説明

インク組成物および印刷物

【課題】優れた金属光沢を有するとともに、優れた耐擦性を有する画像の形成に用いることのできるインク組成物を提供すること、また、優れた金属光沢を有するとともに、優れた耐擦性を有する画像が形成された印刷物を提供すること。
【解決手段】本発明のインク組成物は、インクジェット方式により吐出されるものであって、銀粒子と、水と、アルコールとを含むことを特徴とする。アルコールは、水との間で共沸混合物を形成するものであるのが好ましい。また、インク組成物中におけるアルコールの含有率は0.01質量%以上15.0質量%以下であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物および印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の印刷に用いられるインクとしては、一般に、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックのインクを用いて、いわゆるフルカラー画像を形成することが一般に行われている。そして、形成画像の高画質化を図る目的で、インクを多色化(例えば、上記4種のインクに加えて、ライトマゼンタ、ライトシアンのインクを含む6色)が行われている。
しかし、上記のような多色のインクを用いても、金属光沢を表現できないという問題がある。
【0003】
そこで、近年、金属粒子を用いたインクジェット用インク(金属インク)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、特許文献1で提案されているインクでは、比較的良好な金属光沢が得られるものの、印刷面を擦った際に、インクの構成材料で形成された層に傷が付いたり、剥離すること等により、形成された画像の光沢感が低下し、画質が著しく低下するという問題点があった。このような問題は、金属インクではないカラーインク(顔料インク、染料インク)では、通常発生しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−297423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、優れた金属光沢を有するとともに、優れた耐擦性(摩擦に対する耐久性)を有する画像の形成に用いることのできるインク組成物を提供すること、また、優れた金属光沢を有するとともに、優れた耐擦性を有する画像が形成された印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のインク組成物は、インクジェット方式により吐出されるインク組成物であって、
銀粒子と、
水と、
アルコールとを含むことを特徴とする。
これにより、優れた金属光沢を有するとともに、優れた耐擦性を有する画像の形成に用いることのできるインク組成物を提供することができる。
【0007】
本発明のインク組成物では、前記アルコールは、分子内に1個または2個の水酸基を有するものであり、かつ、炭素数が1以上10以下のものであることが好ましい。
これにより、インク組成物を用いて形成される画像の光沢感(高級感)および耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、インクジェット方式によるインク組成物の吐出安定性(着弾位置精度、吐出量の安定性等)を特に優れたものとすることができ、長期間にわたって所望の画質の画像をより確実に形成することができる。
【0008】
本発明のインク組成物では、前記アルコールは、水との間で共沸混合物を形成するものであることが好ましい。
これにより、インク組成物を用いて製造される印刷物中に、液体成分が残存することによる弊害(印刷パターンのにじみ等)の発生をより確実に防止することができる。また、インク組成物が付与される印刷媒体から速やかに液体成分を除去することができるため、高速印刷(特に、インク組成物を重ね打ちする場合)にも好適に対応することができる。
【0009】
本発明のインク組成物では、前記アルコールの含有率が0.01質量%以上15.0質量%以下であることが好ましい。
これにより、インク組成物を用いて形成される画像の光沢感(高級感)および耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、インクジェット方式によるインク組成物の吐出安定性(着弾位置精度、吐出量の安定性等)を特に優れたものとすることができ、長期間にわたって所望の画質の画像をより確実に形成することができる。
【0010】
本発明のインク組成物では、前記銀粒子の平均粒径が3nm以上100nm以下であることが好ましい。
これにより、インク組成物を用いて形成される画像の光沢感(高級感)および耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、インクジェット方式によるインク組成物の吐出安定性(着弾位置精度、吐出量の安定性等)を特に優れたものとすることができ、長期間にわたって所望の画質の画像をより確実に形成することができる。
【0011】
本発明のインク組成物では、前記銀粒子の含有率が0.5質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
これにより、インク組成物のインクジェット方式による吐出安定性、インク組成物の保存安定性を特に優れたものとすることができる。また、印刷物とされたときの印刷媒体上での銀粒子の密度(単位面積当たりの含有量)が低い場合から高い場合まで、広い密度の範囲で、良好な画質、耐擦性を実現することができる。このため、例えば、インク組成物を用いて得られる印刷物が、銀粒子の密度が異なる領域を有する場合であっても、印刷物の画質を優れたものとすることができる。
【0012】
本発明のインク組成物では、固形分の含有率が50質量%以下であることが好ましい。
これにより、インク組成物の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
本発明の印刷物は、印刷媒体上に、本発明のインク組成物をインクジェット法により付与することにより得られたことを特徴とする。
これにより、優れた金属光沢を有するとともに、優れた耐擦性を有する画像が形成された印刷物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】インクジェット装置の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《インク組成物》
本発明のインク組成物は、インクジェット方式により吐出されるものである。
このようなインク組成物は、その他の印刷法に用いられるインク組成物とは異なり、液滴の吐出安定性が求められる。また、インクジェット法では、インク組成物中の分散物(分散質)の分散状態が、インク組成物の吐出性に大きな影響を与える。このため、インク組成物中における分散物(分散質)の分散状態が経時的に大きく変化するものであると、液滴の吐出量が不安定化し所望の画像を形成するのが困難になる等、他の印刷法では発生し得ない問題がある。
そして、本発明のインク組成物は、銀粒子と、水と、アルコールとを含むものである。このように、銀粒子とともに、アルコールを含むことにより、インク組成物を用いて得られる画像を、優れた金属光沢を有するとともに、優れた耐擦性を有するものとすることができることを、本発明者は見出した。
【0015】
(銀粒子)
上述したように、本発明に係るインク組成物は、銀粒子を含むものである。このように、インク組成物が、銀粒子を含むものであることにより(特に、後述するようなアルコールとともに含むことにより)、優れた金属光沢を有する画像を形成することができる。また、銀は、各種金属の中でも、白色度の高い金属であるため、他色のインクと重ね合わせることにより、金色、銅色等の様々な金属色を表現することができる。
【0016】
銀粒子の平均粒径は、3nm以上100nm以下であるのが好ましく、20nm以上65nm以下であるのがより好ましい。これにより、インク組成物を用いて形成される画像の光沢感(高級感)および耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、インクジェット方式によるインク組成物の吐出安定性(着弾位置精度、吐出量の安定性等)を特に優れたものとすることができ、長期間にわたって所望の画質の画像をより確実に形成することができる。なお、本明細書では、「平均粒径」とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒径のことを指すものとする。
【0017】
また、銀粒子の粒径加積曲線における粒径d90は、50nm以上1μm以下であるのが好ましい。これにより、インク組成物を用いて形成される画像の光沢感(高級感)および耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、インクジェット方式によるインク組成物の吐出安定性(着弾位置精度、吐出量の安定性等)を特に優れたものとすることができ、長期間にわたって所望の画質の画像をより確実に形成することができる。
【0018】
また、銀粒子の粒径加積曲線における粒径d10は、2nm以上20nm以下であるのが好ましい。これにより、インク組成物を用いて形成される画像の光沢感(高級感)および耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、インクジェット方式によるインク組成物の吐出安定性(着弾位置精度、吐出量の安定性等)を特に優れたものとすることができ、長期間にわたって所望の画質の画像をより確実に形成することができる。
【0019】
インク組成物中における銀粒子の含有率は、0.5質量%以上30質量%以下であるのが好ましく、3.0質量%以上15質量%以下であるのがより好ましい。これにより、インク組成物のインクジェット方式による吐出安定性、インク組成物の保存安定性を特に優れたものとすることができる。また、印刷物とされたときの印刷媒体上での銀粒子の密度(単位面積当たりの含有量)が低い場合から高い場合まで、広い密度の範囲で、良好な画質、耐擦性を実現することができる。このため、例えば、インク組成物を用いて得られる印刷物が、銀粒子の密度が異なる領域を有する場合であっても、印刷物の画質を優れたものとすることができる。
銀粒子は、いかなる方法で調製されたものであってもよく、例えば、銀イオンを含む溶液を用意し、この銀イオンを還元ずることにより、好適に形成することができる。
【0020】
(アルコール)
インク組成物は、アルコールを含むものである。
本発明は、銀粒子とともに、アルコールを含むことにより、インク組成物を用いて得られる画像を、優れた金属光沢を有するとともに、優れた耐擦性を有するものとすることができる点に特徴を有するものである。
【0021】
インク組成物中に含まれるアルコールは、分子内に1個または2個の水酸基を有するものであり、かつ、炭素数が1以上10以下のものであるのが好ましい。これにより、インク組成物を用いて形成される画像の光沢感(高級感)および耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、インクジェット方式によるインク組成物の吐出安定性(着弾位置精度、吐出量の安定性等)を特に優れたものとすることができ、長期間にわたって所望の画質の画像をより確実に形成することができる。
【0022】
上記のように、インク組成物中に含まれるアルコールは、分子内に1個または2個の水酸基を有するものであるのが好ましいが、インク組成物中に含まれるアルコールは、分子内に1個の水酸基を有するものであるのがより好ましい。
また、インク組成物中に含まれるアルコールの炭素数は、1以上10以下であるのが好ましいが、2以上6以下であるのがより好ましい。
【0023】
また、インク組成物中に含まれるアルコールは、水との間で共沸混合物を形成するものであるのが好ましい。これにより、インク組成物を用いて製造される印刷物中に、液体成分が残存することによる弊害(印刷パターンのにじみ等)の発生をより確実に防止することができる。また、インク組成物が付与される印刷媒体から速やかに液体成分を除去することができるため、高速印刷(特に、インク組成物を重ね打ちする場合)にも好適に対応することができる。水と共沸混合物を形成し得るアルコールとしては、例えば、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−メトキシエタノール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール等が挙げられる。中でも、エタノールが好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
【0024】
また、インク組成物中におけるアルコールの含有率は、0.01質量%以上15.0質量%以下であるのが好ましく、0.1質量%以上12.0質量%以下であるのがより好ましく、1.5質量%以上10.0質量%以下であるのがさらに好ましい。これにより、インク組成物を用いて形成される画像の光沢感(高級感)および耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、インクジェット方式によるインク組成物の吐出安定性(着弾位置精度、吐出量の安定性等)を特に優れたものとすることができ、長期間にわたって所望の画質の画像をより確実に形成することができる。インク組成物は、2種以上のアルコールを含むものであってもよいが、このような場合、これら複数種のアルコール成分の含有率の総和が、前記範囲内の値であるのが好ましい。
【0025】
インク組成物を構成するアルコールの溶解度パラメータ(SP値)は、10以上28以下であるのが好ましく、11以上20以下であるのがより好ましい。これにより、インク組成物の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。なお、溶解度パラメータとは、凝集エネルギー密度、すなわち1分子の単位体積当たりの蒸発エネルギーを1/2乗したもので、単位体積当たりの極性の大きさを示す。
【0026】
(水)
本発明にかかるインク組成物は、水を50質量%以上含有する、いわゆる水系インクであってもよい。水系インクは、非水系(溶剤系)インクに比べて、記録ヘッドに用いられているピエゾ素子等や、記録媒体に含まれる有機バインダー等への反応性が弱く、溶かしてしまう、腐食するといった不具合が少ない。また、非水系(溶剤系)インクでは、用いた溶剤が高沸点・低粘度であると、乾燥時間が非常にかかるという問題も生ずる。さらに、溶剤系インクに比べて水系インクは臭いも非常に抑えられており、半分以上が水であるので環境にも良いという利点がある。なお、水としては、イオン交換水、逆浸透水、蒸留水、超純水等が挙げられる。
【0027】
インク組成物中において、水は、主に銀粒子を分散させる分散媒として機能する。インク組成物が水を含むことにより、銀粒子の分散安定性等を優れたものとすることができ、また、後述するような液滴吐出装置のノズル付近でのインク組成物の不本意な乾燥(分散媒の蒸発)を防止しつつ、インク組成物が付与される印刷媒体上での乾燥を速やかに行うことができるため、所望の画像の高速印刷を、長期間にわたって好適に行うことができる。
インク組成物中における水の含有率は、特に限定されないが、20質量%以上95質量%以下であるのが好ましく、50質量%以上80質量%以下であるのがより好ましい。
【0028】
(その他の成分)
本発明に係るインク組成物は、上記以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。
このような成分としては、例えば、水酸化カリウム水溶液などのpH調整剤、浸透剤、有機バインダー、尿素系化合物等の乾燥抑制剤、アセチレングリコール系化合物等の表面張力調整剤、シリコーン系ワックス等のワックス、チオ尿素、防腐剤、ヘッド防錆剤、増粘剤等が挙げられる。
【0029】
インク組成物が銀粒子以外の固形分(以下「その他の固形分」ともいう)を含む場合、インク組成物中におけるその他の固形分の含有率は、5質量%以下であるのが好ましく、1質量%以下であるのがより好ましい。
インク組成物中における固形分の含有率は、50質量%以下であるのが好ましく、3.6質量%以上40質量%以下であるのがより好ましく、12質量%以上27質量%以下であるのがさらに好ましい。これにより、インク組成物の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0030】
また、インク組成物の粘度(振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定された25℃における粘度)は、特に限定されないが、2.0mPa・s以上12.0mPa・s以下であることが好ましく、5.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることがより好ましい。これにより、液滴の吐出安定性を優れたものとすることができるとともに、印刷媒体に着弾したインク組成物の不本意な濡れ広がりをより確実に防止することができ、微細な画像であっても好適に形成することができる。
【0031】
《印刷物》
本発明の印刷物は、印刷媒体上に、上述したようなインク組成物をインクジェット法により付与することにより得られたものである。これにより、優れた金属光沢を有するとともに、優れた耐擦性を有する画像が形成された印刷物を提供することができる。
インク組成物が付与される印刷媒体としては、普通紙、インク受理層等を有する専用紙等の紙のほか、例えば、インク組成物が付与される表面を含む領域が、各種プラスチック、セラミックス、ガラス、金属や、これらの複合材料で構成された基材等を用いることができる。
【0032】
《印刷物の製造方法》
図1は、インクジェット装置(液滴吐出装置)の概略構成を示す斜視図である。
本実施形態の印刷物の製造方法は、図1に示すようなインクジェット装置(液滴吐出装置)を用いて、上述したようなインク組成物を印刷媒体に向けて吐出する工程(液滴吐出工程)を有する。
【0033】
(吐出工程)
以下に、液滴吐出装置としてのインクジェット式プリンター1を用いた液滴吐出について説明する。
図1に示すように、液滴吐出装置としてのインクジェット式プリンター1は、フレーム2を有している。フレーム2には、プラテン3が設けられ、プラテン3上には、紙送りモーター4の駆動により用紙Pが給送されるようになっている。また、フレーム2には、プラテン3の長手方向と平行に、棒状のガイド部材5が設けられている。
ガイド部材5には、キャリッジ6がガイド部材5の軸線方向に往復移動可能に支持されている。キャリッジ6は、フレーム2内に設けられたタイミングベルト7を介して、キャリッジモーター8に連結されている。そして、キャリッジ6は、キャリッジモーター8の駆動により、ガイド部材5に沿って往復移動されるようになっている。
【0034】
キャリッジ6には、液滴吐出ヘッド9が設けられるとともに、液滴吐出ヘッド9に液体としてのインクを供給するためのインクカートリッジ10が着脱可能に配置されている。インクカートリッジ10内のインクは、液滴吐出ヘッド9に備えられた図示しない圧電素子の駆動により、インクカートリッジ10から印刷ヘッド9へと供給され、液滴吐出ヘッド9のノズル形成面に形成された複数のノズルから、プラテン3上に給送された印刷媒体(基材)Pに対して吐出されるようになっている。
これにより印刷物を製造することが可能となる。
【0035】
(加熱工程)
印刷物の製造方法においては、上述した吐出工程に加え、インク組成物が付与された印刷媒体を過熱する加熱工程を設けてもよい。
本発明に係るインク組成物は、上述したように、分散媒として水を含み、さらに、アルコールを含むものであり、吐出後速やかに乾燥するため、通常、吐出工程の後に、別途、乾燥工程を設ける必要はないが、加熱工程を設けることにより、印刷媒体Sが保水性の高いものである場合や、インク組成物が揮発性の低い液体成分を比較的高い含有率で含む場合(例えば、沸点:160℃以上の液体成分を3質量%以上含む場合等)であっても、最終的に得られる印刷物中に、インク組成物を構成する液体成分が残存することを効果的に防止することができ、印刷物の耐久性、信頼性を、特に優れたものとすることができる。
【0036】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、前述した実施形態では、インク組成物として、コロイド液を用いる場合について代表的に説明したが、コロイド液でなくてもよい。
また、例えば、前述した実施形態では、液滴吐出方式としてピエゾ方式を用いたが、これに限定されず、本発明では、例えば、インクを加熱して発生した泡(バブル)によりインクを吐出させる方式など、公知の種々の技術を適用することができる。
また、前述した実施形態では、インク組成物をインクジェット方式による吐出に用いるものとして説明したが、インク組成物は、他の印刷法に適用するものであってもよい。
【実施例】
【0037】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]インク組成物の調製
(実施例1)
ポリビニルピロリドン(重量平均分子量10000)を70℃の条件下で15時間加熱して、その後室温で冷却をした。そのポリビニルピロリドン(PVP)1000gを、エチレングリコール溶液500mlに添加してPVP溶液を調整した。別の容器にエチレングリコールを500ml入れ、硝酸銀128gを加えて電磁攪拌器で十分に攪拌をして硝酸銀溶液を調整した。PVP溶液を120℃の条件下でオーバーヘッドミキサーを用いて攪拌しつつ、硝酸銀溶液を添加して約80分間加熱して反応を進行させた。そして、その後室温で冷却をさせた。得られた溶液を遠心分離機で2200rpmの条件下で10分間遠心分離を行った。その後、分離が出来た銀粒子を取り出して、余分なPVPを除去するためエタノール溶液500mlに添加した。そして、さらに遠心分離を行い、銀粒子を取り出した。さらに、取り出した銀粒子を真空乾燥機で35℃、1.3Paの条件下で乾燥させた。
上記のようにして得られた銀粒子と、アルコールとしてのエタノールと、保湿剤としてのアミノコート(旭化成ケミカルズ社製)及び2−ピロリドンと、界面活性剤としてのサーフィノール465(日信化学工業社製)と、イオン交換水とを混合することにより、インク組成物とした。
【0038】
(実施例2〜10)
インク組成物の調製に用いる成分の種類、使用量を調整することにより、表1に示すような構成となるようにした以外は、前記実施例1と同様にしてインク組成物を調製した。
(比較例1)
インク組成物の調製に用いる成分の種類、使用量を調整することにより、表1に示すような構成となるようにした以外は、前記実施例1と同様にしてインク組成物を調製した。
【0039】
表1には、前記各実施例および比較例のインク組成物の構成を示す。なお、表1中、サーフィノール465(日信化学工業社製)をS465で示した。また、前記各実施例についてのインク組成物の粘度(振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定された25℃における粘度)は、いずれも、5.0mPa・s以上10.0mPa・s以下の範囲内の値であった。
【0040】
【表1】

【0041】
[2]印刷物の製造
前記各実施例および比較例について、インク組成物を用いて、以下のようにして、印刷物を製造した。
まず、印刷媒体としてのインクジェット用専用紙(写真用紙):写真用紙<光沢>(セイコーエプソン社製)を用意した。
【0042】
この印刷媒体のインク受理層が設けられた面側に、図1に示すような液滴吐出装置を用いて、duty:40%の所定のパターンでインク組成物を付与した。これにより、印刷物が得られた。なお、本明細書において、「duty」とは、下式で算出される値である。
duty(%)=実印刷ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
(式中、「実印刷ドット数」は単位面積当たりの実印刷ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。)
【0043】
[3]評価
[3.1]光沢度
前記各実施例および比較例に係る印刷物の印刷面について、光沢度計(MINOLTA MULTI GLOSS 268)を用い、煽り角度60°での光沢度を測定し、以下の基準に従い評価した。
A:光沢度が550以上。
B:光沢度が500以上550未満。
C:光沢度が450以上500未満。
【0044】
[3.2]耐擦性
前記各実施例および比較例に係る印刷物について、印刷物の製造から48時間経過した時点で、サウザーランドラブテスターを用い、JIS K5701に準じて耐擦性試験を行い、上記[3.1]で述べたのと同様の方法により、耐擦性試験後の印刷物についても光沢度(煽り角度60°)を測定し、耐擦性試験前後での光沢度の低下率を求め、以下の基準に従い評価した。
A:光沢度の低下率が10%未満。
B:光沢度の低下率が10%以上15%未満。
C:光沢度の低下率が15%以上20%未満。
D:光沢度の低下率が20%以上25%未満。
E:光沢度の低下率が25%以上30%未満。
F:光沢度の低下率が30%以上35%未満。
G:光沢度の低下率が35%以上
これらの結果を表2に示した。
【0045】
【表2】

【0046】
表2から明らかなように、本発明に係る印刷物では、光沢度および耐擦性に優れていたのに対し、比較例では、満足のいく結果が得られなかった。
また、本発明に係るインク組成物は、液滴の吐出安定性に優れ、また、保存安定性に優れており、長期間にわたって、安定した液滴吐出を行うことができ、印刷物の製造に好適に用いることができた。
【符号の説明】
【0047】
1…インクジェット式プリンター(プリンター) 2…フレーム 3…プラテン 4…紙送りモーター 5…ガイド部材 6…キャリッジ 7…タイミングベルト 8…キャリッジモーター 9…液滴吐出ヘッド(印刷ヘッド) 10…インクカートリッジ P…印刷媒体(基材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式により吐出されるインク組成物であって、
銀粒子と、
水と、
アルコールとを含むことを特徴とするインク組成物。
【請求項2】
前記アルコールは、分子内に1個または2個の水酸基を有するものであり、かつ、炭素数が1以上10以下のものである請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記アルコールは、水との間で共沸混合物を形成するものである請求項1または2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記アルコールの含有率が0.01質量%以上15.0質量%以下である請求項1ないし3のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項5】
前記銀粒子の平均粒径が3nm以上100nm以下である請求項1ないし4のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項6】
前記銀粒子の含有率が0.5質量%以上30質量%以下である請求項1ないし5のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項7】
固形分の含有率が50質量%以下である請求項1ないし6のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項8】
印刷媒体上に、請求項1ないし7のいずれかに記載のインク組成物をインクジェット法により付与することにより得られたことを特徴とする印刷物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−57050(P2012−57050A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201662(P2010−201662)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】