説明

インタポーザ、回路基板モジュール、及びインタポーザの製造方法

【課題】電子部品やプリント回路基板に特殊構造を付加すること無く、柔軟性を有する多数の電極構造を一括して形成できるインタポーザの構造およびその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】インタポーザは、シート状の基材14と、所定の配列で基材に固定された複数のバネ電極12とを有する。バネ電極の各々は、基材の第1の面側に設けられ、第1の方向に沿って延在する第1のパッド12aと、基材の第1の面側とは反対の第2の面側に設けられ、第1の方向に沿って延在する第2のパッド12bと、基材を貫通して第1の面側及び第2の面側に延在し、第1のパッドの一端と第2のパッドの一端を接続するポスト12cとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、電子部品を回路基板に実装する実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置等の電子部品をプリント回路基板に実装して形成される回路基板モジュールにおいて、実装構造に発生する熱応力や衝撃により発生する歪みに対して接続信頼性を確保した実装構造が提案されている。例えば、電子部品をプリント回路基板にはんだ付けした後に、電子部品とプリント回路基板と間(電子部品の下側)に接着材等のフィル材を充填し、電子部品とプリント回路基板との接合を補強することが広く行なわれている。あるいは、電子部品をプリント回路基板にはんだ付けした後に、電子部品全体を封止樹脂で覆い固める樹脂封止構造も用いられている。
【0003】
フィル材の充填や樹脂封止を用いれば、電子部品をプリント回路基板に強固に接着することができるため、外部応力に対して、接合部にかかる変位、ひずみが抑制され、はんだ接続の信頼性が保たれる。しかしながら、強固に固められているために温度変化による金属部分、樹脂部分の線膨張係数の違いにより発生する内部応力に対してひずみの逃げ場が無く、内部応力により接合部に損傷が発生するおそれがある。また、修理の際には、加熱や機械的な力を組合せて取り外す必要があり、周囲部品破損のリスクが高い。
【0004】
近年、電子部品とプリント回路基板と間にインタポーザ(中間基板)を組み込むことで接合部の応力を緩和することが提案されている。インタポーザ中にバネを形成してバネを介して電子部品とプリント回路基板とを接合することで、接合部の歪みを吸収して応力を抑制することができる。例えば、基板を貫通して延在するバイアの一端に下部コンタクトパッドを設け、バイヤの周囲の基板をコの字状に細長く切り出す。そして、反対端で、切り出した基板に沿って細いパターンを引き出され、パターンの先端に上部コンタクトパッドが接続されたインタポーザの構造が提案されている。また、メッシュを用いて複数の電極を保持した電極構造体の構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−7479号公報
【特許文献2】特開2005−50782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バイヤの周囲の基板をコの字状に切り出したインタポーザの構造では、基板の平面方向(XY方向)に沿って、下部コンタクトと上部コンタクトとの位置ずれを調整することが可能となる。しかしながら、このような構造では、下部コンタクトと上部コンタクトとの縦方向(Z方向)の位置ずれについては、調節が難しいと考えられる。Z方向の位置ずれが生じた場合、バイヤが倒れ込んでしまい、上部コンタクトのXY方向の位置がずれてしまう。
【0007】
そこで、上部コンタクトのXY方向の位置ずれが少なく、電子部品やプリント回路基板から受ける応力を緩和することが可能な多数の電極構造を一括して保持するインタポーザの構造およびその製造方法の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、シート状の基材と、所定の配列で前記基材に固定された複数のバネ電極とを有し、前記バネ電極の各々は、前記基材の第1の面側に設けられ、第1の方向に沿って延在する第1のパッドと、前記基材の第1の面側とは反対の第2の面側に設けられ、前記第1の方向に沿って延在する第2のパッドと、前記基材を貫通して前記第1の面側及び前記第2の面側に延在し、前記第1のパッドの一端と前記第2のパッドの一端を接続するポストとを有することを特徴とするインタポーザが提供される。
【0009】
また上述のインタポーザを介して電子部品が回路基板に搭載された回路基板モジュールが提供される。
【0010】
さらに、メッシュ材の所定の部位を残してCuめっき層を形成し、前記所定の部位において、前記メッシュ材の網目を貫通して前記メッシュ材の第1の面側と第1の面側の反対側の第2の面側に延在する金属ポストをNiめっきにより形成するとともに、前記金属ポストから前記メッシュ材の第1の面側において前記Cuめっき層に沿って延在する第1のパッドと、前記金属ポストから前記メッシュ材の第2の面側において前記Cuめっき層に沿って延在するNiめっき層をNiめっきにより形成するインタポーザの製造方法が提供される。
【0011】
また、メッシュ材に、所定の部位を残して第1のレジストを形成し、前記所定の部位において、前記メッシュ材の網目を貫通して前記メッシュ材の第1の面側と第1の面側の反対側の第2の面側に延在する金属ポストを金属めっきにより形成するとともに、前記金属ポストから前記メッシュ材の第1の面側において前記第1のレジストに沿って延在し、且つ前記金属ポストから前記メッシュ材の第2の面側において前記第1のレジストに沿って延在する金属層を金属めっきにより形成するインタポーザの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
実施形態によれば、電子部品やプリント回路基板に特殊構造を付加すること無く、柔軟性を有する多数の電極構造を一括して形成できるインタポーザの構造およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態によるインタポーザの電極構造を模式的に描いた図である。
【図2】電極バネの変位を説明するための図である。
【図3】第1実施形態によるインタポーザの平面図である。
【図4】インタポーザの斜視図である。
【図5】図4のA部の拡大図である。
【図6】インタポーザの製造工程を示す図である。
【図7】インタポーザの他の製造工程を示す図である。
【図8】インタポーザのバネ電極の中にシリコン樹脂を充填する工程を説明するための図である。
【図9】第2実施形態によるインタポーザの製造工程を説明するための図である。
【図10】インタポーザ要因効果の分解結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は一実施形態によるインタポーザの電極構造を模式的に描いた図である。インタポーザ10は回路基板20と複数の電極を有する電子部品である半導体装置30との間に配置される中間基板である。インタポーザ10は複数のバネ電極12が基材14により保持された構造を有し、各バネ電極12は、回路基板20の電極パッド22と、半導体装置30の電極32とにはんだ接合される。すなわち、半導体装置30の電極32は、回路基板20の電極パッド22に、バネ電極12を介して接続される。これにより、半導体装置30は回路基板20に実装されて固定された状態になる。
【0016】
バネ電極12はコの字型の電極であり、上部パッド12aと下部パッド12bとそれらの間に延在するポスト12cとを有する。すなわち、ポスト12cの上端から上部パッド12aが延在し、ポスト12cの下端から下部パッド12bが、上部パッド12aと同じ方向に延在して、コの字を形成している。上部パッド12aには半導体装置30の電極32がはんだ接合され、下部パッド12bには回路基板20の電極パッド22がはんだ接合される。
【0017】
バネ電極12は半導体装置30の電極32と同じ配列となるように基材14により保持される。インタポーザ10を半導体装置30と回路基板20との間に配置して位置決めすることで、インタポーザ10のバネ電極12を介して、半導体装置30の電極32を対応する回路基板20の電極パッド22に接続し、はんだ付けすることができる。
【0018】
以上のような構造のバネ電極12において、上部パッド12aは基材14から離間しており、図2(a)に示すように、ポスト12cの上端部を支点として傾斜することができる。同様に、下部パッド12bは基材14から離間しており、図2(a)に示すように、ポスト12cの下端部を支点として傾斜することができる。このように、上部パッド12aと下部パッド12bはポスト12cに支持された状態で、上下方向(Z方向)に変位することができる。したがって、上部パッド12aと半導体装置30の電極32との間のはんだ接合部はZ方向に変位することができる。同様に、下部パッド12bと回路基板20の電極パッド22との間のはんだ接合部はZ方向に変位することができる。これにより、はんだ接合部に外力が加わったり、熱応力が発生したとしても、バネ電極12が弾性変形することで応力は緩和され、接合信頼性を維持することができる。
【0019】
また、バネ電極12のポスト12cを細くすることで、図2(b)に示すように、ポスト12cを傾斜させることができる。これにより、上部パッド12aと下部パッド12bを相対的に平行な状態で水平(X,Y方向)に変位させることができる。したがって、半導体装置30と回路基板20との間にX,Y方向の力が加わっても、バネ電極12の上部パッド12aと下部パッド12bとが相対的に水平方向に変位可能であるので、はんだ接合部に発生する応力は抑制され、接合信頼性を維持することができる。
【0020】
上述のように、複数のバネ電極12は、所定の配列で基材14により接続されている。基材14はバネ電極12のポスト12cの中央部分を固定するシート状の部材であればよく、例えば、絶縁性の樹脂シートで形成することができる。ただし、コの字型のバネ電極12が基材14を貫通するように形成するために、後述のように基材14として繊維を編んで形成したメッシュ材を用いることで、複数のバネ電極12を接続した基材14を容易に形成することができる。
【0021】
次に、第1実施形態によるインタポーザについて説明する。
【0022】
図3は第1実施形態によるインタポーザ50の平面図である。図4はインタポーザ50の斜視図であり、図5は図4のA部の拡大図である。
【0023】
インタポーザ50は、多数のバネ電極52と、バネ電極52を保持するメッシュ材54とを有する。バネ電極52は所定の配列でメッシュ材54により接続されて保持されている。所定の配列とは、回路基板20に実装する半導体装置30の電極32の配列と同じ配列である。本実施形態では、半導体装置30は全面に電極32が配列されたタイプであり、したがって、インタポーザ50は全面にバネ電極52が設けられる。
【0024】
インタポーザ50の基材であるメッシュ材54は、ポリエチレンナフタレート等の耐熱樹脂コーティングを施した液晶ポリマー繊維を編んで形成した布状のシート材である。メッシュ材54は、半導体装置30に合わせて四辺形の形状であり、外周の4辺にフレーム56が形成されている。フレーム56はメッシュ材54を平坦な状態に保つために設けられる。フレーム56は、例えばバネ電極52と同じ材質の銅又はニッケルで形成してもよく、他の剛性を有する材料で形成してもよい。例えば、フレーム56をエポキシ樹脂又はビスマレイミド樹脂などの樹脂材で形成することもできる。メッシュ材54の外周に比較的剛性の大きいフレーム56を形成することで、柔軟性を有するメッシュ材を平坦な形状に維持する。あるいは、フレーム56をバネ電極52と同じ材質とすることで、バネ電極52を形成する工程で、同時にフレーム56を形成することができる。
【0025】
フレーム56の内側の四隅には、実装認識マーク58が設けられる。実装認識マーク58は、バネ電極52と同じ材質の銅又はニッケルで形成することが好ましい。実装認識マーク58をバネ電極52と同じ材質とすることで、バネ電極52を形成する工程で、同時に実装認識マーク58を形成することができる。
【0026】
例えば銅やニッケル等の金属で形成したフレーム56及び実装認識マーク58を、回路基板に形成されたダミー電極パッドに接合することにより、インタポーザ50と回路基板との接合を強化することができる。あるいは、バネ電極52が形成された領域の外側に、フレーム56や実装認識マーク58の他に金属パターンを形成し、これを回路基板に形成されたダミー電極パッドに接合することとしてもよい。
【0027】
バネ電極52は、メッシュ材54を貫通するポスト52cの両端に上部パッド52aと下部パッド52bが形成されたコの字状の電極であり、実装認識マーク58の内側の領域全体にわたって設けられている。図3乃至図5においては、インタポーザ50の上面が示されており、上部パッド52aが示されている。下部パッド52bはインタポーザ50の裏側に設けられているため図3乃至図5には現れていない。
【0028】
バネ電極52は、図1に示すバネ電極12と同様のコの字形状である。上部パッド52a及び下部パッド52bは、やや細長い楕円形状になっており、楕円形状の一端側(小径部)にポスト52cが接続され、反対端側(大径部)にパッド部が形成されている。半導体装置30の電極32又は回路基板20の電極パッド22がパッド部に接合されことで、接合部に外力が加わった場合、ポスト52cが容易に撓むことができると共に、上部パッド52a及び下部パッド52b自体もポスト52cに支えられながら容易に撓むことができる。
【0029】
断面がコの字形状のバネ電極52は、上部パッド52aと下部パッド52bのポスト52cからの延在方向が同じ方向であり、その延在方向は、メッシュ部材54の中央側(内側)から外側に向く方向となっている。インタポーザ50が熱膨張する際には中央から周囲に向かって膨張し、その膨張方向において変位が大きくなる。このため、熱応力はインタポーザ50の膨張方向が大きくなる。一方、バネ電極52の上部パッド52aと下部パッド52bが変位し易い方向は、上部パッド52aと下部パッド52bの延在方向である。したがって、上部パッド52aと下部パッド52bの延在方向を膨張方向に合わせることで、熱膨張による熱応力を効果的に緩和することができる。
【0030】
また、バネ電極52の上部パッド52aと下部パッド52bとは、ポスト52cとの接続部から延在した部分がパッドになっており、実際にはんだ接合される接合部の中心は、ポスト52cとの接続部から所定の距離だけ離れた位置となっている。例えば、上部パッド52aのはんだ接合部において、上部パッド52aの接合部の中心からポスト52cが上部パッドに接続部されている部分まで間の距離が、接合されるはんだボールの径より小さいと、上部パッド52a全体がはんだ接合されてしまう。この場合、上部パッド52aの柔軟性がなくなり、容易に変形できなくなってしまう。そこで、実際にはんだ接合される接合部の中心を、ポスト52cとの接続部から所定の距離(すなわち、接合するはんだボールの半径に等しい距離)だけ離れた位置としておくことで、接合部からポスト52aまでの上部パッド52a部分全体にはんだが付着することを防止することができる。これにより、上部パッドの撓みやすさを維持して、容易に変位できる状態に維持することができる。
【0031】
次に、インタポーザ50の製造方法について説明する。図6はインタポーザ50の製造工程を示す図である。
【0032】
まず、図6(a)に示すように、メッシュ材54としてメッシュクロスを準備する。メッシュクロスは、上述のように、ポリエチレンナフタレート等の耐熱樹脂コーティングを施した液晶ポリマー繊維を編んで形成した布状のシート材である。図6(a)において、メッシュクロスの断面が示されており、波をうった線材が横糸を表し、縦糸が楕円形の断面が縦糸を表している。メッシュクロスは、例えば235℃でアニールすることで、繊維の内部応力を除去して平坦化することが好ましい。
【0033】
次に、図6(b)に示すように、メッシュクロス全体にニッケル等の無電解めっきを施す。そして、図6(c)に示すように、ポスト52cが形成される位置を覆うようにレジストを形成する。続いて、図6(d)に示すように、メッシュクロスに電解Cuめっきを施してレジストが設けられた部分以外にCuめっき層を形成する。続いて、レジストを除去して、図6(e)に示すように、Cuメッキ層のみを残す。
【0034】
次に、図6(f)に示すように、メッシュクロスの表面と裏面とに、上部パッド52aと下部パッド52bの形状を残してレジストを形成する。すなわち、上部パッド52aと下部パッド52b以外の部分にレジストを施す。
【0035】
そして、メッシュクロス全体に電解Niめっきを施すことにより、図6(g)に示すように、メッシュクロスに接続されたバネ電極52を形成する。最初にレジストを形成してから除去した部分(図6(e)参照)にNiめっきが充填されることで、バネ電極52のポスト52cが形成される。ポスト52cは、メッシュクロスの編み目(繊維間の隙間)を貫通してメッシュクロスの表側と裏側とに延在する。すなわち、ポスト52cは、その中央部分にメッシュクロスが埋め込まれた状態でメッシュクロスに固定された状態となる。
【0036】
また、メッシュクロスの表面と裏面に形成したレジストが施されていない部分(図6(f)参照)にNiめっきが充填されることで、バネ電極52の上部パッド52aと下部パッド52bとが形成される。上部パッド52aと下部パッド52bとは、メッシュクロスを挟んで表側と裏側にそれぞれ形成され、メッシュクロスを貫通するポスト52cにより接続されている。
【0037】
電解Niめっきを施すことによりバネ電極52を形成したら、メッシュクロスの表面及び裏面のレジストを除去する。これにより、図6(h)に示すように、バネ電極52を形成するNiめっき層と、メッシュクロスを覆うように形成されたCuめっき層とが、メッシュクロスに付着して残された状態となる。
【0038】
最後に、Cuめっき層をエッチングにより除去して、図6(i)に示すように、インタポーザ50が完成する。Cuめっき層を除去することで、上部パッド52aとメッシュクロスとの間、及び下部パッド52bとメッシュクロスとの間は空間となる。これにより、上部パッド52aと下部パッド52bとが容易に撓むことができるようになり、Z方向に変位可能となる。また、ポスト52cもその中央部分のみがメッシュクロスに固定されているだけなので、中央部分以外の部分は撓むことができるようになる。これにより、上部パッド52aと下部パッド52bは、Z方向及びX,Y方向にも変位可能となる。
【0039】
以上のように、メッシュクロスよりなるメッシュ材54を用いることで、基材により接続された複数のバネ電極を容易に形成することができる。なお、上述の電解Niめっきを施す工程において、図3及び図4に示すフレーム56と実装認識マーク58とを同時に形成することとしてもよい。
【0040】
次に、インタポーザ50の他の製造方法について説明する。図7はインタポーザ50の他の製造工程を示す図である。
【0041】
まず、図7(a)に示すように、メッシュ材54としてメッシュクロスを準備する。この工程は、図6(a)に示す工程と同様である。メッシュクロスは、例えば235℃でアニールすることで、繊維の内部応力を除去して平坦化することが好ましい。
【0042】
次に、図7(b)に示すように、バネ電極52のポスト52cに相当する部分を除いて、メッシュクロスにレジストを形成する。そして、図7(c)に示すように、メッシュクロス全体に無電解Cuめっきを施すことにより、図7(c)に示すように、レジストの表面とレジストから露出したメッシュクロスにCuめっきシード層を形成する。
【0043】
続いて、Cuめっきシード層を用いて電解Cuめっきを施し、図7(d)に示すように、メッシュクロスの表面と裏面とにCuめっき層を形成する。レジストの無い部分では、Cuメッキ層はメッシュクロスの編み目(繊維間の隙間)にも充填されてポスト52cが形成される。また、レジストの表面に形成されたCuメッキ層は、上部パッド52a及び下部パッド52bが形成される部分となる。
【0044】
次に、図7(e)に示すように、表側のCuめっき層の上に上部パッド52aの形状のレジストを形成し、且つ裏側のCuめっき層の上に下部パッド52bの形状のレジストを形成する。そして、図7(f)に示すように、レジストをマスクとしてエッチングを施し、レジストで覆われていない部分のCuめっき層を除去する。続いて、Cuめっき層上のレジスト及び最初に形成したメッシュクロス上のレジストを除去し、図7(g)に示すようにインタポーザ50が完成する。
【0045】
なお、上述のインタポーザ50では、上部パッド52aとメッシュ材54との間及び下部パッド52bとメッシュ材54との間に空間が形成され、上部パッド52aと下部パッドが変位しやすくなっているが、この空間に柔軟性を有する材料が充填されていてもよい。そのような柔軟性を有する材料として、例えばシリコン樹脂がある。
【0046】
図8は、インタポーザ50のバネ電極52の中にシリコン樹脂を充填する工程を説明するための図である。まず図6又は図7に示すような工程により、図8(a)に示すようにインタポーザ50を形成する。次に、図8(b)に示すように、マスキングシートをバネ電極52の上部パッド52aを覆うように貼り付け、且つ、バネ電極52の上部パッド52bを覆うように貼り付ける。
【0047】
続いて、図8(c)に示すようにマスキングシートが貼り付けられたインタポーザ50を型に入れ、図8(d)に示すように型にシリコン樹脂を注入・充填する。これにより、シリコン樹脂はバネ電極52の上部パッド52aとメッシュ材54との間に充填され、且つ、バネ電極52の下部パッド52bとメッシュ材54との間に充填される。そして、シリコン樹脂を注入した型を加熱することで、図8(e)に示すように、シリコン樹脂を硬化させる。
【0048】
シリコン樹脂が硬化したら、型を開いてインタポーザ50を取り出すと、図8(f)に示すように、上部パッド52aとメッシュ材54との間及び下部パッド52bとメッシュ材54との間にシリコン樹脂が充填されたインタポーザ50Aを得ることができる。
【0049】
シリコン樹脂は大きな柔軟性を有しているので、シリコン樹脂が充填されていても、上部パッド52aと下部パッド52bの撓みやすさ(変位しやすさ)への影響は少なく、図6(i)や図7(g)に示すインタポーザ50と同様なバネ電極の効果を得ることができる。
【0050】
次に、第2実施形態によるインタポーザについて説明する。第2実施形態によるインタポーザ60は、上述のインタポーザ50において、メッシュ材54の代わりにポリイミドフィルムを用いたものであり、その製造方法についてのみ説明する。図9はインタポーザ60の製造工程を説明するための図である。
【0051】
まず、図9(a)に示すように、感光性ポリイミドフィルムを準備する。そして、図9(b)に示すように、感光性ポリイミドフィルムの両面にPPドライフィルムを貼り付ける。PPドライフィルムには、バネ電極52のポスト52cが形成される位置にポストの断面形状と同じ形状の開口が形成されている。
【0052】
続いて、図9(c)に示すように、PPドライフィルムの開口から露出している感光性ポリイミドフィルムを露光、現像することにより、貫通孔を形成する。そして、PPドライフィルムの表面全体にスパッタでCuシード層を形成してから、Ni電解めっきを施して、図9(d)に示すように、Niめっき層を形成する。PPドライフィルムはNiめっき層で覆われた状態となる。
【0053】
次に、図9(e)に示すように、Niめっき層の表面に上部パッド52aと同じ形状でレジストを形成し、且つNiめっき層の裏面に下部パッド52bと同じ形状でレジストを形成する。続いて、図9(f)に示すように、レジストをマスクとしてNiめっき層をエッチングで除去する。これにより、レジストの下に上部パッド52aと下部パッド52bが形成される。
【0054】
そして、最後にレジストとPPドライフィルムを除去することで、図9(g)に示すようにインタポーザ60が完成する。感光性ポリイミドフィルムと上部パッド52aとの間のPPドライフィルム、及び感光性ポリイミドフィルムと下部パッド52bとの間のPPドライフィルムが除去されるので、感光性ポリイミドフィルムと上部パッド52aとの間及び感光性ポリイミドフィルムと下部パッド52bとの間に空間が形成される。これにより、上部パッド52a及び下部パッド52bは外力により容易に撓むことができることとなり、接合部に発生する応力を緩和することができる。
【0055】
上述のインタポーザ50を用いることによる効果をシミュレーションにより確認した。シミュレーションでは、部品、基板設計仕様範囲を水準とした構造モデルを8とおり作成し、所定の圧迫試験条件下、及び所定の温度サイクル試験下での接合部の変位、応力、ひずみを計算した。この計算結果を分散分析することで本実施形態によるインターポーザによる寄与率を算出し、変位、応力、ひずみに対する寄与率(すなわち、効果の大きさ)を求めた。シミュレーションにより得られたインターポーザ要因効果の分析結果を図10に示す。
【0056】
図10において、部品要因Aは基板に搭載するチップのサイズであり、大きなチップサイズを水準1に設定し、小さなチップサイズを水準2に設定した。基板要因Bは基板の厚さであり、厚い基板を水準1に設定し、薄い基板を水準2に設定した。基板要因Cは基板のパッドのピッチであり、広いピッチを水準1に設定し、狭いピッチを水準2に設定した。インタポーザ効果要因はインタポーザを組み込むか組み込まないかであり、インタポーザ無しを水準1に設定し、インタポーザ有りを水準2に設定した。
【0057】
以上の要因の8つの水準をL8直交表配列に準じて組み合わせ、8とおりの構造モデルを作成し、各構造モデルについて、圧縮試験と温度サイクル試験を行なったときの、接合部の変位、応力、ひずみを計算した。
【0058】
L8直交表配列に準じた組み合わせによる構造モデルは以下のような組み合わせのモデルであった。
【0059】
モデル1:チップサイズ小(水準1)
基板厚さ厚い(水準1)
パッドピッチ広い(水準1)
インタポーザ無し(水準1)
モデル2:チップサイズ小(水準1)
基板厚さ厚い(水準1)
パッドピッチ広い(水準1)
インタ歩ザ有り(水準2)
モデル3:チップサイズ小(水準1)
基板厚さ薄い(水準2)
パッドピッチ狭い(水準2)
インタポーザ無し(水準1)
モデル4:チップサイズ小(水準1)
基板厚さ薄い(水準2)
パッドピッチ狭い(水準2)
インタ歩ザ有り(水準2)
モデル5:チップサイズ大(水準2)
基板厚さ厚い(水準1)
パッドピッチ狭い(水準2)
インタポーザ無し(水準1)
モデル6:チップサイズ大(水準2)
基板厚さ厚い(水準1)
パッドピッチ狭い(水準2)
インタポーザ有り(水準2)
モデル7:チップサイズ大(水準2)
基板厚さ薄い(水準2)
パッドピッチ広い(水準1)
インタポーザ無し(水準1)
モデル8:チップサイズ大(水準2)
基板厚さ薄い(水準2)
パッドピッチ広い(水準1)
インタポーザ有り(水準2)
【0060】
圧縮試験としては、基板の両端側を拘束して、基板の裏側から直径6mmの棒を基板の裏面の中央部分に押し付けて基板に荷重を印加し、接合部の応力、変位、ひずみを計算した。また、温度サイクル試験としては、構造モデルを25℃から加熱して125℃とし、その後−40℃まで冷却してから25℃に戻すという温度サイクルを30分間で行ない、3サイクル毎に、接合部の応力、変位、ひずみを計算した。
【0061】
圧縮試験及び温度サイクル試験で得られた各構造モデルにおける接合部の応力、変位、ひずみを分散分析し、各要因のひずみ、応力、変位に対する寄与率を算出した結果が図10に示されている。寄与率の算出には解析誤差が含まれるので、図10には解析誤差も示されている。
【0062】
本実施形態によるインタポーザを設ける目的は、はんだ接合部への局所的に集中する負荷を緩和することであり、インタポーザ要因による接合部への負荷の変動抑制効果(すなわち、安定性)は上述の寄与率で表される。
【0063】
図10に示すように、圧縮試験におけるひずみに対するインタポーザ要因の寄与率は73.82%であり、本実施形態によるインタポーザを設けることで、73.8%の変動抑制効果があることがわかった。また、応力に対しては60.3%の変動抑制効果があり、変位に対しては12.33%の変動抑制効果があることがわかった。変位に対しては部品要因A(チップサイズ要因)が支配的であった。
【0064】
また、温度サイクル試験におけるひずみに対するインタポーザ要因の寄与率は7.22%であり、本実施形態によるインタポーザを設けることで、7.22%の変動抑制効果があることがわかった。また、応力に対しては32.3%の変動抑制効果があり、変位に対しては35.43%の変動抑制効果があることがわかった。
【0065】
以上のように、本実施形態によるインタポーザを用いて電子部品を基板に実装することにより、市場における変動要因(使われ方、温度環境変化等)により加わるはんだ接合部へ負荷(ひずみ、応力、変位等)を緩和する効果があることをシミュレーションにより確認できた。
【0066】
以上のように、本明細書は下記の事項を開示する。
(付記1)
シート状の基材と、
所定の配列で前記基材に固定された複数のバネ電極と
を有し、
前記バネ電極の各々は、
前記基材の第1の面側に設けられ、第1の方向に沿って延在する第1のパッドと、
前記基材の第1の面側とは反対の第2の面側に設けられ、前記第1の方向に沿って延在する第2のパッドと、
前記基材を貫通して前記第1の面側及び前記第2の面側に延在し、前記第1のパッドの一端と前記第2のパッドの一端を接続するポストと
を有することを特徴とするインタポーザ。
(付記2)
付記1記載のインタポーザであって、
前記基材はメッシュ状のシート材であり、前記バネ電極の前記ポストは、前記メッシュの隙間を貫通して前記第1の面側と前記第2の面側に延在しているインタポーザ。
(付記3)
付記2記載のインタポーザであって、
前記メッシュ材は、繊維を編んで形成したメッシュクロスであるインタポーザ。
(付記4)
付記1記載のインタポーザであって、
前記基材は樹脂フィルムであり、前記バネ電極の前記ポストは前記樹脂フィルムを貫通して前記第1の面側と前記第2の面側に延在しているインタポーザ。
(付記5)
付記1乃至4のうちいずれか一項記載のインタポーザであって、
前記第1のパッドは前記基材から離間して間に空間が形成され、前記第2のパッドも前記基材から離間して間に空間が形成されているインタポーザ。
(付記6)
付記5記載のインタポーザであって、
前記第1のパッドと前記基材との間の空間に柔軟性を有する材料が充填され、前記第2のパッドと前記基材との間の空間にも柔軟性を有する部材が充填されているインタポーザ。
(付記7)
付記6記載のインタポーザであって、
前記柔軟性を有する材料はシリコン樹脂であるインタポーザ。
(付記8)
付記1乃至6のうちいずれか一項記載のインタポーザであって、
前記上部パッドの接合部の中心は前記ポストとの接続部から所定の距離以上離れており、前記下部パッドの接合部の中心も前記ポストとの接続部から前記所定の距離以上離れているインタポーザ。
(付記9)
付記1乃至8のうちいずれか一項記載のインタポーザであって、
前記第1のパッドと前記第2のパッドとが前記ポストから延在する方向は、前記基材の中央側から外側に向かう方向であるインタポーザ。
(付記10)
付記1乃至9のうちいずれか一項記載のインタポーザであって、
前記基材の外周部分に枠体が形成されたインタポーザ。
(付記11)
付記1乃至10のうちいずれか一項記載のインタポーザであって、
前記基材の前記第1の面側において、前記バネ電極が形成された領域の外側に金属パターンが形成されたインタポーザ。
(付記12)
付記1乃至11のうちいずれか一項記載のインタポーザを介して電子部品が回路基板に搭載された回路基板モジュール。
(付記13)
メッシュ材の所定の部位を残してCuめっき層を形成し、
前記所定の部位において、前記メッシュ材の網目を貫通して前記メッシュ材の第1の面側と第1の面側の反対側の第2の面側に延在する金属ポストをNiめっきにより形成するとともに、前記金属ポストから前記メッシュ材の第1の面側において前記Cuめっき層に沿って延在する第1のパッドと、前記金属ポストから前記メッシュ材の第2の面側において前記Cuめっき層に沿って延在するNiめっき層をNiめっきにより形成する
インタポーザの製造方法。
(付記14)
付記13記載のインタポーザの製造方法であって、
前記第1のパッド及び前記第2のパッドを形成した後、前記Cuめっき層をエッチングにより除去して、前記第1のパッドと前記メッシュ材との間及び前記第2のパッドと前記メッシュ材との間に空間を形成する
インタポーザの製造方法。
(付記15)
メッシュ材に、所定の部位を残して第1のレジストを形成し、
前記所定の部位において、前記メッシュ材の網目を貫通して前記メッシュ材の第1の面側と第1の面側の反対側の第2の面側に延在する金属ポストを金属めっきにより形成するとともに、前記金属ポストから前記メッシュ材の第1の面側において前記第1のレジストに沿って延在し、且つ前記金属ポストから前記メッシュ材の第2の面側において前記第1のレジストに沿って延在する金属層を金属めっきにより形成する
インタポーザの製造方法。
(付記16)
付記15記載のインタポーザの製造方法であって、
前記金属層の両面に、前記第1のパッド及び前記第2のパッドの形状に相当する第2のレジストを形成し、
前記第2のレジストをマスクとして前記金属層の一部をエッチングにより除去し、
前記第1のレジスト及び前記第2のレジストを除去して、前記第1のパッドと前記メッシュ材の第1の面との間、及び前記第2のパッドと前記メッシュ材の第2の面との間に空間を形成する
インタポーザの製造方法。
(付記17)
樹脂シート材の第1の面と該第1の面の反対側の第2の面とにレジスト材を貼り付けてから、所定の位置に貫通開口を形成し、
前記貫通開口内及び前記レジスト材の表面全体に金属めっき層を形成し、
前記金属めっき層をエッチングして第1のパッド及び第2のパッドを形成し、
前記レジスト材を除去して、前記第1のパッドと前記樹脂シート材の第1の面との間、及び前記第2のパッドと前記樹脂シート材の第2の面との間に空間を形成する
インタポーザの製造方法。
【符号の説明】
【0067】
10,50,60 インタポーザ
12,52 バネ電極
12a,52a 上部パッド
12b,52b 下部パッド
12c,52c ポスト
14 基材
20 回路基板
22 電極パッド
30 半導体装置
54 メッシュ材
56 フレーム
58 実装認識マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材と、
所定の配列で前記基材に固定された複数のバネ電極と
を有し、
前記バネ電極の各々は、
前記基材の第1の面側に設けられ、第1の方向に沿って延在する第1のパッドと、
前記基材の第1の面側とは反対の第2の面側に設けられ、前記第1の方向に沿って延在する第2のパッドと、
前記基材を貫通して前記第1の面側及び前記第2の面側に延在し、前記第1のパッドの一端と前記第2のパッドの一端を接続するポストと
を有することを特徴とするインタポーザ。
【請求項2】
請求項1記載のインタポーザであって、
前記基材はメッシュ状のシート材であり、前記バネ電極の前記ポストは、前記メッシュの隙間を貫通して前記第1の面側と前記第2の面側に延在しているインタポーザ。
【請求項3】
請求項1記載のインタポーザであって、
前記基材は樹脂フィルムであり、前記バネ電極の前記ポストは前記樹脂フィルムを貫通して前記第1の面側と前記第2の面側に延在しているインタポーザ。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか一項記載のインタポーザであって、
前記第1のパッドは前記基材から離間して間に空間が形成され、前記第2のパッドも前記基材から離間して間に空間が形成されているインタポーザ。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか一項記載のインタポーザであって、
前記上部パッドの接合部の中心は前記ポストとの接続部から所定の距離以上離れており、前記下部パッドの接合部の中心も前記ポストとの接続部から前記所定の距離以上離れているインタポーザ。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか一項記載のインタポーザであって、
前記第1のパッドと前記第2のパッドとが前記ポストから延在する方向は、前記基材の中央側から外側に向かう方向であるインタポーザ。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか一項記載のインタポーザであって、
前記基材の前記第1の面側において、前記バネ電極が形成された領域の外側に金属パターンが形成されたインタポーザ。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちいずれか一項記載のインタポーザを介して電子部品が回路基板に搭載された回路基板モジュール。
【請求項9】
メッシュ材の所定の部位を残してCuめっき層を形成し、
前記所定の部位において、前記メッシュ材の網目を貫通して前記メッシュ材の第1の面側と第1の面側の反対側の第2の面側に延在する金属ポストをNiめっきにより形成するとともに、前記金属ポストから前記メッシュ材の第1の面側において前記Cuめっき層に沿って延在する第1のパッドと、前記金属ポストから前記メッシュ材の第2の面側において前記Cuめっき層に沿って延在するNiめっき層をNiめっきにより形成する
インタポーザの製造方法。
【請求項10】
メッシュ材に、所定の部位を残して第1のレジストを形成し、
前記所定の部位において、前記メッシュ材の網目を貫通して前記メッシュ材の第1の面側と第1の面側の反対側の第2の面側に延在する金属ポストを金属めっきにより形成するとともに、前記金属ポストから前記メッシュ材の第1の面側において前記第1のレジストに沿って延在し、且つ前記金属ポストから前記メッシュ材の第2の面側において前記第1のレジストに沿って延在する金属層を金属めっきにより形成する
インタポーザの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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