説明

インスタント紅茶

【課題】高濃度の非重合体カテキン類を含み、苦味、渋味がより一層低減され、かつ滲出液の外観に優れたインスタント紅茶を提供すること。
【解決手段】紅茶葉及び緑茶抽出乾燥物を含有する飲料原料をティ−バッグ内に封入してなり、該飲料原料中の非重合体カテキン類/タンニンの質量比が0.65〜0.95である、インスタント紅茶。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度の非重合体カテキン類を含有するインスタント紅茶に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の嗜好の多様化や健康指向の高揚により、様々な飲料が上市されている。そのような茶飲料の一つに、急須やティーポット等を用いることなく、カップ等の容器に入れてお湯を注ぐだけで手軽に飲用できるインスタント茶がある。
【0003】
インスタント茶としては、例えば、紅茶と緑茶の葉の混合物を1〜2気圧下で熱水により抽出した抽出液を濃縮及び乾燥して得られる冷水可溶性のインスタント紅茶(特許文献1)、生茶葉を蒸気にて加熱した蒸し葉から得られた茶抽出液を乾燥してなるインスタント茶(特許文献2)、30〜95重量%の茶葉と5〜70重量%の乾燥可溶性茶固形物との混合物を含むアイスティ飲料用ティーバッグ(特許文献3)が提案されている。
【0004】
しかしながら、これら従来のインスタント茶は、非重合体カテキン類やタンニン等の茶由来成分に起因して苦味、渋味が感じられ、また高濃度の非重合体カテキン類を摂取しようとすると、苦味、渋味がより一層増強されてしまう。
【0005】
そこで、苦味を低減したインスタント茶として、例えば、(A)エタノールと水との質量比が99/1〜75/25の混合溶液中で緑茶抽出物を溶解抽出することにより得られた緑茶抽出物の精製物と、(B)茶葉とを固形分質量比[(A)/(B)]10/90〜90/10で含む加工茶をティーバック内に封入してなる加工茶製品が提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−194303号公報
【特許文献2】特開平10−304822号公報
【特許文献3】特開平11−221018号公報
【特許文献4】国際公開2009/044559号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献4に記載の加工茶製品によれば、高濃度の非重合体カテキン類を含有するにも拘わらず、苦味の低減された茶飲料を得ることが可能であるが、長期に亘って継続摂取するために、より一層苦味、渋味を低減して飲みやすいインスタント茶とすることが求められている。
したがって、本発明の課題は、高濃度の非重合体カテキン類を含み、苦味、渋味がより一層低減され、かつ滲出液の外観に優れたインスタント紅茶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、緑茶抽出物及び紅茶葉に含まれる苦渋味成分について検討した結果、ティーバッグ内に封入すべき緑茶抽出物及び紅茶葉を含む飲料原料中の特定成分の含有質量比を一定に制御することで、高濃度の非重合体カテキン類を含有するにも拘わらず、苦味、渋味がより一層低減され、かつ外観に優れたインスタント紅茶が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、紅茶葉及び緑茶抽出乾燥物を含有する飲料原料をティ−バッグ内に封入してなり、該飲料原料中の非重合体カテキン類/タンニンの質量比が0.65〜0.95である、インスタント紅茶を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高濃度の非重合体カテキン類を含有するにも拘わらず、苦味、渋味がより一層低減され、かつ滲出液の外観に優れたインスタント紅茶を提供することができる。また、本発明のインスタント紅茶は、茶葉から急須やティーポット等を用いて抽出する手間を要することなく、水又は熱水で手軽に高濃度の非重合体カテキン類を摂取することが可能であるから、継続摂取することにより非重合体カテキン類による生理効果を十分に期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のインスタント紅茶は、飲料原料をティ−バッグ内に封入したものであり、飲料原料として紅茶葉及び緑茶抽出乾燥物を含有する。そして、飲料原料中の非重合体カテキン類/タンニンの質量比は0.65〜0.95であるが、苦渋味の低減及び外観向上の観点から、下限が0.7、更に0.75、特に0.8であることが好ましく、他方上限は0.93、特に0.9であることが好ましい。
本明細書において「飲料原料の非重合体カテキン類/タンニンの質量比」は、カップ1杯分のインスタント紅茶から取り出した飲料原料を、該飲料原料の質量に対して100倍量の90℃の熱水で5分間抽出したときの抽出液に含まれる非重合体カテキン類量及びタンニン量に基づくものである。また「非重合体カテキン類」とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類、及びエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類を合わせての総称であり、非重合体カテキン類の濃度は上記8種の合計量に基づいて定義される。更に「タンニン」とは、非重合体カテキン類、そのエステル誘導体(例えば、没食子酸エステル)及びそれらの縮合物を包含する概念である。
【0012】
また、本発明のインスタント紅茶は、90℃の熱水200gで2分間滲出したときの滲出液中の非重合体カテキン類の含有量が200mg/100mL以上、更に230mg/100mL以上、特に250mg/100mL以上となることが好ましい。このような条件で得られた滲出液中の非重合体カテキン類の含有量が200mg/100mL以上であれば、過剰な滲出を抑制して飲用する際の苦渋味をより一層低減することが可能になり、しかも多量の非重合体カテキン類を容易に摂取できるから、非重合体カテキン類による生理効果を十分期待できる。なお、かかる非重合体カテキン類の含有量の上限は、苦渋味の低減の観点から、600mg/100mL、更に500mg/100mL、特に400mg/100mLとすることが好ましい。
【0013】
紅茶葉中の非重合体カテキン類/タンニンの質量比は、苦渋味の低減及び外観向上の観点から、下限が0.2、更に0.3、特に0.4であることが好ましく、他方上限は0.9、更に0.8、特に0.7であることが好ましい。
【0014】
また、紅茶葉中の非重合体カテキン類の含有量は、苦渋味の低減及び外観向上の観点から、下限が4質量%、更に4.5質量%、特に5質量%であることが好ましく、他方上限は10質量%、更に9質量%、特に8.5質量%であることが好ましい。
【0015】
本明細書において、紅茶葉中の「非重合体カテキン類量」、「タンニン量」及び「非重合体カテキン類/タンニンの質量比」は、紅茶葉の質量に対して100倍量の90℃の熱水で5分間抽出したときの抽出液に含まれる非重合体カテキン類量及びタンニン量に基づくものである。
【0016】
このような性状を有する紅茶葉としては、例えば、ヌワラエリヤ、ウバ、ディンブラ、ダージリン、アッサム、スリランカが例示され、これらは1種又は2種以上混合して使用することができる。これら紅茶葉の中で、より一層の苦味低減の観点から、ヌワラエリヤ、ウバ、ディンブラが好ましく、特にヌワラエリヤ、ウバが好ましい。
【0017】
紅茶葉は上記性状を有するものであれば、市販の紅茶葉を使用することができるが、抽出効率の観点から、所定の大きさに調整したものを使用することが好ましい。紅茶葉の大きさは、0.5〜2mm、特に0.7〜1.5mmであることが好ましい。このような紅茶葉は、例えば、市販の紅茶葉を必要により粉砕した後、篩にかけて採取することができる。本明細書において「紅茶葉の大きさ」とは、目開きの異なる篩(ふるい)を用いて,その目開きを通過する割合(粒度分布)を測定したときに、積算値50%の粒度となる篩の目開きの大きさをいう。
【0018】
一方、緑茶抽出乾燥物は、緑茶抽出液、その濃縮物及びそれらの精製物から選択される少なくとも1種の緑茶抽出物を乾燥したものであれば特に限定されるものではない。緑茶抽出乾燥物は、ティーバッグ内に紅茶葉と独立した状態で存在しても、紅茶葉の表面を被覆し一体化した状態で存在しても、これらの混合物として存在してもよい。緑茶抽出乾燥物の形状は特に限定されず、球状、板状,針状、不定形など任意の形状を有することができる。
【0019】
緑茶抽出乾燥物中の非重合体カテキン類/タンニンの質量比は、苦渋味の低減及び外観向上の観点から、下限が0.83、更に0.9、特に0.95であることが好ましく、他方上限は1.3、更に1.2、特に1.1であることが好ましい。
【0020】
また、緑茶抽出乾燥物中の非重合体カテキン類の含有量は、苦渋味の低減及び外観向上の観点から、下限が40質量%、更に45質量%、更に50質量%、更に55%、特に60%であることが好ましく、他方上限は100%であってもよいが、経済的観点から、95質量%、特に90質量%であることが好ましい。ここで、「緑茶抽出乾燥物中の非重合体カテキン類の含有量」は、後掲の実施例に記載の数式(I)により求めた値である。
【0021】
更に、より一層の苦渋味低減の観点から、緑茶抽出乾燥物中の非重合体カテキン類のガレート体の割合の下限が5質量%、更に8質量%、特に10質量%であることが好ましく、他方上限は55質量%、更に50質量%、特に45質量%であることが好ましい。ここで、本明細書において「非重合体カテキン類のガレート体(以下、単に「ガレート体」ともいう)」とは、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等を併せての総称であり、「非重合体カテキン類のガレート体の割合」とは、非重合体カテキン類の総量に対する上記ガレート体4種の質量比率である。
【0022】
本発明のインスタント紅茶は、紅茶葉と緑茶抽出乾燥物を、飲料原料13g当たりの非重合体カテキン類の含有量が280〜1200mg、更に400〜1200mg、更に500〜1000mg、特に550〜800mgとなるように配合することが好ましい。これにより、高濃度の非重合体カテキン類を容易に滲出することが可能になる。ここでいう「非重合体カテキン類の合計含有量」は、緑茶抽出物中の非重合体カテキン類と、紅茶葉中の非重合体カテキン類の総量である。
【0023】
本発明のインスタント紅茶には、環状オリゴ糖を含有することができる。環状オリゴ糖としては、α−、β−、γ−シクロデキストリン、及び分岐のα−、β−、γ−シクロデキストリンが例示され、これらを1種又は2種以上を併用してもよい。環状オリゴ糖は、インスタント紅茶中の緑茶抽出乾燥物の質量に対して1〜15倍量、更に3〜12倍量、特に5〜11倍量の割合で配合することが好ましい。
【0024】
更に、本発明のインスタント紅茶には、所望により、甘味料、酸化防止剤、香料、果汁エキス、果実片、果実粉末、ハーブ、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、pH調整剤、品質安定剤等の添加剤を1種又は2種以上配合することができる。なお、これら添加剤の配合量は、本発明の目的を阻害しない範囲内で適宜設定することが可能である。
【0025】
本発明のインスタント紅茶は、飲料原料をカップ1杯分毎にティーバッグに小分け包装したものであり、それをカップに入れ水又は熱水を注いで飲用することができる。なお、カップの容量は180〜320mLであることが好ましく、またティーバッグの大きさは上記カップ容量に適合するように適宜設定することが可能である。
【0026】
本発明のインスタント紅茶は、防腐・防菌やハンドリングの観点から、飲料原料中の固形分量が90質量%以上、更に95質量%以上、特に98質量%以上であることが好ましい。なお、飲料原料中の固形分量の上限は特に限定されない。ここで、「飲料原料の固形分量」とは、飲料原料を105℃の電気恒温乾燥機で3時間乾燥して揮発物質を除いた残分をいう。
【0027】
本発明のインスタント紅茶は、例えば、下記の工程(a)又は(b)を含む工程により製造することができる。
工程(a):緑茶抽出乾燥物の造粒物と、紅茶葉とを混合する工程
工程(b):緑茶抽出物を含む液状物を、紅茶葉にコーティングする工程
【0028】
先ず、工程(a)によるインスタント紅茶の製造方法について説明する。
緑茶抽出乾燥物の造粒物を準備する。緑茶抽出乾燥物の造粒物は、緑茶抽出液、その濃縮物及びそれらの精製物から選択される少なくとも1種の緑茶抽出物を乾燥して造粒することにより得ることができる。中でも、緑茶抽出物としては、より一層の苦渋味低減及び外観向上の観点から、緑茶抽出液又はその濃縮物の精製物が好ましい。
【0029】
本明細書において「緑茶抽出液」とは、不発酵茶から得られた抽出物であって、濃縮や精製操作が行われていないものをいう。抽出方法としては、ニーダー抽出、攪拌抽出(バッチ抽出)、向流抽出(ドリップ抽出)、カラム抽出等の公知の方法が採用できる。
抽出に使用する緑茶としては、例えば、Camellia属、例えば、C.var.sinensis(やぶきた種を含む)、C.var.assamica及びそれらの雑種から選択される茶樹から製茶されたものが挙げられ、例えば、煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜炒り茶、茎茶、棒茶、芽茶等が例示される。
【0030】
また、「緑茶抽出液の濃縮物」とは、不発酵茶から熱水又は水溶性有機溶媒により抽出された溶液の水分の一部を除去して非重合体カテキン類濃度を高めたものであり、例えば、特開昭59−219384号公報、特開平4−20589号公報、特開平5−260907号公報、特開平5−306279号公報などに記載の方法により製造することができる。その形態としては、固体、水溶液、スラリー状など種々のものがある。また、緑茶抽出液の濃縮物として、例えば、三井農林(株)「ポリフェノン」、伊藤園(株)「テアフラン」、太陽化学(株)「サンフェノン」等の市販品を使用してもよい。
【0031】
「緑茶抽出液又はその濃縮物の精製物」としては、例えば、下記(i)〜(iv)のいずれかの方法、あるいは2以上の組み合わせにより得られたものが挙げられる。
(i)緑茶抽出液又はその濃縮物(以下、「緑茶抽出液等」という)を水、又は水と水溶性有機溶媒(例えば、エタノール)との混合物(以下、「有機溶媒水溶液」という)に懸濁して生じた沈殿を除去した後、溶媒を留去する方法。
(ii)緑茶抽出液等を活性炭、酸性白土及び活性白土から選択される少なくとも1種の吸着剤と接触させる方法(例えば、特開2007−282568号公報)。
(iii)緑茶抽出液等を合成吸着剤に吸着させた後、該合成吸着剤に有機溶媒水溶液を接触させて非重合体カテキン類を脱離させる方法(例えば、特開2006−160656号公報)。
(iv)緑茶抽出液等を合成吸着剤に吸着させた後、該合成吸着剤に有機溶媒水溶液又は塩基性水溶液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液)を接触させて非重合体カテキン類を脱離させ、次いで得られた脱離液を活性炭と接触させる方法(例えば、特開2008−079609号公報)。
【0032】
上記(i)〜(iv)の方法においては、緑茶抽出液等としてタンナーゼ処理したものを使用することができる。ここで、「タンナーゼ処理」とは、緑茶抽出液又はその濃縮物を、タンナーゼ活性を有する酵素と接触させることをいい、非重合体カテキン類のガレート体率を上記範囲内に低減することができる。なお、タンナーゼ処理における具体的な操作方法は公知の方法を採用することが可能であり、例えば、特開2004−321105号公報に記載の方法が例示される。
【0033】
緑茶抽出物の乾燥方法としては、例えば、凍結乾燥やスプレードライ等を採用することができる。また、造粒方法は乾式でも湿式でもよいが、最適な抽出効率の観点から、水やバインダー(結合剤)の付着力を利用して造粒する湿式造粒が好ましい。バインダーとしては、例えば、環状オリゴ糖等の炭水化物を使用することができる。
好ましい造粒方法としては、噴霧乾燥法、凍結乾燥法、流動層造粒法、転動造粒法などが挙げられ、これらは組み合わせて行うことができる。各造粒方法における乾燥温度としては、例えば、凍結乾燥法では−50〜50℃、噴霧乾燥では50℃〜120℃、流動層造粒法では20〜50℃、転動造粒法では20〜60℃を採用することができる。
【0034】
中でも、緑茶抽出物の造粒方法としては、溶解性向上やケーキング防止の観点から、噴霧乾燥法又は凍結乾燥法により1次粉末を製造した後、流動層造粒法又は転動造粒法により2次粉末を製造する2段階法が好ましい。
【0035】
緑茶抽出乾燥物の造粒物の平均粒径は、100〜5000μm、更に150〜2000μm、更に180〜1000μm、特に190〜500μmであることが好ましい。このような平均粒径とすることで、非重合体カテキン類を水に溶解しやすくなるため、高濃度の非重合体カテキン類を簡便に摂取することが可能になる。ここで、本明細書において「平均粒径」とは、JIS Z 8801のふるい分け試験方法に準拠して測定した値をいう。
【0036】
次に、緑茶抽出乾燥物の造粒物と、紅茶葉を混合する。混合方式は、既知の容器回転型(水平円筒型、V型、ダブルコーン型、立方体型)又は容器固定型(リボン型、スクリュー型、円錐形スクリュー型、パドル型、流動層型、フィリップスブレンダ−)を採用することができる。
【0037】
次に、工程(b)によるインスタント紅茶の製造方法について説明する。
緑茶抽出液、その濃縮物及びそれらの精製物から選択される少なくとも1種の緑茶抽出物を含む液状物を準備する。かかる液状物は水溶液でも、有機溶媒を含んでいてもよい。次に、緑茶抽出物を含む液状物を茶葉に適用した後、乾燥する。これにより、紅茶葉の表面を緑茶抽出乾燥物で被覆することができる。緑茶抽出物を含む液状物を適用する方法としては、上記した転動造粒法や流動層造粒法を用いることができる。具体的には、固形原料を転動造粒機又は流動層造粒機に予め供給しておき、緑茶抽出物を含む液状物を噴霧コーティングする方法を採用することができる。その際、バインダーとして環状オリゴ糖等の炭水化物を併用してもよい。
【0038】
次に、緑茶抽出乾燥物の造粒物及び紅茶葉、あるいは緑茶抽出乾燥物で表面を被覆した紅茶葉をティーバッグに封入する。このようにして、本発明のインスタント紅茶を製造することができる。
【実施例】
【0039】
(非重合体カテキン類の測定)
フィルター(0.8μm)でろ過し、次いで蒸留水で希釈した試料を、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP、島津製作所製)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム(L−カラムTM ODS、4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により測定した。移動相A液は0.1mol/L酢酸水溶液、B液は0.1mol/L酢酸アセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。
【0040】
(非重合体カテキン類の含有量)
試料5gを105℃の電気恒温乾燥機で3時間乾燥した後、固形分質量を測定し、該固形分質量と、試料5g中の非重合体カテキン類の質量とから下式(I)より求めた。
【0041】
【数1】

【0042】
(タンニンの測定)
タンニン量の測定は酒石酸鉄法により、標準液として没食子酸エチルを用い、没食子酸の換算量として求めた(参考文献:「緑茶 ポリフェノール」飲食料品用機能性素材有効利用技術シリーズNo.10、社団法人 菓子・食品新素材技術センター)。
試料5mLを酒石酸鉄標準溶液5mLで発色させ、リン酸緩衝液で25mLに定溶し、540nmで吸光度を測定し、没食子酸エチルによる検量線からタンニン量を求めた。
酒石酸鉄標準液の調製:硫酸第一鉄・7水和物100mg、酒石酸ナトリウム・カリウム(ロッシェル塩)500mgを蒸留水で100mLとした。
リン酸緩衝液の調製:1/15mol/Lリン酸水素二ナトリウム溶液と1/15mol/Lリン酸二水素ナトリウム溶液を混合しpH7.5に調整した。
【0043】
(評価)
各インスタント紅茶の評価は、次の方法で行った。
インスタント紅茶を、90℃のイオン交換水200gで2分間滲出した滲出液(紅茶飲料)について、3名の専門パネラーが表1の基準により苦味と渋味を評価した。また、表2の基準により美味しさを、表3の基準により外観を、それぞれ評価した。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
(紅茶葉)
各紅茶葉は、篩よる分級処理を施し、大きさがすべて1mmのものを使用した。紅茶葉の選定においては、紅茶葉中の非重合体カテキン類量とタンニン量を測定するため、各紅茶葉をKalitaミル 細挽きNo1(カリタ社製)を用いて10gを2回粉砕処理した。その後、Retsch AS-200(レチェル社製)で30秒、分級操作を施した。得られた各紅茶葉5gを、90℃、500gの熱水で5分間抽出し、得られた抽出液について非重合体カテキン類量とタンニン量を測定し質量比を求めた。その結果を表4に示す。
【0048】
【表4】

【0049】
本実施例で使用した緑茶抽出物の製造法は以下の通りである。また、分析値を表5に示す。
【0050】
製造例1
(緑茶抽出乾燥物Aの製造)
緑茶葉に対して30質量倍のイオン交換水を用い、90℃の温度条件にて抽出して緑茶抽出液を得た。次いで、得られた緑茶抽出液をそのまま乾燥し緑茶抽出乾燥物Aを得た。緑茶抽出乾燥物Aは、非重合体カテキン類濃度が35質量%、非重合体カテキン類/タンニンの質量比が0.80、非重合体カテキン類のガレート体の割合が52質量%であった。
【0051】
製造例2
(緑茶抽出乾燥物Bの製造)
製造例1により得られた緑茶抽出乾燥物A200gを、25℃、250r/minの攪拌条件下の40質量%エタノール水溶液800g中に分散させ、酸性白土(ミズカエース#600、水澤化学社製)100gを投入後、約10分間攪拌を続けた。その後、2号ろ紙でろ過した。次に、活性炭8gを添加し再び2号ろ紙でろ過した。次に、0.2μmメンブランフィルターによって再ろ過し、濁りを除去した。次に、40℃、0.0272kg/cm2でエタノールを留去した後、乾燥して緑茶抽出乾燥物Bを得た。緑茶抽出乾燥物Bは、非重合体カテキン類濃度が45質量%、非重合体カテキン類/タンニンの質量比が0.85、非重合体カテキン類のガレート体の割合が52質量%であった。
【0052】
製造例3
(緑茶抽出乾燥物Cの製造)
製造例1により得られた緑茶抽出乾燥物A200gを、25℃、250r/min攪拌条件下の95質量%エタノール水溶液800g中に分散させ、酸性白土(ミズカエース#600、水澤化学社製)100gを投入後、約10分間攪拌を続けた。その後、2号ろ紙でろ過した。次に、活性炭16gを添加し再び2号ろ紙でろ過した。次に、0.2μmメンブランフィルターによって再ろ過し、濁りを除去した。次に、40℃、0.0272kg/cm2でエタノールを留去した後、乾燥して緑茶抽出乾燥物Cを得た。緑茶抽出乾燥物Cは、非重合体カテキン類濃度61質量%、非重合体カテキン類/タンニンの質量比が0.96、非重合体カテキン類のガレート体の割合が47質量%であった。
【0053】
製造例4
(緑茶抽出乾燥物Dの製造)
熱水を用いて緑茶葉を浴比20:1で抽出した後、水不溶分を100メッシュ金網で濾過して緑茶抽出液αを得た。緑茶抽出物αに、該緑茶抽出液αに対して430ppmとなる濃度のタンナーゼ(キッコーマン社製、タンナーゼKTFH、500U/g)を添加した。次に、25℃、60分間反応させた後、加熱して酵素を失活させて「緑茶抽出基剤α」を得た。「緑茶抽出基剤α」は、非重合体カテキン類のガレート体の割合が33質量%であった。次に、合成吸着剤(SP−70、三菱化学(株)製)600mL(非重合体カテキン類の質量に対して40g/L)を充填した円筒状のカラムに、SV=1(h-1)の条件で「緑茶抽出基剤α」2400gを通液して非重合体カテキン類を吸着させた。次に、純水900gをSV=1(h-1)の条件で通液して合成吸着剤を洗浄した。次に、非重合体カテキン類を脱離させるために、30質量%エタノール水溶液750gをSV=1(h-1)の条件で通液して脱離液を得た。次に、脱離液中の非重合体カテキン類に対して30質量%の量の粒状活性炭(太閤SGP、フタムラ化学(株)製)をカラムに充填した。次に、そのカラムに脱離液を通液して処理液を回収し、エタノールを留去し、その後乾燥して緑茶抽出乾燥物Dを得た。緑茶抽出乾燥物Dは、非重合体カテキン類濃度が70質量%、非重合体カテキン類/タンニンの質量比が1.00、非重合体カテキン類のガレート体の割合が29質量%であった。
【0054】
【表5】

【0055】
製造例5
(実施例1で使用した緑茶抽出乾燥物の造粒物の製造)
緑茶抽出乾燥物C7.6質量%に、バインダーとして環状オリゴ糖A(SL20、日本食品化工(株)、純度3.4質量%)49.2質量%、及び環状オリゴ糖B(CAVAMAX、シクロケム(株)、純度100質量%)18質量%を配合し、更にエリスリトール(三菱化学フーズ(株))でバランスさせ、全量が500gになるようにした。これらの原料を転動型造粒機である乾燥パン型造粒機(内径540mm、深さ373mm、DPZ−01、アズワン株式会社)を使用し、25℃、水平に対して45°の角度、22rpmの回転数で造粒を行った。平均粒径0.1〜0.5mmの粒子を得るまで、このパン型造粒機に水を注意深く噴霧し、次に粒子を取り出して4時間、25℃の減圧乾燥機で乾燥した後、得られた造粒物をTyler標準篩60mesh(目開き0.246mm)で分級し、通過した造粒物を次に100mesh(目開き0.147mm)で分級し、100mesh篩の上に残った造粒物を得た。この造粒物を実施例1において緑茶抽出乾燥物Cの造粒物として使用した。
【0056】
製造例6
(実施例2〜4及び比較例1〜3で使用した緑茶抽出物の造粒物の製造)
表6に示す割合で各成分を配合したこと以外は、製造例5と同様の操作により各緑茶抽出乾燥物の造粒物を製造した。
【0057】
【表6】

【0058】
実施例1〜4及び比較例1〜3
表6に示す各緑茶抽出乾燥物の造粒物と、表4に示す各紅茶葉を、ミクロ形V形混合器/S−3形(筒井理化学器械株式会社製)に投入し、粉体混合した後、混合粉体13gをポリエステル長繊維・ポリエチレン長繊維合紡不織布からなる袋形ティーバッグ(40mm×150mm)に封入してインスタント紅茶を得た。
得られたインスタント紅茶を、90℃の熱水200gで2分間滲出し、滲出液(紅茶飲料)を分析した後、官能試験を行った。その結果を表7に示す。
【0059】
【表7】

【0060】
ティーバック内に飲料原料として紅茶葉と緑茶抽出乾燥物を含有せしめ、飲料原料の非重合体カテキン類/タンニンの含有質量比を一定に制御することで、高濃度の非重合体カテキン類を含有するにも拘わらず、苦味、渋味がより一層低減され、滲出液の外観に優れたインスタント紅茶が得られることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紅茶葉及び緑茶抽出乾燥物を含有する飲料原料をティ−バッグ内に封入してなり、該飲料原料中の非重合体カテキン類/タンニンの質量比が0.65〜0.95である、インスタント紅茶。
【請求項2】
前記紅茶葉中の非重合体カテキン類/タンニンの質量比が0.2〜0.9である、請求項1記載のインスタント紅茶。
【請求項3】
前記紅茶葉がヌワラエリヤ、ウバ及びディンブラから選択される少なくとも1種である、請求項1又は2記載のインスタント紅茶。
【請求項4】
前記紅茶葉の大きさが0.5〜2mmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインスタント紅茶。
【請求項5】
前記緑茶抽出乾燥物中の非重合体カテキン類/タンニン質量比が0.83〜1.3である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインスタント紅茶。
【請求項6】
前記緑茶抽出乾燥物における非重合体カテキン類中のガレート体の割合が5〜55質量%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインスタント紅茶。
【請求項7】
90℃の熱水200gで2分間滲出したときの滲出液中の非重合体カテキン類の含有量が200〜600mg/100mLである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインスタント紅茶。