前後両方に設置してもよい。
【0184】
また、インクジェット記録装置には、給紙部から集積部までの搬送路に、記録媒体に加熱処理を施す加熱手段を配置することもできる。例えば、処理液乾燥ゾーン13の上流側や、インク吐出部14とインク乾燥ゾーン15との間、などの所望の位置に加熱手段を配置することで、記録媒体を所望の温度に昇温させることにより、乾燥、定着を効果的に行なうようにすることが可能である。
【実施例】
【0185】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0186】
[開始剤粒子1の調製]
水不溶性重合開始剤としてイルガキュア907(チバ・ジャパン社製)3gに酢酸エチル40gを加え攪拌して溶解した後、水溶性ポリマーであるニューポールPE−108(三洋化成工業社製)1gを溶解した水溶液38gに加え、攪拌装置としてクレアミックス(エム・テクニック株式会社製)を用い、10000rpmで4分攪拌した後、1分間静置という攪拌操作を5サイクル行い、さらに水12gを加えた。その後25℃で窒素フローを1時間行うことで脱溶媒し、開始剤粒子1の乳化物を得た。
得られた開始剤粒子の体積平均粒子径を、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて測定したところ200nmであった。
【0187】
[開始剤粒子2〜16の調製]
上記開始剤粒子1の調製において、開始剤および水溶性ポリマーの種類を表1に示したようにそれぞれ変更したこと以外は、上記と同様にして、開始剤粒子2〜16、を調製した。
尚、表1中、IRUGACURE 184、IRUGACURE 819、IRUGACURE 369、IRUGACURE 127、TPO、ITXはチバ・ジャパン社製の水不溶性重合開始剤であり、DETX−Sは日本化薬社製の水不溶性重合開始剤である。
また、ニューポールPE−107、PE−64、PE−68、PE−128は三洋化成工業社製の水溶性ポリマー(PPO−PEOブロック共重合体)であり、ユニルーブ70DP−950B、75DE−2620Rは日油社製の水溶性ポリマー(PPO−PEOブロック共重合体)であり、PVPK25は、水溶性ポリマーであるポリビニルピロリドン(重量平均分子量25000)である。
【0188】
[開始剤粒子C1、C2の調製]
開始剤粒子C1〜C3は、開始剤粒子1、開始剤粒子5の調製において水溶性ポリマーを用いずに、攪拌速度を5000rpm、攪拌時間を5分にし、サイクル数を1もしくは2にして粒子径を制御して調製した。
【0189】
【表1】

【0190】
[ポリマー分散剤P−1の合成]
攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコにメチルエチルケトン88gを加えて窒素雰囲気下で72℃に加熱し、ここにメチルエチルケトン50gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、ベンジルメタクリレート60g、メタクリル酸10g、及びメチルメタクリレート30gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後、メチルエチルケトン2gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温して4時間加熱した。得られた反応溶液は大過剰量のヘキサンに2回再沈殿し、析出した樹脂を乾燥し、ポリマー分散剤P−1を96g得た。
得られた樹脂の組成は、H−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は44,600であった。さらに、JIS規格(JIS K0070:1992)に記載の方法により酸価を求めたところ、65.2mgKOH/gであった。
【0191】
[樹脂被覆顔料の調製]
(樹脂被覆シアン顔料分散物Cの調製)
ピグメント・ブルー15:3(フタロシアニンブルーA220、大日精化(株)製)10部と、上記ポリマー分散剤P−1を5部と、メチルエチルケトン42部と、1mol/L NaOH水溶液5.5部と、イオン交換水87.2部とを混合し、ビーズミルにより0.1mmφジルコニアビーズを用いて2〜6時間分散した。
得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去することにより、顔料濃度が10.2質量%の樹脂被覆シアン顔料の分散物C(着色粒子)を得た。
【0192】
−樹脂被覆マゼンタ顔料分散物M−
上記樹脂被覆シアン顔料分散物の調製において、顔料として用いたフタロシアニンブルーA220の代わりに、Chromophthal Jet Magenta DMQ(ピグメント・レッド122、チバ・ジャパン社製)を用いた以外は上記と同様にして樹脂被覆マゼンタ顔料の分散物M(着色粒子)を得た。
【0193】
−樹脂被覆イエロー顔料分散物Y−
上記樹脂被覆シアン顔料分散物の調製において、顔料として用いたフタロシアニンブルーA220の代わりに、Irgalite Yellow GS(ピグメント・イエロー74、チバ・ジャパン社製)を用いた以外は上記と同様にして樹脂被覆イエロー顔料の分散物Y(着色粒子)を得た。
【0194】
−樹脂被覆ブラック顔料分散物K−
上記樹脂被覆シアン顔料分散物の調製において、顔料として用いたフタロシアニンブルーA220の代わりに、顔料分散体CAB−O−JET(TM) 200(カーボンブラック、CABOT社製)を用いた以外は上記と同様にして樹脂被覆ブラック顔料の分散物K(着色粒子)を得た。
【0195】
<実施例1>
−インクセット1の調製−
以下のようにして、シアンインクC−1、マゼンタインクM−1、イエローインクY−1、およびブラックインクK−1からなるインク組成物、ならびに処理液1をそれぞれ調製し、シアンインクC−1、マゼンタインクM−1、イエローインクY−1、ブラックインクK−1、および処理液1からなるインクセット1を調製した。
【0196】
(シアンインクC−1の調製)
上記の樹脂被覆シアン顔料の分散物(C)を用い、下記組成となるように、樹脂被覆シアン顔料分散物(C)、水溶性有機溶剤、イオン交換水、重合開始剤、重合性化合物、及び界面活性剤を混合し、その後、5μmメンブランフィルターでろ過してシアンインクC−1(インク組成物)を調製した。
【0197】
−シアンインクC−1の組成−
・樹脂被覆シアン顔料分散物(C)(固形分濃度) ・・・ 6%
・開始剤粒子1(開始剤濃度) ・・・ 3%
(イルガキュア907;チバ・ジャパン社製、PE−108;三洋化成工業社製)
・重合性化合物 ・・・ 20%
(NKエステルA−400;新中村化学社製)
・オルフィンE1010 ・・・ 1%
(日信化学工業(株)製;界面活性剤)
・イオン交換水 ・・・ 全体で100%となるように添加。
【0198】
pHメーターWM−50EG(東亜DKK(株)製)を用いて、シアン顔料インクC−1のpH(25℃)を測定したところ、pH値は8.5であった。
【0199】
(マゼンタインクM−1の調製)
上記シアンインクC−1の調製において、樹脂被覆シアン顔料の分散物Cの代わりに、樹脂被覆マゼンタ顔料の分散物Mを用いた以外は上記と同様にして、マゼンタインクM−1(インク組成物)を調製した。pH値は8.5であった。
【0200】
(イエローインクY−1の調製)
上記シアンインクC−1の調製において、樹脂被覆シアン顔料の分散物Cの代わりに、樹脂被覆イエロー顔料の分散物Yを用いた以外は上記と同様にして、イエローインクY−1(インク組成物)を調製した。pH値は8.5であった。
【0201】
(ブラックインクK−1の調製)
上記シアンインクC−1の調製において、樹脂被覆シアン顔料の分散物Cの代わりに、顔料被覆ブラック顔料の分散物Kを用いた以外は上記と同様にして、ブラックインクK−1(インク組成物)を調製した。pH値は8.5であった。
【0202】
(処理液1の調製)
以下の材料を混合して、処理液1を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液1のpH(25℃)を測定したところ、1.0であった。
・マロン酸(立山化成(株)製;酸性化合物) ・・・25%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル ・・・5%
(水溶性有機溶剤)
・イオン交換水 ・・・70%
【0203】
<実施例2〜28>
上記実施例1における各インク組成物の調製において、開始剤粒子、および重合性化合物を下記表2に示したようそれぞれ変更したこと以外は上記と同様にして、インクセット2〜28を調製した。
尚、以下の重合性化合物1、重合性化合物2および重合性化合物12を用いた。
【0204】
【化16】

【0205】
<比較例1〜4>
上記実施例1における各インク組成物の調製において、開始剤粒子、および重合性化合物を下記表2に示したようにそれぞれ変更したこと以外は上記と同様にして、インクセットC1〜C4を調製した。
尚、NKエステルA−400は、新中村化学工業株式会社製の水溶性重合性化合物である。またモノマーAは、非水溶性重合性化合物であるトリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製)を用いた。
【0206】
(処理液2の調製)
以下の材料を混合して、処理液2を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、pH調整後の処理液2のpH(25℃)を測定したところ、4.0であった。
・ポリエチレンイミン ・・・13%
(カチオン性ポリマー、重量平均分子量1800)
・イオン交換水 ・・・87%
【0207】
(処理液3の調製)
以下の材料を混合して、処理液3を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液3のpH(25℃)を測定したところ、4.0であった。
・硝酸マグネシウム ・・・15%
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル ・・・4%
(和光純薬工業(株)製)
・界面活性剤A(10%、下記構造) ・・・1%
・イオン交換水 ・・・80%
【0208】
上記処理液に用いた界面活性剤Aの構造を下記に示す。
【0209】
【化17】

【0210】
[インク安定性評価]
上記で調製したインク組成物(シアンインクC−1〜C−27、マゼンタインクM−1〜M−27、イエローインクY−1〜Y−27、ブラックインクK−1〜K−27)について以下のようにしてインク安定性を評価した。
インク組成物を25℃に温度調整した。次いで振動式粘度計(BROOKFIELD社製、DV−II+VISCOMETER)を用いて、25℃、相対湿度50%の環境下で、インク組成物を原液のまま25℃でコーンプレート(φ35mm)を用いて測定し、トルクが20〜90%の範囲で、且つ回転数が0.5〜100rpmの範囲のデータの平均値を測定値とした。調製直後の測定値をインク粘度1とした。
次いで、インク組成物の一部をガラス製サンプルビンに採取し、密栓した状態で60℃の環境下で2週間放置した後、上記と同様の方法で保存後のインク粘度2を測定した。また、同時にインク組成物の状態を目視観察した。
上記測定した保存前後でのインク粘度の変動率{100−(インク粘度2/インク粘度1)×100}を算出した。さらに保存後の目視観察結果と併せて、下記の評価基準に従ってインク保存性の評価を行った。
【0211】
〜評価基準〜
◎ … インク粘度の変動率が±15%未満で、かつインク組成物の変化は認められなかった。
○ … インク粘度の変動率が±15%以上±30%未満で、かつインク組成物の変化は認められなかった。
△ … インク粘度の変動率が±30%以上、±50%未満で、かつインク組成物の変化は認められなかった。
× … インク粘度の変動率が±50%以上、またはインク組成物の分離やゲル状化が観察された。
【0212】
[画像形成および硬化感度評価]
図1に示すように、記録媒体の搬送方向(図中の矢印方向)に向かって順次、水性処理液を吐出する処理液吐出用ヘッド12Sを備えた処理液付与部12と、付与された水性処理液を乾燥させる処理液乾燥ゾーン13と、各種水性インクを吐出するインク吐出部14と、吐出された水性インクを乾燥させるインク乾燥ゾーン15と、紫外線(UV)を照射可能なUV照射ランプ16Sを備えたUV照射部16とが配設されたインクジェット装置を準備した。
【0213】
記録媒体として、OKトップコート+(坪量104.7g/m)を用意して、以下に示すようにして画像を形成し、形成された画像について以下の評価を行なった。結果を表2に示す。
【0214】
インク組成物として、上記で得られたシアンインクC−1、マゼンタインクM−1、イエローインクY−1、およびブラックインクK−1からなるインク1と処理液1からなるインクセット1を用いて、4色シングルパス記録によりライン画像とベタ画像を形成した。
このとき、ライン画像は、1200dpiの1ドット幅のライン、2ドット幅のライン、4ドット幅のラインをシングルパスで主走査方向に吐出することによりライン画像を形成した。
またベタ画像は、記録媒体をA5サイズにカットしたサンプルの全面にインク組成物を吐出することによりベタ画像を形成した。なお、記録する際の諸条件は下記の通りである。
【0215】
(1)処理液付与工程
記録媒体の全面に、アニロックスローラー(線数100〜300/インチ)で塗布量が制御されたロールコーターにて付与量が、1.4g/mとなるように処理液を塗布した。
【0216】
(2)処理工程
次いで、下記条件にて処理液が塗布された記録媒体について乾燥処理及び浸透処理を施した。
・風速:10m/s
・温度:記録媒体の記録面側の表面温度が60℃となるように、記録媒体の記録面の反対側(背面側)から接触型平面ヒータで加熱した。
【0217】
(3)インク付与工程
その後、処理液が塗布された記録媒体の塗布面に、下記条件にてインク組成物をインクジェット方式で吐出し、ライン画像、ベタ画像をそれぞれ形成した。
・ヘッド:1,200dpi/20inch幅のピエゾフルラインヘッドを4色分配置
・吐出液滴量:2.0pL
・駆動周波数:30kHz
【0218】
(4)インク乾燥工程
次いで、インク組成物が付与された記録媒体を下記条件で乾燥した。
・乾燥方法:送風乾燥
・風速:15m/s
・温度:記録媒体の記録面側の表面温度が60℃となるように、記録媒体の記録面の反対側(背面側)から接触型平面ヒータで加熱した。
【0219】
(5)UV露光工程
画像乾燥後、UV照射部16において、UV光(アイグラフィックス(株)製 メタルハライドランプ 最大照射波長 365nm)を積算照射量3J/cmになるように照射して画像を硬化した。
【0220】
(硬化感度評価)
未印字のOKトップコート+を文鎮(重量470g、サイズ15mm×30mm×120mm)に巻きつけ(未印字のOKトップコート+と評価サンプルが接触する面積は150mm)、上記ベタ画像が形成された評価用サンプルの印画面を3往復擦った(荷重260kg/mに相当)。擦った後の印画面を目視により観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。評価結果を表2に示す。
〜評価基準〜
◎ … 印画面に画像(色材)のはがれが視認できなかった。
○ … 印画面に画像(色材)のはがれがわずかに認められた。
△ … 印画面に画像(色材)のはがれが視認でき、実用上問題になるレベルであった。
× … 印画面に画像(色材)の大きなはがれが視認できた。
【0221】
次いで、インクセット2〜27についても、上記と同様にして、画像を形成し、硬化感度を評価した。評価結果を表2に示す。
【0222】
[吐出性評価]
上記で得られたインク組成物について、以下のようにして吐出性を評価した。評価結果を表2に示す。
リコー社製GELJET GX5000プリンターヘッドを用いて、インク液滴量3.5pLで吐出周波数24kHz、ノズル配列方向×搬送方向75×1200dpiで96本のラインを10cm印字した。記録媒体としては富士フイルム製画彩写真仕上げProを用いた。印画直後、60℃で3秒間乾燥させ、さらにUVランプを用いて、露光量2.5J/cmで露光して定着処理を実施し、印画サンプルを得た。
得られた印画サンプルの打滴開始部から5cmの部位の96本のライン間の距離を王子計測機器製ドットアナライザーDA−6000で測定し、その標準偏差を算出し、下記評価基準に従って着弾位置精度性(初期吐出性)を評価した。
〜評価基準〜
◎ … 3μm以上、4μm未満であった。
○ … 4μm以上、5μm未満であった。
△ … 5μm以上、6μm未満であった。
× … 6μm以上であった。
【0223】
【表2】

【0224】
表2に示すように、本発明のインク組成物は、いずれも優れた吐出性、インク安定性および硬化感度を有することが確認された。
また、上記において処理液1の代わりに処理液2または処理液3を用いて同様に評価した場合も、優れた硬化感度を示すことが確認された。
【符号の説明】
【0225】
12・・・処理液付与部
12S・・・処理液吐出用ヘッド
13・・・処理液乾燥ゾーン
14・・・インク吐出部
15・・・インク乾燥ゾーン
16・・・紫外線照射部
16S・・・紫外線照射ランプ
30K、30C、30M、30Y・・・インク吐出用ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性重合開始剤および水溶性ポリマーを含むとともに体積平均粒子径が500nm以下である開始剤粒子と、
水溶性重合性化合物と、顔料と、水と、を含むインク組成物。
【請求項2】
前記水溶性ポリマーは、ノニオン性の水溶性ポリマーである請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記ノニオン性の水溶性ポリマーは、ポリオキシエチレン構造およびポリオキシプロピレン構造を有するブロック共重合体である請求項2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記開始剤粒子は、前記水不溶性重合開始剤を含む有機溶剤溶液と、前記水溶性ポリマーを含む水溶液とを混合して得られる、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記顔料は、その表面の少なくとも一部が水不溶性ポリマーで被覆されている水分散性顔料である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインク組成物と、該インク組成物と接触して凝集体を形成可能な処理液と、を含むインクセット。
【請求項7】
前記処理液は、酸性化合物、多価金属塩、およびカチオン性ポリマーから選ばれる少なくとも1種を含む請求項6に記載のインクセット。
【請求項8】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインク組成物をインクジェット法により記録媒体上に付与して画像を形成するインク付与工程と、
前記インク組成物と接触して凝集体を形成可能な処理液を、記録媒体上に付与する処理液付与工程と、を有する画像形成方法。
【請求項9】
前記記録媒体上に付与されたインク組成物に活性エネルギー線を照射する重合工程をさらに有する請求項8に記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記記録媒体が塗工紙である請求項8または請求項9に記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記インク付与工程は、前記処理液付与工程によって処理液が付与された記録媒体上に、前記インク組成物を付与する請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項12】
水不溶性重合開始剤を含む有機溶剤溶液、および水溶性ポリマーを含む水溶液を混合して、水不溶性重合開始剤および水溶性ポリマーを含むとともに体積平均粒子径が500nm以下である開始剤粒子を得る工程と、
前記開始剤粒子、水溶性重合性化合物、顔料、および水を混合してインク組成物を得る工程と、
を有するインク組成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−208093(P2011−208093A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79614(P2010−79614)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】