説明

インターフェロン−α及び/又はβ(IFN−α/β)の発現誘導を促進する補助剤のスクリーニングする方法

【課題】
本発明はインターフェロン−α及び/又はβ(IFN−α/β)の発現誘導を促進する補助剤をスクリーニングする方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の方法は、
a)上記補助剤の非存在下ではIFN−α/βの発現を誘導しない、細胞と核酸アジュバントの系において、当該細胞を核酸アジュバントと、補助剤候補化合物を共に又は無しでインキュベートし;そして
b−1)補助剤候補化合物の存在により、核酸アジュバントがエンドソーム小胞に細胞内移動したことを確認する、あるいは
b−2)補助剤候補化合物の存在により、IFN−α/βの発現が誘導されたことを確認する
c)工程b−1)又はb−2)において、核酸アジュバントのエンドソーム小胞への移動またはIFN−α/βの発現誘導が確認された場合に、上記化合物を有効な補助剤と判断する
ことを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターフェロン−α及び/又はβ(IFN−α/β)の発現誘導を促進する補助剤をスクリーニングする方法、並びに当該スクリーニング方法によって得られた新規補助剤に関する。
【背景技術】
【0002】
Toll様受容体9(TLR9)あるいはToll様受容体7、8(TLR7、TLR8)の活性化の結果、プラズマサイトイド樹状細胞(plasmacytoid dendric cell(pDC))において、I型インターフェロン(IFN−α/β)が高レベルで発現される(非特許文献1−6)。この誘導は、MyD88−IRF7シグナル伝達経路に依存すると考えられる;しかしながら、pDCがどのようにそしてなぜこの経路を活性化するのか、そして、なぜ通常の樹状細胞(conventional DC(cDC)のような他の細胞では活性化しないのか、解明されていない。
【0003】
pDCにおけるTLR7、8、9−依存性IFN−α/β誘導経路は、DNAアジュバントにより誘導されるCD8+T細胞応答において重要な側面を構成する。そして、この誘導はMyD88と相互作用する転写因子IRF−7が活性化されることによって生じる(非特許文献11、12)。この発見から、同じTLR9リガンドに対する応答として、何故pDCは大量のIFNを産生するが、他の細胞型、例えば通常のDC(cDC)は産生しないのか、という興味深い、解明されていない疑問が生じる。pDCは他の細胞と比較して高レベルのIRF−7を発現するという仮説が提案されているが(非特許文献6、13、14)、このモデルをサポートする実験証拠はほとんど得られていない。
【0004】
一方、TLR9を活性化するリガンドとして2つのクラスの非メチル化CpGモチーフを含む合成ODN、CpG−A(「D型ODN」とも名称付けられている)、及びCpG−B(「K型ODN」とも名称付けられている)が知られているが、これらはpDC及びcDCから異なる応答を導く。即ち、pDCをCpG−Aで刺激した場合のみ、効率的に高レベルのIFN−α/β産生が誘導される(非特許文献7−10,15)。pDCをCpG−Bで刺激してもIFN−α/βはほとんど産生されない。また、cDCでは、CpG−A及びCpG−Bのいずれで刺激した場合もIFN−α/β産生は誘導されない。しかしながら、これらの現象が知られているにもかかわらず、pDCにおいてCpG−Aで刺激した場合に高レベルのIFN−α/β産生が誘導されるメカニズムは知られていない。
【0005】
インターフェロン−α及び/又はβ(IFN−α/β)の発現誘導のメカニズムの解明、並びに、IFN−α/βの発現を制御できるような補助剤の開発が希求されている。
【0006】
【非特許文献1】Kadowaki, N. et al. Subsets of human dendritic cell precursors express different toll−like receptors and respond to different microbial antigens. J. Exp. Med.194, 833−839 (2001)
【非特許文献2】Lund, J., Sato, A., Akira, S., Medzhitov, R. and Iwasaki, A. Toll−like receptor 9−mediated recognition of Herpes simplex virus−2 by plasmacytoid dendritic cells. J.Exp. Med. 198, 513−520 (2003)
【非特許文献3】Hemmi, H., Kaisho, T., Takeda, K. and Akira, S. The roles of Toll−like receptor 9, MyD88, and DNA−dependent protein kinase catalytic subunit in the effects of two distinct CpG DNAs on dendritic cell subsets. J. Immunol. 170, 3059−3064 (2003)
【非特許文献4】Krug, A. et al. Herpes simplex virus type 1 activates murine natural interferonproducing cells through toll−like receptor 9. Blood 103, 1433−1437 (2004)
【非特許文献5】Krug, A. et al. TLR9−dependent recognition of MCMV by IPC and DC generates coordinated cytokine responses that activate antiviral NK cell function. Immunity 21, 107−119 (2004)
【非特許文献6】Colonna, M., Trinchieri, G. and Liu, Y. J. Plasmacytoid dendritic cells in immunity. Nat. Immunol. 5, 1219−1226 (2004)
【非特許文献7】Verthelyi, D., Ishii, K. J., Gursel, M., Takeshita, F. and Klinman, D. M. Human peripheral blood cells differentially recognize and respond to two distinct CPG motifs. J. Immunol. 166, 2372−2377 (2001)
【非特許文献8】Krug, A. et al. Identification of CpG oligonucleotide sequences with high induction of IFN−α/β in plasmacytoid dendritic cells. Eur. J. Immunol. 31, 2154−2163(2001)
【非特許文献9】Krieg, A. M. CpG motifs in bacterial DNA and their immune effects. Annu. Rev. Immunol. 20, 709−760 (2002)
【非特許文献10】Verthelyi, D. and Zeuner, R. A. Differential signaling by CpG DNA in DCs and B cells: not just TLR9. Trends Immunol. 24, 519−522 (2003)
【非特許文献11】Honda, K. et al. Role of a transductional−transcriptional processor complex involving MyD88 and IRF−7 in Toll−like receptor signaling. Proc. Natl. Acad. Sci.U.S.A 101, 15416−15421 (2004)
【非特許文献12】Kawai, T. et al. Interferon−alpha induction through Toll−like receptors involves a direct interaction of IRF7 with MyD88 and TRAF6. Nat. Immunol. 5, 1061−1068(2004)
【非特許文献13】Izaguirre, A. et al. Comparative analysis of IRF and IFN−α expression in human plasmacytoid and monocyte−derived dendritic cells. J. Leukoc. Biol. 74, 1125−1138 (2003)
【非特許文献14】Kerkmann, M. et al. Activation with CpG−A and CpG−B oligonucleotides reveals two distinct regulatory pathways of type I IFN synthesis in human plasmacytoid dendritic cells. J. Immunol. 170, 4465−4474 (2003)
【非特許文献15】Krieg, A. M. et al. CpG motifs in bacterial DNA trigger direct B−cell activation. Nature 374, 546−549 (1995)
【非特許文献16】Latz, E. et al. TLR9 signals after translocating from the ER to CpG DNA in the lysosome. Nat. Immunol. 5, 190−198 (2004)
【非特許文献17】Hacker, H. et al. CpG−DNA−specific activation of antigen−presenting cells requires stress kinase activity and is preceded by non−specific endocytosis and endosomal maturation. EMBO J. 17, 6230−6240 (1998)
【非特許文献18】Heil, F. et al. Species−specific recognition of single−stranded RNA via toll−like receptor 7 and 8. Science 303, 1526−1529 (2004)
【非特許文献19】Hata, N. et al. Constitutive IFN−α/β signal for efficient IFN− α/ β gene induction by virus. Biochem. Biophys. Res. Commun. 285, 518−525 (2001)
【非特許文献20】Gruenberg, J. and Stenmark, H. The biogenesis of multivesicular endosomes. Nat. Rev. Mol. Cell. Biol. 5, 317−323 (2004)
【非特許文献21】Maxfield, F. R. and McGraw, T. E. Endocytic recycling. Nat. Rev. Mol. Cell. Biol. 5, 121−132 (2004)
【非特許文献22】Wagner, H., Heit, A., Schmitz, F. and Bauer, S. Targeting split vaccines to the endosome improves vaccination. Curr. Opin. Biotechnol. 15, 538−542 (2004)
【非特許文献23】Asselin−Paturel, C., Brizard, G., Pin, J. J., Briere, F. and Trinchieri, G. Mouse strain differences in plasmacytoid dendritic cell frequency and function revealed by a novel monoclonal antibody. J. Immunol. 171, 6466−6477 (2003)
【非特許文献24】Sato, M. et al. Distinct and essential roles of transcription factors IRF−3 and IRF−7 in response to viruses for IFN− α/ β gene induction. Immunity 13, 539−548 (2000)
【非特許文献25】Honda, K. et al. Selective contribution of IFN−α/β signaling to the maturation of dendritic cells induced by double−stranded RNA or viral infection. Proc. Natl.Acad. Sci. U.S.A. 100, 10872−10877 (2003)
【非特許文献26】Nagai, T. et al. A variant of yellow fluorescent protein with fast and efficient maturation for cell−biological applications. Nat. Biotechnol. 20, 87−90 (2002)
【非特許文献27】Diebold, S. S. et al. Viral infection switches non−plasmacytoid dendritic cells into high interferon producers. Nature 424, 324−328 (2003).
【非特許文献28】Matsuyama, T. et al. Targeted disruption of IRF−1 or IRF−2 results in abnormal type I IFN gene induction and aberrant lymphocyte development. Cell 75, 83−97 (1993)
【非特許文献29】Kinman, Immunotherapeutic uses of CpG oligodeoxynucleotides. Nature Reviews Immunology 4, 249−259 (2004)
【非特許文献30】Nature Immunology, vol.2,pp.1144−1150,2001
【非特許文献31】J.Exp.Med. vol.194,pp.1171−1178,2001
【非特許文献32】Science, vol.284,pp.1835−1837,1999
【非特許文献33】Nature, vol.408,pp.740−745,2000
【非特許文献34】Genomics, vol.45,pp.332−339,1997
【非特許文献35】Mol.Cell.Biol., vol.17,pp.5748−5757,1997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、インターフェロン−α及び/又はβ(IFN−α/β)の発現誘導を促進する補助剤をスクリーニングする方法を提供することを目的とする。
本発明の方法は、
a)上記補助剤の非存在下ではIFN−α/βの発現を誘導しない、細胞と核酸アジュバントの系において、当該細胞を核酸アジュバントと、補助剤候補化合物を共に又は無しでインキュベートし;そして
b−1)補助剤候補化合物の存在により、核酸アジュバントがエンドソーム小胞に細胞内移動したことを確認する、あるいは
b−2)補助剤候補化合物の存在により、IFN−α/βの発現が誘導されたことを確認する
c)工程b−1)又はb−2)において、核酸アジュバントのエンドソーム小胞への移動またはIFN−α/βの発現誘導が確認された場合に、上記化合物を有効な補助剤と判断する
ことを含む。
【0008】
本発明の方法において、補助剤の非存在下ではIFN−α/βの発現を誘導しない系における細胞は、好ましくは、コンベンショナル樹状細胞(cDC)、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)、RAW細胞、マクロファージ、ヒト末梢血由来細胞、及び線維芽細胞からなる群から選択される。
【0009】
本発明の方法において、補助剤の非存在下ではIFN−α/βの発現を誘導しない系における核酸アジュバントは、好ましくは、非自己と認識される核酸である。
本発明の一態様において、工程b−1)において、Toll様受容体9(TLR9)、MyD88、インターフェロン制御因子7(IRF−7)又はデキストランと核酸アジュバントの細胞内共局在が観察される場合に、核酸アジュバントがエンドソーム小胞へ移動したと確認してもよい。あるいは、本発明の一態様において、工程b−2)において、IFN−α/βの発現誘導を、細胞中のIFN−α/βのmRNA、あるいは細胞培養上清中のIFN−α/βのタンパク質の濃度を測定することによって確認してもよい。
【0010】
本発明はまた、本発明のスクリーニング方法によって得られた、インターフェロン−α及び/又はβ(IFN−α/β)の発現誘導を促進する、補助剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記問題の解決のために鋭意研究に努めた結果、pDCにおいてIFN−α/βを強く誘導することが知られている、TLR9リガンドであるA/D型CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)(CpG−A)(非特許文献7−10)が、pDCのエンドソーム小胞に長時間留まることを見出した。さらに、ODNがエンドソーム小胞内でMyD88と相互作用するIRF−7と共在することを発見した。これに対し、cDC及びRAW264.7マクロファージでは、CpG−Aは迅速にリソソーム小胞に輸送されることも明らかとなった(実施例1、2)。こうした核酸アジュバントの精巧な時間的空間的細胞内輸送制御によって、様々な病原体関連核酸に対し、細胞又は核酸の種類によって、異なる応答が誘導されると考えられる。
【0012】
本発明者らは上記核酸アジュバントの時空間制御の重要性の発見に基づき、cDCにおいてもpDCの場合と同様に、CpG−Aがエンドソームに長時間留まるようにCpG−Aを操作すれば、cDCにおいても大量のIFNを産生できるのではないか、と考えた。実際に、CpG−Aの操作、具体的には陽イオン脂質の一種である、1,2−ジオレオイルオキシ−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP)と複合体を形成させることにより、cDCにおいてもpDCにおいても、CpG−Aはエンドソームに長時間留まり、かつ大量のIFNが産生されることが確認された。これにより、エンドソームにおいてMyD88−IRF−7シグナルが持続することが、大量のIFN−α/βを産生するというpDCの特有の能力を決定づけるものであることが明らかにされた(実施例3)。同様に、RAW264.7細胞でもDOTAP/CpGにより大量のIFN−α/βの産生が観察された(実施例4)。
【0013】
また、pDCについても、CpG−B(「K型ODN」)で刺激した場合は、CpG−Aの場合と異なり、IFN−α/βはほとんど産生されないことが知られていた。本発明者は、cDCとCpG−Aとの組み合わせの系の場合と同様に、pDCとCpG−Bの系にDOTAPを共在させた場合は、IFN−αの発現の上昇が観察されることを見出した(実施例5)。
【0014】
本発明は上記発見に基づき、上記補助剤の非存在下ではIFN−α/βの発現を誘導しない、細胞と核酸アジュバントの系を用いて、DOTAPと同様の機能を有する補助剤、即ち、CpG−A、CpG−Bを含む核酸アジュバントの細胞内輸送を制御し、インターフェロン−α及び/又はβ(IFN−α/β)の発現誘導を促進するような補助剤、をスクリーニングする方法を見出し、本発明を想到した。
【0015】
インターフェロン−α及び/又はβ(IFN−α/β)の発現誘導を促進する補助剤をスクリーニングする方法
よって、本発明はインターフェロン−α及び/又はβ(IFN−α/β)の発現誘導を促進する補助剤をスクリーニングする方法を提供する。本発明の方法は、
a)上記補助剤の非存在下ではIFN−α/βの発現を誘導しない、細胞と核酸アジュバントの系において、当該細胞を核酸アジュバントと、補助剤候補化合物を共に又は無しでインキュベートし;そして
b−1)補助剤候補化合物の存在により、核酸アジュバントがエンドソーム小胞に細胞内移動したことを確認する、あるいは
b−2)補助剤候補化合物の存在により、IFN−α/βの発現が誘導されたことを確認する
c)工程b−1)又はb−2)において、核酸アジュバントのエンドソーム小胞への移動またはIFN−α/βの発現誘導が確認された場合に、上記化合物を有効な補助剤と判断する
ことを含む。
【0016】
本発明は、核酸アジュバントの時空間制御の重要性の発見に基づき、補助剤の非存在下ではIFN−α/βの発現を誘導しない、細胞と核酸アジュバントの系を用いることにより、核酸アジュバントの細胞内輸送を制御し、インターフェロン−α及び/又はβ(IFN−α/β)の発現誘導を促進するような補助剤、をスクリーニングする方法を提供するものである。
【0017】
I)補助剤の非存在下ではIFN−α/βの発現を誘導しない、細胞と核酸アジュバントの系における細胞
本発明のスクリーニング方法において使用しうる細胞は、核酸アジュバントとの組み合わせの系において、補助剤の非存在下ではIFN−α/βの発現を誘導しない細胞を意味し、細胞の種類および由来は特に限定されず、公知の培養細胞、動物生体内の細胞等を使用することができる。好ましくは培養細胞を使用する。培養細胞を用いる場合には、例えば、培養細胞を核酸アジュバントと補助剤候補化合物との複合体とともにインキュベーションし、細胞からのIFN産生応答を観察する。あるいは、動物生体内の細胞を用いる場合には、核酸アジュバントと補助剤候補化合物とを、例えば静脈注射などにより動物生体内に投与し、細胞からのIFN産生応答を観察することも可能である。
【0018】
同じ細胞でも、共に使用する核酸アジュバントの種類によって、補助剤の非存在下ではIFN−α/βの発現を誘導しない場合と、する場合とがある。「核酸アジュバントとの組み合わせの系において」とは、補助剤の非存在下ではIFN−α/βの発現を誘導しない、細胞と核酸のアジュバントの系であれば、その組み合わせにおいて本発明のスクリーニング方法に使用しうることを意味する。例えば、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)は、CpG−Aと組み合わせて使用した場合には補助剤の非存在下でもIFN−α/βの発現を誘導する。しかし、CpG−Bと組み合わせた場合には誘導しない。よって、pDCとCpG−Bの系は、本発明の方法に使用しうる。
【0019】
補助剤の存在により、免疫系に関わる細胞に限らず、他の体細胞などでもIFN−α/βの発現を誘導が可能となる。よって、本発明の方法に使用しうる細胞は特に限定されず、「核酸アジュバントとの組み合わせの系において、補助剤の非存在下ではIFN−α/βの発現を誘導しない」という条件を満たす限り、あらゆる細胞が使用しうる。本発明の細胞は、好ましくは、コンベンショナル樹状細胞(cDC)、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)、RAW細胞(例えば、RAW264.7細胞)、マクロファージ、ヒト末梢血由来細胞、及び線維芽細胞からなる群から選択される。これらの細胞は公知であり、例えば、本明細書中の実施例に記載の方法、あるいは、Nature Immunology, vol. 2, pp.1144−1150, 2001; J. Exp. Med. vol. 194, pp.1171−1178, 2001; Science, vol. 284, pp. 1835−1837, 1999等の文献に記載の公知の方法に従って、当業者が容易に入手することが可能である。
【0020】
CpG−Aのような核酸アジュバントの存在のみでIFN−α/βの発現誘導が生じるプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)との比較が明確かつ容易であることから、コンベンショナル樹状細胞(cDC)が好ましい。あるいは、入手及び取扱いの容易性からRAW細胞、特にRAW264.7細胞も好ましい。また、CpG−Bのような核酸アジュバント単独ではIFN−α/βの発現が誘導されないpDCも、陽性コントロールのCpG−AとpDCとを組み合せた陽性コントロールの系と対比解析しやすいことから、該CpG−Bのような核酸アジュバントとの組み合わせにおいては好ましい細胞である。
【0021】
II)核酸アジュバント
本発明のスクリーニング方法において使用しうる核酸アジュバントは、細胞との組み合わせの系において、補助剤の非存在下では当該細胞におけるIFN−α/βの発現を誘導しないが、補助剤の存在下では発現を誘導しうる、核酸を意味する。例えば、CpG−Aはコンベンショナル樹状細胞(cDC)に使用した場合、補助剤の非存在下ではcDCにおいてIFN−α/βの発現を誘導しないが、補助剤(1,2−ジオレオイルオキシ−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP))の存在下では発現を誘導することが、本発明において明らかにされた。よって、CpG−Aは、例えばcDCとの組み合わせにおいて本発明の方法に使用しうる。また、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)は、CpG−Bと組み合わせた場合には、補助剤の非存在下ではIFN−α/βの発現を誘導しないが、補助剤が存在した場合に初めて誘導することがみいだされた。よって、pDCとCpG−Bの系も、本発明の方法に使用しうる。
【0022】
核酸の種類、配列等は特に限定されない。好ましくは、細胞によって非自己と認識される核酸である。「非自己として認識される」とは、より具体的には、哺乳動物の細胞において非自己と認識されうる、合成DNA、合成RNA、或いは哺乳類より下等な生物のゲノム由来核酸を意味する。
【0023】
本発明の方法に使用しうる核酸アジュバントは、例えば、非メチル化CpG オリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)、一本鎖(ss)RNA、並びに不活性ウイルス又は細菌からの核酸抽出物等を含む。好ましくは、非メチル化CpG オリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)又は一本鎖(ss)RNA、より好ましくは、CpG ODNである。これらの核酸アジュバントは、例えば、本明細書中の実施例に記載の方法、あるいは、公知の核酸合成方法を用いて容易に作製することが可能である。
【0024】
非メチル化CpG オリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)とは、単一又は複数の非メチル化CpGモチーフを核酸分子内(5’末端又は3’末端でない)に有する、オリゴデオキシヌクレオチドである。本発明の方法に使用し得るCpG ODNは、細胞との組み合わせの系において、補助剤の非存在下では当該細胞におけるIFN−α/βの発現を誘導しないが、補助剤の存在下では発現を誘導しうる、という性質を有することが望ましい。ただし、CpG ODNは、別の特定の細胞との組み合わせの系では、補助剤の非存在下でも、IFN−α/βの発現誘導を促進する活性を有するものであってもよい。例えば、後述するCpG−Aは、例えばcDCとの組み合わせにおいては補助剤の存在下で初めてIFN−α/βの発現を誘導するが、pDCとの組み合わせにおいては、補助剤の非存在下でもIFN−α/βの発現を誘導する。よって、cDC等のとの組み合わせにおいては、本発明の方法にCpG−Aも好適に使用し得る。
【0025】
本発明の方法に使用可能なCpG ODNは、好ましくは、18−25のデオキシヌクレオチド、より好ましくは20−22のデオキシヌクレオチドからなり、好ましくはホスホジエステル/ホスホロチオエート混合骨格、あるいはホスホロチオエートの骨格を有する。本発明の方法に使用可能なCpG ODNの例は、例えば、非特許文献7、29、3、8、9、10、15等の文献に記載されている。
【0026】
非メチル化CpG オリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)の好ましい例は、例えば、非特許文献29等に記載されたCpG−A(「D型オリゴデオキシヌクレオチド」と呼称されることもある)、CpG−B(「K型オリゴデオキシヌクレオチド」と呼称されることもある)、CpG−Cである。これらのCpG ODNは各々下記の塩基配列を有する。
【0027】
CpG−A (非特許文献7、29)
ggtgcatcgatgcagggggg (配列番号1)
対マウスCpG−B (非特許文献15) (配列番号2)
tccatgacgttcctgatgct
対ヒトCpG−B
tccatggacgttcctgagcgtt (配列番号3)
CpG−C (非特許文献29)
tcgtcgttcgaacgacgttgat (配列番号4)
【0028】
CpG−Bには、対マウスCpG−Bと対ヒトCpG−Bが知られている。本発明の方法において好ましくは、マウス細胞を使用する場合は対マウスCpG−Bを、ヒト細胞を使用する場合には対ヒトCpG−Bを使用する。
【0029】
CpG−Aの構造上の特徴は以下の通りである。特に、i)の特徴が細胞との組み合わせの系において、補助剤の非存在下では当該細胞におけるIFN−α/βの発現を誘導しないが、補助剤の存在下では発現を誘導しうる、という性質に重要である。また、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)等において、補助剤の非存在下でIFN−α/βの発現を誘導する。
【0030】
i)配列番号1の塩基8−9に非メチル化CpGモチーフを1つ有する。
ii)配列番号1の塩基3−14にパリンドロームtgcatcgatgcaを有する。上記塩基8−9に非メチル化CpGモチーフは、パリンドローム中に含まれる。
iii)配列番号1の塩基3−15はホスホジエステル結合、その他の塩基はホスホロチオエート結合である、ホスホジエステル/ホスホロチオエート混合骨格を有する。
iv)3’末端に5塩基のGからなるpolyGテイルを有する。
【0031】
CpG−Bの構造上の特徴は以下の通りである。特に、i)の特徴が細胞との組み合わせの系において、補助剤の非存在下では当該細胞におけるIFN−α/βの発現を誘導しないが、補助剤の存在下では発現を誘導しうる、という性質に重要である。B細胞増殖、並びにIgM及びIL−6産生の誘因となりうる。
【0032】
i)対マウスCpG−Bの場合は配列番号2の塩基8−9に非メチル化CpGモチーフを1つ、対ヒトCpG−Bの場合は配列番号3の塩基9−10及び塩基19−20の2箇所に非メチル化CpGモチーフを有する。
ii)ホスホロチオエートの骨格を有する。
【0033】
CpG−Cの特徴は以下の通りである。特に、i)の特徴が細胞との組み合わせの系において、補助剤の非存在下では当該細胞におけるIFN−α/βの発現を誘導しないが、補助剤の存在下では発現を誘導しうる、という性質に重要である。また、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)等において、補助剤の非存在下でIFN−α/βの発現を誘導する。
【0034】
i)配列番号4の塩基9−10及び塩基16−17の2箇所に非メチル化CpGモチーフを有する。
ii)配列番号4の塩基2−17にパリンドロームcgtcgttcgaacgacg(パリンドローム1)、塩基11−19に別のパリンドロームaacgacgtt(パリンドローム2)を有する。パリンドローム1は、上記塩基9−10及び塩基16−17の2箇所の非メチル化CpGモチーフを含む。パリンドローム2は、塩基16−17の非メチル化CpGモチーフを含む。
iii)ホスホロチオエートの骨格を有する。
iv)5’末端にTCGダイマーを有する。
【0035】
あるいは、単一鎖RNA(ssRNA)もある種の細胞において、CpG−A等と同様に、IFN−α/βの発現誘導を促進しうることが知られている。例えば、ヒト末梢血単核細胞はssRNAであるポリウリジル酸単独での刺激ではIFN−αを産生しないが、ポリウリジル酸とDOTAPとの複合体により刺激すると、高レベルのIFN−αを産生することが報告された(非特許文献11)。よって、このようなssRNAも本発明の方法に使用することが可能である。ssRNAの配列は特に限定されないが、好ましくは単一の塩基の繰り返し配列、例えばポリウリジル酸、を含む。ssRNAの配列の長さは特に限定されない。
【0036】
あるいは、本発明の核酸アジュバントは、不活性化ウイルス又は細菌からの核酸抽出物であっってもよい。不活性化ウイルスとは、例えば、単純ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、サイトメガロウイルス、水泡性口炎ウイルス等のウイルスを、紫外線や熱処理等の処理により不活性化したものである。細菌は、例えば、大腸菌、結核菌等を含む。不活性化ウイルス又は細菌からの核酸の抽出は公知であり、J.Exp.Med. vol.198,pp.513−520,2003;J.N.C.I vil.72,pp.955−962,1984等の文献に記載の方法を使用することができる。
【0037】
III)工程a)について
本発明のスクリーニング方法は、先ず工程a)において、上記補助剤の非存在下ではIFN−α/βの発現を誘導しない、細胞と核酸アジュバントの系において、当該細胞を核酸アジュバントと、補助剤候補化合物を共に又は無しでインキュベートする。「補助剤候補化合物」は限定されないが、例えば、核酸アジュバントと複合体を形成する可能性のある物質から選択することが可能である。核酸は「−」の電荷を帯びているので、例えば、陽イオン性の物質は核酸と複合体を形成しやすい性質をもつと考えられる。例えば、陽イオン脂質は様々なものが市販されており、このような、公知の陽イオン脂質を補助剤候補化合物として、本発明のスクリーニング方法に供することが可能である。また、候補化合物全体として核酸との親和性を有する必要はなく、その一部位でも親和性を有していれば複合体を形成する可能性がある。例えば核酸に対し親和性を有する抗核酸抗体なども補助剤候補化合物として選択することが可能である。
【0038】
補助剤候補化合物は核酸アジュバントと、例えば共有結合により複合体化させてもよく、あるいは、同時に細胞に投与するだけでもよい。補助剤候補化合物の核酸アジュバントの使用割合はモル比で、好ましくは1:1で使用する。核酸アジュバント及び補助剤候補化合物の濃度は細胞の種類、インキュベーション時間等の条件に応じて当業者が適宜適用できる。インキュベーションの条件(温度及び時間)は、使用する細胞の種類、補助剤候補化合物の種類等に応じて当業者が適宜選択可能である。限定されるわけはないが、例えば、室温で10−15分程度のインキュベーションを行ってもよい。
【0039】
次いで、b−1)補助剤候補化合物の存在により、核酸アジュバントがエンドソーム小胞に細胞内移動したことを確認する、あるいは
b−2)補助剤候補化合物の存在により、IFN−α/βの発現が誘導されたことを確認する。
【0040】
IV)工程b−1)について
工程b−1)において、核酸アジュバントがエンドソーム小胞に細胞内移動したことの確認は、例えば、公知の方法を用いて核酸アジュバントの位置とエンドソーム小胞の位置とが細胞内で一致することを観察することによって行うことができる。
【0041】
例えば、核酸アジュバントを先ず任意の蛍光分子、放射性物質、発光物質等で標識する。蛍光分子としては、例えば、シアニン5(Cy5)等のシアニン色素、フルオロセインイソチオシアネート(FITC)、フルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、テトラメチル−6−カルボキシローダミン及びそれらの誘導体などの核酸分子を標識できる公知の蛍光分子を使用することができる。本明細書の実施例では、Cy5標識されたCpG−ODNsをSigma Genosisから購入して使用した。また、FITC標識されたCpG−ODNsをHokkaido System Scienceから購入して使用した。
【0042】
蛍光分子の種類に応じて、本発明のヌクレオチドを含む核酸(の位置)を検出することが可能である。それぞれの物質によって蛍光色が異なるため、多重染色に使用することも可能である。核酸の検出は共焦点顕微鏡分析(例えば、Olympus FV−1000共焦点顕微鏡)、蛍光顕微鏡検査(例えば、Olympus IX−71倒立顕微鏡、等を用いて行うことが可能である。
【0043】
放射性物質は、35S、32P、H等の核酸を標識できる公知の物質を使用することができる。放射性物質の検出は公知の方法を用いて行うことができる。あるいは、核酸アジュバントの標識は核酸塩基をビオチン又はアビジンで修飾し、公知のビオチン−アビジン結合を用いて行ってもよい。
【0044】
発光物質は、核酸を標識できる公知の発光物質を使用することができる。発光物質の検出は公知の方法を用いて行うことができる。
エンドソーム小胞の位置は、例えば、エンドソーム小胞を可視できる標識されたデキストラン、トランスフェリン等を用いて確認することができる。標識デキストランは、例えば、FITC−又はAlexa Fluor647−標識されたデキストラン(Molecular Probes社)を使用できる。あるいは、エンドソームに局在する蛋白質に蛍光蛋白質、例えばGFP誘導体等のタグを付けることによる同定法、特異的抗体を用いた免疫組織化学法による同定法なども使用可能である。
【0045】
具体的には、本発明者らは、核酸アジュバントが、Toll様受容体9(TLR9)、MyD88、及びインターフェロン制御因子7(IRF−7)の複合体(TLR9−MyD88−IRF7複合体)と結合しあるいは挙動を共にし、エンドソーム小胞へと細胞内移動すること、そして、TLR9−MyD88−IRF7複合体がエンドソームに安定して存在することが、インターフェロン−α及び/又はβ(IFN−α/β)の発現誘導を促進するためのメカニズムとして重要であることを見出した。MyD88、IRF7は核酸アジュバントの非存在下でもエンドソームで常時検出されうる、エンドソームに局在するタンパク質である。さらに、「デキストラン」は、α1→6結合を主体とする粘質性のグルカンであり、細胞内においてエンドソームに局在することが知られている。本発明者らは、核酸アジュバントが適切な補助剤の存在によりエンドソームに細胞内移動すると、デキストランと細胞内共局在することを見出した。
【0046】
よって、本発明の一態様において、工程b−1)において、核酸アジュバントのエンドソーム小胞への細胞内移動は、TLR9、MyD88又はIRF−7のいずれか(TLR9−MyD88−IRF7複合体又はその構成部分)、あるいはデキストランと核酸アジュバントの細胞内共局在が観察される場合に、核酸アジュバントがエンドソーム小胞へ移動したと確認してもよい。
【0047】
TLR9、MyD88又はIRF−7のいずれか(TLR9−MyD88−IRF7複合体又はその構成部分)の位置は、例えば、公知の遺伝子工学的手法を用いて調べることができる。例えば、TLR9、MyD88又はIRF−7のいずれかの遺伝子と蛍光タンパク質をコードする遺伝子を含む形質転換ベクターで、本発明のスクリーニング方法に使用する細胞を宿主細胞として形質転換する。形質転換細胞内で、蛍光標識されたTLR9、MyD88又はIRF−7のいずれかのタンパク質が発現する。TLR9、MyD88、IRF−7の遺伝子はいずれも公知であり、例えば、文献Nature, vol.408,pp.740−745,2000;Genomics, vol.45,pp.332−339,1997;Mol.Cell.Biol., vol.17,pp.5748−5757,1997に各々記載されている。
【0048】
TLR9、MyD88又はIRF−7タンパク質を、蛍光タンパク質との複合タンパク質として発現させると、ベクターを導入した細胞、胚、器官、組織若しくは非ヒト個体において蛍光を測定して検出することが可能である。蛍光蛋白質の例としては、好ましくは緑色蛍光蛋白質(GFP)若しくはその変異体である。GFPは発光クラゲ類の有する緑色蛍光蛋白質の総称である。オワンクラゲのGFPは、約395nmと470nmの可視光より励起され約509nmの緑色蛍光を発する。この蛍光には酸素以外に特別の因子を必要としない。外来遺伝子としてGFP遺伝子を導入すると、蛍光を有する培養細胞、植物、線虫、ハエ、魚、マウスなどが得られるため、生きている細胞中で、発現を直接観察できる。さらに、GFPの変異体でより強い蛍光を発するEGFP(enhanced green fluorescent protein)、あるいは蛍光特性の異なるYFP(yellow fluorescent protein)、CFP(cyan fluorescent protein)、RFP(red fluorescent protein)等が開発されており、市販されている(例えば、Clontech社より入手可能)。本発明の方法では、蛍光の測定により、目的とする蛋白質の、細胞内局在、組織局在、又は時間的局在に関する情報を得ることが可能である。すなわち補助剤候補化合物の存在による、上記TLR9、MyD88又はIRF−7タンパク質の位置を蛍光タンパク質によって検出することが可能である。
【0049】
または、TLR9、MyD88又はIRF−7のいずれか(TLR9−MyD88−IRF7複合体又はその構成部分)の細胞内の位置は、TLR9、MyD88又はIRF−7タンパク質と反応する抗体を用いて検出してもよい。TLR9、MyD88又はIRF−7タンパク質と反応する抗体は公知の方法を用いて作製し、検出に使用することができる。
【0050】
cDCとCpG−A等の、補助剤の非存在下ではIFN−α/βの発現誘導しない、細胞と核酸アジュバントの系において、補助剤の非存在下では核酸アジュバントがリソソームに細胞内移動されることが、本発明によって明らかにされた。よって、本発明の方法の好ましい態様において、補助剤候補化合物の非存在下では核酸アジュバントがリソソーム小胞に存在するが、補助剤候補化合物の存在により核酸アジュバントがエンドソーム小胞に細胞内移動することを確認することにより、補助剤をスクリーニングすることができる。リソソーム小胞の位置は、リソソーム小胞を可視化する、例えばLysoTracker Blue(Molecular Probes社)等の標識物質を用いて確認することができる。あるいは、リソソーム小胞に局在する蛋白質に蛍光蛋白質、例えばGFP誘導体等のタグを付けることによる同定法、特異的抗体を用いた免疫組織化学法による同定法なども使用可能である。
【0051】
V)工程b−2)について
工程b−1)の代わりに、工程b−2)において、IFN−α/βの発現が誘導されたことを確認してもよい。IFN−α/βの発現は、核酸アジュバントがエンドソーム小胞に細胞内移動したことに因ると考えられる。即ち、工程b−2)では、補助剤候補化合物によるIFN−α/βの発現誘導の効果を直接観察する。IFN−α/βの発現誘導は、例えば、細胞中のIFN−α/βのmRNA、あるいは細胞培養上清中のIFN−α/βのタンパク質の濃度を測定することによって確認することができる。
【0052】
IFN−α/βのmRNAの発現量は、例えば、定量リアルタイムRT−PCR等の公知の定量PCRを用いて行うことができる。補助剤の非存在下ではIFN−α/βの発現誘導しない細胞からのRNAの調製、並びにリアルタイム定量RT−PCRは、例えば非特許文献24に記載された方法に従って行うことができる。リアルタイム定量RT−PCRは、例えば、LightCycler等の装置及びSYBR Green system(Roche)等を用いて行うことができる。IFN−α/βのmRNAの発現量は、各個別試料中のRNA量をβ−アクチン、グリセルアルデヒド−3−ホスフェート デヒドロゲナーゼ(GAPDH)等の標準的なmRNAの発現のレベルを基にデータを標準化することによって、相対量を求めることができる。本明細書中の後述の実施例では、β−アクチンのmRNAの発現量を1とし、その相対量としてIFN−α/βのmRNAの発現量を示した。IFN−α1、IFN−β、β−アクチン、及びIRF−7のためのプライマーは、これらの遺伝子の公知の塩基配列から適宜選択することができる。例えば、非特許文献25に記載されたものを使用することができる。IFN−α/βのmRNAの発現量が、補助剤候補化合物の存在により有意に増加したとき、好ましくは、例えば10倍以上増加したとき、候補化合物が補助剤として有効であると判断する。
【0053】
あるいは、IFN−α/βタンパク質の発現濃度を測定してもよい。IFN−α/βタンパク質の発現濃度は、タンパク質の定量のための公知の方法を用いて行うことができる。例えば、IFN−α又はβタンパク質と反応する抗体を用いたELISA、細胞内染色法等の公知の免疫化学的法を用いて、IFN−α/βタンパク質の産生濃度を測定することができる。IFN−α又はβタンパク質と反応する抗体は、例えば、非特許文献1、2、3、4、5、7、8、11、12等の文献に記載されている。あるいは、公知の方法を用いて作製してもよい。IFN−α/βのタンパク質の発現濃度が、補助剤候補化合物の存在により有意に増加したとき、候補化合物が補助剤として有効であると判断する。
【0054】
後述の実施例では特に記載しない限り、細胞を2×10細胞/mlの濃度で96ウェルプレートに播き、種々の試薬で24時間刺激した。上清中のIFN−α又はβタンパク質濃度をELISAで測定した。マウスIFN−α及びIL−12p40のためのELISAキットは、各々PBL Biomedical Laboratories及びTECHNE Corp.から購入したものを使用した。限定するわけではないが、例えば、上記条件でcDC細胞を用いて本発明のスクリーニング方法を実施した場合に、IFN−αのタンパク質の発現濃度が、補助剤候補化合物の存在により有意に増加したとき、候補化合物が補助剤として有効であると判断する。
【0055】
インターフェロン−α及び/又はβ(IFN−α/β)の発現誘導を促進する補助剤
本発明はまた、本発明のスクリーニング方法によって得られた、インターフェロン−α及び/又はβ(IFN−α/β)の発現誘導を促進する補助剤を提供する。本発明者らは、DOTAP等の補助剤を核酸アジュバントともに使用すると、補助剤の非存在下ではIFN−α/βの発現誘導しない細胞においても、IFN−α/βの発現誘導を促進できることを見出した。よって、本発明の補助剤はこのような細胞において、あるいはこのような細胞を含む生体内において、免疫応答の調節を可能にする。
【0056】
本発明はさらにまた、このようなインターフェロン−α及び/又はβ(IFN−α/β)の発現誘導を促進する補助剤を含む、上記補助剤の非存在下ではIFN−α/βの発現を誘導しない、細胞と核酸アジュバントの系において、IFN−α/βの発現誘導を促進する、免疫促進剤を提供する。本発明の免疫促進剤において、補助剤は、限定されるわけではないが、好ましくは、正電荷性高分子(陽イオン性脂質及び陽イオン性ペプチド等)、並びに抗核酸抗体からなる群から選択される。より好ましくは、1,2−ジオレオイルオキシ−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP)、1,3−ジ−オレオイロキシ−2−(6−カルボキシ−スペルミル)−プロピラミド(DOSPER)、ポリエチレンイミン(PEI)及び抗DNA抗体からなる群から選択される。
【実施例】
【0057】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を限定するためのものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾・変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
【0058】
材料及び方法
本明細書中の実施例においては、特に言及しない限り、下記の材料及び方法を用いた。
1)試薬
合成オリゴヌクレオチドはHokkaido System Science(札幌、日本)から購入した。
【0059】
ODNの配列は下記の通りである;
CpG−A (ODN19 非特許文献7):
ggTGCATCGATGCAgggggG;(配列番号1)
対マウスCpG−B (ODN1668、 非特許文献15):
tccatgacgttcctgatgct (配列番号2)
及び
コントロールGpC ODN(コントロールD、 非特許文献7)
ggTGCATGCATGCAgggggg (配列番号5)。
【0060】
なお、大文字及び小文字は各々、ホスホジエステル修飾された骨格、ホスホロチオエート修飾された骨格を伴う塩基を示す。Cy5標識されたCpG−ODNsはSigma Genosisから購入した。FITC標識されたCpG−ODNsはHokkaido System Scienceから購入した。
【0061】
CpG−AとDOTAPの複合体(Roche Diagnostics)は、製造者の推奨に従って調製した。典型的には、5μgのCpG ODNsを、120μlのPBS中の30μlのDOTAPと混合した。
【0062】
FITC−及びAlexa Fluor647−標識されたデキストラン、及びLysoTracker Blueは、Molecular Probesから購入し、各々100μg/ml及び1μMの最終濃度で使用した。クロロキン、バフィロマイシン及びシクロヘキシミドはSigmaから購入し、各々5μg/ml、30nM及び100μg/mlの最終濃度で使用した。
【0063】
2)DCの調製
骨髄細胞を100ng/mlヒトFlt3L(PeproTech)と共に、10%FBSを補充したRPMI1640中で6日間培養した。回収された細胞を、pDC特異的なラットモノクローナル抗体(120G8;非特許文献23;G.Trinchirei氏より提供された)、及び抗ラットIgGマイクロビーズ(Miltenyi Biotec)とともにインキュベートし、MACSカラムを用いてpDC(陽性に選択された細胞群)とcDC(通り抜けた細胞群)に分離した。いくつかの実験において、回収された細胞を抗B220及び抗CD11c抗体(BD Bioscience)と共に培養し、B220/CD11c cDC及びB220/CD11cint pDCをFACS Diva(BD Bioscience)を用いて選別した。
【0064】
3)サイトカイン産生の測定
細胞を2×10細胞/mlの濃度で96ウェルプレートに播き、種々の試薬で24時間刺激した。上清中のサイトカイン濃度をELISAで測定した。マウスIFN−α及びIL−12p40のためのELISAキットは、各々PBL Biomedical Laboratories及びTECHNE Corp.から購入した。
【0065】
RNA分析のために、先に記載されたように(非特許文献24)全RNAを調製し、LightCycler及びSYBR Green system(Roche)を用いて定量リアルタイムRT−PCR分析を行った。各個別試料中のβ−アクチン発現のレベルによってデータを標準化した。β−アクチン、IFN−α1、IFN−β及びIRF−7のためのプライマーは、先行技術文献に記載されているものを使用した(非特許文献25)。
【0066】
4)遺伝子導入
レンチウイルスベクターpCSII(独立行政法人 理化学研究所 筑波研究所 バイオリソースセンター 三好 浩之氏より入手)を用いて、pCSII−YFP−IRF−7、pCSII−YFP−IRF−3及びpCSII−ECFP−MyD88を作成した。IRF−7、IRF−3及びMyD88をコードする核酸断片は公知の文献に基づき、各々調製した。実施例において、Venus(非特許文献26)と呼ばれるYFP変異体を使用した。レンチウイルスベクターを、pMDLg/pRRE(パッケージプラスミド)及びpCMV−VSV−G−RSV−Rev(Rev及びVSV−G発現プラスミド)とともに293T細胞に導入した。
【0067】
トランスフェクションの48時間後、培養上清中の感染性レンチウイルスを回収した。RAW264.7細胞(American Type Culture Collection(ATCC)−TIB71)又は骨髄細胞をレンチウイルスと共に、各々24時間及び72時間培養した。形質導入された骨髄細胞を次いで、ヒトFlt3Lの存在下でさらに3日間培養することにより、DCへ分化させた。いくつかの実験において、SuperFect Transfection Reagent(QIAGEN)を用いて、pCAGGS−YFP−IRF−3、pCAGGS−YFP−IRF−7、又はpCAGGS−CFP−MyD88(非特許文献11)を、RAW264.7細胞に導入した。
【0068】
5)免疫細胞化学
細胞を4%パラホルムアルデヒドで15分間固定し、0.2% Triton X−100を浸透させた。そして、1%ウシ血清アルブミンを含むPBS中で抗−マウス トランスフェリン受容体抗体(BD biosciences)とインキュベートした。次いで、Alexa Fluor 647−結合 抗Rat IgG抗体(Molecular Probes)とさらにインキュベートした。
【0069】
6)イメージング
細胞をガラス底35−mm組織培養皿(MATSUNAMI GLASS)上で培養した。Olympus FV−1000共焦点顕微鏡を用いて共焦点顕微鏡分析を行った。交差励起を避けるために、逐次走査モードにて二重又は三重カラーイメージを獲得した。MicroMax512 BFT冷却CCDカメラ(Roper Scientific)及びLudI MAC5000フィルターホイールを装備したOlympus IX−71倒立顕微鏡を用いて蛍光顕微鏡検査を行った。MetaMorph ソフトウェア(Universal Imaging)を用いて、CCDカメラとフィルターホイールの制御、並びに細胞画像データの分析を行った。
【0070】
FRET効率の算出は、先に記載されたように(非特許文献11)行った。
【0071】
実施例1 骨髄細胞由来のpDC及びcDCにおけるCpG−A及びCpG−B)の細胞内輸送
本発明者らは先ず、共焦点顕微鏡によって、骨髄細胞の培養によって得られたpDC及びcDCにおける、Cy−5−標識 CpG−A(CpG−ACy5)及びCy−5−標識 CpG−B(CpG−BCy5)の細胞内輸送(trafficking)を研究した。D19(非特許文献7)及びODN1668(非特許文献15)を各々CpG−A及びCpG−Bの代表として選択した。結果を図1−6に示す。
【0072】
図1a及びbは、3μM CpG−ACy5(a中、赤)、又はCpG−BCy5(b中、赤)と90分間インキュベートしたFlt3L−培養 骨髄由来pDC(120G8細胞)の共焦点及び微分干渉コントラスト(DIC)のイメージを示す。エンドソーム又はリソソームを可視化するために、細胞をdextranFITC又はLysoTracker(緑)で最後の10分間インキュベートした。代表的な細胞を図1a、b及び続く図2−4に示した。図1a及びb中、赤色はCpG−ACy5(図1a)又はCpG−BCy5(図1b)の位置、緑色はdextranFITC又はLysoTrackerで染色された位置を示す。CpG ODN(CpG−A又はCpG−B)とデキストラン(エンドソームのマーカー)又はLysoTracker(リソソームのマーカー)の位置が一致すると黄色が観察される。
【0073】
図2は、pDCをCpG−AFITC及びCpG−BCy5の両方とインキュベーションし、次いで、LysoTrackerでインキュベーションした結果を示す。図2の左パネル中、CpG−AFITC、CpG−BCy5及びLysoTrackerの位置は、各々赤色、青色、及び緑色で示されている。
【0074】
図2の右パネルにおいて、CpGがLysoTrackerと共局在した細胞の数の平均値を標準偏差(SD)とともに示した。図2の右パネルの縦軸は、LysoTrackerと共局在した各CpGの%割合を示す。
【0075】
図3は、図1のpDCの場合と同様に骨髄由来cDC(120G8細胞)を、CpG−ACy5又はCpG−BCy5(赤)とインキュベーションし、LysoTracker(緑)とインキュベーションした結果を示す。
【0076】
図4は、レンチウイルスによってIRF−7YFP(緑)を遺伝子導入したpDC(上パネル)及びcDC(下パネル)を、3μM CpG−ACy5と90分間インキュベートした結果を示す。
【0077】
図5は、IRF−7YFPをコードするレンチウイルスで遺伝子導入した骨髄細胞におけるYFPの発現と、CpG−A又はCpG−Bとの共局在の有無調べた結果を示す。
先ず、骨髄細胞をIRF−7YFPをコードするレンチウイルスで感染させた。形質導入された骨髄細胞は、ヒトFlt3L存在下でのさらなる3日間の培養によって、DC細胞へ分化できる。回収された細胞をフィコエリスリンと結合させた抗−CD11c抗体で染色し、FACS Calibarによって分析した。典型的には、10−25%のDCがYFPについて陽性であった(上パネル)。
【0078】
培養骨髄細胞より、pDC特異的な120G8抗体及び抗ラットIgG結合マイクロビーズによってMACSカラムを用いてpDCを除去した細胞をcDCとして用いた。IRF−7YFPをコードするレンチウイルス又は陰性コントロールウイルスで感染させたcDCの代表的なイメージを示す(中パネル)。図5の下パネルは、cDC中におけるIRF−7及びCpG ODNsの細胞内局在を示す。cDCをCpG−ACy5又はCpG−BCy5(赤)で刺激し、共焦点顕微鏡上で観察した(下パネル)。CpG−ACy5とCpG−BCy5のいずれもIRF−7YFPとの共在は観察されなかった。
【0079】
図6は、骨髄細胞からpDC細胞の単離、及びpDC細胞におけるCpG刺激によるIRF−7 mRNA及びIFN−α mRNAの発現誘導を示す。
Flt3L培養した6日目の骨髄細胞を抗−Cd11c及び抗−B220抗体で染色した。CD11cintB220 pDC FACS Divaで精製し、(>95%純度;右パネル)、100μg/mlのシクロヘキシミド(CHX)の存在下、又は非存在下、図に示した時間3μM CpG−Aで刺激した。IRF−7 mRNA及びIFN−α mRNAの発現レベルを定量リアルタイムRT−PCRによって検討した(左パネル)。図6の右パネルに示されたように、pDCにおけるIRF−7 mRNA及びIFN−α mRNAの発現は、CpG−A刺激後12時間に至るまで持続的に増加した。IRF−7、IFN−α mRNAの発現誘導はタンパク質合成阻害剤であるCHXの存在によって、有意に抑えられた。
【0080】
図1−6に示した本実施例の結果、pDC中では、CpG−ACy5は90分後においてもエンドソームのマーカーであるフルオレセインイソチオシアネート(FITC)−標識デキストランと共局在が観察されたが、(図1a)、リソソームマーカーであるLysoTrackerとは投与後5時間後においても共局在を認めなかった(図1a)。反対に、CpG−BCy5は90分後には既にLysoTrackerと共局在を認めたが、デキストランとの共局在は認めなかった(図1b)。
【0081】
CpG−BCy5及びFITC−標識CpG−AをpDC培養中に同時に加えたところ、殆どの細胞においてCpG−Bcy5がCpG−AFITCと比べ優位にLysoTrackerと共局在した(図2)。しかしながら、cDC中では、90分後にはCpG−ACy5及びCpG−BCy5の双方がLysoTrackerと共局在を示した(図3)。この観察は以前の報告と一致する(非特許文献16)。CpG−ACy5はまた、pDC中のレンチウイルスを用いた遺伝子導入によって発現された黄色蛍光タンパク質(YFP)−IRF−7融合タンパク質(本明細書中、「IRF−7YFP」と呼称することもある)とも共局在を示した。一方、cDC中で発現されたIRF−7YFPとは同様の共局在は認めなかった(図4及び図5)。
【0082】
本実施例の結果から、TLR9シグナル伝達の時空間制御モデルが考えられる。即ち、TLR9に結合したCpG−AはpDCのエンドソーム小胞に留まり、持続的にMyD88−IRF−7−IFN遺伝子誘導経路を活性化するが、CpG−Bは素早くリソソーム内へ輸送され、このようなシグナル伝達経路を活性化出来ないというモデルである。実際、pDCにおけるCpG−A刺激時のIRF−7とIFN−α mRNAの双方の誘導は、12時間後でも継続し、そして、これは新規タンパク質合成に依存している(図6)。
【0083】
実施例2 RAW264.7細胞におけるMyD88及びIRF−7の細胞内局在とCpG ODNsの輸送
本実施例では、種々の遺伝子導入がより容易であるマクロファージ系細胞であるRAW264.7細胞を使用して、CpG ODNs、MyD88及びIRF−7の空間的制御のモデルを検討した。
【0084】
まず、IRF−7YFP又はIRF−3YFPをシアン蛍光タンパク質で標識したMyD88(MyD88CFP)とともに発現させた。結果を図7及び8に示す。
図7は、RAW264.7細胞において、レンチウイルスによる遺伝子導入によって、MyD88CFP(赤)及びIRF−7YFP(緑;上パネル)又はIRF−3YFP(緑;下パネル)を発現させ、蛍光顕微鏡によって分析した結果を示す。左パネルは共焦点顕微鏡の写真図であり、左から右に各々YFP、CFP及びそれらを重ねた像(マージ像)を示したものである。マージ像中に示した線に沿ったCFP及びYFPの蛍光強度を測定し、グラフ化した。右のグラフにおける0及び1はマージ像において示した0及び1に相当する。IRF−7YFPの蛍光強度の頂点はMyD88CFPの頂点と重なるが、IRF−3YFPの頂点は重ならなかった。
【0085】
図8は、図7と同様に調製されたRAW264.7細胞のCFP、YFP、FERTイメージを収集し、FRET効率(「補正」FRET[FRET])(corrected FRET)を計算した結果を示す。20細胞の平均FRET/CFP値を標準偏差と共に示した。
【0086】
図7に示されたように、IRF−7YFPは細胞質中に発現し、MyD88CFPとともに顆粒状構造を形成するが、IRF−3YFPは形成しない。加えて、FRETは、IRF−7YFPとMyD88CFPとの間に優位に観察され(図8)、このことは、この構造中のIRF−7とMyD88との直接結合を示唆する。
【0087】
IRF−7とMyD88との複合体の細胞内局在についてさらに調べた。結果を図9−11に示す。
先ず、MyD88CFP(青)及びIRF−7YFP(緑)を発現するRAW264.7細胞を、Alexa Fluor647標識デキストラン(赤)と10分間インキュベートした。共焦点顕微鏡によって観察した代表的な細胞の結果を図9に示す。白いボックス内の高倍率像は右下のパネルに示されている。白い矢は、デキストランAlexa647、MyD88CFP及びIRF−7YFPの共局在を示している。
【0088】
図10は、MyD88CFP(青)及びIRF−7YFP(緑)を発現するRAW264.7細胞を、1μM LysoTracker(赤)と90分間インキュベートし、共焦点顕微鏡によって分析した結果を示す。
【0089】
図11は、MyD88CFP及びIRF−7YFPを発現するRAW264.7細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、抗−トランスフェリン受容体(TfR)抗体で染色し、共焦点顕微鏡によって観察した結果を示す。白い矢は、IRF−7(緑)、MyD88(青)及びTfR(赤)の共局在を示す。
【0090】
図9−11の結果で示されたように、IRF−7とMyD88の複合体構造は、蛍光標識されたデキストランとすべてではないとしても共局在を認める(図9)。しかし、LysoTrackerとは共局在を認めない(図10)。IRF−7とMyD88の複合体構造はまた抗−トランスフェリン受容体抗体でも染色される(図11)。これらの結果はMyD88−IRF−7複合体はエンドソーム小胞に存在することを示唆する。
【0091】
本発明者らはさらに、RAW264.7細胞内のCpG−A又はCpG−B輸送を調べた。先ず、図12は、LysoTracker(緑)及びCpG−ACy5(赤)と90分間インキュベートしたRAW264.7細胞の共焦点画像を示す。
【0092】
図13はRAW264.7細胞を、1μM LysoTracker(緑)、並びに1μM CpG−ACy5、1μM CpG−BCy5、あるいはDOTAPと複合体化した1μM CpG−ACy5(CpG−A/DOTAP)(赤)と共に図中に示した時間インキュベートし、固定後、落射型蛍光顕微鏡下で細胞を観察した結果を示している。
【0093】
図14は、MyD88CFP(青)及びIRF−7YFP(緑)を発現するRAW264.7細胞を、CpG−ACy5(赤)と90分間インキュベートし、共焦点顕微鏡によって分析した結果を示す。RAW264.7細胞において、CpG−ACy5とMyD88CFP/IRF−7YFPとの共局在は観察されなかった。
【0094】
図12−14の結果で示されたように、RAW264.7細胞内での場合、インキュベーション後15分ほどからCpG−ACy5とLysoTrackerとの共局在が観察された(図12及び図13参照)。同様の現象がCpG−BCy5でも観察された(図13)。よって、RAW264.7細胞におけるこれらのODNの輸送のパターンは、cDCで観察されるのと同様である。CpG−ACy5は、MyD88−IRF−7複合体とは共局在せず(図14)、そして、CpG−AによるIFN−α/β mRNAの誘導はRAW264.7細胞では生じなかった(後述参照)。これらの結果は、持続的なTLR9シグナル及びエンドソーム小胞におけるMyD88−IRF−7経路の活性化がIFN遺伝子誘導経路の活性化に重要である、という上記モデルを更に支持している。
【0095】
実施例3 DOTAP処理によるcDCにおけるCpG−A輸送の操作
実施例2で言及した、持続的なTLR9シグナル及びエンドソーム小胞におけるMyD88−IRF−7経路の活性化がIFN遺伝子誘導経路の活性化に重要である、というモデルをさらに裏付けるアプローチとして、本実施例では、pDCにおけるCpG−Aのエンドソームへの輸送に類似するようにCpG−A輸送を操作することによって、cDCにおいても高レベルのIFN誘導を達成しうるか否かを調べた。本発明者らは脂質1,2−ジオレオイルオキシ−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP)がCpG−ODNの細胞内輸送システムを変化させることを見出した。
【0096】
図15−18は、CpG−AをDOTAPで処理することによるcDCにおける細胞内輸送とIFN等の産生を示す。先ず、骨髄細胞由来のcDCを、CpG−ACy5/DOTAP(赤)及びLysoTracker(青)と80分間インキュベートした。洗浄後、次いで細胞をデキストランFITC(緑)と10分間インキュベートした。代表的な蛍光像及び微分干渉(Differential interference contrast;DIC)像を図15に示した。次いで、IRF−7YFP(緑)を発現するcDCを、CpG−ACy5/DOTAP(赤)と90分間インキュベートした。代表的な蛍光及びDIC像を図16に示した。Nは核を示す。IRF−7の核移行を伴う細胞の割合を計測し、3回の独立した実験の平均値を標準偏差とともに示した(右下パネル)。
【0097】
DOTAPと複合体化したCpG−ACy5(CpG−A/DOTAP)でcDCを刺激すると、LysoTrackerとの共局在は認めず、インキュベーション開始から90分後であってもデキストランとの共局在を認めた(図15)。さらに、CpG−ACy5/DOTAPはcDCにおいてレンチウイルスによって発現されたIRF−7YFPとの共局在し、IRF−7YFPの有意な画分がcDCの核中に見出された(図16)。このことは、この核酸とDOTAPという補助剤の存在により、核酸がエンドソームに留まりcDCにおいても、TLR9−MyD88−IRF−7経路がエンドソーム小胞において活性化されたことを示唆する。
【0098】
図17は、CpG−Aで刺激したcDC又はpDCにおける、IFN−αタンパク質の産生(pg/ml)を示す。先ず、pDC又はcDCを、DOTAPと複合体を形成した又は形成していない、種々の濃度のCpG−A又はコントロールGpC ODNで24時間刺激した。ELISAによって培養上清中のIFN−α濃度を測定した。同様に調整した3サンプルの平均+/−標準偏差の結果を示す。CpG−A/DOTAPでの刺激によりcDCでもIFN−αタンパク質が産生された(左パネル)。TLR9を活性化することのできない、CpG−A配列中に逆向きのCGダイマーを有するODN(コントロールGpC ODN)で刺激した場合は、いずれの細胞でも誘導は観察されなかった(図17;非特許文献3,7)。また、pDCにおけるCpG−AによるIFN−α誘導は、DOTPAによる増強効果を全く受けなかった(右パネル)。
【0099】
図18は、pG−A/DOTAPで刺激されたcDCにおけるIRF−7 mRNA及びIFN−α mRNAの相対的な発現量を示す。Flt3L培養した6日目の骨髄細胞からFACS DivaによってCD11cB220 cDCを精製し、図に示した時間シクロヘキサミド(CHX)の存在下又は不存在下で、3μM CpG−A/DOTAPで刺激した。IRF−7及びIFN−α mRNAの発現レベルをリアルタイムRT−PCRによって決定した。
【0100】
図17及び18に示されたように、pDCにおいて見られるのと同様に、CpG−A/DOTAPで刺激されたcDCにおいても、高レベルのIFN−α誘導が観察された(図17)。併せて、IRF−7及びIFN−α mRNAs双方の誘導が認められた(図18)。IRF−7及びIFN−α mRNAs双方の誘導は、タンパク質合成阻害剤であるCHXの存在によって、有意に抑えられた。さらに、DOTAPは、pDCにおけるCpG−AによるIFN−α誘導に増強効果を全く示さなかった(図17)。このことはさらに、核酸刺激に対し、通常はIFNを産生しない細胞においても、核酸を効率的にエンドソームに留まるようにする補助剤の存在により、IFN誘導経路が活性化されることを示唆する。
【0101】
実施例4 DOTAPを用いたRAW264.7細胞中におけるCpG−A輸送の操作
本実施例では、RAW264.7細胞において、DOTAPを用いてODN輸送の操作を行った場合のI型IFNの産生等を調べた。結果を図19−22に示す。
【0102】
図19は、MyD88CFP(青)/及びIRF−7YFP(緑)を発現するRAW264.7細胞を、CpG−ACy5/DOTAP(赤)と90分間インキュベートした場合の、代表的な細胞を共焦点顕微鏡によって分析した結果を示す。
【0103】
図20は、3μM CpG−A又は3μM CpG/DOTAPとのインキュベーションの12時間後、RAW264.7細胞からRNAを調製し、定量リアルタイムRT−PCR分析を行った結果を示す。縦軸は、各々左のグラフからIFN−β、IFN−α及びIRF−7のmRNAの相対的な発現を示す。比較のために、水疱口炎ウイルス(vesicular stomatitis virus;VSV)で刺激した脾臓pDC中のIFN−α/β及びIRF−7 mRNAレベルも示す。
【0104】
図21は、CpG−A/DOTAPで刺激されたRAW264.7細胞の細胞内IFN−α染色を、先に記載されたように(非特許文献1)行った結果を示す。具体的には、RAW264.7細胞をDOTAPのみ、CpG−A(3μM)、又はCpG−A(3μM)/DOTAPとで14時間刺激した。ブレフェルディンA(Brefeldin A)(Sigma;5μg/ml)を培養の最後の4時間加えた。4%パラホルムアルデヒドで固定し、1% FCS及び0.1%サポニン(Sigma)を含むPBS中で、ラット抗−マウスIFN−α抗体群(RMMA−1、PBL Biomedical Laboratories及びクローンF18、hycult Biotechnology)の混合物、次いで、Alexa Fluor488−結合二次抗体(Molecular Probes)によって染色した。FACS分析によって発現レベルを測定し、ヒストグラムで示した。
【0105】
図22は、野生型骨髄由来のCD11bB220細胞をFACSによって精製し、CpG−A又はCpG−A/DOTAPで刺激し、ELISAによってIFN−αレベルを測定した結果を示す。
【0106】
図19−21に示したように、CpG−ACy5/DOTAPとMyD88−IRF−7複合体との間の共局在が、CpG−ACy5/DOTAPとのインキュベーション開始から90分後にRAW264.7細胞中で観察され(図19)、IFN−α/β mRNAsの誘導もこれらの細胞中で観察された(図20)。RAW264.7細胞中IFN−α分泌は観察されなかったが(データ示さず)、抗−IFN−α抗体での細胞内染色によってIFN−αタンパク質が検出された(図21)。これはこの細胞系でのIFN−αの分泌機能がpDCそれと比べ発達していないことを示唆する。いずれにしても、これらのRAW264.7細胞を用いた実験結果はさらに、エンドソームにおけるTLR9−MyD88−IRF−7活性化経路を介したIFN遺伝子誘導モデルを支持する。さらにこのモデルと合致して、骨髄由来のCD11bB220細胞でも(pDCを除く骨髄系列細胞)、CpG−A/DOTAPの刺激に対し、有意なレベルのIFN−α分泌が観察された(図22)。
【0107】
実施例5 DOTAP処理におけるCpG−B輸送の操作
本実施例では本発明者らは、DOTAPと複合体を形成したCpG−B(CpG−B/DOTAP)に対するpDC及びcDCの応答を研究した。
【0108】
図23は、DOTAPに複合体化させたCpG−Bで刺激したcDC又はpDCにおける、IFN−αタンパク質の産生(pg/ml)を示す。CpG−Bによる刺激はCpG−Aに関する図17に関して記載したのと同様に行った。
【0109】
図24は、pDCにおけるCpG−B輸送の用量依存性の挙動を調べた結果である。骨髄由来のpDCを1μM(上パネル)又は3μM(下パネル)の、CpG−BCy5/DOTAPで刺激した。次いで、デキストランFITC又はLysoTrackerとともにインキュベートした。代表的な細胞について、共焦点顕微鏡によって分析した共焦点及びDIC像を示す。
【0110】
CpG−B/DOTAPで刺激されたpDCにおいて、CpG−B濃度依存的で強力なIFN−α産生が認められた。また、先に報告されたように高濃度による抑制効果も観察された(図23、非特許文献3)。さらにまた、CpG−BCy5は最適のリガンド濃度(1μM)においてのみ、LysoTrackerよりもデキストランに優位に共局在することが観察された(図24)。
【0111】
図24の観察に基づいて本発明者らは、リガンドがDOTAPとともに輸送される際に、TLR9に結合したCpG−Bを保持することによってMyD88−IRF7経路の活性化に関与することのできる、さらなる因子(群)がpDC中に存在すると推論する。この推定因子(群)は、pDC中でDOTAPなしで、そしてcDC中でDOTAPとともに、エンドソーム中でTLR9と結合した状態のCpG−Aによるシグナル伝達に関与しうる。即ち、DOTAPはエンドソームへのリガンド輸送の運命を決定しうるが、さらに未知の因子(群)もまた、MyD−88経路のCpG−TLR−9媒介エンドソーム活性化に決定的に関与する。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】図1a及びbは、3μM CpG−ACy5(a中、赤)、又はCpG−BCy5(b中、赤)と90分間インキュベートしたFlt3L−培養 骨髄由来pDC(120G8細胞)の共焦点及び微分干渉コントラスト(DIC)像を示す。
【図2】図2は、pDCをCpG−AFITC及びCpG−BCy5の両方とインキュベーションし、次いで、LysoTrackerとインキュベーションした結果を示す。
【図3】図3は、図1のpDCの場合と同様に骨髄由来cDC(120G8細胞)を、CpG−ACy5又はCpG−BCy5(赤)とインキュベーションし、LysoTracker(緑)とインキュベーションした結果を示す。
【図4】図4は、レンチウイルスによってIRF−7YFP(緑)を遺伝子導入したpDC(上パネル)及びcDC(下パネル)を、3μM CpG−ACy5と90分間インキュベートした結果を示す。
【図5】図5は、IRF−7YFPをコードするレンチウイルスで遺伝子導入した骨髄細胞におけるYFPの発現と、CpG−A又はCpG−Bとの共局在の有無調べた結果を示す。
【図6】図6は、骨髄細胞からのpDC細胞の単離、及びpDCにおけるCpG刺激によるIRF−7 mRNA及びIFN−α mRNAの発現誘導を示す。
【図7】図7は、RAW264.7細胞において、レンチウイルスによる遺伝子導入によって、MyD88CFP(赤)及びIRF−7YFP(緑;上パネル)又はIRF−3YFP(緑;下パネル)を発現させ、蛍光顕微鏡によって分析した結果を示す。
【図8】図8は、図7と同様に調製されたRAW264.7細胞のCFP、YFP、FRETイメージを収集し、FRET効率(「補正」FRET[FRET])(corrected FRET)を計算した結果を示す。20細胞の平均FRET/CFP値を標準偏差と共に示した。
【図9】図9は、MyD88CFP(青)及びIRF−7YFP(緑)を発現するRAW264.7細胞を、Alexa Fluor647標識デキストラン(赤)と10分間インキュベートし、代表的な細胞について、共焦点顕微鏡によって分析した結果である。白いボックスで示された部分の高倍率像は右下のパネルに示されている。白い矢は、デキストランAlexa647、MyD88CFP及びIRF−7YFPの共局在を示す。
【図10】図10は、MyD88CFP(青)及びIRF−7YFP(緑)を発現するRAW264.7細胞を、1μM LysoTracker(赤)と90分間インキュベートし、共焦点顕微鏡によって分析した結果を示す。
【図11】図11は、MyD88CFP及びIRF−7YFPを発現するRAW264.7細胞をパラホルムアルデヒトで固定し、抗−トランスフェリン受容体(TfR)抗体で染色し、共焦点顕微鏡によって分析した結果を示す。白い矢は、IRF−7(緑)、MyD88(青)及びTfR(赤)の共局在を示す。
【図12】図12は、LysoTracker(緑)及びCpG−ACy5(赤)と90分間インキュベートしたRAW264.7細胞の共焦点像を示す。
【図13】図13は、RAW264.7細胞を、1μM LysoTracker(緑)、並びに1μM CpG−ACy5、1μM CpG−BCy5、あるいは又はDOTAPと複合体化した1μM CpG−ACy5(CpG−A/DOTAP)(赤)と共に図中に示した時間インキュベートし、固定化後、落射型蛍光顕微鏡下で細胞を観察した結果を示す。
【図14】図14は、MyD88CFP(青)及びIRF−7YFP(緑)を発現するRAW264.7細胞を、CpG−ACy5(赤)と90分間インキュベートし、共焦点顕微鏡によって分析した結果を示す。
【図15】図15は、CpG−ACy5/DOTAP(赤)及びLysoTracker(青)と80分間インキュベートし、洗浄後、デキストランFITC(緑)と10分間インキュベートした、骨髄細胞由来のcDCの蛍光及びDIC像を示す。
【図16】図16は、IRF−7YFP(緑)を発現するcDCを、CpG−ACy5/DOTAP(赤)と90分間インキュベートした場合の、代表的な蛍光及びDIC像示す。Nは核を表す。IRF−7の核移行を伴う細胞の割合を計測し、3回の独立した実験の平均値を標準偏差とともに示した(右下パネル)。
【図17】図17は、CpG−Aで刺激したcDC又はpDCにおける、IFN−αタンパク質の産生(pg/ml)を示す。
【図18】図18は、pG−A/DOTAPで刺激されたcDCにおけるIRF−7 mRNA及びIFN−α mRNAの相対的な発現量を示す。
【図19】図19は、MyD88CFP(青)/及びIRF−7YFP(緑)を発現するRAW264.7細胞を、CpG−ACy5/DOTAP(赤)で90分間インキュベートした場合の、代表的な細胞を共焦点顕微鏡によって分析した結果を示す。
【図20】図20は、3μM CpG−A又は3μM CpG/DOTAPとのインキュベーションの12時間後、RAW264.7細胞から全RNAを調製し、定量リアルタイムRT−PCR分析を行った結果を示す。縦軸は、各々左のグラフからIFN−β、IFN−α及びIRF−7のmRNAの相対的な発現を示す。
【図21】図21は、CpG−A/DOTAPで刺激されたRAW264.7細胞の細胞内IFN−α染色を行った結果を示す。
【図22】図22は、野生型骨髄由来のCD11bB220細胞をFACSによって精製し、CpG−A又はCpG−A/DOTAPで刺激し、ELISAによってIFN−αレベルを測定した結果を示す。
【図23】図23は、DOTAPに複合体化させたCpG−Bで刺激したcDC又はpDC細胞における、IFN−αタンパク質の産生(pg/ml)の用量依存性を示す。
【図24】図24は、pDCにおけるCpG−B輸送の濃度依存性の挙動を調べた結果である。骨髄由来のpDCを1μM(上パネル)又は3μM(下パネル)の、DOTAPと複合体化したCpG−BCy5で刺激した。次いで、デキストランFITC又はLysoTrackerとともにインキュベートし、エンドソーム又はリソソームを可視化した。代表的な細胞について、共焦点顕微鏡によって分析した共焦点及びDIC像を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターフェロン−α及び/又はβ(IFN−α/β)の発現誘導を促進する補助剤をスクリーニングする方法であって、
a)上記補助剤の非存在下ではIFN−α/βの発現を誘導しない、細胞と核酸アジュバントの系において、当該細胞を核酸アジュバントと、補助剤候補化合物を共に又は無しでインキュベートし;そして
b−1)補助剤候補化合物の存在により、核酸アジュバントがエンドソーム小胞に細胞内移動したことを確認する、あるいは
b−2)補助剤候補化合物の存在により、IFN−α/βの発現が誘導されたことを確認する
c)工程b−1)又はb−2)において、核酸アジュバントのエンドソーム小胞への移動またはIFN−α/βの発現誘導が確認された場合に、上記化合物を有効な補助剤と判断する
ことを含む、上記スクリーニング方法。
【請求項2】
補助剤の非存在下ではIFN−α/βの発現を誘導しない系における細胞が、コンベンショナル樹状細胞(cDC)、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)、RAW細胞、マクロファージ、ヒト末梢血由来細胞、及び線維芽細胞からなる群から選択される、請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項3】
補助剤の非存在下ではIFN−α/βの発現を誘導しない系における核酸アジュバントが、非自己と認識される核酸である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
核酸アジュバントが、非メチル化CpG オリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)、一本鎖RNA、並びに不活性化ウイルス又は細菌からの核酸抽出物からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
核酸アジュバントが、塩基配列ggtgcatcgatgcaggggggを有するCpG−A、ポリウリジル酸、塩基配列tcgtcgttcgaacgacgttgatを有するCpG−C、及び塩基配列tccatgacgttcctgatgct若しくはtccatggacgttcctgagcgttを有するCpG−Bからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程b−1)において、Toll様受容体9(TLR9)、MyD88、インターフェロン制御因子7(IRF−7)又はデキストランと核酸アジュバントの細胞内共局在が観察される場合に、核酸アジュバントがエンドソーム小胞へ移動したと確認する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程b−2)において、IFN−α/βの発現誘導を、細胞中のIFN−α/βのmRNA、あるいは細胞培養上清中のIFN−α/βのタンパク質の濃度を測定することによって確認する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のスクリーニング方法によって得られた、インターフェロン−α及び/又はβ(IFN−α/β)の発現誘導を促進する補助剤。
【請求項9】
インターフェロン−α及び/又はβ(IFN−α/β)の発現誘導を促進する補助剤を含む、上記補助剤の非存在下ではIFN−α/βの発現を誘導しない、細胞と核酸アジュバントの系において、IFN−α/βの発現誘導を促進する、免疫促進剤。
【請求項10】
インターフェロン−α及び/又はβ(IFN−α/β)の発現誘導を促進する補助剤が、陽イオン性脂質である、請求項9に記載の免疫促進剤。
【請求項11】
インターフェロン−α及び/又はβ(IFN−α/β)の発現誘導を促進する補助剤が、1,2−ジオレオイルオキシ−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP)である、請求項9又は10に記載の免疫促進剤。

【図6】
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【図8】
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【図17】
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【図18】
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【図22】
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【図23】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−148556(P2008−148556A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101706(P2005−101706)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】