説明

インク組成物及びボールペン

【課題】 金属蒸着樹脂と金属粒子とを適切に配合することにより、描線上で均一かつ高い光輝性を有するとともに、経時安定性が高く、筆記先端からの流出性も良好なボールペン用のインクを提供する。
【解決手段】 金属蒸着樹脂及び金属粒子を配合したインク組成物であって、前記金属蒸着樹脂をインク全量に対し0.5重量%以上15重量%以下含有し、前記金属蒸着樹脂の平均粒子径をA、及び、前記金属粒子の平均粒子径をBとしたとき、40μm≦A≦200μm、5μm≦B≦150μm、かつ、A>Bである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光輝性を有するインク組成物及びそのインク組成物を用いたボールペンに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、アルミニウムなどの金属扁平粒子又はパール顔料粒子を配合し、光沢性を付与したインクが多数製品化されている。しかし、実際これまで提供された製品の多くは、これら粒子の配合にもかかわらずメタリック調やパール調を描線上ではっきりと認識しにくいという欠点があった。
また、これら粒子は分散媒に対して比重が高い。そのため、光沢性を高めるためにこれらの径を大きくしたり、配合比を高めようとすると、時間が経つにつれこれら粒子が沈降し、それに伴いインクが層に分離しやすくなる。このインクの層分離を抑制するためにインクの粘度を高めると、今度は筆記先端からのインク流出量が低下し、描線がかすれやすくなる。
【0003】
下記特許文献1には、蒸着金属膜の扁平粒子片を含有するメタリックインキ組成物が開示されている。ここで開示されている技術においては、膜状の金属粒子片を配合してインクの光輝感を向上しようとしている。
下記特許文献2の実施例中には、ガラスフレーク粒子(フレーク状ガラスが金属などで被覆された構造の粒子)とアルミニウム粉が配合された光輝性水性インクが開示されている。
【特許文献1】特開2003−128963号公報
【特許文献2】特開2001−329201号公報(実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示の従来技術のように、蒸着金属膜の扁平粒子片のみを0.5〜15%の比較的少量を添加配合したインクは、その描線上に現れる金属粒子間に隙間が目立ち、均一な光輝感を発揮しにくい。一方、このような蒸着金属膜の扁平粒子片のみを15%以上配合したインクでは、金属自身の比重が高いため、インク中で沈降しやすい。さらに、金属扁平粒子の全表面は金属そのものであるため、腐食しやすい。そうすると、その結果粒子の光輝感が低下することにより、描線の光輝感も低下することとなる。
また、前記特許文献2に開示の従来技術では、ガラスフレーク粒子により、アルミニウム粉の光輝性を補完することを目的としている。ところで、ガラスフレーク粒子は硬度が高いため、ボールペンに使用した場合、ボールの回転を困難にすることになる。そのため、インクの流出量が低下する。これを避けるためにガラスフレーク粒子の配合量を少なくすると光輝感が低下する。
【0005】
上記従来技術の問題点に鑑み、本発明は、金属蒸着樹脂と金属粒子とを適切に配合することにより、描線上で均一かつ高い光輝性を有するとともに、経時安定性が高く、筆記先端からの流出性も良好なボールペン用のインクを提供することを第1の課題とする。
また、本発明は、上記第1の課題に加え、金属蒸着樹脂の性状をより適切にすることで、さらに良好な性能のボールペン用のインクを提供することを第2の課題とする。
さらに、本発明は、上記第1の課題又は第2の課題に加え、金属粒子の性状をより適切にすることで、さらに良好な性能のボールペン用のインクを提供することを第3の課題とする。
【0006】
また、本発明は、上記第1の課題、第2の課題又は第3の課題に加え、金属蒸着樹脂と金属粒子との配合比を適切に按分することで、さらに良好な性能のボールペン用のインクを提供することを第4の課題とする。
さらに、本発明は、インク中の金属蒸着樹脂と金属粒子とを適切に配合することにより、描線上で均一かつ高い光輝性を有するとともに、経時安定性が高く、筆記先端からの流出性も良好なボールペンを提供することを第5の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)第1の発明
上記第1の課題に鑑み、本発明のうち第1の発明は、金属蒸着樹脂及び金属粒子を配合したインク組成物であって、
前記金属蒸着樹脂をインク全量に対し0.5重量%以上15重量%以下含有し、
前記金属蒸着樹脂の平均粒子径をA、及び、前記金属粒子の平均粒子径をBとしたとき、
40μm≦A≦200μm、
5μm≦B≦150μm、かつ、
A>B
であることを特徴とする。
【0008】
「金属蒸着樹脂」とは、描線に光輝性を与えるための主材料をいう。具体的には、樹脂膜に金属を蒸着させ、さらに樹脂膜で蒸着面を覆い、これを粉砕し、粒子径を均一に揃えたものを金属蒸着樹脂として用いる。この樹脂膜は、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂などの樹脂種を用いて形成することが可能である。
この金属蒸着樹脂のインク全量に対する配合量が0.5重量%未満であると、描線の光輝感が不足する。一方、配合量が15重量%を超えると、特にボールペンに使用する場合には、筆記先端の目詰まりが生じやすくなる。よって、この金属蒸着樹脂の配合量の適正範囲は0.5重量%以上かつ15重量%以下ということになる。
【0009】
また、この金属蒸着樹脂の平均粒子径が40μm未満であると、金属蒸着樹脂自体の光輝感が低下する。一方、平均粒子径が200μmを超えると、特にボールペンに使用する場合には、筆記先端からのインクの流出性が劣るとともに、インク中で金属蒸着樹脂が沈降しやすくなる。よって、この金属蒸着樹脂の平均粒子径の適正範囲は40μm以上かつ200μm以下ということになる。
さらに、金属粒子の形状については特に限定するものではないが、体積当たりの表面積を増やすこと、また、分散媒中の分散性を良くすることに鑑み、フレーク状に形成したものが望ましい。またその平均粒子径が、金属蒸着樹脂の平均粒子径以上である場合には、描線上において金属蒸着樹脂間に入り込みにくくなる。よって、金属粒子の平均粒子径は、金属蒸着樹脂の平均粒子径より小さいこととなっている。
【0010】
この金属粒子の配合量が0.5重量%未満であると、描線の光輝感が不足する。一方、配合量が15重量%を超えると、特にボールペンに使用する場合には、筆記先端の目詰まりが生じやすくなる。よって、この金属粒子の配合量の適正範囲は0.5重量%以上かつ15重量%以下ということになる。
また、この金属粒子の平均粒子径が5μm未満であると、描線の光輝感が不足する。一方、平均粒子径が150μmを超えると、特にボールペンに使用する場合には、目詰まりにより筆記先端からのインクの流出性が劣ることとなる。よって、この金属粒子の平均粒子径の適正範囲は5μm以上かつ150μm以下ということになる。
【0011】
上述のように、本第1の発明に係るインク組成物においては、金属蒸着樹脂を上述の通り配合し、かつ、この金属蒸着樹脂よりも小さい金属粒子が混合されている。すなわち、金属蒸着樹脂が描線上の光輝感の大半を担うものであるが、金属蒸着樹脂間の隙間には小さい金属粒子が存在するので、さらに光輝感が補われることとなっている。
なお、この金属蒸着樹脂には、必要に応じ、染料又は顔料などで着色することも可能である。
また、金属蒸着樹脂自身は、金属膜の扁平粒子に比べ、比重が小さいので、同量配合した場合の粒子の沈降速度が遅い。すなわち、インク組成物の経時的安定性が高まることになる。加えて、金属膜の扁平粒子を配合した場合に比べ、粒子径を大きくすることが可能となるとともに、配合比を高くすることも可能である。これにより結果として光輝感が向上することになる。また、補助的に用いる金属粒子も粒子径が金属蒸着樹脂に比べ小さいものを使用しているので、その沈降速度も比較的緩やかになり、これによっても経時的安定性が向上することになる。
【0012】
さらに、金属蒸着樹脂及び金属粒子の沈降速度が遅いことから、その分散媒の粘度をさほど高める必要がない。そのため、インク濃度を高くすることに伴うインクの追従不良や描線のカスレも発生しにくくなる。また、金属蒸着樹脂は、従来使用されていたガラスフレークに金属コーティングした粒子より硬度が低く、ボールペンの筆記先端からの流出性の劣化も起こりにくく、筆記感への悪影響も少ない。
本発明に係るインク組成物の主溶剤として水を用いる場合、すなわち、水性ボールペン用インク組成物として本発明を構成する場合には、保水性の付与及び筆記感の向上の観点より、さらに溶剤として、水に相溶性のある極性基を有する水溶性有機溶媒及び水溶性液体媒体のうち一方又は両方を使用することができる。水溶性有機溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、ピロリドン、トリエタノールアミンなどが挙げられ、これらは単独又は2種以上の混合物として用いることができる。また、水溶性液体媒体としては、グリセリンエチレンオキサイド付加物、グリセリンプロピレンオキサイド付加物、ジグリセリンエチレンオキサイド付加物(好ましくはジグリセリンエチレンオキサイド5〜40モル付加物)及びジグリセリンプロピレンオキサイド付加物(好ましくはジグリセリンプロピレンオキサイド4〜30モル付加物)などが挙げられ、これらは単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0013】
本発明に係るインク組成物には、金属蒸着樹脂及び金属粒子の沈降防止目的で、粘度調整剤を使用することもできる。粘度調整剤としては、合成高分子、セルロース類及び多糖類からなる群から選ばれた少なくとも一種を使用することができる。合成高分子としては、たとえば、ポリアクリル酸類、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ビスアクリルアミドメチルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール、ポリジオキソラン、ポリスチレンスルホン酸、ポリプロピレンオキサイドなどが挙げられる。セルロース類としては、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。多糖類としては、キサンタンガム、グアーガム、カゼイン、アラビアガム、ゼラチン、アミロース、アガロース、アガロペクチン、アラビナン、カードラン、カロース、カルボキシメチルデンプン、キチン、キトサン、クインスシード、グルコマンナン、ジェランガム、タマリンシードガム、デキストラン、ニゲラン、ヒアルロン酸、プスツラン、フノラン、ペクチン、ポルフィラン、ラミナラン、リケナン、カラギーナン、アルギン酸、トラガカントガム、アルカシーガム、ローカストビーンガムなどが挙げられる。
【0014】
なお、描線に有彩色の着色をする場合には、水に溶解又は分散可能な全ての染料、酸化チタンを始めとする公知の無機系及び有機系顔料、樹脂エマルジョンを染料で着色した疑似顔料、並びに白色系プラスチック顔料を本発明に係るインク組成物に添加してもよい。染料の具体例としては、たとえば、エオシン、フロキシン、ウォーターイエロー#6−C、アシッドレッド、ウォーターブルー#105、ブリリアントブルーFCF及びニグロシンNB等の酸性染料、ダイレクトブラック154、ダイレクトスカイブルー5B及びバイオレットBB等の直接染料、並びに、ローダミン及びメチルバイオレット等の塩基性染料が挙げられる。無機系顔料としては、たとえば、カーボンブラック等が挙げられる。有機系顔料としては、たとえば、アゾレーキ、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料並びに染料レーキ等が挙げられる。いずれを添加する場合も、添加量は、インク全量に対して0.1〜40重量%の範囲内で、インクの描線濃度により適宜増減することが望ましい。
【0015】
また、その他の添加剤として、顔料の分散剤、金属蒸着樹脂や金属粒子の固着剤、pH調整剤、防腐剤、防錆剤及び潤滑剤のいずれか若しくはいくつか又は全部を本発明に係るインク組成物に添加してもよい。
顔料の分散剤又は金属蒸着樹脂や金属粒子の固着剤としては、たとえば、スチレンマレイン酸のアンモニウム塩及びスチレンアクリル酸のアンモニウム塩などの水溶性高分子等が挙げられる。
pH調整剤としては、たとえば、アンモニア、尿素、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリポリリン酸ナトリウム及び炭酸ナトリウム等のアルカリ金属塩並びに水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物等が挙げられる。
【0016】
防腐剤としては、たとえば、フェノール、ナトリウムオマジン、ペンタクロロフェノールナトリウム、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2,3,5,6−テトラクロロ−4(メチルスルフォニル)ピリジン、ベンズイミダゾール系化合物、並びに安息香酸、ソルビタン酸及びデヒドロ酢酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。
潤滑剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリアルキレングリコール誘導体、脂肪酸アルカリ塩、ノニオン系界面活性剤及びジメチレンポリシロキサンのポリエチレングリコール付加物等のポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。
本発明に係るインク組成物の粘度は、25℃、剪断速度38.3sec-1において、150〜1000mPa・secであることが望ましい。150mPa・secを下回ると使用する金属蒸着樹脂又は金属粒子の種類によっては経時的な沈降や層分離が発生しやすくなり、一方、1000mPa・secを上回るとインクの追従不良や描線のカスレが発生しやすくなる、といった弊害が生ずるからである。
【0017】
本発明に係るインク組成物の作製方法としては、公知の分散、撹拌、脱泡及び濾過といった方法を用いることができる。
(2)第2の発明
前記第1の発明においては、金属蒸着樹脂の厚さ及び蒸着される金属種については特に限定はなかった。しかし、前記第2の課題に鑑みれば、本発明のうち第2の発明として、前記第1の発明の特徴に加え、前記金属蒸着樹脂は、厚さ0.1〜10μmの樹脂膜上に、アルミニウム、銀、金、白金、銅、亜鉛、真鍮、ニッケル及び鉄からなる群のうちの少なくとも一つを蒸着したものであることを特徴とすることが望ましい。
【0018】
なお、この樹脂膜の厚さが0.1μm未満であると、金属蒸着樹脂が脆弱になり、使用している間に崩壊しやすく、長期間に亘り平均粒子径の設計値を維持することが困難である。一方、樹脂膜の厚さが10μmを超えると、間に挟まれる蒸着金属の光沢が損なわれることとなる。よって、この樹脂膜の厚さは、0.1μm以上かつ10μm以下であることが望ましい。
また、蒸着金属の厚さについては特に限定するものではないが、0.01nm未満であると、金属光沢が損なわれる傾向がある一方、蒸着金属の厚さが1μmを超えると金属蒸着樹脂の比重が高くなり過ぎ沈降しやすくなる。よって、この蒸着金属の厚さは、0.01nm以上かつ1μm以下であることが望ましい。
【0019】
なお、この金属蒸着樹脂においては、上記樹脂膜間に上記金属の蒸着層による金属蒸着膜を挟み込んだ構造としてもよい。このように、金属蒸着樹脂を蒸着金属の両面を樹脂で挟み込んだ構造とすると、金属自身が腐食する可能性が低くなる。また、樹脂自身は凹凸がない平面に仕上げられるので、金属膜の扁平粒子の表面に比べ光の反射率がいっそう高くなっており、これによって輝度が高くなる。このように、金属蒸着膜を樹脂膜間に挟み込む場合、各樹脂膜を、同種の樹脂で構成してもよいし、また、異種の樹脂で構成してもよい。
(3)第3の発明
前記第1の発明又は第2の発明における「金属粒子」とは、金属蒸着樹脂による光輝性を補完し、描線に均一かつ連続的な光輝性性を与えるための材料をいう。前記第1の発明又は第2の発明においてはこの金属粒子の金属種については特に限定はなかった。しかし、前記第3の課題に鑑みれば、本発明のうち第3の発明として、前記第1の発明又は第2の発明の特徴に加え、前記金属粒子は、金、銀、銅、真鍮及びアルミニウムからなる群のうちの1により形成されていることを特徴とすることが望ましい。とりわけ、比重の小さいアルミニウムを使用することが望ましい。
【0020】
(4)第4の発明
前記第1の発明、第2の発明又は第3の発明においては、金属粒子の金属蒸着樹脂に対する重量比については特に限定はなかった。しかし、前記第4の課題に鑑みれば、本発明の第4の発明として、前記第1の発明、第2の発明又は第3の発明の特徴に加え、前記金属粒子の前記金属蒸着樹脂に対する重量比が5%以上150%以下とすることが望ましい。
ここで、前記金属粒子の前記金属蒸着樹脂に対する重量比が5%未満であれば、金属蒸着樹脂間の隙間を金属粒子で補完しきれなくなる。一方、この重量比が150%を超えると、主たる光輝性を担う金属蒸着樹脂の上を金属粒子が被覆することになり、結果として光輝性が低下する。よって、金属粒子の金属蒸着樹脂に対する重量比は、5%以上150%以下であることが望ましい。とりわけ、30%以上70%以下とすることがより望ましい。
【0021】
(5)第5の発明
前記第5の課題に鑑み、本発明のうち第5の発明に係るボールペンは、インク収容管を備えるとともに、前記第1の発明から第4の発明までのいずれかに係るインク組成物を前記インク収容管に収容したことを特徴とする。
このようなボールペンで筆記を行うと、その描線中に金属蒸着樹脂と金属粒子とが表れることとなる。より詳しくは、描線中において、光輝性を主に発揮する金属蒸着樹脂間には隙間が生じているが、その隙間を金属粒子が埋めることになる。これにより、本来光輝性を発揮し得ない隙間の部分においては金属粒子が光輝性を担うことになる。したがって、金属蒸着樹脂のみを含むインク組成物を収容したボールペンによる描線に比べ、本件発明に係るボールペンは、金属粒子により光輝性が増すこととなっている。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上述の通り構成されているので、以下に記す効果を奏する。
すなわち、本発明のうち、第1の発明によると、金属蒸着樹脂と金属粒子とを適切に配合することにより、描線上で均一かつ高い光輝性を有するとともに、経時安定性が高く、筆記先端からの流出性も良好なボールペン用のインクを提供することが可能となる。
また、本発明のうち、第2の発明によると、上記第1の発明の効果に加え、金属蒸着樹脂の性状をより適切にすることで、さらに良好な性能のボールペン用のインクを提供することが可能となる。
さらに、本発明のうち、第3の発明によると、上記第1の発明又は第2の発明の効果に加え、金属粒子の性状をより適切にすることで、さらに良好な性能のボールペン用のインクを提供することが可能となる。
【0023】
また、本発明のうち、第4の発明によると、上記第1の発明、第2の発明又は第3の発明の効果に加え、金属蒸着樹脂と金属粒子との配合比を適切に按分することで、さらに良好な性能のボールペン用のインクを提供することが可能となる。
さらに、本発明のうち、第5の発明によると、インク中の金属蒸着樹脂と金属粒子とを適切に配合することにより、描線上で均一かつ高い光輝性を有するとともに、経時安定性が高く、筆記先端からの流出性も良好なボールペンを提供することが可能となる。
【実施例】
【0024】
(1)実施例1
本発明の実施例として、下記の表1に示す配合のインク組成物を作製しこれを実施例1とした。
【0025】
【表1】

なお、「金属粒子」の欄における含有量の項内のかっこ内の数値は金属粒子正味の含有量を示したものである(以下同様)。
(2)実施例2
本発明の実施例として、下記の表2に示す配合のインク組成物を作製しこれを実施例2とした。
【0026】
【表2】

(3)実施例3
本発明の実施例として、下記の表3に示す配合のインク組成物を作製しこれを実施例3とした。
【0027】
【表3】

(4)実施例4
本発明の実施例として、下記の表4に示す配合のインク組成物を作製しこれを実施例4とした。
【0028】
【表4】

(5)実施例5
本発明の実施例として、下記の表5に示す配合のインク組成物を作製しこれを実施例5とした。
【0029】
【表5】

(6)実施例6
本発明の実施例として、下記の表6に示す配合のインク組成物を作製しこれを実施例6とした。
【0030】
【表6】

(7)実施例7
本発明の実施例として、下記の表7に示す配合のインク組成物を作製しこれを実施例7とした。
【0031】
【表7】

(8)実施例8
本発明の実施例として、下記の表8に示す配合のインク組成物を作製しこれを実施例8とした。
【0032】
【表8】

(9)実施例9
本発明の実施例として、下記の表9に示す配合のインク組成物を作製しこれを実施例9とした。
【0033】
【表9】

(10)実施例10
本発明の実施例として、下記の表10に示す配合のインク組成物を作製しこれを実施例10とした。
【0034】
【表10】

(11)比較例1
本発明の比較例として、下記の表11に示す配合のインク組成物を作製しこれを比較例1とした。
【0035】
【表11】

(12)比較例2
本発明の比較例として、下記の表12に示す配合のインク組成物を作製しこれを比較例2とした。
【0036】
【表12】

(13)比較例3
本発明の比較例として、下記の表13に示す配合のインク組成物を作製しこれを比較例3とした。
【0037】
【表13】

(14)比較例4
本発明の比較例として、下記の表14に示す配合のインク組成物を作製しこれを比較例4とした。
【0038】
【表14】

(15)比較例5
本発明の比較例として、下記の表15に示す配合のインク組成物を作製しこれを比較例5とした。
【0039】
【表15】

(16)実施例6
本発明の実施例として、下記の表16に示す配合のインク組成物を作製しこれを実施例6とした。
【0040】
【表16】

(17)比較例7
本発明の比較例として、下記の表17に示す配合のインク組成物を作製しこれを比較例7とした。
【0041】
【表17】

(18)比較例8
本発明の比較例として、下記の表18に示す配合のインク組成物を作製しこれを比較例8とした。
【0042】
【表18】

(19)比較例9
本発明の比較例として、下記の表19に示す配合のインク組成物を作製しこれを比較例9とした。
【0043】
【表19】

なお、上記各実施例及び比較例に示すインク組成物の粘度は、E型回転粘度計(VISCOMETER MODEL RE100、東機産業)にて、R24ロータを用いてコーン角1°34′、剪断速度38.4sec-1、測定時間60sec及び測定温度25℃で測定したものである。
(20)試験項目
上記各実施例及び比較例に係るインク組成物を、以下の試験項目にて評価した。なお、下記の試験1、試験2及び試験4においては、各インク組成物20を、図1に示すボールペンのインク収容管10に充填した。このインク収容管10は内径4.0mmで半透明のポリプロピレンチューブであり、そのペン先部40には、市販のボールペン(ユニボールシグノ、三菱鉛筆)のものと同じボールペンチップ41を装着した。ボールペンチップ41の本体部分の材質は快削ステンレス、その先端に抱持されるボール42は直径1.0mmのタングステンカーバイトである。
【0044】
(20−1)試験1:描線光輝感
各ボールペンを気温25℃、湿度60%の環境下に置き、ISO規格(14145−1)に準拠した筆記用紙にフリーハンドで螺旋筆記した。その描線の光輝感を目視で確認し、下記の基準で評価した。
○:光輝感が非常に強い。
△:光輝感はあるが、さほど強くはない。
×:ほとんど光輝感がない。
(20−2)試験2:描線光輝感の均一性
各ボールペンを気温25℃、湿度60%の環境下に置き、ISO規格(14145−1)に準拠した筆記用紙にフリーハンドで螺旋筆記した。その描線の光輝感を目視で確認し、下記の基準で評価した。
【0045】
○:描線全体に均一な光輝感がある。
△:所々、光輝感がない部分がある。
×:全体的に光輝感がない。
(20−3)試験3:経時安定性
各インキ組成物を15mlのガラス製蓋付瓶に充填し、密封した状態で、50℃の条件下で1ヶ月保存した。この保存後の各インク組成物について、金属蒸着樹脂及び金属粒子の分離及び凝集の状態を目視で確認し、下記の基準で評価した。
○:分離又は凝集は発生していない。
【0046】
△:やや分離又は凝集が発生している。
×:明らかに分離又は凝集が発生している。
(20−4)試験4:インキ流出性
各ボールペンを気温25度、湿度60%の環境下に置き、ISO規格(14145−1)に準拠した筆記用紙に自動筆記試験器を使用して、筆記速度4.5m/min、筆記角度60°及び筆記加重0.98Nの筆記条件でインクがなくなるまで筆記を続けた。そして、描線の状態を目視で確認し、下記の基準で評価した。
○:最後までカスレがない。
【0047】
△:筆記終盤で若干のカスレが生ずる。
×:筆記途中で著しいカスレが生ずる。
(21)結果
上記各試験の結果を、各実施例及び比較例について示したのが下記の表20である。なお、同表には、各実施例及び比較例について、金属蒸着樹脂の平均粒子径(A)、金属粒子の平均粒子径(B)、AがBより大であるか否か、金属蒸着樹脂の含有量(以下「樹脂含有量」とする。)、及び金属粒子の金属蒸着樹脂に対する重量比(以下、「重量比」とうする。)も併せて示している。
【0048】
【表20】

まず、金属蒸着樹脂の平均粒子径が40μm以上200μm以下(より具体的には、44μm以上150μm以下)、金属粒子の平均粒子径が5μm以上150μm以下(より具体的には、7μm以上130μm以下)、及び樹脂含有量が0.5重量%以上15重量%以下(より具体的には1.00重量%以上8.50重量%以下)であって、なおかつ金属蒸着樹脂の平均粒子径が金属粒子の平均粒子径より大きくなっている実施例1から10までにおいては、いずれの試験項目においても「×」はなく、「△」があったとしても1個に留まっている。
【0049】
これに対し、金属粒子のみで金属蒸着樹脂を含有しない比較例3では、描線光輝感(試験1)が「×」と劣り、経時安定性(試験3)及びインク流出性(試験4)の2項目の結果が「△」であった。さらに、金属蒸着樹脂も金属粒子も含有せず、その代わりにガラスフレーク粒子のみを含有する比較例4では、描線光輝感の均一性(試験2)の結果が「×」と劣り、5μm以上150μm以下及び経時安定性(試験3)の2項目の結果が「△」であった。これにより、金属蒸着樹脂の配合により描線光輝感の向上が図られるとともに、さらに金属粒子を配合することで描線光輝感の均一性も向上することが判明した。
金属蒸着樹脂の平均粒子径が40μm未満である比較例5では、描線光輝感(試験1)の結果が「×」と劣っていた。一方、金属蒸着樹脂の平均粒子径が200μmを上回る比較例6では、経時安定性(試験3)及びインク流出性(試験4)の2項目の結果が「×」と劣っていた。よって、金属蒸着樹脂の平均粒子径は40μm以上200μm以下が好適であると判明した。
【0050】
金属粒子の平均粒子径が5μm未満である比較例7では、描線光輝感(試験1)の結果が「×」と劣っており、また描線光輝感の均一性(試験2)の結果も「△」であった。一方、金属粒子の平均粒子径が150μを上回る比較例8では、インク流出性(試験4)の結果が「×」と劣っており、また経時安定性(試験3)の結果も「△」であった。よって、金属粒子の平均粒子径は5μm以上150μm以下が好適であると判明した。
金属粒子の平均粒子径が金属蒸着樹脂の平均粒子径以上となっている比較例9においては、描線光輝感(試験1)の結果が「×」と劣っていた。よって、金属粒子の平均粒子径は金属蒸着樹脂の平均粒子径を下回るのが描線光輝感の観点からは好適であることが判明した。
【0051】
樹脂含有量が0.5重量%を下回る比較例1では、描線光輝感(試験1)の結果が「×」と劣っていた。一方、樹脂含有量が15重量%を上回る比較例2では、経時安定性(試験3)及びインク流出性(試験4)の2項目の結果が「×」と劣っていた。よって、樹脂含有量は0.5重量%以上15重量%以下が好適であると判明した。
なお、実施例のうちでも、重量比が5%を下回る実施例9では描線光輝性の均一感(試験2)の結果が若干劣り、また、重量比が150%を上回る実施例10では描線光輝感(試験1)の結果が若干劣ることとなっている。よって、重量比は5%以上150%以下(より具体的には、16.7%以上150%以下)であることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施例及び比較例に係るインク組成物を充填したボールペンのインク収容管を断面図で示す。
【符号の説明】
【0053】
10 インク収容管 20 インク組成物 40 ペン先部
41 ボールペンチップ 42 ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属蒸着樹脂及び金属粒子を配合したインク組成物であって、
前記金属蒸着樹脂をインク全量に対し0.5重量%以上15重量%以下含有し、
前記金属蒸着樹脂の平均粒子径をA、及び、前記金属粒子の平均粒子径をBとしたとき、
40μm≦A≦200μm、
5μm≦B≦150μm、かつ、
A>B
であることを特徴とするインク組成物。
【請求項2】
前記金属蒸着樹脂は、厚さ0.1〜10μmの樹脂膜上に、アルミニウム、銀、金、白金、銅、亜鉛、真鍮、ニッケル及び鉄からなる群のうちの少なくとも一つを蒸着し、前記平均粒子径となるように粉砕したものであることを特徴とする請求項1記載のインク組成物。
【請求項3】
前記金属粒子は、金、銀、銅、真鍮及びアルミニウムからなる群のうちの1により形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のインク組成物。
【請求項4】
前記金属粒子の前記金属蒸着樹脂に対する重量比が5%以上150%以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインク組成物。
【請求項5】
インク収容管を備えるとともに、
請求項1から4までのいずれかに記載のインク組成物を前記インク収容管に収容したことを特徴とするボールペン。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−84757(P2007−84757A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277972(P2005−277972)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】