説明

インジェクタ

【課題】インジェクタにおいて、噴孔における燃料流をさらに薄膜化して噴霧微粒化をより一層促進する。
【解決手段】ニードル弁3の先端部には、角度θ1だけ着座面22よりも急勾配になって着座面22に連続して内周側に伸びるガイド面41が設けられ、噴孔内周側壁面42は、角度θ2だけガイド面41に対して外周側に向かって傾斜している。これにより、着座面22が被着座面21から離座して、燃料流路12から噴孔14に向かって燃料が流れるようになると、着座面22と被着座面21との間を通過した燃料は、ガイド面41に押し付けられ集約されて噴孔14に流入する。また、噴孔14に流入した燃料は、噴孔内周側壁面42に押し付けられてさらに集約される。このため、噴孔14における燃料流をさらに薄膜化して噴霧微粒化をより一層促進することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに燃料を噴射供給するインジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インジェクタにより噴射される燃料の噴霧を微粒化して燃料と空気との混合を促進する技術が、様々な面から検討されている。そして、このような噴霧微粒化を促す方法の1つとして、噴孔における燃料流を液膜状に形成するとともに、この燃料流の液膜を薄膜化することが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のインジェクタによれば、噴孔を有するプレートにより弁ボディの先端部が形成され、弁体の先端部には、プレートに向かって伸びるピンが設けられている。また、ピンの後方には、後端側に向かって拡径する着座面が設けられ、この着座面が弁ボディの被着座面に対して線状かつ環状に離着することで、噴孔が弁ボディ内の燃料流路に対して開閉される。
【0004】
これにより、着座面が被着座面から離座して、燃料流路から噴孔に向かって燃料が流れるようになると、着座面と被着座面との間を通過した燃料は、ピンに押し付けられ集約されて噴孔に流入する。このため、噴孔における燃料流が液膜状になって噴霧微粒化が促されている。
【0005】
また、特許文献2に記載のインジェクタによれば、弁体の先端部が球面状に設けられ、着座面も球面状に設けられている。そして、球面状の着座面がテーパ状の被着座面に対して線状かつ環状に離着することで、噴孔が弁ボディ内の燃料流路に対して開閉される。
これにより、燃料流路から噴孔に向かって燃料が流れるようになると、着座面と被着座面との間を通過した燃料は、噴孔の内壁面の内で内周側の部分に押し付けられ集約される。このため、噴孔における燃料流が液膜状になって噴霧微粒化が促されている。
【0006】
しかし、噴霧微粒化に対する要請は極めて高く、噴孔内の燃料流をさらに薄膜化する要望は極めて旺盛である。この点、特許文献1、2に記載のインジェクタは集約回数が1回のみであり、さらに、特許文献2に記載のインジェクタは、燃料を集約する場所(噴孔の内壁面の内周側の部分)への燃料流の指向性が低いので、両方ともに更なる改善の余地が大きいものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2553120号公報
【特許文献2】特許第4129018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、インジェクタにおいて、噴孔における燃料流をさらに薄膜化して噴霧微粒化をより一層促進することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔請求項1の手段〕
請求項1に記載のインジェクタは、先端に噴孔を有する弁ボディと、弁ボディに収容される弁体とを備え、弁ボディに弁体を収容することで、弁体の外周と弁ボディの内周との間に燃料流路を形成し、弁体を弁ボディの内部で軸方向に移動させて弁ボディに離着させることで、噴孔を燃料流路に対して開閉する。
【0010】
また、弁体の先端部には、弁ボディの被着座面に離着するための着座面が設けられ、着座面が被着座面に対して線状かつ環状に離着することで、噴孔が燃料流路に対して開閉される。さらに、弁体の先端部には、0°よりも大きくかつ90°よりも小さい範囲の角度だけ着座面よりも急勾配になって着座面に連続して内周側に伸びるガイド面が設けられ、噴孔の内壁面の内で内周側の部分は、0°よりも大きくかつ90°よりも小さい範囲の角度だけガイド面に対して外周側に向かって傾斜している。
また、ガイド面の下流端は、噴孔の内壁面の内で内周側の部分の上流端よりも外周側にあり、ガイド面を下流側に延長した延長面は、噴孔の内壁面の内で内周側の部分に交差している。
【0011】
これにより、着座面が被着座面から離座して、燃料流路から噴孔に向かって燃料が流れるようになると、着座面と被着座面との間を通過した燃料は、ガイド面に押し付けられ集約されて噴孔に流入する。また、噴孔に流入した燃料は、噴孔の内壁面の内周側の部分に押し付けられてさらに集約される。このため、噴孔における燃料流をさらに薄膜化して噴霧微粒化をより一層促進することができる。
【0012】
なお、ガイド面および噴孔の内周側部分で2回集約することによる微粒化効果は、ガイド面で1回集約することによる微粒化効果と、噴孔の内周側部分で1回集約することによる微粒化効果との単なる足し合わせ以上の効果であり、請求項1の手段は、噴孔における燃料流を薄膜化して噴霧微粒化を促進する点において、極めて有効な手段である。
【0013】
また、ガイド面の下流端を、噴孔の内壁面の内で内周側の部分の上流端よりも外周側に配置することにより、2回目の集約場所である噴孔の内周側部分への燃料流の指向性を高めることができる。このため、噴孔内の燃料流をさらに薄膜化して噴霧微粒化を促進することができる。
【0014】
〔請求項2の手段〕
請求項2に記載のインジェクタによれば、ガイド面は、上流側から下流側に向かって円錐状に縮径している。
この手段は、ガイド面の一態様を示すものである。
【0015】
〔請求項3、4の手段〕
請求項3に記載のインジェクタによれば、噴孔は、先端に向かって外周側に傾斜するように、かつ、拡径するように設けられている。
請求項4に記載のインジェクタによれば、噴孔は、楕円状に開口している。
これらの手段は、噴孔の一態様を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】インジェクタの全体構成図である(実施例1)。
【図2】噴孔の配置を示す説明図である(実施例1)。
【図3】インジェクタの要部構成図である(実施例1)。
【図4】(a)は液膜厚さと噴霧粒径との相関図であり、(b)は液膜厚さの薄膜化を示す説明図である(実施例1)。
【図5】インジェクタの要部構成図である(実施例2)。
【図6】インジェクタの要部構成図である(変形例)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態のインジェクタは、先端に噴孔を有する弁ボディと、弁ボディに収容される弁体とを備え、弁ボディに弁体を収容することで、弁体の外周と弁ボディの内周との間に燃料流路を形成し、弁体を弁ボディの内部で軸方向に移動させて弁ボディに離着させることで、噴孔を燃料流路に対して開閉する。
【0018】
また、弁体の先端部には、弁ボディの被着座面に離着するための着座面が設けられ、着座面が被着座面に対して線状かつ環状に離着することで、噴孔が燃料流路に対して開閉される。さらに、弁体の先端部には、0°よりも大きくかつ90°よりも小さい範囲の角度だけ着座面よりも急勾配になって着座面に連続して内周側に伸びるガイド面が設けられ、噴孔の内壁面の内で内周側の部分は、0°よりも大きくかつ90°よりも小さい範囲の角度だけガイド面に対して外周側に向かって傾斜している。
【0019】
また、ガイド面の下流端は、噴孔の内壁面の内で内周側の部分の上流端よりも外周側にあり、ガイド面を下流側に延長した延長面は、噴孔の内壁面の内で内周側の部分に交差している。なお、ガイド面は、上流側から下流側に向かって円錐状に縮径している。
さらに、噴孔は、先端に向かって外周側に傾斜するように、かつ、拡径するように設けられて楕円状に開口している。
【実施例】
【0020】
〔実施例1の構成〕
実施例1のインジェクタ1の構成を、図1を用いて説明する。
インジェクタ1は、例えば、ガソリンエンジン(図示せず)の各気筒に搭載されて、燃焼室(図示せず)に直接的に燃料を噴射するものである。また、インジェクタ1は、例えば、20MPaもの高圧の燃料を燃焼室に噴射して燃料噴霧を形成する。そして、燃焼室に形成された燃料噴霧は、火花放電により燃焼して出力を発生する。
【0021】
インジェクタ1は、燃料を噴射するノズル部2と、ノズル部2の弁体(ニードル弁3)を駆動する電磁ソレノイド部4と、高圧の燃料を受け入れる燃料受け入れ部5とにより構成され、燃料受け入れ部5を通じて受け入れた燃料を、内部に形成される燃料流路7〜12を介して噴孔14に導くとともに、ニードル弁3を駆動することにより噴孔14を通じて噴射する。
【0022】
ノズル部2は、弁体として機能するニードル弁3、先端に噴孔14を有するとともに、ニードル弁3の摺動軸部16を収容して摺動自在に支持するカップ状のニードル支持部材17、ニードル弁3およびニードル支持部材17を収容するノズルボディ18を有する。
【0023】
ここで、ニードル支持部材17およびノズルボディ18は、略円筒状の内部空間19を形成する弁ボディをなし、ニードル弁3は、内部空間19に収容されて軸方向に移動する。そして、ニードル支持部材17およびノズルボディ18は、内部空間19にニードル弁3を収容することで、各々の内周面とニードル弁3の外周面との間に噴孔14に向かう燃料流路12、11を形成する。
【0024】
また、ニードル弁3の先端部には、ニードル支持部材17に設けられた被着座面21に離着するための着座面22が設けられ、着座面22が被着座面21に対して線状かつ環状に離着することで、噴孔14が燃料流路12に対して開閉される。
【0025】
ここで、被着座面21および着座面22は両方ともテーパ状に設けられており、着座面22は、線状かつ環状に設けられた外周縁(以下、外周縁をシート部23と呼ぶ。)が被着座面21に離着することで、被着座面21に対して離着する。そして、シート部23が被着座面21に離着することで、噴孔14が燃料流路12に対して開閉され、噴孔14を通じての燃料噴射が開始したり停止したりする。
【0026】
なお、摺動軸部16の外周には、ニードル支持部材17の内周面に摺接する摺接面24と、ニードル支持部材17の内周面に摺接しない平坦面25とが交互に設けられている。そして、ニードル支持部材17の内周面と平坦面25との間に燃料の通路が形成され、この燃料の通路は燃料流路12の一部をなす。
【0027】
電磁ソレノイド部4は、軸方向に移動可能な可動コア26、ソレノイドコイル27への通電により、可動コア26を軸方向後端側に磁力的に吸引する固定コア28、可動コア26を軸方向先端側に付勢するスプリング29、スプリング29の可動コア26に対する付勢力を設定するアジャパイ30等を備え、可動コア26、固定コア28、スプリング29およびアジャパイ30等はパイプ31に同軸的に収容されている。
【0028】
なお、ソレノイドコイル27は、円筒状の樹脂製ボビン34にコイル素線を、多数回、巻回することで設けられ、コネクタ端子35を介して車載電源(図示せず)から電力の供給を受ける。また、ソレノイドコイル27の先端側、後端側および外周側は、ヨーク36により覆われている。
【0029】
可動コア26は、先端側に向かって段状に細径化する筒状体として設けられている。そして、可動コア26は、後端部がパイプ31に摺動自在に支持され、先端部がニードル弁3の後端部を挟持することで、ニードル弁3と一体となって軸方向に移動する。また、可動コア26の外周面は、パイプ31の内周面やニードル弁3の後端部外周面とともに燃料流路10を形成する。なお、燃料流路10は、パイプ31の先端開口部を介して燃料流路11と連通する。また、可動コア26の内周面は燃料流路9を形成し、燃料流路9は、可動コア26を径方向に貫通する貫通孔37により燃料流路10と連通する。
【0030】
固定コア28は、円筒状に設けられて外周側でパイプ31に固定され、内周側に燃料流路8を形成するとともに燃料流路8にスプリング29とアジャパイ30とを収容する。なお、スプリング29は、後端がアジャパイ30に支持される支持端をなし、先端が可動コア26の内周に支持されて可動コア26を付勢する付勢端をなす。
【0031】
燃料受け入れ部5は、燃料流路8に連通する燃料流路7を有し、外部から燃料を導入してフィルタ38を経由させて燃料流路7へ導き、さらに燃料流路7から燃料流路8へ燃料を導く。
【0032】
以上のような構成により、インジェクタ1に受け入れられた高圧の燃料は、燃料流路7〜12を順次に通過して噴孔14に導かれる。
また、ニードル弁3に作用する軸方向の力のバランスにおいて、噴孔14の開閉に関して考慮すべき力の内、閉弁方向に作用するものは、主に、燃料圧による荷重(燃料圧荷重)およびスプリング29による付勢力(スプリング力)であり、開弁方向に作用するものは、主に、固定コア28により可動コア26を軸方向後端側に磁力的に吸引する吸引力(電磁吸引力)である。
【0033】
そして、ソレノイドコイル27への通電開始により、固定コア28、可動コア26およびヨーク36を通る磁気回路が形成されて電磁吸引力が発生すると、ニードル弁3に作用する軸方向の力のバランスにおいて、開弁方向に作用するものが閉弁方向に作用するものよりも大きくなる。このため、可動コア26およびニードル弁3が軸方向後端側に移動し、着座面22が被着座面21から離座して噴孔14が燃料流路12に対して開放され、噴孔14を通じて燃料が噴射される。
【0034】
また、ソレノイドコイル27への通電停止により電磁吸引力が発生しなくなると、ニードル弁3に作用する軸方向の力のバランスにおいて、閉弁方向に作用するものが開弁方向に作用するものよりも大きくなる。このため、可動コア26およびニードル弁3が軸方向先端側に移動し、着座面22が被着座面21に着座して噴孔14が燃料流路12に対して閉鎖され、燃料の噴射が停止される。
なお、ソレノイドコイル27への通電開始および通電停止は、車両に搭載された所定の電子制御装置(ECU:図示せず)からの指令に応じて行われる。
【0035】
〔実施例1の特徴〕
実施例1のインジェクタ1によれば、噴孔14は、図2に示すように、ニードル支持部材17の先端において、インジェクタ1の軸芯を中心として等角度間隔に複数設けられている。また、それぞれの噴孔14は、ニードル支持部材17の内外において楕円状に開口しており、先端に向かって外周側に傾斜するように、かつ、拡径するように設けられている。
【0036】
また、ニードル弁3の先端部には、図3に示すように、角度θ1だけ着座面22よりも急勾配になって着座面22に連続して内周側に伸びるガイド面41が設けられている。さらに、噴孔14の内壁面の内で内周側の部分(以下、噴孔内周側壁面42と呼ぶ。)は、角度θ2だけガイド面41に対して外周側に向かって傾斜している。なお、角度θ1、θ2は、両方ともに0°よりも大きくかつ90°よりも小さい範囲にある。
【0037】
また、ガイド面41の下流端は、噴孔内周側壁面42の上流端よりも外周側にあり、ガイド面41を下流側に延長した延長面は、噴孔内周側壁面42に交差している。さらに、ガイド面41は、上流側から下流側に向かって円錐状に縮径している。
なお、被着座面21の内周側には、被着座面21を研磨して仕上げる際の研磨具の逃がし空間45が設けられている。
【0038】
〔実施例1の作用〕
実施例1のインジェクタ1の作用を、図3を用いて説明する。
着座面22が被着座面21から離座して噴孔14が燃料流路12に対して開放されると、燃料流路12から噴孔14に向かって燃料が流れるようになる。この際、着座面22と被着座面21との間を通過した燃料は、ガイド面41に押し付けられ集約されて噴孔14に流入する。また、噴孔14に流入した燃料は、噴孔内周側壁面42に押し付けられてさらに集約される。この結果、燃料は噴孔14の内壁面に沿って薄膜化され、液膜流となって噴孔14の外に噴射される。
【0039】
〔実施例1の効果〕
実施例1のインジェクタ1によれば、ニードル弁3の先端部には、0°よりも大きくかつ90°よりも小さい範囲の角度θ1だけ着座面22よりも急勾配になって着座面22に連続して内周側に伸びるガイド面41が設けられ、噴孔内周側壁面42は、0°よりも大きくかつ90°よりも小さい範囲の角度θ2だけガイド面41に対して外周側に向かって傾斜している。また、ガイド面41を下流側に延長した延長面は、噴孔内周側壁面42に交差している。
【0040】
これにより、着座面22が被着座面21から離座して、燃料流路12から噴孔14に向かって燃料が流れるようになると、着座面22と被着座面21との間を通過した燃料は、ガイド面41に押し付けられ集約されて噴孔14に流入する。また、噴孔14に流入した燃料は、噴孔内周側壁面42に押し付けられてさらに集約される。このため、噴孔14における燃料流をさらに薄膜化して噴霧微粒化をより一層促進することができる。
【0041】
ここで、図4は、ガイド面41による集約(対策Aと呼ぶ)のみを採用した場合、噴孔内周側壁面42による集約(対策Bと呼ぶ)のみを採用した場合、対策A、Bを両方とも採用した場合、および対策A、Bを両方とも採用しない場合に関して、噴孔14における燃料の液膜厚さと噴射後の噴霧粒径との相関を示したものである。
【0042】
また、図4では、対策A、Bを両方とも非採用の場合、対策Aのみを採用の場合、対策Bのみを採用の場合、および対策A、Bを両方とも採用の場合の液膜厚さを、それぞれ、d0、d1、d2およびd3とし、対策A、Bを両方とも非採用の場合、対策Aのみを採用の場合、対策Bのみを採用の場合、および対策A、Bを両方とも採用の場合の噴霧粒径を、それぞれ、r0、r1、r2およびr3として表記している。
【0043】
図4によれば、液膜厚さおよび噴霧粒径の両方ともに、対策A、Bを両方とも採用の場合の低減幅は、対策Aのみを採用した場合の低減幅と、対策Bのみを採用した場合の低減幅との和以上の低減幅となっている。すなわち、(d0−d3)は、(d0−d1)と(d0−d2)との和よりも大きく、(r0−r3)は、(r0−r1)と(r0−r2)との和よりも大きくなっている。
【0044】
以上により、ガイド面41および噴孔内周側壁面42で2回集約することによる微粒化効果は、ガイド面41で1回集約することによる微粒化効果と、噴孔内周側壁面42で1回集約することによる微粒化効果との単なる足し合わせ以上の効果であり、ガイド面41および噴孔内周側壁面42で2回集約する構造は、噴孔14における燃料流を薄膜化して噴霧微粒化を促進する点において、極めて有効な手段である。
【0045】
また、ガイド面41の下流端43は、噴孔内周側壁面42の上流端44よりも外周側にある。
これにより、2回目の集約場所である噴孔内周側壁面42への燃料流の指向性を高めることができる。このため、噴孔14における燃料流をさらに薄膜化して噴霧微粒化を促進することができる。
【0046】
〔実施例2〕
実施例2のインジェクタ1によれば、図5に示すように、着座面22とガイド面41との接続部は、上流側から下流側に向かって勾配が急になるように、ニードル弁3の軸芯を含む断面上でR状をなす。
これにより、ガイド面41を通過する際の燃料の圧力損失を低減できるので、ガイド面41における燃料の集約に伴う圧力損失を抑制できる。
【0047】
〔変形例〕
インジェクタ1の態様は、実施例に限定されず種々の変形例を考えることができる。例えば、実施例のインジェクタ1によれば、噴孔14は、ニードル支持部材17の先端においてニードル弁3の軸芯に垂直な平面に開口していたが、図6に示すように、噴孔14を被着座面21と同様の傾斜面に開口させてもよい。また、ニードル弁3の着座面22を球面状に設けてもよく、弁ボディの先端部をプレートにより設けて、プレートを貫通するように噴孔14を設けてもよく、インジェクタ1をインテークマニホールドに装着して吸気ポートに燃料を噴射するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 インジェクタ
3 ニードル弁(弁体)
12 燃料流路
14 噴孔
17 ニードル支持部材(弁ボディ)
18 ノズルボディ(弁ボディ)
21 被着座面
22 着座面
41 ガイド面
42 噴孔内周側壁面(噴孔の内壁面の内で内周側の部分)
43 下流端(ガイド面の下流端)
44 上流端(噴孔の内壁面の内で内周側の部分の上流端)
θ1、θ2 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に噴孔を有する弁ボディと、この弁ボディに収容される弁体とを備え、前記弁ボディに前記弁体を収容することで、前記弁体の外周と前記弁ボディの内周との間に燃料流路を形成し、
前記弁体を前記弁ボディの内部で軸方向に移動させて前記弁ボディに離着させることで、前記噴孔を前記燃料流路に対して開閉するインジェクタにおいて、
前記弁体の先端部には、前記弁ボディの被着座面に離着するための着座面が設けられ、この着座面が前記被着座面に対して線状かつ環状に離着することで、前記噴孔が前記燃料流路に対して開閉され、
さらに、前記弁体の先端部には、0°よりも大きくかつ90°よりも小さい範囲の角度だけ前記着座面よりも急勾配になって前記着座面に連続して内周側に伸びるガイド面が設けられ、
前記噴孔の内壁面の内で内周側の部分は、0°よりも大きくかつ90°よりも小さい範囲の角度だけ前記ガイド面に対して外周側に向かって傾斜し、
前記ガイド面の下流端は、前記噴孔の内壁面の内で内周側の部分の上流端よりも外周側にあり、
前記ガイド面を下流側に延長した延長面は、前記噴孔の内壁面の内で内周側の部分に交差していることを特徴とするインジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のインジェクタにおいて、
前記ガイド面は、上流側から下流側に向かって円錐状に縮径していることを特徴とするインジェクタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のインジェクタにおいて、
前記噴孔は、先端に向かって外周側に傾斜するように、かつ、拡径するように設けられていることを特徴とするインジェクタ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の内のいずれか1つに記載のインジェクタにおいて、
前記噴孔は、楕円状に開口していることを特徴とするインジェクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−79651(P2013−79651A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−281906(P2012−281906)
【出願日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【分割の表示】特願2009−248854(P2009−248854)の分割
【原出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】